説明

フレキシブルケーブルおよびそれを用いた電子機器および携帯端末装置

【課題】フレームグランドを接続しまたシールドを行うための専用のフレキシブルケーブルを省略することができ、部品点数および実装のための作業工数を低減することのできるフレキシブルケーブルを提供すること。
【解決手段】複数の導体DUが絶縁体ZTの中に配設され導体DUの両端部がコネクタに接続されるように構成されたフレキシブルケーブル41であって、絶縁体ZTの中にグランド層GUが設けられ、グランド層GUは、導体DUの端部がコネクタに接続されたときに当該コネクタをシールドするよう折り返し可能な折返しグランド部44a,bを有しており、折返しグランド部44a,bの少なくとも一方の面においてグランド層GUが露出してフレームグランドとして接続することが可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド効果を向上させたフレキシブルケーブルおよびそれを用いた電子機器、特に携帯端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話機、PDA、またはノートパソコンなどの携帯端末装置において、内部の配線のためにフレキシブルケーブルがしばしば用いられている。特に、2つの筐体がヒンジによって回動可能に連結された折り畳み式の携帯端末装置では、2つの筐体にそれぞれ設けられたプリント基板の間の配線のためにフレキシブルケーブルを用いることは必須である(特許文献1)。
【0003】
フレキシブルケーブルは、通常、複数の導体が柔軟な絶縁体の中に配設されて構成されている。複数のフレキシブルケーブルを重ねて用いたり、1つのフレキシブルケーブルを2つに折り曲げて2重にして用いることもある。また、不要な電波の輻射をノイズの発生を抑制するために、シールド用のフレキシブルケーブルを重ねて用いることがある。
【0004】
図18は従来のフレキシブルケーブル91の平面図、図19はフレキシブルケーブル90,91を用いた従来の携帯電話機1jの一部の内部構造を示す斜視図、図20は図19におけるフレキシブルケーブル90,91の積層状態を示す側面図である。
【0005】
図18において、フレキシブルケーブル91は、複数の導体DUが絶縁体ZTの中に配設され、導体DUの両端部がコネクタCN1,2に接続するための接続端子ST1,2となっている。導体DUは、2つの導体群DU1,DU2に分割され、それぞれの導体群DU1,DU2およびそれらを絶縁する絶縁体ZT1,ZT2が折り返し点PK1,2において折り返されることによって、互いに重なるようになっている。
【0006】
図19において、送話器側SGの筐体KTSに設けられたプリント基板92aに実装されたコネクタCN1と、受話器側JGの筐体KTGに設けられたプリント基板92bに実装されたコネクタCN2との接続のために、2つのフレキシブルケーブル91、および1つのフレキシブルケーブル90が積層された状態で用いられている。
【0007】
つまり、図20によく示されるように、2つ折りにされた2つのフレキシブルケーブル91,91が重ねられ、その上にグランド用のフレキシブルケーブル90が重ねられている。フレキシブルケーブル90は、その絶縁体とほぼ等しい幅のベタパターンを有しており、それぞれの端部において、それぞれのプリント基板92a,bなどの端子に半田付けされ、両者のフレームグランド(FG)を互いに接続している。このようなフレキシブルケーブルを使用した携帯電話機の例として、市販された富士通社製「F882iES」がある。
【特許文献1】特開2001−119460
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上に説明したように、送話器側SGと受話器側JGとを接続するために、コネクタCN1,2間を接続するフレキシブルケーブル91の他に、フレームグランドを接続しまたシールドを行うための専用のフレキシブルケーブル90を並行して設ける必要があった。
【0009】
そのため、部品点数が多くなって実装のスペースが大きくなるとともに実装のための作業工数が多くなり、コストの増大に繋がっていた。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、フレームグランドを接続しまたシールドを行うための専用のフレキシブルケーブルを省略することができ、部品点数および実装のための作業工数を低減することのできるフレキシブルケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るフレキシブルケーブルは、複数の導体が絶縁体の中に配設され前記導体の両端部がコネクタに接続されるように構成されたフレキシブルケーブルであって、前記絶縁体の中にグランド層が設けられ、前記グランド層は、前記導体の端部がコネクタに接続された状態で当該コネクタをシールドするよう折り返し可能な折返しグランド部を有しており、前記折返しグランド部の少なくとも一方の面において前記グランド層が露出してフレームグランドとして接続することが可能となっている。
