説明

ヒータランプ

【課題】 狭い領域において温度分布の均一性を失わしめる要因となる温度変化が生じた場合であっても、被処理物を均一に加熱することのできるとともに、小型化が可能な加熱装置用のヒータランプを提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明のヒータランプは、光透過性材料からなる1本の発光管の内部にフィラメントが配設されてなるヒータランプにおいて、前記フィラメントは、軸方向で複数に分割され、一方の端部に配置されたフィラメントと他方の端部に配置されたフィラメントは、少なくとも別個の給電装置に接続されてそれぞれ独立して給電されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒータランプに関するものであり、特に、被処理物を加熱する目的で放射される光を被処理物に照射するためのヒータランプに係る。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体製造工程においては、成膜、酸化拡散、不純物拡散、窒化、膜安定化、シリサイド化、結晶化、イオン注入活性化等様々なプロセスにおいて、加熱処理が採用されている。半導体製造工程における歩留まりや品質の向上には、急速に半導体ウエハ等の被処理物の温度を上昇させたり下降させたりする急速熱処理(RTP:Rapid Thermal Processing)が望ましい。RTPにおいては、白熱ランプ等の光源からの光照射を用いた光照射式加熱処理装置が広く用いられている。
【0003】
光透過性材料からなる発光管の内部にフィラメントが配設されてなる白熱ランプは、投入電力の90%以上が全放射され、被処理物を接触することなく加熱することが可能であることから、光を熱として利用できる代表的なランプである。このような白熱ランプを、ガラス基板や半導体ウェハの加熱用熱源として使用した場合、抵抗加熱法に比して被処理物の温度を高速にて昇降温させることができる。すなわち、光照射式加熱処理によれば、例えば、被処理物を1000℃以上の温度にまで、十数秒から数十秒で昇温させることが可能であり、光照射停止後、被照射体は急速に冷却される。このような光照射式加熱処理は、通常、複数回に渡って行われる。
【0004】
ここで、被処理物が例えば半導体ウエハであるとき、半導体ウエハを加熱する際に半導体ウエハに温度分布の不均一が生じると、半導体ウエハにスリップと呼ばれる現象、すなわち結晶転移の欠陥が発生し不良品となる恐れがある。そのため、光照射式加熱処理装置を用いて、半導体ウエハのRTPを行う場合は、半導体ウエハ全面の温度分布が均一になるように、加熱、高温保持、冷却を行う必要がある。すなわち、RTPにおいては、被処理物の高精度な温度均一性が求められている。
【0005】
従来の加熱装置として、特許文献1には、ガラス基板や半導体ウェハの加熱に白熱ランプから放射される光を利用する加熱装置が開示されている。この加熱装置は、図11に示すように、光透過性材料で形成されたチャンバー内に被処理物を収納し、このチャンバー外の上下両段に複数本の白熱ランプを上下で対向し、かつ互いに交差するように配置し、これらの白熱ランプによって被処理物を両面から光照射して加熱するように構成されている。
【0006】
図12は、前記装置を簡略化して上下両段に設けられる加熱用白熱ランプと被処理物とを取出して示した斜視図である。同図に示すように、上下両段に設けられる加熱用白熱ランプは、管軸が交差するように配置されているので、被処理物を均一に加熱することができる。また、この装置によれば、被処理物のエッジ部分での放熱作用による温度低下を防止することができる。例えば、被処理物に対して、上段の両端にある加熱用白熱ランプL1,L2のランプ出力を中央部の加熱用ランプL3のランプ出力に比べて大きくすることにより、被処理物のエッジ部分A1−A2、B1−B2の温度を上げることが可能であり、また、被処理物に対して下段の両端にある加熱用白熱ランプL4、L5のランプ出力を中央部の加熱用白熱ランプL6のランプ出力に比べて大きくすることにより、被処理物のエッジ部分A1−B1、A2−B2の温度を上げることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−37833号
【特許文献2】特開2002−203804号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記従来の加熱装置においては以下に示すような問題が生じることが判明した。具体的には、例えば被処理物が半導体ウェハである場合、半導体ウェハ表面にスパッタリング法などにより金属酸化物からなる膜が形成され、また、イオン注入により不純物添加物がドーピングされていることが一般的であるが、このような金属酸化物の膜厚及び不純物イオンの注入具合にバラツキが生じることがあることにより、かかる要因に影響を受けて半導体ウェハに温度分布が生じることがある。このような温度分布は、図12に示す線状のエッジ部分A1−A2、B1−B2、A1−B1、A2−B2などに限らず、例えばA1部周辺のみといった狭小な領域で生じる場合がある。
【0009】
然るに、上記従来の加熱装置によれば、被処理物のエッジ部分A1−A2、B1−B2、A1−B1、A2−B2などの線状のエッジ部分での温度低下を防止することはできるものの、図12におけるA1−A2の線状のエッジ部分において、A1部周辺とB1部周辺が別々の温度低下傾向を示す場合には、この両方を適切な温度状態に制御することができない。すなわち、狭小な領域において温度を制御することができないことから、被処理物の処理温度に温度分布が生じることにより、被処理物に所望な機能を損なってしまうという問題が生じる。
【0010】
ここで、例えば特許文献2には、図13に示すように、ランプハウス内に、U字形状を有しフィラメントへの給電装置が発光管の両端部に設けられているダブルエンドランプを紙面に対し平行方向及び垂直方向に複数個並べて構成される第1のランプユニットと、この第1のランプユニットの下方側に配設された、直線形状を有しフィラメントへの給電装置が発光管の両端部に設けられているダブルエンドランプを紙面に沿って紙面と垂直方向に複数個並べて構成される第2のランプユニットとを備えて構成され、第2のランプユニットの下方に配設された半導体ウェハ等の被処理体に対し加熱処理を行なうための熱処理装置が開示されている。
【0011】
このような熱処理装置によれば、被処理体において、他の部分に比して温度が低くなる傾向にある、被処理体を戴置するサポートリングとの接続部の温度を上昇させるため、接続部の上方に位置する第1のランプユニットに属するU字形状のランプを高出力にするよう制御する機構を備えてなることが示されている。
【0012】
