説明

パワーアシスト装置およびその制御方法

【課題】パワーアシスト装置に対する作業負荷を軽減しつつ、ワーク組み付け作業の作業性の向上を果たすパワーアシスト装置の制御方法を提供する。
【解決手段】パワーアシスト装置1の制御方法であって、ウィンドウ10の基準位置10a乃至10dが取付対象物たる本体11の嵌め込み基準位置11a乃至11dに合致したことを検知する位置決め完了検知工程と、位置決め完了検知工程が完了したときのウィンドウ10の基準位置10a乃至10dと本体11の嵌め込み基準位置11a乃至11dの合致位置を検知する基準位置検知工程と、合致位置に基づいて仮想回転軸を生成し、ウィンドウ10が仮想回転軸を中心としてパワーアシスト装置1により自律的に回転される自律回転工程から成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーアシスト装置の技術に関し、より詳しくは、パワーアシスト装置を用いながら細部の位置決めを可能にするパワーアシスト装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工業製品の製造現場等において、作業者による重量物(ワーク)の搬送を補助する装置としてパワーアシスト装置が用いられている。
ワークの組み付け作業は、ワークの搬送と位置決めから成り立つ作業であるが、作業者とパワーアシスト装置でワークを協調搬送することにより、ワークの搬送に必要な力はパワーアシスト装置に負担させることができ、ワークの位置決めについてもパワーアシスト装置にティーチングすることで効率よく位置決めをすることができる。つまり、パワーアシスト装置を用いるねらいは、作業者の労力軽減を図るとともに、作業性の向上を図ることにある。
例えば、搬送対象物たるワークを把持する把持手段の傾き(角度)を検出して、前記把持手段を上下方向に駆動する装置が知られており、特許文献1にその技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−245124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のパワーアシスト装置を用いることにより、ワークの搬送については、ねらい通り作業者の負担を軽減することができた。しかしながら、ワークの位置決めについては、取付対象物の位置ズレ等の要素もあって、完全にパワーアシスト装置に負担させようとすると作業負荷が高くなるという問題があった。
そこで本発明は、このような現状を鑑み、パワーアシスト装置に対する作業負荷を軽減しつつ、ワーク組み付け作業の作業性の向上を果たすパワーアシスト装置の制御方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、ワークを把持して搬送するための搬送具と、該搬送具の動作を制御する制御手段を備え、作業者によりワークの基準位置が取付対象物の取付基準位置に対して位置決めされるとともに、作業者により前記ワークの基準位置を前記取付対象物の取付基準位置に合致させる作業動作をアシストするべく、前記作業動作に協調して前記搬送具を自律的に作動させることによりワークの搬送を行うパワーアシスト装置の制御方法であって、前記ワークの基準位置が前記取付対象物の取付基準位置に合致したことを検知する位置決め完了検知工程と、前記位置決め完了検知工程が完了したときの、前記ワークの基準位置と前記取付対象物の取付基準位置の合致位置を検知する基準位置検知工程と、前記合致位置に基づいて仮想回転軸を生成し、前記ワークが前記仮想回転軸を中心として前記パワーアシスト装置により自律的に回転される自律回転工程と、を備える、ことを特徴としたものである。
【0006】
請求項2においては、前記搬送具は、接触センサを備え、前記位置決め完了検知工程では、前記接触センサが、前記取付対象物の接触を検知することにより、前記ワークの基準位置が前記取付対象物の取付基準位置に合致したことを検知する、ことを特徴としたものである。
【0007】
