説明

パネルスイッチの製造方法及びパネルスイッチ

【課題】作業工数の低減及び作業性の向上を図り、コストを抑えて低廉化できるパネルスイッチの製造方法を提供する。
【解決手段】片側面に粘着層が形成された絶縁フィルムに対して、この絶縁フィルムよりも外形の小さいドーム形状の可動接点を、該可動接点の膨らんだ頂点部分を粘着固定する可動接点貼着工程(B)と、表面に前記可動接点の開口周縁部分と対向配置される外側電極と前記頂点部分と対向配置される中心電極とでなる固定接点を有する配線基板側に前記絶縁フィルムを粘着して前記可動接点を前記配線基板に固定する絶縁フィルム貼着工程(C)と、前記配線基板上における前記絶縁フィルムにレーザー光を照射し、該絶縁フィルムの不要部分をカットして除去する不要フィルム切除工程(D)と、を含むパネルスイッチの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパネルスイッチの製造方法及びパネルスイッチに関するものであり、特に、携帯電話の入力操作部やコンピュータ関連機器の入力操作部等、各種電子機器の薄型操作パネルに使用されるパネルスイッチの製造方法及びパネルスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の通信機器やコンピュータ関連機器に情報を入出力するための入力操作部は、薄型化及び低廉化を要求され、これに伴いシート状をしたパネルスイッチの使用が普及している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図15は従来のパネルスイッチの斜視図であり、図16は図15のC−C線拡大断面図である。両図において、パネルスイッチ51は、1枚の配線基板52と、該配線基板52上に配設した複数個、例えば30個の可動接点53,53…と、該可動接点53,53…上を個々に覆って配線基板52上に取り付けた複数の絶縁フィルム片54a,54a…と、を備えている。
【0004】
前記配線基板52には、図16に示すように、シート状をした絶縁フィルムの表面であって、且つ、スイッチ部を形成する複数の箇所にそれぞれ、固定接点55が印刷等により設けられている。該固定接点55は、略環状に形成された外側電極55aと、該外側電極55aで囲まれた中央部分に設けられた中心電極55bとから成る。なお、図示しないが、外側電極55a及び中心電極55bは、外部回路と電気接続されるコネクタ端子部分にそれぞれ連結されている。
【0005】
前記可動接点53は、弾性金属薄板製のドーム状に膨らんだ円皿状体として作製され、配線基板52の外側電極55a上に配置可能な大きさに形成された下側接点部(開口周縁部分)53aと、前記中心電極55bと対向して配置される頂点部分53bとを有している。そして、該可動接点53は、複数の各固定接点55に対応して配線基板52上に複数個配設されている。
【0006】
前記絶縁フィルム片54aは、可撓性を有するシート状の絶縁フィルムを所定サイズに分割して形成され、該絶縁フィルム片54aの片側面(内側面)には粘着層56(図16参照)が設けられている。そして、該絶縁フィルム片54aは粘着層56の接着力により配線基板52上に可動接点53と共に取り付けられている。
【0007】
次に、上記の如く構成されたパネルスイッチ51の動作を説明する。パネルスイッチ51に押圧力が付与されていないとき、可動接点53は絶縁フィルム片54a側へドーム状に膨らんでいて、可動接点53の頂点部分53bが中心電極55bから離間することにより、スイッチオフの状態で保持される。図16は、スイッチオフ状態のパネルスイッチ51を示している。
【0008】
他方、絶縁フィルム片54aが配線基板52側に押圧されると、絶縁フィルム片54aと可動接点53がドーム形状に沿って潰れ、該可動接点53の頂点部分53bが中心電極55bに密着してスイッチオンの状態になる。
【0009】
また、絶縁フィルム片54aへの押圧力を解除すると、可動接点53の弾性復帰力によって、該可動接点53の頂点部分53bが絶縁フィルム片54と共に初期位置に戻されて、該頂点部分53bが中心電極55bから再び離間してスイッチオフの状態になる。
【0010】
次に、従来のパネルスイッチ51の製造手順を、図17〜図21を参照しながら説明する。まず、パネルスイッチ51を形成するためのシート状のスイッチ形成素材Mを用意する。このスイッチ形成素材Mは、図17及び図21(a)に示すように、片側面(内側面)に粘着層56が形成された1枚の絶縁フィルム54を有し、且つ、該絶縁フィルム54の粘着層56にはセパレータ52Aが貼着固定されている。なお、前記絶縁フィルム54は、30枚の絶縁フィルム片54a,54a…に分割可能な大きさを有している。
