説明

パワーオンリセット回路及びコンビ型ICカード

【課題】 複数の電源電圧仕様で動作可能な接触インタフェースと、非接触インタフェースを備えたコンビ型ICカードにおいて、様々な電力供給形態に対して、何れの場合であっても確実で信頼性の高いリセット信号を出力するパワーオンリセット回路を提供する。
【解決手段】 非接触インタフェースまたは接触インタフェースが外部の電源供給源から取得した電源電圧VCCの立ち上がり時にコンビ型ICカードのリセット状態を制御する内部リセット信号PRSTBを出力するとともに、電源電圧が所定の閾値を超えて上昇したことを検出すると内部リセット信号PRSTBを解除するパワーオンリセット回路であって、接触型モードで動作する場合において外部装置から直接供給される外部リセット信号の入力端子RSTBの信号レベルが活性化レベルと非活性化レベルでは、活性化レベル時の方が、非活性化レベル時より所定の閾値が低電圧に設定される構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば電磁波等を介して非接触で外部の電力供給源から電力を取得し、当該電源電圧を所定の電圧に変換して非接触通信動作を行う非接触型ICカードのインタフェースと、電源端子等を介して外部の電力供給源から電力を直接取得し、当該電源電圧を所定の電圧に変換して接触通信動作を行う接触型ICカードのインタフェースを併せ持った非接触・接触共用型のコンビ型ICカード等に用いられるパワーオンリセット回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カードに半導体集積回路装置を搭載したICカードが普及しつつある。ICカードは、外部のリーダライタ装置と、ICカード内に搭載された半導体集積回路装置との間で情報交換を行うことが可能となっている。これにより、半導体集積回路装置が内蔵している不揮発性メモリへ必要な情報を格納したり、逆に不揮発性メモリから情報を読み出したりというような処理が可能となっている。斯かるICカードによれば、従来の磁気カードによって行われている様々な機能を実現することが可能である。
【0003】
このICカードは、近年の半導体集積回路技術の進歩によって、より容量の大きい不揮発性メモリを内蔵するようになってきている。よって、複数のアプリケーションを1枚のICカードに収納した多目的ICカードも普及しつつある。斯かるICカードでは、アプリケーション毎に使用状況も多彩なものとなっており、例えば1枚のカードで入退室や出退勤管理、鉄道やバス等の乗車券、パーソナルコンピュータのセキュリティやATM(現金自動預け払い機)等への対応が可能となるように、非接触型ICカードのインタフェースと接触型ICカードのインタフェースを併せ持ったコンビ型(非接触・接触共用型)ICカードが開発されている。
【0004】
コンビ型ICカードにおいて、接触型インタフェースを持つことの特徴の一つは、外部の電力供給源から電源端子等を介して直流電圧が直接供給されるため、非接触インタフェースに比べて電力伝導効率が良く、外部通信装置の消費電力を比較的低く抑えることができることである。例えば、小型携帯機器等のように比較的低電力で動作する機器と通信を行う場合では、接触インタフェースを使用することにより、バッテリーの消費を抑える等の効果がある。
【0005】
一方、非接触型インタフェースを持つことの特徴の一つは、接触型インタフェースを使用した場合に比べて、操作が容易で且つ迅速に情報交換処理を行うことが可能なシステムを構成することができることである。例えば、鉄道やバス等の乗車券として非接触型ICカードを用いる場合、改札ゲートに非接触型ICカードをかざしたり(かざし処理)、瞬間的に接触させたり(タッチ&ゴー処理)するのみで改札処理を行うことが可能となる。
【0006】
このように、コンビ型ICカードにおいては、ICカードとリーダライタ装置との間での情報交換の形態としては、様々な方法が考えられる。例を挙げると、(1)非接触型リーダライタ装置から数cm程度以内で離れた空間にICカードをかざす方法(かざし処理)、(2)非接触型リーダライタ装置に設置されたカードホルダにICカードを挿入する方法(落とし込み処理)、(3)非接触型リーダライタ装置にカードをセットした後、電源スイッチを投入することによって電力を供給する方法、(4)接触型リーダライタ装置にカードをセットした後、電源スイッチを投入することによって、電源電圧を直接供給する方法等が考えられる。
【0007】
これらの方法は、夫々ICカードをリーダライタ装置に挿入または接近させる方法が相互に異なる。よって、リーダライタ装置からICカードに電力を供給する際にも、ICカード内での電源電圧の発生条件も異なることになる。
【0008】
また、接触型インタフェースを使用した場合は、電源端子等を介して電源電圧が直接供給されるため、電源電圧の電流容量は外部リーダライタ装置によって比較的大きく設定することが可能であるのに対し、非接触型インタフェースを使用した場合は、電磁誘導による給電であり電流容量は限られたものとなるため、電源電圧の安定性も様々である。従って、コンビ型ICカードにおいては、前記様々な電力供給形態に対して、何れの場合であっても確実で信頼性の高いパワーオンリセット動作が要求されている。
【0009】
以下、従来のコンビ型ICカードにおいて、どのようなパワーオンリセット回路が使用されているかについて例示する。例えば、下記の特許文献1には、コンビ型ICカードにおけるパワーオンリセットを行う回路構成が開示されている。
【0010】
特許文献1に開示されている従来技術では、図5に示すように、ロジック部に供給される電圧VCC2Vの立ち上がりを検出して第1リセット信号RST1を生成する第1リセット回路41と、上記外部の電力供給源から取得した電源電圧を整流する整流回路の出力電圧REGINの立ち上がりを検出して第2リセット信号RST2を生成する第2リセット回路42を備えており、夫々のリセット回路のうち、リセット解除のタイミングが遅い方のリセット信号を出力することにより、非接触動作において様々な電源の立ち上がりタイミングに対応して安定したパワーオンリセット信号PRSTを出力できるようにしている。また、接触型のインタフェースより入力される外部リセット信号RSTBにも基づいてリセット信号を出力することが可能となっている。これにより、非接触型及び接触型の何れの方式で電力が供給されても、システムのリセット状態を的確に制御することが可能なパワーオンリセット回路を提供することができるというものである。
【0011】
ここで、接触型ICカードにおけるリセットの方法について説明する。接触型ICカードの場合、2種類のリセットの方法がISO/IEC7816−3に規定されている。その内の一つにコールドリセットという規格がある。コールドリセットとは、外部リセット信号の入力端子であるRSTB端子(端子名の最後の文字Bは、信号レベルが低レベル時にその信号が活性化されることを意味している)の電圧レベルを所定の期間低レベル(活性化レベル)に固定した状態で電源電圧を立ち上げることによってICカード全体をリセット状態に遷移させるものである。他の一つは、ウォームリセットという規格で、電源電圧が立ち上がった状態でRSTB端子を低レベル(活性化レベル)にすることによって、ICカードの一部だけをリセット状態に遷移させるものである。接触型ICカードでは、上述の2種類のリセットを具備することは必須となっている。一般に、接触型ICカードをISO準拠の接触型リーダライタ装置に接続した場合は、最初に必ず、前記コールドリセットが実行されることになる。
