説明

パッケージおよび圧電振動子

【課題】パッケージ内の気密を良好に維持でき、耐環境性に優れた低コストなパッケージおよび圧電振動子の提供を課題とする。
【解決手段】ガラス材料からなるベース基板2に、厚さ方向に貫通する貫通孔33,34を形成し、この貫通孔33,34を塞ぐように貫通電極13,14を設けた圧電振動子(パッケージ)において、貫通電極13,14は、貫通孔33,34の内周面33a,34aに形成された多層積層膜43と、貫通孔33,34を塞ぐように充填されたガラス部材46とを備え、多層積層膜43は、ベース基板2の内外を導通させる導電層43bと、導電層43bの貫通孔33,34の内周面33a,34a側に形成され、ベース基板2に密着可能な第1密着層43aと、導電層43bのガラス部材46側に形成され、ガラス部材46に密着可能な第2密着層43cと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パッケージおよび圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話や携帯情報端末には、時刻源や制御信号などのタイミング源、リファレンス信号源などとして水晶などを利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その一つとして、2層構造タイプの表面実装型のパッケージが知られている。
【0003】
このタイプの圧電振動子は、ベース基板およびリッド基板が直接接合されることでパッケージ化された2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に電子部品が収納されている。このような2層構造タイプのパッケージの1つとして、ベース基板に形成された貫通電極により、キャビティの内側に封入された電子部品と、ベース基板の外側に形成された外部電極とを導通させたものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1の圧電振動子は、ガラスもしくはセラミックスからなる基板(ベース基板)に貫通孔を設け、貫通孔の内面および貫通孔の周囲上下面もしくはそのいずれかの部分に配線用金属を形成し、その貫通孔に合金を溶着して気密端子とすることにより貫通電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−283951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板の材料となるガラスの線膨張係数は、貫通電極を形成する金属の線膨張係数と異なっており、一般にガラスの線膨張係数よりも金属の線膨張係数のほうが大きい。このため、例えばパッケージ実装時に温度が変化すると、ガラスと金属との線膨張係数の差により、貫通電極から基板に対して応力が発生する。特に、近年の電子機器の薄型化に伴い、基板の薄型化が要求されているため、貫通電極から基板に対して応力が発生すると、基板が歪んだり損傷したりして、貫通電極の気密性が損なわれるおそれがある。
【0007】
また、一般に、金属は耐環境性の面でガラスに劣る。したがって、貫通孔に合金を溶着して貫通電極を形成した場合には、基板よりも先に貫通電極の合金が腐食し、貫通電極の気密性が損なわれるおそれがある。
さらに、例えば白金(Pt)等のように、ガラスの線膨張係数に近く、耐環境性に優れた金属を使用して貫通電極を形成することも考えられるが、一般にPtは高価であり、パッケージ自体が高価となる。
【0008】
そこで本発明は、パッケージ内の気密を良好に維持でき、耐環境性に優れた低コストなパッケージおよび圧電振動子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するため、本発明のパッケージは、電子部品を封入するためのキャビティを形成可能な複数の基板を有し、これら複数の基板のうち、ガラス材料からなる第1基板に、厚さ方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔を塞ぐように貫通電極を設けたパッケージにおいて、前記貫通電極は、前記貫通孔の内周面に形成された多層積層膜と、前記貫通孔を塞ぐように充填されたガラス部材とを備え、前記多層積層膜は、前記第1基板の内外を導通させる導電層と、前記導電層の前記貫通孔の内周面側に形成され、前記第1基板に密着可能な第1密着層と、前記導電層の前記ガラス部材側に形成され、前記ガラス部材に密着可能な第2密着層とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、貫通孔を塞ぐようにガラス部材を充填しているので、貫通電極の線膨張係数を第1基板の線膨張係数に近い値に設定することができる。これにより、温度変化によって貫通電極から第1基板に対して応力が発生するのを抑制し、第1基板の損傷を防止できるので、パッケージ内の気密を良好に維持できる。また、貫通孔の表面に多層積層膜を形成しており、多層積層膜は導電層、第1密着層、および第2密着層を有しているので、多層積層膜を介して、ガラス部材と貫通孔の内周面とを密着させつつ、貫通電極の良好な導通を確保できる。これにより、パッケージ内の気密を良好に維持することができる。
また、貫通孔にガラス部材を充填しているので、貫通孔に金属を充填している場合と比較して、耐環境性に優れた低コストなパッケージを提供することができる。
【0011】
また、前記第2の密着層は、標準電極電位が−1.7V以上0.8V未満の金属もしくは半金属からなることが望ましい。