【0012】
折り返し可能な折返しグランド部が設けられることにより、導体の端部がコネクタに接続されたときに当該コネクタをシールドすることができる。また、グランド層が露出してフレームグランドとして接続することが可能であることにより、フレキシブルケーブルによって、信号線のコネクタ接続とともに、筐体またはシールド板などに直接的にフレームグランドの接続を行える。
【0013】
前記折返しグランド部を折り返したときに前記コネクタに対向する面とは反対側の面において、前記グランド層が露出するようにしてもよい。このようにすると、プリント基板などに実装したときに、グランド層の筐体またはシールド板などへの接続が容易である。
【0014】
前記絶縁体は、前記導体および前記グランド層の一方の側の面を覆う第1の絶縁体層および他方の側の面を覆う第2の絶縁体層を含むように、また、前記第2の絶縁体層の上に銀ペーストが塗布され、かつ前記銀ペーストは前記第2の絶縁体層に設けられた穴を介して前記グランド層と電気的に接続されるように、それぞれ構成してもよい。
【0015】
このように構成すると、グランド層と銀ペースト層とが一体となることによってグランド層が強化され、より安定的なフレームグランドを得ることができる。また、グランド層を銀ペースト層で接続することができるので、グランド層のパターン形成が容易となる。
【0016】
分岐グランド部を形成することにより、信号ラインのためのコネクタ接続とともに、分岐グランド部によってフレームグランドを半田付けによって接続することができる。
【0017】
前記分岐グランド部の少なくとも1つを、前記折返しグランド部に設けるようにしてもよい。これによると、分岐グランド部をコネクタの近辺に接続し易くなり、安定したフレームグランドを得やすい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、フレームグランドを接続しまたシールドを行うための専用のフレキシブルケーブルを省略することができ、部品点数および実装のための作業工数を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は本発明の一実施形態に係る携帯電話機1の外観を示す正面図、図2は図1の携帯電話機1の左側面図、図3は携帯電話機1を折り畳んだ状態の正面図、図4は携帯電話機1を折り畳んだ状態の左側面図、図5は携帯電話機1を折り畳んだ状態の平面図、図6は携帯電話機1を折り畳んだ状態の背面図である。
【0020】
図1〜図6において、本実施形態の携帯電話機1は、送話器側(固定側)SGと受話器側(可動側)JGとがヒンジHJによって回動可能に連結された折り畳み式のものである。送話器側SGの筐体KTSは、表面に操作部SBが設けられたフロントケース11、および、フロントケース11の裏面側に接して配置されたリアケ−ス12からなる。フロントケース11およびリアケ−ス12は、それぞれポリカーボネートまたはABS樹脂などの合成樹脂の成形(モールディング)によって製作される。なお、後述するフロントケース31およびリアケ−ス32も同様に樹脂成形によって製作される。
【0021】
操作部SBは、電話番号やその他の情報を入力するための種々の操作ボタン20が、フロントケース11に設けられた穴から表面(前面)に突出する状態で配列されており、操作ボタンを押すことによって後述するプリント基板25に設けられた接点やセンサなどがそれを検知するように構成されている。フロントケース11の操作部SBの下には、ユーザの音声を内部のマイクロホンに伝えるための音声入力口21が設けられている。
【0022】
図6によく示されるように、リアケ−ス12には、スピーカの出力する音声を外部に伝えるための音声出力口22、およびストラップを取り付けるためのストラップ係止部23などが設けられている。また、リアケ−ス12の内部には電池収納部RDが設けられ、その表面は着脱が可能な電池蓋24となっている。フロントケース11とリアケ−ス12とは、リアケ−ス12の側から挿入されてネジ込まれた4つのネジ19によって一体化されている。
【0023】
また、受話器側JGの筐体KTJは、フロントケース31、およびフロントケース31の裏面側に接して配置されたリアケ−ス32からなる。フロントケース31の表面には、カラーLCDからなるメインディスプレイ33が設けられ、その上方に内部の受話用スピーカの出力する音声を外部に伝えるための音声出力口34が設けられている。リアケ−ス32には、内蔵されたカメラのレンズ窓35が設けられている。
【0024】
次に、携帯電話機1の筐体KTの構造について説明する。
【0025】
図7は携帯電話機1の送話器側SGの筐体KTSを分解して示す斜視図、図8は携帯電話機1の受話器側JGの筐体KTGを分解して示す斜視図である。
