パッチサイズ決定方法、パッチサイズ決定システムおよび印刷装置
【課題】正確な測色結果が得られ且つ印刷に要する時間や消耗品を低減させるパッチのサイズを自動的に決定する。
【解決手段】対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷するテストパターン印刷工程と、上記印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する測色工程と、上記取得された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に取得する度合取得工程と、上記対象パッチのサイズ毎に取得される度合と所定の許容値とを比較することにより、上記度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するサイズ決定工程とを備える。
【解決手段】対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷するテストパターン印刷工程と、上記印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する測色工程と、上記取得された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に取得する度合取得工程と、上記対象パッチのサイズ毎に取得される度合と所定の許容値とを比較することにより、上記度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するサイズ決定工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッチサイズ決定方法、パッチサイズ決定システムおよび印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷装置によって、複数のカラーパッチの集合体としてのカラーチャートが印刷されている。印刷されたカラーチャートは、測色機によって個々のパッチが測色され、各パッチの測色値は、印刷装置のキャリブレーションやカラープロファイルの作成など、種々の処理や演算に供される。カラーチャートを構成する個々のパッチは、例えば矩形状であり、そのサイズ(縦幅・横幅)は、カラーチャートの印刷を行なうユーザーによって経験的に決定されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
測色機によってパッチを一つずつ測色する場合、パッチのサイズが測色結果を左右することがある。カラーチャートを構成するパッチのサイズが小さ過ぎる場合には、測色対象としているパッチの色のみを純粋に得ることが難しい。つまり、測色対象のパッチが小さいと、このパッチに隣接している他のパッチの色の影響が測色対象のパッチの測色結果に反映され易く、結果、測色対象のパッチの色の正確なデータを得られないことがある。
【0004】
一方、上述したような他のパッチの色の影響を排除するために、パッチのサイズを大きな値に設定してカラーチャートを印刷すると、パッチが大きいゆえにカラーチャートの印刷に長時間を要するとともにインクや用紙の消費量も増大してしまう。また、用紙の排紙方向側に測色機を備えた印刷装置(測色機付きプリンター)を用いて、カラーチャートの印刷および測色を連続的に行なう場合がある。測色機付きプリンターにおいては、印刷したカラーチャート(印刷部から排紙したカラーチャート)を測色機の測色位置に位置決めする際に、カラーチャートを紙送り方向の逆方向に搬送する(バックフィードする)必要性が生じることがある。バックフィードの距離は、カラーチャートを構成するパッチのサイズが大きいほど長くなってしまうが、一般的にバックフィードの距離が長くなればなるほど、上記位置決めの誤差も大きくなる傾向がある。
【0005】
つまり、パッチのサイズは小さすぎる場合も大きすぎる場合もそれぞれ上述したようなデメリットを生じさせるが、全てのデメリットを無くす或いは最小限にする最適なパッチのサイズを、作業者が自己の判断で決定することは困難であった。
【0006】
本発明は上記課題にかんがみてなされたもので、正確な測色結果が得られ且つ印刷に要する時間や消耗品を低減させるパッチのサイズを自動的に決定することが可能な、パッチサイズ決定方法、パッチサイズ決定システムおよび印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のパッチサイズ決定方法は、対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷するテストパターン印刷工程と、上記印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する測色工程と、上記取得された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に取得する度合取得工程と、上記対象パッチのサイズ毎に取得される度合と所定の許容値とを比較することにより、上記度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するサイズ決定工程とを備える。本発明によれば、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を、対象パッチの複数のサイズ毎に取得することにより、当該度合が許容値以下のサイズであってその中で最小のサイズを、パッチサイズとして決定することができる。つまり、このように決定されたパッチサイズ(最適サイズ)を、以降、カラーチャートの印刷時に採用することにより、カラーチャートを短時間かつインクや用紙の使用量を抑えて印刷することができ、さらに、カラーチャートを測色したときにパッチ毎の正確な測色値が得られるようになる。
【0008】
上記テストパターン印刷工程は、矩形の対象パッチの縦および横のうち一方のサイズを変化させ他方のサイズを固定値とすることにより、対象パッチのサイズが異なる複数のテストパターンを印刷する第一印刷工程を含み、上記サイズ決定工程は、第一印刷工程によって印刷されたテストパターンの対象パッチの測色値に基づいて取得された、対象パッチの上記一方のサイズの違い毎の上記度合と、所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチの上記一方のサイズのうち最小値を決定する第一サイズ決定工程を含み、さらに、上記テストパターン印刷工程は、対象パッチの縦および横のうち上記一方のサイズを上記第一サイズ決定工程において決定された最小値に固定し上記他方のサイズを変化させることにより、対象パッチのサイズが異なる複数のテストパターンを印刷する第二印刷工程を含み、上記サイズ決定工程は、第二印刷工程によって印刷されたテストパターンの対象パッチの測色値に基づいて取得された、対象パッチの上記他方のサイズの違い毎の上記度合と、所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチの上記他方のサイズのうち最小値を決定する第二サイズ決定工程を含み、さらに、上記一方のサイズを上記第一サイズ決定工程で決定した最小値とし上記他方のサイズを当該第二サイズ決定工程で決定した最小値とした矩形を、上記パッチサイズとして決定するとしてもよい。当該構成によれば、パッチの最適サイズにおける縦幅と横幅とを、それぞれ正確かつ容易に決定することができる。
【0009】
パッチサイズ決定方法では、同一サイズの対象パッチの測色値の平均値と対象パッチの色の基準値との差を、対象パッチのサイズ毎の上記度合として取得するとしてもよい。当該構成によれば、サイズ毎の上記度合を、正確かつ容易に得ることができる。
【0010】
対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチの色と対象パッチ間の領域の色との組み合わせを変えて複数印刷する初期印刷工程と、上記初期印刷工程において印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する初期測色工程と、上記初期測色工程において取得された測色値に基づいて、上記度合を上記色の組み合わせ毎に取得する初期度合取得工程と、上記初期度合取得工程において取得される度合が最大となる色の組み合わせを特定する特定工程と、を上記テストパターン印刷工程より前に行なうとともに、上記テストパターン印刷工程では、対象パッチの色と対象パッチ間の領域の色との組み合わせを上記特定された組み合わせとしたテストパターンを印刷するとしてもよい。当該構成によれば、対象パッチのサイズを異ならせてテストパターンを複数印刷する前に、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響を最も顕著に把握し易い対象パッチの色と対象パッチ間の領域の色との組み合わせを取得することができる。そのため、最終的に決定されるパッチサイズは、どのような色のパッチの測色においても正確な測色結果が得られるサイズのうちの最小サイズとなる。
【0011】
上記初期度合取得工程は、上記初期印刷工程において印刷された一つのテストパターンを構成する対象パッチの測色値の平均値と、当該一つのテストパターンを構成する対象パッチの色の基準値との差を、当該一つのテストパターンにおける上記色の組み合わせについての上記度合として取得するとしてもよい。当該構成によれば、色の組み合わせ毎の上記度合を正確かつ容易に得ることができる。
【0012】
パッチサイズ決定方法では、対象パッチと対象パッチと色が異なる隣接パッチとを交互に配置した交互パターン領域と、対象パッチを連続して配置した連続パターン領域と、を少なくとも含むテストパターンを印刷し、交互パターン領域における対象パッチの測色値の平均値を算出し、連続パターン領域における対象パッチの測色値の平均値を上記基準値として算出し、当該算出した両平均値の差を上記度合として取得するとしてもよい。当該構成によれば、交互パターン領域の測色結果と連続パターン領域の測色結果とを比較することにより、ある対象パッチと隣接パッチとの色の組み合わせについての上記度合(隣接パッチの色の影響の度合)や、ある対象パッチのサイズについての上記度合(隣接パッチの色の影響の度合)を正確かつ容易に得ることができる。
【0013】
本発明の技術的思想は、パッチサイズ決定方法以外にも、装置や、コンピューター読取可能な記録媒体に記録されたプログラムなど、種々の態様にて実現可能である。
例えば、印刷指示および測色指示を制御対象に出力する制御装置と、制御装置から出力される指示に基づいた処理を実行する印刷装置とを備えるパッチサイズ決定システムであって、上記印刷装置は、上記印刷指示に基づいて、対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷し、上記測色指示に基づいて、上記テストパターンを測色するとともに当該測色によって取得した対象パッチの測色値を上記制御装置に出力し、上記制御装置は、上記出力された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に算出し、このサイズ毎の度合と所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するシステムを把握することができる。また、当該システムを単一の装置で実現してもよく、その一例として、対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷するテストパターン印刷部と、上記印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する測色部と、上記取得された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に取得する度合取得部と、上記対象パッチのサイズ毎に取得される度合と所定の許容値とを比較することにより、上記度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するサイズ決定部とを備える印刷装置を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】パッチサイズ決定システムの概略ブロック図である。
【図2】プリンターの外観側面図の一例である。
【図3】測色乾燥ユニットの内部構成の一例を示す図である。
【図4】パッチサイズ決定処理の一部(色組合せ特定処理)を示すフローチャートである。
【図5】色組合せ特定処理において印刷するテストパターンを例示した図である。
【図6】パッチサイズ決定処理の一部(第一サイズ決定処理)を示すフローチャートである。
【図7】パッチサイズ決定処理の一部(第二サイズ決定処理)を示すフローチャートである。
【図8】第一サイズ決定処理において印刷するテストパターンを例示した図である。
【図9】第一サイズ決定処理において印刷するテストパターンを例示した図である。
【図10】第二サイズ決定処理において印刷するテストパターンを例示した図である。
【図11】第二サイズ決定処理において印刷するテストパターンを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.パッチサイズ決定システムの概略構成
図1は、本実施形態にかかるパッチサイズ決定システム30を示している。システム30は、概略、コンピューター10(制御装置)およびプリンター20からなる。システム30は、複数の装置の集まりではなく単一の装置によって実現してもよい。コンピューター10では、演算処理の中枢をなすCPU11がシステムバス10aを介してコンピューター10全体を制御する。バス10aには、ROM12、RAM13、各種インターフェース(I/F)17a〜17cが接続され、ハードディスクドライブ(HDDRV)15を介してハードディスク(HD)14が接続されている。HD14にはオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションプログラム(APL)14aやプリンタードライバー(PD)14b等が記憶されており、これらはCPU11によって適宜RAM13に転送され実行される。
【0016】
コンピューター10は、APL14aやPD14bに従った処理の一種として、後述のパッチサイズ決定処理(の一部)を実行する。I/F17aには所定の画像データに基づいて当該データに対応する画像を表示するディスプレー18aが接続され、I/F17bにはキーボード18bやマウス18cが接続され、プリンターI/F17cには例えばシリアルI/Fケーブルを介してプリンター20が接続されている。
【0017】
