説明

パーキンソン病を処置するための活性成分の組み合わせを含有する経皮適用医薬製剤

本発明は、パーキンソン病の処置において使用される経皮適用のための医薬製剤に関する。前記製剤は、活性成分の下記群:ドパミンアゴニストおよびL−ドーパ、モノアミンオキシダーゼ阻害剤、抗コリン作用薬、NMDA受容体アンタゴニストおよび交感神経刺激作用薬、から選択される少なくとも2種の活性成分の組み合わせを含み、少なくとも2種の前記活性物質は、異なる活性成分の群に属する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーキンソン症候群を処置するための経皮投与可能な医薬製剤であって、前記製剤はパーキンソン症候群の治療における使用に好適な少なくとも2種の活性物質の組み合わせを含有する、前記製剤に関する。本発明はさらに、パーキンソン病を処置するための経皮投与可能な医薬の製造のためのかかる活性物質の組み合わせの使用、ならびに、前記医薬製剤の1種を経皮投与することによるパーキンソン病患者の治療的処置に関する。
【0002】
下記群からの活性物質は、現在、パーキンソン病の薬物治療において使用されている:ドパミン作用性効果を有する抗パーキンソン病薬、特にL−ドーパおよびドパミン受容体アゴニスト;中枢作用性抗コリン作用薬(ムスカリン受容体アンタゴニスト);モノアミンオキシダーゼ阻害剤;β交感神経遮断薬。
上記の他、フェニルエチルアミン誘導体(例えば、エクスタシー(Ecstasy)=MDMA)の群からの交感神経刺激作用薬の投与が考慮されるが、これは、L−ドーパの長期使用後にジスキネジアを患っている患者においては、症状の改善が観察される場合があるためである。
【0003】
最も有効かつ最も重要なパーキンソン病薬はL−ドーパ(レボドパ)であり、ほぼもっぱら経口的に投与され、好ましくはデカルボキシラーゼ阻害剤(例えば、ベンセラジド、カルビドパ)またはカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害剤(例えば、エンタカポン)と組み合わせて投与される。しかしながら、L−ドーパの長期使用は、ジスキネジアの発生、活性物質の変動および作用の喪失を引き起こす。このため、L−ドーパの用量を可能な限り低く維持すること、または、処置の初期には全くL−ドーパを使用しないことを目指す。例えば、L−ドーパの強制的投与開始時期は、モノアミンオキシダーゼ阻害剤L−デプレニル(=セレギリン)を投与することにより、遅らせることができる。同様に、セレギリンを用いる併用療法は、L−ドーパの用量を25〜30%減少させることを可能にする。さらに、より若いパーキンソン病患者においては特に、セレギリンの早期投与により、極めて煩わしく感じられるジスキネジアの発現を抑制することが可能であることが観察されている。
【0004】
L−ドーパの他、ドパミンアゴニスト作用性活性物質、例えば、リスリド、ブロモクリプチン、プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン、テルグリド、カベルゴリン、アポモルフィン、ピリベジル(piribedile)、PHNO(4−プロピル−9−ヒドロキシナフトキサジン)などがパーキンソン病の治療に用いられている。伝達物質であるドパミンは、そのようなドパミン作用性活性物質によりかなりの程度まで置換され得る。
【0005】
パーキンソン病の併用療法における重要な役割は、特に振戦の抑制を可能にする抗コリン作用性活性物質(ムスカリン受容体アンタゴニスト)を用いた処置によって果たされる。治療的に重要なこの群の活性物質は、例えば、ビペリデン、トリヘキシフェニジル、プロシクリジン、ボルナプリン(bornaprine)、メチキセン、オルフェナドリン、スコポラミン、アトロピンおよび他のベラドンナアルカロイド、ベンズトロピンならびにニコチンである。
【0006】
また、NMDA(N−メチル−D−アスパラギン酸)受容体アンタゴニストである活性物質のさらなる群もパーキンソン病治療に適している;これらは、例えば、メマンチンおよびアマンタジンを含む。これらの物質は、L−ドーパと共に相乗的に作用し、併用療法の場合には、L−ドーパの用量を減少させる。パーキンソン病患者における無動は、NMDA受容体アンタゴニストの付加的な投与により有利な影響を受ける。
【0007】
