説明

ヒト血管内皮増殖因子2

【課題】新規な血管内皮細胞増殖因子およびそれをコードするDNAを提供す
ること。
【解決手段】タンパク質分子の発現に関連する疾患または該疾患に対する感受性を診断するための方法であって、該方法は:患者の細胞からの核酸を入手する工程;および(a)配列番号2を含む単離されたタンパク質分子;
(b)配列番号2のアミノ酸1〜373を含む単離されたタンパク質分子;(c配列番号2のアミノ酸−23〜373を含む単離されたタンパク質分子;および)配列番号2のアミノ酸−46〜373を含む単離されたタンパク質分子からなる群より選択される、タンパク質分子をコードする核酸配列における変異を決定する工程を包含する、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新たに同定されたポリヌクレオチド、そのようなポリヌクレオチド
によりコードされるポリペプチド、そのようなポリヌクレオチドおよびポリペプ
チドの使用、ならびにそのようなポリヌクレオチドおよびポリペプチドの産生に
関する。本発明のポリペプチドは、血管内皮増殖因子ファミリーのメンバーとし
て同定された。より詳細には、本発明のポリペプチドは血管内皮増殖因子2であ
り、時折、本明細書中以下で「VEGF2」という。本発明はまた、そのような
ポリペプチドの作用を阻害することに関する。
【背景技術】
【0002】
新たな血管の形成、すなわち脈管形成は、胚の発生、それに続く成長、および
組織修復のために必須である。しかし、脈管形成は、新生物(例えば、腫瘍およ
び神経膠腫)のような特定の病的状態に必須な部分である。そして異常な脈管形
成は、炎症、慢性関節リウマチ、乾癬、および糖尿病性網膜症のような他の疾患
に関連する(Folkman, J.およびKlagsbrun, M., S
cience 235:442−447, (1987))。
【0003】
酸性および塩基性の両方の線維芽細胞増殖因子分子は、内皮細胞および他の細
胞タイプについてのマイトジェンである。アンギオトロピン(angiotro
pin)およびアンギオゲニンは脈管形成を誘導し得るが、これらの機能は不明
である(Folkman, J., 1993, Cancer Medici
ne 153−170頁, Lea and Febiger Press)。
血管内皮細胞に対して高度に選択的なマイトジェンは、血管内皮増殖因子、すな
わちVEGFであり(Ferrara, N.ら、Endocr. Rev.
13:19−32, (1992))、血管透過因子(VPF)としても知られ
る。血管内皮増殖因子は、その標的細胞特異性が血管内皮細胞に制限されている
ようである、分泌される脈管形成マイトジェンである。
【0004】
マウスVEGF遺伝子は、特徴付けられ、そして胚形成におけるその発現パタ
ーンが解析された。VEGFの持続的な発現が、有窓内皮に隣接する上皮細胞に
おいて(例えば、脈絡叢および腎糸球体において)観察された。このデータは、
内皮細胞の増殖および分化の多機能性レギュレーターとしてのVEGFの役割に
一致した。(Breier, G.ら、Development, 114:5
21−532 (1992)。
【0005】
VEGFは、間葉細胞についてのマイトジェンである血小板由来増殖因子(P
DGF)のα鎖およびβ鎖、ならびに内皮細胞マイトジェンである胎盤増殖因子
(PLGF)に構造的に関連する。これらの3つのタンパク質は、同一のファミ
リーに属し、そして保存されたモチーフを共有する。ジスルフィド結合の形成に
寄与する8つのシステイン残基は、これらのタンパク質において厳密に保存され
る。オルタナティブスプライシングされたmRNAが、VEGF、PLGF、お
よびPDGFのいずれにおいても同定されており、そしてこれらの異なるスプラ
イシング産物は、生物学的活性およびレセプター結合特異性が異なる。VEGF
およびPDGFは、ホモ二量体またはヘテロ二量体として機能し、そしてレセプ
ターに結合する。このレセプターは、レセプターの二量体化の後に内因性のチロ
シンキナーゼ活性を顕す。
【0006】
VEGFは、オルタナティブスプライシングによる、121、165、189
、および206アミノ酸の4つの異なる形態を有する。VEGF121およびV
EGF165は、可溶性でありそして脈管形成を促進し得る。一方、VEGF1
89およびVEGF206は、細胞表面中のヘパリン含有プロテオグリカンに結
合される。VEGFの時期的および空間的な発現は、血管の生理学的増殖に相関
していた(Gajdusek, C.M.,およびCarbon, S.J.,
Cell Physiol., 139:570−579, (1989);
McNeil, P.L., Muthukrishnan, L., Wa
rder, E., D’Amore, P.A., J. Cell. Bi
ol., 109:811−822,(1989))。その高親和性結合部位は
、組織切片において内皮細胞上のみに位置付けられる(Jakeman, L.
B.ら、Clin. Invest. 89:244−253, (1989)
)。この因子は下垂体細胞およびいくつかの腫瘍細胞株から単離され得、そして
ある種のヒト神経膠腫と関係している(Plate, K.H. Nature
359:845−848, (1992))。興味深いことに、VEGF12
1またはVEGF165の発現は、チャイニーズハムスター卵巣細胞に、ヌード
マウス中で腫瘍を形成する能力を与える(Ferrara, N.ら、J. C
lin. Invest. 91:160−170, (1993))。抗VE
GFモノクローナル抗体によるVEGF機能の阻害は、免疫欠損マウスにおける
腫瘍増殖を阻害することが示された(Kim, K.J., Nature 3
62:841−844, (1993))。さらに、VEGFレセプターのドミ
ナントネガティブ変異体が、マウスにおける膠芽腫増殖を阻害することが示され
た。
【0007】
血管透過因子はまた、傷害の停止後でさえも血漿タンパク質に対する持続的な
微小血管の高透過性(microvascular hyperpermeab
ility)(これは、正常な創傷治癒の特徴的な特性である)を担うことが見
出されている。これは、VPFが、創傷治癒における重要な因子であることを示
唆する。Brown, L.F.ら、J. Exp. Med., 176:1
375−9 (1992)。
【0008】
VEGFの発現は、血管新生した組織(例えば、肺、心臓、胎盤、および固形
腫瘍)において高く、そして時間的および空間的の両方で脈管形成に相関する。
VEGFはまた、インビボで脈管形成を誘導することが示されている。脈管形成
は正常組織、特に血管組織の修復に必須であるので、VEGFは血管組織修復を
促進させることにおける使用が提案されてきた(例えば、アテローム性動脈硬化
症において)。
【0009】
Chenらに1991年12月17日に発行された米国特許第5,073,4
92号は、適切な環境において内皮細胞の増殖を相乗的に増強するための方法を
開示する。この方法は、環境にVEGF、エフェクター、および血清由来因子を
添加する工程を包含する。また、血管内皮細胞増殖因子CサブユニットDNAが
、ポリメラーゼ連鎖反応技術により調製された。このDNAは、ヘテロ二量体ま
たはホモ二量体のいずれとしても存在し得るタンパク質をコードする。このタン
パク質は、哺乳動物血管内皮細胞マイトジェンであり、そして、1992年9月
30日に公開された欧州特許出願第92302750.2号に開示されるように
、それ自体が血管の発達および修復の促進のために有用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点の解決を意図するものであり、新規な血管内皮細胞増殖
因子およびそれをコードするDNAを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、単離されたポリヌクレオチドであって:(a)配列番号2に示すポ
リペプチドをコードするポリヌクレオチド;(b)該(a)のポリヌクレオチド
にハイブリダイズし得、かつこれに対して少なくとも70%同一であるポリヌク
レオチド;および(c)該(a)または(b)のポリヌクレオチドのポリヌクレ
オチドフラグメント、からなる群より選択されるメンバーを含む、ポリヌクレオ
チドを提供する。1つの実施態様では、上記ポリヌクレオチドはDNAであり得
る。これは、配列番号2に示すポリペプチド;配列番号2に示す−46〜373
を含むポリペプチド;または配列番号2に示す1〜373を含むポリペプチドの
いずれかをコードし得る。
【0012】
本発明は、単離されたポリヌクレオチドであって:(a)ATCC受託番号9
7161に含まれるDNAによってコードされる成熟ポリペプチドをコードする
ポリヌクレオチド;(b)ATCC受託番号97161に含まれるDNAによっ
て発現されるポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;(c)該(a)また
は(b)のポリヌクレオチドにハイブリダイズし得、かつこれに対して少なくと
も70%同一であるポリヌクレオチド;および(d)(a)、(b)、または(
c)のポリヌクレオチドのポリヌクレオチドフラグメント、からなる群より選択
されるメンバーを含む、単離されたポリヌクレオチドを提供する。
【0013】
本発明はさらに、上記のいずれかに記載のDNAを含む、ベクターを提供する

【0014】
本発明はさらに、上記のベクターで遺伝子操作された宿主細胞を提供する。
【0015】
本発明はまた、ポリペプチドを産生するためのプロセスであって、上記の宿主
細胞から上記DNAによりコードされるポリペプチドを発現させる工程を包含す
る、プロセスを提供する。
【0016】
本発明はまた、ポリペプチドを発現し得る細胞を作製するためのプロセスであ
って、上記のベクターで細胞を形質転換またはトランスフェクトする工程を包含
する、プロセスを提供する。
【0017】
本発明はまた、ポリペプチドであって、(i)配列番号2の推定アミノ酸配列
を有するポリペプチド、ならびにそのフラグメント、アナログ、および誘導体;
(ii)配列番号2のアミノ酸1〜アミノ酸373を含むポリペプチド;および
(iii)ATCC受託番号97161のcDNAによりコードされるポリペプ
チド、ならびに該ポリペプチドのフラグメント、アナログ、および誘導体、から
なる群より選択される、ポリペプチドを提供する。
【0018】
本発明はまた、上記のポリペプチドについてのアゴニストとして有効な化合物
、および上記のポリペプチドに対するアンタゴニストとして有効な化合物を提供
する。
【0019】
本発明はまた、VEGF2を必要とする患者の処置方法であって、該患者に上
記のポリペプチドの治療有効量を投与する工程を包含する、方法を提供する。1
つの実施態様では、上記治療有効量のポリペプチドは、該ポリペプチドをコード
するDNAを上記患者に提供し、そして該ポリペプチドをインビボで発現させる
ことによって投与され得る。
【0020】
本発明はまた、VEGF2を必要とする患者の処置方法であって、該患者に上
記の化合物の治療有効量を投与する工程を包含する、方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、VEGF2を阻害する必要がある患者の処置方法であって、該
患者に上記のアンタゴニストの治療有効量を投与する工程を包含する、方法を提
供する。
【0022】
本発明はまた、上記のポリペプチドの発現に関連する疾患または疾患に対する
感受性を診断するためのプロセスであって:該ポリペプチドをコードする核酸配
列における変異を決定する工程を包含する、プロセスを提供する。
【0023】
本発明はまた、診断プロセスであって:宿主由来のサンプル中の上記のポリペ
プチドの存在について分析する工程を包含する、プロセスを提供する。
【0024】
本発明はまた、上記のポリペプチドについてのレセプターに結合し、そして該
レセプターを活性化または阻害する化合物を同定するための方法であって:その
表面で該ポリペプチドについてのレセプターを発現している細胞を、該レセプタ
ーへの結合を可能にする条件下で、スクリーニングされるべき化合物と接触させ
る工程であって、該レセプターが、該レセプターへの化合物の結合に応じて検出
可能なシグナルを提供し得る第2の成分と結合している、工程;および該化合物
と該レセプターとの相互作用によって生じるシグナルの存在または非存在を検出
することによって、該化合物が該レセプターに結合し、そして該レセプターを活
性化または阻害するかどうかを決定する工程、を包含する、方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明のポリペプチドは、ヒトVEGFに対するアミノ酸配列相同性に基づい
て、新規な血管内皮増殖因子として推定的に同定された。
【0026】
本発明の1つの局面によれば、 新規な成熟ポリペプチド、ならびに生物学的
に活性な、そして診断的または治療的に有用な、そのフラグメント、アナログ、
