説明

ヒートシール装置およびこれを備えた薬剤分包装置

【課題】 薬剤分包装置の立上げから発熱体がヒートシールに必要な温度に達するまでの時間を短縮した上で、しかもシール不良を防止し得るヒートシール装置およびそれを用いた薬剤分包装置の提供。
【解決手段】 ヒータ台と、ヒータ台に対向して設けられたヒータ受台とが設けられ、熱溶着性シートに通電によって加熱される薄板状の発熱体がヒータ台に露出して設けられ、ヒータ台とヒータ受台とで熱溶着性シートを挟圧加熱することで熱溶着性シートどうしを熱溶させてヒートシール部を設けて、該ヒートシールによって収容物を収容する区画した包装部を形成するようにしたヒートシール装置であって、発熱体の熱溶着性シートに接触する面またはその反対側の面の少なくとも一方に、該発熱体に比べて硬質の保護層が設けられた構成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば薬剤分包紙として用いられる熱溶着性シートに対してヒートシールを行ってヒートシールによって収容物を収容する区画した包装部を形成するようにするヒートシール装置、およびこれを備えた薬剤分包装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば薬剤分包装置には、下記特許文献1に示すように、熱溶着性シートに対してヒートシールを行うことで、個別に区画された包装部を形成するためのヒートシール装置を備えているものがある。このヒートシール装置では、熱溶着性シートを加熱するための発熱体を、熱溶着性シート一面側に露出するようヒータ台に設け、熱溶着性シートを挟むようヒータ台と対向配置させたヒータ受台を設けている。そして発熱体に通電してこれを過熱し、ヒータ台とヒータ受台とを互いに近接する方向へ移動させることで、両者によって加熱挟圧される熱溶着性シートの熱溶着面がヒートシールされて、熱溶着性シートに、個別に区画された包装部を形成するようにしている。
【0003】
そして、上記従来のヒートシール装置では、薬剤分包装置の立上げから発熱体がヒートシールに必要な温度に達するまでの時間を短縮すべく、発熱体をヒータ台に露出させるようにして、発熱体を肉薄の金属で形成している。
【特許文献1】特開2005−335810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱溶着性シートをヒートシールして、個別に区画された包装部を形成する際に、その内部に投入される薬剤、特に錠剤の個数によっては、これがヒータ台とヒータ受台とを接近させた際に熱溶着性シートの間に噛込んでしまう場合が考えられ、発熱体はヒートシールに必要な温度に達するまでの時間を短縮すべく肉薄に形成しているから、噛込んだ錠剤によって発熱体が変形し易くなってしまうことが考えられる。そうすると、発熱体が変形した分だけ熱溶着性シートに接触しにくくなるから、熱溶着性シートを隙間なく挟持できなくなり、且つヒートシールに必要な熱量が熱溶着性シートに付与できなくなってしまって、シール不良を起こしてしまうことが考えられる。
【0005】
そこで本発明は、薬剤分包装置の立上げから発熱体がヒートシールに必要な温度に達するまでの時間を短縮した上で、しかもシール不良を防止し得るヒートシール装置およびそれを用いた薬剤分包装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のヒートシール装置は、ヒータ台と、該ヒータ台に対向して配置されたヒータ受台とが設けられ、熱溶着性シートに通電によって加熱される薄板状の発熱体がヒータ台に露出して設けられ、ヒータ台とヒータ受台とで熱溶着性シートを挟圧加熱することで熱溶着性シートどうしを熱溶着させたヒートシール部を設けて、該ヒートシール部によって収容物を収容すべく区画した包装部を形成するようにし、前記発熱体の熱溶着性シートに接触する面またはその反対側の面の少なくとも一方に、該発熱体に比べて硬質の保護層が設けられたことを特徴としている。
【0007】