特許文献2には、このような熱処理装置を、概略、以下のように使用することが示されている。まず、被処理物である半導体ウエハの加熱領域を中心対称で同心の複数のゾーンに分割する。そして、第1、第2のランプユニットの各ランプによる照度分布を組み合わせて、各ゾーンに各々対応する半導体ウエハの中心に対して中心対称である合成照度分布パターンを形成して、各ゾーンの温度変化に応じた加熱を行うというものである。その際、ランプからの光の照度バラつきの影響を抑制するために、被処理物である半導体ウエハを回転させている。すなわち、同心に配置される各ゾーンを個別の照度で加熱することが可能となっている。従って、特許文献2に示される技術によれば、被処理体において狭小な領域での温度制御が可能であることから、上記の問題点を良好に解決することができると考えられる。
【0013】
このような熱処理装置は、実用上は以下に示すような問題点が生じるおそれがあると考えられる。U字形状を有するランプは、水平部と一対の垂直部とから構成されているが、発光に寄与するのは内部にフィラメントが配設されている水平部のみである。そして、各ランプの内部に配設されたフィラメントは、ランプの水平部と同軸上において隣接するランプの内部に配設されたフィラメントとの間に、各垂直部を構成する石英ガラス壁が2つ介在している。さらに、水平部と垂直部との境界に曲面が形成されて水平部と垂直部とが一体となっているため、隣接するフィラメント間には、かなりの全長を有する発光に寄与しない空間が存在することになる。従って、この空間の直下に対応する部分では温度分布が生じる、という問題が生ずるものと考えられる。
【0014】
すなわち、各ゾーンに対応する、第1、第2のランプユニットの各ランプによる照度分布を組み合わせて半導体ウエハ中心対称の合成照度分布を形成したとしても、上記空間の直下に対応する部分では照度が比較的急峻に変化(低下)する。よって、各ゾーンの温度変化に応じた加熱を行おうとしても、上記空間の直下に対応する部分近傍で生じる温度分布を小さくすることは、比較的難しいものと考えられる。
【0015】
さらに、このような熱処理装置は、近年、ランプユニットを配設するためのスペース(主として高さ方向)を極力小さくする傾向にあることから、U字形状を有するランプを使用すると、ランプの垂直部に対応するスペースが必要となるため、高さ方向における省スペース化の観点からは好ましくない。
【0016】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、熱処理される基板上における場所的な温度変化の度合いの分布が、基板形状に対し非対称である場合においても、基板を均一に加熱することが可能である。また、狭い領域において温度分布の均一性を失わしめる要因となる温度変化が生じた場合であっても、被処理物を均一に加熱することができるとともに、小型化することが可能な加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明のヒータは、光透過性材料からなる1本の発光管の内部にフィラメントが配設されてなるヒータにおいて、前記フィラメントは、軸方向で複数に分割され、各分割されたフィラメントがそれぞれ独立に給電されることを特徴とする。さらに、前記各フィラメント間に、絶縁体が配設されたことを特徴とする。さらに、前記各フィラメントに電気的に接続された給電線は、それぞれ前記発光管の反対端部に導出されていることを特徴とする。さらに、前記各フィラメントに電気的に接続された給電線は、それぞれ前記発光管の同一端部に導出されていることを特徴とする。さらに、前記給電線は、前記フィラメントに対向する箇所が絶縁管で被覆されてなることを特徴とする。さらに、前記発光管は、その断面が長円形状を有することを特徴とする。
【0018】
本発明の加熱装置は、上記ヒータを複数本並列配置してなることを特徴とする。
【0019】
また、本発明の加熱装置は、上記ヒータからなるランプユニットを有し、当該ランプユニットから放出される光を被処理物に照射して被処理物を加熱する加熱装置であって、上記ランプユニットは上記ヒータが複数本並列配置してなることを特徴とする。
この場合、上記ランプユニットを構成するヒータの本数をn、各ヒータが有する分割されたフィラメントの個数をmとするとき、上記ランプユニットが備えるn×m個のフィラメントの少なくとも2つが共通の給電手段により給電されるように構成してもよい。
【0020】
あるいは、本発明の加熱装置は、上記ヒータが複数本並列配置してなる第1のランプユニットと、上記ヒータが複数本並列配置してなる第2のランプユニットとを有し、当該第1のランプユニットおよび第2のランプユニットから放出される光を被処理物に照射して被処理物を加熱する加熱装置であって、上記第1のランプユニットと上記第2ランプユニットとは互いに対向する位置に配置されていて、上記第1のランプユニットを構成する各ヒータの軸方向と上記第2のランプユニットを構成する各ヒータの軸方向とは互いに交差していることを特徴とする。この場合、被処理物を上記第1のランプユニットと上記第2ランプユニットとの間の空間に配置するようにしてもよい。
【0021】
また、上記第1のランプユニットを構成するヒータの本数をn1、上記ヒータが有する分割されたフィラメントの個数をm1とし、上記第2のランプユニットを構成するヒータの本数をn2、上記ヒータが有する分割されたフィラメントの個数をm2とするとき、上記第1のランプユニットおよび第2のランプユニットが備えるn1×m1+n2×m2個のフィラメントの少なくとも2つが共通の給電手段により給電されるように構成してもよい。
さらに、本発明の加熱装置は、各ヒータ毎にフィラメントの全長を被処理物に適合するよう変えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明のヒータによれば、光透過性材料からなる発光管の内部にフィラメントが配設され、このフィラメントが軸方向で複数に分割され、各分割されたフィラメントがそれぞれ独立に給電される構成である。よって、本発明のヒータを有する光照射式加熱装置を用いて被処理物を加熱処理する際、被処理物において狭小な領域で温度分布が不均一になったとしても、当該領域に位置するヒータのフィラメントに対する給電を調整することが可能である。これにより、従来構造のフィラメントを備えるヒータを有する光照射式加熱装置を使用した場合に比して、被処理物上の狭小な領域における温度を調整することができることから、被処理物の全体にわたって均一な温度分布を実現することができる。さらには、必要な箇所のみの温度を上昇させることが可能であり、必要な電気エネルギーを最小限に抑えられることから、環境保全の観点からも優れている。
【0023】
しかも、1本の発光管の内部に、発光管の軸方向に複数の分割されたフィラメントが発光管の軸に沿って配置されてなる構成のヒータを複数並べて配置したランプユニットを有する加熱装置を構成することにより、従来の装置の如く、個々のフィラメント間において、2つの石英ガラス壁が介在する等の理由によりかなりの全長を有する発光に寄与しない空間が存在することがなく、個々のフィラメント間の離間距離を極めて小さくすることができるため、従来の装置に比して被処理物の温度分布を均一にすることができるとともに、ヒータを配設するのに必要なスペース(主として高さ方向)が小さくなることにより、加熱装置の小型化を実現することができる。
