説明

ヒートシンク、ヒートシンクを作製する方法、半導体装置、半導体モジュール

【課題】金属・ダイヤモンド複合体にその本来の熱伝導率に近い熱伝導率を発揮させることを可能にするヒートシンクを提供する。
【解決手段】このヒートシンク11は、デバイスを搭載するための搭載面11aを有しており該ベース13の主面13aに設けられた金属領域15を備える。この主面13aには、ダイヤモンド粒子17による突起23a〜23cと突起23a〜23cの間に位置する窪み25a〜25dとを含むけれども、半田材と異なり該半田材より高い融点の金属からなる金属領域15は窪み25a〜25dを埋めて、搭載面11aは突起23a〜23c及び窪み25a〜25dによって構成されるラフネスより小さいラフネスに再構成される。これ故に、デバイスの実装面とヒートシンク11の表面11aとの実効的な接触面積を、デバイスの実装面の面積に近づけることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンク、ヒートシンクを作製する方法、半導体装置、及び半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ダイヤモンド粒子と金属を複合した金属・ダイヤモンド複合体物らなるヒートシンクを開示する。特許文献2は、半導体素子収納用パッケージを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−312362号公報
【特許文献2】特開2004−146413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
III族窒化物半導体を用いる半極性{20−21}面GaN上に形成される緑色レーザダイオードは、高い投入電力を必要とするので、その放熱性の確保が非常に重要である。このようなレーザダイオードの実装のためのサブマウントといった実装部品が求められている。
【0005】
金属・ダイヤモンド複合物は、優れた熱伝導性を有しており、実装部品の候補の一つである。この材料は、特許文献1に記載されるようにヒートシンクに適用され、また、特許文献2に記載されるようにパッケージに適用される。しかしながら、発明者らの知見によれば、例えばレーザダイオードの実装では、金属・ダイヤモンド複合物からなるヒートシンクは、高い熱伝導率を有するけれども、その本来の熱伝導率(550W/(m・K))を示さない。
【0006】
金属・ダイヤモンド複合体のうちの、例えば銅/ダイヤモンド複合体は、III族窒化物半導体の熱膨張係数に近い値を有しており、この観点からは窒化物半導体素子に高い信頼性を提供できる可能性がある。
【0007】
本発明は、このような事情を鑑みて為されたものであり、金属・ダイヤモンド複合体にその本来の熱伝導率に近い熱伝導率を発揮させることを可能にするヒートシンクを提供することを目的とし、またそのヒートシンクを作製する方法を提供することを目的とし、さらにそのヒートシンクを含む半導体装置を提供することを目的とし、またさらに半導体装置を含む半導体モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る、デバイスを搭載するためのヒートシンクは、(a)ダイヤモンド粒子と金属を複合した金属・ダイヤモンド複合物からなり、前記ダイヤモンド粒子及び前記金属が現れた主面を有するベースと、(b)前記ベースの主面を覆うように設けられた金属層を含み、デバイスを搭載するための搭載面を有する金属領域とを備える。前記金属層は、半田材と異なり該半田材より高い融点の金属からなり、前記ベースの前記主面には、前記ダイヤモンド粒子による突起と前記突起の間に位置する窪みとを含み、前記金属領域は前記窪みを埋めて、前記搭載面は前記突起及び前記窪みによるラフネスより小さいラフネスを有する。
【0009】
金属・ダイヤモンド複合物からなるベースを含むヒートシンクでは、金属・ダイヤモンド複合物の表面には、互いに硬度の異なるダイヤモンド及び金属が現れており、これ故に、金属・ダイヤモンド複合物の表面はラフネスを有する。ヒートシンク表面の平坦性を高めるために金属・ダイヤモンド複合物を研磨するとき、金属の削れとダイヤモンドの削れとが互いに異なり、その結果、金属・ダイヤモンド複合物の研磨面にはある程度のラフネスが残る。この研磨面上に、デバイスを実装するとき、デバイスの実装面とヒートシンクの研磨面との実効的な実装面積は、デバイスの実装面の面積に比べて小さい。
【0010】
また、ヒートシンクの表面にメタライズを行うとき、メタライズ層は、ヒートシンク表面の形状に合わせて形成される。その結果、メタライズ金属層の表面には、金属・ダイヤモンド複合物の研磨面のラフネスと同程度のラフネスが残る。
【0011】
一方、このヒートシンクは、デバイスを搭載するための搭載面を有しており該ベースの主面に設けられた金属領域を備える。このベース主面には、ダイヤモンド粒子による突起と突起の間に位置する窪みとを含み、金属領域は窪みを埋めて、金属領域の表面は、搭載面は突起及び窪みによるラフネスより小さいラフネスを有する。これ故に、デバイスの実装面とヒートシンクの表面との実効的な接触面積を、半導体デバイスの実装面の面積に近づけることができる。
【0012】
本発明に係るヒートシンクでは、前記ベースの前記主面の前記表面粗さは3μmより大きく、前記金属領域の前記搭載面の前記表面粗さは3μm以下であることが良い。
【0013】
このヒートシンクによれば、搭載面におけるこの程度の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合物の表面粗さより小さい。レーザ顕微鏡を用いて利用可能な金属・ダイヤモンド複合物の表面粗さを測定するとき、その表面粗さは3μmより大きい。
【0014】
本発明に係るヒートシンクでは、前記金属領域の厚さは前記窪みで3μmより大きいことが良い。
【0015】
このヒートシンクによれば、これ故に、ヒートシンクの表面のラフネスに起因する接触面積(半導体デバイスの実装面とヒートシンクの表面との実効的な接触面積)の低下を避けることができる。
【0016】
本発明に係るヒートシンクでは、前記金属領域の前記表面粗さは1μm以下であることが良い。
【0017】
このヒートシンクによれば、表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上が提供される。
【0018】
本発明に係るヒートシンクでは、前記金属領域の前記表面粗さは0.15μm以下であることが良い。
【0019】
このヒートシンクによれば、表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上により、ヒートシンクの熱伝導特性が、金属・ダイヤモンド複合物の材料自体の値にかなり近い値になる。
【0020】
本発明に係るヒートシンクでは、前記金属領域の前記表面粗さは0.1μm以下であることが良い。
【0021】
このヒートシンクによれば、表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上により、ヒートシンクの熱伝導特性を金属・ダイヤモンド複合物の材料自体の値に非常に近づけることができる。
【0022】
本発明に係るヒートシンクでは、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面は第1表面粗さ(rms)を有し、前記金属領域の前記搭載面は第2表面粗さ(rms)を有し、前記第1表面粗さ及び前記第2表面粗さは、レーザ顕微鏡で測定され、また50μmスクエア〜100μmスクエアの範囲内のエリアで規定され、前記第2表面粗さは前記第1表面粗さより小さい。
【0023】
このヒートシンクによれば、レーザ顕微鏡は、表面粗さ計を用いた測定に比べて、金属表面及び金属・ダイヤモンド複合物の正確な表面粗さの測定を可能にする。
【0024】
本発明に係るヒートシンクでは、前記金属層は、Cu、Al、Ag、Au及びNiの少なくとも一つを含む金属からなることができる。
【0025】
このヒートシンクによれば、金属・ダイヤモンド複合物の表面に現れたダイヤモンド粒子の表面を覆うことができる。
【0026】
本発明に係るヒートシンクでは、前記金属・ダイヤモンド複合物の前記金属は、前記ダイヤモンド粒をバインドするバインダー金属であり、前記バインダー金属は、Cu、Al、Ag、Au、W、Ni、Co、Mnの1つ以上を主成分とする金属を含むことができる。
【0027】
このヒートシンクによれば、これらのバインダー金属は、金属・ダイヤモンド複合物が様々な熱伝導性及び熱膨張性を有することを可能にする。
【0028】
本発明に係るヒートシンクでは、前記バインダー金属は前記前記金属領域の材料と異なることが良い。
【0029】
このヒートシンクによれば、金属領域の材料はバインダー金属と異なることができ、成膜の自由度を広げることができる。
【0030】
本発明に係るヒートシンクでは、前記金属・ダイヤモンド複合物は、平均粒径1〜200μmのダイヤモンド粒を含むことができる。
【0031】
このヒートシンクによれば、金属・ダイヤモンド複合物が、この範囲の平均粒径を有するダイヤモンド粒を含むとき、金属・ダイヤモンド複合物の表面の表面粗さを低減できる。
【0032】
本発明に係るヒートシンクでは、前記金属・ダイヤモンド複合物の熱膨張係数は2.5×10−6/K以上6.5×10−6/K以下の範囲にあることができる。
【0033】
このヒートシンクによれば、金属・ダイヤモンド複合物の熱膨張係数に近い熱膨張性をヒートシンクに提供できる。
【0034】
本発明に係る、ヒートシンクを作製する方法は、(a)ヒートシンクのベースのための金属・ダイヤモンド複合体を準備する工程と、(b)前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面に設けられた金属領域と前記金属・ダイヤモンド複合体とを含む複合体生産物を形成する工程と、(c)前記複合体生産物を加工により分離して、半導体デバイスを搭載するための搭載面を有するヒートシンクを形成する工程とを備える。複合体生産物を形成する前記工程は、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面を覆うように金属膜を形成する工程を含み、前記金属領域は、前記ベースの主面を覆うように設けられた金属膜を含み、前記金属膜は半田材と異なる金属からなり、前記金属・ダイヤモンド複合体は、ダイヤモンド粒子と金属を複合したものであり、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面には、前記ダイヤモンド粒子による突起と前記突起の間に位置する窪みとを含み、前記金属領域は前記窪みを埋めて、前記搭載面は前記突起及び前記窪みによるラフネスより小さいラフネスを有する。
【0035】
ヒートシンクを作製する方法(以下「作製方法」と記す)によれば、金属・ダイヤモンド複合体と該金属・ダイヤモンド複合体の主面に設けられた金属領域とを含む複合体生産物を形成する。ダイヤモンド粒子による突起とこれら突起の間に位置する窪みとを含む金属・ダイヤモンド複合体主面において金属領域は窪みを埋めて、突起及び窪みに起因するラフネスより小さいラフネスをヒートシンクの搭載面に提供できる。
ダイヤモンド粒子の研磨等による欠けで生じる窪みとこれら窪みの間に位置する突起とを含む金属・ダイヤモンド複合体主面において金属領域は窪みを埋めて、突起及び窪みに起因するラフネスより小さいラフネスをヒートシンクの搭載面に提供できる。
【0036】
