パッケージおよび圧電振動子
【課題】貫通電極の気密性を良好に維持することができるパッケージおよび圧電振動子を提供する。
【解決手段】電子部品を封入するためのキャビティを形成可能な複数の基板を有し、これら複数の基板のうち、ガラス材料からなるベース基板2(第1基板)に、厚さ方向に貫通する貫通孔33,34を形成し、この貫通孔33,34を塞ぐように貫通電極13,14を設けたパッケージにおいて、貫通電極13,14は、粉末ガラス45(粉末体)と、この粉末ガラス45と貫通孔33,34との間隙を充填する充填金属46とからなり、粉末ガラス45の線膨張係数は、充填金属46の線膨張係数よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【解決手段】電子部品を封入するためのキャビティを形成可能な複数の基板を有し、これら複数の基板のうち、ガラス材料からなるベース基板2(第1基板)に、厚さ方向に貫通する貫通孔33,34を形成し、この貫通孔33,34を塞ぐように貫通電極13,14を設けたパッケージにおいて、貫通電極13,14は、粉末ガラス45(粉末体)と、この粉末ガラス45と貫通孔33,34との間隙を充填する充填金属46とからなり、粉末ガラス45の線膨張係数は、充填金属46の線膨張係数よりも小さく設定されていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パッケージおよび圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話や携帯情報端末には、時刻源や制御信号などのタイミング源、リファレンス信号源などとして水晶などを利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その一つとして、2層構造タイプの表面実装型のパッケージが知られている。
【0003】
このタイプの圧電振動子は、ベース基板およびリッド基板が直接接合されることでパッケージ化された2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に電子部品が収納されている。このような2層構造タイプのパッケージの1つとして、ベース基板に形成された貫通電極により、キャビティの内側に封入された電子部品と、ベース基板の外側に形成された外部電極とを導通させたものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1の圧電振動子は、ガラスもしくはセラミックスからなる基板(ベース基板)に貫通穴を設け、貫通穴の内面および貫通穴の周囲上下面もしくはそのいずれかの部分に配線用金属を形成し、その貫通穴に合金を溶着して気密端子とすることにより貫通電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−283951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板の材料となるガラスの線膨張係数は、貫通電極を形成する金属の線膨張係数と異なっており、一般にガラスの線膨張係数よりも金属の線膨張係数のほうが大きい。このため、例えばパッケージ実装時に温度が変化すると、ガラスと金属との線膨張係数の差により、貫通電極から基板に対して応力が発生する。特に、近年の電子機器の薄型化に伴い、基板の薄型化が要求されているため、貫通電極から基板に対して応力が発生すると、基板が歪んだり損傷したりして、貫通電極の気密性が損なわれるおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、貫通電極の気密性を良好に維持することができるパッケージおよび圧電振動子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のパッケージは、電子部品を封入するためのキャビティを形成可能な複数の基板を有し、これら複数の基板のうち、ガラス材料からなる第1基板に、厚さ方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔を塞ぐように貫通電極を設けたパッケージにおいて、前記貫通電極は、粉末体と、この粉末体と前記貫通孔との間隙を充填する充填金属とからなり、前記粉末体の線膨張係数は、前記充填金属の線膨張係数よりも小さく設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、粉末体と充填金属とで貫通孔を塞ぐように貫通電極を設けているので、パッケージの内外の導通を確保しつつ、貫通電極の気密性を確保できる。また、粉末体の線膨張係数は、充填金属の線膨張係数よりも小さく設定されているので、温度変化により充填金属が膨張および収縮しても、粉末体で吸収することができる。これにより、温度変化によって貫通電極から第1基板に対して応力が発生するのを抑制できるので、第1基板が歪んだり損傷したりするのを防止できる。したがって、貫通電極の気密性を良好に維持することができる。
【0009】
また、前記粉末体は、前記ガラス材料からなる粉末ガラスであることが望ましい。
本発明によれば、貫通孔に充填される粉末体は第1基板と略同一の線膨張係数を有する粉末ガラスであるので、温度変化によって貫通電極から第1基板に対して応力が発生するのを確実に抑制できる。したがって、貫通電極の気密性をさらに良好に維持することができる。
【0010】
また、前記充填金属の融点をXとしたとき、前記融点Xは、180℃≦X<450℃ に設定されていることが望ましい。
一般に、ガラス材料の軟化点は、450℃以上である。本発明によれば、充填金属の融点は、ガラス材料からなる第1基板の軟化点よりも低く設定されているので、第1基板を軟化させることなく充填金属のみを溶融することができる。これにより、第1基板にダメージを与えることなく充填金属を溶融し、粉末体と貫通孔との間隙を充填金属で封止することができる。したがって、信頼性が高く気密性に優れたパッケージを提供することができる。
【0011】
また、前記貫通孔の表面に多層積層膜を形成し、前記多層積層膜は、少なくとも前記貫通孔の内周面に密着可能な第1密着層と、前記充填金属と密着可能な第2密着層とを有することが望ましい。
本発明によれば、多層積層膜は貫通孔の表面に密着する第1密着層と、充填金属と密着する第2密着層とを有しているので、多層積層膜を介して貫通孔の内周面と充填金属とをより強固に密着させることができる。これにより、信頼性が高く気密性に優れたパッケージを提供することができる。
【0012】
また、前記第2密着層は、前記充填金属の主成分の元素と同一の元素を主成分として形成されていることが望ましい。
本発明によれば、第2密着層および充填金属の主成分の元素はともに同一なので、充填金属を溶融した際、第2密着層と容易に合金化できる。これにより、充填金属と第2密着層とを強固に密着させることができるので、より気密性に優れたパッケージを提供することができる。
【0013】
本発明のパッケージを用いた圧電振動子は、前記パッケージにおける前記キャビティの内部に、前記電子部品として圧電振動片が封入されていることを特徴とする。
本発明によれば、貫通電極の気密性を良好に維持することができるので、信頼性が高く気密性に優れた圧電振動子を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粉末体と充填金属とで貫通孔を塞ぐように貫通電極を設けているので、パッケージの内外の導通を確保しつつ、貫通電極の気密性を確保できる。また、粉末体の線膨張係数は、充填金属の線膨張係数よりも小さく設定されているので、温度変化により充填金属が膨張および収縮しても、粉末体で吸収することができる。これにより、温度変化によって貫通電極から第1基板に対して応力が発生するのを抑制できるので、第1基板が歪んだり損傷したりするのを防止できる。したがって、貫通電極の気密性を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1のA−A線に沿う断面図であり、貫通電極の拡大図である。
【図6】圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図7】リッド基板用ウエハに複数のキャビティを形成した状態を示す図である。
【図8】ベース基板用ウエハの上面に接合膜及び引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
【図9】図8の部分拡大図である。
【図10】ウエハ体の分解斜視図である。
【図11】貫通電極形成工程の説明図であり、図11(a)は充填工程の説明図であり、図11(b)は溶融工程の説明図である。
【図12】研磨工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る圧電振動子および圧電振動片を、図面を参照して説明する。
図1から図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2(請求項の「第1基板」に相当)およびリッド基板3が接合膜23を介して陽極接合され、キャビティ16に収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。なお、以下の説明では、ベース基板2におけるリッド基板3との接合面を上面Uとし、その反対面を下面Lとして説明する。
【0017】
(圧電振動片)
