説明

ビーム電流センサー

電流から磁場を形成する効率を向上させ、1nA程度の微弱なビーム電流値も計測することを可能にするものであり、ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、上記ブリッジ部は、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回された渦巻形状を備えるように形成された第1のコイル部と、外径側から内径側に向かって時計回りに巻回された渦巻形状を備えるように形成された第2のコイル部と、上記第1のコイル部の内径側の中心部位と上記第2のコイル部の内径側の中心部位とを接続する連結部とを有して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム電流センサーに関し、さらに詳細には、SQUIDと組み合わせて、微弱なビーム電流を非破壊かつ高精度で測定するビーム電流計を構成する際に用いて好適なビーム電流センサーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビーム電流計として、例えば、磁気変調型のDCCT(DC Current Transformer)が知られている。
ところが、従来の磁気変調型のDCCTでは、電流測定の下限は数μAのオーダーであり、数nA程度の微弱なビーム電流を測定することができないという問題点があった。
こうした問題点を解決するため、数nA程度の微弱なビーム電流を測定可能なビーム電流計として、脳や心臓が発生する磁場を測定するために用いられているSQUID(超伝導量子干渉計:Superconducting Quantum Interference Device)と液体ヘリウム温度で動作する超伝導体よりなる磁気シールドとを用いたビーム電流計が、ドイツのGSI(Gesellschaft fur Schwerionenforschung)、旧東京大学原子核研究所あるいは大阪大学核物理研究センターなどで開発されてきた(後述する非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3、非特許文献4ならびに非特許文献5を参照する。)。
【0003】
なお、数nA程度の微弱なビーム電流を測定することのできるビーム電流計は、従来の数μAのオーダーのビーム電流を測定するビーム電流計と比較すると、1000倍高い感度を有することになる。具体的な磁場の比較において、地磁気が10−5T、脳磁場は10−13T、1nAのビームが作り出す磁場の中心から20cmの地点においては10−15Tであるので、数nA程度の微弱なビーム電流を測定することのできるビーム電流計は、非常に微弱な磁場を測定しなければならないものである。
【0004】
ここで、図1ならびに図2には、上記したSQUIDと液体ヘリウム温度で動作する超伝導体よりなる磁気シールドとを用いた従来のビーム電流計の構造的な概略構成が示されている。即ち、図1ならびに図2は、本発明の理解に資するための機械構造的な構成のみを示すものであり、各種の電気的な接続状態や電気的導通状態ならびに温度などの検出手段については図示を省略している。なお、図1は図2のA−A線による断面図であり、図2は図1のB−B線による断面図である。
また、本明細書における説明ならびに添付の図面において、それぞれ同一あるいは相当する構成や内容については、それぞれ同一の符号を用いて示すことにより、その構成ならびに作用に関する重複する説明は省略する。
【0005】
図1乃至図2において、符号1は超伝導体よりなるビーム電流センサーを示し、符号2は超伝導体よりなる磁気シールドを示し、符号3はSQUIDを示し、符号4は冷媒タンクを示し、符号5は真空容器を示し、符号6は上フランジを示し、符号7はビームダクトを示し、符号8は架台を示し、符号9は冷媒たる液体ヘリウムを示し、符号10は真空容器5内の真空領域を示し、符号11は真空容器5外の大気領域を示している。
より詳細には、真空容器5は、上面5a側を上フランジ6により閉塞されるとともに、周壁面の対向する位置にビームダクト7を構成する貫通孔5cがそれぞれ形成されており、その底面5b側が架台8上に支持されている。
このビーム電流計において、ビームは、一方のビームダクト7を構成する一方の貫通孔5cから入射し、他方のビームダクト7を構成する他方の貫通孔5cから出射するようになされている。
そして、真空容器5内には、真空容器5内に入射されたビームが内径側を通過するようにして、円筒状のビーム電流センサー1が設置され、ビーム電流センサー1の上面側にSQUID3が設置されている。また、ビーム電流センサー1との間にSQUID3を位置させるようにして、ビーム電流センサー1の外径側を囲うように超伝導体よりなる円筒状の磁気シールド2が設置されている。
これら上記したビーム電流センサー1、SQUID3および磁気シールド2は、ドーナツ形状の冷媒タンク4内に配置されており、ドーナツ形状の冷媒タンク4の内径側の中空部位をビームが通過するようにして、上記した各構成部材が配置されている。
なお、冷媒タンク4内には冷媒たる液体ヘリウムが充填されており、冷媒タンク4内に配置されたビーム電流センサー1、SQUID3および磁気シールド2は液体ヘリウム温度に冷却されることになる。
【0006】
以上の構成において、図示しない真空装置によって真空容器5内を1×10−4Paに維持し、ビーム電流計にビームを通過させる。即ち、一方のビームダクト7を構成する一方の貫通孔5cから入射して他方のビームダクト7を構成する他方の貫通孔5cから出射するようにビームを通過させ、そのビームのビーム電流を計測する。
こうしたビーム電流センサー1ならびにSQUID3の構成および作用ならびにこれらを用いたビーム電流計の測定原理については公知の技術であるが、本願発明の理解を容易にするために、図3を参照しながら簡単に説明しておく。
図3には、ビーム電流センサー1のブリッジ部(後述する。)上にSQUID3を取り付けたビーム電流センサー1の概略構成斜視概念説明図が示されており、図4には、図3のA矢視一部拡大概略構成概念説明図が示されている。
