ヒト5T4腫瘍関連抗原由来のMHCクラスIペプチドエピトープ
5T4抗原に由来するMHCクラスIペプチドエピトープを提供する。特に、(i)配列番号2として表示されるアミノ酸配列、(ii)配列番号3として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、(iii)配列番号4として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、(iv)配列番号5として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、(v)配列番号6として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、(vi)配列番号7として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープの1つを含む、5T4のペプチドエピトープを提供する。このようなペプチド(またはその前駆体)を含むワクチン、および疾患、特にがん疾患を治療および/または防止するためのその使用も提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、5T4抗原のペプチドエピトープ、および免疫療法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
特異的ヒト腫瘍抗原が同定される前に、がん細胞全体またはがん細胞由来の細胞成分分画のいずれかに対して、がん患者を免疫化しようとして、多くの臨床治験が実施された。しかし、腫瘍抗原をコードする遺伝子の同定により、同定された抗原を担持する腫瘍細胞の攻撃に基づいた特異的免疫療法の開発が可能になった。これらの遺伝子または遺伝子産物を使用する様々な臨床手法は、下表のようにまとめることができる。
【0003】
【表1】
【0004】
無処理のタンパク質による免疫化は、クラスIエピトープおよびクラスIIエピトープの両者に対して同時に免疫化するという潜在的な利点を有するが、多量の腫瘍抗原を精製するためには、多大な時間のかかる努力を必要とする。腫瘍抗原内のクラスIペプチドおよびクラスIIペプチドの同定により、高レベルの純粋な合成ペプチドで免疫化することが可能になった。該ペプチド手法は、どちらのエピトープを使用するかを選択することにより、クラスI型応答およびクラスII型応答(またはその混合)のどちらかを選択できるという利点もある。ペプチドによる免疫化は、T細胞の異なるサブセットを刺激するために、亜優性エピトープおよび/または潜在エピトープを選択できることも意味する(抗原プロセッシングの必要性を、回避するかまたは「トリミング役」に低下させることが可能なため)。また、免疫原性を高めるために、(たとえば、HLAクラスIまたはクラスIIアンカー部位で)ペプチドを修飾することも可能である。
【0005】
ここ2、3年で、腫瘍免疫におけるCD8+T細胞の役割に対して多大な注意が払われた。腫瘍特異的CD8+CTLは、in vivo動物モデルで、腫瘍細胞を直接溶解して腫瘍塊を根絶できることが証明されている。しかし、CD4+T細胞は、重要な役割を果たすとも考えられ(Wang and Rosenberg(1999年)Immunological Reviews 170:85−100)、CD4+およびCD8+T細胞の両者の関与を必要とする最適がんワクチンである可能性もある。
【0006】
ヒトおよび動物腫瘍で、多数のがん胎児性抗原または腫瘍関連抗原(TAA)が同定され、特性決定されている。概して、TAAは、成人細胞ではダウンレギュレートされ、したがって、成人では、通常は存在しないかまたは非常に低レベルで存在するに過ぎない、胎児発生中に発現される抗原である。腫瘍細胞は、TAAの発現を再開始しないことが認められており、腫瘍診断、ターゲティングおよび免疫療法へのTAAの利用が提唱されている。
【0007】
TAA 5T4(WO 89/07947号参照)は、既に特徴付けされている。がん腫で広く発現されるTAA 5T4は、72kDa糖タンパク質であるが、正常な成人組織で非常に制限された発現パターンを有する(表2参照)。TAA 5T4は、結腸直腸がんおよび胃がんにおける転移と強い相関関係があると思われる。ヒト5T4の全核酸配列は既知である(Myersら、1994年 J Biol Chem 169:9319−24)。
【0008】
【表2】
【0009】
(Starzynskaら、Eur J Gastroenterol Hepatol 1998年6月;10(6):479−84;Starzynskaら、Br J Cancer 1994年5月;69(5):899−902;Starzynskaら、Br J Cancer 1992年11月;66(5):867−9)。
【0010】
5T4は、力学的関与があり得る、腫瘍進行および転移の可能性に関するマーカーとして提唱されている(Carsbergら、(1996年) Int J Cancer 1996年9月 27;68(1):84−92)。5T4は、また、免疫治療薬としての使用も提唱されている(WO 00/29428号参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[発明の概要]
本発明者は、5T4の多数のMHCクラスIおよびクラスII制限エピトープを同定した。この抗原性ペプチドの同定は、がんに対する診断および治療の方針を開発する新たな機会を与える。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様は、5T4抗原のMHCクラスIエピトープに関する。本発明は、T細胞により特異的に認識されるように、MHCクラスI分子とともに提示され得る5T4抗原のペプチドエピトープに関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特に、本発明は、
(i)配列番号2として表示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号3として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(iii)配列番号4として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(iv)配列番号5として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(v)配列番号6として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(vi)配列番号7として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ
の1つを含む、5T4のペプチドエピトープを提供する。
【0014】
本発明のさらなる態様は、
−このようなペプチドを含むポリエピトープ列。
−細胞ペネトレーターと結合した、このようなペプチドエピトープ、またはこのようなポリエピトープ列。
−四量体と結合した、このようなペプチドエピトープ、またはこのようなポリエピトープ列。
−このようなペプチドエピトープまたはポリエピトープ列(および場合によって関連した細胞ペネトレーター)をコードすることができる核酸配列。
−このような核酸配列を細胞に送達することができるベクターシステム。
−このようなペプチドエピトープ(またはその前駆体)によりパルス処理した細胞。
−このようなペプチドエピトープ、ポリエピトープ列、核酸配列、ベクターシステムおよび/または細胞を含んでなるワクチン。
−疾患の予防および/または治療に使用するための医薬の製造における、このようなワクチンの使用。
−このようなワクチンの有効量を対象者等に投与するステップを含む、疾患の治療および/または予防を必要としている被検対象における、疾患を治療および/または予防する方法。
−このようなペプチドおよび/または核酸配列に特異的に結合することができる薬剤。
−対象者において、このようなペプチド、核酸または薬剤の存在を検出するステップを含む、方法。
−MHCクラスI分子とともにこのようなペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞系またはクローン。
に関する。
【0015】
本発明の他の態様は、添付の特許請求の範囲、および下記の説明および考察に示す。これらの態様は、別々のセクションの項目の下に示す。しかし、当然のことながら、各セクションの項目の教示は、そのセクションの項目に必ずしも限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[発明の詳細な説明]
エピトープ
本発明は、ペプチドエピトープに関する。
【0017】
用語「ペプチド」は、一般に、隣接するアミノ酸のα−アミノとカルボキシル基の間のペプチド結合によって、一方と他方を結び付ける、一連の残基、一般にL−アミノ酸を意味するために、通常の意味で使用される。この用語は、修飾されたペプチドおよび合成ペプチド類縁体を包含する。
【0018】
T細胞エピトープは、タンパク質抗原から誘導できる短いペプチドである。抗原提示細胞は、抗原をインターナライズし、MHC分子を結合することができる短いフラグメントに処理することができる。MHCに結合するペプチドの特異性は、ペプチドと個々のMHC分子のペプチド結合溝との間の特異的相互作用に左右される。
【0019】
MHCクラスI分子に結合する(かつCD8+T細胞により認識される)ペプチドは、通常は6〜12アミノ酸、たいていは8〜10アミノ酸の長さである。ペプチドのアミノ末端アミン基は、ペプチド溝の一端と接触し、カルボキシ末端のカルボキシレート基は、該溝の他端のインバリアント部位に結合する。該ペプチドは、主鎖原子間でさらに接触する溝に沿って広範囲に確認され、溝に沿って並ぶアミノ酸側鎖を保存する。ペプチド長の変化は、ペプチド主鎖、しばしばプロリン残基またはグリジン残基におけるねじれによって調整される。
【0020】
MHCクラスII分子に結合するペプチドは、通常は少なくとも10アミノ酸、たとえば約13〜18アミノ酸の長さであり、はるかに長いこともある。これらのペプチドは、両端で開いたMHCIIペプチド結合溝に沿って広範囲に確認される。該ペプチドは、主として、ペプチド結合溝に沿って並ぶ保存残基と接触する主鎖原子により、所定の位置に保持される。
【0021】
本発明のペプチドは、化学的方法(Peptide Chemistry,A practical Textbook.Mikos Bodansky,Springer−Verlag,Berlin.)を使用して製造することが可能である。たとえば、ペプチドは、固相技術(Roberge JYら(1995年) Science 269:202−204)によって合成し、樹脂から切断し、分離用高性能液体クロマトグラフィで精製することができる(たとえば、Creighton(1983年) Proteins Structures And Molecular Principles,WH Freeman and Co,New York NY)。自動合成は、たとえば、製造業者により添付される説明書に従って、ABI 43 1 Aペプチドシンセイサイザー(Peptide Synthesizer)(パーキン・エルマー(Perkin Elmer))を使用して、実現することが可能である。
【0022】
該ペプチドは、あるいは、組換え法で、またはより長いポリペプチドからの切断によって、製造することが可能である。たとえば、該ペプチドは、全長5T4からの切断によって得ることが可能である。ペプチドの組成は、アミノ酸分析または配列決定(たとえば、エドマン分解法)によって確認することが可能である。
【0023】
用語「ペプチドエピトープ」は、修飾されたペプチドを包含する。たとえば、野生型5T4ペプチドのMHC結合特異性が保持されている限り、5T4ペプチドは、アミノ酸挿入、欠失または置換により、変異していてもよい。好ましい実施形態では、該修飾されたエピトープは、ペプチド結合溝に対して、より大きい親和性を有する。好ましくは、該ペプチドは、野生型配列から5つ以下の変異、より好ましくは3つ以下、最も好ましくは1つまたは0の変異を含む。
【0024】
あるいは(または加えて)、該ペプチドのアミノ酸配列を変えずに、修飾を行うことが可能である。たとえば、D−アミノ酸または他の非天然アミノ酸を含めてもよく、正常なアミド結合を、エステルもしくはアルキルバックボーン結合に置き換えてもよく、Nアルキル置換基もしくはCアルキル置換基、側鎖修飾、ならびにジスルフィド結合および側鎖アミド結合またはエステル結合等の束縛を含んでもよい。このような変化は、その結果として、ペプチドのより大きいin vivo安定性、およびより長い生物学的寿命をもたらす。
【0025】
エピトープの修飾は、http://www-bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken.parker.comboformで見つけられるであろう、K.Parker(NIH)によって考案されたプログラム「ペプチド結合予測(Peptide Binding Predictions)」を使用して導かれる、より能率的なT細胞誘導に関する予測に基づいて実施することが可能である。(Parker,K.Cら、1994年.J.Immunol.152:163も参照)。
【0026】
「修飾された」5T4ペプチドエピトープは、免疫応答を誘導する能力を高めるために、輸送体ペプチドまたはアジュバントに結合しているか、または他の方法で関連しているペプチドを含む。たとえば、HLAへの能率的な輸送およびCTLエピトープを増強させるためのHLA分子との相互作用のために、ペプチドを、TAP非依存性輸送体ペプチドに融合させることが可能である(総説に関しては、Yewdellら、1998年 J Imrnunother 21:127−31;Fuら、(1998年) J Virol 72:1469−81を参照)。
【0027】
さらなる実施形態では、5T4または5T4ペプチドをB型肝炎コア抗原に融合させて、Tヘルパー応答および抗体応答を増強することが可能である(Schodelら、1996年、Intervirology 39:104−10)。
【0028】
エピトープであるためには、ペプチドは、MHCクラスI分子またはクラスII分子のペプチド結合溝に結合することができ、かつT細胞によって認識されなければならない。
【0029】
所与の抗原に由来するペプチドの細胞表面提示は、ランダムではなく、少数の高頻度で存在するエピトープに支配される傾向がある。ある特定のペプチドの優勢性は、多くの因子、たとえば、MHC分子を結合するための相対的親和性、APC内の空間時間的発生ポイントおよび分解に対する抵抗性に左右される。抗原のエピトープ階層(hierarchy)は、免疫応答の進行とともに変化するト考えられる。免疫優性ペプチドに対する一次免疫応答後、亜優性決定基に、エピトープ「スプレッド(spreading)」が起こることがある(Lehmannら、(1992年) Nature 358:155−157)。
【0030】
所与の抗原に関する潜在エピトープも存在する可能性がある。潜在エピトープは、ペプチドとして投与されると、T細胞応答を刺激することができるが、抗原全体として投与されると、このような応答を生じさせることができないものである。それは、APC内で抗原をペプチドに処理している間に、潜在エピトープが破壊されるということかもしれない。
【0031】
本発明のペプチドは、5T4の免疫優性(immunodominant)エピトープ、亜優性(sub−dominant)エピトープまたは潜在(cryptic)エピトープであってもよい。
【0032】
抗原のエピトープは、PCにより提示されるとき、抗原の一部に広がる重複ペプチドに対するT細胞応答を測定することにより、同定することが可能である(以下参照)。このような研究は、通常は、ペプチドの「ネステッド・セット」という結果をもたらし、また、ある特定のT細胞系/クローンの最小エピトープは、切断形ペプチドに対する応答を測定することにより、評価することができる。
【0033】
抗原の最小エピトープは、実用目的には最良のエピトープではない可能性がある。MHCへの最適結合には、多分、最小エピトープに隣接するアミノ酸が必要であろう。
【0034】
[エピトープの同定]
T所与の抗原内のT細胞エピトープを同定するための多数の方法が、当技術分野で周知である。
【0035】
自然にプロセシングされたエピトープは、抗原ロードAPCから溶出されるペプチドの質量分光光度分析によって同定することが可能である。これらは、抗原を取り入れるように促されたか、または適切な遺伝子による形質転換によって該タンパク質を細胞内で産生するように強いられたAPCである。一般に、APCを、溶液中かまたはAPC細胞表面にうまく向けられた(targeted)タンパク質とともに、インキュベートする。37℃でインキュベートした後、デタージェント中で細胞を溶解し、たとえば、アフィニティクロマトグラフィでクラスIIタンパク質を精製する。精製されたMHCを適当な化学媒体(たとえば、酸条件)で処理することにより、MHCからペプチド類が溶出する。このペプチドのプールを分離し、その特性を、同様に処理した対照APC由来のペプチドと比較する。タンパク質発現細胞/供給細胞特有のピークを、(たとえば質量分析法によって)分析し、ペプチド断片を同定した。この手順によって、通常は、抗原プロセッシングによって、ある特定の抗原から生成される(通常は、「ネステッド・セット」内に存在する)ペプチドの範囲に関する情報が作成される。
【0036】
エピトープを同定するための別の方法は、in vitroアッセイで、重複し、かつ抗原の長さに及ぶペプチドの合成ライブラリーをスクリーニングすることである。たとえば、15アミノ酸の長さであり、かつ5アミノ酸または10アミノ酸だけ重複するペプチドを使用することが可能である。該ペプチドを、抗原提示細胞およびT細胞を含む抗原提示系でテストする。たとえば、該抗原提示系は、ネズミ脾細胞標本、扁桃またはPBMC由来のヒト細胞の標本であってもよい。あるいは、該抗原提示系は、ある特定のT細胞系/クローンおよび/またはある特定の抗原提示細胞型を含んでもよい。
【0037】
T細胞活性化は、T細胞増殖(たとえば3H−チミジン取り込みを使用)またはサイトカイン産生によって測定することが可能である。TH1型CD4+T細胞の活性化は、たとえば、ELISPOTアッセイ等の標準技術で検出可能なIFNγ産生によって検出することができる。
【0038】
重複ペプチド試験は通常、エピトープが位置する抗原の領域を示す。次いで、ある特定のT細胞の最小エピトープを、切断形ペプチドに対する応答を測定することによって評価することができる。たとえば、重複ライブラリーにおける残基1〜15を含むペプチドに対する応答が得られる場合、両端で切断形であるセット(すなわち、1〜14、1〜13、1〜12等々、および2〜15、3〜15、4〜15等々)を使用して、最小エピトープを同定することができる。
【0039】
[ポリエピトープ列]
抗原に対する免疫応答を誘導する特に効果的な方法は、互いに連結した1つ以上の抗原に由来する複数の抗原性エピトープを含む、ポリエピトープ列(string)の使用によることは判明している。たとえば、マラリアの場合、破傷風トキソイド、および結核菌群(M.tuberculosisおよびM.bovis)の様々な菌株の38Kdミコバクテリア抗原に由来するCD4T細胞エピトープも発現する、主としてマラリア(P.falczparum)CD8T細胞ペプチドエピトープのポリエピトープ列が、記載されている。
【0040】
本発明は、本発明による少なくとも1つのペプチドを含むポリエピトープ列も提供する。該ポリエピトープ列は、5T4抗原から誘導可能な別のエピトープまたは別のTAA等の別の抗原に由来するエピトープ、またはそれらの組合せも含むことが可能である。
【0041】
TAAは、膜タンパク質、または糖タンパク質および糖脂質の変化した炭水化物分子のいずれかとして特性決定されているが、その機能は、大部分が不明のままである。1つのTAAファミリー、貫膜4スーパーファミリー(TM4SF)は、通常は、4つの十分に保存された膜貫通領域、幾つかのシステイン残基および短い配列モチーフを有する。T細胞のCD4およびCD8を含む、他の重要な膜受容体と緊密に関連したTM4SF抗原が存在するという証拠がある(Imai & Yoshie(1993年) J.Immunol.151,6470−6481)。TM4SF抗原は、シグナル形質導入に際してある役割を果たし、次には、細胞発生、活性化および運動性に影響を及ぼす可能性があることも示唆されている。TM4SF抗原の例としては、ヒト黒色腫関連抗原ME491、ヒトおよびマウス白血球表面抗原CD37、およびヒトリンパ芽球性白血病関連TALLA−1などが挙げられる(Hotta,H.ら、(1988年) Cancer Res.48,2955−2962;Classon,B.J.ら、(1989年) J.Exp.Med.169:1497−1502;Tomlinson,M.G.ら、(1996年) Mol.Immun.33:867−872;Takagi,S.ら(1995年) Int.J.Cancer61:706−715)。
【0042】
TAAのさらなる例としては、下記のクラスのTAAなども挙げられるが、これらに限定されない:Cancer Vaccines and Immunotherapy(2000) EdsStern,Beverley and Carroll,Cambridge University Press,Cambridgeに概説された、がん精巣抗原(HOM−MEL−40)、分化抗原(HOM−MEL−55)、過剰発現した遺伝子産物(HOM−MD−21)、変異遺伝子産物(NY−COL−2)、スプライスバリアント(HOM−MD−397)、遺伝子増幅産物(HOM−NSCLC−11)およびがん関連自己抗原(MOM−MEL−2.4)。さらなる例としては、MART-1(Melanoma Antigen Recognised by T cells-1(T細胞-1により認識される黒色腫抗原))MAGE−A(MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A8、MAGE−A10、MAGE−A12)、MAGEB(MAGE−B1−MAGE−B24)、MAGE−C(MAGE−C1/CT7、CT10)、GAGE(GAGE−1、GAGE−8、PAGE−1、PAGE−4、XAGE−1、XAGE−3)、LAGE(LAGE−1a(1S)、−1b(1L)、NY−ESO+1)、SSX(SSX1−SSX−5)、BAGE、SCP−1、PRAME(MAPE)、SART−1、SART−3、CTp11、TSP50、CT9/BRDT、gp100、MART−1、TRP−1、TRP−2、MELAN−A/MART−1、がん胎児性抗原(CEA)、前立腺特異的抗原(PSA)、MUCIN(MUC−1)およびチロシナーゼなどが挙げられる。TAAは、Cancer Immunology(2001)Kluwer Academic Publishers,The Netherlandsで概説されている。
【0043】
[細胞ペネトレーター]
本発明は、細胞ペネトレーター(penetrator)に結合した、ペプチドエピトープ、またはポリエピトープ列も提供する。
【0044】
ペプチドでパルス処理した抗原提示細胞(たとえば樹状細胞)は、抗腫瘍免疫増強に有効であった(Celluzziら(1996年) J.Exp.Med.183 283−287;Youngら(1996年) J.Exp.Med.183 7−11)。ペプチドを細胞透過ペプチド(CPP)に連結することにより、樹状細胞によるペプチドの提示を延長(およびしたがって抗腫瘍免疫を増強する)できることが明らかにされている(Wang and Wang(2002年) Nature Biotechnology 20 149−154)。
【0045】
細胞ペネトレーターは、抗原提示細胞へのペプチド/ポリエピトープ列の細胞内送達を増強する任意の実体(構成要素)であってもよい。たとえば、細胞ペネトレーターは、ペプチドと結び付くと、その原形質膜を通過する能力を増強する脂質であってもよい。あるいは、細胞ペネトレーターは、ペプチドであってもよい。HIVのTatタンパク質(Franker and Pabo(1988年) Cell 55 1189−1193),HSVのVP22タンパク質(Elliott and O’Hare(1997年) Cell 88 223−233)および線維芽細胞成長因子(Linら(1995年) J.Biol.Chem.270 14255−14258)を含む、タンパク質から、幾つかの細胞透過ペプチド(CPP)が同定されている。
【0046】
用語「結合」は、たとえば共有結合による直接連結を含むことを意味する。アミノ酸を連結するための共有結合の例としては、ジスルフィド結合およびペプチド結合などが挙げられる。好ましい実施形態では、ペプチド/ポリエピトープ列およびCPPは、融合タンパク質を作るために、ペプチド結合によって連結されている。
【0047】
該用語は、非共有結合、たとえば、静電結合、水素結合およびファンデルワールス力による結び付きも含む。細胞ペネトレーターおよびペプチド/ポリエピトープ列は、共有結合または非共有結合がなくても、結合することが可能である。たとえば、細胞ペネトレーターは、ペプチド/ポリエピトープ列を封入する脂質(たとえばリポソーム)であってもよい。
【0048】
[5T4]
5T4は、既に、たとえば、W 089/07947号で、特性決定されている。ヒト・5T4の配列は、GenBankで、寄託番号Z29083である。該ペプチドは、異なる種に由来する5T4抗原、たとえば、ネズミ5T4(WO 00/29428号)、イヌ5T4(WO 01/36486号)またはネコ5T4(本明細書に表示されている配列番号1)から誘導することもできる。該ペプチドは、特定の種、好ましくは哺乳動物で発見される天然の5T4変種から誘導することも可能である。このような変種は、同一遺伝子ファミリーの関連遺伝子によってコードされることも、特定の遺伝子の対立遺伝子の変種によってコードされることもあり、または5T4遺伝子の選択的スプライシングバリアントを表すこともある。
【0049】
異なる種に由来する5T4から誘導されるペプチド、またはスプライスバリアントは、類似のヒト野生型5T4ペプチドと異なるアミノ酸配列を有する可能性がある。しかし、該ペプチドがヒトペプチドと同じ質的結合特異性を保持する(すなわち該ペプチドが、同一ハプロタイプのMHC分子のペプチド結合溝内で結合する)限りは、やはり本発明によるエピトープである。
【0050】
[核酸]
本発明は、本発明の第1の態様によるペプチドエピトープまたはポリエピトープ列をコードすることができる核酸配列にも関する。
【0051】
本明細書で言及する「核酸」は、DNAであってもRNAであってもよく、天然のものでも合成されたものであってもよく、またはそれらのいずれの組合せであってもよい。本発明による核酸は、該核酸が宿主生物の細胞の機構によって翻訳されるような方法で、5T4ペプチドのコード機能を果たす点でのみ制限される。従って、天然の核酸を、たとえばそれらの安定性が上昇するように、修飾することが可能である。メンバーのヌクレアーゼ抵抗性を改良するために、DNAおよび/またはRNA、しかし特にRNAを、修飾することが可能である。たとえば、既知のリボヌクレオチド修飾としては、2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−NH2、および2’−O−アリルなどがある。本発明による修飾された核酸は、核酸のin vivo安定性を高めるため、その送達を増強または仲介するため、あるいは身体からのクリアランス速度を低下させるために行われた化学的修飾を含んでもよい。このような修飾の例としては、所与のRNA配列のリボースおよび/またはリン酸および/または塩基の位置における化学的置換などが挙げられる。たとえば、WO 92/03568号;U.S.5,118,672号;Hobbsら、(1973年) Biochemistry 12:5138;Guschlbauerら、(1977年) Nucleic Acids Res.4:1933;Schibaharuら、(1987年) Nucleic Acids Res.15:4403;Piekenら、(1991年) Sicence 253:314(それぞれを参照することにより本明細書に具体的に組み込まれるものとする)を参照されたい。
【0052】
本発明は、本発明の第1の態様によるペプチドエピトープまたはポリエピトープ列をコードすることができる核酸配列にハイブリダイズする核酸も包含する。
【0053】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ポリ核酸ハイブリッドが安定している条件を指す。このような条件は、当技術分野における通常の技術を有する者に明白である。当業者に周知の通り、ハイブリッドの安定性は、配列相同性が1%低下するごとにおよそ1〜1.5℃低下する、ハイブリッドの融解温度(Tm)に反映される。概して、ハイブリッドの安定性は、ナトリウムイオン濃度および温度の関数である。一般に、ハイブリダーゼーション反応は、高ストリンジェンシー条件で実施し、その後、種々のストリンジェンシーの洗浄が続く。
【0054】
本明細書で使用されるとき、高いストリンジェンシーは、65〜68℃の1M Na+で安定なハイブリッドを形成する核酸配列のみのハイブリダーゼーションを可能にする条件を指す。高ストリンジェンシー条件は、たとえば、6×SSC、5×デンハート(Denhardt)液、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.1ピロリン酸Na+および非特異的競合者としての0.1mg/ml変性サケ精子DNAを含有する水性溶液中でのハイブリダーゼーションによって提供することができる。ハイブリダーゼーション後、0.2〜0.l×SSC、0.1%SDS中、ハイブリダーゼーション温度での最終洗浄(約30分)を含む、幾つかの段階で高いストリンジェンシー洗浄を実施することが可能である。
【0055】
中程度のストリンジェンシーは、上述の溶液中であるが、約60〜62℃でのハイブリダーゼーションに相当する条件を指す。その場合、最終洗浄は、l×SSC、0.1%SDS中、ハイブリダーゼーション温度で実施される。
【0056】
低いストリンジェンシーは、約50〜52℃の上述の溶液中でのハイブリダーゼーションに相当する条件を指す。その場合、最終洗浄は、2×SSC、0.1%SDS中、ハイブリダーゼーション温度で実施される。
【0057】
これらの条件は改変することが可能であり、また様々な緩衝液、たとえばホルムアミド系緩衝液、および温度を使用して、複製できると理解すべきである。デンハート(Denhardt)溶液およびSSCは、他の適当なハイブリダーゼーション緩衝液として、当業者に周知である(たとえばSambrookら編(1989年) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New YorkまたはAusubelら編(1990年) Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.参照)。プローブの長さGC含量も役割を果たすため、最適ハイブリダーゼーション条件は、実験的に決定されなければならない。
【0058】
本明細書に提供された手引きが与えられれば、本発明の核酸は、当技術分野で周知の方法で得られる。たとえば、本発明のDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、または、より長いポリヌクレオチド、たとえば5T4コード配列全体またはその断片からの直接切断を使用して、化学合成で得られる。
【0059】
当該核酸を合成するための化学的方法は、当技術分野で周知であり、トリエステル、亜リン酸エステル、ホスホラミダイトおよびH−ホスホネート方法、PCRおよび他のオートプライマー方法ならびに固体支持体上でのオリゴヌクレオチド合成などがある。これらの方法は、該核酸の全核酸配列が分かっているか、またはコーディング鎖に相補的な核酸の配列を入手できれば、使用することが可能である。あるいは、標的アミノ酸配列が分かれば、各アミノ酸残基について、既知の好ましいコーディング残基を使用して、可能性のある核酸配列を推察することが可能である。
【0060】
本発明の核酸は、ヌクレオチド置換、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド挿入またはヌクレオチド伸長の逆位、およびそれらの任意の組合せによって修飾できることが予想される。このような突然変異体は、たとえば、野生型5T4エピトープとは異なるアミノ酸配列を有する5T4ペプチドを産生するために使用することができる。このようなペプチドは、T細胞エピトープの役割を果たす能力を保持するのであれば、やはり本発明によるペプチドである。突然変異誘発は予め決定されていても(部位特異的)ランダムであってもよい。サイレント変異ではない変異は、リーディングフレームの外に配列を配置すべきではなく、好ましくは、ハイブリダイズして、ループまたはヘヤピン等の二次mRNA構造を作ることができる相補的な領域を作らない。
