説明

フェニル酢酸誘導体の製造方法

優れたVLA−4阻害作用と安全性を有する化合物を得るために有用な中間体化合物の有利な製造方法を提供すること。
下記にしたがって、中間体化合物(III)および(XIII)に変換する。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Very Late Antigen−4(VLA−4)に対する優れた阻害作用と安全性を有する化合物の製造中間体として有用な化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
VLA−4は、単球、リンパ球、好酸球および好塩基球に発現している細胞接着関連分子であり、血管細胞接着分子−1(Vascular cell adhesion molecule−1;VCAM−1)等に対する受容体として働いていることが知られている。
【0003】
近年、VLA−4とVCAM−1によって介在される接着の選択的な阻害が、自己免疫疾患およびアレルギー性炎症疾患治療の解決手段となり得ることが報告されている。
【0004】
特許文献1の一般式(I)に記載の化合物、例えば、下記の式(1)で表される化合物は、優れたVLA−4阻害作用に基づく抗炎症作用を示し、かつ高い安全性を有する医薬化合物として期待されている。(特許文献1参照)。
【0005】
【化1】

【0006】
特許文献1の一般式(I)に記載の化合物の製造中間体として、
下記の一般式(2)
【0007】
【化2】

【0008】
(式中、Rは置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を意味し、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、フェノキシ基または式(a)
【0009】
【化3】

【0010】
(式中、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基を意味し、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表される基を意味し、Xは水素原子またはハロゲン原子を意味し、Yはハロゲン原子または低級アルコキシ基を意味する。)
で表される化合物、および式(13)
【0011】
【化4】

【0012】
(式中、Xは水素原子またはハロゲン原子を意味し、Yはハロゲン原子を意味し、Rは水素原子、置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味する。)
で表される化合物は重要である。
【0013】
この上記式(2)の化合物のうち、Rが前記アルコキシ基またはアラルキルオキシ基である化合物は、置換、無置換のニトロフェニル酢酸のカルボン酸部位をエステル化した後、ニトロ基を還元してアミノ基に変換し、さらに、Rを部分構造に有するカルボン酸またはエステルを縮合させてアミド化することにより製造できることが知られている(特許文献1、2参照)。
しかし、特許文献1および2に記載の製造方法では、ニトロ基の還元反応において、鉄金属が用いられていたため、操作性、反応性において問題があった。また、上記工程中のアミド化反応は、一般的な塩基性条件で行われていたため、副反応によって、Rを部分構造に有するカルボン酸の二量体が生成し、それにともなって主反応の収率低下が生じるという問題があった。さらには、生じた二量体を除去するためのカラクロマトグラフィーによる精製が必要であった。
また、式(2)の化合物のうち、Rが式(a)である化合物も、Rを部分構造に有するカルボン酸またはエステルとアミノフェニル酢酸アミドとを縮合させて製造されている。このアミド化反応もまた、一般的な塩基性条件で行われていたため、上記と同様の問題があった。
【0014】
また、上記式(13)で表される化合物のうちで、Rが水素原子でありXおよびYが塩素原子である化合物については、2,5−ジクロロ−ニトロトルエンのメチル基の臭素化、次いで2,5−ジクロロ−4−ニトロベンジルブロミドをシアノ化して2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニルアセトニトリルに導き、最後にシアノ基の加水分解で2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニル酢酸に導く方法による製造例が報告されているが、本製造方法は多工程を要する問題を有している(非特許文献1参照)。
【0015】
上記式(13)で表される化合物に類似する化合物として、1,4−ジクロロ−2−フルオロベンゼンをニトロ化し、次いでマロン酸と反応させて、2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニルマロン酸エステル誘導体を製造する方法が報告されている(特許文献3参照)。しかし、このマロン酸と反応させる方法は、多工程を有し、高価な1,4−ジクロロ−2−フルオロベンゼンを用い、工業規模における操作が困難な水素化リチウムを用いるという問題を有している。
【0016】
ニトロベンゼンに、側鎖として−P(O)(OCH、−SOPh、−CN、−COR(Rは低級アルキル基を示す)を導入する反応(非特許文献2参照)、ニトロベンゼンに、側鎖としてクロロ酢酸エチルエステル等を導入する反応(非特許文献3参照)が記載されているが、これらの反応によって得られる主生成物はオルト位が置換されたニトロベンゼンである。
【0017】
ニトロ基に対してパラ位に目的の置換基を導入するニトロベンゼンの反応として、種々のニトロアレーンと種々の2−クロロプロピオネートエステルとを反応させて、ニトロアリールプロピオネートを合成する方法が記載されている(非特許文献4参照)。この反応には、置換されていないかまたはハロゲン原子等で1箇所置換されたニトロベンゼンを用い、ハロゲン原子で2箇所置換されたニトロベンゼンの反応に関する記載はない。
【特許文献1】国際公開第2002/053534号パンフレット
【特許文献2】PCT/JP2004/006471
【特許文献3】特許第3350051号公報
【特許文献4】特開昭57−16840号公報
【非特許文献1】Ann.Appl.Biol.,69,65−72(1971)
【非特許文献2】J.Amer.Chem.Soc.,107,19,5473−5483(1985)
【非特許文献3】Synthesis,12,1007−1009(1988)
【非特許文献4】J.Org.Chem.,49,578−579(1984)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、優れたVLA−4阻害作用と安全性を有する化合物の製造中間体として重要な化合物である、上記式(2)および(13)に示した化合物を得るために工業的に有利な製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明者は鋭意研究を進めた結果、上記式(2)で表される化合物の製造工程において、ニトロ基の還元反応をマイルドな白金系触媒下で行うことにより、ベンゼン環上のハロゲンを還元することなくニトロ基のみを選択的に還元できることを見出した。さらには、還元物を塩酸塩の結晶として得ることにより該還元物の安定性を向上できることを見出した。
また、アミド化反応において、通常の塩基を添加した条件下ではなく、酸性条件下において、酸クロライドを生成し得る化合物とアミンを添加して反応させることで、アミド化が定量的に進み、化合物(2)が高収率で得られることを見出した。
【0020】
さらにまた、上記式(13)で表される化合物の製造工程において、容易に入手可能な置換ニトロベンゼンに塩基存在下、エステル誘導体を導入することによって、VLA−4/VCAM−1相互作用による細胞接着を阻害する化合物の中間体(13)を一工程で安価に得る方法を見出した。さらに驚くべきことに、生成化合物のうちの九割という高い選択性で、ニトロベンゼン環の窒素基に対してパラ位に置換基が導入できることを見出した。
【0021】
これらの優れた改良によって、本発明は完成に至ったものである。
すなわち本発明は、式(I)
【0022】
【化5】

【0023】
(式中、Rは置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を意味する。)
で表される化合物に、塩基を添加せず酸性条件下で、塩素化試薬および式(II)
【0024】
【化6】

【0025】
(式中、Rは、置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、フェノキシ基または式(a)
【0026】
【化7】

【0027】
(式中、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基を意味し、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表される基を意味し、Xは水素原子またはハロゲン原子を意味し、Yはハロゲン原子または低級アルコキシ基を意味する。)
で表される化合物またはその塩を反応させることを特徴とする、式(III)
【0028】
【化8】