請求項3においては、前記接触センサが、複数の接圧センサにより構成され、前記複数の接圧センサのうち、一つ以上の前記接圧センサが、閾値以上の圧力を検知したときに、前記接触センサは前記取付対象物の接触を検知する、ことを特徴としたものである。
【0008】
請求項4においては、前記搬送具は、接触センサを備え、前記基準位置検知工程では前記接触センサが、前記取付対象物の接触を検知することにより、前記ワークの基準位置と前記取付対象物の取付基準位置の合致位置を検知する、ことを特徴としたものである。
【0009】
請求項5においては、前記接触センサが、複数の接圧センサにより構成され、前記複数の接圧センサのうち、一つ以上の前記接圧センサが閾値以上の圧力を検知したときに、前記接触センサは前記取付対象物の接触を検知する、ことを特徴としたものである。
【0010】
請求項6においては、前記搬送具は、複数の吸盤によって前記ワークを把持し、かつ、前記複数の吸盤ごとに接圧センサを備え、前記位置決め完了検知工程では、複数の前記接圧センサのうち、一つ以上の前記接圧センサが閾値以上の圧力を検知したときに、前記ワークの基準位置が前記取付対象物の取付基準位置に合致したことを検知する、ことを特徴としたものである。
【0011】
請求項7においては、前記搬送具は、複数の吸盤によって前記ワークを把持し、かつ、前記複数の吸盤ごとに接圧センサを備え、前記基準位置検知工程では、複数の前記接圧センサのうち、一つ以上の前記接圧センサが閾値以上の圧力を検知したときに、その各接圧センサの検知圧力分布により、前記ワークの基準位置と前記取付対象物の取付基準位置の合致位置を検知する、ことを特徴としたものである。
【0012】
請求項8においては、前記搬送具は、複数の吸盤によって前記ワークを把持し、前記複数の吸盤ごとに接圧センサを備え、前記位置決め完了検知工程では、複数の前記接圧センサのうち、一つ以上の前記接圧センサが閾値以上の圧力を検知したときに、前記ワークの基準位置が前記取付対象物の取付基準位置に合致したことを検知し、かつ、そのときの各接圧センサの検知圧力分布により、前記ワークの基準位置と前記取付対象物の取付基準位置の合致位置を検知する、ことを特徴としたものである。
【0013】
請求項9においては、ワークを把持して搬送するための搬送具と、該搬送具の動作を制御する制御手段を備え、作業者によりワークの基準位置を取付対象物の取付基準位置に対して位置決めが成されるとともに、前記ワークの基準位置を前記取付対象物の取付基準位置に合致させるための作業者の作業動作をアシストするべく、前記作業者の作業動作に協調して前記搬送具を自律的に作動させることによりワークの搬送を行うパワーアシスト装置であって、前記ワークの基準位置が前記取付対象物の取付基準位置に合致したことを検知する位置決め完了検知手段と、前記ワークの基準位置と前記取付対象物の取付基準位置の合致位置を検知する基準位置検知手段を備える、ことを特徴としたものである。
【0014】
請求項10においては、前記搬送具は、接触センサを備え、前記位置決め完了検知手段は、前記制御手段と前記接触センサからなる、ことを特徴としたものである。
【0015】
請求項11においては、前記搬送具は、接触センサを備え、前記基準位置検知手段は、前記制御手段と前記接触センサからなる、ことを特徴としたものである。
【0016】
請求項12においては、前記搬送具は、複数の吸盤によって前記ワークを把持し、前記複数の吸盤ごとに接圧センサを備え、前記位置決め完了検知手段は、前記制御手段と複数の前記接圧センサからなる、ことを特徴としたものである。
【0017】
請求項13においては、前記搬送具は、複数の吸盤によって前記ワークを把持し、前記複数の吸盤ごとに接圧センサを備え、前記基準位置検知手段は、前記制御手段と複数の前記接圧センサからなる、ことを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0019】
請求項1においては、位置決めの基準位置を検知することにより、ワークの回転動作に必要なパワーアシスト装置の動作が自動的に求められ、かつ、ワークの回転動作に必要となる仮想回転軸のパワーアシスト装置へのティーチング作業を自動的に行うことができる。これにより、位置決めを要する搬送作業の効率化を図ることができる。
