説明

ヒドロキシピペリジン誘導体とその使用

ヒドロキシピペリジン成分、及び同様な複素環構造の誘導体などの化学物質であって、その塩が含まれ、抗癌剤と抗腫瘍剤として作用し、とりわけ、癌細胞のような細胞中に存在する酵素と構造ポリペプチドの活性を変調し、又は癌細胞などの細胞系における遺伝子発現レベルを変調する化学物質が開示され、併せて、こうした化学物質を調製する方法、活性成分としてこうした化学物質を含む医薬組成物、及び治療薬剤としてこれらを使用する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮出願No.60/774972(2006年2月17日出願)の優先権を主張し、その開示事項は、本願に全体として参照して取り入れられる。
【0002】
本発明は、癌細胞などの細胞系における遺伝子発現レベルに影響する化学物質、並びに、ポリペプチド活性、とりわけ、その遺伝子発現によってコード化されるものなどの細胞プロセスに不可欠なものに影響する化学物質に関する。なかでも、本発明は、ヒドロキシピペリジン成分の誘導体、同様な環構造体、それらの製造方法、抗腫瘍剤としてのそれらの使用、及び活性成分としてそれらの薬物を含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
新規な薬物についてのスクリーニングアッセイは、特定の化合物を用いた治療に対する、インビトロのモデル細胞に基づく系の応答を基礎にする。サイトカイン類の放出、細胞表面マーカーにおける交互変化、特定の酵素の活性化、及びイオンフラックス及び/又はpHの交互変化などの、細胞応答の種々の測定が利用されている。いくつかのこうしたスクリーンは、癌遺伝子又は腫瘍抑制因子のような特定の遺伝子に依存する。
【0004】
本発明は、各々の特定の腫瘍の種類について、対応する正常細胞に比較したとき、腫瘍細胞において異なって表れる遺伝子のユニークな信号セットを確立することができるといった概念の長所を取得することにより、可能性のある抗癌剤としての小分子化合物のスクリーニングを利用する。10〜30の遺伝子を含む比較的小さな信号セットは、癌細胞に典型的なパターンから正常細胞に見られるパターンまで遺伝子発現プロフィルを逆転することができる化合物について、容易なハイスループットスクリーニングを可能にする。ハイスループットの遺伝子発現スクリーニングについての新しい多様な化合物を提供する本発明者の努力の一部として、本発明者は、ヒドロキシピペリジンの多くの新規な誘導体を設計・合成した。遺伝子発現スクリーニングと以降の細胞障害性スクリーニングは、化合物のいくつかが生物学的活性を有することを明らかにした。この結果、詳細な活性の研究関係は、抗悪性腫瘍活性を有する新しい小分子の薬剤としての式1の化合物をもたらした。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1つの局面において、本発明は、生物学的分子の阻害剤又はアゴニストとしての、修飾因子として機能する能力を有する有機化合物、ヒドロキシピペリジン誘導体、とりわけ、細胞に見られるタンパク質とポリペプチドに関し、その機能は、正常又は異常によらず、親密的又は周辺的に癌性プロセスと関係する。こうした化合物は、細胞内、培養液中、動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトに見られるタンパク質又はポリペプチドを変調するように作用することができ、あるいは、前記動物の血漿又は他の組織におけるような細胞外のこうしたタンパク質とポリペプチドに作用することができる。一般に、前記化合物の作用のメカニズムは、本発明の作用に基本的ではなく、かかる化合物は、こうしたメカニズムに限定されることなく本願に開示されている。また、こうした化合物のターゲットであるタンパク質及び/又はポリペプチドには、プロテアーゼ又は他の代謝成分のような酵素として機能するもの、又は構造的もしくは構成的タンパク質として機能するものが挙げられ、前記ターゲットには、癌プロセスに伴うオリゴペプチドもまた挙げられる。
【0006】
もう1つの局面において、本発明は、癌細胞に見られる遺伝子、とりわけ、結腸癌に典型的な規制されない信号伝達経路に伴う遺伝子についての遺伝子発現修飾因子として機能する能力を有する有機化合物、ヒドロキシピペリジンの誘導体に関する。
【0007】
本発明の1つの態様において、本願に開示の化合物は、癌細胞、とりわけ結腸癌細胞に対して正常(即ち、癌ではない)細胞において上方制御されると見られる遺伝子を上方制御することができ、それによって、正常細胞において見られる発現プロフィルに似ている前記遺伝子についての発現プロフィルを生成する。もう1つの態様において、本願に開示の化合物は、正常(即ち、癌ではない)細胞に対して癌細胞、とりわけ結腸癌細胞において、さもなければ上方制御した遺伝子を下方制御し、それによって、正常細胞で見られる発現プロフィルにさらに似ている前記遺伝子についての発現プロフィルを生成することが見出されている。即ち、癌状態を誘発又は持続する主要な役割を有する又は有しないかもしれない特定遺伝子を変調する活性に加え、本願に開示の薬剤は、癌のような疾病状態、とりわけ結腸腺癌などの結腸癌に、それらの組み合わせの活性が関係する一連の遺伝子の規制において価値を見出している。即ち、全体的な一連の遺伝子は変調されるものの、これらの一部を変調する効果は、全体的な疾病プロセスを回復する効果に関して、大きい又は小さいかの不釣合いなことがある。その結果、いろいろな疾病状態が、全体的な疾病プロセスを基礎にして活性又は不活性である遺伝子のいろいろなサブセットに依存することがある。
【0008】
したがって、本発明は、正常(即ち、癌ではない)細胞に見られる遺伝子に対して遺伝子変調因子として機能する能力を有し、その遺伝子は、正常細胞、とりわけ結腸細胞において上方制御もしくは下方制御されることが見出されている、新規な有機化合物に関する。こうした効果は、癌のような疾病状態から、さもなければそうした状態により陥り易いことから防ぐことができる。1つのこうした態様において、本願明細書に開示の薬剤の1又は複数の投与は、癌状態の発生を防ぐことに成功することができる。
【0009】
他の態様において、本願明細書に記載の薬剤は、互いの及び他の薬剤との組み合わせにおいて用途を見出しており、例えば、本発明の1又は複数の薬剤の混合物が組み合された場合、あるいは、場合により公知の治療薬の効果を増強する手段として又はその逆の場合のような、本願に開示の1又は複数の薬剤が何らかの他の公知の治療薬と一緒に与えられる場合である。
【0010】
また、本発明は、被験者、例えば、哺乳動物、とりわけヒトに、本願に開示の1又は複数の薬剤の治療上有効量を投与することによる、疾病状態、とりわけ癌、なかでも結腸癌を防止又は治療する方法に関し、こうした薬剤が、公知の薬剤の1又は複数と組み合わせて与えられる場合を含む。
【0011】
−定義−
以下に、本願明細書における用語の定義を列挙する。
【0012】
「アシル」又は「カルボニル」は、カルボン酸からヒドロキシを除去して得られる基である(即ち、R−C(=O)−)。好ましいアシル基には、例えば、アセチル、ホルミル、及びプロピオニルが挙げられる。「アルキル」は、1〜15の炭素原子を有する飽和炭化水素鎖であり、好ましくは、1〜10、より好ましくは、1〜5、最も好ましくは、1〜4の炭素原子である。「アルケニル」は、少なくとも1つの(好ましくは、1つのみ)の炭素−炭素二重結合を有し、2〜15の炭素原子、好ましくは、2〜10の炭素原子、より好ましくは、2〜5の炭素原子、最も好ましくは、2〜4の炭素原子を有する炭化水素鎖である。「アルキニル」は、少なくとも1つの(好ましくは、1つのみ)の炭素−炭素三重結合を有し、2〜15の炭素原子、好ましくは、2〜10の炭素原子、より好ましくは、2〜4の炭素原子を有する炭化水素鎖である。アルキル、アルケニル、及びアルキニル鎖は(「炭化水素鎖」と総称)、直鎖又は分岐鎖であってもよく、非置換又は置換されていてもよい。好ましい分岐鎖のアルキル、アルケニル、及びアルキニル鎖は、1又は2の分岐、好ましくは、1つの分岐を有する。好ましい鎖はアルキルである。アルキル、アルケニル、及びアルキニル炭化水素鎖は、それぞれ、非置換、又は1〜4の置換基で置換されてもよく、置換される場合、好ましい鎖はモノ、ジ、又はトリ置換される。アルキル、アルケニル、及びアルキニル炭化水素鎖は、それぞれ、ハロゲン、ヒドロキシ、アリールオキシ(例えば、フェノキシ)、ヘテロアリールオキシ、アシルオキシ(例えば、アセトキシ)、カルボキシ、アリール(例えば、フェニル)、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、スピロ環式置換基、アミノ、アミド、アシルアミノ、ケト、チオケト、シアノ、又はこれらの組み合わせによって置換されてもよい。好ましい炭化水素基には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ビニル、アリル、ブテニル、及びエキソメチレニルが挙げられる。
