説明

パッケージおよび圧電振動子

【課題】良好な電気的特性を維持しつつ小型化が可能なパッケージおよび圧電振動子の提供を課題とする。
【解決手段】圧電振動片4(電子部品)を封入するためのキャビティを形成可能な複数の基板を有し、前記複数の基板のうちベース基板2に、前記キャビティ用の凹部16を形成すると共に、この凹部16とベース基板2の外面側との間を貫通する複数の貫通電極13,14を設けたパッケージであって、凹部16の側壁16a,16bに、圧電振動片4と貫通電極13,14とを電気的に接続するための引き回し電極9,10を配索したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パッケージおよび圧電振動子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話や携帯情報端末には、時刻源や制御信号などのタイミング源、リファレンス信号源などとして水晶などを利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが知られているが、その一つとして、2層構造タイプの表面実装型のパッケージが知られている。
【0003】
このような2層構造タイプのパッケージの1つとして、板状のベース部材(本願の「ベース基板」に相当)と、キャビティを有し、ベース部材と接合して該キャビティを密閉空間とするリッド部材(本願の「リッド基板」に相当)と、ベース部材上に実装される水晶板(本願の「圧電振動子」に相当)と、からなる水晶デバイスが知られている(特許文献1参照)。
【0004】
この水晶デバイスのベース部材は、上面に引き出し電極(本願の「引き回し電極」に相当)が形成されており、下面に外部端子(本願の「外部電極」に相当)が形成されている。引き出し電極と外部端子とは、ベース部材を貫通して埋め込まれた金属ピンによる貫通電極によって電気的に接続されている。
【0005】
ここで、圧電振動片に対向してパッケージ内の電極が配索されている場合、圧電振動片の主面に形成された電極と、パッケージ内の電極との空隙に静電容量が発生する、いわゆる容量結合が発生することが知られている。容量結合が発生すると、圧電振動片は静電容量の影響を受けて正常な発振ができなくなる。これにより、圧電振動子の電気的特性が悪化するおそれがある。
【0006】
このため、例えば特許文献1では、ベース基板上の圧電振動片に対向する部位を避けるように、引き出し電極33を平面視で圧電振動片の外形に沿わせて配索している(特許文献1の図2参照)。このようにパッケージ内の電極を配索することで、圧電振動片の励振電極とパッケージ内の電極とが対向するのを回避して容量結合の発生を防止し、圧電振動子の良好な電気的特性を維持しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−129646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年の電子機器の小型化に伴い、パッケージおよびパッケージ内に搭載される電子部品に対する小型化が要求されている。
しかし、特許文献1のように、平面視で圧電振動片の外形に沿うようにパッケージ内の引き出し電極を配索した場合、圧電振動片の周辺にパッケージ内の電極を配索するためのスペースが必要となる。パッケージ内の電極を配索するためのスペースを確保することによりベース基板の面積が大きくなるため、パッケージの小型化に対する阻害要因となっている。
【0009】
また、圧電振動片自体を小型化した場合には、一般に圧電振動子のCI値(Crystal Impedance)が上昇することが知られている。したがって、圧電振動子の良好な電気的特性を維持することができないおそれがある。
【0010】
そこで本発明は、良好な電気的特性を維持しつつ小型化が可能なパッケージおよび圧電振動子の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するため、本発明のパッケージは、電子部品を封入するためのキャビティを形成可能な複数の基板を有し、前記複数の基板のうち第1基板に、前記キャビティ用の凹部を形成すると共に、この凹部と前記第1基板の外面側との間を貫通する複数の貫通電極を設けたパッケージであって、前記凹部の側壁に、前記電子部品と前記貫通電極とを電気的に接続するための引き回し電極を配索したことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、キャビティ用の凹部の側壁に引き回し電極を配索したことで、電子部品の電極と引き回し電極とが対向するのを回避できる。これにより、電子部品と引き回し電極との容量結合の発生を防止し、パッケージの良好な電気的特性を維持できる。また、凹部の側壁に引き回し電極を配索しているので、凹部の底面に引き回し電極を配索するためのスペースが不要となり、パッケージの小型化ができる。したがって、良好な電気的特性を維持しつつ小型化が可能なパッケージを提供できる。