パーキンソン病の併用療法は、一般的には確立されており、得られる有利な効果は既知である(例えば、E. Schneider, "Kombinierte Therapien"; "Neuro-Psychopharmaka", vol. 5: Parkinsonmittel und Nootropika, pp. 131-144; ed. P. Riederer et al.; Springer Verlag, Vienna, 1992)。しかしながら、時間におけるある1点で得られる効果は、どちらかといえば、一回の用量として経口吸収の後の活性物質の偶然的な内因性動態に依存するため、おおむね、経口医薬の組み合わせは欠点を有する。活性物質の組み合わせ中に含有される各々の活性物質は、半減期および経口投与の間隔という点において異なるため、異なる活性物質に対する患者の均一な暴露とならず、むしろ各活性物質成分の相対的な効果における激しい変動があり、1日の間に活性物質のレベルに生じる変化に依存する。
【0008】
これら既知の薬物動態学的特殊性のため、経口投与形態(例えば、組み合わされた活性物質を含む錠剤)内の「固定された」活性物質の組み合わせは、薬物承認当局により極めて問題のあるものとみなされており、例外的なケースにおいてのみ承認されているにすぎない。したがって、併用療法は、一般的に2種または3種以上の単一物質の製剤を別々に投与することにより行われている。しかしながら、これには、これらそれぞれの物質のそれぞれの半減期に正確に適応した投与間隔が要求される。しかし、このケースにおいては、各活性物質の各々の活性物質濃度は、特にもう1種のものに対し、激しい変動にさらされている。加えて、患者または看護スタッフが厳密に投与間隔を堅く守ることは常に保証されているわけではない。投与計画を遵守しないことにより、場合によっては、併用療法の有利な効果をかなり減少させることになる。
【0009】
経口の併用療法のさらなる欠点は、異なる活性物質の同時投与が、望ましくない副作用のリスクを増加させることである。これらの副作用は、しばしば、経口投与直後の一過性の血漿ピーク値の出現に起因する。
経口パーキンソン病医薬の他に、経皮投与可能な活性物質製剤もまた既知である。例えば、L−ドーパ(Sudo et al.: Transdermal absorption of L-dopa from hydrogel in rats; Eur. J. Pharm. Sci. 7 (1998), 67-71)、ロチゴチン(EP-A-1 256 339)およびデプレニル= セレギリン (EP-B-0 404 807)。
【0010】
本発明の目的は、パーキンソン病処置のための併用療法を簡単かつ確実な方法で行うことができ、そして上記欠点を回避または軽減することを可能にする医薬製剤を提供することであった。本発明のさらなる目的は、パーキンソン病の薬物併用療法のための方法を示すことであった。
驚くべきことに、前記目的は、請求項1に記載の経皮医薬製剤により、請求項16に記載の経皮医薬の製造のための活性物質の組み合わせの使用により、および請求項18に記載のパーキンソン病の治療的処置のための方法により、ならびに従属請求項において記載されている好ましい態様により、解決される。
【0011】
請求項1によれば、本発明の経皮医薬製剤は、活性物質の下記群:
a)ドパミンアゴニストおよびL−ドーパ、
b)モノアミンオキシダーゼ阻害剤、
c)抗コリン作用薬、
d)NMDA受容体アンタゴニスト、
e)交感神経刺激作用薬
から選択される少なくとも2種の活性物質の組み合わせを含む。
【0012】
前記活性物質の少なくとも2種は、異なる活性物質の群に属するものである。「活性物質」は、個々の活性物質化合物それ自体(例えば、遊離活性物質塩基)ならびにその薬学的に許容される塩および付加塩(例えば、酸付加塩)の両者を意味するものと理解される。さらに、用語「活性物質」は、当てはまる場合には、薬理学的に活性なもしくはより有効なエナンチオマーおよび対応するラセミ混合物の両者をいう。
【0013】
活性物質の組み合わせの経口投与とは対照的に、組み合わせのパートナーの相対的活性が、その異なる半減期のために変動にさらされる場合にも、経皮投与は血漿レベルにおける同等指向の増加および減少(like-oriented increase and decrease)を維持することを可能にする。経皮投与により、血漿ピーク値の出現は大きく回避され、血漿濃度の時間経過は一般的により一定になるため、生じる副作用のリスクは減少する。より一定な動態のため、経皮治療システムが活性物質の組み合わせの制御された投与のために用いられる場合には特に、組み合わされた活性物質の投与の有利な効果は、経口投与の場合よりもより確実に達成される。特に、経皮治療システムが使用される場合には、処方された投与計画の遵守は容易になり、安全になる。
【0014】