【0020】
請求項2においては、ワークの位置決めが完了したことを検知することにより、搬送作業の効率化を図ることができる。
【0021】
請求項3においては、簡易な構成でワークの位置決めが完了したことを検知することができる。
【0022】
請求項4においては、ワークの位置決め基準位置を検知することにより、搬送作業の効率化を図ることができる。
【0023】
請求項5においては、簡易な構成で、ワークの位置決め基準位置を検知することができる。
【0024】
請求項6においては、簡易な構成で、ワークの位置決めが完了したことを検知することができる。
【0025】
請求項7においては、簡易な構成で、ワークの位置決め基準位置を検知することができる。
【0026】
請求項8においては、簡易な構成で、ワークの位置決めが完了したことを検知することができ、かつ、ワークの位置決め基準位置を検知することができる。
【0027】
請求項9においては、位置決めの基準位置を検知することにより、ワークの回転動作に必要なパワーアシスト装置の動作が自動的に求められ、かつ、ワークの回転動作に必要となる回転中心のパワーアシスト装置へのティーチング作業を自動的に行うことができる。これにより、位置決めを要する搬送作業の効率化を図ることができる。
【0028】
請求項10においては、簡易な構成で、ワークの位置決めが完了したことを検知することができる。
【0029】
請求項11においては、簡易な構成で、ワークの位置決め基準位置を検知することができる。
【0030】
請求項12においては、簡易な構成で、ワークの位置決めが完了したことを検知することができる。
【0031】
請求項13においては、簡易な構成で、ワークの位置決め基準位置を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施例に係るパワーアシスト装置の全体構成を示す模式図、図2は本発明の一実施例に係る接圧センサと基準位置との関係を示す模式図、図3は本発明の一実施例に係るウィンドウ取付作業を示す第一模式図、図4は同じくウィンドウ取付作業を示す第二模式図、図5は同じくウィンドウ取付作業を示す第三模式図である。
【0033】
まず始めに、本発明の適用に係るパワーアシスト装置1の全体構成について説明をする。
図1に示す如く、本実施例に示すパワーアシスト装置1は、多関節型ロボット2、吸着治具3およびフリージョイント4等により構成している。
本実施例に示す多関節型ロボット2は、制御装置2a、関節部分に配置されるモータ2b・2c等を備えており、天井面等に支持されている。尚、本実施例に示す多関節型ロボット2は、天井面に固定支持される構成としているが、例えば、ホイスト等によって走行可能に支持される構成とすることも可能である。また、本発明を適用するパワーアシスト装置1に用いるロボットは、多関節型ロボット2に限定するものではなく、その他の産業用ロボットを用いることも可能である。
【0034】
吸着治具3は、吸盤3a・3b・3c・3d、ハンドル3e・3e、力センサ3f・3fおよび接圧センサ3g・3h・3i・3j等を備えており、フリージョイント4を介して多関節型ロボット2に連結される構成としている。吸着治具3の吸盤3a・3b・3c・3dにより後述する搬送対象物たるウィンドウ10を吸着保持するものである。また、作業者の把持部となるハンドル3e・3eは、力センサ3f・3fを介して吸着治具3に連結される構成としている。
本実施例では、力センサ3f・3fとして6分力ロードセルを用いる構成としており、作業者がハンドル3e・3eを把持して吸着治具を所望する方向へ操作することにより、そのときの操作方向や操作力等を検知できるように構成している。また、本実施例では、力センサ3f・3fをハンドル3e・3eの双方に備える構成としているが、作業者や作業方向を考慮して一方向のハンドル3eにのみ力センサ3fを備える構成とすることも可能である。