圧電振動片4は、水晶の圧電材料から形成されたATカット型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平面視略矩形で厚さが均一の板状に加工された水晶板17と、水晶板17の両面に対向する位置で配置された一対の励振電極5,6と、励振電極5,6に電気的に接続された引き出し電極19,20と、引き出し電極19,20に電気的に接続されたマウント電極7,8と、を有している。
【0018】
励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15は、例えば、金(Au)の被膜で形成されている。なお、これらの膜は、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)などの導電性膜の被膜あるいはこれら導電性膜のいくつかを組み合わせた積層膜により形成されていてもよい。
【0019】
このように構成された圧電振動片4は、金等からなるバンプ11,12を利用して、ベース基板2の上面Uにフリップチップボンディングにより接合されている。具体的には、ベース基板2の上面Uにパターニングされた後述する引き回し電極9,10上にバンプ11,12が形成され、そのバンプ11,12上に、一対のマウント電極7,8がそれぞれ接触した状態でフリップチップボンディングにより接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面Uからバンプ11,12の厚さ分、浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極7,8と引き回し電極9,10とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0020】
(圧電振動子)
図1から図4に示すように、リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、圧電振動片4を収容するキャビティ16が形成されている。そして、リッド基板3はこのキャビティ16をベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して陽極接合されている。
【0021】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる基板であり、リッド基板3と同等の外形で略板状に形成されている。
ベース基板2の上面Uには、Alやシリコン(Si)等の導電性材料により、陽極接合用の接合膜23がパターニングされている。接合膜23は、リッド基板3に形成されたキャビティ16の周囲を囲むように、ベース基板2の周縁に沿って形成されている。
【0022】
また、ベース基板2の上面Uには、一対の引き回し電極9,10がパターニングされている。一対の引き回し電極9,10は、後述する貫通電極13,14のうち、一方の貫通電極13と圧電振動片4の一方のマウント電極7とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極14と圧電振動片4の他方のマウント電極8とを電気的に接続するようにパターニングされている。具体的には、一方の引き回し電極9は、圧電振動片4のマウント電極7,8側に位置するように一方の貫通電極13の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極10は、一方の引き回し電極9に隣接した位置から圧電振動片4に沿って、ベース基板2上の貫通電極13と対向する側に引き回しされた後、他方の貫通電極14の真上に位置するように形成されている。
【0023】
そして、これら一対の引き回し電極9,10上にそれぞれバンプ11,12が形成されており、バンプ11,12を利用して圧電振動片4のマウント電極7,8がフリップチップボンディングにより実装される。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極7が、一方の引き回し電極9を介して一方の貫通電極13に導通し、他方のマウント電極8が、他方の引き回し電極10を介して他方の貫通電極14に導通するようになっている。
【0024】
(貫通電極)
ベース基板2には、一対の貫通電極13,14が形成されている。貫通電極13,14は、圧電振動子1を形成したときにキャビティ16内に収まるように形成される。より詳しく説明すると、一方の貫通電極13は、マウントされた圧電振動片4のマウント電極7,8側(図2の左側)に位置するように形成されている。また、他方の貫通電極14は、圧電振動片4のマウント電極7,8側と反対側(図2の右側)に位置するように形成されている。なお、以下には貫通電極13を例にして説明するが、貫通電極14についても同様である。
【0025】
図5は、図1のA−A線に沿う断面図であり、貫通電極13(14)の拡大図である。
図5に示すように、貫通電極13は、ベース基板2を貫通する貫通孔33と、貫通孔33内に充填される粉末ガラス45(粉末体)と、粉末ガラス45と貫通孔33の間隙を充填する充填金属46と、により形成されている。さらに、貫通孔33の内周面33aには多層積層膜43が形成されている。なお、図5では、わかりやすくするために、粉末ガラス45および多層積層膜43を誇張して図示している。
【0026】
貫通孔33は、略円錐台形状となるように形成されており、ベース基板2の上面U側からベース基板2の下面L側にかけて、内形が次第に小さくなるように形成されている。なお、貫通孔33の内周面33aのテーパ角度は、内周面33aに多層積層膜43を成膜できるような角度に設定される。具体的には、貫通孔33の内周面33aとベース基板2の下面Lとの間の角度が、例えば85度程度に設定される。
【0027】
貫通孔33の内周面33aには、多層積層膜43が成膜されている。多層積層膜43は、貫通孔33の内周面33aに密着可能な第1密着層43aと、充填金属46に密着可能な第2密着層43bとを有している。
多層積層膜43は、膜厚が最大で200μm程度である。各層の膜厚に関し、第1密着層43aが例えば100nm以上100μm以下、第2密着層43bが例えば100nm以上100μm以下に形成される。
【0028】
第1密着層43aは、スパッタリングやCVD等の成膜方法により形成される。第1密着層43aを形成する材料としては、ベース基板2の材料であるガラス材料に対して良好な密着性を有する材料が選択される。具体的には、チタン(Ti)やクロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)等の材料が選択される。
【0029】
第2密着層43bは、第1密着層43aを成膜した後に、第1密着層43aに重ねてスパッタリングやCVD等の成膜方法により形成される。第2密着層43bを形成する材料としては、第1密着層43aおよび充填金属46に対して良好な密着性を有するとともに、電極として導電性に優れた材料が選択される。具体的には、金(Au)や銀(Ag)、銅(Cu)等の材料が選択される。なお、第2密着層43bは、後述する充填金属46の主成分の元素と同一の元素を主成分として形成されることが望ましい。
【0030】
貫通孔33内には、粉末ガラス45および充填金属46が充填されている。
粉末ガラス45は、直径が例えば1nmから500μm程度のガラス材料からなる粒子である。粉末ガラス45の材料としては、ベース基板2と同じ材料(本実施形態ではソーダ石灰ガラス)を採用するのが望ましい。
【0031】
充填金属46は、貫通孔33の内周面33aに成膜された多層積層膜43の第2密着層43bと、粉末ガラス45との間に充填され、粉末ガラス45と貫通孔33との間隙を封止している。
ところで、充填金属46を粉末ガラス45と貫通孔33との間隙に充填するには、粉末ガラス45およびベース基板2を溶融させずに、充填金属46のみを溶融させなければならない。ここで、粉末ガラス45およびベース基板2の軟化点は、例えば450℃程度である。したがって、充填金属46として選択される金属材料の融点Xとすると、融点Xは、
180℃≦X<450℃・・・(1)
に設定される。
【0032】
充填金属46を形成する材料としては、(1)式を満たすと共に、粉末ガラス45および第2密着層43bに対し良好な密着性を有し、さらに電極としての導電性に優れた金属材料が選択される。具体的には、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、錫(Sn)やインジウム(In)、鉛(Pb)等の金属材料が選択される。なお、第2密着層43bの主成分の元素と同一の元素(例えばAu,Ag,Cu等)を主成分として形成されることが望ましい。
【0033】
なお、貫通孔33,34に充填される粉末ガラス45、充填金属46および貫通孔33,34に成膜された多層積層膜43のうち、粉末ガラス45の体積充填率は、25%以上100%未満であることが望ましい。さらに、各工程で安定して加工するために、粉末ガラス45の体積充填率を25%以上90%以下とするのが望ましい。
【0034】
また、充填金属46の主成分を、融点の低い錫(Sn)やインジウム(In)、鉛(Pb)等の卑金属とした場合、後述する溶融工程S35における溶融温度を低く設定できる。しかしながら、これら卑金属の線膨張係数は大きくなるため、粉末ガラス45の体積充填率を、例えば60%以上とすることが好ましい。
これに対して、充填金属46の主成分を、融点の高い金(Au)や銀(Ag)、銅(Cu)等の貴金属とした場合、後述する溶融工程S35における溶融温度を高く設定しなければならない。しかしながら、これら貴金属の線膨張係数は小さくなるため、粉末ガラス45の体積充填率の下限を、例えば25%以上とすることができる。
【0035】