ヒートシンクのためのベースは、金属・ダイヤモンド複合体の表面を含み、この金属・ダイヤモンド複合物の表面にはダイヤモンド及び金属が現れており、金属及びダイヤモンドは互いに異なる硬度を有し、金属の硬度はダイヤモンドの硬度より小さい。これ故に、金属・ダイヤモンド複合物の表面にはラフネスが形成されている。ヒートシンク表面の平坦性を高めるために金属・ダイヤモンド複合体を研磨するとき、金属の削れとダイヤモンドの削れとが互いに異なり、その結果、金属・ダイヤモンド複合体の研磨面にはある程度のラフネスが残る。この研磨面にメタライズを行うとき、メタライズによる金属層は、研磨面の表面形状に合わせて形成される。その結果、メタライズ金属層の表面には、金属・ダイヤモンド複合物の研磨面のラフネスと同程度のラフネスが残る。したがって、メタライズ面上にデバイスを実装するとき、半導体デバイスの実装面とヒートシンクの研磨面との実効的な実装面積は、半導体デバイスの実装面の面積に比べて小さい。
【0037】
しかしながら、本件のヒートシンクを作製する方法によれば、金属・ダイヤモンド複合体と金属領域とを含む複合体生産物を形成するに際して、ダイヤモンド粒子による突起とこれらの突起の間に位置する窪みとを含む金属・ダイヤモンド複合物の主面において金属領域が窪みを埋めて、突起及び窪みに起因するラフネスを低減したヒートシンク搭載面を提供できる。
【0038】
本発明に係る作製方法では、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面は第1表面粗さを有する。複合体生産物を形成する前記工程は、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面に前記金属膜を含む金属被覆を形成する工程と、前記金属被覆に処理を行って、前記第1表面粗さより小さい第2表面粗さを有する金属表面を前記金属領域に提供する工程とを更に含み、前記第1表面粗さ及び前記第2表面粗さは、レーザ顕微鏡で測定され、また50μmスクエア〜100μmスクエアの範囲で規定されることができる。
【0039】
この作製方法によれば、レーザ顕微鏡は、表面粗さ計を用いた測定に比べて、金属表面及び金属・ダイヤモンド複合物の正確な表面粗さの測定を可能にする。
【0040】
本発明に係る作製方法では、前記金属膜の形成は、蒸着法及びメッキ法の少なくともいずれかで行われることができる。
【0041】
この作製方法によれば、金属被覆の形成に、例えば蒸着法及びメッキ法等を用いることができる。
【0042】
本発明に係る作製方法では、前記金属膜の前記処理は研磨を含むことができる。この作製方法によれば、金属膜の表面が所望の表面粗さに不足するときは、金属膜の処理として、金属膜の表面を研磨することができる。
【0043】
本発明に係る作製方法では、前記金属膜の前記処理は、機械的研磨法及び機械的化学的研磨法の少なくともいずれか一方で行われることができる。この作製方法によれば、金属膜の処理として金属研磨を行うときは、例えば機械的研磨法、機械的化学的研磨法等を行うことができる。
【0044】
本発明に係る作製方法では、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面は第1表面粗さを有し、前記金属膜は、蒸着法で成長された金属層を含むことができる。この作製方法によれば、金属・ダイヤモンド複合体の主面を蒸着法で成膜された金属層で覆うことができる。
【0045】
本発明に係る作製方法では、前記金属層の厚さは前記第1表面粗さの2倍以上であることができる。この作製方法によれば、金属層の厚さが第1表面粗さの2倍以上であるとき、金属膜は、平坦化処理を適用可能な厚さを有する。
【0046】
本発明に係る作製方法では、前記金属層の厚さは、前記第1表面粗さの3倍以下であることができる。この作製方法によれば、金属層の厚さが第1表面粗さの3倍以上であるとき、金属膜は、平坦化処理を適用可能な十分な厚さを有する。
【0047】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面の前記窪みを埋めており、前記金属層は、前記窪みにおいて6μm以上であることができる。この作製方法によれば、上記の厚みの金属層は、成膜後の平坦化処理を可能にする。
【0048】
また、本発明に係る作製方法では、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面は第1表面粗さを有し、前記金属膜は、メッキ法で成長された金属層を含むことができる。
【0049】
この作製方法によれば、メッキ法による金属堆積では、金属・ダイヤモンド複合体の主面における窪みにまず金属が形成されて、窪みが少し埋まる。さらに、メッキ法による金属堆積を続けるとき、窪みが徐々に埋まっていく。したがって、窪みの埋め込みが選択的・優先的に生じるころができる。
【0050】
本発明に係る作製方法では、前記金属層の厚さは前記第1表面粗さの3倍以上であることができる。
【0051】
この作製方法によれば、メッキ法による金属堆積では、第1表面粗さの3倍以上の厚さを有する金属層を成長するとき、金属膜の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体の主面における本来の第1表面粗さより小さくなる。
【0052】
本発明に係る作製方法では、前記金属層の厚さは、前記第1表面粗さの6倍以上であることができる。この作製方法によれば、メッキ法による金属堆積では、第1表面粗さの3倍以上の厚さを有する金属層を成長するとき、金属膜の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体の主面における本来の第1表面粗さより十分に小さくできる。
【0053】
本発明に係る作製方法では、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面には、前記ダイヤモンド粒子による突起と金属の表面からなる窪みとを含み、前記金属層は前記窪みを埋めており、前記金属層は前記窪みにおいて6μm以上であることができる。
【0054】
この作製方法によれば、メッキ法による金属堆積では、6μm以上の厚さで金属層を成長するとき、金属膜の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体の主面における本来の第1表面粗さより小さくできる。
【0055】
本発明に係る作製方法では、前記金属層は前記窪みにおいて9μm以上であることができる。
【0056】
この作製方法によれば、メッキ法による金属堆積では、9μm以上の厚さで金属層を成長するとき、金属膜の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体の主面における本来の第1表面粗さより十分に小さくできる。
【0057】
本発明に係る作製方法では、前記金属領域の前記表面粗さは3μm未満であることが可能である。
【0058】
この作製方法によれば、メッキ法による金属堆積においては、金属・ダイヤモンド複合体の主面における窪みの深さが、金属堆積における選択的な埋め込み作用により小さくなって、金属領域の表面粗さを縮小できる。
【0059】
本発明に係る作製方法では、前記金属領域の前記表面粗さは1μm以下であることができる。
【0060】
この作製方法によれば、表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上が提供される。
【0061】
本発明に係る作製方法では、前記金属領域の前記表面粗さは0.15μm以下であることができる。
【0062】
この作製方法によれば、表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上により、ヒートシンクの熱伝導特性が、金属・ダイヤモンド複合物の材料自体の値にかなり近い値になる。
【0063】
本発明に係る作製方法では、前記金属領域の前記表面粗さは0.1μm以下であることができる。
【0064】
この作製方法によれば、表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上により、ヒートシンクの熱伝導特性を金属・ダイヤモンド複合物の材料自体の値に非常に近づけることができる。
【0065】
本発明に係る作製方法では、前記金属・ダイヤモンド複合体は、平均粒径1〜200μmのダイヤモンド粒を含むことができる。
【0066】
この作製方法によれば、金属・ダイヤモンド複合物が、この範囲の平均粒径を有するダイヤモンド粒を含むとき、金属・ダイヤモンド複合物の表面の表面粗さを低減できる。
【0067】
本発明に係る作製方法では、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記金属は、前記ダイヤモンド粒をバインドするバインダー金属であり、前記バインダー金属は、Cu、Al、Ag、Au、W、Ni、Co、Mnの1つ以上を主成分とする金属を含むことができる。
【0068】
この作製方法によれば、これらのバインダー金属は、金属・ダイヤモンド複合物が様々な熱伝導性及び熱膨張性を有することを可能にする。
【0069】
本発明に係る、ヒートシンクを作製する方法は、(a)第1表面粗さの主面を有しヒートシンクのベースのための金属・ダイヤモンド複合体を準備する工程と、(b)前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面に金属膜をメッキ法で形成して、前記金属膜と前記金属・ダイヤモンド複合体とを含む複合体生産物を形成する工程と、(c)前記複合体生産物を加工して、デバイスを搭載するための搭載面を有するヒートシンクを形成する工程とを備える。前記金属膜は、前記ダイヤモンド粒子による前記突起を覆い、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面には、前記ダイヤモンド粒子による突起と金属の表面からなる窪みとを含み、前記金属膜は前記窪みを埋めて、前記搭載面は前記突起及び前記窪みによるラフネスより小さいラフネスを有する。
【0070】
このヒートシンクを作製する方法によれば、金属膜をメッキ法で形成するので、メッキ膜はまず金属・ダイヤモンド複合体の主面における金属表面に成長する。これ故に、メッキ膜は窪みを埋めながら成長する。また、メッキ膜は、金属表面からダイヤモンドに沿って成長していき、ダイヤモンド粒子による突起を覆って、ついには一体の金属膜を形成する。このような成長機構により、搭載面には、突起及び窪みに起因するラフネスより小さいラフネスを提供できる。
【0071】
本発明に係る作製方法では、前記金属膜の表面は第2表面粗さを有し、前記第2表面粗さは前記第1表面粗さより小さく、前記第1表面粗さ及び前記第2表面粗さは、レーザ顕微鏡で測定され、また50μmスクエア〜100μmスクエアの範囲内のあるエリアでの測定により規定されることができる。
【0072】
本発明に係る作製方法では、前記金属膜の厚さは、前記第1表面粗さの3倍以上であることができる。
【0073】
この作製方法によれば、メッキ法による金属堆積では、第1表面粗さの3倍以上の厚さを有する金属層を成長するとき、金属膜の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体の主面における本来の第1表面粗さより小さくなる。
【0074】
本発明に係る作製方法では、前記金属膜の厚さは、前記第1表面粗さの6倍以上であることができる。
【0075】
この作製方法によれば、メッキ法による金属堆積では、第1表面粗さの3倍以上の厚さを有する金属層を成長するとき、金属膜の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体の主面における本来の第1表面粗さより十分に小さくできる。