【0061】
[変種/断片/相同体/誘導体]
本発明は、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列、ならびにそれらの変種、相同体、誘導体および断片の使用を包含する。
【0062】
用語「変種」は、野生型配列とは異なる天然のポリペプチドまたはヌクレオチド配列を意味するために使用される。
【0063】
用語「断片」は、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列が、主題の配列の破片を含むことを示す。好ましくは、該配列は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも90%の主題の配列を含む。該断片が、アミノ酸の断片である場合、好ましくは該断片は6〜12アミノ酸の長さである。より好ましくは、該断片は、8、9または10アミノ酸の長さである。例として、配列番号5および配列番号7は、配列番号3の断片であり;配列番号6は、配列番号4の断片である。
【0064】
用語「相同体」は、主題のアミノ酸配列および主題のヌクレオチド配列とある一定の相同性を有する実体を意味する。ここで、用語「相同性」は、「同一性」と同一視することができる。
【0065】
これに関して、相同の配列は、主題の配列と少なくとも75、85または90%同一である可能性がある、好ましくは少なくとも95または98%同一である可能性がある、アミノ酸配列を含むと考えられる。一般に、該相同体は、主題のアミノ酸配列と同じ活性を含む。相同性は、類似性(すなわち類似した化学特性/機能を有するアミノ酸残基)という観点で考えることもできるが、本発明に関しては、配列同一性という観点で相同を示すことが好ましい。
【0066】
これに関して、相同の配列は、主題の配列と少なくとも75、85または90%同一である可能性がある、好ましくは少なくとも95または98%同一である可能性がある、ヌクレオチド配列を含むと考えられる。一般に、該相同体は、主題の配列と同じ活性を含む。類似性(すなわち類似した化学特性/機能を有するアミノ酸残基)という観点で考えることもできるが、本発明に関しては、配列同一性という観点で相同を示すことが好ましい。
【0067】
相同性の比較は、目で、またはたいていは、容易に入手できる配列比較プログラムの助けを借りて、実施することが可能である。これらの市販されているコンピュータープログラムは、2つ以上の配列間の%相同性を算出することができる。
【0068】
相同性(%)は、近接する配列に関して算出することが可能である。すなわち1つの配列を他の配列と並べ、1つの配列における各アミノ酸を、一度に一残基ずつ、他の配列における対応するアミノ酸と直接比較する。これは、「ギャップ無し」アラインメントと呼ばれる。一般に、このようなギャップ無しアラインメントは、比較的少数の残基に関して実施されるに過ぎない。
【0069】
これは非常に簡単でかつ一貫した方法ではあるが、たとえば、その他の点では同一の配列対において、1つの挿入または欠失が、以下のアミノ酸残基をアラインメントからずれさせ、その結果、全体的な配列比較を実施するとき、相同性(%)が大幅に低下する可能性があるということを考慮に入れることができない。その結果、ほとんどの配列比較方法は、相同性総合得点に不当にペナルティを課さずに、可能性のある挿入および欠失を考慮に入れる最適アラインメントをもたらすようにデザインされている。これは、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入して、局所相同性を最大化しようと試みることによって実現する。
【0070】
しかし、これらのより複雑な方法は、同数の同一アミノ酸の場合、できる限り少ないギャップを有する配列アラインメント(比較する2配列間の高い関連性を示す)が、多くのギャップを有するものより高い得点を獲得するように、「ギャップペナルティ」を、アラインメント中に存在する各ギャップに割り当てる。ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、次の、ギャップ内の各残基に対しては、より小さいペナルティを課す、「アフィンギャップコスト」が一般に使用される。これは、最もよく使用されるギャップ採点法である。高いギャップペナルティは、もちろん、より少ないギャップを有する、最適化されたアラインメントをもたらす。ほとんどのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティを修飾することが可能である。しかし、このようなソフトウェアを配列比較に使用するとき、デフォルト値を使用することが好ましい。たとえば、GCGウィスコンシン・ベストフィット(CGC Wisconsin Bestfit)パッケージを使用するとき、アミノ酸配列に関するデフォルトギャップペナルティは、ギャップには−12であり、各伸長には−4である。
【0071】
したがって、最大%相同性の計算には、ギャップペナルティを考慮に入れて、最適アラインメントを製作することが先ず必要である。このようなアラインメントを実行するのに適したコンピュータープログラムは、GCGウィスコンシン・ベストフィット(CGC Wisconsin Bestfit)パッケージ(米国ウィスコンシン大学(University of Wisconsin U.S.A.);Devereuxら、1984年 Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を実施することができる他のソフトウェアの例としては、BLASTパッケージ(Ausubelら、1999年、同書−18章参照)、FASTA(Atschulら、1990年 J.Mol.Biol.403−410)およびGENEWORKS比較ツール一式などが挙げられるが、この限りではない。BLASTもFASTAも共に、オフライン検索およびオンライン検索に使用できる(Ausubelら、1999年、同書、7−58〜7−60ページ参照)。しかし、一部の用途では、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる新しいツールは、タンパク質およびヌクレオチド配列の比較にも使用できる(FEMS Microbiol Lett 1999年 174(2):247−50;FEMS Microbiol Lett 1999年 177(1):187−8参照)。
【0072】
最終的な相同性(%)は、同一性の観点で測定することができるが、アラインメント法それ自体は、一般に、全部か無かの対比較に基づくものではない。そうではなく、化学的類似性または進化距離に基づいて、得点を各ペアワイズ比較に割り当てる、類似性スコアマトリックスが一般に使用される。一般に使用されるこのようなマトリックスの一例は、BLOSUM62マトリックス(BLASTプログラム一式用のデフォルトマトリックス)である。GCGウィスコンシン(GCG Wisconsin)プログラムは、概して、公的デフォルト値または与えられたカスタムシンボル比較表のいずれかを使用する(さらなる詳細については、ユーザーマニュアルを参照されたい)。一部の用途では、GCGパッケージ用の公的デフォルト値を使用することが好ましく、他のソフトウェアの場合には、BLOSUM62等のデフォルトマトリックスを使用することが好ましい。
【0073】
いったんソフトウェアで最適アラインメントを作り出したら、相同(%)、好ましくは配列同一性(%)を算出することができる。該ソフトウェアは、一般に、配列比較の一部としてこれを行い、数字による結果を作成する。
【0074】
配列は、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換も有してもよく、これらはサイレントな変化をもたらし、結果として機能的同等物となる。該物質のこれらの二次的結合活性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性における類似性に基づいて、意図的アミノ酸置換を行ってもよい。たとえば、負に帯電したアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸などがあり;正に帯電したアミノ酸としては、リジンおよびアルギニンなどがあり;類似した親水性値を有する、無荷電極性頭部を含むアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリジン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンなどがある。
【0075】
たとえば、下表に従って、保存的置換を行ってもよい。第2段の同一ブロック内、および好ましくは第3段の同一行内のアミノ酸は、互いに置換することが可能である。
【0076】
【表3】
【0077】
本発明は、起こる可能性がある相同の置換(置換(substitute)も交換(replacement)も共に、本明細書では、存在するアミノ酸残基と代替残基との交換を意味するために使用される)、すなわち同じ状況の置換−たとえば、塩基性と塩基性、酸性と酸性、極性と極性等々も包含する。非相同置換、すなわち一クラスの残基から別の残基へ、または代わりに非天然アミノ酸−たとえばオルニチン(以下、Zと呼ぶ)、ジアミノ酪酸オルニチン(以下、Bと呼ぶ)、ノルロイシンオルニチン(以下、Oと呼ぶ)、ピリイルアラニン(pyriylalanine)、チエニルアラニン、ナフチルアラニンおよびフェニルグリジンの包含を含む、置換も起こる可能性がある。
【0078】
交替(replacement)は、α*およびα−二置換*アミノ酸、N−アルキルアミノ酸*、乳酸*、天然のアミノ酸のハロゲン化物誘導体、たとえばトリフルオロチロシン*、p−Cl−フェニルアラニン*、p−Br−フェニルアラニン*、p−I−フェニルアラニン*、L−アリル−グリジン*、β−アラニン*、L−α−アミノ酪酸*、L−γ−アミノ酪酸*、L−α−アミノイソ酪酸*、L−ε−アミノカプロン酸*、7−アミノヘプタン酸*、L−メチオニン スルホン#*、L−ノルロイシン*、L−ノルバリン*、p−ニトロ−L−フェニルアラニン*、L−ヒドロキシプロリン#、L−チオプロリン*、フェニルアラニン(Phe)のメチル誘導体−たとえば4−メチル−Phe*、ペンタメチル−Phe*、L−Phe(4−アミノ)#、L−Tyr(メチル)*、L−Phe(4−イソプロピル)*、L−Tic(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸)*、L−ジアミノプロピオン酸#およびL−Phe(4−ベンジル)*を含む、非天然アミノ酸によって行うことが可能である。表記*は、上で(相同または非相同置換に関して)検討する目的で、誘導体の疎水性を示すために使用され、#は誘導体の親水性を示すために使用され、#*は両親媒性特性を示す。
【0079】
変種アミノ酸配列は、グリジンまたはp−アラニン残基等のアミノ酸スペーサーに加えて、メチル基、エチル基またはプロピル基等のアルキル基を含む配列の、任意の2つのアミノ酸残基の間に挿入することが可能な適当なスペーサー基を含んでもよい。ペプトイド形に1つ以上のアミノ酸残基の存在を含むさらなる変種形は、当業者に十分に理解されるであろう。疑いを回避するために、「ペプトイド形」は、α−炭素置換基が、α−炭素ではなく残基の窒素原子上にある、変種のアミノ酸残基を指すために使用される。ペプトイド形のペプチドを調製する方法は、当技術分野で周知である、たとえば、Simon RJら、PNAS(1992年) 89(20),9367−9371およびHorwell DC,Trends Biotechnol.(1995年) 13(4),132−134を参照されたい。
【0080】
本発明で使用するためのヌクレオチド配列は、合成または修飾されたヌクレオチド内に含めることが可能である。オリゴヌクレオチドに対する多数の異なるタイプの修飾は、問う技術分野で周知である。これらは、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート・バックボーンおよび/または;分子の3’および/または5’末端におけるアクリジンまたはポリリジン鎖の付加を含む。本発明の目的上、ヌクレオチド配列は、当技術分野で利用できる任意の方法で、修飾できることを理解すべきである。本発明で有用なヌクレオチド配列のin vivo活性または寿命を増強するために、このような修飾を実行することが可能である。
【0081】
[ベクターシステム]
本発明の核酸配列は、ベクターシステムを手段として、細胞に送達することが可能である。
【0082】
本明細書で使用するとき、「ベクター」は、核酸を宿主細胞内に送達または維持することができる任意の作用物であってもよく、ウイルスベクター、プラスミド、裸の核酸、ポリペプチドまたは他の分子と複合した核酸、および固相粒子状に固定された核酸などがある。以下に、このようなベクターを詳述する。本発明は、その最も広い形態で、5T4ペプチドコード核酸を送達するための特異的ベクターに限定されないことが理解されるであろう。
【0083】
ベクターは、原核細胞ベクターであっても真核細胞ベクターであってもよい。
【0084】
本発明による5T4エピトープおよびポリエピトープ列をコードする核酸は、ウイルスまたは非ウイルス技法で送達することができる。
【0085】
非ウイルス送達システムは、DNAトランスフェクション方法などがあるが、これらに限定されない。ここで、トランスフェクションは、非ウイルスベクターを使用して、5T4遺伝子を標的哺乳類細胞に送達する方法を含む。
【0086】
代表的なトランスフェクション方法としては、エレクトロポレーション、核酸微粒子銃、脂質仲介トランスフェクション、コンパクト核酸仲介トランスフェクション、リポソーム、イムノリポソーム、リポフェクチン、陽イオン性薬剤仲介、陽イオン性表面(facial)両親媒性物質(CFA)(Nature Biotechnology 1996 14;556)、スペルミン等の多価陽イオン、陽イオン性脂質またはポリリジン、1,2,−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)−コレステロール複合体(Wolff and Trubetskoy 1998年 Nature Biotechnology 16:421)およびそれらの組合せなどがある。
【0087】
非ウイルス送達システムとしては、細菌送達システム等があるが、これに限定されない。抗がん薬および抗がん薬用送達剤としての細菌の使用は、Expert Opin Biol Ther 2001年3月;1(2):291−300で再検討されている。
【0088】
適当な細菌としては、細菌病原体および非病原性片利共生細菌などがあるが、これらに限定されない。例として、適当な属は、サルモネラ(Salmonella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、エルシニア(Yersinia)、シゲラ(Shigella)、リステリア(Listeria)およびブルセラ(Brucella)から選択することが可能である。これらの細菌の病原論および分子生物学における近年の進歩によって、新しい改良された細菌担体およびより効果的な遺伝子発現システムの合理的な開発が可能になった。これらの進歩は、これらの送達システムの性能および汎用性を改良した。
【0089】
細菌は、in vitroおよびin vivoで、真核細胞発現プラスミドを哺乳類宿主細胞に移入することができる侵入型細胞内細菌であってもよい。代謝的減衰または自己融解の誘導のいずれかのために、組換え細菌が宿主細胞内で死んだとき、プラスミド移入が、行われることがある。あるいは、抗生物質を使用してもよく、また自然発生的移入も確認されており、この現象は、生理条件下でも起こり得ることが分かる。赤痢菌(Shigella flexneri)、ネズミサルモネラ菌(Salmonella typhimurium)、S.typhi、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)および組換え大腸菌(Escherichia coli)でプラスミド移入が報告されているが、他の侵入型細菌も使用することが可能である。
【0090】
細菌をDNAワクチン送達に使用することが可能である。食作用後、このような細菌は、宿主細胞サイトゾルに入ることが可能であるか(たとえば、シゲラ(Shigella)およびリステリア(Listeria))、または食胞区画内に留まる(たとえば、サルモネラ(Salmonella))。両細胞内局在化は、DNAワクチンベクターの奏功する送達に好適であろう。
【0091】
細菌送達システムは、非病原性マイコバクテリウム株の形態のマイコバクテリウム、クローニングベクターおよび発現ベクターの形態の遺伝子移入システム、および、たとえば無毒の免疫調節性マイコバクテリウムアジュバント、様々な疾患に特異的な無毒の免疫抑制性外因性抗原、およびTH−1経路を追加免疫する無毒量のサイトカイン類を含有する製品を提供するための関連技術を使用することが可能である(Tunis Med 2001年2月、79(2):65−81)。
【0092】
定義された遺伝子欠失を含む、サルモネラ菌株(たとえば、弱毒化菌株)は、適当な送達システム(たとえば抗原の送達)として使用することが可能である。これらの菌株で送達するために、プラスミドベースから染色体組み込みシステムまでの範囲の、多数の戦略が企てられた。例として、Rosenkranzら、Vaccine 2003年、21(7−8),798−801は、サイトカイン類をコードする真核細胞発現プラスミドについて記述し、異なる実験モデルで免疫応答を調節する能力を評価した。サイトメガロウイルスプロモーターのもとで、マウスIL−4およびIL−18をコードするプラスミドを構築して、生きている弱毒化ネズミチフス菌(Salmonella enterica)血清型Typhi菌株CVD908−htrA、およびネズミ・チフス菌(Salmonella enterica)血清型Typhimurium菌株SL3261に形質転換した。
【0093】
潜在的遺伝子送達ベクターとしての弱毒化ネズミ・サルモネラ菌(Salmonella typhimurium)の使用は、Res 2002年、22(6A):3261−6で再検討されている。
【0094】
Vemulapalliら、Infect Immun(2000年)68(6):3290−6によって記述されている通り、ウシ流産菌(Brucella abortus)も、適当な送達システムとして使用することが可能である。ウシ流産菌(Brucella abortus)菌株RB51は、ウシブルセラ症向けの生ワクチンとして広く使用される、安定した、ラフ型の、弱毒化突然変異体である。たとえば効果的な防御のために、強いThl型の免疫応答の誘導を必要とする他の細胞内病原体の感染防御抗原を送達する際に、この菌株を、送達ベクターとして使用することが可能である。
【0095】
Boydら、Eur J Cell Biol(2000年) 79(10)659−71は、広範囲の細胞型にタンパク質を送達するために、エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)を使用することについて記述している。Y.enterocoliticaは、ヨップ・エフェクター(Yop effecter)と呼ばれる毒性タンパク質を、真核細胞のサイトゾル内に転位させる。エンテロコリティカ(enterocolitica)がヨップ(Yop)を転位させる真核細胞の範囲に対する制限は報告されていない。ヨップ・エフェクター、YopE、YopHおよびYopTは、それぞれ、試験した接着細胞型に対して細胞障害性であり、Y.enterocoliticaは、ヨップ・エフェクターを各細胞型内に転位させる際に選択的ではないことのみならず、これらのヨップ・エフェクターの作用は、細胞型特異的ではないこともわかる。エルシニア転位システムを広い用途に使用するために、異種タンパク質を真核細胞内に送達するためのY.enterocolitica転位株およびベクターを構築した。この菌株とベクターとの組合せには、転位されるヨップ・エフェクター(Yop effecter)がなく、したがってYopEの最小限のN末端の分泌/転位シグナルに融合した異種タンパク質を真核細胞に送達することが可能になる。
【0096】
US 5965381号には、タンパク質を真核細胞に送達するための組換えエルシニアについて記載されている。このようなエルシニアは、機能的エフェクター・タンパク質の産生が不十分であるが、機能的分泌および転位システムに恵まれている。
【0097】
細胞接着分子は、様々な細胞−細胞相互作用および細胞−細胞外マトリックス(ECM)相互作用に関与する大きいグループの分子であり、多数の病原性微生物により、細胞進入のための受容体として利用される。これらの分子は、遺伝子のターゲティングおよび取り込みにも、薬物送達システムにも、使用することが可能である。細胞接着分子および遺伝子移入におけるそれらの使用は、Adv Drug Deliv Rev 2000年11月15日;44(2−13):135−52で再検討されている。
【0098】
筋内接種に比べて極めて信頼性のある、遺伝子銃送達システムを、DNAの送達に使用することも可能である。(Jpn J Pharmacol 2000年7月;83(3):167−74)。
【0099】
ウイルス送達システムとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはバキュロウイルスベクター、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、ポックスウイルス、たとえばカナリア痘ウイルス(Taylorら、1995年、Vaccine 13:539−549)、昆虫ポックスウイルス(Li Yら 1998年 第12回国際ポックスウイルスシンポジウム(XIIth InternationalPoxvirus Symposium)144ページ、要約)、ペンギンポックス(penguine pox)(Standardら、J Gen Virol.1998年 79:1637−46)アルファ・ウイルス、およびアルファ・ウイルス系DNAベクターなどがあるが、この限りではない。
【0100】
レトロウイルスの例としては、ネズミ白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤浪肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーネズミ白血病ウイルス(Mo−MLV)、FBRネズミ骨肉種ウイルス(FBR MSV)、モロニーネズミ肉腫ウイルス(Mo−MSV)、アベルソン(Abelson)ネズミ白血病ウイルス(A−MLV)、トリ骨髄細胞腫ウイルス−29(MC29)、およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
レトロウイルスの詳細なリストは、Coffinら(「Retrovirus」1997年Cold Spring Harbour Laboratory Press編:JM Coffin,SM Hughes,HE Varmus 758−763ページ)にある。
【0102】
レンチウイルスは、霊長類群および非霊長類群に分類される。霊長類レンチウイルスの例としては、ヒト自己免疫不全症候群(AIDS)の原因因子であるヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、およびサル免疫不全症ウイルス(SIV)などが挙げられるが、この限りではない。非霊長類レンチウイルス群としては、基本型「スローウイルス」ビスナ/マエディウイルス(VMV)、ならびに関連したヤギ関節炎−脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)および最近記述されたネコ免疫不全症ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全症ウイルス(BIV)などがある。
【0103】
レンチウイルスファミリーとその他のタイプのレトロウイルスとの違いは、レンチウイルスは、分裂細胞および非分裂細胞の両者を感染できることである(Lewisら1992年 EMBO.J 11:3053−3058;Lewis and Emerman 1994年 J.Virol.68:510−516)。対照的に、他のレトロウイルス、たとえばMLVは、非分裂細胞、たとえば、筋肉、脳、肺および肝組織を構成するもの等を感染させることができない。
【0104】
本発明のベクターは、スプリット−イントロン・ベクターとして設計することが可能である。スプリット・イントロン・ベクターは、PCT特許出願WO99/15683号およびWO99/15684号に記載されている。
【0105】
アデノウイルスの特徴を、レトロウイルス/レンチウイルスの遺伝的安定性と組み合せた場合、本質的にアデノウイルスを使用して、標的細胞に形質導入し、隣接する細胞をしっかり感染させることができるであろう一過性のレトロウイルスプロデューサー細胞にすることができる。5T4抗原を発現するように操作された、このようなレトロウイルスプロデューサー細胞は、血管形成および/またはがんの治療に使用するために、動物またはヒト等の生物に移植することができる。
【0106】
本発明のベクターは、シュードタイプされたベクターとして設計することができる。
【0107】
レトロウイルスベクターをデザインする際に、未変性のウイルスに対して異なる標的細胞特異性を有する粒子を、拡大した範囲または変化した範囲の細胞型に遺伝物質を送達できるように操作することが望ましい可能性がある。これを実現する一法は、ウイルス外膜タンパク質を、その特異性を変えるように操作することによる。別の手法は、ウイルスの未変性外膜タンパク質を交換するか、または該タンパク質に付加するために、異種外膜タンパク質をベクター粒子内に導入することである。
【0108】
用語、シュードタイピングは、異種env遺伝子、たとえば別のウイルスに由来するens遺伝子を用いて、ウイルスゲノムのenv遺伝子の、少なくとも一部に組み込むか、少なくとも一部を置換するか、または全部を交換することを意味する。シュードタイピングは、新しい現象ではなく、例として、WO99/61639号、WO−A−98/05759号、WO−A−98/05754号、WO−A−97/17457号、WO−A−96/09400号、WO−A−91/00047号およびMebatsionら、1997年 Cell 90,841−847にある。
【0109】
シュードタイピングは、レトロウイルスのベクターの安定性および形質導入効率を向上させることができる。リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)を詰めたシュードタイプされたネズミ白血病ウイルスについて記述されており(Mileticら(1999年) J.Virol.73:6114−6116)、超遠心分離の間ずっと安定しており、かつ異なる種に由来する幾つかの細胞系を感染できることが証明されている。
【0110】
ポックスウイルスベクターTAAは弱免疫原性であり、免疫系によって「自己」として認識され、そのため、かなりの程度まで許容される。ポックスウイルスベクターの使用は、時により、この寛容を少なくとも部分的に克服できるように、抗原を提示させることができ、(特に、免疫回避遺伝子が欠失している場合−以下参照)、したがって、宿主に免疫応答を引き起こすことが可能になる。
【0111】
ポックスウイルスベクターは、本発明で使用するのに好ましい。ポックスウイルスは、組換え遺伝子発現用に、また組換え生ワクチン向けに、操作が行われる。これには、外来抗原をコードする核酸を、ポックスウイルスのゲノムに導入するための組換え技術が必要である。ウイルスのライフサイクルに必須ではないウイルスDNAの部位で、核酸が組み込まれる場合、新たに産生される組換えポックスウイルスが感染性である、すなわち、外来細胞を感染させて、組み込まれたDNA配列を発現させることが可能である。このようにして作製された組換えポックスウイルスは、病理学的疾患および感染症を予防および/または治療するための生ワクチンとして使用することができる。
【0112】
ワクシニアウイルス等の、組換えポックスウイルスにおける5T4ペプチドの発現には、5T4ペプチドをコードする核酸に、ワクシニアプロモーターをライゲートすることが必要である。ドナープラスミドにおける核酸に隣接するウイルス配列と、親ウイルスに存在する相同配列との間の相同組換えによって、ワクシニアウイルスに核酸を挿入するためのプラスミドベクター(挿入ベクターとも呼ばれる)が構築されている(Mackettら、1982年、PNAS 79:7415−7419)。挿入ベクターの1種は:(a)転写開始部位を含むワクシニアウイルスプロモーター;(b)核酸を挿入するための、転写開始部位から下流に位置する幾つかのユニークな制限エンドヌクレアーゼクローニング部位;(c)ウイルスゲノムの相同な非必須領域への核酸挿入を指令する、プロモーターおよびクローニング部位に隣接する、非必須ワクシニアウイルス配列(たとえば、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子);および(d)大腸菌における、複製および選択に関する、細菌の複製開始点および抗生物質抵抗性マーカー;で構成されている。このようなベクターの例は、Mackett(Mackettら、1984年、J.Virol.49:857864)によって記述されている。
【0113】
挿入される核酸を含有する単離されたプラスミドを、親ウイルス、たとえば、ポックスウイルスと共に、細胞培養、たとえば、ヒヨコ胚線維芽細胞に、トランスフェクションする。プラスミドでの、相同のポックスDNAとウイルスゲノムとの間の組み換えは、それぞれ、そのゲノムの、ウイルスのプロモーター−遺伝子構築物が存在することによって修飾された組換えポックスウイルスが生じる結果となる。
【0114】
上述の通り、結果として得られる組換えウイルスの生存能力に影響を及ぼさないウイルスの領域(挿入領域)に、核酸が挿入される。ウイルスにおけるこのような領域は、たとえば、組換え体のウイルス生存能力に重大な影響を及ぼさずに組換え形成を可能にする領域について、ウイルスDNAのセグメントをランダムにテストすることにより、容易に特定される。容易に使用することができ、かつ多くのウイルスに存在する1つの領域は、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子である。たとえば、TK遺伝子は、試験した全てのポックスウイルスゲノムに存在していた。[レポリポックスウイルス:Uptonら、J.Virology 60:920(1986年)(ショープ線維腫(shope fibroma)ウイルス);カプリポックスウイルス:Gershonら、J.Gen.Virol.70:525(1989年)(ケニアヒツジ(Kenya sheep)−l);オルトポックスウイルス:Weirら、J.Virol 46:530(1983年)(ワクシニア);Espositoら、Virology 135:561(1984年)(モンキーポックスおよび痘瘡ウイルス);Hrubyら、PNAS,80:3411(1983年)(ワクシニア);Kilpatrickら、Virology 143:399(1985年)(ヤバサル腫瘍ウイルス);アヴィポックスウイルス:Binnsら、J.Gen.Virol 69:1275(1988年)(鶏痘);Boyleら、Virology 156:355(1987年)(鶏痘);Schnitzleinら、J.Virological Method,20:341(1988年)(鶏痘、ウズラ痘(quailpox));昆虫ポックス(entomopox)(Lytvynら、J.Gen.Virol 73:3235−3240(1992年)]。
【0115】
ワクシニアの場合、TK領域に加えて、他の挿入領域としては、たとえば、HindIII Mなどがある。鶏痘の場合、TK領域に加えて、他の挿入領域としては、たとえば、BamHI J[Jenkinsら、AIDS Research and Human Retroviruses 7:991−998(1991年)]、EPO出願第0308 220 A1に記載のEcoRI−HindIII断片、BamHI断片、EcoRV−HindIII断片、BamHI断片およびHindIII断片などがある[Calvertら、J.of Virol 67:3069−3076(1993年);Taylorら、Vaccine 6:497−503(1988年);Spehnerら、(1990年)およびBoursnellら、J.of Gen.Virol 71:621−628(1990年)]などがある。
