フォトダイオード及びフォトダイオードアレイ
【課題】シリコンフォトダイオード及びシリコンフォトダイオードアレイであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度特性を有しているフォトダイオード及びフォトダイオードアレイを提供すること。
【解決手段】フォトダイオードPD5は、P−型半導体基板20を備え、裏面入射型である。P−型半導体基板20は、互いに対向する第1及び第2主面0a,20bを有し、光感応領域21を含む。光感応領域21は、N+型不純物領域23と、P+型不純物領域25と、P−型半導体基板20においてバイアス電圧を印加した際に空乏化する領域とからなる。P−型半導体基板20の第2主面20bには、不規則な凹凸10が形成されている。P−型半導体基板20の第2主面20b側には、アキュムレーション層37が形成されており、アキュムレーション層37における、光感応領域21に対向している領域は光学的に露出している。
【解決手段】フォトダイオードPD5は、P−型半導体基板20を備え、裏面入射型である。P−型半導体基板20は、互いに対向する第1及び第2主面0a,20bを有し、光感応領域21を含む。光感応領域21は、N+型不純物領域23と、P+型不純物領域25と、P−型半導体基板20においてバイアス電圧を印加した際に空乏化する領域とからなる。P−型半導体基板20の第2主面20bには、不規則な凹凸10が形成されている。P−型半導体基板20の第2主面20b側には、アキュムレーション層37が形成されており、アキュムレーション層37における、光感応領域21に対向している領域は光学的に露出している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトダイオード及びフォトダイオードアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外の波長帯域に高い分光感度特性を有するフォトダイオードとして、化合物半導体を用いたフォトダイオードが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたフォトダイオードでは、InGaAsN、InGaAsNSb、及びInGaAsNPのいずれかからなる第1受光層と、第1受光層の吸収端より長波長の吸収端を有し、量子井戸構造からなる第2受光層と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−153311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような化合物半導体を用いたフォトダイオードは、未だ高価であり、製造工程も複雑なものとなってしまう。このため、安価で且つ製造が容易なシリコンフォトダイオードであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度を有しているものの実用化が求められている。シリコンフォトダイオードは、一般に、分光感度特性の長波長側での限界は1100nm程度ではあるものの、1000nm以上の波長帯域における分光感度特性は十分なものではなかった。
【0005】
本発明は、シリコンフォトダイオード及びシリコンフォトダイオードアレイであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度特性を有しているフォトダイオード及びフォトダイオードアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフォトダイオードは、第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有するシリコン基板を備え、シリコン基板の第1主面側には、シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域との間のpn接合によって構成されたアバランシェフォトダイオードが配置され、シリコン基板の第2主面側には、シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、少なくともアバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、シリコン基板の第2主面におけるアバランシェフォトダイオードに対向する領域は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフォトダイオードでは、第2主面における少なくともアバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成されているために、フォトダイオードに入射した光は当該領域にて反射、散乱、又は拡散されて、シリコン基板内を長い距離進む。これにより、フォトダイオード(シリコン基板)に入射した光は、その大部分がシリコン基板を透過することなく、シリコン基板で吸収されることとなる。したがって、上記フォトダイオードでは、フォトダイオードに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0008】
本発明では、シリコン基板の第2主面側にシリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されている。このため、第2主面側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、第1導電型の上記アキュムレーション層は、シリコン基板の第2主面付近で光により発生したキャリアが該第2主面でトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、第2導電型の半導体領域とシリコン基板とのpn接合へ効率的に移動し、フォトダイオードの光検出感度を向上することができる。
【0009】
本発明に係るフォトダイオードは、第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有すると共に第1主面側に第2導電型の半導体領域が形成されたシリコン基板を備え、シリコン基板には、第2主面側にシリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、第2主面における少なくとも第2導電型の半導体領域に対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、シリコン基板の第2主面における第2導電型の半導体領域に対向する領域は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るフォトダイオードでは、上述したように、フォトダイオードに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。また、シリコン基板の第2主面側に形成される第1導電型のアキュムレーション層により、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードの光検出感度を向上することができる。
【0011】
本発明に係るフォトダイオードにおいて、シリコン基板は、第2導電型の半導体領域に対応する部分が該部分の周辺部分を残して第2主面側より薄化されていてもよい。この場合、シリコン基板の第1主面及び第2主面側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードを得ることができる。
【0012】
本発明に係るフォトダイオードにおいて、第1導電型のアキュムレーション層の厚みが、不規則な上記凹凸の高低差よりも大きいことが好ましい。この場合、上述したように、アキュムレーション層による作用効果を確保することができる。
【0013】
本発明に係るフォトダイオードアレイは、第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有するシリコン基板を備え、シリコン基板の第1主面側には、シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域との間のpn接合によって構成されたアバランシェフォトダイオードが複数配置され、シリコン基板の第2主面側には、シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、少なくともアバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、シリコン基板の第2主面におけるアバランシェフォトダイオードに対向する領域は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るフォトダイオードアレイでは、上述したように、フォトダイオードアレイに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。また、シリコン基板の第2主面側に形成される第1導電型のアキュムレーション層により、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードアレイの光検出感度を向上することができる。
【0015】
本発明に係るフォトダイオードアレイにおいて、シリコン基板は、アバランシェフォトダイオードが複数配置されている部分が該部分の周辺部分を残して第2主面側より薄化されていてもよい。この場合、シリコン基板の第1主面及び第2主面側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードを得ることができる。
【0016】
本発明に係るフォトダイオードアレイにおいて、第1導電型のアキュムレーション層の厚みが、不規則な凹凸の高低差よりも大きいことが好ましい。この場合、上述したように、アキュムレーション層による作用効果を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シリコンフォトダイオード及びシリコンフォトダイオードアレイであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度特性を有しているフォトダイオード及びフォトダイオードアレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図2】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図3】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図6】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図7】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図8】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図9】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図10】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図11】第1実施形態に係るフォトダイオードの構成を示す図である。
【図12】実施例1及び比較例1における、波長に対する分光感度の変化を示す線図である。
【図13】実施例1及び比較例1における、波長に対する温度係数の変化を示す線図である。
【図14】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図15】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図16】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図17】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図18】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図19】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図20】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図21】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図22】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図23】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図24】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図25】第5実施形態に係るフォトダイオードの構成を説明するための図である。
【図26】実施例2及び比較例2における、波長に対する分光感度の変化を示す線図である。
【図27】実施例2及び比較例2における、波長に対する分光感度の変化を示す線図である。
【図28】第5実施形態の変形例に係るフォトダイオードの構成を説明するための図である。
【図29】第6実施形態に係るフォトダイオードアレイの構成を説明するための図である。
【図30】第6実施形態に係るフォトダイオードアレイの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1〜図10を参照して、第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図1〜図10は、第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0021】
まず、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第1主面1a及び第2主面1bを有するn−型半導体基板1を準備する(図1参照)。n−型半導体基板1の厚みは300μm程度であり、比抵抗は1kΩ・cm程度である。本実施形態では、「高不純物濃度」とは例えば不純物濃度が1×1017cm−3程度以上のことであって、「+」を導電型に付けて示し、「低不純物濃度」とは不純物濃度が1×1015cm−3程度以下であって「−」を導電型に付けて示すものとする。n型不純物としてはアンチモン(Sb)や砒素(As)などがあり、p型不純物としては硼素(B)などがある。
【0022】
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に、p+型半導体領域3及びn+型半導体領域5を形成する(図2参照)。p+型半導体領域3は、中央部が開口したマスクなどを用い、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からp型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。n+型半導体領域5は、周辺部領域が開口した別のマスクなどを用い、p+型半導体領域3を囲むように、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高濃度に拡散させることにより形成する。p+型半導体領域3の厚みは、例えば0.55μm程度であり、シート抵抗は、例えば44Ω/sq.である。n+型半導体領域5の厚みは、例えば1.5μm程度であり、シート抵抗は、例えば12Ω/sq.である。
【0023】
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に絶縁層7を形成する(図3参照)。絶縁層7は、SiO2からなり、n−型半導体基板1を熱酸化することによって形成される。絶縁層7の厚みは、例えば0.1μm程度である。そして、p+型半導体領域3上の絶縁層7にコンタクトホールH1を形成し、n+型半導体領域5上の絶縁層7にコンタクトホールH2を形成する。絶縁層7の代わりに、SiNからなるアンチリフレクティブ(AR)層を形成してもよい。
