説明

フェルラ酸の抽出方法および疾患の予防食品および疾患の予防薬品

【課題】 米糠からフェルラ酸を容易に抽出することができるフェルラ酸の抽出方法を提供すること。
【解決手段】 米糠にエタノールを加えて振とうさせるエタノール処理過程と、前記エタノール処理過程にて得られた処理液を濾過する一次濾過処理過程と、前記一次濾過処理過程にて得られた残渣物を温熱乾燥させる温熱乾燥処理過程と、前記温熱乾燥処理過程にて得られた処理物を酵素製剤を含む溶液を用いて懸濁する酵素処理過程と、前記酵素処理過程にて得られた懸濁液を濾過する二次濾過処理過程と、前記二次濾過処理過程にて得られたフェルラ酸を主に含む抽出物を凍結乾燥させる凍結乾燥処理過程と、を含むことを特徴とするフェルラ酸の抽出方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
高血圧は心血管疾患の危険因子の1つである。我々は、米糠成分(Driselase(ドリセラーゼ(登録商標))画分とエタノール画分)が脳卒中易発症高血圧自然発症ラット(SHRSP)と正常血圧ラットWistar Kyoto(WKY)において血圧降下作用を有しているかどうかについて研究を行なった。4週令のラットを4つのグループに分け、SHRSPとWKYの2グループにはAIN93Mに準じた食餌(コントロール食)を与えた。また、残りのSHRSPの2グループには、米糠画分を餌Kgあたり60g添加した試験食(Driselase画分食、エタノール画分食)を与えた。7週令から実験終了までの間、両米糠画分試験食群では、SHRSPコントロール食群に比べ、有意な血圧低下が見られた。試験食の給餌によって、血漿アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性は有意に上昇し(Driselase画分食群10.83%、エタノール画分食群9.85%)、血漿一酸化窒素(NO)濃度が減少した。血圧の降下と血漿ACE阻害活性、血漿NO濃度は正の相関が見られた(それぞれ、r=0.627, p<0.01; r=0.828, p<0.01)。また、両試験食は腎機能を改善し、絶食時血糖を減少させた。これらのデータは、両方の米糠画分には抗炎症作用を通じて、SHRSPの血圧を降下させることが示された。
【0002】
高血圧症は心血管疾患のひとつであり、先進国において、主な死亡原因となっている。enalapril、losartan、ramiprilなどの血圧降下薬が高血圧症を軽減させるために用いられている。これらの薬剤は、アンジオテンシン変換酵素(ACE)を阻害することにより血圧を降下させている。現在、心血管疾患のリスクを減少させるような食品成分を探索する試みが行なわれている。ビタミンE、C、カルテノイドおよびポリフェノールなどの抗酸化物質は心血管疾患やその危険因子への保護作用を有していることから、多くの注目を集めている。脂質、タンパク質、ビタミン、ミネラルやポリフェノールを含むほとんどの抗酸化物質、複合糖質、植物化合物は植物の胚、およびふすま部分に存在している。
【0003】
精米の過程で、得られる米糠には、胚由来の植物化合物が含まれており、植物由来化合物の供給源として有用である。精米後にリパーゼやリポキシゲナーゼによって起こる急速な悪臭の発生により、その使用が限定されているが、安定化することにより米糠を有効利用できることができる。
【0004】
本研究では、我々は米糠の2つの画分、酵素処理(Driselase)処理画分およびエタノール抽出画分を使用した。米糠をエタノール抽出した後に得られた画分(抽出画分および残渣)のうち、抽出画分には、米糠中の不けん化物(トコトリエノール、γ-オリザノール、β-シトステロール)や不飽和脂肪酸が含まれている。残渣をDriselase(酵素製剤)で処理し、米糠に含まれている多糖類を加水分解した。この処理により多糖類中のフェルラ酸が遊離する。
【0005】
米糠には多くの脂質が含まれている(12-13%)。この脂質画分には、総コレステロール、LDLコレステロール、およびトリグリセリド量を低下させる作用を持つ、トコトリエノール、γ-オリザノール、β-シトステロール、不飽和脂肪酸が含まれている。さらに米糠は食物繊維(β-グルカン、ペクチン、ガム)を豊富に含んでいる。様々な疫学研究により、より高い可溶性食物繊維の摂取は心血管疾患のリスクの減少と相関が見られることが示されている。
【0006】