プリンター20は、コンピューター10によって制御される印刷装置である。プリンター20は、印刷用紙への印刷機能だけでなく、印刷物を測色する測色機能をも備える測色部付きプリンターである。プリンター20では、通信I/F24、プリンターコントロールIC25、測色コントロールIC26等がバス32を介して接続されている。プリンターコントロールIC25は、CPU21、ROM22、RAM23を備え、測色コントロールIC26は、I/F26e、CPU26f、ROM26g、RAM26hを備える。通信I/F24はプリンターI/F17cと接続され、コンピューター10とプリンター20は、プリンターI/F17cおよび通信I/F24を介して双方向通信を実現する。通信I/F24はコンピューター10から送信されるインク種類別のラスターデータを受信可能である。
【0018】
プリンターコントロールIC25においては、CPU21が、ROM22に記憶された所定のソフトウェア(プリンターコントローラー)に従った処理を実行する。プリンターコントロールIC25は、主に印刷処理のための各種制御を実行するICであり、印刷ヘッド25a、ヘッド駆動部25b、キャリッジ機構25c、紙送り機構25dの各部と接続して各部を制御する。印刷ヘッド25aは、複数のインク種類(例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンダ等)に夫々対応する複数のインクカートリッジと、各インク種類に対応して設けられた複数のノズル列とからなり、インクカートリッジが充填したインクをノズル列からインク滴として吐出することで印刷用紙に画像を形成する。プリンターコントロールIC25は、ヘッド駆動部25bに対して、上記ラスターデータに対応する印加電圧データを出力する。ヘッド駆動部25bは印加電圧データから印刷ヘッド25aの各ノズル列に内蔵された圧電素子への印加電圧パターン(駆動波形)を生成して出力し、印刷ヘッド25aにインク種類毎のインク滴(ドット)を吐出させる。
【0019】
キャリッジ機構25cは、プリンターコントロールIC25に制御されてプリンター20が備える図示しないガイドレールに沿って不図示のキャリッジを往復動させる駆動装置である。キャリッジには印刷ヘッド25aが搭載され、印刷ヘッド25aがガイドレールに沿って往復動(走査)する。紙送り機構25dは、プリンターコントロールIC25によって制御されることにより、不図示の紙送りローラーによって印刷用紙をキャリッジの往復動方向(主走査方向)と略直交する向き(紙送り方向)に所定の速度で搬送する。紙送り機構25dは、必要に応じて印刷用紙をバックフィードによって搬送することも可能である。なお、プリンター20としては、サーマル式や昇華型など他の仕組みで印刷画像を形成するものや、ラインヘッド方式のプリンターを採用してもよい。
【0020】
測色コントロールIC26においては、CPU26fが、ROM26gに記憶された所定のソフトウェア(測色コントローラー)に従った処理を実行する。測色コントロールIC26は、主に測色処理のための各種制御を実行するICであり、測色部26a、測色部移動機構26b、押さえ板駆動機構26c、乾燥機26dの各部と接続して各部を制御する。測色部26aは、測色対象に色検出部を向けることにより、国際照明委員会(CIE)で規定されたL*a*b*表色系(以下、「*」は省略)に基づく複数の色成分L,a,bからなる色彩値を測色値として取得可能であり、測色部26aが取得した測色値はコンピューター10に出力される。Lab色空間はデバイスに依存しない均等色空間である。むろん、測色する色空間は、CIE規定のL*u*v*色空間、CIE規定のXYZ色空間、RGB色空間等であってもよい。
【0021】
測色部移動機構26bは、測色コントロールIC26に制御されて、後述の押さえ板に沿って測色部26aを往復動させる駆動装置である。押さえ板駆動機構26cは、測色コントロールIC26の制御に基づいて、印刷用紙を押さえ板に押さえさせるための駆動装置である。乾燥機26dは、測色部26a近傍に配設され、測色コントロールIC26の制御に基づき温風を印刷用紙に対して送る処理を行い、印刷用紙の画像を強制的に乾燥させる。つまりプリンター20によれば、印刷用紙への画像の印刷、乾燥、測色といった一連の処理を一台で行うことが可能となる。
【0022】
図2は、プリンター20の外観の一例を、側面から示している。
プリンター20は、本体29の頭頂部付近に印刷用紙M(ロール紙M)を収容しており、この印刷用紙Mを本体29前方側に形成された斜面29aに略沿わせて図中の紙送り方向に搬送する。斜面29aの所定位置にはケーシング27が設置されている。ケーシング27内には印刷ヘッド25aが収容される。印刷ヘッド25aは不図示の上記ガイドレールに沿って、図2の表面に対して垂直な方向(上記主走査方向)に移動する。斜面29a上であってケーシング27よりも紙送り方向下流の所定位置には、測色乾燥ユニット28が設置されている。測色乾燥ユニット28は内部に測色部26aおよび乾燥機26dを収容した部品であり、斜面29aの決まった位置に取り付けられる。印刷用紙Mは搬送される際、ケーシング27、測色乾燥ユニット28のそれぞれ下方を通過する。
【0023】
図3は、測色乾燥ユニット28の内部を、図2内における前方から斜面29aに正対した視点で示している。測色乾燥ユニット28はその長手方向が上記主走査方向と平行となるように取り付けられ、本実施形態では、紙送り方向の上流側に測色部26aを収容し、測色部26aよりも紙送り方向下流側に乾燥機26dを収容している。測色部26aは色検出部26a1を斜面29a側へ向けた状態で、測色乾燥ユニット28の端における初期位置に待機している。測色部26aの初期位置の隣には、主走査方向に向かって、長板状の押さえ板28aが設置されている。押さえ板28aは、斜面29aから所定距離だけ離間した位置において待機しており、所定のタイミングで押さえ板駆動機構26cによって駆動されることにより、測色乾燥ユニット28の下方に搬送された印刷用紙Mを上から押さえ付ける。
【0024】
測色部26aは、測色部移動機構26bによって押さえ板28aの上を主走査方向に移動する。押さえ板28aの略中央には、長手方向に沿って長穴28a1が貫通して形成されている。移動する測色部26aは、長穴28a1を介して色検出部26a1を斜面29a上の印刷用紙Mに相対させることで、印刷用紙Mに印刷された画像を測色する。乾燥機26dは、内部に熱源としてのヒーターと当該ヒーターが発生させた暖気を温風として乾燥機26d外に送出するファンとを備えている。乾燥機26dには、測色乾燥ユニット28の内側を向いた壁面に送風口26d1が形成さており、ファンは送風口26d1から乾燥機26d外部に向けて温風を送出する。乾燥機26d下方における測色乾燥ユニット28の床面には、送風口26d1の近傍から測色乾燥ユニット28の長手方向に向かって長穴28bが貫通して形成されている。当該構成により、乾燥機26dが送風口26d1から送出した温風は長穴28bを通過して測色乾燥ユニット28下方に流れ、斜面29a上の印刷用紙Mを乾燥させる。なお、印刷用紙Mを搬送するプリンター20の面は図2のような斜面でなくてもよく、水平面であってもよい。
【0025】
2.パッチサイズ決定処理
図4は、システム30が実行するパッチサイズ決定処理の一部をフローチャートにより示している。パッチサイズ決定処理とは、パッチサイズ決定処理終了後にプリンター20で印刷するパッチのサイズを決定する処理であって、概略的には、できるだけ小さく、かつ、そのサイズのパッチを測色したときに周囲の色の影響を受けない正確な測色結果が得られる程度のサイズを決定する処理である。また、図4に示した処理を、色組合せ特定処理と呼ぶ。
ステップS(以下、“ステップ”の表記を省略)100では、コンピューター10は、テストパターンTP1を印刷するための色の組み合わせを一つ設定する。
【0026】
図5は、テストパターンTP1の一例を示している。テストパターンTP1とは、後述のS110において印刷されるパターンであり、概略的には、交互パターン領域A1および連続パターン領域A2を含むパターンである。交互パターン領域A1は、対象パッチP1と隣接パッチP2とを紙送り方向および主走査方向にそれぞれ交互に配置した(対象パッチP1と隣接パッチP2とを市松模様状に配した)領域である。交互パターン領域A1を含む点で、テストパターンTP1は、対象パッチP1が間隔を空けて複数配置されたテストパターンの一種に該当する。連続パターン領域A2は、対象パッチP1を一定方向に沿って連続して配した領域である。図5の例では、主走査方向を向いた2つの連続パターン領域A2によって交互パターン領域A1の上下を挟むレイアウトにて、テストパターンTP1を表している。
【0027】
対象パッチP1は、後述するように、その測色値が本発明における“度合”の計算に用いられるパッチである。一方、隣接パッチP2は、対象パッチP1外の色を表すための領域である。テストパターンTP1を構成する対象パッチP1および隣接パッチP2は、いずれも矩形状であり一定の大きさである。本実施形態では、テストパターンTP1の対象パッチP1および隣接パッチP2のサイズは、対象パッチP1の測色結果が隣接パッチP2の色の影響を受けやすいように、比較的小さなサイズとしている。
【0028】
S100で設定する色の組み合わせとは、対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色との組み合わせを意味し、色組合せ特定処理において最終的に特定される色の組み合わせの一候補となる。コンピューター10においては、HD14等の所定の記録領域に、対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色との組み合わせが予め複数記録されており、S100では、かかる複数の組み合わせの中から一つの組み合わせを選択して設定する。予め記録されている色の各組み合わせは、2色間の明度差が比較的大きい色の組み合わせとなっている。明度差が大きい2色間においては、その2色が隣り合っている場合に一方の色を測色したときに、当該一方の色の測色結果において他方の色の影響が出やすいからである。具体的には、黒と白、黒と黄色、白と黒、黄色と黒…などといった複数の組み合わせが、対象パッチP1の色および隣接パッチP2の色の組み合わせとして記録されている。なお、S100では、コンピューター10は、ユーザーのキーボード18bやマウス18c等の入力操作に応じて、対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色との組み合わせを設定してもよい。
【0029】
S110では、システム30は、対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色が直近のS100で設定した色の組み合わせとなった上記テストパターンTP1を印刷する。具体的には、コンピューター10は、上記S100で設定した色の組み合わせによる色の対象パッチP1および隣接パッチP2を図5に示したレイアウトにて配置した画像を表現したカラー画像データ(各画素がプリンター20で用いられるインク種類毎の階調値で表現されたカラー画像データ)を生成する。次に、コンピューター10は、PD14bに従った処理として、カラー画像データを対象とし、ディザ法や誤差拡散法など公知の手法を用いたハーフトーン処理を実行し、画素毎かつインク種類毎にドットの吐出/非吐出を規定したハーフトーンデータを生成する。さらにコンピューター10は、PD14bに従った処理として、ハーフトーンデータに対して所定のラスターライズ処理を施してプリンター20が印刷する順番に並べ替え、インク種類毎のラスターデータを生成し、ラスターデータをプリンターI/F17cを介してプリンター20に順次出力する。この結果、プリンター20では、プリンターコントロールIC25による制御によって、印刷ヘッド25a、ヘッド駆動部25b、キャリッジ機構25cおよび紙送り機構25dが駆動制御され、ラスターデータに基づいてテストパターンTP1を印刷用紙に印刷する。
【0030】
S120では、システム30は、直近のS110で印刷したテストパターンTP1を測色し、少なくとも、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値と、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値とを取得する。
具体的には、コンピューター10は、プリンター20に対して印刷用紙の搬送指示と、測色指示とを出力する。搬送指示を入力したプリンター20では、プリンターコントロールIC25が、紙送り機構25dを駆動制御することにより、テストパターンTP1の所定位置(テストパターンTP1内の主走査方向を向く各パッチ行のうち、用紙の先頭に最も近いパッチ行)が測色部26aによる測色範囲に入るように、テストパターンTP1が印刷された印刷用紙を必要距離だけ搬送させる。測色部26aの測色範囲とは、押さえ板28aの長穴28a1内の所定範囲である。この結果、テストパターンTP1内の一つのパッチ行が、長穴28a1を介して測色部26aの色検出部26a1と対面する。
【0031】
次に、上記測色指示を入力したプリンター20では、測色コントロールIC26が、押さえ板駆動機構26c、測色部移動機構26bおよび測色部26aをそれぞれ駆動制御する。すると、押さえ板駆動機構26cは、押さえ板28aを降下させて測色乾燥ユニット28下の印刷用紙を押さえさせる。測色部移動機構26bは、測色部26aを主走査方向に移動させ、移動中の測色部26aは、所定の測色周期にて測色を繰り返すことにより、テストパターンTP1の一つのパッチ行を構成するパッチ毎の測色値を順次取得する。最初のパッチ行の測色が終了したら、プリンター20では、パッチ一行分の用紙の搬送とパッチ一行分の測色とを、テストパターンTP1内のパッチ行が終わるまで交互に繰り返す。この結果、測色コントロールIC26は、テストパターンTP1内の各パッチの測色値を取得することができ、取得した各パッチの測色値を、通信I/F24を介してコンピューター10に送信する。よって、コンピューター10は、テストパターンTP1内の各パッチの測色値を取得することができる。
【0032】
S130では、コンピューター10は、直近のS120で取得したテストパターンTP1の各パッチの測色値に基づいて、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合を算出し取得する。具体的には、コンピューター10は、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(Lab)を算出するとともに、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(基準値Lab)を算出する。そして、この両平均値の差(色差ΔE)を、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合として取得する。