ベース基板2の下面Lには、一対の貫通電極13,14に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極21,22が形成されている。つまり、一方の外部電極21は、一方の貫通電極13および一方の引き回し電極9を介して、圧電振動片4の第1の励振電極5に電気的に接続されている。また、他方の外部電極22は、他方の貫通電極14および他方の引き回し電極10を介して、圧電振動片4の第2の励振電極6に電気的に接続されている。
【0036】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極21,22に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極5および第2の励振電極6からなる励振電極に電流を流すことができ、所定の周波数で振動させることができる。そして、振動を利用して、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源などとして利用することができる。
【0037】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法を、フローチャートを参照しながら説明する。
図6は、圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
図7は、リッド基板用ウエハに複数のキャビティ16を形成した状態を示す図である。
図8は、ベース基板用ウエハの上面に接合膜及び引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
図9は、図8の部分拡大図である。
図10は、ウエハ体の分解斜視図である。
ここで、図8から図10に示す点線は、後に行う切断工程で切断する切断線Mを図示している。
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程S10と、リッド基板用ウエハ作製工程S20と、ベース基板用ウエハ作製工程S30と、組立工程(S50以降)を有している。そのうち、圧電振動片作製工程S10、リッド基板用ウエハ作製工程S20およびベース基板用ウエハ作製工程S30は、並行して実施することが可能である。
【0038】
(圧電振動片作製工程S10)
圧電振動片作製工程S10では、図2から図4に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行って、一定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄などの適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製する。
【0039】
(リッド基板用ウエハ作製工程S20)
リッド基板用ウエハ作製工程S20では、図7に示すように、後にリッド基板となるリッド基板用ウエハ50を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のリッド基板用ウエハ50を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S21)。次いで、キャビティ形成工程S22では、リッド基板用ウエハ50におけるベース基板用ウエハ40との接合面に、キャビティ16を複数形成する。キャビティ16の形成は、加熱プレス成型やエッチング加工等によって行う。
【0040】
(ベース基板用ウエハ作製工程S30)
ベース基板用ウエハ作製工程S30では、図8に示すように、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のベース基板用ウエハ40を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S31)。
【0041】
(貫通電極形成工程S30A)
次いで、ベース基板用ウエハ40に、一対の貫通電極13,14を形成する貫通電極形成工程S30Aを行う。以下に、この貫通電極形成工程S30Aについて、詳細に説明する。以下には貫通電極13の形成工程を例にして説明するが、貫通電極14の形成工程についても同様である。
【0042】
図11は貫通電極形成工程S30Aの説明図であり、図11(a)は充填工程S34の説明図であり、図11(b)は溶融工程S35の説明図である。
貫通電極形成工程S30Aは、ベース基板用ウエハ40に凹部33b(後の貫通孔33、図5参照)を形成する貫通孔形成工程S32と、凹部33bの内周面33aに多層積層膜43を形成する多層積層膜形成工程S33と、凹部33b内に粉末ガラス45および充填金属46を充填する充填工程S34とを有している。また、充填金属46を溶融する溶融工程S35と、充填金属46を硬化させる硬化工程S36とを有している。さらに、ベース基板用ウエハを研磨して凹部33bの底部33cを除去するとともに、充填金属46および多層積層膜43を露出させる研磨工程S37を有している。
【0043】
(貫通孔形成工程S32)
貫通孔形成工程S32では、ベース基板用ウエハ40に、後の貫通孔33となる凹部33bを形成する。本実施形態では、図11に示すように、ベース基板用ウエハ40の上面Uから下面Lにかけて、開口部の外形が小さくなるようにプレス加工で凹部33bを成型する。具体的な貫通孔形成工程S32としては、プレス型を加熱しながらベース基板用ウエハ40の上面Uに押圧する。これにより、ベース基板用ウエハ40に、すり鉢状の凹部33bが形成される。なお、サンドブラストやエッチング等により凹部33bを形成してもよい。
【0044】
(多層積層膜形成工程S33)
多層積層膜形成工程S33では、ベース基板用ウエハ40に形成された凹部33bの内周面33aに、第1密着層43aと第2密着層43bとからなる多層積層膜を43形成する。まず、ベース基板用ウエハ40の上面Uから、例えばスパッタリングにより、凹部33bに向かってクロム(Cr)等の材料を塗布し、第1密着層43aを形成する。続いて、ベース基板用ウエハ40の上面Uから同様に、金(Au)等の材料を塗布し、第2密着層43bを形成する。
【0045】
(充填工程S34)
続いて、凹部33b内に粉末ガラス45および充填金属46を充填する充填工程S34を行う。本実施形態では、粉末ガラス45の表面に充填金属46がメッキされたメッキガラス粒子48を用いる。なお、メッキガラス粒子48は市販品を用いてもよい。凹部33b内に、粉末状のメッキガラス粒子48を充填することにより、凹部33b内に粉末ガラス45および充填金属46を充填している。
【0046】
(溶融工程S35)
溶融工程S35では、凹部33b内に充填されたメッキガラス粒子48のうち、粉末ガラス45の表面にメッキされた充填金属46のみを溶融して、凹部33bを封止する。
具体的には、まず、不図示の治具にベース基板用ウエハ40をセットした後、メッキガラス粒子48が充填されたベース基板用ウエハ40を加熱炉(不図示)に配置する。
【0047】
続いて、所定温度になるように加熱炉を加熱する。ここで、所定温度は、メッキガラス粒子48のうち、メッキ部分である充填金属46のみを溶融し、メッキガラス粒子48内の粉末ガラス45およびベース基板用ウエハ40を軟化させない温度である。前述のとおり、粉末ガラス45およびベース基板2の軟化点は例えば450℃以上であり、充填金属46の融点は、(1)式に設定される。したがって、加熱炉の所定温度は、充填金属46の材料の融点に合わせて、180℃以上450℃未満の間で設定される。
そして、加熱炉を所定温度に加熱すると、図11(b)に示すように、メッキガラス粒子48の充填金属46のみが溶融し、粉末ガラス45と、多層積層膜43との間の間隙に、充填金属46が充填される。
【0048】
(硬化工程S36)
硬化工程S36では、ベース基板用ウエハ40を加熱炉から取り出し、溶融した充填金属46を自然冷却する。硬化工程S36により、ベース基板用ウエハ40、充填金属46および粉末ガラスが一体的に固定し、凹部33bを封止する。
【0049】
(研磨工程S37)
図12は研磨工程S37の説明図である。
続いて、ベース基板用ウエハ40の少なくとも下面Lを研磨して、凹部33bの底部33c(図11参照)を除去する研磨工程S37を行う。下面Lを研磨することにより、充填金属46および多層積層膜43が下面Lに露出する。また、必要に応じて上面Uを研磨することにより、上面Uの研磨も行う。これにより、充填金属46および多層積層膜43を上面Uに確実に露出させることができる。そして、露出した充填金属46および多層積層膜43が、貫通電極13,14の導通路を形成する。研磨工程S37を行った時点で、貫通電極形成工程S30Aが終了する。
【0050】
(接合膜形成工程S38、引き回し電極形成工程S39)
次に、ベース基板用ウエハ40の上面Uに導電性材料をパターニングして、接合膜23(図9参照)を形成する接合膜形成工程S38を行う。また、貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極9,10(図9参照)を複数形成する引き回し電極形成工程S39を行う。そして、引き回し電極9,10上に、それぞれ金等からなるバンプ11,12(図4参照)を形成する。なお、図8から図10では、図面の見易さのためバンプの図示を省略している。
【0051】
(外部電極形成工程S40)
次に、ベース基板用ウエハ40の下面Lに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極21,22(図1参照)を形成する外部電極形成工程S40を行う。この工程により、圧電振動片4は、貫通電極13,14の充填金属46および多層積層膜43を介して、外部電極21,22と導通する。
