説明

パルス位相調整方法および装置

【課題】事前に位相ずれの評価や調整を行うことなく、フレームパルスとクロックとの間の位相変化を自動調整することができる。
【解決手段】位相制御部30により、位相調整部10での入力クロックCLKinに対する位相調整量を変化させて、レーシング検出部20により、このような危険なレーシング状態を検出し、位相制御部30により、その時の最悪位相調整量に基づいて、入力フレームパルスFPinを安定してラッチできる最適位相調整量を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルス位相調整技術に関し、特に入力フレームパルスをラッチするクロックの最適位相調整量を決定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路の高速化や複雑化に伴って、電子回路の制御に用いるシステムクロック周波数が高くなる傾向にあり、プリント配線基板間あるいは装置間でデジタル信号の受け渡しを行う場合、デジタル信号の位相変化に関する許容誤差が厳しくなる。
一般に、クロックを用いてデジタル信号の受け渡しを行う場合、例えば、周期的に変化するフレームパルスを受け渡しする場合、より周波数の高い同期用のクロックをフレームパルスと並行して受け渡しし、受信側でこのクロックを用いてフレームパルスをラッチすることにより、クロックと同期したフレームパルスを生成する。
【0003】
このような受け渡し方法では、フレームパルスとクロックに対する位相変化にずれが生じて、フレームパルスの変化点とクロックによるラッチタイミングとが重なった場合、ラッチしたフレームパルスの時間位置が1クロック分だけ前後に変化するというレーシング状態が発生し、本来の周期を持つフレームパルスを生成できなくなる。
【0004】
レーシング状態の発生を回避する受け渡し方法として、フレームパルスを遅延させる遅延挿入回路を設け、クロックと所定分だけ遅延させたクロックとで選択された所望範囲で、フレームパルスがラッチされているか否かに基づいて、遅延挿入回路での遅延量を調整する技術が提案されている(例えば、特許文献1など参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平06−303226号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような背景技術では、デジタル信号の受け渡しに伴う位相変化を調整する際、フレームパルスとクロックとの間の位相変化量として、当該受け渡しに固有の位相変化量を予め把握した上で、クロックの遅延量を決定する必要があるため、位相変化量がそれぞれ異なるケースに対して共通に適用することができず、評価や調整に膨大な作業負担を要するという問題点があった。
【0007】
また、すべてのケースに共通して適用する方法としては、図13に示すような自動位相調整方法が考えられる。図13は、自動位相調整方法を示す説明図である。この自動位相調整方法は、受信側にクロックの位相を調整する位相調整回路91を設け、この位相調整量を順に変化させて、位相調整後のクロックに基づきラッチ92でラッチしたフレームパルスを確認し、フレームパルスが安定してラッチできた位相量を選択している。
【0008】
しかしながら、この方法では、位相調整回路81でクロックを1周期分、すなわち360度変化させて最適位相点を見つける必要があり、評価や調整に時間がかかる。また、最適位相点をどこに設定するかを感覚的な判断で決めているため、自動化しにくい。さらには、評価を短時間で終わらせるため、プリント配線基板の配線長に制限を設けて、設計時の位相変動量を最低限に抑えることが一般的に求められるため、プリント配線基板の設計が難しくなる。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、その目的とするところは、事前に位相ずれの評価や調整を行うことなく、フレームパルスとクロックとの間の位相変化を自動調整することができるパルス位相調整方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明にかかるパルス位相調整方法は、任意の位相調整量に基づき入力クロックの位相を調整した出力クロックと、この出力クロックにより入力フレームパルスをラッチして位相を調整した出力フレームパルスとの位相関係に起因して、出力フレームパルスに発生するレーシング状態を検出するレーシング検出ステップと、レーシング状態が検出された際の最悪位相調整量に基づいて入力フレームパルスをラッチするための最適位相調整量を決定する位相制御ステップとを備えている。
【0011】
