パワーユニットの制御装置
【課題】パワーユニットの制御装置において、電子スロットル弁の操作後のエンジンヘの吸入空気量の遅れに起因する無駄なスロットル開度のフィードバック量の積分値の蓄積を低減し、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性を向上させることにある。
【解決手段】制御手段は、シフト操作中にエンジン回転数フィードバック制御を実施し、シフト操作開始時には変速後に最終的に収束させる目標となる一つの目標エンジン回転数を設定する一方、この設定された目標エンジン回転数を基にエンジン回転数フィードバック制御の疑似目標を設定且つ更新して単位時間当りのエンジン回転数変化量を制限する傾き制限フィードバック制御を、変速パターンに応じて所望の異なる複数の傾き制限に設定し、シフト操作に伴うクラッチの解放時に前記傾き制限フィードバック制御を実施する。
【解決手段】制御手段は、シフト操作中にエンジン回転数フィードバック制御を実施し、シフト操作開始時には変速後に最終的に収束させる目標となる一つの目標エンジン回転数を設定する一方、この設定された目標エンジン回転数を基にエンジン回転数フィードバック制御の疑似目標を設定且つ更新して単位時間当りのエンジン回転数変化量を制限する傾き制限フィードバック制御を、変速パターンに応じて所望の異なる複数の傾き制限に設定し、シフト操作に伴うクラッチの解放時に前記傾き制限フィードバック制御を実施する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワーユニットの制御装置に係り、エンジンと有段変速機とをクラッチを介して連結したパワーユニットの協調制御で、有段変速機の変速段を変更する変速制御過程において目標変速段(次段)を早く成立させるエンジンの出力制御であり、特に、目標変速段(次段)が低くなり、エンジン回転数が上昇するダウンシフトの際に、エンジンに供給する吸入空気量を最適にする電子スロットル制御を実施するパワーユニットの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、燃費性能向上のために常時噛合式変速機で、シフト、セレクト及びクラッチ操作を自動で行い、エンジン発生トルクを電子スロットル弁により調整可能な機構を備えたものがある。この場合、変速開始判定を行った場合、クラッチ解放動作を行うとともに、スロットル開度を目標スロットル開度近傍に収束可能なように電子スロットル弁を制御し、変速終了時にクラッチ係合ショックを緩和することを実施している。
また、車両の変速制御装置には、変速ギヤの同期装置の容量縮小を目的として、変速時に、出力軸回転数と入力軸回転数とが同期するために必要な入力軸上に換算した目標同期回転数である目標エンジン回転数を、車速と目標になる変速段のギヤ比とから算出し、手動変速段がニュートラル時に、クラッチ係合状態でエンジン回転数を目標エンジン回転数に同期するように、電子スロットル弁を操作することにより、入力軸回転数を目標エンジン回転数の許容範囲内に一致させる、いわゆるダブルクラッチ制御を行い、その後に、目標変速段(次段)ヘギヤインするものがある。
【0003】
従来、自動変速装置には、摩擦式クラッチと歯車式変速機とこれら摩擦式クラッチ及び歯車式変速機を駆動するためのアクチュエータとを含む構造において、車両の運転状態に応じた目標ギヤ位置を決定し、実ギヤ位置と目標ギヤ位置とが一致していない場合に、アクチュエータによって所要の変速操作を実行するものがある。
内燃機関のスロットル制御装置には、クラッチ接続時に手動変速機に連結される構造において、クラッチ解放時に、車速が所定値以上と判断した場合に、検出されたスロットル開度がクラッチ接続時のスロットル開度よりも大きくなるように算出し、この算出されたスロットル開度に基づいてスロットル弁を駆動するものがある。
車両の変速制御装置には、常時噛合式自動変速機とエンジンとの間にクラッチアクチュエータにより動力を伝達遮断する自動クラッチを配設した構造において、ダブルクラッチ変速制御手段による自動クラッチの解放時に、クラッチアクチュエータを完全切断点まで移動させないようにしたものがある。
自動変速機のシフト制御装置及びシフト方法には、エンジンと変速機との間のクラッチと、変速機のギヤ噛合い態様を切り換える同期機構とを、流体圧式あるいは電気式のアクチュエータにて自動操作する構造において、スリーブの回転速度より低速回転する遊転ギヤにスリーブを同期噛合いさせる変速時に、遊転ギヤの回転速度をクラッチとアクセル開度の制御により高め、遊転ギヤの回転速度を、スリーブの回転速度よりも加速した状態とし、この状態で第二アクチュエータを駆動してスリーブとギヤピースとを同期噛合いさせるものがある。
歯車式変速機の自動変速制御方法には、ダブルクラッチ操作方法を採用した制御において、ダウンシフト時に変速ギヤの同期容量不足による目標変速段への変速遅れを解消するために、変速を軽操作力で短時間に完了させるものがある。
【特許文献1】特公平7−35135号公報
【特許文献2】特開2005−330868号公報
【特許文献3】特開2003−112541号公報
【特許文献4】特開2000−337494号公報
【特許文献5】特開平11−291795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、変速制御は、図15のタイムチャートのように行われていた。
図15に示すように、図中a時点で、ダウンシフト指令が発生し、ダウンシフト時のMT(手動)変速が発生した場合に、図中b時点から、エンジン回転数を目標同期回転数である目標エンジン回転数(=車速相当回転数*目標とする変速段のAT(自動)ギヤ比*目標とする変速段のMT(手動)ギヤ比)に一致させるように、電子スロットル弁の制御によって吸入空気量を調整している。
しかし、図中g区間で電子スロットル弁の操作後のエンジンヘの吸入空気量の遅れにより、目標エンジン回転数と実エンジン回転数との偏差が大きくなるため、実際にエンジンが反応するまでの間に、スロットル操作量のフィードバック量積分値が蓄積される。このフィードバック量積分値の放出は、実エンジン回転数が目標エンジン回転数へ到達後の図中c時点で初めて開始されるため、実エンジン回転数が目標エンジン回転数へ到達後に電子スロットル弁を閉じても、蓄積されたフィードバック量積分値の影響により、エンジン回転数のオーバーシュートが発生する。このエンジン回転数のオーバーシュートは、電子スロットル弁の閉後の残留空気により、さらに顕著になるため、この結果、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への収束が遅れ、変速時間が安定しないで長くなる。また、変速時間短縮のため、エンジン回転数が目標エンジン回転数に合っていない状態の図中d時点で、タブルクラッチ制御を実施し、図中e時点で目標変速段のギヤ位置ヘギヤインする場合に、クラッチ出力軸回転数が目標エンジン回転数に合っていない状態で目標変速段ヘギヤインすることになるので、同期機構の機械的負担につながり、同期装置の容量増大化が必要になるとともに、変速終了時のクラッチ係合ショックが発生する問題があった。また、変速時間短縮のため実、エンジン回転数が目標エンジン回転数に合っていない状態の図中f時点でクラッチを直結する場合には、クラッチ係合ショックが発生する。
また、上記のスロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積によるオーバーシュート対策として、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に一致させるスロットル操作量のフィードバック制御を行わない場合は、目標となるスロットル操作量が目標エンジン回転数によって決まるため、設定データを事前に細かく測定する必要があるとともに、大気圧、電気負荷等によっては、エンジン回転数が目標エンジン回転数に収束せず、この結果、変速時間の延長を誘発する問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、人為的な変速操作を伴う変速時等、変速完了までに要する全変速時間を人為操作に依存しないで同等の時間に統一することと、各変速過程での変速時間を変速段に依存しないで同等の時間に統一すること、及び、変速過程でのエンジン回転数変動を抑制してクラッチ係合を早期に可能としつつトータルの変速時間を短い時間とすることと、エンジン回転数を目標エンジン回転数若しくはその許容範囲に一致させてクラッチ係合を早期に行った際の機械的負荷を小さくするパワーユニットの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、変速判断により変速段の変更が発生した場合の自動シフト操作手段を有してこのシフト操作手段のシフト操作に基づき自動的に変速可能な常時噛合式変速段を有する有段変速機と、スロットル開度制御装置及び燃料供給制御装置を有するエンジンと、前記有段変速機と前記エンジンとの間に介装されて自動的に接続解放動作可能なクラッチとが備えられたパワーユニットを設け、前記シフト操作手段のシフト操作に基づき前記有段変速機を制御する変速制御機能と、人為的なスロットル操作を反映して前記スロットル開度制御装置でスロットル開度の制御可能なスロットル開度制御機能と、前記クラッチの接続解放動作を制御するクラッチ制御機能とが備えられた制御手段を設けたパワーユニットの制御装置おいて、前記制御手段は、シフト操作中にエンジン回転数フィードバック制御を実施し、シフト操作開始時には変速後に最終的に収束させる目標となる一つの目標エンジン回転数を設定する一方、この設定された目標エンジン回転数を基にエンジン回転数フィードバック制御の疑似目標を設定且つ更新して単位時間当りのエンジン回転数変化量を制限する傾き制限フィードバック制御を、変速パターンに応じて所望の異なる複数の傾き制限に設定し、シフト操作に伴うクラッチ解放時に前記傾き制限フィードバック制御を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明のパワーユニットの制御装置は、電子スロットル弁の操作後のエンジンヘの吸入空気量の遅れに起因する無駄なスロットル開度のフィードバック量積分値の蓄積を低減し、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明は、無駄なスロットル開度のフィードバック量積分値の蓄積を低減し、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性を向上させる目的を、目標変速段(次段)が低くなり、エンジン回転数が上昇するダウンシフトの際に、エンジンに供給する吸入空気量を最適にする電子スロットル弁の制御を実行して実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例】
【0009】
図1〜図14は、この発明の実施例を示すものである。
図1において、1は車両、2はこの車両1に搭載されたパワーユニットである。このパワーユニット2は、エンジン3と有段変速機4とクラッチである発進クラッチ5とを備えている。
エンジン3は、人為操作に関らずエンジントルクを変更可能なものであり、電子的にスロットル開度を制御可能な電子スロットル弁6が備えられたスロットル開度制御装置7、及び、電子的に燃料噴射量を制御可能な燃料噴射弁8が備えられた燃料供給制御装置9を有する。
有段変速機4は、人為的なシフト操作手段及び変速判断により変速段の変更が発生した場合の自動シフト操作手段を有してこのシフト操作手段のシフト操作に基づき自動的に変速可能な常時噛合式変速段を有する。この有段変速機4は、手動変速可能な自動変速機、自動変速可能な手動変速機等の変速機に適用可能なものであり、変速段を変更する。具体的には、有段変速機4は、人為的なシフト操作手段を有してこのシフト操作手段により変速段の変更が発生した場合、及び、同じく非操作時であっても、各種の走行条件に基づく変速判断機能により変速段の変更が発生した場合の、いずれの場合にも変速を自動に制御する自動シフト操作手段を有して自動的に変速可能に設けた2組以上の常時噛合式変速段を備える。
発進クラッチ5は、有段変速機4とエンジン3との間に介装され、この有段変速機4とエンジン3とを自動的に接続解放動作可能なものである。エンジン3の発生する駆動力は、発進クラッチ5から有段変速機4を介して差動機10により左右の駆動車軸11、11に伝達され、左右の駆動車輪12、12を駆動して車両1を走行させる。
【0010】
また、車両1には、パワーユニット2の制御装置13が搭載されている。この制御装置13は、制御手段14を有する。この制御手段14は、変速制御装置(TCU)15とエンジン制御装置16と電子スロットル制御装置17とを備え、シフト操作手段(シフトレバー等)のシフト操作に基づき変速制御装置15で有段変速機4を制御する変速制御機能と、人為的なスロットル操作を反映してスロットル開度制御装置7でスロットル開度の制御可能なスロットル開度制御機能と、変速制御装置15で発進クラッチ5の接続解放動作を制御するクラッチ制御機能とを備えている。
変速制御装置15は、有段変速機4を動作して変速制御するとともに、発進クラッチ5を動作して接続解放制御する。
エンジン制御装置16は、燃料噴射弁8を駆動停止制御するものであり、接続された変速制御装置15から入力するエンジントルク指令値に基づいて燃料噴射弁8を制御し、また、接続された電子スロットル制御装置17にスロットル開度指令を出力する。
電子スロットル制御装置17は、電子スロットル弁6とともにスロットル開度制御装置7を構成し、電子スロットル弁6のスロットル開度を制御するものであり、エンジン制御装置16から入力するスロットル開度指令に基づいて電子スロットル弁6のスロットル開度を制御し、エンジン3への吸入空気量を調整してエンジントルクを制御する。
変速制御装置15とエンジン制御装置16との間の各種信号のやりとりは、例えば、通信により行う。また、エンジン制御装置16と電子スロットル制御装置17との間の各種信号のやりとりは、例えば、通信により行う。
【0011】
変速制御装置15は、人為的なシフト操作手段であるシフトレバーの人為操作により選択されたレンジ(例えば、R、P、N、D、2等)に応じて、また、シフトレバーの非操作時であっても、車両1の各種走行条件に応じて、有段変速機4の変速段を切り換え、また、発進クラッチ5を接続解放する。
この変速制御装置15には、エンジン制御装置16を介して電子スロットル制御装置17が接続し、また、各種センサとして、エンジン回転数センサ18、車速センサ19、自動変速入力側回転速度センサ20、自動変速出力側回転速度センサ21、手動変速出力側回転速度センサ22、シフトポジションスイッチ23、スロットル開度センサ24、アクセル開度センサ25、セレクトスイッチ26が接続している。
エンジン回転数センサ18は、エンジン3の後述するクランク軸35の回転速度をエンジン回転数として検出する。
車速センサ19は、変速機出力回転速度を車両1の速度(車速)として検出する。
自動変速入力側回転速度センサ20は、後述する遊星ギヤ式変速部32に入力する発進クラッチ5のクラッチ出力回転速度(変速機入力回転速度)を検出する。
自動変速出力側回転速度センサ21は、後述する遊星ギヤ式変速部32から出力する出力回転速度(変速機出力回転速度)を検出する。
手動変速出力側回転速度センサ22は、平行軸ギヤ式変速部33の出力回転速度を検出する。