および誘導体が提供される。本発明のポリペプチドは、ヒト起源のポリペプチド
である。
【0027】
本発明の別の局面によれば、本発明のポリペプチドをコードする単離された核
酸分子が提供される。この核酸分子は、mRNA、DNA、cDNA、ゲノムD
NA、ならびに生物学的に活性な、そして診断的または治療的に有用な、そのフ
ラグメント、アナログ、および誘導体を含む。
【0028】
本発明のなお別の局面によれば、組換え技術により、そのようなポリペプチド
を産生するためのプロセスが提供される。このプロセスは、本発明のポリペプチ
ドをコードする核酸配列を含む、組換え原核生物宿主細胞および/または組換え
真核生物宿主細胞を、このタンパク質の発現およびその後のこのタンパク質の回
収を促進する条件下で培養する工程を包含する。
【0029】
本発明のなおさらなる局面によれば、治療的目的のため(例えば、脈管形成の
刺激のため、創傷治癒の刺激のため、および血管組織の修復の促進のため)に、
そのようなポリペプチド、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌク
レオチドを利用するためのプロセスが提供される。
【0030】
本発明のなお別の局面によれば、そのようなポリペプチドに対する抗体が提供
される。
【0031】
本発明のなお別の局面によれば、そのようなポリペプチドに対するアンタゴニ
ストが提供され、これは、例えば、腫瘍の増殖を阻害するため、糖尿病性網膜症
、炎症、慢性関節リウマチ、および乾癬の処置のために、そのようなポリペプチ
ドの作用を阻害するために使用され得る。
【0032】
本発明の別の局面によれば、本発明の核酸配列に特異的にハイブリダイズする
に十分な長さの核酸分子を含む、核酸プローブが提供される。
【0033】
本発明の別の局面によれば、本発明の核酸配列およびそのような核酸配列にコ
ードされるタンパク質における変異に関する疾患または疾患に対する感受性を診
断する方法が提供される。
【0034】
本発明のなおさらなる局面によれば、科学的研究、DNAの合成、およびDN
Aベクターの製造に関連するインビトロの目的のために、そのようなポリペプチ
ド、またはそのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを利用するプ
ロセスが提供される。
【0035】
本発明のこれらおよび他の局面は、本明細書中の教示から当業者に明らかであ
るべきである。
【0036】
図面は、本発明の実施態様の例示であり、そして請求の範囲により包含される
本発明の範囲を限定することを意味しない。
【0037】
用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを意
味する;これは、コード領域に先行する領域および後に続く領域(リーダーおよ
びトレイラー)、ならびに個々のコードセグメント(エキソン)の間の介在する
配列(イントロン)を含む。
【0038】
本発明の1つの局面によれば、図1A〜図1Cの推定のアミノ酸配列を有する
成熟ポリペプチド、またはATCC受託番号97161として1995年5月2
4日にアメリカンタイプカルチャーコレクション,10801 Univers
ity Boulevard,Manassas,VA 20110−2209
に寄託されたクローンのcDNAにコードされる成熟ポリペプチド、または図1
A〜図1Cに示すアミノ酸残基よりも少ないアミノ酸残基を有するポリペプチド
をコードする単離された核酸分子(ポリヌクレオチド)が提供される。
【0039】
本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、初期のヒト胚(8〜
9週)破骨細胞腫、成人心臓またはいくつかの乳癌細胞株から得られ得る。本発
明のポリヌクレオチドは、9週齢の初期のヒト胚由来cDNAライブラリー中に
発見された。これは、VEGF/PDGFファミリーに構造的に関連する。VE
GF2は、419アミノ酸残基のタンパク質をコードするオープンリーディング
フレームを含む。この最初のおよそ23アミノ酸残基は推定のリーダー配列であ
り、その結果、成熟タンパク質は396アミノ酸を含む。そしてこのタンパク質
は、ヒト血管内皮増殖因子に対して最大のアミノ酸配列相同性(30%の同一性
)を示し、PDGFα(23%)およびPDGFβ(22%)がそれに続く。
【0040】
8つすべてのシステインが、ファミリーの4つのメンバー内すべてで保存され
ることは特に重要である(図2の四角で囲んだ領域を参照のこと)。さらに、P
DGF/VEGFファミリーの特徴であるPXCVXXXRCXGCCN(配列
番号3)が、VEGF2において保存される(図2を参照のこと)。
【0041】
本発明のVEGF2ポリペプチドは、全長ポリペプチドならびに任意のリーダ
ー配列および全長ポリペプチドの活性フラグメントをコードするポリヌクレオチ
ド配列を含むことが意図される。活性フラグメントは、配列番号2および図2に
示す全長アミノ酸配列の419アミノ酸の全てよりも少ないアミノ酸を有するが
、図2において保存されることが示される8つのシステイン残基をなお含み、そ
してそのようなフラグメントはVEGF2活性をなお含む、全長アミノ酸配列の
任意の部分を含むことを意図する。
【0042】
正常組織には、少なくとも2つのオルタナティブスプライシングされたVEG
F2 mRNA配列が存在する。全長および短縮型のそれぞれに対応する2つの
VEGF2 mRNA配列のサイズを、図3に示す。レーン5は、本発明のVE
GF2ポリペプチドをコードするオルタナティブスプライシングされたmRNA
の存在を示す2本のバンドを示す。
【0043】
本発明のポリヌクレオチドは、RNAの形態またはDNAの形態 (このDN
Aは、cDNA、ゲノムDNA、および合成DNAを包含する)であり得る。D
NAは二本鎖または一本鎖であり得、そして一本鎖である場合は、コード鎖また
は非コード(アンチセンス)鎖であり得る。成熟ポリペプチドをコードするコー
ド配列は、図1A〜図1Cに示すコード配列または寄託したクローンのコード配
列と同一であり得るか、あるいはそのコード配列が、遺伝コードの重複性または
縮重の結果として、図1A〜図1CのDNAまたは寄託したcDNAと同じ成熟
ポリペプチドをコードする、異なるコード配列であり得る。
【0044】
図1A〜図1Cの成熟ポリペプチドまたは寄託したcDNAによりコードされ
る成熟ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは以下を包含し得る:成熟ポ
リペプチドのコード配列のみ;成熟ポリペプチドのコード配列(および随意のさ
らなるコード配列)および非コード配列(例えば、イントロンまたは成熟ポリペ
プチドのコード配列の5’および/または3’の非コード配列)。
【0045】
従って、用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、ポリペプチ
ドのコード配列のみを含むポリヌクレオチド、ならびにさらなるコード配列およ
び/または非コード配列を含むポリヌクレオチドを包含する。
【0046】
本発明はさらに、図1A〜図1Cの推定のアミノ酸配列を有するポリペプチド
または寄託したクローンのcDNAによりコードされるポリペプチドの、フラグ
メント、アナログ、および誘導体をコードする本明細書中上記のポリヌクレオチ
ドの改変体に関する。ポリヌクレオチドの改変体は、ポリヌクレオチドの天然に
存在する対立遺伝子改変体またはポリヌクレオチドの天然に存在しない改変体で
あり得る。
【0047】
従って本発明は、図1A〜図1Cに示すものと同じ成熟ポリペプチドまたは寄
託したクローンのcDNAによりコードされる同じ成熟ポリペプチドをコードす
るポリヌクレオチド、ならびにそのようなポリヌクレオチドの改変体を包含する
。この改変体は、図1A〜図1Cのポリペプチドまたは寄託したクローンのcD
NAによりコードされるポリペプチドのフラグメント、誘導体、またはアナログ
をコードする。そのようなヌクレオチド改変体は、欠失改変体、置換改変体、お
よび付加または挿入改変体を包含する。
【0048】
本明細書中上記で示したように、このポリヌクレオチドは、図1A〜図1Cに
示すコード配列または寄託したクローンのコード配列の天然に存在する対立遺伝
子改変体であるコード配列を有し得る。当該分野で公知なように、対立遺伝子改
変体は、1以上のヌクレオチドの置換、欠失、または付加を有し得るポリヌクレ
オチド配列の別の形態であり、これはコードされるポリペプチドの機能を実質的
に変化させない。
【0049】
本発明のポリヌクレオチドはまた、本発明のポリペプチドの精製を可能にする
マーカー配列にインフレームで融合されたコード配列を有し得る。マーカー配列
は、細菌宿主の場合にマーカーに融合された成熟ポリペプチドの精製を提供する
、pQE−9ベクターにより供給されるヘキサヒスチジンタグであり得る。また
は、例えばマーカー配列は、哺乳動物宿主(例えば、COS−7細胞)が使用さ
れる場合は、ヘマグルチニン(HA)タグであり得る。HAタグはインフルエン
ザヘマグルチニンタンパク質に由来するエピトープと一致する (Wilson
, I.ら、Cell, 37:767 (1984))。
【0050】
用語「遺伝子」は、ポリペプチド鎖の産生に関与するDNAのセグメントを
意味する;これは、コード領域に先行する領域および後に続く領域(リーダーお
よびトレイラー)、ならびに個々のコードセグメント(エキソン)の間の介在す
る配列(イントロン)を含む。
【0051】
本発明の全長遺伝子のフラグメントは、全長cDNAを単離するため、および
この遺伝子に対する高い配列類似性または同様の生物学的活性を有する他のcD
NAを単離するための、cDNAライブラリーについてのハイブリダイゼーショ
ンプローブとして使用され得る。このタイプのプローブは、好ましくは少なくと
も30塩基を有し、そして、例えば、50以上の塩基を含み得る。このプローブ
をまた、全長転写物に対応するcDNAクローン、およびゲノムクローン、また
は調節領域およびプロモーター領域、エキソンおよびイントロンを含む完全な遺
伝子を含むクローンを同定するために使用し得る。スクリーニングの例は、オリ
ゴヌクレオチドプローブを合成するために公知のDNA配列を使用して、遺伝子
のコード領域を単離する工程を包含する。本発明の遺伝子の配列に相補的な配列
を有する標識したオリゴヌクレオチドを使用して、ヒトのcDNA、ゲノムDN
A、またはmRNAのライブラリーをスクリーニングし、このライブラリーのど
のメンバーにこのプローブがハイブリダイズするかを決定する。
【0052】
本発明はさらに、配列間に少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%、
そしてより好ましくは少なくとも95%の同一性が存在する場合、本明細書中上
記の配列にハイブリダイズするポリヌクレオチドに関する。本発明は特に、本明
細書中上記のポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズす
るポリヌクレオチドに関する。本明細書中で用いられる用語「ストリンジェント
な条件」は、配列間に少なくとも95%、および好ましくは少なくとも97%の
同一性が存在する場合にのみハイブリダイゼーションが生じることを意味する。
好ましい実施態様において本明細書中上記のポリヌクレオチドにハイブリダイズ
するポリヌクレオチドは、図1A〜図1C(配列番号1)のcDNAまたは寄託
したcDNAによりコードされる成熟ポリペプチドと実質的に同じ生物学的機能
または活性のいずれかを保持するポリペプチドをコードする。
【0053】
あるいは、ポリヌクレオチドは、少なくとも20塩基、好ましくは30塩基、
そしてより好ましくは少なくとも50塩基を有し得、これは本発明のポリヌクレ
オチドにハイブリダイズし、そしてこれは本明細書中上記のように、それらに対
する同一性を有し、そしてこれは活性を保持していてもいなくてもよい。例えば
、そのようなポリヌクレオチドを、配列番号1のポリヌクレオチドについてのプ
ローブとして、例えばこのポリヌクレオチドの回収のために、または診断プロー
ブとして、またはPCRプライマーとして使用し得る。
【0054】
従って、本発明は、配列番号2のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
に対して少なくとも70%の同一性、好ましくは少なくとも90%、そしてより
好ましくは少なくとも95%の同一性を有するポリヌクレオチド、ならびにそれ
らのフラグメント(このフラグメントは少なくとも30塩基、そして好ましくは
少なくとも50塩基を有する)、そしてそのようなポリヌクレオチドにコードさ
れるポリペプチドに関する。
【0055】
本明細書中でいう寄託物は、特許手続き上の微生物の寄託の国際的承認に関す
るブダペスト条約の約定の下に維持される。これらの寄託物は、単に当業者への
便宜のために提供されるのみであり、そして米国特許法第112条の下で寄託が
必要とされることを認めたわけではない。寄託物に含まれるポリヌクレオチドの