【0033】
つまり、連続パターン領域A2では、対象パッチP1が連続しているため、その領域における対象パッチP1個々の測色値は対象パッチP1以外の色の影響を受けておらず、安定した値であると言える。一方、交互パターン領域A1では、対象パッチP1と、対象パッチP1とは異なる色の隣接パッチP2とが隣り合っているため、測色部26aで一つの対象パッチP1を測色した場合であっても、その測色結果には周囲の隣接パッチP2の色の影響が少なからず乗ってしまい、対象パッチP1の色本来の色彩値からずれた値が得られてしまう。従って、連続パターン領域A2の対象パッチP1の測色値の平均値に対する、交互パターン領域A1の対象パッチP1の測色値の平均値の差は、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチの色の影響の程度(度合)を表していると言える。
【0034】
S140では、コンピューター10は、設定すべき色の組み合わせの全てについて、テストパターンTP1の印刷から上記度合(色差ΔE)の取得までの処理を終えたか否か判定し、終えたと判定した場合にはS150に進む。一方、終えていないと判定した場合にはS100に戻り、新たにテストパターンTP1を印刷するための色の組み合わせを一つ設定し、S110以降の処理を繰り返す。設定すべき色の組み合わせとは、HD14等の記録領域に予め記録されている対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色との組み合わせや、ユーザーが入力した、対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色との組み合わせ等を指す。
【0035】
S150では、コンピューター10は、上記のようにテストパターンTP1毎(対象パッチP1および隣接パッチP2の色の組み合わせ毎)に算出された上記度合としての色差ΔEの中から、最大値(最大色差)を選択する。そして、当該選択した最大色差が得られた対象パッチP1および隣接パッチP2の色の組み合わせを、後述のテストパターンTP2,TP3の印刷に用いる色の組み合わせとして特定する。このように、S100で繰り返し設定した色の組み合わせの中からS150において一つの組み合わせを特定することにより、色組合せ特定処理が終了する。S100,S110の処理は初期印刷工程に該当し、S120の処理は初期測色工程に該当し、S130の処理は初期度合取得工程に該当し、S150の処理は特定工程に該当する。なお、上記度合(色差ΔE)を色の組み合わせ毎に算出する処理(S130)は、一つのテストパターンTP1の測色値を取得し終える度に行なうのではなく、全てのテストパターンTP1の印刷・測色を終えた後で行なうとしてもよい。
【0036】
上記では、テストパターンTP1は、対象パッチP1および隣接パッチP2による交互パターン領域A1と、対象パッチP1による連続パターン領域A2とを含むとしたが、テストパターンTP1は、さらに隣接パッチP2を主走査方向に連続させて構成した第二の連続パターン領域を含むとしてもよい。一つのテストパターンTP1の中に、対象パッチP1、隣接パッチP2それぞれによる連続パターン領域を含む構成とすれば、一つのテストパターンTP1の測色結果に基づいて、色の組み合わせ2組分の上記度合を算出することができる。つまり、黒パッチと白パッチとによってテストパターンTP1を印刷した場合、その測色結果から、黒パッチを対象パッチP1(白パッチは隣接パッチP2)とした場合の上記度合および、白パッチを対象パッチP1(黒パッチは隣接パッチP2)とした場合の上記度合をそれぞれ取得でき、テストパターンTP1のトータルの印刷枚数を低減させることができる。
【0037】
図6,7は、システム30が実行するパッチサイズ決定処理の一部であって、上記色組合せ特定処理に続いて行なわれる処理をフローチャートにより示している。図6に示した処理を第一サイズ決定処理と呼び、図7に示した処理を第二サイズ決定処理と呼ぶ。
まず、第一サイズ決定処理について説明する。S160では、コンピューター10は、後述のS170でテストパターンTP2を印刷するときに採用するパッチサイズを一つ設定する。
【0038】
図8,9は、テストパターンTP2,TP2をそれぞれ例示している。各テストパターンTP2は、対象パッチP1と隣接パッチP2とを紙送り方向および主走査方向にそれぞれ交互に配置した交互パターン領域A1および対象パッチP1を主走査方向に沿って連続させた連続パターン領域A2を含む点で、テストパターンTP1と同じである。しかし、各テストパターンTP2はパッチのサイズが互いに異なっている。具体的には、第一サイズ決定処理では、テストパターンTP2毎に、パッチの縦幅および横幅のうち一方のサイズ(横幅)を予め設定されている最小値から最大値までの間で段階的に変化させ、他方のサイズ(縦幅)を全テストパターンTP2において固定値(最大値)とすることにより、パッチのサイズが異なる複数のテストパターンTP2を印刷する。
【0039】
縦幅とは、紙送り方向におけるパッチの幅であり、横幅とは、主走査方向におけるパッチの幅である。図8では、縦幅が設定可能な最大値であり、横幅が設定可能な最小値となったパッチで構成されたテストパターンTP2を示し、図9では、縦幅が同じく設定可能な最大値であり、横幅が図8のパッチよりも長いパッチで構成されたテストパターンTP2を示している。本実施形態では、最初のS160では基本的に、縦幅=設定可能な最大値、横幅=設定可能な最小値のパッチサイズを設定する。
【0040】
S170では、システム30は、パッチ(対象パッチP1、隣接パッチP2)のサイズが直近のS160で設定したサイズとなったテストパターンTP2を印刷する。つまり、コンピューター10は、上記S150(図4)で特定された色の組み合わせによる色の対象パッチP1および隣接パッチP2であって上記S160で設定されたサイズとなった各パッチを図8等に示したレイアウトにて配置した画像を表現したカラー画像データを生成し、このカラー画像データに所定のハーフトーン処理やラスターライズ処理を施し、その結果生成したラスターデータをプリンター20に順次出力する。そしてプリンター20は、プリンターコントロールIC25による制御によって、ラスターデータに基づいてテストパターンTP2を印刷用紙に印刷する。
【0041】
S180では、システム30は、直近のS170で印刷したテストパターンTP2を測色し、テストパターンTP2における、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値と、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値とを取得する。S180の処理の流れは、上記S120と同様である。
【0042】
S190では、コンピューター10は、直近のS180で取得したテストパターンTP2の各パッチの測色値に基づいて、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合を算出し取得する。つまり、上記S130と同様に、コンピューター10は、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(Lab)および、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(基準値Lab)を算出し、算出した両平均値の差(色差ΔE)を、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合として取得する。
【0043】
S200では、コンピューター10は、上記S160で設定すべき複数のパッチサイズ(パッチの横幅を設定可能な最小値から最大値まで段階的に変化させたときの各サイズ)の全てについて一通り設定して各テストパターンTP2の印刷から上記度合(色差ΔE)の取得までの処理を終えたか否かを判定し、終えたと判定した場合にはS210に進む。一方、終えていないと判定した場合にはS160に戻り、新たにテストパターンTP2を印刷するためのパッチサイズを一つ設定し、S170以降の処理を繰り返す。
【0044】
S210では、コンピューター10は、上記S190の度に算出された各色差ΔE(パッチの横幅の違い毎の色差ΔE)のうち、予め設定した許容値(許容色差)以下の色差ΔEを特定する。そして、このように特定した各色差ΔEに一対一で対応する各横幅(パッチの横幅)のうち、最も短い横幅を第一サイズとして決定する。ただし、上記S200においては、上述した判定の代わりに、直近のS190で取得した色差ΔEと許容色差とを逐一比較し、色差ΔEが許容色差以下となった時点で“Yes”と判定してS210に進んでもよい。つまり、第一サイズ決定処理では、テストパターンTP2のパッチサイズ(パッチの横幅)は、S170の印刷を繰り返す毎に大きくなるため、S190で取得される色差ΔEは基本的には、回を重ねる毎に小さくなると考えられる。従って、S190で取得した色差ΔEが許容色差以下となった時点で、それ以上のテストパターンTP2の印刷を止め、直近に得た色差ΔEに対応するパッチの横幅を上記第一サイズとして決定してもよい。
【0045】
次に、第二サイズ決定処理について説明する。
S220(図7)では、コンピューター10は、後述のS230でテストパターンTP3を印刷するときに採用するパッチサイズを一つ設定する。
【0046】
図10,11は、テストパターンTP3,TP3をそれぞれ例示している。各テストパターンTP3も、交互パターン領域A1および連続パターン領域A2を含む点で、テストパターンTP1,TP2と同じである。各テストパターンTP3はパッチのサイズが互いに異なっている。第二サイズ決定処理では、テストパターンTP3毎に、パッチの縦幅および横幅のうちテストパターンTP2の印刷時に固定値とした方のサイズ(縦幅)を予め設定されている最小値から最大値までの間で段階的に変化させ、テストパターンTP2の印刷時に可変としたサイズ(横幅)を上記決定された第一サイズに固定することにより、パッチのサイズが異なる複数のテストパターンTP3を印刷する。図10では、横幅が上記第一サイズであり、縦幅が設定可能な最小値となったパッチで構成されたテストパターンTP3を示し、図11では、横幅が同じく上記第一サイズであり、縦幅が図10のパッチよりも長いパッチで構成されたテストパターンTP3を示している。本実施形態では、最初のS220では基本的に、縦幅=設定可能な最小値、横幅=第一サイズのパッチサイズを設定する。
【0047】
S230では、システム30は、パッチ(対象パッチP1、隣接パッチP2)のサイズが直近のS220で設定したサイズであるテストパターンTP3を印刷する。つまり、コンピューター10は、上記S150(図4)で特定された色の組み合わせによる色の対象パッチP1および隣接パッチP2であって上記S220で設定されたサイズとなった各パッチを図10等に示したレイアウトにて配置した画像を表現したカラー画像データを生成し、このカラー画像データに所定のハーフトーン処理やラスターライズ処理を施し、その結果生成したラスターデータをプリンター20に順次出力する。そしてプリンター20は、プリンターコントロールIC25による制御によって、ラスターデータに基づいてテストパターンTP3を印刷用紙に印刷する。
【0048】
S240では、システム30は、直近のS230で印刷したテストパターンTP3を測色し、テストパターンTP3における、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値と、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値とを取得する。S240の処理の流れは、上記S120,S180と同様である。
【0049】
S250では、コンピューター10は、直近のS240で取得したテストパターンTP3の各パッチの測色値に基づいて、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合を算出し取得する。つまり、上記S130,S190と同様に、コンピューター10は、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(Lab)および、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(基準値Lab)を算出し、算出した両平均値の差(色差ΔE)を、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合として取得する。
【0050】
S260では、コンピューター10は、上記S220で設定すべき複数のパッチサイズ(パッチの縦幅を設定可能な最小値から最大値まで段階的に変化させたときの各サイズ)の全てについて一通り設定して各テストパターンTP3の印刷から上記度合(色差ΔE)の取得までの処理を終えたか否かを判定し、終えたと判定した場合にはS270に進む。一方、終えていないと判定した場合にはS220に戻り、新たにテストパターンTP3を印刷するためのパッチサイズを一つ設定し、S230以降の処理を繰り返す。
【0051】
S270では、コンピューター10は、上記S250の度に算出された各色差ΔE(パッチの縦幅の違い毎の色差ΔE)のうち、予め設定した許容値(許容色差)以下の色差ΔEを特定する。そして、このように特定した各色差ΔEに一対一で対応する各縦幅(パッチの縦幅)のうち、最も短い縦幅を第二サイズとして決定する。ただし第二サイズ決定処理においても、上記S260では、上述した判定の代わりに、直近のS250で取得した色差ΔEと許容色差とを逐一比較し、色差ΔEが許容色差以下となった時点で“Yes”と判定してS270に進んでもよい。つまり第二サイズ決定処理でも、テストパターンTP3のパッチサイズ(パッチの縦幅)は、S230の印刷を繰り返す毎に大きくなるため、S250で取得される色差ΔEは回を重ねる毎に小さくなると考えられる。従って、S250で取得した色差ΔEが許容色差以下となった時点で、それ以上のテストパターンTP3の印刷を止め、直近に得た色差ΔEに対応するパッチの縦幅を上記第二サイズとして決定してもよい。
【0052】