シフトポジションスイッチ23は、シフトレバーにおいて人為操作により選択された走行レンジ(R、P、N、D、2等)を検出する。
スロットル開度センサ24は、電子スロットル弁6の開度状態であるスロットル開度を検出する。
アクセル開度センサ25は、アクセル開度(アクセルペダルの踏込み度合い)を検出する。
セレクトスイッチ26は、平行軸ギヤ式変速部33の後述するシフトセレクト機構69のセレクト位置(セレクトLO位置、セレクトHI位置)を検出する。
変速制御装置15は、接続されたエンジン制御装置16から各種信号(エンジン回転数、スロットル開度等)を入力するとともに、接続された前記各種センサ18〜26からエンジン回転数等の各種信号を入力し、有段変速機4及び発進クラッチ5を制御する。
【0012】
有段変速機4は、図2、図4に示すように、変速機ケース27内に、第1入力軸28と第2入力軸29と出力軸30とリバースアイドラ軸31と2列の遊星ギヤ列を有する遊星ギヤ式変速部(AT(自動)変速部)32と2組以上の常時噛合式のギヤ段を有する平行軸ギヤ式変速部(MT(手動)変速部)33とを備えている。
第1入力軸28は、一端側をダンパ付きフライホイール34を介してエンジン3のクランク軸35に連結され、途中にオイルポンプ36を備え、他端側を遊星ギヤ式変速部32に対向している。オイルポンプ36は、クランク軸35の回転により駆動されて油圧を発生する。
第2入力軸29は、第1入力軸28の他端側の軸線延長上に配置され、変速機ケース27に軸支されている。
出力軸30は、第1入力軸28及び第2入力軸29と平行に配置され、変速機ケース27に軸支されている。
リバースアイドラ軸31は、第1入力軸28及び第2入力軸29と平行に配置され、変速機ケース27に取り付けられている。
【0013】
遊星ギヤ式変速部32は、第2入力軸29の第1入力軸28と近接する側に配置され、第1入力軸28の回転を第2入力軸29に伝達する。この遊星ギヤ式変速部32は、第1遊星ギヤ列37、第2遊星ギヤ列38の2列で構成されるシンプソンタイプである。
第1遊星ギヤ列37は、第2入力軸29周りに回動可能な第1リングギヤ39と、第2入力軸29に固設された第1キャリア40に回動可能に軸支されて第1リングギヤ39に噛合する第1ピニオンギヤ41と、第2入力軸29に回動可能に軸支されて第1ピニオンギヤ41に噛合する第1サンギヤ42とで構成される。
第2遊星ギヤ列38は、第2入力軸29に固定された第2リングギヤ43と、第2入力軸29周りに回動可能な第2キャリア44に回動可能に軸支されて第2リングギヤ43に噛合する第2ピニオンギヤ45と、第2入力軸29に回動可能に軸支されて第2ピニオンギヤ45に噛合する第2サンギヤ46とで構成される。第1遊星ギヤ列37の第1サンギヤ42と第2遊星ギヤ列38の第2サンギヤ46とは、一体に連結されている。
遊星ギヤ式変速部32には、第1リングギヤ39と第1入力軸28との間に、変速制御装置15により作動される摩擦式の発進クラッチ5が設けられている。また、遊星ギヤ式変速部32には、第1、第2サンギヤ42、46と変速機ケース27との間に、油圧で作動される摩擦式のバンドブレーキ47が設けられるとともに、第1、第2サンギヤ42、46と第1リングギヤ39、発進クラッチ5との間に、摩擦式のダイレクトクラッチ48が設けられている。さらに、遊星ギヤ式変速部32には、第2キャリヤ44と変速機ケース27との間に、逆転方向の回転を阻止するワンウェイクラッチ49が設けられている。
【0014】
発進クラッチ5は、エンジン3から有段変速機4に伝達される駆動力を断続する。バンドブレーキ47とダイレクトクラッチ48とは、ワンウェイクラッチ49との組み合わせで遊星ギヤ式変速部32を1速から3速までの間で変速する。即ち、遊星ギヤ式変速部32は、図3に示すように、バンドブレーキ47の接続解放により1速と2速とに変速され、ダイレクトクラッチ48の接続解放により2速と3速とに変速される。また、1速時には、ワンウェイクラッチ49が作用することにより、遊星ギヤ式変速部32の逆転方向の回転が防止される。
【0015】
遊星ギヤ式変速部32よりもエンジン3から離間する側であって、第2入力軸29と出力軸30との間には、第2入力軸29の回転を出力軸30に伝達する平行軸ギヤ式変速部33が設けられている。この平行軸ギヤ式変速部33は、常時噛合式のギヤ段である3速ギヤ段50と4速ギヤ段51と5速ギヤ段52とリバースギヤ段53とからなる。
3速ギヤ段50は、第2入力軸29に固設された第2入力軸側3速ギヤ54と、出力軸30に回動自在に軸支された出力軸側3速ギヤ55とからなる。4速ギヤ段51は、第2入力軸29に固設された第2入力軸側4速ギヤ56と、出力軸30に回動自在に軸支された出力軸側4速ギヤ57とからなる。5速ギヤ段52は、第2入力軸29に回動自在に軸支された第2入力軸側5速ギヤ58と、出力軸30に固設された出力軸側5速ギヤ59とからなる。
【0016】
リバースギヤ段53は、第2入力軸29に固設された第2入力軸側リバースギヤ60と、出力軸30に回転不能に設けた出力軸側リバースギヤ61と、リバースアイドラ軸31に軸方向移動自在且つ回動自在に軸支されて第2入力軸側リバースギヤ60及び出力軸側リバースギヤ61に噛合離脱可能なリバースアイドラギヤ62とからなる。
出力軸側3速ギヤ55と出力軸側4速ギヤ57との間の出力軸30には、3速・4速切換機構63が設けられている。この3速・4速切換機構63は、出力軸30に軸方向移動可能且つ回転不能に係合される3速・4速シフトスリーブ64を有している。3速・4速切換機構63は、3速・4速シフトスリーブ64を軸方向移動させて、出力軸側3速ギヤ55及び出力軸側4速ギヤ57のいずれか一方に選択的に係合離脱させることにより、出力軸側3速ギヤ55及び出力軸側4速ギヤ57を出力軸30に対して選択的に固定解放し、3速ギヤ段50及び4速ギヤ段51のいずれか一方に切り換える。
なお、3速・4速シフトスリーブ64には、出力軸側リバースギヤ61が一体に設けられている。これにより、出力軸側リバースギヤ61は、出力軸30に回転不能に設けられている。
第2入力軸側5速ギヤ58の変速機ケース27側の第2入力軸29には、5速切換機構65が設けられている。5速切換機構65は、第2入力軸29に軸方向移動可能且つ回転不能に係合される5速シフトスリーブ66を有している。5速切換機構65は、5速シフトスリーブ66を軸方向移動させて、第2入力軸側5速ギヤ58に係合離脱させることにより、第2入力軸側5速ギヤ58を第2入力軸29に対して固定解放し、5速ギヤ段52に切り換える。
リバースギヤ段53には、リバース切換機構67が設けられている。このリバース切換機構67は、リバースアイドラギヤ62に一体のリバースシフトスリーブ68を有している。リバース切換機構67は、リバースシフトスリーブ68によりリバースアイドラギヤ62をリバースアイドラ軸31の軸方向に移動させて、第2入力軸側リバースギヤ60及び出力軸側リバースギヤ61に噛合離脱させることにより、リバースギヤ段53に切り換える。
3速・4速シフトスリーブ64と5速シフトスリーブ66とリバースシフトスリーブ68とは、3速・4速変速機構と5速・リバース変速機構とを介して変速機ケース27の下部のバルブボディに設けたシフトセレクト機構69に連絡されている。
【0017】
シフトセレクト機構69は、図5に示すように、バルブボディに軸方向に移動可能且つ軸廻りに回動可能に軸支されるシフトアンドセレクト軸70を備えている。このシフトアンドセレクト軸70には、前記各シフトスリーブ64、66、68を選択的に動作させるシフトアンドセレクトレバー71を固定し、このシフトアンドセレクトレバー71を両側から挟んでシフトアンドセレクト軸70の軸廻りに回動可能に誤動作防止用のインタロックプレート72を装着し、シフトアンドセレクト軸70を3速、4速セレクト位置の方向に付勢するリターンスプリング73を装着し、シフトアンドセレクト軸70を3速シフト位置、5速シフト位置及び4速シフト位置、リバースシフト位置の各方向に夫々回動させる回動用レバー74を固定している。
【0018】
このシフトセレクト機構69においては、図6に示すように、シフトアンドセレクト軸70がセレクト動作され、セレクトスイッチ26のONでセレクトHI油圧がかかるとシフトアンドセレクト軸70が5速・リバースセレクト位置(セレクトHI位置)の方向に移動され、セレクトスイッチ26のOFFでセレクトHI油圧が抜けるとリターンスプリング73のバネ力(セレクトLO力)によってシフトアンドセレクト軸70が3速・4速セレクト位置(セレクトLO位置)に移動される。
また、シフトセレクト機構69においては、シフトアンドセレクト軸70がシフト動作され、図6に示すように、セレクトスイッチ26のONでセレクトHI油圧がかかるとシフトアンドセレクト軸70が5速・リバースセレクト位置(セレクトHI位置)の方向に移動され、セレクトスイッチ26のOFFでセレクトHI油圧が抜けるとリターンスプリング73のバネ力(セレクトLO力)によってシフトアンドセレクト軸70が3速・4速セレクト位置(セレクトLO位置)に移動される。
このとき、回動用レバー74は、リターンスプリング73のバネ力とセレクト用の油圧の押圧力とによって、3速・4速セレクト位置及び5速・リバースセレクト位置に夫々移動されるとともに、3速・4速セレクト位置及び5速・リバースセレクト位置の各位置においてシフト用の油圧の押圧力によって、3速シフト位置・5速シフト位置及び4速シフト位置・リバースシフト位置に夫々移動される。
これにより、シフトセレクト機構69は、図6に示すように、シフトアンドセレクトレバー71が、3速・4速セレクト位置及び5速・リバースセレクト位置に夫々移動されるとともに、3速シフト位置・5速シフト位置及び4速シフト位置・リバースシフト位置に夫々移動され、各シフトスリーブ64、66、68を介して平行軸ギヤ式変速部33を3速・4速・5速・リバースの各変速段に変速する。即ち、平行軸ギヤ式変速部33は、図3に示すように、3速・4速シフトスリーブ64の移動により3速と4速とに変速され、5速シフトスリーブ66の移動により5速に変速され、リバースシフトスリーブ68の移動によりリバースに変速される。
【0019】
有段変速機4は、前記遊星ギヤ式変速部32による変速段と平行軸ギヤ式変速部33の変速段との組み合わせによって、図3に示すように、1速〜5速、リバースの変速段を構成する。1速時は、「遊星ギヤ式変速部32を1速」*「平行軸ギヤ式変速部33を3速」として1速段を構成する。2速時は、「遊星ギヤ式変速部32を2速」*「平行軸ギヤ式変速部33を3速」として2速段を構成する。3速時は、「遊星ギヤ式変速部32を3速」*「平行軸ギヤ式変速部33を3速」として3速段を構成する。4速時は、「遊星ギヤ式変速部32を3速」*「平行軸ギヤ式変速部33を4速」として4速段を構成する。5速時は、「遊星ギヤ式変速部32を3速」*「平行軸ギヤ式変速部33を5速」として5速段を構成する。リバース時は、「遊星ギヤ式変速部32を2速」*「平行軸ギヤ式変速部33をリバース」としてリバース段を構成する。中立時は、「遊星ギヤ式変速部32を1速」*「平行軸ギヤ式変速部33を中立」として中立段を構成する。
また、有段変速機3には、図2、図4に示すように、出力軸30のエンジン3側端に終減速駆動ギヤ75が設けられ、この終減速被動ギヤ75に噛合する終減速従動ギヤ76が変速機ケース27に軸支した差動機10に取り付けられている。差動機10には、左右の駆動車軸11、11の一端側を連絡している。この左右の駆動車軸11、11は、他端側を左右の駆動車輪12、12に連絡している。
【0020】
図7に示すように、制御手段14においては、車速と目標変速段と現変速段とを入力する基本目標エンジン回転数算出部14A及び傾き制限量設定部14Bと、基本目標エンジン回転数算出部14Aに連絡した基本目標エンジン回転数フィルタ値算出部14Cと、傾き制限量設定部14Bに連絡した傾き制限目標エンジン回転数算出部14Dと、基本目標エンジン回転数フィルタ値算出部14C及び傾き制限目標エンジン回転数算出部14Dに連絡した目標エンジン回転数算出部14Eと、この目標エンジン回転数算出部14Eに連絡するとともに車速とアクセル開度とその他の入力情報(ブレーキスイッチ等)とを入力して要求スロットル開度を電子スロットル制御装置17に出力する要求スロットル開度算出部14Fとが設けられている。
【0021】
そして、制御手段14は、シフト操作中にエンジン回転数フィードバック制御を実施し、シフト操作開始時には変速後に最終的に収束させる目標となる一つの目標エンジン回転数を設定する一方、この設定された目標エンジン回転数を基にエンジン回転数フィードバック制御の疑似目標を設定且つ更新して単位時間当りのエンジン回転数変化量を制限する傾き制限フィードバック制御を、変速パターンに応じて所望の異なる複数の傾き制限に設定し、シフト操作に伴う発進クラッチ5によるクラッチ解放時に前記傾き制限フィードバック制御を実施する。
また、制御手段14は、前記傾き制限フィードバック制御での傾きを、時間経過に対して所定の異なるエンジン回転数変化量を与えることにより変速パターンに応じて異なる勾配とする一方、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差を反映して勾配の上限を変更するように設定し、前記変速パターンに応じた勾配の上限を選択して傾き制限の傾き基準値に設定する(図12、13参照)。
更に、制御手段14は、基本目標エンジン回転数を基にして一次遅れのフィルタ処理を施した基本目標エンジン回転数フィルタ値を設定し、エンジン回転数フィードバック制御を、傾き制限による第一の制御段階と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標とする第二の制御段階とにより構成し、前記第一の制御段階から前記第二の制御段階への移行を、前記傾きに乗じたエンジン回転数と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値とが一致した時点とする。
更にまた、制御手段14は、前記第二の制御段階において実エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に一致した時点でクラッチ係合し、このクラッチ係合の直後にクラッチ解放し、その後、次変速段へのギヤインを行う。
【0022】
つまり、この実施例では、変速時にシフト、セレクト及びクラッチ操作を自動で行い、エンジン発生トルクを電子スロットル弁6により調整可能な機構を備えた常時噛合式自動変速機(自動MT)におけるダウンシフトの変速性能の向上を目的としている。
このため、変速開始後のクラッチ解放、手動(MT)変速段のニュートラル状態でエンジン回転数を目標エンジン回転数に電子スロットル弁6を操作することによって早期収束させる提案であり、ダウンシフト変速時、電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れを考慮して、目標エンジン回転数に傾きを与えることにより、電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れに伴う無駄なスロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積を防止可能とし、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性を向上させる。上記目標エンジン回転数の傾きは、車速と変速パターン毎に設定されることにより、全てのダウンシフト変速に対して安定した変速性能を確保可能とする。