【0012】
【特許文献1】特開2003−44176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
コンビ型ICカードの場合、その利用形態は様々であり、各使用状況によって非接触型リーダライタ装置や接触型リーダライタ装置から供給される電圧の立ち上がり波形が異なる。近年では、接触型インタフェースで用いる電源電圧も多様化し、CLASS−A(VCC=5V±10%),CLASS−B(VCC=3V±10%)の他に、CLASS−C(VCC=1.8V±10%)という仕様がISO/IEC7816−3で規定されている。従って、非接触インタフェースにおける様々な電源の立ち上がりと、接触インタフェースにおける様々な電源電圧全てにおいて、安定した確実なパワーオンリセット回路が求められている。
【0014】
ここで、上記のような使用状況において、非接触型リーダライタ装置及び接触型リーダライタ装置から給電される電力における電圧と電流の関係、及び、夫々に対して適切なパワーオンリセット電圧について説明する。
【0015】
通常、非接触型リーダライタは、アンテナコイルを介して数百kHz〜数十MHz程度のキャリア周波数を用いた一定量の電磁界を放射し、ICカードに対して電力を供給している。ICカードは、リーダライタのアンテナとの距離やアンテナの結合度等によって受電する電力が変動する。例えば、消費電力9mWの非接触型ICカードを非接触型リーダライタ装置に徐々に近づけていった場合、ICカードの受電電力が9mW以上になる位置まで近づけるとICカードが動作する。この場合、ICカード内で電力損失が無く9mWの電力が全て供給されていると仮定すると、ICカード内部の電源電圧が5Vの場合は1.8mA、1.8Vの場合は5mAまで電流を消費することができる。言い換えれば、ICカードが1.8mA消費している場合は、ICカード内部の電源電圧は5Vであるが、5mA消費している場合は1.8Vまで電源電圧が降下することになる。
【0016】
ICカードに内蔵されているCPUやメモリ回路は、通常、常に一定の消費電流で動作している訳ではない。動作シーケンスや処理内容等によって消費電流は変動する。このため、ICカードが一定の電力を受電して動作している場合、上述のように、消費電流の変動は電源電圧の変動となり、延いては電磁ノイズの原因となる。電磁ノイズが発生すると、リーダライタ装置と通信を行う際にSN比が低下する等、通信品質低下の要因となる。この対策として、シャントレギュレータ等のような電源クランプ回路を使用することが一般的であるが、これらの回路には通常高耐圧のトランジスタが使用され、2V以下では安定した動作が困難となる場合がある。
【0017】
また、ISO/IEC14443で規定されている通信方式の一つに10%の振幅変調方式(Type−B)がある。この通信方式では受電電圧と通信信号の振幅は比例関係にあるため、受電電圧が低くなると通信信号の振幅も小さくなる特性を持っている。従って、ICカードが通信信号を受信する際においても、通信信号の振幅が低くなるとSN比が下がり、受信が困難となるため、通信品質を確保するためには電源電圧は2V以上に設定しておく必要がある。
【0018】
以上のことより、非接触モードで使用する場合、パワーオンリセットの設定電圧は2V以上に設定する必要がある。
【0019】
一方、ICカードを接触型リーダライタ装置に接続した場合、電源端子等を介して電源電圧がICカードに直接印加されるため、ICカードはリーダライタ装置の許容電流値(通常数十mA)までは消費できることになる。この場合、ICカードの消費電流が変動しても、リーダライタ装置の許容電流値の範囲であれば電源電圧は一定となる。このような使用形態では、パワーオンリセット電圧は、仕様に合わせて下限電圧以下に設定する必要がある。例えば、CLASS−Aを実装する場合は、パワーオンリセットの設定電圧は4.5V以下に設定する必要があり、また、CLASS−Bを実装する場合は、パワーオンリセットの設定電圧は2.7V以下に設定する必要があり、さらに、CLASS−Cを実装する場合では、パワーオンリセットの設定電圧は1.62V以下に設定する必要がある。
【0020】
従って、非接触インタフェースを使用する場合と、接触インタフェースを使用する場合では、適切なリセット電圧が違うため、従来のパワーオンリセット回路のように、接触/非接触モードにおいてパワーオンリセットの設定電圧を共通にすると、非接触時の設定電圧に律束されてリセット設定電圧は2V以上にしか設定できないことになる。つまり、CLASS−A,CLASS−B、及び非接触インタフェースを備えたコンビカードは実現できるが、CLASS−A,CLASS−B,CLASS−C、及び非接触インタフェース全てを備えることができないという課題があった。
【0021】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、全ての電源電圧(CLASS−A,CLASS−B,CLASS−C)で動作可能な接触インタフェースと、非接触インタフェースを備えたICカードにおいて、様々な電力供給形態に対して、何れの場合であっても確実で信頼性の高いリセット信号を出力するパワーオンリセット回路、及び、当該パワーオンリセット回路を備えたICカードを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するための本発明に係るパワーオンリセット回路は、コンビ型ICカードの非接触インタフェースまたは接触インタフェースが外部の電源供給源から取得した電源電圧の立ち上がり時に前記コンビ型ICカードのリセット状態を制御する内部リセット信号を出力するとともに、前記電源電圧が所定の閾値を超えて上昇したことを検出すると前記内部リセット信号を解除するパワーオンリセット回路であって、前記コンビ型ICカードが接触型ICカードとして機能する場合において外部装置から直接供給される外部リセット信号の入力端子である外部リセット信号端子の信号レベルが活性化レベルと非活性化レベルでは、活性化レベル時の方が、非活性化レベル時より前記所定の閾値が低電圧に設定されることを第1の特徴とする。
【0023】