配列、ならびにそれによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列は、本明細
書中に参考として援用されており、そして本明細書中の配列の記載とのいかなる
矛盾も抑えている。寄託物を製造し、使用し、または販売するためには実施許諾
が必要とされ得、そしてそのような実施許諾はこれによって与えられるわけでは
ない。
【0056】
本発明はさらに、図1A〜図1Cの推定のアミノ酸配列を有するか、または寄
託したcDNAによりコードされるアミノ酸配列を有するポリペプチド、ならび
にそのようなポリペプチドのフラグメント、アナログ、および誘導体に関する。
【0057】
用語「フラグメント」、「誘導体」、および「アナログ」は、図1A〜図1C
のポリペプチドまたは寄託したcDNAにコードされるポリペプチドをいう場合
は、図2に示すVEGFタンパク質の保存されたモチーフ、および本質的に同じ
生物学的な機能または活性を保持するポリペプチドを意味する。
【0058】
本発明のポリペプチドは、組換えポリペプチド、天然のポリペプチド、または
合成ポリペプチドであり得、好ましくは組換えポリペプチドであり得る。
【0059】
図1A〜図1Cのポリペプチドまたは寄託したcDNAによりコードされるポ
リペプチドのフラグメント、誘導体、またはアナログは、(i)そこで1以上の
アミノ酸残基が保存または非保存アミノ酸残基(好ましくは保存アミノ酸残基)
で置換され、そしてそのような置換されるアミノ酸残基がこの遺伝コードにより
コードされるアミノ酸残基であり得るかあり得ないもの、または(ii)そこで
1以上のアミノ酸残基が置換基を含有するもの、または(iii)そこで成熟ポ
リペプチドがポリペプチドの半減期を増加させる化合物(例えば、ポリエチレン
グリコール)のような別の化合物に融合されているもの、または(iv)そこで
さらなるアミノ酸が成熟ポリペプチドに融合されているもの、または(v)そこ
で配列番号2に示すより少ないアミノ酸残基を含み、そして保存されたモチーフ
を保持し、そしてなお依然としてVEGFファミリーのポリペプチドの特徴的な
活性を保持しているものであり得る。そのようなフラグメント、誘導体、および
アナログは、本明細書中の教示から、当業者の範囲内にあると考えられる。
【0060】
本発明のポリペプチドおよびポリヌクレオチドは、好ましくは単離された形態
で提供され、そして好ましくは均質に精製される。
【0061】
用語「単離された」は、物質がその本来の環境(例えば、それが天然に存在す
る場合は、天然の環境)から取り出されていることを意味する。例えば、生きて
いる動物の中に存在する天然に存在するポリヌクレオチドまたはポリペプチドは
、単離されているわけではなく、しかし天然の系において共存する物質の幾らか
または全部と分離されている同一のポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単
離されている。そのようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得、および
/またはそのようなポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、組成物の一部であ
り得るが、それにもかかわらずそのようなベクターまたは組成物はその天然の環
境の一部ではない、という点で単離されている。
【0062】
本発明のポリペプチドは、配列番号2のポリペプチド(特に成熟ポリペプチド
)、ならびに配列番号2のポリペプチドに対して少なくとも70%の類似性(好
ましくは少なくとも70%の同一性)を有するポリペプチド、そしてより好まし
くは配列番号2のポリペプチドに対して少なくとも90%の類似性(より好まし
くは少なくとも90%の同一性)を有するポリペプチド、そしてさらにより好ま
しくは配列番号2のポリペプチドに対して少なくとも95%の類似性(さらによ
り好ましくは少なくとも95%の同一性)を有するポリペプチドを含み、そのよ
うなポリペプチドの部分もまた含む(このポリペプチドのそのような部分は、一
般に、少なくとも30アミノ酸、そしてより好ましくは少なくとも50アミノ酸
を含む)。
【0063】
当該分野に公知であるように、2つのポリペプチドの間の「類似性」は、1つ
のポリペプチドのアミノ酸配列およびその保存されたアミノ酸置換を第2のポリ
ペプチド配列に対して比較することによって決定される。
【0064】
本発明のポリペプチドのフラグメントまたは部分を、ペプチド合成により対応
する全長ポリペプチドを産生するために使用し得る;従って、このフラグメント
は、全長ポリペプチドを産生するための中間体として使用し得る。本発明のポリ
ヌクレオチドのフラグメントまたは部分を、本発明の全長ポリヌクレオチドを合
成するために使用し得る。
【0065】
本発明はまた、本発明のポリヌクレオチドを含むベクター、本発明のベクター
を用いて遺伝子操作される宿主細胞、および組換え技術による本発明のポリペプ
チドの産生に関する。
【0066】
宿主細胞は、本発明のベクター(これは、例えば、クローニングベクターまた
は発現ベクターであり得る)を用いて遺伝子操作(形質導入されるか、または形
質転換されるか、またはトランスフェクトされる)される。ベクターは、例えば
、プラスミド、ウイルス粒子、ファージなどの形態であり得る。操作された宿主
細胞は、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、または本発明のVEG
F2遺伝子を増幅するために適切に改変した従来の栄養培地において培養され得
る。培養条件(例えば、温度、pHなど)は、発現のために選択される宿主細胞
に以前使用された条件であり、そして当業者には明らかである。
【0067】
本発明のポリヌクレオチドは、組換え技術によりポリペプチドを産生するため
に用いられ得る。従って、例えば、ポリヌクレオチドは、ポリペプチドを発現す
るための種々の発現ベクターの任意の1つに含まれ得る。そのようなベクターは
、染色体DNA配列、非染色体DNA配列、および合成DNA配列を包含する。
そのようなベクターは、例えば、SV40の誘導体;細菌性プラスミド;ファー
ジDNA;バキュロウイルス;酵母プラスミド;プラスミドおよびファージDN
Aの組み合わせに由来するベクター、ワクシニア、アデノウイルス、鶏痘ウイル
ス、および仮性狂犬病のようなウイルスDNAを包含する。しかし、宿主中で複
製可能で、そして存続可能である限り、他の任意のベクターも使用され得る。
【0068】
適切なDNA配列は、種々の手順によりベクター中に挿入され得る。一般に、
DNA配列は当該分野で公知の手順により適切な制限エンドヌクレアーゼ部位に
挿入される。そのような手順および他の手順は、当業者の範囲内であると考えら
れる。
【0069】
発現ベクター中のDNA配列は、適切な発現制御配列(プロモーター)に作動
的に連結され、mRNAの合成を指示する。そのようなプロモーターの代表的な
例としては、以下が挙げられる:LTRまたはSV40プロモーター、E.co
li lacまたはtrp、λファージPLプロモーター、および原核生物細胞
または真核生物細胞あるいはそれらのウイルス内で遺伝子の発現を制御すること
が公知である他のプロモーター。発現ベクターはまた、翻訳開始のためのリボソ
ーム結合部位および転写ターミネーターを含有する。ベクターはまた、発現を増
幅するための適切な配列を含有し得る。
【0070】
さらに、発現ベクターは、好ましくは、形質転換された宿主細胞の選択のため
の表現型形質(例えば、真核生物細胞培養物についてはジヒドロ葉酸レダクター
ゼまたはネオマイシン耐性、またはE.coliにおけるテトラサイクリン耐性
またはアンピシリン耐性)を提供する1つ以上の選択マーカー遺伝子を含有する

【0071】
本明細書中上記のような適切なDNA配列ならびに適切なプロモーター配列ま
たは制御配列を含有するベクターは、適切な宿主を形質転換して宿主にタンパク
質を発現させるために用いられ得る。
【0072】
適切な宿主の代表的な例としては、以下が挙げられ得る:細菌細胞(例えば、
E.coliStreptomyces Salmonella typh
imurium);真菌細胞(例えば酵母);昆虫細胞(例えば、Drosop
hila S2およびSpodoptera Sf9);動物細胞(例えば、C
HO、COS、またはBowes黒色腫);アデノウイルス;植物細胞など。適
切な宿主の選択は、本明細書の教示により当業者の範囲内であると考えられる。
【0073】
さらに詳細には、本発明はまた、上記で広範に記載した1つ以上の配列を含む
組換え構築物を包含する。構築物は、ベクター(例えば、プラスミドベクターま
たはウイルスベクター)を包含し、このベクターの中には本発明の配列が正方向
または逆方向に挿入されている。この実施態様の好ましい局面によれば、構築物
はさらに、配列に作動可能に連結された調節配列(例えば、プロモーターを包含
する)を含む。多数の適切なベクターおよびプロモーターが当業者には公知であ
り、そして購入可能である。以下のベクターが例として提供される。細菌性:p
QE70、pQE60、pQE−9(Qiagen)、pBS、pD10、ph
agescript、psiX174、pBluescript SK、pBS
KS、pNH8A、pNH16a、pNH18A、pNH46A(Strata
gene);ptrc99a、pKK223−3、pKK233−3、pDR5
40、pRIT5(Pharmacia)。真核生物性:pWLNEO、pSV
2CAT、pOG44、pXT1、pSG(Stratagene);pSVK
3、pBPV、pMSG、pSVL(Pharmacia)。しかし、それらが
宿主中で複製可能で、そして存続可能である限り、他の任意のプラスミドまたは
ベクターも使用され得る。
【0074】
プロモーター領域は、CAT(クロラムフェニコールトランスフェラーゼ)ベ
クターまたは選択マーカーを有する他のベクターを使用して、任意の所望の遺伝
子から選択され得る。2つの適切なベクターは、pKK232−8およびpCM
7である。特によく知られた細菌性プロモーターは、lacI、lacZ、T3
、T7、gpt、λPR、PLおよびtrpを包含する。真核生物性プロモーター
は、CMV即時型、HSVチミジンキナーゼ、初期SV40および後期SV40
、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスI型メタロチオネインを包含する
。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、十分に当業者のレベル内である

【0075】
さらなる実施態様では、本発明は上記の構築物を含有する宿主細胞に関する。
宿主細胞は、高等真核生物細胞(例えば、哺乳動物細胞)または下等真核生物細
胞(例えば、酵母細胞)であり得るか、または宿主細胞は原核生物細胞(例えば
、細菌細胞)であり得る。宿主細胞内への構築物の導入は、リン酸カルシウムト
ランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、また
はエレクトロポレーションにより達成され得る(Davis,L.,Dibne
r,M.,Battey,I.,Basic Methods in Mole
cular Biology, (1986))。
【0076】
宿主細胞中の構築物は、組換え配列によりコードされる遺伝子産物を産生する
ために、従来の方法において使用され得る。あるいは、本発明のポリペプチドは
、従来のペプチド合成機により合成的に産生され得る。
【0077】
成熟タンパク質は、哺乳動物細胞、酵母、細菌、または他の細胞中で、適切な
プロモーターの制御下で発現され得る。無細胞翻訳系もまた、そのようなタンパ
ク質を産生するために、本発明のDNA構築物に由来するRNAを使用して用い
られ得る。原核生物宿主および真核生物宿主で使用される適切なクローニングベ
クターおよび発現ベクターは、Sambrookら, Molecular C
loning: A Laboratory Manual, 第2版, Co
ld Spring Harbor,N.Y.,(1989)(この開示は、本
明細書中に参考として援用される)に記載される。
【0078】
本発明のポリペプチドをコードするDNAの高等真核生物による転写は、ベク
ター内にエンハンサー配列を挿入することにより増大する。エンハンサーはDN
Aのシス作用性エレメントであり、通常は約10〜約300bpであり、これは
プロモーターに作用してその転写を増大させる。例としては、複製起点(bp1
00〜270)の後期側のSV40エンハンサー、サイトメガロウイルスの早期
プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およ
びアデノウイルスエンハンサーが挙げられる。
【0079】
一般に、組換え発現ベクターは、複製起点および宿主細胞の形質転換を可能と
する選択マーカー(例えば、E.coliのアンピシリン耐性遺伝子およびS.