【0029】
(式中、R、R、XおよびYは前の定義と同じである。)
で表される化合物の製造方法に関する。
また、本発明は式(IV)
【0030】
【化9】

【0031】
で表される化合物の塩酸塩に関する。
また、本発明は式(V)
【0032】
【化10】

【0033】
で表される化合物に、塩基を添加せず酸性条件下で、塩素化試薬および式(VI)
【0034】
【化11】

【0035】
(式中、R2bは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味する。)
で表される化合物またはその塩を反応させることを特徴とする式(VII)
【0036】
【化12】

【0037】
(式中、R2bは前と同じ定義である。)
で表される化合物の製造方法に関する。
さらに、本発明は式(V)
【0038】
【化13】

【0039】
で表される化合物に、塩基を添加せず酸性条件下で、塩素化試薬および式(VIII)
【0040】
【化14】

【0041】
(式中、Rは前と同じ定義である。)
で表される化合物またはその塩を反応させることを特徴とする式(IX)
【0042】
【化15】

【0043】
(式中、Rは前と同じ定義である。)
で表される化合物の製造方法に関する。
さらに本発明は、式(V)
【0044】
【化16】

【0045】
で表される化合物に、塩基を添加せず酸性条件下で、塩素化試薬および式(VI)
【0046】
【化17】

【0047】
(式中、R2bは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味する。)
で表される化合物またはその塩を反応させ、必要に応じて得られた化合物を加水分解して式(X)
【0048】
【化18】

【0049】
(式中、R2cは水素原子、置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味する。)
で表される化合物を得、当該化合物に式(XI)
【0050】
【化19】

【0051】
(式中、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表される化合物を反応させ、次いで加水分解することを特徴とする式(XII)
【0052】
【化20】

【0053】
で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物の製造方法に関する。
さらに、本発明は式(V)
【0054】
【化21】

【0055】
で表される化合物に、塩基を添加せず酸性条件下で、塩素化試薬および式(VIII)
【0056】
【化22】

【0057】
(式中、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表される化合物またはその塩を反応させ、次いで加水分解することを特徴とする式(XII)
【0058】
【化23】

【0059】
で表される化合物、その塩またはそれらの水和物の製造方法に関する。
また、本発明は式(XIV)
【0060】
【化24】

【0061】
(式中、XおよびYは前の定義と同じである。)
で表される化合物と、式(XV)
【0062】
【化25】

【0063】
(式中、Zはハロゲン原子、フェニルチオ基、アルコキシ基またはアミノ基を意味し、R2bは前の定義と同じである。)
で表される化合物を溶媒中、塩基存在下で反応させることを特徴とする、式(XIII)
【0064】
【化26】

【0065】
(式中、X、YおよびR2bは前の定義と同じである。)
で表される化合物の製造方法に関する。
また、本発明は式(II)で表される化合物が前記方法により得られる式(XIII)で表される化合物のニトロ基を還元して得られるものである、上記方法による式(III)で表される化合物の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0066】
本発明の製造方法を用いることにより、特許文献1の一般式(I)に記載の、優れたVLA−4阻害作用に基づく抗炎症作用を示しかつ高い安全性を有する医薬化合物を効率的に製造することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0067】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明の好適な例の一つは、容易に入手可能な置換ニトロフェニル酢酸および置換ニトロベンゼンを出発物質とする下記に示す工程図からなっている。
【0068】
【化27】

【0069】
【化28】

【0070】
【化29】

【0071】
【化30】

【0072】
【化31】

【0073】
【化32】

【0074】
【化33】

【0075】
【化34】

【0076】
(式中、R2bは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味し、R2cは水素原子、置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味し、R、R、R、R、X、YおよびZは前の定義と同じである。)
【0077】
上記反応式中、式(II)の化合物には、式(5−1)の化合物および式(8)の化合物が含まれる。また式(III)の化合物には、式(9)の化合物、式(10a)の化合物および式(11)の化合物が含まれる。
これらの各工程について以下に説明する。
[工程a]
【0078】
【化35】

【0079】
本工程は、式(3)のカルボン酸を式(4)のエステルに変換する工程である。
【0080】
本工程は、カルボン酸をエステルに変換する公知の方法(『Protective Groups in Organic Synthesis,eds.by T.W.Greene and P.G.Wuts,John Wiley&Sons,Inc.,New York,1991』参照。)に従って実施すればよい。
【0081】
式(4)中、R2bは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味する。ここで、低級アルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。アラルキル基としては、フェニル−C1−6アルキル基が好ましい。また、これらのアルキル基またはアラルキル基に置換し得る基としては、1〜3個のハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。R2bとしては、好ましくはメチル基、エチル基、第三級ブチル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基を挙げることができ、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
【0082】
式(3)および(4)中、Xは水素原子またはハロゲン原子を意味し、Yはハロゲン原子または低級アルコキシ基を意味する。低級アルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。XおよびYはそれぞれ独立して、フッ素原子または塩素原子である場合が好ましく、XおよびYが共に塩素原子である場合がさらに好ましい。
[工程bおよびc]
【0083】
【化36】

【0084】
工程bは、ニトロ基をアミノ基に還元する工程で、工程cは、エステルを加水分解により、カルボン酸に変換する工程である。
式(4)、(5)および(6)中、R2b、XおよびYは工程aで示した定義と同義である。
【0085】
本発明において、式(4)で表される化合物から式(6)表される化合物を合成する方法として、式(4)中のニトロ基をアミノ基に還元して式(5−1)で表される化合物を得た後、式(5−1)中のエステルを加水分解して式(6)で表される化合物を得る方法、また、式(4)中のエステルを加水分解して式(5−2)で表される化合物を得た後、式(5−2)中のニトロ基をアミノ基に還元して式(6)で表される化合物を得る方法が挙げられる。
【0086】
工程bと同様の還元工程としては、国際公開第2002/053534号パンフレットにおいて、R2bがエチル基であるエチルエステル体の還元について、エタノール:水=1:4の溶液中、酢酸ナトリウムおよび鉄粉を加え、100℃に加熱し約1時間攪拌する方法が記載されている。
【0087】
本発明者は、R2bに対応するアルコール溶媒中、白金系還元触媒下に水素化することによって、式(4)の化合物のニトロ基のみを選択的に還元できることを見出した。これによって、操作性、反応性に問題があった鉄粉の使用が回避できるとともに、塩素の脱離反応が抑えられて、高収率で式(5−1)で表される化合物を得ることが可能となった。
反応は、出発物質である式(4)で表される化合物または式(5−2)で表される化合物を式(4)中のR2bに対応するアルコール溶媒に溶解し、白金系還元触媒下で行う。白金系還元触媒としては白金、Pt−S−炭素等が挙げられ、Pt−S−炭素が特に好ましい。Pt−S−炭素は、式(4)で表される化合物の重量に対し5%〜50%の重量で添加することが好ましく、10%〜20%で添加するのがさらに好ましい。
【0088】
水素圧は常圧〜20気圧が好ましく、通常は常圧で反応は完結する。反応温度は、0℃〜50℃の範囲であることが好ましく、室温〜50℃の範囲であることがさらに好ましい。反応時間は、1時間〜24時間でよく、通常は3時間〜10時間程度で完結する。
【0089】
反応終了後、塩酸の溶液、好ましくは塩酸のエタノール溶液を添加し、0℃〜室温でしばらく攪拌した後、析出した結晶をろ過するか、析出しない場合は溶媒を留去して析出させた結晶をろ過することにより、式(5−1)で表される化合物を塩酸塩として得ることができる。また、析出した結晶をろ過するか、析出しない場合は溶媒を留去して析出させた結晶をろ過することにより、式(6)で表されるカルボン酸を得ることができる。
【0090】
工程cは、エステルを加水分解して遊離のカルボン酸にする一般的な反応であり、アルコキシカルボニル基をカルボン酸に変換する一般的な方法(『Protective Groups in Organic Synthesis,eds.by T.W.Greene and P.G.Wuts,John Wiley&Sons,Inc.,New York,1991』参照)で実施できる。
使用する溶媒としては、メタノール、エタノール等のアルコール系溶媒を挙げることができる。この中で、メタノール、エタノールが好ましい。
加水分解試薬としては、酸、アルカリ共に使用できるが、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属水酸化物またはマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類水酸化物が挙げられる。この中で、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましい。
反応温度は室温〜溶媒の沸点の範囲が望ましい。
反応時間は、30分〜5時間で良く、通常は1時間〜2時間で完結する。
[工程d]
【0091】
【化37】