【0024】
また、上記したランプユニットを有する加熱装置によれば、ランプユニットから所定の距離だけ離間した被処理物上の照度分布を精密、かつ、任意の分布に設定することが可能となる。よって、被処理物上の照度分布を被処理物形状に対して非対称に設定することが可能となる。そのため、被処理物である熱処理される基板上における場所的な温度変化の度合いの分布が基板形状に対し非対称である場合においても、それに対応して、被処理物上の照度分布を設定することが可能となり、被処理物を均一に加熱することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の加熱装置を示す正面断面図である。
【図2】図1に示す第1のランプユニット及び第2のランプユニットの配列を示す平面図である。
【図3】ランプユニットの概念図である。
【図4】ヒータの各フィラメントと電源部との接続例を説明する概念図である。
【図5】複数ヒータにまたがる複数のフィラメントへの電力供給例を示す概念図である。
【図6】1つのヒータの複数のフィラメントへの電力供給例を示す概念図である。
【図7】本発明の第1の実施形態に係るヒータを説明するためのである。
【図8】本発明の第2の実施形態に係るヒータを示す斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施形態に係るヒータを示す斜視図である。
【図10】本発明の第4の実施形態に係るヒータを示す斜視図である。
【図11】従来の加熱装置を示す正面断面図である。
【図12】従来の加熱装置を示す斜視図である。
【図13】従来の加熱装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の加熱装置の構成例について、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本発明の加熱装置の構成例を示す正面断面図である。図2は、図1に示す第1のランプユニット10及び第2のランプユニット20の各ヒータ1の配列例を示す平面図である。
【0027】
図1に示すように、加熱装置100は、第1のランプユニット10、第2のランプユニット20、反射板2、第1のランプ固定台(不図示)、第2のランプ固定台3、石英窓4を備えて構成され、第1のランプユニット10及び第2のランプユニット20から放射された光を直接或いは反射板2で反射させ固定台5に固定された被処理物6に対して照射し、被処理物6を加熱する。
【0028】
反射板2は、例えば無酸素銅からなる母材に金をコートしてなり、第2のランプユニット20の上方に配置され、第1のランプユニット10及び第2のランプユニット20から上方に向けて照射された光を被処理物6側へ反射する。反射板2は、断面が円の一部、楕円の一部、放物線の一部又は平板状の場合が多い。このような反射板2は、後述の冷却風供給ノズル81によって空冷されている。なお、反射板2は水冷されていても良い。
【0029】
第1のランプ固定台は第1のランプユニット10の各ヒータ1(図2に示すヒータ1a、1b、1c、1d、1e、1f、1g、1h、1i、1j)を支持し、第2のランプ固定台3は第2のランプユニット20の各ヒータ1(図2に示すヒータ1k、1l、1m、1n、1o、1p、1q、1r、1s、1t)を支持している。固定台5は、石英、シリコン(Si)、シリコンカーバイド(SiC)等により構成されることが好ましい。
【0030】
さらに、加熱装置100は、電源部7に繋がる電源供給ポート71、冷却ユニット8に繋がる冷却風供給ノズル81、温度計9に繋がる温度測定部91を備えている。温度計9は、電源部7に繋がる温度制御部92を備えている。
【0031】
加熱装置100の内部は、冷却風ユニット8から供給され冷却風供給ノズル81から導入された冷却風が被処理物6を冷却することを防止するため、石英窓4によってランプユニット収納空間S1及び処理空間S2に仕切られている。このランプユニット収納空間S1には、冷却風供給ノズル81から冷却風が導入され、ランプユニット10及びランプユニット20における各ヒータ1に冷却風を吹き付けることにより各ヒータ1を構成する発光管(例えば、後述する発光管11)を冷却する。冷却風供給ノズル81の吹出し口82は、後述する各ヒータ1の封止部に対向して配置され、各ヒータ1の封止部を優先的に冷却する。これは、ヒータの封止部は他の箇所に比して耐熱性が低いことによる。
【0032】
一組の電源供給ポート71は、第1のランプユニット10及び第2のランプユニット20を固定する第1のランプ固定台及び第2のランプ固定台3に電気的に接続されている。第1のランプ固定台は第1のランプユニット10における各ヒータの給電装置(例えば、後述する外部リード18a〜18f等)と電気的に接続されている。また、第2のランプ固定台3は第2のランプユニット20における各ヒータの給電装置(例えば、後述する外部リード18a〜18f等)と電気的に接続されている。このような構成により、第1のランプユニット10及び第2のランプユニット20における各ヒータ1に電源部7から給電がなされる。図1では、1組の電源供給ポートが示されているが、ヒータの個数、後述するヒータ内のフィラメントの分割数や、複数のヒータの電気回路的な分割のさせ方等に応じて、一組の電源供給ポートの個数は決められる。
【0033】
被処理物6の寸法に応じた個数の温度測定部91は、熱電対や光ファイバが使用され、被処理物6に当接或いは近接して各々配置されている。温度計9は、被処理物6からの熱エネルギーに応じた情報が温度測定部91から送信され、この情報に応じた電気信号を温度制御部92に送信する。温度制御部92は、被処理物の種類に応じて目標温度が設定され、被処理物6の温度が当該目標温度に一致するように電源部7から各ヒータ1に供給される給電量を調整する。
【0034】
加熱装置の加熱源を構成する複数のヒータは、上記したように、例えば、光透過性材料からなる発光管の内部にフィラメントが配設されてなる白熱ランプ構造を採用したものである。そして、上記加熱源は、発光管の軸方向に少なくとも1つ以上のフィラメントが並ぶように構成されるヒータが、複数並列に配置されたランプユニットを複数有する。
【0035】
図3は、ランプユニットの概念図である。ランプユニットLUは、例えば、複数のヒータ101,102,103,104,105,106,107から構成される。各ヒータ101,102,103,104,105,106,107は、例えば、それぞれ複数のフィラメントF1,F2、F3を有する。上記複数のフィラメントF1,F2、F3は、それぞれ独立に給電可能な構成となっている。図3の場合は、21個のフィラメントが、それぞれ独立に点灯可能となっている。
【0036】
なお、当然ながら、各ヒータの個数、各ヒータがそれぞれ有するフィラメントの個数は、上記した例に限られるわけではなく、任意に設定することが可能である。
【0037】