また、本発明にかかるパルス位相調整装置は、指示された位相調整量に基づき入力クロックの位相を調整した出力クロックを生成するとともに、この出力クロックにより入力フレームパルスをラッチして位相を調整した出力フレームパルスを生成する位相調整部と、出力フレームパルスと出力クロックとの位相関係に起因して出力フレームパルスに発生するレーシング状態を検出するレーシング検出部と、位相調整部に対して異なる位相調整量を順次選択して指示し、レーシング検出部でレーシング状態が検出された際の最悪位相調整量に基づいて、入力フレームパルスをラッチするための最適位相調整量を決定して位相調整部へ指示する位相制御部とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フレームパルスとクロックとの間の位相変化を自動調整することができる。このため、個々のプリント配線基板や回路に固有の特性に左右されることなくデジタル信号の位相変化量がそれぞれ異なるケースに対して共通に適用することができる。
これにより、事前に位相ずれの評価や調整を行う必要がなくなり、例えばプリント配線基板や回路の設計、製作、品質管理などに要する作業負担を大幅に削減することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施形態にかかるパルス位相調整装置について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態にかかるパルス位相調整装置の構成を示すブロック図である。
【0014】
本実施形態にかかるパルス位相調整装置1は、入力クロックCLKの位相を調整して、入力フレームパルスを最適なタイミングでラッチ出力する機能を有しており、主な機能部として、位相調整部10、レーシング検出部20、および位相制御部30が設けられている。
【0015】
位相調整部10は、指示された位相調整量に基づき入力クロックCLKの位相を調整した出力クロックCLKoutを生成するクロック位相調整機能と、出力クロックCLKoutにより入力フレームパルスFPをラッチして位相を調整した出力フレームパルスを生成するラッチ機能とを有している。図1において、クロック位相調整機能は、PLL回路などの位相調整回路11から実現されており、ラッチ機能は、一般的なラッチ回路12から実現されている。
【0016】
レーシング検出部20は、出力フレームパルスFPoutと出力クロックCLKoutとの位相関係に起因して出力フレームパルスFPoutに発生するレーシング状態を検出する機能を有している。
位相制御部30は、位相調整部10に対して異なる位相調整量を順次選択して指示する機能と、レーシング検出部20でレーシング状態が検出された際の最悪位相調整量(危険位相調整量)に基づいて、入力フレームパルスをラッチするための最適位相調整量を決定して位相調整部10へ指示する機能とを有している。
【0017】
図2は、レーシング状態を示す説明図である。レーシング状態とは、入力フレームパルスFPの変化点と出力クロックCLKoutによるラッチタイミングとが重なった場合、ラッチした出力フレームパルスFPoutの時間位置が1クロック分だけ前後に変化し、出力フレームパルスFPoutのフレーム周期が1クロック分だけ変化する状態をいう。
このレーシング状態が発生する期間は、出力クロックCLKoutの立ち上がりタイミングの前後に位置する期間で発生する可能性が高く、その期間幅は100〜200psecと非常に狭い。この期間をレーシング発生範囲といい、レーシング発生範囲以外の区間が、入力フレームパルスFPを安定してラッチできるラッチ有効期間となる。
【0018】
本実施形態は、位相調整部10での入力クロックCLKに対する出力クロックの位相調整量を順次変化させて、このような危険なレーシング状態を検出し、その時の最悪位相調整量に基づいて、入力フレームパルスFPを安定してラッチできる最適位相調整量を決定している。
【0019】
次に、図3を参照して、本発明の第1の実施形態にかかるパルス位相調整装置の動作について説明する。図3は、本発明の第1の実施形態にかかるパルス位相調整動作を示すフローチャートである。
【0020】
パルス位相調整動作の開始を示すリセット信号などの制御信号(図示せず)に応じて、位相制御部30は、所定の位相制御信号30Sを出力することにより位相調整回路11の位相調整量を例えばゼロに初期化する(ステップ100)。これにより、位相調整回路11からは入力クロックCLKinに対して位相調整量がゼロの出力クロックCLKoutが出力される。また、ラッチ回路12は、この出力クロックCLKoutにより入力フレームパルスFPinをラッチし、出力フレームパルスFPoutとして出力する。
【0021】