【0092】
本工程は、式(6)のカルボン酸と式(7)の化合物を縮合する工程である。式中、X、Y、RおよびRは前記と同じである。ここで、Rで示される低級アルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基が挙げられ、メチル基、エチル基等が好ましく、メチル基が特に好ましい。Rで示される低級アルキル基としては炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。アラルキル基としては、フェニル−C1−6アルキル基が好ましい。またこれらのアルキル基またはアラルキル基に置換し得る基としては、1〜3個のハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。Rとしては、メチル基、エチル基、第三級ブチル基、ベンジル基、4−メトキシベンジル基を挙げることができ、メチル基、エチル基がさらに好ましい。
【0093】
上記式(7)で表される化合物は国際公開第2002/053534号パンフレットおよびPCT/JP2004/006471明細書記載の方法により製造することができる。
【0094】
本工程は、通常の縮合反応を採用できる。
用いる溶媒は、反応を阻害するものでなければ特に制限はないが、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、またはアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができる。これらの中で、好ましくは塩化メチレン、アセトニトリルまたはN,N−ジメチルホルムアミドである。
【0095】
これらの溶媒中で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N−カルボニルジイミダゾール、またはそれらの同類物である縮合剤を使用して反応を実施すればよい。好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド中で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いて反応を実施するのがよい。
【0096】
反応温度は、−20℃から溶媒の沸点の範囲でよく、好ましくは0℃から室温の範囲の温度でよい。
【0097】
また、この反応は、トリエチルアミンまたはN,N−ジメチルアミノピリジン等の有機アミン系塩基、または1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等の活性エステル化試薬の触媒量から化学量論的等量の共存下に実施してもよい。
[工程e]
【0098】
【化38】

【0099】
本工程は、式(II)で表される化合物に、アミド結合を形成する工程である。
式(I)および(III)中、Rは、置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を意味する。その中でも、置換基を有していてもよいフェニル基、置換基を有していてもよいベンゾフラニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、置換基を有していてもよいベンゾイソチアゾリル基、置換基を有していてもよいベンゾチオフェニル基、置換基を有していてもよいインドリル基、置換基を有していてもよいインダゾリル基、置換基を有していてもよいイソキノリニル基が好ましい。Rは、結合部位は限定されないが、置換基を有していてもよいベンゾフラニル基、置換基を有していてもよいチエニル基、置換基を有していてもよいベンゾイソチアゾリル基、置換基を有していてもよいインダゾリル基、置換基を有していてもよいインドリル基の場合は、その3位で結合するものがさらに好ましく、イソキノリニル基の場合は、その1位で結合するものがさらに好ましい。
置換基は、低級アルキル基、ハロゲン原子が挙げられ、このうち炭素数1〜6のアルキル基およびハロゲン原子、特に、メチル基、塩素原子、フッ素原子およびヨウ素原子が好ましい。置換基の数および位置は限定されないが、置換基を有していてもよいヘテロアリール基がインドリル基で、置換基がメチル基である場合は、1位置換であることが好ましい。
【0100】
式(II)および(III)中、R、XおよびYは前で示した定義と同じである。ここで、Rで示される低級アルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、フェニル−C1−6アルキルオキシ基が好ましい。また、これらのアルコキシ基またはアラルキルオキシ基に置換し得る基としては、1〜3個のハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基等が挙げられる。
【0101】
式(II)の化合物には、前記式(5−1)の化合物および式(8)の化合物が含まれる。
【0102】
本工程と同様のアミド化反応については、国際公開第2002/053534号パンフレットにおいて、式(I)で表される化合物を1,2−ジクロロエタンに溶解し、氷冷下塩化オキザリルを加え、しばらく攪拌後、濃縮乾固し、得られた結晶を、1,2−ジクロロエタンに溶解し、これをRがエトキシ基であるエチルエステル体(II)とトリエチルアミンの1,2−ジクロロエタン溶液に氷冷下添加し、約10時間加熱還流して得る方法が記載されている。
【0103】
本発明者は、酸塩化物を一旦単離することなく、また、塩基を添加せず酸性条件下で塩素化試薬と反応を行うことにより、定量的に反応が進行することを見出した。
【0104】
これによって、酸塩化物を単離する工程を省略できるとともに、カルボン酸体(I)の二量体の副生を少量に抑えることが可能となった。
反応溶媒としては、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、アセトニトリルを用いることができるが、好ましくは、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン等の塩素系溶媒、トルエン、ベンゼン等の炭化水素系溶媒またはアセトニトリルである。特に、1,2−ジクロロエタン、トルエンおよびアセトニトリルが好ましい。
塩素化試薬としては、塩化オキザリル、塩化チオニル等のカルボン酸を酸塩化物に変換する際に通常使用される塩素化試薬が挙げられ、塩化オキザリルがより好ましい。
【0105】
反応を酸性条件下で行うには、工程(b)または工程(d)で得られた式(II)の化合物の塩酸塩に、あらかじめ塩素化試薬と処理した式(I)の化合物を反応させればよい。
【0106】
反応液を濃縮して酸塩化物を単離することもできるが、そのまま式(I)で表される化合物を添加することもできる。その際、N,N−ジメチルホルムアミドを式(5−1)で表される化合物の重量に対して、0.01%〜1%添加することにより、酸塩化物生成が促進される。滴下後、反応温度は室温〜溶媒の沸点までの範囲で実施すればよく、好ましくは80℃〜130℃の範囲である。
反応時間は3時間〜24時間が好ましく、通常は3時間〜6時間程度で完結する。
【0107】
式(I)で表される化合物は市販の原料を用いて、適宜置換基を導入するなどして、国際公開第2002/053534号パンフレットに記載の方法に準じて合成することができる。
[工程f]
【0108】
【化39】

【0109】
本工程は、式(9)の化合物を加水分解して、式(10)の化合物を製造する工程である。式中、R、R2b、XおよびYは前の定義と同じである。
【0110】
本工程は、工程cと同様にして通常の加水分解手段により行われる。
[工程g]
【0111】
【化40】

