説明

フィラメントワインディング自動化システム

【課題】生産効率の向上及び低コスト化を可能とする。
【解決手段】ヘッド部12、13から繰り出される繊維束RをマンドレルM1に巻付ける巻付け装置と、巻付け前のマンドレルを巻付け位置に設置し、巻付け後のマンドレルを巻付け位置から排出する設置・排出装置5と、繊維束を保持して、巻付け後のマンドレルから巻付け前のマンドレルM1に受け渡す受渡装置3と、繊維束を切断する切断装置とを備え、受渡装置は、巻付け後のマンドレルから巻付け前のマンドレルに繊維束を受け渡す受渡リング31、32を含み、巻付け後のマンドレルの軸方向端部に当接する先の受渡リングと、次に巻付け位置に設置される巻付け前のマンドレルのための後の受渡リングとを有し、先の受渡リングと後の受渡リングとを連結手段を介して軸方向に連結し、後の受渡リングに繊維束を巻付けた後、先の受渡リングと後の受渡リングとの間で、繊維束を切断し、巻付け後のマンドレルを排出するフィラメントワインディング自動化システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラメントワインディング法による製造ラインを自動化したフィラメントワインディング自動化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィラメントワインディング装置は、フィラメントワインディング法によって、圧力タンク等の中空容器やパイプ等を製造する装置である(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。このフィラメントワインディング法は、繊維束をマンドレル(ライナ)に巻き付けて製造物(圧力タンク等)を製造する。繊維束は、例えば、ガラス繊維等の繊維材料と合成樹脂とを用いた繊維材料からなる。
【0003】
フィラメントワインディング装置は、ヘッド部から繰り出される繊維束をマンドレルに巻き付ける。ヘッド部は、フープ巻で巻き付けるフープ巻ヘッドや、ヘリカル巻で巻き付けるヘリカル巻ヘッドからなる。フープ巻は、マンドレルの軸方向に対して略直角に繊維束を巻き付ける(図5(a)参照)。ヘリカル巻は、マンドレルの軸方向に対して所定の角度で繊維束を巻き付ける(図5(b)・(c)参照)。
【0004】
フィラメントワインディング装置は、巻付け位置に設置されたマンドレルに対して、繊維束を巻き付ける。そのため、マンドレルを巻付け位置に設置して巻付け開始し、巻付け完了後に、マンドレルを巻付け位置から排出する。このマンドレルを設置及び排出する工程は、作業者が手作業で行う。さらに、作業者は、巻付け開始時に、繊維束の始端をマンドレルに固定し、巻付け終了時に、繊維束をマンドレルから切断する。
【0005】
このように、巻付け開始及び終了の際に、作業者は、種々の作業を行う必要がある。作業者による作業時間や作業数が多くなると、全体的な生産効率が低下し、コストアップの原因となる問題がある。
【特許文献1】特願2007−34723号
【特許文献2】特開平10−119138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記した問題点に鑑みて、生産効率の向上及び低コスト化を可能とするフィラメントワインディング自動化システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のフィラメントワインディング自動化システムは、ヘッド部から繰り出される繊維束をマンドレルに巻き付ける巻付け装置と、巻付け前のマンドレルを巻付け位置に設置する設置装置と、巻付け後のマンドレルを前記巻付け位置から排出する排出装置と、前記繊維束を保持して、前記巻付け後のマンドレルから前記巻付け前のマンドレルに受け渡す受渡装置と、前記繊維束を切断する切断装置とを備え、
前記受渡装置は、巻付け後のマンドレルから巻付け前のマンドレルに繊維束を受け渡す受渡リングを含むものからなり、巻付け後のマンドレルの軸方向端部に当接する先の受渡リングと、次に巻付け位置に設置される巻付け前のマンドレルのための後の受渡リングとを連結手段を介して軸方向に連結し、後の受渡リングに繊維束を巻付けた後、先の受渡リングと後の受渡リングとの間で、繊維束を切断し、巻付け後のマンドレルを排出するようにしたことを特徴とするフィラメントワインディング自動化システムを構成する。
【0008】