レーシング検出部20は、出力クロックCLKoutに基づいて監視することにより、出力フレームパルスFPoutにレーシング状態が発生しているか否か検出する(ステップ101)。
【0022】
ここで、位相調整回路11での位相調整量の変更後から所定フレーム数にわたる検出期間において、レーシング検出部20からレーシング状態の検出を示す検出出力20Sが出力されなかった場合(ステップ102:NO)、位相制御部30は、所定の位相制御信号30Sを出力することにより単位量だけ位相調整回路11の位相調整量を変更し(ステップ103)、ステップ101へ戻る。
【0023】
一方、上記検出期間において、レーシング検出部20からレーシング状態の検出を示す検出出力20Sが出力された場合(ステップ102:YES)、位相制御部30は、位相調整回路11における現在の位相調整量、すなわち最悪位相調整量に基づいて最適位相調整量を算出し(ステップ104)、所定の位相制御信号30Sを出力することにより位相調整回路11の位相調整量を最適位相調整量に設定する(ステップ105)。これにより、一連のパルス位相調整動作が終了する。
【0024】
図2に示したように、入力フレームパルスFPinの有意期間長が1クロック周期長に相当する場合、レーシング状態が発生した時点で、入力フレームパルスFPinの立ち上がり/立ち下がりタイミングとクロックCLKoutの立ち上がりタイミングとが同期した位相関係となる。したがって、最悪位相調整量からクロックの半周期分、すなわち180度ずれた位相が、入力フレームパルスFPinの有意期間長の中央となり、このタイミングでラッチすることにより安定したラッチ動作が得られる。したがって、最悪位相調整量からクロックの半周期分、すなわち180度ずれた位相が最適位相調整量となる。なお、最適位相調整量は、これに限定されるものではなく、図2のレーシング発生範囲を除くデータラッチ有効期間のいずれに設定してもよい。
【0025】
[第1の実施形態の効果]
このように、本実施形態では、出力クロックの位相調整量を順次変化させてレーシング状態を発生させ、このレーシング状態が発生した最悪位相調整量を基準として最適位相調整量を算出するようにしたので、事前に評価や調整を行うことなく、フレームパルスとクロックとの間の位相変化を自動調整することができる。このため、個々のプリント配線基板や回路に固有の特性に左右されることなく、いずれのケースにも容易に適用することができる。これにより、事前に位相ずれの評価や調整を行う必要がなくなり、例えばプリント配線基板や回路の設計、製作、品質管理などに要する作業負担を大幅に削減することが可能となる。特に、クロック周波数が高い高周波帯用のプリント配線基板であっても、パタン設計に対する制約を極めて少なくすることが可能となる。
【0026】
また、レーシング状態を検出するまでに要する時間は、平均してクロックの半周期分、すなわち180度変化させるのに要する時間で済むため、クロックの1周期分、すなわち360度変化させる場合と比較して、自動調整に要する時間を半減できる。また、レーシング状態は非常に狭い範囲の位相関係でしか発生しないため、最悪位相調整量は一意に検出することができる。したがって、これを基準とした最適位相点も一意に決定することができ、位相調整を容易に自動化できる。また、評価を短時間で終わらせるため、プリント配線基板の配線長に制限を設けて、設計時の位相変動量を最低限に抑えるという設計上の制約も無くなるため、プリント配線基板設計の自由度が拡がる。
【0027】
[第2の実施形態]
次に、図4を参照して、本発明の第2の実施形態にかかるパルス位相調整装置について説明する。図4は、本発明の第2の実施形態にかかるパルス位相調整装置のレーシング検出部を示すブロック図である。
本実施形態では、レーシング検出部20の具体例について説明する。パルス位相調整装置1におけるその他の構成については、第1の実施形態と同様でありここでの詳細な説明は省略する。
【0028】
このレーシング検出部20は、図4に示すように、フレーム周期カウンタ21、パルス同期カウンタ23、およびカウント出力比較部25から構成されている。
フレーム周期カウンタ21は、例えば位相調整動作開始後に最初にラッチ回路12から出力された出力フレームパルスFPoutなどを用いて、出力フレームパルスFPoutの1周期分にわたり出力クロックCLKoutのパルス数をカウントする機能と、このカウント結果に基づいてレーシング状態発生時に変化しうる出力フレームパルスFPoutの各時間位置を示す位置パルス22をそれぞれ生成して出力する機能とを有している。
【0029】
パルス同期カウンタ23は、上記時間位置ごとに設けられて、当該位置パルス22と同期した出力フレームパルスFPoutを検出してカウントし、そのカウント値24を出力する機能を有している。