すなわち、ランプユニットLUの各ヒータにおけるフィラメントF1,F2,F3は、それぞれ個別の給電装置に接続されている。図4は、ヒータ101の各フィラメントと電源部との接続例を説明する概念図である。図4に示すように、ヒータ101のフィラメントF1は給電装置PS1に接続されている。同様に、フィラメントF2は給電装置PS2に、フィラメントF3は給電装置PS3に接続されている。給電装置PS1、PS2、PS3は、図1に示す電源部7に相当する。主制御部MCは、給電装置PS1、PS2、PS3の動作を制御することにより、ヒータ101のフィラメントF1,F2,F3への給電を個別に制御することが可能である。
【0038】
このようにランプユニットLUを構成することにより、ランプユニットLUから所定の距離だけ離間した被処理物上の照度分布を精密、かつ、任意の分布に設定することが可能となる。よって、被処理物上の照度分布を被処理物形状に対して非対称に設定することが可能となる。そのため、被処理物である熱処理される基板上における場所的な温度変化の度合いの分布が基板形状に対し非対称である場合においても、それに対応して、被処理物上の照度分布を設定することが可能となり、被処理物を均一に加熱することが可能となる。
【0039】
なお、被処理物6の比較的中央部において、隣り合うヒータの有するフィラメントであって、比較的近接して配置される複数のフィラメントから放射される光の強度分布がほぼ等しくなるように設定してもよい場合は、これらの複数のフィラメントへの電力供給は、同一の給電装置を用いて行っても良い。例えば、図5に示すように、被処理物6の比較的中央部において、隣り合うヒータ103,104の各フィラメントF2,F2から放射される光の強度分布がほぼ等しくなるように設定してもよい場合は、ヒータ103のフィラメントF1、F3、ヒータ104のフィラメントF1、F3への給電をそれぞれ独立の給電装置PS1A、PS3A,PS1B,PS3Bで行い、ヒータ103,104の各フィラメントF2,F2への給電は同一の給電装置PS2で行っても良い。
【0040】
また、被処理物6の比較的中央部において、各ヒータの隣り合うフィラメントから放射される光の強度分布がほぼ等しくなるように設定してもよい場合は、これらの隣り合うフィラメントへの電力供給は、同一の給電装置を用いて行っても良い。例えば、図6に示すように、被処理物6の比較的中央部において、ヒータ103の隣り合うフィラメントF2,F3から放射される光の強度分布がほぼ等しくなるように設定してもよい場合、また、ヒータ104の隣り合うフィラメントF2,F3から放射される光の強度分布がほぼ等しくなるように設定してもよい場合は、ヒータ103のフィラメントF1、F4、ヒータ104のフィラメントF1、F4への給電をそれぞれ独立の給電装置PS1A、PS3A,PS1B,PS3Bで行い、ヒータ103の隣り合うフィラメントF2,F3への給電は同一の給電装置PS2Aで行い、ヒータ104の隣り合うフィラメントF2,F3への給電は同一の給電装置PS2Bで行っても良い。
【0041】
すなわち、ランプユニットを構成するヒータの本数をn、各ヒータが有する分割されたフィラメントの個数をmとするとき、ランプユニットが備えるn×m個のフィラメントの少なくとも2つが共通の給電装置により給電されるようにしてもよい。
また、ランプユニットが2組ある場合、第1のランプユニットを構成するヒータの本数をn1、各ヒータが有する分割されたフィラメントの個数をm1とし、第2のランプユニットを構成するヒータの本数をn2、各ヒータが有する分割されたフィラメントの個数をm2とするとき、第1のランプユニットおよび第2のランプユニットが備えるn1×m1+n2×m2個のフィラメントの少なくとも2つが共通の給電装置により給電されるようにしてもよい。
【0042】
まとめると、ランプユニットLUに含まれる全てのフィラメント各々に個別に給電装置を設けるのではなく、所望の照度分布によっては、複数のフィラメントを1台の給電装置に接続するようにしてもよい。言い換えれば、複数のヒータの電気回路的な分割のさせ方は、所望の照度分布に応じて任意に設定してよい。なお、前記図4ないし図6においては、ヒータ101、103、104の各フィラメントF1,F2,F3,F4の両端と給電装置PS1、PS1A、PS1B、PS2、PS2A、PS2B、PS3、PS3A、PS3Bとを接続する各給電線は、ヒータ101、103、104の両端部以外から引き出されているように示されている。これは、フィラメントと給電装置との接続様態の理解を容易にするため概念的に示したものであり、実際は、後述する図7ないし図10に示すように、上記各給電線は全てヒータ101、103、104の両端部から引き出される。例えば、後述する図7においては、フィラメント14aと給電装置19aとを接続する給電線は、給電線15a、15dがヒータ1の両端にそれぞれ設けられた封止部12a、12bから外部に突出する外部リード18a、18dと金属箔13a、13dを介して接続される構造を取ることにより、ヒータ1の両端から引き出されている。同様に、フィラメント14bと給電装置19bとを接続する給電線は、給電線15b、15cが封止部12a、12bから外部に突出する外部リード18b、18cと金属箔13b、13cを介して接続される構造を取ることにより、ヒータ1の両端から引き出されている。
【0043】
上記した加熱装置100が備える第1のランプユニット10、第2のランプユニット20は、ランプユニットLUの概念を踏襲しており、各ヒータ1は、発光管の軸方向に少なくとも1つ以上のフィラメントが並ぶように構成されている。
【0044】
図1、2に示すように、第1のランプユニット10は、被処理物6の上方において、紙面に垂直方向に10個のヒータ1(1a,1b,・・・・・1j)が並列配置されてなり、第2のランプユニット20は、被処理物6の上方においてランプユニット10の上方に接触乃至離間して配置され、紙面に平行に10個のヒータ1(1k,1l,・・・・・1t)が並列配置されてなる。そして、各ヒータ1は、被処理物外の領域に無駄な光が照射されることを極力低減すべく、その発光領域(後述のフィラメントの全長)が、被処理物において各フィラメントが横切る領域の長さに少なくとも対応しているように構成してもよい。「少なくとも対応している」とは、各フィラメントの全長が、被処理物においてフィラメントが横切る領域の長さと同一である場合のみならず、被処理物において各フィラメントが横切る領域の長さを若干超えている場合も意味するものとする。
【0045】
ここで、発光領域が、被処理物において各フィラメントが横切る領域の長さに少なくとも対応するように設定する場合、各ヒータ1(1a,1b,・・・・・1j)、(1k,1l,・・・・・1t)におけるフィラメントの個数を調整してもよい。例えば、図2において、ヒータ1a、1jにおけるフィラメントの個数を1、ヒータ1b、1iにおけるフィラメントの個数を2、ヒータ1c、1hにおけるフィラメントの個数を3といったように調整してもよい。
【0046】
