説明

パルス発生回路、放電灯点灯装置及び照明装置

【課題】ランプ始動後にサイリスタを確実にオフでき、電源を供給するための抵抗が加熱して劣化を招くのを防ぐと共に、無駄な電力消費が発生するのを防止できるパルス発生回路、放電灯点灯装置及び照明装置を提供すること。
【解決手段】放電ランプ5に直列接続されて1次側に発生するパルスを2次側に昇圧して出力するトランスT1と、第1のコンデンサC4と、トランスT1の1次巻線と閉回路を構成する第2のコンデンサC12とサイリスタD12と、C12に電源を供給する抵抗R13と、D12のオンタイミングを制御する制御手段と、を具備したパルス発生回路において、R13に電圧が印加されている時間を計測するタイマー手段と、R13に直列接続され、タイマー手段が1次巻線でのパルス発生時から一定時間以上R13に電圧が印加されていることを検出したときに、電源からC12ヘの充電電流を遮断する手段SW11とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度放電ランプ(以下、HIDランプ)を始動点灯させるパルス発生回路、放電灯点灯装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からHIDランプを始動点灯させるには、高圧パルス発生手段としてイグナイタが用いられている。イグナイタは、コンデンサと、パルストランスと、スイッチング素子で構成される。
【0003】
イグナイタのスイッチング素子としては、トライアック、サイリスタのような大容量のスイッチング素子を使用するが、このような素子は、外部信号によりオフできず、素子に流れる電流が一定の値(保持電流)以下になるとオフする。
【0004】
HIDランプの放電灯点灯装置では、コンデンサに蓄えられたエネルギーをサイリスタをオンすることによりパルストランスの1次巻線に印加することで、パルストランスの2次巻線に略巻数比分の電圧が発生し、ランプに印加されてランプが始動できるようになる。オンした後にはコンデンサとパルストランスの1次巻線による振動電圧(共振電圧)によりサイリスタに逆電圧(振動電圧の負側の電圧)が印加されて、サイリスタはターンオフする。その際のコンデンサヘのエネルギー蓄積方法は簡単な方法として、電源から抵抗を介して電流を供給する方法がある。
【0005】
しかし、ランプ始動時にはパルストランスの2次巻線に電流が流れ始めるためその1次巻線から見たインダクタンスは低くなる結果、共振が起こりにくくなり、サイリスタに印加される逆電圧の時間が短くなるために、サイリスタがオフ出来ない場合がある。さらに、サイリスタはその特性上、高温になるほどターンオフしにくくなる。その結果、サイリスタがオフできずにオンし続けると、電源を供給するための抵抗が加熱して部品としての劣化を招くと共に、無駄な電力消費が発生する。
【0006】
従来の高圧放電灯点灯装置としては、イグナイタのサイリスタをオフさせるために、サイリスタヘの電流を分流するバイパス回路を用意し、サイリスタをオンしてから、あらかじめ定められた時間経過後に、一定時間だけ、バイパス回路を駆動(オン)することで、充電電流を保持電流以下にしてサイリスタをオフできるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−307285号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、ランプ始動後においてもサイリスタがオフすることなく電流が流れるために、電源を供給するための抵抗が加熱して部品としての劣化を招くと共に、無駄な電力消費が発生するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記の問題に鑑み、ランプ始動後にサイリスタを確実にオフでき、電源を供給するための抵抗が加熱して劣化を招くのを防ぐと共に、無駄な電力消費が発生するのを防止できるパルス発生回路、放電灯点灯装置及び照明装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明によるパルス発生回路は、放電ランプに2次巻線が直列に接続され、1次巻線に発生するパルスを前記2次巻線に昇圧して出力するトランスと; 放電ランプと前記トランスの2次巻線の直列回路と並列に接続される第1のコンデンサと;前記トランスの1次巻線と閉回路を構成する第2のコンデンサとサイリスタと;前記第2のコンデンサに電源を供給する抵抗と;前記サイリスタのオンタイミングを制御する制御手段と;前記抵抗に電圧が印加されている時間を計測するタイマー手段と;前記抵抗に直列接続され、前記タイマー手段が所定時間以上前記抵抗に電圧が印加されていることを検出したときに、前記電源から前記第2のコンデンサヘの充電電流を遮断する遮断手段と;を具備したものである。