カウント出力比較部25は、パルス同期カウンタ23のカウント値24のうち、隣接する2つの時間位置のカウント値24の両方がしきい値を超えたか否かに基づきレーシング状態の発生を検出する機能と、レーシング状態の検出に応じて検出出力20Sを出力する機能とを有している。
【0030】
図5は、クロックとフレームパルスの位相関係を示す説明図である。図6は、フレームパルスのラッチ成功回数を示す説明図である。
クロックCLKの立ち上がりタイミングt0付近にフレームパルスFPの立ち下がりタイミングが位置する場合、フレームパルスFPのラッチタイミングはt0の前後にふらつき、レーシング状態が発生する。例えば、フレームパルスFPの立ち下がりタイミングがタイミングt0よりわずかに前に位置する場合、フレームパルスFPはt0より1つ前のクロックCLKの立ち上がりタイミングでラッチされ、フレームパルスFP−のタイミングで出力される。一方、フレームパルスFPの立ち下がりタイミングがタイミングt0よりわずかに後に位置する場合、フレームパルスFPはt0でラッチされ、フレームパルスFP+のタイミングで出力される。
【0031】
出力クロックCLKoutの立ち上がりタイミングt0を中心として、これらフレームパルスFPの立ち下がりタイミングを、−dtから+dtまで変化させた場合、フレームパルスFPがフレームパルスFP−またはフレームパルスFP+としてラッチされるラッチ成功率は、それぞれ図6のような分布になる。すなわち、フレームパルスFPの立ち下がりタイミングが−dtからt0に近づくに連れて、そのラッチ成功回数はNmaxから低減してt0で半値となり、t0を越えた後はゼロまで低減する。一方、フレームパルスFP+については、その立ち上がりタイミングが−dtからt0に近づくに連れて、そのラッチ成功回数はゼロから上昇してt0で半値となり、t0を越えた後はNmaxまで上昇する。
【0032】
したがって、これらフレームパルスFP−,FP+のラッチ成功回数をカウントすることにより、フレームパルスFPの立ち下がりタイミングが出力クロックCLKoutの立ち上がりタイミングt0に近いことを検出できる。
本実施形態では、図6に示すように、出力クロックCLKoutの立ち上がりタイミングt0付近において、フレームパルスFP−,FP+のラッチ成功回数の両方が、ある程度の値を示していることに着目し、フレームパルスFP−,FP+のラッチ成功回数が両方とも所定のしきい値Nthを越えた場合、レーシング状態が発生していると判断している。
【0033】
次に、図7を参照して、本発明の第2の実施形態にかかるパルス位相調整装置の動作について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態にかかるパルス位相調整動作を示すフローチャートである。
【0034】
パルス位相調整動作の開始を示すリセット信号などの初期化信号(図示せず)に応じて、位相制御部30は、所定の位相制御信号30Sを出力することにより位相調整回路11の位相調整量を例えばゼロに初期化する(ステップ200)。この位相調整量の初期化に応じて、位相調整回路11からは入力クロックCLKinに対して位相調整量がゼロの出力クロックCLKoutが出力される。また、ラッチ回路12は、この出力クロックCLKoutにより入力フレームパルスFPinをラッチし、出力フレームパルスFPoutとして出力する。
また、フレーム周期カウンタ21およびパルス同期カウンタ23は、上記初期化信号に応じて、自己のカウント値をそれぞれゼロに初期化する(ステップ201)。
【0035】
その後、レーシング検出部20のフレーム周期カウンタ21は、パルス位相調整動作の開始後、ラッチ回路12から最初にラッチ出力された出力フレームパルスFPoutを契機として、出力クロックCLKoutに基づきフレーム周期のカウントを開始し、次の出力フレームパルスFPoutが出力されうる個々の時間位置の到来に応じて、それぞれの位置パルス22を生成して順次出力する(ステップ202)。これら時間位置は、少なくともフレーム周期と同期する基準時間位置とその前または後に1クロック分だけずれた時間位置を含む。
【0036】
この際、位相調整回路11での位相調整方向が遅延増大方向であれば、基準時間位置とその後に1クロック分だけずれた後続時間位置を用い、位相調整回路11での位相調整方向が遅延減少方向であれば、基準時間位置とその前に1クロック分だけずれた先行時間位置を用いればよい。また、位相調整回路11での位相調整方向が遅延と減少の両方向であれば、基準時間位置とその前後に1クロック分だけずれた後続時間位置および先行時間位置の両方を用いればよい。また、位相調整量に応じて、基準時間位置から数クロック分ずれた範囲まで後続時間位置や先行時間位置を用いてもよい。