【0013】
また、本願明細書において称される「低級」のアルキル、アルケン、又はアルキン成分は(例えば、「低級アルキル」)、アルキルの場合、1〜6、好ましくは、1〜4の炭素原子からなる鎖であり、アルケンとアルキンの場合、2〜6、好ましくは、2〜4の炭素原子からなる鎖である。
【0014】
「アルコキシ」は、炭化水素鎖の置換基を有する酸素ラジカルであり、その炭化水素鎖はアルキル又はアルケニルである(即ち、−O−アルキル又は−O−アルケニル)。好ましいアルコキシ基には(例えば)、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、及びアリルオキシが挙げられる。
【0015】
「アリール」は、芳香族系の炭化水素環である。アリール環は、単環又は結合二環系と三環系である。単環のアリール環は、環の中に6つの炭素原子を含む。単環のアリール環は、フェニル環とも称される。二環系のアリール環は、その環の中に、8〜17の炭素原子、好ましくは、9〜12の炭素原子を有する。二環系のアリール環には、1つの環がアリールで、他方の環がアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキルである環系が挙げられる。好ましい二環系のアリール環は、5、6、又は7員環に結合した5、6、又は7員環を含む。アリール環は、非置換であってもよく、又は環を1〜4の置換基で置換されてもよい。アリールは、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、アシルアミノ、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、アリールオキシ、アルコキシ、ヘテロアルキルオキシ、カルバミル、ハロアルキル、メチレンジオキシ、ヘテロアリールオキシ、又はこれらの組み合わせによって置換されてもよい。好ましいアリール環には、ナフチル、トリル、キシリル、及びフェニルが挙げられる。最も好ましいアリール環基はフェニルである。
【0016】
「アルキルアリール」又は「アルカリル」は、置換基として結合したアルキル基を有するアリール環であり、そのアリールは、上記に規定した通りであり、アリール環は、非置換又は置換であってもよい。アルキル成分は、単鎖又は分岐鎖、置換又は非置換であってもよい。
【0017】
「アリールアルキル」又は「アラルキル」は、置換基としてそれに結合したアリール環を有する本願明細書において規定するアルキル基であり、そのアルキルは、直鎖又は分岐鎖であってもよく、置換又は非置換であってもよい。
【0018】
「アリールオキシ」は、アリール置換基を有する酸素ラジカルである(即ち、−O−アリール)。好ましいアリールオキシ基には、(例えば)フェノキシ、ナフチルオキシ、メトキシフェノキシ、及びメチレンジオキシフェノキシが挙げられる。
【0019】
「シクロアルキル」は、飽和又は不飽和の炭化水素環である。シクロアルキル環は、非芳香族系である。シクロアルキル環は、単環であり、又は融合、スピロ、又は架橋の二環系である。単環のシクロアルキル環は、環中に約3〜約9の炭素原子、好ましくは、3〜7の炭素原子を含む。二環系のシクロアルキル環は、環中に7〜17の炭素原子、好ましくは、7〜12の炭素原子を含む。好ましい二環系のシクロアルキル環は、5、6、又は7員環に結合した4、5、6、又は7員環を含む。シクロアルキル環は、非置換であってもよく、又は環を1〜4の置換基で置換されてもよい。シクロアルキルは、ハロ、シアノ、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、ケト、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、アシルアミノ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、又はこれらの組み合わせによって置換されてもよい。好ましいシクロアルキル環には、シクロプロピル、シクロペンチル、及びシクロヘキシルが挙げられる。
【0020】
「ハロ」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードである。好ましいハロは、フルオロ、クロロ、及びブロモであり、より好ましい典型は、クロロとフルオロであり、特には、フルオロである。
【0021】
「ハロアルキル」は、1又は複数のハロ置換基で置換された直鎖、分岐鎖、又は環状の炭化水素である。好ましくは、C〜C12のハロアルキルであり、より好ましくは、C〜Cのハロアルキルであり、さらにより好ましくは、C〜Cのハロアルキルである。好ましいハロ置換基は、フルオロ又はクロロである。最も好ましいハロアルキルは、トリフルオロメチルである。
【0022】
「ヘテロ原子」は、窒素、硫黄、又は酸素原子である。1を超えるヘテロ原子を含む基は、異なるヘテロ原子を含んでもよい。
【0023】
「ヘテロアルキル」は、炭素と少なくとも1つのヘテロ原子を含有する飽和又は不飽和鎖であり、2つのヘテロ原子が隣接することはない。ヘテロアルキル鎖は、その鎖の中に2〜15の原子(炭素とヘテロ原子)を含み、好ましくは、2〜10、より好ましくは、2〜5である。例えば、アルコキシ(即ち、−O−アルキル又は−O−ヘテロアルキル)基が、ヘテロアルキルに含まれる。ヘテロアルキル鎖は、直鎖又は分岐鎖であってもよい。好ましい分岐ヘテロアルキル鎖は、1又は2の分岐を有し、好ましくは、1つである。好ましいヘテロアルキル鎖は飽和している。不飽和ヘテロアルキル鎖は、1つ又は複数の炭素−炭素二重結合及び/又は1又は複数の炭素−炭素三重結合を有する。好ましい不飽和ヘテロアルキル鎖は、1つもしくは2つの二重結合又は1つの三重結合を有し、より好ましくは、1つの二重結合を有する。ヘテロアルキル鎖は、非置換、又は1〜4の置換基で置換されてもよい。好ましい置換ヘテロアルキル鎖は、モノ、ジ、又はトリ置換である。ヘテロアルキル鎖は、低級アルキル、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アシルオキシ、カルボキシ、単環式アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、スピロ環式置換基、アミノ、アシルアミノ、アミド、ケト、チオケト、シアノ、又はこれらの組み合わせで置換されてもよい。
【0024】
「ヘテロアリール」は、環中に炭素原子と1〜約6のヘテロ原子を含む芳香族環である。ヘテロアリール環は、単環系又は融合二環系である。単環系のヘテロアリール環は、環中に約5〜約9員の原子(炭素とヘテロ原子)、好ましくは、5又は6員の原子を含む。二環系のヘテロアリール環は、環中に8〜17員の原子、好ましくは、8〜12員の原子を含む。二環系のヘテロアリール環は、1つの環がヘテロアリールで、他方の環がアリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、又はヘテロシクロアルキルである環系を含む。好ましい二環系のヘテロアリール環系は、5、6、又は7員環に結合した5、6、又は7員環を含む。ヘテロアリール環は、非置換であってもよく、又は環を1〜4の置換基で置換されてもよい。ヘテロアリールは、ハロ、シアノ、ニトロ、ヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、アシルアミノ、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、又はこれらの組み合わせによって置換されてもよい。好ましいヘテロアリールオキシ環には、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
【0025】
【化1】