さらに、本発明において請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフィラメントワインディング自動化システムであって、前記受渡装置は、前記受渡リングを巻付け位置に設置されたマンドレルの軸心に整合す第1の位置と、前記第1の位置から径方向に退去する第2の位置に移動するための受渡リング移動手段を備えたものからなることを特徴とするものである。
【0009】
さらに、本発明において請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のフィラメントワインディング自動化システムであって、前記受渡リングは、前記マンドレルの軸方向両端から軸方向外方に向けてのびるスピンドルに対して摺動可能に挿通する挿通孔を有しており、前記挿通孔とスピンドルとの間に周方向の回転を規制されている回転規制手段を設けたことを特徴とするものである。
【0010】
さらにまた、本発明において請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフィラメントワインディング自動化システムであって、前記先の受渡リングと後の受渡リングとを軸方向に連結する連結手段が、一方の受渡リングの軸方向側面に設けた磁石部材と、他方の受渡リングの軸方向側面に設けた磁性体部材とからなることを特徴とするものでもある。
【0011】
さらに、本発明において請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフィラメントワインディング自動化システムであって、前記先の受渡リングと後の受渡リングとを軸方向に連結する連結手段が、一方の受渡リングの軸方向側面に設けたフック爪と、他方の受渡リングの軸方向側面に設けたフック溝とからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明のフィラメントワインディング自動化システムは、設置装置と排出装置とを備える。設置装置は、巻付け前のマンドレルを巻付け位置に設置する。排出装置は、巻付け後のマンドレルを巻付け位置から排出する。従って、作業者は、マンドレルを巻付け位置に設置したり、巻付け位置から排出する必要がない。
【0013】
さらに、本発明のフィラメントワインディング自動化システムは、受渡装置と切断装置とを備える。受渡装置は、繊維束を保持して、巻付け後のマンドレルから巻付け前のマンドレルに受け渡す。本発明では、特に、巻付け後のマンドレルと巻付け前のマンドレルとの交換の際、受渡リングを用いて、繊維束を切ることなくマンドレルの交換を自動化するものである。即ち、巻付け後のマンドレルの端部に当接する先の受渡リングと、巻付け前のマンドレル用の後の受渡リングとを連結手段を介して軸方向に連結し、後の受渡リングに繊維束を巻き付けた後、先および後の受渡リング間の繊維束を切り離して、巻付け後のマンドレル(完成品)を排出することができ、フィラメントワインディングを自動化することができる。これにより、作業者は、巻付け開始時に、繊維束の始端をマンドレルに取り付けたり、巻付け終了時に、繊維束をマンドレルから切断して分離する必要がない。
【0014】
従って、本発明のフィラメントワインディング自動化システムは、従来のフィラメントワインディング装置に比べて、製造ラインのほぼ全てを自動化して、作業者の作業数及び作業時間を大幅に削減し、生産効率の向上、省力化・低コスト化を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づいて、本発明に係るフィラメントワインディング自動化システムについて詳細に説明する。
【0016】
[全体構成]
図1は、この発明になるフィラメントワインディング自動化システムを示す一部省略斜視図である。フィラメントワインディング自動化システムは、巻付け装置1と供給部2とを備える。
【0017】
巻付け装置1は、マンドレルMに繊維束Rを巻き付ける。供給部2は、クリール支持部21,21に複数のクリール20を備える。クリール20は、繊維束Rを巻き取って収納している。
【0018】
前記繊維束Rとしては、例えば、ガラス繊維等の繊維材料や合成樹脂とを用いた繊維材料からなる。前記供給部2は、各クリール20から引き出された繊維束Rを巻付け装置1へ供給する。
【0019】