上記構成のヒートシール装置では、発熱体は薄板状に形成されていることにより、通電によって短時間で加熱されて所要の温度まで上昇し、ヒータ台とヒータ受台との間に熱溶着性シートを置いてヒータ台とヒータ受台とを接近させると、熱溶着性シートが溶着してヒートシール部が形成される。このとき、熱溶着性シートに投入する収容物が、熱溶着性シートを介してヒータ台とヒータ受台との間に噛込んでしまっても、発熱体には硬質の保護層が設けられているから、該噛込みによる発熱体の変形が抑制され、以後のシール不良を効果的に抑制することができる。
【0008】
本発明のヒートシール装置では、保護層は、発熱体の熱溶着性シートに接触する面およびその反対側の面の双方に設けられていることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、熱溶着性シートに投入する収容物が、熱溶着性シートを介してヒータ台とヒータ受台との間に噛込んでしまっても、熱溶着性シートに接触する面側に設けた保護層によって発熱体の熱溶着性シートに接触する面の表面的変形を防止し、しかも反対側の面側に設けた保護層と相まって、発熱体全体の変形(撓み)をも抑制できる。
【0010】
本発明のヒートシール装置では、保護層は熱溶着性シートに接触する面側に設けられ、且つ保護層は、ダイヤモンドライクカーボンによって形成されていることを特徴としている。
【0011】
ダイヤモンドライクカーボンは高硬度であるから、確実に発熱体の変形を抑制するとともに、ダイヤモンドライクカーボンはその表面を非常に滑らかに容易に形成できるから、発熱体の熱溶着性シート側の面に設けることにより、良質のヒートシール部が得られ、しかもダイヤモンドライクカーボンにより熱溶着性シートの帯電が発熱体へ流れるのを防止でき、その分だけ装置の故障を効果的に防止することができる。
【0012】
本発明の薬剤分包装置は、上記何れかのヒートシール装置が備えられ、該ヒートシール装置によって熱溶着性シートを個別に区画された薬剤の包装部とするよう構成されたことを特徴としている。
【0013】
この構成の薬剤分包装置によれば、熱溶着性シートに投入する収容物としての薬剤(特に錠剤)が、熱溶着性シートを介してヒータ台とヒータ受台との間に噛込んでしまっても、発熱体には硬質の保護層が設けられているから、該噛込みによる発熱体の変形が抑制され、したがって以後のシール不良を効果的に抑制することができ、熱溶着性シートから高品質の薬剤の包装部を製造することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るヒートシール装置及び薬剤分包装置によれば、発熱体は薄板状に形成しているから、発熱体がヒートシールに必要な温度に達するまでの時間が短縮でき、しかも発熱体には硬質の保護層が設けられているから、熱溶着性シートに投入する収容物が、熱溶着性シートを介してヒータ台とヒータ受台との間に噛込んでしまっても、該噛込みによる発熱体の変形を抑制でき、シール不良を効果的に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本実施形態では、ヒートシール装置が薬剤分包装置に組込まれた場合を例に説明する。ここで、図1の概略構成図に基づいて薬剤分包装置100の構成を説明し、図2の概略構成図に基づいてヒートシール装置1の概略構成を説明する。
【0016】
図1に示すように、薬剤分包装置100は、熱溶着性シート300に対してヒートシールを行うためのヒートシール装置1と、薬剤(散薬及び/又は錠剤)を所定量毎に分配し且つ当該所定量毎の薬剤を排出する薬剤分配装置200と、薬剤分配装置200から排出される薬剤を熱溶着性シート300の内部へ供給する薬剤供給装置400とを備えている。なお、図中の符号60は、ヒートシール装置1の後述するヒータ台及びヒータ受台を覆う保護カバーである。熱溶着性シート300は長尺状のものであってもよいし、枚葉状のものであってもよい。長尺状のものでは、ヒートシール装置1によって、連続して薬剤の包装部300Aを製造することが可能であり、枚葉状の熱溶着性シートでは、一枚毎に包装部が製造されるのが一般的に行われる。ここでは、熱溶着性シート300は長尺状のものを例示している。
【0017】