【0026】
「ヘテロアリールオキシ」は、ヘテロアリール置換基を有する酸素ラジカルである(即ち、−O−ヘテロアリール)。好ましいヘテロアリールオキシ基には(例えば)、ピリジルオキシ、フラニルオキシ、(チオフェン)オキシ、(オキサゾール)オキシ、(チアゾール)オキシ、(イソキサゾール)オキシ、ピリミジニルオキシ、ピラジニルオキシ、及びベンゾチアゾリルオキシが挙げられる。
【0027】
「ヘテロシクロアルキル」は、環中に炭素原子と1〜約4(好ましくは、1〜3)のへテロ原子を有する飽和又は不飽和環である。ヘテロシクロアルキルは、芳香族ではない。ヘテロシクロアルキル環は、単環系であるか、又は融合、架橋、もしくはスピロ二環系である。単環系のヘテロシクロアルキル環は、環中に約3〜約9員の原子(炭素とヘテロ原子)、好ましくは、5〜7員の原子を有する。二環系のヘテロシクロアルキル環は、環中に約7〜約17員の原子、好ましくは、7〜12員の原子を有する。二環系のヘテロシクロアルキル環は、約7〜約17の環原子、好ましくは、7〜12の環原子を有する。二環系のヘテロシクロアルキル環は、融合、スピロ、又は架橋した環系であってもよい。好ましい二環系のヘテロシクロアルキル環は、5、6、又は7員環に結合した5、6、又は7員環を含む。ヘテロシクロアルキル環は、非置換であってもよく、又は環を1〜4の置換基で置換されてもよい。ヘテロシクロアルキルは、ハロ、シアノ、ヒドロキシ、カルボキシ、ケト、チオケト、アミノ、アシルアミノ、アシル、アミド、アルキル、ヘテロアルキル、ハロアルキル、フェニル、アルコキシ、アリールオキシ、又はこれらの組み合わせによって置換されてもよい。ヘテロシクロアルキル上の好ましい置換基には、ハロとハロアルキルが挙げられる。好ましいヘテロシクロアルキル環には、限定されるものではないが、以下のものが挙げられる。
【0028】
【化2】

【0029】
「薬理学的に許容される塩」は、何らかの酸性基(例えば、カルボン酸)によって形成されるカチオン塩又は何らかの塩基性基(例えば、アミノ)によって形成されるアニオン塩である。多くのこうした塩が、当該技術分野において公知である(特許文献1、本願で参照として取り入れられる)。好ましいカチオン塩には、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウムとカリウム)、アルカリ土類金属塩(例えば、マグネシウムとカルシウム)、及び有機塩が挙げられる。好ましいアニオン塩には、ハロゲン化物(例えば、塩素塩)、スルフォン酸塩、カルボン酸塩、リン酸塩等が挙げられる。
【0030】
こうした塩は、当業者はよく理解しており、当該技術の知識によって多くの塩を、当業者は調製することができる。さらに、当業者は、溶解性、安定性、及び製剤の容易性等の理由で、ある塩を別なものよりも好むことが理解される。こうした塩の決定と最適化は、当業者の実務における視野の中にある。
【0031】
溶媒和物は、溶質(例えば、メタロプロテアーゼ阻害剤)と溶媒(例えば、水)の組み合わせによって得られる複合体である(非特許文献1参照)。本発明にしたがって使用される薬理学的に許容される塩は、メタロプロテアーゼ阻害剤(例えば、水、エタノール、酢酸、N、N−ジメチルホルムアミド、及びその他の当業者に公知で容易に決定されるもの)の生物活性を妨害しないものが挙げられる。溶媒和物が水の場合は水和物である。
【0032】
用語「光学異性体」、「立体異性体」、及び「ジアステレオマー」は、通義を有する(非特許文献2参照)。本発明の化合物における特定の保護される形態とその他の誘導体の例示は、限定を意図するものではない。その他の有用な保護基、塩の形態等の応用は、当業者の能力の範囲内にある。
【0033】
用語「代謝物」は、動物に本発明の化合物を投与した後の酵素代謝のような、通常の生理的過程による本発明の化合物から得られる生成物を指称し、動物に投与されて、普通の酵素及び/又は代謝反応に供されたとき(通常、酵素又は胃酸によって触媒されるとは限らない)、本発明の化合物を生成することができる化学物質である「プロドラッグ」によって生じる生成物を含む。
【0034】
1つを超える置換基について(即ち、1つを超えるR基)、置換基の説明が、その置換基が「独立して選択され」又は「独立して選択」と記載する場合、2つ以上のR基が、互いに同じ又は相違のいずれでもよいことを意味する。
【0035】
[特許文献1] 国際公開第87/05297号パンフレット(Johnstonら、1987年9月11日公開)特許出願
[非特許文献1] J. Honig et al., The Van Nostrand Chemist's Dictionary, p. 650 (1953)
[非特許文献2] Hawley's Condensed Chemical Dictionary, 11th Ed.
【課題を解決するための手段】
【0036】
1つの態様において、本発明は、一般に、式1、式2、式3、式4、式5、及び/又は式6の構造を有する化合物に関する。
【0037】

【0038】
ここに、mは、0、1、2、又は3、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、H及びC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよく、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよい、
並びに、これらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物、及び異性体を含む。
【0039】
式1の化合物の好ましい態様において、n=2である。他の好ましい態様において、m=2である。さらなる他の好ましい態様において、Rは、H、Cl、又はOMeである。さらにもう1つの好ましい態様において、NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい。この後者の態様は、下記の構造の化合物を表わし、
【0040】

【0041】
ここに、R22に結合した窒素(C=Oに結合していない)は、本願明細書において、ピペラジンの第2窒素とも称され、R22は、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換され、ここに、水素以外の後者の基は、それ自体が置換されてもよい。
【0042】
付加的な好ましい態様において、NR13(CH14は、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択される。さらに好ましい態様は、構造的限定としてのこれらの好ましい態様の任意のもの又は全てを兼ね備える化合物を含む。
【0043】
本発明の任意の構造において、R14は、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択された3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(そのヘテロ原子がNの場合、その環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子NもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリール、並びに、F、Cl、Br、I、OH、CF、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ独立して、HとC〜Cアルキルから選択される)の任意のものから選択されてもよく、ここに、これは、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択された置換基で置換されてもよく又は非置換でもよく、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、上述のRから選択された基によってさらに置換されてもよい。
【0044】

【0045】
ここに、mは、0、1、2、又は3、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、H及びC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよい、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよい、
並びに、これらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物、及び異性体を含む。
【0046】
式2の化合物の好ましい態様において、n=2である。他の好ましい態様において、m=2である。さらなる他の好ましい態様において、Rは、H、Cl、又はOMeである。さらにもう1つの好ましい態様において、NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい。
【0047】
付加的な好ましい態様において、NR13(CH14は、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択される。さらに好ましい態様は、構造的限定としてのこれらの好ましい態様の任意のもの又は全てを兼ね備える化合物を含む。
【0048】