【0112】
本工程は、式(10a)の化合物と式(7)の化合物を縮合させて式(11)の化合物を製造する工程である。式(10a)の化合物は式(9)の化合物または式(10)の化合物のいずれかである。式中、R、R、R、XおよびYは前の定義と同じである。R2cは水素原子またはR2bを示す。−OR2cがエステルの場合、活性エステルが好ましい。
【0113】
この縮合反応は、公知のアミド化方法が採用できる。
【0114】
用いる溶媒は、反応を阻害するものでなければ特に制限はないが、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、トルエン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、またはアセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の非プロトン性極性溶媒を挙げることができる。これらの中で、好ましくは塩化メチレン、アセトニトリルまたはN,N−ジメチルホルムアミドである。
【0115】
これらの溶媒中で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N−カルボニルジイミダゾール、またはそれらの同類物である縮合剤を使用して反応を実施すればよい。好ましくは、N,N−ジメチルホルムアミド中で、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミドを用いて反応を実施するのがよい。
【0116】
反応温度は、−20℃から溶媒の沸点の範囲でよく、好ましくは0℃から室温の範囲の温度でよい。
【0117】
また、この反応は、トリエチルアミンまたはN,N−ジメチルアミノピリジン等の有機アミン系塩基、または有機アミン系塩基、および1−ヒドロキシベンゾトリアゾール等の活性エステル化試薬の触媒量から化学量論的等量の共存下に実施してもよい。
[工程h]
【0118】
【化41】

【0119】
本工程は、式(11)の化合物を加水分解して式(12)の化合物を製造する工程である。式中、R、R、R、XおよびYは前と同じ定義である。
【0120】
本工程は、工程cと同様にして通常の加水分解手段により行われる。
【0121】
本発明方法において、式(7)で表される化合物としては、式(7a)
【0122】
【化42】

【0123】
(式中、RおよびRは、前と同じ定義である。)
で表される化合物が好ましい。さらに、式(7a)中、Rがメチル基であり、Rがエチル基であるのが好ましい。
【0124】
本発明方法における各工程で得られた化合物は、単離して次の反応に供してもよいし、単離することなく次の反応に供してもよい。また、式(II)の化合物、すなわち、式(5−1)および式(8)の化合物は、塩酸塩の形態で次の反応に供するのが好ましい。
【0125】
また、式(12)の化合物は、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩等のアルカリ金属の塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属の塩またはトリエチルアミン塩、N−メチルグルカミン塩、N−ベンジルエタノールアミン塩、エタノールアミン塩、tert−ブチルアミン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩、シクロヘキシルアミン塩等の有機アミン塩等の塩の形態としてもよい。さらに水和物として単離してもよい。
[工程i]
【0126】
【化43】

【0127】
この工程(i)は、化合物(14)と化合物(15)を塩基存在下、溶媒中で反応させることによって、化合物(14)のニトロ基に対してパラ位に−CHC(O)OR2b基(ここで、R2bは前の定義と同じである)を導入する反応である。
すなわち、式(4)で表される化合物は、工程a、工程iいずれの工程によっても得ることができる。
【0128】
式(4)および(15)中、R2bはメチル基、エチル基、第三級ブチル基、またはフェニル基が好ましく、さらにメチル基、エチル基、または第三級ブチル基が好ましく、特に好ましくは第三級ブチル基である。
式(4)および(14)中、Xは水素原子またはハロゲン原子を意味し、Yはハロゲン原子または低級アルコキシ基を意味する。低級アルコキシ基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が挙げられる。XおよびYはそれぞれ独立して、塩素原子またはフッ素原子である場合が好ましく、XおよびYが共に塩素原子である場合がより好ましい。式(14)で表される化合物は、例えば、東京化成などから市販のものを購入してもよいし、Dunlop,Macrae,Tucker,J.Chem.Soc.,1672−1676(1934)に記載の方法を参考に合成してもよい。
式(15)中、Zは、脱離基を示す。脱離基としては通常用いられるものであればよく、具体的にはハロゲン原子、フェニルチオ基、アルコキシ基、アミノ基等が挙げられる。脱離基は、好ましくはハロゲン原子またはフェニルチオ基であり、より好ましくは塩素原子または臭素原子であり、さらにより好ましくは塩素原子である。式(15)で表される化合物は、例えば、東京化成などから市販のものを購入すればよい。
【0129】
本発明者らは、式(14)で表される化合物と式(15)で表される化合物と反応させると、選択性よく式(4)で表される化合物が得られるということを見出した。具体的には、式(14)で表される化合物と式(15)で表される化合物と反応させると、副産物としてニトロ基に対してオルト位が置換された式(16)
【0130】
【化44】

【0131】
(式中、R2b、XおよびYは前と同じ定義である。)
で表される化合物も得られたが、その割合は(I):(3)=約9:1であり、予想以上に化合物(4)を得ることができた。本発明者らは、式(14)で表される化合物に置換基が導入されるとすれば、ニトロ基に対してオルト位またはパラ位に導入される可能性があると考えたが、オルト位およびパラ位のいずれも隣接する置換基Xがあるために、その選択性については予想がつかなかった。
工程iは、好ましくは、以下の工程jで示される。
[工程j]
【0132】
【化45】

【0133】
本工程は、2,5−ジクロロニトロベンゼン(17)と化合物(15)を塩基存在下、溶媒中で反応させることによって、化合物(17)のニトロ基に対してパラ位に−CHC(O)OR2b基(ここで、R2bは前と同じ定義である)を導入する反応である。式中、R2bおよびZは前と同じ定義である。
【0134】
式(17)で表される2,5−ジクロロニトロベンゼンについては、Can.J.Chem.,36,238(1958)に記載されている。2,5−ジクロロニトロベンゼンは、市販のものを購入してもよいし、合成してもよい。2,5−ジクロロニトロベンゼンは、例えば、東京化成(カタログ番号D0387)から市販されており、Dunlop,Macrae,Tucker,J.Chem.Soc.,1672−1676(1934)に合成方法が記載されている。
【0135】
上記工程(i)または上記工程(j)に用いる塩基としては、第三級ブドキシナトリウム、第三級ブトキシカリウム、水酸化ナトリウム、または水酸化カリウム等が挙げられるが、これらに限定されない。上記工程(i)または上記工程(j)に用いる塩基として、好ましくは第三級ブドキシナトリウムまたは水酸化ナトリウムであり、より好ましくは第三級ブドキシナトリウムである。塩基の量は化合物(4)に対して、好ましくは2〜10当量、より好ましくは2〜3当量である。塩基は1種類のみを用いてもよいし、反応が進む限り2種類以上の塩基を組み合わせて用いてもよい。
上記工程(i)または上記工程(j)に用いる溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶媒、酢酸エチルまたはジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられるが、これらに限定されない。これらの溶媒のうちアミド系溶媒またはDMSOが好ましく、N,N−ジメチルアセトアミドがより好ましい。溶媒の量は、特に限定されないが、好ましくは化合物(4)の5〜20倍、より好ましくは化合物(4)の10〜15倍である。溶媒は1種類のみを用いてもよいし、反応が進む限り2種類以上の溶媒を組み合わせて用いてもよい。
上記工程(i)または上記工程(j)の反応温度は、使用する溶媒により異なるが、通常−20℃から30℃の範囲であり、好ましくは−10℃から0℃の範囲である。
上記工程(i)または上記工程(j)の反応時間は、通常約10分〜24時間、好ましくは約20分〜12時間、より好ましくは約30分〜3時間にわたって実質的に完了するまで行う。
【0136】
本発明方法により得られる化合物の例を次の表に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【0139】
【表3】