ここで、上記第1の特徴のパワーオンリセット回路で使用する外部リセット信号端子は、上述の接触型ICカードにおけるリセットの方法についての説明(背景技術の記載参照)で言及したRSTB端子に相当し、ISO/IEC7816−3に規定されているコールドリセット及びウォームリセットに使用可能である。尚、コンビ型ICカードが、非接触型ICカードとして、外部の電力供給源から電磁誘導によって非接触で電源電圧を取得する場合は、外部リセット信号端子(以下、適宜「RSTB端子」と称する)は、外部装置から外部リセット信号が入力されないオープン状態(不定状態)となるのを回避するため、電源電圧が励起していく過渡状態において、プルアップ状態(非活性化レベルの高レベル)となっている。但し、コンビ型ICカードを、ISO規格に準拠した接触型リーダライタ装置に接続した場合は、電源電圧立ち上げ時には、RSTB端子はリーダライタ装置によって必ず低レベル(活性化レベル)に固定され、前記コールドリセットが必ず実行される。 従って、RSTB端子が高レベルの場合は、非接触で給電されている状態か、或いは、ISO規格に準拠しない接触モードで給電されている状態であると判断でき、RSTB端子が低レベルの場合は、ISO規格に準拠した接触モードで給電されている状態であると判断することができる。
【0024】
従って、上記第1の特徴のパワーオンリセット回路によれば、RSTB端子の信号レベルが低レベル(活性化レベル)と高レベル(非活性化レベル)では、低レベル時の方が、高レベル時より前記内部リセット信号を解除する電源電圧レベルの閾値が低電圧に設定されるため、RSTB端子の信号レベルが低レベル時には、前記閾値を1.62V以下にすることにより、ISO規格におけるCLASS−A,CLASS−B,CLASS−Cの全ての電源電圧でリセット動作を行い、当該リセット動作を確実に解除することができる。一方、RSTB端子の信号レベルが高レベル時では、非接触で給電されている状態か、或いは、ISO規格に準拠しない接触モードで給電されている状態であるので、少なくともISO規格に準拠したリセット手順でのリセット動作とはならないため、前記閾値を2V以上に設定することにより、非接触モードでのリセット動作を安定させることができる。
【0025】
つまり、上記第1の特徴のパワーオンリセット回路によれば、RSTB端子の信号レベルを監視して、低レベル時の方が、高レベル時より前記内部リセット信号を解除する電源電圧レベルの閾値が低電圧になるように切り替えることにより、様々な電力供給形態に対して、何れの電力供給形態であっても確実で信頼性の高いリセット信号を出力するパワーオンリセット回路が実現できる。
【0026】
本発明に係るパワーオンリセット回路は、上記第1の特徴に加えて、更に、前記電源電圧を分圧抵抗により分圧して低電圧化した第2電源電圧を生成する抵抗分圧回路と、前記コンビ型ICカード内で前記電源電圧を所定の電圧に変換するレギュレータ回路で用いられる一定電圧の基準電圧と、前記第2電源電圧を比較する比較回路を備え、前記分圧抵抗による分圧比が、前記外部リセット信号端子の信号レベルによって切り替え可能に構成されていることを第2の特徴とする。
【0027】
上記第2の特徴のパワーオンリセット回路によれば、外部リセット信号端子の信号レベルによって分圧抵抗による分圧比を切り替え、その結果として第2電源電圧の電圧レベルを切り替えることで、内部リセット信号を解除する電源電圧レベルの閾値の設定を実質的に切り替えることが可能となり、上記第1の特徴のパワーオンリセット回路を、コンビ型ICカード内のレギュレータ回路で用いられる一定電圧の基準電圧を利用して具体的に実現できるようになる。
【0028】
本発明に係るパワーオンリセット回路は、上記第1の特徴に加えて、更に、前記外部リセット信号端子の信号レベルが非活性化レベルの場合、前記内部リセット信号が解除されると、前記所定の閾値の設定値が低下することを第3の特徴とする。
【0029】
本発明に係るパワーオンリセット回路は、上記第2の特徴に加えて、更に、前記外部リセット信号端子の信号レベルが非活性化レベルの場合、前記分圧抵抗による分圧比が、前記比較回路の出力レベルによって切り替わることで、前記内部リセット信号が解除されると、前記所定の閾値の設定値が低下するように構成されていることを第4の特徴とする。
【0030】
上記第3または第4の特徴のパワーオンリセット回路によれば、外部リセット信号端子の信号レベルが非活性化レベル時、つまり、少なくともISO規格に準拠した接触モードで給電されている状態以外の、電源電圧の給電が不安定となる可能性の高い給電状態において、非接触または接触インタフェースを介して外部の電源供給源から取得した電源電圧の変動に対してヒステリシス特性を有するので、電源電圧が閾値を超えて上昇した直後に当該閾値を低く再設定できるので、内部リセット信号の解除を安定化させることができる。
【0031】
一方、外部リセット信号端子の信号レベルが活性化レベル時には、ISO規格に準拠した接触モードで電源電圧が立ち上がるので、電源電圧の変動に対してヒステリシス特性を有しないことで、電源電圧が閾値を超えて上昇したことを検知する前後において閾値の設定を1.62V以下になるように固定でき、CLASS−Cで電源電圧が立ち上がる場合であっても、確実に内部リセット信号によるリセットを解除することができる。
【0032】
本発明に係るパワーオンリセット回路は、上記第3の特徴に加えて、更に、前記内部リセット信号が解除された後の前記所定の閾値の低下した後の設定値が、接触モードと非接触モードを判別するモード判別信号によって切り替え可能に構成されていることを第5の特徴とする。
【0033】
本発明に係るパワーオンリセット回路は、上記第4の特徴に加えて、更に、前記外部リセット信号端子の信号レベルが非活性化レベルの場合、前記分圧抵抗による分圧比が、接触モードと非接触モードを判別するモード判別信号によって切り替わることで、前記内部リセット信号が解除された後の前記所定の閾値の低下した後の設定値が、接触モードと非接触モードを判別するモード判別信号によって切り替え可能に構成されていることを第6の特徴とする。
【0034】
上記第5または第6の特徴のパワーオンリセット回路によれば、外部リセット信号端子の信号レベルが非活性化レベル時、つまり、少なくともISO規格に準拠した接触モードで給電されている状態以外において、更に、接触モード及び非接触モードを判別する手段より出力されるモード判別信号の信号レベルに応じて、非接触状態で電源電圧が立ち上がる場合と接触状態で電源電圧が立ち上がる場合を区別して、ヒステリシス特性を切り替えることができる。この結果、非接触状態で電源電圧が立ち上がる場合は、ヒステリシス特性における閾値の上限電圧を3V以上に設定することにより、非接触通信が十分に安定して動作する電圧で、ICカードに起動を掛けることができる。その後、内部リセット信号が解除された状態において、接触モード及び非接触モードを判別する手段より出力されるモード判別信号を監視し、非接触モードと判別された場合は、抵抗分圧回路における分圧抵抗による分圧比を切り替えることにより、ヒステリシス特性における閾値の下限電圧を2V以上、3V未満に設定することができる。これにより、電源電圧が不安定な非接触モードで動作している場合においても、ICカードの消費電流によって電源電圧が変動しても、誤って内部リセット信号が出力されてリセット状態になってしまうことなく、安定した動作を維持することができる。更に、高耐圧トランジスタ回路の動作が不安定となる2V以下まで電源電圧が降下した場合には、誤動作する前に確実にリセット状態に遷移させることが可能となる。
