説明

ヒートシンク

【目的】半導体パワーモジュールをヒートシンク上に設置し、半導体パワーモジュールとヒートシンクとが接する側のヒートシンク面内に溝を設け、この溝に伝熱管を埋設して、半導体パワーモジュールが発する熱をヒートシンクが吸収して外部に放熱する半導体パワーモジュールの冷却装置において、放熱効率の向上を図る。
【解決手段】伝熱管にヒートパイプを使用し、溝の断面形状に合わせて断面形状を変形させたヒートパイプを溝に埋設させることを特徴とした半導体パワーモジュールの冷却装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体パワーモジュールなどの電子部品を冷却する場合に好適に使用できるヒートシンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば電力変換装置における半導体パワーモジュールで生ずる熱に対しては、放熱部材であるヒートシンクを半導体パワーモジュールに取り付け、周囲に放出することにより、半導体パワーモジュールの温度上昇を抑制していた。
【0003】
従来のヒートシンクの全体構成を説明する。
図5は、従来のヒートシンク101の取り付け状態を示す図である。101はヒートシンク、102はヒートパイプ、103はヒートブロック、104はパイプ保持溝、105はフィン部、106は半導体パワーモジュールである。
【0004】
図5のとおり、従来のヒートシンク101としては、半導体パワーモジュール106からの発生熱を受けるヒートブロック103(伝熱部材)と、そのヒートブロック103に形成された複数の通路(パイプ保持溝104)と、各パイプ保持溝104にそれぞれ敷設された複数のヒートパイプ102と、ヒートパイプ102の長手方向に並列するように多数の放熱用のフィン部105とを備えたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
続いて、従来のヒートシンクのヒートパイプ埋め込み部分の詳細な構成を説明する。
図6は、従来のヒートシンクの取り付け状態のヒートパイプ埋め込み部分を示す拡大図である。107はグリースである。
【0006】
図6のとおり、従来のヒートパイプ102は丸棒形状である。ヒートパイプ102とヒートブロック103のパイプ保持溝104との隙間には熱伝導性のグリース107が充填されている。
【0007】
ここで、ヒートブロック103の半導体パワーモジュール106が接する面から、反対の放熱側(フィン側)の面までの板厚Aは、ヒートパイプ102をパイプ保持溝104内部に収納するために必要な深さBと、ヒートブロック103の機械的な強度を確保するために必要な肉厚Cとの合計となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−43064号公報
【発明の概要】
【0009】
このような従来のヒートシンクには、以下のような課題があった。
ヒートパイプ102は、その直径が大きいほどヒートパイプの最大熱輸送量が大きくなる。従って、放熱性能を向上させるためには、ヒートパイプ102の直径(D)を大きくする必要がある。しかし、このとき、大型化したヒートパイプ102を収納するためには、パイプ保持溝104の深さ(B)も増やす必要がある。すると、機械的な強度を確保するため肉厚(C)も増加させなければならないため、結果的に、ヒートブロック103の板厚(A)も増加する。そのため、ヒートシンク101全体が大型化し、質量が増して、取り扱いが困難になり、コストもかかってしまう。
【0010】
また、グリース107は熱伝導性であるが、ヒートブロック103(例えばアルミニウムを材料とする)と比較するとその熱伝導率は小さく、ヒートシンク101の放熱性能を阻害する要因となっている。
【0011】
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決するべく、小型化を図るとともに、放熱性能の高いヒートシンクを実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するために、本発明によれば、熱交換対象に向けて開口されたパイプ保持溝が少なくとも1つ延設され、前記熱交換対象の一面に熱授受可能に当接されるヒートブロックと、前記パイプ保持溝内に収容されるヒートパイプとを備えたヒートシンクにおいて、前記ヒートパイプの垂直横断面形状は、真円を除く形状であることを特徴とするヒートシンクとする。
【0013】
また、本発明によれば、上記の構成において、前記ヒートパイプの垂直横断面形状の厚み方向の直径Dが、前記パイプ保持溝の直径をBとした場合に、1>D/B≧0.95の不等式を満足する寸法に設定されていることを特徴とするヒートシンクとする。
【0014】
また、本発明によれば、上記の構成において、前記ヒートパイプは塑性変形可能であって、押圧機による押圧によって前記形状および前記寸法に塑性変形させられて前記パイプ保持溝に収容されたことを特徴とするヒートシンクとする。
【0015】