【0026】
図7に示されるように、送話器側SGのフロントケース11の内部にはプリント基板25が配置されている。プリント基板25の背面側(リアケ−ス12の側の面)には、LSI、IC、各種コネクタ、スピーカ、フレキシブルケ−ブル、その他種々の電子部品BHが実装されている。プリント基板25の前面側(フロントケース11の側の面)には、操作ボタン20の操作を検知して入力する接点やセンサなどを配置した入力シートNSが実装されている。
【0027】
リアケ−ス12の電池収納部RDの底部には、ほぼその全域にわたって金属板からなる底板26が取り付けられている。底板26の上に電池DTが置かれ、その上から電池蓋24が装着されて電池収納部RDが閉じられる。
【0028】
図8に示されるように、受話器側JGのフロントケース31の内部にはプリント基板36が配置されている。プリント基板36の背面側(リアケ−ス32の側の面)には、種々の電子部品BHが実装されている。電子部品BHとリアケ−ス32との間に、プリント基板36や電子部品BHのシールドと筐体KTGの補強とを兼ねた金属板37が設けられている。なお、プリント基板25,36は、複数枚であることもある。
【0029】
送話器側SGのプリント基板25に実装されたコネクタCN1と、受話器側JGのプリント基板36に実装されたコネクタCN2との接続のために、2つのフレキシブルケーブル41が積層された状態で用いられている。
【0030】
次に、フレキシブルケーブル41について説明する。
【0031】
図9はフレキシブルケーブル41の近辺を拡大して示す斜視図、図10はフレキシブルケーブル41の配設状態を示す断面側面図、図11は図10における受話器側JGの部分を拡大して示す図、図12は図10における送話器側SGの部分を拡大して示す図、図13はフレキシブルケーブル41の展開状態における正面図、図14はフレキシブルケーブル41の導体DUおよびグランド層GUのパターンを示す正面図、図15はフレキシブルケーブル41の銀ペースト層GUAのパターンを示す正面図、図16はフレキシブルケーブル41の層構造を示す断面図、図17はフレキシブルケーブル41の折り返し重ね方法を説明する図である。
【0032】
図9〜図12に示されるように、送話器側SGのプリント基板25上のコネクタCN1と、受話器側JGのプリント基板36のコネクタCN2との間に、フレキシブルケーブル41が、ヒンジHJの内部空間を通って撓んだ状態で配設されている。フレキシブルケーブル41は、ヒンジHJにおける屈曲に耐えるような屈曲耐性を有している。
【0033】
図13〜図15によく示されるように、フレキシブルケーブル41は、複数の導体DUが絶縁体ZTの中に配設され、ケーブル本体42の導体DUの両端部はコネクタCN1,2に接続するための接続端子ST1,2となっている。
【0034】
そして、絶縁体ZTの中の導体DU以外の部分においてグランド層GUが設けられている。グランド層GUは、当該グランド層GUを絶縁する絶縁体ZTとともに導体DUを絶縁する絶縁体ZTから分岐することによって(図14参照)、2箇所において分岐グランド部45,46を形成している。
【0035】
それぞれの分岐グランド部45,46は、所定の幅のアーム部45b,46bを有し、アーム部45b,46bの端部においてグランド層GUが露出し、グランド接続部45a,46aが設けられている。
【0036】
グランド接続部45a,46aは、それぞれ、導体DUの両端部である接続端子ST1,2の近辺に位置するように設けられている。つまり、グランド接続部45a,46aは、できるだけコネクタCN1,2に近くなるように設けることが好ましい。また、アーム部45b,46bはできるだけ短くかつ幅が広いことが好ましい。
【0037】
1つの分岐グランド部46は、ケーブル本体42の接続端子ST2の近辺において分岐し、その分岐点である折り返し点PK5が若干括れた形状となっており、アーム部46bが、折り返し点PK5において導体DUから離れた状態で交差するように折り返し可能に形成されている。
【0038】
つまり、図13において、アーム部46bは折り返し点PK5において折り返すことによって、その上の導体DUおよび絶縁体ZTと交差して上方に延びることとなり、これによって、グランド接続部46aは、図に示された位置から折り返し点PK5に対して対称位置に移動する。
【0039】
このように、分岐グランド部46を折り返し可能とすることによって、そのグランド接続部46aをフレキシブルケーブル41自体で覆われていない箇所に引き出すことが容易であり、プリント基板などの設計の自由度が向上する。
【0040】
分岐グランド部46のグランド接続部46aは、コネクタCN2の近辺に設けられたプリント基板36上のグランド端子36aに半田付けHDされ(図9および図11参照)、これによってフレームグランドの接続が行われる。
【0041】