【0010】
この発明において、放電ランプとしては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプ、キセノンランプを含むHIDランプを含む。以上の事項は、以下の発明でも同様である。
【0011】
この発明によれば、サイリスタがオフできずにオンし続けた場合には、、抵抗に連続した一定の電流が流れるので、抵抗に発生する電圧を検知し、この電圧検出に基づいて抵抗からサイリスタヘ流れる電流を遮断してサイリスタをオフし、再び高圧パルスの発生を可能とする。
【0012】
請求項2記載の発明によるパルス発生回路は、放電ランプに2次巻線が直列に接続され、1次巻線に発生するパルスを前記2次巻線に昇圧して出力するトランスと;放電ランプと前記トランスの2次巻線の直列回路と並列に接続される第1のコンデンサと;前記トランスの1次巻線と閉回路を構成する第2のコンデンサとサイリスタと;前記第2のコンデンサに電源を供給する抵抗と;前記サイリスタのオンタイミングを制御する制御手段と; 前記抵抗の温度を検出する温度検出部を備え、且つ前記抵抗に直列接続され、前記抵抗の温度が所定値以上であることを検出したときに、前記電源から前記第2のコンデンサヘの充電電流を遮断する温度反応型スイッチ素子と;を具備したものである。
【0013】
この発明によれば、サイリスタがオフできずにオンし続けた場合には、抵抗に連続した一定の電流が流れるので、抵抗に発生する温度を検知し、この温度検出に基づいて抵抗からサイリスタヘ流れる電流を遮断してサイリスタをオフし、再び高圧パルスの発生を可能とする。
【0014】
請求項3記載の発明によるパルス発生回路は、請求項2に記載のパルス発生回路において、前記温度反応型スイッチ素子は、サーマルプロテクタであることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明による放電灯点灯装置は、交流電源の出力から直流電圧を生成する直流電圧源と;前記直流電圧源に接続されて、交流電力を生成して放電ランプの点灯を維持させるインバータ回路と;前記インバータ回路に組み込まれて、昇圧パルスにて前記放電ランプを始動させる請求項1乃至3のいずか1つに記載のパルス発生回路と;を具備したものである。
【0016】
この発明の放電灯点灯装置によれば、ランプ始動後にサイリスタを確実にオフでき、電源を供給するための抵抗が加熱して劣化を招くのを防ぐと共に、無駄な電力消費が発生するのを防止できる。
【0017】
請求項5記載の発明による照明装置は、請求項4に記載の放電灯点灯装置と;放電ランプとしてのHIDランプと;前記HIDランプを保持する器具本体と;を具備したものである。
【0018】
この発明の照明装置によれば、ランプ始動後にサイリスタを確実にオフでき、電源を供給するための抵抗が加熱して劣化を招くのを防ぐと共に、無駄な電力消費が発生するのを防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、サイリスタが確実にオフできるので、パルスが停止してしまうことがなく、ランプを確実に始動できる。また、ランプ始動後にイグナイタの抵抗による無駄な消費電力を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0021】
図1は本発明の実施例1の放電灯点灯装置を示す回路図である。
図1において、低周波(例えば50Hz)の電源である商用交流電源1の出力端の両端に、全波整流ダイオードブリッジで構成される整流回路2が接続されている。
【0022】
整流回路2の全波整流出力端間には、後述の高周波スイッチング用のスイッチング素子であるFETQ1の高周波スイッチングに伴う高周波成分通流用フィルタとしてコンデンサC5が接続され、さらにその後段には、整流回路2の出力電圧を昇圧しかつ安定した直流電圧として高力率で出力する昇圧チョッパ回路3が接続されている。
