パワードライブユニット
【課題】電磁シールド板を電子回路基板の所望の位置に固定すると共に、パワーモジュールの信号ピンを電子回路基板に確実に接続し、よって組付け精度を向上させるようにしたパワードライブユニットを提供する。
【解決手段】電子回路基板40と、電子回路基板に接続される信号ピン42a,42cを有するパワーモジュール44と、電子回路基板とパワーモジュールの間に介挿される電磁シールド板46とを少なくとも備えるパワードライブユニットにおいて、電磁シールド板を電子回路基板に固定する固定部材50を備えると共に、固定部材50に信号ピンの案内部62a,62c,62dを穿設する。
【解決手段】電子回路基板40と、電子回路基板に接続される信号ピン42a,42cを有するパワーモジュール44と、電子回路基板とパワーモジュールの間に介挿される電磁シールド板46とを少なくとも備えるパワードライブユニットにおいて、電磁シールド板を電子回路基板に固定する固定部材50を備えると共に、固定部材50に信号ピンの案内部62a,62c,62dを穿設する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はパワードライブユニットに関し、より具体的には、電子回路基板と、電子回路基板に接続される信号ピンを有するパワーモジュールと、電子回路基板とパワーモジュールの間に介挿される電磁シールド板とを少なくとも備えたパワードライブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、内燃機関、電動機およびバッテリなどを搭載したハイブリッド車両が提案されている。かかるハイブリッド車両においては、車両の走行状態(高速時、低速時など)に応じて内燃機関と電動機を制御し、走行するようにしている。このようなハイブリッド車両における電動機は例えばブラシレスDCモータからなり、バッテリから出力される直流電流をパワードライブユニット(PDU(Power Drive Unit))、より正確にはパワードライブユニット内のパワーモジュールを介してステータのU相、V相、W相からなる3相コイルに送ることで駆動している。
【0003】
パワードライブユニットの例としては、下記の特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術にあっては、電子回路基板とパワーモジュール(電力用スイッチング半導体素子)の間に電磁シールド板を介挿することで、電子回路基板がパワーモジュールからの電磁波による影響を受けないように構成される。
【特許文献1】特開2002−76257号公報(段落0027,0028、図2など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術にあっては、電磁シールド板が単にビスで電子回路基板に固定される構成であるため、電磁シールド板が電子回路基板に対して所望する位置に配置されない、換言すれば、位置ズレが生じるおそれがある。従って、例えば電磁シールド板が位置ズレして電子回路基板のスルーホール上に配置されると、パワーモジュールの信号ピンを前記スルーホールに挿入できず、結果として組付け精度が低下するという不都合が生じる。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した課題を解消することにあり、電磁シールド板を電子回路基板の所望の位置に固定すると共に、パワーモジュールの信号ピンを電子回路基板に確実に接続し、よって組付け精度を向上させるようにしたパワードライブユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、電子回路基板と、前記電子回路基板に接続される信号ピンを有するパワーモジュールと、前記電子回路基板と前記パワーモジュールの間に介挿される電磁シールド板とを少なくとも備えるパワードライブユニットにおいて、前記電磁シールド板を前記電子回路基板に固定する固定部材を備えると共に、前記固定部材に前記信号ピンの案内部を穿設するように構成した。
【0007】
請求項2にあっては、前記固定部材に弾性変形可能なスナップフィットを形成すると共に、前記電子回路基板に前記スナップフィットの係止孔を穿設するように構成した。
【0008】
請求項3にあっては、前記固定部材に位置決めピンを形成すると共に、前記電子回路基板に前記位置決めピンの挿通孔を穿設するように構成した。
【0009】
請求項4にあっては、前記固定部材は平面視略三角形状を呈するように構成した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係るパワードライブユニットにあっては、電磁シールド板を電子回路基板に固定する固定部材を備えると共に、固定部材に信号ピンの案内部を穿設するように構成したので、電磁シールド板を電子回路基板の所望の位置に固定できると共に、パワーモジュールの信号ピンを固定部材の案内部を挿通させることで電子回路基板に確実に接続でき、よって組付け精度を向上させることができる。また、電磁シールド板を固定部材で電子回路基板に固定するように構成したので、ビスで固定する従来技術に比して組立て工数を削減することが可能になる。
【0011】
請求項2に係るパワードライブユニットにあっては、固定部材に弾性変形可能なスナップフィットを形成すると共に、電子回路基板にスナップフィットの係止孔を穿設するように構成したので、上記した効果に加え、電磁シールド板を電子回路基板に簡易に固定することができる。
【0012】
請求項3に係るパワードライブユニットにあっては、固定部材に位置決めピンを形成すると共に、電子回路基板に位置決めピンの挿通孔を穿設するように構成したので、上記した効果に加え、電磁シールド板を電子回路基板の所望の位置に確実に固定でき、組付け精度をより一層向上させることができる。
【0013】
請求項4に係るパワードライブユニットにあっては、固定部材は平面視略三角形状を呈するように構成したので、上記した効果に加え、例えば固定部材が平面視略L字状を呈する場合に比して変形し難くなる、即ち、外力が作用したときの固定部材の変形量を低下させ、寸法安定性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に即してこの発明に係るパワードライブユニットを実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、この発明の実施例に係るパワードライブユニットを含む、ハイブリッド車両の制御装置を全体的に示す概略図である。
【0016】
図1において、符号10は内燃機関(以下「エンジン」という)を示す。エンジン10は、ガソリンを燃料とする噴射型火花点火式4気筒エンジンである。エンジン10の出力は駆動軸12を介して変速機構14に入力される。変速機構14は自動変速機からなり、エンジン10が搭載されるハイブリッド車両(図示せず)の駆動輪16に接続されてエンジン出力を変速し、駆動輪16に伝達してハイブリッド車両を走行させる。
【0017】