本発明によれば、第2の密着層は標準電極電位が−1.7V以上0.8V未満の金属もしくは半金属で形成され、一例として、チタン(Ti)やクロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の材料が選択される。したがって、第2の密着層は、ガラスとの密着性に優れた成膜し易い元素を主成分として形成されるので、パッケージ内の気密を良好に維持することができる。なお、表面酸化が進みにくい点、洗浄し易い点、もしくはガラス部材を熱処理した際に導電層との拡散が小さい点から、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)およびアルミニウム(Al)で第2の密着層を形成するのが特に好ましい。
【0012】
また、前記第1の密着層は、標準電極電位が−1.7V以上0V未満の金属もしくは半金属からなることが望ましい。
本発明によれば、前記第1の密着層は、標準電極電位が−1.7V以上0V未満の金属もしくは半金属で形成され、一例として、チタン(Ti)やクロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)等の材料が選択される。したがって、第1の密着層は、ガラスとの密着性に優れた成膜し易い元素を主成分として形成されるので、第1基板から多層積層膜が剥離するのを防止し、パッケージ内の気密を良好に維持することができる。なお、ガラス部材を熱処理した際に導電層との拡散が小さい点、もしくは第1基板との密着性が特に良好な点から、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)で第1の密着層を形成するのが特に好ましい。
【0013】
また、前記導電層は、抵抗率が1×10−8Ω・m以上5×10−7Ω・m以下であることが望ましい。
本発明の導電層は、一例として、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、チタン(Ti)等の導電率の高い元素を主成分として形成される。したがって、貫通電極の良好な導通を確保できる。なお、特に抵抗率が低く、薄膜であっても良好な導電を確保できる点から、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)およびアルミニウム(Al)を主成分として導電層を形成するのが特に好ましい。
【0014】
また、前記第1基板の線膨張係数をαとし、前記ガラス部材の線膨張係数をβとしたとき、前記第1基板の線膨張係数α、および前記ガラス部材の線膨張係数βは、
β=α±3ppm
を満たすように設定されていることが望ましい。
本発明によれば、貫通電極の線膨張係数を第1基板の線膨張係数と略同一とすることにより、温度変化によって貫通電極から第1基板に対して応力が発生するのを抑制し、第1基板の損傷を防止できる。したがって、パッケージ内の気密を良好に維持できる。
【0015】
また、前記ガラス部材の縁部と前記貫通孔の内周縁とが断面略弧状に接するように、前記ガラス部材の表面に凹部を形成することが望ましい。
本発明によれば、多層積層膜の表面に、貫通電極を形成するガラス部材がなじみ、このガラス部材と多層積層膜とを確実に密着させることができる。これにより、ガラス部材の剥離を防止し、パッケージ内の気密を良好に維持することができる。また、凹部のうち、貫通孔の内周縁と接する縁部は薄く形成されるので、簡単に貫通電極を露出させることができる。したがって、電子部品と貫通電極とを容易に接続することができる。
【0016】
本発明のパッケージを用いた圧電振動子は、前記パッケージにおける前記キャビティの内部に、前記電子部品として圧電振動片が封入されていることを特徴とする。
本発明によれば、パッケージ内の気密を良好に維持でき、耐環境性に優れた低コストな圧電振動子を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、貫通孔を塞ぐようにガラス部材を充填しているので、貫通電極の線膨張係数を第1基板の線膨張係数に近い値に設定することができる。これにより、温度変化によって貫通電極から第1基板に対して応力が発生するのを抑制し、パッケージの損傷を防止できるので、パッケージ内の気密を良好に維持できる。また、貫通孔の表面に多層積層膜を形成しており、多層積層膜は導電層、第1密着層、および第2密着層を有しているので、多層積層膜を介して、ガラス部材と貫通孔の表面とを密着させつつ、貫通電極の良好な導通を確保できる。これにより、パッケージ内の気密を良好に維持することができる。
また、貫通孔にガラス部材を充填しているので、貫通孔に金属を充填している場合と比較して、耐環境性に優れた低コストなパッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1のA−A線に沿う断面図であり、貫通電極の拡大図である。
【図6】横軸を線膨張係数差とし、縦軸を線膨張係数差により発生する応力としたときの実験データである。
【図7】圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図8】リッド基板用ウエハに複数のキャビティを形成した状態を示す図である。
【図9】ベース基板用ウエハの上面に接合膜及び引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
【図10】図9の部分拡大図である。