米糠は4-hydroxy-3-methoxycinnamic acid(フェルラ酸)を含んでいる。多くの植物の細胞壁に多糖類とエステル結合しているフェルラ酸が含まれている。精製されたフェルラ酸がβ-アミロイドペプチドの毒性を抑制すること、紫外線からの保護効果、抗酸化活性、ストレプトゾトシン誘導糖尿病ラットにおける血漿グルコースレベルの減少効果、高血圧自然発症ラットにおいて血圧降下作用を持つことなどが報告されている。
【0007】
最近、black riceふすまが、ウサギにおいて動脈硬化プラークの形成を阻害し、動脈8-ヒドロキシ-2-デオキシグアノシンレベルを低下させ、高コレステロール血症によって引き起こされる血清や動脈中のmalondialdehydeレベルを減少させた。また、米糠から抽出したトコトリエノールをアポリポタンパク質E欠損マウスに経口投与した場合、アテローム性動脈硬化が抑制され、血清トリグリセリドを減少させ、全コレステロール、LDLコレステロールが減少した。ヒトを対象とした研究では、米糠はLDLコレステロール、HDLコレステロール比を減少させることも示されている。以上の報告に基づいて、我々は、心血管疾患を改善する有益な効果が米糠に含まれる栄養成分と植物由来化合物によるものと仮定した。
【0008】
本実験では、米糠に血圧を減少させるため作用を有しているかどうかを検証した。SHRSPラットを用いて血圧に与える影響とその作用機構について明らかにした。
【実施例】
【0009】
本発明の実施例を実験方法を例として以下に説明する。
【0010】
先ず、米糠成分の調製について説明すると。米糠から次に示す2つの抽出物(Driselase画分、エタノール画分)を得た。まず、500gの米糠に1Lの70%エタノールを加え、2時間振とう抽出し、ろ過した(ろ液、残渣)。残渣を室温で乾燥させ、0.2mg/L Driselaseを含む10mM酢酸緩衝液500mLに懸濁し、37℃で一晩消化した。その後、ろ過し、凍結乾燥した(Driselase画分)。エタノール画分はろ液を濃縮し、凍結乾燥させたものを使用した。
【0011】
次に、動物と試験食について説明する。4週令の脳卒中易発症高血圧自然発症ラット/Izumo(SHRSP)および正常血圧のWistar Kyoto/Izumo(WKY)を使用した。3種類の試験食(コントロール食、Driselase画分食、エタノール画分食、表1を参照)をSHRSPに与えた。また、WKYにはコントロール食を与えた。(1群6匹)摂食量と体重は週に1回測定した。血圧は、血圧測定器(MK-2000、室町機械)により週に一度測定した。解剖の5日前に動物を代謝ケージに移し、24時間尿の採集を行なった。16時間絶食後、ラットをジエチルエーテル麻酔下で解剖し、血液および臓器を摘出し、分析まで-80℃で保存した。
【0012】
【表1】

【0013】
血漿および尿中のタンパク質含量、クレアチン濃度、アルブミン、グルコース濃度の測定について説明する。タンパク質含量は、Bradford法で測定した。クレアチニン、血液尿素窒素、アルブミン、グルコース濃度は、和光純薬社製の測定キットを用いて決定した。
【0014】
血漿アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害活性の測定について説明する。血漿ACE阻害活性の測定は、ChusmanとCheungの方法により行なった。150μL 5mM hippuryl-L-histidyl-L-leucine (Sigma) in 100mM borate, 100mM NaCl, pH8.3を10分間37℃でインキュベーションし、60μL血漿サンプルおよび10μL ACE(0.5mU/μL)を加え、30分間インキュベーションした。ACEにより遊離したhippuric acidを酢酸エチルで抽出し、228nmで測定した。
【0015】
血漿一酸化窒素(NO)濃度の測定について説明する。NOはGriess法により測定した。測定前に血漿サンプルは、ヘモグロビンや他のタンパク質を除くために、遠心ろ過を行なった(Amicom 100 UFC 3、7500rpm)。
【0016】
実験の結果、まず体重変化について説明する。実験食の体重増加に与える影響と各臓器重量を表2に示した。体重の増加と実験食の摂取量の比(FER)はSHRSP実験食群間で差は認められなかった。しかし、SHRSPとWKY間では、FERの違いが認められた。体重100gあたりの肝臓、心臓、腎臓重量は、WKYよりもSHRSPで大きかった。しかし、肺、脾臓、副睾丸周囲脂肪は実験群間で違いは見られなかった。
【0017】
【表2】

【0018】