外部電極21,22を形成した時点でベース基板用ウエハ作製工程S30が終了する。
【0052】
(マウント工程S50以降の圧電振動子組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極9,10上に、バンプ11,12を介して圧電振動片4を接合するマウント工程S50を行う。具体的には、圧電振動片4をフリップチップボンダの接合ヘッド(不図示)でピックし、バンプ11,12を所定温度に加熱しながら接合ヘッドを振動させ、圧電振動片4をバンプ11,12に押し付ける。これにより、圧電振動片4の水晶板17がベース基板用ウエハ40の上面Uから浮いた状態で、マウント電極7,8がバンプ11,12にフリップチップボンディングされる。
【0053】
圧電振動片4の実装が終了した後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程S60を行う。具体的には、図示しない基準マークなどを指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、ベース基板用ウエハ40に実装された圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ50のキャビティ16とベース基板用ウエハ40とに収容された状態となる。
【0054】
重ね合わせ工程S60の後、重ね合わせた両ウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程S70を行う。具体的には、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。
【0055】
次に、接合されたウエハ体70を切断線M(図10参照)に沿って切断して小片化する切断工程S80を行う。その結果、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティ16内に圧電振動片4が封止された、図1に示す2層構造式表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
【0056】
その後、内部の電気特性検査S90を行う。即ち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)などを測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性などを併せてチェックする。そして、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質などをチェックする。全てのチェックが完了した時点で、圧電振動子1の製造が終了する。
【0057】
(効果)
本実施形態によれば、粉末ガラス45と充填金属46とで貫通孔33,34を塞ぐように貫通電極13,14を設けているので、圧電振動子1の内外の導通を確保しつつ、貫通電極13,14の気密性を確保できる。また、粉末ガラス45の線膨張係数は、充填金属46の線膨張係数よりも小さく設定されているので、温度変化により充填金属46が膨張および収縮しても、粉末ガラス45で吸収することができる。これにより、温度変化によって貫通電極13,14からベース基板2に対して応力が発生するのを抑制できるので、ベース基板2が歪んだり損傷したりするのを防止できる。したがって、貫通電極13,14の気密性を良好に維持することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、貫通孔33,34に充填される粉末体は、ベース基板2と略同一の線膨張係数を有する粉末ガラス45であるので、温度変化によって貫通電極からベース基板に対して応力が発生するのを確実に抑制できる。したがって、貫通電極13,14の気密性をさらに良好に維持することができる。
【0059】
また、一般に、ガラス材料の軟化点は、450℃以上である。本実施形態によれば、充填金属46の融点は、ガラス材料からなるベース基板2の軟化点よりも低く設定されているので、ベース基板2を軟化させることなく充填金属46のみを溶融することができる。これにより、ベース基板2にダメージを与えることなく充填金属46を溶融し、粉末ガラス45と貫通孔33,34との間隙を充填金属46で封止することができる。したがって、信頼性が高く気密性に優れた圧電振動子1を提供することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、多層積層膜43は貫通孔33,34の表面に密着する第1密着層43aと、充填金属46と密着する第2密着層43bとを有しているので、多層積層膜43を介して貫通孔33,34の内周面と充填金属46とを、より強固に密着させることができる。これにより、信頼性が高く気密性に優れた圧電振動子1を提供することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、第2密着層43bおよび充填金属46の主成分の元素はともに同一なので、充填金属46を溶融した際、第2密着層43bと容易に合金化できる。これにより、充填金属46と第2密着層43bとを強固に密着させることができるので、より気密性に優れた圧電振動子1を提供することができる。
【0062】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
本実施形態では、パッケージの内部にATカット型の圧電振動片4を封入した圧電振動子1を例にして説明をした。しかし、これに限られることはなく、パッケージの内部に例えば音叉型の圧電振動片を封入してもよい。また、圧電振動片以外の素子を封入してもよい。
【0063】
本実施形態では、貫通孔33,34内に、粉末体として粉末ガラス45を充填している。しかし、これに限られることはなく、充填金属46よりも線膨張係数が小さい部材であればよく、例えば、セラミック等でもよい。ただし、ベース基板2と同じ材質からなる粉末ガラス45を使用することで、温度変化によって貫通電極13,14からベース基板2に対して応力が発生するのを抑制できる点で、本実施形態に優位性がある。
【0064】
本実施形態では、ベース基板用ウエハ40に凹部33b,34bを形成し、粉末ガラス45および充填金属46を凹部33b,34bに充填して硬化させた後、凹部33b,34bの底部33c,34cを研削して除去することにより、貫通電極13,14を形成している。しかし、例えば、ベース基板用ウエハ40に貫通孔を形成し、粉末ガラス45および充填金属46を貫通孔に充填して硬化させることにより、貫通電極13,14を形成してもよい。ただし、ベース基板用ウエハ40の下面Lから粉末ガラス45および充填金属46が漏洩するのを防止できる点で本実施形態に優位性がある。
【0065】
本実施形態の多層積層膜43は、貫通孔33,34の内周面33a,34aに密着可能な第1密着層43aと、充填金属46に密着可能な第2密着層43bとを有している。しかし、例えば、第2密着層43bの外側に、さらに充填金属46と同じ材質からなる金属の最外層を形成してもよい。これにより、多層積層膜43と充填金属46との密着性をさらに高めることができる。
【0066】
また、本実施形態では、メッキガラス粒子48を用い、粉末ガラス45の表面にメッキされた充填金属46のみを溶融して、貫通孔33,34内に粉末ガラス45および充填金属46を充填している。しかし、例えば、貫通孔33,34内に粉末ガラス45のみを充填し、その後、貫通孔33,34内に溶融した充填金属46を充填してもよい。ただし、貫通孔33,34内の全体に粉末ガラス45を分布させることができる点で本実施形態に優位性がある。
【符号の説明】
【0067】
1・・・圧電振動子(パッケージ) 2・・・ベース基板(第1基板) 4・・・圧電振動片(電子部品) 13,14・・・貫通電極 16・・・キャビティ 33,34・・・貫通孔 43・・・多層積層膜 43a・・・第1密着層 43b・・・第2密着層 45・・・粉末ガラス(粉末体) 46・・・充填金属
【技術分野】
【0001】
この発明は、パッケージおよび圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話や携帯情報端末には、時刻源や制御信号などのタイミング源、リファレンス信号源などとして水晶などを利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その一つとして、2層構造タイプの表面実装型のパッケージが知られている。
【0003】
このタイプの圧電振動子は、ベース基板およびリッド基板が直接接合されることでパッケージ化された2層構造になっており、両基板の間に形成されたキャビティ内に電子部品が収納されている。このような2層構造タイプのパッケージの1つとして、ベース基板に形成された貫通電極により、キャビティの内側に封入された電子部品と、ベース基板の外側に形成された外部電極とを導通させたものが知られている。
【0004】