繊維束Rは、予め熱硬化性の合成樹脂材が含浸されている。なお、繊維束Rは、樹脂が含浸されていない場合もある。その場合は、巻付け装置1と供給部2との間に、樹脂含浸装置(図示略)が設けられており、樹脂含浸装置が、クリール20から引き出された繊維束Rに樹脂を塗布して、巻付け装置1へ供給する。
【0020】
巻付け装置1の両側(図1及び図2において手前及び奥)には、複数のマンドレルM(巻付け前のマンドレルM1、巻付け後のマンドレルM2)が並べれらている。巻付け装置1の前方側(図1において手前)には、巻付け前のマンドレルM1が、該巻付け装置1の後方側(図1において奥)には、巻付け装置1により繊維束Rを巻付けた後のマンドレルM2が並べられる。そして、巻付け装置1の一端側(図1において左)に、マンドレルM1、M2が配置される。
【0021】
[巻付け装置]
図2は、図1の巻付け装置1を示す拡大斜視図である。巻付け装置1は、機台10を備える。機台10は、長手方向1a(マンドレル軸方向Mc)に延設された一対の平行な第一ガイドレール部10a、10aを備える。巻付け装置1は、機台10にマンドレル移動台11を備える。マンドレル移動台11は、第一ガイドレール10a、10aに沿って長手方向1aに往復移動する。
【0022】
前記マンドレルMは、マンドレル軸方向Mcに延設されたマンドレル用スピンドルSを備える。マンドレル移動台11は、両側のマンドレル回転軸11a、11aでスピンドルSを回転支持する。マンドレル回転軸11a、11aは、スピンドルSと共にマンドレルMを中心軸周りに回転する。
【0023】
圧力タンクを製造する場合、マンドレルMは、高強度アルミニウム製、金属製、樹脂製等で形成され、円筒部Maとその両側のドーム部Mbとを有する形状である(図5)。スピンドルSは、マンドレルMに着脱可能に固定される。機台10の長手方向1aは、マンドレル軸方向Mcとなる。なお、マンドレルMは、製造物に応じて材料や形状等を変更可能である。
【0024】
前記巻付け装置1は、1つのフープ巻ヘッド12と、1つのヘリカル巻ヘッド13とを備える。フープ巻ヘッド12は、マンドレルMに対して繊維束Rをフープ巻で巻き付ける。ヘリカル巻ヘッド13は、マンドレルMに対して繊維束Rをヘリカル巻で巻き付ける。
【0025】
巻付け装置1は、制御部6によって駆動制御される。制御部6は、マンドレル移動台11の往復移動、マンドレル回転軸11a,11aによるマンドレルMの回転を制御する。前記制御部6は、前記フープ巻ヘッド12の往復移動、ボビン12bの旋回等を制御する。また、制御部6は、後述するマンドレル移動台11の側壁部11b,11bの駆動を制御する。
【0026】
前記フープ巻ヘッド12は、本体部12aを備える。本体部12aは、中央に開口する挿通部12dを備える。フープ巻ヘッド12は、挿通部12dを通じてマンドレルMを挿通する。
【0027】
機台10は、長手方向1aに延設された一対の第二ガイドレール10b,10bを平行に備える。フープ巻用ヘッド12は、移動ベース12fを備え、第二ガイドレール10b,10bに沿って長手方向1aに往復移動する。これにより、フープ巻用ヘッド12は、挿通部12dにマンドレルMを挿通した状態で往復移動する。
【0028】
フープ巻ヘッド12は、繊維束Rを巻き取り収納する複数(本実施形態では2つ)のボビン12b,12bを備える。フープ巻ヘッド12は、旋回機構を備える。旋回機構は、挿通部12dの周囲にマンドレル周方向Mdに沿うガイド溝12cと、モータ等の駆動部12eとを備える。ボビン12b,12bは、駆動部12eの動力によって、ガイド溝12cに沿って旋回する。旋回するボビン12b,12bから繰り出される繊維束Rは、マンドレルMに巻き付けられる。
【0029】
前記ヘリカル巻ヘッド13は、本体部13aを備える。本体部13aは、中央に開口する挿通部13dを備える。ヘリカル巻ヘッド13は、挿通部13dを通じてマンドレルMを挿通する。ヘリカル巻ヘッド13は、機台10の長手方向1aの中央部に位置固定されている。
【0030】
ヘリカル巻ヘッド13は、挿通部13dにマンドレルMを挿通した状態で、マンドレル移動台11が往復移動する。これにより、ヘリカル巻ヘッド13は、マンドレルMに対して長手方向1aに相対的に往復移動する。
【0031】
ヘリカル巻ヘッド13は、供給部2から引き出される繊維束RをマンドレルMに巻き付ける。ヘリカル巻ヘッド13は、挿通部13dの周囲に、マンドレル周方向Mdに沿って延設された環状のガイドリング部15を備える。本体部13aは、ガイドリング部15の両側にテンション部13b,13bを備える。さらに、ヘリカル巻ヘッド13は、本体部13aの両側にガイドローラ13c,13cを備える。