【0023】
昇圧チョッパ回路3は、制御回路7の制御のもとで、整流回路2からの全波整流出力を入力して振幅一定な安定化した直流電圧を高力率で生成するアクティブフィルタ回路或いは直流電源と言える。なお、整流回路2の全波整流出力端間には、昇圧チョッパ回路3の一部の機能、即ち入力交流電流と入力交流電源電圧の位相を合わせる入力力率改善機能のみを備えたアクティブフィルタ回路が接続されていてもよい。
【0024】
昇圧チョッパ回路3は、整流回路2の一方の出力端(図では+電圧出力端)に一端部が接続されたコイルL1と、このコイルL1の他端部と整流回路2のもう一方の出力端(図では−電圧出力端)の間にドレイン・ソースが接続された高周波スイッチング素子としてのFETQ1と、コイルL1とFETQ1間の接続点にアノードが接続された転流ダイオードD5と、この転流ダイオードD5のカソードと整流回路2の−電圧出力端との間に接続された第1,第2の平滑コンデンサC2,C3の直列回路と、を備えている。
【0025】
制御回路7は、昇圧チョッパ回路3の第1,第2の平滑コンデンサC2,C3の直列回路の出力電圧に応じて高周波スイッチング用FETQ1のオン期間を制御することで、その出力電圧が一定値となるようにフィードバック制御すると共に、しかもその制御は整流回路2の全波整流電圧の振幅レベルの監視(整流回路2の+電圧出力端の電圧検出)とコイルL1を流れる電流レベルの監視(コイルL1の2次巻線L2による電流検出)とに基づいて全波整流電圧の振幅レベルに応じてFETQ1のオン期間を制御することで、入力交流電流を入力交流電圧の位相に一致させる入力力率改善の制御も行っている。これによって、昇圧チョッパ回路3は、全波整流電圧を高力率で安定化直流電圧に変換する。なお、FETQ1のスイッチング周波数は数十kHzである。
【0026】
昇圧チョッパ回路3の後段には、インバータ回路4が接続されている。
インバータ回路4は、昇圧チョッパ回路3の平滑コンデンサC2,C3の直列回路の両端に並列に接続されて高周波(例えば数十kHz)のスイッチング動作を行う第1,第2のスイッチング素子としてのFETQ2,Q3の直列回路と、第1,第2のFETQ2,Q3のそれぞれに並列にFETQ2,Q3の電流の向きとは反対方向に接続されたダイオードD6,D7と、FETQ2,Q3の直列回路の接続点と前記第1,第2の平滑コンデンサC2,C3の直列回路の接続点との間に接続されたインダクタとしてのコイルL3,始動用の昇圧トランスT1(の2次巻線)及びHIDランプ5の直列回路と、トランスT1の1次巻線の両端に接続して始動用の高圧パルスを発生するためのイグナイタ6と、HIDランプ5と昇圧トランスT1の2次巻線との直列回路に対して並列的に接続されて、HIDランプ5を流れる電流から、FETQ2,Q3の高周波スイッチングによる高周波成分を側路(バイパス)させるためのコンデンサC4と、HIDランプの電流検出値および電圧値の重畳値(両値の加算値又は積分値)、すなわちランプの出力を検出し、制御回路7に通知するための抵抗R1,R2,R3の直列回路と、を備えている。なお、スイッチング素子としてFETを用いた場合は、FETがその構成上内蔵している寄生ダイオードが逆電流通流用ダイオードD6,D7に利用されるので、特別にダイオードを接続する必要はない。
【0027】
イグナイタ6は、HIDランプ5に2次巻線が直列に接続されて、その2次巻線において1次巻線側に発生するパルスを昇圧して出力するトランスT1と、トランスT1の1次巻線と閉回路を構成するコンデンサC12及びサイリスタD12と、ダイオードD13と、コンデンサC12を充電するためコンデンサC12に電源を供給する抵抗R13と、サイリスタD12のゲートに与えるゲート電圧を与えてそのオンタイミングを制御するための、抵抗R11,R12,コンデンサC11及びダイアックD11からなる制御手段と、抵抗R13に電圧が印加されている時間を計測するタイマー手段(8-1,8-2)と、抵抗R13に直列接続され、前記タイマー手段が所定時間以上前記抵抗R13に電圧が印加されていることを検出したときに、前記電源からコンデンサC12ヘの充電電流を遮断する遮断手段としてのスイッチ素子SW11と、備えている。