さらに、吸盤3a・3b・3c・3dには、吸着保持されたウィンドウ10から受ける圧力を検知する接圧センサ3g・3h・3i・3jを内蔵しており、接圧センサ3g・3h・3i・3jによる検知圧の偏り具合によってウィンドウ10が均等に押圧されているか否かを判断するようにしている。
【0035】
フリージョイント4は、ロール・ピッチ・ヨーの各回転方向に対して相互に干渉することなく自由に回転できる構成とした継手部材である。また、フリージョイント4にはブレーキ機構4aを備えており、制御装置2aからの指令に基づいてロール・ピッチ・ヨーの回転方向ごとに独立して回転を規制することができる構成としている。
【0036】
このようにパワーアシスト装置1は、多関節型ロボット2にフリージョイント4を介して吸着治具3を連結し、これにより多自由度を備える構成としたロボットであり、前記多関節型ロボット2、フリージョイント4、および吸着治具3等によりウィンドウ10を搬送するための搬送具を構成している。
【0037】
多関節型ロボット2に備えられる制御装置2aには、力センサ3fにより作業者の操作状態に関する検知情報が入力される。この検知情報に基づいて、作業者の所望する操作方向を判断し、モータ2b・2cの動作を制御して多関節型ロボット2の姿勢を制御するようにしている。
また、制御装置2aには、吸着治具3の位置情報に関するマップが予め記憶されている。位置情報に関するマップには、搬送対象物(ウィンドウ10等)の搬送経路として適当な軌道に関する情報(軌道情報)が含まれており、この軌道情報に基づいて軌道に沿って吸着治具3を動作させる構成としている。また、吸着治具3の位置情報に対応させて、モータ2b・2cやブレーキ機構4aの作動状況を変化させる構成としている。
さらに、制御装置2aには、自動車の車種情報に関するマップが予め記憶されている。そして、取付対象となる自動車の車種に応じて、前述した軌道情報を選択的に切り替えるようにしたり、また、ウィンドウ装着時の適正角度に関する情報等を自動的に変更したりする構成としている。
【0038】
次に、パワーアシスト装置1の操作状況について説明をする。
作業者がハンドル3eを所望する方向に操作すると、力センサ3fが操作方向および操作力等を検知し、その検知情報が制御装置2aに入力される。そして、制御装置2aからは入力された検知情報に基づいて、モータ2b・2cに対する駆動信号の出力がなされ、作業者の所望する搬送位置やウィンドウの保持角度に合致するように多関節型ロボット2の姿勢が制御される。
このようにパワーアシスト装置1は、作業者によるハンドル3eの自然な操作によって所望する方向に応じてウィンドウ10の運搬を行うとともに、ウィンドウ10の荷重を支持するようにしており、作業者の作業負荷を軽減しつつ、作業者と協調しながら自律的に作動する構成としている。
【0039】
次に本発明に係る接触センサについて説明をする。
図1、図2に示す如く、吸着治具3の下面には吸盤3a・3b・3c・3dを配設しており、この吸盤3a・3b・3c・3dによりウィンドウ10を吸着して保持する構成としている。また、各吸盤3a・3b・3c・3dには接圧センサ3g・3h・3i・3jが設けられており、ウィンドウ10と吸盤3a・3b・3c・3dの間に作用する圧力を複数箇所で検知する構成としている。
尚、本実施例では、合計4個の接圧センサ3g・3h・3i・3jを用いて接触センサを構成しているが、本発明において具備する吸盤および接圧センサの個数を限定するものではなく、搬送対象物の大きさや形状および検知精度等を考慮して適宜定めることができる。例えば、搬送対象物が三角形状であれば三角形の各頂点に対応するべく3個以上の吸盤および接圧センサを設け、また、搬送対象物が矩形状であれば矩形の各頂点に対応するべく4個以上の吸盤および接圧センサを設けることが望ましい。
【0040】
次に接触センサによる基準位置の検知方法について説明をする。
図2に示す如く、本実施例では搬送対象物たるウィンドウ10側(四隅の頂点)に4箇所の基準位置10a・10b・10c・10dを設定している。また、ウィンドウ10の取付対象である本体11側には嵌め込み基準位置11a・11b・11c・11dを設定している。