【0024】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b上及び絶縁層7上に、パッシベーション層9を形成する(図4参照)。パッシベーション層9は、SiNからなり、例えばプラズマCVD法により形成される。パッシベーション層9の厚みは、例えば0.1μmである。そして、n−型半導体基板1の厚みが所望の厚みとなるように、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩する(図5参照)。これにより、n−型半導体基板1の第2主面1b上に形成されたパッシベーション層9は除去され、n−型半導体基板1が露出することとなる。ここでは、研摩により露出した面も、第2主面1bとする。所望の厚みは、例えば270μmである。
【0025】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図6参照)。ここでは、図7に示されるように、n−型半導体基板1をチャンバC内に配置し、チャンバCの外側に配置されたパルスレーザ発生装置PLDからパルスレーザ光PLをn−型半導体基板1に照射する。チャンバCはガス導入部GIN及びガス排出部GOUTを有しており、不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガスなど)をガス導入部GINから導入してガス排出部GOUTから排出することにより、チャンバC内に不活性ガス流Gfが形成されている。パルスレーザ光PLを照射した際に生じる塵などが不活性ガス流GfによりチャンバC外に排出され、n−型半導体基板1への加工屑や塵などの付着を防いでいる。
【0026】
本実施形態では、パルスレーザ発生装置PLDとしてピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ発生装置を用い、第2主面1bの全面にわたってピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射している。第2主面1bはピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光に荒らされ、図8に示されるように、不規則な凹凸10が第2主面1bの全面に形成される。不規則な凹凸10は、第1主面1aに直交する方向に対して交差する面を有している。凹凸10の高低差は、例えば0.5〜10μm程度であり、凹凸10における凸部の間隔は0.5〜10μm程度である。ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光のパルス時間幅は例えば50fs〜2ps程度であり、強度は例えば4〜16GW程度であり、パルスエネルギーは例えば200〜800μJ/pulse程度である。より一般的には、ピーク強度は、3×1011〜2.5×1013(W/cm2)、フルエンスは、0.1〜1.3(J/cm2)程度である。図8は、第2主面1bに形成された不規則な凹凸10を観察したSEM画像である。
【0027】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図9参照)。ここでは、n−型半導体基板1内において第2主面1b側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高い不純物濃度となるようにイオン注入又は拡散させることにより、アキュムレーション層11を形成する。アキュムレーション層11の厚みは、例えば1μm程度である。
【0028】
次に、n−型半導体基板1を熱処理(アニール)する。ここでは、n−型半導体基板1を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1時間程度にわたって加熱する。
【0029】
次に、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図10参照)。電極13は、コンタクトホールH1内に形成され、電極15は、コンタクトホールH2内に形成される。電極13,15は、それぞれアルミニウム(Al)などからなり、厚みは例えば1μm程度である。これにより、フォトダイオードPD1が完成する。
【0030】
フォトダイオードPD1は、図10に示されるように、n−型半導体基板1を備えている。n−型半導体基板1の第1主面1a側には、p+型半導体領域3及びn+型半導体領域5が形成されており、n−型半導体基板1とp+型半導体領域3との間にはpn接合が形成されている。電極13は、コンタクトホールH1を通して、p+型半導体領域3に電気的に接触且つ接続されている。電極15は、コンタクトホールH2を通して、n+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続されている。
【0031】
n−型半導体基板1の第2主面1bには、不規則な凹凸10が形成されている。n−型半導体基板1の第2主面1b側には、アキュムレーション層11が形成されており、第2主面1bは光学的に露出している。第2主面1bが光学的に露出しているとは、第2主面1bが空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、第2主面1b上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。
【0032】
フォトダイオードPD1では、第2主面1bに不規則な凹凸10が形成されているために、図11に示されるように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、n−型半導体基板1内を長い距離進む。
【0033】
通常、Siの屈折率n=3.5に対して、空気の屈折率n=1.0である。フォトダイオードでは、光入射面に垂直な方向から光が入射した場合、フォトダイオード(シリコン基板)内で吸収されなかった光は、光入射面の裏面にて反射する光成分とフォトダイオードを透過する光成分に分かれる。フォトダイオードを透過した光は、フォトダイオードの感度には寄与しない。光入射面の裏面にて反射した光成分は、フォトダイオード内で吸収されれば、光電流となり、吸収されなかった光成分は、光入射面において、光入射面の裏面に到達した光成分と同様に、反射又は透過する。
【0034】
フォトダイオードPD1では、光入射面(第1主面1a)に垂直な方向から光Lが入射した場合、第2主面1bに形成された不規則な凹凸10に到達すると、凹凸10からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸10にて全反射される。凹凸10は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、n−型半導体基板1内部で吸収される光成分もあれば、第1主面1aや側面に到達する光成分もある。
【0035】
第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は極めて高い。第1主面1aや側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは、n−型半導体基板1の内部を長い距離進むうちに、n−型半導体基板1で吸収され、光電流として検出されることとなる。
【0036】
このように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードPD1を透過することなく、走行距離が長くされて、n−型半導体基板1で吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードPD1では、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0037】
第2主面1bに規則的な凹凸を形成した場合、第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸にて拡散されているものの、一様な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は低くなる。このため、第1主面1aや側面、更には第2主面1bにて透過する光成分が増加し、フォトダイオードに入射した光の走行距離は短くなってしまう。このため、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することは困難となる。
【0038】
ここで、第1実施形態による近赤外の波長帯域での分光感度特性の向上効果を確認するための実験を行なった。
【0039】
上述した構成を備えたフォトダイオード(実施例1と称する)と、n−型半導体基板の第2主面に不規則な凹凸を形成していないフォトダイオード(比較例1と称する)と、を作製し、それぞれの分光感度特性を調べた。実施例1と比較例1とは、パルスレーザ光の照射による不規則な凹凸の形成の点を除いて、同じ構成とされている。n−型半導体基板1のサイズは、6.5mm×6.5mmに設定した。p+型半導体領域3、すなわち光感応領域のサイズは、5.8mm×5.8mmに設定した。フォトダイオードに印加するバイアス電圧VRは、0Vに設定した。
【0040】
結果を図12に示す。図12において、実施例1の分光感度特性はT1で示され、比較例1の分光感度特性は特性T2で示されている。また、図12において、縦軸は分光感度(mA/W)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。一点鎖線にて示されている特性は、量子効率(QE)が100%となる分光感度特性を示し、破線にて示されている特性は、量子効率が50%となる分光感度特性を示している。
【0041】
図12から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例1では分光感度が0.2A/W(QE=25%)であるのに対して、実施例1では分光感度が0.6A/W(QE=72%)となっており、近赤外の波長帯域での分光感度が大幅に向上している。
【0042】
また、実施例1及び比較例1における、分光感度の温度特性についても確認した。ここでは、雰囲気温度を25℃から60℃に上昇させて分光感度特性を調べ、25℃での分光感度に対する60℃での分光感度の割合(温度係数)を求めた。結果を図13に示す。図13において、実施例1の温度係数の特性はT3で示され、比較例1の温度係数の特性は特性T4で示されている。また、図13において、縦軸は温度係数(%/℃)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。
【0043】
図13から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例1では温度係数が0.7%/℃であるのに対して、実施例1では温度係数が0.2%/℃となっており、温度依存性が低い。一般に、温度が上昇すると吸収係数の増大とバンドギャップエネルギーの減少により、分光感度が高くなる。実施例1では、室温の状態でも分光感度が十分に高いことから、温度上昇による分光感度の変化が比較例1に比して小さくなっている。
【0044】
フォトダイオードPD1では、n−型半導体基板1の第2主面1b側にアキュムレーション層11が形成されている。これにより、第2主面1b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層11は、第2主面1b付近で光により発生したキャリアが当該第2主面1bでトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、pn接合へ効率的に移動し、フォトダイオードPD1の光検出感度を更に向上することができる。
【0045】
第1実施形態では、アキュムレーション層11を形成した後に、n−型半導体基板1を熱処理している。これにより、n−型半導体基板1の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
【0046】
第1実施形態では、n−型半導体基板1を熱処理した後に、電極13,15を形成している。これにより、電極13,15に比較的融点の低い金属を用いる場合でも、熱処理により電極13,15が溶融するようなことはなく、熱処理の影響を受けることなく電極13,15を適切に形成することができる。
【0047】
第1実施形態では、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成している。これにより、不規則な凹凸10を適切で且つ容易に形成することができる。
【0048】
(第2実施形態)
図14〜図16を参照して、第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図14〜図16は、第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0049】
第2実施形態の製造方法は、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩するまでは、第1実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩して、n−型半導体基板1を所望の厚みにした後、n−型半導体基板1の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図14参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば1μm程度である。
【0050】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図15参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0051】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理する。そして、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図16参照)。これにより、フォトダイオードPD2が完成する。
【0052】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、フォトダイオードPD2に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0053】
第2実施形態では、アキュムレーション層11の厚みを、不規則な凹凸10の高低差よりも大きくしている。このため、アキュムレーション層11を形成した後に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成しても、アキュムレーション層11が確実に残ることとなる。したがって、アキュムレーション層11による作用効果を確保することができる。
【0054】
(第3実施形態)
図17〜図21を参照して、第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図17〜図21は、第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0055】
第3実施形態の製造方法は、パッシベーション層9を形成するまでは、第1実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。パッシベーション層9を形成した後、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化する(図17参照)。n−型半導体基板1の薄化は、例えば水酸化カリウム溶液やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)などを用いたアルカリエッチングによる異方性エッチングにより行なわれる。n−型半導体基板1の薄化された部分の厚みは、例えば100μm程度であり、周辺部分の厚みは、例えば300μm程度である。
【0056】