【0032】
ヘリカル巻ヘッド13は、クリール20から引き出された繊維束Rをガイドローラ13c,13cでガイドして、テンション部13b,13bへ導く。テンション部13b,13bは、繊維束Rに所定の樹脂と張力を付与する。テンション部13b,13bが繊維束Rに所定の張力を与えることにより、繊維束RをしっかりとマンドレルMに巻き付けることができる。
【0033】
[ヘリカル巻ヘッド]
図3は、ヘリカル巻ヘッド13を示す正面図である。ヘリカル巻ヘッド13は、リング状の複数の補助ガイド13eを備えている。補助ガイド13eは、ガイドリング部15の外側に沿って配置されている。
【0034】
クリール20から引き出される繊維束Rは、ヘリカル巻ヘッド13の両側からガイドローラ13cを通じてテンション部13bへ供給される。複数の繊維束Rは、テンション部13bから各補助ガイド13eを経て、ガイドリング部15へ案内される。さらに、複数の繊維束Rは、ガイドリング部15に沿って設けられた複数のガイド孔15aを経て、マンドレルMに案内される。
【0035】
[開繊ガイド]
図4は、開繊ガイドを示す斜視図である。開繊ガイド16は、ヘリカル巻ヘッド13のガイドリング部15の内側に、ガイド孔15a毎に設けられている。開繊ガイド16は、一対の回転自在な開繊ローラ16a,16aを備える。
【0036】
開繊ローラ16a,16aは、ガイド孔15aの径方向に平行に設けられる。開繊ガイド16は、ガイド孔15aの中心周りに回転自在な回転ベース16bを備えている。回転ベース16bは、開繊ローラ16a,16aを支持する。
【0037】
開繊ガイド16は、一対の開繊ローラ16a,16aの間に繊維束Rが挿通する。これにより、開繊ガイド16は、マンドレルMへの繊維束Rの巻付け角度θが変わっても自在に回転して、開繊ローラ16a,16aで繊維束Rを開繊状態(幅を広げた状態)にしてマンドレルMに巻き付けることができる。
【0038】
[フープ巻・ヘリカル巻]
図5は、フープ巻及びヘリカル巻を示す側面図である。図5(a)に示すように、フープ巻は、マンドレル軸方向Mcに対して略直角に繊維束Rを巻き付ける。図5(b)・(c)に示すように、ヘリカル巻は、マンドレル軸方向Mcに対して所定の角度θ(θ1,θ2)で繊維束Rを巻き付ける。前述の通り、フープ巻ヘッド12により、フープ巻が行われ、ヘリカル巻ヘッド13により、ヘリカル巻が行われる。
【0039】
図6〜図13は、この発明になるフィラメントワインディング自動化システムによる製造工程を示す側面図である。この実施形態では、機台10の一端側(図左)でのみ、マンドレルMを設置・排出する。
【0040】
[設置動作]
図6(a)に示すように、フィラメントワインディング自動化システムは、受渡装置3を備える。受渡装置3は、受渡ハンド部30を備える。受渡ハンド部30は、受渡スピンドル30cを着脱自在に把持して保持する。受渡ハンド部30は、垂直方向に伸縮自在な伸縮アーム30aを備える。この受渡装置3における受渡ハンド部30は、受渡リング31、32を、巻付け位置に設置されたマンドレルMの軸心に整合す第1の位置P1と、前記第1の位置P1から軸方向あるいは径方向に退去する第2の位置P2(図8(a)参照)あるいはP2’(図23(b)参照)に移動させるための受渡リング移動手段RMを構成する。
【0041】
さらに、受渡ハンド部30は、例えば、天井部Tに設けられたガイドレール(図示略)に沿って、水平方向に移動自在な移動ベース30bを備える。受渡ハンド部30は、制御部6によって駆動制御される。
【0042】
受渡スピンドル30cは、第1受渡リング31及び第2受渡リング32を保持する。各受渡リング31、32は、受渡スピンドル30cに対して摺動可能に挿通する挿通孔35を有しており、例えば、図14に示すようなスプライン結合等の回転規制手段36によって、受渡スピンドル30cに対して周方向に回転が規制されている。
【0043】
各受渡リング31、32は、先の受渡リングと後の受渡リングとを軸方向に連結する連結手段37を備えており、該連結手段37を介して軸方向に着脱自在に連結されるようになっている。前記連結手段37としては、例えば、図15(a)に示すように、一方の受渡リングの軸方向側面に設けた磁石部材38Aと、他方の受渡リングの軸方向側面に設けた磁性体部材38Bとからなっており、互いに結合し、受渡スピンドル30cに位置固定される。各受渡リング31、32は、後述の工程で、互いに分離したり、受渡スピンドル30cから離れる。