このビーム電流センサー1は、円筒形状をした絶縁体よりなる基板上に超伝導物質を形成した超伝導体よりなるものであるが、その周壁面の軸方向中央位置の外径側表面には、ブリッジ部となる直線状の一部の領域を除いて周状に(鉢巻き状)に超伝導物質が形成されておらず、直線状のブリッジ部(図4参照)を除いて線状形状を備えた絶縁体、即ち、基板が周状(鉢巻き状)に露出している。
つまり、ビーム電流センサー1においては、円筒形状の超伝導体の周壁面の外径側表面に、直線状の一部の領域たるブリッジ部のみを残して線状の絶縁体が周状(鉢巻き状)に形成されることになる。上記絶縁体は、ビーム電流センサー1の軸方向の中心位置に周状に配置されている。また、上記したブリッジ部には、SQUID3が配置されている。
こうしたビーム電流センサー1の内径側の空間をビームが通過すると、マイスナー効果によって超伝導体の表面を遮蔽電流が流れる。この遮蔽電流はブリッジ部だけを流れ、電流の通過によって方位角方向の磁場が形成されることになる。
即ち、円筒形状の超伝導体の表面にブリッジ部を形成することによって、遮蔽電流を効率よく集中させることが可能となる。ブリッジ部にSQUID3を置くことによって、電流が作る磁場を測定して当該測定した磁場を電流値に換算することにより、ビーム電流を非破壊かつ高精度で測定することができるものである。
このようなブリッジ部上方位角方向に形成される磁場をSN比良く測定するためには、SQUID3としてグラジオメーターを用いることが好ましい。
その理由は、図4に示すように、グラジオメーターは磁場を検出するためのインプットコイルが左右にあり、外部ノイズ磁束が左右インプットコイルに入ろうとする際に、もし外部ノイズ磁場の大きさと方向が全く同じである同相ノイズ磁場ならば、外部ノイズ磁束は完全にキャンセルされることになり、一方、ビームの通過によってブリッジ部に形成される磁場は、上記したように大きさは同じであるが向きが反対の逆相磁場なので、通常使用されるインプットコイルが1つのタイプのSQUIDと比べると、2倍の感度で検出することができるからである。
SQUID3としてグラジオメーターを採用することによって、外部ノイズ磁場を大幅に低減することができ、こうした超伝導の技術を応用することによって、従来の磁気変調型のDCCTによる感度の限界を大幅に改善することができるようになった。
【0007】
ところで、上記において説明した従来のビーム電流センサーにおいては、空気中に形成された磁場をSQUIDにより検出してビーム電流値を計測しているため、1nA程度の微弱なビーム電流により形成される磁場の検出が困難であり、1nA程度の微弱なビーム電流値を計測することが困難であるという問題点があった。
【非特許文献1】“A Cryodevice for induction monitoring of DC electron or ion beams with nano−ampere resolution”,K.Grohmann,et al.,Superconducting Quantum Interference Devices and Their Applications,1977,p.311
【非特許文献2】“SQUID based beam current meter”,IEEE Trans.on Magnetics,Vol.MAG−21,No.2,1985,p.997
【非特許文献3】“A Cryogenic current comparator for the absolute measurement of nA beams”,AIP Conf.Proc.451(Beam Instrumentation Workshop),1998,p.163
【非特許文献4】“Design and performance of an HTS current comparator for charged particle−beam measurements”,L.Hao et al.,IEEE Trans.on Appl.Supercond.(ASC2000),Vol.11,No.1,2001−3,p.635
【非特許文献5】“貯蔵リングにおけるビーム電流の高感度測定”,田辺 徹美,品田 恵,日本物理学会誌Vol.54,No.1,1999,p.34
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記したような従来の技術が有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電流が形成する磁束を効率良く磁場測定器に伝達させ、1nA程度の微弱なビーム電流値も計測することを可能にするビーム電流センサーを提供しようとするものである。
また、本発明の目的とするところは、電流から形成された磁場を効率よくSQUIDに伝達することができるようにして、1nA程度の微弱なビーム電流値も計測することを可能にするビーム電流センサーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、ビーム電流センサーのブリッジ部をコイル形状(螺旋形状)、例えば、渦巻形状(螺旋状に巻いた平面曲線の形状)に形成して構成するようにして、電流から磁場を形成する際の効率を向上するようにしたものである。このブリッジ部は、超伝導物質、例えば、高温超伝導材料で形成することが好ましい。
また、上記目的を達成するために、本発明は、ビーム電流センサーのブリッジ部に軟磁性体、例えば、高透磁率トロイダルコアなどを配置するようにして、高透磁率トロイダルコアなどの軟磁性体を介して電流から形成された磁場を効率よくSQUIDに伝達することができるようにしたものである。
【0010】
即ち、本発明は、ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、上記ブリッジ部をコイル形状に形成したものである。
また、本発明は、ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、上記ブリッジ部を、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回された渦巻形状を備えるように形成された第1のコイル部と、外径側から内径側に向かって時計回りに巻回された渦巻形状を備えるように形成された第2のコイル部と、上記第1のコイル部の内径側の中心部位と上記第2のコイル部の内径側の中心部位とを接続する連結部とを有して構成するようにしたものである。