例えば、特許文献1の圧電振動子は、ガラスもしくはセラミックスからなる基板(ベース基板)に貫通穴を設け、貫通穴の内面および貫通穴の周囲上下面もしくはそのいずれかの部分に配線用金属を形成し、その貫通穴に合金を溶着して気密端子とすることにより貫通電極を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−283951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、基板の材料となるガラスの線膨張係数は、貫通電極を形成する金属の線膨張係数と異なっており、一般にガラスの線膨張係数よりも金属の線膨張係数のほうが大きい。このため、例えばパッケージ実装時に温度が変化すると、ガラスと金属との線膨張係数の差により、貫通電極から基板に対して応力が発生する。特に、近年の電子機器の薄型化に伴い、基板の薄型化が要求されているため、貫通電極から基板に対して応力が発生すると、基板が歪んだり損傷したりして、貫通電極の気密性が損なわれるおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、貫通電極の気密性を良好に維持することができるパッケージおよび圧電振動子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明のパッケージは、電子部品を封入するためのキャビティを形成可能な複数の基板を有し、これら複数の基板のうち、ガラス材料からなる第1基板に、厚さ方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔を塞ぐように貫通電極を設けたパッケージにおいて、前記貫通電極は、粉末体と、この粉末体と前記貫通孔との間隙を充填する充填金属とからなり、前記粉末体の線膨張係数は、前記充填金属の線膨張係数よりも小さく設定されていることを特徴とする。
本発明によれば、粉末体と充填金属とで貫通孔を塞ぐように貫通電極を設けているので、パッケージの内外の導通を確保しつつ、貫通電極の気密性を確保できる。また、粉末体の線膨張係数は、充填金属の線膨張係数よりも小さく設定されているので、温度変化により充填金属が膨張および収縮しても、粉末体で吸収することができる。これにより、温度変化によって貫通電極から第1基板に対して応力が発生するのを抑制できるので、第1基板が歪んだり損傷したりするのを防止できる。したがって、貫通電極の気密性を良好に維持することができる。
【0009】
また、前記粉末体は、前記ガラス材料からなる粉末ガラスであることが望ましい。
本発明によれば、貫通孔に充填される粉末体は第1基板と略同一の線膨張係数を有する粉末ガラスであるので、温度変化によって貫通電極から第1基板に対して応力が発生するのを確実に抑制できる。したがって、貫通電極の気密性をさらに良好に維持することができる。
【0010】
また、前記充填金属の融点をXとしたとき、前記融点Xは、180℃≦X<450℃ に設定されていることが望ましい。
一般に、ガラス材料の軟化点は、450℃以上である。本発明によれば、充填金属の融点は、ガラス材料からなる第1基板の軟化点よりも低く設定されているので、第1基板を軟化させることなく充填金属のみを溶融することができる。これにより、第1基板にダメージを与えることなく充填金属を溶融し、粉末体と貫通孔との間隙を充填金属で封止することができる。したがって、信頼性が高く気密性に優れたパッケージを提供することができる。
【0011】
また、前記貫通孔の表面に多層積層膜を形成し、前記多層積層膜は、少なくとも前記貫通孔の内周面に密着可能な第1密着層と、前記充填金属と密着可能な第2密着層とを有することが望ましい。
本発明によれば、多層積層膜は貫通孔の表面に密着する第1密着層と、充填金属と密着する第2密着層とを有しているので、多層積層膜を介して貫通孔の内周面と充填金属とをより強固に密着させることができる。これにより、信頼性が高く気密性に優れたパッケージを提供することができる。
【0012】
また、前記第2密着層は、前記充填金属の主成分の元素と同一の元素を主成分として形成されていることが望ましい。
本発明によれば、第2密着層および充填金属の主成分の元素はともに同一なので、充填金属を溶融した際、第2密着層と容易に合金化できる。これにより、充填金属と第2密着層とを強固に密着させることができるので、より気密性に優れたパッケージを提供することができる。
【0013】
本発明のパッケージを用いた圧電振動子は、前記パッケージにおける前記キャビティの内部に、前記電子部品として圧電振動片が封入されていることを特徴とする。
本発明によれば、貫通電極の気密性を良好に維持することができるので、信頼性が高く気密性に優れた圧電振動子を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粉末体と充填金属とで貫通孔を塞ぐように貫通電極を設けているので、パッケージの内外の導通を確保しつつ、貫通電極の気密性を確保できる。また、粉末体の線膨張係数は、充填金属の線膨張係数よりも小さく設定されているので、温度変化により充填金属が膨張および収縮しても、粉末体で吸収することができる。これにより、温度変化によって貫通電極から第1基板に対して応力が発生するのを抑制できるので、第1基板が歪んだり損傷したりするのを防止できる。したがって、貫通電極の気密性を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】図1のA−A線に沿う断面図であり、貫通電極の拡大図である。
【図6】圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図7】リッド基板用ウエハに複数のキャビティを形成した状態を示す図である。
【図8】ベース基板用ウエハの上面に接合膜及び引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
【図9】図8の部分拡大図である。
【図10】ウエハ体の分解斜視図である。
【図11】貫通電極形成工程の説明図であり、図11(a)は充填工程の説明図であり、図11(b)は溶融工程の説明図である。
【図12】研磨工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る圧電振動子および圧電振動片を、図面を参照して説明する。
図1から図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2(請求項の「第1基板」に相当)およびリッド基板3が接合膜23を介して陽極接合され、キャビティ16に収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。なお、以下の説明では、ベース基板2におけるリッド基板3との接合面を上面Uとし、その反対面を下面Lとして説明する。
【0017】
(圧電振動片)
圧電振動片4は、水晶の圧電材料から形成されたATカット型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平面視略矩形で厚さが均一の板状に加工された水晶板17と、水晶板17の両面に対向する位置で配置された一対の励振電極5,6と、励振電極5,6に電気的に接続された引き出し電極19,20と、引き出し電極19,20に電気的に接続されたマウント電極7,8と、を有している。
【0018】
励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15は、例えば、金(Au)の被膜で形成されている。なお、これらの膜は、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)などの導電性膜の被膜あるいはこれら導電性膜のいくつかを組み合わせた積層膜により形成されていてもよい。
【0019】
このように構成された圧電振動片4は、金等からなるバンプ11,12を利用して、ベース基板2の上面Uにフリップチップボンディングにより接合されている。具体的には、ベース基板2の上面Uにパターニングされた後述する引き回し電極9,10上にバンプ11,12が形成され、そのバンプ11,12上に、一対のマウント電極7,8がそれぞれ接触した状態でフリップチップボンディングにより接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の上面Uからバンプ11,12の厚さ分、浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極7,8と引き回し電極9,10とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0020】
(圧電振動子)
図1から図4に示すように、リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、圧電振動片4を収容するキャビティ16が形成されている。そして、リッド基板3はこのキャビティ16をベース基板2側に対向させた状態でベース基板2に対して陽極接合されている。
【0021】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる基板であり、リッド基板3と同等の外形で略板状に形成されている。
ベース基板2の上面Uには、Alやシリコン(Si)等の導電性材料により、陽極接合用の接合膜23がパターニングされている。接合膜23は、リッド基板3に形成されたキャビティ16の周囲を囲むように、ベース基板2の周縁に沿って形成されている。
【0022】
また、ベース基板2の上面Uには、一対の引き回し電極9,10がパターニングされている。一対の引き回し電極9,10は、後述する貫通電極13,14のうち、一方の貫通電極13と圧電振動片4の一方のマウント電極7とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極14と圧電振動片4の他方のマウント電極8とを電気的に接続するようにパターニングされている。具体的には、一方の引き回し電極9は、圧電振動片4のマウント電極7,8側に位置するように一方の貫通電極13の真上に形成されている。また、他方の引き回し電極10は、一方の引き回し電極9に隣接した位置から圧電振動片4に沿って、ベース基板2上の貫通電極13と対向する側に引き回しされた後、他方の貫通電極14の真上に位置するように形成されている。