【0028】
タイマー手段は、抵抗R13両端の電圧を検出する電圧検出部8-1と、その検出電圧に基づいてスイッチ素子SW11を制御してSW11のオン状態を遮断(オフ)する制御部8-2とを備えている。
【0029】
次に、上記構成の放電灯点灯装置の動作を図2乃至図6を参照して説明する。
図1の放電灯点灯装置に交流電源が投入されると、整流回路2の全波整流出力端の両端に接続した図示しない抵抗分圧回路により整流電圧を分圧した電圧が制御回路7に供給され且つ整流回路2の整流電圧が昇圧チョッパ回路3に供給されることで、昇圧チョッパ回路3のFETQ1の高周波(数十kHz)のオン,オフのスイッチング動作が開始される一方、イグナイタ6によってランプ始動パルスが発生されると同時にインバータ回路4のFETQ2,Q3における高周波(数十kHz)のオン,オフのスイッチング動作が開始される。インバータ回路4では、昇圧チョッパ回路3から安定化した直流電圧を入力し、先ずイグナイタ6の高圧パルスにてHIDランプ5を絶縁破壊して始動し、後述の図2(c)に示すような低周波の交流電流を生成してHIDランプ5を点灯しこれを維持する。
【0030】
昇圧チョッパ回路3では、FETQ1がオンしている時にコイルL1にエネルギーを蓄え、FETQ1がオフの時にダイオードD5が導通し、コイルL1に蓄えられたエネルギーを、出力コンデンサである第1,第2の平滑コンデンサC2,C3の直列回路に向けて放出する。この時コイルL1に発生する電圧は入力電圧に直列に加算するので、出力電圧は入力電圧より高い電圧となる。高力率チョッパ回路として使用する場合は、毎サイクルコイルL1に蓄えたエネルギーが完全に放出する(即ち、コイルL1に流れる電流が0になる)電流モードで使用することが好ましい。
【0031】
制御回路7はスイッチング素子であるFETQ1のゲートに対してスイッチングパルスを供給するが、昇圧チョッパ回路3の出力電圧である平滑コンデンサC2,C3の出力電圧に応じてそのスイッチングパルスのオン期間が制御され、結果としてFETQ1のオン時間をPWM制御し、出力コンデンサC2,C3らの出力電圧を安定化するよう制御する。
【0032】
また、入力力率改善のために、FETQ1のオン時間の制御は、制御回路7が整流回路2の+全波整流電圧の振幅レベルを検出し、その振幅レベルに応じてFETQ1のオン時間を変えることによっても行われる。整流電圧の振幅レベルが小さいときほどFETQ1のオン時間を短く、整流電圧の振幅レベルが大きいときほどFETQ1のオン時間を長くなるように制御することにより、入力交流電流の波形は低周波(例えば50Hz)の正弦波状に整形され、入力交流電圧の波形と同期して変化するようになり、入力力率が改善される。
【0033】
上記のように昇圧チョッパ回路3が動作を開始すると、イグナイタ6に電源が供給されると同時に、第1,第2のスイッチング素子であるFETQ2,Q3にスイッチングパルスが供給されることになる。これによって、イグナイタ6は高圧パルスを発生してHIDランプ5を放電状態(点灯状態)とし、FETQ2,Q3に高周波オン・オフのスイッチングパルスが与えられることになる。
【0034】
図2(a)はFETQ2の高周波のオン・オフ動作を示し、図2(b)はFETQ3の高周波のオン・オフ動作を示している。図2(c)はHIDランプ5に流れる低周波のランプ電流を示している。
【0035】
このとき、制御回路7は、FETQ2,Q3がそれぞれの高周波スイッチング(例えば50kHz)のオンオフ動作を低周波(例えば100Hz)の一定周期Tで交互に繰返すように制御することによって、HIDランプ5には低周波の交流電力が供給されることになる。
【0036】
インバータ回路4の動作を説明する。まず、周期Tの期間にFETQ2がオン・オフする動作について説明する。FETQ2のゲートにオンパルスが加えられて、FETQ2がオンしたときには、平滑コンデンサC2の充電電圧を電源として、C2→Q2→コイルL3→T1→HIDランプ5→R1→C2と電流が流れ、FETQ2がオフすると、コイルL3に蓄えられたエネルギーによって、コイルL3→T1→HIDランプ5→R1→C3→ダイオードD7→L3と電流が流れることにより、FETQ2が高周波スイッチング動作している期間Tでは常にHIDランプ5には、コイルL3→HIDランプ5→R1の方向に電流が流れることになる。