驚くべきことに、異なる作用メカニズムに基づく前記の活性物質の群の2種または3種以上からの活性物質を組み合わせることが、効果のさらなる付加的な組み合わせに寄与すること、そして、これらの有利な効果が組み合わされた経皮投与により達成され得ることが見出された。このようにして、互いに両立しかつ適合した個々の活性物質成分の活性物質レベルが得られ、それにより、併用療法の安全性を確実にする。
【0015】
さらに、驚くべきことに、(請求項1において言及されている条件に従えば)2種の活性物質の調整可能ないずれの組み合わせをも使用することができるので、例えば、病気の段階または症状の種類および重篤度に依存して、パーキンソン病患者の特定のグループに対し、適切な薬物療法が可能になる。
ドパミンアゴニストの群は、特に、活性物質であるリスリド、ブロモクリプチン、プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン、テルグリド、カベルゴリン、アポモルフィン、ピリベジル、ペルゴリドおよび4−プロピル−9−ヒドロキシナフトキサジン(PHNO)を含む。
【0016】
モノアミンオキシダーゼ阻害剤の群は、好ましくはモノアミンオキシダーゼB(MAO−B)選択的阻害剤からなり、特に好ましくはセレギリン(=L−デプレニル)である。セレギリンは、好ましくは酸付加塩の形態で用いられ、ハロゲン酸との塩(例えば、塩酸セレギリン)または有機酸との塩(例えば、クエン酸セレギリン)が特に考慮される。セレギリンは、極めて有効な選択的かつ不可逆的MAO−B阻害剤であるだけでなく、さらにカテコラミン作動性中枢神経においてドパミンの再吸収を阻害し、そして6−OH−ドパミンの神経毒性作用に対してある種の保護作用を有するため、特に好適である。経皮投与は、初回通過代謝が回避されるため、−対応する経口用量と比較して−顕著により高い血漿レベルを達成することが可能である一方で、問題とみなされる代謝産物(とりわけL−アンフェタミン、メタンフェタミン)の血漿濃度が明らかに減少することから、特に有利である。
【0017】
抗コリン作用薬(ムスカリン受容体アンタゴニスト)の群から、下記活性物質が好ましく考慮される:ビペリデン、トリヘキシフェニジル、プロシクリジン、ボルナプリン、メチキセン、オルフェナドリン、スコポラミン、アトロピンおよび他のベラドンナアルカロイド、ベンズトロピンならびにニコチン。
NMDA受容体アンタゴニストの群から、メマンチンおよびアマンタジンが好ましく考慮される。交感神経刺激作用薬の群は、特にフェニルエチルアミン誘導体の群からの活性物質を含み、3,4−メチレンジオキシメタンフェタミン(=MDMA=「エクスタシー(Ecstacy)」)が特に好ましい。
【0018】
好ましい態様によれば、本発明の医薬製剤は、
a)モノアミンオキシダーゼB阻害剤の群からの少なくとも1種の活性物質、好ましくはセレギリンを、ドパミンアゴニストの群からの少なくとも1種の活性物質と組み合わせて、
または
b)モノアミンオキシダーゼB阻害剤の群からの少なくとも1種の活性物質、好ましくはセレギリンを、L−ドーパと組み合わせて、
または
c)モノアミンオキシダーゼB阻害剤の群からの少なくとも1種の活性物質、好ましくはセレギリンを、ドパミンアゴニストの群からの少なくとも1種の活性物質と組み合わせかつL−ドーパと組み合わせて、
含む。
【0019】
さらなる好ましい態様によれば、2種の活性物質の組み合わせ、すなわち好ましくは、
a)ドパミンアゴニストとモノアミンオキシダーゼB阻害剤、特にセレギリンとの組み合わせ、または
b)L−ドーパとモノアミンオキシダーゼB阻害剤、特にセレギリンとの組み合わせ、または
c)ドパミンアゴニストと抗コリン作用性活性物質との組み合わせ、または
d)L−ドーパと抗コリン作用性活性物質との組み合わせ、または
e)ドパミンアゴニストとNMDA受容体アンタゴニストとの組み合わせ、または
f)L−ドーパとNMDA受容体アンタゴニストとの組み合わせ
を含む本発明の経皮医薬製剤が提供される。
【0020】
さらなる本発明の好ましい態様によれば、医薬製剤は、3種の活性物質の組み合わせ、好ましくは、
a)ドパミンアゴニストもしくはL−ドーパ、抗コリン作用性活性物質、およびNMDA受容体アンタゴニストの組み合わせ、
または
b)ドパミンアゴニストもしくはL−ドーパ、抗コリン作用性活性物質、およびモノアミンオキシダーゼB阻害剤、特にセレギリンの組み合わせ
を含んでもよい。
【0021】