【0044】
前記連結手段37の他の例としては、例えば、図15(b)に示すように、一方の受渡リングの軸方向側面に設けたフック爪39Aと、他方の受渡リングの軸方向側面に設けたフック溝39Bとからなっている。
【0045】
マンドレル移動台11は、両側壁部11b、11bにマンドレル回転軸11a、11aを備える。側壁部11b、11bは、巻付け時には垂直方向に立設しており、マンドレルMを設置・排出する時に、水平方向に倒すことができる。
【0046】
マンドレル移動台11は、両側壁部11b、11bが倒れた状態で待機する。受渡ハンド部30は、受渡スピンドル30cを把持・保持して、機台10の他端側(図右)から一端側(図左)へ移動する。
【0047】
図6(b)に示すように、前記受渡ハンド部30は、受渡スピンドル30cをフープ巻ヘッド12及びヘリカル巻ヘッド13の挿通部12d、13dに挿通した状態で、位置決めする。
【0048】
各受渡リング31、32は、ヘッド部12、13に設けられたチャック機構(図示略)によって、位置固定される。第1受渡リング31に、テープ等によって、ヘッド部12、13から繰り出される繊維束Rの始端が固着される。
【0049】
図7(a)に示すように、フィラメントワインディング自動化システムは、設置・排出装置5を備える。設置・排出装置5は、第1及び第2設置・排出ハンド部51、52を備える。第1及び第2設置・排出ハンド部51、52は、マンドレル用スピンドルSを着脱自在に把持して、巻取り前のマンドレルM1及び巻取り後のマンドレルM2を保持し、移動する。
【0050】
第1及び第2設置・排出ハンド部51、52は、受渡ハンド部30と同様に、伸縮アーム51a、52a及び移動ベース51b、52bを備える。第1及び第2設置・排出ハンド部51、52は、制御部6によって駆動制御される。
【0051】
第1及び第2設置・排出ハンド部51、52は、巻取り前のマンドレルM1の両側で、そのスピンドルSを把持して、移動する。第1及び第2設置・排出ハンド部51、52は、マンドレル用スピンドルSの他端(図右)を受渡スピンドル30cの一端(図左)に当接するように、配置する。
【0052】
図7(b)に示すように、第1及び第2設置・排出ハンド部51、52は、マンドレルM1を機台10の他端側(図右)に移動する。それと同期して、受渡ハンド部30は、受渡スピンドル30cを機台10の他端側(図右)に移動する。これにより、各スピンドルS、30cは、互いに当接したままとなる。
【0053】
前述の通り、各受渡リング31、32は、ヘッド部12、13のチャック機構(図示略)によって、位置固定されているので、受渡スピンドル30cからマンドレル用スピンドルSに嵌め込まれて(受け渡されて)、保持される。
【0054】
なお、各受渡リング31、32を受渡スピンドル30cに位置固定する連結手段37の結合力は、チャック機構(図示略)のそれよりも小さいので、上記工程によって、各受渡リング31、32は受渡スピンドル30cから離れる。
【0055】
設置・排出装置5は、第3設置・排出ハンド部53を備える。第3設置・排出ハンド部53は、第1設置・排出ハンド部51等と同一構成で、伸縮アーム53a及び移動ベース53bを備える。第3設置・排出ハンド部53は、制御部6によって駆動制御される。
【0056】
第3設置・排出ハンド部53は、マンドレル用スピンドルSを他端側(図右)で保持する。これにより、第2及び第3設置・排出ハンド部52、53が、ヘッド部12、13の両側でマンドレル用スピンドルSを保持する。
【0057】
図8(a)に示すように、受渡ハンド部30は、受渡スピンドル30cを退避する。第2設置・排出ハンド部52は、マンドレル用スピンドルSを離して、伸縮アーム52aで上方へ退避する。
【0058】
そして、第1及び第3設置・排出ハンド部51、53が、マンドレルM1を機台10の他端側(図右)へ少し移動する。これにより、受渡用リング31が、マンドレルM1と接合する。
【0059】
そして、マンドレル移動台の側壁部11b、11bが起立する。マンドレル用スピンドルSの両端は、マンドレル回転軸11a、11aに連結し、支持される。マンドレル移動台11はマンドレルM1を回転支持する。