【0041】
例えば、作業者とパワーアシスト装置1によりウィンドウ10が協調搬送され、さらに作業者によって基準位置10a・10bと嵌め込み基準位置11a・11bが接触するように位置決めが成された場合、この場合にも、この接触により接圧センサ3g・3hが検知した圧力が予め設定した閾値以上であれば、ウィンドウ10の位置決めが完了したものと判断するようにしている。
ここで、作業者がウィンドウ10を意識的に押し付けなければ得られない圧力に閾値を設定することにより、ウィンドウ10の位置がずれた場合や誤ってウィンドウ10と本体11が接触してしまった場合に位置決めが完了したと判断されないようにすることができ、容易に位置決めのやり直しが可能となる。
そしてこの場合、均等に最も大きな圧力が検知された接圧センサ3g・3hに対応する基準位置である基準位置10aと10bを結ぶ仮想回転軸を生成し、この仮想回転軸がウィンドウ10の回転中心に設定される。
つまり、複数の接圧センサ3g・3h・3i・3jが検知する圧力の圧力分布に応じて、例えば、ある一つの接圧センサ3gに圧力が集中している場合には、当該接圧センサ3gの配置に対応する1箇所の基準位置10aで位置決めが成されたものと判断し、また、2つの接圧センサ3g・3hに均等な圧力が検出される場合には、当該接圧センサ3g・3hの配置に対応する2箇所の基準位置10a・10bで位置決めが成されたものと判断するようにしている。
尚、本実施例では、接触センサとして接圧センサを採用し、検知圧力が設定閾値を超える場合に位置決めが成されたと判断するようにしているが、例えば、ON−OFF式の接触スイッチを採用して、接点のON−OFFで位置決めが成されたか否かの判断をする構成とすることもできる。
【0042】
また例えば、作業者とパワーアシスト装置1によってウィンドウ10が協調搬送され、さらに作業者によって基準位置10aと嵌め込み基準位置11aの1点のみが接触するように位置決めが成された場合にも、この接触の際には各接厚センサ3g・3h・3i・3jにより圧力が検知される。そして、この場合、接圧センサ3gの検知する値が最も大きくなるが、この接圧センサ3gが検知した圧力が予め設定した閾値以上であれば、ウィンドウ10の位置決めが完了したものと判断するようにしている。
この場合、基準位置10aにおいて1点で接しているため、次に2点の基準位置で接触する状態に移行するようにしている。つまり、基準位置10aと隣り合う1点(即ち、基準位置10bあるいは基準位置10d)が嵌め込み基準位置(即ち、11bあるいは11d)に位置決めされるようにパワーアシスト装置1を自律的に制御する。
【0043】
具体的には、最も検知圧力が大きかった接圧センサ3gに対応する基準位置である基準位置10aを含み、基準位置10b(あるいは基準位置10dでもよい)が嵌め込み基準位置11b(あるいは嵌め込み基準位置11dでもよい)まで回転移動されるのに適した仮想回転軸を生成し、パワーアシスト装置1によって、この仮想回転軸を中心にウィンドウ10を自律的に回転させて、2点の基準位置10a・10bが嵌め込み基準位置11a・11bに位置決めされた状態に移行される。
そして、この2点の基準位置10a・10bが位置決めされたことが、接圧センサ3g・3h・3i・3jによって検知されると、改めて基準位置10a・10bを結ぶ仮想回転軸が設定されて、前述した制御動作に移行するようにしている。
【0044】
即ち、本実施例では、接触センサを複数の接圧センサ3g・3h・3i・3jにより構成し、前記複数の接圧センサ3g・3h・3i・3jのうち、一つ以上の接圧センサが、閾値以上の圧力を検知したときに、前記ウィンドウ10の基準位置10a・10bと嵌め込み基準位置11a・11bとが接触したことを検知し、位置決め完了検知工程を終了するようにしている。また、前記複数の接圧センサ3g・3h・3i・3jのうち、一つ以上の接圧センサが、閾値以上の圧力を検知したときに、前記ウィンドウ10の基準位置10a・10bと嵌め込み基準位置11a・11bとの合致位置を検知し、基準位置検知工程を終了するようにしている。