【図11】ウエハ体の分解斜視図である。
【図12】貫通電極形成工程の説明図であり、図12(a)はガラス部材充填工程の説明図であり、図12(b)は焼成工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態に係る圧電振動子および圧電振動片を、図面を参照して説明する。図1から図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2およびリッド基板3が接合膜23を介して陽極接合され、キャビティ16に収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。
【0020】
(圧電振動片)
圧電振動片4は、水晶の圧電材料から形成されたATカット型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平面視略矩形で厚さが均一の板状に加工された水晶板17と、水晶板17の両面に対向する位置で配置された一対の励振電極5,6と、励振電極5,6に電気的に接続された引き出し電極19,20と、引き出し電極19,20に電気的に接続されたマウント電極7,8と、を有している。
【0021】
励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15は、例えば、金(Au)の被膜で形成されている。なお、これらの膜は、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)などの導電性膜の被膜あるいはこれら導電性膜のいくつかを組み合わせた積層膜により形成されていてもよい。
【0022】
このように構成された圧電振動片4は、金等からなるバンプ11,12を利用して、ベース基板2の上面Uにフリップチップボンディングにより接合されている。具体的には、ベース基板2の上面Uにパターニングされた後述する引き回し電極9,10上にバンプ11,12が形成され、そのバンプ11,12上に、一対のマウント電極7,8がそれぞれ接触した状態でフリップチップボンディングにより接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面Uからバンプ11,12の厚さ分、浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極7,8と引き回し電極9,10とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0023】
(圧電振動子)
リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、圧電振動片4を収容するキャビティ16が形成されている。そして、リッド基板3はこのキャビティ16をベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して陽極接合されている。
【0024】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる基板であり、リッド基板3と同等の外形で略板状に形成されている。
ベース基板2の上面Uには、Alやシリコン(Si)等の導電性材料により、陽極接合用の接合膜23がパターニングされている。接合膜23は、リッド基板3に形成されたキャビティ16の周囲を囲むように、ベース基板2の周縁に沿って形成されている。
【0025】
また、ベース基板2の上面Uには、一対の引き回し電極9,10がパターニングされている。一対の引き回し電極9,10は、後述する貫通電極13,14のうち、一方の貫通電極13と圧電振動片4の一方のマウント電極7とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極14と圧電振動片4の他方のマウント電極8とを電気的に接続するようにパターニングされている。具体的には、一方の引き回し電極9は、圧電振動片4のマウント電極7,8側に位置するように一方の貫通電極13の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極10は、一方の引き回し電極9に隣接した位置から圧電振動片4に沿って、ベース基板2上の貫通電極13と対向する側に引き回しされた後、他方の貫通電極14の真上に位置するように形成されている。
【0026】
そして、これら一対の引き回し電極9,10上にそれぞれバンプ11,12が形成されており、バンプ11,12を利用して圧電振動片4のマウント電極7,8がフリップチップボンディングにより実装される。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極7が、一方の引き回し電極9を介して一方の貫通電極13に導通し、他方のマウント電極8が、他方の引き回し電極10を介して他方の貫通電極14に導通するようになっている。
【0027】
(貫通電極)
ベース基板2には、一対の貫通電極13,14が形成されている。貫通電極13,14は、圧電振動子1を形成したときにキャビティ16内に収まるように形成される。より詳しく説明すると、一方の貫通電極13は、マウントされた圧電振動片4のマウント電極7,8側(図2の左側)に位置するように形成されている。また、他方の貫通電極14は、圧電振動片4のマウント電極7,8側と反対側(図2の右側)に位置するように形成されている。なお、以下には貫通電極13を例にして説明するが、貫通電極14についても同様である。
【0028】