【0060】
これにより、巻取り前のマンドレルM1が、巻取り位置に設置される。第1及び第3設置・排出ハンド部51、53は、マンドレル用スピンドルSを離して、伸縮アーム51a、53aで上方へ退避する。そして、各設置・排出ハンド部51〜53が退避する。
【0061】
[巻付け動作]
図8(b)に示すように、フープ巻を行う際、制御部6によって、フープ巻ヘッド12が次のように動作する。フープ巻ヘッド12は、マンドレルMの他端(図右)から一端(図左)へ移動しながら、ボビン12b、12bが旋回する。なお、マンドレル移動台11は停止しているので、マンドレルMは移動及び回転しない。
【0062】
これにより、各ボビン12b、12bから繊維束Rが繰り出される。繊維束Rは、マンドレル軸方向Mc(図5)に対して略直交(若干傾斜)に、それぞれが重ならないように隙間なく平行に巻き付けられる。このように巻付くよう、フープ巻ヘッド12の移動速度及びボビン12b、12bの旋回速度が決定される。
【0063】
フープ巻ヘッド12が、マンドレル円筒部Ma(図5)の他端(図右)から一端(図左)へ移動することにより、マンドレル円筒部Maに一層の繊維束Rが積層される。そして、必要層の繊維束Rが積層されるまで、フープ巻ヘッド12は、マンドレル円筒部Maの一端(図左)と他端(図右)とを往復移動する。
【0064】
フープ巻完了後、図9(a)に示すように、フープ巻ヘッド12は、マンドレル移動台11の一端側(図左)へ退避する。フープ巻ヘッド12は、マンドレルMから所定距離Wを置いて、マンドレル用スピンドルS上に配置される。
【0065】
図9(b)に示すように、ヘリカル巻を行う際、制御部6によって、マンドレル移動台11が次のように動作する。マンドレル移動台11は、ヘリカル巻ヘッド13がマンドレルMの他端(図右)から一端(図左)へ相対的に移動するよう、移動する。この移動と共に、マンドレル回転軸11a、11aがマンドレルMを回転する。
【0066】
ヘリカル巻ヘッド13から繰り出される複数の繊維束Rは、マンドレル平行部でマンドレル軸方向Mc(図5)に対して巻付け角度θ1に、それぞれが重ならないように隙間なく平行に巻き付けられる。このように巻付くよう、マンドレル移動台11(ヘリカル巻ヘッド13)の移動速度及びマンドレル回転軸11a(マンドレルM)の回転速度が決定される。
【0067】
ヘリカル巻ヘッド13が、マンドレルMの他端(図右)から一端(図左)へ移動することにより、マンドレルMに、一層の繊維束Rが積層される。そして、必要層の繊維束Rが積層されるまで、ヘリカル巻ヘッド13は、マンドレルMの一端(図左)と他端(図右)とを往復移動する。
【0068】
さらに、フープ巻ヘッド12は、マンドレルMからの所定距離Wを保つように、マンドレル移動台11と同期して移動する。また、マンドレルMの回転により、ボビン12b、12bから余分な繊維束Rが繰り出されてスピンドルSに巻き付かないように、ボビン12b、12bは、マンドレルMの回転と同期してマンドレルと同方向に回転する。
【0069】
図10(a)に示すように、巻付け角度θ2(>θ1)のヘリカル巻を行う際や、図10(b)に示すように、その後、再度巻付け角度θ1のヘリカル巻を行う際、上記と同様に、マンドレル移動台11及びフープ巻ヘッド12が動作する。
【0070】
図11(a)に示すように、必要層のヘリカル巻を行った後、マンドレル移動台11が機台10の一端側(図左)へ移動して、ヘリカル巻ヘッド13がマンドレル移動台11の他端側(図右)に配置される。これにより、ヘリカル巻ヘッド13から繰り出される繊維束Rが、各受渡リング31、32に巻き付く。
【0071】
図11(b)に示すように、必要層のフープ巻を行った後、フープ巻ヘッド12が、マンドレルM2の他端側(図右)に移動する。これにより、ボビン12bから繰り出される繊維束Rが、各受渡リング31、32に巻き付く。
【0072】
従って、ヘッド部12、13から繰り出される繊維束Rは、各受渡リング31、32に巻き付き、保持される。
【0073】
なお、上記の通り、マンドレルM2に巻き付いた繊維束Rは、第1受渡リング(マンドレルM側の受渡リング)31が始端となって、第2受渡リング(マンドレルMと反対側の受渡リング)32が終端となっている。
【0074】
[切断動作]