【0049】
ここに、mは、0、1、2、又は3、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、H及びC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよく、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよい、
並びに、これらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物、及び異性体を含む。
【0050】
式3の化合物の好ましい態様において、n=2である。他の好ましい態様において、m=2である。さらなる他の好ましい態様において、Rは、H、Cl、又はOMeである。さらにもう1つの好ましい態様において、NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい。
【0051】
付加的な好ましい態様において、NR13(CH14は、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択される。さらに好ましい態様は、構造的限定としてのこれらの好ましい態様の任意のもの又は全てを兼ね備える化合物を含む。
【0052】

【0053】
ここに、mは、1又は2、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14、及びR20は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、H及びC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよく、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよく、
これらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物、及び異性体を含むが、それらの全ての使用に関し、本発明は、nが1で、RがH、Cl、又はOMeではないときにのみ、そのようなものとして、式4の化合物に特に傾注される。
【0054】
式4の化合物の好ましい態様において、n=2である。他の好ましい態様において、m=2である。さらなる他の好ましい態様において、R10は、H、Cl、又はOMeである。さらにもう1つの好ましい態様において、NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい。
【0055】
付加的な好ましい態様において、NR13(CH14は、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択される。さらに好ましい態様は、構造的限定としてのこれらの好ましい態様の任意のもの又は全てを兼ね備える化合物を含む。
【0056】
また、本発明は、以下の構造を有する化合物に関し、

【0057】
ここに、mは、1又は2、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14、及びR20は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、H及びC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよく、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよい、
並びに、これらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物、及び異性体を含む。
【0058】
式5の化合物の好ましい態様において、n=2である。他の好ましい態様において、m=2である。さらなる他の好ましい態様において、R10は、H、Cl、又はOMeである。さらにもう1つの好ましい態様において、NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい。
【0059】
付加的な好ましい態様において、NR13(CH14は、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択される。さらに好ましい態様は、構造的限定としてのこれらの好ましい態様の任意のもの又は全てを兼ね備える化合物を含む。
【0060】
さらに、本発明は、以下の構造の化合物に関し、