実験食の収縮期血圧に与える影響について説明する。本研究の主要な目的は、米糠由来の2つの画分を含む実験食がSHRSPの血圧を減少させることができるかどうかを明確にすることである。実験食を与えたラットの収縮期血圧を図1に示した。SHRSPはWKYと比較すると5-6週令目から血圧が上昇する。Driselase画分食、エタノール画分食を与えたSHRSPは、コントロール食SHRSPと比べて7週令から実験終了時まで有意に血圧が減少していた。一方、コントロール食を与えたWKYラットの血圧は上昇しなかった。実験終了時でのそれぞれのグループの収縮期血圧は、240.17±2.70(SHRSPコントロール食)、190.83±2.65(SHRSP Driselase画分食)、190.33±10.50(SHRSPエタノール画分食)、109.17±3.08 mmHg(WKYコントロール食)であった。これらの結果は、両方の米糠由来画分がSHRSPにおいて血圧を減少させることを示している。
【0019】
血漿ACE阻害活性について説明する。ACEは副腎からのアルドステロン分泌を上昇させることによって、血管収縮機構に関与している。血圧は血漿中のACE阻害活性と相関していることが報告されている。実験食を与えたラットの血漿ACE阻害活性を図2に示した。8週間の飼育後、ACE阻害活性は、SHRSPコントロール食群でDriselase画分食群、エタノール画分食群よりも有意に低かった。ACE活性はSHRSPコントロール食群と比較すると10.83%(Driselase画分食群)、9.85%(エタノール画分食群)減少した。一方、WKYコントロール食群と、Driselase画分食群、エタノール画分食群との間には有意な差は認められなかった。以上の結果は、両米糠画分は、SHRSPの血漿ACE阻害活性を、正常血圧であるWKYと同レベルまで上昇させることを示している。
【0020】
腎機能マーカーの測定について説明する。高血圧は、末期腎臓病と呼ばれる腎不全を引き起こす原因のひとつである。血管中の余分な水分は、血圧を上昇させる。実験食の腎機能に与える影響を表3に示した。群間の血漿クレアチニン濃度には差が認められなかった。SHRSPの血中尿素窒素(BUN)、BUN/クレアチニン比は有意にSHRSPコントロール、WKYコントロール食群より低かった。両米糠画分食群の血漿アルブミンは、SHRSPコントロール食群よりも有意に低く、WKYコントロール食とは差が見られなかった。Driselase食群の血漿タンパク質濃度は、SHRSPコントロール食群に比べ有意に低かった。尿中クレアチニン濃度は、Driselase画分食群、エタノール画分食群でSHRSP,WKYコントロール食群よりも有意に低かった。尿タンパク質量は、両米糠画分食群でSHRSPコントロール食群に比べ有意に低かった。クレアチニンクリアランスは、SHRSP,WKYコントロール食群に比べ、Driselase画分食、エタノール画分食で有意に低下していた。以上の結果は、食餌中の米糠画分は、高血圧によって引き起こされる障害から、腎臓のろ過機能を保護することができると推定される。
【0021】
【表3】

【0022】
血漿NO濃度について説明する。一酸化窒素(NO)は可溶性グアニル酸シクラーゼを活性化し、cGMP濃度を増加させ、細胞内のカルシウム濃度を減少させることによって、血管平滑筋を弛緩させる。このことから、NO合成の変化は、高血圧の病因において重要な因子となっている。血漿NO濃度の測定結果を図3に示した。血漿NO濃度は、SHRSPコントロール群でDriselase画分群、エタノール画分群に比べ、高かった。
【0023】
絶食時血漿グルコース濃度について説明する。SHRSPラットにおいて米糠画分が絶食時血漿グルコース濃度を減少させるかどうかについて検証した。結果を図4に示した。実験終了時では、血漿グルコース濃度は、コントロールに比べ有意に減少し(Driselase画分食群 20.46%、エタノール画分食群 26.08%)、両米糠画分がSHRSPの絶食時血糖を減少させることが明らかになった。
【0024】
血漿および肝臓脂質パラメーターの測定について説明する。米糠画分の脂質代謝に与える影響を解析した。血漿トータルコレステロール、HDLコレステロール、LDLコレステロール、トリグリセリド、リン脂質、遊離脂肪酸の測定結果を表4に示した。SHRSPコントロール食群と比較して、SHRSP Driselase画分食群で、トータルコレステロール、LDLコレステロール、トリグリセリド濃度の有意な減少が見られた。また、心血管疾患のマーカーであるHDL/LDL比も有意に上昇した。一方、SHRSPエタノール画分食群では血漿トリグリセリド濃度のみ、SHRSPコントロール食群に比べ減少した。また、肝臓の脂質パラメーターの測定結果を表5に示した。SHRSPコントロール食群に比べ、SHRSP Driselase画分食群では、全脂質、トータルコレステロール量に変化が見られなかったのに対し、トリグリセリド、リン脂質含量の低下が観察された。一方、SHRSPエタノール画分食群では、変化が見られなかった。以上のことから、米糠、特にDriselase画分には、動脈硬化など心血管疾患の発症を抑制する活性を有すると推定される。