駆動軸12には、エンジン10と変速機構14の間においてモータ(電動機)20が連結される。モータ20はエンジン10が回転するとき常に回転し、始動時には通電されてエンジン10をクランキングして始動させると共に、加速時などにも通電されてエンジン10の回転をアシスト(増速)する。モータ20は通電されないときはエンジン10の回転に伴って空転すると共に、エンジン10への燃料供給が停止(フューエルカット)される減速時には駆動軸12の回転によって生じた運動エネルギを電気エネルギに変換して出力する回生機能を有する、即ち、モータ20は発電機(ジェネレータ)として機能する。
【0018】
モータ20は、パワードライブユニット(以下「PDU」という)22を介してバッテリ24に接続される。モータ20はブラシレスDCモータ、より具体的には交流同期電動機からなる。PDU22は、後述する如くパワーモジュール(3相インバータ回路)を備え、バッテリ24から供給(放電)される直流(電力)をモータ20のU,V,W相からなる3相コイルに供給すると共に、モータ20の回生動作によって発電された電力をバッテリ24に供給する(バッテリ24を充電する)。このように、図示のハイブリッド車両にあっては、PDU22を介してモータ20の駆動・回生が制御される。尚、バッテリ24は、ニッケル水素(Ni−MH)電池を適宜個数直列接続してなる。
【0019】
また、ハイブリッド車両には、エンジン10の動作を制御するエンジン制御ユニット(「ENGECU」という)26、モータ20の動作を制御するモータ制御ユニット(「MOTECU」という)30、およびバッテリ24の充電状態SOC(State Of Charge)を算出して充放電の管理などを行うバッテリ制御ユニット(「BATECU」という)32、ならびに変速機構14の動作を制御する変速制御ユニット(「T/MECU」という)34が設けられる。上記したENGECU26などのECU(Electronic Control Unit。電子制御ユニット)は全てマイクロコンピュータからなり、バス36を介して相互に通信自在に接続される。
【0020】
次いで、この実施例に係るPDU22について説明する。図2は、PDU22を全体的に示す分解斜視図である。
【0021】
PDU22は、MOTECU30などを構成する1枚の電子回路基板(以下単に「基板」という)40と、基板40に接続される信号ピン42を有する複数個(6個)のパワーモジュール44と、基板40とパワーモジュール44の間に介挿される1枚の電磁シールド板46と、電磁シールド板46を基板40に固定する固定部材50と、パワーモジュール44などが取り付けられるヒートシンク52と、基板40、パワーモジュール44、電磁シールド板46および固定部材50などを収容するケース54とを備える。尚、PDU22は、電流センサや平滑コンデンサなども備えるが、それらは本願の要旨と直接の関係を有しないので、図示および説明を省略する。また、図2において、基板に搭載される電子部品(例えばコネクタ)、およびスルーホール(後述)などは図示の簡略化のため省略する。
【0022】
以下、PDU22を構成する各要素について説明すると、6個のパワーモジュール44は、3相のインバータ回路を形成するためのIGBT(Insulated-Gate Bipolar Transistor(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)。図示せず)をそれぞれ備え、3相インバータ回路モジュールとして構成される。より詳しくは、ハイサイドスイッチ(スイッチング素子)を有するパワーモジュールと、ローサイドスイッチ(スイッチング素子)を有するパワーモジュールが直列接続されて単相のインバータ回路を形成し、単相のインバータ回路が3組並列接続されることで、6個のパワーモジュール44は3相インバータ回路モジュールとして構成される。
【0023】
パワーモジュール44には、複数本(6本)の信号ピン42が上方(具体的には、基板40が配置される方向)に向けて延びるように取り付けられる。6本の信号ピン42は、図示の如く、3本、2本、1本に分けられ、それぞれ離間して配置させられる。以下の説明では、分けられた信号ピンを特に区別する場合、3本の信号ピンを「第1の信号ピン42a」、2本の信号ピンを「第2の信号ピン42b」、1本の信号ピンを「第3の信号ピン42c」という。尚、この明細書において、上方や下方、上面、下面などの上下関係を示す記載は、PDU22においてケース54側を上、ヒートシンク52側を下とするときの上下関係を表すものとする。
【0024】
ヒートシンク52は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性を有する材質からなると共に、その下面52aには冷却フィン56が複数本形成される。これにより、例えばパワーモジュール44などで生じた熱はヒートシンク52の冷却フィン56に伝達され、放熱させられる。また、ヒートシンク52の上面(パワーモジュール44が取り付けられる面)52bの四隅には、ボルト穴58が穿設される。
【0025】
固定部材50は樹脂材から製作されると共に、パワーモジュール44と電磁シールド板46の間に複数個(6個。正確にはパワーモジュール44と同数)介挿される。即ち、1個のパワーモジュール44に対して1個の固定部材50を備える。
【0026】
図3は図2に示す6個の固定部材50の内の一つを拡大して表す拡大斜視図であり、図4は図3に示す固定部材50を紙面裏側から見たときの拡大斜視図である。また、図5は図3のV−V線断面図であり、図6はVI−VI線断面図、図7はVII−VII線断面図である。
【0027】
図3,4に良く示す如く、固定部材50は平面視略三角形状(正確には略直角三角形状)を呈すると共に、その中心部分には、同様に平面視において略三角形状(略直角三角形状)を呈する空間60が形成される。また、固定部材50は、パワーモジュール44の信号ピン42を案内する案内部62と、複数個(2個)の弾性変形可能なスナップフィット64と、基板40や電磁シールド板46に対して位置決めする位置決めピン66と、電磁シールド板46を押圧する第1のボス70と、基板40を押圧する第2のボス72を備える。
【0028】
案内部62は、固定部材50であって前記略三角形状の頂点部分、正確には固定部材50にパワーモジュール44を組付けたときの信号ピン42の位置に対応する部位に複数個(6個)穿設される。以下の説明においては、6個の案内部62を特に区別する場合、第1の信号ピン42aに対応する案内部を「第1の案内部62a」、第2の信号ピン42bに対応するものを「第2の案内部62b」、第3の信号ピン42cに対応するものを「第3の案内部62c」という。
【0029】
案内部62は略四角錘状を呈するように形成、正確には、固定部材50の上面50a側において平面視略円形状となる一方、下面50b側において略四角形状となるように形成されると共に、その傾斜角α(図5に示す)は例えば13度とされる。案内部62においては、後述する如く、信号ピン42が下方から上方に向けて挿通させられるため、前記四角形状の部位を「入口部62d」、前記円形状の部位を「出口部62e」という。