【0035】
本発明に係るコンビ型ICカードは、上記何れかの特徴のパワーオンリセット回路を備えたことを特徴とする。
【0036】
上記特徴のコンビ型ICカードによれば、非接触インタフェースにおける様々な電源電圧の立ち上がりと、接触インタフェースにおける様々な電源電圧の全てにおいて、安定した確実なパワーオンリセットが可能なコンビ型ICカードを実現可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
次に、本発明に係るパワーオンリセット回路(以下、適宜「本発明回路」と称す)とそれを用いたコンビ型ICカードについて、図面を参照して説明する。
【0038】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る本発明回路の回路構成を示す回路図である。本発明回路は、コンビ型ICカードの非接触インタフェース(図示せず)または接触インタフェース(図示せず)が外部の電源供給源(図示せず)から取得した電源電圧VCCの立ち上がり時にコンビ型ICカードのリセット状態を制御する内部リセット信号PRSTB(パワーオンリセット信号)を出力するとともに、電源電圧VCCが所定の閾値Vtを超えて上昇したことを検出すると内部リセット信号PRSTBを解除するパワーオンリセット回路であって、電源電圧VCCを分圧抵抗R1、R2、R3により分圧して低電圧化した第2電源電圧VCC2を生成する抵抗分圧回路1と、コンビ型ICカード内で電源電圧VCCを所定の電圧に変換するレギュレータ回路(図示せず)で用いられる一定電圧の基準電圧VREFと第2電源電圧VCC2を比較する比較回路2と、抵抗分圧回路1の分圧抵抗R1、R2、R3による第2電源電圧VCC2を生成に係る分圧比が、外部リセット信号端子RSTBの信号レベル(以下、単に「RSTBレベル」と称す)に基づいて切り替える分圧比切替回路3と、コンビ型ICカードにリセットを掛けるためのシステムリセット信号SRSTBを生成する2入力AND回路4を備えて構成される。尚、電源電圧VCCは上記レギュレータ回路に供給され、上記レギュレータ回路において、コンビ型ICカード内の回路(ロジック回路、不揮発性メモリ等)で供給される所定の内部電源電圧に変換される。また、以下の説明では、信号レベルの「低レベル」と「高レベル」は、正論理における論理値「0」と「1」に夫々対応するものとして説明する。
【0039】
抵抗分圧回路1は3つの分圧抵抗R1、R2、R3の直列回路で構成され、分圧抵抗R1の一端が電源電圧VCCに接続し、分圧抵抗R1の他端が分圧抵抗R2の一端及び比較回路2の非反転入力に接続し、分圧抵抗R2の他端が分圧抵抗R3の一端に接続し、分圧抵抗R3の他端が接地電圧に接続して構成される。ここで、第2電源電圧VCC2は、分圧抵抗R1、R2の接続点から比較回路2の非反転入力に出力される。第1実施形態では、第2電源電圧VCC2を生成に係る分圧比は、2つの分圧抵抗R1、R2を使用する場合と、3つの分圧抵抗R1、R2、R3を使用する場合で切り替わることになる。
【0040】
比較回路2は、非反転入力に入力する第2電源電圧VCC2と反転入力に入力する基準電圧VREFを比較して、第2電源電圧VCC2の方が基準電圧VREFより大きい場合に内部リセット信号PRSTBの信号レベルを高レベルとし、逆に、第2電源電圧VCC2の方が基準電圧VREFより小さい場合には内部リセット信号PRSTBの信号レベルを低レベルとする。尚、内部リセット信号PRSTBは低レベルで活性化状態(リセット状態)であり、高レベルで非活性化状態(リセット解除状態)である。
【0041】
分圧比切替回路3は、入力が外部リセット信号端子RSTBに接続するインバータ5と、インバータ5の出力と内部リセット信号PRSTBを夫々入力とし各入力の否定論理和を出力する2入力NOR回路6と、ドレインが分圧抵抗R2、R3の接続点に接続し、ソースが接地電圧に接続し、ゲートが2入力NOR回路6の出力と接続するNMOSトランジスタ7を備えて構成される。
【0042】
2入力AND回路4は、外部リセット信号端子RSTBの信号と内部リセット信号PRSTBを夫々入力とし、その論理積をシステムリセット信号SRSTBとして出力する。従って、システムリセット信号SRSTBは、外部リセット信号端子RSTBによって強制的にリセット可能に構成されている。
【0043】
次に、第1実施形態に係る本発明回路の回路動作について詳細に説明する。
【0044】
先ず、RSTBレベルが低レベルの場合、内部リセット信号PRSTBの信号レベルに拘わらず、インバータ5とNOR回路6によってNMOSトランジスタ7のゲートレベルは強制的に低レベルに固定され、NMOSトランジスタ7はオフ状態となる。従って、電源電圧VCCから、3つの分圧抵抗R1、R2、R3を介して接地電圧に流れる直流電流経路が形成され、電源電圧VCCは、分圧抵抗R1と、分圧抵抗R2、R3の合成抵抗によって分圧されるため、比較回路2に入力する第2電源電圧VCC2は、以下の数1で与えられる。数1の右辺の(R2+R3)/(R1+R2+R3)は、RSTBレベルが低レベルの場合の分圧比に相当する。
【0045】
[数1]
VCC2=VCC×(R2+R3)/(R1+R2+R3)
【0046】
次に、RSTBレベルが高レベルの場合、電源電圧VCCが所定の閾値Vt以下の場合には、後述するように、比較回路2から出力される内部リセット信号PRSTBの信号レベルが低レベルであるため、NOR回路6の2つの入力は共に低レベルとなって、NMOSトランジスタ7のゲートレベルは高レベルとなり、NMOSトランジスタ7はオン状態となる。従って、電源電圧VCCから、2つの分圧抵抗R1、R2とNMOSトランジスタ7を介して接地電圧に流れる直流電流経路が形成され、分圧抵抗R3の抵抗値に比べてNMOSトランジスタ7のオン抵抗が十分に低抵抗である場合は、電源電圧VCCは、分圧抵抗R1と分圧抵抗R2によって分圧されるため、比較回路2に入力する第2電源電圧VCC2は、以下の数2で与えられる。数2の右辺のR2/(R1+R2)は、RSTBレベルが高レベルで、電源電圧VCCが所定の閾値Vt以下(パワーオンリセット解除前)の場合の分圧比に相当する。
【0047】
[数2]
VCC2=VCC×R2/(R1+R2)
【0048】
数1及び数2において、VCC2=VREFとなる電源電圧VCCを夫々VCCL、VCCHとすると、電圧VCCL、VCCHは、夫々以下の数3と数4で与えられる。
【0049】
[数3]
VCCL=VREF×(R1+R2+R3)/(R2+R3)
[数4]
VCCH=VREF×(R1+R2)/R2
【0050】
ここで、電圧VCCLと電圧VCCHは、夫々RSTBレベルが低レベルと高レベルの場合の所定の閾値Vtに相当する。数3と数4において、分圧比の逆数{(R1+R2+R3)/(R2+R3)}と分圧比の逆数{(R1+R2)/R2}の大小関係は、以下の数5に示すように、常に後者が前者より大きいので、VCCH>VCCLとなる。