【0140】
【表4】

【0141】
【表5】

【0142】
【表6】

【0143】
【表7】

【0144】
【表8】

【0145】
【表9】

【0146】
【表10】

【0147】
【表11】

【実施例】
【0148】
次に、実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0149】
実施例1
(2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニル)酢酸 エチルエステル
【0150】
【化46】

【0151】
フラスコに(2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニル)酢酸50.00gに、エタノール250mL、濃硫酸2.5mLを加え、6時間加熱還流した。HPLCにて反応終了確認後、活性炭を添加し30分攪拌後、濾過した。濾液に水400mLを徐々に注加し、冷却してしばらく攪拌した。析出した結晶を濾過後、水にて洗浄し、50℃にて減圧乾燥を行って、式(20)で表される化合物50.15g(90.2%)を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.28(t,J=7.1Hz,3H),3.80(s,2H),4.21(q,J=7.1Hz,2H),7.53(s,1H),7.97(s,1H)
【0152】
実施例2
(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)酢酸 エチルエステル 塩酸塩
【0153】
【化47】

【0154】
実施例1で得た化合物50.00gに、エタノール350mL、3%Pt−S−炭素(50%WET)7.5gを加え、水素気流下室温にて7時間攪拌した。HPLCにて反応終了確認後、濾過した。濾液に1N塩酸エタノール溶液を添加し、溶媒を溜去後、アセトニトリル150mLを添加した。冷却後、析出している結晶を濾過し、アセトニトリルにて洗浄後、乾燥を行って式(21)で表される塩酸塩43.43g(84.9%)を得た。
H−NMR(DMSO)δ:1.17(t,J=7.1Hz,3H),3.60(s,2H),4.08(q,J=7.1Hz,2H),6.10(br−s,3H),6.89(s,1H),7.26(s,1H)
【0155】
実施例3
(2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニル)酢酸
【0156】
【化48】

【0157】
(1)(2,5−ジクロロ−ニトロフェニル)酢酸tert−ブチルエステル(400mg)に1N−HCl/酢酸溶液(4ml)を内温25℃以下に保ったまま加え、溶解させ4時間攪拌した。HPLCにて反応終了を確認後、該溶液に氷冷下、水30mlを加え、酢酸エチル10mlにて3回抽出し、抽出液を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過した。そして、溶媒を減圧留去し、黄色粉末として表題化合物を294mg(90%)得た。
1H−NMR(DMSO−d6、400MHz)δ:3.86(s,2H,Ph−CH−),7.96(s,1H,Ph),8.30(s,1H,Ph),12.81(br,1H,OH)
【0158】
(2)(2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニル)酢酸 エチルエステル(2.0g)にエタノール(20ml)を室温下に加え、懸濁液とした。この懸濁液に1規定の水酸化ナトリウム水溶液(10ml、1.4等量)を加えて70℃に加熱後、2時間撹拌を続けた。HPLCにて反応終了を確認後、該溶液に室温下、酢酸(0.6g、1.4等量)および水(10ml)を加え、酢酸エチル(20ml)にて2回抽出し、抽出液を2N塩酸および飽和食塩水で洗浄した。この溶液を硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過し、溶媒を減圧留去し、黄色粉末として表題化合物を1.8g(100%)得た。
実施例4
(2,5−ジクロロ−4−アミノフェニル)酢酸
【0159】
【化49】

【0160】
(2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニル)酢酸(1.0g)にエタノール(7ml)、3%Pt−S−炭素(50%Wet、150mg)を加え、水素気流下室温にて5時間撹拌した。HPLCにて反応終了を確認後、ろ過し、溶媒を減圧留去して黄褐色固形物として表題化合物0.84g(95%)を得た。
1H−NMR(DMSO−d6、400MHz)δ:3.51(s,2H,Ph−CH−),5.53(s,1H,NH),6.84(s,1H,Ph),7.23(s,1H,Ph),12.33(br,1H,OH)
実施例5
{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}酢酸 エチルエステル
【0161】
【化50】

【0162】
フラスコに前記式(I)で表される化合物のRが1−メチルインドール−3−イル基である化合物10gとトルエン150mLを加え、室温下、5.6mLの(COCl)を滴下した。その後、20μlのDMFを加え、室温下メカニカルスターラーにて1時間攪拌した。実施例2で得た化合物16.6gを加え、外温100℃〜120℃にて4時間加熱還流した。HPLCにて反応終了確認後、冷却し、ジイソプロピルエーテル(IPE)50mLを添加してしばらく攪拌した。析出した結晶を濾過し、IPEにて洗浄後、乾燥を行い、式(22)で表される標題化合物20.7g(89.5%)を得た。
H−NMR(CDCL3)δ:1.28(t,J=7.1Hz,3H),3.72(s,2H),3.89(s,3H),4.20(q,J=7.1Hz,2H),7.32−7.44(m,4H),7.80(s,1H),8.10−8.16(m,1H),8.25(s,1H),8.81(s,1H)
【0163】
実施例6
{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}酢酸
【0164】
【化51】

【0165】
フラスコに実施例5で得た化合物を20g、メタノール300mL、0.5mol/l水酸化ナトリウム200mLを加え、1.5時間加熱還流した。HPLCにて反応終了確認後、内温70℃にて酢酸14.1mLを添加し、室温になるまでしばらく攪拌した。析出した結晶を濾過し、水にて洗浄後、乾燥を行い、式(23)で表される化合物16.75g(90.0%)を得た。
H−NMR(DMSO)δ:3.74(s,2H),3.89(s,3H),7.19−7.31(m,2H),7.56(d,J=7.1Hz,1H),7.64(s,1H),7.93(s,1H,8.15(d,J=7.1Hz,1H),8.31(s,1H),9.39(s,1H),12.59(br−s,1H)
【0166】
実施例7
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル
【0167】
【化52】

【0168】
フラスコに実施例6で得た化合物25.00g、トランス−4−[(2S,4S)−4−メトキシピロリジン−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル35.00g、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール10.75g、アセトニトリル250mLを加え、攪拌下トリエチルアミン20.3mLを室温にて添加した。溶解を確認後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩17.79gを加え、室温下メカニカルスターラーにて5時間攪拌した。HPLCにて反応終了確認後、水200mLを添加した。しばらく攪拌した後、析出している結晶を濾過、水100mL、水:アセトニトリル(1:1)混液100mL、水:イソプロピルアルコール(1:1)混液100mLにて順次洗浄し50℃にて減圧乾燥を行い、式(24)で表される化合物40.27g(94.3%)[異性体0.88%]を得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.14−1.33(m,6H),1.36−1.55(m,2H),1.92−2.14(m,4H),2.15−2.43(m,2H),3.18−3.35(m,including 2s,at δ 3.30,3.33,total 8H),3.44−3.58(m,2H),3.62−4.03(series of m,including s at δ 3.86,total 8H),4.09(q,J=6.8Hz,2H),4.25(m,1H),7.19−7.45(series of m,total 4H),7.78(s,1H),8.13(m,1H),8.22(brd,J=3.2Hz,1H),8.77(d,J=7.2Hz,1H).
【0169】
実施例8
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 ナトリウム塩 5水和物
【0170】
【化53】