【0011】
次に、スイッチ形成素材Mの絶縁フィルム54及び粘着層56を、図18及び図21(b)に示すように、金型(図示せず)を用いて所定のサイズにカットすることにより、30枚に分割された絶縁フィルム片54a,54a…を得る。然る後、図21(c)に示すように、セパレータ52Aが上側になるように、スイッチ形成素材Mを上下反転させ、各絶縁フィルム片54a,54a…を治具57上の決められた位置に順に敷き並べる。
【0012】
続いて、前記絶縁フィルム片54aの粘着層56上に貼り付けられたセパレータ52Aを取り外した後、図19及び図21(d)に示すように、前記粘着層56上にドーム形状の可動接点53の頂点部分53bが粘着されるように、各絶縁フィルム片54a,54a…の上にそれぞれ、複数の可動接点53を上下逆さにして配置貼着する。なお、可動接点53の外形寸法は、個々の絶縁フィルム片54aの外形寸法よりも十分小さく設定されているため、可動接点53は該絶縁フィルム片54aによって覆い隠される。
【0013】
前記粘着層56上に複数の可動接点53を貼着した後、図20及び図21(e)に示すように、複数の可動接点53の上に配線基板52(又はセパレータ52B)を載置して接着固定する。ここで、前記治具57には、左右2本ずつ合計4本の位置決めピン58,58,58,58が突設されている。従って、治具57上の所定位置に各絶縁フィルム片54a,54a…を重ねる際、該治具57に設けられている位置決めピン58,58,58,58は、配線基板52に設けられている位置決め孔59,59,59,59に挿入させて位置決めした状態で貼り合わすことができる。
【0014】
次いで、配線基板52の不要部分、例えば、配線基板52における隣接する可動接点53同士間に対応する不要部分等を切断除去する。最後に、前記治具57から各絶縁フィルム片54a,54a…を取り外すことによりパネルスイッチ51が完成する。
【特許文献1】特開2003−100165号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来のパネルスイッチ51は、絶縁フィルム24から複数枚の絶縁フィルム片54a,54aを金型により抜き加工して、これを治具56の上に順に敷き並べる作業を行う必要があるため、作業工数が大幅に増加すると共に、作業性が低下してコストアップを招くという問題があった。また、絶縁フィルム片54aの形状等が変更になったときには、それに応じて金型の修正が必要になり、金型修正のための費用及び製作時間が浪費されてコストアップの原因になっていた。
【0016】
そこで、作業工数の低減及び作業性の向上を図り、且つ製作コストの低廉化及び製作時間の短縮化を実現するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1に記載の発明は、絶縁フィルムの片側面に形成された粘着層に、ドーム形状の可動接点の膨らんだ頂点部分を粘着固定する可動接点貼着工程と、該可動接点に対応する固定接点を有する配線基板又はセパレータに前記絶縁フィルムを粘着して前記可動接点を前記配線基板に固定する絶縁フィルム貼着工程と、前記配線基板又はセパレータ上の前記絶縁フィルムにレーザー光を照射し、該絶縁フィルムの不要部分をカットして除去する不要フィルム切除工程と、を含むパネルスイッチの製造方法を提供する。
【0018】
この製造方法によれば、配線基板又はセパレータ上に可動接点及び絶縁フィルムを貼り合わせた状態で、絶縁フィルムにレーザー光を照射してカットして、該絶縁フィルムの不要部分を除去するので、金型を使用せずにパネルスイッチが生産される。
【0019】
また、カット形状に変更が生じた場合には、レーザーカット機等におけるプログラムの調整により迅速に対応することができる。
【0020】
さらに、複数枚の絶縁フィルムを重ねる構造の場合には、絶縁フィルムを重ねた後、この重ねた複数枚の絶縁フィルムにレーザー光を同時に照射して不要部分をカットするので貼りズレが生じない。
【0021】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のパネルスイッチの製造方法において、上記絶縁フィルムには複数個の上記可動接点が互いに離間して設けられているとともに、前記配線基板の上記固定接点は前記可動接点に各々対応して複数個設けられ、上記不要フィルム切除工程において各可動接点との間に位置する絶縁フィルム部分を不要部分として除去するパネルスイッチの製造方法を提供する。