図5は、図1のA−A線に沿う断面図であり、貫通電極13(14)の拡大図である。
貫通電極13は、貫通孔33の内周面33aに多層積層膜43を成膜し、貫通孔33に成膜された多層積層膜43の内側にガラス部材46を充填することにより形成される。
貫通孔33は、略円錐台形状に形成されており、ベース基板2の上面U側からベース基板2の下面L側にかけて、内形が次第に小さくなるように形成されている。なお、貫通孔33の内周面33aのテーパ角度は、内周面33aに多層積層膜43を成膜できるような角度に設定される。具体的には、貫通孔33の内周面33aとベース基板2の下面Lとの間の角度が、例えば85度程度に設定される。
【0029】
多層積層膜43は、ベース基板2の内外を導通させる導電層43bと、貫通孔33の内周面33aに形成され、ベース基板2に密着可能な第1密着層43aと、ガラス部材46に密着可能な第2密着層43cとを有している。多層積層膜43の各層は、第1密着層43a、導電層43b、第2密着層43cの順番で形成される。
【0030】
多層積層膜43は、膜厚が最大で10μm程度である。各層の膜厚に関し、第1密着層43aが例えば3nm以上500nm以下、導電層43bが例えば50nm以上10μm以下、第2密着層43cが例えば10nm以上5μm以下に成膜される。
【0031】
第1の密着層43aは、標準電極電位が−1.7V以上0V未満の金属もしくは半金属からなり、第1密着層43aは、スパッタリングやCVD等の成膜方法により形成される。第1密着層43aを形成する材料としては、成膜し易く、ベース基板2の材料であるガラス材料に対して良好な密着性を有する材料が選択される。一例としては、チタン(Ti)やクロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)等の材料が選択される。なお、ガラス部材46を熱処理した際に導電層43bとの拡散が小さい点、もしくはベース基板2との密着性が特に良好な点から、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)およびアルミニウム(Al)で第1の密着層43aを形成するのが特に好ましい。
【0032】
導電層43bは、抵抗率が1×10−8Ω・m以上5×10−7Ω・m以下の材料からなり、第1密着層43aを成膜した後に、第1密着層43aに重ねてスパッタリングやCVD等の成膜方法により形成される。導電層43bを形成する材料としては、第1密着層43aおよび第2密着層43cに対して良好な密着性を有するとともに、電極として導電性に優れた材料が選択される。一例としては、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、チタン(Ti)等の材料が選択される。なお、特に抵抗率が低く、薄膜であっても良好な導電を確保できる点から、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)およびアルミニウム(Al)を主成分として導電層43bを形成するのが特に好ましい。
【0033】
第2密着層43cは、標準電極電位が−1.7V以上0.8V未満の金属もしくは半金属からなり、第1密着層43a、および導電層43bを成膜した後に、導電層43bに重ねてスパッタリングやCVD等の成膜方法により形成される。第2密着層43cを形成する材料としては、成膜し易く、導電層43bに対して良好な密着性を有するとともに、電極として導電性に優れ、表面に酸化被膜を形成しやすい材料が選択される。なお、酸化被膜は、貫通孔33内に充填されるガラス部材46との密着性を高める機能を有する。一例としては、チタン(Ti)やクロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)等の材料が選択される。なお、表面酸化が進みにくい点、洗浄し易い点、もしくはガラス部材46を熱処理した際に導電層43bとの拡散が小さい点から、チタン(Ti)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)およびアルミニウム(Al)で第2の密着層43cを形成するのが特に好ましい。
【0034】
貫通孔33内には、ガラス部材46が充填されている。ガラス部材46は、例えばペースト状のガラスフリットが焼成されたものである。なお、ガラスフリットは、主に粉末状のガラス粒子と、有機溶剤と、バインダとなるエチルセルロースとで構成される、ペースト状の部材である。焼成によりガラス粒子が溶融することでガラス部材46が形成される。ガラス部材46の材料としては、ベース基板2と同じ材料(本実施形態ではソーダ石灰ガラス)を採用するのが望ましい。
【0035】
ここで、ベース基板2の線膨張係数をαとし、ガラス部材46の線膨張係数をβとしたとき、
β≦α±3ppm・・・(1)
を満たすように設定されていることが望ましい。
図6は、横軸をベース基板2の線膨張係数αとガラス部材46の線膨張係数βとの線膨張係数差(ppm)とし、縦軸を線膨張係数差により発生する応力(Mpa)としたときの実験データである。
【0036】
実験データに示すように、ベース基板2の線膨張係数αとガラス部材46の線膨張係数βとの線膨張係数差が±3ppm以下のとき、すなわち(1)式を満足するとき、ベース基板2とガラス部材46との間に発生する応力は50MPa以下となる。一般に、ガラス破壊強度は50MPaよりも大きい値であるため、(1)式を満足する限り、ベース基板2とガラス部材46との間に発生する応力は、ガラス破壊強度以下となる。したがって、線膨張係数差により発生する応力により、ベース基板2およびガラス部材46が破壊されることはない。