これにより、簡易な構成でワークの位置決めの完了や基準位置を検知することができるのである。
【0045】
次に一連のウィンドウ取付作業に本発明に係る制御方法を適用した例について説明をする。
図3に示す如く、作業者とパワーアシスト装置1によりウィンドウ10が協調搬送され、ウィンドウ10の基準位置10a・10bと本体11の嵌め込み基準位置11a・11bが合致するように位置決めして取り付けるまでの一連の作業を例として説明をする。
ウィンドウ10は吸着治具3の中心(点A)とウィンドウ10の中心が一致するように取り付けられている。また、ウィンドウ10の形状データ(大きさ、湾曲率等)を予め制御装置2aに記憶させておくようにしている。これにより、例えば中心点Aから各基準位置10a・10b・10c・10dまでの距離が算出されるようにしている。
【0046】
(位置決め完了検知工程)
まず作業者はハンドル3eを操作して、ウィンドウ10の基準位置10a・10bが嵌め込み基準位置11a・11bと合致するようにウィンドウ10を協調搬送して移動させる。
そして、ウィンドウ10の基準位置10a・10bが嵌め込み基準位置11a・11bと合致すると、接圧センサ3g・3hが接触を検知する。この検知情報に基づいて、制御装置2aは、作業者によるウィンドウ10の位置決めが完了したものと判断するようにしている。
【0047】
(基準位置検知工程)
また、ここではウィンドウ10の基準位置10a・10bのみが均等に接触したことを検知しているため、基準位置10a・10bは本体11と接しているが、基準位置10c・10dは未だ浮き上がっている状態であると制御装置2aが判断するようにしている。この状態から最終の取付状態(即ち、各基準位置10a乃至10dが均等に本体11の各嵌め込み基準位置11a乃至11dと接触している状態)に移行させるためには、基準位置10aと10bを結ぶ軸線を中心にウィンドウ10を回転させれば最も容易に移行できる。
このため制御装置2aは、基準位置10aと10bを結ぶ軸線をウィンドウ10の仮想回転軸に設定するようにしている。
また、制御装置2aには、ウィンドウ10の形状データが予め記憶されているため、現状の多関節型ロボット2の姿勢(即ち、各関節のモータ2b・2cの回転位置)に基づいて、各モータ2c・2dをどの方向にどれだけ回転させれば、設定した仮想回転軸回りにウィンドウ10を回転させることができるかを制御装置2aにより算出するようにしている。
【0048】
即ち、本実施例に示す搬送具たる吸着治具3は、複数の吸盤3a・3b・3c・3dによってワーク(即ち、ウィンドウ10)を把持し、複数の吸盤3a・3b・3c・3dごとに、接圧センサ3g・3h・3i・3jを備え、複数の接圧センサ3g・3h・3i・3jのうち、一つ以上の接圧センサ(例えば3gのみ等)が、閾値以上の圧力を検知したとき、位置決め完了検知工程を終了し、かつ、そのときの各接圧センサ3g・3h・3i・3jの検知圧力分布により基準位置10a・10bと嵌め込み基準位置11a・11bとの合致位置を検知し、基準位置検知工程を終了するようにしている。
このような構成とすることにより、簡易な構成で、ワークの位置決めが完了したことを検知することができ、かつ、ワークの位置決め基準位置を検知することができるのである。
【0049】
(自律回転工程)
そして、制御装置2aにより生成した仮想回転軸(即ち、基準位置10aと10bを結ぶ軸線)回りにウィンドウ10を回転させるように、モータ2b・2cを駆動して多関節型ロボット2の姿勢を制御し、ウィンドウ10を傾倒させるようにしている。
最後に、4個の接圧センサ3g・3h・3i・3jが略均等に圧力を検知したこと確認した時点で、一連のウィンドウ取付作業を完了するようにしている。
【0050】