【0025】
【表4】

【0026】
【表5】

【0027】
考察すると、高血圧は脳卒中、冠状動脈性心臓病、腎疾患の危険因子である。高血圧をコントロールするために、通常、長期間に渡る薬物を使用する。しかし、薬剤は多くの副作用を持っている。果物、野菜や穀類をより多く摂取することは、心血管疾患の発症を減少させることと相関している。
【0028】
本研究における最も大きな知見は、米糠画分試験食を与えられたSHRSPの血圧がコントロール食と比べ降下したことである。SHRSPの血圧は、週令を経ることにより徐々に上昇する。しかし、米糠試験食は給餌3週目から実験終了時まで有意に血圧を降下させた。この現象は米糠に含まれている生物活性を有する物質(フェルラ酸など)によるものと考えられる。米糠には約0.1%のフェルラ酸が含まれている。遊離フェルラ酸をSHRに経口投与(50mg/Kg)した場合、血圧は、投与1時間で最低となり、6時間後に投与前レベルまで戻った。また10mgまたは50mg/Kg/日でフェルラ酸を含む餌で6週間飼育した場合、血圧の有意な低下が見られた。今回見られた米糠試験食による血圧低下は、ACE活性の阻害、腎機能の改善、NO産生の減少を介していると推定される。
【0029】
特定のACE阻害剤、例えばcaptoprilやenalaprilは抗高血圧剤として使用されている。しかし、注意すべき副作用が報告されている。近年、食品タンパク質由来のACE阻害ペプチドが単離され、報告されている。(インドネシア乾燥塩漬け魚、鰯筋肉、発酵大豆、ブタ骨格筋)ペプチド以外のACE阻害剤の報告は数少ない。(きのこ、アシタバ、ニンニク)本研究では、米糠の血圧降下作用が血漿においてACE活性を阻害することによって起こることを示した。さらに重要なことは、血圧の降下と血漿ACE阻害活性には正の相関が見られたことである。このことは、米糠によるACE阻害は血圧低下作用を持つことを示している。この結果は、非ペプチド性ACE阻害活性を有するニンニクの結果と一致している。ニンニクを投与した場合、有意に血清ACE阻害活性が上昇し、血圧の降下と相関が見られている。
【0030】
両米糠画分のSHRSPおよびWKYの腎機能に与える影響も解析した。腎臓は、高血圧により損傷を受ける臓器である。それゆえ、米糠が腎臓病の発症に対して、保護的な効果を持つかどうかについて評価することは重要である。今回の実験結果では、米糠の摂取により、BUN、アルブミン、タンパク質濃度、BUN/クレアチニン、クレアチンクリアランスなどの腎機能マーカーの改善が見られた。これらの結果より、米糠にはSHRSPにおいて血圧を降下させ、腎機能を改善させていることが示された。
【0031】
酸化ストレスは、高血圧、II型糖尿病、高コレステロール血症、アテローム性動脈硬化などの心血管疾患の発症や病状の進展と深く関わっている。活性酸素(ROS)はすべての有酸素種で普遍的に存在し、内因性、外因性の因子により上昇する。ROSの過剰産生は、血管内皮細胞の損傷、泡沫細胞の形成、血管平滑筋細胞の増殖、遺伝子発現、血管収縮障害、プラーク不安定化などの異なった段階において、高血圧症や冠状動脈心疾患の憎悪と関連している。主な高血圧障害であるROSの産生増加に対して、ラットの病態モデル系で、抗酸化物質やスーパーオキサイドジスムターゼ(SOD)類似物は内皮細胞の損傷を緩和し、血圧を降下させる。また、冠状動脈心疾患患者において、ACE活性の阻害は内皮細胞の機能を改善した。
【0032】
今回の実験ではSHRSPコントロール食群の血漿NO濃度は、両米糠画分群よりも高かった。12週令の実験終了時の血圧と血漿NO濃度との間で、有意な相関関係が認められた(図6)。米糠摂取による酸化ストレスの緩和はROSが仲介するNOの不活性化を減少させていることを示している。これらの結果と一致して、米糠中のポリフェノール(フェルラ酸)が抗酸化作用を持つ物質として寄与している。
【0033】
