説明

ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルおよびそれを用いた皮膚外用剤

【課題】優れた経皮吸収促進作用を有しており、化粧品および医薬品として広く使用し得る化合物を提供すること。
【解決手段】エステル化度が10〜90%であり、極限粘度が3dL/g未満であるヒアルロン酸プロピレングリコールエステル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の条件を満たすヒアルロン酸プロピレングリコールエステル、および該ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルを含有する皮膚外用剤に関する。本発明の皮膚外用剤は、活性物質の経皮吸収促進作用があり、曳糸性が低く、アルコール溶媒に溶解しやすい一方で汗で流れにくく、乳化性が良好で、皮膚に適用したときの使用感に優れているという特徴を有している。このため、化粧品および医薬品として広く使用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
肌荒れは、空気が乾燥しているときや肌を洗浄する際に、皮膚表面から水分が過度に失われることによって引き起こされる。また、現代では多種多様な化学物質が社会に氾濫していることから、これらの化学物質に触れた皮膚の機能が阻害され、脂質分泌機能低下などによる肌荒れ状態を招くことも多い。このため、肌荒れを事前に防止し、優れた保湿作用を有する皮膚外用剤を提供することが求められている。
【0003】
保湿効果を有する活性化合物として、これまでに水溶性のポリオールを中心として様々な化合物が提供されてきた。その中には、プロピレングリコールのようにすでに実用化されているものもある。しかしながら、実用化されている保湿性化合物の中には、適用したときに不快感が伴うものや、保湿効果が不十分であるものも多く、新たな保湿性化合物の開発が依然として求められている。
【0004】
また、別の保湿性化合物として、ヒアルロン酸ナトリウムも提供されている。ヒアルロン酸ナトリウムは水和性も高いために有用な化合物として注目されている。しかしながら、ヒアルロン酸ナトリウムの水溶液は中性pH域では高い安定性を示すものの、酸性溶液または塩溶液中では安定性が低下するという欠点がある。このため、化粧品などとして使用する際には、保存条件や適用条件によっては保湿性を有効に発揮させることができないという問題があり、解決が求められている。
【0005】
これに対し、低pH系や陽イオン存在系において優れた粘度安定性を示す保湿性化合物として、極限粘度3dL/g以上(分子量に換算して約10万)の条件を満たすヒアルロン酸プロピレングリコールエステルが提示されている(特許文献1参照)。この文献の実施例によれば、保存条件や適用条件によらず保湿性を有効に発揮させることができることが明らかにされている。
【特許文献1】特開2001−233901号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一方、美白作用を有するアルブチン等の水溶性化合物は、一般的に経皮吸収されにくいことが知られている。化粧品として用いる際は、皮膚に適用したときに皮膚の内部にまで水溶性化合物が浸透することが求められており、経皮吸収促進作用を示す化合物と併用することが望ましいものである。しかし、どのような化合物に経皮吸収促進作用が存在するのかという点について、予測性を与えるような知見は現在得られていない。
【0007】
そのような状況の中で、本発明者らは種々の化合物の経皮吸収促進作用を調べた結果、従来化粧品用途に有用な化合物として提案されているものであっても、経皮吸収促進作用が必ずしも十分でないことが多いことを見出した。例えば、ヒアルロン酸ナトリウムや、上記の特許文献1に記載される極限粘度3dL/g以上の条件を満たすヒアルロン酸プロピレングリコールエステルの経皮吸収促進作用を測定してみたところ、その経皮吸収促進作用が十分に満足いくものとなっていないことが判明した。
【0008】
以上の従来技術の課題を考慮して、本発明者らは、優れた経皮吸収促進作用を有しており、化粧品および医薬品として広く使用し得る化合物を提供することを目的として検討を進めた。特に、これらの有用性に加えて、曳糸性が低く、アルコール溶媒に溶解しやすい一方で汗で流れにくく、乳化性が良好で、皮膚に適用したときの使用感に優れている化合物および皮膚外用剤を提供することを目的として検討を進めた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために鋭意検討を行なった結果、本発明者らは、特定の条件を満たすヒアルロン酸プロピレングリコールエステルが優れた性質を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、エステル化度が10〜90%、好ましくは20〜80%、より好ましくは25〜73%であるヒアルロン酸プロピレングリコールエステルを提供する。また、本発明は、極限粘度が3dL/g未満、好ましくは0.2〜2.8dL/g、より好ましくは0.3〜2.3dL/g、さらにより好ましくは0.3〜2.0dL/g、なお好ましくは0.4〜1.8dL/g、さらになお好ましくは0.4〜1.6dL/g、特に好ましくは0.5〜1.2dL/gであるヒアルロン酸プロピレングリコールエステルも提供する。特に好ましい本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルは、エステル化度が25〜73%であり、極限粘度が0.5〜1.2dL/gである化合物である。本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルは、化粧または医薬活性化合物(例えば美白活性化合物)と組み合わせることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、上記ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルを含むことを特徴とする皮膚外用剤も提供する。本発明の皮膚外用剤は、保湿剤、乳化剤、美白剤等として有用である。なお、本明細書において、「〜」はその前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【発明の効果】
【0012】
本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルは、活性物質の経皮吸収促進作用があり、角層水分を保持する効果が高く、曳糸性が低く、アルコール溶媒に溶解しやすい一方で汗で流れにくく、広いpH領域において粘度安定性に優れており、乳化性が良好で、皮膚に適用したときの使用感に優れているという特徴を有している。このため、本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルを含む皮膚外用剤は、化粧品および医薬品の成分として特に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下において、本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルおよび皮膚外用剤等について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
【0014】
本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルは、エステル化度が10〜90%であって、極限粘度が3dL/g未満である化合物である。エステル化度と極限粘度のそれぞれの好ましい範囲は上記のとおりである。好ましい本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルは、エステル化度が10〜90%であり、かつ極限粘度が0.3〜2.0dL/gである化合物である。より好ましくはエステル化度が10〜90%でありかつ極限粘度が0.4〜1.6dL/gである化合物、さらにより好ましくはエステル化度が10〜90%でありかつ極限粘度が0.5〜1.2dL/gである化合物である。
【0015】