【0037】
また、貫通電極13に充填されたガラス部材46の表面に凹部30,31(上面U側の凹部30および下面L側の凹部31)を形成している。中心軸Oを含む凹部30,31の縁部30a,31aの断面形状は、略弧状に形成されている。具体的には、上面U側の凹部30の縁部30aは、貫通孔33の上面U側の内周縁33bに接するように形成されている。また、下面L側の凹部31の縁部31aは、貫通孔33の下面L側の内周縁33cに接するように形成されている。
【0038】
ベース基板2の下面Lには、一対の貫通電極13,14に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極21,22が形成されている。外部電極21,22は、貫通電極13,14の中心軸O方向における多層積層膜43の端面を覆うように形成される。つまり、一方の外部電極21は、一方の貫通電極13および一方の引き回し電極9を介して、圧電振動片4の第1の励振電極5に電気的に接続されている。また、他方の外部電極22は、他方の貫通電極14および他方の引き回し電極10を介して、圧電振動片4の第2の励振電極6に電気的に接続されている。
【0039】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極21,22に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極5および第2の励振電極6からなる励振電極に電流を流すことができ、所定の周波数で振動させることができる。そして、振動を利用して、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源などとして利用することができる。
【0040】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法を、フローチャートを参照しながら説明する。
図7は、圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
図8は、リッド基板用ウエハに複数のキャビティ16を形成した状態を示す図である。
図9は、ベース基板用ウエハの上面に接合膜及び引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
図10は、図9の部分拡大図である。
図11は、ウエハ体70の分解斜視図である。
ここで、図9から図11に示す点線は、後に行う切断工程で切断する切断線Mを図示している。
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程S10と、リッド基板用ウエハ作製工程S20と、ベース基板用ウエハ作製工程S30と、組立工程(S50以降)を有している。そのうち、圧電振動片作製工程S10、リッド基板用ウエハ作製工程S20およびベース基板用ウエハ作製工程S30は、並行して実施することが可能である。
【0041】
(圧電振動片作製工程S10)
圧電振動片作製工程S10では、図2から図4に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行って、一定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄などの適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製する。
【0042】
(リッド基板用ウエハ作製工程S20)
リッド基板用ウエハ作製工程S20では、図8に示すように、後にリッド基板となるリッド基板用ウエハ50を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のリッド基板用ウエハ50を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S21)。次いで、キャビティ形成工程S22では、リッド基板用ウエハ50におけるベース基板用ウエハ40との接合面に、キャビティ16を複数形成する。キャビティ16の形成は、加熱プレス成型やエッチング加工等によって行う。
【0043】
(ベース基板用ウエハ作製工程S30)
ベース基板用ウエハ作製工程S30では、図9に示すように、後にベース基板となるベース基板用ウエハ40を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のベース基板用ウエハ40を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S31)。
【0044】
(貫通電極形成工程S30A)
次いで、ベース基板用ウエハ40に、一対の貫通電極13,14を形成する貫通電極形成工程S30Aを行う。以下に、この貫通電極形成工程S30Aについて、詳細に説明する。以下には貫通電極13の形成工程を例にして説明するが、貫通電極14の形成工程についても同様である。
【0045】
図12は貫通電極形成工程S30Aの説明図であり、図12(a)はガラス部材充填工程S34の説明図であり、図12(b)は焼成工程S35の説明図である。
貫通電極形成工程S30Aは、ベース基板用ウエハ40に貫通孔33を形成する貫通孔形成工程S32と、貫通孔33の内周面33aに多層積層膜43を形成する多層積層膜形成工程S33と、貫通孔33内にガラス部材46を充填するガラス部材充填工程S34と、ガラス部材46を焼成して硬化させる焼成工程S35を有している。さらに、ベース基板用ウエハを研磨して多層積層膜43を露出させる研磨工程S36を有している。