フェルラ酸に関する一連の研究で、フェルラ酸がin vivo、in vitroで抗酸化作用を持つことが示されている。遊離のフェルラ酸は、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイドアニオンを消去する活性を有し、脂質の過酸化を阻害する。フェルラ酸は、ラット肝臓ミクロソーム膜の過酸化やNIH3T3細胞におけるtert-ブチルヒドロペルオキシドと2,2'-azobis (2-amidinoprpane)で誘導した活性酸素の生成を阻害する。米糠はポリフェノールの他に、抗炎症作用を有するフラボノイドを含んでいる。morusin、kuwanon C、sanggenon Dなどのプレニル化合物に含まれるフラボノイドや、bilobetinやginkgetinなどの ビフラボノイドはリポ多糖類(LPS)処理によるNO産生を抑制する。NO産生の阻害は、誘導型NO合成酵素(iNOS)を抑制することによって行なわれるが、iNOSへの直接的な阻害ではない。iNOSによるNO産生は炎症疾患において重要な役割を果たしていることから、フラボノイドによるNO産生の阻害は少なくともin vivoでの抗炎症と免疫機能の制御系に関与していると考えられる。
【0034】
米糠は、SHRSPの絶食時血糖値の低下に関与した。多くの研究者がこれらの生理活性が、米糠中に存在する生物活性を持つ多くの微量成分の相乗的効果であることを報告している。トコフェロール、トコトリエノール、γ-オリザノール、ポリフェノール(フェルラ酸)などの抗酸化物質を含むすべての微量成分が米糠の両方の画分に含まれており、グルコースの吸収、利用などに影響することによってグルコースレベルを維持する可能性が考えられる。これらの成分は、フリーラジカル消去能を持ち、グリケーション、グリコオキシデーション、アテローム性動脈硬化症、抗脂肪血症など糖尿病合併症を改善することができる。
【0035】
結論として、我々の知見は、両方の米糠画分が、ACE活性を阻害することを介して、SHRSPにおいて上昇する血圧を降下させ、腎機能を改善し、NO産生を減少させた。
【0036】
従来、フェルラ酸は米糠からアルコール抽出によって得ていた(遊離フェルラ酸)。本発明の発明者らは、食物繊維に結合しているフェルラ酸を酵素処理により得た。この酵素抽出フェルラ酸は、血圧上昇抑制効果、コレステロール抑制作用、共に遊離フェルラ酸よりも強い活性が認められた。また、米糠からは、遊離フェルラ酸に比べ、大量に得ることができる。
【0037】
食品に含まれている生理活性物質で、食品中に強化した場合においても、製品の安全性を損なわず、生活習慣病の発症を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実験食の血圧に与える影響
【図2】実験食のACE活性に与える影響
【図3】実験食の血漿NO濃度に与える影響
【図4】実験食の絶食時血糖に与える影響
【図5】ACE阻害活性と収縮期血圧の相関
【図6】血漿NO濃度と収縮期血圧の相関

【特許請求の範囲】
【請求項1】
米糠にエタノールを加えて振とうさせるエタノール処理過程と、前記エタノール処理過程にて得られた処理液を濾過する一次濾過処理過程と、前記一次濾過処理過程にて得られた残渣物を温熱乾燥させる温熱乾燥処理過程と、前記温熱乾燥処理過程にて得られた処理物を酵素製剤を含む溶液を用いて懸濁する酵素処理過程と、前記酵素処理過程にて得られた懸濁液を濾過する二次濾過処理過程と、前記二次濾過処理過程にて得られた主にフェルラ酸を含む抽出物を凍結乾燥させる凍結乾燥処理過程と、を含むことを特徴とするフェルラ酸の抽出方法。
【請求項2】
米糠を酵素製剤を用いて酵素処理することによってフェルラ酸を抽出し、主に生活習慣や加齢などが発症及び進行に関与する疾患を予防するために、前記フェルラ酸を食品に添加したことを特徴とする疾患の予防食品。
【請求項3】
米糠を酵素製剤を用いて酵素処理することによってフェルラ酸を抽出し、主に生活習慣や加齢などが発症及び進行に関与する疾患を予防するために、前記フェルラ酸を薬品に添加したことを特徴とする疾患の予防薬品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−166834(P2006−166834A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365822(P2004−365822)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(504157024)国立大学法人東北大学 (2,297)
【出願人】(301025634)独立行政法人酒類総合研究所 (55)
【Fターム(参考)】