【0013】
また、前記凹部の前記側壁で、前記複数の貫通電極のうち少なくとも1つの前記貫通電極の一端と前記引き回し電極とを電気的に接続したことが望ましい。
本発明によれば、凹部の底面に貫通電極と引き回し電極とを電気的に接続するためのスペースが不要となるので、パッケージのさらなる小型化ができる。
【0014】
前記少なくとも1つの貫通電極の他端を前記第1基板の下面側に導出し、前記少なくとも1つの貫通電極は、前記第1基板の任意の一側面に投影させた形状が、前記凹部から前記下面に向かうにしたがって、前記第1基板の外側壁から遠ざかるように斜めに形成されていることが望ましい。
本発明によれば、貫通電極が第1基板の外側壁から遠ざかる分、第1基板の底面に向かうに従って外側壁と貫通電極との間の肉厚を厚く確保できる。したがって、貫通電極周辺の第1基板の強度を確保できる。
【0015】
また、前記凹部の底面と、前記凹部の側壁との間の角度をθとしたとき、
前記角度θは、
95°≦θ≦140°
を満たすように設定されていることが望ましい。
本発明によれば、凹部の開口側から見て凹部の各側壁がアンダーカット形状とならない。したがって、凹部の各側壁に対して、引き回し電極の成膜や、フォトリソグラフィによる処理等を容易に行うことができる。
【0016】
本発明の圧電振動子は、前記パッケージを用いた圧電振動子であって、前記複数の基板をガラスにより形成し、前記凹部の内部に、前記電子部品として圧電振動片が封入されていることを特徴とする。
本発明によれば、良好な電気的特性を維持しつつ小型化が可能な圧電振動子を提供できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、キャビティ用の凹部の側壁に引き回し電極を配索したことで、電子部品の電極と引き回し電極とが対向するのを回避できる。これにより、電子部品と引き回し電極との容量結合の発生を防止し、パッケージの良好な電気的特性を維持できる。また、本発明によれば凹部の側壁に引き回し電極を配索しているので、凹部の底面に引き回し電極を配索するためのスペースが不要となり、パッケージの小型化ができる。したがって、良好な電気的特性を維持しつつ小型化が可能なパッケージを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】圧電振動子の外観斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1に示す圧電振動子の内部構成図であって、リッド基板を取り外した状態の平面図である。
【図4】図1に示す圧電振動子の分解斜視図である。
【図5】圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
【図6】ベース基板用ウエハに複数の凹部を形成した状態を示す図である。
【図7】ベース基板用ウエハの上面に引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
【図8】図7の部分拡大図である。
【図9】ウエハ体の分解斜視図である。
【図10】第1実施形態の第2変形例における圧電振動子のA−A線に沿った断面図である。
【図11】第2実施形態の凹部形成工程の説明図であり、図11(a)はプレス前の説明図であり、図11(b)はプレス後の説明図であり、図11(c)は貫通電極の先端を除去したときの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係る圧電振動片、圧電振動子および圧電振動子の製造方法を、図面を参照して説明する。
図1から図4に示すように、本実施形態の圧電振動子1は、ベース基板2(第1基板)およびリッド基板3(第2基板)が接合膜23を介して陽極接合され、凹部16に収納された圧電振動片4と、を備えた表面実装型の圧電振動子1である。
【0020】
(圧電振動片)
圧電振動片4は、水晶の圧電材料から形成されたATカット型の振動片であり、所定の電圧が印加されたときに振動するものである。
この圧電振動片4は、平面視略矩形で厚さが均一の板状に加工された水晶板17と、水晶板17の両面に対向する位置で配置された一対の励振電極5,6と、励振電極5,6に電気的に接続された引き出し電極19,20と、引き出し電極19,20に電気的に接続されたマウント電極7,8と、を有している。
【0021】