【0061】
ここに、mは、1又は2、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14、及びR20は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、H及びC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよく、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよい、
並びに、これらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物、及び異性体を含む。
【0062】
式6の化合物の好ましい態様において、n=2である。他の好ましい態様において、m=2である。さらなる他の好ましい態様において、R10は、H、Cl、又はOMeである。さらにもう1つの好ましい態様において、NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい。
【0063】
付加的な好ましい態様において、NR13(CH14は、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択される。さらに好ましい態様は、構造的限定としてのこれらの好ましい態様の任意のもの又は全てを兼ね備える化合物を含む。
【0064】
非常に好ましい態様において、本発明の化合物は、表1に見られる構造を有する化合物である。
【0065】
非常に好ましい態様において、本発明の化合物は、表2に見られる構造を有する化合物である。
【0066】
非常に好ましい態様において、本発明の化合物は、表3に見られる構造を有する化合物である。
【0067】
非常に好ましい態様において、本発明の化合物は、表4Aと表4Bに見られる構造を有する化合物である。
【0068】
別の局面において、本発明は、本発明の任意の化合物の組成物に関し、好ましくは、こうした化合物は、薬理学的に許容される担体の中に治療上有効な量で存在する。こうした組成物は、一般に、こうした化合物を毒性でない量で含む(即ち、治療用途に安全な量)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0069】
上述のように、本発明は、薬物の活性成分として本発明の化合物を使用すること、とりわけ腫瘍の治療に有用な薬物のために使用することに関する。本発明の化合物は、このように、薬理学的に許容される媒体及び賦形剤と混合された、活性成分として式1〜6の化合物を含む医薬組成物中に存在し、その医薬組成物は、その組成物を受け入れる個体に有害な抗体の生成をそれ自体では引き起こさない何らかの薬剤を含み、過度の毒性なしに投与されることができる。薬理学的に許容される担体には、限定されるものではないが、水、生理食塩水、グリセロール、及びエタノールなどの液体が挙げられ、鼻その他の呼吸系送達のためのスプレーの形成、又は眼系への送達に有用な担体を含む。薬理学的に許容される担体、希釈剤、及びその他の賦形剤の充分な議論が、Remington's Pharmaceutical Sciences (Mack Pub. Co., N.J. current edition) においてされている。こうした担体の使用は当業者に周知であり、本願明細書においては、これ以上の説明はしない。
【0070】
また、上述のように、本発明は、哺乳動物における遺伝子の特定の組の発現レベルにおける変化に伴う疾病を予防又は治療する方法に関し、その哺乳動物に、本発明の化合物の有効量を投与することを含む。
【0071】
本発明による化合物は、哺乳動物における腫瘍、とりわけ、こうした治療が必要なヒトの原発腫瘍のサイズと数を減らす効果を有する。原発腫瘍又は転移性細胞の数の統計的に優位な変化は、典型的に、少なくとも約10%、好ましくは、20%、30%、50%、70%、90%、又はそれ以上である。
【0072】
本発明にしたがうと、本願明細書に記載の薬剤は、他の化学療法、放射線療法、免疫療法、及び外科治療などの、本願明細書に記載の他の病状治療と組み合わされてもよい。また、本発明の化合物は、鎮痛剤、利尿薬、抗利尿薬、抗ウイルス薬、抗生物質、栄養補給剤、貧血治療剤、血液凝固治療剤、骨治療剤、精神科治療剤、及び心理学治療剤のような他の薬剤と組み合わせて投与されてもよい。
【0073】
適切な治療用量の決定は、例えば、治療を行うために当該分野で知られる又は治療を行うために予測されるパラメーター又は因子を用い、医者によってなされる。一般に、用量は、最適用量よりも若干少ない量から始め、その後、何らかの負の副作用に対して望ましい又は最適な効果が達成されるまで、少しずつ増加させる。
【0074】
用語「有効量」は、望ましい応答をもたらす、あるいは、例えば、転移又は原発腫瘍の進行、サイズ、又は成長の症状又は徴候を回復させるのに十分な量を意味する。典型的な哺乳動物宿主には、マウス、ラット、ネコ、イヌ、及びヒトなどの霊長類が挙げられる。特定の患者についての有効量は、治療される状態、患者の全体的な健康、投与の方法、ルート、及び用量、並びに副作用の重症度などの因子によって変わることがある。好ましくは、この効果は、定量における変化で、少なくとも10%、好ましくは、20%、30%、50%、70%、90%、又はそれ以上をもたらす。組み合わせの場合、有効量は、成分の組み合わせに対する比に関係し、その効果は、個々の成分単独のものに限られない。
【0075】
治療上の有効量は、典型的に、少なくとも約10%、通常は、少なくとも約20%、好ましくは、少なくとも約30%、又はより好ましくは、少なくとも50%にわたって症状を変調することができる。あるいは、転移の変調は、種々の細胞種の転移又は輸送がもたらされることを意味する。このことは、例えば、細胞の数における統計的に有意な又は定量可能な変化が得られることに帰結すると考えられる。このことは、ある時間間隔又は標的領域の中に引き付けられる標的細胞の数の減少であってもよい。原発腫瘍の進行、サイズ、又は成長の速度もまたモニターすることができる。
【0076】
別な局面において、本発明は、異常な遺伝子発現によって生じる疾病の防止又は治療方法に関し、その疾病は、癌、心臓血管疾患、関節炎、骨粗鬆症、炎症、歯周病、及び皮膚疾患からなる群より選択され、こうした治療又は予防を必要とする哺乳動物に、本発明の化合物の治療上有効量を投与することを含む。
【0077】
その好ましい態様において、疾病は癌であり、より好ましくは、大腸癌であり、最も好ましくは、腺癌であり、治療は、腫瘍の成長、転移、又はその双方を予防、抑止、又は復帰する。
【0078】
好ましい態様において、本発明は、哺乳動物における癌又は腫瘍の転移を防止、治療、又は回復させる方法に関するものであり、本発明の化合物の治療上有効量をその哺乳動物に投与することを含み、好ましくは、その哺乳動物はヒトである。
【0079】
本発明の化合物は、細胞、とりわけ哺乳動物の細胞、例えば、癌細胞、好ましくは、大腸細胞、最も好ましくは、腺癌に見られる1又は複数の遺伝子の変調によって、普通に治療効果を発揮する。即ち、本発明の1又は複数の化合物は、遺伝子の組の変調を本発明の1又は複数の化合物によって定めることにより、こうした遺伝子の組を決定する又は境界を画定するために使用することができる。例えば、ある遺伝子の組が、他の正常細胞、とりわけ癌細胞と同じ組織又は器官の正常細胞に対して、癌細胞において上方制御されることが見出された場合、こうした遺伝子、又はこうした遺伝子を含む細胞を、本発明の1又は複数の化合物と接触させることにより、ある遺伝子の組は、変調されるそれらの共通の特性によって決定することができる(遺伝子の発現の変化に基づき、例えば、その発現によって転写されるRNAの速度もしくは量又は生成するポリペプチドの量の変化)。こうした変調の範囲は、当然、接触に使用されるその1又は複数の化合物の量に関係してもよい。こうした変調には、全ての測定される遺伝子(即ち、その組の遺伝子)の増加した発現、その組の全ての遺伝子の減少した発現、又はその組の一部の遺伝子の発現の増加とその他の減少した発現が挙げられる。このため、テスト化合物(遺伝子又はそれを含む細胞との接触に使用された化合物)により変調されなかった遺伝子は、その組の一員とは見なされない。
【0080】
このように、本発明は、遺伝子の組の各員の発現が、その遺伝子の組を本発明の化合物と接触させる結果として変調される遺伝子の組に関する。特定の態様において、その遺伝子の組の各員の発現は、その接触の結果として増加し、又はその接触の結果として減少する。別の好ましい態様において、遺伝子の組は、細胞中に存在する。こうした遺伝子の組は、通常、特定の疾病プロセスに関係し、例えば、本発明の化合物によって全ての遺伝子の組が変調され、こうした化合物が、抗悪性腫瘍薬のような特定の治療効果を有する。
【0081】
別の局面において、本発明は、本発明の遺伝子の組の発現を変調する薬剤を特定する方法に関し、
(a)テスト化合物のような化合物を、遺伝子又はポリヌクレオチドの源のようなテスト系、例えば、ある疾病又は疾患と関係すると見られるもの、又はある化合物又は化合物群によって変調される組、とりわけ細胞中に見られるものに接触させ、又は別の仕方で使用し、その細胞は、その遺伝子の組の各員が発現する条件下で、本発明の遺伝子の組の各員に対応する1又は複数のポリヌクレオチドを含むテスト系を呈し、
(b)その処置の結果として、工程(a)における1又は複数のポリヌクレオチドの各々の発現における変化を測定する、