【0051】
[数5]
(R1+R2+R3)/(R2+R3)<(R1+R2)/R2
【0052】
例えば、基準電圧VREFを1Vとし、3つの分圧抵抗R1、R2、R3の抵抗比R1:R2:R3を2:1:1に設定した場合、電圧VCCLと電圧VCCHは、夫々以下の数6と数7に示すようになる。
【0053】
[数6]
VCCL=1V×4/2=2V
[数7]
VCCH=1V×3/1=3V
【0054】
次に、電源電圧VCCが、RSTBレベルが低レベルの場合にはVCCLを超えて、RSTBレベルが高レベルの場合にはVCCHを超えて、電圧上昇すると、数3または数4で与えられる第2電源電圧VCC2が、基準電圧VREFより大きくなるので、内部リセット信号PRSTBは低レベルから高レベルに遷移して、リセット状態(パワーオンリセット)が解除される。
【0055】
RSTBレベルが高レベルの場合、電源電圧VCCが所定の閾値Vt(=VCCH)を超えた場合には、比較回路2から出力される内部リセット信号PRSTBの信号レベルが高レベルとなるため、NOR回路6によってNMOSトランジスタ7のゲートレベルは低レベルに遷移し、NMOSトランジスタ7はオフ状態となる。従って、電源電圧VCCから、3つの分圧抵抗R1、R2、R3を介して接地電圧に流れる直流電流経路が形成され、電源電圧VCCは、分圧抵抗R1と、分圧抵抗R2、R3の合成抵抗によって分圧されるため、比較回路2に入力する第2電源電圧VCC2は、RSTBレベルが低レベルの場合と同様の数1で与えられる。つまり、所定の閾値VtがVCCHからVCCLに低下し、電源電圧VCCの変化に対してヒステリシス特性を有することになる。従って、電源電圧VCCがVCCHを超えて上昇した後に、VCCHを僅かに下回る変動が生じても、直ぐには解除された内部リセット信号PRSTBの信号レベルが低レベルに戻って不用意にリセット状態に陥ることが回避される。但し、電源電圧VCCがVCCLを下回るまで低下すると、正常に内部リセット信号PRSTBの信号レベルが低レベルに戻ってリセット状態になる。
【0056】
従って、電圧VCCLは、RSTBレベルが低レベルの場合、または、RSTBレベルが高レベルでパワーオンリセット解除後の所定の閾値Vtに対応し、電圧VCCHは、RSTBレベルが高レベルの場合のパワーオンリセット解除前の所定の閾値Vtに対応することになる。
【0057】
以上より、所定の閾値Vtを超えて上昇するまでの電源電圧VCCの立ち上がり時においては、VCCH>VCCLであるので、RSTBレベルが低レベルの場合は、RSTBレベルが高レベルの場合よりも低電圧で、内部リセット信号PRSTBが高レベルに遷移し、パワーオンリセットが解除されることになる。
【0058】
〈第2実施形態〉
図2は、第2実施形態に係る本発明回路の回路構成を示す回路図である。本発明回路は、第1実施形態と同様に、コンビ型ICカードの非接触インタフェース(図示せず)または接触インタフェース(図示せず)が外部の電源供給源(図示せず)から取得した電源電圧VCCの立ち上がり時にコンビ型ICカードのリセット状態を制御する内部リセット信号PRSTBを出力するとともに、電源電圧VCCが所定の閾値Vtを超えて上昇したことを検出すると内部リセット信号PRSTBを解除するパワーオンリセット回路であって、抵抗分圧回路11、比較回路2、分圧比切替回路13、及び、2入力AND回路4を備えて構成される。比較回路2と2入力AND回路4は、第1実施形態と同じであるので、重複する説明は割愛する。抵抗分圧回路11と分圧比切替回路13の回路構成が、第1実施形態と異なる。
【0059】
尚、第2実施形態では、本発明回路とは別に設けられた接触/非接触モード判別回路14が別途必要となる。接触/非接触モード判別回路14は、コンビ型ICカードが接触モードと非接触モードの何れのモードで動作しているかを判別してその判別結果をモード判別信号MODEとして出力する回路である。モード判別信号MODEは、低レベルが接触モードであることを表し、高レベルが非接触モードであることを表している。本第2実施形態では、接触/非接触モード判別回路14の具体的な回路構成については不問であり、コンビ型ICカードが接触モードと非接触モードの何れのモードで動作しているかを判別できれば、どのような回路構成であっても構わない。
【0060】
抵抗分圧回路11は、4つの分圧抵抗R1、R2、R3、R4の直列回路で構成され、電源電圧VCCを分圧抵抗R1、R2、R3、R4により分圧して低電圧化した第2電源電圧VCC2を生成する回路である。分圧抵抗R1の一端が電源電圧VCCに接続し、分圧抵抗R1の他端が分圧抵抗R2の一端及び比較回路2の非反転入力に接続し、分圧抵抗R2の他端が分圧抵抗R3の一端に接続し、分圧抵抗R3の他端が分圧抵抗R4の一端に接続し、分圧抵抗R4の他端が接地電圧に接続して構成される。ここで、第2電源電圧VCC2は、分圧抵抗R1、R2の接続点から比較回路2の非反転入力に出力される。第2実施形態では、第2電源電圧VCC2を生成に係る分圧比は、2つの分圧抵抗R1、R2を使用する場合と、3つの分圧抵抗R1、R2、R3を使用する場合と、4つの分圧抵抗R1、R2、R3、R4を使用する場合で切り替わることになる。
【0061】
分圧比切替回路13は、2つの回路部で構成され、第1の回路部は第1実施形態の分圧比切替回路と同じである。つまり、第1の回路部は、入力が外部リセット信号端子RSTBに接続するインバータ5と、インバータ5の出力と内部リセット信号PRSTBを夫々入力とし各入力の否定論理和を出力する2入力NOR回路6と、ドレインが分圧抵抗R2、R3の接続点に接続し、ソースが接地電圧に接続し、ゲートが2入力NOR回路6の出力と接続するNMOSトランジスタ7を備えて構成される。第2の回路部は、第2実施形態で新たに追加された回路部で、入力が内部リセット信号PRSTBであるインバータ15と、インバータ15の出力とモード判別信号MODEを夫々入力とし各入力の否定論理和を出力する2入力NOR回路16と、第1の回路部のインバータ5の出力と2入力NOR回路16の出力を夫々入力とし各入力の否定論理和を出力する2入力NOR回路17と、ドレインが分圧抵抗R3、R4の接続点に接続し、ソースが接地電圧に接続し、ゲートが2入力NOR回路17の出力と接続するNMOSトランジスタ18を備えて構成される。
【0062】
次に、第2実施形態に係る本発明回路の回路動作について詳細に説明する。
【0063】
先ず、RSTBレベルが低レベルの場合、内部リセット信号PRSTBの信号レベルに拘わらず、インバータ5とNOR回路6とNOR回路17によってNMOSトランジスタ7、18の各ゲートレベルは強制的に低レベルに固定され、NMOSトランジスタ7、18は夫々オフ状態となる。従って、電源電圧VCCから、4つの分圧抵抗R1、R2、R3、R4を介して接地電圧に流れる直流電流経路が形成され、電源電圧VCCは、分圧抵抗R1と、分圧抵抗R2、R3、R4の合成抵抗によって分圧されるため、比較回路2に入力する第2電源電圧VCC2は、以下の数8で与えられる。数8の右辺の(R2+R3+R4)/(R1+R2+R3+R4)は、RSTBレベルが低レベルの場合の分圧比に相当する。