【0037】
各パルス同期カウンタ32は、出力クロックCLKoutに基づいて、出力フレームパルスFPoutとフレーム周期カウンタ21からの位置パルス22とを比較し、両者が同期した回数をカウントしてカウント値24として出力する(ステップ203)。
このようにして、出力フレームパルスFPoutのラッチ出力と、これに対する各パルス同期カウンタ23での動作を繰り返し実行する。
【0038】
フレーム周期カウンタ21は、上記初期化信号に応じて、出力フレームパルスFPout数のカウントを開始しており、そのカウント数が検出期間に相当する所定フレーム数に達した時点で、判定タイミングを示す判定タイミング信号FPcを出力する。
カウント出力比較部25は、出力クロックCLKoutに応じて、これらパルス同期カウンタ23からのカウント値24を読み込んで、時間位置が隣接する2つのカウント値24の組をそれぞれ比較することにより、レーシング状態の発生有無を判定する(ステップ204)。
【0039】
ここで、いずれの組についても両方のカウント値24がしきい値に達しておらず、検出期間の終了を示す判定タイミング信号FPcが出力されている場合(ステップ204:NO)、カウント出力比較部25は、レーシング状態の未検出を示す検出出力20Sを出力する。これに応じて、位相制御部30は、所定の位相制御信号30Sを出力することにより単位位相量だけ位相調整回路11の位相調整量を変更し(ステップ205)、ステップ201へ戻る。
【0040】
一方、いずれかの組について両方のカウント値24がしきい値に達している場合(ステップ204:YES)、カウント出力比較部25は、レーシング状態の検出を示す検出出力20Sを出力する。これに応じて、位相制御部30は、位相制御部30は、位相調整回路11における現在の位相調整量、すなわちレーシング状態が発生する最悪位相調整量に基づいて最適位相調整量を算出し(ステップ206)、所定の位相制御信号30Sを出力することにより位相調整回路11の位相調整量を最適位相調整量に設定する(ステップ207)。これにより、一連のパルス位相調整動作が終了する。
【0041】
[第2の実施形態の効果]
このように、本実施形態では、レーシング状態発生時に変化しうる出力フレームパルスの時間位置のうち、少なくとも2つの隣接する時間位置ごとに、当該時間位置と同期した出力フレームパルスをカウントし、両カウント値がともにしきい値を超えたか否かに基づきレーシング状態の発生を検出するようにしたので、比較的簡素な回路構成で、レーシング状態を確実に検出することが可能となる。
【0042】
[第3の実施形態]
次に、図8および図9を参照して、本発明の第3の実施形態にかかるパルス位相調整装置について説明する。図8は、本発明の第3の実施形態にかかるパルス位相調整装置の構成を示すブロック図であり、図4と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。図9は、本発明の第3の実施形態にかかるパルス位相調整装置の動作を示すタイミングチャートである。
【0043】
本実施形態は、第2の実施形態のうち、レーシング検出部20において、基準時間位置とその前に1クロック分だけずれた先行時間位置を用いてレーシング状態を検出する場合について説明する。
【0044】
本実施形態では、図8に示すように、第2の実施形態と比較して、レーシング検出部20に2つのパルス同期カウンタ23A,23Bが設けられており、フレーム周期カウンタ21は、基準時間位置から前に1クロック分だけずれた先行時間位置を示す位置パルス22Aと、基準時間位置を示す位置パルス22Bとを生成して出力する。
また、本実施形態では、レーシング検出部20のカウント出力比較部25と位相制御部30とが、1つのCPU40から構成されている。
【0045】
図9では、入力フレームパルスFPinとして、入力フレームパルスFP51,52,53が順に入力され、これと並行して入力クロックCLKinが入力された場合の動作が示されている。
入力フレームパルスFP51が入力された時点において、位相調整回路11での位相調整量はΔtに設定されており、入力クロックCLKinに対してΔtだけ遅延した出力クロックCLKoutが位相調整回路11から出力されている。
【0046】
このような位相関係において、ラッチ回路12は、出力クロックCLKoutに基づき入力フレームパルスFP51,52,53を順次ラッチし、出力フレームパルスFP61,62,63として出力する。
【0047】
一方、フレーム周期カウンタ21は、基準時間位置から前に1クロック分だけずれた先行時間位置を示す位置パルス22Aと、基準時間位置を示す位置パルス22Bとを、フレーム周期ごとに順次出力している。