また、本発明は、ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にSQUIDインプットコイルが隣接して配置されるブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、上記ブリッジ部の近傍に配置された軟磁性体を有し、上記ブリッジ部と上記軟磁性体との間に上記SQUIDインプットコイルを配置するようにしたものである。
また、本発明は、ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にSQUIDインプットコイルが隣接して配置されるブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、上記ブリッジ部を、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回された渦巻形状を備えるように形成された第1のコイル部と、外径側から内径側に向かって時計回りに巻回された渦巻形状を備えるように形成された第2のコイル部と、上記第1のコイル部の内径側の中心部位と上記第2のコイル部の内径側の中心部位とを接続する連結部とを有して構成するようにし、上記第1のコイル部上に配置された略長方体状の第1の軟磁性体と、上記第2のコイル部上に配置された略長方体状の第2の軟磁性体と、一方の端部が上記第1の軟磁性体側に配置されるとともに他方の端部が上記第2の軟磁性体側に配置されて上記第1の軟磁性体と上記第2の軟磁性体とを架橋する略U字形状を備えた第3の軟磁性体とを有し、上記第1の軟磁性体と上記第3の軟磁性体の上記一方の端部との間と上記第2の軟磁性体と上記第3の軟磁性体の上記他方の端部との間とに上記SQUIDインプットコイルを配置するようにしたものである。
また、本発明は、ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にSQUIDインプットコイルが隣接して配置されるブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、上記ブリッジ部を囲む磁気閉ループを形成する軟磁性体を有し、上記ブリッジ部と上記軟磁性体との間に上記SQUIDインプットコイルを配置するようにしたものである。
また、本発明は、ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にSQUIDインプットコイルが隣接して配置されるブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、上記ブリッジ部は、絶縁体を跨ぐように架橋されて上記絶縁体との間に空隙を形成して立ち上がり形成され、上記空隙に一部を挿通して磁気閉ループを形成するようにした軟磁性体を有し、上記ブリッジ部と上記軟磁性体との近傍に上記SQUIDインプットコイルを配置するようにしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上説明したように構成されているので、電流から磁場を形成する効率を向上させたビーム電流センサーを提供することができるという優れた効果を奏する。
また、本発明は、以上説明したように構成されているので、電流から形成された磁場を効率よくSQUIDに伝達可能なビーム電流センサーを提供することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、SQUIDと液体ヘリウム温度で動作する超伝導体よりなる磁気シールドとを用いた従来のビーム電流計の概略構成断面説明図であり、図2のA−A線による断面図である。
【図2】図2は、SQUIDと液体ヘリウム温度で動作する超伝導体よりなる磁気シールドとを用いた従来のビーム電流計の概略構成断面説明図であり、図1のB−B線による断面図である。
【図3】図3は、ビーム電流センサーのブリッジ部上にSQUIDを取り付けたビーム電流センサーの概略構成斜視概念説明図である。
【図4】図4は、図3のA矢視一部拡大概略構成概念説明図である。
【図5(a)】図5(a)は、本発明の実施の形態の一例によるビーム電流センサーのブリッジ部の概略構成説明図が示されており、図4に対応する一部拡大概略構成概念説明図である。
【図5(b)】図5(b)は、本発明の実施の形態の一例によるビーム電流センサーのブリッジ部の概略構成説明図が示されており、図5(a)のV−V線による一部断面概略構成概念説明図である。
【図6(a)】図6(a)は巻回数が80回、即ち、80ターンを備えた第1コイル部のシミュレーション図であり、このシミュレーション図に示す第1コイル部は、断面形状が一辺30ミクロンの正方形にしており、外直径は8mmである。
【図6(b)】図6(b)は、有限要素法のプログラム(OPERA3D)を用いた計算結果、即ち、図6(a)に示す第1コイル部と、第1コイル部と同様に巻回数が80回、断面形状が一辺30ミクロンの正方形、外直径は8mmの第2コイル部とを仮定し、1Aの電流をこれら第1コイル部ならびに第2コイル部に通電したときに発生される磁場の計算結果を示す。
【図7(a)】図7(a)は、本発明の実施の形態の他の例によるビーム電流センサーのブリッジ部の概略構成説明図が示されており、図5(a)に対応する一部拡大概略構成概念説明図である。
【図7(b)】図7(b)は、本発明の実施の形態の他の例によるビーム電流センサーのブリッジ部の概略構成説明図が示されており、図5(b)に対応するVII−VII線による一部断面概略構成概念説明図である。
【図8(a)】図8(a)は、本発明の実施の形態の他の例によるビーム電流センサーのブリッジ部の概略構成説明図が示されており、この実施の形態は、図5(a)(b)に示す実施の形態に高透磁率トロイダルコアのような磁性体を導入した場合の構成の一例を示すものであり、要部概略構成斜視説明図である。
【図8(b)】図8(b)は、本発明の実施の形態の他の例によるビーム電流センサーのブリッジ部の概略構成説明図が示されており、この実施の形態は、図5(a)(b)に示す実施の形態に高透過磁率トロイダルコアのような磁性体を導入した場合の構成の一例を示すものであり、図5(b)に対応する一部断面概略構成概念説明図である。