【0064】
[数8]
VCC2=VCC×(R2+R3+R4)/(R1+R2+R3+R4)
【0065】
次に、RSTBレベルが高レベルの場合、電源電圧VCCが所定の閾値Vt以下の場合には、比較回路2から出力される内部リセット信号PRSTBの信号レベルが低レベルであるため、NOR回路6の2つの入力は共に低レベルとなって、NMOSトランジスタ7のゲートレベルは高レベルとなり、NMOSトランジスタ7はオン状態となる。また、内部リセット信号PRSTBの信号レベルが低レベルであると、インバータ15の出力が高レベルであるので、モード判別信号MODEの信号レベルに拘わらず、NOR回路16の出力は低レベルとなり、NOR回路17の2つの入力は共に低レベルとなって、NMOSトランジスタ18のゲートレベルは高レベルとなり、NMOSトランジスタ18はオン状態となる。従って、電源電圧VCCから、2つの分圧抵抗R1、R2とNMOSトランジスタ7を介して接地電圧に流れる直流電流経路が形成され、分圧抵抗R3の抵抗値に比べてNMOSトランジスタ7のオン抵抗が十分に低抵抗である場合は、電源電圧VCCは、分圧抵抗R1と分圧抵抗R2によって分圧されるため、比較回路2に入力する第2電源電圧VCC2は、以下の数9で与えられる。数9の右辺のR2/(R1+R2)は、RSTBレベルが高レベルで、電源電圧VCCが所定の閾値Vt以下(パワーオンリセット解除前)の場合の分圧比に相当する。尚、数9は第1実施形態における数2と同じである。
【0066】
[数9]
VCC2=VCC×R2/(R1+R2)
【0067】
引き続き、RSTBレベルが高レベルの場合、電源電圧VCCが所定の閾値Vtを超えて上昇した場合には、比較回路2から出力される内部リセット信号PRSTBの信号レベルが高レベルとなるため、NOR回路6によってNMOSトランジスタ7のゲートレベルは低レベルに遷移し、NMOSトランジスタ7はオフ状態となる。また、パワーオンリセットが解除され、接触/非接触モード判別回路14によって、コンビ型ICカードが接触モードと非接触モードの何れのモードで動作しているかが判別され、非接触モードで動作している場合は、モード判別信号MODEは高レベルとなる。この場合、NOR回路16の出力が低レベルになり、NOR回路17の出力と接続するNMOSトランジスタ18のゲートレベルが高レベルになるので、NMOSトランジスタ18はオン状態となる。従って、電源電圧VCCから、3つの分圧抵抗R1、R2、R3とNMOSトランジスタ18を介して接地電圧に流れる直流電流経路が形成され、分圧抵抗R4の抵抗値に比べてNMOSトランジスタ18のオン抵抗が十分に低抵抗である場合は、電源電圧VCCは、分圧抵抗R1と分圧抵抗R2、R3の合成抵抗によって分圧されるため、比較回路2に入力する第2電源電圧VCC2は、以下の数10で与えられる。数10の右辺の(R2+R3)/(R1+R2+R3)は、RSTBレベルが高レベルで、電源電圧VCCが所定の閾値Vtを超えて、非接触モードで動作している場合の分圧比に相当する。
【0068】
[数10]
VCC2=VCC×(R2+R3)/(R1+R2+R3)
【0069】
また、パワーオンリセットが解除され、接触/非接触モード判別回路14によって、コンビ型ICカードが接触モードと非接触モードの何れのモードで動作しているかが判別され、接触モードで動作している場合は、モード判別信号MODEは低レベルとなる。この場合、NOR回路16の出力が高レベルになり、NOR回路18の出力と接続するNMOSトランジスタ18のゲートレベルが低レベルになるので、NMOSトランジスタ18はオフ状態となる。従って、RSTBレベルが低レベルの場合と同様に、電源電圧VCCから、4つの分圧抵抗R1、R2、R3、R4を介して接地電圧に流れる直流電流経路が形成され、電源電圧VCCは、分圧抵抗R1と、分圧抵抗R2、R3、R4の合成抵抗によって分圧されるため、比較回路2に入力する第2電源電圧VCC2は、上記数8で与えられる。
【0070】
数8〜数10において、VCC2=VREFとなる電源電圧VCCを夫々VCCLL、VCCH、VCCLとすると、電圧VCCLL、VCCH、VCCLは、夫々以下の数11〜数13で与えられる。
【0071】
[数11]
VCCLL=VREF×(R1+R2+R3+R4)/(R2+R3+R4)
[数12]
VCCH= VREF×(R1+R2)/R2
[数13]
VCCL= VREF×(R1+R2+R3)/(R2+R3)
【0072】
ここで、電圧VCCLLはRSTBレベルが低レベルの場合の所定の閾値Vtと、RSTBレベルが高レベルで、パワーオンリセット解除後に接触モードで動作している場合の所定の閾値Vtに相当する。電圧VCCHは、RSTBレベルが高レベルで、パワーオンリセット解除前の所定の閾値Vtに相当する。VCCLは、RSTBレベルが高レベルで、パワーオンリセット解除後に非接触モードで動作している場合の所定の閾値Vtに相当する。
【0073】
数11〜数13において、分圧比の逆数{(R1+R2+R3+R4)/(R2+R3+R4)}と分圧比の逆数{(R1+R2)/R2}と分圧比の逆数{(R1+R2+R3)/(R2+R3)}は、以下の数14に示す大小関係となるため、3通りの閾値Vt(VCCLL、VCCH、VCCL)の大小関係は、数15に示すようになる。
【0074】
[数14]
RLL<RL<RH
但し、
RLL=(R1+R2+R3+R4)/(R2+R3+R4)
RH=(R1+R2+R3)/(R2+R3)
RL=(R1+R2)/R2
【0075】
[数15]
VCCLL<VCCL<VCCH
【0076】
例えば、基準電圧VREFを1Vとし、4つの分圧抵抗R1、R2、R3、R4の抵抗比R1:R2:R3:R4を2:1:1:2に設定した場合、電圧VCCLLと電圧VCCLと電圧VCCHは、夫々以下の数16〜数18に示すようになる。
【0077】
[数16]
VCCLL=1V×6/4=1.5V
[数17]
VCCL=1V×4/2=2V
[数18]
VCCH=1V×3/1=3V
【0078】
図3は、電源電圧VCCの立ち上がり時(または、立ち下がり時)における電源電圧VCCの電圧レベルと内部リセット信号PRSTBの信号レベルの関係を模式的に示す図である。
【0079】
図3の上段の内部リセット信号PRSTBは、RSTBレベルが低レベルの場合の内部リセット信号PRSTBの信号レベルの遷移を示しており、電源電圧VCCが閾値VCCLLを超えて上昇すると、低レベルから高レベルに遷移してリセット状態が解除され、逆に、電源電圧VCCが閾値VCCLLより低下すると、高レベルから低レベルに遷移して再度リセット状態となる。
【0080】
図3の下段の内部リセット信号PRSTBは、RSTBレベルが高レベルで、パワーオンリセット解除後の動作が非接触モードである場合の内部リセット信号PRSTBの信号レベルの遷移を示しており、電源電圧VCCが閾値VCCHを超えて上昇すると、低レベルから高レベルに遷移してリセット状態が解除され、逆に、電源電圧VCCが閾値VCCLより低下すると、高レベルから低レベルに遷移して再度リセット状態となる。