また、薬剤分包装置100は、支持壁11を有する架台部材10と、支持壁11の一方面側11aに設けられた回転自在な紙管ドラム20と、ドラム20に装着された熱溶着性シート300のロール体310から該熱溶着性シート300を繰り出す駆動手段(図示せず)とを備えている。
【0018】
なお、図中の符号91〜93は、ロール体310から繰り出された熱溶着性シート300を案内する案内バーであり、必要又は所望に応じて、薬剤分包装置100に備えられる。
【0019】
図2は、ヒートシール装置1周辺の概略構成を拡大して示す斜視図である(但し、図1に示す保護カバー60は省略している)。ドラム20には、1枚の熱溶着性シート300を長手方向に沿った中心線で熱溶着面を内側にして2つ折りにした熱溶着性シート(以下「包装シート」ともいう)300が巻き取られた前記ロール体310が装着されている。なお、熱溶着性シート300は、このように1枚の熱溶着性シートを2つ折りにした態様の他、例えば、熱溶着面を重ね合わせた2枚の熱溶着性シートの下側端部を長手方向に接着してなる態様、ロール状に巻かれた1枚の熱溶着性シートを、薬剤を入れる前に中心線で2つ折りにする態様など種々のものを用いることもできる。
【0020】
ロール体310から繰り出される熱溶着性シート300は、案内バー91,92,93を介して、矢印X方向(搬送方向上流側)に送出される。熱溶着性シート300は、内面が熱溶着可能なものであれば特に限定されず、グラシン/ポリエチレン、セロハン/ポリエチレン、耐熱性樹脂/ポリエチレンなどの積層体などが例示される。なお、40は、熱溶着性シート300をX方向へ送るための搬送用ローラである。送出された熱溶着性シート300は、ヒートシール装置1によって個々の包装部300A300Aを形成するようにヒートシールされる。
【0021】
ヒートシール装置1は、熱溶着性シート300の一面側に配置され且つ熱溶着性シート300を加熱してヒートシールするための三叉状シール部を有するヒータ台5と、熱溶着性シート300を挟んでヒータ台5に対向配置された、ヒータ台5と対称形状のヒータ受台6とを備えている。ヒータ台5及びヒータ受台6は、熱溶着性シート300に対して直交する方向へ移動可能(相対的に接近離間自在)に構成されており、ヒートシールを行う際には、両者が互いに近接する方向へ動かされ、両者によって挟圧される熱溶着性シート300の熱溶着面がヒートシールされる。これによって、個々の包装部300Aを形成するようにヒートシールされるものである。
【0022】
図2、図3(a)に示すように、ヒータ台5は、熱溶着性シート300の幅方向に延び、且つ熱溶着性シート300を個々に仕切るための幅シール部51と、この幅シール部51の上端に対して下流方向に、且つ熱溶着性シート300の上側端部に沿って延び、熱溶着性シート300の上方開口部320を閉塞するための第1シール部52と、幅シール部51の上端に対して上流方向に、且つ熱溶着性シート300の上側端部に沿って延び、熱溶着性シート300の上方開口部320を閉塞するための第2シール部53とからなり、例えば、図3(a)に示したように正面(背面視しても同様)略T字状に形成されている。
【0023】
第1シール部52と第2シール部53は、その長さが異なっており、例えば、第1シール部52は、第2シール部53よりも短く形成されている。なお、ヒータ受台6は、ヒータ台5に鏡像的に重なるように、ヒータ台5と略同一形状に形成されて配置されている。
【0024】
発熱体7は、図3(a)に示すように、ヒータ台5の内面(熱溶着性シート300対向面)に露出して固着するように設けられている。発熱体7は、発熱部71と端子部72,72とからなる1本の線状(板状)の発熱部材であって、全体として、例えば厚み0.1mmあるいはそれ以下の厚みのステンレス製の薄板状に形成されている。発熱体7は通電によって発熱する前記発熱部71と、この発熱部71の両端部に形成された電源接続用の端子部72とを備えている。このような発熱体7によれば、通電によって極めて短時間で発熱体7をヒートシールに必要な温度にまで上昇させることが可能である。
【0025】