【0030】
入口部62dを円形状ではなく四角形状としたのは、信号ピン42の挿入可能な領域をできるだけ広範囲にする(即ち、信号ピン42の位置ズレを許容できる範囲を広げる)ためである。出口部62eの直径(図5に符号d1で示す)は、信号ピン42の直径に比して大きく、かつ基板40のスルーホールの孔径に比して小さい値、例えば1.0mmとされる。
【0031】
2個のスナップフィット64は、空間60の中央付近に位置させられるようにそれぞれ固定部材50の下面50bから連続して形成される。スナップフィット64の爪部64aは、図7に良く示すように、固定部材50の上面50aより上方に位置させられる。
【0032】
位置決めピン66は、固定部材50の上面50aに複数本(2本)形成(突設)される。具体的には、固定部材50の第3の案内部62cの近傍に第1の位置決めピン66aが突設されると共に、第1の案内部62aと第2の案内部62bの間に第2の位置決めピン66bが突設される。第1、第2の位置決めピン66a,66bは共に、図5,6に示すように、先端に向けて縮径される、即ち、先端部(上端部)が円錐台状を呈するように形成される。また、図7などから分かるように、上面50aから位置決めピン66の先端までの距離は、前記スナップフィット64の先端までのそれに比して長くなるように設定される。
【0033】
第1のボス70は、固定部材50の上面50aであって前記スナップフィット64の近傍(スナップフィット64を挟むような位置)に複数個(2個)配置される。第2のボス72は、固定部材50の上面50aであって第1から第3の案内部62a〜62cの近傍に1個ずつ、計3個配置される。第1のボス70と第2のボス72は共に円柱状を呈すると共に、図6に示すように、第1のボス70の高さh1は第2のボス72の高さh2に比して小さな値に設定される。また、高さh1とh2の差は、例えば電磁シールド板46の厚さ(板厚)と略同一の値とされる。
【0034】
図8は、図2に示す電磁シールド板46の平面図である。
【0035】
図8に示す如く、電磁シールド板46には、パワーモジュール44の信号ピン42や固定部材50のスナップフィット64などが挿通されるべき挿通孔(あるいは切り欠き部)が複数個形成される。具体的に説明すると、電磁シールド板46において、基板40に固定部材50を組付けたときのスナップフィット64の位置に対応する部位には、爪部64aが挿通自在なスナップフィット用挿通孔74が複数個(6個)穿設される。
【0036】
また、電磁シールド板46において固定部材50の第3の案内部62cと第2のボス72の位置に対応する部位には、案内部62cから延びる信号ピン42cと第2のボス72が挿通自在な信号ピン用挿通孔76が複数個(6個)穿設される。
【0037】
さらに、電磁シールド板46において固定部材50の第1の位置決めピン66aの位置に対応する部位には、位置決めピン66aが挿通自在な位置決めピン用挿通孔80が複数個(6個)穿設される。位置決めピン用挿通孔80の形状は、図示の如く3種類ある。即ち、電磁シールド板46の紙面右上に穿設される位置決めピン用挿通孔80(符号80aで示す)は、平面視楕円形状を呈する長孔である。また、電磁シールド板46の紙面左下の位置決めピン用挿通孔80bは平面視円形状を呈する丸孔とされると共に、紙面中央の4個の位置決めピン用挿通孔80cは、他の位置決めピン用挿通孔80a,80bに比して大きな丸孔とされる。
【0038】
電磁シールド板46において固定部材50の第1、第2の案内部62a,62bと第2のボス72と第2の位置決めピン66bの位置に対応する部位には、切り欠き部82が複数個(6個)形成される。
【0039】
図9は、図2に示す基板40の平面図である。
【0040】
図9に示すように、基板40には、パワーモジュール44の信号ピン42が挿通されるスルーホール84が形成される。より詳しくは、第1の信号ピン42aが挿通される第1のスルーホール84aが18個(3個×パワーモジュールの個数(6個))、第2の信号ピン42bが挿通される第2のスルーホール84bが12個(2×6)、第3の信号ピン42cが挿通される第3のスルーホール84cが6個(1×6)形成される。
【0041】
また、基板40において固定部材50のスナップフィット64の位置に対応する部位には、係止孔86が複数個(6個)穿設される。基板40において、固定部材50の第1の位置決めピン66aの位置に対応する部位には、位置決めピン66aが挿通自在な第1の挿通孔(挿通孔)90が、第2の位置決めピン66bの位置に対応する部位には、位置決めピン66bが挿通自在な第2の挿通孔(挿通孔)92がそれぞれ複数個(6個)穿設される。第1の挿通孔90は、前記位置決めピン用挿通孔80aと同様、平面視楕円形状を呈する長孔とされる一方、第2の位置決めピン66bは、前記位置決めピン用挿通孔80bと同様、平面視円形状を呈する丸孔とされる。
【0042】
図2の説明に戻ると、ケース54は、その内部にパワーモジュール44などを収容自在な形状とされ、フランジ部の四隅には前記ボルト穴58に対応する取り付け孔94が穿設される。
【0043】
次いで、上記の如く構成されたPDU22の組付け(組立て)について説明する。
【0044】
図10は基板40に電磁シールド板46と固定部材50が取り付けられた状態を示す平面透視図であり、図11はその部分拡大平面透視図である。また、図12は図10に示す基板40にパワーモジュール44が接続された状態を示す部分側面図であり、図13は図12の部分透視斜視図である。尚、図13の透視図においては、基板40を想像線で示し、他の部材を実線で示す。
【0045】
先ず基板40と固定部材50の間に電磁シールド板46を介挿し、固定部材50を基板40に取り付けることで、電磁シールド板46を挟持しつつ基板40の裏面に固定する。以下、具体的に説明すると、図10に示すように、電磁シールド板46を基板40に対して所望する位置に配置させる。より具体的には、スナップフィット用挿通孔74が係止孔86付近に、信号ピン用挿通孔76がスルーホール84c付近に、位置決めピン用挿通孔80が挿通孔90付近に、切り欠き部82がスルーホール84a,84bと挿通孔92付近になるように、電磁シールド板46を配置させる。尚、図10においては、基板40と電磁シールド板46の位置関係が明確になるように、紙面左上の固定部材50を省略する。
【0046】
次いで、図11などに良く示す如く、固定部材50の位置決めピン66aを位置決めピン用挿通孔80(80a,b,c)を介して挿通孔90に挿通させると共に、位置決めピン66bを切り欠き部82を介して挿通孔92に挿通させる。これにより、固定部材50と電磁シールド板46が基板40に対して所望する位置に位置決めされる。
【0047】