【図9】図9は、図8に示す実施の形態に関して、有限要素法のプログラム(MAFIA)を用いた計算結果を示すものであり、SQUIDインプットコイル上に0.5mmの間隙を開けて配置された第3軟磁性体の他方の端部における磁束の様子を示す。
【図10】図10は、図8に示す実施の形態に関して、有限要素法のプログラム(MAFIA)を用いた計算結果が示すものであり、図9の断面図を示す。
【図11】図11は、図8に示す実施の形態に関して、有限要素法のプログラム(MAFIA)を用いた計算結果が示すものであり、SQUIDのZ軸方向の磁場を示す。
【図12】図12は、本発明の実施の形態の他の例によるビーム電流センサーのブリッジ部の構成を示す斜視図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態の他の例によるビーム電流センサーのブリッジ部の構成を示す斜視図であり、図12とは異なる方向からの斜視図である。
【図14】図14は、図12乃至図13に示す本発明の実施の形態の他の例によるビーム電流センサーのブリッジ部の構成を示し、図14(a)は正面図であり、図14(b)はXIV(b)矢視図であり、図14(c)はXIV(c)矢視図である。
【図15】図15は、図12乃至図13に示す本発明の実施の形態の他の例によるビーム電流センサーのブリッジ部と組み合わせて使用する軟磁性体としての略四角枠形状の高透磁率トロイダルコアの斜視図である。
【図16】図16は、ブリッジ部へ高透磁率トロイダルコアおよびSQUIDを取り付けた状態を示し、図16(a)は図14(a)に示す方向から見た状態の要部拡大構成説明図であり、図16(b)は図14(c)に示す方向から見た状態の要部拡大構成説明図である。
【図17】図17(a)は高透磁率トロイダルコアにSQUIDを配置する状態を示す上方斜視図であり、図17(b)は高透磁率トロイダルコアにSQUIDを配置する状態を示す上方斜視図である。
【図18】図18(a)はSQUIDインプットコイルを配設したSQUIDインプットコイル基板を取り囲むモールドを取り外した状態の図17(a)に対応する上方斜視図であり、図18(b)はSQUIDインプットコイルを配設したSQUIDインプットコイル基板を取り囲むモールドを取り外した状態の図17(b)に対応する下方斜視図である。
【図19】図19(1)乃至(5)は、ブリッジ部への高透磁率トロイダルコアおよびSQUIDを取り付ける手順を示す説明図である。
【図20】図20は、高透磁率トロイダルコアにSQUIDを取り付けた状態を示し、図20(a)は正面図であり、図20(b)はXX(b)矢視図であり、図20(c)はXX(c)矢視図である。
【図21】図21は、図12乃至図20に示す実施の形態に関して、有限要素法のプログラム(MAFIA)を用いた計算結果を示すものであり、高透磁率トロイダルコアの磁束の様子を示す。
【図22】図22は、図12乃至図20に示す実施の形態に関して、有限要素法のプログラム(MAFIA)を用いた計算結果が示すものであり、図21の断面図を示す。
【図23】図23は、図12乃至図20に示す実施の形態に関して、有限要素法のプログラム(MAFIA)を用いた計算結果が示すものであり、SQUIDのZ軸方向の磁場を示す。
【図24】図24は、Bi2212の表面を電子顕微鏡で観察した状態を示す説明図である。
【図25】図25は、Bi2223の表面を電子顕微鏡で観察した状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0013】
1 ビーム電流センサー
2 磁気シールド
3 SQUID
4 冷媒タンク
5 真空容器
5a 上面
5b 底面
5c 貫通孔
6 上フランジ
7 ビームダクト
8 架台
9 液体ヘリウム
10 真空領域
11 大気領域
50、150 ブリッジ部
52 第1コイル部
54 第2コイル部
52a,52b 中心部位
56 連結部
56a 第1部位
56b 第2部位
56c 第3部位
80、180 高透磁率トロイダルコア
82 第1軟磁性体
84 第2軟磁性体
86 第3軟磁性体
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明によるビーム電流センサーの実施の形態の一例を詳細に説明する。
【0015】
図5(a)(b)には、本発明の実施の形態の一例によるビーム電流センサーのブリッジ部の概略構成説明図が示されており、図5(a)は図4に対応する一部拡大概略構成概念説明図であり、図5(b)は図5(a)のV−V線による一部断面概略構成概念説明図である。
なお、本発明の実施の形態の一例によるビーム電流センサーは、ブリッジ部の構成のみが図1に示す上記した従来のビーム電流センサー1と異なるものであるので、以下の説明においては、ブリッジ部の構成のみを説明することとし、他の部分の説明は上記した説明ならびに図1を援用することにより省略する。
【0016】
この図5(a)(b)に示すビーム電流センサーのブリッジ部50は、超伝導物質、例えば、高温超伝導材料により渦巻形状(螺旋状に巻いた平面曲線の形状)をなすように構成されている。
より詳細には、ブリッジ部50は、図5(a)上においてSQUIDインプットコイルの中心Cの左側の領域に外径側から内径側に反時計回りに進行する渦巻形状を備えるように形成された第1コイル部52と、図5(a)上においてSQUIDインプットコイルの中心Cの右側の領域に外径側から内径側に時計回りに進行する渦巻形状を備えるように形成された第2コイル部54と、渦巻形状の第1コイル部52の内径側の中心部位52aと渦巻形状の第2コイル部54の内径側の中心部位54aとを接続する連結部56とを有して構成されており、これら第1コイル部52、第2コイル部54および連結部56は超伝導物質、例えば、高温超伝導材料により形成されている。
なお、連結部56は、第1コイル部52の中心部位52aと第2コイル部54の中心部位54aとのみを接続するように配設されており、第1コイル部52の中心部位52a以外の箇所あるいは第2コイル部54の中心部位54a以外の箇所と接触して、短絡することのないように配設されている。
具体的には、図5(b)に示すように、連結部56は、中心部位52aからビーム電流センサー1の中心軸O−O方向に延長する第1部位56aと、中心部位54aからビーム電流センサー1の中心軸O−O方向に延長する第2部位56bと、第1部位56aと第2部位56bとを連結する第3部位56cとより構成されている。