【0171】
(1)フラスコにメカニカルスターラーをつけ実施例7で得た化合物20.00g、イソプロピルアルコール200mL、1N NaOH(34.1mL)を加え、2.5時間過熱還流(内温62〜72℃)。HPLCにて反応終了確認後、60℃まで放冷しイソプロピルアルコール100mLを添加後、室温になるまでしばらく攪拌した後、析出している結晶を濾過、イソプロピルアルコールにて洗浄、そのまま風乾し、式(25)の化合物の粗晶19.31gを得た。(本粗晶はNa塩水和物であるが、アモルファスのため水和数が決定していない)
(2)フラスコに上記の粗晶15.00g、50%含水アセトン90mLを加え、30〜40℃にて加温溶解後、活性炭素0.75gを加え、30分攪拌した。濾過を行い、10%含水アセトン10mLにて洗浄し、濾液にアセトン360mLを加え、メカニカルスターラーを用いて、ゆっくり室温20時間攪拌した。析出している結晶を濾過し、10%含水アセトンにて洗浄後、50℃にて20時間乾燥し12.71g、室内にて、2日間調湿行い、式(5)の化合物14.18g(80.8%式(24)から)を得た。粉末X線にて結晶型を確認した。
H−NMR(DMSO−d)δ:1.09−1.43(m,4H),1.80−2.22(m,7H),3.10−4.30(series of m,including s at δ 3.89,total 12H),7.21(dd,J=7.6,7.6Hz,1H),7.28(dd,J=7.6,7.6Hz,1H),7.49and7.52(2S,total 1H),7.56(d,J=7.6Hz,1H),7.89and7.90(2S,total 1H),8.15(d,J=7.6Hz,1H),8.30(s,1H),9.37(s,1H)
【0172】
実施例9
トランス−4−[(2S,4S)−1−(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル
【0173】
【化54】

【0174】
トランス−4−[(2S,4S)−4−メトキシピロリジン−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル(1.21g,5.45mmol)、(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)酢酸(1.2g,5.45mmol)、4−ジメチルアミノピリジン(700mg,5.73mmol)および触媒量の1−ヒドロキシベンゾトリアゾールをDMF(50mL)中、室温攪拌中、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(1.25g,6.54mmol)を加え、反応混合液を室温で15時間撹拌した。反応液を氷水(100mL)に注ぎ、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を飽和食塩水洗浄(2回)、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残留物を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、クロロホルム:酢酸エチル(9:1〜4:1,v/v)流分よりトランス−4−[(2S,4S)−1−(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル式(26)(2.48g,94%)を無色固形物として得た。
融点(未補正):113−118℃
IR(ATR)cm−1:3464,3303,3182,1726,1633.
H−NMR(CDCl)δ:1.22−1.26(5H,m),1.42−1.48(2H,m),1.95−1.99(5H,m),2.03−2.08(2H,m),3.22−4.12(14H,m),6.78(1H,m),7.18(1H,m).
MS(ESI);m/z:488(M−1).
Anal.;
Calcd for C2332Cl:C,56.88;H,6.62;N,5.75.
Found:C,56.57;H,6.62;N,5.64.
【0175】
実施例10
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル
【0176】
【化55】

【0177】
1−メチルインドール−3−カルボン酸(150mg,0.86mmol)および1,2−ジクロロエタン(3mL)を氷水浴で冷却攪拌下に塩化オキザリル(0.095mL,1.07mmol)を加え、同温度で1時間攪拌した。反応液を減圧下に乾固した。得られた結晶を1,2−ジクロロエタン(3mL)に溶解し、これをトランス−4−[(2S,4S)−1−(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル(式(26))(348mg,0.714mmol)の1,2−ジクロロエタン(15mL)溶液に冷却攪拌下で加えた。添加終了後、反応混合液を10時間攪拌下に加熱還流した。反応液を冷却後、水洗、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に溶媒を留去した。得られた残留物を、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製し、クロロホルム:酢酸エチル(9:1〜3:1,v/v)流分より標題化合物(24)(350mg,76%)を結晶性粉末として得た。本方法で得られた化合物の各種スペクトラルデータは先に示した方法で得たものと一致した。
【0178】
実施例11
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[5−イオド−(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル
【0179】
【化56】

【0180】
5−イオドインドール−3−カルボン酸(370mg,1.23mmol)を1,2−ジクロロエタン(10mL)中、0℃で攪拌下に塩化オキザリル(0.135mL,1.54mmol)を加えた。反応混合液を0℃で1時間攪拌後、さらに室温で5時間攪拌した。反応液を減圧下に留去し得られた酸クロリドを次の反応に用いた。
トランス−4−〔(2S,4S)−1−(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル〕メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸エチルエステル(500mg,1.03mmol)の1,2−ジクロロエタン(30mL)溶液に、0℃で攪拌下に上記の酸クロリドの1,2−ジクロロエタン(5mL)溶液を滴下した。反応混合液をさらに加熱環流下に16時間攪拌した。反応混合液を室温に冷却後、水(20mL)を加え、クロロホルムにて抽出した。抽出液を飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウム乾燥後、減圧下に濃縮乾固した。得られた残渣をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにて精製し、クロロホルム−酢酸エチル(2:1,v/v)流分より標題化合物(27)(650mg,82%)をアモルファスとして得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.20−1.30(5H,m),1.45−1.50(2H,m),1.95−2.35(10H,m and s),3.25(1H,m),3.31 and 3.34(3H,each s),3.45−4.32(11H,series of m),7.16(1H,m),7.41(1H,m),7.60(1H,m),7.69(1H,m),8.09(1H,m),8.59(1H,m),8.74(1H,m).
【0181】
実施例12
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチル−d3−インドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル(28)
【0182】
【化57】

【0183】
1−メチル−d3−インドール−3−カルボン酸(604.0mg,3.389mmol)に1,2−ジクロロエタン(10mL)を加え、−8℃で攪拌下に塩化オキザリル(438.4μl,5.112mmol)を加えた。反応液を室温で95分間攪拌後、さらに塩化オキザリル(290.7μl,3.389mmol)を加え、室温でさらに35分間攪拌した。反応液を減圧下に濃縮乾固し、残渣を1,2−ジクロロエタン(10mL)に溶解し、これをトランス−4−〔(2S,4S)−1−(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル〕メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル(1.51g,3.098mmol)の1,2−ジクロロエタン(20mL)溶液に加え、攪拌下に11.5時間加熱還流した。反応混合液を室温に冷却し、水(20mL)を加えた後、クロロホルムにて抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾固した。得られた残渣をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにて精製しヘキサン:酢酸エチル(1:1〜1:2,v/v)流分より、標題化合物(28)(1.56g,2.409mmol,77.6%)を淡黄色アモルファスとして得た。
H−NMR(CDCl)δ:1.15−1.34(5H,m),1.35−1.55(2H,m),1.93−2.15(6H,m),2.17−2.33(1H,m),3.25(1H,m),3.31 and 3.34(total 3H,each s),3.45−3.59(2H,m),3.64−4.04(5H,m),4.10(2H,q,J=7.2Hz),4.19−4.33(1H,m),7.30−7.46(4H,m),7.80 and 7.81(total 1H,each s),8.14(1H,m),8.24(1H,m),8.77 and 8.79(total 1H,each s).
MS(ESI)m/z 647(M+1).
【0184】
実施例13
トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(インドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル(29)
【0185】
【化58】