次に、n−型半導体基板1の周辺部分の厚みが所望の厚みとなるように、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩する(図18参照)。所望の厚みは、例えば270μmである。
【0057】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図19参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0058】
次に、n−型半導体基板1の薄化されている部分の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図20参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば3μm程度である。
【0059】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理した後、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去して、電極13,15を形成する(図21参照)。これにより、フォトダイオードPD3が完成する。
【0060】
第3実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様に、フォトダイオードPD3に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0061】
第3実施形態では、不規則な凹凸10を形成する前に、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化している。これにより、n−型半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードPD3を得ることができる。
【0062】
(第4実施形態)
図22〜図24を参照して、第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図22〜図24は、第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0063】
第4実施形態の製造方法は、n−型半導体基板1を薄化するまでは、第3実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩して、n−型半導体基板1を所望の厚みにした後、n−型半導体基板1の薄化されている部分の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図22参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば3μm程度である。
【0064】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図23参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0065】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理する。そして、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図24参照)。これにより、フォトダイオードPD4が完成する。
【0066】
第4実施形態においても、第1〜第3実施形態と同様に、フォトダイオードPD4に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0067】
第4実施形態では、アキュムレーション層11を形成する前に、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化している。これにより、n−型半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードPD4を得ることができる。
【0068】
(第5実施形態)
図25を参照して、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5について説明する。図25は、第5実施形態に係るフォトダイオードの構成を説明するための図である。
【0069】
フォトダイオードPD5は、波長領域が可視〜近赤外領域にある低エネルギー光を検出するためのアバランシェフォトダイオードである。フォトダイオードPD5は、P−型半導体基板20を備えている。P−型半導体基板20は、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第1主面20a及び第2主面20bを有している。P−型半導体基板20は、光感応領域21を含んでいる。
【0070】
光感応領域21は、平面視で第1主面20aの中央部に設けられている。光感応領域21は、第1主面20aから内側に厚みを有する。光感応領域21は、N+型不純物領域23と、P+型不純物領域25と、P−型半導体基板20においてバイアス電圧を印加した際に空乏化する領域と、からなる。N+型不純物領域23は、第1主面20aからP−型半導体基板20の内側に厚みを有する。N+型不純物領域23は、N+型ガードリング23aを有する。N+型ガードリング23aは、N+型不純物領域23の周端に設けられている。P+型不純物領域25は、N+型不純物領域23から更にP−型半導体基板20の内側に厚みを有する。P−型半導体基板20は、P+型拡散遮蔽領域27を有する。P+型拡散遮蔽領域27は、平面視で第1主面20aの周端にあって第1主面20aから内側に厚みを有する。P+型拡散遮蔽領域27は、光感応領域21を囲むように設けられている。
【0071】
P−型半導体基板20は、例えば硼素(B)等のP型不純物が添加されたシリコン基板である。P+型不純物領域25は、P−型半導体基板20よりもP型不純物が高濃度に添加された領域である。P+型拡散遮蔽領域27は、P+型不純物領域25よりもP型不純物が高濃度で添加された領域である。N+型不純物領域23は、例えばアンチモン(Sb)等のN型不純物が添加された領域である。N+型不純物領域23(N+型ガードリング23aを含む)及びP+型不純物領域25は、P−型半導体基板20内においてpn接合を構成している。
【0072】
フォトダイオードPD5は、第1主面20a上に積層されたパッシベーション膜29を有する。フォトダイオードPD5は、パッシベーション膜29上に設けられた電極31及び電極33を有する。パッシベーション膜29には、N+型不純物領域23上にコンタクトホールH11が設けられていると共に、P+型拡散遮蔽領域27上にコンタクトホールH12が設けられている。電極31は、コンタクトホールH11を介してN+型不純物領域23に電気的に接触且つ接続されている。電極33は、コンタクトホールH12を介してP+型拡散遮蔽領域27に電気的に接触且つ接続されている。パッシベーション膜29の素材は、例えば酸化シリコン等である。
【0073】
フォトダイオードPD5は、第2主面20b側に形成された凹部35を有する。凹部35は、P−型半導体基板20が第2主面20b側から薄化されることにより形成され、凹部35の周囲には厚い枠部が存在している。凹部35の側面は、凹部35の底面に対して鈍角を成して傾斜している。凹部35は、平面視で光感応領域21に重なるように形成されている。凹部35の底面と第1主面20aとの間の厚みは比較的小さく、例えば100〜200μm程度であり、150μm程度が好ましい。このように、第1主面20aと凹部35の底面との間の厚みが比較的小さいため、応答速度が高速化されると共に、フォトダイオードPD5に印加するバイアス電圧が低減される。
【0074】
P−型半導体基板20の第2主面20b全体には、不規則な凹凸10が形成されている。P−型半導体基板20の第2主面20b側には、アキュムレーション層37が形成されており、アキュムレーション層37における、凹部35の底面に対応する領域、すなわちアバランシェフォトダイオードを構成している光感応領域21に対向している領域は光学的に露出している。第2主面20bが光学的に露出しているとは、第2主面20bが空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、第2主面20b上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。不規則な凹凸10は、凹部35の底面のみ、すなわちアバランシェフォトダイオードとして機能する光感応領域21に対向している領域のみに形成されていてもよい。
【0075】
フォトダイオードPD5は、電極39を有する。電極39は、アキュムレーション層37上に設けられており、アキュムレーション層37に電気的に接触且つ接続されている。アキュムレーション層37における電極39が形成された領域は、光学的に露出していない。
【0076】
上記構成を有するフォトダイオードPD5は、電極31と電極39とに対し逆バイアス電圧(ブレークダウン電圧)が印加されている場合、光感応領域21に入射する光量に応じたキャリアが光感応領域21で生成される。P+型拡散遮蔽領域27の近傍で生成されたキャリアはP+型拡散遮蔽領域27に流れ込む。このため、電極31からの出力信号に生じる裾引きは、P+型拡散遮蔽領域27により低減される。
【0077】
続いて、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5の製造方法について説明する。
【0078】
まず、P−型半導体基板20を準備する。P−型半導体基板20の厚みは300μm程度である。
【0079】
次に、P−型半導体基板20の第1主面20a側に、P+型不純物領域25及びP+型拡散遮蔽領域27を形成する。P+型不純物領域25は、中央部が開口したマスクなどを用い、P−型半導体基板20内において第1主面20a側からp型不純物を高濃度にイオン注入することにより形成する。P+型拡散遮蔽領域27は、周辺部領域が開口した別のマスクなどを用い、P−型半導体基板20内において第1主面20a側からp型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。
【0080】
次に、P−型半導体基板20の第1主面20a側に、N+型ガードリング23a及びN+型不純物領域23を形成する。N+型ガードリング23aは、リング状に開口したマスクなどを用い、P−型半導体基板20内において第1主面20a側からn型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。N+型不純物領域23は、中央部が開口した別のマスクなどを用い、P−型半導体基板20内において第1主面20a側からn型不純物を高濃度にイオン注入することにより形成する。
【0081】
次に、P−型半導体基板20の第2主面20bの表面を研磨することにより平坦化する。その後、P−型半導体基板20におけるP+型不純物領域25に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化する。P−型半導体基板20の薄化は、例えばKOH水溶液やTMAHなどを用いたアルカリエッチングによる異方性エッチングにより行なわれる。P−型半導体基板20の薄化された部分の厚みは、例えば150μm程度であり、周辺部分の厚みは、例えば200μm程度である。
【0082】
次に、P−型半導体基板20の第2主面20b側に、アキュムレーション層37を形成する。ここでは、P−型半導体基板20内において第2主面20b側からp型不純物をP−型半導体基板20よりも高い不純物濃度となるようにイオン注入することにより、アキュムレーション層37を形成する。アキュムレーション層37の厚みは、例えば1.5μm程度である。
【0083】
次に、P−型半導体基板20を熱処理(アニール)する。ここでは、P−型半導体基板20を、N2ガスといった雰囲気下で、900〜1100℃程度の範囲、より好ましくは1000℃程度、0.5〜1.0時間程度、より好ましくは0.5時間程度にわたって加熱する。熱処理により、p型半導体基板20の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
【0084】
次に、P−型半導体基板20の第2主面20bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する。不規則な凹凸10は、上述した実施形態と同様に、p型半導体基板20の第2主面20bにパルスレーザ光を照射することにより、形成される。パルスレーザ光を照射するパルスレーザ発生装置は、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ発生装置を用いることができる。不規則な凹凸10は、第1主面20aに直交する方向に対して交差する面を有している。凹凸10の高低差は、例えば0.5〜10μm程度であり、凹凸10における凸部の間隔は0.5〜10μm程度である。ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光のパルス時間幅は例えば50fs〜2ps程度であり、強度は例えば4〜16GW程度であり、パルスエネルギーは例えば200〜800μJ/pulse程度である。より一般的には、ピーク強度は、3×1011〜2.5×1013(W/cm2)、フルエンスは、0.1〜1.3(J/cm2)程度である。
【0085】
次に、P−型半導体基板20を熱処理(アニール)する。ここでは、P−型半導体基板20を、N2ガスといった雰囲気下で、900〜1100℃程度の範囲、より好ましくは1000℃程度で、0.5〜1.0時間程度、より好ましくは0.5時間程度にわたって加熱する。熱処理により、乱れた結晶損傷の回復及び再結晶化を行なうことができる。
【0086】
次に、P−型半導体基板20の第1主面20a側にパッシベーション膜29を形成する。そして、パッシベーション膜29にコンタクトホールH11,H12を形成し、電極31,33を形成する。電極31は、コンタクトホールH11内に形成され、電極33は、コンタクトホールH12内に形成される。また、P−型半導体基板20の薄化された部分の周辺部分におけるアキュムレーション層37上に電極39を形成する。電極31,33は、それぞれアルミニウム(Al)などからなり、電極39は、金(Au)などからなる。これにより、フォトダイオードPD5が完成する。
【0087】
フォトダイオードPD5では、第2主面20bに不規則な凹凸10が形成されているために、フォトダイオードPD5に入射した光は凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、P−型半導体基板20内を長い距離進む。
【0088】
フォトダイオードPD5では、光入射面(第1主面20a)に垂直な方向から光が入射した場合、第2主面20bに形成された不規則な凹凸10に到達すると、凹凸10からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸10にて全反射される。凹凸10は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、P−型半導体基板20内部で吸収される光成分もあれば、第1主面20aや側面に到達する光成分もある。
【0089】
第1主面20aや側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、第1主面20aや側面に到達した光成分が第1主面20aや側面にて全反射する可能性は極めて高い。第1主面20aや側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードPD5に入射した光は、P−型半導体基板20の内部を長い距離進むうちに、P−型半導体基板20で吸収され、光電流として検出されることとなる。
【0090】
このように、フォトダイオードPD5に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードPD5を透過することなく、走行距離が長くされて、P−型半導体基板20で吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードPD5では、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0091】