【0023】
そして、これら一対の引き回し電極9,10上にそれぞれバンプ11,12が形成されており、バンプ11,12を利用して圧電振動片4のマウント電極7,8がフリップチップボンディングにより実装される。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極7が、一方の引き回し電極9を介して一方の貫通電極13に導通し、他方のマウント電極8が、他方の引き回し電極10を介して他方の貫通電極14に導通するようになっている。
【0024】
(貫通電極)
ベース基板2には、一対の貫通電極13,14が形成されている。貫通電極13,14は、圧電振動子1を形成したときにキャビティ16内に収まるように形成される。より詳しく説明すると、一方の貫通電極13は、マウントされた圧電振動片4のマウント電極7,8側(図2の左側)に位置するように形成されている。また、他方の貫通電極14は、圧電振動片4のマウント電極7,8側と反対側(図2の右側)に位置するように形成されている。なお、以下には貫通電極13を例にして説明するが、貫通電極14についても同様である。
【0025】
図5は、図1のA−A線に沿う断面図であり、貫通電極13(14)の拡大図である。
図5に示すように、貫通電極13は、ベース基板2を貫通する貫通孔33と、貫通孔33内に充填される粉末ガラス45(粉末体)と、粉末ガラス45と貫通孔33の間隙を充填する充填金属46と、により形成されている。さらに、貫通孔33の内周面33aには多層積層膜43が形成されている。なお、図5では、わかりやすくするために、粉末ガラス45および多層積層膜43を誇張して図示している。
【0026】
貫通孔33は、略円錐台形状となるように形成されており、ベース基板2の上面U側からベース基板2の下面L側にかけて、内形が次第に小さくなるように形成されている。なお、貫通孔33の内周面33aのテーパ角度は、内周面33aに多層積層膜43を成膜できるような角度に設定される。具体的には、貫通孔33の内周面33aとベース基板2の下面Lとの間の角度が、例えば85度程度に設定される。
【0027】
貫通孔33の内周面33aには、多層積層膜43が成膜されている。多層積層膜43は、貫通孔33の内周面33aに密着可能な第1密着層43aと、充填金属46に密着可能な第2密着層43bとを有している。
多層積層膜43は、膜厚が最大で200μm程度である。各層の膜厚に関し、第1密着層43aが例えば100nm以上100μm以下、第2密着層43bが例えば100nm以上100μm以下に形成される。
【0028】
第1密着層43aは、スパッタリングやCVD等の成膜方法により形成される。第1密着層43aを形成する材料としては、ベース基板2の材料であるガラス材料に対して良好な密着性を有する材料が選択される。具体的には、チタン(Ti)やクロム(Cr)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)等の材料が選択される。
【0029】
第2密着層43bは、第1密着層43aを成膜した後に、第1密着層43aに重ねてスパッタリングやCVD等の成膜方法により形成される。第2密着層43bを形成する材料としては、第1密着層43aおよび充填金属46に対して良好な密着性を有するとともに、電極として導電性に優れた材料が選択される。具体的には、金(Au)や銀(Ag)、銅(Cu)等の材料が選択される。なお、第2密着層43bは、後述する充填金属46の主成分の元素と同一の元素を主成分として形成されることが望ましい。
【0030】
貫通孔33内には、粉末ガラス45および充填金属46が充填されている。
粉末ガラス45は、直径が例えば1nmから500μm程度のガラス材料からなる粒子である。粉末ガラス45の材料としては、ベース基板2と同じ材料(本実施形態ではソーダ石灰ガラス)を採用するのが望ましい。
【0031】
充填金属46は、貫通孔33の内周面33aに成膜された多層積層膜43の第2密着層43bと、粉末ガラス45との間に充填され、粉末ガラス45と貫通孔33との間隙を封止している。
ところで、充填金属46を粉末ガラス45と貫通孔33との間隙に充填するには、粉末ガラス45およびベース基板2を溶融させずに、充填金属46のみを溶融させなければならない。ここで、粉末ガラス45およびベース基板2の軟化点は、例えば450℃程度である。したがって、充填金属46として選択される金属材料の融点Xとすると、融点Xは、
180℃≦X<450℃・・・(1)
に設定される。
【0032】
充填金属46を形成する材料としては、(1)式を満たすと共に、粉末ガラス45および第2密着層43bに対し良好な密着性を有し、さらに電極としての導電性に優れた金属材料が選択される。具体的には、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、錫(Sn)やインジウム(In)、鉛(Pb)等の金属材料が選択される。なお、第2密着層43bの主成分の元素と同一の元素(例えばAu,Ag,Cu等)を主成分として形成されることが望ましい。
【0033】
なお、貫通孔33,34に充填される粉末ガラス45、充填金属46および貫通孔33,34に成膜された多層積層膜43のうち、粉末ガラス45の体積充填率は、25%以上100%未満であることが望ましい。さらに、各工程で安定して加工するために、粉末ガラス45の体積充填率を25%以上90%以下とするのが望ましい。
【0034】
また、充填金属46の主成分を、融点の低い錫(Sn)やインジウム(In)、鉛(Pb)等の卑金属とした場合、後述する溶融工程S35における溶融温度を低く設定できる。しかしながら、これら卑金属の線膨張係数は大きくなるため、粉末ガラス45の体積充填率を、例えば60%以上とすることが好ましい。
これに対して、充填金属46の主成分を、融点の高い金(Au)や銀(Ag)、銅(Cu)等の貴金属とした場合、後述する溶融工程S35における溶融温度を高く設定しなければならない。しかしながら、これら貴金属の線膨張係数は小さくなるため、粉末ガラス45の体積充填率の下限を、例えば25%以上とすることができる。
【0035】
ベース基板2の下面Lには、一対の貫通電極13,14に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極21,22が形成されている。つまり、一方の外部電極21は、一方の貫通電極13および一方の引き回し電極9を介して、圧電振動片4の第1の励振電極5に電気的に接続されている。また、他方の外部電極22は、他方の貫通電極14および他方の引き回し電極10を介して、圧電振動片4の第2の励振電極6に電気的に接続されている。
【0036】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極21,22に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極5および第2の励振電極6からなる励振電極に電流を流すことができ、所定の周波数で振動させることができる。そして、振動を利用して、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源などとして利用することができる。
【0037】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法を、フローチャートを参照しながら説明する。
図6は、圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
図7は、リッド基板用ウエハに複数のキャビティ16を形成した状態を示す図である。
図8は、ベース基板用ウエハの上面に接合膜及び引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
図9は、図8の部分拡大図である。
図10は、ウエハ体の分解斜視図である。
ここで、図8から図10に示す点線は、後に行う切断工程で切断する切断線Mを図示している。
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程S10と、リッド基板用ウエハ作製工程S20と、ベース基板用ウエハ作製工程S30と、組立工程(S50以降)を有している。そのうち、圧電振動片作製工程S10、リッド基板用ウエハ作製工程S20およびベース基板用ウエハ作製工程S30は、並行して実施することが可能である。
【0038】
(圧電振動片作製工程S10)
圧電振動片作製工程S10では、図2から図4に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行って、一定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄などの適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製する。
【0039】
(リッド基板用ウエハ作製工程S20)