図16に示すように、絶縁体ZTは、導体DUおよびグランド層GUの一方の側の面を覆う第1の絶縁体層ZTaおよび他方の側の面を覆う第2の絶縁体層ZTbを含んでおり、第2の絶縁体層ZTbの上に銀ペースト層GUAが設けられ、その上に第3の絶縁体層ZTcが設けられている。銀ペースト層GUAは、第2の絶縁体層ZTbに設けられた複数の穴AMを介してグランド層GUと電気的に接続されている。したがって、図14に示すグランド層GUにおいてパターンとしては互いに接続されていないグランド層GUについても、銀ペースト層GUAを介して電気的に互いに接続されている。このように、グランド層GUと銀ペースト層GUAとは、全体としてフレームグランドとなる実質的なグランド層GUを構成している。
【0042】
第1の絶縁体層ZTaは、ポリイミドなどの可撓性および絶縁性に優れた合成樹脂を材料とするベースフィルムである。第2の絶縁体層ZTbは、同じ材料からなるカバーレイであり、第3の絶縁体層ZTcは、同じ材料からなるトップコートである。導体DUおよびグランド層GUは、いずれも銅箔からなる。しかし、銅以外の導電性の良好な金属材料を用いることも可能である。銀ペースト層GUAは、銀ペーストを塗布することによって形成される。しかし、銀以外の導電性の良好な金属材料を含んだペーストを用いることも可能である。
【0043】
銅箔の厚さは例えば15〜25μm程度、銀ペースト層GUAの厚さは例えば20〜30μm程度である。導体DUおよびグランド層GUを構成する銅箔の両面には接着剤が用いられ、第1の絶縁体層ZTaおよび第2の絶縁体層ZTbに接着されている。
【0044】
なお、接続端子ST1,2の部分には、補強用のフィルムが接着剤によって貼り付けられている。
【0045】
グランド層GUは、導体DUのうちのグランドラインとなる少なくとも1本の導体DUと電気的に接続されている。つまり、複数の導体DUのうちの1本または複数本が、グランドラインとされており、これらとグランド層GUとは電気的に接続されている。それらの接続の方法として、銅箔のパターンを形成する際にパターンによって接続する方法、第2の絶縁体層ZTbに穴AMを設けて銀ペーストを塗布し、銀ペースト層GUAと接続する方法、その他の方法を取り得る。なお、グランドラインとされた導体DUは、接続端子ST1,2においてコネクタCN1,2に接続され、各プリント基板25,36におけるグランドラインと接続される。
【0046】
図14において、導体DUおよびグランド層GUに対して紙面上の手前側が第1の絶縁体層ZTaであり、紙面上の奥側が第2の絶縁体層ZTbである。また、図15において、銀ペースト層GUAに対して紙面上の手前側が第2の絶縁体層ZTbであり、紙面上の奥側が第3の絶縁体層ZTcである。
【0047】
ところで、フレキシブルケーブル41は、折り返すことによってケーブル本体42を2重に重ねた状態で使用するようになっている。
【0048】
つまり、フレキシブルケーブル41のケーブル本体42は、2つのケーブル本体42a,bに分割され、折り返し点PK1,2において折り返されることによって互いに重なる形状に形成されている。つまり、ケーブル本体42aと42bとは、平面視が線対称の形状に形成されている。したがって、ケーブル本体42に含まれる導体DUは、2つに分割されて各ケーブル本体42a,bに含まれる導体群DU,DUとなり、折り返されることによって互いに重なる。
【0049】
また、グランド層GUは、各接続端子ST1,2の部分がコネクタCN1,2に接続されたときに当該コネクタCN1,2をシールドするよう折り返し可能な折返しグランド部44a,bを形成している。
【0050】
すなわち、図13〜図15において、各接続端子ST1,2の部分の右方への延長上に、矩形状の折返しグランド部44a,bが形成されている。折返しグランド部44a,bは、折り返し点PK3,4において、接続端子ST1,2の側へ折り返して重ねることが可能となっている。
【0051】
折返しグランド部44bは、ほぼ全面にグランド層GUを有しており、先端側の一部の面にはさらに銀ペースト層GUAを有している。そして、折返しグランド部44aの一方の面において、グランド層GUが表面に露出してフレームグランドとして接続することが可能となっている。
【0052】
つまり、図14に示すように、折返しグランド部44bにおける矩形状の部分BR1において、グランド層GUの紙面の手前側に位置する絶縁体ZT、つまり図16に示す第1の絶縁体層ZTaが削除され、グランド層GUが露出して露出グランド層GURとなっている。折返しグランド部44bにおける露出グランド層GURは、携帯電話機1に実装されたときに、図9に示すように、コネクタCN2の上の最上層の表面となり、リアケ−ス32に嵌め込まれた金属板37に対して接触部材38を介して電気的に接続され、これによってフレームグランドの接続が行われる。
【0053】