【0022】
この製造方法によれば、絶縁フィルム及び可動接点を有してなる複数のスイッチを同一の配線基板上に並設したパネルスイッチを製造することができる。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のパネルスイッチの製造方法において、上記不要フィルム切除工程は、上記可動接点の位置を画像認識する画像認識装置と、記画像認識装置で検出された可動接点の位置を基準にして前記不要となるフィルム部分にレーザー光を照射してカットするレーザーカット機と、を使用するパネルスイッチの製造方法を提供する。
【0024】
この製造方法によれば、画像認識装置で可動接点を認識し、該可動接点を基準にして絶縁フィルムにレーザーカット機でレーザー光を照射してカットし、該絶縁フィルムの不要部分を除去することができる。
【0025】
請求項4に記載の発明は、絶縁フィルムの片側面に形成された粘着層に、ドーム形状の可動接点の膨らんだ頂点部分を粘着固定する可動接点貼着工程と、可動接点に対応する固定接点を有する配線基板又はセパレータに前記絶縁フィルムを粘着して前記可動接点を前記配線基板に固定する絶縁フィルム貼着工程と、上記可動接点貼着工程で形成された可動接点付きの絶縁フィルム上に、同じく前記可動接点貼着工程で形成された別の絶縁フィルムを重ねて粘着する可動接点重ね合わせ工程と、前記配線基板又はセパレータ上で重ね合わせられた絶縁フィルムにレーザー光を照射し、該絶縁フィルムの不要部分を同時にカットして除去する不要フィルム切除工程と、を含むパネルスイッチの製造方法を提供する。
【0026】
この製造方法によれば、可動接点貼着工程で形成された絶縁フィルムを2枚重ねにして、絶縁フィルムを2枚重ねて配線基板又はセパレータ上に配設することにより、2枚の絶縁フィルムそれぞれにおいて可動接点の操作荷重(スイッチ押圧荷重)の設定調整を相互独立に行える。
【0027】
また、配線基板又はセパレータ上に可動接点及び絶縁フィルムを貼り合わせた状態で、絶縁フィルムにレーザー光を照射してカットし、該絶縁フィルムの不要部分を除去するので、金型を使用せずに生産することができる。
【0028】
さらに、カット形状に変更が生じた場合には、レーザーカット機等におけるプログラムの調整により形状変更に容易に対応することができる。
【0029】
さらに又、複数枚の絶縁フィルムを重ねる構造とした場合、絶縁フィルムを重ねた後、該重ねた複数枚の絶縁フィルムにレーザー光を同時に照射し、不要部分をカットすることができるため貼りズレが生じない。
【0030】
請求項5に記載のパネルスイッチは、固定接点を有する配線基板又はセパレータと、該固定接点に対応するドーム形状の可動接点の膨らんだ頂点部分が粘着固定される粘着層を片側面に有し、且つ、前記可動接点を前記固定接点に対応させて前記配線基板又はセパレータ上に配置して成る絶縁フィルムと、を有したパネルスイッチであって、前記絶縁フィルムは2枚重ねて前記配線基板上に直接又はセパレータを介して配設され、且つ、2枚の各絶縁フィルムに夫々設けられた前記可動接点は互いに対応して配置されているパネルスイッチを提供する。
【0031】
この構成によれば、絶縁フィルムを2枚重ねて、之を配線基板又はセパレータ上に配設することにより、2枚の絶縁フィルムそれぞれにおいて、操作荷重の設定調整を相互独立に行える構造が得られる。
【発明の効果】
【0032】
請求項1に記載の発明は、金型を使用せずに生産をすることができるので、金型製作コストの削減化が可能になると共に、製造期間の短縮化を図ることができる。
【0033】
また、絶縁フィルム等のカット形状に変更が生じた場合には、レーザーカット機等のプログラムの調整により、容易かつ迅速に対応することができる。また、レーザーカット機等により任意なカット形状が得られるので、該カット形状に対してユーザの要求に応じた多彩なデザインを得ることができる。
【0034】
複数枚の絶縁フィルムを重ねる構造とした場合でも、重ねた複数枚の絶縁フィルムをレーザー光で同時に正確にカットすることができるので、該重ねた複数枚の絶縁フィルムとの間に位置ずれが起きることも無くなり、パネルスイッチの歩留まりが向上する。又、複数の可動接点間のピッチが短くなるので、絶縁フィルム等の不要部分の面積を従来に比べて少なくすることができる。
【0035】
請求項2に記載の発明は、複数のスイッチを同一配線基板上に並設してなるパネルスイッチを簡単に形成することができるので、請求項1に記載の発明の効果に加えて、デザイン変更等がなされたパネルスイッチを廉価で提供することができる。