【0076】
本発明に係る作製方法では、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面には、前記ダイヤモンド粒子による突起と金属の表面からなる窪みとを含み、前記金属膜は前記窪みを埋めており、前記金属膜は前記窪みにおいて6μm以上であることができる。
【0077】
この作製方法によれば、メッキ法による金属堆積では、6μm以上の厚さで金属層を成長するとき、金属膜の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体の主面における本来の第1表面粗さより小さくできる。
【0078】
本発明に係る作製方法では、前記金属膜は前記窪みにおいて9μm以上であることができる。
【0079】
この作製方法によれば、メッキ法による金属堆積では、9μm以上の厚さで金属層を成長するとき、金属膜の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体の主面における本来の第1表面粗さより十分に小さくできる。
【0080】
本発明に係る作製方法では、前記金属膜は、前記ダイヤモンド粒子による突起において前記窪みの深さ以上の厚さを有し、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面には、前記ダイヤモンド粒子による突起と金属の表面からなる窪みとを含み、前記金属層は、前記窪みを埋めており、前記金属層は、前記ダイヤモンド粒子による突起において前記窪みの深さ以上の厚さを有することができる。
【0081】
この作製方法によれば、メッキ法による金属堆積においては、金属・ダイヤモンド複合体の主面における窪みの深さが、金属堆積における選択的な埋め込み作用により小さくなっていく。
【0082】
本発明に係る半導体装置は、(a)本発明に係るものとして本件に開示されたいずれかのヒートシンクと、(b)前記ヒートシンクの前記搭載面上に搭載された半導体デバイスと、(c)前記ヒートシンクの前記搭載面に前記半導体デバイスを接着する半田材とを備える。
【0083】
この半導体装置によれば、金属・ダイヤモンド複合物からなるベースを含むヒートシンクでは、金属・ダイヤモンド複合物の表面は、互いに硬度の異なるダイヤモンド及び金属から成るけれども、このヒートシンクは、デバイスを搭載するための搭載面を有しており該ベースの主面上に設けられた金属領域を備える。ベースの主面には、ダイヤモンド粒子による突起と突起の間に位置する窪みとを含み、金属領域は窪みを埋めて、搭載面は突起及び窪みによるラフネスより小さいラフネスを有する。これ故に、半導体デバイスの実装面とヒートシンクの表面との実効的な実装面積を、半導体デバイスの実装面の面積に近づけることができる。このヒートシンクでは、半導体デバイスが半田材を介してヒートシンクの搭載面に接着されているとき、半田材は下地のヒートシンク表面とデバイス実装面との間を埋めることができ、実装面積をデバイスの実装面の面積に近づけることに役立つ。これ故に、優れた放熱特性を半導体装置に提供できる。
【0084】
本発明に係る半導体装置では、前記半導体デバイスは半導体レーザダイオードを含むことができる。
【0085】
この半導体装置によれば、半導体レーザダイオードの動作温度を低減できる。
【0086】
本発明に係る半導体装置では、前記半導体レーザダイオードは、500nm以上540nm以下の波長範囲の発振波長を発生する活性層と、III族窒化物からなるp型クラッド層と、III族窒化物からなるn型クラッド層とを含み、前記活性層は前記p型クラッド層と前記n型クラッド層との間に設けられることができる。
【0087】
この半導体装置によれば、500nm以上540nm以下の波長範囲の発振波長を発生する半導体レーザダイオードは、レーザ発振に際して比較的大きな熱を生成する。
【0088】
本発明に係る半導体装置では、前記半導体レーザダイオードは、前記n型クラッド層、前記活性層及び前記p型クラッド層を搭載する基板を含み、前記基板は、III族窒化物からなる主面を含み、前記基板の前記主面は、前記III族窒化物のc軸に直交する基準平面に対して10度以上80度以下又は100度以上170度以下の範囲の角度で傾斜することができる。
【0089】
この半導体装置によれば、上記の半極性を利用する半導体レーザダイオードは、レーザ発振に際して比較的大きな熱を生成する。
【0090】
本発明に係る半導体装置では、前記角度は63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲にあることができる。
【0091】
この半導体装置によれば、上記の半極性を利用する半導体レーザダイオードは、レーザ発振に際して非常に大きな熱を生成する。
【0092】
本発明に係る半導体モジュールは、(a)本発明に係るものとして本件に開示されたいずれかの半導体装置と、(b)前記半導体装置を搭載するパッケージとを備える。
【0093】
この半導体モジュールによれば、優れた放熱特性の半導体装置をパッケージに搭載でき、半導体デバイスでの発熱は、ヒートシンクを介してパッケージに伝搬する。
【発明の効果】
【0094】
以上説明したように、本発明によれば、金属・ダイヤモンド複合体にその本来の熱伝導率に近い熱伝導性を発揮させることを可能にするヒートシンクを提供することができる。また、本発明によれば、そのヒートシンクを作製する方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、そのヒートシンクを含む半導体装置を提供することができる。またさらに、本発明によれば、半導体装置を含む半導体モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】図1は、本発明に係るヒートシンク及び半導体装置を概略的に示す図面である。
【図2】図2は、本実施の形態に係る半導体モジュールを概略的に示す図面である。
【図3】図3は、本発明に係るヒートシンクを作製する方法における主要な工程を示す図面である。
【図4】図4は、本発明に係るヒートシンクを作製する方法における主要な工程を模式的に示す図面である。
【図5】図5は、蒸着法による金属膜の成長を模式的に示す図面である。
【図6】図6は、メッキ法による金属膜の成長を模式的に示す図面である。
【図7】図7は、銅・ダイヤモンド複合体の表面に設けられた金メタライズの表面及び半田部の表面を示す図面である。
【図8】図8は、銅・ダイヤモンド複合体の表面に設けられた金メタライズの表面及び半田部の表面を示す図面である。
【図9】図9は、表面粗さを低減していない銅ダイヤモンド複合体サブマウントの外観を示す図面である。
【図10】図10は、この表面粗さを低減していない銅ダイヤモンド複合体サブマウント上にレーザダイオードを実装した後にレーザダイオードを剥がした外観を示す図面である。
【図11】図11は、サブマウントに依存した熱抵抗の変化の度数分布を示す図面である。
【図12】図12は、改善後の銅ダイヤモンド複合体サブマウントの外観の一例、及び改善前の銅ダイヤモンド複合体サブマウントの外観の一例を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0096】
引き続いて、添付図面を参照しながら、ヒートシンク、ヒートシンクを作製する方法、半導体装置、及び半導体モジュールに係る本発明の実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0097】
ヒートシンク11はデバイスを搭載するための搭載面を有する。ヒートシンク11は、金属・ダイヤモンド複合物18からなるベース13と、デバイスを搭載するための搭載面を有する金属領域15とを備える。金属・ダイヤモンド複合物18は、ダイヤモンド粒子17と金属19を複合したものである。金属・ダイヤモンド複合物18は、平均粒径1〜200μmのダイヤモンド粒を含むことができる。金属・ダイヤモンド複合物18が、この範囲の平均粒径を有するダイヤモンド粒を含むとき、ダイヤモンドの高い熱伝導性が発揮されやすい。このヒートシンク11は、金属・ダイヤモンド複合物の熱伝導率に近い熱伝導性をヒートシンクに提供できる。また、金属・ダイヤモンド複合物の熱膨張係数は2.5×10−6/K以上6.5×10−6/K以下の範囲にあることができる。熱膨張係数におけるこの範囲の値は、半導体の熱膨張係数である3×10−6/K以上6×10−6/Kに近いので好ましい。
【0098】
ベース13は、ダイヤモンド粒子17及び金属19が現れた主面13aを有する。金属領域15は、ベース13の主面13aを覆うように設けられた金属層21を含む。金属層21は、半田材と異なり該半田材より高い融点の金属からなる。半田材としては、例えばSnAg半田(融点:摂氏230度)を例示される。ベース13の主面13aは、ダイヤモンド粒子17による突起23a、23b、23cとこれらの突起23a、23b、23cの間に位置する窪み25a、25b、25c、25dとを含む。金属領域15は窪み25a、25b、25c、25dを埋めて、搭載面11aは突起23a、23b、23c及び窪み25a、25b、25c、25dによって構成されるラフネスより小さいラフネスを有する。
【0099】
金属・ダイヤモンド複合物18からなるベース13を含むヒートシンク11では、金属・ダイヤモンド複合物18の表面18aには、互いに硬度の異なるダイヤモンド及び金属が現れており、金属の硬度はダイヤモンドの硬度より低い。これ故に、金属・ダイヤモンド複合物18の表面18aはラフネスを有する。ヒートシンク表面11aの平坦性を高めるために金属・ダイヤモンド複合物の基板を研磨するとき、ある研磨材に対して金属の削れとダイヤモンドの削れとが互いに異なり、その結果、金属・ダイヤモンド複合物の研磨面にはある程度のラフネスが残る。発明者らの知見によれば、この研磨面上に、デバイスを実装するとき、デバイスの実装面とヒートシンクの研磨面との実効的な実装面積は、デバイスの実装面の面積に比べて小さい。
【0100】
また、金属・ダイヤモンド複合物基板の研磨面にメタライズを行うとき、メタライズによって形成された金属膜は、金属・ダイヤモンド複合物基板の形状に合わせて形成される。その結果、メタライズ金属膜の表面には、金属・ダイヤモンド複合物基板の研磨面のラフネスと同程度のラフネスが残る。
【0101】
一方、このヒートシンク11は、半導体デバイスを搭載するための搭載面11aを有すると共に該ベース13の主面13aに設けられた金属領域15を備える。ベース13の主面13aには、ダイヤモンド粒子17による突起23a〜23cと突起23a〜23cの間に位置する窪み25a〜25dとを含むけれども、金属領域15は窪み25a〜25dを埋めて、搭載面11aは突起23a〜23c及び窪み25a〜25dによって構成されるラフネスより小さいラフネスを有すエウように形成される。これ故に、半導体デバイスの実装面とヒートシンク11の表面11aとの実効的な接触面積を、半導体デバイスの実装面(例えば、電極の面積)の面積に近づけることができる。
【0102】
さらに、金属層21が、半田材と異なり該半田材より高い融点の金属からなるので、デバイス実装の際の処理により金属が溶融して、搭載面11aの平坦性が消失することはない。ここで、半田材の一例は例えばSnAg半田(融点:摂氏230度)である。
【0103】
図1に示されたヒートシンク11の表面11aは金属領域15によって提供しているけれども、ヒートシンク11の表面11aはこれに限定されない。金属領域15の表面は、金属・ダイヤモンド複合体にその本来の熱伝導率を発揮させることを可能にするための表面粗さを提供しており、本実施の形態は、このような所望な表面粗さを得た金属表面に通常の成膜方法で追加の膜を形成して、カスタマイズされたヒートシンクを作製することができる。