最後に、S280においてコンピューター10は、上記S210で決定した第一サイズと上記S270で決定した第二サイズとをそれぞれ横幅・縦幅とした矩形を、最終的(最適)なパッチサイズ(PS)14cとして決定し、当該パッチサイズ14cをHD14等の所定の記録領域に情報として記録し、処理を終える。以降、システム30(プリンター20)では、上記のように最終的に決定したパッチサイズのパッチから構成されるカラーチャート等を、キャリブレーションやカラープロファイルの作成など種々の目的に応じて印刷することになる。なお、S160,S170,S220,S230の処理はテストパターン印刷工程に該当し、S180,S240の処理は測色工程に該当し、S190,S250の処理は度合取得工程に該当し、S200,S210,S260,S270,S280の処理はサイズ決定工程に該当する。
【0053】
ここで、パッチサイズ決定処理の開始から終わりまで、印刷や測色時の各種条件を極力不変とすることが望ましい。具体的には、パッチサイズ決定処理の途中でのインクカートリッジの交換や印刷用紙の種類変更等は避け、また、周囲の気温や湿度が安定した環境で処理を行う。また、色組合せ特定処理、第一サイズ決定処理、第二サイズ決定処理のそれぞれにおいて、各テストパターンについて印刷後測色するまでの時間(印刷物を自然乾燥させる時間)も、各テストパターンについて同じとする。つまり、消耗品の交換等や周囲の環境変化や乾燥時間の違いは、各テストパターンの印刷結果や測色結果に変化を与える要因となる。そのため、これら要因をできるだけ取り除くことで、対象パッチの測色結果における周囲の色の影響度合を、純粋に、対象パッチと周囲との色の組み合わせや対象パッチのサイズ変化に応じて検出するようにしている。
【0054】
上記パッチサイズ決定処理では、第一サイズ決定処理においてパッチの横幅を変化させてその中で最適な横幅を決定し、第二サイズ決定処理においてパッチの縦幅を変化させてその中で最適な縦幅を決定したが、逆に、第一サイズ決定処理においてパッチの縦幅を変化させて最適な縦幅を決定し、第二サイズ決定処理においてパッチの横幅を変化させて最適な横幅を決定する構成でもよい。また、一回の印刷処理(S110,S170,S230等)で複数のテストパターンをまとめて印刷し、その後の測色処理(S120,S180,S240等)で複数のテストパターンをまとめて測色してもよい。このようにすれば、パッチサイズ決定処理に要する時間を全体的に短縮することができる。むろん、複数のテストパターンをまとめて印刷・測色した場合であっても、測色結果に応じて算出する上記度合は、対象パッチおよび隣接パッチの色の一つの組み合わせ毎、或いはパッチのサイズ毎の値となる。
【0055】
さらに、パッチサイズ決定処理では、色組合せ特定処理後におけるパッチサイズを変更したテストパターンの印刷・測色を、必ずしも第一サイズ決定処理と第二サイズ決定処理とに分けて行なわなくてもよい。つまり、色組合せ特定処理後においては、上記のような対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、テストパターン毎にパッチの縦幅・横幅の両方を変化させて複数印刷し、各テストパターンの測色結果に基づいて、パッチサイズ毎の上記度合を取得し、パッチサイズ毎の上記度合と許容色差との比較に基づいて最適なパッチサイズを決定してもよい。
【0056】
上述したように、測色部26aは、押さえ板28aの長穴28a1を介して印刷用紙上の印刷画像を測色する。従って、測色部26aによる測色可能な範囲は、長穴28a1の大きさによって制限されていると言える。そこで、テストパターン(テストパターンPT2,PT3)を印刷する際に、コンピューター10は、パッチの縦幅に対して設定可能な最大値を、長穴28a1の縦幅H(図3参照)に基づいて決定するとしてもよい。具体的には、プリンター20において予測される用紙の搬送誤差(例えば、1ミリ程度)も考慮し、長穴28a1の縦幅H+搬送誤差(固定値)を、パッチの縦幅に対して設定可能な最大値とする。
また上記では、テストパターンの印刷後、テストパターンを測色部26a下の位置に直接搬送することを前提に説明を行なったが、測色前にテストパターンを乾燥機26d下の位置に搬送し、乾燥機26dによってテストパターンの所定位置を強制乾燥させた上で、テストパターンの当該所定位置を測色部26aに対して搬送して測色するとしてもよい。
【0057】
3.まとめ
このように本実施形態によれば、システム30は、対象パッチP1と隣接パッチP2が交互に配置された交互パターン領域A1と対象パッチP1が連続して配置された連続パターン領域A2とを含むテストパターンTP1を、対象パッチP1および隣接パッチP2の色の組み合わせを変えることにより複数印刷して測色し、各テストパターンTP1における連続パターン領域A2の対象パッチP1の平均測色値と交互パターン領域A1の対象パッチP1の平均測色値との差を、対象パッチP1および隣接パッチP2の色の組み合わせ毎の、対象パッチP1の測色結果における周囲色の影響の度合として取得する。そして、当該度合が最大となった色の組み合わせを、パッチサイズを変えて複数印刷されるテストパターンTP2,TP3における、対象パッチP1および隣接パッチP2の色の組み合わせとして特定する。つまり、テストパターンTP2,TP3を複数印刷するに際し、対象パッチP1の測色結果における周囲色の影響の度合が最も顕著に表れる色の組み合わせを特定して採用することにより、どのような色のパッチの測色においても正確な測色結果が得られるパッチサイズが最終的に決定されるようにしている。
【0058】
そして、当該特定された色の組み合わせによって、交互パターン領域A1と連続パターン領域A2とを含むテストパターンTP2を、パッチの横幅を変える(縦幅は固定する)ことにより複数印刷して測色し、各テストパターンTP2における連続パターン領域A2の対象パッチP1の平均測色値と交互パターン領域A1の対象パッチP1の平均測色値との差を、パッチの横幅の違い毎の、対象パッチP1の測色結果における周囲色の影響の度合として取得し、当該度合が許容色差以下の横幅のうち最小の横幅を第一サイズとして決定する。さらに、上記特定された色の組み合わせによって、交互パターン領域A1と連続パターン領域A2とを含むテストパターンTP3を、パッチの縦幅を変える(横幅は第一サイズに固定する)ことにより複数印刷して測色し、各テストパターンTP3における連続パターン領域A2の対象パッチP1の平均測色値と交互パターン領域A1の対象パッチP1の平均測色値との差を、パッチの縦幅の違い毎の、対象パッチP1の測色結果における周囲色の影響の度合として取得し、当該度合が許容色差以下の縦幅のうち最小の縦幅を第二サイズとして決定する。
【0059】
この結果、測色されたときに周辺色の影響を受けることなく(或いは影響が極めて小さく)その色の正確な測色値が得られるパッチサイズであって、かつ可能な限り小さなパッチサイズ(横幅が第一サイズ、縦幅が第二サイズのパッチ)が、ユーザーの経験や感覚によらず自動的に決定できる。このように決定されたパッチサイズを用いて、以後、ユーザーが所望のパッチ群(カラーチャート)を印刷すれば、インクや用紙の消費や印刷時間を極力抑えつつ、印刷した各パッチから十分に正確な測色結果を得られるようになる。
【0060】
また図2から判るように、プリンター20においては、印刷ヘッド25aと測色部26aとの距離が一定である。そのため、ユーザーが任意に印刷するカラーチャートが紙送り方向においてある程度長い場合には、カラーチャートを印刷し終えた時点で、カラーチャートの一部範囲(先頭のパッチ行を含む一部範囲)が測色部26aよりも紙送り方向下流側に位置する場合がある。このような場合、プリンター20は、既に測色部26aを通過したカラーチャートの一部範囲を測色部26aに測色させるべく、カラーチャートを印刷した用紙をバックフィードする。一般的に、バックフィードの距離が長くなればなるほど、バックフィードして測色部26a下の所定位置に測色対象のパッチ行を位置決めする際の誤差(位置決め誤差)が大きくなってしまう。しかし本実施形態では、上述したように、正確な測色値が得られかつ可能な限り小さなパッチサイズを決定するため、この決定したパッチサイズでカラーチャートを印刷することで、上記のようなバックフィードの距離が短くなったり、あるいはバックフィードの必要性が無くなったりする。その結果、上記位置決め誤差が減少し、より測色精度が向上する。
【0061】
上記では、パッチサイズ決定処理を、コンピューター10とプリンター20からなるシステム30によって実現する場合を例に説明したが、パッチサイズ決定処理はプリンター20単独で行なうとしてもよい。プリンター20単独で行なう場合には、コンピューター10がパッチサイズ決定処理の中で行なっていた上記各処理を、例えば、プリンター20のプリンターコントロールIC25が主体となって行なうことになる。
【符号の説明】
【0062】
10…コンピューター、14…HD、14a…APL、14b…プリンタードライバー、14c…パッチサイズ、20…プリンター、25…プリンターコントロールIC、25a…印刷ヘッド、25b…ヘッド駆動部、25c…キャリッジ機構、25d…紙送り機構、26…測色コントロールIC、26a…測色部、26b…測色部移動機構、26c…押さえ板駆動機構、26d…乾燥機、26a1…色検出部、28…測色乾燥ユニット、28a…押さえ板、28a1…長穴、30…パッチサイズ決定システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッチサイズ決定方法、パッチサイズ決定システムおよび印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷装置によって、複数のカラーパッチの集合体としてのカラーチャートが印刷されている。印刷されたカラーチャートは、測色機によって個々のパッチが測色され、各パッチの測色値は、印刷装置のキャリブレーションやカラープロファイルの作成など、種々の処理や演算に供される。カラーチャートを構成する個々のパッチは、例えば矩形状であり、そのサイズ(縦幅・横幅)は、カラーチャートの印刷を行なうユーザーによって経験的に決定されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
測色機によってパッチを一つずつ測色する場合、パッチのサイズが測色結果を左右することがある。カラーチャートを構成するパッチのサイズが小さ過ぎる場合には、測色対象としているパッチの色のみを純粋に得ることが難しい。つまり、測色対象のパッチが小さいと、このパッチに隣接している他のパッチの色の影響が測色対象のパッチの測色結果に反映され易く、結果、測色対象のパッチの色の正確なデータを得られないことがある。
【0004】
一方、上述したような他のパッチの色の影響を排除するために、パッチのサイズを大きな値に設定してカラーチャートを印刷すると、パッチが大きいゆえにカラーチャートの印刷に長時間を要するとともにインクや用紙の消費量も増大してしまう。また、用紙の排紙方向側に測色機を備えた印刷装置(測色機付きプリンター)を用いて、カラーチャートの印刷および測色を連続的に行なう場合がある。測色機付きプリンターにおいては、印刷したカラーチャート(印刷部から排紙したカラーチャート)を測色機の測色位置に位置決めする際に、カラーチャートを紙送り方向の逆方向に搬送する(バックフィードする)必要性が生じることがある。バックフィードの距離は、カラーチャートを構成するパッチのサイズが大きいほど長くなってしまうが、一般的にバックフィードの距離が長くなればなるほど、上記位置決めの誤差も大きくなる傾向がある。
【0005】
つまり、パッチのサイズは小さすぎる場合も大きすぎる場合もそれぞれ上述したようなデメリットを生じさせるが、全てのデメリットを無くす或いは最小限にする最適なパッチのサイズを、作業者が自己の判断で決定することは困難であった。
【0006】
本発明は上記課題にかんがみてなされたもので、正確な測色結果が得られ且つ印刷に要する時間や消耗品を低減させるパッチのサイズを自動的に決定することが可能な、パッチサイズ決定方法、パッチサイズ決定システムおよび印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のパッチサイズ決定方法は、対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷するテストパターン印刷工程と、上記印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する測色工程と、上記取得された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に取得する度合取得工程と、上記対象パッチのサイズ毎に取得される度合と所定の許容値とを比較することにより、上記度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するサイズ決定工程とを備える。本発明によれば、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を、対象パッチの複数のサイズ毎に取得することにより、当該度合が許容値以下のサイズであってその中で最小のサイズを、パッチサイズとして決定することができる。つまり、このように決定されたパッチサイズ(最適サイズ)を、以降、カラーチャートの印刷時に採用することにより、カラーチャートを短時間かつインクや用紙の使用量を抑えて印刷することができ、さらに、カラーチャートを測色したときにパッチ毎の正確な測色値が得られるようになる。
【0008】
上記テストパターン印刷工程は、矩形の対象パッチの縦および横のうち一方のサイズを変化させ他方のサイズを固定値とすることにより、対象パッチのサイズが異なる複数のテストパターンを印刷する第一印刷工程を含み、上記サイズ決定工程は、第一印刷工程によって印刷されたテストパターンの対象パッチの測色値に基づいて取得された、対象パッチの上記一方のサイズの違い毎の上記度合と、所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチの上記一方のサイズのうち最小値を決定する第一サイズ決定工程を含み、さらに、上記テストパターン印刷工程は、対象パッチの縦および横のうち上記一方のサイズを上記第一サイズ決定工程において決定された最小値に固定し上記他方のサイズを変化させることにより、対象パッチのサイズが異なる複数のテストパターンを印刷する第二印刷工程を含み、上記サイズ決定工程は、第二印刷工程によって印刷されたテストパターンの対象パッチの測色値に基づいて取得された、対象パッチの上記他方のサイズの違い毎の上記度合と、所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチの上記他方のサイズのうち最小値を決定する第二サイズ決定工程を含み、さらに、上記一方のサイズを上記第一サイズ決定工程で決定した最小値とし上記他方のサイズを当該第二サイズ決定工程で決定した最小値とした矩形を、上記パッチサイズとして決定するとしてもよい。当該構成によれば、パッチの最適サイズにおける縦幅と横幅とを、それぞれ正確かつ容易に決定することができる。