【0036】
請求項3に記載の発明は、絶縁フィルムをレーザーカット機で精度良く切断することができるので、請求項1または2に記載の発明の効果に加えて、更なる製品歩留まりの向上が図られる。
【0037】
請求項4及び5に記載の発明は、上下2枚の個々の絶縁フィルムにおいて操作荷重の設定調整を相互独立に行えるので、操作荷重を広範囲かつ高精度に設定でき、従来に比べてスイッチ操作時におけるクリック感を高めることができる、パネルスイッチの製造方法及びパネルスイッチが容易に得られる。
【0038】
また、金型を使用することなく生産を行うことができるので、コストの低廉化が可能になる。
【0039】
さらに、カット形状に変更が生じた場合には、レーザーカット機等におけるプログラムの調整により、迅速に対応することができる。
【0040】
複数枚の絶縁フィルムを重ねる構造とした場合でも、該重ねた複数枚の絶縁フィルムを同時にレーザー光で正確にカットすることができるので、絶縁フィルム等の歩留まりがよくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
本発明は、作業工数の低減及び作業性の向上を図り、且つ製作コストの低廉化及び製作時間の短縮化を実現するという目的を達成するために、絶縁フィルムの片側面に形成された粘着層に、ドーム形状の可動接点の膨らんだ頂点部分を粘着固定する可動接点貼着工程と、該可動接点に対応する固定接点を有する配線基板又はセパレータに前記絶縁フィルムを粘着して前記可動接点を前記配線基板に固定する絶縁フィルム貼着工程と、前記配線基板又はセパレータ上の前記絶縁フィルムにレーザー光を照射し、該絶縁フィルムの不要部分をカットして除去する不要フィルム切除工程と、を含むパネルスイッチの製造方法としたことにより実現した。
【実施例】
【0042】
以下、本発明の製造方法により製造されたパネルスイッチの構造を、その製造方法と共に好適な実施例をあげて説明する。本実施例は、ベース部材である配線基板又はセパレータの上に複数の絶縁フィルム片を取り付けた状態で製品として出荷するパネルスイッチに適用したものである。
【0043】
(第1実施形態) 図1は第1実施形態に係る製造方法により製造されたパネルスイッチの斜視図であり、図2は図1のA−A線拡大断面図である。図1及び図2に示すパネルスイッチ1は、ベース部材として配線基板2を採用したものである。
【0044】
図1及び図2において、パネルスイッチ1は、複数の固定接点5を有する1枚の配線基板(ベース部材)2と、該配線基板2上に配設した複数個、例えば、30個 の可動接点3,3…と、該可動接点3,3…上を個々に覆って配線基板2上に取り付けた複数の絶縁フィルム片4a,4a…と、を備えている。
【0045】
前記配線基板2には、図2に示すように、シート状の絶縁フィルムの表面であって、かつ、スイッチ部を形成する複数箇所に、固定接点5が印刷等により夫々設けられている。各固定接点5は、略環状に形成された外側電極5aと、該外側電極5aで包囲された中央部分に設けた中心電極5bとから成る。なお、外側電極5a及び中心電極5bはそれぞれ、外部回路に電気接続されたコネクタ端子部分(図示せず)に連結されている。
【0046】
前記可動接点3は、弾性金属薄板製のドーム状に膨らんだ円皿状体として作製されている。又、該可動接点3は、配線基板2の外側電極5a上に配置可能な大きさに形成された下側接点部3aと、前記中心電極5bと対向して配置される頂点部分3bとを有している。そして、該可動接点3は、各固定接点5に対応して配線基板2上に複数個(30個)配置されている。
【0047】
前記絶縁フィルム片4aは、可撓性を有するシート状の絶縁フィルムを所定サイズに分割して形成したものである。又、絶縁フィルム片4aは、可動接点3を被覆保護するカバーテープとして機能し、該絶縁フィルム片4aの片側面(内側面)には粘着層6(図2参照)が設けられている。更に、絶縁フィルム片4aは粘着層6の接着力により、配線基板2上に可動接点3と共に取り付けられている。
【0048】
次に、上記のように構成されたパネルスイッチ1の動作について説明する。パネルスイッチ1に押圧力が付与されていないとき、可動接点3は図2における上側、即ち、絶縁フィルム片4a側にドーム状に膨らんでいて、可動接点3の頂点部分3bが中心電極5b表面から離間するため、可動接点3はスイッチオフの状態で保持される。
【0049】