【0017】
ここで、上記したブリッジ部50の作製方法について説明すると、まず、基板におけるブリッジ部50が配置される領域に凹所60を形成するとともに、この凹所60内に配置される基板ブロック70を作製する。
この基板ブロック70を作製する際には、底部側絶縁体72の上面に連結部56の第3部位56cとなる超伝導体74を形成し、さらにその上に上部側絶縁体76を形成し、底部側絶縁体72と上部側絶縁体76とにより第3部位56cとなる超伝導体74を挟み込むようにする。
次に、上部側絶縁体72の表面に超伝導物質、例えば、高温超伝導材を塗布してから焼成することにより、超伝導体を形成する。その後に、第1コイル部52と第2コイル部54との形状のパターンを示すマスクを配置し、イオンビームの照射によるエッチングによってマスクされていない領域の超伝導体を除去して基板を露出させ、第1コイル部52と第2コイル部54を形成する。
次に、第1コイル部52の中心部位52aと第2コイル部54の中心部位54aとに、第3部位56cとなる超伝導体74まで到達するように微細な穴を開け、その穴内に超伝導物質、例えば、高温超伝導材を充填して焼成することにより、第1部位56aと第2部位56bとを形成し、第1部位56aと第2部位56bと第3部位56cとが接続された連結部56を形成する。これにより、第1コイル部52と第2コイル部54とは短絡することなく接続される。
このように第1コイル部52、第2コイル部54および連結部56の部分を小さな基板70上に予め作製しておき、ビーム電流センサーの基板に形成された凹所60内に第1コイル部52、第2コイル部54および連結部56を形成した基板70を接合し、その接合後に再度超伝導物質を塗布焼成し、ビーム電流センサーを完成するものである。
このブリッジ部50を備えたビーム電流センサーによれば、磁場は第1コイル部52ならびに第2コイル部54の巻回数だけ増え、電流から磁場を形成する効率を向上することができ、1nA程度の微弱なビーム電流値も計測することを可能にするビーム電流センサーを実現することができる。
【0018】
なお、絶縁体(基板)の材料としては、例えば、MgOを用いることができ、また、超伝導物質としては、Bi系の高温超伝導材料を用いることができる。
【0019】
ここで、図6(a)には、巻回数が80回、即ち、80ターンを備えた第1コイル部52のシミュレーション図が示されている。このシミュレーション図に示す第1コイル部52は、断面形状が一辺30ミクロンの正方形にしており、外直径は8mmである。
また、図6(b)には、有限要素法のプログラム(OPERA3D)を用いた計算結果、即ち、図6(a)に示す第1コイル部52と、第1コイル部52と同様に巻回数が80回、断面形状が一辺30ミクロンの正方形、外直径は8mmの第2コイル部54とを仮定し、1Aの電流をこれら第1コイル部52ならびに第2コイル部54に通電したときに発生される磁場の計算結果が示されている。
この図6(b)に示す計算結果と図4に示す従来の直線形状のブリッジ部が作る磁場と比較すると、第1コイル部52ならびに第2コイル部54によれば31倍のゲインが得られた。
【0020】
次に、図7(a)(b)には、本発明の実施の形態の他の例によるビーム電流センサーのブリッジ部の概略構成説明図が示されている。なお、図7(a)は図5(a)に対応する一部拡大概略構成概念説明図であり、図7(b)は図5(b)に対応するVII−VII線による一部断面概略構成概念説明図である。
この実施の形態は、SQUIDインプットコイル上に、軟磁性体として略U字形状の高透磁率トロイダルコア80を配置し、ブリッジ部と高透磁率トロイダルコア80との間にSQUIDインプットコイルを配置した点において、従来のビーム電流センサー1と異なっている。
このようにブリッジ部上に高透磁率トロイダルコア80を配置することにより、磁束が高透磁率トロイダルコア80に集中するようになるため、ブリッジ部と高透磁率トロイダルコア80との間に配置したSQUIDインプットコイルに電流が作る磁場を効率よく捕捉させることができる。
従って、電流から形成された磁場を効率よくSQUIDに伝達することができるようになり、1nA程度の微弱なビーム電流値も計測することを可能にするビーム電流センサーを実現することができる。
【0021】
次に、図8(a)(b)には、本発明の実施の形態の他の例によるビーム電流センサーのブリッジ部の概略構成説明図が示されている。
この図8(a)(b)に示す実施の形態は、図5(a)(b)に示す実施の形態に高透磁率トロイダルコア80のような磁性体を導入した場合の構成の一例を示すものである。
なお、図8(a)は要部概略構成斜視説明図であり、図8(b)は図5(b)に対応する一部断面概略構成概念説明図である。
この実施の形態は、第1コイル部52上に配置された略長方体状、より詳細には、上方が細径に形成された四角錐台状の高透磁率コアなどの第1軟磁性体82と、第2コイル部54上に配置された略長方体状、より詳細には、上方が細径に形成された四角錐台状の高透磁率コアなどの第2軟磁性体84と、一方の端部86aが第1軟磁性体82側に配置されるとともに他方の端部86bが第2軟磁性体84側に配置されて第1軟磁性体82と第2軟磁性体84とを架橋する略U字形状を備えた高透磁率コアなどの第3軟磁性体86とを備えている。
そして、第1軟磁性体82と第3軟磁性体86の一方の端部86aとの間と、第2軟磁性体84と第3軟磁性体86の他方の端部86bとの間とに、SQUIDインプットコイルを配置するようにしている。
こうした実施の形態においては、第1コイル部52ならびに第2コイル部54の巻回数に応じて増加した磁場の磁束が、第1軟磁性体82および第2軟磁性体84に集中し、さらに第3軟磁性体86に集中するようになるため、第1軟磁性体82と第3軟磁性体86の一方の端部86aとの間と第2軟磁性体84と第3軟磁性体86の他方の端部86bとの間とに配置したSQUIDインプットコイルに、電流が作る磁場を効率よく捕捉させることができる。
従って、電流から形成された磁場を効率よくSQUIDに伝達することができるようになり、1nA程度の微弱なビーム電流値も計測することを可能にするビーム電流センサーを実現することができる。