【0104】
発明者らの知見によれば、入手可能な金属・ダイヤモンド複合物18からなるベース13の主面13aの表面粗さは3μmより大きい。この表面粗さを低減する考慮をせずに、金属・ダイヤモンド複合物18の表面に金属を堆積するとき、このような、堆積された金属の表面粗さにおいて、ダイヤモンド複合物18の主面18aの表面粗さに対する改善はない。
【0105】
また、発明者らの知見によれば、金属領域15の搭載面の表面粗さは3μm以下であることが良い。搭載面におけるこの程度の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合物の表面粗さより小さくなる。レーザ顕微鏡を用いて、利用可能な金属・ダイヤモンド複合物の表面粗さを測定するとき、その表面粗さは3μmより大きい。一方で、この金属・ダイヤモンド複合物の表面粗さの表面粗さ計を用いて測定するとき、表面粗さ計による表面粗さは、レーザ顕微鏡を用いた測定による表面粗さ値よりかなり小さい値にある。
【0106】
金属領域の形成方法に依存するけれども、金属領域15の厚さTL(厚い部分で)は3μmより大きいことが良い。ベース13の表面13aのラフネスを埋め込んで、ヒートシンク11の表面11aのラフネスに起因する接触面積(半導体デバイスの実装面とヒートシンクの表面との実効的な接触面積)の低下を避けることができる。
【0107】
ヒートシンク11では、金属・ダイヤモンド複合体18の主面18aは第1表面粗さ(rms:root mean suquare)RMS1を有し、金属領域15の主面15aは第2表面粗さ(rms)RMS2を有する。第1表面粗さ及び第2表面粗さは、レーザ顕微鏡で測定され、また50μmスクエア〜100μmスクエアの範囲内のいずれかのエリアで規定される。レーザ顕微鏡は、表面粗さ計を用いた測定に比べて、金属表面及び金属・ダイヤモンド複合物の正確な表面粗さの測定を可能にする。レーザ顕微鏡の測定において、第2表面粗さRMS2は第1表面粗さRMS1より小さい。
【0108】
ヒートシンク11の金属領域15は、一又は複数の金属層からなることができる。最下層の金属層(例えば層21)は、金属・ダイヤモンド複合物の表面に現れたダイヤモンド粒子の表面を覆うことができる。ヒートシンク11において主面18aを覆う金属層21は、Cu、Al、Ag、Au及びNiの少なくとも一つを含む金属からなることができる。
【0109】
金属・ダイヤモンド複合物18の金属19は、ダイヤモンド粒子17をバインドするバインダー金属であり、このバインダー金属は、Cu、Al、Ag、Au、W、Ni、Co、Mnの1つ以上を主成分とする金属を含むことができる。これらのバインダー金属は、金属・ダイヤモンド複合物が様々な熱伝導性及び熱膨張性を有することを可能にする。例えば熱伝導性の観点からは、バインダー金属は銅であることが好ましい。
【0110】
バインダー金属が金属領域の材料と異なるとき、金属材料の表面反応を制御することが可能となり、つまり半田材およびワイヤボンディングとの相性を考慮して設計できる利点がある。
【0111】
また、バインダー金属が金属領域の材料と同じとき、熱的および電気的ポテンシャルを一致させることができるという利点がある。
【0112】
ヒートシンク11の金属領域15の表面粗さは1μm以下であることが良い。表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上が提供される。
【0113】
ヒートシンク11の金属領域15の表面粗さは0.15μm以下であることが良い。表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上により、ヒートシンクの熱伝導特性が、金属・ダイヤモンド複合物の材料自体の値にかなり近い値になる。
【0114】
ヒートシンク11の金属領域15の表面粗さは0.1μm以下であることが良い。表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上により、ヒートシンクの熱伝導特性を金属・ダイヤモンド複合物の材料自体の値に非常に近づけることができる。
【0115】
図1を参照すると、半導体装置31が示されている。半導体装置31は、本件に開示されたいずれかのヒートシンク11と、半導体デバイス33と、半田材35とを備える。半導体デバイス33は、ヒートシンク11の搭載面11a上に搭載されている。半田材35は、ヒートシンク11の搭載面11aに半導体デバイス33を接着する。半田材35には、例えばSnAg(融点:230度)等が適用される。
【0116】
この半導体装置31によれば、金属・ダイヤモンド複合物18からなるベース13を含むヒートシンク11では、金属・ダイヤモンド複合物18の表面18aには、互いに硬度の異なるダイヤモンド粒子17及び金属19が現れているけれども、このヒートシンク11は、ベース13の主面13aに設けられた金属領域15を備え、その搭載面11aは半導体デバイス33を搭載する。金属領域15は窪み25a〜25dを埋めて、搭載面11aは突起23a〜23c及び窪み25a〜25dによるラフネスより小さいラフネスを有する。これ故に、半導体デバイス33の実装面33aとヒートシンク11の表面11aとの実効的な接触面積を、半導体デバイス33の実装面33aの面積に近づけることができる。半導体デバイス33が半田材35を介して平坦なヒートシンク搭載面11aに接着するとき、半田材35は下地の平坦なヒートシンク表面11aとデバイス実装面33aとの間を無理なく埋めることができ、両者(31、11)の接触面積を半導体デバイス33の実装面33aの面積に近づけることに役立つ。これ故に、優れた放熱特性を半導体装置31に提供できる。
【0117】
この半導体装置31では、半導体デバイス33は半導体レーザダイオードを含むことができる。これによって、半導体レーザダイオードの動作温度を低減できる。半導体レーザダイオードは、例えばIII族窒化物半導体からなる支持体を含むことができる。図12には、例えば半導体デバイス33が、いわゆるpアップ形態でヒートシンク11上に搭載されているが、pダウン形態で実装されていてもよい。
【0118】
半導体デバイス33の一例としての半導体レーザダイオードは、例えばn型クラッド層41、n側光ガイド層42、活性層43、p側光ガイド層44、p型クラッド層45及びp型コンタクト層46を搭載する基板を含み、この基板(例えばGaN)40はIII族窒化物からなる主面40aを含むことができる。p型コンタクト層46上にはアノード電極48が設けられ、基板40の裏面40b上にカソード電極47が設けられる。この主面(以下、「半極性主面」として参照する)40はIII族窒化物のc軸Cxに直交する基準平面に対して10度以上80度以下又は100度以上170度以下の範囲の傾斜角度で傾斜することができる。この半極性主面を利用する半導体レーザダイオードは、レーザ発振に際して比較的大きな熱を生成する。さらには、傾斜角度は63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲にあることができる。半極性主面を利用する長波長発光の半導体レーザダイオードは、レーザ発振に際して非常に大きな熱を生成する。
【0119】
また、半導体レーザダイオードは、例えばIII族窒化物半導体からなる活性層43を含むことができる。活性層43は、障壁層(例えばGaN又はInGaN))43a及び井戸層(例えばInGaN)43bを含むことができる。500nm以上540nm以下の波長範囲の発振波長を発生する半導体レーザダイオードは、レーザ発振に際して比較的大きな熱を生成するけれども、この半導体装置31ではヒートシンク11は半導体レーザダイオードの動作温度の低下に役立つ。一実施例として、半導体レーザダイオードは、500nm以上540nm以下の波長範囲の発振波長を発生する活性層と、III族窒化物からなるp型クラッド層と、III族窒化物からなるn型クラッド層とを含む。活性層はp型クラッド層とn型クラッド層との間に設けられることができる。
【0120】
本実施形態に係るIII族窒化物半導体レーザ11を作製する方法の一例を簡単に説明する。{20−21}面GaN基板上に、n型InAlGaNクラッド層(In組成:0.03、Al組成0.14)、n型GaN光ガイド層、n型InGaN光ガイド層(In組成0.03)、アンドープInGaN光ガイド層(In組成0.03)、InGaN活性層(In組成0.30)、アンドープInGaN光ガイド層(In組成0.03)、p型GaN光ガイド層、n型InAlGaNクラッド層(In組成:0.03、Al組成0.14)、p型GaNコンタクト層を成長してエピタキシャル基板を作製する。次いで、この準備されたエピタキシャル基板上に、ストライプ開口を有するSiO膜を形成した後に、オーミック電極のためのPd膜を成長する。オーミック電極のためのマスクを形成した後にPd膜のドライエッチングを行い、Pd電極を形成する。この上に、Auからなるパッド電極をリフトオフ法で形成する。次いで、基板研磨の後に、Ti/Auからなる裏面電極を形成する。これらの工程により基板生産物が作製される。この基板生産物にスクライブ及び押厚を行って、レーザバーを作製する。レーザ端面に端面コートを形成する。端面コートとしては、例えばSiO/TiO多層膜、やSiO/Ta多層膜を用いることができる。多層膜の繰り返し数は例えば2〜5層である。この後に、レーザバーの分離により、個々の半導体レーザを作製する。この半導体レーザをpアップ形態でサブマウントに搭載して、半導体レーザ装置を作製する。この半導体レーザ装置をキャンケースに実装して、光モジュールを作製する。
【0121】
半極性面上の緑色レーザダイオードの貫通転位は、活性層で増殖する可能性が危惧されており、その増殖は歪みの制御に関連している。この緑色レーザダイオードにおける歪みの制御は、c面GaN上の青紫レーザダイオードと比較して重要である。半極性面上の緑色レーザダイオードをエピ・ダウンでヒートシンクに実装する場合、ヒートシンクと半極性GaNとの熱膨張係数の違いが信頼性において重要となる。
【0122】
図2は、本実施の形態に係る半導体モジュールを概略的に示す図面である。図2を参照すると、半導体レーザモジュール71aが示される。半導体レーザ装置61aは、ステム73a上の台座(ヒートシンク)75上に搭載される。III族窒化物半導体レーザ11はサブマウント7に導電性接着剤10bを介してしっかりと固定される。ステム73a上にレンズキャップ73bが設けられ、ステム73a及びレンズキャップ73bはパッケージ73を構成する。ステム73aは例えば鉄製であり、レンズキャップ73bの金属部分も鉄製である。台座(ヒートシンク)11は熱伝導性に優れた例えば銅製である。ステム73aはリード端子77a、77b、77cを支持している。リード端子77aは、ボンディングワイヤ79aを介してヒートシンク11に接続され、ヒートシンク11の電極層を介してIII族窒化物半導体レーザ33のアノード電極に接続される。リード端子77bは、サブマウント11の搭載面7a上の電極層7cにボンディングワイヤ79bを介して接続される。リード端子77cは、金属製のステム73に接続される。ヒートシンク11はIII族窒化物半導体レーザ33のアノード電極と導電性接着剤10aを介してしっかりと接着される。
【0123】
この半導体モジュール71aによれば、優れた放熱特性の半導体装置をパッケージに搭載でき、半導体デバイスでの発熱は、ヒートシンク11を介してパッケージに伝搬する。
【0124】