また、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達時、電子スロットル弁6の閉後の残留空気、及び、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れにより発生するエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、目標エンジン回転数に一次遅れフィルタ処理を施すことにより、電子スロットル弁6の操作量を緩やかにし、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達付近で電子スロットル弁6を滑らかに絞ることを可能にするとともに、電子スロットル弁6のフィードバック量積分値の早期放出を可能にし、エンジン回転数が速やかに目標エンジン回転数に同期できるようしている。
更に、上記目標エンジン回転数は、車速及び目標となる変速段のギヤ比により計算され、エンジン回転数が目標エンジン回転数に一致後は、発進クラッチ5を係合状態とすることにより、常時噛合式歯車変速機の入力軸回転速度と出力軸回転速度とを同期させる、いわゆるダブルクラッチ制御を実施し、同期機構に機械的な負担をかけることなく、ギヤイン動作を行う。
【0023】
次に、パワーユニットの制御を、図8のフローチャートに基づいて説明する。
図8に示すように、制御手段14のプログラムがスタートすると(ステップA01)、各種種信号を取り込み(ステップA02)、そして、手動(MT)変速段を変更する変速要求が発生しているか否かを判断する(ステップA03)。この変速要求の判断は、例えば、車速及びアクセル開度により決定される変速マップによって実行される。
このステップA03がNOで、手動(MT)変速段を変更する変速要求が発生しない場合には、通常時目標エンジン回転数算出処理を行う(ステップA04)。
前記ステップA03がYESで、手動(MT)変速段を変更する変速要求が発生している場合には、ダウンシフトか否かを判断する(ステップA05)。
このステップA05がNOで、アップシフトの場合には、アップシフト時目標エンジン回転数算出処理を実行する(ステップA06)。
前記ステップA05がYESで、ダウンシフトの場合には、ダウンシフト時目標エンジン回転数算出処理を実行する(ステップA07)。
前記ステップA04、ステップA06及びステップA07の処理後は、プログラムを終了する(ステップA08)。
【0024】
図8の前記ステップA04における通常時目標エンジン回転数算出処理は、図9のように行われる。
図9に示すように、通常時目標エンジン回転数算出処理のプログラムがスタートすると(ステップB01)、基本目標エンジン回転数を算出する(ステップB02)。この基本目標エンジン回転数は、次式で与えられる。
基本目標エンジン回転数=車速相当回転数*現変速段のMT(手動)ギヤ比*現変速段のAT(自動)ギヤ比 ……(式1)
そして、この基本目標エンジン回転数の計算後、目標エンジン回転数を算出する(ステップB03)。
この実施例においては、前記算出された基本目標エンジン回転数を、通常時目標エンジン回転数とする。
この目標エンジン回転数の計算後は、プログラムを終了する(ステップB04)。
【0025】
また、図8の前記ステップA07におけるダウンシフト時目標エンジン回転数算出処理は、図10のように行われる。
図10に示すように、ダウンシフト時目標エンジン回転数算出処理のプログラムがスタートすると(ステップC01)、このプログラムのスタートと並行して発進クラッチ5を解放する。
そして、基本目標エンジン回転数を算出する(ステップC02)。この基本目標エンジン回転数は、次式で与えられる。
基本目標エンジン回転数=車速相当回転数*目標とする変速段のMTギヤ比*目標とする変速段のATギヤ比 ……(式2)
この基本目標エンジン回転数の計算後は、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に到達時に、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気によって発生するエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、基本目標エンジン回転数の一次遅れフィルタ処理を行うためのフィルタ係数を設定する(ステップC03)。
ここで、この設定するフィルタ係数においては、図11に示すように、フィルタ係数が小さくなる程、一次遅れフィルタ後の基本目標エンジン回転数が滑らかな波形になるため、フィルタ係数が小さ過ぎるとエンジン回転数の基本目標エンジン回転数への到達が遅れ、一方、フィルタ係数が大き過ぎるとエンジン回転数が基本目標エンジン回転数への到達時には一次フィルタ処理後の基本目標エンジン回転数の傾き変化が大きくなることにより、電子スロットル弁6の閉後の残留空気、及び、スロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れによるエンジン回転数のオーバーシュートが発生する。そのため、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数への到達時に、エンジン回転数のオーバーシュートが発生しない範囲の最大値を、フィルタ係数の設定値とする。
そして、このフィルタ係数を設定した後、例えば、以下のように基本目標エンジン回転数フィルタ値を算出する(ステップC04)。
基本目標エンジン回転数フィルタ値=(1−フィルタ係数)*前回の基本目標エンジン回転数フィルタ値+基本目標エンジン回転数*フィルタ係数 ……(式3)
ただし、0≦フィルタ係数≦1
この基本目標エンジン回転数フィルタ値を算出した後は、以下に説明する傾き制限処理を行うため、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差を算出する(ステップC05)。
この変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差は、上記の(式1)で算出された通常時の基本目標エンジン回転数から算出した通常時目標エンジン回転数、及び前記ダウンシフト時の基本目標エンジン回転数を用いて、以下のように計算される。
変速前後の基本目標エンジン回転数偏差=基本目標エンジン回転数−通常時目標エンジン回転数
前記変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差を算出した後は、全てのダウンシフト変速に対して安定した変速性能(変速時間)を確保するため、図12に示すように、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差によって目標エンジン回転数の傾き制限量を設定する(ステップC06)。
この目標エンジン回転数の傾き制限量を設定した後は、傾き制限後目標エンジン回転数を算出する(ステップC07)。
この傾き制限後目標エンジン回転数(Ra、Rb、Rc)は、図13に示すように、エンジン回転数が上記の(式2)で算出された基本目標エンジン回転数に到達するまでは、前記ステップC06で設定された傾き(Ka、Kb、Kc)により目標エンジン回転数に制限を施し、エンジン回転数が前記基本目標エンジン回転数に到達後は、上記の(式2)で算出された基本目標エンジン回転数となるように目標エンジン回転数を設定する。図13において、傾き制限後目標エンジン回転数(Ra、Rb、Rc)が基本目標エンジン回転数に到達する時間Sは、予め揃うように設定され、また、変速(a、b、c)は、任意の値である。
そして、この傾き制限後目標エンジン回転数の算出後は、以下に説明する目標エンジン回転数算出処理のために、上記の(式3)で算出された基本目標エンジン回転数フィルタ値が、傾き制限後目標エンジン回転数よりも高いか否かの判断を行う(ステップC08)。
このステップC08がYESで、上記の(式3)で算出された基本目標エンジン回転数フィルタ値が前記傾き制限後目標エンジン回転数よりも高い場合には、変速開始直後の電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れによって発生する、スロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積を防止するために、傾き制限後目標エンジン回転数を目標エンジン回転数として設定する(ステップC09)。
一方、ステップC08がNOで、上記の(式3)で算出された基本目標エンジン回転数フィルタ値が前記傾き制限後目標エンジン回転数以下の場合には、エンジン回転数が上記の(式2)で算出された基本目標エンジン回転数に到達時の電子スロットル弁6の閉後の残留空気、及び、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れによって発生するエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、上記の(式3)で算出された基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標エンジン回転数として設定する(ステップC10)。
前記ステップC09、ステップC10で目標エンジン回転数の算出後は、以降のシフト制御からクラッチ係合までの処理を円滑に行うために、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達後、手動(MT)変速段がニュートラルの状態で、一旦、発進クラッチ5を接続して入力軸を目標エンジン回転数に同期させた後、再度、発進クラッチ5を解放状態にするクラッチ操作を行う(ステップC11)。これは、いわゆるダブルクラッチ操作の一回目から二回目への切り替え操作である。
このダブルクラッチ操作の一回目の終了後は、目標変速段のギヤ位置ヘギヤインを行うためにシフト制御を行う(ステップC12)。ここで、ダブルクラッチ操作の一回目によって入力軸回転数が目標エンジン回転数に同期していることにより、発進クラッチ5をダブルクラッチ操作の二回目解放状態のまま、同期機構に負担をかけることなく円滑にギヤイン動作を行うことができる。
そして、シフト制御終了後は、クラッチ係合処理を行う(ステップC13)。ここで、エンジン回転数が目標エンジン回転数に同期していることにより円滑なクラッチ係合処理が可能となり、これにより、変速終了時の発進クラッチ5の二回目の係合においてクラッチ係合ショックを緩和することができる。
その後、プログラムを終了する(ステップC14)。
【0026】
即ち、この制御においては、以下に示す(1)〜(6)のような特徴がある。
(1)、シフト操作開始時に、一つの最終的な目標エンジン回転数を設定し、その目標エンジン回転数を基に所望に設定された複数の異なる傾きを与えたフィードバック制御を実施して、実エンジン回転数の変化を制限する。
(2)、この目標エンジン回転数の傾きは、図13に示すように、異なる変速(a、b、c)について、時間経過に対して所定の異なるエンジン回転数変化量を与えることにより異なる勾配(Ka、Kb、Kc)とし、また、図12に示すように、異なる車速で変速を開始する場合に、異なるエンジン回転数で変速が開始され、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差が増減することを反映し、勾配の上限を変更(=基準値として選択する勾配を変更する)ようにした。
(3)、この目標エンジン回転数の傾きによる制限と併せて、基本目標エンジン回転数フィルタ値を設定する。
(4)、エンジン回転数フィードバック制御は、目標エンジン回転数の傾きによる制限による第一の制御段階と、基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標とする第二の制御段階とにより構成する。
(5)、前記第一の制御段階から第二の制御段階への移行は、目標エンジン回転数の傾きに乗じたエンジン回転数と基本目標エンジン回転数フィルタ値とが一致した時点とする。
(6)、前記第二の制御段階において実エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に一致した時点でクラッチ係合(及び直後に解放)を行う。
【0027】
次いで、このパワーユニットの制御を、図14のタイムチャートに基づいて説明する。
図14に示すように、図中h時点でダウンシフト指令が発生し、ダウンシフト時の手動(MT)変速が発生した場合に、図中i時点で、電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れに伴うスロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積を防止するために、基本目標エンジン回転数に傾き制限量を設定し、傾き制限後目標エンジン回転数を算出する。
また、エンジン回転数が目標エンジン回転数への到達時、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気により発生するエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、基本目標エンジン回転数の一次遅れフィルタ処理を行い、基本目標エンジン回転数フィルタ値を算出し、基本目標エンジン回転数到達までの間にスロットル操作量のフィードバック量積分値を放出可能とするとともに、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数到達付近で電子スロットル弁6の操作量を滑らかに絞っていくことを可能にする。
傾き制限後目標エンジン回転数よりも基本目標エンジン回転数フィルタ値が小さい領域は、基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標エンジン回転数とする。また、傾き制限後目標エンジン回転数よりも基本目標エンジン回転数フィルタ値が大きい領域は、傾き制限後目標エンジン回転数を目標エンジン回転数とする。この結果、変速開始時では、傾き制限後目標エンジン回転数を目標エンジン回転数とすることにより、スロットル操作後のエンジンヘの吸入空気量の遅れに伴うフィードバック量積分値の蓄積を防止することができ、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数到達付近では基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標エンジン回転数とすることにより、電子スロットル弁6の操作量を緩やかにするとともに、スロットル操作量のフィードバック量積分値の早期放出を可能にすることで、電子スロットル弁6の閉後の残留空気及び蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の影響によるエンジン回転数のオーバーシュートを防止することができる。この結果、エンジン回転数の目標エンジン回転数への早期収束が可能となるため、図中j時点でのダブルクラッチ制御以降の目標変速段へのギヤイン動作、変速完了後のクラッチ係合動作の一連の動作が滑らかに進行し、変速時間の短縮が可能となるとともに、滑らかな変速フィーリングの確保が可能となる。更に、基本目標エンジン回転数の傾き制限量を変速前後の基本目標エンジン回転数により設定することにより、全ての変速において同じ変速フィーリングを確保することが可能となる。よって、無駄なフィードバック量積分値を反映させないで、しかし、クラッチ係合時等では、必要なフィードバック積分値を反映するように、フィードバック積分値を利用している。