折返しグランド部44bは、また、コネクタCN2の上面を覆うことによって、コネクタCN2およびその近辺のシールドをも行う。
【0054】
折返しグランド部44aにおいては、ほぼ全面にグランド層GUおよび銀ペースト層GUAを有している。折返しグランド部44aは、コネクタCN1の上面を覆うことによって、コネクタCN1およびその近辺のシールドを行う。
【0055】
そして、折返しグランド部44aの下端部(接続端子ST1の設けられた側)に、上に述べた分岐グランド部45が設けられている。分岐グランド部45のグランド接続部45aは、コネクタCN1の近辺に設けられたプリント基板25上のグランド端子25aに半田付けHDされ(図9および図12参照)、これによってフレームグランドの接続が行われる。
【0056】
また、図14において、ケーブル本体42bの接続端子ST2の側における左方への延長上に、シールドグランド部44cが形成されている。シールドグランド部44cは、その一方の面において、グランド層GUが表面に露出してフレームグランドとして接続することが可能となっている。
【0057】
つまり、図14に示すように、シールドグランド部44cにおける先端側の矩形状の部分BR2において、グランド層GUの紙面の手前側に位置する絶縁体ZT、つまり図16に示す第1の絶縁体層ZTaが削除され、グランド層GUが露出して露出グランド層GURとなっている。シールドグランド部44cは、携帯電話機1に実装されたときに、コネクタCN1の上面を覆うことによってその近辺のシールドを行うとともに、折返しグランド部44bを設けない場合または用いない場合に、その露出グランド層GURが最上層の表面に露出し、接触部材38を介して金属板37に接続されてフレームグランドの接続が行われる。
【0058】
なお、図15に示すように、シールドグランド部44cの露出グランド層GURの設けられた部分には、銀ペースト層GUAは設けられていない。
【0059】
また、図14において、グランド接続部45a,46aの部分に方形状の枠線が示されているが、これはグランド接続部45a,46aを露出させる際に絶縁体ZTをカットする位置を示すものである。図15において、ケーブル本体42a,bの外形線の外側に沿った線が示されているが、これはオーバーコートの範囲を示すものである。したがって、製作されたフレキシブルケーブル41の外形は図13に示すとおりである。
【0060】
上に説明したフレキシブルケーブル41は、図13に示す折り返し点PK1〜4において、3つに折り返すことが可能となっている。つまり、フレキシブルケーブル41は、折り返し点PK1〜4を境界として、下部41a、中部41b、上部41cの3つの部分からなっている。
【0061】
次に、フレキシブルケーブル41の実装方法について説明する。
【0062】
図17(A)には、フレキシブルケーブル41の展開状態での底面図が示されている。つまり、図17(A)には図13に示すフレキシブルケーブル41を裏返した状態が示されている。
【0063】
図17(A)において、フレキシブルケーブル41には、折返しグランド部44a,bの裏面、シールドグランド部44cの裏面、および、ケーブル本体42bの一部に、粘着テープ(両面テープ)47a〜dが貼り付けられている。
【0064】
まず、折り返し点PK1,2において谷折りとし、中部41b(図13参照)のシールドグランド部44cおよびケーブル本体42bを、下部41aのケーブル本体42aの上に重ね、粘着テープ47c,dによって貼り付ける。これによって図17(B)に示す状態となる。この状態では、シールドグランド部44cに設けた露出グランド層GURが上面に露出するので、このままの状態において用いた場合にはこの露出グランド層GURをフレームグランドの接続に利用することが可能である。
【0065】
次に、折り返し点PK3,4において谷折りとし、上部41cの折返しグランド部44a,bを、中部41bのシールドグランド部44cおよびケーブル本体42bの上に重ね、粘着テープ47a,bによって貼り付ける。また、分岐グランド部46を折り返し点PK5において裏側へ折り返す。これによって図17(C)に示す状態となる。
【0066】
なお、粘着テープ47a,bの一部は、実際にはコネクタCN1,2の上面に貼り付けられることとなる。したがって、折返しグランド部44a,bを折り返す以前に、接続端子ST1,2をコネクタCN1,2に挿入しておけばよい。
【0067】
図17(C)に示す状態では、折返しグランド部44bに設けた露出グランド層GURが上面に露出するので、この露出グランド層GURをフレームグランドの接続に利用する。また、分岐グランド部45,46のグランド接続部45a,46aが、それぞれのグランド層GUの露出部分が上を向いた状態となるので、グランド接続部45a,46aをプリント基板25,36上のグランド端子25a,36aに半田付けする。半田付けは、半田こてを用いた手作業による他、フリーフローなどによって自動的に行うことも可能である。フリーフローで半田付けを行う場合には、グランド接続部45a,46aが下面側に露出するようにしておけば好都合である。