図3は、本実施の形態に係るヒートシンクを作製する方法における主要な工程を概略的に示す図面である。工程S101では、ヒートシンクのベースのための金属・ダイヤモンド複合体の基板を準備する。基板のサイズは、単一のヒートシンクを作製可能な面積というよりは、多数のヒートシンクを作製可能な面積以上であるであることができる。基板のサイズは、例えば2インチであることが好ましい。また、ヒートシンク単体のサイズの一例は、例えば高さ0.3mm、幅0.8mm、長さ1.0mmであることができる。
【0125】
金属・ダイヤモンド複合物の熱膨張係数は2.5×10−6/K以上6.5×10−6/K以下の範囲にあることができる。また、金属・ダイヤモンド複合物は、平均粒径1〜200μmのダイヤモンド粒を含むことができる。金属・ダイヤモンド複合物が、この範囲の平均粒径を有するダイヤモンド粒を含むとき、金属膜が形成される金属・ダイヤモンド複合物表面の表面粗さを低減できる。金属が銅であるとき、銅とダイヤモンドの割合の例を以下に示す。
熱膨張係数2.5×10−6/Kのために(銅、ダイヤモンド) = (0.04、096)、モルパーセント。熱膨張係数6.5×10−6/Kのために(銅、ダイヤモンド) = (0.30、070)、モルパーセント。
【0126】
工程S102では、金属・ダイヤモンド複合体基板(図4において、符号43で参照される)から複合体生産物を形成する。複合体生産物は、金属・ダイヤモンド複合体基板と、この金属・ダイヤモンド複合体基板の主面に設けられた金属領域とを含む。
【0127】
工程S103では、図4の(a)部に示されるように、成膜装置10aに金属・ダイヤモンド複合体基板43を配置する。金属・ダイヤモンド複合体基板43の主面43aには、ダイヤモンド粒子41による突起43a〜43cと突起43a〜43cの間に位置し主に金属40からなる窪み45a〜45dとを含む。このようなラフネスの表面43aは第1表面粗さRMS1を有する。この表面粗さ(rms)、及び引き続く説明において現れる表面粗さ(rms)は、レーザ顕微鏡で測定され、また50μmスクエア〜100μmスクエアの範囲内のあるエリアで規定されることができる。レーザ顕微鏡は、表面粗さ計を用いた測定に比べて、金属表面及び金属・ダイヤモンド複合物の表面粗さの正確な測定を可能にする。なお、実施例における表面粗さ(rms)の測定では、レーザ顕微鏡(装置:OLYMPUS OLS1200)が用いられる。
【0128】
金属・ダイヤモンド複合体基板43の金属40は、ダイヤモンド粒子41をバインドするバインダー金属であり、このバインダー金属は、Cu、Al、Ag、Au、W、Ni、Co、Mnの1つ以上を主成分とする金属を含むことができる。これらのバインダー金属は、金属・ダイヤモンド複合物が様々な熱伝導性及び熱膨張性を有することを可能にする。例えば熱伝導性の観点からは、バインダー金属は例えば銅であることが好ましい。
【0129】
工程S104では、図4の(b)部に示されるように、成膜装置10aにおいて金属・ダイヤモンド複合体基板43の主面43a上に金属膜47を形成する。金属領域に含まれる金属膜47は、金属・ダイヤモンド複合体基板43の主面を覆うように形成される。金属膜47は半田材と異なる金属からなる。成膜装置10aでは、例えば蒸着法及びメッキ法等といった成長法が成膜のために使用されることができる。蒸着法としては、例えば抵抗加熱蒸着法、電子ビーム法等を成膜に適用でき、メッキ法としては、例えば電解メッキ法、無電解メッキ法等を成膜に適用できる。
【0130】
好適な実施例では、好適な堆積法を選ぶとき、金属膜47は窪み45a、45b、45c、45dを埋めて、金属膜47の表面47aは、突起43a、43b、43c及び窪み45a、45b、45c、45dによって構成されるラフネスより小さいラフネス(例えば所望のラフネス以下の第2表面粗さRMS2)を有することができる。
【0131】
研磨を行う場合、研磨前の金属膜は、金属・ダイヤモンド複合体の凸部上において表面粗さの1倍以上の厚みであれば良く、表面粗さの3倍程度であることが好ましい。例えば、表面粗さが3μmの場合、3μm以上であれば良く、9μmであることが好ましい。
【0132】
(蒸着法による成膜)
本実施の形態における一実施例では、金属膜47は、蒸着法で成長された金属層を含むことができる。蒸着法による成長は、第1表面粗さを有する金属・ダイヤモンド複合体主面を蒸着法で金属層を覆うことを可能にする。
【0133】
図5の(a)部に示されるように、蒸着法を適用可能な成膜装置10cでは、蒸着源からのフラックス49が基板43の主面43aに向って進む。フラックス49は、金属粒子を主面43aに提供する。主面43aへのフラックス49の金属粒子の付着により、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aに金属薄膜47bが堆積する。金属薄膜47bは主面43aにほぼ一様に堆積している。このとき、金属薄膜47bの表面は金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aの形状とほぼ同じである。
【0134】
成膜装置10cでは、図5の(b)部に示されるように、蒸着源からのフラックス49が基板43の主面43aに向って進むので、徐々に平坦になりながら、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aに金属薄膜47cが堆積する。金属・ダイヤモンド複合体基板43の主面43aが、ダイヤモンド粒子41による突起と突起の間に位置し主に金属40からなる窪みとに起因するラフネスを有するけれども、フラックス49により供給される金属粒子はへこんでいる窪みに堆積していく。金属の堆積により、金属薄膜47cの表面ラフネスは、突起及び窪みによるラフネスはほとんど変化しない。
【0135】
成膜装置10cでは、図5の(c)部に示されるように、所望の厚さを有する金属層47dが成長される。本実施例では、金属膜47は単一の金属層47dを含む。必要な場合には、所望の厚さになるように、一又は複数の金属膜を成長してもよい。本実施例では、金属の堆積に蒸着法を適用しているけれども、複数の金属層の成長を行うときには、第2層目の成膜では、蒸着法及びメッキ法等を引き続く成膜のために使用できる。
【0136】
金属膜47の厚さ(金属上)は第1表面粗さRMS1の2倍以上であることができる。この作製方法によれば、金属膜47の厚さが第1表面粗さの2倍以上であるとき、金属膜47は、平坦化の膜減りを考慮した厚さを有する。
【0137】
好ましくは、金属膜47の厚さは第1表面粗さRMS1の3倍以下であることができる。金属膜47の厚さが第1表面粗さRMS1の3倍以上であるとき、金属膜47は、平平坦化の膜減りを考慮した十分な厚さを有する。
【0138】
金属膜47は、金属・ダイヤモンド複合体基板43の主面43aの窪みを埋めており、金属膜47は、窪みにおいて6μm以上であることができる。上記の厚みの金属膜47は、成膜後の平坦化処理を可能にする。
【0139】
蒸着された金属膜の厚みは、金属ダイヤモンド複合体の窪みの深さ(例えば、3μm程度)の2倍から3倍程度であれば良い(例えば、窪みの底から6〜9μm程度であり、突起の上部からは3〜6μm程度である。蒸着された金属膜の成長後に、蒸着金属膜の表面をポリッシュにより平坦化を行う。
【0140】
(メッキ法による成膜)
本実施の形態における別の実施例では、金属膜47は、メッキ法で成長された金属層を含むことができる。メッキ法による成長は、第1表面粗さを有する金属・ダイヤモンド複合体主面をメッキ法による金属層で覆うことを可能にする。また、メッキ法による金属堆積では、金属・ダイヤモンド複合体基板43の主面43aにおける窪み45a〜45dにまず金属が形成されて、窪み45a〜45dが少し埋まる。さらに、メッキ法による金属堆積を続けるとき、窪み45a〜45dが徐々に埋まっていき、ダイヤモンド粒子の表面を覆って成長する。ついには、主面43aを覆う。
【0141】
メッキ法を適用可能な成膜装置10dは、電解槽50a、電極50b及び電源50cを含み、電解槽50aには電解液50dが満たされている。成膜装置10dでは、図6の(a)部に示されるように、電解槽50a内の電解液50dに金属・ダイヤモンド複合体基板43及び電極50bが浸される。電源50cを電極50bと金属・ダイヤモンド複合体基板43の導電部との間に接続して、電流を流す。電源50cからの電流は、金属・ダイヤモンド複合体基板43及び電解液50dを介して流れる。この電流は、金属・ダイヤモンド複合体基板43の金属40を流れる。この流れに起因して、メッキ法による堆積は、金属・ダイヤモンド複合体基板43の主面43aの金属40上に選択的に生じて、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aに金属薄膜47eが成長する。金属薄膜47eは、ます金属40上に成長される。このとき、金属薄膜47e及び金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aからなる中間表面の表面粗さ(ラフネス)は、第1表面粗さより小さくなっている。これ故に、金属薄膜47bの表面は金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aの平坦性より改善された平坦性を有する。
【0142】
図6の(b)部に示されるように、成膜装置10dでは、電解液からの金属粒子が選択的に成長した金属薄膜47eを種として引き続く堆積が進む。金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aに金属薄膜47fがメッキ法で形成される。金属薄膜47fは金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aを覆っている。図6の(b)部に示されるように、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおける金属40上の金属膜厚はダイヤモンド粒子上の金属膜厚より厚く、メッキ膜はまずへこんでいる窪みに成長していく。メッキ膜の成長により、金属薄膜47fの表面ラフネスは、突起及び窪みによるラフネスより小さくていく。
【0143】
成膜装置10dでは、図6の(c)部に示されるように、所望の厚さを有する金属層47gが成長される。本実施例では、金属膜47は単一の金属層47gを含む。必要な場合には、所望の厚さになるように、一又は複数の金属膜を成長していく。本実施例では、堆積にメッキ法を適用しているけれども、複数の金属層の成長を行うときには、第2層目の成膜では、蒸着法及びメッキ法等を引き続く成膜のために使用できる。
【0144】
メッキ法により成膜では、金属層47gの厚さは第1表面粗さの3倍以上であることができる。メッキ法による金属堆積では、第1表面粗さの3倍以上の厚さを有する金属層を成長するとき、金属層47gの表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおける本来の第1表面粗さより小さくなる。
【0145】
金属層47gの厚さは第1表面粗さRMS1の6倍以上であることができる。メッキ法による金属堆積では、第1表面粗さRMS1の3倍以上の厚さを有する金属層を成長するとき、この金属層47gの表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおける本来の第1表面粗さRMS1より十分に小さくできる。
【0146】
金属層47gは、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおけるダイヤモンド粒子41による突起と金属40の表面からなる窪みを埋めており、金属層47gは窪みにおいて6μm以上であることができる。メッキ法による金属堆積では、6μm以上の厚さで金属層を成長するとき、金属層47gの表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおける元の第1表面粗さRMS1より小さくできる。