なお、この図14においては、時間T1を揃えるように設定して制御することにより、時間T2を略揃えることができ、変速フィーリングを向上させることができる。また、図中j時点では、フィードバック量積分値が生かされ、実エンジン回転数が目標エンジン回転数に早期に一致し、エンジン回転数のオーバーシュートを防止することができる。
【0028】
即ち、この実施例においては、以下の(1)〜(7)の構成を採用している。
(1)、常時噛合式変速機でシフト、セレクト及びクラッチ操作を自動で行う機構を備え、エンジン発生トルクを電子スロットル弁6により調整可能な自動変速機において、ダウンシフト変速時にエンジン回転数を目標エンジン回転数に常時追従させるために、基本目標エンジン回転数に傾き制限と一次遅れフィルタ処理を行い、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達後には、基本目標エンジン回転数を目標エンジン回転数として電子スロットル弁6の操作を行う。
(2)、上記の電子スロットル弁6の操作は、ダウンシフト変速開始後のクラッチ解放、手動(MT)変速段のニュートラル状態で実施する。
(3)、変速中の基本目標エンジン回転数は、
車速相当回転数*目標とする変速段のATギヤ比*目標とする変速段のMTギヤ比
で表し、
その他の場合の基本目標エンジン回転数は、
車速相当回転数*現変速段のATギヤ比*現変速段のMTギヤ比
で表す。
(4)、ダウンシフト時、電子スロットル弁4の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れによって発生する、スロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積を防止するために、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差によって基本目標エンジン回転数の傾きに制限を与えたものを、傾き制限後目標エンジン回転数とする。
(5)、上記の基本目標エンジン回転数の傾き制限は、変速前後の基本目標エンジン回転数偏差により算出し、全てのダウンシフト変速に対して、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に到達するまでの時間が等しくなるように設定し、安定した変速時間を確保する。
(6)、ダウンシフト時、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数到達時、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック積分値の放出遅れ、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気により発生する、エンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、基本目標エンジン回転数に一次遅れフィルタ処理を施したものを、基本目標エンジン回転数フィルタ値とする。
(7)、上記の(4)〜(6)により、ダウンシフト時、変速開始時は、電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れによるフィードバック量積分値の蓄積を防止するために、傾き制限後目標エンジン回転数を目標エンジン回転数とし、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数到達付近では、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れ、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気によるエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標エンジン回転数とする。そのために、傾き制限後目標エンジン回転数と基本目標エンジン回転数フィルタ値とを比較し、低い方の回転数を目標エンジン回転数とする。
【0029】
このような構成を採用することにより、この実施例では、以下の(1)〜(4)の特有の作用効果がある。
(1)、ダウンシフト時、スロットル操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れを考慮して、基本目標エンジン回転数に傾き制限を与えることにより、エンジン回転数と目標エンジン回転数の偏差が小さくなるため、スロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積を防止することができ、エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性が向上する。 (2)、全てのダウンシフト変速においてエンジン回転数が目標エンジン回転数に到達する時間が一定になるよう、基本目標エンジン回転数にかける傾き制限量を、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差毎に設定することにより、運転状況(車速、変速パターン)による変速性能の差を小さくすることが可能である。
(3)、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に到達時、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れ、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気により発生するエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、基本目標エンジン回転数に一次遅れフィルタ処理を行い、基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標エンジン回転数に設定することにより、電子スロットル操作量を緩やかにし、エンジン回転数のオーバーシュートを防止することができる。また、フィルタ係数の設定を、エンジン回転数のオーバーシュートが発生しない範囲で最大の値を設定値とすることにより、エンジン回転数が目標となる回転数へ早期収束する。
(4)、傾き制限後目標エンジン回転数と基本目標エンジン回転数フィルタ値のうち、低い方を目標エンジン回転数とすることにより、変速開始から終了まで、エンジン回転数が常時目標エンジン回転数に追従するため、ダウンシフト開始時の電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れによるフィードバック量積分値の蓄積を防止することができるとともに、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に到達時の蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れ、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気によるエンジン回転数のオーバーシュートを防止することができ、エンジン回転数が目標となる回転数へ早期収束する。この結果、ダブルクラッチ制御実施時、目標となるギヤ位置ヘ同期機構に機械的な負担をかけることなく円滑なギヤイン動作が可能となり、ギヤイン後の円滑なクラッチ係合処理が可能となる。
【0030】
以上この発明の実施例について説明してきたが、上述の実施例の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
先ず、請求項1に係る発明において、制御手段14は、シフト操作中にエンジン回転数フィードバック制御を実施し、シフト操作開始時には変速後に最終的に収束させる目標となる一つの目標エンジン回転数を設定する一方、この設定された目標エンジン回転数を基にエンジン回転数フィードバック制御の疑似目標を設定且つ更新して単位時間当りのエンジン回転数変化量を制限する傾き制限フィードバック制御を、変速パターンに応じて所望の異なる複数の傾き制限に設定し、シフト操作に伴うクラッチ解放時に前記傾き制限フィードバック制御を実施する。
これにより、電子スロットル弁5の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れに起因する無駄なスロットル開度のフィードバック量の積分値の蓄積を低減することができ、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性を向上させることができる。
また、請求項2に係る発明において、制御手段14は、前記傾き制限フィードバック制御での傾きを、時間経過に対して所定の異なるエンジン回転数変化量を与えることにより変速パターンに応じて異なる勾配とする一方、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差を反映して勾配の上限を変更するように設定し、前記変速パターンに応じた勾配の上限を選択して傾き制限の傾き基準値に設定する(図12、13参照)。
これにより、全ての変速(ダウンシフト)に対して安定した変速性能が確保することができる。
更に、請求項3に係る発明において、制御手段14は、基本目標エンジン回転数を基にして一次遅れのフィルタ処理を施した基本目標エンジン回転数フィルタ値を設定し、エンジン回転数フィードバック制御を、傾き制限による第一の制御段階と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標とする第二の制御段階とにより構成し、前記第一の制御段階から前記第二の制御段階への移行を、前記傾きに乗じたエンジン回転数と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値とが一致した時点とする。
これにより、フィードバック量積分値の蓄積を早期に低減することができ、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性を向上させることができ、また、エンジン回転数のオーバーシュートを低減又は無くすことができ、更に、一次遅れフィルタ処理を施すことにより、ステップ状の変化の後半を緩やかにして、漸近させることができるので、電子スロットル弁6の制御を滑らかにすることができ、結果として、オープン制御に酷似したフィードバック制御を実現することが可能となる。
更にまた、請求項4に係る発明において、制御手段14は、前記第二の制御段階において実エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に一致した時点でクラッチ係合し、このクラッチ係合の直後にクラッチ解放し、その後、次変速段へのギヤインを行う。
これにより、有段変速機4の常時噛合式変速段の入力軸回転速度と出力軸回転速度とをエンジン回転数に同期させ、常時噛合式変速段の同期機構の機械的負荷を減らし、耐久性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、目標エンジン回転数を算出することにより、実エンジン回転数を制御したが、目標となる電子スロットル弁の操作量を算出することにより、実エンジン回転数を制御する装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】車両及びパワーユニットの制御装置のシステム構成図である。
【図2】有段変速機のスケルトン図である。
【図3】有段変速機の変速動作を説明する図である。
【図4】有段変速機の断面図である。
【図5】シフトセレクト機構の斜視図である。
【図6】シフトセレクト機構のシフト動作、セレクト動作を説明する図である。
【図7】パワーユニットの制御装置の制御手段の制御ブロック図である。
【図8】パワーユニットの制御のフローチャートである。
【図9】通常時目標エンジン回転数算出処理のフローチャートである。
【図10】ダウンシフト時目標エンジン回転数算出処理のフローチャートである。
【図11】基本目標エンジン回転数フィルタ値を説明する図である。
【図12】目標エンジン回転数の傾き制限量の設定を説明する図である。
【図13】傾き制限後目標エンジン回転数を説明する図である。
【図14】パワーユニットの制御のタイムチャートである。
【図15】従来においてパワーユニットの制御のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 車両
2 パワーユニット
3 エンジン
4 有段変速機
5 発進クラッチ
6 電子スロットル弁
7 スロットル開度制御装置
8 燃料噴射弁
9 燃料供給装置
13 パワーユニットの制御装置
14 制御手段
15 変速制御装置
16 エンジン制御装置
17 電子スロットル制御装置
32 遊星ギヤ式変速部(AT(自動)変速部)
33 平行軸ギヤ式変速部(MT(手動)変速部)
【技術分野】
【0001】
この発明は、パワーユニットの制御装置に係り、エンジンと有段変速機とをクラッチを介して連結したパワーユニットの協調制御で、有段変速機の変速段を変更する変速制御過程において目標変速段(次段)を早く成立させるエンジンの出力制御であり、特に、目標変速段(次段)が低くなり、エンジン回転数が上昇するダウンシフトの際に、エンジンに供給する吸入空気量を最適にする電子スロットル制御を実施するパワーユニットの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、燃費性能向上のために常時噛合式変速機で、シフト、セレクト及びクラッチ操作を自動で行い、エンジン発生トルクを電子スロットル弁により調整可能な機構を備えたものがある。この場合、変速開始判定を行った場合、クラッチ解放動作を行うとともに、スロットル開度を目標スロットル開度近傍に収束可能なように電子スロットル弁を制御し、変速終了時にクラッチ係合ショックを緩和することを実施している。
また、車両の変速制御装置には、変速ギヤの同期装置の容量縮小を目的として、変速時に、出力軸回転数と入力軸回転数とが同期するために必要な入力軸上に換算した目標同期回転数である目標エンジン回転数を、車速と目標になる変速段のギヤ比とから算出し、手動変速段がニュートラル時に、クラッチ係合状態でエンジン回転数を目標エンジン回転数に同期するように、電子スロットル弁を操作することにより、入力軸回転数を目標エンジン回転数の許容範囲内に一致させる、いわゆるダブルクラッチ制御を行い、その後に、目標変速段(次段)ヘギヤインするものがある。
【0003】
従来、自動変速装置には、摩擦式クラッチと歯車式変速機とこれら摩擦式クラッチ及び歯車式変速機を駆動するためのアクチュエータとを含む構造において、車両の運転状態に応じた目標ギヤ位置を決定し、実ギヤ位置と目標ギヤ位置とが一致していない場合に、アクチュエータによって所要の変速操作を実行するものがある。
内燃機関のスロットル制御装置には、クラッチ接続時に手動変速機に連結される構造において、クラッチ解放時に、車速が所定値以上と判断した場合に、検出されたスロットル開度がクラッチ接続時のスロットル開度よりも大きくなるように算出し、この算出されたスロットル開度に基づいてスロットル弁を駆動するものがある。