【0009】
パッチサイズ決定方法では、同一サイズの対象パッチの測色値の平均値と対象パッチの色の基準値との差を、対象パッチのサイズ毎の上記度合として取得するとしてもよい。当該構成によれば、サイズ毎の上記度合を、正確かつ容易に得ることができる。
【0010】
対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチの色と対象パッチ間の領域の色との組み合わせを変えて複数印刷する初期印刷工程と、上記初期印刷工程において印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する初期測色工程と、上記初期測色工程において取得された測色値に基づいて、上記度合を上記色の組み合わせ毎に取得する初期度合取得工程と、上記初期度合取得工程において取得される度合が最大となる色の組み合わせを特定する特定工程と、を上記テストパターン印刷工程より前に行なうとともに、上記テストパターン印刷工程では、対象パッチの色と対象パッチ間の領域の色との組み合わせを上記特定された組み合わせとしたテストパターンを印刷するとしてもよい。当該構成によれば、対象パッチのサイズを異ならせてテストパターンを複数印刷する前に、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響を最も顕著に把握し易い対象パッチの色と対象パッチ間の領域の色との組み合わせを取得することができる。そのため、最終的に決定されるパッチサイズは、どのような色のパッチの測色においても正確な測色結果が得られるサイズのうちの最小サイズとなる。
【0011】
上記初期度合取得工程は、上記初期印刷工程において印刷された一つのテストパターンを構成する対象パッチの測色値の平均値と、当該一つのテストパターンを構成する対象パッチの色の基準値との差を、当該一つのテストパターンにおける上記色の組み合わせについての上記度合として取得するとしてもよい。当該構成によれば、色の組み合わせ毎の上記度合を正確かつ容易に得ることができる。
【0012】
パッチサイズ決定方法では、対象パッチと対象パッチと色が異なる隣接パッチとを交互に配置した交互パターン領域と、対象パッチを連続して配置した連続パターン領域と、を少なくとも含むテストパターンを印刷し、交互パターン領域における対象パッチの測色値の平均値を算出し、連続パターン領域における対象パッチの測色値の平均値を上記基準値として算出し、当該算出した両平均値の差を上記度合として取得するとしてもよい。当該構成によれば、交互パターン領域の測色結果と連続パターン領域の測色結果とを比較することにより、ある対象パッチと隣接パッチとの色の組み合わせについての上記度合(隣接パッチの色の影響の度合)や、ある対象パッチのサイズについての上記度合(隣接パッチの色の影響の度合)を正確かつ容易に得ることができる。
【0013】
本発明の技術的思想は、パッチサイズ決定方法以外にも、装置や、コンピューター読取可能な記録媒体に記録されたプログラムなど、種々の態様にて実現可能である。
例えば、印刷指示および測色指示を制御対象に出力する制御装置と、制御装置から出力される指示に基づいた処理を実行する印刷装置とを備えるパッチサイズ決定システムであって、上記印刷装置は、上記印刷指示に基づいて、対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷し、上記測色指示に基づいて、上記テストパターンを測色するとともに当該測色によって取得した対象パッチの測色値を上記制御装置に出力し、上記制御装置は、上記出力された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に算出し、このサイズ毎の度合と所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するシステムを把握することができる。また、当該システムを単一の装置で実現してもよく、その一例として、対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷するテストパターン印刷部と、上記印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する測色部と、上記取得された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に取得する度合取得部と、上記対象パッチのサイズ毎に取得される度合と所定の許容値とを比較することにより、上記度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するサイズ決定部とを備える印刷装置を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】パッチサイズ決定システムの概略ブロック図である。
【図2】プリンターの外観側面図の一例である。
【図3】測色乾燥ユニットの内部構成の一例を示す図である。
【図4】パッチサイズ決定処理の一部(色組合せ特定処理)を示すフローチャートである。
【図5】色組合せ特定処理において印刷するテストパターンを例示した図である。
【図6】パッチサイズ決定処理の一部(第一サイズ決定処理)を示すフローチャートである。
【図7】パッチサイズ決定処理の一部(第二サイズ決定処理)を示すフローチャートである。
【図8】第一サイズ決定処理において印刷するテストパターンを例示した図である。
【図9】第一サイズ決定処理において印刷するテストパターンを例示した図である。
【図10】第二サイズ決定処理において印刷するテストパターンを例示した図である。
【図11】第二サイズ決定処理において印刷するテストパターンを例示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
1.パッチサイズ決定システムの概略構成
図1は、本実施形態にかかるパッチサイズ決定システム30を示している。システム30は、概略、コンピューター10(制御装置)およびプリンター20からなる。システム30は、複数の装置の集まりではなく単一の装置によって実現してもよい。コンピューター10では、演算処理の中枢をなすCPU11がシステムバス10aを介してコンピューター10全体を制御する。バス10aには、ROM12、RAM13、各種インターフェース(I/F)17a〜17cが接続され、ハードディスクドライブ(HDDRV)15を介してハードディスク(HD)14が接続されている。HD14にはオペレーティングシステム(OS)やアプリケーションプログラム(APL)14aやプリンタードライバー(PD)14b等が記憶されており、これらはCPU11によって適宜RAM13に転送され実行される。
【0016】
コンピューター10は、APL14aやPD14bに従った処理の一種として、後述のパッチサイズ決定処理(の一部)を実行する。I/F17aには所定の画像データに基づいて当該データに対応する画像を表示するディスプレー18aが接続され、I/F17bにはキーボード18bやマウス18cが接続され、プリンターI/F17cには例えばシリアルI/Fケーブルを介してプリンター20が接続されている。
【0017】
プリンター20は、コンピューター10によって制御される印刷装置である。プリンター20は、印刷用紙への印刷機能だけでなく、印刷物を測色する測色機能をも備える測色部付きプリンターである。プリンター20では、通信I/F24、プリンターコントロールIC25、測色コントロールIC26等がバス32を介して接続されている。プリンターコントロールIC25は、CPU21、ROM22、RAM23を備え、測色コントロールIC26は、I/F26e、CPU26f、ROM26g、RAM26hを備える。通信I/F24はプリンターI/F17cと接続され、コンピューター10とプリンター20は、プリンターI/F17cおよび通信I/F24を介して双方向通信を実現する。通信I/F24はコンピューター10から送信されるインク種類別のラスターデータを受信可能である。
【0018】
プリンターコントロールIC25においては、CPU21が、ROM22に記憶された所定のソフトウェア(プリンターコントローラー)に従った処理を実行する。プリンターコントロールIC25は、主に印刷処理のための各種制御を実行するICであり、印刷ヘッド25a、ヘッド駆動部25b、キャリッジ機構25c、紙送り機構25dの各部と接続して各部を制御する。印刷ヘッド25aは、複数のインク種類(例えば、シアン、マゼンダ、イエロー、ブラック、ライトシアン、ライトマゼンダ等)に夫々対応する複数のインクカートリッジと、各インク種類に対応して設けられた複数のノズル列とからなり、インクカートリッジが充填したインクをノズル列からインク滴として吐出することで印刷用紙に画像を形成する。プリンターコントロールIC25は、ヘッド駆動部25bに対して、上記ラスターデータに対応する印加電圧データを出力する。ヘッド駆動部25bは印加電圧データから印刷ヘッド25aの各ノズル列に内蔵された圧電素子への印加電圧パターン(駆動波形)を生成して出力し、印刷ヘッド25aにインク種類毎のインク滴(ドット)を吐出させる。
【0019】
キャリッジ機構25cは、プリンターコントロールIC25に制御されてプリンター20が備える図示しないガイドレールに沿って不図示のキャリッジを往復動させる駆動装置である。キャリッジには印刷ヘッド25aが搭載され、印刷ヘッド25aがガイドレールに沿って往復動(走査)する。紙送り機構25dは、プリンターコントロールIC25によって制御されることにより、不図示の紙送りローラーによって印刷用紙をキャリッジの往復動方向(主走査方向)と略直交する向き(紙送り方向)に所定の速度で搬送する。紙送り機構25dは、必要に応じて印刷用紙をバックフィードによって搬送することも可能である。なお、プリンター20としては、サーマル式や昇華型など他の仕組みで印刷画像を形成するものや、ラインヘッド方式のプリンターを採用してもよい。
【0020】
測色コントロールIC26においては、CPU26fが、ROM26gに記憶された所定のソフトウェア(測色コントローラー)に従った処理を実行する。測色コントロールIC26は、主に測色処理のための各種制御を実行するICであり、測色部26a、測色部移動機構26b、押さえ板駆動機構26c、乾燥機26dの各部と接続して各部を制御する。測色部26aは、測色対象に色検出部を向けることにより、国際照明委員会(CIE)で規定されたL*a*b*表色系(以下、「*」は省略)に基づく複数の色成分L,a,bからなる色彩値を測色値として取得可能であり、測色部26aが取得した測色値はコンピューター10に出力される。Lab色空間はデバイスに依存しない均等色空間である。むろん、測色する色空間は、CIE規定のL*u*v*色空間、CIE規定のXYZ色空間、RGB色空間等であってもよい。
【0021】
測色部移動機構26bは、測色コントロールIC26に制御されて、後述の押さえ板に沿って測色部26aを往復動させる駆動装置である。押さえ板駆動機構26cは、測色コントロールIC26の制御に基づいて、印刷用紙を押さえ板に押さえさせるための駆動装置である。乾燥機26dは、測色部26a近傍に配設され、測色コントロールIC26の制御に基づき温風を印刷用紙に対して送る処理を行い、印刷用紙の画像を強制的に乾燥させる。つまりプリンター20によれば、印刷用紙への画像の印刷、乾燥、測色といった一連の処理を一台で行うことが可能となる。
【0022】
図2は、プリンター20の外観の一例を、側面から示している。
プリンター20は、本体29の頭頂部付近に印刷用紙M(ロール紙M)を収容しており、この印刷用紙Mを本体29前方側に形成された斜面29aに略沿わせて図中の紙送り方向に搬送する。斜面29aの所定位置にはケーシング27が設置されている。ケーシング27内には印刷ヘッド25aが収容される。印刷ヘッド25aは不図示の上記ガイドレールに沿って、図2の表面に対して垂直な方向(上記主走査方向)に移動する。斜面29a上であってケーシング27よりも紙送り方向下流の所定位置には、測色乾燥ユニット28が設置されている。測色乾燥ユニット28は内部に測色部26aおよび乾燥機26dを収容した部品であり、斜面29aの決まった位置に取り付けられる。印刷用紙Mは搬送される際、ケーシング27、測色乾燥ユニット28のそれぞれ下方を通過する。
【0023】
図3は、測色乾燥ユニット28の内部を、図2内における前方から斜面29aに正対した視点で示している。測色乾燥ユニット28はその長手方向が上記主走査方向と平行となるように取り付けられ、本実施形態では、紙送り方向の上流側に測色部26aを収容し、測色部26aよりも紙送り方向下流側に乾燥機26dを収容している。測色部26aは色検出部26a1を斜面29a側へ向けた状態で、測色乾燥ユニット28の端における初期位置に待機している。測色部26aの初期位置の隣には、主走査方向に向かって、長板状の押さえ板28aが設置されている。押さえ板28aは、斜面29aから所定距離だけ離間した位置において待機しており、所定のタイミングで押さえ板駆動機構26cによって駆動されることにより、測色乾燥ユニット28の下方に搬送された印刷用紙Mを上から押さえ付ける。
【0024】
測色部26aは、測色部移動機構26bによって押さえ板28aの上を主走査方向に移動する。押さえ板28aの略中央には、長手方向に沿って長穴28a1が貫通して形成されている。移動する測色部26aは、長穴28a1を介して色検出部26a1を斜面29a上の印刷用紙Mに相対させることで、印刷用紙Mに印刷された画像を測色する。乾燥機26dは、内部に熱源としてのヒーターと当該ヒーターが発生させた暖気を温風として乾燥機26d外に送出するファンとを備えている。乾燥機26dには、測色乾燥ユニット28の内側を向いた壁面に送風口26d1が形成さており、ファンは送風口26d1から乾燥機26d外部に向けて温風を送出する。乾燥機26d下方における測色乾燥ユニット28の床面には、送風口26d1の近傍から測色乾燥ユニット28の長手方向に向かって長穴28bが貫通して形成されている。当該構成により、乾燥機26dが送風口26d1から送出した温風は長穴28bを通過して測色乾燥ユニット28下方に流れ、斜面29a上の印刷用紙Mを乾燥させる。なお、印刷用紙Mを搬送するプリンター20の面は図2のような斜面でなくてもよく、水平面であってもよい。
【0025】
2.パッチサイズ決定処理