なお、本明細書において「エステル化度」とは、ヒアルロン酸を構成しているカルボン酸の中でエステル化されているものの割合を示す。また、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルの極限粘度は、温度25℃において0.2mol/Lの塩化ナトリウム溶液中で測定した測定値を用いた。
【0016】
さらに、本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルは同程度の分子量のヒアルロン酸やヒアルロン酸塩(例えばナトリウム塩)と比較しても、広いpH領域にわたって優れた粘度安定性を示し、曳糸性が低く、乳化性、保湿性、経皮吸収促進作用、角層水分を保持する効果が高く、ヒアルロニダーゼなどの酵素に対する耐性を有する化合物である。また、陽イオン性物質(特に陽イオン性界面活性剤)に対する溶解性も高いため、リンスなどの製品化を行いやすいという利点もある。
【0017】
本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルを構成するヒアルロン酸部分の種類と構造は特に制限されない。ヒアルロン酸はD−グルクロン酸とN−アセチル−D−グルコサミンからなる二糖を繰り返し単位とする多糖であるが、その分子量はプロピレングリコールエステルにしたときの極限粘度が上記範囲内になる限り制限されない。本発明に用いるヒアルロン酸は、合成したものであっても、天然から公知の手段により精製したものであっても構わない。また、ヒアルロン酸を構成するD−グルクロン酸とN−アセチル−D−グルコサミンは、本発明の効果を過度に阻害しない範囲内でその一部置換基が誘導化されていてもよい。例えば、水酸基がアルコキシ基などに置換されていても構わない。これらの置換については、当業者に自明な範囲内で適宜実施しうる。本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルは、酸部分とエステル部分が分子内で局在していてもよいし、満遍なく分散していてもよい。ただし、2分子以上のヒアルロン酸がプロピレングリコールにより架橋しているものは除かれる。
【0018】
本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルの製造方法は、特に制限されるものではない。特に好ましい製造方法は、ヒアルロン酸とヒアルロン酸ナトリウムの混合物をプロピレンオキサイドと反応させる方法である。具体的には、まずヒアルロン酸ナトリウムを、塩酸/エタノール溶液などでその一部をヒアルロン酸に変換し、加熱低分子化を行なった後、エタノールで洗浄する。これにより、ヒアルロン酸とヒアルロン酸ナトリウムの混合物が得られる。次いで、この混合物にプロピレンオキサイドを加えて加熱し、エステル化する。このときのエステル化反応の温度は50〜80℃、反応時間は0.1〜4時間程度にすることが好ましい。反応後には、エタノールで洗浄し、酢酸ナトリウムのエタノール溶液で中和し、再度エタノールで洗浄した後に乾燥することもできる。この製造方法によれば、本発明の所期の効果を有する優れたヒアルロン酸プロピレングリコールエステルを効率よく製造することができる。
【0019】
本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルは、皮膚外用剤の構成成分として極めて有用である。本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルは、粘度安定性を示し、乳化性、保湿性、経皮吸収促進作用、角層水分を保持する効果が高い化合物である。このため、本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルを含む皮膚外用剤は、保湿剤、乳化剤、経皮吸収促進剤等として有用である。
【0020】
本発明の皮膚外用剤は、例えばアルブチンなどの美白剤と組み合わせて皮膚表面に適用することにより皮膚内部への美白剤の浸透を促進させることができ、それによって安定して優れた美白作用を発揮させることができる。このような優れた効果は、上記の本発明の極限粘度の条件を満たすヒアルロン酸プロピレングリコールエステルに顕著に認められている。上記の極限粘度の条件をはずれるヒアルロン酸プロピレングリコールエステルよりもかなり効果が高いことは、従来の研究からは全く予測できなかったことである。
【0021】
本発明の皮膚外用剤にヒアルロン酸プロピレングリコールエステルとともに組み合わせて用いることができる化合物は、アルブチンに限定されない。アルブチン以外の美白剤や、コウジ酸、アスコルビン酸誘導体、その他、以下に例示されるような多数の化粧または医薬活性化合物を組み合わせて用いることができる。特に、水溶性化合物と好ましく組み合わせることができる。
【0022】
また、本発明の皮膚外用剤は、保湿効果を有しているため、皮膚表面に適度な潤いを与え平滑性を保つこともできる。さらに、本発明の皮膚外用剤は、曳糸性が低いという特徴を有するため、取り扱い易く使用感もよいという利点がある。特に、皮膚に適用したときに、みずみずしさを与えることができ、伸びの良さも体感することができる。また、本発明の皮膚外用剤は、エタノールやグリコールなどのアルコールに対する溶解性が高いという特徴も有する。したがって、特に化粧品分野において加工性や取扱性に優れ、幅広い応用を図ることが可能である。さらに、本発明の皮膚外用剤は、水に対して比較的流れにくいという特徴を有するため、皮膚に適用した後に汗で流れにくいという利点も有する。
【0023】
本発明の皮膚外用剤は、化粧品や医薬品として効果的に使用することができる。例えば、化粧石鹸、シャンプー、洗顔料、リンス、アイクリーム、アイシャドウ、クリーム・乳液、化粧水、香水、おしろい、化粧油、頭髪用化粧品、染毛料、練香水、パウダー、パック、ひげそり用クリーム、びげそり用ローション、日焼けオイル、日焼け止めオイル、日焼けローション、日焼け止めローション、日焼けクリーム、日焼け止めクリーム、ファンデーション、粉末香水、ほお紅、マスカラ、眉墨、爪クリーム、美爪エナメル、美爪エナメル除去液、洗毛料、浴用化粧品、口紅、リップクリーム、アイライナー、歯磨き、デオドラント剤、オーデコロン、養毛剤および育毛剤などとして使用することができる。また、本発明の皮膚外用剤は、軟膏剤や湿布剤などとして使用することもできる。
【0024】
本発明の皮膚外用剤には、使用目的に応じてヒアルロン酸プロピレングリコールエステル以外のさまざまな成分をさらに添加させておくことができる。例えば、エモリエント効果改善、使用感改善、使用後のかさつき軽減、可溶性改善、乳化性改善、乳化安定性改善、油剤成分との相溶性改善、使用後のつっぱり感軽減、肌への馴染み改善、皮膚上におけるのびの改善、べたつきの軽減、肌荒れ防止、美肌効果改善、皮膚保護効果改善、角質改善、表皮角化正常化(皮膚のターンオーバー亢進による不全角化予防、表皮肥厚化予防、表皮脂質代謝異常抑制)、老人性乾皮症などの乾皮症軽減、ひび割れや落屑などの皮膚乾燥状態改善、しわ発生抑制、しわ消滅、創傷治療、色素沈着予防および改善、老化防止、ふけやかゆみの軽減、脱毛軽減、頭皮疾患予防および治療、保存性改善、柔軟性改善、弾力性改善、艶付与、メラニン色素産生抑制、日焼け防止などを目的として適当な成分を添加させることができる。
【0025】
本発明の皮膚外用剤に添加しうる成分として、例えば、油脂成分、リン脂質、UV吸収剤、IR吸収剤、乳化剤、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、美白剤、ビタミン、アミノ酸、ホルモン、ペプチド、生理活性植物抽出物、蛍光材料、顔料、色素、香料、スクラブ剤、金属イオン封鎖剤、バインダー、増量剤、増粘剤、糖類、栄養成分、pH調節剤、キレート剤、殺菌剤、角質改善剤、角質溶解剤、抗生物質、皮膚透過促進剤、血行促進剤、消炎剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、鎮痛剤、皮膚軟化剤、皮膚緩和剤、創傷治療剤、新陳代謝促進剤などを使用目的に応じて適宜配合することができる。また、本発明のヒアルロン酸プロピレングリコールエステル以外の保湿成分をさらに添加することもできる。
【0026】