励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15は、例えば、金(Au)の被膜で形成されている。なお、これらの膜は、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)やチタン(Ti)などの導電性膜の被膜あるいはこれら導電性膜のいくつかを組み合わせた積層膜により形成されていてもよい。
【0022】
このように構成された圧電振動片4は、金等からなるバンプ11,12を利用して、ベース基板2の上面Uに形成された凹部16の底面16eに、フリップチップボンディングにより接合されている。具体的には、ベース基板2の凹部16にパターニングされた後述する引き回し電極9,10上にバンプ11,12が形成され、そのバンプ11,12上に、一対のマウント電極7,8がそれぞれ接触した状態でフリップチップボンディングにより接合されている。これにより、圧電振動片4は、ベース基板2の凹部16の底面16eからバンプ11,12の厚さ分、浮いた状態で支持されるとともに、マウント電極7,8と引き回し電極9,10とがそれぞれ電気的に接続された状態となっている。
【0023】
(圧電振動子)
リッド基板3は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる陽極接合可能な基板であり、略平板状に形成されている。リッド基板3におけるベース基板2との接合面側には、アルミニウム(Al)やシリコン(Si)等の導電性材料により、陽極接合用の接合膜23がパターニングされている。接合膜23は、ベース基板2に形成された凹部16の周囲を囲むように、ベース基板2の上面Uの形状に沿って形成されている。
【0024】
ベース基板2は、ガラス材料、例えばソーダ石灰ガラスからなる基板であり、リッド基板3と同等の外形で略板状に形成されている。ベース基板2の上面Uには、圧電振動片4を収容する凹部16(キャビティ用の凹部)が形成されている。
【0025】
凹部16は、底面16eと、圧電振動片4の幅方向における一方側(図3の右側)に配置された第1側壁16aと、前記幅方向における他方側(図3の左側)に配置された第2側壁16bと、圧電振動片4の基端側(図3の下側)に配置された第3側壁16cと、圧電振動片4の先端側(図3の上側)に配置された第4側壁16dと、により構成されている。
【0026】
上面Uから凹部16の底面16eまでの深さは、圧電振動片4の厚み寸法と、バンプ11,12の厚み寸法とをあわせた寸法よりも深くなるように設定される。
ここで、凹部16の底面16eと、凹部16の各側壁16a,16b,16c,16dとの間の角度θ(図2参照)は、
95°≦θ≦140°・・・(1)
を満たすように設定されている。
すなわち、凹部16の底面16eよりも開口側が広くなるように形成されている。(1)式を満たすように角度θを設定したのは、各側壁16a,16b,16c,16dに引き回し電極9,10を形成する際、スパッタ法や真空蒸着法等による成膜や、フォトリソグラフィによる処理を容易にするためである。
【0027】
一般に、凹部16の開口側から成膜する際、各側壁16a,16b,16c,16dに成膜される膜厚は、底面16eに成膜される膜厚の1/tan(180−θ)となる。ここで、例えば、tan(180−θ)≧10の場合、各側壁16a,16b,16c,16dに成膜したい膜厚の10倍の厚さで、底面16eに成膜することになるため、フォトリソグラフィやエッチングが困難となる。したがって、底面16eと各側壁16a,16b,16c,16dとの膜厚差を10倍以内に押えるには、arctan(10)≒85°となるため、θ≧180°−85°、すなわちθは95°以上であることが望ましい。なお、θを140°以下としたのは、一般に、エッチングで各側壁16a,16b,16c,16dを形成したときのθの最大値が130°から140°程度となるためである。
そして、ベース基板2は、凹部16をリッド基板3側に対向させた状態でリッド基板3に対して陽極接合されている。
【0028】
(引き回し電極)
ベース基板2の凹部16内には、一対の引き回し電極9,10がパターニングされている。一対の引き回し電極9,10は、後述する貫通電極13,14のうち、一方の貫通電極13と圧電振動片4の一方のマウント電極7とを電気的に接続するとともに、他方の貫通電極14と圧電振動片4の他方のマウント電極8とを電気的に接続するようにパターニングされている。
【0029】
一方の引き回し電極9は、圧電振動片4のマウント電極7,8側において、凹部16の底面16eと第1側壁16aとにまたがるように、平面視で略矩形状に形成されている。具体的に一方の引き回し電極9は、凹部16の底面16eに形成された底面電極9aと、凹部16の第1側壁16aに形成された側壁電極9bとで構成されている。
底面電極9a上には、バンプ11が形成されている。また、側壁電極9bは、後述の貫通電極13と接続されている。
【0030】