また、本発明によれば、上記の構成において、前記ヒートパイプと前記パイプ保持溝との間には伝熱物が介在していることを特徴とするヒートシンクとする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、小型化を図るとともに、放熱性能の高いヒートシンクを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施例のヒートシンクを示す平面図である。
【図2】本発明の第1の実施例のヒートシンクを示す正面図である。
【図3】本発明の第1の実施例のヒートシンクを示す拡大図である。
【図4】本発明の第2の実施例のヒートシンクの製造方法を示す拡大図である。
【図5】従来のヒートシンクの取り付け状態を示す正面図である。
【図6】従来のヒートシンクの取り付け状態のヒートパイプ埋め込み部分を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態を以下の実施例で説明する。
【実施例】
【0019】
図1ないし3により、本発明の第1の実施例の構成を説明する。
最初に、図1および2により、実施例1のヒートシンクの全体的な構成を説明する。
図1は本発明の第1の実施例のヒートシンクを示す平面図であり、図2はその正面図である。1はヒートシンク、2はヒートパイプ、3はヒートブロック、5はフィン部、6は半導体パワーモジュールである。
【0020】
図1および2のとおり、複数の半導体パワーモジュール6の底面側には、半導体パワーモジュール6の発生熱を受けるヒートブロック3(伝熱部材)が取り付けられている。ヒートブロック3の材料としては、熱伝導性の高いアルミニウムまたはアルミニウム合金、銅または銅合金等の金属が好適に用いられる。
【0021】
ヒートブロック3には、筒状の複数のヒートパイプ2が、半導体パワーモジュール6とそれぞれ接触するように埋設されている。
ヒートブロック3の底面側には、ヒートパイプ2からの伝達熱を大気中に放散する放熱用のフィン部5(伝熱部材)が、長手方向に並列するように多数設けられている。
【0022】
実施例1のヒートシンクの全体的な構成は以上である。
次に、図3により、実施例1のヒートシンクのヒートパイプ部分の詳細な構成を説明する。
【0023】
図3は本発明の第1の実施例のヒートシンクを示す拡大図である。4はパイプ保持溝、7はグリースである。
図3のとおり、ヒートブロック3にはパイプ保持溝4が形成されている。パイプ保持溝4にはヒートパイプ2が収納されている。パイプ保持溝4とヒートパイプ2との間には、伝熱性のグリース7が充填されている。
【0024】
パイプ保持溝4に収納されたヒートパイプ2は、その垂直横断面形状が真円を除く形状として形成されている。真円を除く形状とは、ヒートパイプ2の垂直横断面が真円を除く形状であればよく、四角形、六角形、八角系等の多角形形状、楕円形状、長円形状などが考えられる。
【0025】
また、ヒートパイプ2の垂直横断面形状の厚み方向の直径をD、パイプ保持溝4の直径をBとした場合に、ヒートパイプ2およびパイプ保持溝4は、1>D/B≧0.95の不等式を満足する寸法に設定されている。
【0026】
この不等式で示した割合が1を超えると、パイプ保持溝4からヒートパイプ2がはみ出してしまい、半導体パワーモジュールとの接触に悪影響となってしまう。一方、逆に数値が小さくなるとグリース7によって埋めるべき隙間が大きくなることから、熱伝導に悪影響を与える。なるべく1に近づけることが理想であるが、パイプ保持溝4の切削加工精度とヒートパイプ2の変形加工の精度の関係から、上記の数字が最適である。
【0027】
ここで、従来技術のヒートシンク101(図6)と実施例1のヒートシンク1(図3)とを比較すると、実施例1のヒートパイプ2(図3の形状。つまり真円を除く形状)の方が、従来技術のヒートパイプ102(真円形状)よりも、半導体パワーモジュールに接触する面積が大きい。
【0028】
また、実施例1のヒートシンク1は、ヒートパイプ2の垂直横断面形状の厚み方向の直径をD、パイプ保持溝4の直径をBとした場合に、ヒートパイプ2およびパイプ保持溝4が、1>D/B≧0.95の不等式を満足する寸法に設定されているため、従来技術のヒートシンク101よりも、グリース7の充填量が少なくてすむ。
【0029】
さらに、実施例1のヒートパイプ2の方は、上記の寸法に設定されているため、断面積自体は同じであるにもかかわらず、従来技術のヒートパイプ102よりも、厚さ方向の直径(D)を小さくすることができる。例えば、実施例1のヒートパイプ2の厚み方向の直径(D)の寸法は、従来技術のヒートパイプ102の直径(φd)に対して、D=0.9×d程度となっている。これにより、ヒートパイプ2を収納するパイプ保持溝4の深さ(B)も、従来技術より小さくすることができる。
【0030】
このため、機械的強度を確保するための肉厚(C)を従来と同程度確保したとしても、結果的に、実施例1のヒートブロック3全体の板厚(A)は、従来技術のヒートブロック103よりも小さくすることができる。
【0031】
実施例1のヒートシンクのヒートパイプ部分の詳細な構成の説明は以上である。
かくして本発明の第1の実施例によれば、ヒートパイプ2と半導体パワーモジュール6との接触面積が増すため、冷却効率を向上させることができる。
【0032】