他方、絶縁フィルム片4aが配線基板2側に押圧操作されると、絶縁フィルム片4aと可動接点3がドーム形状に沿って潰れ、該可動接点3の頂点部分3bが中心電極5bに接触して密着するため、可動接点3はスイッチオンの状態になる。また、絶縁フィルム片4aの押圧力を解除すると、可動接点3の弾性復帰力により、該可動接点3の頂点部分3bが絶縁フィルム片4と共に初期位置に上昇復帰する。その結果、該頂点部分3bが中心電極5bから再び離間して、可動接点3はスイッチオフの状態に切り替わる。
【0050】
次に、上記パネルスイッチ1の製造手順を図3〜図8に基づいて説明する。図3はパネルスイッチ1の製造方法の一手順を示す工程ブロック図である。この製造方法は、片側面に粘着層6が形成された絶縁フィルム4を治具7に載置する絶縁フィルム準備工程(A)と、絶縁フィルム4上の所定位置に所定個数の可動接点3,3…がそれぞれ貼着配置される可動接点貼着工程(B)と、固定接点を有する配線基板2(又はセパレータ2B)側に絶縁フィルム4を粘着して可動接点3,3…を配線基板2に(又はセパレータ2Bを介して)固定する絶縁フィルム貼着工程(C)と、配線基板2(又はセパレータ2B)上における絶縁フィルム4にレーザー光を照射して該絶縁フィルム4の不要部分を除去する不要フィルム切除工程(D)を含む。以下、上記各工程(A)〜 (D)について順次詳述する。
【0051】
絶縁フィルム準備工程(A)においては、パネルスイッチ1を形成するための既製品であるシート状のスイッチ形成素材Mを用意する。このスイッチ形成素材Mは、図8(a)に示すように、片側面(内側面)に粘着層6が形成された1枚の絶縁フィルム4を有し、且つ、該絶縁フィルム4の粘着層6にセパレータ2Aが粘着固定されている。次に、図4及び図8(b)に示すように、スイッチ形成素材Mのセパレータ2Aを上側に向けた状態にセットして、スイッチ形成素材M下面側の絶縁フィルム4を治具7上に載置して貼着固定する。
【0052】
ここで、前記治具7には、左右2本ずつ合計4本の位置決めピン8,8,8,8が突設されている。従って、スイッチ形成素材Mは、治具7上に配置されるとき、該左右1対のピン8,8と8,8の間に挟まれて正確に位置決め固定される。
【0053】
尚、既製品であるスイッチ形成素材Mを治具7上に配置固定する際、即ち、ベース部材がセパレータ2Aの場合は、位置決め孔9,9,9,9は必ずしも必要ではないが、後述の配線基板2を治具7上に配置固定する際は、前記位置決め孔9,9,9,9を位置決め手段として利用する。また、絶縁フィルム4はフィルムシート材で形成されて、30枚の絶縁フィルム片4a,4a…を取得できる大きさを有するが、絶縁フィルム4の面積は従来例に比べて約半分で済む。
【0054】
次に、可動接点貼着工程(B)に進み、絶縁フィルム4の粘着層6上に貼り付けられたセパレータ2Aを取り外した後、図5に示すように、後述する絶縁フィルム片4a,4a…の形成が予定されている複数箇所の粘着層6上に可動接点3を配置固定する。その際、図8(c)中の一点鎖線で示すドーム形状の可動接点3の頂点部分3bが、絶縁フィルム4上の所定位置に粘着固定されるように、可動接点3を上下逆さに反転して配置貼着する。
【0055】
これにより、絶縁フィルム4上の複数の所定位置に、所定個数の可動接点3,3…がそれぞれ貼着配置される。なお、各可動接点3,3…の外形寸法は、個々の絶縁フィルム片4aの外形寸法よりも十分小さく設定されているため、各可動接点3,3…は該絶縁フィルム片4aによって覆い隠される。
【0056】
続いて、絶縁フィルム貼着工程(C)に進み、図5及び図8(d)に示すように、複数の可動接点3の上に1枚の配線基板2(又はセパレータ2B。以下同様。)を載置して接着固定する。ここで、配線基板2は、治具7の位置決めピン8,8,8,8に対応する位置決め孔9,9,9,9を有するため、該位置決め孔9,9,9,9に位置決めピン8,8,8,8を挿入係合させることにより、治具7に対して配線基板2が正確に位置決めして固定される。
【0057】
然る後、スイッチ形成素材Mの絶縁フィルム4及び配線基板2を治具7から可動接点3,3…と共に取り外す。続いて、図6に示すように、可動接点3,3…のドーム形状を保持したまま、絶縁フィルム4と配線基板2との間を密着させる。その結果、粘着層6の粘着力により、絶縁フィルム4が配線基板2の表面に強固に粘着固定される。
【0058】
前記絶縁フィルム4の粘着固定によって、可動接点3,3…も配線基板2上の所定位置、すなわち、固定接点5の外側電極5aに固定保持される。斯くして、配線基板2上に複数の可動接点3,3…及び絶縁フィルム4が相互に貼着されることによって、可動接点3,3…付きのスイッチ半製品(1)が形成される。