【0037】
そして、次の周期Tの期間となると、FETQ3がオン・オフする動作に入る。FETQ3のゲートにオンパルスが加えられて、FETQ3がオンすると、平滑コンデンサC3の充電電圧を電源として、C3→R1→HIDランプ5→T1→コイルL3→Q3→C3と電流が流れ、FETQ3がオフすると、コイルL3に蓄えられたエネルギーによって、コイルL3→ダイオードD6→C2→R1→HIDランプ5→T1→L3と電流が流れることにより、FETQ3が高周波スイッチング動作している次の期間Tでは常にHIDランプ5には、R1→HIDランプ5→コイルL3の方向に電流が流れることになる。従って、HIDランプ5には、高周波駆動でありながら、図2(c)に示すような低周波のランプ電流が流れることになる。
【0038】
図2(c)に示す低周波のランプ電流には、FETQ2,Q3の高周波スイッチング動作により、高周波成分が重畳されるが、この高周波成分は第1のコンデンサとしてのコンデンサC4にてバイパスされるので、HIDランプ5を実際に流れるランプ電流には高周波成分はほとんど含まれず例えば100Hz(=周期2T)の低周波の矩形波(実線にて示す)にて点灯されることになる。
【0039】
次に、イグナイタ6の動作について説明する。
交流電源投入時におけるパルス発生時には、平滑コンデンサC2,C3に充電される電圧に基づいてFETQ2,L3とダイオードD14を通してタイマー手段(8-1,8-2)に電圧が印加されると共に、抵抗R13とスイッチ素子SW11の直列回路を介して電流が流れ、第2のコンデンサとしてのコンデンサC12を充電する。
【0040】
このとき同時に、昇圧チョッパ回路3の平滑コンデンサ出力端の出力電圧が、抵抗R11と、抵抗R12及びコンデンサC11の並列回路とを直列接続した回路の両端に加えられ、その接続点の電圧(コンデンサC11の電圧)がダイアックD11のブレークオーバー電圧を越えると、サイリスタD12のゲートに電圧が加えられてサイリスタD12はオンする。
【0041】
サイリスタD12のオンタイミング制御信号によりサイリスタD12がオンするとコンデンサC12の充電電荷がトランスT1の1次巻線を通して放電し、その際、C12とT1の1次巻線の共振に基づいてパルスが発生する。このパルスはトランスT1の巻線比に基づいて昇圧されて、放電ランプ5に直列接続したトランスT1の2次巻線に高圧パルスを発生する。
【0042】
図3はパルス発生時のコンデンサC12の波形例を示し、図4はパルス発生時の抵抗R13の波形例を示している。通常は、C12とT1の1次巻線との共振に基づく振動波形によって、サイリスタD12に逆電圧が印加されるのでサイリスタD12はオフする。(すなわち、サイリスタD12がオンすると、コンデンサC12のエネルギーはほぼコンデンサC12のコンデンサ容量とイグナイタトランスT1の1次巻線のインダクタンスの共振周波数による振動波形となり,サイリスタD12に逆電圧が印加される。)
しかし、サイリスタD12には温度特性があり、高温になるとサイリスタD12のオフ特性が悪くなりオフしにくくなったり、ランプ始動時のランプ電流の影響により、1次側インダクタンスが低下し、サイリスタD12がオフできない場合がある。すなわち、ランプ始動時には、イグナイタ6のトランスT1の2次側に電流が流れるので、イグナイタ6のトランスT1の1次側インダクタンスは極端に低下する。すると、サイリスタD12オン時の振動周波数は始動前よりも高くなり、また振動もすぐに減衰するため、サイリスタD12がオフできにくくなる傾向にある。
【0043】
ここで、電圧検出部8-1と制御部8-2とを備えた本発明に係るタイマー手段が無い場合について説明すると、上記のようにサイリスタD12がオフできなくなると、電流がダイオードD14を通して抵抗R13とサイリスタD12に(保持電流以上に)流れ続け、パルス発生が停止してしまうとともに、抵抗R13での損失が発生する。図5は、タイマー手段が無くサイリスタD12を経て電流が流れ続けている時の抵抗R13の電圧波形を示している。
【0044】
そこで、図1の本発明の実施例1においては、抵抗R13の電圧を検出し、電圧が連続的に印加されている時間をタイマー手段により計測し、所定時間以上前記抵抗R13に電圧が印加されていることを検出したときに、サイリスタD12がオフできずオンし続けていると判断し、スイッチ素子SW11をオフにして、抵抗R13に流れる電流を遮断する。一度遮断するとサイリスタD12には電流が流れなくなるので(保持電流以下になるため)サイリスタD12は確実にオフする。