【0147】
金属層47gは窪みにおいて9μm以上であることができる。メッキ法による金属堆積では、9μm以上の厚さで金属層を成長するとき、金属層47gの表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおける本来の第1表面粗さより十分に小さくできる。
【0148】
金属層47gの表面粗さは3μm未満であることが可能である。メッキ法による金属堆積においては、金属・ダイヤモンド複合体の主面における窪みの深さが、金属堆積における選択的な埋め込み作用により小さくなっていく。
【0149】
メッキ金属の厚みが、金属ダイヤの窪みの深さ(例えば、3μm)の3倍から6倍であるとき、窪みが選択的にメッキされた後に、このメッキ部分を種にして横方向にもメッキが成長して、この結果、メッキ膜の表面は自己的に平坦化される。発明者の実験によれば、凹みの底から9〜18μmの厚みのメッキ膜の成長により、その表面の平坦性(rms)を1μm未満にすることが可能である。メッキ膜の成長の後に、平坦化のためのポリッシュは行わなくても良い。なお、メッキ膜は窪みにおいて18μm以上であってもよい。
【0150】
蒸着法又はメッキ法により成膜された金属膜47の表面粗さは1μm以下であることができる。表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上が提供される。
【0151】
また、蒸着法又はメッキ法により成膜された金属膜47の表面粗さは0.15μm以下であることができる。表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上により、ヒートシンクの熱伝導特性が、金属・ダイヤモンド複合物の材料自体の値にかなり近い値になる。
【0152】
さらに、蒸着法又はメッキ法により成膜された金属膜47の表面粗さは0.1μm以下であることができる。表面粗さの低減に応じた実効接触面積の向上により、ヒートシンクの熱伝導特性を金属・ダイヤモンド複合物の材料自体の値に非常に近づけることができる。
【0153】
図4の(c)部を参照するとき、堆積されたものとしての金属領域45の表面が所望のラフネスを達成していないとき、工程S104では、金属膜47に表面粗さを改善するための処理装置10bで処理を行って、第1表面粗さRMS1より小さい第2表面粗さRMS2を有する金属表面を金属領域に提供する。
【0154】
金属膜47の処理は例えば研磨を含むことができる。具体的には、金属膜47の表面47aが所望の表面粗さに不足するときは、金属膜47の処理として、金属膜表面47aを研磨することができる。金属膜47の研磨は、機械的研磨法及び機械的化学的研磨法の少なくともいずれか一方を行われることができる。この作製方法によれば、金属膜47の処理として金属研磨を行うときは、例えば機械的研磨法、機械的化学的研磨法等を適用できる研磨器を用いることができる。
【0155】
研磨方法は例えば以下のように行う。定盤にワックスで金属ダイヤモンド複合生産物(又は金属ダイヤモンド複合体ヒートシンク)を貼付け、研磨装置のバフ上に配置する。バフを回転させることにより、金属ダイヤモンド複合生産物(又は金属ダイヤモンド複合体ヒートシンク)の金属膜をポリッシュする。好適な実施例では、ポリッシュは1次ポリッシュ及び2次ポリッシュを行う。
1次ポリッシュ剤:ダイヤモンドを主成分とする平均粒子径0.25μmと純水との混合液。
2次ポリッシュ剤:ダイヤモンドを主成分とする平均粒子径0.1μmと純水との混合液。
【0156】
工程S106では、複合体生産物を形成した後に、複合体生産物を加工により分離して、半導体デバイスを搭載するための搭載面を有する一又は複数のヒートシンク11を形成する。
【0157】
本実施の形態における作製方法によれば、金属・ダイヤモンド複合体基板43と金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aに設けられた金属領域49とを含む複合体生産物を形成する。ダイヤモンド粒子41による突起と突起の間に位置する窪みとを含む金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおいて金属領域49は窪みを埋めて、突起及び窪みに起因するラフネスより小さいラフネスをヒートシンクの搭載面に提供できる。
【0158】
金属・ダイヤモンド複合物基板43から作製されたヒートシンク(図1のヒートシンク11)では、金属・ダイヤモンド複合物基板表面43aにはダイヤモンド及び金属が現れており、これらは、互いに異なる硬度を有する。ヒートシンク表面の平坦性を高めるために金属・ダイヤモンド複合物基板表面43aを研磨するとき、金属の削れとダイヤモンドの削れとが互いに異なり、その結果、研磨された金属・ダイヤモンド複合物基板43の研磨面にはある程度のラフネスが残る。これ故に、金属・ダイヤモンド複合物基板表面43aにはラフネスが形成されている。このヒートシンクの研磨面に半田等によりメタライズを行うとき、メタライズによる金属は、ヒートシンク研磨面の形状に合わせて形成される。その結果、メタライズ金属層の表面には、研磨された金属・ダイヤモンド複合物基板43の研磨面のラフネスと同程度のラフネスが残る。したがって、メタライズ面上に半導体デバイスを実装するとき、半導体デバイスの実装面とヒートシンクの研磨面との実効的な実装面積は、半導体デバイスの実装面の面積に比べて小さい。
【0159】
しかしながら、本実施の形態のヒートシンクを作製する方法によれば、金属・ダイヤモンド複合体基板43と金属領域49とを含む複合体生産物を形成するに際して、ダイヤモンド粒子41による突起と突起の間に位置する窪みとを含む金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおいて金属領域47が窪みを埋めて、突起及び窪みに起因するラフネスを低減したヒートシンク搭載面を提供できる。
【0160】
再び図3を参照しながら、別の実施例を説明する。工程S101では、第1表面粗さRMS1の主面を有しヒートシンクのベースのための金属・ダイヤモンド複合体43を準備する。工程S102では、金属・ダイヤモンド複合体基板(図4において、符号43で参照される)から複合体生産物を形成する。複合体生産物は、金属・ダイヤモンド複合体基板と、この金属・ダイヤモンド複合体基板の主面に設けられた金属膜とを含む。
【0161】
工程S107では、この金属膜がメッキ法で形成される。メッキ法の成膜は、例えば図6を参照しながら説明された実施例と同様に適用されることができるが、これに限定されるものではない。成膜装置10dに金属・ダイヤモンド複合体基板43を配置する。次いで、金属・ダイヤモンド複合体基板43の主面43aに金属膜47をメッキ法で形成して、金属膜47と金属・ダイヤモンド複合体基板43とを含む複合体生産物を形成する。この結果、メッキ膜が金属・ダイヤモンド複合体基板43上に成長される。工程S106では、複合体生産物を加工により分離して、半導体デバイスを搭載するための搭載面を有する一又は複数のヒートシンク11を形成する。
【0162】
このヒートシンクを作製する方法によれば、金属膜47をメッキ法で形成するので、メッキ膜はまず金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおける金属表面に成長する。これ故に、メッキ膜は窪みを埋めながら成長する。また、メッキ膜は、金属表面からダイヤモンドに沿って成長していき、ダイヤモンド粒子41による突起を覆って、ついには一体の金属膜47を形成する。このような成長機構により、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43a(ヒートシンク11の搭載面11a)には、突起及び窪みに起因するラフネスより小さいラフネスを提供できる。
【0163】
メッキ法で成長されたものとしての、つまり研磨無しの金属膜47の表面は第2表面粗さRMS2を有し、第2表面粗さRMS2は第1表面粗さRMS1より小さい。既に説明したように、この実施例においても、第1表面粗さRMS1及び第2表面粗さRMS2は、レーザ顕微鏡で測定され、また50μm〜100スクエア内のいずれかエリアで規定されることができる。
【0164】
メッキ法で成長されたものとしての金属膜47の厚さは第1表面粗さRMS1の3倍以上であることができる。メッキ法による金属堆積では、第1表面粗さRMS1の3倍以上の厚さを有する金属層を成長するとき、金属膜47の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおける本来の第1表面粗さより小さくなる。
【0165】
メッキ法で成長されたものとしての金属膜47の厚さは第1表面粗さRMS1の6倍以上であることができる。メッキ法による金属堆積では、第1表面粗さの3倍以上の厚さを有する金属層を成長するとき、金属膜47の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおける本来の第1表面粗さRMS1より十分に小さくできる。
【0166】
メッキ法で成長されたものとしての金属膜47は金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおける窪みにおいて6μm以上であることができる。メッキ法による金属堆積では、6μm以上の厚さで金属層を成長するとき、金属膜47の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおける本来の第1表面粗さRMS1より小さくできる。
【0167】
メッキ法で成長されたものとしての金属膜47は主面43aの窪みにおいて9μm以上であることができる。メッキ法による金属堆積では、9μm以上の厚さで金属層を成長するとき、金属膜47の表面粗さは、金属・ダイヤモンド複合体の主面における本来の第1表面粗さRMS1より十分に小さくできる。
【0168】
メッキ法で成長されたものとしての金属膜47は、ダイヤモンド粒子41による突起において窪みの深さ以上の厚さを有し、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aには、ダイヤモンド粒子による突起と金属の表面からなる窪みとを含み、金属膜47は窪みを埋めており、金属膜47はダイヤモンド粒子41による突起において窪みの深さ以上の厚さを有することができる。メッキ法による金属堆積においては、金属・ダイヤモンド複合体基板主面43aにおける窪みの深さが、金属堆積における選択的な埋め込み作用により小さくなっていく。
【0169】
(実施例)
図7は、銅・ダイヤモンド複合体の表面に設けられた金メタライズの表面及び半田部の表面を示す図面である。図7を参照すると、銅・ダイヤモンド複合体の表面を示す画像に加えて、レーザ顕微鏡で測定された表面粗さの変化が示されている。図7の画像では、画像に向かって左側がAuを蒸着した銅・ダイヤモンド複合体であり、画像に向かって右側がその複合体の上に蒸着したSnAg半田である。
図7の画像には、「Ref1」で示されるラインが示されおり、ラインRef1上に番号「1」、「2」及び「4」が描かれている。
表面粗さの変化では、番号「1」、「2」及び「4」で指し示される位置における表面粗さの値が以下のものである。
位置番号、 幅、 高さ、 長さ。
位置1: 14.796、 4.955、15.604。