図12(a)に示すように、フィラメントワインディング自動化システムは、切断装置4を備える。前記切断装置4は、カッター部40を備える。カッター部40は、伸縮アーム40a及び移動ベース40bを備える。カッター部40は、制御部6によって駆動制御される。
【0075】
カッター部40は、その刃先を各受渡リング31、32の間に配置する。そして、マンドレル回転軸11a、11aによって、マンドレルM2と共に各受渡リング31、32を回転する。これにより、各受渡リング31、32に巻き付けられた繊維束Rは、各受渡リング31、32の間で切断されて分離する。
【0076】
[排出動作]
図12(b)に示すように、第1及び第3設置・排出ハンド部51、53が、マンドレル用スピンドルSの両側を把持してマンドレルM2を保持する。その状態で、巻付け後のマンドレルM2を巻付け位置から排出したり、巻付け前のマンドレルM1を巻付け位置から設置可能なよう、マンドレル移動台の側壁部11b、11bが倒れる。
【0077】
そして、受渡ハンド部30が、受渡スピンドル30cを移動する。受渡スピンドル30cは、第3受渡リング33を保持する。受渡ハンド部30は、受渡スピンドル30cの一端(図左)をマンドレル用スピンドルSの他端(図右)に当接する。
【0078】
図13(a)に示すように、各スピンドルS、30cを当接した状態で、第1及び第3設置・排出ハンド部51、53並びに受渡ハンド部30が、マンドレルM2(スピンドルS)及び受渡スピンドル30cを機台10の一端側(図左)へ若干移動する。
【0079】
このとき、ヘッド部12、13に設けられたチャック機構(図示略)は、第1受渡リング31を離している(第2受渡リング32は位置固定する)。従って、第1受渡リング31は、マンドレルM2と共に第2受渡リング32から離れる。
【0080】
そして、第2設置・排出ハンド部52が、各受渡リング31、32の間でマンドレル用スピンドルSを把持して保持する。これにより、第1及び第2設置・排出ハンド部51、52が、マンドレルM2の両側を保持する。そして、第3設置・排出ハンド部53は退避する。
【0081】
さらに、各スピンドルS、30cを当接した状態で、第1及び第2設置・排出ハンド部51、52並びに受渡ハンド部30が、マンドレル用スピンドルS及び受渡スピンドル30cを機台10の一端側(図左)へ移動する。
【0082】
図13(b)に示すように、第2受渡リング32は、マンドレル用スピンドルSから受渡スピンドル30cに嵌め込まれて(受け渡されて)、保持される。そして、第3受渡リング33は、着脱機構(図示略)によって、第2受渡リング32に結合する。受渡スピンドル30cは、第2及び第3受渡リング32、33を保持する。
【0083】
第1及び第2設置・排出ハンド部51,52は、巻取り後のマンドレルM2を巻取り位置から排出する。これまでの製造工程によって、1本の巻取りマンドレルM2(製造物)が完成する。
【0084】
なお、ヘッド部12、13から繰り出される繊維束Rは、第2受渡リング32に巻き付き、保持されている。図13(b)は、上記図6(b)に対応した状態となる。
【0085】
[受渡し動作]
その後、上述した[設置動作](図7(a)〜図8(a))及び[巻付け動作](図8(b)〜図11(b))を行う。ヘッド部12、13から繰り出される繊維束Rは、第2受渡リング32から次のマンドレルM1へと巻き付けられる。従って、第2受渡リング32が、繊維束Rを巻取り後のマンドレルM2からその次の巻取り前のマンドレルM1に受け渡す。
【0086】
そして、巻付け動作終了後、マンドレルM2に巻き付けられた繊維束Rは、第3受渡リング33に巻き付けられる。その後、[切断動作](図12(a))及び[排出動作](図12(a)〜図13(b))を行う。そして、第3受渡リング33が、繊維束Rを巻取り後のマンドレルM2からその次の巻取り前のマンドレルM1に受け渡す。
【0087】
[繰り返し動作]
上記の通り、[設置動作]、[巻付け動作]、[切断動作]、[排出動作]及び[受渡し動作](図7〜図13)を繰り返し行うことにより、作業者は殆ど作業することなく、製造ラインを自動化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】この発明になるフィラメントワインディング自動化システムを示す一部省略斜視図である。
【図2】図1の巻付け装置を示す拡大斜視図である。
【図3】ヘリカル巻ヘッド13を示す正面図である。
【図4】開繊ガイドを示す斜視図である。
【図5】フープ巻及びヘリカル巻を示す側面図である。