即ち、ワークを把持して搬送するための搬送具(即ち、多関節型ロボット2、吸着治具3、フリージョイント4等)と、該搬送具の動作を制御する制御手段たる制御装置2aを備え、作業者によりワーク(ウィンドウ10)の基準位置10a・10b・10c・10dが取付対象物たる本体11の嵌め込み基準位置11a・11b・11c・11dに対して位置決めされるとともに、作業者によりウィンドウ10の基準位置10a・10b・10c・10dを本体11の嵌め込み基準位置11a・11b・11c・11dに合致させる作業動作をアシストするべく前記作業動作に協調して前記搬送具を自律的に作動させることによりウィンドウ10の搬送を行うパワーアシスト装置1の制御方法であって、ウィンドウ10の基準位置10a・10b・10c・10dが本体11の嵌め込み基準位置11a・11b・11c・11dに合致したことを検知する位置決め完了検知工程と、位置決め完了検知工程が完了したときの、ウィンドウ10の基準位置10a・10b・10c・10dと本体11の嵌め込み基準位置11a・11b・11c・11dの合致位置を検知する基準位置検知工程と、合致位置に基づいて仮想回転軸を生成し、ウィンドウ10が前記仮想回転軸を中心としてパワーアシスト装置1により自律的に回転される自律回転工程と、から成る構成としている。
【0051】
このような構成とすることにより、位置決めの基準位置を検知することにより、ワークの回転動作に必要なパワーアシスト装置1の動作が自動的に求められ、かつ、ワークの回転動作に必要となる仮想回転軸のパワーアシスト装置1へのティーチング作業を自動的に行うことができるのである。またこれにより、位置決めを要する搬送作業の効率化を図ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の一実施例に係るパワーアシスト装置の全体構成を示す模式図。
【図2】本発明の一実施例に係る接圧センサと基準位置との関係を示す模式図。
【図3】本発明の一実施例に係るウィンドウ取付作業を示す第一模式図。
【図4】同じくウィンドウ取付作業を示す第二模式図。
【図5】同じくウィンドウ取付作業を示す第三模式図。
【符号の説明】
【0053】
1 パワーアシスト装置
10 ウィンドウ
10a 基準位置
10b 基準位置
10c 基準位置
10d 基準位置
11 本体
11a 嵌め込み基準位置
11b 嵌め込み基準位置
11c 嵌め込み基準位置
11d 嵌め込み基準位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを把持して搬送するための搬送具と、
該搬送具の動作を制御する制御手段を備え、
作業者によりワークの基準位置が取付対象物の取付基準位置に対して位置決めされるとともに、作業者により前記ワークの基準位置を前記取付対象物の取付基準位置に合致させる作業動作をアシストするべく、前記作業動作に協調して前記搬送具を自律的に作動させることによりワークの搬送を行うパワーアシスト装置の制御方法であって、
前記ワークの基準位置が前記取付対象物の取付基準位置に合致したことを検知する位置決め完了検知工程と、
前記位置決め完了検知工程が完了したときの、
前記ワークの基準位置と前記取付対象物の取付基準位置の合致位置を検知する基準位置検知工程と、
前記合致位置に基づいて仮想回転軸を生成し、前記ワークが前記仮想回転軸を中心として前記パワーアシスト装置により自律的に回転される自律回転工程と、
を備える、
ことを特徴とするパワーアシスト装置の制御方法。
【請求項2】
前記搬送具は、
接触センサを備え、
前記位置決め完了検知工程では、
前記接触センサが、前記取付対象物の接触を検知することにより、
前記ワークの基準位置が前記取付対象物の取付基準位置に合致したことを検知する、
ことを特徴とする請求項1記載のパワーアシスト装置の制御方法。
【請求項3】
前記接触センサが、
複数の接圧センサにより構成され、
前記複数の接圧センサのうち、
一つ以上の前記接圧センサが、
閾値以上の圧力を検知したときに、
前記接触センサは前記取付対象物の接触を検知する、
ことを特徴とする請求項2記載のパワーアシスト装置の制御方法。
【請求項4】
前記搬送具は、
接触センサを備え、
前記基準位置検知工程では
前記接触センサが、前記取付対象物の接触を検知することにより、