【0116】
豚痘の場合、好ましい挿入部位としては、チミジンキナーゼ遺伝子領域などがある。
【0117】
プロモーターは、宿主および標的細胞型に応じて、容易に選択することができる。たとえば、ポックスウイルスの場合、ワクシニア7.5K、または40Kあるいは鶏痘C1等の、ポックスウイルス・プロモーターを使用すべきである。適切なポックス配列を含有する人工構築物も使用することができる。発現レベルを高めるために、エンハンサエレメントも併用することができる。さらに、当技術分野で周知の誘導プロモーターの使用は、一部の実施形態で好ましい。
【0118】
外来遺伝子発現は、酵素アッセイまたは免疫学的アッセイ(たとえば、免疫沈降法、ラジオイムノアッセイ、または免疫ブロット)で検出することができる。組換えワクシニア感染細胞から産生される天然の膜糖タンパク質は、グリコシル化されており、細胞表面に輸送することが可能である。強力なプロモーターを使用することにより、高い発現レベルが得られる。
【0119】
ワクチンで使用するためのウイルスベクターに関する他の必要条件としては、良好な免疫原性および安全性である。MVAは、申し分のない安全性記録がある複製障害性ワクシニア株である。ほとんどの細胞型および正常なヒト組織で、MVAは複製しない。MVAの複製は、少数の形質転換細胞型、たとえばBHK21細胞で見られる。Carrollら(1997年)は、組換えMVAが、従来の組換えワクシニアベクターと同じぐらい、防御的CD8+T細胞応答発生にすぐれており、一般に使用される複製有能ワクシニアウイルスに代わる有効なベクターであることを示した。MVAから誘導されるワクシニアウイルス株、または無関係に開発された、特にMVAがワクチンに使用されるのにふさわしいMVAの特徴を有する菌株も、やはり本発明で使用するのに適する。
【0120】
好ましくは、該ベクターは、MVAまたはNYVAC等のワクシニアウイルスベクターである。最も好ましいのは、ワクシニア株修飾ウイルス・アンカラ(MVA)またはそれから誘導される菌株である。ワクシニアベクターに代わるものとしては、アヴィポックスベクター、たとえば、感染させることができ、かつヒト細胞で組換えタンパク質を発現できるが複製できない、鶏痘またはALVACとして知られるカナリア痘等、およびそれから誘導される株などがある。
【0121】
本発明の一態様では、ポックスウイルスベクターから少なくとも1つの免疫回避遺伝子を欠失させる。
【0122】
ウイルス、特に、多大なコード能を有し、したがって様々な遺伝子をコードする、ポックスウイルスのような大きいウイルスは、それらの宿主の免疫系回避する多数の技術を開発した。たとえば、このようなウイルスは、補体、インターフェロンおよび炎症反応等の非特異的防御を回避すること、ならびにサイトカイン類の機能を妨害またはブロックすることができる。左末端領域内のインターフェロン抵抗性タンパク質を除く、多数のこれらの免疫回避ポリペプチドが、MVAから欠失していた。ポックスウイルスは一般に、潜伏感染よりむしろ、急性感染を確立する大きいDNAウイルスである。ポックスウイルスは非常に多くの抗原性タンパク質をコードするため、抗原性変化は困難であり、したがって自身を哺乳類免疫系から保護するためには、積極的な免疫回避を頼みにする。ポックスウイルスは、免疫系の多数の態様の妨害に関与するポリペプチドをコードする多数の遺伝子を有し:インターフェロン作用を混乱させ、補体、サイトカイン活性、炎症反応およびCTL認識を妨害する(総説については、Smithら、(1997年) Immunol Rev 159:137−154参照)。これらのタンパク質を除去することは、ポックスウイルスベクター上にコードされた弱い免疫原の能力を活性化して、対象で免疫応答を誘発させる上で有益である。
【0123】
免疫回避遺伝子またはポリペプチドは、ウイルスの哺乳類免疫系回避を助ける遺伝子、またはその産物である。好ましくは、該遺伝子または遺伝子産物は、少なくともあるレベル、免疫系の作業を妨害する。これは、多数の方法で、たとえば情報伝達分子に関する競合者を与えることによる情報伝達経路における妨害によって、可溶性サイトカイン受容体模倣物等々を与えることによって、達成することが可能である。
【0124】
免疫回避遺伝子は、下記のものを包含するが、これらに限定されない。
【0125】
インターフェロン回避遺伝子。ワクシニアは、IFN作用を妨害する少なくとも3つの遺伝子を有する。E3L遺伝子は、dsRNAへの結合、P1の活性化につながる事象、eIF2αのリン酸化および結果として生じる翻訳開始複合アセンブリの不全について、P1タンパク質キナーゼと競合する25Kdのポリペプチドを発現させる。この経路は、通常はIFN活性化に関与するが、E3L発現によって妨害され、したがって妨害されずに翻訳開始が進行できる。
【0126】
K3L遺伝子は、eIF2を効果的に模倣して、P1タンパク質キナーゼの競合者の役割をするため、やはりP1活性を妨害する、10.5Kdポリペプチドを発現させる。したがって、その作用様式は、E3Lに似ている。
【0127】
A18R遺伝子は、2’,5’−オリゴアデニレート経路を妨害する、言い換えればIFN応答性であると考えられる、ヘリカーゼをコードすることが予想される。2’,5’−Aは、ウイルスの翻訳を妨げる役割をするRNAse Lを活性化する。A18Rの発現は、感染細胞における2’,5’−Aレベルを低下させると考えられる。
【0128】
補体。ワクシニアのB5R遺伝子産物は、代替補体経路の制御因子であるH因子に非常に関連があることは周知である。古典的経路とは違って、この経路は、抗原のみによって活性化される。したがって、B5R遺伝子産物は、代替補体経路を妨害することが可能である。
【0129】
C21L遺伝子は、ヒトにおけるC4b結合タンパク質と次々に関連し、また表面上にC4bを担持する細胞と相互に作用して、CR1補体受容体への結合を妨げる。
【0130】
可溶性サイトカイン受容体。ワクシニアWR B15R遺伝子(コペンハーゲン株ワクシニアにおけるB16R)の産物は、IL 1−Rに関連している。
【0131】
WR遺伝子ORF SalF19R、コペンハーゲン株ワクシニアにおけるA53Rは、TNF受容体をコードする。しかし、野生型ウイルスでは、これらの遺伝子は両者とも、ORFが断片化されているため不活性であると考えられる。
【0132】
B8R遺伝子は、可溶性IFN−γ受容体をコードし、ウイルスにまた別のIFN回避機構を提供すると考えられる。
【0133】
炎症。多数の遺伝子が、ウイルス感染に対する炎症反応の防止に関与していると考えられる。これらは、A44L、K2L、B13RおよびB22Rを包含する。
【0134】
本発明の一態様では、組換えポックスウイルスベクターから免疫回避遺伝子の大部分を欠失させる。好ましくは、全ての免疫回避遺伝子を欠失させる。したがって、本発明の一態様では、該組換えポックスウイルスベクターは、K3Lインターフェロン抵抗性タンパク質遺伝子が中断されているか欠失している組換えMVAベクターである。
【0135】
好ましいのは、所期の対象に無害のポックスウイルスである。したがって、たとえば、ヒトで使用する場合、ポックスウイルスは、アヴィポックスウイルスのように宿主範囲限定的であるか、さもなければワクシニアの弱毒化株(NYVACおよびMVAを含む)等の弱毒化されているかのいずれかが好ましい。最も好ましいのは、弱毒化ワクシニアウイルス株であるが、既存の天然痘免疫を有する対象では、非ワクシニア株が有効に使用される。
【0136】
相同組み換えをさせるために、MVAゲノム内の天然の欠失、たとえば欠失IIに、隣接したMVA DNA配列に挟まれた5T4エピトープをコードする少なくとも1つの核酸含有する構築物を、MVAに感染した細胞に導入する。
【0137】
いったん該構築物を真核細胞に導入して、5T4エピトープDNAをウイルスDNAと組み換えたら、好ましくは、マーカーの助けを借りて、所望の組換えワクシニアウイルスを単離する(Nakanoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79,1593−1596[1982年]、Frankeら、Mol.Cell.Biol.1918−1924[1985年]、Chakrabartiら Mol.Cell.Biol.3403−3409[1985年]、Fathiら、Virology 97−105[1986年])。
【0138】
挿入される構築物は、線状であっても円形であってもよい。円形のDNA、特にプラスミドが好ましい。該構築物は、MVAゲノム内の天然の欠失、たとえば欠失IIの左側および右側に隣接する配列を含む(Altenburger,W.,Suter,C.P.およびAltenburger J.(1989年) Arch.Virol.105,15−27)。外来のDNA配列は、天然の欠失を挟む配列の間に挿入される。
【0139】
少なくとも1つの核酸を発現させるためには、核酸の転写に必要な調節配列が、核酸の上流に存在することが必要である。このような調節配列は、当業者に周知であり、たとえば、EP−A−198,328号に記載のワクシニア11kDa遺伝子のもの、および7.5kDa遺伝子のもの(EP−A−110,385号)などがある。
【0140】
構築物は、トランスフェクションによって、たとえばリン酸カルシウム沈降を用いて(Grahamら、Virol.52,456−467[1973年];Wiglerら、Cell 777−785[1979年])、エレクトロポレーションを用いて(Neumannら、EMBO J.1,841−845[1982年])、マイクロインジェクションを用いて(Graessmannら、Meth.Enzymology 101,482−492(1983年))、リポソームを用いて(Straubingerら、Methods in Enzymology 101,512−527(1983年))、スフェロプラストを用いて(Schaffner,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77,2163−2167(1980年))、または当業者に周知の他の方法で、MVA感染細胞に導入することができる。リポソームを用いたトランスフェクションが好ましい。
【0141】
本発明の組換えプライミングベクターおよびブースターベクターは、哺乳動物のある特定の細胞型に対して親和性を有することが可能である。例として、本発明の組換えベクターは、樹状細胞およびマクロファージ等の、専門のAPCを感染させるように操作することができる。樹状細胞は、奏功する免疫応答、とりわけ細胞を介した応答の編成者であることは周知である。樹状細胞を、抗原またはこのような標的抗原を含むウイルスベクターでex vivo処理し、同系の動物またはヒトに注入すると、有効な免疫応答が誘導されることが証明されている(Ncstlc FOら、ペプチド−または腫瘍溶解物でパルス処理した樹状細胞による、メラノーマ患者のワクチン接種(Vaccination of melanoma patients with peptide- or tumorlysate-pulsed dendritic cells),Nat Med.1998年3月;4(3):328-32、およびKim CJら、MART−l/Melan Aをコードするポックスウイルスに感染した樹状細胞は、in vitroでTリンパ球を感作する(Dendritic cells infected with poxviruses encoding MART-l/Melan A sensitize Tlymphocytes in vitro.)J Immunother.1997年7月;20(4):276-86)。該組換えベクターは、腫瘍細胞も感染させることができる。あるいは、該組換えベクターは、哺乳動物の細胞を感染させることができる。
【0142】
ベクターの他の例としては、ex vivo送達システムなどが挙げられ、エレクトロポレーション、DNA微粒子銃、脂質仲介トランスフェクションおよびコンパクトDNA仲介トランスフェクション等の、DNAトランスフェクション方法を包含するが、それらに限定されない。
【0143】
ベクターは、プラスミドDNAベクターであってもよい。本明細書で使用されるとき、「プラスミド」は、異種DNAの発現または複製のために、それを細胞内に導入するために使用される不連続のエレメントを指す。このような媒体の選択および使用は、十分に、熟練者の技術の範囲内である。
【0144】
[パルス処理細胞]
本発明は、本発明の第1の態様のペプチドでパルス処理した細胞も提供する。
【0145】
好ましくは、パルス処理される細胞は、MHCクラスIまたはクラスIIを発現することができる。
【0146】
MHCクラスI分子は、ほぼ全ての細胞型上に発現させることができるが、MHCクラスII分子の発現は、いわゆる「専門の」抗原提示細胞(APC);B細胞、樹状細胞およびマクロファージに限定される。しかし、MHCクラスIIの発現は、IFNγで処理することにより、他の細胞型上で誘導することができる。
【0147】
MHCクラスIまたはMHCクラスII分子の発現は、また、遺伝子操作(すなわち当該MHC分子をコードする遺伝子を、パルス処理される細胞に提供すること)によって達成することもできる。この手法は、該ペプチドに特異的に結合する適切なMHCハプロタイプを選択できるという利点を有する。
【0148】
好ましくは、パルス処理される細胞は、抗原提示細胞で、すなわち正常な免疫応答で、MHC分子と共に、抗原をプロセッシングし、それを細胞表面に提示することができる細胞である。抗原提示細胞としては、B細胞、マクロファージおよび樹状細胞などがある。特に好ましい実施形態では、該細胞は樹状細胞である。
【0149】
好ましくは、該細胞は、本発明の第1の態様によるペプチドを、そのペプチド結合溝で結合するMHC分子を発現することができる。たとえば、該細胞は、下記のHLA制限要素:B8、Cw7またはA2(MHCクラスIの場合)の1つを発現することが可能である。
【0150】
ペプチドパルス処理プロトコールは、当技術分野で周知である(たとえばRedchenko and Rickinson(1999年)J.Virol.334−342;Nestleら、(1998年) Nat.Med.4 328−332;Tjandrawanら、(1998) J.Immunotherapy 21 149−157参照)。たとえば、樹状細胞にペプチドをロードするための標準プロトコールでは、無血清媒体中で、3μg/mlのβ−2ミクログロブリンを含む50μg/mlのペプチドと共に細胞を2時間インキュベートする。次いで、未結合ペプチドを洗い落とす。
【0151】
本発明のパルス処理細胞は、たとえば予防的または治療的抗−5T4免疫応答を刺激するために、ワクチンとして使用することが可能である。
【0152】
したがって、本発明は、ペプチドパルス細胞を、それを必要としている対象に投与するステップを含む、疾患を治療および/または予防するための方法も提供する。
【0153】
[ワクチン/医薬組成物]
本発明は、本発明の既述の態様によるペプチドエピトープ、ポリエピトープ列、核酸配列、ベクターシステムおよび/または細胞を含むワクチン/医薬組成物も提供する。
【0154】
ワクチン/医薬組成物は、予防向けであっても治療向けであってもよい。
【0155】
ワクチンは、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射可能液として調製することができる;注射の前に、液体に溶解または懸濁するのに適した固体剤形も調製することが可能である。調合物は、乳化されていてもよく、またはリポソーム内に封入されたタンパク質であってもよい。有効な免疫原性成分は、薬学的に許容でき、かつ有効成分と相容性である、賦形剤と混合される場合が多い。適当な賦形剤は、たとえば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等々およびそれらの組合せである。
【0156】
さらに、必要に応じて、ワクチンは、少量の補助物質、たとえば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、および/またはワクチンの効果を高めるアジュバントを含んでもよい。有効な可能性があるアジュバントの例としては、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP 11637、ノルMDPと呼ばれる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A、MTP−PEと呼ばれる)、および、細菌から抽出された3成分、モノホスホリル脂質A、トレハロース・ジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/トゥウィーン(Tween)80エマルジョン中に含む、RIBIなどがあるが、このれらに限定されない。
【0157】
アジュバントおよび他の薬剤のさらなる例としては、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム(alum)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水乳濁液、水中油乳濁液、ムラミルジペプチド、細菌内毒素、脂質X、コリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)(プロピオノバクテリウム・アクネス(Propiorobacterium acres))、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、サポニン、リポソーム、レバミゾール、DEAE−デキストラン、ブロックト・コポリマーまたは他の合成アジュバントなどがある。このようなアジュバントは、様々な供給元から市販されている。たとえば、メルック・アジュバント(Merck Adjuvant)65(ニュージャージー州レールウェイにあるメルク・アンド・カンパニー・インコーポレーティッド(Merck and Company,Inc.,Railway,NJ.))またはフロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(ミシガン州デトロイトにあるディフコ・ラボラトリーズ(DifcoLaboratories,Detroit,Michigan))。
【0158】
一般に、アムフィジェン(Amphigen)(水中油)、アルヒドロゲル(水酸化アルミニウム)、またはアムフィジェンとアルヒドロゲルとの混合物等のアジュバントが使用される。水酸化アルミニウムが、ヒト向けに認可されている。
【0159】
免疫原とアジュバントとの比率は、両者がともに有効量で存在する限り、広範囲にわたって様々であってもよい。たとえば、水酸化アルミニウムは、ワクチン混合物の約0.5%の量で存在してもよい(Al2O3ベース)。好都合なことに、ワクチンは、0.2〜200μg/ml、好ましくは5〜50μg/ml、最も好ましくは15μg/mlの範囲の最終免疫原濃度を含有するように製剤化される。
【0160】
調合後、ワクチンを滅菌容器に組み入れ、次いで密閉し、低温、たとえば4℃で保存してもよく、または凍結乾燥してもよい。凍結乾燥は、安定した形態での長期保存を可能にする。
【0161】
ワクチンは、便利な方式、たとえば経口、静脈内(水溶性の場合)、筋内、皮下、鼻腔内、皮内または坐剤経路で、または埋め込み(たとえば徐放分子を使用)で、投与することができる。
【0162】
ワクチンは、たとえば、皮下または筋内のいずれかに注射することにより、便利に非経口的に投与される。他の投与モデルに適するさらなる調合物としては、坐剤、および場合によって、経口用製剤などがある。坐剤の場合、従来の結合剤および担体、たとえば、ポリアルキレングリコール類またはトリグリセリド類を含んでもよく、このような坐剤は、0.5〜10%、好ましくは1〜2%の範囲の有効成分を含む混合物から作ることが可能である。経口製剤は、たとえば、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等々の通常使用されている賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液剤、懸濁剤、錠剤、ピル剤、カプセル剤、徐放製剤、粉剤の形態をとり、また10〜95%の有効成分、好ましくは25〜70%の有効成分を含む。ワクチン組成物を凍結乾燥する場合、凍結乾燥された材料を、投与前に、たとえば懸濁液として、再構成することが可能である。再構成は、緩衝溶液で行うことが好ましい。
【0163】
患者に経口投与するためのカプセル剤、錠剤およびピル剤に、たとえば、オイドラギット(Eudragit)「S」、オイドラギット(Eudragit)「L」、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、腸溶性被膜を施すことが可能である。
【0164】
5T4ペプチドは、中性形または塩形として、ワクチに製剤化することが可能である。薬学的に許容し得る塩としては、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基によって形成される)、および、たとえば、塩酸またはリン酸等の無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸及びマレイン酸等の有機酸によって形成されるものなどがある。遊離カルボキシル基によって形成される塩類は、たとえば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄等の無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカインのような有機塩基から誘導することも可能である。
【0165】
[異種ワクチン接種投与計画]
本発明によるワクチン/医薬組成物の投与計画は、従来の効力テストにより決定することができる。しかし、特に好ましいのは、経時的プライミングステップおよび追加免疫ステップを含む投与計画である。このような投与計画は、免疫寛容の並外れた破壊およびT細胞応答の誘導を達成することが確認されている(Schneiderら、1998年、Nat Med 4:397−402)。
【0166】
プライミング−ブースト投与計画は、同種(その後の投与で同一組成物が投与される)であってもよく、または異種(プライミング組成物とブースト組成物が異なる場合)であってもよい。たとえば、プライミング組成物は、5T4抗原をコードする非ウイルスベクター(たとえば、プラスミド)であってもよく、ブースト組成物は、5T4抗原をコードするウイルスベクター(たとえば、ポックスウイルスベクター)であってもよく、上記「5T4抗原」のいずれかまたは両者は、本発明のエピトープまたはポリエピトープ列である。
【0167】
[診断方法]
本発明は、本発明によるペプチドおよび/またはこのようなペプチドをコードする核酸配列に特異的に結合することができる薬剤も提供する。
【0168】
薬剤の、本発明のペプチド/核酸配列への結合と、別のペプチド/核酸配列への結合との間に、10倍より大きい差がある場合、好ましくは25、50または100倍の差がある場合、薬剤は、本発明のペプチド/核酸配列に「特異的に結合する」と考えられる。
【0169】
該薬剤は、ペプチドおよび/または核酸配列に特異的に結合することができる任意の化合物であってもよい。用語「化合物」は、化学的化合物(天然または合成の)、たとえば生物高分子(たとえば、核酸、タンパク質、非ペプチド、または有機分子)、または細菌、植物、真菌、または動物(特に哺乳類)細胞または組織等の生体物質から作られる抽出物、または無機元素または分子さえも指す。
【0170】
好ましくは該薬剤は、候補化合物のライブラリーをスクリーニングすることにより特定することができる。化合物のライブラリーは、各ウェルに異なる被験化合物が入った、マルチウェルプレート(たとえば、96ウェルプレート)でスクリーニングすることが可能である。特に、候補化合物のライブラリーは、組合せライブラリーであってもよい。ランダム配列オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、または合成オリゴマーの様々な組合せライブラリーが提案されており、多数の小分子ライブラリーも開発されている。オリゴマーの組合せライブラリーは、所望のオリゴマーサイズ(一般にヘキサペプチドまたはヘプタペプチド)に達するまで、異なるサブユニットの混合物を、成長中のオリゴマーまたは親化合物に段階的に加える、様々な液相法または固相法で形成することが可能である。たとえば、試薬の多項選択を、各補足的サブユニットステップと合併することによって、ますます複雑になるライブラリーをこの方式で作成することができる。あるいは、ライブラリーは、ライブラリーを形成する異なる配列のオリゴマーを含むビーズを交互に混合して分離し、各ステップで、選択された数のサブユニットの1つを、分離されたビーズの各群に加える、固相合成法で作成することが可能である。ライブラリーは、組合せライブラリーを含めて、製薬会社および専門ライブラリー業者から市販されている。
【0171】
薬剤が、本発明による核酸を認識する場合、該薬剤は、アンチセンス配列を含んでもよい。
【0172】
薬剤が、本発明によるペプチドを認識する場合、該薬剤は、MHC分子またはペプチド結合溝を含むその一部を含んでもよい。あるいは、該薬剤は、抗ペプチド抗体を含んでもよい。
【0173】
本明細書で使用されるように、「抗体」は、完全な免疫グロブリン分子またはその一部、あるいはバイオアイソスターまたはその模倣物またはその誘導体またはその組合せを含む。その一部の例としては、Fab、F(ab)’2、およびFvなどが挙げられる。バイオアイソスターの例としては、一本鎖Fv(ScFv)断片、キメラ抗体、二官能性抗体などが挙げられる。
【0174】
用語「模倣物」は、ペプチド、ポリペプチド、抗体または抗体と同じ結合特異性を有する他の有機化学物質であってもよい任意の化学物質に関する。
【0175】
用語「誘導体」は、抗体と関連して本明細書で使用されるとき、抗体の化学的修飾を含む。このような修飾の具体例は、アルキル、アシル、またはアミノ基による水素の置換であろう。
【0176】
完全な免疫グロブリン分子は、抗原と相互に作用する結合(Fab)ドメインおよび食作用等のプロセスの開始を信号で知らせるエフェクター(Fc)ドメインの、2つの領域に分けられる。各抗体分子は、2種のポリペプチド鎖、軽(L)鎖および重(H)鎖からなる。1つの抗体は、L鎖の全く同じ2つのコピーおよびH鎖の全く同じ2つのコピーを有する。各鎖に由来するN末端ドメインは、抗原−結合部位を構成する可変領域を形成する。C末端ドメインは、定常領域と呼ばれる。H(VH)鎖およびL(VL)鎖の可変領域はFv単位を構成し、また密接に相互に作用して一本鎖Fv(ScFv)単位を形成することができる。ほとんどのH鎖に、ヒンジ領域が存在する。このヒンジ領域は可動性であり、Fab結合領域は、分子の残りに比して自由に動くことができる。ヒンジ領域はまた、抗体を、抗原結合部位(Fab)とエフェクター(Fc)領域に分割することができるプロテアーゼの作用に最も敏感な分子上の場所である。
【0177】
抗体分子のドメイン構造は、タンパク質操作に好都合であり、抗原結合活性(FabおよびFv)またはエフェクター機能(Fc)を有する機能的ドメインの分子間の交換を容易にする。抗体の構造はまた、毒素、リンパ球または成長因子等の分子に結びついた抗原認識能を有する抗体の産生も容易にする。
【0178】
キメラの抗体技術は、完全なマウス抗体可変領域ドメインの、ヒト抗体定常領域上への移植を含む。キメラ抗体は、マウス抗体より免疫原性が低いが、抗体特異性を保持し、低下したHAMA応答を示す。
【0179】
キメラ抗体では、可変領域は完全にネズミのものを保持している。しかし、抗体の構造は、主としてヒトに起源がある比較可能な特異性を有する可変領域の産生を可能にする。抗体の抗原結合部位は、重鎖および軽鎖の可変部分の6つの相補性決定領域(CDR)から形成される。各抗体ドメインは、β鎖を接続するループが付いたβバレルを形成する7つの逆平行のβシートからなる。ループの中にはCDR領域がある。これは、蓋然性の高い、CDRおよびそれらの付随する、アンカーのβバレルによる特異性である。これは、CDR移植と呼ばれる。CDR移植抗体は、初期の臨床試験では、マウス抗体またはキメラ抗体ほど強い免疫原性ではないと考えられる。さらに、いわゆるヒト化抗体で、それらの結合活性を高めるために、CDRの外で突然変異が行われる。
【0180】
ポリペプチドリンカーで結合した、Fab、Fv、ならびにVHおよびVLを含む一本鎖Fv(ScFv)断片は、元のモノクローナル抗体に似た抗原に対して特異性および親和性を示す。ScFv融合タンパク質は、アミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかに付着した非抗体分子を用いて製造することができる。これらの分子では、適切な抗原を発現する細胞への、付着分子の特異的ターゲティングに、Fvを使用することができる。2つの異なる結合特異性を、一本の抗体鎖内に操作することにより、二官能性抗体も作り出すことができる。二官能性Fab、FvおよびScFv抗体は、CDR移植ドメインまたはヒト化ドメイン等の、操作したドメインを含んでもよい。
【0181】
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、およびそれらの誘導体を同定、特性決定、クローニング、および操作する手順は、たとえばマウスまたはトランスジェニックマウスに由来するハイブリドーマ、ファージ提示ライブラリーまたはscFvライブラリーを使用して、完全に確立されている。免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子をコードする遺伝子は、様々な異種発現系で発現させることができる。免疫グロブリンを含む、大きいグリコシル化タンパク質は、真核細胞、特に哺乳類細胞から効率よく分泌されて集められる。小さい、非グリコシル化断片、たとえば、Fab、Fv、またはscFv断片は、哺乳類細胞または細菌細胞で、機能的な形で産生させることができる。
【0182】
該薬剤は、本発明のペプチド/核酸を単独で、すなわち、別の化合物の協力なしで、認識することができる。たとえば、該薬剤は、MHC分子によって提示されたとき、本発明のペプチドに特異的に結合できる可能性がある。この場合、本発明の薬剤は、T細胞受容体分子またはその一部を含んでもよい。
【0183】
T細胞受容体は、別の分子、たとえばCD4(MHCクラスIIエピトープの場合)またはCD8(MHCクラスIエピトープの場合)と結合している可能性がある。あるいは、または加えて、該受容体は、CD3と結合している可能性がある。
【0184】
該薬剤が、生まれつき人体に存在するのであれば、好ましくは、本発明の薬剤は、実質的に単離された形である。
【0185】
本発明は、本発明のペプチド、核酸または薬剤が、対象に存在することを検出するステップを含む方法も提供する。
【0186】
好ましい実施形態において、本方法は、MHC分子と協力して、本発明によるペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞の存在を検出するために使用される。
【0187】
診断方法は、たとえば、対象における、疾患の診断または進行のモニターのためであってもよく、あるいは免疫応答のモニターのためであってもよい。
【0188】
上述の通り、免疫応答が進行するにつれて、特定のエピトープの優性が変化する可能性があり、亜優性エピトープが優位を占めることがある。したがって、ある特定のエピトープ、またはこのようなエピトープを認識することができるTCR/T細胞の存在を検出することによって、免疫応答の進行に関する情報を得ることができる。
【0189】
この方法は、in vivoで実行してもよく、またはより好ましくは、ex vivoサンプルで実行してもよい。
【0190】
したがって、
(i)対象からサンプルを単離するステップと、
(ii)MHC分子と協力して、本発明によるペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞の存在を、ex vivoにてサンプルで検出するステップと
を含む診断方法も提供する。
【0191】
好ましい実施形態では、該方法は、がん疾患の診断または進行をモニターするためである。
【0192】
該方法の性質は、本発明のペプチド、核酸または薬剤が検出されるかどうか(および薬剤である場合、該薬剤の性質)に依存する。
【0193】
本発明のペプチドを検出するために、本発明の薬剤(たとえば抗体またはMHC分子)を使用することが可能である。抗体を用いたスクリーニング方法(たとえばELISA、免疫ブロット、ウエスタンブロッティング、競合アッセイ、二部位捕捉アッセイ)は、当技術分野で周知である。
【0194】