cerevisiaeのTRP1遺伝子)および下流の構造配列の転写を指示す
る高発現遺伝子由来のプロモーターを含有する。そのようなプロモーターは、特
に解糖酵素(例えば、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK))、α因子、
酸性ホスファターゼ、または熱ショックタンパク質などをコードするオペロンに
由来し得る。異種構造配列は、翻訳開始配列および翻訳終結配列、および好まし
くは翻訳されたタンパク質の細胞周辺腔または細胞外培地への分泌を指示し得る
リーダー配列と適切な相内で組立てられる。随意に、異種配列は、所望の特徴を
与えるN末端同定ペプチド(例えば、発現された組換え産物の安定化または簡略
化された精製)を含む融合タンパク質をコードし得る。
【0080】
細菌での使用に有用な発現ベクターは、所望のタンパク質をコードする構造D
NA配列を、適切な翻訳開始シグナルおよび翻訳終結シグナルと共に、機能的な
プロモーターで作動可能な読みとり相で挿入することにより構築される。ベクタ
ーは、ベクターの維持を確実にし、そして所望により宿主内での増幅を提供する
ために1つ以上の表現型選択マーカー、および複製起点を含有する。形質転換の
ために適切な原核生物宿主は、E.coliBacillus subtil
isSalmonella typhimurium、およびPseudom
onas属、Streptomyces属、およびStaphylococcu
s属内の種々の種を包含するが、他の種もまた選択対象に用いられ得る。
【0081】
代表的な、しかし限定しない例として、細菌での使用に有用な発現ベクターは
、周知のクローニングベクターpBR322(ATCC 37017)の遺伝的
エレメントを含む市販のプラスミドに由来する選択マーカーおよび細菌性の複製
起点を含有し得る。そのような市販のベクターは、例えば、pKK223−3(
Pharmacia Fine Chemicals, Uppsala, S
weden)およびGEM1(Promega Biotec, Madiso
n, WI, USA)を包含する。これらのpBR322「骨格」部分は、適
切なプロモーターおよび発現されるべき構造配列と組み合わされる。
【0082】
適切な宿主系統の形質転換および適切な細胞密度への宿主系統の増殖に続いて
、選択されたプロモーターは適切な手段(例えば、温度シフトまたは化学的誘導
)により誘導され、そして細胞はさらなる期間培養される。
【0083】
細胞は、代表的には遠心分離により回収され、物理的手段または化学的手段に
より破砕され、そして得られた粗抽出物はさらなる精製のために保持される。
【0084】
タンパク質の発現において用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音
波処理、機械的破砕、または細胞溶解剤の使用を包含する任意の便利な方法によ
り破砕され得、そのような方法は、当業者に周知である。
【0085】
種々の哺乳動物細胞の培養系もまた、組換えタンパク質を発現するために用い
られ得る。哺乳動物発現系の例は、Gluzman, Cell, 23: 1
75 (1981)に記載されたサル腎臓線維芽細胞のCOS−7株、および適
合性のベクターを発現し得る他の細胞株(例えば、C127、3T3、CHO、
HeLa、およびBHK細胞株)を包含する。哺乳動物発現ベクターは、複製起
点、適切なプロモーターおよびエンハンサーを含み、そして任意の必要なリボソ
ーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー部位およびスプライスア
クセプター部位、転写終結配列、および5’フランキング非転写配列をも含む。
SV40スプライスに由来するDNA配列およびポリアデニル化部位は、必要な
非転写遺伝エレメントを提供するために使用され得る。
【0086】
ポリペプチドは、以下の方法により組換え細胞培養物から回収および精製され
得る。これらの方法は、硫安沈澱またはエタノール沈澱、酸抽出、陰イオンまた
は陽イオン交換クロマトグラフィー、ホスホセルロースクロマトグラフィー、疎
水的相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、ヒドロ
キシルアパタイトクロマトグラフィー、およびレクチンクロマトグラフィーを包
含する。必要に応じて、タンパク質の再折りたたみ(refolding)工程
が、成熟タンパク質を完全な配置とするために使用され得る。最終的に、高性能
液体クロマトグラフィー(HPLC)が、最終的な精製工程に用いられ得る。
【0087】
本発明のポリペプチドは、天然の精製された産物または化学合成手順の産物で
あり得るか、または原核生物宿主または真核生物宿主(例えば、培養中の細菌、
酵母、高等植物、昆虫、および哺乳動物細胞)から組換え技術により産生され得
る。組換え産生手順に用いられる宿主により、本発明のポリペプチドは、グリコ
シル化され得るか、またはグリコシル化され得ない。本発明のポリペプチドはま
た、最初のメチオニンアミノ酸残基を含み得る。
【0088】
図8および9に示すように、最初の46アミノ酸を除いた配列番号2のVEG
F2ポリペプチドは、血管内皮細胞についての強力なマイトジェンであり、そし
てその増殖および分化を刺激する。このポリペプチドをコードするVEGF2核
酸配列について行なったノーザンブロット解析(ここで、いくつかのヒト組織由
来の20μgのRNAを32P−VEGF2でプローブした)の結果、このタンパ
ク質が心臓および肺において活発に発現し、このことはマイトジェン活性のさら
なる証拠であることを示す。
【0089】
従って、VEGF2を、脈管形成を促進し、例えば、冠状動脈バイパス外科手
術が行なわれる移植組織の増殖を刺激するために使用し得る。VEGF2をまた
、創傷治癒を促進するため、特に、損傷を受けた組織を血管再生させるか、また
は虚血の間および新しい毛細管の脈管形成が所望される場所での側副血流を刺激
するために使用し得る。VEGF2を、皮膚の潰瘍(褥瘡を含む)、静脈の潰瘍
、および糖尿病性潰瘍のような全層創傷を処置するために使用し得る。さらに、
VEGF2を、皮膚移植片または皮弁が全層熱傷および全層損傷を修復するため
に使用される、このような熱傷および損傷を処置するために使用し得る。VEG
F2をまた、例えば、外傷による裂傷および外科手術に関連する切断の修復のた
めに、形成外科における使用のために使用し得る。
【0090】
これらと同じようにして、VEGF2を、損傷を受けた骨、歯周組織、または
靭帯組織の増殖を誘導するために使用し得る。VEGF2をまた、疾患および外
傷によって損傷を受けた歯の支持組織(セメント質および歯周靭帯を含む)を再
生するために使用し得る。
【0091】
脈管形成は創傷を清潔かつ非感染に保つのに重要であるので、VEGF2を、
外科手術に関連して、および切断の修復後に使用し得る。VEGF2をまた、感
染の危険性が高い腹部創傷の処置のために使用し得る。
【0092】
VEGF2を、血管移植手術において内皮形成(endothelializ
ation)を促進するために使用し得る。移植された材料または合成した材料
のいずれかを用いる血管移植片の場合、VEGF2を移植片の表面または連結部
に適用して血管内皮細胞の増殖を促進し得る。VEGF2をまた、心筋梗塞の結
果としての心筋組織の損傷を修復するために使用し得る。VEGF2をまた、虚
血後の心血管系を修復するために使用し得る。VEGF2をまた、冠状動脈疾患
、ならびに末梢および中枢神経系の血管疾患の結果として損傷を受けた血管組織
を処置するために使用し得る。
【0093】
VEGF2をまた、身体内に移植されるべき人工の補てつ物または天然の器官
を被覆して移植材料の拒絶反応を最少にし、そして移植された材料の血管新生を
刺激するために使用し得る。
【0094】
VEGF2をまた、例えば、アテローム性動脈硬化症の間に生じ、そして血管
組織が損傷を受けるバルーン血管形成の後に必要とされる、血管組織の修復のた
めに使用し得る。
【0095】
VEGF2核酸配列およびVEGF2ポリペプチドをまた、科学的研究、DN
Aの合成、およびDNAベクターの製造に関連するインビトロの目的のため、お
よびヒトの疾患を治療するための診断薬および治療薬の産生のために使用し得る
。例えば、VEGF2を、血管内皮細胞のインビトロでの培養のために使用し得
、ここで、VEGF2は10pg/ml〜10ng/mlの濃度で条件的培地に
添加される。
【0096】
全長VEGF2遺伝子のフラグメントを、cDNAライブラリーのためのハイ
ブリダイゼーションプローブとして使用して、この遺伝子に対する高い配列類似
性または同様の生物学的活性を有する他の遺伝子を単離し得る。このタイプのプ
ローブは、一般に、少なくとも50塩基対を有するが、それらはさらに多数の塩
基を有し得る。このプローブをまた、全長転写物に対応するcDNAクローン、
ならびに調節領域およびプロモーター領域、エキソン、およびイントロンを含む
完全なVEGF2遺伝子を含むゲノムクローン(単数または複数)を同定するた
めに使用し得る。スクリーニングの例として、オリゴヌクレオチドプローブを合
成するために公知のDNA配列を使用するVEGF2遺伝子のコード領域を単離
する工程が挙げられる。本発明の遺伝子の配列に相補的な配列を有する標識した
オリゴヌクレオチドを使用して、ヒトcDNA、ゲノムDNA、またはmRNA
のライブラリーをスクリーニングし、このライブラリーのどのメンバーがこのプ
ローブとハイブリダイズするかを決定する。
【0097】
本発明は、VEGF2レセプターの同定のための方法を提供する。このレセプ
ターをコードする遺伝子は、当業者に公知の多くの方法(例えば、リガンドパン
ニングおよびFACSソーティング(Coliganら、Current Pr
otocols in Immun.,1(2),第5章、(1991)))に
よって同定され得る。好ましくは、発現クローニングを使用し、ここで、ポリア
デニル化されたRNAをVEGF2に応答する細胞から調製し、そしてこのRN
Aから作製したcDNAライブラリーをプールに分割し、そしてCOS細胞また
はVEGF2に応答しない他の細胞をトランスフェクトするために使用する。ガ
ラススライド上で増殖するトランスフェクトされた細胞を、標識したVEGF2
に曝す。VEGF2を、部位特異的タンパク質キナーゼについての認識部位のヨ
ウ素化または封入を含む、種々の手段によって標識し得る。固定およびインキュ
ベーションに続いて、スライドをオートラジオグラフィー分析に供する。陽性の
プールを同定し、そしてサブプールを調製し、そして反復サブプール化および再
スクリーニングプロセスを用いて再度トランスフェクトし、最終的に推定のレセ
プターをコードする単一のクローンを生じる。
【0098】
レセプター同定のための別のアプローチとして、標識したVEGF2は、細胞
膜に光学的親和的に結合され得るか、またはレセプター分子を発現する抽出調製
物であり得る。架橋した材料をPAGEによって分離し、そしてX線フィルムに
曝す。次いで、VEGF2を含有する標識した複合体を取り出し、ペプチドフラ
グメントに分解し、そしてタンパク質微量配列決定に供する。微量配列決定から
得られたアミノ酸配列を使用して、縮重オリゴヌクレオチドプローブの対を設計
し、cDNAライブラリーをスクリーニングして推定のレセプターをコードする
遺伝子を同定する。
【0099】
本発明はまた、VEGF2のアゴニストまたはアンタゴニストである化合物を
同定するための化合物のスクリーニング方法に関する。そのような方法の1例は
、コマイトジェンCon Aの存在下でヒト内皮細胞の増殖を顕著に刺激するV
EGF2の能力を利用する。内皮細胞を得、そしてCon−A(Calbioc
hem, La Jolla, CA)を補充した反応混合物中で96ウェル平
底培養プレート(Costar, Cambridge, MA)で培養する。
Con−A、本発明のポリペプチド、およびスクリーニングされるべき化合物を
添加する。37℃でのインキュベーションの後、[3H]を取り込むに十分な時
間、1μCiの3[H]チミジン(5Ci/mmol;1Ci=37BGq;N
EN)を培養物に適用し、そしてグラスファイバーフィルター(Cambrid
ge Technology, Watertown, MA)上に回収する。
3連の培養物の平均の3[H]チミジン取り込み(cpm)を、液体シンチレー
ションカウンター(Beckman Instruments, Irvine
, CA)を使用して決定する。化合物を除去するコントロールアッセイと比較
して有意な[3H]チミジン取り込みは、内皮細胞増殖の刺激を示す。
【0100】
アンタゴニストについてアッセイするために、上記のアッセイを行ない、そし
て化合物がVEGF2の存在下での3[H]チミジン取り込みを阻害する能力は
、この化合物がVEGF2に対するアンタゴニストであることを示す。あるいは
、VEGF2アンタゴニストを、競合阻害アッセイに適切な条件下で、VEGF
2および潜在的なアンタゴニストと、膜に結合したVEGF2レセプターまたは
組換えレセプターとを組み合わせることによって検出し得る。VEGF2を、例
えば、放射能によって標識し得、その結果、レセプターに結合したVEGF2分
子の数が潜在的なアンタゴニストの有効性を決定し得る。
【0101】
あるいは、VEGF2とレセプターとの相互作用の後の公知のセカンドメッセ
ンジャーシステムの応答を、この化合物の存在下または非存在下で測定し、そし
て比較する。そのようなセカンドメッセンジャーシステムは、cAMPグアニル
酸シクラーゼ、イオンチャンネル、またはホスホイノシチド加水分解を包含する
が、これらに限定されない。別の方法において、VEGF2レセプターを発現す
る哺乳動物細胞または膜調製物を、この化合物の存在下で、標識したVEGF2
と共にインキュベートする。次いで、この相互作用を増強またはブロックする、
この化合物の能力を測定し得る。
【0102】
潜在的なVEGF2のアンタゴニストは、抗体、またはある場合にはオリゴヌ
クレオチドを含み、これはこのポリペプチドに結合し、そしてVEGF2の機能
を有効に消去させる。あるいは、潜在的なアンタゴニストは、VEGF2レセプ
ターに結合する、密接に関連するタンパク質であり得るが、しかし、それらはこ
のポリペプチドの不活性な形態であり、それによりVEGF2の作用を妨げる。
これらのアンタゴニストの例は、VEGF2ポリペプチドのネガティブドミナン
ト変異体を包含し、例えば、VEGF2のヘテロ二量体形態の一方の鎖は優性で
あり得、そして生物学的活性を保持しないように変異し得る。ネガティブドミナ
ント変異体の例は、二量体VEGF2の短縮版を包含する。これは別の二量体と
相互作用して、野生型VEGF2を形成し得るが、しかし得られるホモ二量体は
不活性であり、特徴的なVEGF活性を示すことができない。
【0103】
別の潜在的なVEGF2アンタゴニストは、アンチセンス技術を使用して調製
されるアンチセンス構築物である。アンチセンス技術を、3重らせんの形成また
はアンチセンスDNAまたはRNAを介して遺伝子発現を制御するために使用し
得る。これらの方法は両方ともDNAまたはRNAへのポリヌクレオチドの結合
に基づく。例えば、このポリヌクレオチド配列の5’コード部分は、本発明の成