3種の活性物質のかかる組み合わせにおいて、ドパミンアゴニストはパーキンソン病の基本的な治療に関与する一方で、抗コリン作用性物質は、振戦に好ましい効果を及ぼし、そしてNMDA受容体アンタゴニストにより無動のさらなる改善が達成される。セレギリンの(さらなる)投与は、同時に、病気の進行を抑制するのに好ましい効果を有し、そしてさらに、必要とされるドパミンアゴニストの用量が減少する。
【0022】
さらなる好ましい態様によれば、本発明の医薬製剤は、セレギリンと、 ロピニロール、プラミペキソールおよびロチゴチンを含む群からのドパミンアゴニストとの組み合わせを含む。セレギリンとロチゴチンとの組み合わせが特に好ましい。
上記の医薬製剤、特にL−ドーパを含む組み合わせが、さらにカテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害剤およびデカルボキシラーゼ阻害剤を含む群から選択されるさらなる活性物質、特に好ましくはエンタカポン、ベンセラジドおよびカルビドパ、の少なくとも1種をさらに含む場合は、さらに有利である。
【0023】
パーキンソン病性の振戦の処置に対しては特に、β遮断薬の群、好ましくはプロプラノロール、チモロール、ピンドロールおよびアテノロールを含む群、からの活性物質の少なくとも1種をさらに含む、本発明による医薬製剤が有利であり得る。
【0024】
本発明による経皮医薬製剤は、例えば軟膏またはゲルなどの経皮システム的な活性物質投与が可能な、当業者に既知の異なる剤型で製造することができる。好ましくは、医薬製剤は、経皮治療システム(TTS)として処方される;この目的のために好適なかかるシステムの構造ならびに処方補助剤および他の材料は、当業者に既知である。経皮治療システムは、予め決定し得る放出速度で一定の期間内での皮膚への活性物質の制御された放出を可能にする。
【0025】
TTSは、その特殊性により、パーキンソン病患者の処置における活性物質の組み合わせの投与に特に適している。それは、個々の活性物質成分の血漿レベルの時間経過が経口投与に比べてより一貫しており、そしてこのためにより低い副作用しか起こさないためである。さらに、一方では、2種または3種以上の活性物質を一緒に単一のTTSを適用することにより投与することが可能であるため、他方では、典型的にはTTSは約6〜48時間の適用期間にわたり患者の皮膚上に残っているため、活性物質組み合わせTTSにより、投与間隔の遵守という問題がかなり減少する。例えば、1日1回もしくは1日ごとに活性物質組み合わせTTSを変えることにより処置を行うことができる。これは、単一の活性物質製剤による経口の併用療法に比べて、かなり適用を容易にする。
【0026】
本発明によるTTSは、好ましくは、簡単に適用される圧力により皮膚に接着する活性物質プラスターとして処方される;活性物質の組み合わせは、場合によってはさらなる補助剤と共に、マトリックスタイプであるかまたはバッグの形状を有するいずれかの活性物質貯留部に含有される。TTSの構造は、さらに、活性物質非透過性の支持体層、ならびに同様に活性物質非透過性の剥離可能な保護フィルムを含む。
【0027】
前記のバッグ形状の貯留部は、液状で高粘性の半固体またはチキソトロピックな(thixotropic)マトリックスにより充てんされている;より詳細には、ゲルとして処方されてもよい。皮膚から避けられているバッグの裏側は、この場合には活性物質非透過性であり、そして皮膚に面している側は活性物質透過性でなければならない。任意に、活性物質透過性膜(制御膜)は、活性物質の放出を制御する機能を有していてもよい。この目的に適した材料および補助剤は、当業者に既知である。
【0028】
特に好ましいのは、固体マトリックス中に活性物質の組み合わせを含有するTTSである。最も単純なケースでは、本発明によるTTSは、マトリックス基剤ポリマーの溶液中に上記の活性物質の組み合わせを、おおまかに(すなわち粒子状に)、コロイド状にまたは分子的に、分散あるいは溶解し、そして好適な支持体−一般的にはシリコーン処理された(siliconised)熱可塑性フィルム(後に保護層として働く)−上にこの混合物を塗工することにより、得ることができる。溶媒部分を乾燥または蒸発させた後、感圧接着性活性物質貯留部である得られた層を、後にTTSの支持層となるさらなるフィルムにより覆う。次いで、平らな形状を打ち抜くことによりこの積層物からTTSの所望の幾何学的形状を得ることができる。
【0029】