ペプチドまたは特異的T細胞を検出するために、抗原提示アッセイを使用することが可能である。T細胞が、MHC:ペプチド複合体を首尾よく認識すると、T細胞は刺激される。この刺激は、T細胞の増殖(たとえば3Hの取り込みによる)および/またはT細胞によるサイトカイン類の産生(たとえばELISPOTアッセイによる)によって、モニターすることができる。したがって、適切なAPCおよびT細胞系を使用することによって、特異的ペプチドの存在を検出することが、また、適切なAPCおよびペプチド/抗原を使用することによって、特異的T細胞の存在を検出することが、可能である。
【0195】
蛍光活性化細胞走査(FACS)を使用して、ある特定の細胞表面分子(たとえば、TCRまたはMHC分子)の存在を調査することができる。
【0196】
該方法が核酸の存在を検出することである場合、PCR、サザンブロッティング(DNA用)およびノーザンブロッティング(RNA用)等の多数の方法が、当技術分野で知られている。
【0197】
[T細胞]
本発明は、T細胞、たとえば、MHC分子と協力して、本発明によるペプチドエピトープを特異的に認識することができる、T細胞クローン、またはT細胞系にも関する。T細胞系およびクローンを生じさせるための幾つかの方法が、当技術分野で知られている。T細胞系を生じさせるための一法は下記の通りである:
【0198】
マウスに、初回抗原投与し(通常は、足蹠後方の皮下に)、流入領域リンパ節(この場合、膝窩および鼠径)を1週間後に除去し、抗原および同系の支持細胞、すなわち同一近交系のマウス由来の細胞(たとえば正常な胸腺細胞または脾細胞)との共培養を開始した。4日後、リンパ芽球を単離し、IL−2を用いて増殖させた。細胞集団が十分に増加したとき、これを、抗原およびMHC特性についてリンパ球形質転換テストでテストし、抗原処理支持細胞上での培養と、IL−2含有培地中での培養との、交互のサイクルで維持した。
【0199】
決定的なT細胞系列マーカーは、T細胞受容体(TCR)である。現在、2種類のTCRが確定されており、両者とも、ジスルフィド連結した2つのポリペプチドのヘテロダイマーである。1種は、α鎖およびβ鎖からなり、他種はγ鎖およびδ鎖からなる。血液T細胞のおよそ90〜95%は、α/β TCRを発現し、残りの5〜10%は、γ/δ TCRを発現する。
【0200】
T細胞は、全く異なる2集団:CD4マーカーを担持しており、主として免疫応答を「助ける」または「誘導する」サブセット(TH)と、CD8マーカーを担持しており、大部分は細胞障害性であるサブセット(Tc)に、分けることができる。CD4+T細胞は、MHCクラスII分子と結合しているペプチドを認識し、CD8+T細胞は、クラスI分子と結合しているペプチドを認識するため、CD4またはCD8の存在によって、T細胞が相互に作用できる細胞のタイプが制限される。
【0201】
CD4セットは、機能上、さらに2つのサブセットに細分されている。
(i)T細胞およびB細胞の応答(ヘルパーT細胞機能)にプラスに影響するT細胞はCD29+である。事実上、この集団内の全細胞が、CD45ROと表示される、CD45白血球共通抗原の低分子量アイソフォームも発現する。
(ii)CD8+細胞のサプレッサー/細胞障害性機能(サプレッサー/インデューサー機能)を誘導する細胞は、異なる形のCD45分子、CD45RAを発現する。
【0202】
サイトカイン分泌パターンに関するTHクローンの機能的分析で、機能的多様性も証明されている。CD4+T細胞のTH1サブセットは、IL−2およびIFN−γを分泌し、TH2サブセットは、IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10を産生する。TH1細胞は、細胞障害性および局所炎症反応と関連した幾つかの機能を仲介する。その結果として、これらの細胞は、ウイルス、細菌および寄生虫を含む、細胞内病原体と闘うために重要である。TH2細胞は、B細胞を刺激して増殖させ、抗体を産生させる、したがって正常な免疫応答において、自由生活性生物から守る働きをするのに、より有効である。
【0203】
上述のマーカーの全ての発現は、特異的抗体を使用して容易に検出することができ、そのように、FACSを使用して、T細胞のタイプを選択/決定することができる。特定のサイトカイン類の発現も、当技術分野で周知の方法、たとえばELISPOTアッセイで、検出することができる。
【0204】
[予防/治療方法]
本発明は、疾患の予防および/または治療に使用するための医薬の製造における、本発明によるワクチンの使用も提供する。
【0205】
本発明によるワクチンの有効量を投与するステップを含む、被検対象における疾患を治療および/または予防するための方法も提供する。
【0206】
ワクチンの投与により、免疫応答を誘発することが可能である。好ましい実施形態では、ワクチンの投与によって、被検対象における、5T4への免疫寛容が破壊される。
【0207】
該ペプチドがクラスIエピトープである場合、誘発される免疫応答は、5T4特異的細胞障害性Tリンパ球の活性化を含む可能性がある。該ペプチドがクラスIIエピトープである場合、誘発される免疫応答は、TH1および/またはTH2細胞の活性化を含む可能性がある。
【0208】
好都合なことに、該応答は、対象における腫瘍の増殖を抑制、抑止、または逆戻りさせるのに有効な、抗腫瘍免疫治療の応答である。
【0209】
[併用療法]
本発明はさらに、抗5T4抗体等の5T4ターゲティング分子、たとえば、抗5T4scFvの使用にも関する。これらの抗体を使用して、(i)天然または外因性の5T4をin situでターゲットし、および/または(ii)B7.1等の免疫エンハンサ分子を、天然または外因性の5T4にin situで送達することが可能である(Carrollら、(1998年)J Natl Cancer Inst 90(24):1881−7)。これによって、被検対象における5T4の免疫原性が増強する。
【0210】
したがって、本発明は、本発明によるワクチン、および抗5T4抗体、たとえば抗5T4scFvの、逐次使用にも関する。抗5T4scFv抗体は、抗体をコードする裸のDNAとして(たとえば、コードDNAと、その産生を調節するための短いプロモーター領域とを一緒に含むプラスミドの形態で)、コード配列を含む発現ベクター(ウイルスベクターであってもよく、非ウイルスベクターであってもよい)の形態で、またはタンパク質の形態で、投与することが可能である。したがって、本発明は、腫瘍の治療における別々の使用、たとえば逐次使用向けの、5T4ペプチド抗原をコードするベクター、および場合によって免疫刺激分子と融合している5T4を結合することができる薬剤を提供する。
【0211】
さらなる実施形態では、本発明は、酵素/プロドラッグ療法および5T4を用いた免疫療法を含む併用療法を包含する。たとえば、該酵素/プロドラッグ療法は、場合により、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを使用して送達されるP450の腫瘍内送達または全身性送達、およびシクロホスファミド(CPA)に続く、5T4による全身性免疫療法誘導を含む。
【0212】
したがって、本発明はさらに、腫瘍の治療における、別々の使用向け、同時別々の使用向け、または併用向けの、5T4ペプチド抗原をコードするベクターおよびプロドラッグ/酵素組合せに関する。
【0213】
[疾患]
5T4は、腫瘍関連抗原である。がん細胞上に5T4が存在することは、転移に関連しており、多数の異なるがんの予後の独立した指標であることが証明されている。
【0214】
好ましい実施形態では、(本発明によるワクチンを使用して予防できる/治療できる)疾患は、がんである。特に、該疾患は、たとえば、乳房、肺、胃、膵臓、子宮内膜、子宮頚部、結腸直腸、腎または前立腺のがん腫であってもよい。
【0215】
W0 89/07947号は、抗5T4モノクローナル抗体を使用した、新生物組織の免疫組織化学的スクリーニングについて記述している(表IIおよびVI参照)。好ましくは、疾患は、診断テストによって(たとえば、抗5T4抗体で)5T4陽性であると証明することができるがん、たとえば:ファーター膨大部、乳房、結腸、子宮内膜、膵臓、または胃の浸潤がん腫;膀胱、子宮頚部、肺または食道の扁平上皮がん腫;結腸の腺管絨腺腫、子宮内膜(endometirem)の悪性ミューラー管混合腫瘍、腎臓の明細胞がん腫;肺がん(大細胞未分化、巨細胞がん腫、気管支肺胞がん腫、転移性平滑筋肉種);卵巣がん(ブレンナー腫瘍、嚢胞腺がん、充実性奇形腫);精巣のがん(精上皮腫、成熟嚢胞性奇形腫);軟部組織線維肉腫;奇形腫(未分化胚細胞腫瘍);または栄養芽細胞がん(絨毛がん(たとえば子宮内、肺または脳)、胎盤部位の腫瘍(胞状奇胎)である。
【0216】
[四量体]
本発明は、四量体と関連した(たとえば、四量体に包み込まれた)5T4ペプチドエピトープおよびその使用も提供する。
【0217】
四量体は、抗原特異的T細胞の直接可視化を可能にする蛍光性試薬である(Altmanら(1996年) Science 271,94−96)。四量体は、HLAクラスIタンパク質により再び折り畳まれた個々のペプチドエピトープからなり、また、そのエピトープに特異的であるT細胞に結合する。四量体は、抗原特異的リンパ球の直接定量化を可能にし、ヒトおよびネズミの免疫学に広く応用されてきた。
【0218】
該四量体は、Altmanら(1996年)Science 271,94−96により記述されている方法を使用して、作製することが可能である。簡単に記載すると、四量体は、ビオチニル化タンパク質を、4:1の比率で、ストレプトアビジンPEに加えることにより作製することが可能である。四量体結合細胞は、磁性活性化?胞選別法(MACS)を使用して選択することが可能である。MACSは、Radbruchら、(1994年) Methods in Cell Biology 42,387−403に記載されている。
【0219】
好都合なことに、四量体を使用することにより、見込まれる再注入に向けて、ex vivoで、個々の患者由来の自己CD4+T細胞を精製し、それらを増殖/操作するために;たとえば、結腸直腸および他の5T4陽性がんに罹りやすい対象における診断の指標として;ワクチン接種前、接種中および接種後の、5T4特異的免疫応答の追跡が可能になる。したがって、本発明は、ワクチン接種前、接種中および接種後の、5T4特異的免疫応答をモニターするための、5T4ペプチドエピトープ四量体の使用にも関する。本発明はさらに、個々の患者由来の自己CD4+T細胞を精製するための、5T4ペプチドエピトープ四量体の使用に関する。本発明はそのうえさらに、結腸直腸がん等の5T4陽性がんに罹りやすい対象における診断の指標としての、5T4ペプチドエピトープ四量体の使用に関する。
【0220】
本発明はさらに、単に実例を挙げて説明するために、添付した図が参照される以下の実施例でさらに説明される。
【実施例】
【0221】
[健常なドナーにおける5T4特異的免疫応答]
H5T4は、妊娠期間中に栄養芽細胞上に発現されるが、正常な成人組織上には存在せず、一部の特殊な上皮上に弱く発現するに過ぎない、表面糖タンパク質である。対照的に、H5T4は、多くのヒトがん腫により発現される。その機能は不明であるが、5T4発現と、不幸な臨床予後との間に重要な相関関係がある。原発性5T4陰性腫瘍は、5T4陽性転移を起こすという幾つかの証拠がある。
【0222】
5T4は、自己タンパク質であるため、このタンパク質に特異的なT細胞は、胸腺の発達中に排除されるはずではないかと思うかもしれない。しかし、一部の人々には、低頻度、低親和性の5T4特異的T細胞が存在するという証拠がある。黒色腫に関する広範な研究は、自己組織特異的遺伝子産物に対してよく反応するT細胞を、黒色腫患者および健常者の両者で検出できることを示した。
【0223】
5T4抗原についても同じことがいえるということに基づいて、本発明者は、ex vivoで、5T4特異的T細胞の存在に関する、健常者ドナーの無作為スクリーニングに着手した。
【0224】
[実施例1−5T4ペプチドライブラリーのスクリーニング]
全5T4タンパク質にわたり、かつ8アミノ酸重複する10量体ペプチドからなる、5T4ペプチドライブラリーを、ELISpotアッセイで使用した。
【0225】
他所(Czerkinskyら(1988年)、「ELISAおよび他の固相イムノアッセイの理論的および技術的側面(Theoretical and Technical Aspects of ELISA and Other Solid Phase Immunoassays)」(D.M.Kemeny and SJ.Challacombe,編)217−239ページ、John Wiley & Sons,New York))に記載の通りに、ELISpotアッセイを実施した。簡単に説明すると、ヒストペイク(Histopaque)−1077を使用して、PBMCを分離し、インターフェロン捕獲抗体で覆ったPVDF96ウェルプレートのウェル当たり5×105細胞の濃度でプレーティングした。10ペプチドのプールを、20μg/mlの最終濃度で各ウェルに加えた。MSOおよびPHAが入ったウェルが、それぞれ、ネガティブコントロールおよびポジティブコントロールの役割をした。また、インフルエンザペプチドをポジティブコントロールとして含めた。O/Nインキュベーション後、プレートをPBS−Tweenで洗浄し、および第2段階(second−step)抗体を加えた。スポットの数を解剖顕微鏡で数えた。
【0226】
5T4ペプチドライブラリーと比較して試験した健常な血液ドナー20例のうち1例、OB8が、ペプチドプール#8に陽性反応を示した。5T4ペプチドプール8に暴露したPBMCは、5×105細胞当たり5個のスポットを生じさせたのに対して、他のペプチドプールに反応したスポットはなかった(図1A)。Fluペプチドに対する応答をポジティブコントロールとして使用した。ELISpotアッセイより前の、PBMCのCD4枯渇は、応答を有意に増幅し(5×105PBMC当たり37スポット)、IFNγ産生は、CD8+T細胞が仲介するという結論にいたった(図1B)。
【0227】
ペプチドプール#8を分析し、ドナーOB 8に由来する全PBMCおよびCD4枯渇PBMCを使用して、個々のペプチドを、ELISpotで同様にテストし、IFNγ−p77の分泌誘導に関与した5T4内の1つのエピトープ−ペプチド、PLADLSFAFを同定することができた(図2)。
【0228】
[実施例2−OB8T細胞の5T4特異性のテスト]
同定したエピトープをさらに特性決定するために、このドナーから、EBV−形質転換B細胞系を確立した。ドナーOB8のHLAクラスI型は、HLA A1,2 B8,44 C5,7と同定された。
【0229】
OB8由来のPBMCを、p77パルス処理した自己DCと共に同時培養することによって、ペプチド77特異的T細胞をin vitroで増殖させた。自己DC+p77で週に一度ずつ、3回刺激した後、結果として生じたポリクローナルT細胞系を、特異的反応性の存在について、CTLアッセイでテストした(図3)。OB8 T細胞は、MVA−LacZ感染標的のバックグラウンド死滅以上に、MVAベクターから全5T4抗原を発現するHLA適合CMC LCLを認識した。
【0230】
p77パルス処理した自己LCLを使用して、限界希釈によるクローニングにより、ポリクローナルT細胞系からT細胞クローンを生じさせた。2mlのウェル内でこのクローンを増殖させ、次いで、51Cr放出アッセイで、特異的反応性についてテストした。自己LCL、未処理、p77パルス処理、TroVax感染、および対照のベクターを標的として使用した。テストしたクローンの約35%が、MVAベクターからLCLで内生的に発現される全抗原に特異的であった。CTLアッセイの代表的な結果を図4に示す。
【0231】
細胞溶解性クローンおよび非細胞溶解クローンの両者を、IFNγ産生についてELISpotでテストした。非細胞溶解クローンの一部は、p77をロードし、TroVaxに感染したLCLによる刺激に反応して、IFNγを産生した。IFN産生レベルは、バックグラウンドと比較した相対的単位で示してある(図5)。
【0232】
[実施例3−p77エピトープに関するHLA制限要素の同定]
次のステップは、エピトープ−ペプチドのHLA制限要素を決定することである。p77をロードした1つまたは2つのHLA対立遺伝子で適合するLCLを、ELISpotアッセイでAPCとして使用した。
これはAPCとして使用したLCL団である:
【表4】
【0233】
p77をロードしたLCL IM17およびLCL IM119は、OB8 CTLによるIFNγ産生を誘発しなかったため、HLA A1,A2,B44およびC5対立遺伝子を該エピトープの制限要素として除外する。他のLCLによって誘導された応答の強さは、下記の通りに特性決定することができる:
自己LCL>CMC LCL>IM108 LCL>CD LCL
【表5】
【0234】
自己および2つのB8適合LCLをasAPCとして使用したとき、p77が強程度から中程度の応答を誘導したことから、該エピトープは、B8対立遺伝子を介して提示される可能性が高いという結論にいたった。しかし、Cw7でマッチしたCD LCLも、同様に弱い応答を誘導したため、このペプチドは、Cw7対立遺伝子によっても提示される可能性もある。
【0235】
[実施例4−最小エピトープの同定]
HLA B8−制限5T4エピトープを最小限にするために、元のp77の短いバージョンまたは長いバージョンを提示するペプチドを合成した。51Cr放出アッセイで個々のペプチドをロードしたLCLに対して、CTLアッセイにより、多数のクローンをテストした。テストしたクローンの1つが、9量体のペプチドを認識したが、他の5つのペプチドをロードしたLCLの死滅がみられなかった。このことから、c5が、最小エピトープに相当するという結論に達した(図6)。
【0236】
1年後に同一ドナーから血液サンプルを入手し、確定された最小エピトープペプチドc5を使用して、同様に、ポリクローナルT細胞系を新規に生じさせて、DCをロードした。週に一度ずつ4回刺激した後、増殖中の細胞集団を、51Cr放出アッセイおよびELISpotアッセイでテストした。51Cr放出アッセイの標的およびELISpotアッセイのAPCとして、以下のLCLを使用した:自己LCL、IM 17 LCL(HLA A1,2 B13,44 C5,6)およびGS LCL(HLA A2,29 B7,44, C7,16)。CTLは、c5ペプチドをロードした自己LCLを強く認識し、70%の死滅レベルに達した。先の実験で確認された通り、該ペプチドでパルス処理したIM17 標的の認識はなかった。しかし、c5ペプチドをロードしたGS LCLは、OB8 CTLによって死滅したものの、死滅レベルは低かった(図7)。細胞障害性アッセイの結果は、ELISpotデータと相関関係があった(図8)。
【0237】
総合すると、以上のことから、
・いずれの確定された5T4エピトープも、HLAB8対立遺伝子によって提示され、またCw7対立遺伝子によって交差提示される、
・または、Cw7対立遺伝子のみによって提示され、この場合、Cw7適合同種異系(allogeneic)LCLの弱い認識は、それらが異なるCw7サブタイプのものであることに起因する、
という結論にいたる。
【0238】
Cw7対立遺伝子は、その主たるアンカーモチーフに関して、他ほど広範に特性決定されていない。しかし、3位のアラニンは、Cw7対立遺伝子を、最も可能性の高いエピトープ制限要素にするモチーフの1つとして記述されている(Marsh S.Parham P.Barber L The HLA Facts Book,Academic Press,2000年)。
【0239】
この問題点は、唯一のHLA対立遺伝子、B8またはCw7を発現する細胞系を、51Cr放出アッセイにおける標的および/またはELISpotアッセイにおけるAPCとして使用することによって、明確にした。
【0240】
[実施例5−5T4を発現するDCによるCD8+細胞のin vitro刺激]
本発明者は、専門のAPCである樹状細胞(DC)が、健常なドナーにおける5T4特異的IRを、in vitroでプライミングできることも証明した。この目的のために、HLA A2−陽性の健常なドナー(HD123)由来のPBMCを、ネガティブ選択により、CD8+T細胞について濃縮した。IDM技術に準拠して増殖させた自己DCを、TroVaxに感染させ、それぞれのCD8+T細胞に加えて、マイクロ培養を確立した。TroVax感染DCによる週に一度の再刺激を3〜5巡した後、結果として得られたT細胞マイクロ培養を、標的細胞としての5T4を発現する組換えアデノウイルスに感染した自己DCに対して、5T4特異的CTLの存在について、Cr放出アッセイでテストした。CTLアッセイを実行する前に、標的細胞における、アデノウイルスベクターからの5T4の発現をテストした(図9)。抗5T4抗体を使用したFACS分析は、(5T4をコードする組換えアデノウイルスに感染した)DCの75%が、5T4を発現することを示した。
【0241】
3回のIVS後、T細胞マイクロ培養の一部は、弱い(約12〜15%)自己標的細胞の5T4特異的死滅を示した。これらのT細胞を、IFNγ産生について、ELISpotでテストした。上述の通り、アデノウイルスベクターから全タンパク質を発現し、かつ5T4ペプチドプールをロードした自己DCを、刺激細胞として使用した。一部のT細胞マイクロ培養は5T4陽性であり、Ad.5T4に感染したDCに反応して、103細胞当たり130スポットを生じた。これらのT細胞も、ペプチドプール14の5T4に陽性であった(103細胞当たり92スポット)。この1つのペプチドプール#14は、T細胞によるIFNγ分泌を誘導するものであると確認された(図10)。
【0242】
4回のIVS後、ELISpotアッセイを繰り返して、類似した結果を得た。プール14を構成する個々の10量体ペプチドを、このアッセイに含め、2つの隣接するペプチド、pl4.2およびpl4.3が、陽性反応を誘導すると確認された(図11)が、pl4.3によって誘導された応答は有意に強かった(図12)。さらに2つのT細胞マイクロ培養をELISpotで同様にテストし、2つのマイクロ培養のうち1つが、同じpl4.3でIFNγ産生を誘導し、5T4特異的であると考えられた。総合すると、これらのデータから、pl4.3は、5T4抗原内の自然にプロセシングされるCD8T細胞エピトープであることが示唆される。
【0243】
HLA A2対立遺伝子が、同定されたエピトープの要素を制限している可能性をテストするために、本発明者は、pl4.3によるペプチド感作の前に、抗HLA A2抗体で前処理した自己DCを標的細胞として使用して、Cr放出アッセイを実施した。より詳細に説明すると、3つのT細胞マイクロ培養、C8、C11およびE5を、ペプチド14.2および14.3でパルス処理した標的に対して、51Cr放出アッセイでテストした。ペプチド14.3は、3つのT細胞マイクロ培養全てに認識され、およびC11 T細胞のみが、pl4.2ロード標的を低レベルで死滅させた。pl4.3でパルス処理する前に、抗HLA A2 AbでDCを前処理したとき、T細胞によるそれらの認識は抑制された。これらの結果から、pl4.3は、確かにHLA A2 対立遺伝子によって提示されることが証明される(図13)。
【0244】
6ヵ月後、同一ドナー由来の血液サンプルを入手した。5T4特異的応答が一次応答であることを確認するために、CD45RA発現に基づいて、CD8+T細胞をナイーブT細胞とメモリーT細胞に分けた。全CD8+T細胞、CD8+CD45RA+T細胞およびCD8+CD45RA−T細胞から、T細胞マイクロ培養を開始した。TroVax感染DCで週に1度の刺激を5巡した後、上述の通りに、51Cr放出アッセイで、T細胞マイクロ培養をテストした。CD45RA−から作成したT細胞マイクロ培養の中で、細胞が細胞障害性であったものは皆無であったが、全CD8+T細胞およびCD45RA+CD8+T細胞の両者は、5T4特異的集団を生じさせ、5T4特異的免疫応答が、in vitroでプライミングされたことが証明される。これらのT細胞培養を使用して、ドナーOB8の場合に実施した通りに、10量体ペプチド内の最小エピトープを同定した。14.3および14.2ペプチドをロードした自己LCLを使用し、14.3および14.2の短いバージョンを提示する3他のペプチドをアッセイに含めて、51Cr放出アッセイを実施した(図14)。結合予測アルゴリズムによれば、9量体のペプチド#3は、一次アンカー残基として、2位にロイシンおよび9位にバリンを有する、HLA A2制限最小エピトープの最強の候補者である。しかし、我々の予想に反して、元のペプチド14.3が最強の応答を誘導した(図15)。これらのデータは、ELISpotアッセイで確認された(データ示さず)。これらのデータに基づいて、我々は、lO量体ペプチド14.3は、5T4抗原内の天然のA2制限エピトープであるという結論を下した。これを裏付けるために、一般に2位のグルタミン酸は、MHC溝内へのペプチド折り畳みに対してマイナスの作用を及ぼし、このような四量体の製造は通常、成功率が低いにもかかわらず、14.3ペプチドと複合体を形成したHLA A2 四量体が製造されている。
【0245】
ex vivoELISpotアッセイにより結腸直腸のがん患者における免疫応答をモニターしている間に、我々は、Cw7対立遺伝子を含むHLA型を有する患者で、前述のペプチド77を含有するプール8に対する反応を検出した。他の患者2例(HLA型は不明)は、ペプチドプール10に応答を示した。
【0246】
HLA型A2,11B7,27,Cw2,7を有する患者は、プール11に反応した。プール11は、結合予測アルゴリズムによれば、HLA A2対立遺伝子およびB27対立遺伝子に最も強く結合する多数のペプチドを含む。たとえば、ペプチド11.2は、HLA A2対立遺伝子に結合する5T410量体ペプチドの中で最高得点を取り;ペプチド11.4は、A2バイダーの中で、上から7番目である。ペプチド11.7は、HLAB27対立遺伝子に結合する5T410量体ペプチドの中で最高得点を取り;ペプチド11.3は、B27バインダーの中で上から2番目であり、またペプチド11.4は上から5番目である。上の明細書に記載の全ての出版物を、参照することにより本明細書に組み込むものとする。記載の方法および本発明のシステムへの、様々な修飾および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明白になるであろう。具体的な好ましい実施形態に関連して本発明を説明してきたが、当然のことながら、請求の範囲に記載されている本発明は、このような具体的な実施形態に不当に制限されない。それどころか、分子生物学または関連分野における熟練者に明白な、本発明を実行するために記述された方式の様々な修飾は、請求の範囲の範囲内であることを意味する。
【0247】
【化1】
【化2】
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】ex vivoで、健常なドナー由来のPBMCにおける、5T4ペプチドプールの1つに特異的なT細胞の存在を示す、ELISpotアッセイを示す図である。 A.全PBMCs B.CD4枯渇PBMC
【図2】IFNγ分泌の誘導に関与するものを調査するために、プール8を構成するペプチドのELISpotスクリーニングを示す図である。
【図3】増殖したT4特異的OB8T細胞が、MVAベクターから内生的に5T4を発現する同種異系CMC LCL標的細胞を認識することを示す、51Cr放出アッセイを示す図である。
【図4】限界希釈によって単離される個々のOB8 T細胞クローンも、51Cr放出アッセイでテストすると、やはり5T4−特異的であることを示す図である。
【図5】OB8T細胞クローンによるIFNγ産生を示す図である。
【図6】P77の最小エピトープを同定するための、77誘導体のスクリーニングを示す図である。
【図7】OB8 CTLアッセイを示す図である。
【図8】OB8 ELISpotアッセイを示す図である。
【図9】5T4をコードする組換えアデノウイルスに感染したDCにおける5T4発現のFACS分析を示す図である。
【図10】5T4ペプチドプールを使用したT細胞ミクロ培養のELISpotアッセイを示す図である。
【図11】アミノ酸配列14.ペプチド2および14.3ペプチドを示す図である。
【図12】プール14からの個々のペプチドを使用したT細胞ミクロ培養のELISpotアッセイを示す図である。
【図13】51Cr放出アッセイで、抗HLA A2抗体による標的細胞認識のブロックを示す図である。
【図14】14.3および14.2ペプチドの短いバージョンのアミノ酸配列を示す図である。
【図15】ペプチドをロードした自己LCLに対して、5T4特異的T細胞ミクロ培養を用いた51Cr放出アッセイを示す図である。
【配列表】
【技術分野】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、5T4抗原のペプチドエピトープ、および免疫療法におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
[発明の背景]
特異的ヒト腫瘍抗原が同定される前に、がん細胞全体またはがん細胞由来の細胞成分分画のいずれかに対して、がん患者を免疫化しようとして、多くの臨床治験が実施された。しかし、腫瘍抗原をコードする遺伝子の同定により、同定された抗原を担持する腫瘍細胞の攻撃に基づいた特異的免疫療法の開発が可能になった。これらの遺伝子または遺伝子産物を使用する様々な臨床手法は、下表のようにまとめることができる。
【0003】
【表1】
【0004】
無処理のタンパク質による免疫化は、クラスIエピトープおよびクラスIIエピトープの両者に対して同時に免疫化するという潜在的な利点を有するが、多量の腫瘍抗原を精製するためには、多大な時間のかかる努力を必要とする。腫瘍抗原内のクラスIペプチドおよびクラスIIペプチドの同定により、高レベルの純粋な合成ペプチドで免疫化することが可能になった。該ペプチド手法は、どちらのエピトープを使用するかを選択することにより、クラスI型応答およびクラスII型応答(またはその混合)のどちらかを選択できるという利点もある。ペプチドによる免疫化は、T細胞の異なるサブセットを刺激するために、亜優性エピトープおよび/または潜在エピトープを選択できることも意味する(抗原プロセッシングの必要性を、回避するかまたは「トリミング役」に低下させることが可能なため)。また、免疫原性を高めるために、(たとえば、HLAクラスIまたはクラスIIアンカー部位で)ペプチドを修飾することも可能である。
【0005】
ここ2、3年で、腫瘍免疫におけるCD8+T細胞の役割に対して多大な注意が払われた。腫瘍特異的CD8+CTLは、in vivo動物モデルで、腫瘍細胞を直接溶解して腫瘍塊を根絶できることが証明されている。しかし、CD4+T細胞は、重要な役割を果たすとも考えられ(Wang and Rosenberg(1999年)Immunological Reviews 170:85−100)、CD4+およびCD8+T細胞の両者の関与を必要とする最適がんワクチンである可能性もある。
【0006】
ヒトおよび動物腫瘍で、多数のがん胎児性抗原または腫瘍関連抗原(TAA)が同定され、特性決定されている。概して、TAAは、成人細胞ではダウンレギュレートされ、したがって、成人では、通常は存在しないかまたは非常に低レベルで存在するに過ぎない、胎児発生中に発現される抗原である。腫瘍細胞は、TAAの発現を再開始しないことが認められており、腫瘍診断、ターゲティングおよび免疫療法へのTAAの利用が提唱されている。
【0007】
TAA 5T4(WO 89/07947号参照)は、既に特徴付けされている。がん腫で広く発現されるTAA 5T4は、72kDa糖タンパク質であるが、正常な成人組織で非常に制限された発現パターンを有する(表2参照)。TAA 5T4は、結腸直腸がんおよび胃がんにおける転移と強い相関関係があると思われる。ヒト5T4の全核酸配列は既知である(Myersら、1994年 J Biol Chem 169:9319−24)。
【0008】
【表2】
【0009】
(Starzynskaら、Eur J Gastroenterol Hepatol 1998年6月;10(6):479−84;Starzynskaら、Br J Cancer 1994年5月;69(5):899−902;Starzynskaら、Br J Cancer 1992年11月;66(5):867−9)。
【0010】
5T4は、力学的関与があり得る、腫瘍進行および転移の可能性に関するマーカーとして提唱されている(Carsbergら、(1996年) Int J Cancer 1996年9月 27;68(1):84−92)。5T4は、また、免疫治療薬としての使用も提唱されている(WO 00/29428号参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
[発明の概要]