本発明の皮膚外用剤に使用することができる油脂成分として、脂肪酸(例えばオレイン酸、ベヘン酸、イソステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、リノール酸、γ−リノレン酸、コルンビン酸、エイコサ−(n−6,9,13)−トリエン酸、アラキドン酸、α−リノレン酸、チムノドン酸、ヘキサエン酸)、エステル油(例えばペンタエリスリトール−テトラ−2−エチルヘキサノエート、イソプロピルミリステート、ブチルステアレート、ヘキシルラウレート、オクチルドデシルミリステート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート)、ロウ(例えばミツロウ、鯨ロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、ワセリン)、動物油および植物油(例えばミンク油、オリーブ油、ヒマシ油、カカオ脂、パーム油、タラ肝油、牛脂、バター脂、月見草油、コメヌカ油、スクワラン)、鉱物油(例えば炭化水素系オイル、流動パラフィン)、シリコーンオイル(例えばメチルフェニルシリコン、ジメチルシリコン)、高級アルコール(例えばラウリルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、セチルアルコール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール)およびこれらの誘導体を例示することができる。また、有機酸として、α−ヒドロキシ酸、ヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、メバロン酸(メバロノラクトン)などを使用することができる。
【0027】
本発明の皮膚外用剤に使用することができるリン脂質として、モノアシルエステル型グリセロリン脂質やジアシルエステル型グリセロリン脂質を例示することができる。具体的には、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルセリン、リゾホスファチジルイノシトール、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、スフィンゴミエリンを挙げることができる。また、天然由来のレシチン(例えば卵黄)や、上記具体例の水素添加物も使用することができる。
【0028】
本発明の皮膚外用剤に使用することができるUV吸収剤として、オキシベンゾン(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)、オキシベンゾンスルホン酸、オキシベンゾンスルホン酸(三水塩)、グアイアズレン、サリチル酸エチレングリコール、サリチル酸オクチル、サリチル酸ジプロピレングリコール、サリチル酸フェニル、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸メチル、ジイソプロピルケイ皮酸メチル、シノキサート(p−メトキシケイ皮酸2−エトキシエチル)、ジ−p−メトキシケイ皮酸モノ−2−エチルヘキシル酸グリセリル、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノン、ジヒドロキシメトキシベンゾフェノンジスルホン酸ナトリウム、ジヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、p−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸エチル、p−アミノ安息香酸グリセリル、p−ジメチルアミノ安息香酸アミル、p−ジメチルアミノ安息香酸2−エチルヘキシル、p−ヒドロキシアニソール、p−メトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、p−メトキシケイ皮酸イソプロピル、ジイソプロピルケイ皮酸エステル、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸ナトリウム、4−tert−ブチル−4'−メトキシベンゾイルメタン、サリチル酸−2−エチルヘキシル、グリセリル−p−ミノベンゾエート、オルトアミノ安息香酸メチル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、アミル−p−ジメチルアミノベンゾエート、2−フェニルベンゾイミダゾール−5−スルフォン酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルフォン酸、ジカロイルトリオレエート、p−メトキシケイ炭酸−2−エトキシエチル、ブチルメトキシベンゾイルメタン、グリセリル−モノ−2−エチルヘキサノイル−ジ−p−メトキシベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3'−ジフェニルアクリレート、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、エチル−4−ビスヒドロキシプロピルアミノベゾエートを例示することができる。
【0029】
本発明の皮膚外用剤に使用することができる乳化剤および界面活性剤として、ノニオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤を挙げることができる。ノニオン界面活性剤として、ソルビタンエステル(例えばソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート)、ポリオキシエチレンソルビタンエステル(例えばポリオキシエチレンソルビタンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)、グリセロールエーテル(例えばグリセロールモノイソステアレート、グリセロールモノミリステート)、ポリオキシエチレングリセロールエーテル(例えばポリオキシエチレングリセロールモノイソステアレート、ポリオキシエチレングリセロールモノミリステート)、ポリグリセリン脂肪酸エステル(例えばジグリセリルモノステアレート、デカグリセリルデカイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート)、グリセリン脂肪酸エステル(例えばグリセリルモノカプレート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノミリステート、グリセリルモノパルミテート、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノリノレエート、グリセリルモノイソステアレート、グリセリルモノジリノレエート、グリセリルモノジカプレート)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレングリセリルモノミリステート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレエート、ポリオキシエチレングリセリルモノステアレート)、ポリオキシエチレン分岐アルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンオクチルドデシルアルコール、ポリオキシエチレン−2−デシルテトラデシルアルコール)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えばポリオキシエチレンオレイルアルコールエーテル、ポリオキシエチレンセチルアルコールエーテル)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル(例えばポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンジヒドロコレステロールエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油イソステアレート)、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル(例えばポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル)などを例示することができる。
【0030】