このとき、位置決めピン用挿通孔80aを長孔となるように構成したので、その公差を比較的緩く設定することができると共に、位置決めピン用挿通孔80bを丸孔としたので、電磁シールド板46を基板40に対する所望の位置に制度良く位置決めすることができる。即ち、位置決めピン用挿通孔80bを電磁シールド板46が基板40に対して位置決めされるときの正基準孔、位置決めピン用挿通孔80aを副基準孔として機能させるようにした。同様に、挿通孔90を長孔としたので、その公差を比較的緩く設定できると共に、挿通孔92を丸孔としたので、固定部材50を基板40に対する所望の位置に確実に位置決めすることができる。このように、挿通孔92を固定部材50が基板40に対して位置決めされる際の正基準孔、挿通孔90を副基準孔として機能させる。
【0048】
固定部材50のスナップフィット64をスナップフィット用挿通孔74に挿通させた後、係止孔86に係止させる。この状態において、第1のボス70は電磁シールド板46に当接され、電磁シールド板46を基板40の方向に向けて押圧する(押し付ける)。さらに、第2のボス72は信号ピン用挿通孔76あるいは切り欠き部82を挿通させられた後、基板40に当接され、それによって固定部材50と基板40の位置関係を平行に保持する。上記の如く固定部材50を基板40に取り付けることで、電磁シールド板46を固定部材50で挟持しつつ基板40の裏面に確実に固定する。
【0049】
次いで、固定部材50によって電磁シールド板46が固定された基板40を、パワーモジュール44に接続する。具体的には、図12および13に示す如く、パワーモジュール44の信号ピン42を、固定部材50の案内部62に挿通、正確には、案内部62の入口部62dから挿通させる。案内部62は、前述したように略四角錘状を呈するように形成されるため、信号ピン42は紙面左右方向の移動が徐々に規制されつつ出口部62eに到達させられる。
【0050】
その後信号ピン42を信号ピン用挿通孔76あるいは切り欠き部82を介してスルーホール84に挿通させ、半田付けして基板40をパワーモジュール44に電気的に接続する。このとき、案内部62の出口部62eの直径d1は、前記したようにスルーホール84の孔径に比して小さい値とされるため、例えば固定部材50が基板40のスルーホール84に対して僅かに位置ズレした状態であっても、信号ピン42をスルーホール84に挿通させることができる。
【0051】
このようにして基板40が組付けられたパワーモジュール44を、ヒートシンク52の適宜位置に固定すると共に、取り付け孔94とボルト穴58に図示しないボルトを挿通させることによってケース54をヒートシンク52に取り付け、PDU22が完成する。
【0052】
以上の如く、この発明の実施例にあっては、電子回路基板(基板)40と、前記電子回路基板に接続される信号ピン42(第1から第3の信号ピン42a,42b,42c)を有するパワーモジュール44と、前記電子回路基板と前記パワーモジュールの間に介挿される電磁シールド板46とを少なくとも備えるパワードライブユニット22において、前記電磁シールド板を前記電子回路基板に固定する固定部材50を備えると共に、前記固定部材に前記信号ピンの案内部62(第1から第3の案内部62a,62b,62c)を穿設するように構成した。
【0053】
これにより、電磁シールド板46を電子回路基板40の所望の位置に固定できると共に、パワーモジュール44の信号ピン42を固定部材の案内部62を挿通させることで電子回路基板40に確実に接続でき、よって組付け精度を向上させることができる。また、電磁シールド板46を固定部材50で電子回路基板40に固定するように構成したので、ビスで固定する従来技術に比して組立て工数を削減することが可能になる。
【0054】
また、前記固定部材に弾性変形可能なスナップフィット64を形成すると共に、前記電子回路基板に前記スナップフィットの係止孔86を穿設するように構成した。これにより、電磁シールド板46を電子回路基板40に簡易に固定することができる。
【0055】
また、前記固定部材に位置決めピン66(第1、第2の位置決めピン66a,66b)を形成すると共に、前記電子回路基板に前記位置決めピンの挿通孔90,92を穿設するように構成した。これにより、電磁シールド板46を電子回路基板40の所望の位置に確実に固定でき、組付け精度をより一層向上させることができる。
【0056】
また、前記固定部材50は平面視略三角形状を呈するように構成した。これにより、例えば固定部材が平面視略L字状を呈する場合に比して変形し難くなる、即ち、外力が作用したときの固定部材の変形量を低下させ、寸法安定性を確保することができる。
【0057】
尚、上記において、パワードライブユニット22をハイブリッド車両に搭載される例で説明をしたが、この発明に係るパワードライブユニット22は、電気自動車にも適用可能である。
【0058】
また、固定部材50を平面視略三角形状を呈するように構成したが、パワーモジュールの形状や信号ピンの本数、あるいはパワーモジュールを複数個配置した際の位置関係などによって、例えば平面視四角形状などの最適な形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の実施例に係るパワードライブユニットを含む、ハイブリッド車両の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示すパワードライブユニットを全体的に示す分解斜視図である。
【図3】図2に示す固定部材を拡大して表す拡大斜視図である。
【図4】図3に示す固定部材を紙面裏側から見たときの拡大斜視図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】図2に示す電磁シールド板の平面図である。
【図9】図2に示す基板の平面図である。
【図10】図2に示す基板に電磁シールド板と固定部材が取り付けられた状態を示す平面透視図である。
【図11】図10の部分拡大平面透視図である。
【図12】図10に示す基板にパワーモジュールが接続された状態を示す部分側面図である。
【図13】図12の部分透視斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
22 パワードライブユニット(PDU)、40 電子回路基板(基板)、42 信号ピン、44 パワーモジュール、46 電磁シールド板、50 固定部材、62 案内部、64 スナップフィット、66 位置決めピン、86 係止孔、90,92 挿通孔
【技術分野】
【0001】
この発明はパワードライブユニットに関し、より具体的には、電子回路基板と、電子回路基板に接続される信号ピンを有するパワーモジュールと、電子回路基板とパワーモジュールの間に介挿される電磁シールド板とを少なくとも備えたパワードライブユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、内燃機関、電動機およびバッテリなどを搭載したハイブリッド車両が提案されている。かかるハイブリッド車両においては、車両の走行状態(高速時、低速時など)に応じて内燃機関と電動機を制御し、走行するようにしている。このようなハイブリッド車両における電動機は例えばブラシレスDCモータからなり、バッテリから出力される直流電流をパワードライブユニット(PDU(Power Drive Unit))、より正確にはパワードライブユニット内のパワーモジュールを介してステータのU相、V相、W相からなる3相コイルに送ることで駆動している。