車両の変速制御装置には、常時噛合式自動変速機とエンジンとの間にクラッチアクチュエータにより動力を伝達遮断する自動クラッチを配設した構造において、ダブルクラッチ変速制御手段による自動クラッチの解放時に、クラッチアクチュエータを完全切断点まで移動させないようにしたものがある。
自動変速機のシフト制御装置及びシフト方法には、エンジンと変速機との間のクラッチと、変速機のギヤ噛合い態様を切り換える同期機構とを、流体圧式あるいは電気式のアクチュエータにて自動操作する構造において、スリーブの回転速度より低速回転する遊転ギヤにスリーブを同期噛合いさせる変速時に、遊転ギヤの回転速度をクラッチとアクセル開度の制御により高め、遊転ギヤの回転速度を、スリーブの回転速度よりも加速した状態とし、この状態で第二アクチュエータを駆動してスリーブとギヤピースとを同期噛合いさせるものがある。
歯車式変速機の自動変速制御方法には、ダブルクラッチ操作方法を採用した制御において、ダウンシフト時に変速ギヤの同期容量不足による目標変速段への変速遅れを解消するために、変速を軽操作力で短時間に完了させるものがある。
【特許文献1】特公平7−35135号公報
【特許文献2】特開2005−330868号公報
【特許文献3】特開2003−112541号公報
【特許文献4】特開2000−337494号公報
【特許文献5】特開平11−291795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来、変速制御は、図15のタイムチャートのように行われていた。
図15に示すように、図中a時点で、ダウンシフト指令が発生し、ダウンシフト時のMT(手動)変速が発生した場合に、図中b時点から、エンジン回転数を目標同期回転数である目標エンジン回転数(=車速相当回転数*目標とする変速段のAT(自動)ギヤ比*目標とする変速段のMT(手動)ギヤ比)に一致させるように、電子スロットル弁の制御によって吸入空気量を調整している。
しかし、図中g区間で電子スロットル弁の操作後のエンジンヘの吸入空気量の遅れにより、目標エンジン回転数と実エンジン回転数との偏差が大きくなるため、実際にエンジンが反応するまでの間に、スロットル操作量のフィードバック量積分値が蓄積される。このフィードバック量積分値の放出は、実エンジン回転数が目標エンジン回転数へ到達後の図中c時点で初めて開始されるため、実エンジン回転数が目標エンジン回転数へ到達後に電子スロットル弁を閉じても、蓄積されたフィードバック量積分値の影響により、エンジン回転数のオーバーシュートが発生する。このエンジン回転数のオーバーシュートは、電子スロットル弁の閉後の残留空気により、さらに顕著になるため、この結果、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への収束が遅れ、変速時間が安定しないで長くなる。また、変速時間短縮のため、エンジン回転数が目標エンジン回転数に合っていない状態の図中d時点で、タブルクラッチ制御を実施し、図中e時点で目標変速段のギヤ位置ヘギヤインする場合に、クラッチ出力軸回転数が目標エンジン回転数に合っていない状態で目標変速段ヘギヤインすることになるので、同期機構の機械的負担につながり、同期装置の容量増大化が必要になるとともに、変速終了時のクラッチ係合ショックが発生する問題があった。また、変速時間短縮のため実、エンジン回転数が目標エンジン回転数に合っていない状態の図中f時点でクラッチを直結する場合には、クラッチ係合ショックが発生する。
また、上記のスロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積によるオーバーシュート対策として、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に一致させるスロットル操作量のフィードバック制御を行わない場合は、目標となるスロットル操作量が目標エンジン回転数によって決まるため、設定データを事前に細かく測定する必要があるとともに、大気圧、電気負荷等によっては、エンジン回転数が目標エンジン回転数に収束せず、この結果、変速時間の延長を誘発する問題があった。
【0005】
そこで、この発明の目的は、人為的な変速操作を伴う変速時等、変速完了までに要する全変速時間を人為操作に依存しないで同等の時間に統一することと、各変速過程での変速時間を変速段に依存しないで同等の時間に統一すること、及び、変速過程でのエンジン回転数変動を抑制してクラッチ係合を早期に可能としつつトータルの変速時間を短い時間とすることと、エンジン回転数を目標エンジン回転数若しくはその許容範囲に一致させてクラッチ係合を早期に行った際の機械的負荷を小さくするパワーユニットの制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、変速判断により変速段の変更が発生した場合の自動シフト操作手段を有してこのシフト操作手段のシフト操作に基づき自動的に変速可能な常時噛合式変速段を有する有段変速機と、スロットル開度制御装置及び燃料供給制御装置を有するエンジンと、前記有段変速機と前記エンジンとの間に介装されて自動的に接続解放動作可能なクラッチとが備えられたパワーユニットを設け、前記シフト操作手段のシフト操作に基づき前記有段変速機を制御する変速制御機能と、人為的なスロットル操作を反映して前記スロットル開度制御装置でスロットル開度の制御可能なスロットル開度制御機能と、前記クラッチの接続解放動作を制御するクラッチ制御機能とが備えられた制御手段を設けたパワーユニットの制御装置おいて、前記制御手段は、シフト操作中にエンジン回転数フィードバック制御を実施し、シフト操作開始時には変速後に最終的に収束させる目標となる一つの目標エンジン回転数を設定する一方、この設定された目標エンジン回転数を基にエンジン回転数フィードバック制御の疑似目標を設定且つ更新して単位時間当りのエンジン回転数変化量を制限する傾き制限フィードバック制御を、変速パターンに応じて所望の異なる複数の傾き制限に設定し、シフト操作に伴うクラッチ解放時に前記傾き制限フィードバック制御を実施することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明のパワーユニットの制御装置は、電子スロットル弁の操作後のエンジンヘの吸入空気量の遅れに起因する無駄なスロットル開度のフィードバック量積分値の蓄積を低減し、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明は、無駄なスロットル開度のフィードバック量積分値の蓄積を低減し、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性を向上させる目的を、目標変速段(次段)が低くなり、エンジン回転数が上昇するダウンシフトの際に、エンジンに供給する吸入空気量を最適にする電子スロットル弁の制御を実行して実現するものである。
以下、図面に基づいてこの発明の実施例を詳細且つ具体的に説明する。
【実施例】
【0009】
図1〜図14は、この発明の実施例を示すものである。
図1において、1は車両、2はこの車両1に搭載されたパワーユニットである。このパワーユニット2は、エンジン3と有段変速機4とクラッチである発進クラッチ5とを備えている。
エンジン3は、人為操作に関らずエンジントルクを変更可能なものであり、電子的にスロットル開度を制御可能な電子スロットル弁6が備えられたスロットル開度制御装置7、及び、電子的に燃料噴射量を制御可能な燃料噴射弁8が備えられた燃料供給制御装置9を有する。
有段変速機4は、人為的なシフト操作手段及び変速判断により変速段の変更が発生した場合の自動シフト操作手段を有してこのシフト操作手段のシフト操作に基づき自動的に変速可能な常時噛合式変速段を有する。この有段変速機4は、手動変速可能な自動変速機、自動変速可能な手動変速機等の変速機に適用可能なものであり、変速段を変更する。具体的には、有段変速機4は、人為的なシフト操作手段を有してこのシフト操作手段により変速段の変更が発生した場合、及び、同じく非操作時であっても、各種の走行条件に基づく変速判断機能により変速段の変更が発生した場合の、いずれの場合にも変速を自動に制御する自動シフト操作手段を有して自動的に変速可能に設けた2組以上の常時噛合式変速段を備える。
発進クラッチ5は、有段変速機4とエンジン3との間に介装され、この有段変速機4とエンジン3とを自動的に接続解放動作可能なものである。エンジン3の発生する駆動力は、発進クラッチ5から有段変速機4を介して差動機10により左右の駆動車軸11、11に伝達され、左右の駆動車輪12、12を駆動して車両1を走行させる。
【0010】
また、車両1には、パワーユニット2の制御装置13が搭載されている。この制御装置13は、制御手段14を有する。この制御手段14は、変速制御装置(TCU)15とエンジン制御装置16と電子スロットル制御装置17とを備え、シフト操作手段(シフトレバー等)のシフト操作に基づき変速制御装置15で有段変速機4を制御する変速制御機能と、人為的なスロットル操作を反映してスロットル開度制御装置7でスロットル開度の制御可能なスロットル開度制御機能と、変速制御装置15で発進クラッチ5の接続解放動作を制御するクラッチ制御機能とを備えている。
変速制御装置15は、有段変速機4を動作して変速制御するとともに、発進クラッチ5を動作して接続解放制御する。
エンジン制御装置16は、燃料噴射弁8を駆動停止制御するものであり、接続された変速制御装置15から入力するエンジントルク指令値に基づいて燃料噴射弁8を制御し、また、接続された電子スロットル制御装置17にスロットル開度指令を出力する。
電子スロットル制御装置17は、電子スロットル弁6とともにスロットル開度制御装置7を構成し、電子スロットル弁6のスロットル開度を制御するものであり、エンジン制御装置16から入力するスロットル開度指令に基づいて電子スロットル弁6のスロットル開度を制御し、エンジン3への吸入空気量を調整してエンジントルクを制御する。
変速制御装置15とエンジン制御装置16との間の各種信号のやりとりは、例えば、通信により行う。また、エンジン制御装置16と電子スロットル制御装置17との間の各種信号のやりとりは、例えば、通信により行う。
【0011】
変速制御装置15は、人為的なシフト操作手段であるシフトレバーの人為操作により選択されたレンジ(例えば、R、P、N、D、2等)に応じて、また、シフトレバーの非操作時であっても、車両1の各種走行条件に応じて、有段変速機4の変速段を切り換え、また、発進クラッチ5を接続解放する。
この変速制御装置15には、エンジン制御装置16を介して電子スロットル制御装置17が接続し、また、各種センサとして、エンジン回転数センサ18、車速センサ19、自動変速入力側回転速度センサ20、自動変速出力側回転速度センサ21、手動変速出力側回転速度センサ22、シフトポジションスイッチ23、スロットル開度センサ24、アクセル開度センサ25、セレクトスイッチ26が接続している。
エンジン回転数センサ18は、エンジン3の後述するクランク軸35の回転速度をエンジン回転数として検出する。
車速センサ19は、変速機出力回転速度を車両1の速度(車速)として検出する。
自動変速入力側回転速度センサ20は、後述する遊星ギヤ式変速部32に入力する発進クラッチ5のクラッチ出力回転速度(変速機入力回転速度)を検出する。
自動変速出力側回転速度センサ21は、後述する遊星ギヤ式変速部32から出力する出力回転速度(変速機出力回転速度)を検出する。
手動変速出力側回転速度センサ22は、平行軸ギヤ式変速部33の出力回転速度を検出する。
シフトポジションスイッチ23は、シフトレバーにおいて人為操作により選択された走行レンジ(R、P、N、D、2等)を検出する。
スロットル開度センサ24は、電子スロットル弁6の開度状態であるスロットル開度を検出する。
アクセル開度センサ25は、アクセル開度(アクセルペダルの踏込み度合い)を検出する。
セレクトスイッチ26は、平行軸ギヤ式変速部33の後述するシフトセレクト機構69のセレクト位置(セレクトLO位置、セレクトHI位置)を検出する。
変速制御装置15は、接続されたエンジン制御装置16から各種信号(エンジン回転数、スロットル開度等)を入力するとともに、接続された前記各種センサ18〜26からエンジン回転数等の各種信号を入力し、有段変速機4及び発進クラッチ5を制御する。
【0012】
有段変速機4は、図2、図4に示すように、変速機ケース27内に、第1入力軸28と第2入力軸29と出力軸30とリバースアイドラ軸31と2列の遊星ギヤ列を有する遊星ギヤ式変速部(AT(自動)変速部)32と2組以上の常時噛合式のギヤ段を有する平行軸ギヤ式変速部(MT(手動)変速部)33とを備えている。
第1入力軸28は、一端側をダンパ付きフライホイール34を介してエンジン3のクランク軸35に連結され、途中にオイルポンプ36を備え、他端側を遊星ギヤ式変速部32に対向している。オイルポンプ36は、クランク軸35の回転により駆動されて油圧を発生する。
第2入力軸29は、第1入力軸28の他端側の軸線延長上に配置され、変速機ケース27に軸支されている。
出力軸30は、第1入力軸28及び第2入力軸29と平行に配置され、変速機ケース27に軸支されている。
リバースアイドラ軸31は、第1入力軸28及び第2入力軸29と平行に配置され、変速機ケース27に取り付けられている。
【0013】
遊星ギヤ式変速部32は、第2入力軸29の第1入力軸28と近接する側に配置され、第1入力軸28の回転を第2入力軸29に伝達する。この遊星ギヤ式変速部32は、第1遊星ギヤ列37、第2遊星ギヤ列38の2列で構成されるシンプソンタイプである。
第1遊星ギヤ列37は、第2入力軸29周りに回動可能な第1リングギヤ39と、第2入力軸29に固設された第1キャリア40に回動可能に軸支されて第1リングギヤ39に噛合する第1ピニオンギヤ41と、第2入力軸29に回動可能に軸支されて第1ピニオンギヤ41に噛合する第1サンギヤ42とで構成される。
第2遊星ギヤ列38は、第2入力軸29に固定された第2リングギヤ43と、第2入力軸29周りに回動可能な第2キャリア44に回動可能に軸支されて第2リングギヤ43に噛合する第2ピニオンギヤ45と、第2入力軸29に回動可能に軸支されて第2ピニオンギヤ45に噛合する第2サンギヤ46とで構成される。第1遊星ギヤ列37の第1サンギヤ42と第2遊星ギヤ列38の第2サンギヤ46とは、一体に連結されている。
遊星ギヤ式変速部32には、第1リングギヤ39と第1入力軸28との間に、変速制御装置15により作動される摩擦式の発進クラッチ5が設けられている。また、遊星ギヤ式変速部32には、第1、第2サンギヤ42、46と変速機ケース27との間に、油圧で作動される摩擦式のバンドブレーキ47が設けられるとともに、第1、第2サンギヤ42、46と第1リングギヤ39、発進クラッチ5との間に、摩擦式のダイレクトクラッチ48が設けられている。さらに、遊星ギヤ式変速部32には、第2キャリヤ44と変速機ケース27との間に、逆転方向の回転を阻止するワンウェイクラッチ49が設けられている。
【0014】
発進クラッチ5は、エンジン3から有段変速機4に伝達される駆動力を断続する。バンドブレーキ47とダイレクトクラッチ48とは、ワンウェイクラッチ49との組み合わせで遊星ギヤ式変速部32を1速から3速までの間で変速する。即ち、遊星ギヤ式変速部32は、図3に示すように、バンドブレーキ47の接続解放により1速と2速とに変速され、ダイレクトクラッチ48の接続解放により2速と3速とに変速される。また、1速時には、ワンウェイクラッチ49が作用することにより、遊星ギヤ式変速部32の逆転方向の回転が防止される。