他方の引き回し電極10は、一方の引き回し電極9に隣接した位置から、圧電振動片4の外形に沿って第2側壁16b上を引き回されており、平面視で略L字状に形成されている。具体的に他方の引き回し電極10は、凹部16の底面16eに形成された底面電極10aと、凹部16の第2側壁16bにおいて、圧電振動片4の基端側から先端側に向かって形成された側壁電極10bと、第2側壁16bにおける圧電振動片4の先端側に形成された接続電極10cと、で構成されている。
【0031】
底面電極10a上には、バンプ12が形成されている。また、接続電極10cは、後述の貫通電極14と接続されている。そして、側壁電極10bは、底面電極10aと貫通電極14とを電気的に接続している。
【0032】
そして、これら一対の引き回し電極9,10上のバンプ11,12を利用して、圧電振動片4のマウント電極7,8がフリップチップボンディングにより実装される。これにより、圧電振動片4の一方のマウント電極7が、一方の引き回し電極9を介して一方の貫通電極13に導通し、他方のマウント電極8が、他方の引き回し電極10を介して他方の貫通電極14に導通するようになっている。
【0033】
(貫通電極)
ベース基板2には、一対の貫通電極13,14が形成されている。貫通電極13,14は、例えば金(Au)や白金(Pt)、ニッケル(Ni)合金、ハステロイ(登録商標)等の金属材料により形成された導電性の棒状部材である。貫通電極13,14の原料には、ベース基板2の材料であるガラス部材と線膨張係数の差が小さい金属が好適に用いられる。特に、鉄(Fe)を58重量パーセント、ニッケル(Ni)を42重量パーセント含有する合金(42アロイ)で形成することが望ましい。
【0034】
貫通電極13,14は、ベース基板2の凹部16の底面16eに対して略垂直になるように配置されている。
また、一方の貫通電極13は、ベース基板2の第1側壁16a側(図3の右側)であって、圧電振動片4の基端側(図3の下側)に配置されており、一端側が第1側壁16aから露出し、他端側が下面Lから露出している。
これに対して、他方の貫通電極14は、ベース基板2の第2側壁16b側(図3の左側)であって、圧電振動片4の先端側(図3の上側)に配置されており、一端側が第2側壁16bから露出し、他端側が下面Lから露出している。
【0035】
ベース基板2の下面Lには、一対の貫通電極13,14に対してそれぞれ電気的に接続される外部電極21,22が形成されている。つまり、一方の外部電極21は、一方の貫通電極13および一方の引き回し電極9を介して、圧電振動片4の第1の励振電極5に電気的に接続されている。また、他方の外部電極22は、他方の貫通電極14および他方の引き回し電極10を介して、圧電振動片4の第2の励振電極6に電気的に接続されている。
【0036】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、ベース基板2に形成された外部電極21,22に対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、圧電振動片4の第1の励振電極5および第2の励振電極6からなる励振電極に電流を流すことができ、所定の周波数で振動させることができる。そして、振動を利用して、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源などとして利用することができる。
【0037】
(圧電振動子の製造方法)
次に、上述した圧電振動子の製造方法を、フローチャートを参照しながら説明する。
図5は、圧電振動子の製造方法のフローチャートである。
図6は、ベース基板用ウエハに複数の凹部16を形成した状態を示す図である。
図7は、ベース基板用ウエハの上面に接合膜及び引き回し電極をパターニングした状態を示す図である。
図8は、図7の部分拡大図である。
図9は、ウエハ体の分解斜視図である。
ここで、図7から図9に示す点線は、後に行う切断工程で切断する切断線Mを図示している。
本実施形態に係る圧電振動子の製造方法は、主に、圧電振動片作製工程S10と、リッド基板用ウエハ作製工程S20と、ベース基板用ウエハ作製工程S30と、組立工程(S50以降)を有している。そのうち、圧電振動片作製工程S10、リッド基板用ウエハ作製工程S20およびベース基板用ウエハ作製工程S30は、並行して実施することが可能である。
【0038】
(圧電振動片作製工程S10)
圧電振動片作製工程S10では、図2から図4に示す圧電振動片4を作製する。具体的には、まず水晶のランバート原石を所定の角度でスライスして一定の厚みのウエハとする。続いて、このウエハをラッピングして粗加工した後、ポリッシュなどの鏡面研磨加工を行って、一定の厚みのウエハとする。続いて、ウエハに洗浄などの適切な処理を施した後、該ウエハをフォトリソグラフィ技術によって、金属膜の成膜及びパターニングを行って、励振電極5,6、引き出し電極19,20、マウント電極7,8および側面電極15を形成する。これにより、複数の圧電振動片4を作製する。