熟ポリペプチドをコードし、約10〜40塩基対の長さのアンチセンスRNAオ
リゴヌクレオチドを設計するために使用される。DNAオリゴヌクレオチドは、
遺伝子の転写に関与する領域に相補的であるように設計され(三重らせん−Le
eら、Nucl. Acids Res., 6:3073(1979); C
ooneyら、Science, 241:456(1988);およびDer
vanら、Science, 251:1360(1991)を参照のこと)、
それにより、VEGF2の転写および産生を妨げる。アンチセンスRNAオリゴ
ヌクレオチドは、インビボでmRNAにハイブリダイズし、そしてmRNA分子
のVEGF2ポリペプチドへの翻訳をブロックする(アンチセンス−Okano
, J. Neurochem., 56:560(1991); 遺伝子発現
のアンチセンスインヒビターとしてのオリゴデオキシヌクレオチド、CRC P
ress, Boca Raton, FL (1988))。上記のオリゴヌ
クレオチドはまた、細胞に送達され得、その結果、アンチセンスRNAまたはD
NAがインビボで発現してVEGF2の産生を阻害し得る。
【0104】
潜在的なVEGF2アンタゴニストはまた、ポリペプチドの活性部位に結合し
、そしてこの部位を占め、それにより基質が触媒部位に接近できないようにし、
その結果、正常な生物学的活性が妨げられる、低分子を含む。低分子の例は、低
分子ペプチドまたはペプチド様分子を包含するが、これらに限定されない。
【0105】
アンタゴニストは、固形腫瘍転移に必要な限定的な脈管形成を処置するために
使用され得る。
【0106】
VEGF2をコードするmRNAは、少なくとも2種の乳癌細胞株において中
程度のレベルで発現されることが見出される。このことは、悪性の表現型におけ
るVEGF2ポリペプチドの役割を示す。神経膠腫はまた、本発明のアンタゴニ
ストで処置され得る新生物の1つのタイプである。
【0107】
アンタゴニストはまた、血管透過性の増大により引き起こされる慢性炎症を処
置するために使用され得る。これらの疾患に加えて、アンタゴニストはまた、糖
尿病に関連する網膜症、慢性関節リウマチ、および乾癬を処置するために使用さ
れ得る。
【0108】
アンタゴニストを、薬学的に受容可能なキャリア(例えば、本明細書中以下に
記載するような)を有する組成物中で使用し得る。
【0109】
VEGF2ポリペプチド、ならびにアゴニストおよびアンタゴニストは、適切
な薬学的キャリアと組み合わせて使用され得る。そのような組成物は、治療的有
効量のポリペプチドまたはアゴニストもしくはアンタゴニスト、および薬学的に
受容可能なキャリアまたは賦形剤を含む。そのようなキャリアは、生理食塩水、
緩衝化生理食塩水、デキストロース、水、グリセロール、エタノール、およびそ
れらの組合せを包含するが、これらに限定されない。処方物は、投与の様式に合
わせるべきである。
【0110】
本発明はまた、1つ以上の本発明の薬学的組成物の成分で充填した1つ以上の
容器を備えた薬学的パックまたはキットを提供する。そのような容器には、薬剤
または生物学的製品の製造、使用、または販売を統制する政府機関によって指定
される形式の通知を伴い得、この通知は、ヒトへの投与のための製造、使用、ま
たは販売の機関による認可を表す。さらに、薬学的組成物は、他の治療用化合物
と組み合わせて使用され得る。
【0111】
薬学的組成物は、局所、静脈内、腹腔内、筋肉内、腫瘍内、皮下、鼻腔内、ま
たは皮内経路のような便利な方法で投与され得る。薬学的組成物は、特定の適応
症を処置および/または予防するのに有効な量で投与される。一般に、薬学的組
成物は、少なくとも約10μg/kg体重の量で投与され、そしてほとんどの場
合はこれらは一日あたり約8mg/kg体重を超えない量で投与される。ほとん
どの場合、投薬は、投与経路、症状などを考慮して、1日あたり約10μg/k
g体重〜約1mg/kg体重である。
【0112】
VEGF2ポリペプチド、およびポリペプチドであるアゴニストまたはアンタ
ゴニストはまた、インビボでのそのようなポリペプチドの発現により本発明に従
って用いられ得、これはしばしば、「遺伝子治療」といわれる。
【0113】
従って、例えば、骨髄細胞のような細胞は、ポリペプチドをコードするポリヌ
クレオチド(DNAまたはRNA)を用いてエクソビボで操作され得、次いで、
操作された細胞はポリペプチドで処置されるべき患者に提供される。そのような
方法は当該分野で周知である。例えば、細胞は、本発明のポリペプチドをコード
するRNAを含有するレトロウイルス粒子の使用により、当該分野で公知の手順
によって操作され得る。
【0114】
同様に、細胞は、インビボでのポリペプチドの発現のために、例えば、当該分
野で公知の手順によりインビボで操作され得る。当該分野で公知のように、本発
明のポリペプチドをコードするRNAを含有するレトロウイルス粒子を産生する
ためのプロデューサー細胞は、インビボで細胞を操作するため、およびインビボ
でのポリペプチドの発現のために患者に投与され得る。そのような方法により本
発明のポリペプチドを投与するためのこれらの方法および他の方法は、本発明の
教示により当業者には明らかであるはずである。例えば、細胞を操作するための
発現ビヒクルは、レトロウイルス粒子以外のもの(例えば、アデノウイルス)で
あり得る。これは、適切な送達ビヒクルと組み合わせた後、インビボで細胞を操
作するために使用され得る。
【0115】
本明細書中上記で述べたレトロウイルスプラスミドベクターが誘導され得るレ
トロウイルスは、モロニーマウス白血病ウイルス、脾壊死ウイルス、レトロウイ
ルス(例えば、ラウス肉腫ウイルス、ハーベイ肉腫ウイルス、ニワトリ白血病ウ
イルス、テナガザル白血病ウイルス、ヒト免疫不全症ウイルス)、アデノウイル
ス、骨髄増殖性肉腫ウイルス、および乳癌ウイルスを包含するが、これらに限定
されない。1つの実施態様において、レトロウイルスプラスミドベクターは、モ
ロニーマウス白血病ウイルスに由来する。
【0116】
ベクターは1つ以上のプロモーターを含む。使用され得る適切なプロモーター
は、レトロウイルスLTR;SV40プロモーター、およびヒトサイトメガロウ
イルス(CMV)プロモーター(Millerら、Biotechniques
, 第7巻、第9号, 980−990(1989)に記載される)、または他
の任意のプロモーター(例えば、真核生物細胞性プロモーターのような細胞プロ
モーター(ヒストン、pol III、およびβアクチンのプロモーターを包含
するが、これらに限定されない))を包含するが、これらに限定されない。使用
され得る他のウイルスプロモーターは、アデノウイルスプロモーター、チミジン
キナーゼ(TK)プロモーター、およびB19パルボウイルスプロモーターを包
含するが、これらに限定されない。適切なプロモーターの選択は、本明細書中に
含まれる教示から、当業者に明らかである。
【0117】
本発明のポリペプチドをコードする核酸配列は、適切なプロモーターの制御下
にある。使用され得る適切なプロモーターは、アデノウイルス主要後期プロモー
ターのようなアデノウイルスプロモーター;またはサイトメガロウイルス(CM
V)プロモーターのような異種プロモーター;RSウイルス(RSV)プロモー
ター;MMTプロモーター、メタロチオネインプロモーターのような誘導性プロ
モーター;熱ショックプロモーター;アルブミンプロモーター;ApoAIプロ
モーター;ヒトグロビンプロモーター;単純ヘルペスチミジンキナーゼプロモー
ターのようなウイルスチミジンキナーゼプロモーター;レトロウイルスLTR(
本明細書上記の改変したレトロウイルスLTRを含む);β−アクチンプロモー
ター;およびヒト成長ホルモンプロモーターを包含するが、これらに限定されな
い。プロモーターはまた、ポリペプチドをコードする遺伝子を制御する天然のプ
ロモーターであり得る。
【0118】
レトロウイルスプラスミドベクターは、パッケージング細胞株を形質導入して
プロデューサー細胞株を形成するために使用される。トランスフェクトされ得る
パッケージング細胞の例は、PE501、PA317、ψ−2、ψ−AM、PA
12、T19−14X、VT−19−17−H2、ψCRE、ψCRIP、GP
+E−86、GP+envAm12、およびDAN細胞株(その全体が本明細書
中で参考として援用される、Miller, Human Gene Ther
apy, 第1巻、5−14頁(1990)に記載される)を包含するが、これ
らに限定されない。ベクターは、当該分野で公知の任意の手段を介してパッケー
ジング細胞を形質導入し得る。そのような手段は、エレクトロポレーション、リ
ポソームの使用、およびCaPO4沈澱を包含するが、これらに限定されない。
別のものでは、レトロウイルスプラスミドベクターは、リポソーム中にカプセル
化され得るか、または脂質に結合され得、次いで宿主に投与され得る。
【0119】
プロデューサー細胞株は、ポリペプチドをコードする核酸配列を含む感染性レ
トロウイルスベクター粒子を産生する。次いで、そのようなレトロウイルスベク
ター粒子が、インビトロまたはインビボのいずれかで、真核生物細胞を形質導入
するために使用され得る。形質導入された真核生物細胞は、ポリペプチドをコー
ドする核酸配列を発現する。形質導入され得る真核生物細胞は、胚性幹細胞、胚
性癌細胞、ならびに造血幹細胞、肝細胞、線維芽細胞、筋芽細胞、ケラチノサイ
ト、内皮細胞、および気管支上皮細胞を包含するが、これらに限定されない。
【0120】
本発明はまた、VEGF2核酸配列中の変異の存在と関連する疾患または疾患
に対する感受性を検出するための診断アッセイの一部としてのVEGF2遺伝子
の使用に関する。
【0121】
VEGF2遺伝子に変異を有する個体は、種々の技術によりDNAレベルで検
出され得る。診断のための核酸は、患者の細胞(例えば、血液、尿、唾液、組織
生検、および剖検材料)から得られ得る。ゲノムDNAは、検出のために直接使
用され得るか、または分析の前にPCR(Saikiら、Nature, 32
4:163−166(1986))を使用して酵素的に増幅され得る。RNAま
たはcDNAもまた、同じ目的のために使用され得る。例として、VEGF2を
コードする核酸に相補的なPCRプライマーが、VEGF2変異を同定および分
析するために使用され得る。例えば、欠失および挿入が、正常な遺伝子型との比
較における増幅産物のサイズの変化によって検出され得る。点変異が、増幅され
たDNAを放射標識されたVEGF2 RNA、あるいは放射標識されたVEG
F2アンチセンスDNA配列とハイブリダイズすることによって同定され得る。
完全にマッチした配列は、RNase A消化により、または融解温度の違いに
より、ミスマッチな二重鎖から区別され得る。
【0122】
DNA配列の差異に基づく遺伝的試験は、変性剤を用いるかまたは用いない、
ゲル中でのDNAフラグメントの電気泳動移動度の変化の検出によって達成され
得る。小さな配列の欠失および挿入は、高分解能ゲル電気泳動によって可視化さ
れ得る。異なる配列のDNAフラグメントは、異なるDNAフラグメントの移動
度がそれらの特異的融解温度または部分的融解温度に従ってゲル中で異なる位置
に遅れる、変性ホルムアミド勾配ゲル上で識別され得る(例えば、Myersら
、Science, 230:1242(1985)を参照のこと)。
【0123】
特定の位置での配列の変化はまた、RNaseプロテクション、およびS1プ
ロテクションのようなヌクレアーゼプロテクションアッセイ、または化学的切断
法(例えば、Cottonら、PNAS, USA, 85:4397−440
1(1985))によって示され得る。
【0124】
従って、特定のDNA配列の検出は、ハイブリダイゼーション、RNaseプ
ロテクション、化学的切断、直接的DNA配列決定、または制限酵素の使用(例
えば、制限酵素断片長多型(RFLP))、およびゲノムDNAのサザンブロッ
トのような方法によって達成され得る。
【0125】
より伝統的なゲル電気泳動およびDNA配列決定に加えて、変異はインサイチ
ュ分析によってもまた検出され得る。
【0126】
本発明はまた、正常なコントロールの組織サンプルと比較したVEGF2タン
パク質の過剰発現が、疾患(例えば、異常な細胞分化)の存在または疾患に対す
る感受性を検出し得るので、種々の組織におけるVEGF2タンパク質のレベル
の変化を検出するための診断アッセイに関する。宿主由来のサンプル中のVEG
F2タンパク質のレベルを検出するために使用されるアッセイは、当業者に周知
であり、そして、ラジオイムノアッセイ、競合結合アッセイ、ウエスタンブロッ
ト分析、ELISAアッセイ、および「サンドイッチ」アッセイを包含する。E
LISAアッセイ(Coliganら、Current Protocols
in Immunology, 1(2), 第6章、(1991))は、最初
に、VEGF2抗原に特異的な抗体、好ましくはモノクローナル抗体、を調製す
る工程を包含する。さらに、レポーター抗体が、モノクローナル抗体に対して調
製される。レポーター抗体に、放射能、蛍光、または本実施例では、西洋ワサビ
ペルオキシダーゼ酵素のような検出可能な試薬が結合される。サンプルを宿主か
ら取り出し、そしてサンプル中のタンパク質を結合する固体支持体(例えば、ポ
リスチレンディッシュ)上でインキュベートする。次いで、ディッシュ上の任意
の遊離のタンパク質結合部位を、ウシ血清アルブミンのような非特異的タンパク
質と共にインキュベートすることによって覆う。次に、モノクローナル抗体をデ
ィッシュ内でインキュベートし、その間にモノクローナル抗体がポリスチレンデ
ィッシュに結合した任意のVEGF2タンパク質に結合する。全ての結合してい
ないモノクローナル抗体を、緩衝液で洗浄して除去する。西洋ワサビペルオキシ
ダーゼに結合させたレポーター抗体をディッシュ内に入れ、VEGF2に結合し
た任意のモノクローナル抗体へレポーター抗体を結合させる。次いで、結合して
いないレポーター抗体を洗浄して除去する。次いで、ペルオキシダーゼ基質をデ
ィッシュに添加し、そして標準曲線と比較した場合、所定の時間内の発色の量が
、患者のサンプルの所定の容量内に存在するVEGF2タンパク質の量の測定値
である。
【0127】
競合アッセイが使用され得、ここではVEGF2に特異的な抗体が固体支持体
に結合される。次いで本発明のポリペプチドを、例えば、放射能によって標識し
、そして宿主由来のサンプルを固体支持体に通過させ、そして例えば、液体シン
チレーションクロマトグラフィーによって検出される標識の量を、サンプル中の
VEGF2の量に相関付け得る。
【0128】
「サンドイッチ」アッセイは、ELISAアッセイに類似する。「サンドイッ
チ」アッセイにおいて、VEGF2を固体支持体に通過させ、そして固体支持体
に結合した抗体に結合させる。次いで、第2の抗体をVEGF2に結合させる。
次いで、標識されかつ第2の抗体に対して特異的な第3の抗体を固体支持体に通
過させ、そして第2の抗体に結合させ、次いで量を定量し得る。
【0129】
本発明の配列はまた、染色体の同定に有益であり得る。配列は、個々のヒト染
色体の特定の位置を特異的に標的化し、そしてその位置でハイブリダイズし得る
。さらに、現在は染色体上の特定の部位を同定する必要がある。現在、染色体位
置のマーキングに利用可能な実際の配列データ(反復多型)に基づいた染色体マ