本発明者は、5T4の多数のMHCクラスIおよびクラスII制限エピトープを同定した。この抗原性ペプチドの同定は、がんに対する診断および治療の方針を開発する新たな機会を与える。
【0012】
したがって、本発明の第1の態様は、5T4抗原のMHCクラスIエピトープに関する。本発明は、T細胞により特異的に認識されるように、MHCクラスI分子とともに提示され得る5T4抗原のペプチドエピトープに関する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
特に、本発明は、
(i)配列番号2として表示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号3として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(iii)配列番号4として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(iv)配列番号5として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(v)配列番号6として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(vi)配列番号7として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ
の1つを含む、5T4のペプチドエピトープを提供する。
【0014】
本発明のさらなる態様は、
−このようなペプチドを含むポリエピトープ列。
−細胞ペネトレーターと結合した、このようなペプチドエピトープ、またはこのようなポリエピトープ列。
−四量体と結合した、このようなペプチドエピトープ、またはこのようなポリエピトープ列。
−このようなペプチドエピトープまたはポリエピトープ列(および場合によって関連した細胞ペネトレーター)をコードすることができる核酸配列。
−このような核酸配列を細胞に送達することができるベクターシステム。
−このようなペプチドエピトープ(またはその前駆体)によりパルス処理した細胞。
−このようなペプチドエピトープ、ポリエピトープ列、核酸配列、ベクターシステムおよび/または細胞を含んでなるワクチン。
−疾患の予防および/または治療に使用するための医薬の製造における、このようなワクチンの使用。
−このようなワクチンの有効量を対象者等に投与するステップを含む、疾患の治療および/または予防を必要としている被検対象における、疾患を治療および/または予防する方法。
−このようなペプチドおよび/または核酸配列に特異的に結合することができる薬剤。
−対象者において、このようなペプチド、核酸または薬剤の存在を検出するステップを含む、方法。
−MHCクラスI分子とともにこのようなペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞系またはクローン。
に関する。
【0015】
本発明の他の態様は、添付の特許請求の範囲、および下記の説明および考察に示す。これらの態様は、別々のセクションの項目の下に示す。しかし、当然のことながら、各セクションの項目の教示は、そのセクションの項目に必ずしも限定されない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
[発明の詳細な説明]
エピトープ
本発明は、ペプチドエピトープに関する。
【0017】
用語「ペプチド」は、一般に、隣接するアミノ酸のα−アミノとカルボキシル基の間のペプチド結合によって、一方と他方を結び付ける、一連の残基、一般にL−アミノ酸を意味するために、通常の意味で使用される。この用語は、修飾されたペプチドおよび合成ペプチド類縁体を包含する。
【0018】
T細胞エピトープは、タンパク質抗原から誘導できる短いペプチドである。抗原提示細胞は、抗原をインターナライズし、MHC分子を結合することができる短いフラグメントに処理することができる。MHCに結合するペプチドの特異性は、ペプチドと個々のMHC分子のペプチド結合溝との間の特異的相互作用に左右される。
【0019】
MHCクラスI分子に結合する(かつCD8+T細胞により認識される)ペプチドは、通常は6〜12アミノ酸、たいていは8〜10アミノ酸の長さである。ペプチドのアミノ末端アミン基は、ペプチド溝の一端と接触し、カルボキシ末端のカルボキシレート基は、該溝の他端のインバリアント部位に結合する。該ペプチドは、主鎖原子間でさらに接触する溝に沿って広範囲に確認され、溝に沿って並ぶアミノ酸側鎖を保存する。ペプチド長の変化は、ペプチド主鎖、しばしばプロリン残基またはグリジン残基におけるねじれによって調整される。
【0020】
MHCクラスII分子に結合するペプチドは、通常は少なくとも10アミノ酸、たとえば約13〜18アミノ酸の長さであり、はるかに長いこともある。これらのペプチドは、両端で開いたMHCIIペプチド結合溝に沿って広範囲に確認される。該ペプチドは、主として、ペプチド結合溝に沿って並ぶ保存残基と接触する主鎖原子により、所定の位置に保持される。
【0021】
本発明のペプチドは、化学的方法(Peptide Chemistry,A practical Textbook.Mikos Bodansky,Springer−Verlag,Berlin.)を使用して製造することが可能である。たとえば、ペプチドは、固相技術(Roberge JYら(1995年) Science 269:202−204)によって合成し、樹脂から切断し、分離用高性能液体クロマトグラフィで精製することができる(たとえば、Creighton(1983年) Proteins Structures And Molecular Principles,WH Freeman and Co,New York NY)。自動合成は、たとえば、製造業者により添付される説明書に従って、ABI 43 1 Aペプチドシンセイサイザー(Peptide Synthesizer)(パーキン・エルマー(Perkin Elmer))を使用して、実現することが可能である。
【0022】
該ペプチドは、あるいは、組換え法で、またはより長いポリペプチドからの切断によって、製造することが可能である。たとえば、該ペプチドは、全長5T4からの切断によって得ることが可能である。ペプチドの組成は、アミノ酸分析または配列決定(たとえば、エドマン分解法)によって確認することが可能である。
【0023】
用語「ペプチドエピトープ」は、修飾されたペプチドを包含する。たとえば、野生型5T4ペプチドのMHC結合特異性が保持されている限り、5T4ペプチドは、アミノ酸挿入、欠失または置換により、変異していてもよい。好ましい実施形態では、該修飾されたエピトープは、ペプチド結合溝に対して、より大きい親和性を有する。好ましくは、該ペプチドは、野生型配列から5つ以下の変異、より好ましくは3つ以下、最も好ましくは1つまたは0の変異を含む。
【0024】
あるいは(または加えて)、該ペプチドのアミノ酸配列を変えずに、修飾を行うことが可能である。たとえば、D−アミノ酸または他の非天然アミノ酸を含めてもよく、正常なアミド結合を、エステルもしくはアルキルバックボーン結合に置き換えてもよく、Nアルキル置換基もしくはCアルキル置換基、側鎖修飾、ならびにジスルフィド結合および側鎖アミド結合またはエステル結合等の束縛を含んでもよい。このような変化は、その結果として、ペプチドのより大きいin vivo安定性、およびより長い生物学的寿命をもたらす。
【0025】
エピトープの修飾は、http://www-bimas.dcrt.nih.gov/cgi-bin/molbio/ken.parker.comboformで見つけられるであろう、K.Parker(NIH)によって考案されたプログラム「ペプチド結合予測(Peptide Binding Predictions)」を使用して導かれる、より能率的なT細胞誘導に関する予測に基づいて実施することが可能である。(Parker,K.Cら、1994年.J.Immunol.152:163も参照)。
【0026】
「修飾された」5T4ペプチドエピトープは、免疫応答を誘導する能力を高めるために、輸送体ペプチドまたはアジュバントに結合しているか、または他の方法で関連しているペプチドを含む。たとえば、HLAへの能率的な輸送およびCTLエピトープを増強させるためのHLA分子との相互作用のために、ペプチドを、TAP非依存性輸送体ペプチドに融合させることが可能である(総説に関しては、Yewdellら、1998年 J Imrnunother 21:127−31;Fuら、(1998年) J Virol 72:1469−81を参照)。
【0027】
さらなる実施形態では、5T4または5T4ペプチドをB型肝炎コア抗原に融合させて、Tヘルパー応答および抗体応答を増強することが可能である(Schodelら、1996年、Intervirology 39:104−10)。
【0028】
エピトープであるためには、ペプチドは、MHCクラスI分子またはクラスII分子のペプチド結合溝に結合することができ、かつT細胞によって認識されなければならない。
【0029】
所与の抗原に由来するペプチドの細胞表面提示は、ランダムではなく、少数の高頻度で存在するエピトープに支配される傾向がある。ある特定のペプチドの優勢性は、多くの因子、たとえば、MHC分子を結合するための相対的親和性、APC内の空間時間的発生ポイントおよび分解に対する抵抗性に左右される。抗原のエピトープ階層(hierarchy)は、免疫応答の進行とともに変化するト考えられる。免疫優性ペプチドに対する一次免疫応答後、亜優性決定基に、エピトープ「スプレッド(spreading)」が起こることがある(Lehmannら、(1992年) Nature 358:155−157)。
【0030】
所与の抗原に関する潜在エピトープも存在する可能性がある。潜在エピトープは、ペプチドとして投与されると、T細胞応答を刺激することができるが、抗原全体として投与されると、このような応答を生じさせることができないものである。それは、APC内で抗原をペプチドに処理している間に、潜在エピトープが破壊されるということかもしれない。
【0031】
本発明のペプチドは、5T4の免疫優性(immunodominant)エピトープ、亜優性(sub−dominant)エピトープまたは潜在(cryptic)エピトープであってもよい。
【0032】
抗原のエピトープは、PCにより提示されるとき、抗原の一部に広がる重複ペプチドに対するT細胞応答を測定することにより、同定することが可能である(以下参照)。このような研究は、通常は、ペプチドの「ネステッド・セット」という結果をもたらし、また、ある特定のT細胞系/クローンの最小エピトープは、切断形ペプチドに対する応答を測定することにより、評価することができる。
【0033】
抗原の最小エピトープは、実用目的には最良のエピトープではない可能性がある。MHCへの最適結合には、多分、最小エピトープに隣接するアミノ酸が必要であろう。
【0034】
[エピトープの同定]
T所与の抗原内のT細胞エピトープを同定するための多数の方法が、当技術分野で周知である。
【0035】
自然にプロセシングされたエピトープは、抗原ロードAPCから溶出されるペプチドの質量分光光度分析によって同定することが可能である。これらは、抗原を取り入れるように促されたか、または適切な遺伝子による形質転換によって該タンパク質を細胞内で産生するように強いられたAPCである。一般に、APCを、溶液中かまたはAPC細胞表面にうまく向けられた(targeted)タンパク質とともに、インキュベートする。37℃でインキュベートした後、デタージェント中で細胞を溶解し、たとえば、アフィニティクロマトグラフィでクラスIIタンパク質を精製する。精製されたMHCを適当な化学媒体(たとえば、酸条件)で処理することにより、MHCからペプチド類が溶出する。このペプチドのプールを分離し、その特性を、同様に処理した対照APC由来のペプチドと比較する。タンパク質発現細胞/供給細胞特有のピークを、(たとえば質量分析法によって)分析し、ペプチド断片を同定した。この手順によって、通常は、抗原プロセッシングによって、ある特定の抗原から生成される(通常は、「ネステッド・セット」内に存在する)ペプチドの範囲に関する情報が作成される。
【0036】
エピトープを同定するための別の方法は、in vitroアッセイで、重複し、かつ抗原の長さに及ぶペプチドの合成ライブラリーをスクリーニングすることである。たとえば、15アミノ酸の長さであり、かつ5アミノ酸または10アミノ酸だけ重複するペプチドを使用することが可能である。該ペプチドを、抗原提示細胞およびT細胞を含む抗原提示系でテストする。たとえば、該抗原提示系は、ネズミ脾細胞標本、扁桃またはPBMC由来のヒト細胞の標本であってもよい。あるいは、該抗原提示系は、ある特定のT細胞系/クローンおよび/またはある特定の抗原提示細胞型を含んでもよい。
【0037】
T細胞活性化は、T細胞増殖(たとえば3H−チミジン取り込みを使用)またはサイトカイン産生によって測定することが可能である。TH1型CD4+T細胞の活性化は、たとえば、ELISPOTアッセイ等の標準技術で検出可能なIFNγ産生によって検出することができる。
【0038】
重複ペプチド試験は通常、エピトープが位置する抗原の領域を示す。次いで、ある特定のT細胞の最小エピトープを、切断形ペプチドに対する応答を測定することによって評価することができる。たとえば、重複ライブラリーにおける残基1〜15を含むペプチドに対する応答が得られる場合、両端で切断形であるセット(すなわち、1〜14、1〜13、1〜12等々、および2〜15、3〜15、4〜15等々)を使用して、最小エピトープを同定することができる。
【0039】
[ポリエピトープ列]
抗原に対する免疫応答を誘導する特に効果的な方法は、互いに連結した1つ以上の抗原に由来する複数の抗原性エピトープを含む、ポリエピトープ列(string)の使用によることは判明している。たとえば、マラリアの場合、破傷風トキソイド、および結核菌群(M.tuberculosisおよびM.bovis)の様々な菌株の38Kdミコバクテリア抗原に由来するCD4T細胞エピトープも発現する、主としてマラリア(P.falczparum)CD8T細胞ペプチドエピトープのポリエピトープ列が、記載されている。
【0040】
本発明は、本発明による少なくとも1つのペプチドを含むポリエピトープ列も提供する。該ポリエピトープ列は、5T4抗原から誘導可能な別のエピトープまたは別のTAA等の別の抗原に由来するエピトープ、またはそれらの組合せも含むことが可能である。
【0041】
TAAは、膜タンパク質、または糖タンパク質および糖脂質の変化した炭水化物分子のいずれかとして特性決定されているが、その機能は、大部分が不明のままである。1つのTAAファミリー、貫膜4スーパーファミリー(TM4SF)は、通常は、4つの十分に保存された膜貫通領域、幾つかのシステイン残基および短い配列モチーフを有する。T細胞のCD4およびCD8を含む、他の重要な膜受容体と緊密に関連したTM4SF抗原が存在するという証拠がある(Imai & Yoshie(1993年) J.Immunol.151,6470−6481)。TM4SF抗原は、シグナル形質導入に際してある役割を果たし、次には、細胞発生、活性化および運動性に影響を及ぼす可能性があることも示唆されている。TM4SF抗原の例としては、ヒト黒色腫関連抗原ME491、ヒトおよびマウス白血球表面抗原CD37、およびヒトリンパ芽球性白血病関連TALLA−1などが挙げられる(Hotta,H.ら、(1988年) Cancer Res.48,2955−2962;Classon,B.J.ら、(1989年) J.Exp.Med.169:1497−1502;Tomlinson,M.G.ら、(1996年) Mol.Immun.33:867−872;Takagi,S.ら(1995年) Int.J.Cancer61:706−715)。
【0042】
TAAのさらなる例としては、下記のクラスのTAAなども挙げられるが、これらに限定されない:Cancer Vaccines and Immunotherapy(2000) EdsStern,Beverley and Carroll,Cambridge University Press,Cambridgeに概説された、がん精巣抗原(HOM−MEL−40)、分化抗原(HOM−MEL−55)、過剰発現した遺伝子産物(HOM−MD−21)、変異遺伝子産物(NY−COL−2)、スプライスバリアント(HOM−MD−397)、遺伝子増幅産物(HOM−NSCLC−11)およびがん関連自己抗原(MOM−MEL−2.4)。さらなる例としては、MART-1(Melanoma Antigen Recognised by T cells-1(T細胞-1により認識される黒色腫抗原))MAGE−A(MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A8、MAGE−A10、MAGE−A12)、MAGEB(MAGE−B1−MAGE−B24)、MAGE−C(MAGE−C1/CT7、CT10)、GAGE(GAGE−1、GAGE−8、PAGE−1、PAGE−4、XAGE−1、XAGE−3)、LAGE(LAGE−1a(1S)、−1b(1L)、NY−ESO+1)、SSX(SSX1−SSX−5)、BAGE、SCP−1、PRAME(MAPE)、SART−1、SART−3、CTp11、TSP50、CT9/BRDT、gp100、MART−1、TRP−1、TRP−2、MELAN−A/MART−1、がん胎児性抗原(CEA)、前立腺特異的抗原(PSA)、MUCIN(MUC−1)およびチロシナーゼなどが挙げられる。TAAは、Cancer Immunology(2001)Kluwer Academic Publishers,The Netherlandsで概説されている。
【0043】
[細胞ペネトレーター]
本発明は、細胞ペネトレーター(penetrator)に結合した、ペプチドエピトープ、またはポリエピトープ列も提供する。
【0044】
ペプチドでパルス処理した抗原提示細胞(たとえば樹状細胞)は、抗腫瘍免疫増強に有効であった(Celluzziら(1996年) J.Exp.Med.183 283−287;Youngら(1996年) J.Exp.Med.183 7−11)。ペプチドを細胞透過ペプチド(CPP)に連結することにより、樹状細胞によるペプチドの提示を延長(およびしたがって抗腫瘍免疫を増強する)できることが明らかにされている(Wang and Wang(2002年) Nature Biotechnology 20 149−154)。
【0045】
細胞ペネトレーターは、抗原提示細胞へのペプチド/ポリエピトープ列の細胞内送達を増強する任意の実体(構成要素)であってもよい。たとえば、細胞ペネトレーターは、ペプチドと結び付くと、その原形質膜を通過する能力を増強する脂質であってもよい。あるいは、細胞ペネトレーターは、ペプチドであってもよい。HIVのTatタンパク質(Franker and Pabo(1988年) Cell 55 1189−1193),HSVのVP22タンパク質(Elliott and O’Hare(1997年) Cell 88 223−233)および線維芽細胞成長因子(Linら(1995年) J.Biol.Chem.270 14255−14258)を含む、タンパク質から、幾つかの細胞透過ペプチド(CPP)が同定されている。
【0046】
用語「結合」は、たとえば共有結合による直接連結を含むことを意味する。アミノ酸を連結するための共有結合の例としては、ジスルフィド結合およびペプチド結合などが挙げられる。好ましい実施形態では、ペプチド/ポリエピトープ列およびCPPは、融合タンパク質を作るために、ペプチド結合によって連結されている。
【0047】
該用語は、非共有結合、たとえば、静電結合、水素結合およびファンデルワールス力による結び付きも含む。細胞ペネトレーターおよびペプチド/ポリエピトープ列は、共有結合または非共有結合がなくても、結合することが可能である。たとえば、細胞ペネトレーターは、ペプチド/ポリエピトープ列を封入する脂質(たとえばリポソーム)であってもよい。
【0048】
[5T4]
5T4は、既に、たとえば、W 089/07947号で、特性決定されている。ヒト・5T4の配列は、GenBankで、寄託番号Z29083である。該ペプチドは、異なる種に由来する5T4抗原、たとえば、ネズミ5T4(WO 00/29428号)、イヌ5T4(WO 01/36486号)またはネコ5T4(本明細書に表示されている配列番号1)から誘導することもできる。該ペプチドは、特定の種、好ましくは哺乳動物で発見される天然の5T4変種から誘導することも可能である。このような変種は、同一遺伝子ファミリーの関連遺伝子によってコードされることも、特定の遺伝子の対立遺伝子の変種によってコードされることもあり、または5T4遺伝子の選択的スプライシングバリアントを表すこともある。
【0049】
異なる種に由来する5T4から誘導されるペプチド、またはスプライスバリアントは、類似のヒト野生型5T4ペプチドと異なるアミノ酸配列を有する可能性がある。しかし、該ペプチドがヒトペプチドと同じ質的結合特異性を保持する(すなわち該ペプチドが、同一ハプロタイプのMHC分子のペプチド結合溝内で結合する)限りは、やはり本発明によるエピトープである。
【0050】
[核酸]
本発明は、本発明の第1の態様によるペプチドエピトープまたはポリエピトープ列をコードすることができる核酸配列にも関する。
【0051】
本明細書で言及する「核酸」は、DNAであってもRNAであってもよく、天然のものでも合成されたものであってもよく、またはそれらのいずれの組合せであってもよい。本発明による核酸は、該核酸が宿主生物の細胞の機構によって翻訳されるような方法で、5T4ペプチドのコード機能を果たす点でのみ制限される。従って、天然の核酸を、たとえばそれらの安定性が上昇するように、修飾することが可能である。メンバーのヌクレアーゼ抵抗性を改良するために、DNAおよび/またはRNA、しかし特にRNAを、修飾することが可能である。たとえば、既知のリボヌクレオチド修飾としては、2’−O−メチル、2’−フルオロ、2’−NH2、および2’−O−アリルなどがある。本発明による修飾された核酸は、核酸のin vivo安定性を高めるため、その送達を増強または仲介するため、あるいは身体からのクリアランス速度を低下させるために行われた化学的修飾を含んでもよい。このような修飾の例としては、所与のRNA配列のリボースおよび/またはリン酸および/または塩基の位置における化学的置換などが挙げられる。たとえば、WO 92/03568号;U.S.5,118,672号;Hobbsら、(1973年) Biochemistry 12:5138;Guschlbauerら、(1977年) Nucleic Acids Res.4:1933;Schibaharuら、(1987年) Nucleic Acids Res.15:4403;Piekenら、(1991年) Sicence 253:314(それぞれを参照することにより本明細書に具体的に組み込まれるものとする)を参照されたい。
【0052】
本発明は、本発明の第1の態様によるペプチドエピトープまたはポリエピトープ列をコードすることができる核酸配列にハイブリダイズする核酸も包含する。
【0053】
ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、ポリ核酸ハイブリッドが安定している条件を指す。このような条件は、当技術分野における通常の技術を有する者に明白である。当業者に周知の通り、ハイブリッドの安定性は、配列相同性が1%低下するごとにおよそ1〜1.5℃低下する、ハイブリッドの融解温度(Tm)に反映される。概して、ハイブリッドの安定性は、ナトリウムイオン濃度および温度の関数である。一般に、ハイブリダーゼーション反応は、高ストリンジェンシー条件で実施し、その後、種々のストリンジェンシーの洗浄が続く。
【0054】
本明細書で使用されるとき、高いストリンジェンシーは、65〜68℃の1M Na+で安定なハイブリッドを形成する核酸配列のみのハイブリダーゼーションを可能にする条件を指す。高ストリンジェンシー条件は、たとえば、6×SSC、5×デンハート(Denhardt)液、1%SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、0.1ピロリン酸Na+および非特異的競合者としての0.1mg/ml変性サケ精子DNAを含有する水性溶液中でのハイブリダーゼーションによって提供することができる。ハイブリダーゼーション後、0.2〜0.l×SSC、0.1%SDS中、ハイブリダーゼーション温度での最終洗浄(約30分)を含む、幾つかの段階で高いストリンジェンシー洗浄を実施することが可能である。
【0055】
中程度のストリンジェンシーは、上述の溶液中であるが、約60〜62℃でのハイブリダーゼーションに相当する条件を指す。その場合、最終洗浄は、l×SSC、0.1%SDS中、ハイブリダーゼーション温度で実施される。
【0056】
低いストリンジェンシーは、約50〜52℃の上述の溶液中でのハイブリダーゼーションに相当する条件を指す。その場合、最終洗浄は、2×SSC、0.1%SDS中、ハイブリダーゼーション温度で実施される。
【0057】
これらの条件は改変することが可能であり、また様々な緩衝液、たとえばホルムアミド系緩衝液、および温度を使用して、複製できると理解すべきである。デンハート(Denhardt)溶液およびSSCは、他の適当なハイブリダーゼーション緩衝液として、当業者に周知である(たとえばSambrookら編(1989年) Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New YorkまたはAusubelら編(1990年) Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.参照)。プローブの長さGC含量も役割を果たすため、最適ハイブリダーゼーション条件は、実験的に決定されなければならない。
【0058】
本明細書に提供された手引きが与えられれば、本発明の核酸は、当技術分野で周知の方法で得られる。たとえば、本発明のDNAは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、または、より長いポリヌクレオチド、たとえば5T4コード配列全体またはその断片からの直接切断を使用して、化学合成で得られる。
【0059】
当該核酸を合成するための化学的方法は、当技術分野で周知であり、トリエステル、亜リン酸エステル、ホスホラミダイトおよびH−ホスホネート方法、PCRおよび他のオートプライマー方法ならびに固体支持体上でのオリゴヌクレオチド合成などがある。これらの方法は、該核酸の全核酸配列が分かっているか、またはコーディング鎖に相補的な核酸の配列を入手できれば、使用することが可能である。あるいは、標的アミノ酸配列が分かれば、各アミノ酸残基について、既知の好ましいコーディング残基を使用して、可能性のある核酸配列を推察することが可能である。
【0060】
本発明の核酸は、ヌクレオチド置換、ヌクレオチド欠失、ヌクレオチド挿入またはヌクレオチド伸長の逆位、およびそれらの任意の組合せによって修飾できることが予想される。このような突然変異体は、たとえば、野生型5T4エピトープとは異なるアミノ酸配列を有する5T4ペプチドを産生するために使用することができる。このようなペプチドは、T細胞エピトープの役割を果たす能力を保持するのであれば、やはり本発明によるペプチドである。突然変異誘発は予め決定されていても(部位特異的)ランダムであってもよい。サイレント変異ではない変異は、リーディングフレームの外に配列を配置すべきではなく、好ましくは、ハイブリダイズして、ループまたはヘヤピン等の二次mRNA構造を作ることができる相補的な領域を作らない。
【0061】
[変種/断片/相同体/誘導体]
本発明は、ヌクレオチドおよびアミノ酸配列、ならびにそれらの変種、相同体、誘導体および断片の使用を包含する。
【0062】
用語「変種」は、野生型配列とは異なる天然のポリペプチドまたはヌクレオチド配列を意味するために使用される。
【0063】
用語「断片」は、ポリペプチドまたはヌクレオチド配列が、主題の配列の破片を含むことを示す。好ましくは、該配列は、少なくとも50%、より好ましくは少なくとも65%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも90%の主題の配列を含む。該断片が、アミノ酸の断片である場合、好ましくは該断片は6〜12アミノ酸の長さである。より好ましくは、該断片は、8、9または10アミノ酸の長さである。例として、配列番号5および配列番号7は、配列番号3の断片であり;配列番号6は、配列番号4の断片である。
【0064】
用語「相同体」は、主題のアミノ酸配列および主題のヌクレオチド配列とある一定の相同性を有する実体を意味する。ここで、用語「相同性」は、「同一性」と同一視することができる。
【0065】
これに関して、相同の配列は、主題の配列と少なくとも75、85または90%同一である可能性がある、好ましくは少なくとも95または98%同一である可能性がある、アミノ酸配列を含むと考えられる。一般に、該相同体は、主題のアミノ酸配列と同じ活性を含む。相同性は、類似性(すなわち類似した化学特性/機能を有するアミノ酸残基)という観点で考えることもできるが、本発明に関しては、配列同一性という観点で相同を示すことが好ましい。
【0066】
これに関して、相同の配列は、主題の配列と少なくとも75、85または90%同一である可能性がある、好ましくは少なくとも95または98%同一である可能性がある、ヌクレオチド配列を含むと考えられる。一般に、該相同体は、主題の配列と同じ活性を含む。類似性(すなわち類似した化学特性/機能を有するアミノ酸残基)という観点で考えることもできるが、本発明に関しては、配列同一性という観点で相同を示すことが好ましい。
【0067】
相同性の比較は、目で、またはたいていは、容易に入手できる配列比較プログラムの助けを借りて、実施することが可能である。これらの市販されているコンピュータープログラムは、2つ以上の配列間の%相同性を算出することができる。
【0068】
相同性(%)は、近接する配列に関して算出することが可能である。すなわち1つの配列を他の配列と並べ、1つの配列における各アミノ酸を、一度に一残基ずつ、他の配列における対応するアミノ酸と直接比較する。これは、「ギャップ無し」アラインメントと呼ばれる。一般に、このようなギャップ無しアラインメントは、比較的少数の残基に関して実施されるに過ぎない。
【0069】
これは非常に簡単でかつ一貫した方法ではあるが、たとえば、その他の点では同一の配列対において、1つの挿入または欠失が、以下のアミノ酸残基をアラインメントからずれさせ、その結果、全体的な配列比較を実施するとき、相同性(%)が大幅に低下する可能性があるということを考慮に入れることができない。その結果、ほとんどの配列比較方法は、相同性総合得点に不当にペナルティを課さずに、可能性のある挿入および欠失を考慮に入れる最適アラインメントをもたらすようにデザインされている。これは、配列アラインメントに「ギャップ」を挿入して、局所相同性を最大化しようと試みることによって実現する。
【0070】
しかし、これらのより複雑な方法は、同数の同一アミノ酸の場合、できる限り少ないギャップを有する配列アラインメント(比較する2配列間の高い関連性を示す)が、多くのギャップを有するものより高い得点を獲得するように、「ギャップペナルティ」を、アラインメント中に存在する各ギャップに割り当てる。ギャップの存在に対して比較的高いコストを課し、次の、ギャップ内の各残基に対しては、より小さいペナルティを課す、「アフィンギャップコスト」が一般に使用される。これは、最もよく使用されるギャップ採点法である。高いギャップペナルティは、もちろん、より少ないギャップを有する、最適化されたアラインメントをもたらす。ほとんどのアラインメントプログラムは、ギャップペナルティを修飾することが可能である。しかし、このようなソフトウェアを配列比較に使用するとき、デフォルト値を使用することが好ましい。たとえば、GCGウィスコンシン・ベストフィット(CGC Wisconsin Bestfit)パッケージを使用するとき、アミノ酸配列に関するデフォルトギャップペナルティは、ギャップには−12であり、各伸長には−4である。
【0071】