【0015】
遊星ギヤ式変速部32よりもエンジン3から離間する側であって、第2入力軸29と出力軸30との間には、第2入力軸29の回転を出力軸30に伝達する平行軸ギヤ式変速部33が設けられている。この平行軸ギヤ式変速部33は、常時噛合式のギヤ段である3速ギヤ段50と4速ギヤ段51と5速ギヤ段52とリバースギヤ段53とからなる。
3速ギヤ段50は、第2入力軸29に固設された第2入力軸側3速ギヤ54と、出力軸30に回動自在に軸支された出力軸側3速ギヤ55とからなる。4速ギヤ段51は、第2入力軸29に固設された第2入力軸側4速ギヤ56と、出力軸30に回動自在に軸支された出力軸側4速ギヤ57とからなる。5速ギヤ段52は、第2入力軸29に回動自在に軸支された第2入力軸側5速ギヤ58と、出力軸30に固設された出力軸側5速ギヤ59とからなる。
【0016】
リバースギヤ段53は、第2入力軸29に固設された第2入力軸側リバースギヤ60と、出力軸30に回転不能に設けた出力軸側リバースギヤ61と、リバースアイドラ軸31に軸方向移動自在且つ回動自在に軸支されて第2入力軸側リバースギヤ60及び出力軸側リバースギヤ61に噛合離脱可能なリバースアイドラギヤ62とからなる。
出力軸側3速ギヤ55と出力軸側4速ギヤ57との間の出力軸30には、3速・4速切換機構63が設けられている。この3速・4速切換機構63は、出力軸30に軸方向移動可能且つ回転不能に係合される3速・4速シフトスリーブ64を有している。3速・4速切換機構63は、3速・4速シフトスリーブ64を軸方向移動させて、出力軸側3速ギヤ55及び出力軸側4速ギヤ57のいずれか一方に選択的に係合離脱させることにより、出力軸側3速ギヤ55及び出力軸側4速ギヤ57を出力軸30に対して選択的に固定解放し、3速ギヤ段50及び4速ギヤ段51のいずれか一方に切り換える。
なお、3速・4速シフトスリーブ64には、出力軸側リバースギヤ61が一体に設けられている。これにより、出力軸側リバースギヤ61は、出力軸30に回転不能に設けられている。
第2入力軸側5速ギヤ58の変速機ケース27側の第2入力軸29には、5速切換機構65が設けられている。5速切換機構65は、第2入力軸29に軸方向移動可能且つ回転不能に係合される5速シフトスリーブ66を有している。5速切換機構65は、5速シフトスリーブ66を軸方向移動させて、第2入力軸側5速ギヤ58に係合離脱させることにより、第2入力軸側5速ギヤ58を第2入力軸29に対して固定解放し、5速ギヤ段52に切り換える。
リバースギヤ段53には、リバース切換機構67が設けられている。このリバース切換機構67は、リバースアイドラギヤ62に一体のリバースシフトスリーブ68を有している。リバース切換機構67は、リバースシフトスリーブ68によりリバースアイドラギヤ62をリバースアイドラ軸31の軸方向に移動させて、第2入力軸側リバースギヤ60及び出力軸側リバースギヤ61に噛合離脱させることにより、リバースギヤ段53に切り換える。
3速・4速シフトスリーブ64と5速シフトスリーブ66とリバースシフトスリーブ68とは、3速・4速変速機構と5速・リバース変速機構とを介して変速機ケース27の下部のバルブボディに設けたシフトセレクト機構69に連絡されている。
【0017】
シフトセレクト機構69は、図5に示すように、バルブボディに軸方向に移動可能且つ軸廻りに回動可能に軸支されるシフトアンドセレクト軸70を備えている。このシフトアンドセレクト軸70には、前記各シフトスリーブ64、66、68を選択的に動作させるシフトアンドセレクトレバー71を固定し、このシフトアンドセレクトレバー71を両側から挟んでシフトアンドセレクト軸70の軸廻りに回動可能に誤動作防止用のインタロックプレート72を装着し、シフトアンドセレクト軸70を3速、4速セレクト位置の方向に付勢するリターンスプリング73を装着し、シフトアンドセレクト軸70を3速シフト位置、5速シフト位置及び4速シフト位置、リバースシフト位置の各方向に夫々回動させる回動用レバー74を固定している。
【0018】
このシフトセレクト機構69においては、図6に示すように、シフトアンドセレクト軸70がセレクト動作され、セレクトスイッチ26のONでセレクトHI油圧がかかるとシフトアンドセレクト軸70が5速・リバースセレクト位置(セレクトHI位置)の方向に移動され、セレクトスイッチ26のOFFでセレクトHI油圧が抜けるとリターンスプリング73のバネ力(セレクトLO力)によってシフトアンドセレクト軸70が3速・4速セレクト位置(セレクトLO位置)に移動される。
また、シフトセレクト機構69においては、シフトアンドセレクト軸70がシフト動作され、図6に示すように、セレクトスイッチ26のONでセレクトHI油圧がかかるとシフトアンドセレクト軸70が5速・リバースセレクト位置(セレクトHI位置)の方向に移動され、セレクトスイッチ26のOFFでセレクトHI油圧が抜けるとリターンスプリング73のバネ力(セレクトLO力)によってシフトアンドセレクト軸70が3速・4速セレクト位置(セレクトLO位置)に移動される。
このとき、回動用レバー74は、リターンスプリング73のバネ力とセレクト用の油圧の押圧力とによって、3速・4速セレクト位置及び5速・リバースセレクト位置に夫々移動されるとともに、3速・4速セレクト位置及び5速・リバースセレクト位置の各位置においてシフト用の油圧の押圧力によって、3速シフト位置・5速シフト位置及び4速シフト位置・リバースシフト位置に夫々移動される。
これにより、シフトセレクト機構69は、図6に示すように、シフトアンドセレクトレバー71が、3速・4速セレクト位置及び5速・リバースセレクト位置に夫々移動されるとともに、3速シフト位置・5速シフト位置及び4速シフト位置・リバースシフト位置に夫々移動され、各シフトスリーブ64、66、68を介して平行軸ギヤ式変速部33を3速・4速・5速・リバースの各変速段に変速する。即ち、平行軸ギヤ式変速部33は、図3に示すように、3速・4速シフトスリーブ64の移動により3速と4速とに変速され、5速シフトスリーブ66の移動により5速に変速され、リバースシフトスリーブ68の移動によりリバースに変速される。
【0019】
有段変速機4は、前記遊星ギヤ式変速部32による変速段と平行軸ギヤ式変速部33の変速段との組み合わせによって、図3に示すように、1速〜5速、リバースの変速段を構成する。1速時は、「遊星ギヤ式変速部32を1速」*「平行軸ギヤ式変速部33を3速」として1速段を構成する。2速時は、「遊星ギヤ式変速部32を2速」*「平行軸ギヤ式変速部33を3速」として2速段を構成する。3速時は、「遊星ギヤ式変速部32を3速」*「平行軸ギヤ式変速部33を3速」として3速段を構成する。4速時は、「遊星ギヤ式変速部32を3速」*「平行軸ギヤ式変速部33を4速」として4速段を構成する。5速時は、「遊星ギヤ式変速部32を3速」*「平行軸ギヤ式変速部33を5速」として5速段を構成する。リバース時は、「遊星ギヤ式変速部32を2速」*「平行軸ギヤ式変速部33をリバース」としてリバース段を構成する。中立時は、「遊星ギヤ式変速部32を1速」*「平行軸ギヤ式変速部33を中立」として中立段を構成する。
また、有段変速機3には、図2、図4に示すように、出力軸30のエンジン3側端に終減速駆動ギヤ75が設けられ、この終減速被動ギヤ75に噛合する終減速従動ギヤ76が変速機ケース27に軸支した差動機10に取り付けられている。差動機10には、左右の駆動車軸11、11の一端側を連絡している。この左右の駆動車軸11、11は、他端側を左右の駆動車輪12、12に連絡している。
【0020】
図7に示すように、制御手段14においては、車速と目標変速段と現変速段とを入力する基本目標エンジン回転数算出部14A及び傾き制限量設定部14Bと、基本目標エンジン回転数算出部14Aに連絡した基本目標エンジン回転数フィルタ値算出部14Cと、傾き制限量設定部14Bに連絡した傾き制限目標エンジン回転数算出部14Dと、基本目標エンジン回転数フィルタ値算出部14C及び傾き制限目標エンジン回転数算出部14Dに連絡した目標エンジン回転数算出部14Eと、この目標エンジン回転数算出部14Eに連絡するとともに車速とアクセル開度とその他の入力情報(ブレーキスイッチ等)とを入力して要求スロットル開度を電子スロットル制御装置17に出力する要求スロットル開度算出部14Fとが設けられている。
【0021】
そして、制御手段14は、シフト操作中にエンジン回転数フィードバック制御を実施し、シフト操作開始時には変速後に最終的に収束させる目標となる一つの目標エンジン回転数を設定する一方、この設定された目標エンジン回転数を基にエンジン回転数フィードバック制御の疑似目標を設定且つ更新して単位時間当りのエンジン回転数変化量を制限する傾き制限フィードバック制御を、変速パターンに応じて所望の異なる複数の傾き制限に設定し、シフト操作に伴う発進クラッチ5によるクラッチ解放時に前記傾き制限フィードバック制御を実施する。
また、制御手段14は、前記傾き制限フィードバック制御での傾きを、時間経過に対して所定の異なるエンジン回転数変化量を与えることにより変速パターンに応じて異なる勾配とする一方、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差を反映して勾配の上限を変更するように設定し、前記変速パターンに応じた勾配の上限を選択して傾き制限の傾き基準値に設定する(図12、13参照)。
更に、制御手段14は、基本目標エンジン回転数を基にして一次遅れのフィルタ処理を施した基本目標エンジン回転数フィルタ値を設定し、エンジン回転数フィードバック制御を、傾き制限による第一の制御段階と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標とする第二の制御段階とにより構成し、前記第一の制御段階から前記第二の制御段階への移行を、前記傾きに乗じたエンジン回転数と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値とが一致した時点とする。
更にまた、制御手段14は、前記第二の制御段階において実エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に一致した時点でクラッチ係合し、このクラッチ係合の直後にクラッチ解放し、その後、次変速段へのギヤインを行う。
【0022】
つまり、この実施例では、変速時にシフト、セレクト及びクラッチ操作を自動で行い、エンジン発生トルクを電子スロットル弁6により調整可能な機構を備えた常時噛合式自動変速機(自動MT)におけるダウンシフトの変速性能の向上を目的としている。
このため、変速開始後のクラッチ解放、手動(MT)変速段のニュートラル状態でエンジン回転数を目標エンジン回転数に電子スロットル弁6を操作することによって早期収束させる提案であり、ダウンシフト変速時、電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れを考慮して、目標エンジン回転数に傾きを与えることにより、電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れに伴う無駄なスロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積を防止可能とし、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性を向上させる。上記目標エンジン回転数の傾きは、車速と変速パターン毎に設定されることにより、全てのダウンシフト変速に対して安定した変速性能を確保可能とする。
また、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達時、電子スロットル弁6の閉後の残留空気、及び、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れにより発生するエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、目標エンジン回転数に一次遅れフィルタ処理を施すことにより、電子スロットル弁6の操作量を緩やかにし、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達付近で電子スロットル弁6を滑らかに絞ることを可能にするとともに、電子スロットル弁6のフィードバック量積分値の早期放出を可能にし、エンジン回転数が速やかに目標エンジン回転数に同期できるようしている。
更に、上記目標エンジン回転数は、車速及び目標となる変速段のギヤ比により計算され、エンジン回転数が目標エンジン回転数に一致後は、発進クラッチ5を係合状態とすることにより、常時噛合式歯車変速機の入力軸回転速度と出力軸回転速度とを同期させる、いわゆるダブルクラッチ制御を実施し、同期機構に機械的な負担をかけることなく、ギヤイン動作を行う。
【0023】
次に、パワーユニットの制御を、図8のフローチャートに基づいて説明する。
図8に示すように、制御手段14のプログラムがスタートすると(ステップA01)、各種種信号を取り込み(ステップA02)、そして、手動(MT)変速段を変更する変速要求が発生しているか否かを判断する(ステップA03)。この変速要求の判断は、例えば、車速及びアクセル開度により決定される変速マップによって実行される。
このステップA03がNOで、手動(MT)変速段を変更する変速要求が発生しない場合には、通常時目標エンジン回転数算出処理を行う(ステップA04)。
前記ステップA03がYESで、手動(MT)変速段を変更する変速要求が発生している場合には、ダウンシフトか否かを判断する(ステップA05)。
このステップA05がNOで、アップシフトの場合には、アップシフト時目標エンジン回転数算出処理を実行する(ステップA06)。
前記ステップA05がYESで、ダウンシフトの場合には、ダウンシフト時目標エンジン回転数算出処理を実行する(ステップA07)。
前記ステップA04、ステップA06及びステップA07の処理後は、プログラムを終了する(ステップA08)。
【0024】
図8の前記ステップA04における通常時目標エンジン回転数算出処理は、図9のように行われる。
図9に示すように、通常時目標エンジン回転数算出処理のプログラムがスタートすると(ステップB01)、基本目標エンジン回転数を算出する(ステップB02)。この基本目標エンジン回転数は、次式で与えられる。
基本目標エンジン回転数=車速相当回転数*現変速段のMT(手動)ギヤ比*現変速段のAT(自動)ギヤ比 ……(式1)
そして、この基本目標エンジン回転数の計算後、目標エンジン回転数を算出する(ステップB03)。
この実施例においては、前記算出された基本目標エンジン回転数を、通常時目標エンジン回転数とする。
この目標エンジン回転数の計算後は、プログラムを終了する(ステップB04)。
【0025】
また、図8の前記ステップA07におけるダウンシフト時目標エンジン回転数算出処理は、図10のように行われる。
図10に示すように、ダウンシフト時目標エンジン回転数算出処理のプログラムがスタートすると(ステップC01)、このプログラムのスタートと並行して発進クラッチ5を解放する。
そして、基本目標エンジン回転数を算出する(ステップC02)。この基本目標エンジン回転数は、次式で与えられる。