ーキング試薬はほとんどない。本発明による染色体へのDNAのマッピングは、
これらの配列と疾患に関する遺伝子とを相関させることにおける重要な第1段階
である。
【0130】
簡略に述べれば、配列は、cDNAからPCRプライマー(好ましくは15〜
25bp)を調製することにより染色体にマッピングされ得る。cDNAのコン
ピューター解析が、ゲノムDNA内で1より多いエキソンにまたがらず、従って
増幅プロセスを複雑にするプライマーを迅速に選択するために使用される。次い
で、これらのプライマーは、個々のヒト染色体を含有する体細胞ハイブリッドの
PCRスクリーニングに使用される。このプライマーに対応するヒト遺伝子を含
有するハイブリッドのみが増幅フラグメントを生じる。
【0131】
体細胞ハイブリッドのPCRマッピングは、特定の染色体に特定のDNAを割
り当てるための迅速な手順である。本発明を同じオリゴヌクレオチドプライマー
と共に使用して、類似の方法において特定の染色体由来のフラグメントのパネル
または大きなゲノムクローンのプールを用いて下部位置決め(sublocal
ization)が達成され得る。その染色体にマッピングするために同様に使
用され得る他のマッピングストラテジーは、インサイチュハイブリダイゼーショ
ン、フローサイトメトリーで選別した標識した染色体でのプレスクリーニング、
および染色体特異的cDNAライブラリーを構築するためのハイブリダイゼーシ
ョンによる前選択を包含する。
【0132】
中期染色体展開物へのcDNAクローンの蛍光インサイチュハイブリダイゼー
ション(FISH)は、1工程で正確な染色体位置を提供するために使用され得
る。この技術は、50または60塩基という短いcDNAで使用され得る; こ
の技術の総説としては、Vermaら, Human Chromosomes
: a Manual of Basic Techniques. Perg
amon Press, New York (1988)を参照のこと。
【0133】
一旦配列が正確な染色体位置にマッピングされると、配列の染色体上での物理
的な位置を遺伝的地図のデータと相関させ得る。(そのようなデータは、例えば
、V. McKusick, Mendelian Inheritance
in Manに見出される(Johns Hopkins Universit
y Welch Medical Libraryからオンラインで入手可能で
ある))。次いで、同一の染色体領域にマッピングされた遺伝子と疾患との関係
が、連鎖解析(物理的に隣接した遺伝子の同時遺伝)により同定される。
【0134】
次に、罹患個体と非罹患個体との間のcDNAまたはゲノム配列の差異を決定
する必要がある。変異がいくつかまたはすべての罹患個体に観察されるが正常な
個体には観察されない場合、この変異は疾患の原因となる因子であると考えられ
る。
【0135】
物理的マッピング技術および遺伝的マッピング技術の現在の解像度では、疾患
に関連する染色体領域に正確に位置決めされたcDNAは、50と500との間
の潜在的な原因となる遺伝子の1つであり得る。(これは、1メガ塩基のマッピ
ング解像度で、そして20kbあたり1遺伝子と仮定する。)
このポリペプチド、それらのフラグメントまたは他の誘導体、またはそれらの
アナログ、あるいはそれらを発現する細胞は、それらに対する抗体を産生させる
ための免疫原として使用され得る。これらの抗体は、例えば、ポリクローナル抗
体またはモノクローナル抗体であり得る。本発明はまた、キメラ抗体、単鎖抗体
、およびヒト化抗体、ならびにFabフラグメント、またはFab発現ライブラ
リーの産物を包含する。当該分野で公知の種々の手順が、そのような抗体および
フラグメントの産生のために使用され得る。
【0136】
本発明の配列に対応するポリペプチドに対して生成される抗体は、動物へのポ
リペプチドの直接注射により、または動物へのポリペプチドの投与により得られ
得る。この動物は、好ましくはヒトでない。次いで、このようにして得られた抗
体は、ポリペプチド自体を結合する。このようにして、ポリペプチドのフラグメ
ントのみをコードする配列でさえも、天然のポリペプチド全体を結合する抗体を
生成するために使用され得る。次いで、そのような抗体は、そのポリペプチドを
発現する組織からポリペプチドを単離するために使用され得る。モノクローナル
抗体の調製のために、細胞株の連続培養により産生される抗体を提供する任意の
技術が使用され得る。例としては、ハイブリドーマ技術(KohlerおよびM
ilstein, 1975, Nature, 256: 495−497)
、トリオーマ(trioma)技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozb
orら, 1983, Immunology Today 4: 72)、お
よびヒトモノクローナル抗体を産生するためのEBVハイブリドーマ技術(Co
leら, 1985, Monoclonal Antibodies and
Cancer Therapy, Alan R.Liss,Inc.,77
−96頁)が挙げられる。
【0137】
単鎖抗体の産生について記載された技術(米国特許第4,946,778号)
を、本発明の免疫原性ポリペプチド産物に対する単鎖抗体を産生するために適合
させ得る。また、トランスジェニックマウスを、本発明の免疫原性ポリペプチド
産物に対するヒト化抗体を発現させるために使用し得る。
【0138】
本発明を以下の実施例を参照にしてさらに記載する;しかし、本発明はそのよ
うな実施例に限定されないことを理解されたい。全ての部または量は、他に明記
しない限り重量基準である。
【0139】
以下の実施例の理解を容易にするために、現れる頻度の高い所定の方法および
/または用語を記載する。
【0140】
「プラスミド」は、大文字および/または数字の前および/または後の小文字
のpにより示される。本明細書中の出発プラスミドは、市販であるかまたは制限
無く公的に入手可能であるかのいずれかであり、または公開された手順に従って
入手可能なプラスミドから構築され得る。さらに、記載されるプラスミドと等価
のプラスミドが当該分野で公知であり、そして当業者には明らかである。
【0141】
DNAの「消化」は、DNA中の所定の配列でのみ作用する制限酵素でDNA
を触媒反応的に切断することをいう。本明細書中で使用される種々の制限酵素は
、市販されており、そしてそれらの反応条件、補因子、および他の必要条件は当
業者に公知のものが使用された。分析目的には、代表的には1μgのプラスミド
またはDNAフラグメントが約2単位の酵素とともに約20μlの緩衝溶液中で
使用される。プラスミド構築のためのDNAフラグメントを単離する目的には、
代表的には5〜50μgのDNAが20〜250単位の酵素で、より大きな容量
中で消化される。特定の制限酵素のための適切な緩衝液および基質量は、製造者
により特定される。37℃にての約1時間のインキュベーション時間が通常使用
されるが、しかしこれは供給者の説明書に従って変動させ得る。消化後、反応物
をポリアクリルアミドゲルで直接電気泳動して所望のフラグメントを単離する。
【0142】
切断されたフラグメントのサイズ分離は、Goeddel,D.ら, Nuc
leic Acids Res.,8: 4057 (1980)により記載さ
れた8%ポリアクリルアミドゲルを使用して行われる。
【0143】
「オリゴヌクレオチド」は、1本鎖ポリデオキシヌクレオチドまたは2つの相
補的なポリデオキシヌクレオチド鎖のいずれかをいい、これらは化学的に合成さ
れ得る。そのような合成オリゴヌクレオチドは、5’リン酸を有さず、従ってキ
ナーゼの存在下でリン酸とATPとを添加しなければ別のオリゴヌクレオチドに
連結しない。合成オリゴヌクレオチドは、脱リン酸化されていないフラグメント
に連結する。
【0144】
「連結」は、2つの2本鎖核酸フラグメントの間でリン酸ジエステル結合を形
成するプロセスをいう(Maniatis,T.ら、前出、146頁)。他に提
供されていなければ、連結は公知の緩衝液および条件で、ほぼ等モル量の連結さ
れるべきDNAフラグメント0.5μgあたり10単位のT4 DNAリガーゼ
(「リガーゼ」)を用いて達成され得る。
【0145】
他に記載しない限り、形質転換はGraham,F.およびVan der
Eb, A., Virology, 52:456−457 (1973)の
方法に記載のように実施した。
【実施例】
【0146】
(実施例1)
ヒト組織および乳癌細胞株におけるVEGF2の発現パターン
ノーザンブロット解析を、ヒト組織およびヒト乳癌細胞株におけるVEGF2
遺伝子の発現レベルを試験するために行なった。全細胞性RNAサンプルを、R
NAzolTM Bシステム(Biotecx Laboratories, I
nc.)を用いて単離した。各々の特定された乳房組織および細胞株から単離さ
れた約10μgの全RNAを、1%アガロースゲルで分離し、そしてナイロンフ
ィルター上にブロットした(Molecular Cloning, Samb
rook FritschおよびManiatis, Cold Spring
Harbor Press, 1989)。標識反応は、Stratagen
e Cloning Systems, Inc., Prime−Itキット
に従って50 ngのDNAフラグメントを用いて行なった。標識したDNAを
、5 Prime−−3 Prime, Inc., Boulder, CO
, USAからのSelect−G−50カラムを用いて精製した。次いで、フ
ィルターを、放射性標識した全長VEGF2遺伝子と、1,000,000 c
pm/mlで0.5M NaPO4および7%SDS中で65℃で一晩ハイブリ
ダイズした。0.5×SSC、0.1%SDSで、室温で2回および60℃で2
回洗浄した後、次いでフィルターを増感スクリーンとともに−70℃で一晩曝露
した。1.6 Kbのメッセージが2つの乳癌細胞株において観察された。
【0147】
(実施例2)
バキュロウイルス発現系を用いるVEGF2のクローニングおよび発現
N末端で46アミノ酸を除いたVEGF2タンパク質をコードするDNA配列
(ATCC受託番号97161を参照のこと)を、遺伝子の5’配列および3’
配列に対応するPCRオリゴヌクレオチドプライマーを用いて増幅した:
5’プライマーは、配列TGT AAT ACG ACT CAC TAT
AGG GAT CCC GCC ATG GAG GCC ACG GCT
TAT GC(配列番号4)を有し、そしてBamHI制限酵素部位(下線)、
およびVEGF2(ヌクレオチド150−166)の5’配列に相補的な17ヌ
クレオチド配列を含む。
【0148】
3’プライマーは、配列GATC TCT AGA TTA GCT CAT
TTG TGG TCT(配列番号5)を有し、制限酵素XbaIの切断部位
、および停止コドンおよび停止コドンの前の15ヌクレオチド配列を含むVEG
F2の3’配列に相補的な18ヌクレオチドを含む。
【0149】
増幅された配列を、市販のキット(「Geneclean」, BIO 10
1, Inc., La Jolla, CA.)を用いて、1%アガロースゲ
ルから単離した。次いで、フラグメントをエンドヌクレアーゼBamHIおよび
XbaIで消化し、次いで再び1%アガロースゲル上で精製した。このフラグメ
ントを、BamHIおよびXbaI部位でpAcGP67Aバキュロウイルス移
入ベクター(PHarmingen)に連結した。この連結によって、VEGF
2 cDNAをバキュロウイルスgp67遺伝子のシグナル配列とともにインフ
レームでクローン化し、そしてベクター中のシグナル配列の3’末端に配置した
。これをpAcGP67A−VEGF2と称する。
【0150】
発現のためにpRG1ベクターにgp67遺伝子のシグナル配列とともにVE
GF2をクローン化するために、シグナル配列およびいくつかの上流の配列を有
するVEGF2を、XhoIおよびXbaI制限酵素により、VEGF2 cD
NAの上流に位置するXho制限エンドヌクレアーゼ部位、およびXbaI制限
エンドヌクレアーゼ部位で、pAcGP67A−VEGF2プラスミドから切り
出した。このフラグメントを1%アガロースゲル上で残りのベクターから分離し
、そして「Geneclean」キットを使用して精製した。このフラグメント
を、F2と称した。
【0151】
PRG1ベクター(pVL941ベクターの変異体)をバキュロウイルス発現
系を用いるVEGF2タンパク質の発現のために用いる(総説については、Su
mmers, M.D.およびSmith, G.E. 1987, A ma
nual of methods for baculovirus vect
ors and insect cell culture procedur
es, Texas Agricultural Experimental
Station Bulletin No. 1555を参照のこと)。この発
現ベクターは、Autographa californica核多角体病ウイ
ルス(AcMNPV)の強力なポリヘドリンプロモーター、それに続く制限エン
ドヌクレアーゼBamHI、SmaI、XbaI、BglII、およびAsp7
18の認識部位を含む。制限エンドヌクレアーゼXhoIについての部位は、B
amHI部位の上流に位置する。XhoIとBamHIとの間の配列は、PAc
Gp67A(テープ上で変化なし)ベクター中のその配列と同じである。シミア
ンウイルス(SV)40のポリアデニル化部位を、効率的なポリアデニル化のた
めに用いる。組換えウイルスを容易に選択するために、E. coli由来のβ
−ガラクトシダーゼ遺伝子をポリヘドリン遺伝子のポリアデニル化シグナルが続
くポリヘドリンプロモーターと同方向に挿入する。ポリヘドリン配列を、同時ト
ランスフェクトした野生型ウイルスDNAの細胞媒介性相同組換えのためにウイ
ルス配列により両端で隣接させる。多くの他のバキュロウイルスベクターが、p
RG1の代わりに用いられ得る。例えば、pAc373、pVL941、および
pAcIM1(Luckow, V.A.およびSummers, M.D.、
Virology, 170:31−39)。
【0152】
プラスミドを制限酵素XboIおよびXbaIで消化し、次いで当該分野で公
知の手順により仔ウシ腸ホスファターゼを用いて脱リン酸化した。次いで、市販
のキット(「Geneclean」BIO 101 Inc. La Joll
a, CA)を使用して、DNAを1%アガロースゲルより単離した。このベク
ターDNAをV2と称する。
【0153】
フラグメントF2および脱リン酸化プラスミドV2を、T4 DNAリガーゼ
を用いて連結した。次いで、E. coli HB101細胞を形質転換し、そ
して酵素BamHIおよびXbaIを用いて、VEGF2遺伝子を有するプラス
ミド(pBac gp67−VEGF2)を含む細菌を同定した。クローン化フ
ラグメントの配列を、DNA配列決定により確認した。
【0154】
5μgのプラスミドpBac gp67−VEGF2を、リポフェクション法
(Felgnerら Proc. Natl. Acad. Sci. USA
, 84:7413−7417 (1987))を用いて、1.0μgの市販の
線状化したバキュロウイルス(「BaculoGoldTM baculovir
us DNA」, Pharmingen, San Diego, CA.)