【0003】
パワードライブユニットの例としては、下記の特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術にあっては、電子回路基板とパワーモジュール(電力用スイッチング半導体素子)の間に電磁シールド板を介挿することで、電子回路基板がパワーモジュールからの電磁波による影響を受けないように構成される。
【特許文献1】特開2002−76257号公報(段落0027,0028、図2など)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術にあっては、電磁シールド板が単にビスで電子回路基板に固定される構成であるため、電磁シールド板が電子回路基板に対して所望する位置に配置されない、換言すれば、位置ズレが生じるおそれがある。従って、例えば電磁シールド板が位置ズレして電子回路基板のスルーホール上に配置されると、パワーモジュールの信号ピンを前記スルーホールに挿入できず、結果として組付け精度が低下するという不都合が生じる。
【0005】
従って、この発明の目的は上記した課題を解消することにあり、電磁シールド板を電子回路基板の所望の位置に固定すると共に、パワーモジュールの信号ピンを電子回路基板に確実に接続し、よって組付け精度を向上させるようにしたパワードライブユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、請求項1にあっては、電子回路基板と、前記電子回路基板に接続される信号ピンを有するパワーモジュールと、前記電子回路基板と前記パワーモジュールの間に介挿される電磁シールド板とを少なくとも備えるパワードライブユニットにおいて、前記電磁シールド板を前記電子回路基板に固定する固定部材を備えると共に、前記固定部材に前記信号ピンの案内部を穿設するように構成した。
【0007】
請求項2にあっては、前記固定部材に弾性変形可能なスナップフィットを形成すると共に、前記電子回路基板に前記スナップフィットの係止孔を穿設するように構成した。
【0008】
請求項3にあっては、前記固定部材に位置決めピンを形成すると共に、前記電子回路基板に前記位置決めピンの挿通孔を穿設するように構成した。
【0009】
請求項4にあっては、前記固定部材は平面視略三角形状を呈するように構成した。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係るパワードライブユニットにあっては、電磁シールド板を電子回路基板に固定する固定部材を備えると共に、固定部材に信号ピンの案内部を穿設するように構成したので、電磁シールド板を電子回路基板の所望の位置に固定できると共に、パワーモジュールの信号ピンを固定部材の案内部を挿通させることで電子回路基板に確実に接続でき、よって組付け精度を向上させることができる。また、電磁シールド板を固定部材で電子回路基板に固定するように構成したので、ビスで固定する従来技術に比して組立て工数を削減することが可能になる。
【0011】
請求項2に係るパワードライブユニットにあっては、固定部材に弾性変形可能なスナップフィットを形成すると共に、電子回路基板にスナップフィットの係止孔を穿設するように構成したので、上記した効果に加え、電磁シールド板を電子回路基板に簡易に固定することができる。
【0012】
請求項3に係るパワードライブユニットにあっては、固定部材に位置決めピンを形成すると共に、電子回路基板に位置決めピンの挿通孔を穿設するように構成したので、上記した効果に加え、電磁シールド板を電子回路基板の所望の位置に確実に固定でき、組付け精度をより一層向上させることができる。
【0013】
請求項4に係るパワードライブユニットにあっては、固定部材は平面視略三角形状を呈するように構成したので、上記した効果に加え、例えば固定部材が平面視略L字状を呈する場合に比して変形し難くなる、即ち、外力が作用したときの固定部材の変形量を低下させ、寸法安定性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に即してこの発明に係るパワードライブユニットを実施するための最良の形態について説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、この発明の実施例に係るパワードライブユニットを含む、ハイブリッド車両の制御装置を全体的に示す概略図である。
【0016】
図1において、符号10は内燃機関(以下「エンジン」という)を示す。エンジン10は、ガソリンを燃料とする噴射型火花点火式4気筒エンジンである。エンジン10の出力は駆動軸12を介して変速機構14に入力される。変速機構14は自動変速機からなり、エンジン10が搭載されるハイブリッド車両(図示せず)の駆動輪16に接続されてエンジン出力を変速し、駆動輪16に伝達してハイブリッド車両を走行させる。
【0017】
駆動軸12には、エンジン10と変速機構14の間においてモータ(電動機)20が連結される。モータ20はエンジン10が回転するとき常に回転し、始動時には通電されてエンジン10をクランキングして始動させると共に、加速時などにも通電されてエンジン10の回転をアシスト(増速)する。モータ20は通電されないときはエンジン10の回転に伴って空転すると共に、エンジン10への燃料供給が停止(フューエルカット)される減速時には駆動軸12の回転によって生じた運動エネルギを電気エネルギに変換して出力する回生機能を有する、即ち、モータ20は発電機(ジェネレータ)として機能する。
【0018】
モータ20は、パワードライブユニット(以下「PDU」という)22を介してバッテリ24に接続される。モータ20はブラシレスDCモータ、より具体的には交流同期電動機からなる。PDU22は、後述する如くパワーモジュール(3相インバータ回路)を備え、バッテリ24から供給(放電)される直流(電力)をモータ20のU,V,W相からなる3相コイルに供給すると共に、モータ20の回生動作によって発電された電力をバッテリ24に供給する(バッテリ24を充電する)。このように、図示のハイブリッド車両にあっては、PDU22を介してモータ20の駆動・回生が制御される。尚、バッテリ24は、ニッケル水素(Ni−MH)電池を適宜個数直列接続してなる。
【0019】
また、ハイブリッド車両には、エンジン10の動作を制御するエンジン制御ユニット(「ENGECU」という)26、モータ20の動作を制御するモータ制御ユニット(「MOTECU」という)30、およびバッテリ24の充電状態SOC(State Of Charge)を算出して充放電の管理などを行うバッテリ制御ユニット(「BATECU」という)32、ならびに変速機構14の動作を制御する変速制御ユニット(「T/MECU」という)34が設けられる。上記したENGECU26などのECU(Electronic Control Unit。電子制御ユニット)は全てマイクロコンピュータからなり、バス36を介して相互に通信自在に接続される。