ここで、第5実施形態による近赤外の波長帯域での分光感度特性の向上効果を確認するための実験を行なった。
【0092】
上述した構成を備えたフォトダイオード(実施例2と称する)と、P−型半導体基板の第2主面に不規則な凹凸を形成していないフォトダイオード(比較例2と称する)と、を作製し、それぞれの分光感度特性を調べた。実施例2と比較例2とは、パルスレーザ光の照射による不規則な凹凸の形成の点を除いて、同じ構成とされている。P−型半導体基板20のサイズは、4.24mm×4.24mmに設定した。P+型不純物領域25、すなわち光感応領域のサイズは、3mmφに設定した。フォトダイオードに印加するバイアス電圧VRは、約300Vに設定した。
【0093】
結果を図26に示す。図26において、実施例2の分光感度特性はT51で示され、比較例2の分光感度特性は特性T52で示されている。また、図26において、縦軸は分光感度(mA/W)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。図26から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例2では分光感度が4.1A/Wであるのに対して、実施例2では分光感度が7.6A/Wとなっており、近赤外の波長帯域での分光感度が大幅に向上している。
【0094】
フォトダイオードPD5では、P−型半導体基板20の第2主面20b側にアキュムレーション層37が形成されている。これにより、第2主面20b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層37は、第2主面20b付近で光により発生したキャリアが当該第2主面20bでトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、pn接合へ効率的に移動し、フォトダイオードPD5の光検出感度を更に向上することができる。
【0095】
第5実施形態では、アキュムレーション層37を形成した後に、P−型半導体基板20を熱処理している。これにより、P−型半導体基板20の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
【0096】
アキュムレーション層37は、不規則な凹凸10を形成した後に、形成されてもよい。アキュムレーション層37を形成した後に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成する場合、アキュムレーション層37の厚みを、不規則な凹凸10の高低差よりも大きく設定することが好ましい。この場合、パルスレーザ光を照射して不規則な凹凸10を形成しても、アキュムレーション層37が確実に残ることとなる。したがって、アキュムレーション層37による作用効果を確保することができる。
【0097】
第5実施形態では、P−型半導体基板20を熱処理した後に、電極31,33,39を形成している。これにより、電極31,33,39に比較的融点の低い材料を用いる場合でも、熱処理により電極31,33,39が溶融するようなことはなく、熱処理の影響を受けることなく電極31,33,39を適切に形成することができる。
【0098】
第5実施形態では、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成している。これにより、不規則な凹凸10を適切で且つ容易に形成することができる。
【0099】
第5実施形態では、P−型半導体基板20が第2主面20b側より薄化されている。これにより、P−型半導体基板20の第1主面20a及び第2主面20b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードを得ることができる。すなわち、フォトダイオードPD5は、表面入射型フォトダイオードだけでなく、裏面入射型フォトダイオードとして用いることができる。
【0100】
ここで、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5を裏面入射型フォトダイオードとして用いた場合における、近赤外の波長帯域での分光感度特性の向上効果を確認するための実験を行なった。
【0101】
上述した実施例2及び比較例2のフォトダイオードを用い、裏面から光を入射したときの分光感度特性をそれぞれ調べた。結果を図27に示す。図27において、実施例2の分光感度特性はT53で示され、比較例2の分光感度特性は特性T54で示されている。また、図27において、縦軸は分光感度(mA/W)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。図27から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例2では分光感度が1.9A/Wであるのに対して、実施例2では分光感度が5.7A/Wとなっており、近赤外の波長帯域での分光感度が大幅に向上している。
【0102】
以上のように、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5は、表面入射型及び裏面入射型にかかわらず、1064nmにおいて十分な分光感度を有している。したがって、フォトダイオードPD5は、YAGレーザー光の検出素子として用いることができる。
【0103】
ところで、アバランシェフォトダイオードにおいて、シリコンからなる半導体基板を厚く設定することにより(例えば、数百μm〜2mm程度)、近赤外の波長帯域で実用上十分な分光感度特性を有するアバランシェフォトダイオードを実現することは可能である。しかしながら、アバランシェフォトダイオードでは、空乏化のためのバイアス電圧とアバランシェ増倍のためのバイアス電圧が必要となることから、上記半導体基板の厚みを大きくした場合、極めて高いバイアス電圧を印加する必要がある。また、半導体基板が厚いと、暗電流も増加する。
【0104】
しかしながら、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5では、上述したように、第2主面20bに不規則な凹凸10が形成されていることにより、フォトダイオードPD5に入射した光の走行距離が長くされる。このため、半導体基板(P−型半導体基板20)、特に光感応領域21に対応する部分を厚くすることなく、近赤外の波長帯域で実用上十分な分光感度特性を有するフォトダイオードを実現することができる。したがって、半導体基板を厚くすることにより近赤外の波長帯域に分光感度特性を有するフォトダイオードよりも、上記フォトダイオードPD5は、低いバイアス電圧の印加で、良好な分光感度特性を得ることができる。また、暗電流の増加が抑制され、フォトダイオードPD5の検出精度が向上する。更に、P−型半導体基板20の厚みが薄いことから、フォトダイオードPD5の応答速度が向上する。
【0105】
第5実施形態に係るフォトダイオードPD5では、図28に示されるように、第2主面20b側の全領域が薄化されていてもよい。
【0106】
(第6実施形態)
図29を参照して、第6実施形態に係るフォトダイオードアレイPDAについて説明する。図29は、第6実施形態の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を説明するための図である。
【0107】
フォトダイオードアレイPDAは、P−型半導体基板20を備え、P−型半導体基板20には、アバランシェフォトダイオードとして機能する光感応領域21が複数配置されている。
【0108】
P−型半導体基板20の第2主面20b全体には、不規則な凹凸10が形成されている。すなわち、フォトダイオードアレイPDAは、アバランシェフォトダイオードとして機能する光感応領域21に対向している領域だけでなく、光感応領域21間に対向している領域にも、不規則な凹凸10が形成されている。
【0109】
第6実施形態においても、第5実施形態と同様に、フォトダイオードアレイPDAに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0110】
第6実施形態に係るフォトダイオードアレイPDAは、第5実施形態と同様に、半導体基板を厚くすることにより近赤外の波長帯域で実用上十分な分光感度特性を有するフォトダイオードアレイよりも、低いバイアス電圧の印加で、良好な分光感度特性を得ることができる。また、暗電流の増加が抑制され、フォトダイオードアレイPDAの検出精度が向上する。更に、P−型半導体基板20の厚みが薄いことから、フォトダイオードアレイPDAの応答速度が向上する。
【0111】
フォトダイオードアレイPDAでは、P−型半導体基板20の第2主面20bにおける光感応領域21間に対向している領域にも、不規則な凹凸10が形成されている。このため、光感応領域21間に入射した光Lは、図30に示されるように、第2主面20bにおける光感応領域21間に対向している領域に形成されている不規則な凹凸10にて、反射、散乱、又は拡散されて、いずれかの光感応領域21で吸収される。したがって、フォトダイオードアレイPDAでは、光感応領域21間において検出感度が低下することはなく、検出感度が向上する。
【0112】
フォトダイオードアレイPDAも、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5と同じく、YAGレーザー光の検出素子として用いることができる。
【0113】
フォトダイオードアレイPDAは、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5と同様に、第2主面20b側の全領域が薄化されていてもよい。また、フォトダイオードアレイPDAは、表面入射型及び裏面入射型のいずれのフォトダイオードアレイとして用いることができる。
【0114】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0115】
第1〜第4実施形態では、第2主面1bの全面にわたって、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成しているが、これに限られない。例えば、n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域のみに、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成してもよい。第5〜第6実施形態でも、光感応領域21に対向する領域のみに、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成してもよい。
【0116】
第1〜第4実施形態では、電極15をn−型半導体基板1の第1主面1a側に形成されたn+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続しているが、これに限られない。例えば、電極15をn−型半導体基板1の第2主面1b側に形成されたアキュムレーション層11に電気的に接触且つ接続してもよい。この場合、n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域外に、電極15を形成することが好ましい。n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域に電極15を形成すると、第2主面1bに形成されている不規則な凹凸10が電極15により塞がれ、近赤外の波長帯域における分光感度が低下するという事象が生じるためである。第5〜第6実施形態でも、上述した事項と同じことが言える。
【0117】
本実施形態に係るフォトダイオードPD1〜PD5及びフォトダイオードアレイPDAにおけるp型及びn型の各導電型を上述したものとは逆になるよう入れ替えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、半導体光検出素子及び光検出装置に利用できる。
【符号の説明】
【0119】
1…n−型半導体基板、1a…第1主面、1b…第2主面、3…P+型半導体領域、5…n+型半導体領域、10…不規則な凹凸、11…アキュムレーション層、13,15…電極、20…P−型半導体基板、20a…第1主面、20b…第2主面、21…光感応領域、23…N+型不純物領域、25…P+型不純物領域、37…アキュムレーション層、PL…パルスレーザ光、PD1〜PD5…フォトダイオード、PDA…フォトダイオードアレイ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトダイオード及びフォトダイオードアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外の波長帯域に高い分光感度特性を有するフォトダイオードとして、化合物半導体を用いたフォトダイオードが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたフォトダイオードでは、InGaAsN、InGaAsNSb、及びInGaAsNPのいずれかからなる第1受光層と、第1受光層の吸収端より長波長の吸収端を有し、量子井戸構造からなる第2受光層と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−153311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような化合物半導体を用いたフォトダイオードは、未だ高価であり、製造工程も複雑なものとなってしまう。このため、安価で且つ製造が容易なシリコンフォトダイオードであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度を有しているものの実用化が求められている。シリコンフォトダイオードは、一般に、分光感度特性の長波長側での限界は1100nm程度ではあるものの、1000nm以上の波長帯域における分光感度特性は十分なものではなかった。
【0005】
本発明は、シリコンフォトダイオード及びシリコンフォトダイオードアレイであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度特性を有しているフォトダイオード及びフォトダイオードアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフォトダイオードは、第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有するシリコン基板を備え、シリコン基板の第1主面側には、シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域との間のpn接合によって構成されたアバランシェフォトダイオードが配置され、シリコン基板の第2主面側には、シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、少なくともアバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、シリコン基板の第2主面におけるアバランシェフォトダイオードに対向する領域は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフォトダイオードでは、第2主面における少なくともアバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成されているために、フォトダイオードに入射した光は当該領域にて反射、散乱、又は拡散されて、シリコン基板内を長い距離進む。これにより、フォトダイオード(シリコン基板)に入射した光は、その大部分がシリコン基板を透過することなく、シリコン基板で吸収されることとなる。したがって、上記フォトダイオードでは、フォトダイオードに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0008】