で同時トランスフェクトした。
【0155】
1μgのBaculoGoldTMウイルスDNAおよび5μgのプラスミドp
Bac gp67−VEGF2を、50μlの無血清Grace培地(Life
Technologies Inc., Gaithersburg, MD
)を含むマイクロタイタープレートの無菌ウェル中で混合した。その後、10μ
lリポフェクチンおよび90μlのGrace培地を添加し、混合し、そして室
温にて15分間インキュベートした。次いで、そのトランスフェクション混合物
を、血清を有さないGrace培地1mlを有する35mm組織培養プレート内
に播種されたSf9昆虫細胞(ATCC CRL 1711)に滴下して加えた
。プレートを、新たに加えられた溶液を混合するために、前後に振盪した。次い
でプレートを、27℃で5時間インキュベートした。5時間後、トランスフェク
ション溶液をプレートから除去し、そして10%ウシ胎児血清を補充した1ml
のGrace昆虫培地を添加した。プレートをインキュベーターに戻し、そして
27℃で4日間培養を続けた。
【0156】
4日後、上清を回収し、そしてSummersおよびSmith(前出)によ
る記載と同様にプラークアッセイを行なった。改変法として、「Blue Ga
l」(Life Technologies Inc., Gaithersb
urg)と共にアガロースゲルを用いた。これは、青く染色されたプラークの容
易な単離を可能とする。(「プラークアッセイ」の詳細な記述はまた、Life
Technologies Inc.、Gaithersburgにより配布
される昆虫細胞培養およびバキュロウイルス学の使用者ガイド(9〜10頁)に
おいても見い出され得る)。
【0157】
連続希釈の4日後、ウイルスを細胞に添加し、青く染色されたプラークをエッ
ペンドルフピペットのチップで拾った。次いで、組換えウイルスを含む寒天を、
200μlのGrace培地を含むエッペンドルフチューブに再懸濁した。寒天
を、短時間の遠心分離により除去し、そして組換えバキュロウイルスを含む上清
を使用して、35mmディッシュに播種されたSf9細胞に感染させた。4日後
、これらの培養ディッシュの上清を回収し、次いで4℃で保存した。
【0158】
Sf9細胞を、10%熱失活化FBSを補充したGrace培地中で増殖させ
た。細胞を、感染多重度(MOI)1で組換えバキュロウイルスV−gp67−
VEGF2で感染させた。6時間後、培地を除去し、そしてメチオニンおよびシ
ステインを除いたSF900 II培地(Life Technologies
Inc., Gaithersburg)に置き換えた。42時間後、5μC
iの35S−メチオニンおよび5μCiの35Sシステイン(Amersham)を
添加した。細胞を、さらに16時間インキュベートし、その後細胞を遠心分離に
より回収し、そして標識されたタンパク質をSDS−PAGEおよびオートラジ
オグラフィーにより可視化した。
【0159】
培地およびSf9細胞の細胞質由来のタンパク質を、還元条件下または非還元
条件下でSDS−PAGEによって分析した。図4を参照のこと。培地を、50
mM MES(pH5.8)に対して透析した。透析の後に沈澱を得、そして1
00mMクエン酸Na(pH5.0)中に再懸濁した。再懸濁した沈澱を、SD
S−PAGEによって再度分析し、そしてクマシーブリリアントブルーで染色し
た。図5を参照のこと。
【0160】
培地の上清をまた、50mM MES(pH5.8)中で1:10に希釈し、
そして1ml/分の流速でSP−650Mカラム(1.0×6.6cm、Toy
opearl)に適用した。タンパク質を、200、300、および500mM
NaClでの段階勾配で溶出した。VEGF2を、500mMでの溶出を用い
て得た。溶出物を還元剤β−メルカプトエタノールの存在下または非存在下で、
SDS−PAGEで分析し、そしてクマシーブリリアントブルーで染色した。図
6を参照のこと。
【0161】
(実施例3)
COS細胞における組換えVEGF2の発現
プラスミドVEGF2−HAの発現を、ベクターpcDNAI/Amp(In
vitrogen)から誘導する。ベクターpcDNAI/Ampは以下を含む
:1)SV40複製起点、2)アンピシリン耐性遺伝子、3)E. coli複
製起点、4)ポリリンカー領域、SV40イントロン、およびポリアデニル化部
位が続くCMVプロモーター。完全なVEGF2前駆体、およびその3’末端に
インフレームで融合されたHAタグをコードするDNAフラグメントを、ベクタ
ーのポリリンカー領域にクローン化した。それゆえ、組換えタンパク質発現はC
MVプロモーター下で指示される。HAタグは、先に記載されたようなインフル
エンザヘマグルチニンタンパク質由来のエピトープに対応する(I. Wils
on、H. Niman、R. Heighten、A Cherenson、
M. Connolly、およびR. Lerner、1984, Cell
37, 767(1984))。標的タンパク質へのHAタグの融合により、H
Aエピトープを認識する抗体を用いる組換えタンパク質の容易な検出が可能にな
る。
【0162】
プラスミド構築ストラテジーを以下に記述する:
VEGF2をコードするDNA配列(ATCC受託番号第97161号)を、
2つのプライマーを用いるPCRにより構築した:5’プライマー (CGC
GGA TCC ATG ACT GTA CTC TAC CCA)(配列番
号6)は、BamHI部位、それに続く開始コドンから始まるVEGF2コード
配列の18ヌクレオチドを含む;3’配列(CGC TCT AGA TCA
AGC GTA GTC TGG GAC GTC GTA TGG GTA
CTC GAG GCT CAT TTG TGG TCT3’)(配列番号7
)は、XbaI部位、HAタグ、XhoI部位、およびVEGF2コード配列の
最後の15ヌクレオチド(停止コドンは含まない)に相補的な配列を含む。それ
ゆえ、PCR産物は、BamHI部位、XhoI制限エンドヌクレアーゼ部位お
よびインフレーム融合したHAタグが続くコード配列、HAタグに隣接する翻訳
終結停止コドン、およびXbaI部位を含む。PCR増幅DNAフラグメントお
よびベクター(pcDNAI/Amp)を、BamHIおよびXbaI制限酵素
で消化し、そして連結した。連結混合物を、E. coli SURE株(St
ratagene Cloning Systems, La Jolla,
CA 92037)に形質転換し、形質転換された培養物をアンピシリン培地プ
レートにプレーティングし、そして耐性コロニーを選択した。プラスミドDNA
を形質転換体より単離し、そして正しいフラグメントの存在を制限分析で試験し
た。組換えVEGF2の発現のために、COS細胞をDEAE−DEXTRAN
法により発現ベクターでトランスフェクトした(J. Sambrook、E.
Fritsch、T. Maniatis、Molecular Cloni
ng: A Laboratory Manual, Cold Spring
Laboratory Press, (1989))。VEGF2−HAタ
ンパク質の発現を、放射性標識および免疫沈降法により検出した。(E. Ha
rlow, D. Lane, Antibodies: A Laborat
ory Manual, Cold Spring Harbor Labor
atory Press, (1988))。細胞を、トランスフェクションの
2日後、35S−システインで8時間標識した。次いで培養培地を回収し、そして
細胞を界面活性剤(RIPA緩衝液(150mM NaCl、1% NP−40
、0.1% SDS、1% NP−40、0.5% DOC、50mM Tri
s(pH7.5))で溶解した(Wilson, I.ら、同上 37:767
(1984))。細胞溶解物および培養培地の両方を、HA特異的モノクロー
ナル抗体で沈降させる。沈降したタンパク質を15%SDS−PAGEゲルで分
析した。
【0163】
(実施例4)
血管内皮細胞の増殖への部分精製VEGF2タンパク質の影響
1日目に、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を、4%ウシ胎児血清(FBS
)、16単位/mlのヘパリン、および50単位/mlの内皮細胞増殖補充物(
ECGS, Biotechniques, Inc.)を含むM199培地に
2〜5×104細胞/35mmディッシュの密度で播種した。2日目に、培地を
、10%FBS、8単位/mlのヘパリンを含むM199に置き換えた。最初の
45アミノ酸残基を除いた配列番号2のVEGF2タンパク質(VEGF)およ
び塩基性FGF(bFGF)を示した濃度で添加した。4日目および6日目に、
培地を置き換えた。8日目に、Coulter Counterで細胞数を決定
した(図8を参照のこと)。
【0164】
(実施例5)
血管内皮細胞の増殖への精製VEGF2タンパク質の影響
1日目に、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を、4%ウシ胎児血清(FBS
)、16単位/mlのヘパリン、50単位/mlの内皮細胞増殖補充物(ECG
S, Biotechniques, Inc.)を含むM199培地に2〜5
×104細胞/35mmディッシュの密度で播種した。2日目に、培地を、10
%FBS、8単位/mlのヘパリンを含むM199と置き換えた。最初の45ア
ミノ酸残基を除いた配列番号2の精製VEGF2タンパク質(VEGF)をこの
時点で培地に添加した。4日目および6日目に、培地を新鮮な培地および補充物
と置き換えた。8日目に、Coulter Counterで細胞数を決定した
(図9を参照のこと)。
【0165】
(実施例6)
遺伝子治療を介する発現
線維芽細胞を、被験体から皮膚生検によって得る。得られる組織を組織培養培
地中に置き、そして小片に分ける。組織の小塊を、組織培養フラスコの湿った表
面上に置き、各フラスコ中におよそ10片を置く。フラスコの上下を逆さにし、
密閉し、そして室温に一晩放置する。室温で24時間後、フラスコを反転させ、
そして組織塊をフラスコの底に付着したままにし、そして新鮮な培地(例えば、
10% FBS、ペニシリン、およびストレプトマイシンを有するHamのF1
2培地)を添加する。次いで、これを37℃でおよそ1週間インキュベートする
。この時点で新鮮な培地を添加し、その後数日ごとに取り替える。さらに2週間
の培養後、線維芽細胞の単層が出現する。単層をトリプシン処理し、そしてより
大きなフラスコに大きく(scale)する。
【0166】
モロニーマウス肉腫ウイルスの長い末端反復に隣接するpMV−7(Kirs
chmeier, P.T.ら、DNA, 7: 219−25(1988))
をEcoRIおよびHindIIIを用いて消化し、続いて仔ウシ腸ホスファタ
ーゼで処理する。直鎖状ベクターをアガロースゲル上で分別し、そしてガラスビ
ーズを用いて精製する。
【0167】
本発明のポリペプチドをコードするcDNAを、それぞれ5’末端配列および
3’末端配列に対応するPRCプライマーを用いて増幅する。5’プライマーは
EcoRI部位を含み、そして3’プライマーはHindIII部位をさらに含
む。等量のモロニーマウス肉腫ウイルス直鎖状骨格、ならびに増幅されたEco
RIおよびHindIIIフラグメントを、T4 DNAリガーゼの存在下で一
緒に加える。得られた混合物を、2つのフラグメントの連結に適切な条件下で維
持する。連結混合物を使用して、細菌HB101を形質転換し、次いで、これを
、適切に挿入された目的の遺伝子をベクターが有することを確認する目的のため
に、カナマイシン含有寒天上にプレーティングする。
【0168】
アンホトロピックpA317またはGP+am12パッケージング細胞を、1
0%仔ウシ血清(CS)、ペニシリン、およびストレプトマイシンを有するDu
lbecco改変Eagle培地(DMEM)における組織培養物中で、コンフ
ルエントな密度になるまで増殖させる。次いで、遺伝子を含むMSVベクターを
培地に添加し、そしてパッケージング細胞をベクターで形質導入する。この時点
でパッケージング細胞は、遺伝子を含有する感染性ウイルス粒子を産生する(こ
の時点でパッケージング細胞は、プロデューサー細胞と呼ばれる)。
【0169】
新鮮な培地を、形質導入したプロデューサー細胞に添加し、その後、コンフル
エントなプロデューサー細胞の10cmプレートから培地を回収する。感染性ウ
イルス粒子を含む使用済みの培地を、ミリポア(millipore)フィルタ
ーを通して濾過して、剥離したプロデューサー細胞を除去し、次いでこの培地を
用いて線維芽細胞を感染させる。培地を、線維芽細胞のサブコンフルエントなプ
レートから除去し、そして直ちにプロデューサー細胞からの培地に置き換える。
この培地を除去し、そして新鮮な培地と置き換える。ウイルスの力価が高い場合
、事実上全ての線維芽細胞が感染され、そして選択は必要ではない。力価が非常
に低い場合、選択マーカー(例えば、neo、またはhis)を有するレトロウ
イルスベクターを使用することが必要である。
【0170】
次いで、操作された線維芽細胞は、単独で、またはcytodex 3マイク
ロキャリアービーズ上でコンフルエントになるまで増殖させた後のいずれかで、
宿主に注入する。この時点で、線維芽細胞は、タンパク質産物を産生する。
【0171】
本発明の多くの改変および変形が、上記の教示を考慮すれば可能であり、従っ
て、添付の請求の範囲の範囲内で本発明は特に記載した以外の方法で実施され得
る。
【0172】
ヒトVEGF2ポリペプチドおよびそのようなVEGF2ポリペプチドをコー
ドするDNA(RNA)が開示される。組換え技術によってそのようなポリペプ
チドを産生するための手順、ならびにそのようなポリペプチドに対する抗体およ
びアンタゴニストも提供される。創傷治癒を刺激するため、および血管組織の修
復のために、そのようなポリペプチドを使用する方法も開示される。腫瘍増殖、
炎症を阻害するため、ならびに糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、および乾癬
を処置するために、このアンタゴニストを使用する方法も提供される。宿主由来
のサンプル中の、VEGF2コード配列における変異、およびVEGF2タンパ
ク質の濃度の変化を検出するための診断方法もまた、開示される。
【0173】
(発明の効果)
本発明により、ヒトVEGF2ポリペプチドおよびそのようなVEGF2ポリ
ペプチドをコードするDNA(RNA)が提供される。このようなポリペプチド
は、創傷治癒を刺激するため、および血管組織の修復のために有用である。
【0174】
(配列表)
【数1】

【数2】

【数3】

【数4】

【数5】

【数6】

【数7】

【数8】

【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1A】本発明のcDNA配列、および本発明のポリペプチドの対応する推定アミノ酸配列を示す図面である。アミノ酸についての標準的な1文字略号を使用する。配列決定を、373自動化DNAシーケンサー(Applied Biosystems, Inc.)を使用して行なった。配列決定の精度は、97%より大きいことが予測される。
【図1B】図1Aの続きである。
【図1C】図1Bの続きである。
【図2】本発明のポリペプチドとヒトPDGF/VEGFファミリーの他のメンバーとの間のアミノ酸配列相同性の実例を示す図面である。ボックス領域は、保存された配列および8つの保存されたシステイン残基の位置を示す。
【図3】本発明のポリペプチドのインビトロでの転写、翻訳、および電気泳動の後のゲルの写真である。レーン1:14Cおよびレインボー分子量マーカー;レーン2:FGFコントロール;レーン3:M13逆方向プライマーおよびM13正方向プライマーによって産生されたVEGF2;レーン4:M13逆方向プライマーおよびVEGF−F4プライマーによって産生されたVEGF2;レーン5:M13逆方向プライマーおよびVEGF−F5プライマーによって産生されたVEGF2。