【0039】
(リッド基板用ウエハ作製工程S20)
リッド基板用ウエハ作製工程S20では、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のリッド基板用ウエハ50を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S21)。次いで、リッド基板用ウエハ50におけるベース基板用ウエハ40との合わせ面に導電性材料をパターニングして、接合膜23(図1参照)を形成する接合膜形成工程S22を行う。なお、本実施形態では、接合膜23をリッド基板用ウエハ50に形成しているが、ベース基板用ウエハ40に形成してもかまわない。
【0040】
(ベース基板用ウエハ作製工程S30)
ベース基板用ウエハ作製工程S30は、主にベース基板用ウエハ40に貫通電極13,14を圧入する貫通電極圧入工程S33と、ベース基板用ウエハ40に凹部16を形成する凹部形成工程S35と、ベース基板用ウエハ40に引き回し電極を形成する引き回し電極形成工程S37とを有している。
ベース基板用ウエハ作製工程S30では、図6に示すように、後にベース基板2となるベース基板用ウエハ40を作製する。まず、ソーダ石灰ガラスからなる円板状のベース基板用ウエハ40を、所定の厚さまで研磨加工して洗浄した後に、エッチングなどにより最表面の加工変質層を除去する(S31)。
【0041】
(貫通電極圧入工程S33)
次いで、ベース基板用ウエハ40に貫通電極13,14を圧入する貫通電極圧入工程S33を行う。貫通電極圧入工程S33では、予めベース基板用ウエハ40を加熱して軟化状態とする。そして、後の凹部16の第1側壁16aに対応する位置に貫通電極13を、後の凹部16の第2側壁16bに対応する位置に貫通電極14を圧入する。
【0042】
(凹部形成工程S35)
次に、凹部形成工程S35では、ベース基板用ウエハ40の上面Uに、凹部16を複数形成する。凹部16の形成は、例えば、エッチング加工等によって行う。
具体的な凹部形成工程S35としては、まず、ベース基板用ウエハ40の表面に、金等からなる膜を形成した後、凹部16に対応した部分をヨウ素ヨウ化カリウム水溶液や王水(塩酸と硝酸との混合液)等で除去し、凹部16をエッチングするためのマスクを形成する。続いて、フッ酸等からなる水溶液を使用してベース基板用ウエハ40のエッチングを行う。以上により、底面16eと、各側壁16a,16b,16c,16dとからなる凹部16がベース基板用ウエハ40の上面Uに複数形成される。
【0043】
(引き回し電極形成工程S37)
次に、貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された引き回し電極9,10(図8参照)を複数形成する、引き回し電極形成工程S37を行う。引き回し電極9は、凹部16の底面16eおよび第1側壁16aに形成され、第1側壁16aに形成された側壁電極9bは貫通電極13を覆うように形成される。また、引き回し電極10は、凹部16の底面16eおよび第2側壁16bに形成され、第2側壁16bに形成された接続電極10cは貫通電極14を覆うように形成される。引き回し電極9,10は、スパッタ法や真空蒸着法等により形成された被膜を、フォトリソグラフィ技術によりパターニングして形成される。なお、各引き回し電極9,10は同一の材料で形成されるため、各引き回し電極9,10を同時に形成することができる。
そして、引き回し電極9,10の底面電極9a、10a上に、それぞれ金等からなるバンプ11,12(図4参照)を形成する。なお、図7から図9では、図面の見易さのためバンプの図示を省略している。
【0044】
(外部電極形成工程S40)
次に、ベース基板用ウエハ40の下面Lに導電性材料をパターニングして、一対の貫通電極13,14にそれぞれ電気的に接続された一対の外部電極21,22(図1参照)を形成する外部電極形成工程S40を行う。この工程により、圧電振動片4は、貫通電極13,14を介して、外部電極21,22と導通する。
外部電極21,22を形成した時点でベース基板用ウエハ作製工程S30が終了する。
【0045】
(マウント工程S50以降の圧電振動子組立工程)
次に、ベース基板用ウエハ40の引き回し電極9,10上に、バンプ11,12を介して圧電振動片4を接合するマウント工程S50を行う。具体的には、圧電振動片4をフリップチップボンダの接合ヘッド(不図示)でピックし、バンプ11,12を所定温度に加熱しながら接合ヘッドを振動させ、圧電振動片4をバンプ11,12に押し付ける。これにより、圧電振動片4の水晶板17が、ベース基板用ウエハ40の凹部16の底面16eから浮いた状態で、マウント電極7,8がバンプ11,12にフリップチップボンディングされる。