また、陰イオン界面活性剤として、高級脂肪酸(例えばオレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、バルミチン酸、ミリスチン酸、ベヘン酸)の塩(例えばジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、アミノ酸塩、カリウム塩、ナトリウム塩)、エーテルカルボン酸アルカリ塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルサルコン塩、高級アルキルスルホン酸塩を例示することができる。さらに、陽イオン界面活性剤または両性界面活性剤として、アルキル4級アンモニウム塩、ポリアミン、アルキルアミン塩などを例示することができる。
【0031】
本発明の皮膚外用剤に使用することができる粉末剤として、タルク、カオリン、フラー土、ゴム、デンプン、シリカ、珪酸、珪酸アルミニウム水和物、化学修飾珪酸アルミニウムマグネシウム、ポリアクリル酸ナトリウム、テトラアルキルアリールアンモニウムスヌクタイト、トリアルキルアリールアンモニウムスヌクタイト、モノステアリン酸エチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシビニルポリマー、チョーク、ガム質、エチレングリコールモノステアレート、エチレングリコールジステアレートを例示することができる。
【0032】
本発明の皮膚外用剤に使用することができるポリオールとして、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリンなどのポリグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、エリスリトール、マルトトリオース、スレイトール、ショ糖、グルコース、マルトース、マルチトース、フルクトース、キシリトースを例示することができる。
【0033】
本発明の皮膚外用剤に使用することができるその他の材料として、ビタミン(例えばビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)、アミノ酸(例えばプロリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、スレオニン、リジン、システイン、アルギニン)、ホルモン(例えば卵胞ホルモン、プレグネノロン、副腎皮質ホルモン)、ペプチド類(例えばケラチン、コラーゲン、エラスチン)、糖類(例えばポリオールの項で例示したもの)、無機塩(例えば塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩化カリウム、硫化カリウム)、乳酸菌培養物、ステロール類(例えばコレステロール、プロビタミンD3、カンペステロール、スチグマスタノール、スチグマステロール、5−ジヒドロコレステロール、α−スピナステロール、コレステロール脂肪酸エステル)、スフィンゴシン類(例えばスフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、フィトスフィンゴシン、デヒドロスフィンゴシン、デヒドロフィトスフィンゴシン、スフィンガジエニン)、セラミド、プソイドセラミド、サポニン、キチン誘導体、オリゴ糖(例えばマルトース、キシロビオース、イソマントース、ラクトース、スクロース、ラフィノース、マルトトリオース、キシロトリオース、マルトテトラオース、キシロテトラオース、マルトペンタオース、キシロペンタオース、マルトヘキサオース、キシロヘキサオース、マルトヘプタオース、キシロヘプタオース)、酸性ムコ多糖(ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸)、酵母エキスを例示することができる。
【0034】
さらに、本発明の皮膚外用剤には、増粘剤(例えばカルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、カラギーナン、キサンタンガム、プルラン、アルギン酸塩、アルギン酸プロピレングリコールエステル、ポリグルタミン酸、ゼラチン)、電解質(例えば塩化ナトリウム)、美白剤(例えばハイドロキノン及びその誘導体、アラントイン、ビタミンE誘導体、グリチルリチン、L−アスコルビン酸及びその誘導体、コウジ酸、エラグ酸及びその誘導体、トラネキサム酸、レゾルシン及びその誘導体、パンテリン酸誘導体、プラセンタエキス、ヨクイニン、緑茶、葛根、桑白皮、甘草、オウゴン、アロエ、橙皮、カミツレ、霊芝)、皮膚保護剤(例えばレチノール、レチノールエステル、レチノイン酸であり、特に水溶性の美白剤が好ましい)、皮膚軟化剤(例えばステアリルアルコール、グリセリルモノリシノレアート、ミンク油、セチルアルコール、ステアリン酸、ヤシ油、ヒマシ油、オイソステアリン酸)、皮膚緩和剤(例えばステアリルアルコール、モノリシノール酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、セチルアルコール)、皮膚透過促進剤(例えば2−メチルプロパン−2−オール、2−プロパノール、エチル−2−ヒドロキシプロパノアート、2,5−ヘキサンジオール、アセトン、テトラヒドロフラン)、生理活性植物抽出物(例えばアロエ、アルニカ、カンゾウ、セージ、センブリなどの抽出物)、保存剤(例えばp−ヒドロキシ安息香酸エステル、安息香酸ナトリウム、尿素、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン)、抗炎症剤(例えばサリチル酸)、殺菌剤(例えばトリクロサン)、酸化防止剤(例えばα−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン)、緩衝剤(例えばトリエタノールアミンまたは水酸化ナトリウムと乳酸の組み合わせ)、角質溶解剤(例えば乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸)、スクラブ剤(例えばポリエチレン粉末)、顔料(例えばカルシウム、バリウム及びアルミニウムのレーキ、酸化鉄、二酸化チタン、雲母)などを使用することができる。これら以外の材料についても、用途に応じて本発明の皮膚外用剤に添加することができる。各成分の添加量や添加方法については、本技術分野に周知の方法に従うことができる。
【実施例】
【0035】
以下に実施例および試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
【0036】
(実施例1)ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルの製造
ヒアルロン酸ナトリウム((株)紀文フードケミファ製、FCH−200)300gを、エタノール/水(9:1)3.6Lと塩酸180mlの混合液と混合して65℃で3時間攪拌した。その後、エタノール/水(9:1)で洗浄してヒアルロン酸とヒアルロン酸ナトリウムの混合物を得た。この混合物100g(乾燥重量)に、6倍モルのプロピレンオキサイドを加え70℃で20分エステル化反応を行った。その後、エタノール/水(9:1)で洗浄し、5モルの酢酸ナトリウムのエタノール/水(8.5:1.5)溶液で中和し、さらにエタノール/水(9:1)で洗浄した。得られた反応物を減圧乾燥することにより、ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルを得た。ヒアルロン酸プロピレングリコールエステルのエステル化度は25.9%であり、極限粘度は1.2dL/gであった(試料No.1)。
【0037】
反応条件を変えて上記と同様の手順を行うことにより、エステル化度と極限粘度を変えた複数種のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルを製造した(試料No.2〜5、7〜10)。これらのヒアルロン酸プロピレングリコールエステルの分析値を表1に示す。エステル化度は、IOB METHOD OF ANALYSIS 7.2 Determination of degree of esterificationを準用し、試験を行なうことにより決定した。なお、試料No.6、11はヒアルロン酸ナトリウムである。
【0038】
【表1】