【図4】培地および細胞の細胞質由来のタンパク質を、還元条件下および非還元条件下でSDS−PAGEによって分析した結果を示すゲルの写真である。VEGF2ポリペプチドは、Sf9細胞からなるバキュロウイルス系において発現される。
【図5】本発明の核酸配列で感染したSf9細胞由来の培地を沈澱させ、そして再懸濁した沈澱をSDS−PAGEによって分析し、そしてクマシーブリリアントブルーで染色した結果を示すゲルの写真である。
【図6】VEGF2を培地上清から精製し、そして還元剤であるβ−メルカプトエタノールの存在下および非存在下でSDS−PAGEによって分析し、そしてクマシーブリリアントブルーで染色した結果を示すゲルの写真である。
【図7】RP−300カラム(0.21×3cm、Applied Biosystems, Inc.)を使用した精製VEGF2の逆相HPLC分析の結果を示すグラフである。カラムを0.1%のトリフルオロ酢酸(溶媒A)で平衡化し、そしてタンパク質を、0%〜60%の溶媒B(0.07%TFAを含むアセトニトリルからなる)の7.5分間の勾配で溶出した。タンパク質溶出を、215nm(赤線)および280nm(青線)の吸光度でモニターした。溶媒Bの%を緑線で示す。
【図8】塩基性線維芽細胞増殖因子との比較における、血管内皮細胞の増殖への部分精製VEGF2タンパク質の影響を例示するグラフである。
【図9】血管内皮細胞の増殖への精製VEGF2タンパク質の影響を例示するグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質分子の発現に関連する疾患または該疾患に対する感受性を診断するための方法であって、該方法は:
患者の細胞からの核酸を入手する工程;および
(a)配列番号2を含む単離されたタンパク質分子;
(b)配列番号2のアミノ酸1〜373を含む単離されたタンパク質分子;
(c)配列番号2のアミノ酸−23〜373を含む単離されたタンパク質分子;および
(d)配列番号2のアミノ酸−46〜373を含む単離されたタンパク質分子からなる群より選択される、タンパク質分子をコードする核酸配列における変異を決定する工程
を包含する、方法。
【請求項2】
宿主に由来するサンプルにおけるタンパク質分子の存在について分析する工程を包含する診断方法であって、該タンパク質分子が、
(a)配列番号2を含む単離されたタンパク質分子;
(b)配列番号2のアミノ酸1〜373を含む単離されたタンパク質分子;
(c)配列番号2のアミノ酸−23〜373を含む単離されたタンパク質分子;および
(d)配列番号2のアミノ酸−46〜373を含む単離されたタンパク質分子からなる群より選択される、
方法。
【請求項3】
(a)配列番号2のアミノ酸1〜373をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド;および
(b)(a)のポリヌクレオチドと少なくとも95%同一な核酸配列を含むポリヌクレオチド、
からなる群より選択される、単離されたポリヌクレオチド。
【請求項4】
単離されたポリヌクレオチドであって:
(a)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAの核酸配列を含むポリヌクレオチド;
(b)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされる全長タンパク質分子をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド;
(c)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされる全長からN末端メチオニンを除いたタンパク質分子をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド;
(d)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされる全長からリーダー配列を除いたタンパク質分子をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチド;
(e)該(a)〜(d)のいずれか1つのポリヌクレオチドに対して少なくとも90%同一である核酸配列を含むポリヌクレオチド;および
(f)該(a)〜(d)のいずれか1つのポリヌクレオチドに対して少なくとも95%同一である核酸配列を含むポリヌクレオチド;および
からなる群より選択される、ポリヌクレオチド。
【請求項5】
(a)配列番号2のアミノ酸1〜373のタンパク質分子;および
(b)(a)のタンパク質分子と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を含むタンパク質分子、
からなる群より選択される、単離されたタンパク質分子。
【請求項6】
単離されたタンパク質分子であって:
(a)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされる全長タンパク質を含むタンパク質分子;
(b)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされる全長からN末端メチオニンを除いたタンパク質を含むタンパク質分子;
(c)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされる全長からリーダー配列を除いたタンパク質を含むタンパク質分子;
(d)該(a)〜(c)のいずれか1つのタンパク質分子に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド;
(e)該(a)〜(c)のいずれか1つのタンパク質分子に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド
からなる群より選択される、タンパク質分子。
【請求項7】
請求項3,5または6のいずれか1項に記載のタンパク質分子、または請求項4に記載の単離されたポリヌクレオチドを含む、組成物。
【請求項8】
患者の内皮細胞の増殖を刺激する方法において使用するための、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
患者の脈管形成を刺激する方法において使用するための、請求項7に記載の組成物。
【請求項10】
VEGF−2を必要とする患者の処置において使用するための、請求項7に記載の組成物。
【請求項11】
前記患者が創傷を有する、請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
請求項11に記載の組成物であって、ここで、前記創傷が、皮膚の潰瘍、褥癒、静脈の潰瘍、糖尿病性潰瘍、熱傷、皮膚移植、裂傷、外科手術に関連する切断、または移植からなる群から選択される、組成物。
【請求項13】
前記患者が血管組織損傷を有する、請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
前記患者が虚血を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記患者が心筋梗塞を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記患者が冠状動脈疾患を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項17】
前記患者が末梢血管疾患を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項18】
前記患者が中枢神経系血管疾患を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項19】
前記患者が動脈硬化症を有する、請求項13に記載の組成物。
【請求項20】
前記患者が骨、歯周組織、靭帯または組織の損傷を有する、請求項8〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項21】
前記患者がヒトである、請求項8〜20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
配列番号2のアミノ酸−23〜373からなるアミノ酸配列に対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質分子に対する抗体であって、アミノ酸24〜373からなるタンパク質分子に結合しない、抗体。
【請求項23】
配列番号2のアミノ酸−23〜373からなるアミノ酸配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質分子に対する抗体であって、アミノ酸24〜373からなるタンパク質分子に結合しない、抗体。
【請求項24】
疾患または疾患に対する感受性の診断剤を製造するための、請求項22または23に記載される抗体の使用。
【請求項25】
宿主由来のサンプル中のタンパク質分子の存在を分析するためのプロセスにおける、請求項22または23に記載される抗体の使用。
【請求項26】
患者における腫瘍の存在を検出するイムノアッセイにおける、請求項22または23に記載される抗体の使用。
【請求項27】
VEGF2の上昇したレベルを検出するための、請求項22または23に記載される抗体の使用。
【請求項28】
癌を診断する薬剤を製造するための、請求項22または23に記載される抗体の使用。
【請求項29】
抗体を含有する組成物であって、該抗体が、以下:
(a)配列番号2からなるタンパク質の成熟部分を含有するタンパク質分子;
(b)配列番号2からなるタンパク質のプロタンパク質部分を含有するタンパク質分子;
(c)ヒトVEGF−2を含有するタンパク質分子;
(d)配列番号2のアミノ酸108〜121を含有するタンパク質分子;
(e)配列番号2のアミノ酸85〜165を含有するタンパク質分子;
(f)配列番号2のアミノ酸24〜373を含有するタンパク質分子;
(g)配列番号2のアミノ酸1〜373を含有するタンパク質分子;
(h)配列番号2のアミノ酸−23〜373を含有するタンパク質分子;
(i)配列番号2のアミノ酸−46〜373を含有するタンパク質分子;
(j)配列番号2のポリペプチドフラグメンドを含有するタンパク質分子であって、ここで該フラグメントが脈管形成活性を有する、タンパク質分子;
(k)配列番号2のポリペプチドフラグメンドを含有するタンパク質分子であって、ここで該フラグメントが内皮細胞増殖活性を有する、タンパク質分子;
(l)配列番号2を発現し得る細胞から産生されたタンパク質のアミノ酸配列を有するタンパク質分子;
(m)該(a)〜(l)のいずれか1つに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質分子;および
(n)該(a)〜(l)のいずれか1つに対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質分子、
からなる群から選択されるタンパク質分子に特異的に結合する、組成物であって、ここで該抗体は、腫瘍転移、胸部癌、または神経膠腫を処置するために使用される、組成物。
【請求項30】
抗体を含有する組成物であって、該抗体が、以下:
(a)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされるタンパク質の成熟部分を含むタンパク質分子;
(b)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされるタンパク質のプロタンパク質部分を含むタンパク質分子;
(c)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされる全長タンパク質を含む、タンパク質分子;
(d)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされる、タンパク質分子;
(e)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされるタンパク質からN末端メチオニンを除いた、タンパク質分子;
(f)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされるタンパク質からリーダー配列を除いた、タンパク質分子;
(g)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされるタンパク質分子のポリペプチドフラグメントを含むタンパク質分子であって、ここで該フラグメントが脈管形成活性を有する、タンパク質分子;
(h)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされるタンパク質分子のポリペプチドフラグメントを含む単離されたタンパク質分子であって、ここで該フラグメントが内皮細胞増殖活性を有する、タンパク質分子;
(i)ATCC受託番号97149に含まれるcDNAによってコードされるタンパク質分子を発現し得る細胞から産生されたタンパク質のアミノ酸配列を有する、単離されたタンパク質分子;
(j)該(a)〜(i)のいずれか1つに対して少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、単離されたタンパク質分子;および
(k)該(a)〜(i)のいずれか1つに対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、単離されたタンパク質分子、
からなる群から選択されるタンパク質分子に特異的に結合する、組成物であって、ここで該抗体は、腫瘍転移、胸部癌、または神経膠腫を処置するために使用される、組成物。
【請求項31】
前記患者がヒトである、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項32】
前記抗体が抗原結合抗体フラグメントである、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項33】
前記抗体がFabフラグメントである、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項34】
前記抗体が単鎖結合フラグメントである、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項35】
前記抗体がFab発現ライブラリーの産物である、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項36】
前記抗体がポリクローナル抗体である、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項37】
前記抗体がモノクローナル抗体である、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項38】
前記抗体がキメラ抗体である、請求項29または30に記載の組成物。
【請求項39】
前記抗体がヒト化抗体である、請求項29または30に記載の組成物。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−244388(P2007−244388A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−106593(P2007−106593)
【出願日】平成19年4月13日(2007.4.13)
【分割の表示】特願平9−501427の分割
【原出願日】平成8年6月6日(1996.6.6)
【出願人】(597018381)ヒューマン ジノーム サイエンシーズ, インコーポレイテッド (44)
【氏名又は名称原語表記】Human Genome Sciences, Inc.
【住所又は居所原語表記】9410 Key West Avenue, Rockville, Maryland 20850, United States of America
【Fターム(参考)】