ことを含み、工程(b)の発現におけるその変化は、テスト化合物によるその遺伝子の組の各員の変調を示し、それによって、その遺伝子の組の発現を変調するテスト化合物を特定する。
【0082】
1つの態様において、細胞は、遺伝子又は遺伝子の組を含む天然由来の細胞であり、あるいは、遺伝子又はポリヌクレオチドの遺伝子の組を含むように設計された組換え型細胞であってもよい。代替の態様において、テスト系は、無細胞系における遺伝子又はポリヌクレオチドを含んでもよい。
【0083】
関連の局面において、本発明は、遺伝子の組、例えば、本発明の遺伝子の組の発現を変調するテスト化合物を特定する方法を提供し、
(a)テスト化合物を、本発明の遺伝子の組の各員に対応する1又は複数のポリヌクレオチドに、その遺伝子の組の員が発現する条件下で接触させ、
(b)その接触の結果として、工程(a)におけるその1又は複数のポリヌクレオチドの各々の発現の変化を測定する、
ことを含み、工程(b)の発現におけるその変化は、その遺伝子の組の員の変調を示し、それによって、その遺伝子の組の発現を変調するテスト化合物を特定する。
【0084】
本願明細書における用語「対応する遺伝子」、「対応するポリヌクレオチド」、又は「遺伝子に対応するポリヌクレオチド」は、本願明細書の表8と表9において開示された遺伝子の1つによってコード化されたRNAに対し、少なくとも90%同一、好ましくは、少なくとも95%同一、最も好ましくは、少なくとも98%同一、及び特に同一であるRNAをコード化するポリヌクレオチド及び/又は遺伝子を指称する。こうした遺伝子は、同じポリペプチド配列もまたコード化するであろうが、相違が保存的アミノ酸置換基に限定され、同じ全体的な三次元構造が維持された、こうしたアミノ酸配列の相違を含んでもよい。「対応する遺伝子」には、そのスプライスバリアントが挙げられる。
【0085】
本発明の方法に有用なポリヌクレオチドは、事実上、ゲノムであってもよく、このため、ヒト遺伝子のような実際の遺伝子の配列を呈してもよく、又はメッセンジャーRNA(mRNA)に由来したcDNA配列であって、このため、対応するゲノム配列に由来する連続的なエクソン配列を呈してもよく、又は本発明のプロセスを実施する目的で、元来から全体的に合成であってもよい。最初のRNA転写の最終的なmRNAへの変換を起し得る処理のため、本願明細書に開示の配列は、完全なゲノム配列よりも少ないものを表わしてもよい。また、それらは、リポソームRNAと転写RNAに由来する配列を表わしてもよい。この結果、細胞中に存在する遺伝子(そしてゲノム配列を表わす)及びcDNA配列などの本願明細書に開示のポリヌクレオチド転写物は、同じであってもよく、あるいは、cDNAが含むものが完全なゲノム配列よりも少なくてもよい。こうした遺伝子とcDNA配列は、それらが両方とも、同じ又は関連のRNA配列をコード化するため(即ち、いろいろな処理段階でのスプライスバリアント又はRNAであるという意味に関し)、こうした遺伝子又はcDNA配列は、依然として、「対応する配列」(本願明細書の他の箇所で規定)と考えられる。このため、非限定的例に過ぎないが、RNA転写物をコード化する遺伝子(次により短いmRNAに処理される)は、こうしたRNAの双方をコード化すると考えられ、したがって、cDNA(例えば、本願明細書に開示の配列)を補完するRNA(通常のワトソン・クリック補完規則を用い)をコード化するか、又はさもなければそれによってコード化されるであろう。このように、本願明細書に開示の配列は、癌細胞(ここでは乳癌)に含まれる遺伝子に対応し、遺伝子によってコード化されるRNAと同じ配列を表わす又は補完するため、遺伝子の活性又は発現を決めるために使用される。こうした遺伝子は、本発明の方法に使用される細胞において生じ得るいろいろな対立遺伝子とスプライスバリアントもまた含み、例えば、抗腫瘍薬のアッセイのために組換え型細胞が使用されたり、こうした細胞が、本願明細書に開示のポリヌクレオチドを発現するように設計される場合であって、非設計の癌細胞に見られるよりも高いレベルでこうしたポリヌクレオチドを発現するように設計された細胞などであり、あるいは、こうした組換え型細胞が、そのように設計された後にのみ、こうしたポリヌクレオチドを発現する場合である。こうした設計には、本願明細書に開示の1又は複数のポリヌクレオチドがこうした細胞のゲノムの中に挿入された又はベクターの中に存在する場合のような、遺伝子設計が挙げられる。
【0086】
こうした細胞、とりわけ哺乳動物の細胞は、こうしたポリペプチドをマスキングすることができる抗体又は他の薬剤でテストし、それによって細胞の癌性を除去するため、それらの表面上に本発明の1又は複数のポリペプチドを発現するように設計することもできる。こうした設計には、細胞の遺伝的相補性がポリペプチドを発現するように設計される遺伝子操作、及び細胞が物理的に操られてその原形質膜の中に本発明のポリペプチドを取り込む、例えば、化学物質及び/又は他の薬剤を用いた直接の挿入によってこの結果を得るといった非遺伝子操作の双方が含まれる。
【0087】
こうした方法の好ましい態様において、発現における割り出される変化は、その1又は複数のポリヌクレオチドの発現における減少又はその発現における減少である。他の好ましい態様において、発現における割り出される変化は、その1又は複数のポリヌクレオチドの転写における変化、あるいは、ポリペプチド、又はそのポリヌクレオチドによってコード化された発現生成物の活性の変化、例えば、細胞によって合成されたそのポリペプチドの量の変化などである。用語「発現生成物」は、自然の翻訳産物、及び遺伝子コード縮重及びそれゆえ同じアミノ酸のコード化から得られる任意の核酸配列コード化等価物であるポリペプチド又はタンパク質を意味する。
【0088】
付加的な好ましい態様において、その1又は複数のポリヌクレオチドは、細胞、好ましくは、癌細胞、より好ましくは、大腸癌細胞、最も好ましくは、大腸癌細胞が腺癌細胞である細胞に存在する。本発明の別な好ましい態様において、その細胞は、その遺伝子の組を含むように設計された組換え型細胞である。
【0089】
こうした方法は、本発明の化合物のような、期待される治療活性などの同様な活性を有する他の化合物を特定するために役立ち、このため、治療化合物用の大規模のスクリーニングアッセイの基礎として役立つ。その結果、本発明の1又は複数の化合物は、細胞のゲノム内の遺伝子の組又はサブセットの存在を決定するために用いることができる。このため、本発明の構造的に関係する化合物のグループによって変調される全ての遺伝子の組は、遺伝子の組を形成することができ、一方、あるグループの各化合物によって規制されるいろいろな遺伝子の組がサブセットを形成する。限定されない例として、本発明の構造的に関連する5つの化合物のグループ(いずれも式1の構造を一般的に有する)が、定められた遺伝子1〜20の発現を変調する場合(増加又は減少により)、この後者のグループは、遺伝子の組を形成する。次に、さらなる試験が、遺伝子1〜6が化合物Aによって変調されたこと、遺伝子7〜10が化合物Bによって変調されたこと、遺伝子2〜4と9〜12が化合物Cによって変調されたこと、遺伝子10〜20が化合物Dによって変調されたこと、及び偶数の遺伝子が化合物Eによって変調されることを判断する。化合物Cによって変調された遺伝子のような遺伝子のこれらの各グループは、遺伝子1〜20の遺伝子の組のサブセットと考えられる。類似の仕方において、化合物Eによって変調された遺伝子は、そのものが少なくとも2つのサブセットにさらに分割されることができ、ここで、1つのサブセットは、その発現が化合物Eによって増加する遺伝子から構成され、他のサブセットは、その発現が化合物Eによって減少する遺伝子から構成され、このようにして、サブセットのサブセットを生じる。留意するべきこととして、本発明の構成の中で、サブセットを特定する必要はなく、いわゆるサブセットの各々は、それ自身の権利において、本発明において用いられるような遺伝子の組である。このように、組とサブセットの特定は、本発明の1又は複数の化合物の接触から得られる遺伝子の変調を求めようとする、本発明の方法のユーザーの要望の程度の関数である。即ち、単一の化合物によって変調された遺伝子は、遺伝子の組を形成し、本発明の方法を実施する上で、1を超える化合物による変調についていろいろな遺伝子のグループを比較する必要はなく、ただし、このことは、当然ながら行ってもよい。
【0090】
上述のように、本発明は、複数の遺伝子サブセットを含む遺伝子の組に関し、ここで、その複数の各サブセットは、本発明の方法によって特定される遺伝子の組である。また、本発明は、本願明細書においては構造について特に説明しないが、本発明の化合物によって変調された1又は複数の遺伝子の組を変調する能力によって特定される新規な化合物のような、本発明の方法を用いて活性を有すると特定された化合物に関する。
【0091】
好ましい態様において、本発明は、表6及び/又は表7A又は表7Bにおいて特定される遺伝子の組と遺伝子のサブセットを包含する。疾病、とりわけ癌の治療のために本発明の化合物を用い、本発明は、特に、表7Aと表7Bの遺伝子の組又はサブセットの発現を変調する化合物の使用を想定する。
【0092】
また、本発明は、本発明の化合物の調製のための方法を含む。
【0093】
−化合物の調製−
本発明の化合物は、当該技術で公知の種々の手順を用いて調製することができる。本発明の化合物を調製するのに使用される出発物質は、公知であり、公知の方法によって製造され、又は市販されている。特に好ましい合成は、以下の一般的な反応スキームに記載されている。
【0094】
−スキーム1−
【化3】