【0022】
図9乃至図11には、図8に示す実施の形態に関して、有限要素法のプログラム(MAFIA)を用いた計算結果が示されている。
なお、計算の条件は、メッシュ数(要素数)が2×10個で均等に切っている。そして、図9に関して説明すると、ZY面のみ磁場が垂直に向かい、他の面は全て磁場の垂直成分は0というバランダリーコンディションを入れている。即ち、ZY面が垂直成分のみというのは、上記計算がZY面で対称ということを意図し、全体の半分の計算でよいことを意味する。
また、第1軟磁性体82、第2軟磁性体84および第3軟磁性体86の比透磁率は5×10であり、MAFIAはアキュラシーを設定し、その設定値以内になるまで、アイテレーションを繰り返す。アキュラシーは前回の計算と今回の計算との残差であり、今回の計算では10−6に設定し、数千回のアイテレーションで収束した。なお、電流値は、図9に示す通りトータルで1nAである。
【0023】
ここで、図9には、SQUIDインプットコイル上に0.5mmの間隙を開けて配置された第3軟磁性体86の端部86bにおける磁束の様子が示されている。
また、図10には図9の断面図が示されており、図11にはSQUID3のZ軸方向の磁場が示されている。
これらの計算結果からは、SQUIDの感度が300倍程度向上し、1nAの微弱なビーム電流値を測定することが可能になることを示している。
【0024】
次に、図12乃至図20を参照しながら、本発明の実施の形態の他の例によるビーム電流センサーについて説明する。
この図12乃至図23に示す実施の形態によるビーム電流センサーは、そのブリッジ部が、超伝導物質、例えば、高温超伝導材料により、絶縁体(基板)を跨ぐように架橋されたコ字状形状に立ち上がり形成された三次元形状の立体的なブリッジ部150として構成されている。
即ち、ブリッジ部150は、図12乃至図14に示されているように、コ字状形状の両端部によって、絶縁体(基板)により電気的に絶縁された超伝導物質を電気的に接続するようにして配置されている。立ち上がり形成されたブリッジ部150と絶縁体(基板)との間には、空隙150aが形成されることになる。
また、図15には、ブリッジ部150と組み合わせて使用する軟磁性体としての略四角枠形状の高透磁率トロイダルコア180が示されている。この高透磁率トロイダルコア180により、磁気閉ループが形成される。
この高透磁率トロイダルコア180は、両方の脚部の端部が離隔して開口した略U字形状の第1軟磁性体180aと、略U字形状の第1軟磁性体180aの両方の脚部の端部が離隔した開口部位に隙間なく嵌め込み可能に寸法設定された長方体形状の第2軟磁性体180bと、第1軟磁性体180aの両方の脚部の端部にそれぞれ形成された貫通孔180a−1、180a−2および第2軟磁性体180bの略中央に形成された貫通孔180b−1内に貫入されて第1軟磁性体180aと第2軟磁性体180bとを磁気的に遮断なく接続する第3軟磁性体180cとより構成されている。なお、第1軟磁性体180aと第2軟磁性体180bと第3軟磁性体180cとは、第2軟磁性体180bが、貫通孔180b−1の延長方向と絶縁体(基板)の延長方向とを一致させて空隙150a内に配置可能に寸法設定され(図19の(1)(2)を参照する。)、第1軟磁性体180aと第3軟磁性体180cとが、ブリッジ部150を跨ぐようにして第1軟磁性体180aを配置して第2軟磁性体180bと連結可能に寸法設定されている(図19の(3)(4)(5)を参照する。)。
図12乃至図20に示す実施の形態によるビーム電流センサーは、上記した構成を備えたブリッジ部150と高透磁率トロイダルコア180とを用いて、ブリッジ部150と高透磁率トロイダルコア180とに隣接してSQUID3を配置するものである。
即ち、図16に示すように、第1軟磁性体180aの両方の脚部をSQUIDインプットコイルの空間領域に挿通するようにしてSQUID3を配置して、ブリッジ部150と高透磁率トロイダルコア180との間にSQUIDインプットコイルを配置するようにしたものである。
ここで、図17(a)には高透磁率トロイダルコア180にSQUID3を配置する状態を示す上方斜視図が示されており、図17(b)には高透磁率トロイダルコア180にSQUID3を配置する状態を示す下方斜視図が示されており、図18(a)にはSQUIDインプットコイルを配設したSQUIDインプットコイル基板を取り囲むモールドを取り外した状態の図17(a)に対応する上方斜視図が示されており、図18(b)にはSQUIDインプットコイルを配設したSQUIDインプットコイル基板を取り囲むモールドを取り外した状態の図17(b)に対応する下方斜視図が示されているが、図19を参照しながらブリッジ部150への高透磁率トロイダルコア180およびSQUID3の取り付け方法について説明する。なお、図19においては、理解を容易にするために、SQUID3についてはSQUIDインプットコイルのみを図示した。
ブリッジ部150へ高透磁率トロイダルコア180およびSQUID3を取り付けるには、まず、ブリッジ部150の空隙150aに、貫通孔180b−1の延長方向と絶縁体(基板)の延長方向とを一致させて第2軟磁性体180bを配置する(図19(1)(2)を参照する。)。
次に、第1軟磁性体180aの両方の脚部をSQUIDインプットコイルの空間領域に挿通するようにして、ブリッジ部150を跨ぐように第1軟磁性体180aをブリッジ部150上に配置する(図19(3)を参照する。)。
さらに、貫通孔180a−1、180a−2、180b−1内に第3軟磁性体180cを挿通して、ブリッジ部150へ高透磁率トロイダルコア180およびSQUID3を取り付ける(図19(4)(5)を参照する。)。
なお、図20には、高透磁率トロイダルコア180にSQUID3を取り付けた状態が示されており、(a)は正面図であり、(b)はXX(b)矢視図であり、(c)はXX(c)矢視図である。
【0025】
図21乃至図23には、図12乃至図20に示す実施の形態に関して、有限要素法のプログラム(MAFIA)を用いた計算結果が示されている。
なお、計算の条件は、メッシュ数(要素数)が2×10個で均等に切っている。そして、図21に関して説明すると、ZY面のみ磁場が垂直に向かい、他の面は全て磁場の垂直成分は0というバランダリーコンディションを入れている。即ち、ZY面が垂直成分のみというのは、上記計算がZY面で対称ということを意図し、全体の半分の計算でよいことを意味する。