本発明では、シリコン基板の第2主面側にシリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されている。このため、第2主面側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、第1導電型の上記アキュムレーション層は、シリコン基板の第2主面付近で光により発生したキャリアが該第2主面でトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、第2導電型の半導体領域とシリコン基板とのpn接合へ効率的に移動し、フォトダイオードの光検出感度を向上することができる。
【0009】
本発明に係るフォトダイオードは、第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有すると共に第1主面側に第2導電型の半導体領域が形成されたシリコン基板を備え、シリコン基板には、第2主面側にシリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、第2主面における少なくとも第2導電型の半導体領域に対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、シリコン基板の第2主面における第2導電型の半導体領域に対向する領域は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0010】
本発明に係るフォトダイオードでは、上述したように、フォトダイオードに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。また、シリコン基板の第2主面側に形成される第1導電型のアキュムレーション層により、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードの光検出感度を向上することができる。
【0011】
本発明に係るフォトダイオードにおいて、シリコン基板は、第2導電型の半導体領域に対応する部分が該部分の周辺部分を残して第2主面側より薄化されていてもよい。この場合、シリコン基板の第1主面及び第2主面側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードを得ることができる。
【0012】
本発明に係るフォトダイオードにおいて、第1導電型のアキュムレーション層の厚みが、不規則な上記凹凸の高低差よりも大きいことが好ましい。この場合、上述したように、アキュムレーション層による作用効果を確保することができる。
【0013】
本発明に係るフォトダイオードアレイは、第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有するシリコン基板を備え、シリコン基板の第1主面側には、シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域との間のpn接合によって構成されたアバランシェフォトダイオードが複数配置され、シリコン基板の第2主面側には、シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、少なくともアバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、シリコン基板の第2主面におけるアバランシェフォトダイオードに対向する領域は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0014】
本発明に係るフォトダイオードアレイでは、上述したように、フォトダイオードアレイに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。また、シリコン基板の第2主面側に形成される第1導電型のアキュムレーション層により、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードアレイの光検出感度を向上することができる。
【0015】
本発明に係るフォトダイオードアレイにおいて、シリコン基板は、アバランシェフォトダイオードが複数配置されている部分が該部分の周辺部分を残して第2主面側より薄化されていてもよい。この場合、シリコン基板の第1主面及び第2主面側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードを得ることができる。
【0016】
本発明に係るフォトダイオードアレイにおいて、第1導電型のアキュムレーション層の厚みが、不規則な凹凸の高低差よりも大きいことが好ましい。この場合、上述したように、アキュムレーション層による作用効果を確保することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シリコンフォトダイオード及びシリコンフォトダイオードアレイであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度特性を有しているフォトダイオード及びフォトダイオードアレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図2】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図3】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図6】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図7】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図8】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図9】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図10】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図11】第1実施形態に係るフォトダイオードの構成を示す図である。
【図12】実施例1及び比較例1における、波長に対する分光感度の変化を示す線図である。
【図13】実施例1及び比較例1における、波長に対する温度係数の変化を示す線図である。
【図14】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図15】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図16】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図17】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図18】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図19】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図20】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図21】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図22】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図23】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図24】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図25】第5実施形態に係るフォトダイオードの構成を説明するための図である。
【図26】実施例2及び比較例2における、波長に対する分光感度の変化を示す線図である。
【図27】実施例2及び比較例2における、波長に対する分光感度の変化を示す線図である。
【図28】第5実施形態の変形例に係るフォトダイオードの構成を説明するための図である。
【図29】第6実施形態に係るフォトダイオードアレイの構成を説明するための図である。
【図30】第6実施形態に係るフォトダイオードアレイの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
(第1実施形態)
図1〜図10を参照して、第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図1〜図10は、第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0021】
まず、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第1主面1a及び第2主面1bを有するn−型半導体基板1を準備する(図1参照)。n−型半導体基板1の厚みは300μm程度であり、比抵抗は1kΩ・cm程度である。本実施形態では、「高不純物濃度」とは例えば不純物濃度が1×1017cm−3程度以上のことであって、「+」を導電型に付けて示し、「低不純物濃度」とは不純物濃度が1×1015cm−3程度以下であって「−」を導電型に付けて示すものとする。n型不純物としてはアンチモン(Sb)や砒素(As)などがあり、p型不純物としては硼素(B)などがある。
【0022】
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に、p+型半導体領域3及びn+型半導体領域5を形成する(図2参照)。p+型半導体領域3は、中央部が開口したマスクなどを用い、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からp型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。n+型半導体領域5は、周辺部領域が開口した別のマスクなどを用い、p+型半導体領域3を囲むように、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高濃度に拡散させることにより形成する。p+型半導体領域3の厚みは、例えば0.55μm程度であり、シート抵抗は、例えば44Ω/sq.である。n+型半導体領域5の厚みは、例えば1.5μm程度であり、シート抵抗は、例えば12Ω/sq.である。
【0023】
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に絶縁層7を形成する(図3参照)。絶縁層7は、SiO2からなり、n−型半導体基板1を熱酸化することによって形成される。絶縁層7の厚みは、例えば0.1μm程度である。そして、p+型半導体領域3上の絶縁層7にコンタクトホールH1を形成し、n+型半導体領域5上の絶縁層7にコンタクトホールH2を形成する。絶縁層7の代わりに、SiNからなるアンチリフレクティブ(AR)層を形成してもよい。
【0024】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b上及び絶縁層7上に、パッシベーション層9を形成する(図4参照)。パッシベーション層9は、SiNからなり、例えばプラズマCVD法により形成される。パッシベーション層9の厚みは、例えば0.1μmである。そして、n−型半導体基板1の厚みが所望の厚みとなるように、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩する(図5参照)。これにより、n−型半導体基板1の第2主面1b上に形成されたパッシベーション層9は除去され、n−型半導体基板1が露出することとなる。ここでは、研摩により露出した面も、第2主面1bとする。所望の厚みは、例えば270μmである。
【0025】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図6参照)。ここでは、図7に示されるように、n−型半導体基板1をチャンバC内に配置し、チャンバCの外側に配置されたパルスレーザ発生装置PLDからパルスレーザ光PLをn−型半導体基板1に照射する。チャンバCはガス導入部GIN及びガス排出部GOUTを有しており、不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガスなど)をガス導入部GINから導入してガス排出部GOUTから排出することにより、チャンバC内に不活性ガス流Gfが形成されている。パルスレーザ光PLを照射した際に生じる塵などが不活性ガス流GfによりチャンバC外に排出され、n−型半導体基板1への加工屑や塵などの付着を防いでいる。
【0026】
本実施形態では、パルスレーザ発生装置PLDとしてピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ発生装置を用い、第2主面1bの全面にわたってピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射している。第2主面1bはピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光に荒らされ、図8に示されるように、不規則な凹凸10が第2主面1bの全面に形成される。不規則な凹凸10は、第1主面1aに直交する方向に対して交差する面を有している。凹凸10の高低差は、例えば0.5〜10μm程度であり、凹凸10における凸部の間隔は0.5〜10μm程度である。ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光のパルス時間幅は例えば50fs〜2ps程度であり、強度は例えば4〜16GW程度であり、パルスエネルギーは例えば200〜800μJ/pulse程度である。より一般的には、ピーク強度は、3×1011〜2.5×1013(W/cm2)、フルエンスは、0.1〜1.3(J/cm2)程度である。図8は、第2主面1bに形成された不規則な凹凸10を観察したSEM画像である。
【0027】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図9参照)。ここでは、n−型半導体基板1内において第2主面1b側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高い不純物濃度となるようにイオン注入又は拡散させることにより、アキュムレーション層11を形成する。アキュムレーション層11の厚みは、例えば1μm程度である。
【0028】
次に、n−型半導体基板1を熱処理(アニール)する。ここでは、n−型半導体基板1を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1時間程度にわたって加熱する。
【0029】
次に、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図10参照)。電極13は、コンタクトホールH1内に形成され、電極15は、コンタクトホールH2内に形成される。電極13,15は、それぞれアルミニウム(Al)などからなり、厚みは例えば1μm程度である。これにより、フォトダイオードPD1が完成する。
【0030】
フォトダイオードPD1は、図10に示されるように、n−型半導体基板1を備えている。n−型半導体基板1の第1主面1a側には、p+型半導体領域3及びn+型半導体領域5が形成されており、n−型半導体基板1とp+型半導体領域3との間にはpn接合が形成されている。電極13は、コンタクトホールH1を通して、p+型半導体領域3に電気的に接触且つ接続されている。電極15は、コンタクトホールH2を通して、n+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続されている。
【0031】
n−型半導体基板1の第2主面1bには、不規則な凹凸10が形成されている。n−型半導体基板1の第2主面1b側には、アキュムレーション層11が形成されており、第2主面1bは光学的に露出している。第2主面1bが光学的に露出しているとは、第2主面1bが空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、第2主面1b上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。