リッド基板用ウエハ作製工程S20では、図7に示すように、後にリッド基板となるリッド基板用ウエハ50を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のリッド基板用ウエハ50を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S21)。次いで、キャビティ形成工程S22では、リッド基板用ウエハ50におけるベース基板用ウエハ40との接合面に、キャビティ16を複数形成する。キャビティ16の形成は、加熱プレス成型やエッチング加工等によって行う。
【0040】
(ベース基板用ウエハ作製工程S30)
ベース基板用ウエハ作製工程S30では、図8に示すように、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のベース基板用ウエハ40を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S31)。
【0041】
(貫通電極形成工程S30A)
次いで、ベース基板用ウエハ40に、一対の貫通電極13,14を形成する貫通電極形成工程S30Aを行う。以下に、この貫通電極形成工程S30Aについて、詳細に説明する。以下には貫通電極13の形成工程を例にして説明するが、貫通電極14の形成工程についても同様である。
【0042】
図11は貫通電極形成工程S30Aの説明図であり、図11(a)は充填工程S34の説明図であり、図11(b)は溶融工程S35の説明図である。
貫通電極形成工程S30Aは、ベース基板用ウエハ40に凹部33b(後の貫通孔33、図5参照)を形成する貫通孔形成工程S32と、凹部33bの内周面33aに多層積層膜43を形成する多層積層膜形成工程S33と、凹部33b内に粉末ガラス45および充填金属46を充填する充填工程S34とを有している。また、充填金属46を溶融する溶融工程S35と、充填金属46を硬化させる硬化工程S36とを有している。さらに、ベース基板用ウエハを研磨して凹部33bの底部33cを除去するとともに、充填金属46および多層積層膜43を露出させる研磨工程S37を有している。
【0043】
(貫通孔形成工程S32)
貫通孔形成工程S32では、ベース基板用ウエハ40に、後の貫通孔33となる凹部33bを形成する。本実施形態では、図11に示すように、ベース基板用ウエハ40の上面Uから下面Lにかけて、開口部の外形が小さくなるようにプレス加工で凹部33bを成型する。具体的な貫通孔形成工程S32としては、プレス型を加熱しながらベース基板用ウエハ40の上面Uに押圧する。これにより、ベース基板用ウエハ40に、すり鉢状の凹部33bが形成される。なお、サンドブラストやエッチング等により凹部33bを形成してもよい。
【0044】
(多層積層膜形成工程S33)
多層積層膜形成工程S33では、ベース基板用ウエハ40に形成された凹部33bの内周面33aに、第1密着層43aと第2密着層43bとからなる多層積層膜を43形成する。まず、ベース基板用ウエハ40の上面Uから、例えばスパッタリングにより、凹部33bに向かってクロム(Cr)等の材料を塗布し、第1密着層43aを形成する。続いて、ベース基板用ウエハ40の上面Uから同様に、金(Au)等の材料を塗布し、第2密着層43bを形成する。
【0045】
(充填工程S34)
続いて、凹部33b内に粉末ガラス45および充填金属46を充填する充填工程S34を行う。本実施形態では、粉末ガラス45の表面に充填金属46がメッキされたメッキガラス粒子48を用いる。なお、メッキガラス粒子48は市販品を用いてもよい。凹部33b内に、粉末状のメッキガラス粒子48を充填することにより、凹部33b内に粉末ガラス45および充填金属46を充填している。
【0046】
(溶融工程S35)
溶融工程S35では、凹部33b内に充填されたメッキガラス粒子48のうち、粉末ガラス45の表面にメッキされた充填金属46のみを溶融して、凹部33bを封止する。
具体的には、まず、不図示の治具にベース基板用ウエハ40をセットした後、メッキガラス粒子48が充填されたベース基板用ウエハ40を加熱炉(不図示)に配置する。
【0047】
続いて、所定温度になるように加熱炉を加熱する。ここで、所定温度は、メッキガラス粒子48のうち、メッキ部分である充填金属46のみを溶融し、メッキガラス粒子48内の粉末ガラス45およびベース基板用ウエハ40を軟化させない温度である。前述のとおり、粉末ガラス45およびベース基板2の軟化点は例えば450℃以上であり、充填金属46の融点は、(1)式に設定される。したがって、加熱炉の所定温度は、充填金属46の材料の融点に合わせて、180℃以上450℃未満の間で設定される。
そして、加熱炉を所定温度に加熱すると、図11(b)に示すように、メッキガラス粒子48の充填金属46のみが溶融し、粉末ガラス45と、多層積層膜43との間の間隙に、充填金属46が充填される。
【0048】
(硬化工程S36)
硬化工程S36では、ベース基板用ウエハ40を加熱炉から取り出し、溶融した充填金属46を自然冷却する。硬化工程S36により、ベース基板用ウエハ40、充填金属46および粉末ガラスが一体的に固定し、凹部33bを封止する。
【0049】
(研磨工程S37)
図12は研磨工程S37の説明図である。
続いて、ベース基板用ウエハ40の少なくとも下面Lを研磨して、凹部33bの底部33c(図11参照)を除去する研磨工程S37を行う。下面Lを研磨することにより、充填金属46および多層積層膜43が下面Lに露出する。また、必要に応じて上面Uを研磨することにより、上面Uの研磨も行う。これにより、充填金属46および多層積層膜43を上面Uに確実に露出させることができる。そして、露出した充填金属46および多層積層膜43が、貫通電極13,14の導通路を形成する。研磨工程S37を行った時点で、貫通電極形成工程S30Aが終了する。
【0050】
(接合膜形成工程S38、引き回し電極形成工程S39)
次に、ベース基板用ウエハ40の上面Uに導電性材料をパターニングして、接合膜23(図9参照)を形成する接合膜形成工程S38を行う。また、貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極9,10(図9参照)を複数形成する引き回し電極形成工程S39を行う。そして、引き回し電極9,10上に、それぞれ金等からなるバンプ11,12(図4参照)を形成する。なお、図8から図10では、図面の見易さのためバンプの図示を省略している。
【0051】
(外部電極形成工程S40)
次に、ベース基板用ウエハ40の下面Lに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極21,22(図1参照)を形成する外部電極形成工程S40を行う。この工程により、圧電振動片4は、貫通電極13,14の充填金属46および多層積層膜43を介して、外部電極21,22と導通する。
外部電極21,22を形成した時点でベース基板用ウエハ作製工程S30が終了する。
【0052】
(マウント工程S50以降の圧電振動子組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極9,10上に、バンプ11,12を介して圧電振動片4を接合するマウント工程S50を行う。具体的には、圧電振動片4をフリップチップボンダの接合ヘッド(不図示)でピックし、バンプ11,12を所定温度に加熱しながら接合ヘッドを振動させ、圧電振動片4をバンプ11,12に押し付ける。これにより、圧電振動片4の水晶板17がベース基板用ウエハ40の上面Uから浮いた状態で、マウント電極7,8がバンプ11,12にフリップチップボンディングされる。
【0053】
圧電振動片4の実装が終了した後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程S60を行う。具体的には、図示しない基準マークなどを指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、ベース基板用ウエハ40に実装された圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ50のキャビティ16とベース基板用ウエハ40とに収容された状態となる。
【0054】
重ね合わせ工程S60の後、重ね合わせた両ウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程S70を行う。具体的には、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜23とリッド基板用ウエハ50との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。
【0055】
次に、接合されたウエハ体70を切断線M(図10参照)に沿って切断して小片化する切断工程S80を行う。その結果、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成されたキャビティ16内に圧電振動片4が封止された、図1に示す2層構造式表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
【0056】
その後、内部の電気特性検査S90を行う。即ち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)などを測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性などを併せてチェックする。そして、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質などをチェックする。全てのチェックが完了した時点で、圧電振動子1の製造が終了する。
【0057】
(効果)