【0046】
(貫通孔形成工程S32)
貫通孔形成工程S32では、ベース基板用ウエハ40に、後の貫通電極13を構成する貫通孔33を形成する。本実施形態では、図12に示すように、ベース基板用ウエハ40の上面Uから下面Lにかけて、開口部の外形が小さくなるようにプレス加工で貫通孔33を成型する。具体的な貫通孔形成工程S32としては、プレス型を加熱しながらベース基板用ウエハ40の上面Uに押圧する。これにより、ベース基板用ウエハ40に、断面略テーパ状の貫通孔33が形成される。なお、上述のホットプレスの他、サンドブラストやエッチング等により貫通孔33を形成してもよい。
【0047】
(多層積層膜形成工程S33)
多層積層膜形成工程S33では、ベース基板用ウエハ40に形成された貫通孔33の内周面33aに、第1密着層43a、導電層43b、第2密着層43cの順に各膜を成膜し、3層の多層積層膜43を形成している。まず、ベース基板用ウエハ40の上面Uから、例えばスパッタリングにより、貫通孔33に向かってクロム(Cr)等の材料を塗布し、第1密着層43aを形成する。続いて、ベース基板用ウエハ40の上面Uから同様に、金(Au)等の材料を塗布し、導電層43bを形成する。最後に、ベース基板用ウエハ40の上面Uから同様に、銅(Cu)等の材料を塗布し、第2密着層43cを形成する。
【0048】
(ガラス部材充填工程S34)
続いて、貫通孔33内にガラス部材46を充填するガラス部材充填工程S34を行う。具体的には、図12(a)に示すように、ガラス基板用ウエハ40の上面Uでスキージ80を走査し、ガラス部材46の粒子と、有機溶剤と、バインダとで構成されたガラスフリット46aを貫通孔33内に充填している。なお、ガラス基板用ウエハ40の下面Lには、不図示のフィルムが貼り付けられており、ガラスフリット46aがガラス基板用ウエハ40の下面Lから漏洩するのを防止している。ガラスフリット46aを充填した直後は、図12(a)に示すように、ガラス基板用ウエハ40の上面Uと、充填されたガラスフリット46aとは、略面一の状態となる。
【0049】
(焼成工程S35)
次に、貫通孔33内に充填したガラスフリット46aを焼成して硬化させる焼成工程S35を行う。例えば、貫通孔33内にガラスフリット46aが充填された状態で、ベース基板用ウエハ40を焼成炉に搬送する。そして、焼成炉内を600℃程度の温度雰囲気下とし、貫通孔33内のガラスフリット46aを焼成する。
【0050】
このとき、貫通孔33内に充填されたガラスフリット46aは外側から内側に向かって温度が上昇し、外側から内部に向かって焼成が進行していく。そして、図12(b)に示すとおり、焼成によりガラスフリット46aに含有される有機溶剤が蒸発してガラスフリット46aの体積が減少すると、ガラスフリット46aの縁部が貫通孔33の内周縁33b,33cになじみつつ、貫通孔33の表面に凹部30,31が形成される。焼成工程S35により、ガラスフリット46aが焼成されてガラス部材46となって、ベース基板用ウエハ40と一体化して貫通孔33を封止している。なお、本工程でガラスフリット46aの縁部が、貫通孔33の内周縁33b,33cになじまない場合には、ガラスフリット46aの密着性が悪いと判断し、その後の組立工程で用いないようにしている。
【0051】
(研磨工程S36)
続いて、ベース基板用ウエハ40の上面Uと下面Lとを研磨する研磨工程S36を行う。上面Uおよび下面Lを研磨することにより、多層積層膜43が上面Uおよび下面Lに確実に露出する。露出した多層積層膜43が、貫通電極13,14の導通路を形成する。研磨工程S36を行った時点で、貫通電極形成工程S30Aが終了する。
【0052】
(接合膜形成工程S37、引き回し電極形成工程S38)
次に、ベース基板用ウエハ40の上面Uに導電性材料をパターニングして、接合膜23(図10参照)を形成する接合膜形成工程S37を行う。また、貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極9,10(図10参照)を複数形成する引き回し電極形成工程S38を行う。そして、引き回し電極9,10上に、それぞれ金等からなるバンプ11,12(図4参照)を形成する。なお、図9から図11では、図面の見易さのためバンプの図示を省略している。
【0053】
(外部電極形成工程S40)
次に、ベース基板用ウエハ40の下面Lに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極21,22(図1参照)を形成する外部電極形成工程S40を行う。この工程により、圧電振動片4は、貫通電極13,14の多層積層膜43を介して、外部電極21,22と導通する。
外部電極21,22を形成した時点でベース基板用ウエハ作製工程S30が終了する。
【0054】
(マウント工程S50以降の圧電振動子組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極9,10上に、バンプ11,12を介して圧電振動片4を接合するマウント工程S50を行う。具体的には、圧電振動片4をフリップチップボンダの接合ヘッド(不図示)でピックし、バンプ11,12を所定温度に加熱しながら接合ヘッドを振動させ、圧電振動片4をバンプ11,12に押し付ける。これにより、圧電振動片4の水晶板17がベース基板用ウエハ40の上面Uから浮いた状態で、マウント電極7,8がバンプ11,12にフリップチップボンディングされる。