【0032】
フォトダイオードPD1では、第2主面1bに不規則な凹凸10が形成されているために、図11に示されるように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、n−型半導体基板1内を長い距離進む。
【0033】
通常、Siの屈折率n=3.5に対して、空気の屈折率n=1.0である。フォトダイオードでは、光入射面に垂直な方向から光が入射した場合、フォトダイオード(シリコン基板)内で吸収されなかった光は、光入射面の裏面にて反射する光成分とフォトダイオードを透過する光成分に分かれる。フォトダイオードを透過した光は、フォトダイオードの感度には寄与しない。光入射面の裏面にて反射した光成分は、フォトダイオード内で吸収されれば、光電流となり、吸収されなかった光成分は、光入射面において、光入射面の裏面に到達した光成分と同様に、反射又は透過する。
【0034】
フォトダイオードPD1では、光入射面(第1主面1a)に垂直な方向から光Lが入射した場合、第2主面1bに形成された不規則な凹凸10に到達すると、凹凸10からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸10にて全反射される。凹凸10は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、n−型半導体基板1内部で吸収される光成分もあれば、第1主面1aや側面に到達する光成分もある。
【0035】
第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は極めて高い。第1主面1aや側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは、n−型半導体基板1の内部を長い距離進むうちに、n−型半導体基板1で吸収され、光電流として検出されることとなる。
【0036】
このように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードPD1を透過することなく、走行距離が長くされて、n−型半導体基板1で吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードPD1では、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0037】
第2主面1bに規則的な凹凸を形成した場合、第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸にて拡散されているものの、一様な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は低くなる。このため、第1主面1aや側面、更には第2主面1bにて透過する光成分が増加し、フォトダイオードに入射した光の走行距離は短くなってしまう。このため、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することは困難となる。
【0038】
ここで、第1実施形態による近赤外の波長帯域での分光感度特性の向上効果を確認するための実験を行なった。
【0039】
上述した構成を備えたフォトダイオード(実施例1と称する)と、n−型半導体基板の第2主面に不規則な凹凸を形成していないフォトダイオード(比較例1と称する)と、を作製し、それぞれの分光感度特性を調べた。実施例1と比較例1とは、パルスレーザ光の照射による不規則な凹凸の形成の点を除いて、同じ構成とされている。n−型半導体基板1のサイズは、6.5mm×6.5mmに設定した。p+型半導体領域3、すなわち光感応領域のサイズは、5.8mm×5.8mmに設定した。フォトダイオードに印加するバイアス電圧VRは、0Vに設定した。
【0040】
結果を図12に示す。図12において、実施例1の分光感度特性はT1で示され、比較例1の分光感度特性は特性T2で示されている。また、図12において、縦軸は分光感度(mA/W)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。一点鎖線にて示されている特性は、量子効率(QE)が100%となる分光感度特性を示し、破線にて示されている特性は、量子効率が50%となる分光感度特性を示している。
【0041】
図12から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例1では分光感度が0.2A/W(QE=25%)であるのに対して、実施例1では分光感度が0.6A/W(QE=72%)となっており、近赤外の波長帯域での分光感度が大幅に向上している。
【0042】
また、実施例1及び比較例1における、分光感度の温度特性についても確認した。ここでは、雰囲気温度を25℃から60℃に上昇させて分光感度特性を調べ、25℃での分光感度に対する60℃での分光感度の割合(温度係数)を求めた。結果を図13に示す。図13において、実施例1の温度係数の特性はT3で示され、比較例1の温度係数の特性は特性T4で示されている。また、図13において、縦軸は温度係数(%/℃)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。
【0043】
図13から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例1では温度係数が0.7%/℃であるのに対して、実施例1では温度係数が0.2%/℃となっており、温度依存性が低い。一般に、温度が上昇すると吸収係数の増大とバンドギャップエネルギーの減少により、分光感度が高くなる。実施例1では、室温の状態でも分光感度が十分に高いことから、温度上昇による分光感度の変化が比較例1に比して小さくなっている。
【0044】
フォトダイオードPD1では、n−型半導体基板1の第2主面1b側にアキュムレーション層11が形成されている。これにより、第2主面1b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層11は、第2主面1b付近で光により発生したキャリアが当該第2主面1bでトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、pn接合へ効率的に移動し、フォトダイオードPD1の光検出感度を更に向上することができる。
【0045】
第1実施形態では、アキュムレーション層11を形成した後に、n−型半導体基板1を熱処理している。これにより、n−型半導体基板1の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
【0046】
第1実施形態では、n−型半導体基板1を熱処理した後に、電極13,15を形成している。これにより、電極13,15に比較的融点の低い金属を用いる場合でも、熱処理により電極13,15が溶融するようなことはなく、熱処理の影響を受けることなく電極13,15を適切に形成することができる。
【0047】
第1実施形態では、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成している。これにより、不規則な凹凸10を適切で且つ容易に形成することができる。
【0048】
(第2実施形態)
図14〜図16を参照して、第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図14〜図16は、第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0049】
第2実施形態の製造方法は、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩するまでは、第1実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩して、n−型半導体基板1を所望の厚みにした後、n−型半導体基板1の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図14参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば1μm程度である。
【0050】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図15参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0051】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理する。そして、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図16参照)。これにより、フォトダイオードPD2が完成する。
【0052】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、フォトダイオードPD2に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0053】
第2実施形態では、アキュムレーション層11の厚みを、不規則な凹凸10の高低差よりも大きくしている。このため、アキュムレーション層11を形成した後に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成しても、アキュムレーション層11が確実に残ることとなる。したがって、アキュムレーション層11による作用効果を確保することができる。
【0054】
(第3実施形態)
図17〜図21を参照して、第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図17〜図21は、第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0055】
第3実施形態の製造方法は、パッシベーション層9を形成するまでは、第1実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。パッシベーション層9を形成した後、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化する(図17参照)。n−型半導体基板1の薄化は、例えば水酸化カリウム溶液やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)などを用いたアルカリエッチングによる異方性エッチングにより行なわれる。n−型半導体基板1の薄化された部分の厚みは、例えば100μm程度であり、周辺部分の厚みは、例えば300μm程度である。
【0056】
次に、n−型半導体基板1の周辺部分の厚みが所望の厚みとなるように、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩する(図18参照)。所望の厚みは、例えば270μmである。
【0057】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図19参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0058】
次に、n−型半導体基板1の薄化されている部分の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図20参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば3μm程度である。
【0059】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理した後、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去して、電極13,15を形成する(図21参照)。これにより、フォトダイオードPD3が完成する。
【0060】
第3実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様に、フォトダイオードPD3に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0061】
第3実施形態では、不規則な凹凸10を形成する前に、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化している。これにより、n−型半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードPD3を得ることができる。
【0062】
(第4実施形態)
図22〜図24を参照して、第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図22〜図24は、第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0063】
第4実施形態の製造方法は、n−型半導体基板1を薄化するまでは、第3実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩して、n−型半導体基板1を所望の厚みにした後、n−型半導体基板1の薄化されている部分の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図22参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば3μm程度である。
【0064】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図23参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0065】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理する。そして、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図24参照)。これにより、フォトダイオードPD4が完成する。
【0066】
第4実施形態においても、第1〜第3実施形態と同様に、フォトダイオードPD4に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0067】
第4実施形態では、アキュムレーション層11を形成する前に、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化している。これにより、n−型半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードPD4を得ることができる。
【0068】
(第5実施形態)
図25を参照して、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5について説明する。図25は、第5実施形態に係るフォトダイオードの構成を説明するための図である。
【0069】
フォトダイオードPD5は、波長領域が可視〜近赤外領域にある低エネルギー光を検出するためのアバランシェフォトダイオードである。フォトダイオードPD5は、P−型半導体基板20を備えている。P−型半導体基板20は、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第1主面20a及び第2主面20bを有している。P−型半導体基板20は、光感応領域21を含んでいる。
【0070】