【0059】
次いで、不要フィルム切除工程(D)に進む。不要フィルム切除工程(D)では、例えば、図7に示すフィルムカット装置11が用意されている。該フィルムカット装置11は架台12を有し、該架台12にX−Yテーブル13、照明装置14、タッチパネル付きの操作モニター15、CCDカメラを内蔵している画像認識装置16、レーザーカット機17等が配設されている。
【0060】
そして、前記絶縁フィルム粘着工程(C)を経て作製された前記スイッチ半製品(1)をX−Yテーブル13上に載せると、該X−Yテーブル13が所定の位置へ順に移動されて、絶縁フィルム4における不要部分4bの切除が自動的に行われる。
【0061】
前記フィルムカット装置11の動作をさらに説明すると、X−Yテーブル13は、図7(a)で示す位置から移動をスタートする。したがって、図7(a)に示す位置において、絶縁フィルム4を上向きにして前記スイッチ半製品(1)をX−Yテーブル13上に載置する。
【0062】
その後、X−Yテーブル13の移動をスタートさせると、該X−Yテーブル13は図7(b)で示す位置に移動する。同図(b)の位置では、X−Yテーブル13は画像認識装置16と照明装置14の間に配置される。そして、この位置において、照明装置14からの光が配線基板2の下側に当てられ、スイッチ半製品(1)における可動接点3,3…の位置を画像認識装置16側に画像として明確に浮き出させる。また、ここでの画像を画像認識装置16が撮影して可動接点3,3…の位置を認識し、この画像情報をレーザーカット機17に入力する。
【0063】
画像認識装置16による画像認識が済むと、X−Yテーブル13は図7(c)で示す位置に移動される。同図(c)の位置では、画像認識装置16で画像認識された情報を基に、レーザーカット機17が絶縁フィルム4の絶縁フィルム片4aと不要部分4bとの境界線にレーザー光17aを照射してカット(切断)して、該不要部分4bを分離除去する。これにより、スイッチ半製品(1)がパネルスイッチ1として完成し、X−Yテーブル13上から取り除かれる(図8(d)参照)。一方、X−Yテーブル13は、図7(a)で示すスタート位置に戻り、以後、同じ動作を繰り返す。
【0064】
このように、フィルムカット装置11を使用することにより、不要フィルム切除工程(D)が実行され、各絶縁フィルム片4a,4a…が個々に分離されてなるパネルスイッチ1を完成させることができる。
【0065】
この不要フィルム切除工程(D)では、可動接点3,3…を基準にして不要部分4bをカットするので、カット精度が向上し、製品歩留まり(材料歩留まりを含む)を大幅に改善させることができる。
【0066】
また、例えば、絶縁フィルム片4a等の形状が変更になった場合は、操作モニター15上のタッチパネル面を操作して、前記形状の変更の指示をレーザーカット機17に対して行うことにより、絶縁フィルム片4a等の変更後の形状に対応したカット形状に容易に変更することができる。
【0067】
(第2実施形態) 図9は、本発明の第2実施形態を示す製造工程図で、図10及び図11は第2実施形態における製造方法で製造されたパネルスイッチ21の構造図及び断面図である。第2実施形態の製造方法は、第1実施形態の製造工程(A)〜(D)に可動接点重ね合わせ工程(E)を付加したものであり、それ以外の工程は第1実施形態の製造工程とほぼ同じである。
【0068】
また、第2実施形態の製造工程を経て作製されるパネルスイッチ21も、第1実施形態と同様に、上記絶縁フィルム4の粘着層6上に可動接点3,3…を取り付け、この可動接点3,3…付きの絶縁フィルム4を二段に重ねて貼着している点のみが異なり、他の構造は同じであるので、同じ部材には同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0069】
次に、第2実施形態に係るパネルスイッチ21の製造工程図を、図9乃至図14を参照しながら説明する。まず、図9に示すように、第2実施形態による絶縁フィルム準備工程(A),可動接点貼着工程(B),絶縁フィルム貼着工程(C)は、第1実施形態による絶縁フィルム準備工程(A),可動接点貼着工程(B),絶縁フィルム貼着工程(C)と同じである。
【0070】
第2実施形態は、絶縁フィルム貼着工程(C)の後に可動接点重ね合わせ工程(E)、即ち、可動接点貼着工程(B)で形成された可動接点3,3…付きの絶縁フィルム4上に、同じく可動接点貼着工程(B)を経て形成された別の可動接点3,3…付きの絶縁フィルム4を重ねて粘着する工程(E)を加えたことを特徴とする。