発熱体7の表面には、保護層Hとしてダイヤモンドライクカーボン(DLC)がコーティングされている。ダイヤモンドライクカーボンは、主として水素と炭素で構成される非晶質のカーボン硬質膜である。この保護層Hは、発熱体7における熱溶着性シート300側の面またはその反対側であるヒータ台5側の面のうち少なくとも一方に一体化するよう設けられている。換言すれば、双方に設けられていてもよい。さらに、薬剤が熱溶着性シート300を介して接触する可能性のある領域にのみにコーティングすることも考えられる。あるいは、発熱体7の厚み分を形成する側面にも併せて形成することも考えられる。なお、この実施形態の場合では保護層Hは、熱溶着性シート300側の表裏面、且つ全体にコーティングされている。ダイヤモンドライクカーボンを直接発熱体7にコーティングすると互いの密着力が弱くなることが考えられるような場合では、チタン(Ti)とケイ素(Si)の中間層を設けるようにすることで、いっそう確実に発熱体7にダイヤモンドライクカーボンを一体化させることが可能となる。
【0026】
一般にダイヤモンドライクカーボンは、耐磨耗性、耐薬品性、耐食性、および絶縁性に優れ、且つその表面は摩擦係数が小さく極めて滑らかな材料である。一方、発熱体7は、通電によって極めて短時間で発熱体7をヒートシールに必要な温度にまで上昇させることが可能であり、この機能を損なわないように、ダイヤモンドライクカーボンの厚みtは、その熱伝導率を考慮して、必要な温度まで加熱された発熱体7の熱が極めて短時間で伝達されるような厚みに設定することが好ましい。例えばその厚みtは1μm〜20μmが好ましい。
【0027】
保護層Hとしては、他に窒化チタン(TiN)、炭化窒化チタン(TiCN)、チタン・アルミ・ナイトライド(TiAlN)、窒化クローム(CrN)等のセラミックコーティングが考えられる。これら、ダイヤモンドライクカーボン以外の材料を保護層Hとして用いる場合の厚みも、ダイヤモンドライクカーボンの場合と同様である。
【0028】
発熱部71は、ヒータ台5の各シール部51,52,53(第1及び第2シール部52,53、幅シール部51)を通るように配設されている。したがって、本実施形態では、発熱体7が、熱溶着性シート300に直に接触し、且つ熱溶着性シート300を加熱するシート加熱面を構成している。
【0029】
発熱部71は第1水平部711、第2水平部712、及びU字状部713を有する。U字状部713は、一対の垂直部714,715と、反転部716とを有する。端子部72は第1水平部711、第2水平部712の端部に連接されている。例えば、電源接続用の端子部72は発熱部71よりも幅広に形成され且つ該発熱部71が略均一な幅及び厚みとなるように形成されている。
【0030】
上記のような発熱部71は、直線部と、該直線部どうしの方向を転換すべく直線部間を連接する湾曲部85,86とを有した構成である。すなわち、直線部としては第1水平部711、第2水平部712、U字状部713の一対の垂直部714,715である。第1水平部711と垂直部714の端部どうしが前記湾曲部85を介して連接されている。第2水平部712と垂直部715の端部どうしが前記湾曲部86を介して連接されている。さらに詳述すれば、第1水平部711の一側縁711aと垂直部714の一側縁714aとは湾曲部85の内径側縁85aによって連接され、第1水平部711の他側縁711bと垂直部714の他側縁714bとは湾曲部85の外径側縁85bによって連接されている。また、第2水平部712の一側縁712aと垂直部715の一側縁715aとは湾曲部86の内径側縁86aによって連接され、第2水平部712の他側縁712bと垂直部715の他側縁715bとは湾曲部86の外径側縁86bによって連接されている。これにより、湾曲部85は所定の径方向幅を有したそれぞれ中心点(図示せず)周りの円弧状に形成されている。また湾曲部86は所定の径方向幅を有したそれぞれ中心点(図示せず)周りの円弧状に形成されている。また、垂直部714,715どうしは反転部110(別の湾曲部99)を介して連接されている。
【0031】