【0045】
図6は図1の上記タイマー手段(8-1,8-2)の一実施例を示す回路図である。
図6では、平滑コンデンサC2,C3に充電される電圧に基づいてQ2,L3とダイオードD14を通して電圧が供給される電源ラインPと前記充電用のコンデンサC12の+電圧出力端との間に、前記抵抗R13と遮断用のスイッチ素子SW11との直列回路を接続してある。スイッチ素子SW11としてはNチャネルトランジスタを用いている。そして、抵抗R13とスイッチ素子SW11の直列回路に並列に、抵抗R13に電圧が発生していることを検出するための電圧検出部8-1を接続すると共に、その検出電圧に基づいてスイッチ素子SW11を遮断(オフ)するための制御部8-2を接続してある。
【0046】
電圧検出部8-1は、一端部が電源ラインPと前記スイッチ素子SW11のソース(即ちコンデンサC12の+電圧出力端)の間に、抵抗R21と、抵抗R22及びコンデンサC21の並列回路とを直列に接続した直列回路を接続し、R21とC21(R22)の接続点にツェナーダイオードZD1のカソードを接続して構成されている。
【0047】
また、制御部8-2は、一端部が電源ラインPと前記スイッチ素子SW11のソース(即ちコンデンサC12の+電圧出力端)との間に、抵抗R23と、バイポーラトランジスタQ4のコレクタ・エミッタとを直列に接続した直列回路を接続し、トランジスタQ4のコレクタを前記スイッチ素子SW11のゲートに接続し、トランジスタQ4のコレクタ・エミッタ間(即ちスイッチ素子SW11のゲート・ソース間)にツェナーダイオードZD2を接続して構成されている。
【0048】
次に、図6の動作を説明する。ここで、トランスT1のパルス発生によってHIDランプ5が始動するが、サイリスタD12がオフせずにオンしたままであるとする。
【0049】
図6に示すタイマー手段(8-1,8-2)では、電源ラインPの電圧が抵抗R23を介してスイッチ素子SW11のゲートに印加されるので、最初は抵抗R23によりスイッチ素子SW11がオンしている。抵抗R13に電圧が印加されている間は、抵抗R23によりツェナーダイオードZD2にはツェナー電圧が発生して、スイッチ素子SW11のゲート・ソース間電圧はZD2のツェナー電圧に保持される。抵抗R13に電圧が印加されている間、電圧検出部8-1では、抵抗R21によりコンデンサC21が充電される。この充電時間が一定時間以上になるとC21の充電電圧がツェナーダイオードZD1のツェナーレベルを越えるので、ZD1がオンしてバイポーラトランジスタQ4のベースに順バイアスが与えられてQ4がオンする。これにより、スイッチ素子SW11のゲート・ソース間が同電位になることで、スイッチ素子SW11は遮断(オフ)する。
【0050】
本発明の実施例1によれば、サイリスタD12がオフできずにオンし続けた場合には、、抵抗に連続した一定の電流が流れるので、抵抗R13に発生する電圧を検知し、この電圧検出に基づいて抵抗R13からサイリスタD12ヘ流れる電流を遮断してサイリスタD12をオフし、再び高圧パルスの発生を可能とする。
【実施例2】
【0051】
図7本発明の実施例2の放電灯点灯装置の回路図である。本実施例2の放電灯点灯装置10Aは、実施例1の放電灯点灯装置10とは、インバータ回路内におけるイグナイタの構成が異なっている。その他の、交流電源1、整流回路2、昇圧チョッパ回路3は、実施例1と同様である。また、イグナイタ6Aを除いたインバータ回路部分の構成も、実施例1と同様である。
【0052】
イグナイタ6Aは、HIDランプ5に2次巻線が直列に接続されて、その2次巻線において1次巻線側に発生するパルスを昇圧して出力するトランスT1と、トランスT1の1次巻線と閉回路を構成するコンデンサC12及びサイリスタD12と、コンデンサC12を充電するためコンデンサC12に電源を供給する抵抗R13と、サイリスタD12のゲートに与えるゲート電圧を与えてオンタイミングを制御するための、抵抗R11,R12,コンデンサC11及びダイアックD11からなる制御手段と、抵抗R13の温度を検出する温度検出部9と、抵抗R13に直列接続され、前記温度検出部9が前記抵抗R13の温度が一定値以上あることを検出したときに、前記電源からコンデンサC12ヘの充電電流を遮断する遮断手段としてのスイッチ素子SW12と、備えている。