【0071】
前記可動接点重ね合わせ工程(E)において、図12に示すように、第1実施形態と同じ製造工程で作製された可動接点3,3…付きの絶縁フィルム4の上に、上述した絶縁フィルム準備工程(A),可動接点貼着工程(B)を経て作製された別の可動接点3,3…付きの絶縁フィルム4を上下の可動接点3,3に対応させて重ね合わせる。図13は、治具7上において可動接点3,3…付きの絶縁フィルム4を上下2段に重ね合わせた状態のスイッチ半製品(21)を示す。
【0072】
その後、不要フィルム切除工程(D)に移行し、第1実施形態と同様に、上記レーザーカット機17を用いて、上下の絶縁フィルム4,4の所望する部分を同時にカットすることにより、可動接点3,3…付きの絶縁フィルム4を上下二段に重ねて製造する。図14は、可動接点3,3…付きの絶縁フィルム4を上下二段に重ねて製造されたパネルスイッチ21を示す。尚、上記配線基板2に代えてセパレータ2Bを使用して出荷することができる。
【0073】
この製造方法では、上下の絶縁フィルム4,4を2枚同時にカットするので、上下2枚の絶縁フィルム4,4が位置ずれを生じることなく正確に切断される。従って、2枚の絶縁フィルム4,4を一層正確にカットでき、パネルスイッチ21の製品歩留まりを向上させることができる。
【0074】
また、このパネルスイッチ21の絶縁フィルム4は、上側の可動接点3,3…と下側の可動接点3,3…を位置対応させて相互に上下重ねた構造を有する。したがって、可動接点3,3…付きの絶縁フィルム4を2枚重ねて配線基板2(又はセパレータ2B)上に配設することにより、2枚の絶縁フィルム4,4それぞれにおいて、上下の可動接点3,3…の操作荷重(バネ荷重)の設定調整を相互独立に行える。
【0075】
斯くして、上下2枚の個々の絶縁フィルム4,4の可動接点3,3…による操作荷重の設定調整を広範囲かつ高精度に設定できるので、従来に比べてスイッチ操作時におけるクリック感を著しく高めることができる。
【0076】
尚、本発明では、上記配線基板2に代えてセパレータ2Bを使用して出荷した場合、パネルスイッチ1又は21は納入先のユーザにおいて配線基板2に取り付けて使用される。
【0077】
本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の第1実施形態に係るパネルスイッチの製造方法を用いて形成されたパネルスイッチの斜視図。
【図2】図1のA−A線拡大断面図。
【図3】本発明の第1実施形態に係るパネルスイッチの製造方法における工程ブロック図。
【図4】同上第1実施形態におけるパネルスイッチの製造方法において、治具の上に絶縁フィルムを配置した絶縁フィルム準備工程での状態を示す説明図。
【図5】同上第1実施形態におけるパネルスイッチの製造方法において、絶縁フィルム上に可動接点を配置した可動接点貼着工程での状態を示す説明図。
【図6】同上第1実施形態におけるパネルスイッチの製造方法において、配線基板上に絶縁フィルム及び可動接点を配置した絶縁フィルム貼着工程での状態を示す説明図。
【図7】同上第1実施形態におけるパネルスイッチの製造方法において、不要フィルム切除工程で使用しているフィルムカット装置の構成を示し、(a)はX−Yテーブルがスタート位置に配置されている状態の構成概略図、(b)はX−Yテーブルが画像読取位置に配置されている状態、(c)はX−Yテーブルがレーザーカット位置に配置されている状態の構成概略図。
【図8】本発明の第1実施形態に係る製造方法を示し、(a)はスイッチ形成素材を示す準備工程図、(b)はスイッチ形成素材を治具に貼着固定したときの状態を示す工程図、(c)は絶縁フィルムに可動接点を取り付けたときの状態を示す工程図、(d)は可動接点の上に配線基板を取り付けたときの状態を示す工程図、(e)はパネルスイッチの完成時を示す工程図。
【図9】本発明の第2実施形態に係るパネルスイッチの製造方法における工程ブロック図。
【図10】本発明の第2実施形態に係るパネルスイッチの製造方法を用いて形成されたパネルスイッチの斜視図。
【図11】図10のB−B線拡大断面図。
【図12】同上第2実施形態における可動接点重ね合わせ工程の説明図。
【図13】本発明の第2実施形態に係るパネルスイッチの製造方法におけるスイッチ半製品を示す工程図。
【図14】本発明の第2実施形態に係るパネルスイッチの製造方法を用いて形成されたパネルスイッチを示す工程図。
【図15】従来の製造方法を用いて形成されたパネルスイッチの斜視図。