【0046】
圧電振動片4の実装が終了した後、ベース基板用ウエハ40に対してリッド基板用ウエハ50を重ね合わせる重ね合わせ工程S60を行う。具体的には、図示しない基準マークなどを指標としながら、両ウエハ40、50を正しい位置にアライメントする。これにより、ベース基板用ウエハ40の凹部16内に実装された圧電振動片4が、リッド基板用ウエハ50とベース基板用ウエハ40とに収容された状態となる。
【0047】
重ね合わせ工程S60の後、重ね合わせた両ウエハ40,50を図示しない陽極接合装置に入れ、所定の温度雰囲気で所定の電圧を印加して陽極接合する接合工程S70を行う。具体的には、接合膜23とベース基板用ウエハ40との間に所定の電圧を印加する。すると、接合膜23とベース基板用ウエハ40との界面に電気化学的な反応が生じ、両者がそれぞれ強固に密着して陽極接合される。
【0048】
次に、接合されたウエハ体70を切断線M(図9参照)に沿って切断して小片化する切断工程S80を行う。その結果、互いに陽極接合されたベース基板2とリッド基板3との間に形成された凹部16内に圧電振動片4が封止された、図1に示す2層構造式表面実装型の圧電振動子1を一度に複数製造することができる。
【0049】
その後、内部の電気特性検査S90を行う。即ち、圧電振動片4の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)などを測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性などを併せてチェックする。そして、圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質などをチェックする。全てのチェックが完了した時点で、圧電振動子1の製造が終了する。
【0050】
(効果)
第1実施形態によれば、凹部16の第1側壁16aおよび第2側壁16bに引き回し電極9,10を配索したことで、圧電振動片4の励振電極5,6等の各電極と引き回し電極9,10とが対向するのを回避できる。これにより、圧電振動片4と引き回し電極9,10との容量結合の発生を防止し、圧電振動子1の良好な電気的特性を維持できる。また、本発明によれば凹部16の第1側壁16aおよび第2側壁16bに引き回し電極9,10を配索しているので、凹部16の底面16eに引き回し電極9,10を配索するためのスペースが不要となり、圧電振動子1の小型化ができる。したがって、良好な電気的特性を維持しつつ小型化が可能な圧電振動子1を提供できる。
【0051】
また、第1実施形態によれば、凹部16の第1側壁16aおよび第2側壁16bで貫通電極13,14の一端と引き回し電極9,10とを電気的に接続しているので、凹部16の底面16eに貫通電極13,14と引き回し電極9,10とを電気的に接続するためのスペースが不要となり、圧電振動子1のさらなる小型化ができる。
【0052】
(第1実施形態の第1変形例、凹部内に突出した貫通電極の削除)
次に、第1実施形態の第1変形例について説明する。
上述の第1実施形態では、図2に示すように、貫通電極13,14の端部が凹部16の各側壁16a,16bから突出していた。しかし、第1実施形態の第1変形例では、貫通電極13,14の端部が各側壁16a,16bと面一になるように形成する点で異なっている。
【0053】
第1変形例では、凹部形成工程S35の後、凹部16の各側壁16a,16bから突出した貫通電極13,14の端部を除去する。具体的には、ヨウ素ヨウ化カリウム水溶液や王水(塩酸と硝酸との混合液)等により貫通電極13,14の端部をエッチングする。これにより、貫通電極13,14の端部が各側壁16a,16bから突出することなく、貫通電極13,14の端部と各側壁16a,16bとを略面一にすることができる。
【0054】
(効果)
第1実施形態の第1変形例によれば、貫通電極13,14の端部と各側壁16a,16bとを略面一に形成するので、引き回し電極9,10の側壁電極9b,10bを形成する際に、容易に形成することができる。したがって、貫通電極13,14と、引き回し電極9,10とを容易に接続することができる。
【0055】
(第1実施形態の第2変形例、傾斜した貫通電極)
次に、第1実施形態の第2変形例について説明する。
図10は、第1実施形態の第2変形例における圧電振動子1のA−A線に沿った断面図である。