したがって、最大%相同性の計算には、ギャップペナルティを考慮に入れて、最適アラインメントを製作することが先ず必要である。このようなアラインメントを実行するのに適したコンピュータープログラムは、GCGウィスコンシン・ベストフィット(CGC Wisconsin Bestfit)パッケージ(米国ウィスコンシン大学(University of Wisconsin U.S.A.);Devereuxら、1984年 Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を実施することができる他のソフトウェアの例としては、BLASTパッケージ(Ausubelら、1999年、同書−18章参照)、FASTA(Atschulら、1990年 J.Mol.Biol.403−410)およびGENEWORKS比較ツール一式などが挙げられるが、この限りではない。BLASTもFASTAも共に、オフライン検索およびオンライン検索に使用できる(Ausubelら、1999年、同書、7−58〜7−60ページ参照)。しかし、一部の用途では、GCG Bestfitプログラムを使用することが好ましい。BLAST 2 Sequencesと呼ばれる新しいツールは、タンパク質およびヌクレオチド配列の比較にも使用できる(FEMS Microbiol Lett 1999年 174(2):247−50;FEMS Microbiol Lett 1999年 177(1):187−8参照)。
【0072】
最終的な相同性(%)は、同一性の観点で測定することができるが、アラインメント法それ自体は、一般に、全部か無かの対比較に基づくものではない。そうではなく、化学的類似性または進化距離に基づいて、得点を各ペアワイズ比較に割り当てる、類似性スコアマトリックスが一般に使用される。一般に使用されるこのようなマトリックスの一例は、BLOSUM62マトリックス(BLASTプログラム一式用のデフォルトマトリックス)である。GCGウィスコンシン(GCG Wisconsin)プログラムは、概して、公的デフォルト値または与えられたカスタムシンボル比較表のいずれかを使用する(さらなる詳細については、ユーザーマニュアルを参照されたい)。一部の用途では、GCGパッケージ用の公的デフォルト値を使用することが好ましく、他のソフトウェアの場合には、BLOSUM62等のデフォルトマトリックスを使用することが好ましい。
【0073】
いったんソフトウェアで最適アラインメントを作り出したら、相同(%)、好ましくは配列同一性(%)を算出することができる。該ソフトウェアは、一般に、配列比較の一部としてこれを行い、数字による結果を作成する。
【0074】
配列は、アミノ酸残基の欠失、挿入または置換も有してもよく、これらはサイレントな変化をもたらし、結果として機能的同等物となる。該物質のこれらの二次的結合活性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性における類似性に基づいて、意図的アミノ酸置換を行ってもよい。たとえば、負に帯電したアミノ酸としては、アスパラギン酸およびグルタミン酸などがあり;正に帯電したアミノ酸としては、リジンおよびアルギニンなどがあり;類似した親水性値を有する、無荷電極性頭部を含むアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、バリン、グリジン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンなどがある。
【0075】
たとえば、下表に従って、保存的置換を行ってもよい。第2段の同一ブロック内、および好ましくは第3段の同一行内のアミノ酸は、互いに置換することが可能である。
【0076】
【表3】
【0077】
本発明は、起こる可能性がある相同の置換(置換(substitute)も交換(replacement)も共に、本明細書では、存在するアミノ酸残基と代替残基との交換を意味するために使用される)、すなわち同じ状況の置換−たとえば、塩基性と塩基性、酸性と酸性、極性と極性等々も包含する。非相同置換、すなわち一クラスの残基から別の残基へ、または代わりに非天然アミノ酸−たとえばオルニチン(以下、Zと呼ぶ)、ジアミノ酪酸オルニチン(以下、Bと呼ぶ)、ノルロイシンオルニチン(以下、Oと呼ぶ)、ピリイルアラニン(pyriylalanine)、チエニルアラニン、ナフチルアラニンおよびフェニルグリジンの包含を含む、置換も起こる可能性がある。
【0078】
交替(replacement)は、α*およびα−二置換*アミノ酸、N−アルキルアミノ酸*、乳酸*、天然のアミノ酸のハロゲン化物誘導体、たとえばトリフルオロチロシン*、p−Cl−フェニルアラニン*、p−Br−フェニルアラニン*、p−I−フェニルアラニン*、L−アリル−グリジン*、β−アラニン*、L−α−アミノ酪酸*、L−γ−アミノ酪酸*、L−α−アミノイソ酪酸*、L−ε−アミノカプロン酸*、7−アミノヘプタン酸*、L−メチオニン スルホン#*、L−ノルロイシン*、L−ノルバリン*、p−ニトロ−L−フェニルアラニン*、L−ヒドロキシプロリン#、L−チオプロリン*、フェニルアラニン(Phe)のメチル誘導体−たとえば4−メチル−Phe*、ペンタメチル−Phe*、L−Phe(4−アミノ)#、L−Tyr(メチル)*、L−Phe(4−イソプロピル)*、L−Tic(1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリン−3−カルボン酸)*、L−ジアミノプロピオン酸#およびL−Phe(4−ベンジル)*を含む、非天然アミノ酸によって行うことが可能である。表記*は、上で(相同または非相同置換に関して)検討する目的で、誘導体の疎水性を示すために使用され、#は誘導体の親水性を示すために使用され、#*は両親媒性特性を示す。
【0079】
変種アミノ酸配列は、グリジンまたはp−アラニン残基等のアミノ酸スペーサーに加えて、メチル基、エチル基またはプロピル基等のアルキル基を含む配列の、任意の2つのアミノ酸残基の間に挿入することが可能な適当なスペーサー基を含んでもよい。ペプトイド形に1つ以上のアミノ酸残基の存在を含むさらなる変種形は、当業者に十分に理解されるであろう。疑いを回避するために、「ペプトイド形」は、α−炭素置換基が、α−炭素ではなく残基の窒素原子上にある、変種のアミノ酸残基を指すために使用される。ペプトイド形のペプチドを調製する方法は、当技術分野で周知である、たとえば、Simon RJら、PNAS(1992年) 89(20),9367−9371およびHorwell DC,Trends Biotechnol.(1995年) 13(4),132−134を参照されたい。
【0080】
本発明で使用するためのヌクレオチド配列は、合成または修飾されたヌクレオチド内に含めることが可能である。オリゴヌクレオチドに対する多数の異なるタイプの修飾は、問う技術分野で周知である。これらは、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート・バックボーンおよび/または;分子の3’および/または5’末端におけるアクリジンまたはポリリジン鎖の付加を含む。本発明の目的上、ヌクレオチド配列は、当技術分野で利用できる任意の方法で、修飾できることを理解すべきである。本発明で有用なヌクレオチド配列のin vivo活性または寿命を増強するために、このような修飾を実行することが可能である。
【0081】
[ベクターシステム]
本発明の核酸配列は、ベクターシステムを手段として、細胞に送達することが可能である。
【0082】
本明細書で使用するとき、「ベクター」は、核酸を宿主細胞内に送達または維持することができる任意の作用物であってもよく、ウイルスベクター、プラスミド、裸の核酸、ポリペプチドまたは他の分子と複合した核酸、および固相粒子状に固定された核酸などがある。以下に、このようなベクターを詳述する。本発明は、その最も広い形態で、5T4ペプチドコード核酸を送達するための特異的ベクターに限定されないことが理解されるであろう。
【0083】
ベクターは、原核細胞ベクターであっても真核細胞ベクターであってもよい。
【0084】
本発明による5T4エピトープおよびポリエピトープ列をコードする核酸は、ウイルスまたは非ウイルス技法で送達することができる。
【0085】
非ウイルス送達システムは、DNAトランスフェクション方法などがあるが、これらに限定されない。ここで、トランスフェクションは、非ウイルスベクターを使用して、5T4遺伝子を標的哺乳類細胞に送達する方法を含む。
【0086】
代表的なトランスフェクション方法としては、エレクトロポレーション、核酸微粒子銃、脂質仲介トランスフェクション、コンパクト核酸仲介トランスフェクション、リポソーム、イムノリポソーム、リポフェクチン、陽イオン性薬剤仲介、陽イオン性表面(facial)両親媒性物質(CFA)(Nature Biotechnology 1996 14;556)、スペルミン等の多価陽イオン、陽イオン性脂質またはポリリジン、1,2,−ビス(オレオイルオキシ)−3−(トリメチルアンモニオ)プロパン(DOTAP)−コレステロール複合体(Wolff and Trubetskoy 1998年 Nature Biotechnology 16:421)およびそれらの組合せなどがある。
【0087】
非ウイルス送達システムとしては、細菌送達システム等があるが、これに限定されない。抗がん薬および抗がん薬用送達剤としての細菌の使用は、Expert Opin Biol Ther 2001年3月;1(2):291−300で再検討されている。
【0088】
適当な細菌としては、細菌病原体および非病原性片利共生細菌などがあるが、これらに限定されない。例として、適当な属は、サルモネラ(Salmonella)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、エルシニア(Yersinia)、シゲラ(Shigella)、リステリア(Listeria)およびブルセラ(Brucella)から選択することが可能である。これらの細菌の病原論および分子生物学における近年の進歩によって、新しい改良された細菌担体およびより効果的な遺伝子発現システムの合理的な開発が可能になった。これらの進歩は、これらの送達システムの性能および汎用性を改良した。
【0089】
細菌は、in vitroおよびin vivoで、真核細胞発現プラスミドを哺乳類宿主細胞に移入することができる侵入型細胞内細菌であってもよい。代謝的減衰または自己融解の誘導のいずれかのために、組換え細菌が宿主細胞内で死んだとき、プラスミド移入が、行われることがある。あるいは、抗生物質を使用してもよく、また自然発生的移入も確認されており、この現象は、生理条件下でも起こり得ることが分かる。赤痢菌(Shigella flexneri)、ネズミサルモネラ菌(Salmonella typhimurium)、S.typhi、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)および組換え大腸菌(Escherichia coli)でプラスミド移入が報告されているが、他の侵入型細菌も使用することが可能である。
【0090】
細菌をDNAワクチン送達に使用することが可能である。食作用後、このような細菌は、宿主細胞サイトゾルに入ることが可能であるか(たとえば、シゲラ(Shigella)およびリステリア(Listeria))、または食胞区画内に留まる(たとえば、サルモネラ(Salmonella))。両細胞内局在化は、DNAワクチンベクターの奏功する送達に好適であろう。
【0091】
細菌送達システムは、非病原性マイコバクテリウム株の形態のマイコバクテリウム、クローニングベクターおよび発現ベクターの形態の遺伝子移入システム、および、たとえば無毒の免疫調節性マイコバクテリウムアジュバント、様々な疾患に特異的な無毒の免疫抑制性外因性抗原、およびTH−1経路を追加免疫する無毒量のサイトカイン類を含有する製品を提供するための関連技術を使用することが可能である(Tunis Med 2001年2月、79(2):65−81)。
【0092】
定義された遺伝子欠失を含む、サルモネラ菌株(たとえば、弱毒化菌株)は、適当な送達システム(たとえば抗原の送達)として使用することが可能である。これらの菌株で送達するために、プラスミドベースから染色体組み込みシステムまでの範囲の、多数の戦略が企てられた。例として、Rosenkranzら、Vaccine 2003年、21(7−8),798−801は、サイトカイン類をコードする真核細胞発現プラスミドについて記述し、異なる実験モデルで免疫応答を調節する能力を評価した。サイトメガロウイルスプロモーターのもとで、マウスIL−4およびIL−18をコードするプラスミドを構築して、生きている弱毒化ネズミチフス菌(Salmonella enterica)血清型Typhi菌株CVD908−htrA、およびネズミ・チフス菌(Salmonella enterica)血清型Typhimurium菌株SL3261に形質転換した。
【0093】
潜在的遺伝子送達ベクターとしての弱毒化ネズミ・サルモネラ菌(Salmonella typhimurium)の使用は、Res 2002年、22(6A):3261−6で再検討されている。
【0094】
Vemulapalliら、Infect Immun(2000年)68(6):3290−6によって記述されている通り、ウシ流産菌(Brucella abortus)も、適当な送達システムとして使用することが可能である。ウシ流産菌(Brucella abortus)菌株RB51は、ウシブルセラ症向けの生ワクチンとして広く使用される、安定した、ラフ型の、弱毒化突然変異体である。たとえば効果的な防御のために、強いThl型の免疫応答の誘導を必要とする他の細胞内病原体の感染防御抗原を送達する際に、この菌株を、送達ベクターとして使用することが可能である。
【0095】
Boydら、Eur J Cell Biol(2000年) 79(10)659−71は、広範囲の細胞型にタンパク質を送達するために、エルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)を使用することについて記述している。Y.enterocoliticaは、ヨップ・エフェクター(Yop effecter)と呼ばれる毒性タンパク質を、真核細胞のサイトゾル内に転位させる。エンテロコリティカ(enterocolitica)がヨップ(Yop)を転位させる真核細胞の範囲に対する制限は報告されていない。ヨップ・エフェクター、YopE、YopHおよびYopTは、それぞれ、試験した接着細胞型に対して細胞障害性であり、Y.enterocoliticaは、ヨップ・エフェクターを各細胞型内に転位させる際に選択的ではないことのみならず、これらのヨップ・エフェクターの作用は、細胞型特異的ではないこともわかる。エルシニア転位システムを広い用途に使用するために、異種タンパク質を真核細胞内に送達するためのY.enterocolitica転位株およびベクターを構築した。この菌株とベクターとの組合せには、転位されるヨップ・エフェクター(Yop effecter)がなく、したがってYopEの最小限のN末端の分泌/転位シグナルに融合した異種タンパク質を真核細胞に送達することが可能になる。
【0096】
US 5965381号には、タンパク質を真核細胞に送達するための組換えエルシニアについて記載されている。このようなエルシニアは、機能的エフェクター・タンパク質の産生が不十分であるが、機能的分泌および転位システムに恵まれている。
【0097】
細胞接着分子は、様々な細胞−細胞相互作用および細胞−細胞外マトリックス(ECM)相互作用に関与する大きいグループの分子であり、多数の病原性微生物により、細胞進入のための受容体として利用される。これらの分子は、遺伝子のターゲティングおよび取り込みにも、薬物送達システムにも、使用することが可能である。細胞接着分子および遺伝子移入におけるそれらの使用は、Adv Drug Deliv Rev 2000年11月15日;44(2−13):135−52で再検討されている。
【0098】
筋内接種に比べて極めて信頼性のある、遺伝子銃送達システムを、DNAの送達に使用することも可能である。(Jpn J Pharmacol 2000年7月;83(3):167−74)。
【0099】
ウイルス送達システムとしては、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、ヘルペスウイルスベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはバキュロウイルスベクター、ベネズエラウマ脳炎ウイルス(VEE)、ポックスウイルス、たとえばカナリア痘ウイルス(Taylorら、1995年、Vaccine 13:539−549)、昆虫ポックスウイルス(Li Yら 1998年 第12回国際ポックスウイルスシンポジウム(XIIth InternationalPoxvirus Symposium)144ページ、要約)、ペンギンポックス(penguine pox)(Standardら、J Gen Virol.1998年 79:1637−46)アルファ・ウイルス、およびアルファ・ウイルス系DNAベクターなどがあるが、この限りではない。
【0100】
レトロウイルスの例としては、ネズミ白血病ウイルス(MLV)、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、藤浪肉腫ウイルス(FuSV)、モロニーネズミ白血病ウイルス(Mo−MLV)、FBRネズミ骨肉種ウイルス(FBR MSV)、モロニーネズミ肉腫ウイルス(Mo−MSV)、アベルソン(Abelson)ネズミ白血病ウイルス(A−MLV)、トリ骨髄細胞腫ウイルス−29(MC29)、およびトリ赤芽球症ウイルス(AEV)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0101】
レトロウイルスの詳細なリストは、Coffinら(「Retrovirus」1997年Cold Spring Harbour Laboratory Press編:JM Coffin,SM Hughes,HE Varmus 758−763ページ)にある。
【0102】
レンチウイルスは、霊長類群および非霊長類群に分類される。霊長類レンチウイルスの例としては、ヒト自己免疫不全症候群(AIDS)の原因因子であるヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、およびサル免疫不全症ウイルス(SIV)などが挙げられるが、この限りではない。非霊長類レンチウイルス群としては、基本型「スローウイルス」ビスナ/マエディウイルス(VMV)、ならびに関連したヤギ関節炎−脳炎ウイルス(CAEV)、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)および最近記述されたネコ免疫不全症ウイルス(FIV)およびウシ免疫不全症ウイルス(BIV)などがある。
【0103】
レンチウイルスファミリーとその他のタイプのレトロウイルスとの違いは、レンチウイルスは、分裂細胞および非分裂細胞の両者を感染できることである(Lewisら1992年 EMBO.J 11:3053−3058;Lewis and Emerman 1994年 J.Virol.68:510−516)。対照的に、他のレトロウイルス、たとえばMLVは、非分裂細胞、たとえば、筋肉、脳、肺および肝組織を構成するもの等を感染させることができない。
【0104】
本発明のベクターは、スプリット−イントロン・ベクターとして設計することが可能である。スプリット・イントロン・ベクターは、PCT特許出願WO99/15683号およびWO99/15684号に記載されている。
【0105】
アデノウイルスの特徴を、レトロウイルス/レンチウイルスの遺伝的安定性と組み合せた場合、本質的にアデノウイルスを使用して、標的細胞に形質導入し、隣接する細胞をしっかり感染させることができるであろう一過性のレトロウイルスプロデューサー細胞にすることができる。5T4抗原を発現するように操作された、このようなレトロウイルスプロデューサー細胞は、血管形成および/またはがんの治療に使用するために、動物またはヒト等の生物に移植することができる。
【0106】
本発明のベクターは、シュードタイプされたベクターとして設計することができる。
【0107】
レトロウイルスベクターをデザインする際に、未変性のウイルスに対して異なる標的細胞特異性を有する粒子を、拡大した範囲または変化した範囲の細胞型に遺伝物質を送達できるように操作することが望ましい可能性がある。これを実現する一法は、ウイルス外膜タンパク質を、その特異性を変えるように操作することによる。別の手法は、ウイルスの未変性外膜タンパク質を交換するか、または該タンパク質に付加するために、異種外膜タンパク質をベクター粒子内に導入することである。
【0108】
用語、シュードタイピングは、異種env遺伝子、たとえば別のウイルスに由来するens遺伝子を用いて、ウイルスゲノムのenv遺伝子の、少なくとも一部に組み込むか、少なくとも一部を置換するか、または全部を交換することを意味する。シュードタイピングは、新しい現象ではなく、例として、WO99/61639号、WO−A−98/05759号、WO−A−98/05754号、WO−A−97/17457号、WO−A−96/09400号、WO−A−91/00047号およびMebatsionら、1997年 Cell 90,841−847にある。
【0109】
シュードタイピングは、レトロウイルスのベクターの安定性および形質導入効率を向上させることができる。リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)を詰めたシュードタイプされたネズミ白血病ウイルスについて記述されており(Mileticら(1999年) J.Virol.73:6114−6116)、超遠心分離の間ずっと安定しており、かつ異なる種に由来する幾つかの細胞系を感染できることが証明されている。
【0110】
ポックスウイルスベクターTAAは弱免疫原性であり、免疫系によって「自己」として認識され、そのため、かなりの程度まで許容される。ポックスウイルスベクターの使用は、時により、この寛容を少なくとも部分的に克服できるように、抗原を提示させることができ、(特に、免疫回避遺伝子が欠失している場合−以下参照)、したがって、宿主に免疫応答を引き起こすことが可能になる。
【0111】
ポックスウイルスベクターは、本発明で使用するのに好ましい。ポックスウイルスは、組換え遺伝子発現用に、また組換え生ワクチン向けに、操作が行われる。これには、外来抗原をコードする核酸を、ポックスウイルスのゲノムに導入するための組換え技術が必要である。ウイルスのライフサイクルに必須ではないウイルスDNAの部位で、核酸が組み込まれる場合、新たに産生される組換えポックスウイルスが感染性である、すなわち、外来細胞を感染させて、組み込まれたDNA配列を発現させることが可能である。このようにして作製された組換えポックスウイルスは、病理学的疾患および感染症を予防および/または治療するための生ワクチンとして使用することができる。
【0112】
ワクシニアウイルス等の、組換えポックスウイルスにおける5T4ペプチドの発現には、5T4ペプチドをコードする核酸に、ワクシニアプロモーターをライゲートすることが必要である。ドナープラスミドにおける核酸に隣接するウイルス配列と、親ウイルスに存在する相同配列との間の相同組換えによって、ワクシニアウイルスに核酸を挿入するためのプラスミドベクター(挿入ベクターとも呼ばれる)が構築されている(Mackettら、1982年、PNAS 79:7415−7419)。挿入ベクターの1種は:(a)転写開始部位を含むワクシニアウイルスプロモーター;(b)核酸を挿入するための、転写開始部位から下流に位置する幾つかのユニークな制限エンドヌクレアーゼクローニング部位;(c)ウイルスゲノムの相同な非必須領域への核酸挿入を指令する、プロモーターおよびクローニング部位に隣接する、非必須ワクシニアウイルス配列(たとえば、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子);および(d)大腸菌における、複製および選択に関する、細菌の複製開始点および抗生物質抵抗性マーカー;で構成されている。このようなベクターの例は、Mackett(Mackettら、1984年、J.Virol.49:857864)によって記述されている。
【0113】
挿入される核酸を含有する単離されたプラスミドを、親ウイルス、たとえば、ポックスウイルスと共に、細胞培養、たとえば、ヒヨコ胚線維芽細胞に、トランスフェクションする。プラスミドでの、相同のポックスDNAとウイルスゲノムとの間の組み換えは、それぞれ、そのゲノムの、ウイルスのプロモーター−遺伝子構築物が存在することによって修飾された組換えポックスウイルスが生じる結果となる。
【0114】
上述の通り、結果として得られる組換えウイルスの生存能力に影響を及ぼさないウイルスの領域(挿入領域)に、核酸が挿入される。ウイルスにおけるこのような領域は、たとえば、組換え体のウイルス生存能力に重大な影響を及ぼさずに組換え形成を可能にする領域について、ウイルスDNAのセグメントをランダムにテストすることにより、容易に特定される。容易に使用することができ、かつ多くのウイルスに存在する1つの領域は、チミジンキナーゼ(TK)遺伝子である。たとえば、TK遺伝子は、試験した全てのポックスウイルスゲノムに存在していた。[レポリポックスウイルス:Uptonら、J.Virology 60:920(1986年)(ショープ線維腫(shope fibroma)ウイルス);カプリポックスウイルス:Gershonら、J.Gen.Virol.70:525(1989年)(ケニアヒツジ(Kenya sheep)−l);オルトポックスウイルス:Weirら、J.Virol 46:530(1983年)(ワクシニア);Espositoら、Virology 135:561(1984年)(モンキーポックスおよび痘瘡ウイルス);Hrubyら、PNAS,80:3411(1983年)(ワクシニア);Kilpatrickら、Virology 143:399(1985年)(ヤバサル腫瘍ウイルス);アヴィポックスウイルス:Binnsら、J.Gen.Virol 69:1275(1988年)(鶏痘);Boyleら、Virology 156:355(1987年)(鶏痘);Schnitzleinら、J.Virological Method,20:341(1988年)(鶏痘、ウズラ痘(quailpox));昆虫ポックス(entomopox)(Lytvynら、J.Gen.Virol 73:3235−3240(1992年)]。
【0115】
ワクシニアの場合、TK領域に加えて、他の挿入領域としては、たとえば、HindIII Mなどがある。鶏痘の場合、TK領域に加えて、他の挿入領域としては、たとえば、BamHI J[Jenkinsら、AIDS Research and Human Retroviruses 7:991−998(1991年)]、EPO出願第0308 220 A1に記載のEcoRI−HindIII断片、BamHI断片、EcoRV−HindIII断片、BamHI断片およびHindIII断片などがある[Calvertら、J.of Virol 67:3069−3076(1993年);Taylorら、Vaccine 6:497−503(1988年);Spehnerら、(1990年)およびBoursnellら、J.of Gen.Virol 71:621−628(1990年)]などがある。
【0116】
豚痘の場合、好ましい挿入部位としては、チミジンキナーゼ遺伝子領域などがある。
【0117】
プロモーターは、宿主および標的細胞型に応じて、容易に選択することができる。たとえば、ポックスウイルスの場合、ワクシニア7.5K、または40Kあるいは鶏痘C1等の、ポックスウイルス・プロモーターを使用すべきである。適切なポックス配列を含有する人工構築物も使用することができる。発現レベルを高めるために、エンハンサエレメントも併用することができる。さらに、当技術分野で周知の誘導プロモーターの使用は、一部の実施形態で好ましい。
【0118】
外来遺伝子発現は、酵素アッセイまたは免疫学的アッセイ(たとえば、免疫沈降法、ラジオイムノアッセイ、または免疫ブロット)で検出することができる。組換えワクシニア感染細胞から産生される天然の膜糖タンパク質は、グリコシル化されており、細胞表面に輸送することが可能である。強力なプロモーターを使用することにより、高い発現レベルが得られる。
【0119】
ワクチンで使用するためのウイルスベクターに関する他の必要条件としては、良好な免疫原性および安全性である。MVAは、申し分のない安全性記録がある複製障害性ワクシニア株である。ほとんどの細胞型および正常なヒト組織で、MVAは複製しない。MVAの複製は、少数の形質転換細胞型、たとえばBHK21細胞で見られる。Carrollら(1997年)は、組換えMVAが、従来の組換えワクシニアベクターと同じぐらい、防御的CD8+T細胞応答発生にすぐれており、一般に使用される複製有能ワクシニアウイルスに代わる有効なベクターであることを示した。MVAから誘導されるワクシニアウイルス株、または無関係に開発された、特にMVAがワクチンに使用されるのにふさわしいMVAの特徴を有する菌株も、やはり本発明で使用するのに適する。
【0120】
好ましくは、該ベクターは、MVAまたはNYVAC等のワクシニアウイルスベクターである。最も好ましいのは、ワクシニア株修飾ウイルス・アンカラ(MVA)またはそれから誘導される菌株である。ワクシニアベクターに代わるものとしては、アヴィポックスベクター、たとえば、感染させることができ、かつヒト細胞で組換えタンパク質を発現できるが複製できない、鶏痘またはALVACとして知られるカナリア痘等、およびそれから誘導される株などがある。
【0121】
本発明の一態様では、ポックスウイルスベクターから少なくとも1つの免疫回避遺伝子を欠失させる。
【0122】
ウイルス、特に、多大なコード能を有し、したがって様々な遺伝子をコードする、ポックスウイルスのような大きいウイルスは、それらの宿主の免疫系回避する多数の技術を開発した。たとえば、このようなウイルスは、補体、インターフェロンおよび炎症反応等の非特異的防御を回避すること、ならびにサイトカイン類の機能を妨害またはブロックすることができる。左末端領域内のインターフェロン抵抗性タンパク質を除く、多数のこれらの免疫回避ポリペプチドが、MVAから欠失していた。ポックスウイルスは一般に、潜伏感染よりむしろ、急性感染を確立する大きいDNAウイルスである。ポックスウイルスは非常に多くの抗原性タンパク質をコードするため、抗原性変化は困難であり、したがって自身を哺乳類免疫系から保護するためには、積極的な免疫回避を頼みにする。ポックスウイルスは、免疫系の多数の態様の妨害に関与するポリペプチドをコードする多数の遺伝子を有し:インターフェロン作用を混乱させ、補体、サイトカイン活性、炎症反応およびCTL認識を妨害する(総説については、Smithら、(1997年) Immunol Rev 159:137−154参照)。これらのタンパク質を除去することは、ポックスウイルスベクター上にコードされた弱い免疫原の能力を活性化して、対象で免疫応答を誘発させる上で有益である。
【0123】
免疫回避遺伝子またはポリペプチドは、ウイルスの哺乳類免疫系回避を助ける遺伝子、またはその産物である。好ましくは、該遺伝子または遺伝子産物は、少なくともあるレベル、免疫系の作業を妨害する。これは、多数の方法で、たとえば情報伝達分子に関する競合者を与えることによる情報伝達経路における妨害によって、可溶性サイトカイン受容体模倣物等々を与えることによって、達成することが可能である。
【0124】
免疫回避遺伝子は、下記のものを包含するが、これらに限定されない。
【0125】
インターフェロン回避遺伝子。ワクシニアは、IFN作用を妨害する少なくとも3つの遺伝子を有する。E3L遺伝子は、dsRNAへの結合、P1の活性化につながる事象、eIF2αのリン酸化および結果として生じる翻訳開始複合アセンブリの不全について、P1タンパク質キナーゼと競合する25Kdのポリペプチドを発現させる。この経路は、通常はIFN活性化に関与するが、E3L発現によって妨害され、したがって妨害されずに翻訳開始が進行できる。
【0126】
K3L遺伝子は、eIF2を効果的に模倣して、P1タンパク質キナーゼの競合者の役割をするため、やはりP1活性を妨害する、10.5Kdポリペプチドを発現させる。したがって、その作用様式は、E3Lに似ている。
【0127】
A18R遺伝子は、2’,5’−オリゴアデニレート経路を妨害する、言い換えればIFN応答性であると考えられる、ヘリカーゼをコードすることが予想される。2’,5’−Aは、ウイルスの翻訳を妨げる役割をするRNAse Lを活性化する。A18Rの発現は、感染細胞における2’,5’−Aレベルを低下させると考えられる。
【0128】
補体。ワクシニアのB5R遺伝子産物は、代替補体経路の制御因子であるH因子に非常に関連があることは周知である。古典的経路とは違って、この経路は、抗原のみによって活性化される。したがって、B5R遺伝子産物は、代替補体経路を妨害することが可能である。
【0129】
C21L遺伝子は、ヒトにおけるC4b結合タンパク質と次々に関連し、また表面上にC4bを担持する細胞と相互に作用して、CR1補体受容体への結合を妨げる。
【0130】
可溶性サイトカイン受容体。ワクシニアWR B15R遺伝子(コペンハーゲン株ワクシニアにおけるB16R)の産物は、IL 1−Rに関連している。