【0068】
このように、折返しグランド部44bおよびシールドグランド部44cの露出グランド層GURは、折り返したときにコネクタCN2に対向する面とは反対側の面が露出する。したがって、プリント基板36の上から被せられるリアケ−ス32または補強用の金属板37とのフレームグランド接続が容易である。
【0069】
本実施形態のフレキシブルケーブル41は、信号ラインのためのコネクタ接続用の接続端子ST1,2とフレームグランドのための半田付け用のグランド接続部45a,46aとの両方を備えているので、信号ラインの接続は勿論のこと、2つのプリント基板25,36の間のフレームグランドを半田付けによって接続することができる。また、折返しグランド部44bまたはシールドグランド部44cの露出グランド層GURを用いて、筐体KTの補強用の金属板やシールド板との間にフレームグランドの接続を行うことができる。したがって、携帯電話機1において安定したフレームグランドを得ることができ、または安定したフレームグランド接続とすることができ、ノイズの低減、静電気の除去、および不要電波の輻射の低減などを効果的に図ることができる。
【0070】
しかも、従来のようにフレームグランドを接続するための専用のフレキシブルケーブルを用いる必要がないので、部品点数および実装のための作業工数を低減することができる。
【0071】
また、送話器側SGの筐体KTSであるリアケ−ス12の内側面の上辺部に沿って、つまりフレキシブルケーブル41が接続されるコネクタCN1の近傍に、無線通信機能のためのアンテナ29が設けられているが(図10参照)、フレキシブルケーブル41にはシールド機能があるので、導体DUやコネクタCN1,2がアンテナ29から輻射される電波からシールドされ、これによってノイズの発生が抑制されている。
【0072】
上に述べた実施形態において、グランド接続部46aを折り返して接続することとしたが、折り返すことなく接続するように構成してもよい。シールドグランド部44cに露出グランド層GURを設けたが、折返しグランド部44bに露出グランド層GURを設ける場合にはなくてもよい。フレキシブルケーブル41の実装後に折返しグランド部44a,bを筐体KTなどで押さえることができる場合などには、粘着テープ47a〜dを省略してもよい。2つ折りのフレキシブルケーブル41について説明したが、折り返し重ねしないフレキシブルケーブルとして実施してもよい。2つの接続端子ST1,2を設けたが、1つまたは3つ以上の接続端子(コネクタ接続部)を設けてもよい。
【0073】
上に述べた実施形態においては、プリント基板25と36との接続のために、1つのフレキシブルケーブル41を用いた例を説明したが、接続端子ST1,2の個数などに応じて、2つ以上のフレキシブルケーブル41を用いたり、他の構成のフレキシブルケーブルと併用してもよい。
【0074】
上に述べた実施形態においては、折り畳み式の携帯電話機1を例にあげて説明したが、スライド式またはその他の形式の携帯電話機であってもよい。
【0075】
上に述べた実施形態において、フレキシブルケーブル41の構成、形状、層構造、導体DUおよびグランド層GUのパターン、銀ペースト層GUAのパターン、導体DUの数、折返しグランド部44a,bや分岐グランド部45,46の形状、寸法、位置などは、上に述べた以外に種々変更することができる。
【0076】
その他、プリント基板25,36、コネクタCN1,2、筐体KT、または携帯電話機1の全体または各部の構造、構成、形状、寸法、材質、成形方法、製作方法、配置、個数などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【0077】
上に述べた例では折り畳み式の携帯電話機1について説明したが、折り畳み式のまたは折り畳み式でない携帯端末装置、およびその他の種々の電子機器にも本発明を適用することができる。
【0078】
本実施形態には次に記載する形態も含まれる。
(付記1)
複数の導体が絶縁体の中に配設され前記導体の両端部がコネクタに接続されるように構成されたフレキシブルケーブルであって、
前記絶縁体の中にグランド層が設けられ、
前記グランド層は、前記導体の端部がコネクタに接続された状態で当該コネクタをシールドするよう折り返し可能な折返しグランド部を有しており、
前記折返しグランド部の少なくとも一方の面において前記グランド層が露出してフレームグランドとして接続することが可能となっている、
ことを特徴とするフレキシブルケーブル。
(付記2)
前記折返しグランド部を折り返したときに前記コネクタに対向する面とは反対側の面において、前記グランド層が露出している、
付記1記載のフレキシブルケーブル。
(付記3)