図4は、システム30が実行するパッチサイズ決定処理の一部をフローチャートにより示している。パッチサイズ決定処理とは、パッチサイズ決定処理終了後にプリンター20で印刷するパッチのサイズを決定する処理であって、概略的には、できるだけ小さく、かつ、そのサイズのパッチを測色したときに周囲の色の影響を受けない正確な測色結果が得られる程度のサイズを決定する処理である。また、図4に示した処理を、色組合せ特定処理と呼ぶ。
ステップS(以下、“ステップ”の表記を省略)100では、コンピューター10は、テストパターンTP1を印刷するための色の組み合わせを一つ設定する。
【0026】
図5は、テストパターンTP1の一例を示している。テストパターンTP1とは、後述のS110において印刷されるパターンであり、概略的には、交互パターン領域A1および連続パターン領域A2を含むパターンである。交互パターン領域A1は、対象パッチP1と隣接パッチP2とを紙送り方向および主走査方向にそれぞれ交互に配置した(対象パッチP1と隣接パッチP2とを市松模様状に配した)領域である。交互パターン領域A1を含む点で、テストパターンTP1は、対象パッチP1が間隔を空けて複数配置されたテストパターンの一種に該当する。連続パターン領域A2は、対象パッチP1を一定方向に沿って連続して配した領域である。図5の例では、主走査方向を向いた2つの連続パターン領域A2によって交互パターン領域A1の上下を挟むレイアウトにて、テストパターンTP1を表している。
【0027】
対象パッチP1は、後述するように、その測色値が本発明における“度合”の計算に用いられるパッチである。一方、隣接パッチP2は、対象パッチP1外の色を表すための領域である。テストパターンTP1を構成する対象パッチP1および隣接パッチP2は、いずれも矩形状であり一定の大きさである。本実施形態では、テストパターンTP1の対象パッチP1および隣接パッチP2のサイズは、対象パッチP1の測色結果が隣接パッチP2の色の影響を受けやすいように、比較的小さなサイズとしている。
【0028】
S100で設定する色の組み合わせとは、対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色との組み合わせを意味し、色組合せ特定処理において最終的に特定される色の組み合わせの一候補となる。コンピューター10においては、HD14等の所定の記録領域に、対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色との組み合わせが予め複数記録されており、S100では、かかる複数の組み合わせの中から一つの組み合わせを選択して設定する。予め記録されている色の各組み合わせは、2色間の明度差が比較的大きい色の組み合わせとなっている。明度差が大きい2色間においては、その2色が隣り合っている場合に一方の色を測色したときに、当該一方の色の測色結果において他方の色の影響が出やすいからである。具体的には、黒と白、黒と黄色、白と黒、黄色と黒…などといった複数の組み合わせが、対象パッチP1の色および隣接パッチP2の色の組み合わせとして記録されている。なお、S100では、コンピューター10は、ユーザーのキーボード18bやマウス18c等の入力操作に応じて、対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色との組み合わせを設定してもよい。
【0029】
S110では、システム30は、対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色が直近のS100で設定した色の組み合わせとなった上記テストパターンTP1を印刷する。具体的には、コンピューター10は、上記S100で設定した色の組み合わせによる色の対象パッチP1および隣接パッチP2を図5に示したレイアウトにて配置した画像を表現したカラー画像データ(各画素がプリンター20で用いられるインク種類毎の階調値で表現されたカラー画像データ)を生成する。次に、コンピューター10は、PD14bに従った処理として、カラー画像データを対象とし、ディザ法や誤差拡散法など公知の手法を用いたハーフトーン処理を実行し、画素毎かつインク種類毎にドットの吐出/非吐出を規定したハーフトーンデータを生成する。さらにコンピューター10は、PD14bに従った処理として、ハーフトーンデータに対して所定のラスターライズ処理を施してプリンター20が印刷する順番に並べ替え、インク種類毎のラスターデータを生成し、ラスターデータをプリンターI/F17cを介してプリンター20に順次出力する。この結果、プリンター20では、プリンターコントロールIC25による制御によって、印刷ヘッド25a、ヘッド駆動部25b、キャリッジ機構25cおよび紙送り機構25dが駆動制御され、ラスターデータに基づいてテストパターンTP1を印刷用紙に印刷する。
【0030】
S120では、システム30は、直近のS110で印刷したテストパターンTP1を測色し、少なくとも、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値と、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値とを取得する。
具体的には、コンピューター10は、プリンター20に対して印刷用紙の搬送指示と、測色指示とを出力する。搬送指示を入力したプリンター20では、プリンターコントロールIC25が、紙送り機構25dを駆動制御することにより、テストパターンTP1の所定位置(テストパターンTP1内の主走査方向を向く各パッチ行のうち、用紙の先頭に最も近いパッチ行)が測色部26aによる測色範囲に入るように、テストパターンTP1が印刷された印刷用紙を必要距離だけ搬送させる。測色部26aの測色範囲とは、押さえ板28aの長穴28a1内の所定範囲である。この結果、テストパターンTP1内の一つのパッチ行が、長穴28a1を介して測色部26aの色検出部26a1と対面する。
【0031】
次に、上記測色指示を入力したプリンター20では、測色コントロールIC26が、押さえ板駆動機構26c、測色部移動機構26bおよび測色部26aをそれぞれ駆動制御する。すると、押さえ板駆動機構26cは、押さえ板28aを降下させて測色乾燥ユニット28下の印刷用紙を押さえさせる。測色部移動機構26bは、測色部26aを主走査方向に移動させ、移動中の測色部26aは、所定の測色周期にて測色を繰り返すことにより、テストパターンTP1の一つのパッチ行を構成するパッチ毎の測色値を順次取得する。最初のパッチ行の測色が終了したら、プリンター20では、パッチ一行分の用紙の搬送とパッチ一行分の測色とを、テストパターンTP1内のパッチ行が終わるまで交互に繰り返す。この結果、測色コントロールIC26は、テストパターンTP1内の各パッチの測色値を取得することができ、取得した各パッチの測色値を、通信I/F24を介してコンピューター10に送信する。よって、コンピューター10は、テストパターンTP1内の各パッチの測色値を取得することができる。
【0032】
S130では、コンピューター10は、直近のS120で取得したテストパターンTP1の各パッチの測色値に基づいて、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合を算出し取得する。具体的には、コンピューター10は、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(Lab)を算出するとともに、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(基準値Lab)を算出する。そして、この両平均値の差(色差ΔE)を、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合として取得する。
【0033】
つまり、連続パターン領域A2では、対象パッチP1が連続しているため、その領域における対象パッチP1個々の測色値は対象パッチP1以外の色の影響を受けておらず、安定した値であると言える。一方、交互パターン領域A1では、対象パッチP1と、対象パッチP1とは異なる色の隣接パッチP2とが隣り合っているため、測色部26aで一つの対象パッチP1を測色した場合であっても、その測色結果には周囲の隣接パッチP2の色の影響が少なからず乗ってしまい、対象パッチP1の色本来の色彩値からずれた値が得られてしまう。従って、連続パターン領域A2の対象パッチP1の測色値の平均値に対する、交互パターン領域A1の対象パッチP1の測色値の平均値の差は、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチの色の影響の程度(度合)を表していると言える。
【0034】
S140では、コンピューター10は、設定すべき色の組み合わせの全てについて、テストパターンTP1の印刷から上記度合(色差ΔE)の取得までの処理を終えたか否か判定し、終えたと判定した場合にはS150に進む。一方、終えていないと判定した場合にはS100に戻り、新たにテストパターンTP1を印刷するための色の組み合わせを一つ設定し、S110以降の処理を繰り返す。設定すべき色の組み合わせとは、HD14等の記録領域に予め記録されている対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色との組み合わせや、ユーザーが入力した、対象パッチP1の色と隣接パッチP2の色との組み合わせ等を指す。
【0035】
S150では、コンピューター10は、上記のようにテストパターンTP1毎(対象パッチP1および隣接パッチP2の色の組み合わせ毎)に算出された上記度合としての色差ΔEの中から、最大値(最大色差)を選択する。そして、当該選択した最大色差が得られた対象パッチP1および隣接パッチP2の色の組み合わせを、後述のテストパターンTP2,TP3の印刷に用いる色の組み合わせとして特定する。このように、S100で繰り返し設定した色の組み合わせの中からS150において一つの組み合わせを特定することにより、色組合せ特定処理が終了する。S100,S110の処理は初期印刷工程に該当し、S120の処理は初期測色工程に該当し、S130の処理は初期度合取得工程に該当し、S150の処理は特定工程に該当する。なお、上記度合(色差ΔE)を色の組み合わせ毎に算出する処理(S130)は、一つのテストパターンTP1の測色値を取得し終える度に行なうのではなく、全てのテストパターンTP1の印刷・測色を終えた後で行なうとしてもよい。
【0036】
上記では、テストパターンTP1は、対象パッチP1および隣接パッチP2による交互パターン領域A1と、対象パッチP1による連続パターン領域A2とを含むとしたが、テストパターンTP1は、さらに隣接パッチP2を主走査方向に連続させて構成した第二の連続パターン領域を含むとしてもよい。一つのテストパターンTP1の中に、対象パッチP1、隣接パッチP2それぞれによる連続パターン領域を含む構成とすれば、一つのテストパターンTP1の測色結果に基づいて、色の組み合わせ2組分の上記度合を算出することができる。つまり、黒パッチと白パッチとによってテストパターンTP1を印刷した場合、その測色結果から、黒パッチを対象パッチP1(白パッチは隣接パッチP2)とした場合の上記度合および、白パッチを対象パッチP1(黒パッチは隣接パッチP2)とした場合の上記度合をそれぞれ取得でき、テストパターンTP1のトータルの印刷枚数を低減させることができる。
【0037】
図6,7は、システム30が実行するパッチサイズ決定処理の一部であって、上記色組合せ特定処理に続いて行なわれる処理をフローチャートにより示している。図6に示した処理を第一サイズ決定処理と呼び、図7に示した処理を第二サイズ決定処理と呼ぶ。
まず、第一サイズ決定処理について説明する。S160では、コンピューター10は、後述のS170でテストパターンTP2を印刷するときに採用するパッチサイズを一つ設定する。
【0038】
図8,9は、テストパターンTP2,TP2をそれぞれ例示している。各テストパターンTP2は、対象パッチP1と隣接パッチP2とを紙送り方向および主走査方向にそれぞれ交互に配置した交互パターン領域A1および対象パッチP1を主走査方向に沿って連続させた連続パターン領域A2を含む点で、テストパターンTP1と同じである。しかし、各テストパターンTP2はパッチのサイズが互いに異なっている。具体的には、第一サイズ決定処理では、テストパターンTP2毎に、パッチの縦幅および横幅のうち一方のサイズ(横幅)を予め設定されている最小値から最大値までの間で段階的に変化させ、他方のサイズ(縦幅)を全テストパターンTP2において固定値(最大値)とすることにより、パッチのサイズが異なる複数のテストパターンTP2を印刷する。
【0039】
縦幅とは、紙送り方向におけるパッチの幅であり、横幅とは、主走査方向におけるパッチの幅である。図8では、縦幅が設定可能な最大値であり、横幅が設定可能な最小値となったパッチで構成されたテストパターンTP2を示し、図9では、縦幅が同じく設定可能な最大値であり、横幅が図8のパッチよりも長いパッチで構成されたテストパターンTP2を示している。本実施形態では、最初のS160では基本的に、縦幅=設定可能な最大値、横幅=設定可能な最小値のパッチサイズを設定する。
【0040】
S170では、システム30は、パッチ(対象パッチP1、隣接パッチP2)のサイズが直近のS160で設定したサイズとなったテストパターンTP2を印刷する。つまり、コンピューター10は、上記S150(図4)で特定された色の組み合わせによる色の対象パッチP1および隣接パッチP2であって上記S160で設定されたサイズとなった各パッチを図8等に示したレイアウトにて配置した画像を表現したカラー画像データを生成し、このカラー画像データに所定のハーフトーン処理やラスターライズ処理を施し、その結果生成したラスターデータをプリンター20に順次出力する。そしてプリンター20は、プリンターコントロールIC25による制御によって、ラスターデータに基づいてテストパターンTP2を印刷用紙に印刷する。
【0041】
S180では、システム30は、直近のS170で印刷したテストパターンTP2を測色し、テストパターンTP2における、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値と、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値とを取得する。S180の処理の流れは、上記S120と同様である。
【0042】