【0048】
この際、入力フレームパルスFP51の立ち上がりタイミング付近で出力クロックCLKoutの立ち上がりタイミングによりラッチされた場合、先行時間位置TS-1に同期したタイミングで出力フレームパルスFP61が出力される。パルス同期カウンタ23Aは、位置パルス22Aと出力フレームパルスFP61との同期を検出し、カウント値Naを+1する。
【0049】
その後、入力フレームパルスFP52が入力されて、その立ち下がりタイミング付近で出力クロックCLKoutの立ち上がりタイミングによりラッチされた場合、後続時間位置TS+1に同期したタイミングで出力フレームパルスFP62が出力される。パルス同期カウンタ23Bは、位置パルス22Bと出力フレームパルスFP62との同期を検出し、カウント値Nbを+1する。
【0050】
カウント出力比較部25は、これらパルス同期カウンタ23A,23Bから出力されたカウント値24A,24Bを監視しており、これらカウント値24A,24Bの両方がしきい値Nthに達した場合、レーシング状態の検出を示す検出出力20Sを出力する。
【0051】
位相制御部30は、この検出出力20Sに基づいて、現在の位相調整量Δt、すなわちレーシング状態が発生する最悪位相調整量に基づいて最適位相調整量Δtaを算出し、位相調整回路11へ設定する。これにより、入力クロックCLKinに対して最適位相調整量Δtaだけ遅延した出力クロックCLKoutが位相調整回路11から出力される。したがって、その後の入力フレームパルスFP53は、出力クロックCLKoutの立ち上がりタイミングに応じて、パルス中央付近という安定したタイミングでラッチされることになる。
【0052】
[第3の実施形態の効果]
このように、本実施形態では、レーシング状態発生時に変化しうる出力フレームパルスの時間位置のうち、基準時間位置と基準時間位置から前に1クロック分だけずれた先行時間位置とついて、当該時間位置と同期した出力フレームパルスをカウントし、両カウント値がともにしきい値を超えたか否かに基づきレーシング状態の発生を検出するようにしたので、極めて簡素な回路構成で、レーシング状態を確実に検出することが可能となる。
【0053】
[第4の実施形態]
次に、図10および図11を参照して、本発明の第4の実施形態にかかるパルス位相調整装置について説明する。図10は、本発明の第4の実施形態にかかるパルス位相調整装置の構成を示すブロック図であり、図8と同じまたは同等部分には同一符号を付してある。図11は、本発明の第4の実施形態にかかるパルス位相調整装置の動作を示すタイミングチャートである。
【0054】
本実施形態は、第2の実施形態のうち、レーシング検出部20において、基準時間位置とその前後にそれぞれ1クロック分だけずれた先行時間位置および後続時間位置を用いてレーシング状態を検出する場合について説明する。
【0055】
本実施形態では、図10に示すように、第2の実施形態と比較して、レーシング検出部20に2つのパルス同期カウンタ23A,23B,23Cが設けられており、フレーム周期カウンタ21は、基準時間位置から前に1クロック分だけずれた先行時間位置TS-1を示す位置パルス22Aと、基準時間位置TSを示す位置パルス22Bと、基準時間位置から後に1クロック分だけずれた後続時間位置TS+1を示す位置パルス22Cとを生成して出力する。
また、本実施形態では、レーシング検出部20のカウント出力比較部25と位相制御部30とが、1つのCPU40から構成されている。
【0056】
図11では、入力フレームパルスFPinとして、入力フレームパルスFP51,52,53が順に入力され、これと並行して入力クロックCLKinが入力された場合の動作が示されている。
入力フレームパルスFP51が入力された時点において、位相調整回路11での位相調整量はΔtに設定されており、入力クロックCLKinに対してΔtだけ遅延した出力クロックCLKoutが位相調整回路11から出力されている。
【0057】
このような位相関係において、ラッチ回路12は、出力クロックCLKoutに基づき入力フレームパルスFP51,52,53を順次ラッチし、出力フレームパルスFP61,62,63として出力する。
【0058】
一方、フレーム周期カウンタ21は、基準時間位置から前に1クロック分だけずれた先行時間位置を示す位置パルス22Aと、基準時間位置を示す位置パルス22Bと、基準時間位置から後に1クロック分だけずれた後続時間位置TS+1を示す位置パルス22Cとを、フレーム周期ごとに順次出力している。
【0059】