あるいは、各ヒータ1(1a,1b,・・・・・1j)、(1k,1l,・・・・・1t)におけるフィラメントの個数は同数で、1個あたりのフィラメントの長さを各ヒータ1(1a,1b,・・・・・1j)、(1k,1l,・・・・・1t)で相違するようにしてもよい。例えば、ヒータ1bの各フィラメントF1,F2,F3の長さを、ヒータ1aの各フィラメントF1,F2,F3の長さより長く構成し、ヒータ1cの各フィラメントF1,F2,F3の長さを、ヒータ1bの各フィラメントF1,F2,F3の長さより長く構成して、各フィラメントF1,F2,F3の全長が、被処理物においてフィラメント(F1,F2,F3)が横切る領域の長さに少なくとも対応するように設定してもよい。
【0047】
また、フィラメントの個数、長さ双方を考慮してもよい。
【0048】
なお、被処理物6は、第1のランプユニット10と第2のランプユニット20の間に配置しても良い。
【0049】
第1のランプユニット10、第2のランプユニット20の具体的構成例としては、例えば、特許文献2に記載されている第1のランプユニットの構成をそのまま採用することも可能である。しかしながら、上記したように、特許文献2に記載されている第1のランプユニットに用いられている水平部と一対の垂直部とから構成されているU字形状を有するランプは、個々のランプが無視できない程度の空間を介在して離間して配置されることとなるため、この空間の直下に対応する部分では照度が比較的急峻に変化(低下)する。そのため、各ランプを個別に点灯したり、各ランプへの供給電力を個別に調整して、被処理物上の照度分布を任意に設定しようとしても、上記空間の影響により、被処理物上の照度分布設定が著しく制限され、実用上、問題となる可能性が大きい。さらに、U字形状を有するランプを使用すると、ランプの垂直部に対応するスペースが必要となるため、小スペース化の観点からは好ましくない。そこで、発明者らは、上記した特許文献2に記載されている第1のランプユニットの構成から生じる実用上の不具合を回避するために、下記に示す新しい構造のヒータを考案した。
【0050】
以下、本発明の第1の実施形態に係るヒータについて図7を用いて説明する。図7(a)は斜視図を示し、図7(b)は図7(a)に示すA−A´線にて切断した断面図を示す。
【0051】
図7に示すように、ヒータ1は、例えば石英ガラス等の光透過性材料からなり、その軸方向に直交する平面で切断した場合の断面が長円形状を有する発光管11を備える。「長円形状」とは、前記断面における長手方向の長さaが、長手方向に垂直な方向の長さbに比して大きい形状(例えば、楕円形状等)の全てを意味するものとする。なお、発光管11は、前記断面が円形状のものであっても良い。発光管11は、一端側に金属箔13a,13bが埋設されピンチシールにより封止部12aが形成され、他端側に金属箔13c,13dが埋設されて一端側と同様にして封止部12bが形成され、発光管内部が気密に封止されている。発光管11の内部には、例えばタングステンからなり、発光管11の軸方向において2つに分割されたフィラメント14a,14bが、同一軸上に発光管11の軸に沿って空間L1を隔てて配設されている。この空間L1は、フィラメント14a、14bが存在しない空間であって非発光領域であるため、空間L1の全長が大きすぎる場合、被処理物上での照射光の強度分布にバラツキが生じる。そのため空間L1の全長はできるだけ小さい方が望ましい。しかしながら、空間L1の全長が小さすぎる場合、長手方向において対向するフィラメント14aと14bとの間で不所望な放電が発生し易くなる。そのため空間L1の全長は、ある程度大きい必要がある。これらの知見を踏まえ、実験した結果、被処理物上における照射光の強度分布のバラツキを極力小さくすることができ、かつ、長手方向において対向するフィラメント14aと14bとの間で不所望な放電が発生することのないようにするには、空間L1の全長が2mm〜8mmの範囲に設定されることが好ましいことが判明した。空間L1の全長は2mm〜5mmの範囲に設定されることが特に好ましく、例えば5mmである。
【0052】
本発明のヒータは、上記2つに分割されたフィラメントがそれぞれ独立に給電されることが特徴であり、詳細には以下のとおりである。
フィラメント14aは、一端側に金属箔13aに接続された給電線15aが電気的に接続され、他端側に金属箔13dに接続された給電線15dが電気的に接続されている。詳細には、給電線15dは、フィラメント14bと対向する箇所の外側が、例えば石英ガラスからなる絶縁管16bで被覆され、フィラメント14aの他端側に接続されている。これにより、対向するフィラメント14bと給電線15dの間で不所望な放電が発生することを確実に防止することができる。フィラメント14bは、フィラメント14aと同様にして、一端側に金属箔13cに接続された給電線15cが電気的に接続され、他端側に金属箔13bに接続された給電線15bが電気的に接続されている。給電線15bは、フィラメント14aと対向する箇所が、例えば石英ガラスからなる絶縁管16aで被覆され、フィラメント14bの他端側に接続されている。
【0053】
このようなフィラメント14a及び14bは、発光管11の軸方向に複数個配設された、発光管11の内壁と絶縁管16a或いは16bの間に挟持されたアンカー17によって支持されている。
【0054】
さらに、封止部12a側の金属箔13a及び13bには、それぞれ封止部12aから外部に導出する外部リード18a及び18bが電気的に接続され、封止部12b側の金属箔13c及び13dにも同様にして、それぞれ外部リード18c及び18dが電気的に接続されている。これにより、フィラメント14aは外部リード18a及び18dに電気的に接続され、フィラメント14bは外部リード18b及び18cに電気的に接続されている。
【0055】
そして、上記構成のヒータ1は、外部リード18aと18dの間に第1の給電装置19aが接続され、外部リード18bと18cの間に第2の給電装置19bが接続され、フィラメント14a及び14bがそれぞれ別個の給電装置によって独立に給電されることにより、ヒータが点灯駆動する。給電装置19a及び19bは、可変電源であり、例えば後述のように、フィラメント14a直下の被処理物の温度が、フィラメント14bの直下の被処理物の温度よりも低いような場合においては、フィラメント14aへの給電を増加させることにより、フィラメント14aから放射される光量を増加させるよう調整することができる。
【0056】
上記した第1の給電装置19a、第2の給電装置19bは、図1に示した加熱装置における電源部7に対応する。ここで、ヒータ1(1a、・・・、1j、1k、・・・、1t)それぞれが図7に示すような構造であって、各フィラメント各々に給電装置が接続されている場合は、40個の給電装置が上記した電源部7に相当する。なお、各給電装置は、フィラメントに対して、DC電力を供給するものでもよいし、AC電力を供給するものでもよい。
【0057】