前記絶縁体は、前記導体および前記グランド層の一方の側の面を覆う第1の絶縁体層および他方の側の面を覆う第2の絶縁体層を含んでおり、
前記第2の絶縁体層の上に銀ペーストが塗布され、かつ前記銀ペーストは前記第2の絶縁体層に設けられた穴を介して前記グランド層と電気的に接続されている、
付記2記載のフレキシブルケーブル。
(付記4)
前記グランド層は、前記導体を絶縁する絶縁体から分岐することによって、少なくとも1箇所において分岐グランド部を形成しており、
前記分岐グランド部の端部において、前記グランド層が露出してグランド接続部が設けられている、
付記2または3記載のフレキシブルケーブル。
(付記5)
前記分岐グランド部の少なくとも1つは、前記折返しグランド部に設けられている、
付記4記載のフレキシブルケーブル。
(付記6)
前記分岐グランド部は、所定の幅のアーム部を有し、前記アーム部の先端に前記グランド接続部が設けられており、
前記分岐グランド部の少なくとも1つは、前記アーム部が前記導体と離れた状態で交差するように折り返し可能に形成されている、
付記4または5記載のフレキシブルケーブル。
(付記7)
前記グランド層は、前記導体のうちのグランドラインとなる少なくとも1本の導体と電気的に接続されている、
付記2ないし6のいずれかに記載のフレキシブルケーブル。
(付記8)
前記導体は、複数の導体群に分割され、それぞれの導体群および導体群を絶縁する絶縁体が折り返されることによって互いに重なる形状に形成されている、
付記2ないし7のいずれかに記載のフレキシブルケーブル。
(付記9)
複数の導体が絶縁体の中に配設され前記導体の両端部がコネクタに接続されるように構成されたフレキシブルケーブルであって、
前記導体は、その両端部において前記コネクタに接続するために形成された2つのコネクタ接続部と、前記2つのコネクタ接続部から2つの導体群に分割されておりかつ2つの導体群を折り返すことによって互いに重なるように平面視が線対称の形状に形成されたケーブル本体と、からなり、
前記絶縁体は、前記ケーブル本体を絶縁する部分が、前記ケーブル本体を折り返したときに互いに重なるように平面視が線対称の形状に形成されており、
前記絶縁体の中にグランド層が設けられ、
前記グランド層は、
前記導体の端部がコネクタに接続されたときに当該コネクタをシールドするよう折り返し可能な折返しグランド部を有し、
前記折返しグランド部の少なくとも一方の面において前記グランド層が露出してフレームグランドとして接続することが可能となっている、
ことを特徴とするフレキシブルケーブル。
(付記10)
付記1〜9のいずれかに記載のフレキシブルケーブルが、可動部を有する電子機器の一方の筐体に設けられたプリント基板と他方の筐体に設けられたプリント基板との間を接続するように配設されており、
前記グランド接続部の1つは一方の筐体のプリント基板のグランド端子に半田付けされ、他の1つは他方の筐体のプリント基板のグランド端子に半田付けされてなる、
ことを特徴とする電子機器。
(付記11)
前記電子機器は携帯電話機であり、
前記一方の筐体は送話器側の筐体であり、前記他方の筐体は受話器側の筐体である、
付記10記載の電子機器。
(付記12)
付記10記載の前記電子機器は、無線通信機能を有する携帯端末装置であり、
前記筐体の内側面の辺部に沿ってかつ前記フレキシブルケーブルが接続されるコネクタの近傍に、前記無線通信機能のためのアンテナが設けられている、
ことを特徴とする携帯端末装置。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態に係る携帯電話機の外観を示す正面図である。
【図2】図1の携帯電話機の左側面図である。
【図3】携帯電話機を折り畳んだ状態の正面図である。
【図4】携帯電話機を折り畳んだ状態の左側面図である。
【図5】携帯電話機を折り畳んだ状態の平面図である。
【図6】携帯電話機を折り畳んだ状態の背面図である。
【図7】携帯電話機の送話器側の筐体を分解して示す斜視図である。
【図8】携帯電話機の受話器側の筐体を分解して示す斜視図である。
【図9】フレキシブルケーブルの近辺を拡大して示す斜視図である。
【図10】フレキシブルケーブルの配設状態を示す断面側面図である。
【図11】図10における受話器側の部分を拡大して示す図である。
【図12】図10における送話器側の部分を拡大して示す図である。
【図13】フレキシブルケーブルの展開状態における正面図である。
【図14】フレキシブルケーブルの導体などのパターンを示す正面図である。
【図15】フレキシブルケーブルの銀ペースト層のパターンを示す正面図である。
【図16】フレキシブルケーブルの層構造を示す断面図である。
【図17】フレキシブルケーブルの折り返し重ね方法を説明する図である。
【図18】従来のフレキシブルケーブルの平面図である。
【図19】従来の携帯電話機の一部の内部構造を示す斜視図である。