本実施形態によれば、粉末ガラス45と充填金属46とで貫通孔33,34を塞ぐように貫通電極13,14を設けているので、圧電振動子1の内外の導通を確保しつつ、貫通電極13,14の気密性を確保できる。また、粉末ガラス45の線膨張係数は、充填金属46の線膨張係数よりも小さく設定されているので、温度変化により充填金属46が膨張および収縮しても、粉末ガラス45で吸収することができる。これにより、温度変化によって貫通電極13,14からベース基板2に対して応力が発生するのを抑制できるので、ベース基板2が歪んだり損傷したりするのを防止できる。したがって、貫通電極13,14の気密性を良好に維持することができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、貫通孔33,34に充填される粉末体は、ベース基板2と略同一の線膨張係数を有する粉末ガラス45であるので、温度変化によって貫通電極からベース基板に対して応力が発生するのを確実に抑制できる。したがって、貫通電極13,14の気密性をさらに良好に維持することができる。
【0059】
また、一般に、ガラス材料の軟化点は、450℃以上である。本実施形態によれば、充填金属46の融点は、ガラス材料からなるベース基板2の軟化点よりも低く設定されているので、ベース基板2を軟化させることなく充填金属46のみを溶融することができる。これにより、ベース基板2にダメージを与えることなく充填金属46を溶融し、粉末ガラス45と貫通孔33,34との間隙を充填金属46で封止することができる。したがって、信頼性が高く気密性に優れた圧電振動子1を提供することができる。
【0060】
また、本実施形態によれば、多層積層膜43は貫通孔33,34の表面に密着する第1密着層43aと、充填金属46と密着する第2密着層43bとを有しているので、多層積層膜43を介して貫通孔33,34の内周面と充填金属46とを、より強固に密着させることができる。これにより、信頼性が高く気密性に優れた圧電振動子1を提供することができる。
【0061】
また、本実施形態によれば、第2密着層43bおよび充填金属46の主成分の元素はともに同一なので、充填金属46を溶融した際、第2密着層43bと容易に合金化できる。これにより、充填金属46と第2密着層43bとを強固に密着させることができるので、より気密性に優れた圧電振動子1を提供することができる。
【0062】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
本実施形態では、パッケージの内部にATカット型の圧電振動片4を封入した圧電振動子1を例にして説明をした。しかし、これに限られることはなく、パッケージの内部に例えば音叉型の圧電振動片を封入してもよい。また、圧電振動片以外の素子を封入してもよい。
【0063】
本実施形態では、貫通孔33,34内に、粉末体として粉末ガラス45を充填している。しかし、これに限られることはなく、充填金属46よりも線膨張係数が小さい部材であればよく、例えば、セラミック等でもよい。ただし、ベース基板2と同じ材質からなる粉末ガラス45を使用することで、温度変化によって貫通電極13,14からベース基板2に対して応力が発生するのを抑制できる点で、本実施形態に優位性がある。
【0064】
本実施形態では、ベース基板用ウエハ40に凹部33b,34bを形成し、粉末ガラス45および充填金属46を凹部33b,34bに充填して硬化させた後、凹部33b,34bの底部33c,34cを研削して除去することにより、貫通電極13,14を形成している。しかし、例えば、ベース基板用ウエハ40に貫通孔を形成し、粉末ガラス45および充填金属46を貫通孔に充填して硬化させることにより、貫通電極13,14を形成してもよい。ただし、ベース基板用ウエハ40の下面Lから粉末ガラス45および充填金属46が漏洩するのを防止できる点で本実施形態に優位性がある。
【0065】
本実施形態の多層積層膜43は、貫通孔33,34の内周面33a,34aに密着可能な第1密着層43aと、充填金属46に密着可能な第2密着層43bとを有している。しかし、例えば、第2密着層43bの外側に、さらに充填金属46と同じ材質からなる金属の最外層を形成してもよい。これにより、多層積層膜43と充填金属46との密着性をさらに高めることができる。
【0066】
また、本実施形態では、メッキガラス粒子48を用い、粉末ガラス45の表面にメッキされた充填金属46のみを溶融して、貫通孔33,34内に粉末ガラス45および充填金属46を充填している。しかし、例えば、貫通孔33,34内に粉末ガラス45のみを充填し、その後、貫通孔33,34内に溶融した充填金属46を充填してもよい。ただし、貫通孔33,34内の全体に粉末ガラス45を分布させることができる点で本実施形態に優位性がある。
【符号の説明】
【0067】
1・・・圧電振動子(パッケージ) 2・・・ベース基板(第1基板) 4・・・圧電振動片(電子部品) 13,14・・・貫通電極 16・・・キャビティ 33,34・・・貫通孔 43・・・多層積層膜 43a・・・第1密着層 43b・・・第2密着層 45・・・粉末ガラス(粉末体) 46・・・充填金属
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を封入するためのキャビティを形成可能な複数の基板を有し、
これら複数の基板のうち、ガラス材料からなる第1基板に、厚さ方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔を塞ぐように貫通電極を設けたパッケージにおいて、
前記貫通電極は、粉末体と、この粉末体と前記貫通孔との間隙を充填する充填金属とからなり、
前記粉末体の線膨張係数は、前記充填金属の線膨張係数よりも小さく設定されていることを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載のパッケージであって、
前記粉末体は、前記ガラス材料からなる粉末ガラスであることを特徴とするパッケージ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパッケージであって、
前記充填金属の融点をXとしたとき、
前記融点Xは、
180℃≦X<450℃
に設定されていることを特徴とするパッケージ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のパッケージであって、
前記貫通孔の内周面に多層積層膜を形成し、
前記多層積層膜は、少なくとも前記貫通孔の内周面に密着可能な第1密着層と、前記充填金属に密着可能な第2密着層とを有することを特徴とするパッケージ。
【請求項5】
請求項4に記載のパッケージであって、
前記第2密着層は、前記充填金属の主成分の元素と同一の元素を主成分として形成されていることを特徴とするパッケージ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のパッケージを用いた圧電振動子であって、前記パッケージにおける前記キャビティの内部に、前記電子部品として圧電振動片が封入されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項1】
電子部品を封入するためのキャビティを形成可能な複数の基板を有し、
これら複数の基板のうち、ガラス材料からなる第1基板に、厚さ方向に貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔を塞ぐように貫通電極を設けたパッケージにおいて、
前記貫通電極は、粉末体と、この粉末体と前記貫通孔との間隙を充填する充填金属とからなり、
前記粉末体の線膨張係数は、前記充填金属の線膨張係数よりも小さく設定されていることを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載のパッケージであって、
前記粉末体は、前記ガラス材料からなる粉末ガラスであることを特徴とするパッケージ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のパッケージであって、
前記充填金属の融点をXとしたとき、
前記融点Xは、
180℃≦X<450℃
に設定されていることを特徴とするパッケージ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のパッケージであって、
前記貫通孔の内周面に多層積層膜を形成し、
前記多層積層膜は、少なくとも前記貫通孔の内周面に密着可能な第1密着層と、前記充填金属に密着可能な第2密着層とを有することを特徴とするパッケージ。
【請求項5】
請求項4に記載のパッケージであって、
前記第2密着層は、前記充填金属の主成分の元素と同一の元素を主成分として形成されていることを特徴とするパッケージ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のパッケージを用いた圧電振動子であって、前記パッケージにおける前記キャビティの内部に、前記電子部品として圧電振動片が封入されていることを特徴とする圧電振動子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−74641(P2012−74641A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220140(P2010−220140)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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