【0055】
圧電振動片4の実装が終了した後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程S60を行う。具体的には、図示しない基準マークなどを指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、ベース基板用ウエハ40に実装された圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ50のキャビティ16とベース基板用ウエハ40とに収容された状態となる。
【0056】
重ね合わせ工程S60の後、重ね合わせた両ウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程S70を行う。具体的には、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。
【0057】
次に、接合されたウエハ体70を切断線M(図11参照)に沿って切断して小片化する切断工程S80を行う。その結果、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティ16内に圧電振動片4が封止された、図1に示す2層構造式表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
【0058】
その後、内部の電気特性検査S90を行う。即ち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)などを測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性などを併せてチェックする。そして、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質などをチェックする。全てのチェックが完了した時点で、圧電振動子1の製造が終了する。
【0059】
(実施形態の変形例、座繰り孔を形成する貫通電極形成工程)
以下に実施形態の変形例について述べる。
上述の実施形態の貫通電極形成工程S30Aでは、貫通孔形成工程S32で貫通孔33を形成し、貫通孔33の内周面33aに多層積層膜43を成膜していた。しかし、本変形例では、ベース基板用ウエハ40に有底の孔(以下「座繰り孔」という。)を形成し、座繰り孔の内周面に多層積層膜を成膜する点で異なっている。なお、実施形態と同様の部分については、詳細な説明を省略している。
【0060】
変形例の貫通電極は、以下の手順で形成される。
まず、ベース基板用ウエハ40に、後の貫通電極13となる有底の座繰り孔を形成する。座繰り孔は、実施形態と同様に、ホットプレスやサンドブラスト、エッチング等により形成される。次に、ベース基板用ウエハ40に形成された座繰り孔の内周面に、第1密着層43a、導電層43b、第2密着層43cの順に各積層膜を成膜する。このとき、座繰り孔の底部にも多層積層膜43が成膜される。続いて、実施形態と同様に、座繰り孔内にガラスフリットを充填し、焼成等を行って固着させる。最後に、ベース基板用ウエハ40の上面および下面を研磨し、座繰り孔の底部を除去すると共に、ベース基板用ウエハ40の上面および下面に多層積層膜43を露出させる。以上により、ベース基板用ウエハ40の上面および下面を導通する貫通電極が形成される。
【0061】
なお、座繰り孔の底部は、前述の研磨以外に、ベース基板用ウエハ40の下面における座繰り孔の底部に対応した位置をエッチングやサンドブラスト等により除去することができる。この場合、ベース基板用ウエハ40の下面から再度多層積層膜の成膜を行い、ベース基板用ウエハ40の上面および下面を多層積層膜により導通できるようにしている。
【0062】
(効果)
本実施形態および実施形態の変形例によれば、貫通孔33,34を塞ぐようにガラス部材46を充填しているので、貫通電極13,14の線膨張係数をベース基板2の線膨張係数に近い値に設定することができる。これにより、温度変化によって貫通電極13,14からベース基板2に対して応力が発生するのを抑制し、ベース基板2の損傷を防止できるので、圧電振動子1内の気密を良好に維持できる。
また、貫通孔33,34の表面に多層積層膜43を形成しており、多層積層膜43は導電層43b、第1密着層43a、および第2密着層43cを有しているので、多層積層膜43を介して、ガラス部材46と貫通孔33,34の内周面33a,34aとを密着させつつ、貫通電極13,14の良好な導通を確保できる。これにより、圧電振動子1内の気密を良好に維持することができる。
また、貫通孔33,34にガラス部材46を充填しているので、貫通孔33,34に金属を充填している場合と比較して、耐環境性に優れた低コストなパッケージを提供することができる。
【0063】
また、本実施形態および実施形態の変形例によれば、導電層43bは導電率の高い材料(例えばCu等)を主成分として形成されるので、貫通電極13,14の良好な導通を確保できる。また、第1密着層43aはガラスとの密着性に優れた材料(例えばCr等)を主成分として形成されるので、ベース基板2から多層積層膜43が剥離するのを防止し、圧電振動子1内の気密を良好に維持することができる。さらに、第2密着層43cはガラスとの密着性に優れ、かつ酸化被膜を形成しやすい元素(例えばCu等)を主成分として形成されるので、貫通孔33,34に充填されるガラス部材46に酸化被膜を介して良好に密着することができ、圧電振動子1内の気密を良好に維持することができる。