【0081】
数15に示すように、所定の閾値Vtは、VCCLL<VCCL<VCCHという関係となることより、RSTBレベルが低レベル時には、高レベル時よりも低い電圧で内部リセット信号PRSTBが高レベルに遷移してリセット状態が解除される。
【0082】
以上に説明した構成によれば、ISO規格に準拠した接触型リーダライタ装置に接続した場合は、RSTBレベルは必ず低レベルとなるため、閾値Vt(VCCLL)の設定電圧を1.62V以下に設定することによって、ISO規格におけるCLASS−A、CLASS−B、CLASS−Cの全ての電源電圧でリセット動作できる。
【0083】
また、電圧VCCHと電圧VCCLを、非接触モード動作に適切な電圧に設定することにより、非接触モードでのパワーオンリセット動作を安定させることができる。
【0084】
従って、本発明によれば、電磁波等を介して非接触で外部の電力供給源から電力を取得する非接触型ICカードのインタフェースと、電源端子等を介して直接外部の電力供給源から電力を取得する接触型ICカードのインタフェースを併せ持ったコンビ型ICカードにおいて、非接触インタフェースにおける様々な電源電圧の立ち上がりと、接触インタフェースにおける様々な電源電圧の全てにおいて、安定した確実なパワーオンリセット回路を提供することができる。
【0085】
〈第3実施形態〉
次に、上記第1実施形態及び第2実施形態で説明した本発明回路を備えたコンビ型ICカード(以下、適宜「本発明装置」と称す)について、図面を参照して説明する。
【0086】
図4は、本発明装置の一回路構成例を示す概略のブロック図である。図4に示すように、本発明装置は、電磁波を用いた通信を行うRF(Radio Frequency)部20、各種論理演算を行う論理回路を複数備えたロジック部21、不揮発性メモリ部28、電圧制御回路部29等を備えた構成となっている。ロジック部21は、データ処理用のCPU(Central Processing Unit)22、暗号を高速処理するためのセキュリティ用プロセッサ23、演算処理における作業領域としてのワークRAM(Random AccessMemory)24、起動時に用いられるブートROM(ReadOnly Memory)25、プロトコル制御回路26、リセット回路27、バス制御回路30、セレクタ回路31、クロック発生回路32等を備えた構成となっている。
【0087】
また、RF部20は、電磁誘導を起動させるアンテナコイル33、アンテナコイル33の接続端子及びショットキーダイオード等から構成される整流回路34、変調回路35、復調回路36、クロック抽出回路37、及び、上記第1実施形態または第2実施形態の本発明回路からなるパワーオンリセット回路19を備えた構成となっている。尚、パワーオンリセット回路19が第2実施形態の本発明回路からなる場合は、図4に示すように、図2に示した接触/非接触モード判別回路14を備えた構成となる。パワーオンリセット回路19が第1実施形態の本発明回路からなる場合は、接触/非接触モード判別回路14は、少なくともパワーオンリセット回路19の動作には必要ないので省略可能である。本発明装置は、パワーオンリセット回路19を備えている点を特徴としている。
【0088】
次に、図4に示す構成における本発明装置の動作の概要を簡単に説明する。非接触モードでの動作の場合、電磁誘導によって生じた電力は、整流回路34によって整流される。尚、接触モードでの動作の場合、電源電圧VCCは、直接電源端子から供給される。整流回路34によって全波整流された、或いは、直接電源電圧端子から供給された電源電圧VCCは、電圧制御回路部29(レギュレータ回路に相当)に入力され、この電圧制御回路部29において各ブロックに最適な電圧(例えば、ロジック部21と不揮発性メモリ部28に共通に供給するVDD、不揮発性メモリ部28に供給するVPP)が生成され、各ブロックに供給される。電圧制御回路部29において、各ブロックに供給される電圧(VDD、VPP)の生成に使用された基準電圧VREFは、パワーオンリセット回路19において使用される。また、非接触モードでの動作の場合、整流回路34からの搬送波形がクロック抽出回路37によって抽出され、クロック信号が生成される。
【0089】
更に、変調回路35及び復調回路36によって、振幅変調によりデータ通信が行われる。受信した信号は、復調回路36によって復調信号に変換され、セレクタ回路31を介してプロトコル制御回路26に入力され、CPU2によって処理される。またCPU2において送信信号が生成されると、この送信信号がプロトコル制御回路26からセレクタ回路31を介して変調回路35に入力され、変調回路35において送信に適した信号に変換した後に、アンテナコイル33から送信される。
【0090】
尚、図4に示す回路構成の内、RF部20のアンテナコイル33とそれに並列に接続するコンデンサ以外は、1つの集積回路装置としてモジュール化されており、接触モードでの動作で使用する外部端子(図4中、2重丸で表示)が設けられている。これらの外部端子としては、電源電圧VCCの供給を受ける電源端子、接地電圧端子GND、信号端子CL1、CL2、及び、外部リセット信号端子RSTBがある。外部リセット信号端子RSTBは、非接触モード時にはオープン状態とならないように、電源電圧VCCの電圧レベルに高抵抗の抵抗素子を介してプルアップされている。
【0091】
〈別実施形態〉
次に、本発明回路の別実施形態について説明する。
【0092】
〈1〉本発明回路の回路構成は、上記第1及び第2実施形態において例示した回路構成に限定されるものではない。外部リセット信号端子RSTBの信号レベルによって所定の閾値が、RSTBレベルが低レベル(活性化レベル)時の方が高レベル(活性化レベル)時より低電圧となるように変更可能な回路構成であれば良い。例えば、上記第1及び第2実施形態では、電源電圧VCCを抵抗分圧によって低電圧化した第2電源電圧VCC2と定電圧の基準電圧VREFとを比較回路2で比較して、内部リセット信号PRSTBを生成する回路構成において、第2電源電圧VCC2を生成するための抵抗分圧回路1、11の分圧比を分圧比切替回路3、13で変更するように構成したが、第2電源電圧VCC2を固定して、基準電圧VREFの電圧レベルをRSTBレベルに応じて変化させる構成であっても構わない。また、第2実施形態では、モード判別信号MODEに応じて第2電源電圧VCC2が変化する構成であったが、同様に基準電圧VREFの電圧レベルをモード判別信号MODEに応じて変化させる構成であっても構わない。更に、第2電源電圧VCC2側を変化させる構成においても、必ずしも上記第1及び第2実施形態において例示した回路構成に限定されるものではない。
【0093】
更に、上記第1実施形態では、RSTBレベルが低レベル(活性化レベル)時の動作において、パワーオンリセット解除前後で、内部リセット信号PRSTBの信号レベルに応じて第2電源電圧VCC2が変化して、電源電圧VCCの変化に対してヒステリシス特性を有する構成としたが、必ずしもヒステリシス特性を設けなくても構わない。