【0039】
(試験例1)アルブチン経皮吸収促進試験
0.01%のカナマイシン(和光純薬工業(株))を含むpH7.1の等張リン酸緩衝液(以下、「Km/PBS」という)に、アルブチン(日本精化(株))1%と試料No.1〜9のいずれかを0.5%溶解して、試料溶液を調製した。皮膚の調製は藤井ら(Biol.Pharm.Bull.,20(3),249.1997)の方法に準じて行なった。即ち、−80℃で冷凍保存しておいた豚皮(Yucatan Micropig skin Set、日本チャールス・リバー(株))を自然解凍し、余分な脂肪層を取り除き、約3cm四方に切断したものを用いた。次に、膜透過実験装置((株)ビードレックス、TP−8S)のレセプター内にKm/PBSを満たし、次いで表皮層を上にして豚皮をセットした。その後、ドナー側に試料溶液を2ml供じ、蒸発しないようガラス球で蓋をして攪拌しながら37℃に保った。攪拌開始から6時間、9時間、12時間後にそれぞれ透過液を400μlサンプリングして、その都度、Km/PBSを400μl添加した。サンプリング液は高速液体クロマトグラフにて分析した。空試験としてドナー側にKm/PBSを、対照区として1%アルブチンを含むKm/PBSを用いた。
【0040】
高速液体クロマトグラフ条件
装置
ポンプ : L-7100(日立ハイテクノロジーズ)
UV検出器 : L-7400(日立ハイテクノロジーズ)
カラムオーブン : L-7300(日立ハイテクノロジーズ)
interface : D-7000
カラム : TSK-gel ODS-120T, 150mm × 4.6mm(東ソー)
カラム温度 : 40℃
溶離液 : 0.1%リン酸水溶液:メタノール(97:3)
検出波長 : 285nm
流速 : 0.8ml/min
サンプル量 : 20μl
【0041】
評価はそれぞれの試料の累積透過量を皮膚1cm平方当たりで求め、次式により換算して行なった。
【数1】