上述の第1実施形態では、図2に示すように、貫通電極13,14が凹部16の底面16eに対して略垂直になるように配置されていた。しかし、第1実施形態の第2変形例では、貫通電極13,14が底面16eの垂直方向に対し傾斜して配置されている点で異なっている。なお、第2変形例の貫通電極13および貫通電極14は同様の構成であるため、以下では、貫通電極13についてのみ説明をし、貫通電極14の説明を省略している。また、貫通電極13,14以外の構成は上述した実施形態と同一であるため、詳細な説明を省略している。
【0056】
図10に示すように、凹部16からベース基板2の下面Lにかけて、貫通電極13はベース基板2の外側壁2aから遠ざかるように配置されている。そして、貫通電極13の外周面と、ベース基板2の外側壁2aとの間隔は、ベース基板2の内側よりもベース基板2の外側のほうが広くなっている。すなわち、貫通電極13とベース基板2の外側壁2aとの間の肉厚は、ベース基板2の外側が厚くなるように貫通電極13を配置している。したがって、第1実施形態の第2変形例によれば、貫通電極13,14周辺のベース基板2の強度を確保できる。
【0057】
(第2実施形態、凹部形成工程S35)
次に、第2実施形態について説明する。
図11は、第2実施形態の凹部形成工程S35の説明図であり、図11(a)はプレス前の説明図であり、図11(b)はプレス後の説明図であり、図11(c)は貫通電極13,14の先端を除去したときの説明図である。
第1実施形態の凹部形成工程S35では、エッチングにより凹部16を形成していた。しかし、第2実施形態の凹部形成工程S35では、プレスにより凹部16を形成する点で第1実施形態と異なっている。以下に、第2実施形態の凹部形成工程S35について説明をする。なお、第1実施形態と同一の内容については詳細な説明を省略している。また、貫通電極13を含む断面図を例にして工程を説明しているが、貫通電極14との関係についても同様である。
【0058】
第2実施形態の凹部形成工程S35は、図11に示すように、ベース基板用ウエハ40を嵌入可能な受け部80aを有する受型80と、受け部80aに嵌入されたベース基板用ウエハ40を押圧する加圧型85とを用いて行う。
加圧型85は、予め貫通電極13が圧入されたベース基板用ウエハ40に対して押圧する。加圧型85には、凹部16を形成するための凸部85aが設けられている。また、凸部85aの貫通電極13に対応した位置には、逃げ部85bが形成されている。逃げ部85bを設けたのは、プレス時に、傾斜した第1側壁16aから貫通電極の凹部16側の端部が突出して、貫通電極13と加圧型85とが干渉するのを回避するためである。
【0059】
第2実施形態の凹部形成工程S35は、以下の手順で行われる。
まず、図11(a)に示すように、受型80の受け部80aにベース基板用ウエハ40をセットし、受型80をベース基板用ウエハ40とともに加熱炉(不図示)に配置する。そして、所定温度になるように加熱炉を加熱する。
【0060】
続いて、プレス機(不図示)等を利用して加圧型85によってベース基板用ウエハ40を押圧する。この結果、図11(b)に示すように、ベース基板用ウエハ40は座屈変形し、加圧型85と貫通電極13との干渉を回避しつつ、凹部16が形成される。この時点で貫通電極13の凹部16側は、第1側壁16aから突出しており、表面がベース基板用ウエハ40のガラス材料に覆われている。
【0061】
最後に、図11(c)に示すようにヨウ素ヨウ化カリウム溶液や王水(塩酸と硝酸との混合液)等によるエッチングやサンドブラスト等により、貫通電極13のうち、第1側壁16aから突出した部分を除去して、貫通電極13の表面を第1側壁16aから露出させる。以上で、凹部形成工程S35が終了する。
【0062】
(効果)
第2実施形態によれば、熱プレスにより、凹部16を精度良く簡単に形成することができる。特に、ベース基板用ウエハ40がガラス部材により形成されている場合に、熱プレスにより凹部16を形成するのが効果的である。
【0063】
なお、この発明は上述した実施の形態に限られるものではない。
第1実施形態および第2実施形態では、パッケージの内部にATカット型の圧電振動片4を封入した圧電振動子1を例にして説明をした。しかし、これに限られるものではなく、パッケージの内部に音叉型の圧電振動片を封入してもよい。また、圧電振動片以外の素子を封入してもよい。
【0064】
第1実施形態および第2実施形態では、ベース基板用ウエハ40に棒状の貫通電極13,14を圧入して配置している。しかし、例えば、ベース基板用ウエハ40に凹部を形成し、凹部に貫通電極13,14を挿入した後、ガラスフリットを充填して焼成することにより、ベース基板用ウエハ40に貫通電極13,14を配置してもよい。ただし、ベース基板用ウエハ40を研磨し、凹部16の第1側壁16a、第2側壁16b、およびベース基板2の下面Lから貫通電極13,14を露出させる必要がある。したがって、作業効率の点で、本実施形態に優位性がある。
【0065】