前記ワークの基準位置と前記取付対象物の取付基準位置の合致位置を検知する、
ことを特徴とする請求項1記載のパワーアシスト装置の制御方法。
【請求項5】
前記接触センサが、
複数の接圧センサにより構成され、
前記複数の接圧センサのうち、一つ以上の前記接圧センサが閾値以上の圧力を検知したときに、
前記接触センサは前記取付対象物の接触を検知する、
ことを特徴とする請求項4記載のパワーアシスト装置の制御方法。
【請求項6】
前記搬送具は、
複数の吸盤によって前記ワークを把持し、かつ、
前記複数の吸盤ごとに接圧センサを備え、
前記位置決め完了検知工程では、
複数の前記接圧センサのうち、一つ以上の前記接圧センサが閾値以上の圧力を検知したときに、
前記ワークの基準位置が前記取付対象物の取付基準位置に合致したことを検知する、
ことを特徴とする請求項1記載のパワーアシスト装置の制御方法。
【請求項7】
前記搬送具は、
複数の吸盤によって前記ワークを把持し、かつ、
前記複数の吸盤ごとに接圧センサを備え、
前記基準位置検知工程では、
複数の前記接圧センサのうち、一つ以上の前記接圧センサが閾値以上の圧力を検知したときに、
その各接圧センサの検知圧力分布により、前記ワークの基準位置と前記取付対象物の取付基準位置の合致位置を検知する、
ことを特徴とする請求項1記載のパワーアシスト装置の制御方法。
【請求項8】
前記搬送具は、
複数の吸盤によって前記ワークを把持し、
前記複数の吸盤ごとに接圧センサを備え、
前記位置決め完了検知工程では、
複数の前記接圧センサのうち、一つ以上の前記接圧センサが閾値以上の圧力を検知したときに、
前記ワークの基準位置が前記取付対象物の取付基準位置に合致したことを検知し、かつ、
そのときの各接圧センサの検知圧力分布により、前記ワークの基準位置と前記取付対象物の取付基準位置の合致位置を検知する、
ことを特徴とする請求項1記載のパワーアシスト装置の制御方法。
【請求項9】
ワークを把持して搬送するための搬送具と、
該搬送具の動作を制御する制御手段を備え、
作業者によりワークの基準位置を取付対象物の取付基準位置に対して位置決めが成されるとともに、前記ワークの基準位置を前記取付対象物の取付基準位置に合致させるための作業者の作業動作をアシストするべく、前記作業者の作業動作に協調して前記搬送具を自律的に作動させることによりワークの搬送を行うパワーアシスト装置であって、
前記ワークの基準位置が前記取付対象物の取付基準位置に合致したことを検知する位置決め完了検知手段と、
前記ワークの基準位置と前記取付対象物の取付基準位置の合致位置を検知する基準位置検知手段を備える、
ことを特徴とするパワーアシスト装置。
【請求項10】
前記搬送具は、
接触センサを備え、
前記位置決め完了検知手段は、
前記制御手段と前記接触センサからなる、
ことを特徴とする請求項9記載のパワーアシスト装置。
【請求項11】
前記搬送具は、
接触センサを備え、
前記基準位置検知手段は、
前記制御手段と前記接触センサからなる、
ことを特徴とする請求項9記載のパワーアシスト装置。
【請求項12】
前記搬送具は、
複数の吸盤によって前記ワークを把持し、
前記複数の吸盤ごとに接圧センサを備え、
前記位置決め完了検知手段は、
前記制御手段と複数の前記接圧センサからなる、
ことを特徴とする請求項9記載のパワーアシスト装置。
【請求項13】
前記搬送具は、
複数の吸盤によって前記ワークを把持し、
前記複数の吸盤ごとに接圧センサを備え、
前記基準位置検知手段は、
前記制御手段と複数の前記接圧センサからなる、
ことを特徴とする請求項9記載のパワーアシスト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−39815(P2009−39815A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−207228(P2007−207228)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】