【0042】
【表2】

【0043】
表2の結果より、特に試料No.1、No.5、No.7に顕著な経皮吸収促進作用があることが確認された。
【0044】
(試験例2)コウジ酸経皮吸収促進試験
試験例1のアルブチンをコウジ酸(和光純薬工業(株)製)に替えて同様に経皮吸収促進試験を行った。試験例1と同様に12時間経過後の透過量を測定した結果、試料No.2に対して、試料No.5は6.6倍ものコウジ酸透過量を示し、特に顕著な経皮吸収促進作用があることが確認された。また、試料No.1と試料No.7も試料No.2よりも高いコウジ酸透過量を示すことが確認された。
【0045】
(試験例3)アスコルビン酸誘導体経皮吸収促進試験
試験例1のアルブチンをアスコルビン酸リン酸マグネシウム(和光純薬工業(株)製)に替えて同様に経皮吸収促進試験を行った。試験例1と同様に12時間経過後の透過量を測定した結果、試料No.2に対して、試料No.5は7.5倍ものアスコルビン酸リン酸マグネシウム透過量を示し、特に顕著な経皮吸収促進作用があることが確認された。また、試料No.1と試料No.7も試料No.2よりも高いアスコルビン酸リン酸マグネシウム透過量を示すことが確認された。
【0046】
(試験例4)酵素耐性試験
試料No.1〜9をそれぞれ0.1%含むようリン酸緩衝液(pH6)に溶解し、60℃に加温した試験液を用意した。この試験液に、生理食塩水に溶解したエンド型ヒアルロニダーゼ(天野エンザイム製、Ec4.2.2.1 Hyaluronate lyase)を1TRU(Turbidity Reducing Unit)添加し、90分後に波長230nmの光に対する吸光度を測定した。
その結果、試料No.2、No.3、No.6は吸光度が大きくて酵素耐性が低いのに対して、その他の試料はいずれも酵素耐性が高いことが確認された。
【0047】
(試験例5)角層水分量測定試験
10人の被験者の皮膚に試料No.10の1.0%水溶液を1時間閉塞塗布して、一定の温度と湿度に保った部屋で、塗布直前と塗布後90分まで角層の電気伝導度を測定した。試料No.6と精製水についても、それぞれ同じ試験を行った。結果を図1に示す。
【0048】
図1の結果より、本発明の試料No.10が、精製水やヒアルロン酸ナトリウム(試料No.6)よりも角層水分量を保持することが示された。
【0049】
(試験例6)曳糸性試験1
試料No.1〜5のいずれか0.1gを10mlの水に溶解させて1%水溶液を調製した。この溶液にあらかじめ、直径5.5mmの鉄棒を1cm浸しておき、ビーカーを50mm/minの速度で降下させたとき、鉄棒の先端が液面に達した時点から溶液が鉄棒を離れるまでの時間を計測し、そのときの曳糸長を測定した。この測定を1試料につき10回繰り返し、その平均値を試料の曳糸長とした。なお、対照区として水を用いて同様の試験を行った。
表3に各試料及び対照区の曳糸長を示す。
【0050】
【表3】

【0051】
表3の結果より、特に試料No.1、No.4、No.5の平均曳糸長が対照区と同等であることが示された。曳糸性が低い試料は、取り扱い易く使用感もよいという利点がある。
【0052】
(試験例7)曳糸性試験2
試料No.10の2%水溶液と5%水溶液をそれぞれ調製した。また、試料No.11についても同様に2%水溶液と5%水溶液を調製した。これらの水溶液について試験例6に記載される方法にしたがって平均曳糸長を測定した。なお、対照区として水を用いて同様の試験を行った。
【0053】
【表4】

【0054】
表4の結果より、本発明の試料No.10の曳糸性が低く、水の表面張力を低下させることが示された。一方、ヒアルロン酸ナトリウムである試料No.11は曳糸性が比較的高かった。
【0055】
(試験例8)水和性試験
試料No.1〜5のそれぞれについて、0.2%,0.1%,0.05%の各濃度の水溶液を50ml調製した。ろ紙の先端から1cmをこの水溶液に浸して30分間静置した後、ろ紙を水溶液から引き上げて水面からの移動距離(水の移動度)を測定した。表5に結果を示した。
【0056】
【表5】

【0057】
表5の結果より、特に試料No.1、No.4、No.5の移動度が大きくて水和能が低いことが確認された。水和能が低ければ、皮膚に適用したときに汗などで流れにくいという利点がある。
【0058】
(試験例9)アルコール溶解性試験1
試料No.1〜5をそれぞれ0.1g計り取り、90%エタノール、80%エタノール、75%エタノール、70%エタノール、60%エタノール、100%グリセリン、80%グリセリン、または40%グリセリンを10ml添加した。25℃にて1晩放置した時の溶解度を◎、○、△、×の4段階で評価した。
表6にそれぞれの試料の溶解性を示した。
【0059】
【表6】

【0060】
表6の結果より、試料No.1、No.4、No.5は比較的のアルコール溶媒に溶解しやすいことが示された。溶媒に溶解しやすければ、取り扱いが容易で化粧品を始めとする様々な用途への応用が図りやすいという利点がある。
【0061】
(試験例10)アルコール溶解性試験2
試料No.10の0.1%水溶液に最終エタノール濃度が90%、85%、80%、70%、60%、または50%になるよう、それぞれエタノールを添加した。同様に最終グリセリン濃度が100%、80%、または40%になるようグリセリンをそれぞれ添加した。25℃にて1晩放置した時の溶解度を◎、○、△、×の4段階で評価した。試料No.11についても同じ試験を行った。
表7にそれぞれの試料の溶解性を示した。
【0062】
【表7】