【図16】図15のC−C線拡大断面図。
【図17】従来の製造方法において使用する絶縁フィルムの斜視図。
【図18】従来の製造方法において治具上に絶縁フィルム片を配置した状態を示す斜視図。
【図19】従来の製造方法において治具上に絶縁フィルム片と可動接点を配置した状態を示す斜視図。
【図20】従来の製造方法において治具上に配線基板を配置する状態を示す斜視図。
【図21】従来の製造方法を示し、(a)はスイッチ形成素材を示す工程図、(b)はスイッチ形成素材の絶縁フィルムをカットして複数に分割した状態を示す工程図、(c)はスイッチ形成素子を反転して治具に貼着固定したときの状態を示す工程図、(d)は絶縁フィルムに可動接点を取り付けたときの状態を示す工程図、(e)は可動接点の上に配線基板等を取り付けたときの状態を示す工程図。
【符号の説明】
【0079】
1 パネルスイッチ
2 配線基板
2A セパレータ
2B セパレータ
3 可動接点
3a 下側接点部(開口周縁部分)
3b 頂点部分
4 絶縁フィルム
4a 絶縁フィルム片
4b 不要部分
5 固定接点
5a 外側電極
5b 中心電極
6 粘着層
7 治具
8 位置決めピン
9 位置決め孔
11 フィルムカット装置
12 架台
13 X−Yテーブル
14 照明装置
15 操作モニター
16 画像認識装置
17 レーザーカット機
17a レーザー光
21 パネルスイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁フィルムの片側面に形成された粘着層に、ドーム形状の可動接点の膨らんだ頂点部分を粘着固定する可動接点貼着工程と、
該可動接点に対応する固定接点を有する配線基板又はセパレータに前記絶縁フィルムを粘着して前記可動接点を前記配線基板に固定する絶縁フィルム貼着工程と、
前記配線基板又はセパレータ上の前記絶縁フィルムにレーザー光を照射し、該絶縁フィルムの不要部分をカットして除去する不要フィルム切除工程と、
を含むことを特徴とするパネルスイッチの製造方法。
【請求項2】
上記絶縁フィルムには複数個の上記可動接点が互いに離間して設けられているとともに、上記配線基板の上記固定接点は前記可動接点に各々対応して複数個設けられ、
上記不要フィルム切除工程において各可動接点との間に位置する絶縁フィルム部分を不要部分として除去することを特徴とする請求項1に記載のパネルスイッチの製造方法。
【請求項3】
上記不要フィルム切除工程は、上記可動接点の位置を画像認識する画像認識装置と、該画像認識装置で検出された可動接点の位置を基準にして前記絶縁フィルム上にレーザー光を照射してカットするレーザーカット機と、を使用することを特徴とする請求項1または2に記載のパネルスイッチの製造方法。
【請求項4】
絶縁フィルムの片側面に形成された粘着層に、ドーム形状の可動接点の膨らんだ頂点部分を粘着固定する可動接点貼着工程と、
可動接点に対応する固定接点を有する配線基板又はセパレータに前記絶縁フィルムを粘着して前記可動接点を前記配線基板に固定する絶縁フィルム貼着工程と、
上記可動接点貼着工程で形成された可動接点付きの絶縁フィルム上に、同じく前記可動接点貼着工程で形成された別の絶縁フィルムを重ねて粘着する可動接点重ね合わせ工程と、
前記配線基板又はセパレータ上で重ね合わせられた絶縁フィルムにレーザー光を照射し、該絶縁フィルムの不要部分を同時にカットして除去する不要フィルム切除工程と、
を含むことを特徴とするパネルスイッチの製造方法。
【請求項5】
固定接点を有する配線基板又はセパレータと、該固定接点に対応するドーム形状の可動接点の膨らんだ頂点部分が粘着固定される粘着層を片側面に有し、且つ、前記可動接点を前記固定接点に対応させて前記配線基板又はセパレータ上に配置して成る絶縁フィルムと、を有したパネルスイッチであって、
前記絶縁フィルムは2枚重ねて前記配線基板上に直接又はセパレータを介して配設され、且つ、2枚の各絶縁フィルムに夫々設けられた前記可動接点は互いに対応して配置されていることを特徴とするパネルスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2009−9854(P2009−9854A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171120(P2007−171120)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000006220)ミツミ電機株式会社 (1,651)
【Fターム(参考)】