S190では、コンピューター10は、直近のS180で取得したテストパターンTP2の各パッチの測色値に基づいて、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合を算出し取得する。つまり、上記S130と同様に、コンピューター10は、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(Lab)および、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(基準値Lab)を算出し、算出した両平均値の差(色差ΔE)を、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合として取得する。
【0043】
S200では、コンピューター10は、上記S160で設定すべき複数のパッチサイズ(パッチの横幅を設定可能な最小値から最大値まで段階的に変化させたときの各サイズ)の全てについて一通り設定して各テストパターンTP2の印刷から上記度合(色差ΔE)の取得までの処理を終えたか否かを判定し、終えたと判定した場合にはS210に進む。一方、終えていないと判定した場合にはS160に戻り、新たにテストパターンTP2を印刷するためのパッチサイズを一つ設定し、S170以降の処理を繰り返す。
【0044】
S210では、コンピューター10は、上記S190の度に算出された各色差ΔE(パッチの横幅の違い毎の色差ΔE)のうち、予め設定した許容値(許容色差)以下の色差ΔEを特定する。そして、このように特定した各色差ΔEに一対一で対応する各横幅(パッチの横幅)のうち、最も短い横幅を第一サイズとして決定する。ただし、上記S200においては、上述した判定の代わりに、直近のS190で取得した色差ΔEと許容色差とを逐一比較し、色差ΔEが許容色差以下となった時点で“Yes”と判定してS210に進んでもよい。つまり、第一サイズ決定処理では、テストパターンTP2のパッチサイズ(パッチの横幅)は、S170の印刷を繰り返す毎に大きくなるため、S190で取得される色差ΔEは基本的には、回を重ねる毎に小さくなると考えられる。従って、S190で取得した色差ΔEが許容色差以下となった時点で、それ以上のテストパターンTP2の印刷を止め、直近に得た色差ΔEに対応するパッチの横幅を上記第一サイズとして決定してもよい。
【0045】
次に、第二サイズ決定処理について説明する。
S220(図7)では、コンピューター10は、後述のS230でテストパターンTP3を印刷するときに採用するパッチサイズを一つ設定する。
【0046】
図10,11は、テストパターンTP3,TP3をそれぞれ例示している。各テストパターンTP3も、交互パターン領域A1および連続パターン領域A2を含む点で、テストパターンTP1,TP2と同じである。各テストパターンTP3はパッチのサイズが互いに異なっている。第二サイズ決定処理では、テストパターンTP3毎に、パッチの縦幅および横幅のうちテストパターンTP2の印刷時に固定値とした方のサイズ(縦幅)を予め設定されている最小値から最大値までの間で段階的に変化させ、テストパターンTP2の印刷時に可変としたサイズ(横幅)を上記決定された第一サイズに固定することにより、パッチのサイズが異なる複数のテストパターンTP3を印刷する。図10では、横幅が上記第一サイズであり、縦幅が設定可能な最小値となったパッチで構成されたテストパターンTP3を示し、図11では、横幅が同じく上記第一サイズであり、縦幅が図10のパッチよりも長いパッチで構成されたテストパターンTP3を示している。本実施形態では、最初のS220では基本的に、縦幅=設定可能な最小値、横幅=第一サイズのパッチサイズを設定する。
【0047】
S230では、システム30は、パッチ(対象パッチP1、隣接パッチP2)のサイズが直近のS220で設定したサイズであるテストパターンTP3を印刷する。つまり、コンピューター10は、上記S150(図4)で特定された色の組み合わせによる色の対象パッチP1および隣接パッチP2であって上記S220で設定されたサイズとなった各パッチを図10等に示したレイアウトにて配置した画像を表現したカラー画像データを生成し、このカラー画像データに所定のハーフトーン処理やラスターライズ処理を施し、その結果生成したラスターデータをプリンター20に順次出力する。そしてプリンター20は、プリンターコントロールIC25による制御によって、ラスターデータに基づいてテストパターンTP3を印刷用紙に印刷する。
【0048】
S240では、システム30は、直近のS230で印刷したテストパターンTP3を測色し、テストパターンTP3における、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値と、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値とを取得する。S240の処理の流れは、上記S120,S180と同様である。
【0049】
S250では、コンピューター10は、直近のS240で取得したテストパターンTP3の各パッチの測色値に基づいて、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合を算出し取得する。つまり、上記S130,S190と同様に、コンピューター10は、交互パターン領域A1を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(Lab)および、連続パターン領域A2を構成する各対象パッチP1の測色値の平均値(基準値Lab)を算出し、算出した両平均値の差(色差ΔE)を、対象パッチP1の測色結果における隣接パッチP2の色の影響の度合として取得する。
【0050】
S260では、コンピューター10は、上記S220で設定すべき複数のパッチサイズ(パッチの縦幅を設定可能な最小値から最大値まで段階的に変化させたときの各サイズ)の全てについて一通り設定して各テストパターンTP3の印刷から上記度合(色差ΔE)の取得までの処理を終えたか否かを判定し、終えたと判定した場合にはS270に進む。一方、終えていないと判定した場合にはS220に戻り、新たにテストパターンTP3を印刷するためのパッチサイズを一つ設定し、S230以降の処理を繰り返す。
【0051】
S270では、コンピューター10は、上記S250の度に算出された各色差ΔE(パッチの縦幅の違い毎の色差ΔE)のうち、予め設定した許容値(許容色差)以下の色差ΔEを特定する。そして、このように特定した各色差ΔEに一対一で対応する各縦幅(パッチの縦幅)のうち、最も短い縦幅を第二サイズとして決定する。ただし第二サイズ決定処理においても、上記S260では、上述した判定の代わりに、直近のS250で取得した色差ΔEと許容色差とを逐一比較し、色差ΔEが許容色差以下となった時点で“Yes”と判定してS270に進んでもよい。つまり第二サイズ決定処理でも、テストパターンTP3のパッチサイズ(パッチの縦幅)は、S230の印刷を繰り返す毎に大きくなるため、S250で取得される色差ΔEは回を重ねる毎に小さくなると考えられる。従って、S250で取得した色差ΔEが許容色差以下となった時点で、それ以上のテストパターンTP3の印刷を止め、直近に得た色差ΔEに対応するパッチの縦幅を上記第二サイズとして決定してもよい。
【0052】
最後に、S280においてコンピューター10は、上記S210で決定した第一サイズと上記S270で決定した第二サイズとをそれぞれ横幅・縦幅とした矩形を、最終的(最適)なパッチサイズ(PS)14cとして決定し、当該パッチサイズ14cをHD14等の所定の記録領域に情報として記録し、処理を終える。以降、システム30(プリンター20)では、上記のように最終的に決定したパッチサイズのパッチから構成されるカラーチャート等を、キャリブレーションやカラープロファイルの作成など種々の目的に応じて印刷することになる。なお、S160,S170,S220,S230の処理はテストパターン印刷工程に該当し、S180,S240の処理は測色工程に該当し、S190,S250の処理は度合取得工程に該当し、S200,S210,S260,S270,S280の処理はサイズ決定工程に該当する。
【0053】
ここで、パッチサイズ決定処理の開始から終わりまで、印刷や測色時の各種条件を極力不変とすることが望ましい。具体的には、パッチサイズ決定処理の途中でのインクカートリッジの交換や印刷用紙の種類変更等は避け、また、周囲の気温や湿度が安定した環境で処理を行う。また、色組合せ特定処理、第一サイズ決定処理、第二サイズ決定処理のそれぞれにおいて、各テストパターンについて印刷後測色するまでの時間(印刷物を自然乾燥させる時間)も、各テストパターンについて同じとする。つまり、消耗品の交換等や周囲の環境変化や乾燥時間の違いは、各テストパターンの印刷結果や測色結果に変化を与える要因となる。そのため、これら要因をできるだけ取り除くことで、対象パッチの測色結果における周囲の色の影響度合を、純粋に、対象パッチと周囲との色の組み合わせや対象パッチのサイズ変化に応じて検出するようにしている。
【0054】
上記パッチサイズ決定処理では、第一サイズ決定処理においてパッチの横幅を変化させてその中で最適な横幅を決定し、第二サイズ決定処理においてパッチの縦幅を変化させてその中で最適な縦幅を決定したが、逆に、第一サイズ決定処理においてパッチの縦幅を変化させて最適な縦幅を決定し、第二サイズ決定処理においてパッチの横幅を変化させて最適な横幅を決定する構成でもよい。また、一回の印刷処理(S110,S170,S230等)で複数のテストパターンをまとめて印刷し、その後の測色処理(S120,S180,S240等)で複数のテストパターンをまとめて測色してもよい。このようにすれば、パッチサイズ決定処理に要する時間を全体的に短縮することができる。むろん、複数のテストパターンをまとめて印刷・測色した場合であっても、測色結果に応じて算出する上記度合は、対象パッチおよび隣接パッチの色の一つの組み合わせ毎、或いはパッチのサイズ毎の値となる。
【0055】
さらに、パッチサイズ決定処理では、色組合せ特定処理後におけるパッチサイズを変更したテストパターンの印刷・測色を、必ずしも第一サイズ決定処理と第二サイズ決定処理とに分けて行なわなくてもよい。つまり、色組合せ特定処理後においては、上記のような対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、テストパターン毎にパッチの縦幅・横幅の両方を変化させて複数印刷し、各テストパターンの測色結果に基づいて、パッチサイズ毎の上記度合を取得し、パッチサイズ毎の上記度合と許容色差との比較に基づいて最適なパッチサイズを決定してもよい。
【0056】
上述したように、測色部26aは、押さえ板28aの長穴28a1を介して印刷用紙上の印刷画像を測色する。従って、測色部26aによる測色可能な範囲は、長穴28a1の大きさによって制限されていると言える。そこで、テストパターン(テストパターンPT2,PT3)を印刷する際に、コンピューター10は、パッチの縦幅に対して設定可能な最大値を、長穴28a1の縦幅H(図3参照)に基づいて決定するとしてもよい。具体的には、プリンター20において予測される用紙の搬送誤差(例えば、1ミリ程度)も考慮し、長穴28a1の縦幅H+搬送誤差(固定値)を、パッチの縦幅に対して設定可能な最大値とする。
また上記では、テストパターンの印刷後、テストパターンを測色部26a下の位置に直接搬送することを前提に説明を行なったが、測色前にテストパターンを乾燥機26d下の位置に搬送し、乾燥機26dによってテストパターンの所定位置を強制乾燥させた上で、テストパターンの当該所定位置を測色部26aに対して搬送して測色するとしてもよい。
【0057】
3.まとめ
このように本実施形態によれば、システム30は、対象パッチP1と隣接パッチP2が交互に配置された交互パターン領域A1と対象パッチP1が連続して配置された連続パターン領域A2とを含むテストパターンTP1を、対象パッチP1および隣接パッチP2の色の組み合わせを変えることにより複数印刷して測色し、各テストパターンTP1における連続パターン領域A2の対象パッチP1の平均測色値と交互パターン領域A1の対象パッチP1の平均測色値との差を、対象パッチP1および隣接パッチP2の色の組み合わせ毎の、対象パッチP1の測色結果における周囲色の影響の度合として取得する。そして、当該度合が最大となった色の組み合わせを、パッチサイズを変えて複数印刷されるテストパターンTP2,TP3における、対象パッチP1および隣接パッチP2の色の組み合わせとして特定する。つまり、テストパターンTP2,TP3を複数印刷するに際し、対象パッチP1の測色結果における周囲色の影響の度合が最も顕著に表れる色の組み合わせを特定して採用することにより、どのような色のパッチの測色においても正確な測色結果が得られるパッチサイズが最終的に決定されるようにしている。
【0058】
そして、当該特定された色の組み合わせによって、交互パターン領域A1と連続パターン領域A2とを含むテストパターンTP2を、パッチの横幅を変える(縦幅は固定する)ことにより複数印刷して測色し、各テストパターンTP2における連続パターン領域A2の対象パッチP1の平均測色値と交互パターン領域A1の対象パッチP1の平均測色値との差を、パッチの横幅の違い毎の、対象パッチP1の測色結果における周囲色の影響の度合として取得し、当該度合が許容色差以下の横幅のうち最小の横幅を第一サイズとして決定する。さらに、上記特定された色の組み合わせによって、交互パターン領域A1と連続パターン領域A2とを含むテストパターンTP3を、パッチの縦幅を変える(横幅は第一サイズに固定する)ことにより複数印刷して測色し、各テストパターンTP3における連続パターン領域A2の対象パッチP1の平均測色値と交互パターン領域A1の対象パッチP1の平均測色値との差を、パッチの縦幅の違い毎の、対象パッチP1の測色結果における周囲色の影響の度合として取得し、当該度合が許容色差以下の縦幅のうち最小の縦幅を第二サイズとして決定する。
【0059】
この結果、測色されたときに周辺色の影響を受けることなく(或いは影響が極めて小さく)その色の正確な測色値が得られるパッチサイズであって、かつ可能な限り小さなパッチサイズ(横幅が第一サイズ、縦幅が第二サイズのパッチ)が、ユーザーの経験や感覚によらず自動的に決定できる。このように決定されたパッチサイズを用いて、以後、ユーザーが所望のパッチ群(カラーチャート)を印刷すれば、インクや用紙の消費や印刷時間を極力抑えつつ、印刷した各パッチから十分に正確な測色結果を得られるようになる。
【0060】