【0063】
表7の結果より、本発明の試料No.10は、ヒアルロン酸ナトリウム(試料11)に比べてアルコール溶媒に溶解しやすいことが示された。また、本発明の試料No.10は100%グリセリンを除く溶媒に短時間に溶解することが確認された。溶媒に溶解しやすければ、取り扱いが容易で化粧品を始めとする様々な用途への応用が図りやすいという利点がある。
【0064】
(試験例11)陽イオン性物質に対する溶解性試験
各試料を含む水溶液中に、キトサン水溶液をキトサンの最終濃度が0.1%となるよう添加して試料の溶解性を確認した。
他にキトサン(最終濃度0.1%)とモノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(同1.0%)の混合物、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム(同1.0%)、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(同1.0%)と塩化ラウリルトリメチルアンモニウム(同1.0%)の混合物、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(同1.0%)と塩化ラウリルトリメチルアンモニウム(同1.0%)の混合物を用いた場合についても、それぞれ溶解性を確認した。また、ここでは、キトサン(片倉チッカリン製、CTF)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(花王製、レオドールスーパーTW−120)、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム(花王製、コータミン24P)、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン(花王製、アンヒトール24B)を用いた。
その結果、試料No.2、No.3は白濁して沈殿を生じ、溶解性が極めて悪かった。また、試料No.6も溶解性は良好ではなかった。これに対して、試料No.5、No.7は沈殿を生じず、優れた溶解性を示した。特に、陽イオン性物質と非イオン性物質を併用した場合に透明液が得られた。
【0065】
(試験例12)粘度安定性試験
試料No.10とNo.11について、それぞれ1%水溶液を調製し、pH3〜10の範囲内で粘度を測定した。pH7の粘度を100としたときの相対値で、他のpHにおける粘度を図2に表した。
図2の結果より、ヒアルロン酸ナトリウムは特に酸性領域において粘度が低下するが、本発明の試料No.10は酸性領域を含めて粘度安定性に優れていることが示された。
【0066】
(試験例13)乳化性試験
試料No.1〜5のそれぞれについて、1%水溶液と0.2%水溶液を調製し、そこに流動パラフィン(カネダ(株)、ハイコールK−350)を1:1になるよう混合した。70℃の恒温水槽で1分間加熱しながら、ハンドホモジナイザーを用いて5000rpmで1分間攪拌したのち、水槽から取り出して30000rpmで1分間攪拌した。静置して1時間後の分離状態を観測するとともに乳化の油滴の大きさを比較した。
その結果、いずれの試料についても良好な乳化性を示した。
【0067】
(試験例14)乳化安定性試験
試料No.10の0.5%水溶液を調製し、そこに流動パラフィン、オリーブ油、ホホバ油、シリコン油のいずれかを油剤濃度が70%となるように添加した。70℃の恒温水槽で1分間加熱しながら、ハンドホモジナイザーを用いて5000rpmで1分間攪拌したのち、水槽から取り出して30000rpmで1分間攪拌した。その後、50℃に静置して30日間の乳化保持率を測定した。ここでいう乳化保持率とは、保存前の乳化相の厚さを100とした時の、日数経過後の乳化相の割合を示す。結果を図3に示す。
一方、ヒアルロン酸ナトリウムである試料No.11を用いて同じ試験を行ったところ、1日経過時点で完全に水相と油相が分離して、乳化安定性が低いことが確認された。
【0068】
図3の結果より、本発明の試料No.10はヒアルロン酸ナトリウムに比べて、流動パラフィン、オリーブ油、ホホバ油、シリコン油に対して優れた乳化作用を有することが示された。
【0069】
(試験例15)使用感テスト
試料No.1〜5のそれぞれについて0.1%水溶液を調製した。20代から50代の女6名、男7名の計13名を被験者とし、試料を手甲もしくは前腕に塗布して、みずみずしさと伸びのよさをそれぞれ−3〜+3の7段階で評価した。各試験の平均スコアを表8に示す。
【0070】
【表8】

【0071】
みずみずしさが1以上であり、且つ伸びの良さが0.4以上であるものを、特に良好なものと評価した。表8の結果より、試料No.1、No.4、No.5は特に良好であることが確認された。
【0072】
(実施例2)化粧用美容液の製造
以下の表に記載される各成分を室温にて混合し、十分に攪拌することによって化粧用美容液を製造した。なお、以下の実施例において「活性成分」と記載されるものは、エステル化度が10〜90%であり、極限粘度が3L/g未満であるヒアルロン酸プロピレングリコールエステルである。
【0073】
【表9】

【0074】
(実施例3)パウダーファンデーションの製造
以下の表に記載される各成分を室温にて混合し、十分に攪拌することによってパウダーファンデーションを製造した。
【0075】
【表10】

【0076】
(実施例4)美白パウダーの製造
以下の表に記載される各成分を室温で混合粉砕することによって美白パウダーを製造した。
【0077】
【表11】

【0078】
(実施例5)エモリエントクリームの製造
以下の表に記載される1,3−ブチレングリコールと精製水を混合し70℃に加熱した後、残余の成分の加熱溶解混合物を加え、ホモミキサーで乳化粒子を均一化し冷却することによりエモリエントクリームを製造した。
【0079】
【表12】

【0080】
(実施例6)クレンジングフォームの製造
以下の表に記載されるステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ヤシ油および防腐剤を加熱溶解して70℃に保ち、水酸化カリウムと精製水の混合物を攪拌しつつ添加した後、残余の成分を添加し十分に攪拌した後に脱気し冷却することによってクレンジングフォームを製造した。
【0081】
【表13】