【0064】
また、本実施形態および実施形態の変形例によれば、ベース基板2の線膨張係数αと、貫通電極13,14を形成するガラス部材46の線膨張係数βは(1)式の関係を有するので、貫通電極13,14の線膨張係数をベース基板2の線膨張係数と略同一とすることができる。これにより、温度変化によって貫通電極13,14からベース基板2に対して応力が発生するのを抑制し、ベース基板2の損傷を防止できるので、圧電振動子1内の気密を良好に維持できる。
【0065】
また、本実施形態によれば、断面略弧状の凹部30,31が貫通孔33の内周縁33b,33cに接することで、多層積層膜43の表面に貫通電極13を形成するガラス部材46がなじみ、ガラス部材46と多層積層膜43とを確実に密着させることができる。これにより、ガラス部材46の剥離を防止し、圧電振動子1内の気密を良好に維持することができる。また、凹部30,31のうち、貫通孔33,34の内周縁33b,33cと接する縁部30a,31aは薄く形成されるので、簡単に貫通電極13を露出させることができる。したがって、電子部品と貫通電極とを容易に接続することができる。
【0066】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
本実施形態では、パッケージの内部にATカット型の圧電振動片4を封入した圧電振動子1を例にして説明をした。しかし、これに限られることはなく、パッケージの内部に例えば音叉型の圧電振動片を封入してもよい。また、圧電振動片以外の素子を封入してもよい。
【0067】
本実施形態では、貫通孔33内にガラスフリット46aを充填した後、焼成して固着させている。しかし、例えば、貫通孔33内にガラスフリット46aを充填した後、プレス型でベース基板用ウエハ40およびガラスフリット46a加圧しつつ加熱して、ガラスフリット46aを固着させてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1・・・圧電振動子(パッケージ) 2・・・ベース基板(第1基板) 4・・・圧電振動片(電子部品) 13,14・・・貫通電極 16・・・キャビティ 30,31・・・凹部 30a,31a・・・縁部 33,34・・・貫通孔 33b,33c,34b,34c・・・内周縁 43・・・多層積層膜 43a・・・第1密着層 43b・・・導電層 43c・・・第2密着層 46・・・ガラス部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を封入するためのキャビティを形成可能な複数の基板を有し、
これら複数の基板のうち、ガラス材料からなる第1基板に、厚さ方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔を塞ぐように貫通電極を設けたパッケージにおいて、
前記貫通電極は、前記貫通孔の内周面に形成された多層金属膜と、前記貫通孔を塞ぐように充填されたガラス部材とを備え、
前記多層金属膜は、
前記第1基板の内外を導通させる導電層と、
前記導電層の前記貫通孔の内周面側に形成され、前記第1基板に密着可能な第1密着層と、
前記導電層の前記ガラス部材側に形成され、前記ガラス部材に密着可能な第2密着層とを有することを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
前記第2の密着層は、標準電極電位が−1.7V以上0.8V未満の金属もしくは半金属からなることを特徴とする請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記第1の密着層は、標準電極電位が−1.7V以上0V未満の金属もしくは半金属からなることを特徴とする請求項1または2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記導電層は、抵抗率が1×10−8Ω・m以上5×10−7Ω・m以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のパッケージであって、
前記第1基板の線膨張係数をαとし、
前記ガラス部材の線膨張係数をβとしたとき、
前記第1基板の線膨張係数α、および前記ガラス部材の線膨張係数βは、
β≦α±3ppm
を満たすように設定されていることを特徴とするパッケージ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のパッケージであって、
前記ガラス部材の縁部と前記貫通孔の内周縁とが断面略弧状に接するように、前記ガラス部材の表面に凹部を形成したことを特徴とするパッケージ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のパッケージを用いた圧電振動子であって、
前記パッケージにおける前記キャビティの内部に、前記電子部品として圧電振動片が封入されていることを特徴とする圧電振動子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−74640(P2012−74640A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220139(P2010−220139)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】