【図6】この発明になるフィラメントワインディング自動化システムによる製造工程を示す側面図である。
【図7】図6に続く側面図である。
【図8】図7に続く側面図である。
【図9】図8に続く側面図である。
【図10】図9に続く側面図である。
【図11】図10に続く側面図である。
【図12】図11に続く側面図である。
【図13】図12に続く側面図である。
【図14】受渡リングの回転規制手段の一例を示す概略的な斜視図である。
【図15】受渡リングの連結手段の例を示すものであって、図15(a)は、磁石式の例を示す概略的な斜視図であり、図15(b)は、フック式の例を示す概略的な斜視図である。
【符号の説明】
【0089】
1 巻付け装置
10 機台
11 マンドレル移動台
12、13 ヘッド部
12 フープ巻ヘッド
13 ヘリカル巻ヘッド
3 受渡装置
30 受渡ハンド部
30c 受渡スピンドル
31、32、33、34 第1〜第4受渡リング
35 受渡リングの挿通孔
RM 受渡リング移動手段
36 受渡リング回転規制手段
37 連結手段
38A 磁石部材
38B 磁性体部材
39A フック爪
39B フック溝
4 切断装置
40 カッター部
5 設置・排出装置
51、52、53、54、55 第1〜第5設置・排出ハンド部
6 制御部
M マンドレル
M1 巻付け前のマンドレル
M2 巻付け後のマンドレル
S マンドレル用スピンドル
R 繊維束

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッド部から繰り出される繊維束をマンドレルに巻き付ける巻付け装置と、巻付け前のマンドレルを巻付け位置に設置する設置装置と、巻付け後のマンドレルを前記巻付け位置から排出する排出装置と、前記繊維束を保持して、前記巻付け後のマンドレルから前記巻付け前のマンドレルに受け渡す受渡装置と、前記繊維束を切断する切断装置とを備え、
前記受渡装置は、巻付け後のマンドレルから巻付け前のマンドレルに繊維束を受け渡す受渡リングを含むものからなり、巻付け後のマンドレルの軸方向端部に当接する先の受渡リングと、次に巻付け位置に設置される巻付け前のマンドレルのための後の受渡リングとを連結手段を介して軸方向に連結し、後の受渡リングに繊維束を巻付けた後、先の受渡リングと後の受渡リングとの間で、繊維束を切断し、巻付け後のマンドレルを排出するようにしたことを特徴とするフィラメントワインディング自動化システム。
【請求項2】
前記受渡装置は、前記受渡リングを巻付け位置に設置されたマンドレルの軸心に整合す第1の位置と、前記第1の位置から径方向に退去する第2の位置に移動するための受渡リング移動手段を備えたものからなることを特徴とする請求項1に記載のフィラメントワインディング自動化システム。
【請求項3】
前記受渡リングは、前記マンドレルの軸方向両端から軸方向外方に向けてのびるスピンドルに対して摺動可能に挿通する挿通孔を有しており、前記挿通孔とスピンドルとの間に周方向の回転を規制されている回転規制手段を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフィラメントワインディング自動化システム。
【請求項4】
前記先の受渡リングと後の受渡リングとを軸方向に連結する連結手段が、一方の受渡リングの軸方向側面に設けた磁石部材と、他方の受渡リングの軸方向側面に設けた磁性体部材とからなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフィラメントワインディング自動化システム。
【請求項5】
前記先の受渡リングと後の受渡リングとを軸方向に連結する連結手段が、一方の受渡リングの軸方向側面に設けたフック爪と、他方の受渡リングの軸方向側面に設けたフック溝とからなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のフィラメントワインディング自動化システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2009−78495(P2009−78495A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−250917(P2007−250917)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】