また、高透磁率トロイダルコア180の比透磁率は5×10であり、MAFIAはアキュラシーを設定し、その設定値以内になるまで、アイテレーションを繰り返す。アキュラシーは前回の計算と今回の計算との残差であり、今回の計算では10−6に設定し、数千回のアイテレーションで収束した。なお、電流値は、図21に示す通りトータルで1mAである。
ここで、図21には、高透磁率トロイダルコア180における磁束の様子が示されている。また、図22には図21の断面図が示されており、図23にはSQUID3のZ軸方向の磁場が示されている。
これらの計算結果からは、1mAの電流がこのブリッジ部150を流れると、SQUIDインプットコイル上に5mTの磁場が発生する。これをリニアーに換算すると、1nAの電流では、5nTの磁場に相当する。
即ち、図12乃至図20に示す実施の形態においては、高透磁率トロイダルコア180が磁気的に閉じたループ(磁気閉ループ)を形成しているため磁場の逃げがないので、SQUIDの感度が著しく向上し、1nAの微弱なビーム電流値を測定することが可能になることを示している。
【0026】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(8)に説明するように適宜に変形してもよい。
(1)上記した実施の形態においては、図5(a)上においてSQUIDインプットコイルの中心Cの左側の領域に外径側から内径側に反時計回りに進行する渦巻形状を備えるように形成された第1コイル部52と、図5(a)上においてSQUIDインプットコイルの中心Cの右側の領域に外径側から内径側に時計回りに進行する渦巻形状を備えるように形成された第2コイル部54と、渦巻形状の第1コイル部52の内径側の中心部位52aと渦巻形状の第2コイル部54の内径側の中心部位54aとを接続する連結部56とを有してブリッジ部50を構成するようにしたがこれに限られるものではないことは勿論である。即ち、第1コイル部52や第2コイル部54におけるコイルの巻回方向や巻回数、また、断面形状やその大きさ、さらには外直径などは、所望の仕様要求に応じて適宜に変更するようにしてよい。また、第1コイル部52と第2コイル部54とのようにブリッジ部を二つのコイル部で構成することなく、単一のコイル部で構成するようにしてもよい。
(2)上記した実施の形態においては、基板に高温超伝導材を塗布生成後にコイルのパターンのマスクを着け、イオンビームの照射によるエッチングによってコイル状のブリッジ部を形成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、MgOなどにより形成された基板上にレーザーによってコイルの溝を精密に加工し、当該溝にBi系の高温超伝導材料などの超伝導物質を塗布して焼成することにより、ブリッジ部におけるコイル部を作製するようにしてもよい。
(3)高透磁率トロイダルコア80、第1軟磁性体82、第2軟磁性体84あるいは第3軟磁性体86の形状は、上記した形状に限定されるものではないことが勿論であり、所望の仕様要求に応じて長方体や立方体などの任意の形状を適宜に選択することができる。
(4)上記した図12乃至図20に示す実施の形態においては、ブリッジ部150を立体的に構成することにより空隙150aを形成して、この空隙150aに高透磁率トロイダルコア180の一部を挿通して磁気閉ループを形成するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論である。例えば、超伝導体におけるブリッジ部を従来の構成や他の実施の形態のように構成し、当該超伝導体のブリッジ部近傍に貫通孔を形成して、この貫通孔に高透磁率トロイダルコア180を挿通することにより、高透磁率トロイダルコア180によりブリッジ部を囲む閉ループを構成するようにしてもよい。
(5)上記した図12乃至図20に示す実施の形態においては、高透磁率トロイダルコア180とSQUID3とを別体として構成し、ブリッジ部150に取り付ける際にそれぞれ組み込むようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、予め高透磁率トロイダルコア180とSQUID3とを一体的に形成しておいてもよい。
(6)上記した実施の形態においては、高温超伝導材料としてBi系の材料を用いたが、こうしたBi系の材料としては、例えば、Bi2223やBi2212などを用いることができる。
つまり、Bi2223を99.9%のMgO上に塗布焼成することで、ビーム電流センサーや磁気シールドを製作することができる。
このBi2223の特徴としては、106Kと転移温度が高いので液体窒素温度までのマージンが大きくとれ、このため温度変化に対して安定している点があげられる。しかしながら、最適な膜厚が300μm程度と厚いので、そのため、例えば、5日間の焼結と20気圧の水で圧縮するプロセスを3回行わなければならない。また、複雑な形状を必要とする場合において、水で圧縮する際にMgOの基板が破損しないようにすることには非常な困難が伴う。また、MgOの基板を破損なく複雑な形状に形成することができても、高温超伝導体とMgO基板との温度係数が異なるために、両者が剥離しないように管理する必要がある。
一方、同じくBi系の高温超伝導体でも、Bi2212は、99.9%の銀上に溶融法というプロセスで形成される。このBi2212の最適な膜厚は70μm程度とBi2223に比べて薄いため、例えば、一週間の工程で製作することができ、水圧で圧縮するプロセスも必要ない。これは、基板である銀の融点よりもわずかに低い温度で超伝導体を形成するため、文字通り溶融させて形成する。ただし、臨界温度が83Kと低いため液体窒素温度までのマージンが少なくなるが、冷凍機の使用により70Kよりも低い温度に保つことは可能である。また、複雑な形状を形成する場合においては、Bi2212は、水圧による圧縮プロセスがなく、高温超伝導体と銀の基板との結合が強いため、Bi2223よりは剥離の問題がおこらない。
従って、高温超伝導材料としては、上記したような各材料の特徴を考慮して、所望の材料を選択するようにすればよい。