【0131】
WR遺伝子ORF SalF19R、コペンハーゲン株ワクシニアにおけるA53Rは、TNF受容体をコードする。しかし、野生型ウイルスでは、これらの遺伝子は両者とも、ORFが断片化されているため不活性であると考えられる。
【0132】
B8R遺伝子は、可溶性IFN−γ受容体をコードし、ウイルスにまた別のIFN回避機構を提供すると考えられる。
【0133】
炎症。多数の遺伝子が、ウイルス感染に対する炎症反応の防止に関与していると考えられる。これらは、A44L、K2L、B13RおよびB22Rを包含する。
【0134】
本発明の一態様では、組換えポックスウイルスベクターから免疫回避遺伝子の大部分を欠失させる。好ましくは、全ての免疫回避遺伝子を欠失させる。したがって、本発明の一態様では、該組換えポックスウイルスベクターは、K3Lインターフェロン抵抗性タンパク質遺伝子が中断されているか欠失している組換えMVAベクターである。
【0135】
好ましいのは、所期の対象に無害のポックスウイルスである。したがって、たとえば、ヒトで使用する場合、ポックスウイルスは、アヴィポックスウイルスのように宿主範囲限定的であるか、さもなければワクシニアの弱毒化株(NYVACおよびMVAを含む)等の弱毒化されているかのいずれかが好ましい。最も好ましいのは、弱毒化ワクシニアウイルス株であるが、既存の天然痘免疫を有する対象では、非ワクシニア株が有効に使用される。
【0136】
相同組み換えをさせるために、MVAゲノム内の天然の欠失、たとえば欠失IIに、隣接したMVA DNA配列に挟まれた5T4エピトープをコードする少なくとも1つの核酸含有する構築物を、MVAに感染した細胞に導入する。
【0137】
いったん該構築物を真核細胞に導入して、5T4エピトープDNAをウイルスDNAと組み換えたら、好ましくは、マーカーの助けを借りて、所望の組換えワクシニアウイルスを単離する(Nakanoら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 79,1593−1596[1982年]、Frankeら、Mol.Cell.Biol.1918−1924[1985年]、Chakrabartiら Mol.Cell.Biol.3403−3409[1985年]、Fathiら、Virology 97−105[1986年])。
【0138】
挿入される構築物は、線状であっても円形であってもよい。円形のDNA、特にプラスミドが好ましい。該構築物は、MVAゲノム内の天然の欠失、たとえば欠失IIの左側および右側に隣接する配列を含む(Altenburger,W.,Suter,C.P.およびAltenburger J.(1989年) Arch.Virol.105,15−27)。外来のDNA配列は、天然の欠失を挟む配列の間に挿入される。
【0139】
少なくとも1つの核酸を発現させるためには、核酸の転写に必要な調節配列が、核酸の上流に存在することが必要である。このような調節配列は、当業者に周知であり、たとえば、EP−A−198,328号に記載のワクシニア11kDa遺伝子のもの、および7.5kDa遺伝子のもの(EP−A−110,385号)などがある。
【0140】
構築物は、トランスフェクションによって、たとえばリン酸カルシウム沈降を用いて(Grahamら、Virol.52,456−467[1973年];Wiglerら、Cell 777−785[1979年])、エレクトロポレーションを用いて(Neumannら、EMBO J.1,841−845[1982年])、マイクロインジェクションを用いて(Graessmannら、Meth.Enzymology 101,482−492(1983年))、リポソームを用いて(Straubingerら、Methods in Enzymology 101,512−527(1983年))、スフェロプラストを用いて(Schaffner,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77,2163−2167(1980年))、または当業者に周知の他の方法で、MVA感染細胞に導入することができる。リポソームを用いたトランスフェクションが好ましい。
【0141】
本発明の組換えプライミングベクターおよびブースターベクターは、哺乳動物のある特定の細胞型に対して親和性を有することが可能である。例として、本発明の組換えベクターは、樹状細胞およびマクロファージ等の、専門のAPCを感染させるように操作することができる。樹状細胞は、奏功する免疫応答、とりわけ細胞を介した応答の編成者であることは周知である。樹状細胞を、抗原またはこのような標的抗原を含むウイルスベクターでex vivo処理し、同系の動物またはヒトに注入すると、有効な免疫応答が誘導されることが証明されている(Ncstlc FOら、ペプチド−または腫瘍溶解物でパルス処理した樹状細胞による、メラノーマ患者のワクチン接種(Vaccination of melanoma patients with peptide- or tumorlysate-pulsed dendritic cells),Nat Med.1998年3月;4(3):328-32、およびKim CJら、MART−l/Melan Aをコードするポックスウイルスに感染した樹状細胞は、in vitroでTリンパ球を感作する(Dendritic cells infected with poxviruses encoding MART-l/Melan A sensitize Tlymphocytes in vitro.)J Immunother.1997年7月;20(4):276-86)。該組換えベクターは、腫瘍細胞も感染させることができる。あるいは、該組換えベクターは、哺乳動物の細胞を感染させることができる。
【0142】
ベクターの他の例としては、ex vivo送達システムなどが挙げられ、エレクトロポレーション、DNA微粒子銃、脂質仲介トランスフェクションおよびコンパクトDNA仲介トランスフェクション等の、DNAトランスフェクション方法を包含するが、それらに限定されない。
【0143】
ベクターは、プラスミドDNAベクターであってもよい。本明細書で使用されるとき、「プラスミド」は、異種DNAの発現または複製のために、それを細胞内に導入するために使用される不連続のエレメントを指す。このような媒体の選択および使用は、十分に、熟練者の技術の範囲内である。
【0144】
[パルス処理細胞]
本発明は、本発明の第1の態様のペプチドでパルス処理した細胞も提供する。
【0145】
好ましくは、パルス処理される細胞は、MHCクラスIまたはクラスIIを発現することができる。
【0146】
MHCクラスI分子は、ほぼ全ての細胞型上に発現させることができるが、MHCクラスII分子の発現は、いわゆる「専門の」抗原提示細胞(APC);B細胞、樹状細胞およびマクロファージに限定される。しかし、MHCクラスIIの発現は、IFNγで処理することにより、他の細胞型上で誘導することができる。
【0147】
MHCクラスIまたはMHCクラスII分子の発現は、また、遺伝子操作(すなわち当該MHC分子をコードする遺伝子を、パルス処理される細胞に提供すること)によって達成することもできる。この手法は、該ペプチドに特異的に結合する適切なMHCハプロタイプを選択できるという利点を有する。
【0148】
好ましくは、パルス処理される細胞は、抗原提示細胞で、すなわち正常な免疫応答で、MHC分子と共に、抗原をプロセッシングし、それを細胞表面に提示することができる細胞である。抗原提示細胞としては、B細胞、マクロファージおよび樹状細胞などがある。特に好ましい実施形態では、該細胞は樹状細胞である。
【0149】
好ましくは、該細胞は、本発明の第1の態様によるペプチドを、そのペプチド結合溝で結合するMHC分子を発現することができる。たとえば、該細胞は、下記のHLA制限要素:B8、Cw7またはA2(MHCクラスIの場合)の1つを発現することが可能である。
【0150】
ペプチドパルス処理プロトコールは、当技術分野で周知である(たとえばRedchenko and Rickinson(1999年)J.Virol.334−342;Nestleら、(1998年) Nat.Med.4 328−332;Tjandrawanら、(1998) J.Immunotherapy 21 149−157参照)。たとえば、樹状細胞にペプチドをロードするための標準プロトコールでは、無血清媒体中で、3μg/mlのβ−2ミクログロブリンを含む50μg/mlのペプチドと共に細胞を2時間インキュベートする。次いで、未結合ペプチドを洗い落とす。
【0151】
本発明のパルス処理細胞は、たとえば予防的または治療的抗−5T4免疫応答を刺激するために、ワクチンとして使用することが可能である。
【0152】
したがって、本発明は、ペプチドパルス細胞を、それを必要としている対象に投与するステップを含む、疾患を治療および/または予防するための方法も提供する。
【0153】
[ワクチン/医薬組成物]
本発明は、本発明の既述の態様によるペプチドエピトープ、ポリエピトープ列、核酸配列、ベクターシステムおよび/または細胞を含むワクチン/医薬組成物も提供する。
【0154】
ワクチン/医薬組成物は、予防向けであっても治療向けであってもよい。
【0155】
ワクチンは、液体溶液または懸濁液のいずれかとして、注射可能液として調製することができる;注射の前に、液体に溶解または懸濁するのに適した固体剤形も調製することが可能である。調合物は、乳化されていてもよく、またはリポソーム内に封入されたタンパク質であってもよい。有効な免疫原性成分は、薬学的に許容でき、かつ有効成分と相容性である、賦形剤と混合される場合が多い。適当な賦形剤は、たとえば、水、食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等々およびそれらの組合せである。
【0156】
さらに、必要に応じて、ワクチンは、少量の補助物質、たとえば湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤、および/またはワクチンの効果を高めるアジュバントを含んでもよい。有効な可能性があるアジュバントの例としては、水酸化アルミニウム、N−アセチル−ムラミル−L−スレオニル−D−イソグルタミン(thr−MDP)、N−アセチル−ノル−ムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミン(CGP 11637、ノルMDPと呼ばれる)、N−アセチルムラミル−L−アラニル−D−イソグルタミル−L−アラニン−2−(1’−2’−ジパルミトイル−sn−グリセロ−3−ヒドロキシホスホリルオキシ)−エチルアミン(CGP 19835A、MTP−PEと呼ばれる)、および、細菌から抽出された3成分、モノホスホリル脂質A、トレハロース・ジミコレートおよび細胞壁骨格(MPL+TDM+CWS)を2%スクアレン/トゥウィーン(Tween)80エマルジョン中に含む、RIBIなどがあるが、このれらに限定されない。
【0157】
アジュバントおよび他の薬剤のさらなる例としては、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム(alum)、硫酸ベリリウム、シリカ、カオリン、炭素、油中水乳濁液、水中油乳濁液、ムラミルジペプチド、細菌内毒素、脂質X、コリネバクテリウム・パルヴム(Corynebacterium parvum)(プロピオノバクテリウム・アクネス(Propiorobacterium acres))、百日咳菌(Bordetella pertussis)、ポリリボヌクレオチド、アルギン酸ナトリウム、ラノリン、リゾレシチン、ビタミンA、サポニン、リポソーム、レバミゾール、DEAE−デキストラン、ブロックト・コポリマーまたは他の合成アジュバントなどがある。このようなアジュバントは、様々な供給元から市販されている。たとえば、メルック・アジュバント(Merck Adjuvant)65(ニュージャージー州レールウェイにあるメルク・アンド・カンパニー・インコーポレーティッド(Merck and Company,Inc.,Railway,NJ.))またはフロイント不完全アジュバントおよび完全アジュバント(ミシガン州デトロイトにあるディフコ・ラボラトリーズ(DifcoLaboratories,Detroit,Michigan))。
【0158】
一般に、アムフィジェン(Amphigen)(水中油)、アルヒドロゲル(水酸化アルミニウム)、またはアムフィジェンとアルヒドロゲルとの混合物等のアジュバントが使用される。水酸化アルミニウムが、ヒト向けに認可されている。
【0159】
免疫原とアジュバントとの比率は、両者がともに有効量で存在する限り、広範囲にわたって様々であってもよい。たとえば、水酸化アルミニウムは、ワクチン混合物の約0.5%の量で存在してもよい(Al2O3ベース)。好都合なことに、ワクチンは、0.2〜200μg/ml、好ましくは5〜50μg/ml、最も好ましくは15μg/mlの範囲の最終免疫原濃度を含有するように製剤化される。
【0160】
調合後、ワクチンを滅菌容器に組み入れ、次いで密閉し、低温、たとえば4℃で保存してもよく、または凍結乾燥してもよい。凍結乾燥は、安定した形態での長期保存を可能にする。
【0161】
ワクチンは、便利な方式、たとえば経口、静脈内(水溶性の場合)、筋内、皮下、鼻腔内、皮内または坐剤経路で、または埋め込み(たとえば徐放分子を使用)で、投与することができる。
【0162】
ワクチンは、たとえば、皮下または筋内のいずれかに注射することにより、便利に非経口的に投与される。他の投与モデルに適するさらなる調合物としては、坐剤、および場合によって、経口用製剤などがある。坐剤の場合、従来の結合剤および担体、たとえば、ポリアルキレングリコール類またはトリグリセリド類を含んでもよく、このような坐剤は、0.5〜10%、好ましくは1〜2%の範囲の有効成分を含む混合物から作ることが可能である。経口製剤は、たとえば、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム等々の通常使用されている賦形剤を含む。これらの組成物は、溶液剤、懸濁剤、錠剤、ピル剤、カプセル剤、徐放製剤、粉剤の形態をとり、また10〜95%の有効成分、好ましくは25〜70%の有効成分を含む。ワクチン組成物を凍結乾燥する場合、凍結乾燥された材料を、投与前に、たとえば懸濁液として、再構成することが可能である。再構成は、緩衝溶液で行うことが好ましい。
【0163】
患者に経口投与するためのカプセル剤、錠剤およびピル剤に、たとえば、オイドラギット(Eudragit)「S」、オイドラギット(Eudragit)「L」、酢酸セルロース、酢酸フタル酸セルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースを含む、腸溶性被膜を施すことが可能である。
【0164】
5T4ペプチドは、中性形または塩形として、ワクチに製剤化することが可能である。薬学的に許容し得る塩としては、酸付加塩(ペプチドの遊離アミノ基によって形成される)、および、たとえば、塩酸またはリン酸等の無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸及びマレイン酸等の有機酸によって形成されるものなどがある。遊離カルボキシル基によって形成される塩類は、たとえば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄等の無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2−エチルアミノエタノール、ヒスチジンおよびプロカインのような有機塩基から誘導することも可能である。
【0165】
[異種ワクチン接種投与計画]
本発明によるワクチン/医薬組成物の投与計画は、従来の効力テストにより決定することができる。しかし、特に好ましいのは、経時的プライミングステップおよび追加免疫ステップを含む投与計画である。このような投与計画は、免疫寛容の並外れた破壊およびT細胞応答の誘導を達成することが確認されている(Schneiderら、1998年、Nat Med 4:397−402)。
【0166】
プライミング−ブースト投与計画は、同種(その後の投与で同一組成物が投与される)であってもよく、または異種(プライミング組成物とブースト組成物が異なる場合)であってもよい。たとえば、プライミング組成物は、5T4抗原をコードする非ウイルスベクター(たとえば、プラスミド)であってもよく、ブースト組成物は、5T4抗原をコードするウイルスベクター(たとえば、ポックスウイルスベクター)であってもよく、上記「5T4抗原」のいずれかまたは両者は、本発明のエピトープまたはポリエピトープ列である。
【0167】
[診断方法]
本発明は、本発明によるペプチドおよび/またはこのようなペプチドをコードする核酸配列に特異的に結合することができる薬剤も提供する。
【0168】
薬剤の、本発明のペプチド/核酸配列への結合と、別のペプチド/核酸配列への結合との間に、10倍より大きい差がある場合、好ましくは25、50または100倍の差がある場合、薬剤は、本発明のペプチド/核酸配列に「特異的に結合する」と考えられる。
【0169】
該薬剤は、ペプチドおよび/または核酸配列に特異的に結合することができる任意の化合物であってもよい。用語「化合物」は、化学的化合物(天然または合成の)、たとえば生物高分子(たとえば、核酸、タンパク質、非ペプチド、または有機分子)、または細菌、植物、真菌、または動物(特に哺乳類)細胞または組織等の生体物質から作られる抽出物、または無機元素または分子さえも指す。
【0170】
好ましくは該薬剤は、候補化合物のライブラリーをスクリーニングすることにより特定することができる。化合物のライブラリーは、各ウェルに異なる被験化合物が入った、マルチウェルプレート(たとえば、96ウェルプレート)でスクリーニングすることが可能である。特に、候補化合物のライブラリーは、組合せライブラリーであってもよい。ランダム配列オリゴヌクレオチド、ポリペプチド、または合成オリゴマーの様々な組合せライブラリーが提案されており、多数の小分子ライブラリーも開発されている。オリゴマーの組合せライブラリーは、所望のオリゴマーサイズ(一般にヘキサペプチドまたはヘプタペプチド)に達するまで、異なるサブユニットの混合物を、成長中のオリゴマーまたは親化合物に段階的に加える、様々な液相法または固相法で形成することが可能である。たとえば、試薬の多項選択を、各補足的サブユニットステップと合併することによって、ますます複雑になるライブラリーをこの方式で作成することができる。あるいは、ライブラリーは、ライブラリーを形成する異なる配列のオリゴマーを含むビーズを交互に混合して分離し、各ステップで、選択された数のサブユニットの1つを、分離されたビーズの各群に加える、固相合成法で作成することが可能である。ライブラリーは、組合せライブラリーを含めて、製薬会社および専門ライブラリー業者から市販されている。
【0171】
薬剤が、本発明による核酸を認識する場合、該薬剤は、アンチセンス配列を含んでもよい。
【0172】
薬剤が、本発明によるペプチドを認識する場合、該薬剤は、MHC分子またはペプチド結合溝を含むその一部を含んでもよい。あるいは、該薬剤は、抗ペプチド抗体を含んでもよい。
【0173】
本明細書で使用されるように、「抗体」は、完全な免疫グロブリン分子またはその一部、あるいはバイオアイソスターまたはその模倣物またはその誘導体またはその組合せを含む。その一部の例としては、Fab、F(ab)’2、およびFvなどが挙げられる。バイオアイソスターの例としては、一本鎖Fv(ScFv)断片、キメラ抗体、二官能性抗体などが挙げられる。
【0174】
用語「模倣物」は、ペプチド、ポリペプチド、抗体または抗体と同じ結合特異性を有する他の有機化学物質であってもよい任意の化学物質に関する。
【0175】
用語「誘導体」は、抗体と関連して本明細書で使用されるとき、抗体の化学的修飾を含む。このような修飾の具体例は、アルキル、アシル、またはアミノ基による水素の置換であろう。
【0176】
完全な免疫グロブリン分子は、抗原と相互に作用する結合(Fab)ドメインおよび食作用等のプロセスの開始を信号で知らせるエフェクター(Fc)ドメインの、2つの領域に分けられる。各抗体分子は、2種のポリペプチド鎖、軽(L)鎖および重(H)鎖からなる。1つの抗体は、L鎖の全く同じ2つのコピーおよびH鎖の全く同じ2つのコピーを有する。各鎖に由来するN末端ドメインは、抗原−結合部位を構成する可変領域を形成する。C末端ドメインは、定常領域と呼ばれる。H(VH)鎖およびL(VL)鎖の可変領域はFv単位を構成し、また密接に相互に作用して一本鎖Fv(ScFv)単位を形成することができる。ほとんどのH鎖に、ヒンジ領域が存在する。このヒンジ領域は可動性であり、Fab結合領域は、分子の残りに比して自由に動くことができる。ヒンジ領域はまた、抗体を、抗原結合部位(Fab)とエフェクター(Fc)領域に分割することができるプロテアーゼの作用に最も敏感な分子上の場所である。
【0177】
抗体分子のドメイン構造は、タンパク質操作に好都合であり、抗原結合活性(FabおよびFv)またはエフェクター機能(Fc)を有する機能的ドメインの分子間の交換を容易にする。抗体の構造はまた、毒素、リンパ球または成長因子等の分子に結びついた抗原認識能を有する抗体の産生も容易にする。
【0178】
キメラの抗体技術は、完全なマウス抗体可変領域ドメインの、ヒト抗体定常領域上への移植を含む。キメラ抗体は、マウス抗体より免疫原性が低いが、抗体特異性を保持し、低下したHAMA応答を示す。
【0179】
キメラ抗体では、可変領域は完全にネズミのものを保持している。しかし、抗体の構造は、主としてヒトに起源がある比較可能な特異性を有する可変領域の産生を可能にする。抗体の抗原結合部位は、重鎖および軽鎖の可変部分の6つの相補性決定領域(CDR)から形成される。各抗体ドメインは、β鎖を接続するループが付いたβバレルを形成する7つの逆平行のβシートからなる。ループの中にはCDR領域がある。これは、蓋然性の高い、CDRおよびそれらの付随する、アンカーのβバレルによる特異性である。これは、CDR移植と呼ばれる。CDR移植抗体は、初期の臨床試験では、マウス抗体またはキメラ抗体ほど強い免疫原性ではないと考えられる。さらに、いわゆるヒト化抗体で、それらの結合活性を高めるために、CDRの外で突然変異が行われる。
【0180】
ポリペプチドリンカーで結合した、Fab、Fv、ならびにVHおよびVLを含む一本鎖Fv(ScFv)断片は、元のモノクローナル抗体に似た抗原に対して特異性および親和性を示す。ScFv融合タンパク質は、アミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかに付着した非抗体分子を用いて製造することができる。これらの分子では、適切な抗原を発現する細胞への、付着分子の特異的ターゲティングに、Fvを使用することができる。2つの異なる結合特異性を、一本の抗体鎖内に操作することにより、二官能性抗体も作り出すことができる。二官能性Fab、FvおよびScFv抗体は、CDR移植ドメインまたはヒト化ドメイン等の、操作したドメインを含んでもよい。
【0181】
ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、およびそれらの誘導体を同定、特性決定、クローニング、および操作する手順は、たとえばマウスまたはトランスジェニックマウスに由来するハイブリドーマ、ファージ提示ライブラリーまたはscFvライブラリーを使用して、完全に確立されている。免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子をコードする遺伝子は、様々な異種発現系で発現させることができる。免疫グロブリンを含む、大きいグリコシル化タンパク質は、真核細胞、特に哺乳類細胞から効率よく分泌されて集められる。小さい、非グリコシル化断片、たとえば、Fab、Fv、またはscFv断片は、哺乳類細胞または細菌細胞で、機能的な形で産生させることができる。
【0182】
該薬剤は、本発明のペプチド/核酸を単独で、すなわち、別の化合物の協力なしで、認識することができる。たとえば、該薬剤は、MHC分子によって提示されたとき、本発明のペプチドに特異的に結合できる可能性がある。この場合、本発明の薬剤は、T細胞受容体分子またはその一部を含んでもよい。
【0183】
T細胞受容体は、別の分子、たとえばCD4(MHCクラスIIエピトープの場合)またはCD8(MHCクラスIエピトープの場合)と結合している可能性がある。あるいは、または加えて、該受容体は、CD3と結合している可能性がある。
【0184】
該薬剤が、生まれつき人体に存在するのであれば、好ましくは、本発明の薬剤は、実質的に単離された形である。
【0185】
本発明は、本発明のペプチド、核酸または薬剤が、対象に存在することを検出するステップを含む方法も提供する。
【0186】
好ましい実施形態において、本方法は、MHC分子と協力して、本発明によるペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞の存在を検出するために使用される。
【0187】
診断方法は、たとえば、対象における、疾患の診断または進行のモニターのためであってもよく、あるいは免疫応答のモニターのためであってもよい。
【0188】
上述の通り、免疫応答が進行するにつれて、特定のエピトープの優性が変化する可能性があり、亜優性エピトープが優位を占めることがある。したがって、ある特定のエピトープ、またはこのようなエピトープを認識することができるTCR/T細胞の存在を検出することによって、免疫応答の進行に関する情報を得ることができる。
【0189】
この方法は、in vivoで実行してもよく、またはより好ましくは、ex vivoサンプルで実行してもよい。
【0190】
したがって、
(i)対象からサンプルを単離するステップと、
(ii)MHC分子と協力して、本発明によるペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞の存在を、ex vivoにてサンプルで検出するステップと
を含む診断方法も提供する。
【0191】
好ましい実施形態では、該方法は、がん疾患の診断または進行をモニターするためである。
【0192】
該方法の性質は、本発明のペプチド、核酸または薬剤が検出されるかどうか(および薬剤である場合、該薬剤の性質)に依存する。
【0193】
本発明のペプチドを検出するために、本発明の薬剤(たとえば抗体またはMHC分子)を使用することが可能である。抗体を用いたスクリーニング方法(たとえばELISA、免疫ブロット、ウエスタンブロッティング、競合アッセイ、二部位捕捉アッセイ)は、当技術分野で周知である。
【0194】
ペプチドまたは特異的T細胞を検出するために、抗原提示アッセイを使用することが可能である。T細胞が、MHC:ペプチド複合体を首尾よく認識すると、T細胞は刺激される。この刺激は、T細胞の増殖(たとえば3Hの取り込みによる)および/またはT細胞によるサイトカイン類の産生(たとえばELISPOTアッセイによる)によって、モニターすることができる。したがって、適切なAPCおよびT細胞系を使用することによって、特異的ペプチドの存在を検出することが、また、適切なAPCおよびペプチド/抗原を使用することによって、特異的T細胞の存在を検出することが、可能である。
【0195】
蛍光活性化細胞走査(FACS)を使用して、ある特定の細胞表面分子(たとえば、TCRまたはMHC分子)の存在を調査することができる。
【0196】
該方法が核酸の存在を検出することである場合、PCR、サザンブロッティング(DNA用)およびノーザンブロッティング(RNA用)等の多数の方法が、当技術分野で知られている。
【0197】
[T細胞]
本発明は、T細胞、たとえば、MHC分子と協力して、本発明によるペプチドエピトープを特異的に認識することができる、T細胞クローン、またはT細胞系にも関する。T細胞系およびクローンを生じさせるための幾つかの方法が、当技術分野で知られている。T細胞系を生じさせるための一法は下記の通りである:
【0198】
マウスに、初回抗原投与し(通常は、足蹠後方の皮下に)、流入領域リンパ節(この場合、膝窩および鼠径)を1週間後に除去し、抗原および同系の支持細胞、すなわち同一近交系のマウス由来の細胞(たとえば正常な胸腺細胞または脾細胞)との共培養を開始した。4日後、リンパ芽球を単離し、IL−2を用いて増殖させた。細胞集団が十分に増加したとき、これを、抗原およびMHC特性についてリンパ球形質転換テストでテストし、抗原処理支持細胞上での培養と、IL−2含有培地中での培養との、交互のサイクルで維持した。
【0199】
決定的なT細胞系列マーカーは、T細胞受容体(TCR)である。現在、2種類のTCRが確定されており、両者とも、ジスルフィド連結した2つのポリペプチドのヘテロダイマーである。1種は、α鎖およびβ鎖からなり、他種はγ鎖およびδ鎖からなる。血液T細胞のおよそ90〜95%は、α/β TCRを発現し、残りの5〜10%は、γ/δ TCRを発現する。
【0200】
T細胞は、全く異なる2集団:CD4マーカーを担持しており、主として免疫応答を「助ける」または「誘導する」サブセット(TH)と、CD8マーカーを担持しており、大部分は細胞障害性であるサブセット(Tc)に、分けることができる。CD4+T細胞は、MHCクラスII分子と結合しているペプチドを認識し、CD8+T細胞は、クラスI分子と結合しているペプチドを認識するため、CD4またはCD8の存在によって、T細胞が相互に作用できる細胞のタイプが制限される。
【0201】
CD4セットは、機能上、さらに2つのサブセットに細分されている。
(i)T細胞およびB細胞の応答(ヘルパーT細胞機能)にプラスに影響するT細胞はCD29+である。事実上、この集団内の全細胞が、CD45ROと表示される、CD45白血球共通抗原の低分子量アイソフォームも発現する。
(ii)CD8+細胞のサプレッサー/細胞障害性機能(サプレッサー/インデューサー機能)を誘導する細胞は、異なる形のCD45分子、CD45RAを発現する。
【0202】
サイトカイン分泌パターンに関するTHクローンの機能的分析で、機能的多様性も証明されている。CD4+T細胞のTH1サブセットは、IL−2およびIFN−γを分泌し、TH2サブセットは、IL−4、IL−5、IL−6およびIL−10を産生する。TH1細胞は、細胞障害性および局所炎症反応と関連した幾つかの機能を仲介する。その結果として、これらの細胞は、ウイルス、細菌および寄生虫を含む、細胞内病原体と闘うために重要である。TH2細胞は、B細胞を刺激して増殖させ、抗体を産生させる、したがって正常な免疫応答において、自由生活性生物から守る働きをするのに、より有効である。
【0203】
上述のマーカーの全ての発現は、特異的抗体を使用して容易に検出することができ、そのように、FACSを使用して、T細胞のタイプを選択/決定することができる。特定のサイトカイン類の発現も、当技術分野で周知の方法、たとえばELISPOTアッセイで、検出することができる。
【0204】
[予防/治療方法]
本発明は、疾患の予防および/または治療に使用するための医薬の製造における、本発明によるワクチンの使用も提供する。
【0205】
本発明によるワクチンの有効量を投与するステップを含む、被検対象における疾患を治療および/または予防するための方法も提供する。
【0206】
ワクチンの投与により、免疫応答を誘発することが可能である。好ましい実施形態では、ワクチンの投与によって、被検対象における、5T4への免疫寛容が破壊される。
【0207】
該ペプチドがクラスIエピトープである場合、誘発される免疫応答は、5T4特異的細胞障害性Tリンパ球の活性化を含む可能性がある。該ペプチドがクラスIIエピトープである場合、誘発される免疫応答は、TH1および/またはTH2細胞の活性化を含む可能性がある。
【0208】
好都合なことに、該応答は、対象における腫瘍の増殖を抑制、抑止、または逆戻りさせるのに有効な、抗腫瘍免疫治療の応答である。
【0209】
[併用療法]
本発明はさらに、抗5T4抗体等の5T4ターゲティング分子、たとえば、抗5T4scFvの使用にも関する。これらの抗体を使用して、(i)天然または外因性の5T4をin situでターゲットし、および/または(ii)B7.1等の免疫エンハンサ分子を、天然または外因性の5T4にin situで送達することが可能である(Carrollら、(1998年)J Natl Cancer Inst 90(24):1881−7)。これによって、被検対象における5T4の免疫原性が増強する。
【0210】
したがって、本発明は、本発明によるワクチン、および抗5T4抗体、たとえば抗5T4scFvの、逐次使用にも関する。抗5T4scFv抗体は、抗体をコードする裸のDNAとして(たとえば、コードDNAと、その産生を調節するための短いプロモーター領域とを一緒に含むプラスミドの形態で)、コード配列を含む発現ベクター(ウイルスベクターであってもよく、非ウイルスベクターであってもよい)の形態で、またはタンパク質の形態で、投与することが可能である。したがって、本発明は、腫瘍の治療における別々の使用、たとえば逐次使用向けの、5T4ペプチド抗原をコードするベクター、および場合によって免疫刺激分子と融合している5T4を結合することができる薬剤を提供する。