支持層として好適なのは、とりわけポリエステルであり、また例えば、ポリ塩化ビニル、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース誘導体などの他のいずれの皮膚親和性プラスチックである。各ケースにおいて、支持層は、例えば、金属あるいは、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは当業者に既知の同様な物質などの他の拡散阻害添加剤の蒸着による、付加的な層を備えていてもよい。支持層に用いられるのと同じ材料は、剥離可能な保護フィルムにも用いられ得る。ただし、前記フィルムは、好適な表面処理、例えばシリコーン処理などにより、剥離可能になっている。
【0030】
マトリックス層の製造に好適な基剤ポリマーは、とりわけアクリル酸およびアクリル酸エステルをベースにしたポリマー、ポリアクリル酸エステル、イソブチレン、エチレン酢酸ビニル、ゴム、ゴムおよび樹脂の混合物、セルロース誘導体、特にメチルセルロースおよびエチルセルロース、スチレン−ジエン共重合体、合成ゴム、感圧性シリコーン接着剤またはホットメルト接着剤である。明記したポリマーの好適な混合物もまた、有利に用いられ得る。用語「ホットメルト接着剤」は、溶媒によるのではなく、高温、例えば60〜200℃の範囲で融解することにより液化する全ての接着剤を含む。ホットメルト接着剤として好適なのは、例えば、水素添加コロフォニー(colophony)のエステルとセルロース誘導体との混合物である。
【0031】
本発明によるTTSは、さらなる補助剤、特に皮膚透過促進剤、可塑剤、粘着付与剤、pH調整剤および抗酸化剤の群からの補助剤を任意に含有してもよい。
透過促進物質として好適なのは、まず、脂肪アルコール、脂肪酸、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、脂肪アルコールエステルおよび脂肪酸エステルの群からの物質、特にソルビタンモノラウレート、またはメチルアルコール、エチルアルコールもしくはイソプロピルアルコールと長鎖脂肪酸とのエステル、または酢酸もしくは乳酸と脂肪アルコールとのエステルである。オレイン酸ジエタノールアミンなどの物質もまた考慮される。これらの物質の成分含有量は、各ケースにおいて、各物質マトリックスの全重量に対して0.1〜25重量%、好ましくは1〜10重量%である。
【0032】
活性物質セレギリンを含む好ましい活性物質の組み合わせを含有するTTSの製造は、米国特許第5,462,746号および5,902,601号において記載されている方法により行うことができる。セレギリン塩基は液体であり、室温で容易に揮発し、TTSの製造をより困難にする。非揮発性であるセレギリンの塩酸塩は、その乏しい皮膚透過性のためさらに好適でない。米国特許第5,462,746号によれば、セレギリン塩酸塩は、マトリックス基剤ポリマーの溶液(例えば、感圧性接着ポリマー)と共に混合し、この混合物を支持体に塗工する。乾燥させた層は、活性物質の塩から遊離塩基を放出することができる塩基性基を含む第2のマトリックス層で覆われる。
米国特許第5,902,601号(またはDE-A 43 32 094)によれば、マトリックス基剤ポリマーを、液体である容易に揮発しやすい活性物質または補助剤中に溶解し、支持体に塗工する。そのような容易に揮発しやすい物質を含まない1種または2種以上のさらなるマトリックス層がこの層上に積層される。活性物質または補助剤が前記のさらなるマトリックス層中に移行するため、全体として剪断安定な(shear-stable)活性物質マトリックスが得られる。
【0033】
したがって、本発明はまた、少なくとも2層を積層することにより製造され、該層の各々は少なくとも1種の活性物質を含み、ここで、第1の層を調製するために、容易に揮発しやすい活性物質または補助剤が(例えば、セレギリン塩基)マトリックス基剤のための溶媒として使用され、そして、前記層は、容易に揮発しやすい活性物質または容易に揮発しやすい補助剤を用いることなく調製された第2の層に積層され、そして、容易に揮発しやすい活性物質または補助剤の前記第2の層への拡散移行により、剪断安定な合成物および均一な外観のマトリックスが得られる、TTSをもまた包含する。
【0034】
活性物質の組み合わせのうちの前記少なくとも2種の活性物質は、活性物質貯留部の同じ層中に含有されてもよい。好ましい態様によれば、この組み合わせの各活性物質は、特に前記組み合わせの少なくとも2種の活性物質は、経皮治療システムの異なる層または異なるコンパートメントの中に含有されて提供される。
【0035】
本発明によるTTSは、好ましくは5〜50cmの範囲の表面積を有し;活性物質の全含量は、活性物質を含む貯留部に対して好ましくは0.1〜50重量%、好ましくは1〜10重量%である。活性物質の放出速度は好ましくは、0.1mg/cmdであり;放出される1日の用量は、活性物質の組み合わせに対して約0.1mg〜50mgの範囲である。放出速度および1日の用量は、所望の治療効果に依存して、各成分が異なるように調整され得る。