【0053】
図8は図7の上記温度検出部9及びスイッチ素子SW12による温度反応型スイッチ素子の一実施例を模式的に示す構成図である。
【0054】
図8に示す温度反応型スイッチ素子は、同一のベース部材上に、被検体である抵抗R13の本体部に接着させて抵抗R13の温度を直接感知する温度検出部9と、該温度検出部9に近接して設けられて、温度に反応して自動的に接点が切れるバイメタル式の機械的なスイッチ素子SW12とを組み合せたスイッチである。このような熱応動スイッチは、過熱保護手段の一つであって、抵抗の温度が一定の温度を越えると、自動的に接点を切って、電流を遮断するサーマルプロテクタと呼ばれているものである。
【0055】
なお、温度検出部9としてはサーミスタ(温度上昇により抵抗値が減少或いは上昇する素子)のような温度センサを用いた温度検出回路で構成することもでき、その検出信号にてFETなどの半導体スイッチで構成されるスイッチ素子SW12をオフにする構成としてもよい。
【0056】
次に、図7のイグナイタ6Aの動作を説明する。
交流電源投入時におけるパルス発生時には、平滑コンデンサC2,C3に充電される電圧に基づいてQ2,L3とダイオードD14を通して電圧が加えられると、スイッチ素子SW12及び抵抗R13の直列回路を介して電流が流れ、第2のコンデンサとしてのコンデンサC12を充電する。この抵抗R13と直列に図8に示すような温度反応型スイッチ素子からなるサーマルプロテクタを接続している。
HIDランプ5が始動する前には、サイリスタD12がオンすると、コンデンサC12に充電されたエネルギーはほぼコンデンサC12のコンデンサ容量とイグナイタ6AのトランスT1の1次巻線のインダクタンスの共振周波数による振動波形で、サイリスタD12に逆電圧が印加される。
【0057】
一方、HIDランプ5が始動する際には、イグナイタ6AのトランスT1の2次側に電流が流れるので、イグナイタ6AのトランスT1の1次側インダクタンスは極端に低下する。従って、共振周波数は始動前よりも高く、また振動もすぐに減衰するため、サイリスタD12がオフできる十分な時間をもつ逆電圧を印加できなくなる傾向にある。
【0058】
ここで、トランスT1の1次巻線におけるパルス発生によってHIDランプ5が始動するが、上記のような理由によって、サイリスタD12がオフすることができずにオンしたままであるとする。サイリスタD12がオンし続けるとコンデンサC12には電流が流れず、抵抗R13からトランスT1の1次巻線を経由してサイリスタD12に電流が流れ続ける。この時に抵抗R13での消費電力が通常より大きくなり温度が上昇する。これをサーマルプロテクタが検出すると、抵抗R13に流れる電流を遮断する。一度遮断するとサイリスタD12には電流が流れなくなるので(保持電流以下になるため)サイリスタD12はオフする。
【0059】
本発明の実施例2によれば、サイリスタD12がオフできずにオンし続けた場合には、抵抗に連続した一定の電流が流れるので、抵抗R13に発生する温度を検知し、この温度検出に基づいて抵抗R13からサイリスタD12ヘ流れる電流を遮断してサイリスタD12をオフし、再び高圧パルスの発生を可能とする。
【0060】
図9は、図1又は図7の上記放電灯点灯装置を用いた、本発明の照明装置の実施例を示す断面図である。
図9において、符号11は照明器具本体であり、12は反射傘である。照明器具本体11の反射傘12の適宜の位置(例えば中心)に放電ランプであるHIDランプ5が装着されて保持される。また、照明器具本体11内には図1又は図7で説明した構成からなる放電灯点灯装置10又は10Aが配設されている。
【0061】
このように図1又は図7の放電灯点灯装置10又は10Aを用いた照明装置によれば、ランプ始動後にサイリスタを確実にオフでき、電源を供給するための抵抗が加熱して劣化を招くのを防ぐと共に、無駄な電力消費が発生するのを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、水銀ランプ、メタルハライドランプ、高圧ナトリウムランプなどのHIDランプのほか、キセノンランプを含む高圧放電点灯装置のイグナイタにおいて、充電用コンデンサへの電源供給用の抵抗の過熱防止に応用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施例1の放電灯点灯装置を示す回路図。