また、熱伝導率の小さいグリース7の充填量を少なくすることができるため、冷却効率を向上させることができる。
さらに、パイプ保持溝4の厚さ方向の深さ(B)を小さくすることができるため、従来と同程度の最大熱輸送能力を持つヒートパイプ2を使用しつつ、機械的強度を保つために必要な肉厚(C)を確保した状態で、ヒートブロック3の板厚(A)を減少させることができる。これにより、ヒートシンク1の小型化および軽量化を実現することができる。
【0033】
加えて、半導体パワーモジュール6とヒートパイプ2が接する面から放熱側(フィン部5の側)の面までの距離を小さくできるため、ヒートシンク1の熱抵抗値が低下し、放熱性能を向上させることができる。
【0034】
続いて、図4により、本発明の第2の実施例を説明する。
図4は、本発明の第2の実施例のヒートシンクの製造方法を示す拡大図である。8はプレス機である。
【0035】
なお、実施例2では、完成状態のヒートシンク1の構成は実施例1と同じであるが、その製造方法が異なる。そのため、構成についての詳細な説明は省略し、異なる点について中心に説明を行う。
【0036】
図4では、ヒートパイプ2は、全体が銅等の塑性変形可能な金属によって円筒状の密閉容器として形成されている。なお、ヒートパイプ2の材料としては、銅または銅合金、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金、ステンレススチール等の金属が好適に用いられる。
【0037】
そして、ヒートブロック3のパイプ保持溝4の開口部付近に、この塑性変形可能なヒートパイプ2が設置される。
この状態で、プレス機8を用いて、ヒートパイプ2をパイプ保持溝4に押圧する。このとき、押圧により、ヒートパイプ2の垂直横断面形状はパイプ保持溝4の形状に合わせて塑性変形される。
【0038】
つまり、丸い筒状だったヒートパイプ2は、垂直横断面形状が真円を除く形状であって、 また、ヒートパイプ2の垂直横断面形状の厚み方向の直径をD、パイプ保持溝4の直径をBとした場合に、ヒートパイプ2およびパイプ保持溝4は、1>D/B≧0.95の不等式を満足する寸法に塑性変形させられることになる。
【0039】
なお、変形後のヒートパイプ2の厚み方向の直径(D)の寸法は、変形前のヒートパイプ2の直径(φd)に対して、D=0.9×d程度となっている。
これにより、ヒートパイプ2を実施例1の図3と同じ構成とすることができる。
【0040】
かくして本発明の第2の実施例によれば、簡易な方法で、ヒートパイプ2の形状をヒートブロック3のパイプ保持溝4と略同一の形状として、ヒートシンク1を構成することができる。
【0041】
つまり、塑性変形可能なヒートパイプ2とプレス機8を用いるという簡易な方法により、所定の形状および寸法に合うようにヒートパイプ2をあらかじめ製造するコスト(加工時間が長くなるために必要となるコスト)を不要とし、実施例1と同じ効果を持つヒートシンクを製造することができる。
【0042】
なお、上記実施形態は好ましい実施例について述べたものであり、本発明の趣旨を逸脱することなく、種々の変形実施例が可能なことは勿論である。即ち、ヒートパイプやヒートブロック、パイプ保持溝、フィン部等の寸法や各部分の形状等は、設置現場の要求および状況等に応じて種々変更されるべきものである。
【符号の説明】
【0043】
1 ヒートシンク
2 ヒートパイプ
3 ヒートブロック
4 パイプ保持溝
5 フィン部
6 半導体パワーモジュール
7 グリース
8 プレス機



【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換対象に向けて開口されたパイプ保持溝が少なくとも1つ延設され、前記熱交換対象の一面に熱授受可能に当接されるヒートブロックと、
前記パイプ保持溝内に収容されるヒートパイプとを備えたヒートシンクにおいて、
前記ヒートパイプの垂直横断面形状は、真円を除く形状であることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートシンクにおいて、
前記ヒートパイプの垂直横断面形状の厚み方向の直径Dが、前記パイプ保持溝の直径をBとした場合に、1>D/B≧0.95の不等式を満足する寸法に設定されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項3】
請求項2に記載のヒートシンクにおいて、
前記ヒートパイプは塑性変形可能であって、押圧機による押圧によって前記形状および前記寸法に塑性変形させられて前記パイプ保持溝に収容されたことを特徴とするヒートシンク。
【請求項4】
請求項1ないし3に記載のヒートシンクにおいて、
前記ヒートパイプと前記パイプ保持溝との間には伝熱物が介在していることを特徴とするヒートシンク。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−182159(P2012−182159A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42000(P2011−42000)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】