本発明によるTTSは、好ましくは0.5〜7日、特に1〜3日の範囲の期間にわたり、活性物質の組み合わせの制御された持続的放出を可能にする。
【0036】
本発明はさらに、上記で明示した通りの少なくとも2種の抗パーキンソン病活性物質の組み合わせの、パーキンソン病の処置のために好適な経皮投与可能な医薬、特にTTS、の製造のための使用を包含する。
【0037】
さらに、本発明はまた、パーキンソン病患者の治療的処置方法を示す;これらの方法は、上記で明示した通りの活性物質の組み合わせの、前記病により影響される人への経皮経路を介した投与に基づいている。この活性物質の組み合わせは、好ましくは特定の時間間隔(2日ごと、毎日、1日おきなど)で変化するTTSの形態で投与される。
【0038】
さらなる態様によれば、活性物質の組み合わせの各活性物質成分は、2種または3種以上のTTSにより投与され、ここで前記TTSは処置される患者の皮膚にそれぞれ適用され、そして、前記TTSの各々は、前記活性物質の組み合わせのうちの少なくとも1種の活性物質を含有する。
本発明は、パーキンソン症候群の併用療法をより簡便かつ安全にし、そして、適用のさらなるより様々な可能性を開くものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーキンソン病の処置のための経皮医薬製剤であって、活性物質の下記群:
a)ドパミンアゴニストおよびL−ドーパ
b)モノアミンオキシダーゼ阻害剤
c)抗コリン作用薬
d)NMDA受容体アンタゴニスト
e)交感神経刺激作用薬
から選択される少なくとも2種の活性物質の組み合わせを含み、
少なくとも2種の前記活性物質は、異なる活性物質の群に属するものであることを特徴とする、前記医薬製剤。
【請求項2】
ドパミンアゴニストの群が、リスリド、ブロモクリプチン、プラミペキソール、ロピニロール、ロチゴチン、テルグリド、カベルゴリン、アポモルフィン、ピリベジル、ペルゴリドおよび4−プロピル−9−ヒドロキシナフトキサジン(PHNO)を含むことを特徴とする、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
モノアミンオキシダーゼ阻害剤の群が、モノアミンオキシダーゼB選択的阻害剤からなり、特に好ましくはセレギリンであることを特徴とする、請求項1または2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
抗コリン作用薬の群が、下記活性物質:ビペリデン、トリヘキシフェニジル、プロシクリジン、ボルナプリン、メチキセン、オルフェナドリン、スコポラミン、アトロピンおよび他のベラドンナアルカロイド、ベンズトロピンならびにニコチンを含むことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項5】
NMDA受容体アンタゴニストの群が、メマンチンおよびアマンタジンを含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項6】
交感神経刺激作用薬の群が、フェニルエチルアミン誘導体の群からの活性物質を含み、特に好ましくは3,4−メチレンジオキシメタンフェタミンであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項7】
医薬製剤が、
a)モノアミンオキシダーゼB阻害剤の群からの少なくとも1種の活性物質、好ましくはセレギリンを、ドパミンアゴニストの群からの少なくとも1種の活性物質と組み合わせて、
または
b)モノアミンオキシダーゼB阻害剤の群からの少なくとも1種の活性物質、好ましくはセレギリンを、L−ドーパと組み合わせて、
または
c)モノアミンオキシダーゼB阻害剤の群からの少なくとも1種の活性物質、好ましくはセレギリンを、ドパミンアゴニストの群からの少なくとも1種の活性物質と組み合わせかつL−ドーパと組み合わせて、
含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項8】
医薬製剤が、2種の活性物質の組み合わせ、好ましくは、
a)ドパミンアゴニストとモノアミンオキシダーゼB阻害剤、特にセレギリンとの組み合わせ、または
b)L−ドーパとモノアミンオキシダーゼB阻害剤、特にセレギリンとの組み合わせ、または
c)ドパミンアゴニストと抗コリン作用性活性物質との組み合わせ、または