以上のような本発明の第1の実施形態に係るヒータによれば、図7に示すように、フィラメント14aに電気的に繋がる一対の外部リード18a及び18dが発光管の両端に連続する封止部12a及び12bからそれぞれ外部に導出し、フィラメント14bに電気的に繋がる一対の外部リード18b及び18cが封止部12a及び12bからそれぞれ外部に導出していることにより、ヒータに高電圧を印加する場合に、一対の外部リードが同一の封止部に存在しないため、絶縁抵抗不良や漏電などの不具合が発生しにくい、などの効果がある。
【0058】
ここで、第1の給電装置19a、第2の給電装置19bが、各フィラメント14a及び14bにDC電力を供給する場合を考える。第1の給電装置19aの高電圧側が外部リード18aに接続され、第2の給電装置19bの低電圧側が外部リード18bに接続された場合、外部リード18aと外部リード18bとの電位差が大きくなる。よって、場合によっては、封止部12aにおいて、絶縁抵抗不良や漏電などの不具合が発生する可能性も無いとは言えない。よって、同一の封止部に存在する各フィラメントの各外部リードへの給電は、各外部リード間の電位差が大きくならないように設定することが望ましい。図7に示すヒータの場合、例えば、第1の給電装置19aの高電圧側を外部リード18aに接続するとともに、第2の給電装置19bの高電圧側を外部リード18bに接続するように構成する。
【0059】
一方、第1の給電装置19a、第2の給電装置19bが、各フィラメント14a及び14bにAC電力を供給する場合を考える。ここで、一対の外部リード18a及び18dに第1の給電装置19aから印加される電圧の電圧波形の位相と、一対の外部リード18b及び18cに第2の給電装置19bから印加される電圧の電圧波形の位相とにずれが生じた場合、ある時点においては、封止部12aにおける外部リード18aと外部リード18bとの電位差や封止部12bにおける外部リード18cと外部リード18dとの電位差が大きくなる。よって、場合によっては、封止部12aおよび12bにおいて、絶縁抵抗不良や漏電などの不具合が発生する可能性も無いとは言えない。よって、外部リード18aと外部リード18bの双方、もしくは外部リード18cと外部リード18dの双方は接地されていることが望ましい。
【0060】
また、給電線15b及び15dは、フィラメント14a及び14bに対向する箇所が絶縁管16a及び16bで被覆されているため、対向するフィラメント14a及び14bとの間で不所望な放電が生じることを確実に防止することができる。
【0061】
さらに、発光管がその軸方向に直交する平面で切断した場合の断面が長円形状を有することにより、図7に示す如く、フィラメント14a及び14bと、給電線15b及び15dを被覆する絶縁管16a及び16bとを、縦方向(図7(b)に示すa方向)において発光管の軸方向に沿って並列配置する、という構成を容易に実現することができる。
【0062】
そして、本発明の第1の実施形態に係るヒータを備えた加熱装置によれば、光透過性材料からなる発光管11の内部にフィラメント14が配設され、各分割されたフィラメント14a及び14bがそれぞれ独立に給電される、という構成のヒータ10を備えることにより、以下の効果を奏するものである。
【0063】
すなわち、図2に示す被処理物6のうち、例えばヒータ1bとヒータ1m乃至1oとが交差する箇所の直下の周辺領域(以下、領域1ともいう)の温度が、被処理物6における他の領域(以下、領域2ともいう)の温度に比して低いような場合、もしくは、領域1における温度上昇の度合いが領域2における温度上昇の度合いより小さいと予め判明しているような場合において、ヒータ1bの領域1に対応するフィラメントへの給電を増加させフィラメントからの発光光量を増加させることにより、領域1と領域2の間に温度分布が生じることを確実に防止し、被処理物6の全体にわたって均一な温度分布を実現することができる。
【0064】
しかも、1本の発光管11の内部に、発光管の軸方向に複数の分割されたフィラメントが、同一軸上に発光管の軸に沿って配置されてなる構成のヒータ1を複数並べて配置して加熱装置を構成することにより、個々のフィラメント14aと14bの間の空間L1の全長を、被処理物上における照射光の強度分布のバラツキを極力小さくすることができ、かつ、長手方向において対向するフィラメント14aと14bとの間で不所望な放電が発生することのない範囲、すなわち、2〜8mmの範囲であって、特に好ましくは2mm〜5mmの範囲と極めて小さくすることができるため、従来の装置に比して被処理物6の温度分布を均一にすることができるとともに、ヒータを配設するのに必要なスペース(主として高さ方向)が小さくなることにより、加熱装置を小型化することができる。
【0065】
また、被処理物6が円形状を有する半導体ウェハであるとき、半導体ウエハ表面を、径方向の幅が略同一で、同心状の複数の円環状仮想領域に分割した場合を考える。なお、一番内側の領域は円形領域とする。この場合、半導体ウエハのエッジ部分を含む最も外側に位置する円環状仮想領域は、領域の外側の円の直径が、他の円環状仮想領域と比較して最大となる。よって、最も外側に位置する円環状仮想領域の面積は、他の円環状仮想領域と比較して最大となる。一方、エッジ部分近傍は、端面からの放熱が発生し、また半導体ウエハを支持する固定台5と接触する部分でもあるため、他の中心に近い円環状仮想領域より、熱が逃げ易く、結果として温度分布が生じやすい。そのため、最も外側に位置する円環状仮想領域は、他の仮想領域と比較して、半導体チップが不良となりやすい。特に、上記したように最も外側に位置する円環状仮想領域は他の領域と比較して面積が最大であるため、不良となる半導体チップの数の多さを無視できない。よって、本発明のヒータを有する加熱源を制御して、最も外側に位置する円環状仮想領域における温度分布が小さくなるように放射する光の強度分布を変えて設定し、温度変化が生じ易い箇所である半導体ウェハのエッジ部分の温度分布を均一にすることにより、多数の良質な半導体チップを供給することが可能となる。
【0066】
被処理物において各ヒータ1の各フィラメントが横切る領域と各フィラメントの全長が同一であると、上記各フィラメントが横切る領域の端部は、フィラメントと給電線との境界部分に相当する。給電線は発光しないので、当該領域への光照射には、ヒータの発光している部分と発光していない部分とが関係する。一方、当該領域以外の光照射は、ヒータの発光部分のみが関係する。結果として、当該領域に照射される光量は、当該端部以外の領域に照射される光量と比較して小さくなり、被処理物のエッジ部分の温度が上記領域の他の箇所に比して低下することにより温度分布が生じる可能性がある。一方、各フィラメントの全長が当該領域を大幅に上回っているとヒータに余分なエネルギーが投入されるので、光エネルギーの利用効率が低くなる。ここで、各ヒータ1において、そのフィラメントの全長を、被処理物において各フィラメントが横切る領域の長さに少なくとも対応させ、特に、各フィラメントの全長が被処理物において各フィラメントが横切る領域の長さを若干超えているように設定することにより、放射される光強度が小さいフィラメントの端部を被処理物のエッジ部分から遠ざけることが可能となり、また、被処理物外の領域に無駄な光が照射されることを極力低減することができる。よって、上記したような問題を生じる心配がない。