【0186】
インドール−3−カルボン酸(172mg,1.07mmol)を1,2−ジクロロエタン(3mL)中、0℃で攪拌下に塩化オキザリル(0.106mL,1.21mmol)の1,2−ジクロロエタン(3mL)溶液を加えた。反応液を室温で1時間攪拌後、減圧下に濃縮乾固した。得られた残渣を1,2−ジクロロエタン(3mL)に溶解し、これをトランス−4−〔(2S,4S)−1−(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル〕メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル(348mg,0.714mmol)の1,2−ジクロロエタン(15mL)溶液に、0℃で攪拌下に加えた。反応混合液をさらに加熱環流下に10時間攪拌した。反応液を室温に冷却後、水(20mL)を加え、1,2−ジクロロエタンにて抽出した。抽出液を飽和食塩水洗浄、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下に濃縮乾固した。得られた残渣をシリカゲルを用いるカラムクロマトグラフィーにて精製し、クロロホルム:酢酸エチル(9:1〜3:1,v/v)流分より標題化合物(29)(340mg,76%)を結晶性粉末として得た。
融点:188−197℃.
H−NMR(CDCl)δ:1.21−1.31(5H,m),1.44−1.51(2H,m),1.97−2.36(7H,m),3.27(1H,m),3.34 and 3.36(3H,each s),3.50−4.35(11H,series of m),7.26−7.30(3H,m),7.41(1H,m),7.69(1H,m),8.06(1H,m),8.17(1H,m),8.62(1H,m),9.54(1H,m).
元素分析:Calcd for C3237Cl:C,60.95;H,5.91;N,6.60.
Found:C,60.75;H,5.83;N,6.60.
【0187】
実施例14
(1)フラスコに、(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)酢酸 エチルエステル 塩酸塩(10g,35.1mmol)を入れ、メタノール(30mL、3v/w)及び2規定水酸化ナトリウム水溶液(37.5mL、3.75v/w)を加え、約70℃で1時間撹拌した。HPLCにて原料消失を確認し反応液を放冷した。
濃塩酸(10mL、1v/w)を加え結晶を析出させ、1時間氷冷した後、析出した結晶を吸引濾過した。結晶を水30mLで洗浄した後、40℃で減圧乾燥し、4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル酢酸(7.3g、収率95%)を得た。
H−NMR(400MHz、CDOD)δ:7.17(s,1H),6.84(s,1H),4.88(brs,1H),3.59(s,2H).
【0188】
(2)トランス−4−[(2S,4S)−1−(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)アセチル−4−メトキシピロリジシ−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル
【0189】
【化59】

【0190】
(2−1)フラスコに、(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)酢酸(6g、27.3mmol)、トランス−4−[(2S,4S)−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸エチルエステル(14.4g、1.02モル当量)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール(4.43g、1.2モル当量)、アセトニトリル(120mL、20v/w)を加え、撹拌下トリエチルアミン(5.3mL、1.4モル当量)を室温にて添加した。溶解を確認後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(7.33g、1.4モル当量)を加えて撹拌した。HPLCにて反応終了確認後、水(80mL、15v/w)を添加し撹拌した。種晶を加え結晶を析出させ、しばらく撹拌し氷冷した。
析出した結晶を吸引濾過し、結晶を水:アセトニトリル混液(1:1)10mL、水20mLで順次洗浄し40℃にて減圧乾燥を行い、式(26)の化合物1晶を10.5g(収率79%、品質99%)で得た。
濾液を減圧下濃縮し、酢酸エチルで抽出する。抽出液を減圧下濃縮乾固し、アセトニトリル25mL加えて撹拌し、水20mLを添加し種晶を加え結晶を析出させ、しばらく撹拌し氷冷する。析出した結晶を吸引濾過し、結晶を水:アセトニトリル混液(1:1)2mL、水4mLで順次洗浄し40℃にて減圧乾燥を行い、式(26)の化合物2晶を1.8g(収率14%、品質96%)を得た。
H−NMR(400MHz、CDCl)δ:1.24(dt,J=7.2,4Hz,3H),1.45(t,J=12Hz,2H),1.95−2.08(m,6H),2.23(ddt,J=24.4,11.6,3.6Hz,2H),3.31(d,J=11.2Hz,3H),3.44−4.30(m,9H),4.07(d,J=8.4Hz,2H),4.10(ddd,J=14.4,7.2,2Hz,2H),6.77(d,J=5.2Hz,1H),7.17(d,J=4.8Hz,1H).
【0191】
(2−2)トランス−4−[(2S,4S)−4−メトキシピロリジン−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸エチルエステル(8.3g,29.0mmol)、(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)酢酸(7.01g,31.9mol)及びブタノール(4.52g,33.4mmol)のジメチル酢酸(75mL)懸濁液にトリエチルアミン(6.66mL,47.8mmol)を加え、反応液が均一形になった後に1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(6.37g,33.2mmol)を加えた。室温で4時間攪拌した後に水(225mL)を徐々に滴下し、さらに室温で3時間攪拌した。析出している結晶を濾取し、75%含水ジメチル酢酸(50mL)で洗浄した後に減圧乾燥し、式(26)の化合物(13.90g,純度97.1%,純度換算単離収率95.6%)を微黄色結晶として得た。
(3)トランス−4−((2S,4S)−1−{2,5−ジクロロ−4−[(1−メチルインドール−3−イル)カルボキサミド]フェニル}アセチル−4−メトキシピロリジン−2−イル)メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル
【0192】
【化60】

【0193】
(3−1)フラスコに1−メチルインドール−3−カルボン酸(400mg、2.28mmol)とトルエン(4mL、10v/w)を加え、窒素雰囲気下氷冷し、塩化オキザリル(243μL、1.2モル当量)を滴下しDMFを触媒量加え、室温にて1時間撹拌した。トリエチルアミン(413μL、1.3モル当量)を加えた後、式(26)の化合物(1.13g、1.02モル当量)を添加し、75℃にて4時間撹拌した。HPLCにて反応終了確認後、冷却してイソプロピルエーテル(7.2mL、18v/w)を加えてしばらく撹拌し、析出している結晶を濾過、イソプロピルエーテルにて洗浄し室温にて減圧乾燥を行い、式(24)の化合物(1.3g、91%)を得た。
【0194】
(3−2)1−メチルインドール−3−カルボン酸(7.01g,40.0mmol)のアセトニトリル(70mL)溶液にDMF(70mg)及び塩化チオニル(3.07mL,42.7mmol)を加え、室温で30分攪拌した後に減圧下外温50℃で溶媒を留去した。濃縮残渣にアセトニトリル(75mL)及びトランス−4−[(2S,4S)−1−(4−アミノ−2,5−ジクロロフェニル)アセチル−4−メトキシピロリジシ−2−イル]メトキシシクロヘキサン−1−カルボン酸 エチルエステル(13.0g,26.7mmol)を加えて内温65℃で2時間攪拌した。室温に冷却してアセトニトリル(50mL)及び水(130mL)を徐々に滴下し、室温で終夜攪拌した。析出している結晶を濾取し、50%含水アセトニトリル(50mL)で洗浄した後に減圧乾燥し、式(24)の化合物(15.24g,純度94.3%,純度換算単離収率86.1%)を白色結晶として得た。
実施例15
(2,5−ジクロロ−4−ニトロフェニル)酢酸エチルエステル(30−a)および2,5−ジクロロ−6−ニトロフェニル酢酸エチルエステル(30−b)の合成)
【0195】
【化61】