この際、入力フレームパルスFP51の立ち下がりタイミング付近で出力クロックCLKoutの立ち上がりタイミングによりラッチされた場合、後続時間位置TS+1に同期したタイミングで出力フレームパルスFP61が出力される。パルス同期カウンタ23Cは、位置パルス22Cと出力フレームパルスFP61との同期を検出し、カウント値Ncを+1する。
【0060】
その後、入力フレームパルスFP52が入力されて、その立ち上がりタイミング付近で出力クロックCLKoutの立ち上がりタイミングによりラッチされた場合、基準時間位置TSに同期したタイミングで出力フレームパルスFP62が出力され、位置パルス22Bと同期する。パルス同期カウンタ23Bは、これら位置パルス22Bと出力フレームパルスFP62との同期を検出し、カウント値Nbを+1する。
【0061】
カウント出力比較部25は、これらパルス同期カウンタ23A,23B,23Cから出力されたカウント値24A,24B,24Cを監視しており、例えば出力フレームパルスFP62の出力後、カウント値24B,24Cの両方がしきい値Nthに達した場合、レーシング状態の検出を示す検出出力20Sを出力する。
【0062】
位相制御部30は、この検出出力20Sに基づいて、現在の位相調整量Δt、すなわちレーシング状態が発生する最悪位相調整量に基づいて最適位相調整量Δtaを算出し、位相調整回路11へ設定する。これにより、入力クロックCLKinに対して最適位相調整量Δtaだけ遅延した出力クロックCLKoutが位相調整回路11から出力される。したがって、その後の入力フレームパルスFP53は、出力クロックCLKoutの立ち上がりタイミングに応じて、パルス中央付近という安定したタイミングでラッチされることになる。
【0063】
[第4の実施形態の効果]
このように、本実施形態では、レーシング状態発生時に変化しうる出力フレームパルスの時間位置のうち、基準時間位置と基準時間位置から前に1クロック分だけずれた先行時間位置と、基準時間位置から後に1クロック分だけずれた後続時間位置とについて、当該時間位置と同期した出力フレームパルスをカウントし、両カウント値がともにしきい値を超えたか否かに基づきレーシング状態の発生を検出するようにしたので、位相調整量の調整方向として遅延と減少のいずれの方向に制御する場合であっても対応することができ、位相調整回路11の自由度が拡がる。
【0064】
[実施形態の拡張]
以上の各実施形態では、異なるプリント配線基板や装置との間でフレームパルスの受け渡しを行う場合を例として説明したが、複数本のデータ信号を受け渡すことも可能である。図12は、本発明にかかるパルス位相調整装置の実施例を示す説明図である。
【0065】
図12では、送側ユニット8Aのラッチ回路81,82により、クロックCLKに基づきデータ信号DおよびフレームパルスFPをラッチし、互いに同期した状態でn本のデータ信号とフレームパルスを並行して出力するとともにクロックCLKを出力する。一方、受側ユニット8Bでは、本発明のパルス位相調整装置1の位相調整回路11で位相調整した出力クロックCLKoutに基づいて、ラッチ回路12により入力フレームパルスFPinをラッチ出力するとともに、ラッチ回路13により入力データ信号Dinをラッチ出力する。これにより、フレームパルスで位相が最適化された出力クロックCLKoutにより、複数本の入力データ信号Dinを正確にラッチ出力することができる。
【0066】
また、第3および第4の実施形態では、2つまたは3つのパルス同期カウンタを用いた場合を例として説明したが、これに限定されるものではなく、4つ以上のパルス同期カウンタを用いて、それぞれの時間位置に同期位置した出力フレームパルスをカウントするようにしてもよい。
【0067】
また、第3および第4の実施形態では、レーシング検出部20のカウント出力比較部25と位相制御部30とを1つのCPU40から構成したので、パルス位相調整装置1の回路構成を簡素化することができる。なお、これらカウント出力比較部25と位相制御部30については、専用の回路部で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかるパルス位相調整装置の構成を示すブロック図である。
【図2】レーシング状態を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態にかかるパルス位相調整動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施形態にかかるパルス位相調整装置のレーシング検出部を示すブロック図である。
【図5】クロックとフレームパルスの位相関係を示す説明図である。
【図6】フレームパルスのラッチ成功率を示す説明図である。
【図7】図7は、本発明の第2の実施形態にかかるパルス位相調整動作を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第3の実施形態にかかるパルス位相調整装置の構成を示すブロック図である。