【0094】
〈2〉上記第1及び第2実施形態では、本発明回路は、電源電圧VCCの立ち上がり時にコンビ型ICカードのリセット状態を制御する内部リセット信号PRSTBを出力するとともに、電源電圧VCCが所定の閾値Vtを超えて上昇したことを検出すると内部リセット信号PRSTBを解除する構成として、電源電圧VCCの変化だけを検知する構成であったが、例えば、特許文献1に開示されたようなロジック部21(図4参照)に供給される電圧VDD(図4参照)の立ち上がりを検出して第1リセット信号を生成する第1リセット回路と、外部の電力供給源から取得した電源電圧VCC(またはそれを整流する整流回路の出力電圧)の立ち上がりを検出して第2リセット信号を生成する第2リセット回路を備え(図5参照)、当該第2リセット回路に本発明回路を適用する構成とするのも好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、電磁波等を介して非接触で外部の電力供給源から電力を取得し、当該電源電圧を所定の電圧に変換して非接触通信動作を行う非接触型ICカードのインタフェースと、電源端子等を介して外部の電力供給源から電力を直接取得し、当該電源電圧を所定の電圧に変換して接触通信動作を行う接触型ICカードのインタフェースを併せ持った非接触・接触共用型のコンビ型ICカード、及び、それに使用するパワーオンリセット回路に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明に係るパワーオンリセット回路の第1実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図2】本発明に係るパワーオンリセット回路の第2実施形態における概略の回路構成を示す回路図
【図3】本発明に係るパワーオンリセット回路の第2実施形態における動作を説明するための電源電圧の変化と内部リセット信号の信号レベルの関係を模式的に示す図
【図4】本発明に係るコンビ型ICカードの一回路構成例を示す概略のブロック図
【図5】従来のパワーオンリセット回路の概略の回路構成を示す回路ブロック図
【符号の説明】
【0097】
1、11: 抵抗分圧回路
2: 比較回路
3、13: 分圧比切替回路
4: 2入力AND回路
5、15: インバータ
6、16、17: 2入力NOR回路
7、18: NMOSトランジスタ
14: 接触/非接触モード判別回路
19: 本発明に係るパワーオンリセット回路
20: RF部
21: ロジック部
22: CPU
23: セキュリティ用プロセッサ
24: ワークRAM
25: ブートROM
26: プロトコル制御回路
27: リセット回路
28: 不揮発性メモリ部
29: 電圧制御回路部(レギュレータ回路)
30: バス制御回路
31: セレクタ回路
32: クロック発生回路
33: アンテナコイル
34: 整流回路
35: 変調回路
36: 復調回路
37: クロック抽出回路
CL1、CL2: 信号端子
GND: 接地電圧端子
PRSTB: 内部リセット信号(パワーオンリセット信号)
R1、R2、R3、R3: 分圧抵抗
RSTB: 外部リセット信号端子
SRSTB: システムリセット信号
VCC: 電源電圧
VCC2: 第2電源電圧
VDD: ロジック部と不揮発性メモリ部に供給される電圧
VPP: 不揮発性メモリ部に供給される電圧
VREF: 基準電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンビ型ICカードの非接触インタフェースまたは接触インタフェースが外部の電源供給源から取得した電源電圧の立ち上がり時に前記コンビ型ICカードのリセット状態を制御する内部リセット信号を出力するとともに、前記電源電圧が所定の閾値を超えて上昇したことを検出すると前記内部リセット信号を解除するパワーオンリセット回路であって、
前記コンビ型ICカードが接触型ICカードとして機能する場合において外部装置から直接供給される外部リセット信号の入力端子である外部リセット信号端子の信号レベルが活性化レベルと非活性化レベルでは、活性化レベル時の方が、非活性化レベル時より前記所定の閾値が低電圧に設定されることを特徴とするパワーオンリセット回路。
【請求項2】
前記外部リセット信号端子の信号レベルが非活性化レベルの場合、前記内部リセット信号が解除されると、前記所定の閾値の設定値が低下することを特徴とする請求項1に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項3】
前記内部リセット信号が解除された後の前記所定の閾値の低下した後の設定値が、接触モードと非接触モードを判別するモード判別信号によって切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項4】
前記電源電圧を分圧抵抗により分圧して低電圧化した第2電源電圧を生成する抵抗分圧回路と、
前記コンビ型ICカード内で前記電源電圧を所定の電圧に変換するレギュレータ回路で用いられる一定電圧の基準電圧と、前記第2電源電圧を比較する比較回路を備え、
前記分圧抵抗による分圧比が、前記外部リセット信号端子の信号レベルによって切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項5】
前記外部リセット信号端子の信号レベルが非活性化レベルの場合、前記分圧抵抗による分圧比が、前記比較回路の出力レベルによって切り替わることで、前記内部リセット信号が解除されると、前記所定の閾値の設定値が低下するように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項6】
前記外部リセット信号端子の信号レベルが非活性化レベルの場合、前記分圧抵抗による分圧比が、接触モードと非接触モードを判別するモード判別信号によって切り替わることで、前記内部リセット信号が解除された後の前記所定の閾値の低下した後の設定値が、接触モードと非接触モードを判別するモード判別信号によって切り替え可能に構成されていることを特徴とする請求項5に記載のパワーオンリセット回路。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項に記載のパワーオンリセット回路を備えたことを特徴とするコンビ型ICカード。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−123168(P2009−123168A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299355(P2007−299355)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【特許番号】特許第4268655号(P4268655)
【特許公報発行日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】