【0020】
次いで、この実施例に係るPDU22について説明する。図2は、PDU22を全体的に示す分解斜視図である。
【0021】
PDU22は、MOTECU30などを構成する1枚の電子回路基板(以下単に「基板」という)40と、基板40に接続される信号ピン42を有する複数個(6個)のパワーモジュール44と、基板40とパワーモジュール44の間に介挿される1枚の電磁シールド板46と、電磁シールド板46を基板40に固定する固定部材50と、パワーモジュール44などが取り付けられるヒートシンク52と、基板40、パワーモジュール44、電磁シールド板46および固定部材50などを収容するケース54とを備える。尚、PDU22は、電流センサや平滑コンデンサなども備えるが、それらは本願の要旨と直接の関係を有しないので、図示および説明を省略する。また、図2において、基板に搭載される電子部品(例えばコネクタ)、およびスルーホール(後述)などは図示の簡略化のため省略する。
【0022】
以下、PDU22を構成する各要素について説明すると、6個のパワーモジュール44は、3相のインバータ回路を形成するためのIGBT(Insulated-Gate Bipolar Transistor(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)。図示せず)をそれぞれ備え、3相インバータ回路モジュールとして構成される。より詳しくは、ハイサイドスイッチ(スイッチング素子)を有するパワーモジュールと、ローサイドスイッチ(スイッチング素子)を有するパワーモジュールが直列接続されて単相のインバータ回路を形成し、単相のインバータ回路が3組並列接続されることで、6個のパワーモジュール44は3相インバータ回路モジュールとして構成される。
【0023】
パワーモジュール44には、複数本(6本)の信号ピン42が上方(具体的には、基板40が配置される方向)に向けて延びるように取り付けられる。6本の信号ピン42は、図示の如く、3本、2本、1本に分けられ、それぞれ離間して配置させられる。以下の説明では、分けられた信号ピンを特に区別する場合、3本の信号ピンを「第1の信号ピン42a」、2本の信号ピンを「第2の信号ピン42b」、1本の信号ピンを「第3の信号ピン42c」という。尚、この明細書において、上方や下方、上面、下面などの上下関係を示す記載は、PDU22においてケース54側を上、ヒートシンク52側を下とするときの上下関係を表すものとする。
【0024】
ヒートシンク52は、例えばアルミニウムなどの熱伝導性を有する材質からなると共に、その下面52aには冷却フィン56が複数本形成される。これにより、例えばパワーモジュール44などで生じた熱はヒートシンク52の冷却フィン56に伝達され、放熱させられる。また、ヒートシンク52の上面(パワーモジュール44が取り付けられる面)52bの四隅には、ボルト穴58が穿設される。
【0025】
固定部材50は樹脂材から製作されると共に、パワーモジュール44と電磁シールド板46の間に複数個(6個。正確にはパワーモジュール44と同数)介挿される。即ち、1個のパワーモジュール44に対して1個の固定部材50を備える。
【0026】
図3は図2に示す6個の固定部材50の内の一つを拡大して表す拡大斜視図であり、図4は図3に示す固定部材50を紙面裏側から見たときの拡大斜視図である。また、図5は図3のV−V線断面図であり、図6はVI−VI線断面図、図7はVII−VII線断面図である。
【0027】
図3,4に良く示す如く、固定部材50は平面視略三角形状(正確には略直角三角形状)を呈すると共に、その中心部分には、同様に平面視において略三角形状(略直角三角形状)を呈する空間60が形成される。また、固定部材50は、パワーモジュール44の信号ピン42を案内する案内部62と、複数個(2個)の弾性変形可能なスナップフィット64と、基板40や電磁シールド板46に対して位置決めする位置決めピン66と、電磁シールド板46を押圧する第1のボス70と、基板40を押圧する第2のボス72を備える。
【0028】
案内部62は、固定部材50であって前記略三角形状の頂点部分、正確には固定部材50にパワーモジュール44を組付けたときの信号ピン42の位置に対応する部位に複数個(6個)穿設される。以下の説明においては、6個の案内部62を特に区別する場合、第1の信号ピン42aに対応する案内部を「第1の案内部62a」、第2の信号ピン42bに対応するものを「第2の案内部62b」、第3の信号ピン42cに対応するものを「第3の案内部62c」という。
【0029】
案内部62は略四角錘状を呈するように形成、正確には、固定部材50の上面50a側において平面視略円形状となる一方、下面50b側において略四角形状となるように形成されると共に、その傾斜角α(図5に示す)は例えば13度とされる。案内部62においては、後述する如く、信号ピン42が下方から上方に向けて挿通させられるため、前記四角形状の部位を「入口部62d」、前記円形状の部位を「出口部62e」という。
【0030】
入口部62dを円形状ではなく四角形状としたのは、信号ピン42の挿入可能な領域をできるだけ広範囲にする(即ち、信号ピン42の位置ズレを許容できる範囲を広げる)ためである。出口部62eの直径(図5に符号d1で示す)は、信号ピン42の直径に比して大きく、かつ基板40のスルーホールの孔径に比して小さい値、例えば1.0mmとされる。
【0031】
2個のスナップフィット64は、空間60の中央付近に位置させられるようにそれぞれ固定部材50の下面50bから連続して形成される。スナップフィット64の爪部64aは、図7に良く示すように、固定部材50の上面50aより上方に位置させられる。
【0032】
位置決めピン66は、固定部材50の上面50aに複数本(2本)形成(突設)される。具体的には、固定部材50の第3の案内部62cの近傍に第1の位置決めピン66aが突設されると共に、第1の案内部62aと第2の案内部62bの間に第2の位置決めピン66bが突設される。第1、第2の位置決めピン66a,66bは共に、図5,6に示すように、先端に向けて縮径される、即ち、先端部(上端部)が円錐台状を呈するように形成される。また、図7などから分かるように、上面50aから位置決めピン66の先端までの距離は、前記スナップフィット64の先端までのそれに比して長くなるように設定される。
【0033】
第1のボス70は、固定部材50の上面50aであって前記スナップフィット64の近傍(スナップフィット64を挟むような位置)に複数個(2個)配置される。第2のボス72は、固定部材50の上面50aであって第1から第3の案内部62a〜62cの近傍に1個ずつ、計3個配置される。第1のボス70と第2のボス72は共に円柱状を呈すると共に、図6に示すように、第1のボス70の高さh1は第2のボス72の高さh2に比して小さな値に設定される。また、高さh1とh2の差は、例えば電磁シールド板46の厚さ(板厚)と略同一の値とされる。
【0034】
図8は、図2に示す電磁シールド板46の平面図である。