【図20】図19におけるフレキシブルケーブルの積層状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 携帯電話機(携帯端末装置、電子機器)
25,36 プリント基板
25a,36a グランド端子
29 アンテナ
31 フロントケース(筐体)
32 リアケース(筐体)
41 フレキシブルケーブル
42 ケーブル本体
44a,b 折返しグランド部
44c シールドグランド部
45,46 分岐グランド部
45a,46a グランド接続部
45b,46b アーム部
ST1,2 接続端子(コネクタ接続部)
DU 導体
GU グランド層
GUR 露出グランド層
ZT 絶縁体
ZTa 第1の絶縁体層(絶縁体)
ZTb 第2の絶縁体層(絶縁体)
ZTc 第3の絶縁体層(絶縁体)
CN1,2 コネクタ
AM 穴
KTS,KTG 筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の導体が絶縁体の中に配設され前記導体の両端部がコネクタに接続されるように構成されたフレキシブルケーブルであって、
前記絶縁体の中にグランド層が設けられ、
前記グランド層は、前記導体の端部がコネクタに接続された状態で当該コネクタをシールドするよう折り返し可能な折返しグランド部を有しており、
前記折返しグランド部の少なくとも一方の面において前記グランド層が露出してフレームグランドとして接続することが可能となっている、
ことを特徴とするフレキシブルケーブル。
【請求項2】
前記折返しグランド部を折り返したときに前記コネクタに対向する面とは反対側の面において、前記グランド層が露出している、
請求項1記載のフレキシブルケーブル。
【請求項3】
前記絶縁体は、前記導体および前記グランド層の一方の側の面を覆う第1の絶縁体層および他方の側の面を覆う第2の絶縁体層を含んでおり、
前記第2の絶縁体層の上に銀ペーストが塗布され、かつ前記銀ペーストは前記第2の絶縁体層に設けられた穴を介して前記グランド層と電気的に接続されている、
請求項2記載のフレキシブルケーブル。
【請求項4】
前記グランド層は、前記導体を絶縁する絶縁体から分岐することによって、少なくとも1箇所において分岐グランド部を形成しており、
前記分岐グランド部の端部において、前記グランド層が露出してグランド接続部が設けられている、
請求項2または3記載のフレキシブルケーブル。
【請求項5】
前記分岐グランド部の少なくとも1つは、前記折返しグランド部に設けられている、
請求項4記載のフレキシブルケーブル。
【請求項6】
複数の導体が絶縁体の中に配設され前記導体の両端部がコネクタに接続されるように構成されたフレキシブルケーブルであって、
前記導体は、その両端部において前記コネクタに接続するために形成された2つのコネクタ接続部と、前記2つのコネクタ接続部から2つの導体群に分割されておりかつ2つの導体群を折り返すことによって互いに重なるように平面視が線対称の形状に形成されたケーブル本体と、からなり、
前記絶縁体は、前記ケーブル本体を絶縁する部分が、前記ケーブル本体を折り返したときに互いに重なるように平面視が線対称の形状に形成されており、
前記絶縁体の中にグランド層が設けられ、
前記グランド層は、
前記導体の端部がコネクタに接続されたときに当該コネクタをシールドするよう折り返し可能な折返しグランド部を有し、
前記折返しグランド部の少なくとも一方の面において前記グランド層が露出してフレームグランドとして接続することが可能となっている、
ことを特徴とするフレキシブルケーブル。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のフレキシブルケーブルが、可動部を有する電子機器の一方の筐体に設けられたプリント基板と他方の筐体に設けられたプリント基板との間を接続するように配設されており、
前記グランド接続部の1つは一方の筐体のプリント基板のグランド端子に半田付けされ、他の1つは他方の筐体のプリント基板のグランド端子に半田付けされてなる、
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電子機器は、無線通信機能を有する携帯端末装置であり、
前記筐体の内側面の辺部に沿ってかつ前記フレキシブルケーブルが接続されるコネクタの近傍に、前記無線通信機能のためのアンテナが設けられている、
ことを特徴とする携帯端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2009−9857(P2009−9857A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−171148(P2007−171148)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【出願人】(592019877)富士通周辺機株式会社 (149)
【Fターム(参考)】