【0067】
次に、本発明の第2の実施形態に係るヒータについて、以下に図8を用いて説明する。図8は、本発明の第2の実施形態に係るヒータを示す斜視図である。なお、図8において、図7と同一乃至相当する部分については同一符号で示す。
【0068】
図8に示すように、第2の実施形態に係るヒータ40は、軸方向において分割された2つのフィラメント14aと14bが、同一軸上に発光管11の軸に沿って配設されている。フィラメント14aと14bの間には、例えば石英ガラスからなる絶縁体41が、フィラメント14a及び14bとの間に空間が存在するよう介設されている。なお、絶縁体41とフィラメント14a及び14bとは当接していても良い。給電線15dは、絶縁体41に設けられた貫通孔42を通過するとともに、フィラメント14bと対向する箇所の外側が絶縁管16bで被覆され、一端側が金属箔13dに電気的に接続され、他端側がフィラメント14aに電気的に接続されている。給電線15bは、絶縁体41に設けられた貫通孔43を通過するとともに、フィラメント14aと対向する箇所の外側が絶縁管16aで被覆され、一端側が金属箔13bに電気的に接続され、他端側がフィラメント14bに電気的に接続されている。
【0069】
絶縁体41の軸方向における厚みL2は、フィラメント14aと14bの間で不所望な放電が生じることのないよう1mm〜3mmの範囲であって、例えば2mmである。絶縁体41とフィラメント14a及び/または14bとの間に空間が介在する場合は、被処理物上における照射光の強度分布のバラツキを極力小さくすることができ、かつ、長手方向において対向するフィラメント14aと14bとの間で不所望な放電が発生することのないよう、フィラメント14aと14bとの離間距離L3は、3mm〜8mmの範囲であることが好ましく、特に3mm〜5mmの範囲であることが好ましく、例えば5mmである。
【0070】
このような第2の実施形態に係るヒータ40によっても、第1の実施形態に係るヒータと同様の効果を奏する。すなわち、ヒータ40を備えた加熱装置において、被処理物6の全体にわたって均一な温度分布を実現する、小型化できる等の効果を奏することができる。 しかも、フィラメント14a及び14bの間に絶縁体41が介設されていることにより、フィラメント14aと14bの間で不所望な放電が生じることを確実に防止することができる。さらに、フィラメント14a及び14bに繋がる給電線15d及び15bが、絶縁体41に設けられた貫通孔42及び貫通孔43を通過していることにより、給電線15dと15bとが絶縁体41によって仕切られるため、両給電線が接触して短絡することを確実に防止することができる。
【0071】
さらに、本発明の第3の実施形態に係るヒータについて、以下に図9を用いて説明する。図9は、本発明の第3の実施形態に係るヒータを示す斜視図である。なお、図9において、図7と同一乃至相当する部分については同一符号で示す。
【0072】
図9に示すように、ヒータ50は、発光管11の内部に、2つのフィラメント組立体51及び52が絶縁体53を介在して対向して配設され、発光管11の軸方向において分割された2つのフィラメント14aと14bが、同一軸上に発光管11の軸に沿って配設されている。絶縁体53は、フィラメント14a及び14bとの間に空間が介在するよう配設されている。フィラメント14aと14bとの離間距離L4は、被処理物上における照射光の強度分布のバラツキを極力小さくすることができ、かつ、長手方向において対向するフィラメント14aと14bとの間で不所望な放電が発生することのないよう、3mm〜8mmの範囲であることが好ましく、特に3mm〜5mmの範囲であることが好ましく、例えば5mmである。
【0073】
フィラメント組立体51は、フィラメント14a、給電線15a、給電線15b、絶縁管16aから構成され、該組立体における給電線15bが、フィラメント14aに接続される側の端部がコ字状に折り曲げられて形成され、フィラメント14aと対向する箇所である、コ字状部分に繋がる直線部分が絶縁管16aで被覆されている。フィラメント組立体52は、フィラメント14b、給電線15c、給電線15d、絶縁管16bから構成され、該組立体における給電線15dが、フィラメント14bに接続される側の端部がコ字状に折り曲げられて形成され、フィラメント14bと対向する箇所である、コ字状部分に繋がる直線部分が絶縁管16bで被覆されている。フィラメント14aに電気的に繋がる外部リード18a及び18bが封止部12aからそれぞれ外部に導出し、フィラメント14bに電気的に繋がる外部リード18c及び18dが封止部12bからそれぞれ外部に導出している。
【0074】
そして、図9に示すように、ヒータ50は、外部リード18aと18bの間に給電装置19aが電気的に接続され、さらに、外部リード18cと18dの間に給電装置19bが電気的に接続され、フィラメント14a及び14bへの給電をそれぞれ別個の給電装置によって独立に行なう構成である。
【0075】
このような第3の実施形態に係るヒータ50によっても、第1の実施形態に係るヒータと同様の効果を奏する。すなわち、ヒータ50を備えた加熱装置において、被処理物6の全体にわたって均一な温度分布を実現する、小型化できる等の効果を奏することができる。 しかも、ヒータ50によれば、フィラメント14aに対し封止部12a側の外部リード18a及び18bによって給電し、フィラメント14bに対し封止部12b側の外部リード18c及び18dによって給電していることから、フィラメント14aと14bの間に介設された絶縁体53には給電線を通過させるための貫通孔を設けずとも両給電線が短絡するおそれがないため、ヒータ作製に要するコストを低減することができる。
【0076】
なお、ヒータ50においては、フィラメント14aに電気的に繋がる一対の外部リード18a及び18bが同一の封止部12aからそれぞれ外部に導出し、フィラメント14bに電気的に繋がる一対の外部リード18c及び18dが同一の封止部12bからそれぞれ外部に導出している。よって、ヒータに高電圧を印加する場合、絶縁構造、漏電対策等を考慮する必要がある。
【0077】
さらに、本発明の第4の実施形態に係るヒータについて、以下に図10を用いて説明する。図10は、本発明の第4の実施形態に係るヒータを示す正面図である。なお、図10において、図7と同一乃至相当する部分については同一符号で示す。
【0078】
図10に示すように、ヒータ60の発光管11は、一端側に金属箔13a、13b及び13cが埋設されピンチシールされることにより封止部12aが形成され、他端側に金属箔13d、13e、13fが埋設されピンチシールされることにより封止部12bが形成され、発光管内部が気密に封止されている。このような発光管11の内部には、軸方向において3つに分割されたフィラメント14a,14b,14cが、同一軸上に発光管11の軸に沿って配設されている。フィラメント14aと14bとの間には絶縁体61aが介設され、フィラメント14bと14cとの間には絶縁体61bが介設されている。さらに、金属箔13a、13b、13c、13d、13e、及び13fには、それぞれ、外部リード18a、18b、18c、18d、18e、及び18fが電気的に接続されている。