【0035】
図8に示す如く、電磁シールド板46には、パワーモジュール44の信号ピン42や固定部材50のスナップフィット64などが挿通されるべき挿通孔(あるいは切り欠き部)が複数個形成される。具体的に説明すると、電磁シールド板46において、基板40に固定部材50を組付けたときのスナップフィット64の位置に対応する部位には、爪部64aが挿通自在なスナップフィット用挿通孔74が複数個(6個)穿設される。
【0036】
また、電磁シールド板46において固定部材50の第3の案内部62cと第2のボス72の位置に対応する部位には、案内部62cから延びる信号ピン42cと第2のボス72が挿通自在な信号ピン用挿通孔76が複数個(6個)穿設される。
【0037】
さらに、電磁シールド板46において固定部材50の第1の位置決めピン66aの位置に対応する部位には、位置決めピン66aが挿通自在な位置決めピン用挿通孔80が複数個(6個)穿設される。位置決めピン用挿通孔80の形状は、図示の如く3種類ある。即ち、電磁シールド板46の紙面右上に穿設される位置決めピン用挿通孔80(符号80aで示す)は、平面視楕円形状を呈する長孔である。また、電磁シールド板46の紙面左下の位置決めピン用挿通孔80bは平面視円形状を呈する丸孔とされると共に、紙面中央の4個の位置決めピン用挿通孔80cは、他の位置決めピン用挿通孔80a,80bに比して大きな丸孔とされる。
【0038】
電磁シールド板46において固定部材50の第1、第2の案内部62a,62bと第2のボス72と第2の位置決めピン66bの位置に対応する部位には、切り欠き部82が複数個(6個)形成される。
【0039】
図9は、図2に示す基板40の平面図である。
【0040】
図9に示すように、基板40には、パワーモジュール44の信号ピン42が挿通されるスルーホール84が形成される。より詳しくは、第1の信号ピン42aが挿通される第1のスルーホール84aが18個(3個×パワーモジュールの個数(6個))、第2の信号ピン42bが挿通される第2のスルーホール84bが12個(2×6)、第3の信号ピン42cが挿通される第3のスルーホール84cが6個(1×6)形成される。
【0041】
また、基板40において固定部材50のスナップフィット64の位置に対応する部位には、係止孔86が複数個(6個)穿設される。基板40において、固定部材50の第1の位置決めピン66aの位置に対応する部位には、位置決めピン66aが挿通自在な第1の挿通孔(挿通孔)90が、第2の位置決めピン66bの位置に対応する部位には、位置決めピン66bが挿通自在な第2の挿通孔(挿通孔)92がそれぞれ複数個(6個)穿設される。第1の挿通孔90は、前記位置決めピン用挿通孔80aと同様、平面視楕円形状を呈する長孔とされる一方、第2の位置決めピン66bは、前記位置決めピン用挿通孔80bと同様、平面視円形状を呈する丸孔とされる。
【0042】
図2の説明に戻ると、ケース54は、その内部にパワーモジュール44などを収容自在な形状とされ、フランジ部の四隅には前記ボルト穴58に対応する取り付け孔94が穿設される。
【0043】
次いで、上記の如く構成されたPDU22の組付け(組立て)について説明する。
【0044】
図10は基板40に電磁シールド板46と固定部材50が取り付けられた状態を示す平面透視図であり、図11はその部分拡大平面透視図である。また、図12は図10に示す基板40にパワーモジュール44が接続された状態を示す部分側面図であり、図13は図12の部分透視斜視図である。尚、図13の透視図においては、基板40を想像線で示し、他の部材を実線で示す。
【0045】
先ず基板40と固定部材50の間に電磁シールド板46を介挿し、固定部材50を基板40に取り付けることで、電磁シールド板46を挟持しつつ基板40の裏面に固定する。以下、具体的に説明すると、図10に示すように、電磁シールド板46を基板40に対して所望する位置に配置させる。より具体的には、スナップフィット用挿通孔74が係止孔86付近に、信号ピン用挿通孔76がスルーホール84c付近に、位置決めピン用挿通孔80が挿通孔90付近に、切り欠き部82がスルーホール84a,84bと挿通孔92付近になるように、電磁シールド板46を配置させる。尚、図10においては、基板40と電磁シールド板46の位置関係が明確になるように、紙面左上の固定部材50を省略する。
【0046】
次いで、図11などに良く示す如く、固定部材50の位置決めピン66aを位置決めピン用挿通孔80(80a,b,c)を介して挿通孔90に挿通させると共に、位置決めピン66bを切り欠き部82を介して挿通孔92に挿通させる。これにより、固定部材50と電磁シールド板46が基板40に対して所望する位置に位置決めされる。
【0047】
このとき、位置決めピン用挿通孔80aを長孔となるように構成したので、その公差を比較的緩く設定することができると共に、位置決めピン用挿通孔80bを丸孔としたので、電磁シールド板46を基板40に対する所望の位置に制度良く位置決めすることができる。即ち、位置決めピン用挿通孔80bを電磁シールド板46が基板40に対して位置決めされるときの正基準孔、位置決めピン用挿通孔80aを副基準孔として機能させるようにした。同様に、挿通孔90を長孔としたので、その公差を比較的緩く設定できると共に、挿通孔92を丸孔としたので、固定部材50を基板40に対する所望の位置に確実に位置決めすることができる。このように、挿通孔92を固定部材50が基板40に対して位置決めされる際の正基準孔、挿通孔90を副基準孔として機能させる。
【0048】
固定部材50のスナップフィット64をスナップフィット用挿通孔74に挿通させた後、係止孔86に係止させる。この状態において、第1のボス70は電磁シールド板46に当接され、電磁シールド板46を基板40の方向に向けて押圧する(押し付ける)。さらに、第2のボス72は信号ピン用挿通孔76あるいは切り欠き部82を挿通させられた後、基板40に当接され、それによって固定部材50と基板40の位置関係を平行に保持する。上記の如く固定部材50を基板40に取り付けることで、電磁シールド板46を固定部材50で挟持しつつ基板40の裏面に確実に固定する。
【0049】
次いで、固定部材50によって電磁シールド板46が固定された基板40を、パワーモジュール44に接続する。具体的には、図12および13に示す如く、パワーモジュール44の信号ピン42を、固定部材50の案内部62に挿通、正確には、案内部62の入口部62dから挿通させる。案内部62は、前述したように略四角錘状を呈するように形成されるため、信号ピン42は紙面左右方向の移動が徐々に規制されつつ出口部62eに到達させられる。
【0050】
その後信号ピン42を信号ピン用挿通孔76あるいは切り欠き部82を介してスルーホール84に挿通させ、半田付けして基板40をパワーモジュール44に電気的に接続する。このとき、案内部62の出口部62eの直径d1は、前記したようにスルーホール84の孔径に比して小さい値とされるため、例えば固定部材50が基板40のスルーホール84に対して僅かに位置ズレした状態であっても、信号ピン42をスルーホール84に挿通させることができる。