なお、図24にはBi2212の表面を電子顕微鏡で観察した状態を示す説明図が示されており、図25にはBi2223を表面の電子顕微鏡で観察した状態を示す説明図が示されている。これら図24と図25とを比較すると、Bi2212の方が表面が滑らかである。
(7)上記した図12乃至図20に示す実施の形態においては、高透磁率トロイダルコア180を第1軟磁性体180aと第2軟磁性体180bと第3軟磁性体180cとより構成したがこれに限られるものではないことは勿論である。即ち、高透磁率トロイダルコア180は磁気閉ループを構成すればよいので、第1軟磁性体180aと第2軟磁性体180bとを適宜の材料の連結部材により連結するようにして構成してもよい。
(8)上記した実施の形態ならびに上記(1)乃至(7)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【0027】
また、本発明と、環境磁場を、例えば、シールドがない従来の場合と比較して1/10位までに低減する手法とを組み合わせると、nAオーダーの微弱なビーム電流を一層高精度で測定することが可能となる。
なお、シールドがない従来の場合と比較して1/10位までに低減する手法として、例えば、本願出願人である独立行政法人理化学研究所により平成15年5月30日付けで出願された特願2003−155407に開示された手法などを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、nAオーダーの微弱なビーム電流を非破壊かつ高精度で測定するビーム電流計を構成する際に利用することができ、特に、SQUIDと組み合わせて用いられることが好ましいものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、
前記ブリッジ部は、コイル形状に形成された
ことを特徴とするビーム電流センサー。
【請求項2】
ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、
前記ブリッジ部は、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回された渦巻形状を備えるように形成された第1のコイル部と、外径側から内径側に向かって時計回りに巻回された渦巻形状を備えるように形成された第2のコイル部と、前記第1のコイル部の内径側の中心部位と前記第2のコイル部の内径側の中心部位とを接続する連結部とを有して構成された
ことを特徴とするビーム電流センサー。
【請求項3】
ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にSQUIDインプットコイルが隣接して配置されるブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、
前記ブリッジ部の近傍に配置された軟磁性体を有し、
前記ブリッジ部と前記軟磁性体との間に前記SQUIDインプットコイルを配置した
ことを特徴とするビーム電流センサー。
【請求項4】
ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にSQUIDインプットコイルが隣接して配置されるブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、
前記ブリッジ部は、外径側から内径側に向かって反時計回りに巻回された渦巻形状を備えるように形成された第1のコイル部と、外径側から内径側に向かって時計回りに巻回された渦巻形状を備えるように形成された第2のコイル部と、前記第1のコイル部の内径側の中心部位と前記第2のコイル部の内径側の中心部位とを接続する連結部とを有して構成され、
前記第1のコイル部上に配置された略長方体状の第1の軟磁性体と、前記第2のコイル部上に配置された略長方体状の第2の軟磁性体と、一方の端部が前記第1の軟磁性体側に配置されるとともに他方の端部が前記第2の軟磁性体側に配置されて前記第1の軟磁性体と前記第2の軟磁性体とを架橋する略U字形状を備えた第3の軟磁性体とを有し、
前記第1の軟磁性体と前記第3の軟磁性体の前記一方の端部との間と前記第2の軟磁性体と前記第3の軟磁性体の前記他方の端部との間とに前記SQUIDインプットコイルを配置した
ことを特徴とするビーム電流センサー。
【請求項5】
ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にSQUIDインプットコイルが隣接して配置されるブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、
前記ブリッジ部を囲む磁気閉ループを形成する軟磁性体を有し、
前記ブリッジ部と前記軟磁性体との間に前記SQUIDインプットコイルを配置した
ことを特徴とするビーム電流センサー。
【請求項6】
ビームが内径側を通過するようにした筒状体であって、外径側にSQUIDインプットコイルが隣接して配置されるブリッジ部を形成した超伝導体よりなるビーム電流センサーにおいて、
前記ブリッジ部は、絶縁体を跨ぐように架橋されて前記絶縁体との間に空隙を形成して立ち上がり形成され、
前記空隙に一部を挿通して磁気閉ループを形成するようにした軟磁性体を有し、
前記ブリッジ部と前記軟磁性体との近傍に前記SQUIDインプットコイルを配置した
ことを特徴とするビーム電流センサー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8(a)】
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【図8(b)】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【国際公開番号】WO2005/029100
【国際公開日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【発行日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514099(P2005−514099)
【国際出願番号】PCT/JP2004/013804
【国際出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】