【0211】
さらなる実施形態では、本発明は、酵素/プロドラッグ療法および5T4を用いた免疫療法を含む併用療法を包含する。たとえば、該酵素/プロドラッグ療法は、場合により、レトロウイルスベクターまたはレンチウイルスベクターを使用して送達されるP450の腫瘍内送達または全身性送達、およびシクロホスファミド(CPA)に続く、5T4による全身性免疫療法誘導を含む。
【0212】
したがって、本発明はさらに、腫瘍の治療における、別々の使用向け、同時別々の使用向け、または併用向けの、5T4ペプチド抗原をコードするベクターおよびプロドラッグ/酵素組合せに関する。
【0213】
[疾患]
5T4は、腫瘍関連抗原である。がん細胞上に5T4が存在することは、転移に関連しており、多数の異なるがんの予後の独立した指標であることが証明されている。
【0214】
好ましい実施形態では、(本発明によるワクチンを使用して予防できる/治療できる)疾患は、がんである。特に、該疾患は、たとえば、乳房、肺、胃、膵臓、子宮内膜、子宮頚部、結腸直腸、腎または前立腺のがん腫であってもよい。
【0215】
W0 89/07947号は、抗5T4モノクローナル抗体を使用した、新生物組織の免疫組織化学的スクリーニングについて記述している(表IIおよびVI参照)。好ましくは、疾患は、診断テストによって(たとえば、抗5T4抗体で)5T4陽性であると証明することができるがん、たとえば:ファーター膨大部、乳房、結腸、子宮内膜、膵臓、または胃の浸潤がん腫;膀胱、子宮頚部、肺または食道の扁平上皮がん腫;結腸の腺管絨腺腫、子宮内膜(endometirem)の悪性ミューラー管混合腫瘍、腎臓の明細胞がん腫;肺がん(大細胞未分化、巨細胞がん腫、気管支肺胞がん腫、転移性平滑筋肉種);卵巣がん(ブレンナー腫瘍、嚢胞腺がん、充実性奇形腫);精巣のがん(精上皮腫、成熟嚢胞性奇形腫);軟部組織線維肉腫;奇形腫(未分化胚細胞腫瘍);または栄養芽細胞がん(絨毛がん(たとえば子宮内、肺または脳)、胎盤部位の腫瘍(胞状奇胎)である。
【0216】
[四量体]
本発明は、四量体と関連した(たとえば、四量体に包み込まれた)5T4ペプチドエピトープおよびその使用も提供する。
【0217】
四量体は、抗原特異的T細胞の直接可視化を可能にする蛍光性試薬である(Altmanら(1996年) Science 271,94−96)。四量体は、HLAクラスIタンパク質により再び折り畳まれた個々のペプチドエピトープからなり、また、そのエピトープに特異的であるT細胞に結合する。四量体は、抗原特異的リンパ球の直接定量化を可能にし、ヒトおよびネズミの免疫学に広く応用されてきた。
【0218】
該四量体は、Altmanら(1996年)Science 271,94−96により記述されている方法を使用して、作製することが可能である。簡単に記載すると、四量体は、ビオチニル化タンパク質を、4:1の比率で、ストレプトアビジンPEに加えることにより作製することが可能である。四量体結合細胞は、磁性活性化?胞選別法(MACS)を使用して選択することが可能である。MACSは、Radbruchら、(1994年) Methods in Cell Biology 42,387−403に記載されている。
【0219】
好都合なことに、四量体を使用することにより、見込まれる再注入に向けて、ex vivoで、個々の患者由来の自己CD4+T細胞を精製し、それらを増殖/操作するために;たとえば、結腸直腸および他の5T4陽性がんに罹りやすい対象における診断の指標として;ワクチン接種前、接種中および接種後の、5T4特異的免疫応答の追跡が可能になる。したがって、本発明は、ワクチン接種前、接種中および接種後の、5T4特異的免疫応答をモニターするための、5T4ペプチドエピトープ四量体の使用にも関する。本発明はさらに、個々の患者由来の自己CD4+T細胞を精製するための、5T4ペプチドエピトープ四量体の使用に関する。本発明はそのうえさらに、結腸直腸がん等の5T4陽性がんに罹りやすい対象における診断の指標としての、5T4ペプチドエピトープ四量体の使用に関する。
【0220】
本発明はさらに、単に実例を挙げて説明するために、添付した図が参照される以下の実施例でさらに説明される。
【実施例】
【0221】
[健常なドナーにおける5T4特異的免疫応答]
H5T4は、妊娠期間中に栄養芽細胞上に発現されるが、正常な成人組織上には存在せず、一部の特殊な上皮上に弱く発現するに過ぎない、表面糖タンパク質である。対照的に、H5T4は、多くのヒトがん腫により発現される。その機能は不明であるが、5T4発現と、不幸な臨床予後との間に重要な相関関係がある。原発性5T4陰性腫瘍は、5T4陽性転移を起こすという幾つかの証拠がある。
【0222】
5T4は、自己タンパク質であるため、このタンパク質に特異的なT細胞は、胸腺の発達中に排除されるはずではないかと思うかもしれない。しかし、一部の人々には、低頻度、低親和性の5T4特異的T細胞が存在するという証拠がある。黒色腫に関する広範な研究は、自己組織特異的遺伝子産物に対してよく反応するT細胞を、黒色腫患者および健常者の両者で検出できることを示した。
【0223】
5T4抗原についても同じことがいえるということに基づいて、本発明者は、ex vivoで、5T4特異的T細胞の存在に関する、健常者ドナーの無作為スクリーニングに着手した。
【0224】
[実施例1−5T4ペプチドライブラリーのスクリーニング]
全5T4タンパク質にわたり、かつ8アミノ酸重複する10量体ペプチドからなる、5T4ペプチドライブラリーを、ELISpotアッセイで使用した。
【0225】
他所(Czerkinskyら(1988年)、「ELISAおよび他の固相イムノアッセイの理論的および技術的側面(Theoretical and Technical Aspects of ELISA and Other Solid Phase Immunoassays)」(D.M.Kemeny and SJ.Challacombe,編)217−239ページ、John Wiley & Sons,New York))に記載の通りに、ELISpotアッセイを実施した。簡単に説明すると、ヒストペイク(Histopaque)−1077を使用して、PBMCを分離し、インターフェロン捕獲抗体で覆ったPVDF96ウェルプレートのウェル当たり5×105細胞の濃度でプレーティングした。10ペプチドのプールを、20μg/mlの最終濃度で各ウェルに加えた。MSOおよびPHAが入ったウェルが、それぞれ、ネガティブコントロールおよびポジティブコントロールの役割をした。また、インフルエンザペプチドをポジティブコントロールとして含めた。O/Nインキュベーション後、プレートをPBS−Tweenで洗浄し、および第2段階(second−step)抗体を加えた。スポットの数を解剖顕微鏡で数えた。
【0226】
5T4ペプチドライブラリーと比較して試験した健常な血液ドナー20例のうち1例、OB8が、ペプチドプール#8に陽性反応を示した。5T4ペプチドプール8に暴露したPBMCは、5×105細胞当たり5個のスポットを生じさせたのに対して、他のペプチドプールに反応したスポットはなかった(図1A)。Fluペプチドに対する応答をポジティブコントロールとして使用した。ELISpotアッセイより前の、PBMCのCD4枯渇は、応答を有意に増幅し(5×105PBMC当たり37スポット)、IFNγ産生は、CD8+T細胞が仲介するという結論にいたった(図1B)。
【0227】
ペプチドプール#8を分析し、ドナーOB 8に由来する全PBMCおよびCD4枯渇PBMCを使用して、個々のペプチドを、ELISpotで同様にテストし、IFNγ−p77の分泌誘導に関与した5T4内の1つのエピトープ−ペプチド、PLADLSFAFを同定することができた(図2)。
【0228】
[実施例2−OB8T細胞の5T4特異性のテスト]
同定したエピトープをさらに特性決定するために、このドナーから、EBV−形質転換B細胞系を確立した。ドナーOB8のHLAクラスI型は、HLA A1,2 B8,44 C5,7と同定された。
【0229】
OB8由来のPBMCを、p77パルス処理した自己DCと共に同時培養することによって、ペプチド77特異的T細胞をin vitroで増殖させた。自己DC+p77で週に一度ずつ、3回刺激した後、結果として生じたポリクローナルT細胞系を、特異的反応性の存在について、CTLアッセイでテストした(図3)。OB8 T細胞は、MVA−LacZ感染標的のバックグラウンド死滅以上に、MVAベクターから全5T4抗原を発現するHLA適合CMC LCLを認識した。
【0230】
p77パルス処理した自己LCLを使用して、限界希釈によるクローニングにより、ポリクローナルT細胞系からT細胞クローンを生じさせた。2mlのウェル内でこのクローンを増殖させ、次いで、51Cr放出アッセイで、特異的反応性についてテストした。自己LCL、未処理、p77パルス処理、TroVax感染、および対照のベクターを標的として使用した。テストしたクローンの約35%が、MVAベクターからLCLで内生的に発現される全抗原に特異的であった。CTLアッセイの代表的な結果を図4に示す。
【0231】
細胞溶解性クローンおよび非細胞溶解クローンの両者を、IFNγ産生についてELISpotでテストした。非細胞溶解クローンの一部は、p77をロードし、TroVaxに感染したLCLによる刺激に反応して、IFNγを産生した。IFN産生レベルは、バックグラウンドと比較した相対的単位で示してある(図5)。
【0232】
[実施例3−p77エピトープに関するHLA制限要素の同定]
次のステップは、エピトープ−ペプチドのHLA制限要素を決定することである。p77をロードした1つまたは2つのHLA対立遺伝子で適合するLCLを、ELISpotアッセイでAPCとして使用した。
これはAPCとして使用したLCL団である:
【表4】
【0233】
p77をロードしたLCL IM17およびLCL IM119は、OB8 CTLによるIFNγ産生を誘発しなかったため、HLA A1,A2,B44およびC5対立遺伝子を該エピトープの制限要素として除外する。他のLCLによって誘導された応答の強さは、下記の通りに特性決定することができる:
自己LCL>CMC LCL>IM108 LCL>CD LCL
【表5】
【0234】
自己および2つのB8適合LCLをasAPCとして使用したとき、p77が強程度から中程度の応答を誘導したことから、該エピトープは、B8対立遺伝子を介して提示される可能性が高いという結論にいたった。しかし、Cw7でマッチしたCD LCLも、同様に弱い応答を誘導したため、このペプチドは、Cw7対立遺伝子によっても提示される可能性もある。
【0235】
[実施例4−最小エピトープの同定]
HLA B8−制限5T4エピトープを最小限にするために、元のp77の短いバージョンまたは長いバージョンを提示するペプチドを合成した。51Cr放出アッセイで個々のペプチドをロードしたLCLに対して、CTLアッセイにより、多数のクローンをテストした。テストしたクローンの1つが、9量体のペプチドを認識したが、他の5つのペプチドをロードしたLCLの死滅がみられなかった。このことから、c5が、最小エピトープに相当するという結論に達した(図6)。
【0236】
1年後に同一ドナーから血液サンプルを入手し、確定された最小エピトープペプチドc5を使用して、同様に、ポリクローナルT細胞系を新規に生じさせて、DCをロードした。週に一度ずつ4回刺激した後、増殖中の細胞集団を、51Cr放出アッセイおよびELISpotアッセイでテストした。51Cr放出アッセイの標的およびELISpotアッセイのAPCとして、以下のLCLを使用した:自己LCL、IM 17 LCL(HLA A1,2 B13,44 C5,6)およびGS LCL(HLA A2,29 B7,44, C7,16)。CTLは、c5ペプチドをロードした自己LCLを強く認識し、70%の死滅レベルに達した。先の実験で確認された通り、該ペプチドでパルス処理したIM17 標的の認識はなかった。しかし、c5ペプチドをロードしたGS LCLは、OB8 CTLによって死滅したものの、死滅レベルは低かった(図7)。細胞障害性アッセイの結果は、ELISpotデータと相関関係があった(図8)。
【0237】
総合すると、以上のことから、
・いずれの確定された5T4エピトープも、HLAB8対立遺伝子によって提示され、またCw7対立遺伝子によって交差提示される、
・または、Cw7対立遺伝子のみによって提示され、この場合、Cw7適合同種異系(allogeneic)LCLの弱い認識は、それらが異なるCw7サブタイプのものであることに起因する、
という結論にいたる。
【0238】
Cw7対立遺伝子は、その主たるアンカーモチーフに関して、他ほど広範に特性決定されていない。しかし、3位のアラニンは、Cw7対立遺伝子を、最も可能性の高いエピトープ制限要素にするモチーフの1つとして記述されている(Marsh S.Parham P.Barber L The HLA Facts Book,Academic Press,2000年)。
【0239】
この問題点は、唯一のHLA対立遺伝子、B8またはCw7を発現する細胞系を、51Cr放出アッセイにおける標的および/またはELISpotアッセイにおけるAPCとして使用することによって、明確にした。
【0240】
[実施例5−5T4を発現するDCによるCD8+細胞のin vitro刺激]
本発明者は、専門のAPCである樹状細胞(DC)が、健常なドナーにおける5T4特異的IRを、in vitroでプライミングできることも証明した。この目的のために、HLA A2−陽性の健常なドナー(HD123)由来のPBMCを、ネガティブ選択により、CD8+T細胞について濃縮した。IDM技術に準拠して増殖させた自己DCを、TroVaxに感染させ、それぞれのCD8+T細胞に加えて、マイクロ培養を確立した。TroVax感染DCによる週に一度の再刺激を3〜5巡した後、結果として得られたT細胞マイクロ培養を、標的細胞としての5T4を発現する組換えアデノウイルスに感染した自己DCに対して、5T4特異的CTLの存在について、Cr放出アッセイでテストした。CTLアッセイを実行する前に、標的細胞における、アデノウイルスベクターからの5T4の発現をテストした(図9)。抗5T4抗体を使用したFACS分析は、(5T4をコードする組換えアデノウイルスに感染した)DCの75%が、5T4を発現することを示した。
【0241】
3回のIVS後、T細胞マイクロ培養の一部は、弱い(約12〜15%)自己標的細胞の5T4特異的死滅を示した。これらのT細胞を、IFNγ産生について、ELISpotでテストした。上述の通り、アデノウイルスベクターから全タンパク質を発現し、かつ5T4ペプチドプールをロードした自己DCを、刺激細胞として使用した。一部のT細胞マイクロ培養は5T4陽性であり、Ad.5T4に感染したDCに反応して、103細胞当たり130スポットを生じた。これらのT細胞も、ペプチドプール14の5T4に陽性であった(103細胞当たり92スポット)。この1つのペプチドプール#14は、T細胞によるIFNγ分泌を誘導するものであると確認された(図10)。
【0242】
4回のIVS後、ELISpotアッセイを繰り返して、類似した結果を得た。プール14を構成する個々の10量体ペプチドを、このアッセイに含め、2つの隣接するペプチド、pl4.2およびpl4.3が、陽性反応を誘導すると確認された(図11)が、pl4.3によって誘導された応答は有意に強かった(図12)。さらに2つのT細胞マイクロ培養をELISpotで同様にテストし、2つのマイクロ培養のうち1つが、同じpl4.3でIFNγ産生を誘導し、5T4特異的であると考えられた。総合すると、これらのデータから、pl4.3は、5T4抗原内の自然にプロセシングされるCD8T細胞エピトープであることが示唆される。
【0243】
HLA A2対立遺伝子が、同定されたエピトープの要素を制限している可能性をテストするために、本発明者は、pl4.3によるペプチド感作の前に、抗HLA A2抗体で前処理した自己DCを標的細胞として使用して、Cr放出アッセイを実施した。より詳細に説明すると、3つのT細胞マイクロ培養、C8、C11およびE5を、ペプチド14.2および14.3でパルス処理した標的に対して、51Cr放出アッセイでテストした。ペプチド14.3は、3つのT細胞マイクロ培養全てに認識され、およびC11 T細胞のみが、pl4.2ロード標的を低レベルで死滅させた。pl4.3でパルス処理する前に、抗HLA A2 AbでDCを前処理したとき、T細胞によるそれらの認識は抑制された。これらの結果から、pl4.3は、確かにHLA A2 対立遺伝子によって提示されることが証明される(図13)。
【0244】
6ヵ月後、同一ドナー由来の血液サンプルを入手した。5T4特異的応答が一次応答であることを確認するために、CD45RA発現に基づいて、CD8+T細胞をナイーブT細胞とメモリーT細胞に分けた。全CD8+T細胞、CD8+CD45RA+T細胞およびCD8+CD45RA−T細胞から、T細胞マイクロ培養を開始した。TroVax感染DCで週に1度の刺激を5巡した後、上述の通りに、51Cr放出アッセイで、T細胞マイクロ培養をテストした。CD45RA−から作成したT細胞マイクロ培養の中で、細胞が細胞障害性であったものは皆無であったが、全CD8+T細胞およびCD45RA+CD8+T細胞の両者は、5T4特異的集団を生じさせ、5T4特異的免疫応答が、in vitroでプライミングされたことが証明される。これらのT細胞培養を使用して、ドナーOB8の場合に実施した通りに、10量体ペプチド内の最小エピトープを同定した。14.3および14.2ペプチドをロードした自己LCLを使用し、14.3および14.2の短いバージョンを提示する3他のペプチドをアッセイに含めて、51Cr放出アッセイを実施した(図14)。結合予測アルゴリズムによれば、9量体のペプチド#3は、一次アンカー残基として、2位にロイシンおよび9位にバリンを有する、HLA A2制限最小エピトープの最強の候補者である。しかし、我々の予想に反して、元のペプチド14.3が最強の応答を誘導した(図15)。これらのデータは、ELISpotアッセイで確認された(データ示さず)。これらのデータに基づいて、我々は、lO量体ペプチド14.3は、5T4抗原内の天然のA2制限エピトープであるという結論を下した。これを裏付けるために、一般に2位のグルタミン酸は、MHC溝内へのペプチド折り畳みに対してマイナスの作用を及ぼし、このような四量体の製造は通常、成功率が低いにもかかわらず、14.3ペプチドと複合体を形成したHLA A2 四量体が製造されている。
【0245】
ex vivoELISpotアッセイにより結腸直腸のがん患者における免疫応答をモニターしている間に、我々は、Cw7対立遺伝子を含むHLA型を有する患者で、前述のペプチド77を含有するプール8に対する反応を検出した。他の患者2例(HLA型は不明)は、ペプチドプール10に応答を示した。
【0246】
HLA型A2,11B7,27,Cw2,7を有する患者は、プール11に反応した。プール11は、結合予測アルゴリズムによれば、HLA A2対立遺伝子およびB27対立遺伝子に最も強く結合する多数のペプチドを含む。たとえば、ペプチド11.2は、HLA A2対立遺伝子に結合する5T410量体ペプチドの中で最高得点を取り;ペプチド11.4は、A2バイダーの中で、上から7番目である。ペプチド11.7は、HLAB27対立遺伝子に結合する5T410量体ペプチドの中で最高得点を取り;ペプチド11.3は、B27バインダーの中で上から2番目であり、またペプチド11.4は上から5番目である。上の明細書に記載の全ての出版物を、参照することにより本明細書に組み込むものとする。記載の方法および本発明のシステムへの、様々な修飾および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明白になるであろう。具体的な好ましい実施形態に関連して本発明を説明してきたが、当然のことながら、請求の範囲に記載されている本発明は、このような具体的な実施形態に不当に制限されない。それどころか、分子生物学または関連分野における熟練者に明白な、本発明を実行するために記述された方式の様々な修飾は、請求の範囲の範囲内であることを意味する。
【0247】
【化1】
【化2】
【図面の簡単な説明】
【0248】
【図1】ex vivoで、健常なドナー由来のPBMCにおける、5T4ペプチドプールの1つに特異的なT細胞の存在を示す、ELISpotアッセイを示す図である。 A.全PBMCs B.CD4枯渇PBMC
【図2】IFNγ分泌の誘導に関与するものを調査するために、プール8を構成するペプチドのELISpotスクリーニングを示す図である。
【図3】増殖したT4特異的OB8T細胞が、MVAベクターから内生的に5T4を発現する同種異系CMC LCL標的細胞を認識することを示す、51Cr放出アッセイを示す図である。
【図4】限界希釈によって単離される個々のOB8 T細胞クローンも、51Cr放出アッセイでテストすると、やはり5T4−特異的であることを示す図である。
【図5】OB8T細胞クローンによるIFNγ産生を示す図である。
【図6】P77の最小エピトープを同定するための、77誘導体のスクリーニングを示す図である。
【図7】OB8 CTLアッセイを示す図である。
【図8】OB8 ELISpotアッセイを示す図である。
【図9】5T4をコードする組換えアデノウイルスに感染したDCにおける5T4発現のFACS分析を示す図である。
【図10】5T4ペプチドプールを使用したT細胞ミクロ培養のELISpotアッセイを示す図である。
【図11】アミノ酸配列14.ペプチド2および14.3ペプチドを示す図である。
【図12】プール14からの個々のペプチドを使用したT細胞ミクロ培養のELISpotアッセイを示す図である。
【図13】51Cr放出アッセイで、抗HLA A2抗体による標的細胞認識のブロックを示す図である。
【図14】14.3および14.2ペプチドの短いバージョンのアミノ酸配列を示す図である。
【図15】ペプチドをロードした自己LCLに対して、5T4特異的T細胞ミクロ培養を用いた51Cr放出アッセイを示す図である。
【配列表】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
5T4のMHCクラスIペプチドエピトープ。
【請求項2】
(i)配列番号2として表示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号3として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(iii)配列番号4として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(iv)配列番号5として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(v)配列番号6として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(vi)配列番号7として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ
の1つを含む、請求項1に記載の5T4のMHCクラスIペプチドエピトープ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のペプチドエピトープを含む、ポリエピトープ列。
【請求項4】
細胞ペネトレーターと結合した、請求項1または2に記載のペプチドエピトープ、または請求項3に記載のポリエピトープ列。
【請求項5】
四量体と結合した、請求項1または2に記載のペプチドエピトープ、または請求項3に記載のポリエピトープ列。
【請求項6】
請求項1、2、4または5に記載のペプチドエピトープ、あるいは請求項3、4または5に記載のポリエピトープ列をコードすることができる核酸配列。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸配列を細胞に送達することができるベクターシステム。
【請求項8】
請求項1、2、4または5に記載のペプチドエピトープあるいは請求項3、4または5に記載のポリエピトープ列、請求項6に記載の核酸配列、または請求項7に記載のベクターシステムによりパルス処理した細胞。
【請求項9】
請求項8に記載の抗原提示細胞。
【請求項10】
請求項1、2、4または5に記載のペプチドエピトープあるいは請求項3、4または5に記載のポリエピトープ列、請求項6に記載の核酸配列、請求項7に記載のベクターシステム、および/または請求項8または9に記載の細胞を含んでなるワクチン。
【請求項11】
疾患の予防および/または治療における使用のための医薬の製造における、請求項10に記載のワクチンの使用。
【請求項12】
前記疾患ががんである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項10に記載のワクチンの有効量を、疾患の治療および/または予防を必要としている被検対象に投与するステップを含む、被検対象において疾患を治療および/または予防するための方法。
【請求項14】
請求項1または2に記載のペプチドおよび/または請求項6に記載の核酸配列に、特異的に結合することができる薬剤。
【請求項15】
請求項1または2に記載のペプチド、請求項6に記載の核酸、あるいは請求項14に記載の薬剤の存在を、被検対象で検出するステップを含む方法。
【請求項16】
MHC分子と協力して、請求項1または2に記載のペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞を検出するための、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(i)被検対象からサンプルを単離するステップと、
(ii)MHC分子と協力して、請求項1に記載のペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞の存在を、ex vivoにてサンプルで検出するステップと
を含む、請求項16に記載の診断方法。
【請求項18】
がん疾患の進行を診断またはモニターするための、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項14に記載の薬剤を使用する、請求項1または2に記載のペプチドあるいは請求項6に記載の核酸の存在を検出するための、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
MHCクラスI分子と協力して、請求項1または2に記載のペプチドエピトープを特異的に認識することができる、T細胞系またはクローン。
【請求項21】
疾患を治療および/または予防するための医薬の製造における、請求項20に記載のT細胞系またはクローンの使用。
【請求項1】
5T4のMHCクラスIペプチドエピトープ。
【請求項2】
(i)配列番号2として表示されるアミノ酸配列、
(ii)配列番号3として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(iii)配列番号4として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(iv)配列番号5として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(v)配列番号6として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ、
(vi)配列番号7として表示されるアミノ酸配列に由来する最小エピトープ
の1つを含む、請求項1に記載の5T4のMHCクラスIペプチドエピトープ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のペプチドエピトープを含む、ポリエピトープ列。
【請求項4】
細胞ペネトレーターと結合した、請求項1または2に記載のペプチドエピトープ、または請求項3に記載のポリエピトープ列。
【請求項5】
四量体と結合した、請求項1または2に記載のペプチドエピトープ、または請求項3に記載のポリエピトープ列。
【請求項6】
請求項1、2、4または5に記載のペプチドエピトープ、あるいは請求項3、4または5に記載のポリエピトープ列をコードすることができる核酸配列。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸配列を細胞に送達することができるベクターシステム。
【請求項8】
請求項1、2、4または5に記載のペプチドエピトープあるいは請求項3、4または5に記載のポリエピトープ列、請求項6に記載の核酸配列、または請求項7に記載のベクターシステムによりパルス処理した細胞。
【請求項9】
請求項8に記載の抗原提示細胞。
【請求項10】
請求項1、2、4または5に記載のペプチドエピトープあるいは請求項3、4または5に記載のポリエピトープ列、請求項6に記載の核酸配列、請求項7に記載のベクターシステム、および/または請求項8または9に記載の細胞を含んでなるワクチン。
【請求項11】
疾患の予防および/または治療における使用のための医薬の製造における、請求項10に記載のワクチンの使用。
【請求項12】
前記疾患ががんである、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
請求項10に記載のワクチンの有効量を、疾患の治療および/または予防を必要としている被検対象に投与するステップを含む、被検対象において疾患を治療および/または予防するための方法。
【請求項14】
請求項1または2に記載のペプチドおよび/または請求項6に記載の核酸配列に、特異的に結合することができる薬剤。
【請求項15】
請求項1または2に記載のペプチド、請求項6に記載の核酸、あるいは請求項14に記載の薬剤の存在を、被検対象で検出するステップを含む方法。
【請求項16】
MHC分子と協力して、請求項1または2に記載のペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞を検出するための、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(i)被検対象からサンプルを単離するステップと、
(ii)MHC分子と協力して、請求項1に記載のペプチドエピトープを特異的に認識することができるT細胞の存在を、ex vivoにてサンプルで検出するステップと
を含む、請求項16に記載の診断方法。
【請求項18】
がん疾患の進行を診断またはモニターするための、請求項15〜17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
請求項14に記載の薬剤を使用する、請求項1または2に記載のペプチドあるいは請求項6に記載の核酸の存在を検出するための、請求項15〜18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
MHCクラスI分子と協力して、請求項1または2に記載のペプチドエピトープを特異的に認識することができる、T細胞系またはクローン。
【請求項21】
疾患を治療および/または予防するための医薬の製造における、請求項20に記載のT細胞系またはクローンの使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2006−500903(P2006−500903A)
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−567942(P2003−567942)
【出願日】平成15年2月13日(2003.2.13)
【国際出願番号】PCT/GB2003/000670
【国際公開番号】WO2003/068816
【国際公開日】平成15年8月21日(2003.8.21)
【出願人】(500129007)オックスフォード バイオメディカ(ユーケイ)リミテッド (5)
【出願人】(504310364)アイディーエム,ソシエテ・アノニム (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年2月13日(2003.2.13)
【国際出願番号】PCT/GB2003/000670
【国際公開番号】WO2003/068816
【国際公開日】平成15年8月21日(2003.8.21)
【出願人】(500129007)オックスフォード バイオメディカ(ユーケイ)リミテッド (5)
【出願人】(504310364)アイディーエム,ソシエテ・アノニム (1)
【Fターム(参考)】
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