基本目標エンジン回転数=車速相当回転数*目標とする変速段のMTギヤ比*目標とする変速段のATギヤ比 ……(式2)
この基本目標エンジン回転数の計算後は、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に到達時に、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気によって発生するエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、基本目標エンジン回転数の一次遅れフィルタ処理を行うためのフィルタ係数を設定する(ステップC03)。
ここで、この設定するフィルタ係数においては、図11に示すように、フィルタ係数が小さくなる程、一次遅れフィルタ後の基本目標エンジン回転数が滑らかな波形になるため、フィルタ係数が小さ過ぎるとエンジン回転数の基本目標エンジン回転数への到達が遅れ、一方、フィルタ係数が大き過ぎるとエンジン回転数が基本目標エンジン回転数への到達時には一次フィルタ処理後の基本目標エンジン回転数の傾き変化が大きくなることにより、電子スロットル弁6の閉後の残留空気、及び、スロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れによるエンジン回転数のオーバーシュートが発生する。そのため、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数への到達時に、エンジン回転数のオーバーシュートが発生しない範囲の最大値を、フィルタ係数の設定値とする。
そして、このフィルタ係数を設定した後、例えば、以下のように基本目標エンジン回転数フィルタ値を算出する(ステップC04)。
基本目標エンジン回転数フィルタ値=(1−フィルタ係数)*前回の基本目標エンジン回転数フィルタ値+基本目標エンジン回転数*フィルタ係数 ……(式3)
ただし、0≦フィルタ係数≦1
この基本目標エンジン回転数フィルタ値を算出した後は、以下に説明する傾き制限処理を行うため、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差を算出する(ステップC05)。
この変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差は、上記の(式1)で算出された通常時の基本目標エンジン回転数から算出した通常時目標エンジン回転数、及び前記ダウンシフト時の基本目標エンジン回転数を用いて、以下のように計算される。
変速前後の基本目標エンジン回転数偏差=基本目標エンジン回転数−通常時目標エンジン回転数
前記変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差を算出した後は、全てのダウンシフト変速に対して安定した変速性能(変速時間)を確保するため、図12に示すように、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差によって目標エンジン回転数の傾き制限量を設定する(ステップC06)。
この目標エンジン回転数の傾き制限量を設定した後は、傾き制限後目標エンジン回転数を算出する(ステップC07)。
この傾き制限後目標エンジン回転数(Ra、Rb、Rc)は、図13に示すように、エンジン回転数が上記の(式2)で算出された基本目標エンジン回転数に到達するまでは、前記ステップC06で設定された傾き(Ka、Kb、Kc)により目標エンジン回転数に制限を施し、エンジン回転数が前記基本目標エンジン回転数に到達後は、上記の(式2)で算出された基本目標エンジン回転数となるように目標エンジン回転数を設定する。図13において、傾き制限後目標エンジン回転数(Ra、Rb、Rc)が基本目標エンジン回転数に到達する時間Sは、予め揃うように設定され、また、変速(a、b、c)は、任意の値である。
そして、この傾き制限後目標エンジン回転数の算出後は、以下に説明する目標エンジン回転数算出処理のために、上記の(式3)で算出された基本目標エンジン回転数フィルタ値が、傾き制限後目標エンジン回転数よりも高いか否かの判断を行う(ステップC08)。
このステップC08がYESで、上記の(式3)で算出された基本目標エンジン回転数フィルタ値が前記傾き制限後目標エンジン回転数よりも高い場合には、変速開始直後の電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れによって発生する、スロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積を防止するために、傾き制限後目標エンジン回転数を目標エンジン回転数として設定する(ステップC09)。
一方、ステップC08がNOで、上記の(式3)で算出された基本目標エンジン回転数フィルタ値が前記傾き制限後目標エンジン回転数以下の場合には、エンジン回転数が上記の(式2)で算出された基本目標エンジン回転数に到達時の電子スロットル弁6の閉後の残留空気、及び、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れによって発生するエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、上記の(式3)で算出された基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標エンジン回転数として設定する(ステップC10)。
前記ステップC09、ステップC10で目標エンジン回転数の算出後は、以降のシフト制御からクラッチ係合までの処理を円滑に行うために、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達後、手動(MT)変速段がニュートラルの状態で、一旦、発進クラッチ5を接続して入力軸を目標エンジン回転数に同期させた後、再度、発進クラッチ5を解放状態にするクラッチ操作を行う(ステップC11)。これは、いわゆるダブルクラッチ操作の一回目から二回目への切り替え操作である。
このダブルクラッチ操作の一回目の終了後は、目標変速段のギヤ位置ヘギヤインを行うためにシフト制御を行う(ステップC12)。ここで、ダブルクラッチ操作の一回目によって入力軸回転数が目標エンジン回転数に同期していることにより、発進クラッチ5をダブルクラッチ操作の二回目解放状態のまま、同期機構に負担をかけることなく円滑にギヤイン動作を行うことができる。
そして、シフト制御終了後は、クラッチ係合処理を行う(ステップC13)。ここで、エンジン回転数が目標エンジン回転数に同期していることにより円滑なクラッチ係合処理が可能となり、これにより、変速終了時の発進クラッチ5の二回目の係合においてクラッチ係合ショックを緩和することができる。
その後、プログラムを終了する(ステップC14)。
【0026】
即ち、この制御においては、以下に示す(1)〜(6)のような特徴がある。
(1)、シフト操作開始時に、一つの最終的な目標エンジン回転数を設定し、その目標エンジン回転数を基に所望に設定された複数の異なる傾きを与えたフィードバック制御を実施して、実エンジン回転数の変化を制限する。
(2)、この目標エンジン回転数の傾きは、図13に示すように、異なる変速(a、b、c)について、時間経過に対して所定の異なるエンジン回転数変化量を与えることにより異なる勾配(Ka、Kb、Kc)とし、また、図12に示すように、異なる車速で変速を開始する場合に、異なるエンジン回転数で変速が開始され、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差が増減することを反映し、勾配の上限を変更(=基準値として選択する勾配を変更する)ようにした。
(3)、この目標エンジン回転数の傾きによる制限と併せて、基本目標エンジン回転数フィルタ値を設定する。
(4)、エンジン回転数フィードバック制御は、目標エンジン回転数の傾きによる制限による第一の制御段階と、基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標とする第二の制御段階とにより構成する。
(5)、前記第一の制御段階から第二の制御段階への移行は、目標エンジン回転数の傾きに乗じたエンジン回転数と基本目標エンジン回転数フィルタ値とが一致した時点とする。
(6)、前記第二の制御段階において実エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に一致した時点でクラッチ係合(及び直後に解放)を行う。
【0027】
次いで、このパワーユニットの制御を、図14のタイムチャートに基づいて説明する。
図14に示すように、図中h時点でダウンシフト指令が発生し、ダウンシフト時の手動(MT)変速が発生した場合に、図中i時点で、電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れに伴うスロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積を防止するために、基本目標エンジン回転数に傾き制限量を設定し、傾き制限後目標エンジン回転数を算出する。
また、エンジン回転数が目標エンジン回転数への到達時、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気により発生するエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、基本目標エンジン回転数の一次遅れフィルタ処理を行い、基本目標エンジン回転数フィルタ値を算出し、基本目標エンジン回転数到達までの間にスロットル操作量のフィードバック量積分値を放出可能とするとともに、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数到達付近で電子スロットル弁6の操作量を滑らかに絞っていくことを可能にする。
傾き制限後目標エンジン回転数よりも基本目標エンジン回転数フィルタ値が小さい領域は、基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標エンジン回転数とする。また、傾き制限後目標エンジン回転数よりも基本目標エンジン回転数フィルタ値が大きい領域は、傾き制限後目標エンジン回転数を目標エンジン回転数とする。この結果、変速開始時では、傾き制限後目標エンジン回転数を目標エンジン回転数とすることにより、スロットル操作後のエンジンヘの吸入空気量の遅れに伴うフィードバック量積分値の蓄積を防止することができ、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数到達付近では基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標エンジン回転数とすることにより、電子スロットル弁6の操作量を緩やかにするとともに、スロットル操作量のフィードバック量積分値の早期放出を可能にすることで、電子スロットル弁6の閉後の残留空気及び蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の影響によるエンジン回転数のオーバーシュートを防止することができる。この結果、エンジン回転数の目標エンジン回転数への早期収束が可能となるため、図中j時点でのダブルクラッチ制御以降の目標変速段へのギヤイン動作、変速完了後のクラッチ係合動作の一連の動作が滑らかに進行し、変速時間の短縮が可能となるとともに、滑らかな変速フィーリングの確保が可能となる。更に、基本目標エンジン回転数の傾き制限量を変速前後の基本目標エンジン回転数により設定することにより、全ての変速において同じ変速フィーリングを確保することが可能となる。よって、無駄なフィードバック量積分値を反映させないで、しかし、クラッチ係合時等では、必要なフィードバック積分値を反映するように、フィードバック積分値を利用している。
なお、この図14においては、時間T1を揃えるように設定して制御することにより、時間T2を略揃えることができ、変速フィーリングを向上させることができる。また、図中j時点では、フィードバック量積分値が生かされ、実エンジン回転数が目標エンジン回転数に早期に一致し、エンジン回転数のオーバーシュートを防止することができる。
【0028】
即ち、この実施例においては、以下の(1)〜(7)の構成を採用している。
(1)、常時噛合式変速機でシフト、セレクト及びクラッチ操作を自動で行う機構を備え、エンジン発生トルクを電子スロットル弁6により調整可能な自動変速機において、ダウンシフト変速時にエンジン回転数を目標エンジン回転数に常時追従させるために、基本目標エンジン回転数に傾き制限と一次遅れフィルタ処理を行い、エンジン回転数が目標エンジン回転数に到達後には、基本目標エンジン回転数を目標エンジン回転数として電子スロットル弁6の操作を行う。
(2)、上記の電子スロットル弁6の操作は、ダウンシフト変速開始後のクラッチ解放、手動(MT)変速段のニュートラル状態で実施する。
(3)、変速中の基本目標エンジン回転数は、
車速相当回転数*目標とする変速段のATギヤ比*目標とする変速段のMTギヤ比
で表し、
その他の場合の基本目標エンジン回転数は、
車速相当回転数*現変速段のATギヤ比*現変速段のMTギヤ比
で表す。
(4)、ダウンシフト時、電子スロットル弁4の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れによって発生する、スロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積を防止するために、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差によって基本目標エンジン回転数の傾きに制限を与えたものを、傾き制限後目標エンジン回転数とする。
(5)、上記の基本目標エンジン回転数の傾き制限は、変速前後の基本目標エンジン回転数偏差により算出し、全てのダウンシフト変速に対して、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に到達するまでの時間が等しくなるように設定し、安定した変速時間を確保する。
(6)、ダウンシフト時、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数到達時、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック積分値の放出遅れ、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気により発生する、エンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、基本目標エンジン回転数に一次遅れフィルタ処理を施したものを、基本目標エンジン回転数フィルタ値とする。
(7)、上記の(4)〜(6)により、ダウンシフト時、変速開始時は、電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れによるフィードバック量積分値の蓄積を防止するために、傾き制限後目標エンジン回転数を目標エンジン回転数とし、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数到達付近では、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れ、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気によるエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標エンジン回転数とする。そのために、傾き制限後目標エンジン回転数と基本目標エンジン回転数フィルタ値とを比較し、低い方の回転数を目標エンジン回転数とする。