【0082】
(実施例7)パックの製造
以下の表に記載される酸化チタンおよびタルクを精製水に十分に分散した後、ソルビトールを添加し70℃に加温溶解し、残余の成分の混合物を添加し十分攪拌した後、脱気、冷却することによりペースト状パックを製造した。
【0083】
【表14】

【0084】
(実施例8)口紅の製造
以下の表に記載される各成分を70℃に加熱後混合し、十分に攪拌し型入れして急冷することによって口紅を製造した。
【0085】
【表15】

【0086】
(実施例9)リップクリームの製造
以下の表に記載される活性成分、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリン酸ブチルを70℃で加温後混合し、残余の成分の混合物を添加し、十分に攪拌することによってリップクリームを製造した。
【0087】
【表16】

【0088】
(実施例10)頬紅の製造
以下の表に記載される香料と流動パラフィン以外の各成分を室温で混合し、その後、香料と流動パラフィンを噴霧して粉砕し、圧縮成形することによって頬紅を製造した。
【0089】
【表17】

【0090】
(実施例11)アイライナーの製造
以下の表に記載されるカーボンブラックを粉砕後精製水に分散し、残余の成分を室温にて混合することによってアイライナーを製造した。
【0091】
【表18】

【0092】
(実施例12)マスカラの製造
以下の表に記載される酸化鉄、精製水およびポリアクリル酸エステルエマルジョンを70℃で混合し、残余の成分を70℃で加熱溶解した混合物を添加して乳化分散することによってマスカラを製造した。
【0093】
【表19】

【0094】
(実施例13)眉墨の製造
以下の表に記載される粉末以外の各成分を融解混合し、これに粉末成分を添加して練り合わせて成形することによって眉墨を製造した。
【0095】
【表20】

【0096】
(実施例14)ハンドクリームの製造
以下の表に記載される各成分を70℃で加熱混合し、十分に攪拌することによってハンドクリームを製造した。
【0097】
【表21】

【0098】
(実施例15)毛髪用シャンプーの製造
以下の表に記載される各成分を70℃で加熱混合し、十分に攪拌することによって毛髪用シャンプーを製造した。
【0099】
【表22】

【0100】
(実施例16)毛髪用リンスの製造
以下の表に記載される各成分を70℃に加熱し混合し、十分に攪拌することによって毛髪用リンスを製造した。
【0101】
【表23】

【0102】
(実施例17)ヘアリキッドの製造
以下の表に記載される各成分を室温で混合することによってヘアリキッドを製造した。
【0103】
【表24】

【0104】
(実施例18)浴剤の製造
以下の表に記載される各成分を室温にて混合し、十分に攪拌することによって浴剤を製造した。
【0105】
【表25】

【0106】
(実施例19)美白クリームの製造
以下の表に記載される成分のうち、ともに70℃で加熱溶解した水相を油相へ添加し、ホモジナイザー処理後、冷却することによって美白クリームを製造した。
【0107】
【表26】

【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】角層水分量測定試験の結果を示すグラフである。
【図2】pHによる粘度安定性試験の結果を示すグラフである。
【図3】乳化安定性試験の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化度が10〜90%であり、極限粘度が3dL/g未満であるヒアルロン酸プロピレングリコールエステル。
【請求項2】
エステル化度が10〜90%であり、極限粘度が0.3〜2.0dL/gであるヒアルロン酸プロピレングリコールエステル。
【請求項3】
エステル化度が10〜90%であり、極限粘度が0.4〜1.6dL/gであるヒアルロン酸プロピレングリコールエステル。
【請求項4】
エステル化度が20〜80%であり、極限粘度が3dL/g未満であるヒアルロン酸プロピレングリコールエステル。
【請求項5】
エステル化度が20〜80%であり、極限粘度が0.3〜2.0dL/gであるヒアルロン酸プロピレングリコールエステル。
【請求項6】
エステル化度が20〜80%であり、極限粘度が0.4〜1.6dL/gであるヒアルロン酸プロピレングリコールエステル。
【請求項7】
エステル化度が25〜73%であり、極限粘度が3dL/g未満であるヒアルロン酸プロピレングリコールエステル。
【請求項8】
エステル化度が25〜73%であり、極限粘度が0.3〜2.0dL/gであるヒアルロン酸プロピレングリコールエステル。
【請求項9】
エステル化度が25〜73%であり、極限粘度が0.4〜1.6dL/gであるヒアルロン酸プロピレングリコールエステル。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルと化粧または医薬活性化合物を含むことを特徴とする組成物。
【請求項11】
前記化粧または医薬活性化合物が美白活性化合物であることを特徴とする請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルまたは請求項10または11に記載の組成物を含むことを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルまたは請求項10または11に記載の組成物を含むことを特徴とする保湿剤。
【請求項14】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルまたは請求項10または11に記載の組成物を含むことを特徴とする乳化剤。
【請求項15】
請求項1〜9のいずれか一項に記載のヒアルロン酸プロピレングリコールエステルと美白活性化合物を含むことを特徴とする美白剤。
【請求項16】
前記美白活性化合物がアルブチン、コウジ酸またはアスコルビン酸誘導体であることを特徴とする請求項15に記載の美白剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−62521(P2009−62521A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−199293(P2008−199293)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【出願人】(000141510)株式会社紀文フードケミファ (9)
【Fターム(参考)】