【0095】
市販のピペリジン1を、標準的な光延反応条件下でエステル2と反応させる。得られたエステル3は、酸性条件下に供し、Boc保護基を除去してアミン4を生成する。次に、ナトリウムトリアセトキシボロヒドリドを用い、標準的な還元性アミノ化条件下で置換基Rを導入する。標準的な水酸化物仲介の条件下で、中間体のエステルを加水分解し、酸5を生成させる。最後の工程において、酸5と適切なアミンの間のEDAC仲介カップリング反応を用い、置換基Rを導入し、化合物6を生成する。調製が示されていない化合物は、文献公知の方法によって製造することができ、又は当業者が共通に知識のあるものである。
【0096】
当業者は、分子上の別な潜在的反応官能性がマスキングされ又は保護されたとき、何らかの不都合な副反応を回避し及び/又は反応の収率を高め、ある反応が最も適切に進行することを認識している。多くの場合、こうした高い収率を達成する又は不都合な反応を回避するために保護基が使用される。こうした反応は、十分に、当業者の能力の範囲内にある。いくつかの例が、T. Greene, Protecting Groups in Organic Synthesisに見られる。
【実施例】
【0097】
実施例1

【0098】
−工程1−
無水THF(200mL)中のt-ブチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-カルボキシレート(5.64g、28ミリモル)とメチル-3-クロロ-4-ヒドロキシベンゾエート(3.73g、20ミリモル)の溶液に、室温(rt)で、トリフェニルホスフィン(7.34g、28ミリモル)を添加する。DIAD(5.66g、28ミリモル)を1時間にわたって滴状で添加し、反応物を室温で30分間にわたって撹拌する。水(50mL)の添加によって反応物をクエンチし、その混合物を、酢酸エチル(3×100mL)で抽出する。一体の有機抽出物を0.1NのHCl(80mL)で洗浄した後、水(80mL)とブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムの上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮する。フラッシュカラムクロマトグラフィー(80〜20のヘキサン〜酢酸エチル)によって粗生成物を精製し、無色の濃厚なオイル(6.52g、収率88%)として生成物を得る。
【0099】
−工程2−

【0100】
t−ブチル−4−(2−クロロ−4−(メトキシカルボニル)フェノキシ)ピペリジン−1−カルボキシレート(2.75g、7.44ミリモル)をDCM(30mL)に溶かし、TFA(4mL)を添加し、その混合物を室温で2時間にわたって撹拌する。その混合物を減圧下で濃縮し、DCM(50mL)と0.5NのNaOH(50mL)の間で分割する。水層をDCM(50mL)で抽出し、一体の有機層を硫酸ナトリウムの上で乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮し、淡黄色のオイル(1.85g、収率92%)として生成物を得る。
【0101】
−工程3−

【0102】
THF(30mL)中の2,2−ジフェニルアセトアルデヒド(3.00g、14.9ミリモル)とメチル−3−クロロ−4−(ピペリジン−4−イルオキシ)ベンゾエート(2.01g、7.44ミリモル)の溶液にナトリウムトリアセトキシボロヒドリド(3.15g、14.9ミリモル)を添加し、その混合物を室温の窒素下で終夜にわたって撹拌する。その混合物をEtOAc(50mL)に注ぎ入れ、0.5NのHCl(20mL)と水(20mL)で抽出する。次いで、有機層をブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムの上で乾燥し、ろ過し、減圧下で濃縮し、オイルとして粗生成物を得る。
【0103】
粗生成物をTHF(30mL)とMeOH(10mL)に溶かし、その混合物に水系NaOH(50重量%の溶液、2mL)を添加する。その混合物を室温で終夜にわたって撹拌し、酢酸エチル(100mL)を添加する。その混合物を1NのHCl(40mL)で洗浄した後、ブライン(2×30mL)で洗浄し、生成物を有機相の外に結晶化させる。ろ過・乾燥の後、白色個体(2.0g、両工程で収率62%)として生成物を得る。
【0104】
−工程4−

【0105】
DCM(5mL)中の3−クロロ−4−(1−(2,2−ジフェニルエチル)ピペリジン−4−イルオキシ)安息香酸(100mg、0.23ミリモル)、2−(1−メチルピロリジン−2−イル)エタンアミン(29mg、0.23ミリモル)、及びHOBT(102mg、0.75ミリモル)の溶液に、EDAC(48mg、0.25ミリモル)を添加し、その反応物を終夜にわたって撹拌する。反応混合物をDCM(20mL)で希釈し、1NのHCl(2×15mL)で抽出する。HCl洗浄を組み合わせ、水系NaOHで塩基性にした後、DCM(3×10mL)で抽出する。一体の有機相を無水硫酸ナトリウムの上で乾燥し、ろ過し、減圧下で乾燥する。粗物質を調製用HPLCで精製し、遊離塩基として生成物を取得し、これを塩酸塩に変化させる。最終生成物は白色個体として得る(110mg、収率77%)。
【0106】
以下の表に示すこの他の例はいずれも、実施例1に記載した手順を踏襲し、適切に置き換えられたピペリジン、安息香酸エステル、及び対応するRアルデヒドとRアミンを用いて調製した。
【0107】

【0108】
【表1】

【0109】

【0110】

【0111】

【0112】

【0113】

【0114】

【0115】

【0116】

【0117】

【0118】

【0119】

【0120】

【0121】
【表2】

【0122】

【0123】

【0124】

【0125】

【0126】

【0127】

【0128】
【表3】

【0129】

【0130】

【0131】

【0132】

【0133】
【表4】

【0134】

【0135】

【0136】

【0137】

【0138】

【0139】

【0140】

【0141】

【0142】

【0143】

【0144】

【0145】

【0146】

【0147】

【0148】

【0149】

【0150】

【0151】

【0152】

【0153】

【0154】

【0155】

【0156】

【0157】

【0158】

【0159】

【0160】

【0161】

【0162】

【0163】

【0164】

【0165】

【0166】

【0167】

【0168】

【0169】

【0170】

【0171】

【0172】

【0173】

【0174】
【表5】

【0175】

【0176】
また、1つの光学異性体が、他のものよりも好適な特性を有する可能性もあり、したがって、本願の開示事項は、その光学異性体が、本発明の方法にしたがって有益な生理活性を有するならば、その光学異性体を含んでもよいことを認識するべきである。特段の明記がなければ、本願における光学的活性の異性体は、その構造が一員である化合物の分類についてその構造が本願に記載の活性を有するならば、その化合物の全ての鏡像異性体又はジアステレオマーを包含するものである。
【0177】
【表6】

【0178】
【表7A】

【0179】
【表7B】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1の構造を有する化合物、

ここに、mは、0、1、2、又は3、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよく、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよい、
並びに、これらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物、及び異性体を含む、化合物。
【請求項2】
nが2である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
mが2である請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
が、H、Cl、又はOMeである請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
NR13(CH14が、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択された、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
式2の構造を有する化合物、

ここに、mは、0、1、2、又は3、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよく、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよい、
並びに、これらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物、及び異性体を含む、化合物。
【請求項8】
nが2である請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
mが2である請求項7に記載の化合物。
【請求項10】
が、H、Cl、又はOMeである請求項7に記載の化合物。
【請求項11】
NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい、請求項7に記載の化合物。
【請求項12】
NR13(CH14が、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択された、請求項7に記載の化合物。
【請求項13】
式3の構造を有する化合物、

ここに、mは、0、1、2、又は3、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよく、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよい、
並びに、これらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物、及び異性体を含む、化合物。
【請求項14】
nが2である請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
mが2である請求項13に記載の化合物。
【請求項16】
が、H、Cl、又はOMeである請求項13に記載の化合物。
【請求項17】
NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい、請求項13に記載の化合物。
【請求項18】
NR13(CH14が、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択された、請求項13に記載の化合物。
【請求項19】
式5の構造を有する化合物、

ここに、mは、1又は2、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14、及びR20は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよく、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよい、
並びに、これらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物、及び異性体を含む、化合物。
【請求項20】
nが2である請求項19に記載の化合物。
【請求項21】
mが2である請求項19に記載の化合物。
【請求項22】
10が、H、Cl、又はOMeである請求項19に記載の化合物。
【請求項23】
NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい、請求項19に記載の化合物。
【請求項24】
NR13(CH14が、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択された、請求項19に記載の化合物。
【請求項25】
式6の構造を有する化合物、