【0029】
このような構成を採用することにより、この実施例では、以下の(1)〜(4)の特有の作用効果がある。
(1)、ダウンシフト時、スロットル操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れを考慮して、基本目標エンジン回転数に傾き制限を与えることにより、エンジン回転数と目標エンジン回転数の偏差が小さくなるため、スロットル操作量のフィードバック量積分値の蓄積を防止することができ、エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性が向上する。 (2)、全てのダウンシフト変速においてエンジン回転数が目標エンジン回転数に到達する時間が一定になるよう、基本目標エンジン回転数にかける傾き制限量を、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差毎に設定することにより、運転状況(車速、変速パターン)による変速性能の差を小さくすることが可能である。
(3)、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に到達時、蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れ、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気により発生するエンジン回転数のオーバーシュートを防止するために、基本目標エンジン回転数に一次遅れフィルタ処理を行い、基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標エンジン回転数に設定することにより、電子スロットル操作量を緩やかにし、エンジン回転数のオーバーシュートを防止することができる。また、フィルタ係数の設定を、エンジン回転数のオーバーシュートが発生しない範囲で最大の値を設定値とすることにより、エンジン回転数が目標となる回転数へ早期収束する。
(4)、傾き制限後目標エンジン回転数と基本目標エンジン回転数フィルタ値のうち、低い方を目標エンジン回転数とすることにより、変速開始から終了まで、エンジン回転数が常時目標エンジン回転数に追従するため、ダウンシフト開始時の電子スロットル弁6の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れによるフィードバック量積分値の蓄積を防止することができるとともに、エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に到達時の蓄積されたスロットル操作量のフィードバック量積分値の放出遅れ、及び、電子スロットル弁6の閉後の残留空気によるエンジン回転数のオーバーシュートを防止することができ、エンジン回転数が目標となる回転数へ早期収束する。この結果、ダブルクラッチ制御実施時、目標となるギヤ位置ヘ同期機構に機械的な負担をかけることなく円滑なギヤイン動作が可能となり、ギヤイン後の円滑なクラッチ係合処理が可能となる。
【0030】
以上この発明の実施例について説明してきたが、上述の実施例の構成を請求項毎に当てはめて説明する。
先ず、請求項1に係る発明において、制御手段14は、シフト操作中にエンジン回転数フィードバック制御を実施し、シフト操作開始時には変速後に最終的に収束させる目標となる一つの目標エンジン回転数を設定する一方、この設定された目標エンジン回転数を基にエンジン回転数フィードバック制御の疑似目標を設定且つ更新して単位時間当りのエンジン回転数変化量を制限する傾き制限フィードバック制御を、変速パターンに応じて所望の異なる複数の傾き制限に設定し、シフト操作に伴うクラッチ解放時に前記傾き制限フィードバック制御を実施する。
これにより、電子スロットル弁5の操作後のエンジン3ヘの吸入空気量の遅れに起因する無駄なスロットル開度のフィードバック量の積分値の蓄積を低減することができ、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性を向上させることができる。
また、請求項2に係る発明において、制御手段14は、前記傾き制限フィードバック制御での傾きを、時間経過に対して所定の異なるエンジン回転数変化量を与えることにより変速パターンに応じて異なる勾配とする一方、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差を反映して勾配の上限を変更するように設定し、前記変速パターンに応じた勾配の上限を選択して傾き制限の傾き基準値に設定する(図12、13参照)。
これにより、全ての変速(ダウンシフト)に対して安定した変速性能が確保することができる。
更に、請求項3に係る発明において、制御手段14は、基本目標エンジン回転数を基にして一次遅れのフィルタ処理を施した基本目標エンジン回転数フィルタ値を設定し、エンジン回転数フィードバック制御を、傾き制限による第一の制御段階と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標とする第二の制御段階とにより構成し、前記第一の制御段階から前記第二の制御段階への移行を、前記傾きに乗じたエンジン回転数と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値とが一致した時点とする。
これにより、フィードバック量積分値の蓄積を早期に低減することができ、実エンジン回転数の目標エンジン回転数への追従性を向上させることができ、また、エンジン回転数のオーバーシュートを低減又は無くすことができ、更に、一次遅れフィルタ処理を施すことにより、ステップ状の変化の後半を緩やかにして、漸近させることができるので、電子スロットル弁6の制御を滑らかにすることができ、結果として、オープン制御に酷似したフィードバック制御を実現することが可能となる。
更にまた、請求項4に係る発明において、制御手段14は、前記第二の制御段階において実エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に一致した時点でクラッチ係合し、このクラッチ係合の直後にクラッチ解放し、その後、次変速段へのギヤインを行う。
これにより、有段変速機4の常時噛合式変速段の入力軸回転速度と出力軸回転速度とをエンジン回転数に同期させ、常時噛合式変速段の同期機構の機械的負荷を減らし、耐久性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
この発明は、目標エンジン回転数を算出することにより、実エンジン回転数を制御したが、目標となる電子スロットル弁の操作量を算出することにより、実エンジン回転数を制御する装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】車両及びパワーユニットの制御装置のシステム構成図である。
【図2】有段変速機のスケルトン図である。
【図3】有段変速機の変速動作を説明する図である。
【図4】有段変速機の断面図である。
【図5】シフトセレクト機構の斜視図である。
【図6】シフトセレクト機構のシフト動作、セレクト動作を説明する図である。
【図7】パワーユニットの制御装置の制御手段の制御ブロック図である。
【図8】パワーユニットの制御のフローチャートである。
【図9】通常時目標エンジン回転数算出処理のフローチャートである。
【図10】ダウンシフト時目標エンジン回転数算出処理のフローチャートである。
【図11】基本目標エンジン回転数フィルタ値を説明する図である。
【図12】目標エンジン回転数の傾き制限量の設定を説明する図である。
【図13】傾き制限後目標エンジン回転数を説明する図である。
【図14】パワーユニットの制御のタイムチャートである。
【図15】従来においてパワーユニットの制御のタイムチャートである。
【符号の説明】
【0033】
1 車両
2 パワーユニット
3 エンジン
4 有段変速機
5 発進クラッチ
6 電子スロットル弁
7 スロットル開度制御装置
8 燃料噴射弁
9 燃料供給装置
13 パワーユニットの制御装置
14 制御手段
15 変速制御装置
16 エンジン制御装置
17 電子スロットル制御装置
32 遊星ギヤ式変速部(AT(自動)変速部)
33 平行軸ギヤ式変速部(MT(手動)変速部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変速判断により変速段の変更が発生した場合の自動シフト操作手段を有してこのシフト操作手段のシフト操作に基づき自動的に変速可能な常時噛合式変速段を有する有段変速機と、スロットル開度制御装置及び燃料供給制御装置を有するエンジンと、前記有段変速機と前記エンジンとの間に介装されて自動的に接続解放動作可能なクラッチとが備えられたパワーユニットを設け、前記シフト操作手段のシフト操作に基づき前記有段変速機を制御する変速制御機能と、人為的なスロットル操作を反映して前記スロットル開度制御装置でスロットル開度の制御可能なスロットル開度制御機能と、前記クラッチの接続解放動作を制御するクラッチ制御機能とが備えられた制御手段を設けたパワーユニットの制御装置おいて、前記制御手段は、シフト操作中にエンジン回転数フィードバック制御を実施し、シフト操作開始時には変速後に最終的に収束させる目標となる一つの目標エンジン回転数を設定する一方、この設定された目標エンジン回転数を基にエンジン回転数フィードバック制御の疑似目標を設定且つ更新して単位時間当りのエンジン回転数変化量を制限する傾き制限フィードバック制御を、変速パターンに応じて所望の異なる複数の傾き制限に設定し、シフト操作に伴うクラッチ解放時に前記傾き制限フィードバック制御を実施することを特徴とするパワーユニットの制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記傾き制限フィードバック制御での傾きを、時間経過に対して所定の異なるエンジン回転数変化量を与えることにより変速パターンに応じて異なる勾配とする一方、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差を反映して勾配の上限を変更するように設定し、前記変速パターンに応じた勾配の上限を選択して傾き制限の傾き基準値に設定することを特徴とする請求項1に記載のパワーユニットの制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、基本目標エンジン回転数を基にして一次遅れのフィルタ処理を施した基本目標エンジン回転数フィルタ値を設定し、エンジン回転数フィードバック制御を、傾き制限による第一の制御段階と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標とする第二の制御段階とにより構成し、前記第一の制御段階から前記第二の制御段階への移行を、前記傾きに乗じたエンジン回転数と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値とが一致した時点とすることを特徴とする請求項2に記載のパワーユニットの制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第二の制御段階において実エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に一致した時点でクラッチ係合し、このクラッチ係合の直後にクラッチ解放し、その後、次変速段へのギヤインを行うことを特徴とする請求項3に記載のパワーユニットの制御装置。
【請求項1】
変速判断により変速段の変更が発生した場合の自動シフト操作手段を有してこのシフト操作手段のシフト操作に基づき自動的に変速可能な常時噛合式変速段を有する有段変速機と、スロットル開度制御装置及び燃料供給制御装置を有するエンジンと、前記有段変速機と前記エンジンとの間に介装されて自動的に接続解放動作可能なクラッチとが備えられたパワーユニットを設け、前記シフト操作手段のシフト操作に基づき前記有段変速機を制御する変速制御機能と、人為的なスロットル操作を反映して前記スロットル開度制御装置でスロットル開度の制御可能なスロットル開度制御機能と、前記クラッチの接続解放動作を制御するクラッチ制御機能とが備えられた制御手段を設けたパワーユニットの制御装置おいて、前記制御手段は、シフト操作中にエンジン回転数フィードバック制御を実施し、シフト操作開始時には変速後に最終的に収束させる目標となる一つの目標エンジン回転数を設定する一方、この設定された目標エンジン回転数を基にエンジン回転数フィードバック制御の疑似目標を設定且つ更新して単位時間当りのエンジン回転数変化量を制限する傾き制限フィードバック制御を、変速パターンに応じて所望の異なる複数の傾き制限に設定し、シフト操作に伴うクラッチ解放時に前記傾き制限フィードバック制御を実施することを特徴とするパワーユニットの制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記傾き制限フィードバック制御での傾きを、時間経過に対して所定の異なるエンジン回転数変化量を与えることにより変速パターンに応じて異なる勾配とする一方、変速前後の基本目標エンジン回転数の偏差を反映して勾配の上限を変更するように設定し、前記変速パターンに応じた勾配の上限を選択して傾き制限の傾き基準値に設定することを特徴とする請求項1に記載のパワーユニットの制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、基本目標エンジン回転数を基にして一次遅れのフィルタ処理を施した基本目標エンジン回転数フィルタ値を設定し、エンジン回転数フィードバック制御を、傾き制限による第一の制御段階と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値を目標とする第二の制御段階とにより構成し、前記第一の制御段階から前記第二の制御段階への移行を、前記傾きに乗じたエンジン回転数と前記基本目標エンジン回転数フィルタ値とが一致した時点とすることを特徴とする請求項2に記載のパワーユニットの制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記第二の制御段階において実エンジン回転数が基本目標エンジン回転数に一致した時点でクラッチ係合し、このクラッチ係合の直後にクラッチ解放し、その後、次変速段へのギヤインを行うことを特徴とする請求項3に記載のパワーユニットの制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−215276(P2008−215276A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−56519(P2007−56519)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
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