光感応領域21は、平面視で第1主面20aの中央部に設けられている。光感応領域21は、第1主面20aから内側に厚みを有する。光感応領域21は、N+型不純物領域23と、P+型不純物領域25と、P−型半導体基板20においてバイアス電圧を印加した際に空乏化する領域と、からなる。N+型不純物領域23は、第1主面20aからP−型半導体基板20の内側に厚みを有する。N+型不純物領域23は、N+型ガードリング23aを有する。N+型ガードリング23aは、N+型不純物領域23の周端に設けられている。P+型不純物領域25は、N+型不純物領域23から更にP−型半導体基板20の内側に厚みを有する。P−型半導体基板20は、P+型拡散遮蔽領域27を有する。P+型拡散遮蔽領域27は、平面視で第1主面20aの周端にあって第1主面20aから内側に厚みを有する。P+型拡散遮蔽領域27は、光感応領域21を囲むように設けられている。
【0071】
P−型半導体基板20は、例えば硼素(B)等のP型不純物が添加されたシリコン基板である。P+型不純物領域25は、P−型半導体基板20よりもP型不純物が高濃度に添加された領域である。P+型拡散遮蔽領域27は、P+型不純物領域25よりもP型不純物が高濃度で添加された領域である。N+型不純物領域23は、例えばアンチモン(Sb)等のN型不純物が添加された領域である。N+型不純物領域23(N+型ガードリング23aを含む)及びP+型不純物領域25は、P−型半導体基板20内においてpn接合を構成している。
【0072】
フォトダイオードPD5は、第1主面20a上に積層されたパッシベーション膜29を有する。フォトダイオードPD5は、パッシベーション膜29上に設けられた電極31及び電極33を有する。パッシベーション膜29には、N+型不純物領域23上にコンタクトホールH11が設けられていると共に、P+型拡散遮蔽領域27上にコンタクトホールH12が設けられている。電極31は、コンタクトホールH11を介してN+型不純物領域23に電気的に接触且つ接続されている。電極33は、コンタクトホールH12を介してP+型拡散遮蔽領域27に電気的に接触且つ接続されている。パッシベーション膜29の素材は、例えば酸化シリコン等である。
【0073】
フォトダイオードPD5は、第2主面20b側に形成された凹部35を有する。凹部35は、P−型半導体基板20が第2主面20b側から薄化されることにより形成され、凹部35の周囲には厚い枠部が存在している。凹部35の側面は、凹部35の底面に対して鈍角を成して傾斜している。凹部35は、平面視で光感応領域21に重なるように形成されている。凹部35の底面と第1主面20aとの間の厚みは比較的小さく、例えば100〜200μm程度であり、150μm程度が好ましい。このように、第1主面20aと凹部35の底面との間の厚みが比較的小さいため、応答速度が高速化されると共に、フォトダイオードPD5に印加するバイアス電圧が低減される。
【0074】
P−型半導体基板20の第2主面20b全体には、不規則な凹凸10が形成されている。P−型半導体基板20の第2主面20b側には、アキュムレーション層37が形成されており、アキュムレーション層37における、凹部35の底面に対応する領域、すなわちアバランシェフォトダイオードを構成している光感応領域21に対向している領域は光学的に露出している。第2主面20bが光学的に露出しているとは、第2主面20bが空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、第2主面20b上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。不規則な凹凸10は、凹部35の底面のみ、すなわちアバランシェフォトダイオードとして機能する光感応領域21に対向している領域のみに形成されていてもよい。
【0075】
フォトダイオードPD5は、電極39を有する。電極39は、アキュムレーション層37上に設けられており、アキュムレーション層37に電気的に接触且つ接続されている。アキュムレーション層37における電極39が形成された領域は、光学的に露出していない。
【0076】
上記構成を有するフォトダイオードPD5は、電極31と電極39とに対し逆バイアス電圧(ブレークダウン電圧)が印加されている場合、光感応領域21に入射する光量に応じたキャリアが光感応領域21で生成される。P+型拡散遮蔽領域27の近傍で生成されたキャリアはP+型拡散遮蔽領域27に流れ込む。このため、電極31からの出力信号に生じる裾引きは、P+型拡散遮蔽領域27により低減される。
【0077】
続いて、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5の製造方法について説明する。
【0078】
まず、P−型半導体基板20を準備する。P−型半導体基板20の厚みは300μm程度である。
【0079】
次に、P−型半導体基板20の第1主面20a側に、P+型不純物領域25及びP+型拡散遮蔽領域27を形成する。P+型不純物領域25は、中央部が開口したマスクなどを用い、P−型半導体基板20内において第1主面20a側からp型不純物を高濃度にイオン注入することにより形成する。P+型拡散遮蔽領域27は、周辺部領域が開口した別のマスクなどを用い、P−型半導体基板20内において第1主面20a側からp型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。
【0080】
次に、P−型半導体基板20の第1主面20a側に、N+型ガードリング23a及びN+型不純物領域23を形成する。N+型ガードリング23aは、リング状に開口したマスクなどを用い、P−型半導体基板20内において第1主面20a側からn型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。N+型不純物領域23は、中央部が開口した別のマスクなどを用い、P−型半導体基板20内において第1主面20a側からn型不純物を高濃度にイオン注入することにより形成する。
【0081】
次に、P−型半導体基板20の第2主面20bの表面を研磨することにより平坦化する。その後、P−型半導体基板20におけるP+型不純物領域25に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化する。P−型半導体基板20の薄化は、例えばKOH水溶液やTMAHなどを用いたアルカリエッチングによる異方性エッチングにより行なわれる。P−型半導体基板20の薄化された部分の厚みは、例えば150μm程度であり、周辺部分の厚みは、例えば200μm程度である。
【0082】
次に、P−型半導体基板20の第2主面20b側に、アキュムレーション層37を形成する。ここでは、P−型半導体基板20内において第2主面20b側からp型不純物をP−型半導体基板20よりも高い不純物濃度となるようにイオン注入することにより、アキュムレーション層37を形成する。アキュムレーション層37の厚みは、例えば1.5μm程度である。
【0083】
次に、P−型半導体基板20を熱処理(アニール)する。ここでは、P−型半導体基板20を、N2ガスといった雰囲気下で、900〜1100℃程度の範囲、より好ましくは1000℃程度、0.5〜1.0時間程度、より好ましくは0.5時間程度にわたって加熱する。熱処理により、p型半導体基板20の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
【0084】
次に、P−型半導体基板20の第2主面20bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する。不規則な凹凸10は、上述した実施形態と同様に、p型半導体基板20の第2主面20bにパルスレーザ光を照射することにより、形成される。パルスレーザ光を照射するパルスレーザ発生装置は、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ発生装置を用いることができる。不規則な凹凸10は、第1主面20aに直交する方向に対して交差する面を有している。凹凸10の高低差は、例えば0.5〜10μm程度であり、凹凸10における凸部の間隔は0.5〜10μm程度である。ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光のパルス時間幅は例えば50fs〜2ps程度であり、強度は例えば4〜16GW程度であり、パルスエネルギーは例えば200〜800μJ/pulse程度である。より一般的には、ピーク強度は、3×1011〜2.5×1013(W/cm2)、フルエンスは、0.1〜1.3(J/cm2)程度である。
【0085】
次に、P−型半導体基板20を熱処理(アニール)する。ここでは、P−型半導体基板20を、N2ガスといった雰囲気下で、900〜1100℃程度の範囲、より好ましくは1000℃程度で、0.5〜1.0時間程度、より好ましくは0.5時間程度にわたって加熱する。熱処理により、乱れた結晶損傷の回復及び再結晶化を行なうことができる。
【0086】
次に、P−型半導体基板20の第1主面20a側にパッシベーション膜29を形成する。そして、パッシベーション膜29にコンタクトホールH11,H12を形成し、電極31,33を形成する。電極31は、コンタクトホールH11内に形成され、電極33は、コンタクトホールH12内に形成される。また、P−型半導体基板20の薄化された部分の周辺部分におけるアキュムレーション層37上に電極39を形成する。電極31,33は、それぞれアルミニウム(Al)などからなり、電極39は、金(Au)などからなる。これにより、フォトダイオードPD5が完成する。
【0087】
フォトダイオードPD5では、第2主面20bに不規則な凹凸10が形成されているために、フォトダイオードPD5に入射した光は凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、P−型半導体基板20内を長い距離進む。
【0088】
フォトダイオードPD5では、光入射面(第1主面20a)に垂直な方向から光が入射した場合、第2主面20bに形成された不規則な凹凸10に到達すると、凹凸10からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸10にて全反射される。凹凸10は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、P−型半導体基板20内部で吸収される光成分もあれば、第1主面20aや側面に到達する光成分もある。
【0089】
第1主面20aや側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、第1主面20aや側面に到達した光成分が第1主面20aや側面にて全反射する可能性は極めて高い。第1主面20aや側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードPD5に入射した光は、P−型半導体基板20の内部を長い距離進むうちに、P−型半導体基板20で吸収され、光電流として検出されることとなる。
【0090】
このように、フォトダイオードPD5に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードPD5を透過することなく、走行距離が長くされて、P−型半導体基板20で吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードPD5では、近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0091】
ここで、第5実施形態による近赤外の波長帯域での分光感度特性の向上効果を確認するための実験を行なった。
【0092】
上述した構成を備えたフォトダイオード(実施例2と称する)と、P−型半導体基板の第2主面に不規則な凹凸を形成していないフォトダイオード(比較例2と称する)と、を作製し、それぞれの分光感度特性を調べた。実施例2と比較例2とは、パルスレーザ光の照射による不規則な凹凸の形成の点を除いて、同じ構成とされている。P−型半導体基板20のサイズは、4.24mm×4.24mmに設定した。P+型不純物領域25、すなわち光感応領域のサイズは、3mmφに設定した。フォトダイオードに印加するバイアス電圧VRは、約300Vに設定した。
【0093】
結果を図26に示す。図26において、実施例2の分光感度特性はT51で示され、比較例2の分光感度特性は特性T52で示されている。また、図26において、縦軸は分光感度(mA/W)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。図26から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例2では分光感度が4.1A/Wであるのに対して、実施例2では分光感度が7.6A/Wとなっており、近赤外の波長帯域での分光感度が大幅に向上している。
【0094】
フォトダイオードPD5では、P−型半導体基板20の第2主面20b側にアキュムレーション層37が形成されている。これにより、第2主面20b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層37は、第2主面20b付近で光により発生したキャリアが当該第2主面20bでトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、pn接合へ効率的に移動し、フォトダイオードPD5の光検出感度を更に向上することができる。
【0095】
第5実施形態では、アキュムレーション層37を形成した後に、P−型半導体基板20を熱処理している。これにより、P−型半導体基板20の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
【0096】
アキュムレーション層37は、不規則な凹凸10を形成した後に、形成されてもよい。アキュムレーション層37を形成した後に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成する場合、アキュムレーション層37の厚みを、不規則な凹凸10の高低差よりも大きく設定することが好ましい。この場合、パルスレーザ光を照射して不規則な凹凸10を形成しても、アキュムレーション層37が確実に残ることとなる。したがって、アキュムレーション層37による作用効果を確保することができる。
【0097】
第5実施形態では、P−型半導体基板20を熱処理した後に、電極31,33,39を形成している。これにより、電極31,33,39に比較的融点の低い材料を用いる場合でも、熱処理により電極31,33,39が溶融するようなことはなく、熱処理の影響を受けることなく電極31,33,39を適切に形成することができる。
【0098】
第5実施形態では、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成している。これにより、不規則な凹凸10を適切で且つ容易に形成することができる。
【0099】
第5実施形態では、P−型半導体基板20が第2主面20b側より薄化されている。これにより、P−型半導体基板20の第1主面20a及び第2主面20b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードを得ることができる。すなわち、フォトダイオードPD5は、表面入射型フォトダイオードだけでなく、裏面入射型フォトダイオードとして用いることができる。
【0100】
ここで、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5を裏面入射型フォトダイオードとして用いた場合における、近赤外の波長帯域での分光感度特性の向上効果を確認するための実験を行なった。
【0101】
上述した実施例2及び比較例2のフォトダイオードを用い、裏面から光を入射したときの分光感度特性をそれぞれ調べた。結果を図27に示す。図27において、実施例2の分光感度特性はT53で示され、比較例2の分光感度特性は特性T54で示されている。また、図27において、縦軸は分光感度(mA/W)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。図27から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例2では分光感度が1.9A/Wであるのに対して、実施例2では分光感度が5.7A/Wとなっており、近赤外の波長帯域での分光感度が大幅に向上している。
【0102】