ここに、mは、1又は2、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14、及びR20は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよく、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよい、
並びに、これらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物、及び異性体を含む、化合物。
【請求項26】
nが2である請求項25に記載の化合物。
【請求項27】
mが2である請求項25に記載の化合物。
【請求項28】
10が、H、Cl、又はOMeである請求項25に記載の化合物。
【請求項29】
NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい、請求項25に記載の化合物。
【請求項30】
NR13(CH14が、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択された、請求項25に記載の化合物。
【請求項31】
表4の構造を有する化合物、及びそれらの薬理学的に許容される塩。
【請求項32】
薬理学的に許容される担体中に請求項1に記載の化合物の治療上の有効量を含む組成物。
【請求項33】
薬理学的に許容される担体中に請求項7に記載の化合物の治療上の有効量を含む組成物。
【請求項34】
薬理学的に許容される担体中に請求項13に記載の化合物の治療上の有効量を含む組成物。
【請求項35】
薬理学的に許容される担体中に請求項19に記載の化合物の治療上の有効量を含む組成物。
【請求項36】
薬理学的に許容される担体中に請求項25に記載の化合物の治療上の有効量を含む組成物。
【請求項37】
薬理学的に許容される担体中に請求項31に記載の化合物の治療上の有効量を含む組成物。
【請求項38】
哺乳動物に、請求項1に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項39】
哺乳動物に、請求項7に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項40】
哺乳動物に、請求項13に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項41】
哺乳動物に、請求項19に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項42】
哺乳動物に、請求項25に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項43】
哺乳動物に、請求項31に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項44】
哺乳動物に、表1に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項45】
哺乳動物に、表2に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項46】
哺乳動物に、表3に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項47】
哺乳動物に、表4Aに記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項48】
哺乳動物に、式4の化合物、又はこれらの全ての薬理学的に許容される塩、誘導体、プロドラッグ、代謝物、溶媒和物、水和物もしくは異性体の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法であって、

ここに、mは、1又は2、nは、0、1、2、3、4、又は5であり、
、R13、及びR14は、それぞれ、H、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、シクロアルキル、OR15、SR15、NR1516(R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)、N又はOから選択される3以下のヘテロ原子を有するヘテロシクロアルキル(該へテロ原子がNのとき、該環の任意の炭素がさらに置換されてもよい)、フェニルもしくは多環芳香族、ヘテロ原子のNもしくはOを有するヘテロアリール、アラルキル、及びアルキルアリールから独立して選択され、
、R、R、R、R、R、R、R、R10、R11、R12、R14、及びR20は、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、CF、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、C〜Cアルコキシ、及びNR1516(ここに、R15とR16は、それぞれ、HとC〜Cアルキルから独立して選択される)から独立して選択され、
ここに、該R基はいずれも、置換又は非置換であってもよく、NR13(CH14又はその一部は結合して、ピペリジン、ピロリジン、テトラヒドロイソキノリン、及びピペラジンから選択された置換又は非置換の環を形成してもよく、
ここに、置換基はいずれも、水素、メチル、ヒドロキシ、スルフヒドリル、アルコキシ、チオアルコキシ、アルキル、ハロゲン、CN、CF、NO、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、COOR17、CONR1819、NR1819、NR18COR19、NR18SO19、及びNR17CONR1819から独立して選択され、ここに、R17、R18、及びR19は、独立して、Rについて記載したものと同等であり、それぞれのシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、及びアリールは、Rから選択された基によってさらに置換されてもよい、
哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項49】
nが2である請求項48に記載の方法。
【請求項50】
mが2である請求項48に記載の方法。
【請求項51】
10が、H、Cl、又はOMeである請求項48に記載の方法。
【請求項52】
NR13(CH14がピペラジンの場合、C=Oに結合していない環Nは、H、C〜Cアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、及びアリールスルホニルから選択された基で置換されてもよい、請求項48に記載の方法。
【請求項53】
NR13(CH14が、N,N−ジアルキル、N−アルキル−N−アルケニル、N−アルキル−N−アルキルアミノアルキル、及びN−アルキル−N−アルコキシアルキルから選択された、請求項48に記載の方法。
【請求項54】
哺乳動物に、請求項1〜31に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における特定の遺伝子の組の発現レベルの変化に伴う疾病を予防又は治療する方法。
【請求項55】
異常な遺伝子発現によって変調した疾病を予防又は治療する方法であって、該疾病が、癌、心臓血管疾患、関節炎、骨粗鬆症、炎症、歯周病、及び皮膚疾患からなる群より選択され、こうした治療又は防止を必要とする哺乳動物に、請求項1〜31に記載の化合物の有効量を投与することを含む予防又は治療方法。
【請求項56】
該疾病が癌であり、該治療が、腫瘍の成長、転移、又はその双方を予防、抑止、又は復帰する請求項55に記載の方法。
【請求項57】
該癌が大腸癌である請求項55に記載の方法。
【請求項58】
該大腸癌が腺癌である請求項57に記載の方法。
【請求項59】
遺伝子の組の各員の発現が、請求項1〜31に記載の化合物による治療の結果として変調される遺伝子の組。
【請求項60】
該接触の結果として、該遺伝子の組の各員の発現が増加する又は該遺伝子の組の各員が減少する請求項59に記載の遺伝子の組。
【請求項61】
該遺伝子の組の員が、表6において特定される遺伝子から選択された請求項59に記載の遺伝子の組。
【請求項62】
該遺伝子の組が細胞内に存在する請求項59に記載の遺伝子の組。
【請求項63】
複数の遺伝子のサブセットを含む遺伝子のセットであって、該複数の各サブセットが、請求項58に記載の方法によって特定される遺伝子の組である遺伝子のセット。
【請求項64】
請求項59に記載の遺伝子の組の発現を変調する薬剤を特定する方法であって、
(a)ある化合物を、請求項59に記載の遺伝子の組の各員に対応する1又は複数のポリヌクレオチドを含むテスト系に、該遺伝子の組の員が発現する条件下で接触させ、
(b)該接触の結果として、工程(a)におけるその1又は複数のポリヌクレオチドの各々の発現の変化を測定する、
ことを含み、工程(b)の該発現における変化は、該遺伝子の組の員の変調を示し、それによって、該遺伝子の組の発現を変調する薬剤として該テスト化合物を特定する、薬剤を特定する方法。
【請求項65】
該発現における変化が、該1又は複数のポリヌクレオチドの発現の減少である請求項64に記載の方法。
【請求項66】
該発現における変化が、該1又は複数のポリヌクレオチドの転写の変化である請求項64に記載の方法。
【請求項67】
該発現における変化が、該ポリヌクレオチドによってコード化されたポリペプチドの活性の変化を測定することによって求められる請求項64に記載の方法。
【請求項68】
該テスト系が、該ポリヌクレオチドを含む細胞である請求項64に記載の方法。
【請求項69】
該細胞が癌細胞である請求項68に記載の方法。
【請求項70】
該癌細胞が大腸癌細胞である請求項69に記載の方法。
【請求項71】
該大腸癌細胞が腺癌細胞である請求項70に記載の方法。
【請求項72】
該細胞が、該遺伝子のセットを含むように設計された組換え型細胞である請求項71に記載の方法。
【請求項73】
請求項64に記載の方法を用いて活性を有すると特定された化合物。
【請求項74】
該遺伝子の組が、表6の遺伝子のサブセットを含む請求項59に記載の遺伝子の組。
【請求項75】
該遺伝子の組が、表7Aの遺伝子を含む請求項59に記載の遺伝子の組。
【請求項76】
該遺伝子の組が、表7Bの遺伝子を含む請求項59に記載の遺伝子の組。
【請求項77】
哺乳動物に、表4Bに記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。
【請求項78】
哺乳動物に、表5に記載の化合物の有効量を投与することを含む、哺乳動物における癌又は腫瘍転移を予防、治療、又は回復する方法。

【公表番号】特表2009−527479(P2009−527479A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555401(P2008−555401)
【出願日】平成19年2月16日(2007.2.16)
【国際出願番号】PCT/US2007/004247
【国際公開番号】WO2007/098086
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(501128379)アバロン ファーマシューティカルズ,インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】