また図2から判るように、プリンター20においては、印刷ヘッド25aと測色部26aとの距離が一定である。そのため、ユーザーが任意に印刷するカラーチャートが紙送り方向においてある程度長い場合には、カラーチャートを印刷し終えた時点で、カラーチャートの一部範囲(先頭のパッチ行を含む一部範囲)が測色部26aよりも紙送り方向下流側に位置する場合がある。このような場合、プリンター20は、既に測色部26aを通過したカラーチャートの一部範囲を測色部26aに測色させるべく、カラーチャートを印刷した用紙をバックフィードする。一般的に、バックフィードの距離が長くなればなるほど、バックフィードして測色部26a下の所定位置に測色対象のパッチ行を位置決めする際の誤差(位置決め誤差)が大きくなってしまう。しかし本実施形態では、上述したように、正確な測色値が得られかつ可能な限り小さなパッチサイズを決定するため、この決定したパッチサイズでカラーチャートを印刷することで、上記のようなバックフィードの距離が短くなったり、あるいはバックフィードの必要性が無くなったりする。その結果、上記位置決め誤差が減少し、より測色精度が向上する。
【0061】
上記では、パッチサイズ決定処理を、コンピューター10とプリンター20からなるシステム30によって実現する場合を例に説明したが、パッチサイズ決定処理はプリンター20単独で行なうとしてもよい。プリンター20単独で行なう場合には、コンピューター10がパッチサイズ決定処理の中で行なっていた上記各処理を、例えば、プリンター20のプリンターコントロールIC25が主体となって行なうことになる。
【符号の説明】
【0062】
10…コンピューター、14…HD、14a…APL、14b…プリンタードライバー、14c…パッチサイズ、20…プリンター、25…プリンターコントロールIC、25a…印刷ヘッド、25b…ヘッド駆動部、25c…キャリッジ機構、25d…紙送り機構、26…測色コントロールIC、26a…測色部、26b…測色部移動機構、26c…押さえ板駆動機構、26d…乾燥機、26a1…色検出部、28…測色乾燥ユニット、28a…押さえ板、28a1…長穴、30…パッチサイズ決定システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷するテストパターン印刷工程と、
上記印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する測色工程と、
上記取得された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に取得する度合取得工程と、
上記対象パッチのサイズ毎に取得される度合と所定の許容値とを比較することにより、上記度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するサイズ決定工程と、
を備えることを特徴とするパッチサイズ決定方法。
【請求項2】
上記テストパターン印刷工程は、矩形の対象パッチの縦および横のうち一方のサイズを変化させ他方のサイズを固定値とすることにより、対象パッチのサイズが異なる複数のテストパターンを印刷する第一印刷工程を含み、
上記サイズ決定工程は、第一印刷工程によって印刷されたテストパターンの対象パッチの測色値に基づいて取得された、対象パッチの上記一方のサイズの違い毎の上記度合と、所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチの上記一方のサイズのうち最小値を決定する第一サイズ決定工程を含み、さらに、
上記テストパターン印刷工程は、対象パッチの縦および横のうち上記一方のサイズを上記第一サイズ決定工程において決定された最小値に固定し上記他方のサイズを変化させることにより、対象パッチのサイズが異なる複数のテストパターンを印刷する第二印刷工程を含み、
上記サイズ決定工程は、第二印刷工程によって印刷されたテストパターンの対象パッチの測色値に基づいて取得された、対象パッチの上記他方のサイズの違い毎の上記度合と、所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチの上記他方のサイズのうち最小値を決定する第二サイズ決定工程を含み、さらに、上記一方のサイズを上記第一サイズ決定工程で決定した最小値とし上記他方のサイズを当該第二サイズ決定工程で決定した最小値とした矩形を、上記パッチサイズとして決定することを特徴とする請求項1に記載のパッチサイズ決定方法。
【請求項3】
同一サイズの対象パッチの測色値の平均値と対象パッチの色の基準値との差を、対象パッチのサイズ毎の上記度合として取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパッチサイズ決定方法。
【請求項4】
対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチの色と対象パッチ間の領域の色との組み合わせを変えて複数印刷する初期印刷工程と、
上記初期印刷工程において印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する初期測色工程と、
上記初期測色工程において取得された測色値に基づいて、上記度合を上記色の組み合わせ毎に取得する初期度合取得工程と、
上記初期度合取得工程において取得される度合が最大となる色の組み合わせを特定する特定工程と、
を上記テストパターン印刷工程より前に行なうとともに、上記テストパターン印刷工程では、対象パッチの色と対象パッチ間の領域の色との組み合わせを上記特定された組み合わせとしたテストパターンを印刷することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のパッチサイズ決定方法。
【請求項5】
上記初期度合取得工程は、上記初期印刷工程において印刷された一つのテストパターンを構成する対象パッチの測色値の平均値と、当該一つのテストパターンを構成する対象パッチの色の基準値との差を、当該一つのテストパターンにおける色の組み合わせについての上記度合として取得することを特徴とする請求項4に記載のパッチサイズ決定方法。
【請求項6】
対象パッチと対象パッチと色が異なる隣接パッチとを交互に配置した交互パターン領域と、対象パッチを連続して配置した連続パターン領域と、を少なくとも含むテストパターンを印刷し、交互パターン領域における対象パッチの測色値の平均値を算出し、連続パターン領域における対象パッチの測色値の平均値を上記基準値として算出し、当該算出した両平均値の差を上記度合として取得することを特徴とする請求項3または請求項5に記載のパッチサイズ決定方法。
【請求項7】
印刷指示および測色指示を制御対象に出力する制御装置と、制御装置から出力される指示に基づいた処理を実行する印刷装置とを備えるパッチサイズ決定システムであって、
上記印刷装置は、上記印刷指示に基づいて、対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷し、上記測色指示に基づいて、上記テストパターンを測色するとともに当該測色によって取得した対象パッチの測色値を上記制御装置に出力し、
上記制御装置は、上記出力された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に算出し、このサイズ毎の度合と所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定することを特徴とするパッチサイズ決定システム。
【請求項8】
対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷するテストパターン印刷部と、
上記印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する測色部と、
上記取得された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に取得する度合取得部と、
上記対象パッチのサイズ毎に取得される度合と所定の許容値とを比較することにより、上記度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するサイズ決定部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【請求項1】
対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷するテストパターン印刷工程と、
上記印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する測色工程と、
上記取得された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に取得する度合取得工程と、
上記対象パッチのサイズ毎に取得される度合と所定の許容値とを比較することにより、上記度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するサイズ決定工程と、
を備えることを特徴とするパッチサイズ決定方法。
【請求項2】
上記テストパターン印刷工程は、矩形の対象パッチの縦および横のうち一方のサイズを変化させ他方のサイズを固定値とすることにより、対象パッチのサイズが異なる複数のテストパターンを印刷する第一印刷工程を含み、
上記サイズ決定工程は、第一印刷工程によって印刷されたテストパターンの対象パッチの測色値に基づいて取得された、対象パッチの上記一方のサイズの違い毎の上記度合と、所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチの上記一方のサイズのうち最小値を決定する第一サイズ決定工程を含み、さらに、
上記テストパターン印刷工程は、対象パッチの縦および横のうち上記一方のサイズを上記第一サイズ決定工程において決定された最小値に固定し上記他方のサイズを変化させることにより、対象パッチのサイズが異なる複数のテストパターンを印刷する第二印刷工程を含み、
上記サイズ決定工程は、第二印刷工程によって印刷されたテストパターンの対象パッチの測色値に基づいて取得された、対象パッチの上記他方のサイズの違い毎の上記度合と、所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチの上記他方のサイズのうち最小値を決定する第二サイズ決定工程を含み、さらに、上記一方のサイズを上記第一サイズ決定工程で決定した最小値とし上記他方のサイズを当該第二サイズ決定工程で決定した最小値とした矩形を、上記パッチサイズとして決定することを特徴とする請求項1に記載のパッチサイズ決定方法。
【請求項3】
同一サイズの対象パッチの測色値の平均値と対象パッチの色の基準値との差を、対象パッチのサイズ毎の上記度合として取得することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のパッチサイズ決定方法。
【請求項4】
対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチの色と対象パッチ間の領域の色との組み合わせを変えて複数印刷する初期印刷工程と、
上記初期印刷工程において印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する初期測色工程と、
上記初期測色工程において取得された測色値に基づいて、上記度合を上記色の組み合わせ毎に取得する初期度合取得工程と、
上記初期度合取得工程において取得される度合が最大となる色の組み合わせを特定する特定工程と、
を上記テストパターン印刷工程より前に行なうとともに、上記テストパターン印刷工程では、対象パッチの色と対象パッチ間の領域の色との組み合わせを上記特定された組み合わせとしたテストパターンを印刷することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のパッチサイズ決定方法。
【請求項5】
上記初期度合取得工程は、上記初期印刷工程において印刷された一つのテストパターンを構成する対象パッチの測色値の平均値と、当該一つのテストパターンを構成する対象パッチの色の基準値との差を、当該一つのテストパターンにおける色の組み合わせについての上記度合として取得することを特徴とする請求項4に記載のパッチサイズ決定方法。
【請求項6】
対象パッチと対象パッチと色が異なる隣接パッチとを交互に配置した交互パターン領域と、対象パッチを連続して配置した連続パターン領域と、を少なくとも含むテストパターンを印刷し、交互パターン領域における対象パッチの測色値の平均値を算出し、連続パターン領域における対象パッチの測色値の平均値を上記基準値として算出し、当該算出した両平均値の差を上記度合として取得することを特徴とする請求項3または請求項5に記載のパッチサイズ決定方法。
【請求項7】
印刷指示および測色指示を制御対象に出力する制御装置と、制御装置から出力される指示に基づいた処理を実行する印刷装置とを備えるパッチサイズ決定システムであって、
上記印刷装置は、上記印刷指示に基づいて、対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷し、上記測色指示に基づいて、上記テストパターンを測色するとともに当該測色によって取得した対象パッチの測色値を上記制御装置に出力し、
上記制御装置は、上記出力された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に算出し、このサイズ毎の度合と所定の許容値とを比較することにより、度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定することを特徴とするパッチサイズ決定システム。
【請求項8】
対象パッチが間隔を空けて複数配置されたテストパターンを、対象パッチのサイズを変えて複数印刷するテストパターン印刷部と、
上記印刷されたテストパターンを測色することにより対象パッチの測色値を取得する測色部と、
上記取得された測色値に基づいて、対象パッチの測色結果における対象パッチ外の色の影響の度合を対象パッチのサイズ毎に取得する度合取得部と、
上記対象パッチのサイズ毎に取得される度合と所定の許容値とを比較することにより、上記度合が許容値以下となる対象パッチのサイズのうち最小のサイズを、パッチサイズとして決定するサイズ決定部と、
を備えることを特徴とする印刷装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−201845(P2010−201845A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51745(P2009−51745)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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