【0051】
このようにして基板40が組付けられたパワーモジュール44を、ヒートシンク52の適宜位置に固定すると共に、取り付け孔94とボルト穴58に図示しないボルトを挿通させることによってケース54をヒートシンク52に取り付け、PDU22が完成する。
【0052】
以上の如く、この発明の実施例にあっては、電子回路基板(基板)40と、前記電子回路基板に接続される信号ピン42(第1から第3の信号ピン42a,42b,42c)を有するパワーモジュール44と、前記電子回路基板と前記パワーモジュールの間に介挿される電磁シールド板46とを少なくとも備えるパワードライブユニット22において、前記電磁シールド板を前記電子回路基板に固定する固定部材50を備えると共に、前記固定部材に前記信号ピンの案内部62(第1から第3の案内部62a,62b,62c)を穿設するように構成した。
【0053】
これにより、電磁シールド板46を電子回路基板40の所望の位置に固定できると共に、パワーモジュール44の信号ピン42を固定部材の案内部62を挿通させることで電子回路基板40に確実に接続でき、よって組付け精度を向上させることができる。また、電磁シールド板46を固定部材50で電子回路基板40に固定するように構成したので、ビスで固定する従来技術に比して組立て工数を削減することが可能になる。
【0054】
また、前記固定部材に弾性変形可能なスナップフィット64を形成すると共に、前記電子回路基板に前記スナップフィットの係止孔86を穿設するように構成した。これにより、電磁シールド板46を電子回路基板40に簡易に固定することができる。
【0055】
また、前記固定部材に位置決めピン66(第1、第2の位置決めピン66a,66b)を形成すると共に、前記電子回路基板に前記位置決めピンの挿通孔90,92を穿設するように構成した。これにより、電磁シールド板46を電子回路基板40の所望の位置に確実に固定でき、組付け精度をより一層向上させることができる。
【0056】
また、前記固定部材50は平面視略三角形状を呈するように構成した。これにより、例えば固定部材が平面視略L字状を呈する場合に比して変形し難くなる、即ち、外力が作用したときの固定部材の変形量を低下させ、寸法安定性を確保することができる。
【0057】
尚、上記において、パワードライブユニット22をハイブリッド車両に搭載される例で説明をしたが、この発明に係るパワードライブユニット22は、電気自動車にも適用可能である。
【0058】
また、固定部材50を平面視略三角形状を呈するように構成したが、パワーモジュールの形状や信号ピンの本数、あるいはパワーモジュールを複数個配置した際の位置関係などによって、例えば平面視四角形状などの最適な形状としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】この発明の実施例に係るパワードライブユニットを含む、ハイブリッド車両の制御装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示すパワードライブユニットを全体的に示す分解斜視図である。
【図3】図2に示す固定部材を拡大して表す拡大斜視図である。
【図4】図3に示す固定部材を紙面裏側から見たときの拡大斜視図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】図3のVI−VI線断面図である。
【図7】図3のVII−VII線断面図である。
【図8】図2に示す電磁シールド板の平面図である。
【図9】図2に示す基板の平面図である。
【図10】図2に示す基板に電磁シールド板と固定部材が取り付けられた状態を示す平面透視図である。
【図11】図10の部分拡大平面透視図である。
【図12】図10に示す基板にパワーモジュールが接続された状態を示す部分側面図である。
【図13】図12の部分透視斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
22 パワードライブユニット(PDU)、40 電子回路基板(基板)、42 信号ピン、44 パワーモジュール、46 電磁シールド板、50 固定部材、62 案内部、64 スナップフィット、66 位置決めピン、86 係止孔、90,92 挿通孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路基板と、前記電子回路基板に接続される信号ピンを有するパワーモジュールと、前記電子回路基板と前記パワーモジュールの間に介挿される電磁シールド板とを少なくとも備えるパワードライブユニットにおいて、前記電磁シールド板を前記電子回路基板に固定する固定部材を備えると共に、前記固定部材に前記信号ピンの案内部を穿設したことを特徴とするパワードライブユニット。
【請求項2】
前記固定部材に弾性変形可能なスナップフィットを形成すると共に、前記電子回路基板に前記スナップフィットの係止孔を穿設したことを特徴とする請求項1記載のパワードライブユニット。
【請求項3】
前記固定部材に位置決めピンを形成すると共に、前記電子回路基板に前記位置決めピンの挿通孔を穿設したことを特徴とする請求項1または2記載のパワードライブユニット。
【請求項4】
前記固定部材は平面視略三角形状を呈することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパワードライブユニット。
【請求項1】
電子回路基板と、前記電子回路基板に接続される信号ピンを有するパワーモジュールと、前記電子回路基板と前記パワーモジュールの間に介挿される電磁シールド板とを少なくとも備えるパワードライブユニットにおいて、前記電磁シールド板を前記電子回路基板に固定する固定部材を備えると共に、前記固定部材に前記信号ピンの案内部を穿設したことを特徴とするパワードライブユニット。
【請求項2】
前記固定部材に弾性変形可能なスナップフィットを形成すると共に、前記電子回路基板に前記スナップフィットの係止孔を穿設したことを特徴とする請求項1記載のパワードライブユニット。
【請求項3】
前記固定部材に位置決めピンを形成すると共に、前記電子回路基板に前記位置決めピンの挿通孔を穿設したことを特徴とする請求項1または2記載のパワードライブユニット。
【請求項4】
前記固定部材は平面視略三角形状を呈することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のパワードライブユニット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−130177(P2009−130177A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304346(P2007−304346)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】
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