位置2: 14.799、 3.106、16.101。
位置4: 7.273、 1.652、 7.458。
(単位:マイクロメートル)。
レーザ顕微鏡による測定では、表面粗さ(上記の高さ)は金メタライズ部において3.1μm〜5μm程度である。これらの位置における表面粗さは、接触式段差計による測定では、例えば0.1マイクロメートルである。
【0170】
図8は、銅・ダイヤモンド複合体の表面に設けられた金メタライズの表面及び半田部の表面を示す図面である。図8を参照すると、銅・ダイヤモンド複合体の表面を示す画像に加えて、レーザ顕微鏡で測定された表面粗さの変化が示されている。図8の画像では、画像に向かって左側がAuを蒸着した銅・ダイヤモンド複合体であり、画像に向かって右側がその複合体の上に蒸着したSnAg半田である。
図7の画像には、「Ref2」で示されるラインが示されおり、半田部におけるラインRef2上に番号「1」及び「2」が描かれている。
表面粗さの変化では、番号「1」及び「2」で指し示される位置における表面粗さの値が以下のものである。
位置番号、 幅、 高さ、 長さ。
位置1: 22.319、 3.896、22.657。
位置2: 26.332、 3.898、26.619。
(単位:マイクロメートル)。
レーザ顕微鏡による測定では、表面粗さ(上記の高さ)は半田部において3.8μm程度である。これらの位置における表面粗さは、接触式段差計による測定では、例えば0.1マイクロメートルである。
【0171】
本実施の形態では、緑色発光のレーザダイオードの寿命及び信頼性の向上の観点から、金属複合ダイヤモンド・ヒートシンクの表面粗さを検討している。
【0172】
発明者らは、半極性{20−21}面上の緑色レーザダイオードの投入電力は高いので、その放熱性を高めることが非常に重要であることを見出した。緑色レーザダイオードの素子寿命を確保する上で、熱伝導率の観点からは、銅ダイヤモンド複合体(熱伝導率、例えば550W/mK程度)を含む材料をサブマウントに用いることが好ましい。
【0173】
しかしながら、発明者らの測定によれば、入手可能な銅ダイヤモンド複合体の表面粗さは、図7及び図8から理解されるように、銅ダイヤモンドの表面粗さが酷く、その値は3μmを越える。この程度の表面粗さを有する銅ダイヤモンドをサブマウントとして用いる評価では、銅ダイヤモンドサブマウントは、AlNサブマウント(熱伝導率、例えば170W/mK程度)と同程度の放熱性能を示す。
【0174】
図9は、表面粗さを低減していない銅ダイヤモンド複合体サブマウントの外観を示す図面である。図9の(a)部を参照すると、この顕微鏡写真は、銅ダイヤモンド複合体の表面に特有の表面粗さを表している。サブマウント表面のハンダ部の表面粗さは、レーザ顕微鏡による測定で3μmを越えており、図9の(b)部を参照すると、窪みに銅が現れている。
【0175】
図10は、この表面粗さを低減していない銅ダイヤモンド複合体サブマウント上にレーザダイオードを実装した後にレーザダイオードを剥がした外観を示す。図10の(a)部は、剥がしたサブマウントの表面の外観を示す。図10の(b)部は、剥がしたレーザダイオードの電極表面の外観を示す。図10の(b)部を参照すると、銅ダイヤサブマウント表面の大きなラフネスが、そのままレーザダイオードチップの電極表面の半田に転写されている。また、レーザダイオードチップの電極表面に半田が濡れていない。これらの実験結果から、発明者らは、銅ダイヤモンド複合体サブマウントに固有の表面粗さに起因して、銅ダイヤモンド複合体の物性が引き出されていない、と考えている。シェア強度の測定は以下の値を示す。
銅ダイヤサブマウント:750g。
AlNサブマウント:1000g。
銅ダイヤサブマウントおける密着性はAlNサブマウントおける密着性より悪い。
【0176】
これまでの銅ダイヤモンドでは、発明者らの検討によれば、3μmを越える表面粗さのため、レーザダイオードの電極と半田との接触面積が、期待されるものよりも少ない。これ故に、銅ダイヤモンド複合体のヒートシンクは、銅ダイヤモンド複合体本来の熱伝導性(熱伝導率、例えば550W/mK程度)を発揮していなかった。
【0177】
つまり、銅ダイヤモンド複合体のサブマウントの表面粗さの改善が望まれている。発明者らの検討によれば、銅ダイヤモンド複合体は硬度の異なる銅とダイヤモンド粒子を含み、銅ダイヤモンド複合体の大きな表面粗さは、硬度の異なる銅とダイヤモンドに起因する。発明者らの観察により、銅ダイヤモンド複合体表面の凹部は銅からなり、凸部はダイヤモンドからなるであることが見出された。この大きな表面粗さを改善するための手法は、管理された表面粗さの金属領域を銅ダイヤモンド複合体表面に形成すること、及び、このために正確な表面粗さの見積もりを行うことにある。
【0178】
実験では、銅ダイヤモンド複合体表面のラフネス(例えば3μmを越える表面粗さ)を越える厚さの金属膜を成長する。下地のラフネス(銅ダイヤモンド複合体表面のラフネス)を越える厚さの金属を堆積することが好ましく、例えば10μm程度であることが好ましい。この金属膜の表面の研磨・ポリッシュを行って、金属表面を削り、0.1μm以下の表面粗さ(rms)をサブマウント表面の金属表面に提供する。サブマウント表面の金属表面の表面粗さ(rms)は0.1μm未満であることが好ましいが、0.15μm以下であっても十分に適用可能である。表面粗さ(rms)の上限が1.0μm以下であるとき、このサブマウントは、十分な効果を提供できる。また、表面粗さ(rms)の上限が3.0μm以下であるとき、サブマウントの熱伝導性を銅ダイヤモンド複合体本来の値に近づけることができる。発明者らの検討によれば、10nm程度の表面粗さ(rms)をサブマウント表面の金属表面に作り込むことができる。上記の表面粗さの範囲において、銅ダイヤモンドの本来の物性を引き出すことが可能となり、この結果、緑色レーザダイオードの信頼性を改善することが可能となる。好ましくは、銅を含む金属ダイヤモンド・ヒートシンクの表面粗さ(rms)は例えば10nm以上1.0μmであり、更に好ましくは、銅を含む金属ダイヤモンド・ヒートシンクの表面粗さ(rms)は例えば10nm以上であり、0.1μmである。また、銅ダイヤモンド複合体の銅に替えて、アルミニウム、タングステン、銀などのダイヤモンドより低い硬度の材料を適用可能である。
【0179】
発明者らは、いくつかの表面粗さのサブマウントに緑色レーザダイオードをpダウン形態で実装して、半導体装置を作製する。これらの半導体装置の熱抵抗を測定する。図11は、サブマウントに依存した熱抵抗の変化の度数分布を示す図面である。図11を参照すると、改善前の銅ダイヤモンド複合体サブマウント(表面粗さ:レーザ顕微鏡では5マイクロメートル、接触式段差計では0.1マイクロメートル)C1、改善前の銅ダイヤモンド複合体サブマウント(表面粗さ:レーザ顕微鏡では3マイクロメートル、接触式段差計では0.1マイクロメートル)C2、改善後の銅ダイヤモンド複合体サブマウント(表面粗さ:レーザ顕微鏡では0.15マイクロメートル、接触式段差計では0.1マイクロメートル)A1、AlNサブマウントの熱抵抗の相対値を示す。図12の(a)部は、改善後の銅ダイヤモンド複合体サブマウントの外観の一例を示す図面であり、図12の(b)部は、改善前の銅ダイヤモンド複合体サブマウントの外観の一例を示す図面である。
【0180】
改善前の銅ダイヤモンド複合体サブマウントの熱抵抗は、度数を考慮した平均として見るとき、AlNサブマウントの+7パーセント増しの値である一方、改善後の銅ダイヤモンド複合体サブマウントの熱抵抗は、頻度を考慮した平均として見るとき、AlNサブマウントの−35パーセント低減の値である。改善前及び改善後の銅ダイヤモンド複合体の熱伝導率は同一の値である。
【0181】
本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0182】
以上説明したように、本発明の実施の形態によれば、金属・ダイヤモンド複合体にその本来の熱伝導率を発揮させることを可能にするヒートシンクを提供することができる。また、本発明の実施の形態によれば、そのヒートシンクを作製する方法を提供することができる。さらに、本発明の実施の形態によれば、そのヒートシンクを含む半導体装置を提供することができる。またさらに、本発明の実施の形態によれば、半導体装置を含む半導体モジュールを提供することができる。
【符号の説明】
【0183】
11…ヒートシンク、13…ベース、15…金属領域、18…金属・ダイヤモンド複合物、17…ダイヤモンド粒子、19…金属、23a、23b、23c…突起、25a、25b、25c、25d…窪み、31…半導体装置、33…半導体デバイス、35…半田材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスを搭載するためのヒートシンクであって、
ダイヤモンド粒子と金属を複合した金属・ダイヤモンド複合物からなり、前記ダイヤモンド粒子及び前記金属が現れた主面を有するベースと、
前記ベースの主面を覆うように設けられた金属層を含み、デバイスを搭載するための搭載面を有する金属領域と、
を備え、
前記金属層は、半田材と異なる金属からなり、
前記ベースの前記主面には、前記ダイヤモンド粒子による突起と前記突起の間に位置する窪みとを含み、
前記金属領域は前記窪みを埋めて、前記搭載面は前記突起及び前記窪みによるラフネスより小さいラフネスを有する、ヒートシンク。
【請求項2】
前記金属領域の前記搭載面の表面粗さは0.15μm以下である、請求項1に記載されたヒートシンク。
【請求項3】
前記金属領域の厚さは前記窪みで3μmより大きい、請求項1又は請求項2に記載されたヒートシンク。
【請求項4】
前記金属領域の前記搭載面の表面粗さは0.1μm以下である、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載されたヒートシンク。
【請求項5】
前記ベースの前記主面の表面粗さは3μmより大きく、
前記金属領域の前記搭載面の表面粗さは3μm以下である、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載されたヒートシンク。
【請求項6】
前記金属領域の前記搭載面の表面粗さは1μm以下である、請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載されたヒートシンク。
【請求項7】
前記ベースの前記主面は第1表面粗さ(rms)を有し、
前記金属領域の前記搭載面は第2表面粗さ(rms)を有し、
前記第1表面粗さ及び前記第2表面粗さは、レーザ顕微鏡で測定され、また50μmスクエア〜100μmスクエアの範囲内のあるエリアで規定され、
前記第2表面粗さは前記第1表面粗さより小さい、請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載されたヒートシンク。
【請求項8】
前記金属層は、Cu、Al、Ag、Au及びNiの少なくとも一つを含む金属からなる、請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載されたヒートシンク。
【請求項9】
前記金属・ダイヤモンド複合物の前記金属は、前記ダイヤモンド粒子をバインドするバインダー金属であり、
前記バインダー金属は、Cu、Al、Ag、Au、W、Ni、Co、Mnの1つ以上を主成分とする金属を含む、請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載されたヒートシンク。
【請求項10】
前記バインダー金属は前記金属層の材料と異なる、請求項1〜請求項9のいずれか一項に記載されたヒートシンク。
【請求項11】