以上のように、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5は、表面入射型及び裏面入射型にかかわらず、1064nmにおいて十分な分光感度を有している。したがって、フォトダイオードPD5は、YAGレーザー光の検出素子として用いることができる。
【0103】
ところで、アバランシェフォトダイオードにおいて、シリコンからなる半導体基板を厚く設定することにより(例えば、数百μm〜2mm程度)、近赤外の波長帯域で実用上十分な分光感度特性を有するアバランシェフォトダイオードを実現することは可能である。しかしながら、アバランシェフォトダイオードでは、空乏化のためのバイアス電圧とアバランシェ増倍のためのバイアス電圧が必要となることから、上記半導体基板の厚みを大きくした場合、極めて高いバイアス電圧を印加する必要がある。また、半導体基板が厚いと、暗電流も増加する。
【0104】
しかしながら、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5では、上述したように、第2主面20bに不規則な凹凸10が形成されていることにより、フォトダイオードPD5に入射した光の走行距離が長くされる。このため、半導体基板(P−型半導体基板20)、特に光感応領域21に対応する部分を厚くすることなく、近赤外の波長帯域で実用上十分な分光感度特性を有するフォトダイオードを実現することができる。したがって、半導体基板を厚くすることにより近赤外の波長帯域に分光感度特性を有するフォトダイオードよりも、上記フォトダイオードPD5は、低いバイアス電圧の印加で、良好な分光感度特性を得ることができる。また、暗電流の増加が抑制され、フォトダイオードPD5の検出精度が向上する。更に、P−型半導体基板20の厚みが薄いことから、フォトダイオードPD5の応答速度が向上する。
【0105】
第5実施形態に係るフォトダイオードPD5では、図28に示されるように、第2主面20b側の全領域が薄化されていてもよい。
【0106】
(第6実施形態)
図29を参照して、第6実施形態に係るフォトダイオードアレイPDAについて説明する。図29は、第6実施形態の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を説明するための図である。
【0107】
フォトダイオードアレイPDAは、P−型半導体基板20を備え、P−型半導体基板20には、アバランシェフォトダイオードとして機能する光感応領域21が複数配置されている。
【0108】
P−型半導体基板20の第2主面20b全体には、不規則な凹凸10が形成されている。すなわち、フォトダイオードアレイPDAは、アバランシェフォトダイオードとして機能する光感応領域21に対向している領域だけでなく、光感応領域21間に対向している領域にも、不規則な凹凸10が形成されている。
【0109】
第6実施形態においても、第5実施形態と同様に、フォトダイオードアレイPDAに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0110】
第6実施形態に係るフォトダイオードアレイPDAは、第5実施形態と同様に、半導体基板を厚くすることにより近赤外の波長帯域で実用上十分な分光感度特性を有するフォトダイオードアレイよりも、低いバイアス電圧の印加で、良好な分光感度特性を得ることができる。また、暗電流の増加が抑制され、フォトダイオードアレイPDAの検出精度が向上する。更に、P−型半導体基板20の厚みが薄いことから、フォトダイオードアレイPDAの応答速度が向上する。
【0111】
フォトダイオードアレイPDAでは、P−型半導体基板20の第2主面20bにおける光感応領域21間に対向している領域にも、不規則な凹凸10が形成されている。このため、光感応領域21間に入射した光Lは、図30に示されるように、第2主面20bにおける光感応領域21間に対向している領域に形成されている不規則な凹凸10にて、反射、散乱、又は拡散されて、いずれかの光感応領域21で吸収される。したがって、フォトダイオードアレイPDAでは、光感応領域21間において検出感度が低下することはなく、検出感度が向上する。
【0112】
フォトダイオードアレイPDAも、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5と同じく、YAGレーザー光の検出素子として用いることができる。
【0113】
フォトダイオードアレイPDAは、第5実施形態に係るフォトダイオードPD5と同様に、第2主面20b側の全領域が薄化されていてもよい。また、フォトダイオードアレイPDAは、表面入射型及び裏面入射型のいずれのフォトダイオードアレイとして用いることができる。
【0114】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0115】
第1〜第4実施形態では、第2主面1bの全面にわたって、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成しているが、これに限られない。例えば、n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域のみに、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成してもよい。第5〜第6実施形態でも、光感応領域21に対向する領域のみに、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成してもよい。
【0116】
第1〜第4実施形態では、電極15をn−型半導体基板1の第1主面1a側に形成されたn+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続しているが、これに限られない。例えば、電極15をn−型半導体基板1の第2主面1b側に形成されたアキュムレーション層11に電気的に接触且つ接続してもよい。この場合、n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域外に、電極15を形成することが好ましい。n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域に電極15を形成すると、第2主面1bに形成されている不規則な凹凸10が電極15により塞がれ、近赤外の波長帯域における分光感度が低下するという事象が生じるためである。第5〜第6実施形態でも、上述した事項と同じことが言える。
【0117】
本実施形態に係るフォトダイオードPD1〜PD5及びフォトダイオードアレイPDAにおけるp型及びn型の各導電型を上述したものとは逆になるよう入れ替えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明は、半導体光検出素子及び光検出装置に利用できる。
【符号の説明】
【0119】
1…n−型半導体基板、1a…第1主面、1b…第2主面、3…P+型半導体領域、5…n+型半導体領域、10…不規則な凹凸、11…アキュムレーション層、13,15…電極、20…P−型半導体基板、20a…第1主面、20b…第2主面、21…光感応領域、23…N+型不純物領域、25…P+型不純物領域、37…アキュムレーション層、PL…パルスレーザ光、PD1〜PD5…フォトダイオード、PDA…フォトダイオードアレイ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有するシリコン基板を備え、
前記シリコン基板の前記第1主面側には、前記シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域との間のpn接合によって構成されたアバランシェフォトダイオードが配置され、
前記シリコン基板の前記第2主面側には、前記シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、少なくとも前記アバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、
前記シリコン基板の前記第2主面における前記アバランシェフォトダイオードに対向する前記領域は、光学的に露出し、
少なくとも前記アバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成された前記第2主面が光入射面とされて、前記第2主面から入射した光が前記シリコン基板内を進む、裏面入射型であることを特徴とするフォトダイオード。
【請求項2】
前記シリコン基板は、第2導電型の前記半導体領域に対応する部分が該部分の周辺部分を残して前記第2主面側より薄化されていることを特徴とする請求項1に記載のフォトダイオード。
【請求項3】
第1導電型の前記アキュムレーション層の厚みが、不規則な前記凹凸の高低差よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトダイオード。
【請求項4】
前記第2主面から入射し、前記シリコン基板内を進む光が、不規則な前記凹凸により反射、散乱、又は拡散されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフォトダイオード。
【請求項5】
第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有するシリコン基板を備え、
前記シリコン基板の前記第1主面側には、前記シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域との間のpn接合によって構成されたアバランシェフォトダイオードが複数配置され、
前記シリコン基板の前記第2主面側には、前記シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、少なくとも前記アバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、
前記シリコン基板の前記第2主面における前記アバランシェフォトダイオードに対向する前記領域は、光学的に露出し、
少なくとも前記アバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成された前記第2主面が光入射面とされて、前記第2主面から入射した光が前記シリコン基板内を進む、裏面入射型であることを特徴とするフォトダイオードアレイ。
【請求項6】
前記シリコン基板は、前記アバランシェフォトダイオードが複数配置されている部分が該部分の周辺部分を残して前記第2主面側より薄化されていることを特徴とする請求項5に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項7】
第1導電型の前記アキュムレーション層の厚みが、不規則な前記凹凸の高低差よりも大きいことを特徴とする請求項5又は6に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項8】
前記第2主面から入射し、前記シリコン基板内を進む光が、不規則な前記凹凸により反射、散乱、又は拡散されることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項1】
第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有するシリコン基板を備え、
前記シリコン基板の前記第1主面側には、前記シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域との間のpn接合によって構成されたアバランシェフォトダイオードが配置され、
前記シリコン基板の前記第2主面側には、前記シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、少なくとも前記アバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、
前記シリコン基板の前記第2主面における前記アバランシェフォトダイオードに対向する前記領域は、光学的に露出し、
少なくとも前記アバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成された前記第2主面が光入射面とされて、前記第2主面から入射した光が前記シリコン基板内を進む、裏面入射型であることを特徴とするフォトダイオード。
【請求項2】
前記シリコン基板は、第2導電型の前記半導体領域に対応する部分が該部分の周辺部分を残して前記第2主面側より薄化されていることを特徴とする請求項1に記載のフォトダイオード。
【請求項3】
第1導電型の前記アキュムレーション層の厚みが、不規則な前記凹凸の高低差よりも大きいことを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトダイオード。
【請求項4】
前記第2主面から入射し、前記シリコン基板内を進む光が、不規則な前記凹凸により反射、散乱、又は拡散されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフォトダイオード。
【請求項5】
第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有するシリコン基板を備え、
前記シリコン基板の前記第1主面側には、前記シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型の半導体領域と第2導電型の半導体領域との間のpn接合によって構成されたアバランシェフォトダイオードが複数配置され、
前記シリコン基板の前記第2主面側には、前記シリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、少なくとも前記アバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、
前記シリコン基板の前記第2主面における前記アバランシェフォトダイオードに対向する前記領域は、光学的に露出し、
少なくとも前記アバランシェフォトダイオードに対向する領域に不規則な凹凸が形成された前記第2主面が光入射面とされて、前記第2主面から入射した光が前記シリコン基板内を進む、裏面入射型であることを特徴とするフォトダイオードアレイ。
【請求項6】
前記シリコン基板は、前記アバランシェフォトダイオードが複数配置されている部分が該部分の周辺部分を残して前記第2主面側より薄化されていることを特徴とする請求項5に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項7】
第1導電型の前記アキュムレーション層の厚みが、不規則な前記凹凸の高低差よりも大きいことを特徴とする請求項5又は6に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項8】
前記第2主面から入射し、前記シリコン基板内を進む光が、不規則な前記凹凸により反射、散乱、又は拡散されることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のフォトダイオードアレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図8】
【公開番号】特開2013−65910(P2013−65910A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−6065(P2013−6065)
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2009−136426(P2009−136426)の分割
【原出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2009−136426(P2009−136426)の分割
【原出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
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