【0196】
第三級ブドキシナトリウム(76.6g、0.797mol)をN,N−ジメチルアセトアミド(250mL)で室温下溶解後、−10℃に冷却した。この溶液に、2,5−ジクロロニトロベンゼン(50g、0.260mol)とクロロ酢酸エチル(42.5mL、0.399mol)のN,N−ジメチルアセトアミド(100mL)混合溶液を滴下し、滴下終了後1時間撹拌を行った。反応終了後、酢酸エチルエステル(500mL)で希釈し、2規定の塩酸(400mL)を加えて分液、酢酸エチルエステル(250mL)にて抽出した。有機層を合わせ、2規定の塩酸(200mL)、水(200mL)、飽和食塩水(200mL)の順で洗浄後、減圧濃縮により暗褐色油状物87.0gを得た。この暗褐色油状物は、化合物(30−a)と化合物(30−b)の混合物であった(化合物(30−b)を約10%含有)。得られた残渣に2−プロパノール(105mL)と水(35mL)を加えた。一晩撹拌後、析出した結晶をろ過し、化合物(30−a)(44.7g、0.161mol、収率59.6%、HPLC純度100%)を黄色の結晶として得た。
化合物(30−a)のNMRデータ
H−NMR(400MHz)δ:1.29(t,3H,J=7.2Hz),3.80(s,2H),4.22(q,2H,J=7.2Hz),7.53(s,1H),7.98(s,1H)
実施例16
(2,5−ジクロロ−ニトロフェニル)酢酸tert−ブチルエステル(31)
【0197】
【化62】

【0198】
ナトリウム tert−ブトキシド(2.88g)をジメチルアセトアミド(18ml)に氷冷下溶解し、2,5−ジクロロニトロベンゼン(1.92g)、クロロ酢酸tert−ブチルエステル(2.26g)のジメチルアセトアミド(18ml)溶液を滴下し、内温5℃以下に保ったまま2時間攪拌した。該溶液に氷冷下、2N塩酸水溶液23mlを加え、tert−ブチルメチルエーテル20mlにて3回抽出し、抽出液を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムで乾燥しろ過した後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーに付し、油状物質として式(31)の化合物を2.65g(86%)得た。
H NMR(CDCl,400MHz)δ:1.49(s,9H),3.72(s,2H),7.51(s,1H),7.97(s,1H)
【0199】
実施例17
(2,5−ジクロロ−ニトロフェニル)酢酸tert−ブチルエステル(31)
リチウム tert−ブトキシド(2.4g)をジメチルアセトアミド(18ml)に氷冷下溶解し、2,5−ジクロロニトロベンゼン(1.92g)、クロロ酢酸tert−ブチルエステル(2.26g)のジメチルアセトアミド(18ml)溶液を滴下し、内温5℃以下に保ったまま2時間攪拌した。実施例1と同様の後処理をした結果、標題化合物2.71g(88%)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、Rは置換基を有していてもよいアリール基または置換基を有していてもよいヘテロアリール基を意味する。)
で表される化合物に、塩基を添加せず酸性条件下で、塩素化試薬および式(II)
【化2】

(式中、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルコキシ基、置換基を有していてもよいアラルキルオキシ基、フェノキシ基または式(a)
【化3】

(式中、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基を意味し、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表される基を意味し、Xは水素原子またはハロゲン原子を意味し、Yはハロゲン原子または低級アルコキシ基を意味する。)
で表される化合物またはその塩を反応させることを特徴とする式(III)
【化4】

(式中、R、R、XおよびYは前の定義と同じである。)
で表される化合物の製造方法。
【請求項2】
が、1−メチルインドリル基である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
塩素化試薬が、塩化オキザリルまたは塩化チオニルである請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
が、直鎖または分岐鎖の低級アルコキシ基である請求項1から3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
が、Rがメチル基であり、Rが直鎖または分岐鎖の低級アルキル基である式(a)で表される基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
Xが、塩素原子またはフッ素原子である請求項1から5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
Xが塩素原子、Yが塩素原子、Rが1−メチルインドリル基である請求項1から6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
式(IV)
【化5】

で表される化合物の塩酸塩。
【請求項9】
前記式(II)で表される化合物またはその塩が請求項8に記載の塩酸塩である請求項1から7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
式(V)
【化6】

で表される化合物に、塩基を添加せず酸性条件下で、塩素化試薬および式(VI)
【化7】

(式中、R2bは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味する。)
で表される化合物またはその塩を反応させることを特徴とする式(VII)
【化8】

(式中、R2bは前の定義と同じである。)
で表される化合物の製造方法。
【請求項11】
式(V)
【化9】

で表される化合物に、塩基を添加せず酸性条件下で、塩素化試薬および式(VIII)
【化10】

(式中、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表される化合物またはその塩を反応させることを特徴とする式(IX)
【化11】

(式中、Rは前の定義と同じである。)
で表される化合物の製造方法。
【請求項12】
式(V)
【化12】

で表される化合物に、塩基を添加せず酸性条件下で、塩素化試薬および式(VI)
【化13】

(式中、R2bは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味する。)
で表される化合物またはその塩を反応させ、必要に応じて得られた化合物を加水分解して式(X)
【化14】

(式中、R2cは水素原子、置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味する。)
で表される化合物を得、当該化合物に式(XI)
【化15】

(式中、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表される化合物を反応させ、次いで加水分解することを特徴とする式(XII)
【化16】

で表される化合物、その塩、またはそれらの水和物の製造方法。
【請求項13】
式(V)
【化17】

で表される化合物に、塩基を添加せず酸性条件下で、塩素化試薬および式(VIII)
【化18】

(式中、Rは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基または置換基を有していてもよいアラルキル基を意味する。)
で表される化合物またはその塩を反応させ、次いで加水分解することを特徴とする式(XII)
【化19】

で表される化合物、その塩またはそれらの水和物の製造方法。
【請求項14】
式(XIV)
【化20】

(式中、Xは水素原子またはハロゲン原子を意味し、Yはハロゲン原子または低級アルコキシ基を意味する。)
で表される化合物と、式(XV)
【化21】

(式中、Zはハロゲン原子、フェニルチオ基、アルコキシ基またはアミノ基を意味し、R2bは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味する。)
で表される化合物を溶媒中、塩基存在下で反応させることを特徴とする、式(XIII)
【化22】

(式中、X、YおよびR2bは前の定義と同じである。)
で表される化合物の製造方法。
【請求項15】
式(XIII)および式(XIV)中のXおよびYがそれぞれ塩素原子である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式(XIII)および式(XV)中のR2bが第三級ブチル基である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式(XIII)
【化23】

(式中、Xは水素原子またはハロゲン原子を意味し、Yはハロゲン原子または低級アルコキシ基を意味し、R2bは置換基を有していてもよい直鎖もしくは分岐鎖の低級アルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基またはフェニル基を意味する。)
で表される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項18】
式(XIII)中のXおよびYがそれぞれ塩素原子である、請求項17に記載の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項19】
式(XIII)中のR2bが第三級ブチル基である、請求項18に記載の化合物、その塩またはそれらの溶媒和物。
【請求項20】
式(II)で表される化合物が請求項14記載の方法で得られる式(XIII)で表される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物のニトロ基を還元することにより得られた化合物である請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項21】
式(VI)で表される化合物が請求項15または16に記載の方法で得られる式(XIII)で表される化合物、その塩またはそれらの溶媒和物のニトロ基を還元することにより得られた化合物である請求項10または12記載の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/063678
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【発行日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516702(P2005−516702)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019578
【国際出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【Fターム(参考)】