発熱体7の両端子部72,72は、ヒータ台5の第1シール部52及び第2シール部53の先端外方へ突出させてそれぞれ配置されている。したがって、両端子部72,72の間に連続する前記発熱部71の線路形状は、一方の端子部72を始点とし、ヒータ台5の第1シール部52に沿って延び、幅シール部51の上端で湾曲部85を介して下方側へ略90度湾曲して該幅シール部51の下端にまで達し、ここで反転部110を介して湾曲反転して、ヒータ台5の幅シール部51の上端側へ延び、該幅シール部51の上端で湾曲部86を介して略90度湾曲して第2シール部53に沿って延び、他方の端子部72に続いている。
このように、発熱部71の線路形状は、包装シートの幅方向に延びる略U字状のU字状部713を有し、第1水平部711の一端部とU字状部713の一端部が連接され、且つ第2水平部712の一端部とU字状部713の他端部が連接された形状となっている。
【0032】
また、発熱部71とヒータ台5の内面との間には、図3(b)に示すように、耐熱性発泡樹脂シートなどの断熱層8が介装されており、発熱部71と断熱層8、及び断熱層8とヒータ台5の内面は、耐熱性接着剤にて接着されている。このように断熱層8を介在させることにより、ヒータ台5が高温とならないから、例えばヒータ台5の外面へ接触することによる火傷などを防止でき、また、ヒータ台5を比較的耐熱性の低い材質で作製することも可能である。なお保護層Hを、発熱体7における熱溶着性シート300側の面にのみ設ける場合は、断熱層8に発熱体7が直接固着されることになる。
【0033】
さらに、発熱部71の一部分には、温度センサ9(本実施形態ではサーミスタを用いているが、熱電対など、温度を検出し得る限りにおいて種々のセンサを用いることが可能である)が設けられている。この温度センサ9は、発熱部71と断熱層8の間に介装され、ヒートシール装置1に具備された制御回路(電源)に接続されている。この制御回路は、例えば、図1に示す分包装置1の筐体の適宜の箇所(図示省略)に配置されており、ヒータ台5の発熱体7に通電する電流を制御する制御手段である。
【0034】
この制御回路は、発熱体7をシール温度と該シール温度と異なる温度の少なくとも2つの温度に昇温させる機能を少なくとも備えている。
シール温度は、使用される熱溶着性シート300の種類に応じて適宜設定されるものであって、概ね80〜130℃程度であり、例えば、グラシン/低密度ポリエチレンの場合には、100〜110℃程度、セロハン/低密度ポリエチレンの場合には、120〜130℃程度に設定される。
【0035】
シール温度と異なる温度は、例えば、シール温度よりも低く且つ手が触れても直ちに火傷しない程度の温度(例えば、50〜60℃程度)や、シール温度よりも高く且つ発熱部に付着した付着物を溶融させることができる温度(例えば、140〜190℃程度)、シール温度よりも高く且つ発熱部に付着した付着物を炭化できる温度(例えば、400℃以上)などが例示される。
【0036】
本実施形態に於ける発熱体7は、制御回路により、80〜130℃のシール温度、400℃以上の炭化温度の2種の温度に昇温するように設定されており、ヒートシール装置1等に設けられた操作盤(図示せず)を介して、使用者が、所望により発熱体7の温度を変更できるようになっている。なお、発熱体7の温度は、シール温度と炭化温度の2種の組み合わせの他、シール温度と140〜190℃程度の溶融温度や、シール温度、溶融温度及び炭化温度の3種以上に変更できるようにしてもよい。
【0037】
上記構成からなる薬剤分包装置100は、図2に示すように、ヒートシール装置1の上流側に於いて、薬剤分配装置200のホッパー21を介して、熱溶着性シート300の上方開口部320から薬剤が挿入される。薬剤挿入後、熱溶着性シート300は、搬送用ローラ40によって1分包長さだけ下流側へ送られる。そして、発熱体7をシール温度に昇温させた状態で、ヒータ台5及びヒータ受台6にて熱溶着性シート300を挟圧することにより、熱溶着性シート300の幅方向及び長手方向がヒートシールされる。これによって、熱溶着性シート300に、仕切シール壁330と、この仕切シール壁330に直交し且つ上下流側に延びる2方向の閉塞シール壁340,340とが一時に形成される。薬剤挿入及びシール壁の形成を順次繰り返すことにより、図4に示すように、薬剤の分包された包装部300Aを連続的に製造することができる。