【図2】インバータ回路における第1,第2の高周波スイッチング動作、及びランプ電流波形を示すタイミングチャート。
【図3】パルス発生時のコンデンサC12の電圧波形を示す図。
【図4】パルス発生時の抵抗R13の電圧波形を示す図。
【図5】パルス停止時の抵抗R13の電圧波形を示す図。
【図6】図1のイグナイタにおけるタイマー手段の構成例を示す回路図。
【図7】本発明の実施例2の放電灯点灯装置を示す回路図。
【図8】図7の温度反応型スイッチ素子の一実施例を模式的に示す構成図。
【図9】図1又は図7の上記放電灯点灯装置を用いた、本発明の照明装置の実施例を示す断面図。
【符号の説明】
【0064】
1…交流電源
2…整流回路
3…昇圧チョッパ回路(直流電源)
4…インバータ回路
5…HIDランプ(放電ランプ)
10,10A…放電灯点灯装置
R1〜R3…抵抗(イグナイタへの始動時の電源供給用)
C2,C3…第1,第2の平滑コンデンサ
Q2,Q3…FET(第1,第2のスイッチング素子)
L3…コイル(インダクタ)
C4…コンデンサ(第1のコンデンサ)
D12…サイリスタ
C12…コンデンサ(第2のコンデンサ)
SW11,SW12…スイッチ素子(遮断手段)
R13…抵抗(コンデンサへの電源供給用)
8-1…電圧検出部
8-2…制御部
9…温度検出部
代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ランプに2次巻線が直列に接続され、1次巻線に発生するパルスを前記2次巻線に昇圧して出力するトランスと;
放電ランプと前記トランスの2次巻線の直列回路と並列に接続される第1のコンデンサと;
前記トランスの1次巻線と閉回路を構成する第2のコンデンサとサイリスタと;
前記第2のコンデンサに電源を供給する抵抗と;
前記サイリスタのオンタイミングを制御する制御手段と;
前記抵抗に電圧が印加されている時間を計測するタイマー手段と;
前記抵抗に直列接続され、前記タイマー手段が所定時間以上前記抵抗に電圧が印加されていることを検出したときに、前記電源から前記第2のコンデンサヘの充電電流を遮断する遮断手段と;
を具備したことを特徴とするパルス発生回路。
【請求項2】
放電ランプに2次巻線が直列に接続され、1次巻線に発生するパルスを前記2次巻線に昇圧して出力するトランスと;
放電ランプと前記トランスの2次巻線の直列回路と並列に接続される第1のコンデンサと;
前記トランスの1次巻線と閉回路を構成する第2のコンデンサとサイリスタと;
前記第2のコンデンサに電源を供給する抵抗と;
前記サイリスタのオンタイミングを制御する制御手段と;
前記抵抗の温度を検出する温度検出部を備え、且つ前記抵抗に直列接続され、前記抵抗の温度が所定値以上であることを検出したときに、前記電源から前記第2のコンデンサヘの充電電流を遮断する温度反応型スイッチ素子と;
を具備したことを特徴とするパルス発生回路。
【請求項3】
前記温度反応型スイッチ素子は、サーマルプロテクタであることを特徴とする請求項2に記載のパルス発生回路。
【請求項4】
交流電源の出力から直流電圧を生成する直流電圧源と;
前記直流電圧源に接続されて、交流電力を生成して放電ランプの点灯を維持させるインバータ回路と;
前記インバータ回路に組み込まれて、昇圧パルスにて前記放電ランプを始動させる請求項1乃至3のいずか1つに記載のパルス発生回路と;
を具備したことを特徴とする放電灯点灯装置。
【請求項5】
請求項4に記載の放電灯点灯装置と;
放電ランプとしてのHIDランプと;
前記HIDランプを保持する器具本体と;
を具備したことを特徴とする照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−147367(P2006−147367A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336430(P2004−336430)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】