【0079】
フィラメント14aは、一端側に金属箔13aに接続された給電線15aが電気的に接続され、他端側に金属箔13fに接続された給電線15fが電気的に接続されている。詳細には、給電線15fは、絶縁体61aに設けられた貫通孔611a、フィラメント14bと対向する絶縁管16c、絶縁体61bに設けられた貫通孔611b、及びフィラメント14cと対向する絶縁管16fを通過し、金属箔13fに接続される。フィラメント14bは、一端側に、絶縁体61aに設けられた貫通孔612a、及びフィラメント14aと対向する絶縁管16aを通過するとともに、金属箔13bに接続された給電線15bが電気的に接続されている。フィラメント14bの他端側には、絶縁体61bに設けられた貫通孔612b、及びフィラメント14cと対向する絶縁管16eを通過するとともに、金属箔13eに接続された給電線15eが電気的に接続されている。フィラメント14cは、一端側に金属箔13cに接続された給電線15cが電気的に接続され、他端側に金属箔13dに接続された給電線15dが電気的に接続されている。詳細には、給電線15cは、絶縁体61bに設けられた貫通孔613b、フィラメント14bと対向する絶縁管16d、絶縁体61aに設けられた貫通孔613a、及びフィラメント14aと対向する絶縁管16bを通過し、金属箔13cに接続されている。
【0080】
ヒータ60は、外部リード18aと18fの間に第1の給電装置62が接続され、外部リード18bと18eの間に第2の給電装置63が接続され、外部リード18cと18dの間に第3の給電装置64が接続されている。すなわち、フィラメント14a、14b、及び14cは、それぞれ別個の給電装置によって独立に給電されることにより、ヒータが点灯駆動する。給電装置62、63、及び64は、可変電源であり、必要に応じて給電量を調整することができる。
【0081】
ここで、上記した給電装置62、63、64は、図1に示した加熱装置における電源部7に対応する。ここで、ヒータ1(1a、・・・、1j、1k、・・・、1t)それぞれが図10に示すような構造であって、各フィラメント各々に給電装置が接続されている場合は、60個の給電装置が上記した電源部7に相当する。なお、各給電装置は、フィラメントに対して、DC電力を供給するものでもよいし、AC電力を供給するものでもよい。
【0082】
このような第4の実施形態に係るヒータによれば、軸方向において3つに分割されたフィラメント14a、14b、及び14cが、同一軸上に発光管11の軸に沿って配設されているとともに、それぞれのフィラメントへの給電量を別個の給電装置によって調整することができるため、それぞれのフィラメントから放射される光量を自在に調整することができる。これにより、上記実施形態1乃至3に係るヒータに比して、さらに狭小な領域における温度を調整することができるため、被処理物6の温度分布の均一性をさらに向上させることができる、という効果を奏する。さらに、第1乃至第3の実施形態に係るヒータと同様に、加熱装置を小型化することができる等の効果を奏する。
【0083】
以下、本発明に係るヒータを備えた加熱装置の数値例を示す。本発明は、以下に示す数値例に限定されるものではない。発光管(11)は、石英ガラスからなり、発光管の軸に直交する平面を含む断面において、図7(b)に示すaが11mmであり、同図に示すbが8mmである。また、発光管(11)は、肉厚が1mmであり、全長(両封止部(12)を加えた長さ)が447mmの直管状のものである。フィラメント(14)は、線径0.53mmのタングステン線を0.66mmのピッチで巻き回すことにより、外径3.86mmのコイル状に構成され、フィラメント14a及び14bの全長がそれぞれ200mmである。絶縁管(16)は、石英ガラスからなり、外径が2mm、内径が1mm、全長が205mmの直管状のものである。
【0084】
なお、上記第1乃至第4の実施形態のヒータによれば、分割された各フィラメントが同一軸上に配設された形態が示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、分割された各フィラメントが同一軸上に配設されていない構成を採用しても良い。
【符号の説明】
【0085】
1 ヒータ
2 反射板
3 ランプ固定台
4 石英窓
5 固定台
6 被処理物
7 電源部
71 電源供給ポート
8 冷却風ユニット
81 冷却風供給ノズル
82 吹出し口
9 温度計
91 温度測定部
92 温度制御部
10 第1のランプユニット
11 発光管
12 封止部
13 金属箔
14 フィラメント
15 給電線
16 絶縁管
17 アンカー
18 外部リード
19 給電装置
20 第2のランプユニット
40 ヒータ
41 絶縁体
42 貫通孔
43 貫通孔
50 ヒータ
51 フィラメント組立体
52 フィラメント組立体
53 絶縁体
60 ヒータ
61 絶縁体
62 給電装置
63 給電装置
64 給電装置
611 貫通孔
612 貫通孔
613 貫通孔
100 加熱装置
MC 主制御部
LU ランプユニット
F1 フィラメント
F2 フィラメント
F3 フィラメント
F4 フィラメント
PS1 給電装置
PS2 給電装置
PS3 給電装置
PS1A 給電装置
PS2A 給電装置
PS3A 給電装置
PS1B 給電装置
PS2B 給電装置
PS3B 給電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性材料からなる1本の発光管の内部にフィラメントが配設されてなるヒータランプにおいて、
前記フィラメントは、軸方向において3つ以上に分割され、
分割されたフィラメントのうち、
一方の端部に配置されたフィラメントと他方の端部に配置されたフィラメントは、少なくとも別個の給電装置に接続されてそれぞれ独立して給電されることを特徴とするヒータランプ。
【請求項2】
前記3つ以上のフィラメントは、同軸上に配置されていることを特徴とする請求項1のヒータランプ。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−103475(P2011−103475A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285312(P2010−285312)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【分割の表示】特願2005−191222(P2005−191222)の分割
【原出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】