【0038】
ところで、熱溶着性シート300の上方開口部320から挿入される錠剤数が比較的多い場合では、その薬剤が包装部300Aとして区画されるべき領域からはみ出して内装され得る状態となることが考えられる。このような場合では、その薬剤(錠剤)が熱溶着性シート300を介してヒータ台5の発熱体7とヒータ受台6とで挟持されてしまうことになるが、発熱体7の表面には保護層Hとしてダイヤモンドライクカーボンが設けられているから、薬剤を熱溶着性シート300を介してヒータ台5の発熱体7とヒータ受台6とで挟持したとしても、薄板状の発熱体7の変形を抑制することができる。
【0039】
保護層Hを熱溶着性シート300側の面にのみ設けておけば、薬剤によって発熱体7を撓ませる力が働いたとしても、それに抗し得て発熱体7の撓み変形を抑制するとともに、発熱体7の局部的変形をも抑制することができる。保護層Hを熱溶着性シート300側の面とは反対側の面にのみ設けることによれば、薬剤によって発熱体7を撓ませる力が働いたとしても、それに抗し得て発熱体7の撓み変形を抑制することができる。保護層Hを熱溶着性シート300側の面および熱溶着性シート300側の面とは反対側の面の双方に設けておくことにより、いっそう確実に発熱体7の変形を抑制することができる。
【0040】
さらに、ダイヤモンドライクカーボンの表面の滑らかさによって、この保護層Hが熱溶着性シート300に圧着することにより、シール斑を生じることなく、すなわちエアの噛込みのない良好なヒートシールが得られる。
【0041】
ダイヤモンドライクカーボンはまた、絶縁性に優れているから、保護層Hを熱溶着性シート300側の面に設けることで、熱溶着性シート300が帯電(剥離帯電)していたとしても、その電荷が回路途中にある発熱体7に流れるのを防止することができ、機械装置の電気駆動部を損傷させるような大きな電流が流れるのを防止することができる。これは、保護層Hとしてダイヤモンドライクカーボン以外の、チタン・アルミ・ナイトライド、窒化ケイ素、アルミナ、炭化ケイ素等のセラミックコーティングの場合も同様である。
【0042】
なお、上記ヒートシール装置1は、1つのヒータ台5に対して1本の発熱体7を設けているので、1系統の制御回路でこの発熱体7を発熱制御することができる。この発熱体7は、ヒータ台5の略T字状のシール部全体を通るように配設されているので、1系統の制御回路で(シール温度などの所定温度となるように)発熱体7を制御するだけで、シール斑を生じることなく熱溶着性シート300を一時に3方向にヒートシールすることができる。
【0043】
また、長期間ヒートシールを行うと、経時的に発熱体7の表面(シート加熱面)に、熱溶着性樹脂の一部などの熱溶着性シート300の一部が付着し堆積する。このようにシート屑が付着したままでヒートシールを行うと、シール不良を起こしたり、得られる包装部300Aが汚れたりする。このような場合には、発熱体7を炭化温度に昇温させると、加熱面に付着したシート屑を炭化させることができる。その後、通電を止め、発熱体7を室温まで冷ませば、炭化したシート屑は、簡単に拭き取り除去することができる。
【0044】
発熱部71において、ヒートシール時の発熱部71の熱は、熱溶着性シート300が接触することによって奪われる。従って、熱溶着性シート300が接触しない領域300aは高熱になる傾向にある。しかし、本発明の実施形態では、反転部110の分包動作の際に熱溶着性シート300が接触しない領域300aの熱を放熱する放熱部500を反転部110に一体的に形成してあるから、熱溶着性シート300が接触しない領域300aの熱を放熱部500が吸収する。このため、熱溶着性シート300が接触しない領域300aが高温にならない。従って、ヒータ台5を比較的耐熱性の低い材質で作製することが可能である。
【0045】
なお、本発明のヒートシール装置及び薬剤分包装置は、上記実施形態で例示した態様に限られず、本発明の意図する範囲で種々に設計変更することができる。
【0046】