d)L−ドーパと抗コリン作用性活性物質との組み合わせ、または
e)ドパミンアゴニストとNMDA受容体アンタゴニストとの組み合わせ、または
f)L−ドーパとNMDA受容体アンタゴニストとの組み合わせ
を含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項9】
医薬製剤が、3種の活性物質の組み合わせ、好ましくは、
a)ドパミンアゴニストもしくはL−ドーパ、抗コリン作用性活性物質、およびNMDA受容体アンタゴニストの組み合わせ、
または
b)ドパミンアゴニストもしくはL−ドーパ、抗コリン作用性活性物質、およびモノアミンオキシダーゼB阻害剤、特にセレギリンの組み合わせ
を含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項10】
医薬製剤が、セレギリンと、 ロピニロール、プラミペキソールおよびロチゴチンを含む群からのドパミンアゴニストとの組み合わせ、特に好ましくはセレギリンとロチゴチンとの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項11】
医薬製剤が、カテコール−O−メチルトランスフェラーゼ阻害剤およびデカルボキシラーゼ阻害剤を含む群から選択されるさらなる活性物質、特に好ましくはエンタカポン、ベンセラジドおよびカルビドパ、の少なくとも1種をさらに含む、請求項1〜10のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項12】
医薬製剤が、β遮断薬の群、好ましくはプロプラノロール、チモロール、ピンドロールおよびアテノロールを含む群、からの活性物質の少なくとも1種をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項13】
医薬製剤が、経皮治療システムとして、好ましくは皮膚に接着する活性物質パッチの形態で、存在することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項14】
少なくとも2種の活性物質が、経皮治療システムの異なる層または異なるコンパートメントの中に含有されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項15】
医薬製剤が少なくとも2層を積層することにより製造され、該層の各々は少なくとも1種の活性物質を含み、ここで、第1の層を調製するために、容易に揮発しやすい活性物質または容易に揮発しやすい補助剤がマトリックス基剤のための溶媒として使用され、そして、前記層は、容易に揮発しやすい活性物質または容易に揮発しやすい補助剤を用いることなく調製された第2の層に積層され、そして、容易に揮発しやすい活性物質または容易に揮発しやすい補助剤の前記第2の層への拡散移行により、剪断安定な合成物および均一な外観のマトリックスが得られることを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の医薬製剤。
【請求項16】
請求項1〜12において定義されている活性物質の組み合わせの、パーキンソン病を処置するための経皮投与医薬の製造のための使用。
【請求項17】
医薬が、経皮治療システムとして処方されることを特徴とする、請求項16に記載の使用。
【請求項18】
パーキンソン病に罹患している人の治療的処置方法であって、請求項1〜12において定義されている活性物質の組み合わせが、経皮経路を介して前記人に投与される、前記方法。
【請求項19】
活性物質の組み合わせの投与が、前記組み合わせを含む経皮治療システムにより達成されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
活性物質の組み合わせの投与が、2種または3種以上の経皮治療システムにより達成され、前記システムの各々は、前記活性物質の組み合わせのうちの少なくとも1種の活性物質を含有することを特徴とする、請求項18に記載の方法。

【公表番号】特表2007−502795(P2007−502795A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523588(P2006−523588)
【出願日】平成16年8月14日(2004.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/009136
【国際公開番号】WO2005/018619
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】