第1実施形態および第2実施形態では、ベース基板用ウエハ40に貫通電極13,14を圧入した後に、凹部16を形成している。しかし、キャビティ形成後に、貫通電極13,14を圧入してもよい。
【0066】
第1実施形態および第2実施形態では、第1側壁16aおよび第2側壁16bに貫通電極13,14を形成していた。しかし、貫通電極13および貫通電極14のいずれか一方のみが、第1側壁16aおよび第2側壁16bのいずれか一方に形成されていてもよい。少なくとも1つの貫通電極が側壁に形成されることで、パッケージサイズを縮小することができる。
【0067】
第1実施形態では、エッチングによりベース基板用ウエハ40に凹部16を形成している。しかし、例えば、サンドブラストにより凹部16を形成してもよい。
【0068】
第1実施形態の第2変形例では、貫通電極13,14がそれぞれ外側壁2a,2bから遠ざかるように斜めに形成していた。しかし、貫通電極13および貫通電極14のいずれか一方のみが、外側壁2a,2bから遠ざかるように斜めに形成してもよい。少なくとも1つの貫通電極が外側壁から遠ざかるように斜めに形成することで、パッケージ強度を向上させることができる。
【0069】
第1実施形態の第2変形例では、貫通電極13,14をベース基板用ウエハ40に圧入することで、外側壁2a,2bから遠ざかるように斜めに形成していた。しかし、例えば、第2実施形態のように熱プレスをした際に、ベース基板用ウエハ40を押圧したときの圧力を利用して貫通電極13,14を傾斜させてもよい。
【0070】
第2実施形態では、予めベース基板用ウエハ40に貫通電極13を圧入して配置した後にプレスにより凹部16を形成している。しかし、凹部16を形成した後に、貫通電極13を圧入して配置してもよい。
【0071】
第2実施形態では、貫通電極13は棒状に形成されており、凹部16形成後に、第1側壁16aから突出した貫通電極13を除去している。しかし、例えば、貫通電極13の凹部16側の端部を、第1側壁16aに沿わせるように斜めに形成してもよい。これにより、加圧型85に逃げ部85bを形成する必要がなくなるので、加圧型85の命数が向上する。ただし、貫通電極13を簡単に形成できる点で、第2実施形態に優位性がある。
【符号の説明】
【0072】
1・・・圧電振動子(パッケージ) 2・・・ベース基板(第1基板) 2a,2b・・・外側壁 4・・・圧電振動片(電子部品) 9,10・・・引き回し電極 13,14・・・貫通電極 16・・・凹部 16a,16b,16c,16d・・・側壁 16e・・・底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を封入するためのキャビティを形成可能な複数の基板を有し、
前記複数の基板のうち第1基板に、前記キャビティ用の凹部を形成すると共に、この凹部と前記第1基板の外面側との間を貫通する複数の貫通電極を設けたパッケージであって、
前記凹部の側壁に、前記電子部品と前記貫通電極とを電気的に接続するための引き回し電極を配索したことを特徴とするパッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載のパッケージであって、
前記凹部の前記側壁で、前記複数の貫通電極のうち少なくとも1つの貫通電極の一端と前記引き回し電極とを電気的に接続したことを特徴とするパッケージ。
【請求項3】
請求項2に記載のパッケージであって、
前記少なくとも1つの貫通電極の他端を前記第1基板の下面側に導出し、
前記少なくとも1つの貫通電極は、前記第1基板の任意の一側面に投影させた形状が、前記凹部から前記下面に向かうにしたがって、前記第1基板の外側壁から遠ざかるように斜めに形成されていることを特徴とするパッケージ。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のパッケージであって、
前記凹部の底面と、前記凹部の側壁との間の角度をθとしたとき、
前記角度θは、
95°≦θ≦140°
を満たすように設定されていることを特徴とするパッケージ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のパッケージを用いた圧電振動子であって、
前記複数の基板をガラスにより形成し、
前記凹部の内部に、前記電子部品として圧電振動片を封入したことを特徴とする圧電振動子。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−75053(P2012−75053A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220138(P2010−220138)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】