例えば、上記実施形態では、発熱体の発熱部71の線路形状は、ヒータ台5の第1シール部52から幅シール部51に延び、反転して第2シール部53に延びるように形成されているので、ヒータ台5の各部51,52,53を通る発熱部71の長さをより短くでき、発熱体7の発熱部71全体を略均一に昇温させ易いので好ましい態様であるが、本発明の発熱部71の線路形状は、これに限られない。例えば、図5に示すように、ヒータ台5の幅シール部51の下端から第1シール部52に延び、第1シール部52の先端で反転して第2シール部53に延び、この端部で更に反転して幅シール部51の下端に至るような形成に形成することも可能である。
【0047】
この場合、反転部Reは第1水平部711と第2水平部712にあり、端子72,72は垂直部714,715の下端部にあって端子72,72が熱溶着性シート300が接触しない領域300aの熱を充分に放熱可能となるよう大面積に形成されている(端子72,72が放熱部を兼用する)。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態に係るヒートシール装置が組み込まれた薬剤分包装置を概略的に示す斜視図
【図2】図1に示すヒートシール装置周辺の概略構成を拡大して示す斜視図
【図3】(a)は、図1に示すヒートシール装置のヒータ台を内面側から見た概略構成を示す正面図、(b)は、同ヒータ台を上面側から見た概略構成を示す平面図
【図4】同じく薬剤分包体の正面図
【図5】ヒータ台の変形例であり、同ヒータ台を内面側から見た概略構成を示す正面図
【符号の説明】
【0049】
1…ヒートシール装置、5…ヒータ台、6…ヒータ受台、7…発熱体、8…断熱層、9…温度センサ、51…幅シール部、52…第1シール部、53…第2シール部、71…発熱部、72…端子部、100…薬剤分包装置、110…反転部、200…薬剤分配装置、300…熱溶着性シート(包装シート)、320…包装部の上方開口部、400…薬剤供給装置、711…第1水平部、711a…第1水平部の一側縁、711b…第1水平部の他側縁、712…第2水平部、712a…第2水平部の一側縁、712b…第2水平部の他側縁、713…U字状部、714…垂直部、714a…垂直部の一側縁、714b…垂直部の他側縁、715a…垂直部の一側縁、715b…垂直部の他側縁、716…反転部、H…保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒータ台と、該ヒータ台に対向して配置されたヒータ受台とが設けられ、熱溶着性シートに通電によって加熱される薄板状の発熱体がヒータ台に露出して設けられ、ヒータ台とヒータ受台とで熱溶着性シートを挟圧加熱することで熱溶着性シートどうしを熱溶着させたヒートシール部を設けて、該ヒートシール部によって収容物を収容すべく区画した包装部を形成するようにしたヒートシール装置であって、
前記発熱体の熱溶着性シートに接触する面またはその反対側の面の少なくとも一方に、該発熱体に比べて硬質の保護層が設けられたことを特徴とするヒートシール装置。
【請求項2】
保護層は、発熱体の熱溶着性シートに接触する面およびその反対側の面の双方に設けられていることを特徴とする請求項1記載のヒートシール装置。
【請求項3】
保護層は熱溶着性シートに接触する面側に設けられ、且つ保護層は、ダイヤモンドライクカーボンによって形成されていることを特徴とする請求項1記載のヒートシール装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかに記載のヒートシール装置が備えられ、該ヒートシール装置によって熱溶着性シートを個別に区画された薬剤の包装部とするよう構成されたことを特徴とする薬剤分包装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−37430(P2008−37430A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209973(P2006−209973)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(593129342)高園産業株式会社 (232)
【Fターム(参考)】