前記金属・ダイヤモンド複合物は、平均粒径1〜200μmのダイヤモンド粒を含む、請求項1〜請求項10のいずれか一項に記載されたヒートシンク。
【請求項12】
前記金属・ダイヤモンド複合物の熱膨張係数は、2.5×10−6/K以上6.5×10−6/K以下の範囲にある、請求項1〜請求項11のいずれか一項に記載されたヒートシンク。
【請求項13】
ヒートシンクを作製する方法であって、
ヒートシンクのベースのための金属・ダイヤモンド複合体を準備する工程と、
前記金属・ダイヤモンド複合体の主面に設けられた金属領域と前記金属・ダイヤモンド複合体とを含む複合体生産物を形成する工程と、
前記複合体生産物を加工して、半導体デバイスを搭載するための搭載面を有するヒートシンクを形成する工程と、
を備え、
複合体生産物を形成する前記工程は、金属膜を形成する工程を含み、
前記金属膜は半田材と異なる金属からなり、
前記金属領域は前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面を覆い、
前記金属・ダイヤモンド複合体は、ダイヤモンド粒子と金属を複合したものであり、
前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面には、前記ダイヤモンド粒子による突起と前記突起の間に位置する窪みとを含み、
前記金属領域は前記窪みを埋めて、前記搭載面は前記突起及び前記窪みによるラフネスより小さいラフネスを有する、ヒートシンクを作製する方法。
【請求項14】
前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面は第1表面粗さを有し、
複合体生産物を形成する前記工程は、
前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面に前記金属領域を形成する工程と、
前記金属膜に処理を行って、前記第1表面粗さより小さい第2表面粗さを有する金属表面を前記金属領域に提供する工程とを更に含み、
前記第1表面粗さ及び前記第2表面粗さは、レーザ顕微鏡で測定され、また50μmスクエア〜100μmスクエアの範囲内のあるエリアで規定される、請求項13に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項15】
前記金属膜の前記処理は研磨を含む、請求項14に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項16】
前記金属膜の前記処理は、機械的研磨法及び機械的化学的研磨法の少なくともいずれか一方で行われる、請求項14又は請求項15に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項17】
前記金属膜の形成は、蒸着法及びメッキ法の少なくともいずれかの成長法で行われる、請求項13〜請求項16のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項18】
前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面は第1表面粗さを有し、
前記金属膜は、蒸着法で成長された金属層を含む、請求項13〜請求項17のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項19】
前記金属層の厚さは前記第1表面粗さの2倍以上である、請求項18に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項20】
前記金属層の厚さは、前記第1表面粗さの3倍以下である、請求項18又は請求項19に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項21】
前記金属層は、前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面の前記窪みを埋めており、
前記金属層は、前記窪みにおいて6μm以上である、請求項18〜請求項20のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項22】
前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面は第1表面粗さを有し、
前記金属膜は、メッキ法で成長された金属層を含む、請求項13〜請求項17のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項23】
前記金属層の厚さは前記第1表面粗さの3倍以上である、請求項22に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項24】
前記金属層の厚さは、前記第1表面粗さの6倍以上である、請求項22又は請求項23に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項25】
前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面には、前記ダイヤモンド粒子による突起と金属の表面からなる窪みとを含み、
前記金属層は前記窪みを埋めており、
前記金属層は前記窪みにおいて9μm以上である、請求項22〜請求項24のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項26】
前記金属層は前記窪みにおいて18μm以上である、請求項22〜請求項25のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項27】
前記金属領域の前記表面粗さは3μm未満である、請求項22〜請求項26のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項28】
前記金属領域の前記表面粗さは1μm以下である、請求項13〜請求項27のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項29】
前記金属領域の表面粗さは0.15μm以下である、請求項13〜請求項28のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項30】
前記金属領域の表面粗さは0.1μm以下である、請求項13〜請求項29のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項31】
前記金属・ダイヤモンド複合体は、平均粒径1〜200μmのダイヤモンド粒を含む、請求項13〜請求項30のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項32】
前記金属・ダイヤモンド複合体の前記金属は、前記ダイヤモンド粒子をバインドするバインダー金属であり、
前記バインダー金属は、Cu、Al、Ag、Au、W、Ni、Co、Mnの1つ以上を主成分とする金属を含む、請求項13〜請求項31のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項33】
ヒートシンクを作製する方法であって、
第1表面粗さの主面を有しヒートシンクのベースのための金属・ダイヤモンド複合体を準備する工程と、
前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面に金属膜をメッキ法で形成して、前記金属膜と前記金属・ダイヤモンド複合体とを含む複合体生産物を形成する工程と、
前記複合体生産物を加工して、デバイスを搭載するための搭載面を有するヒートシンクを形成する工程と、
を備え、
前記金属・ダイヤモンド複合体は、ダイヤモンド粒子と金属を複合したものであり、
前記金属膜は、前記ダイヤモンド粒子による突起を覆い、
前記金属・ダイヤモンド複合体の前記主面には、前記ダイヤモンド粒子による突起と前記金属の表面からなる窪みとを含み、
前記金属膜は前記窪みを埋めて、前記搭載面は前記突起及び前記窪みによるラフネスより小さいラフネスを有する、ヒートシンクを作製する方法。
【請求項34】
前記金属膜の表面は第2表面粗さを有し、
前記第2表面粗さは前記第1表面粗さより小さく、
前記第1表面粗さ及び前記第2表面粗さは、レーザ顕微鏡で測定され、また50μmスクエアで規定される、請求項33に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項35】
前記金属膜の厚さは、前記第1表面粗さの3倍以上である、請求項33又は請求項34に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項36】
前記金属膜の厚さは、前記第1表面粗さの6倍以上である、請求項33〜請求項35のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項37】
前記金属膜は前記窪みを埋めており、
前記金属膜は前記窪みにおいて9μm以上である、請求項33〜請求項36のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項38】
前記金属膜は前記窪みにおいて18μm以上である、請求項33〜請求項37のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項39】
前記金属膜は、前記ダイヤモンド粒子による突起において前記窪みの深さ以上の厚さを有する、請求項33〜請求項38のいずれか一項に記載されたヒートシンクを作製する方法。
【請求項40】
請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載されたヒートシンクと、
前記ヒートシンクの前記搭載面上に搭載された半導体デバイスと、
前記ヒートシンクの前記搭載面に前記半導体デバイスを接着する半田材と、
を備える半導体装置。
【請求項41】
前記半導体デバイスは半導体レーザダイオードを含む、請求項40に記載された半導体装置。
【請求項42】
前記半導体レーザダイオードは、500nm以上540nm以下の波長範囲の発振波長を発生する活性層と、III族窒化物からなるp型クラッド層と、III族窒化物からなるn型クラッド層とを含み、
前記活性層は前記p型クラッド層と前記n型クラッド層との間に設けられる、請求項41に記載された半導体装置。
【請求項43】
前記半導体レーザダイオードは、前記n型クラッド層、前記活性層及び前記p型クラッド層を搭載する基板を含み、
前記基板は、III族窒化物からなる主面を含み、
前記基板の前記主面は、前記III族窒化物のc軸に直交する基準平面に対して10度以上80度以下又は100度以上170度以下の範囲の角度で傾斜する、請求項40〜請求項42のいずれか一項に記載された半導体装置。
【請求項44】
前記基板の前記主面の前記角度は63度以上80度以下又は100度以上117度以下の範囲にある、請求項43に記載された半導体装置。
【請求項45】
請求項40〜請求項44のいずれか一項に記載された半導体装置と、
前記半導体装置を搭載するパッケージと、
を備える半導体モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図11】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−98491(P2013−98491A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242603(P2011−242603)
【出願日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】