【図9】本発明の第3の実施形態にかかるパルス位相調整装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図10】本発明の第4の実施形態にかかるパルス位相調整装置の構成を示すブロック図である。
【図11】本発明の第4の実施形態にかかるパルス位相調整装置の動作を示すタイミングチャートである。
【図12】本発明にかかるパルス位相調整装置の実施例を示す説明図である。
【図13】自動位相調整方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0069】
1…パルス位相調整装置、10…位相調整部、11…位相調整回路、12,13…ラッチ回路、20…レーシング検出部、20S…検出出力、21…フレーム周期カウンタ、22,22A,22B,22C…位置パルス、23,23A,23B,23C…パルス同期カウンタ、24,24A,24B,24C…カウント値、25…カウント出力比較部、30…位相制御部、30S…位相制御信号、40…CPU、CLKin…入力クロック、CLKout…出力クロック、FPin,51,52,53…入力フレームパルス、FPout,61,62,63…出力フレームパルス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の位相調整量に基づき入力クロックの位相を調整した出力クロックと、この出力クロックにより入力フレームパルスをラッチして位相を調整した出力フレームパルスとの位相関係に起因して、前記出力フレームパルスに発生するレーシング状態を検出するレーシング検出ステップと、
前記レーシング状態が検出された際の最悪位相調整量に基づいて前記入力フレームパルスをラッチするための最適位相調整量を決定する位相制御ステップと
を備えることを特徴とするパルス位相調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載のパルス位相調整方法において、
前記レーシング検出ステップは、前記レーシング状態発生時に変化しうる前記出力フレームパルスの時間位置のうち、少なくとも2つの隣接する時間位置ごとに、当該時間位置と同期した前記出力フレームパルスをカウントし、両カウント値がともにしきい値を超えたか否かに基づきレーシング状態の発生を検出することを特徴とするパルス位相調整方法。
【請求項3】
請求項1に記載のパルス位相調整方法において、
前記最悪位相調整量から180度位相がずれた位相調整量を前記最適位相調整量とすることを特徴とするパルス位相調整方法。
【請求項4】
指示された位相調整量に基づき入力クロックの位相を調整した出力クロックを生成するとともに、この出力クロックにより入力フレームパルスをラッチして位相を調整した出力フレームパルスを生成する位相調整部と、
前記出力フレームパルスと前記出力クロックとの位相関係に起因して前記出力フレームパルスに発生するレーシング状態を検出するレーシング検出部と、
前記位相調整部に対して異なる位相調整量を順次選択して指示し、前記レーシング検出部でレーシング状態が検出された際の最悪位相調整量に基づいて、前記入力フレームパルスをラッチするための最適位相調整量を決定して前記位相調整部へ指示する位相制御部と
を備えることを特徴とするパルス位相調整装置。
【請求項5】
請求項4に記載のパルス位相調整装置において、
前記レーシング検出部は、
前記出力クロックをカウントすることにより、前記レーシング状態発生時に変化しうる前記出力フレームパルスの時間位置のうち、少なくとも2つの隣接する時間位置を示す位置パルスを複数生成するフレーム周期カウンタと、
前記時間位置ごとに設けられて、当該位置パルスと同期した前記出力フレームパルスを検出してカウントする複数の同期カウンタと、
前記同期カウンタのカウント値の両方がしきい値を超えたか否かに基づきレーシング状態の発生を検出するカウント出力比較部と
を含むことを特徴とするパルス位相調整装置。
【請求項6】
請求項4に記載のパルス位相調整装置において、
前記位相制御部は、前記最悪位相調整量から180度位相がずれた位相調整量を前記最適位相調整量とすることを特徴とするパルス位相調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−194741(P2009−194741A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35007(P2008−35007)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】