説明

フレキシブルデバイスを製造する方法

【課題】フレキシブルデバイスを製造する方法を提供し、フレキシブル基板を分離する方法、特にフレキシブル基板をリジッドキャリアから分離する方法を更に提供する。
【解決手段】リジッドキャリアを用意するステップと、リジッドキャリア上に所定のパターンの接着層21を形成するステップと、リジッドキャリア上にフレキシブル基板層を形成するステップであり、フレキシブル基板層の一部はリジッドキャリアと接触して第1の接触界面を形成し、フレキシブル基板層の残部分が接着層と接触して第2の接触界面を形成するステップと、第1の接触界面の反対側のフレキシブル基板層の表面上に少なくとも1つのデバイスを形成するステップと、第1の接触界面を介してリジッドキャリアからフレキシブル基板を分離するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の背景]
[発明の分野]
[0001]本発明は、フレキシブルデバイスを製造する方法、特にフレキシブル基板を備えたデバイスをリジッドキャリアから容易に分離する方法に関する。
[従来技術の説明]
【0002】
[0002]今日では、フラットパネルディスプレイ(FPD)が従来の陰極線管(CRT)に取って代わり、市場の主流となった。既知のFPDとしては、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、及び有機ELディスプレイ(OLED)などが挙げられる。FPDは殆どが、リジッド基板(例えば、ガラス)上で処理された後に製造される。この種類のリジッドディスプレイは、柔軟性が欠如しているためその使用は制限される。したがって、従来のガラス基板に代わるフレキシブル基板を備えたフレキシブルディスプレイが、最近の主要な研究対象になっている。
【0003】
[0003]フレキシブル基板は、薄ガラス基板、金属箔基板、及びプラスチック基板の3つのタイプに分類することができる。フレキシブル基板には、様々な利点及び欠点がある。薄ガラス基板を備えたフレキシブルディスプレイの製造工程は、大規模に生産されるリジッドFPDの製造工程と類似している。しかしながら、基板を柔軟にするためには、基板は十分に薄くなければならず、このため、壊れやすく、安全性が損なわれる。更に、薄ガラス基板の柔軟性は、他のフレキシブル基板と対抗できるものではない。金属箔基板には、耐高温性、高い水分及び気体の遮断性及び耐化学性の利点があるが、不透明であるという欠点も抱えており、その結果、例えば反射型ディスプレイなどの特定の表示デバイスにしか適応できない。プラスチック基板は、様々な表示デバイスでの使用に適しており、ロールツーロール方式で生産することができる。しかしながら、プラスチック基板の多くは、耐高温性ではなく、このためプロセス温度は制限され、更に、熱膨張係数が高いために基板の変形が容易に生じてしまう。
【0004】
[0004]更に、フレキシブル基板は軽量で且つ薄いので、平坦性の問題が容易に発生し、このためフレキシブル基板上に直接、デバイスを製造することはできない。したがって、デバイスをフレキシブル基板上に首尾よく配置させる方法は、現在開発されている主要な重要技術の1つである。本業界で使用される方法の1つは、フレキシブル基板をリジッドキャリア上に付着させ、次いでデバイスの製造が完了した後にリジッドキャリアからフレキシブル基板を取り除く方法である。したがって、デバイスの品質に影響を与えることなくリジッドキャリアからフレキシブル基板を首尾よく取り除く方法が、本技術の隘路となっている。
【0005】
[0005]図1はフレキシブル基板上にデバイスを製造する従来方法の概略図である。図1(a)に示すように、フレキシブル基板104を接着層102によりリジッドキャリア100に付着させ、次いで、例えば有機薄膜トランジスタ(OTFT)などのデバイス構造がフレキシブル基板上に形成される。製造工程には例えば、ゲート電極108、誘電体層106、コレクタ電極110、ソース電極112、及びチャネル114の形成が含まれる。図1(b)に示すように、所望のデバイスを作製した後、フレキシブル基板をリジッドキャリアから分離する。しかし、接着層102の接着力によりフレキシブル基板を容易に分離することはできず、分離後に残留接着剤が残ることが多く、その結果、デバイスの品質に影響を与えてしまう。更に、接着層は通常、耐高温性ではないため、該方法を高温を要する工程で使用することはできない。
【0006】
[0006]米国特許第7,466,390号は、フレキシブル表示デバイスの製造方法を更に開示しており、この方法には、リジッドガラス基板とその上を覆うプラスチック基板を含む基板配置を準備すること、プラスチック基板上にデバイスを形成すること、及びデバイスを形成した後に、レーザー照射によりプラスチック基板をリジッドガラス基板からはずすことが含まれる。しかしながらこの技術では、その工程が複雑で時間を要し、設備が高価で、高コストであるだけでなく、更に、レーザー照射を正確に行わなければならず、またリジッドガラス基板を再利用できないという欠点もある。
【0007】
[0007]フレキシブル電子デバイスの他の作製方法には、Seiko Epson Corporation及びSony Corporationが開発した間接的な移動技術があり、該方法には、リジッドキャリア上にデバイスを製造すること、及び次にデバイスをフレキシブル基板上に移動させることが含まれる。しかし、Seiko Epson CorporationのSUFTLAでは、薄膜トランジスター(TFT)アレイをガラス基板から完全に取り除くためにレーザーを正確に制御しなければならない。Sony Corporationは、フッ化水素酸を使用してガラス基板を取り除き、またフッ化水素酸に対して高いエッチング選択性を有する材料をエッチング停止層として使用する。該ガラス基板がフッ化水素酸により、エッチング停止層までエッチングされると、エッチングを停止させ、次いでエッチング停止層を取り除き、該デバイスをプラスチック基板上に移動させる。このような技術では、毒性の強いフッ化水素酸を使用しなければならず、デバイスがエッチング中にエッチング液によりエッチングされるのを防止しなければならない。該移動技術は高温の工程で有用であるが、上述の欠点だけでなく、複雑な製造工程が原因で大規模生産に対して生じる問題などの欠点もまた存在する。
【0008】
[0008]上記の問題を解決するために、米国特許第7,575,983号は、フレキシブル基板上でのデバイスの製造方法を開示している。該方法では、接着力を持たない「剥離層」を高分子材料で製造し、フレキシブル基板層とリジッドキャリアとの間の界面層として使用し、次に、界面層を介してフレキシブル基板を取り除くために剥離層を水に浸す。しかし、デバイスは通常、防水する必要があるので、追加の保護層が必要である。更に、台湾特許出願第98126043号は、フレキシブルデバイスに使用するための基板構造の製造方法を開示しており、該方法では、基板構造は、フレキシブル基板、剥離層、接着剤、及び支持キャリアを含み、支持キャリアに移動させたフレキシブル基板は製造工程中に、はずれて落ちることはなく、全ての工程が完了した後、剥離材料とフレキシブル基板との間の接着が乏しく、接着剤とフレキシブル基板との間の接着が非常に良好であるという特性を使用して、該基板を容易に分離することができる。しかし、剥離層及び接着剤を使用するため、該製造工程は複雑であり、生産コストは増大し、更に、使用する剥離層又は接着剤は耐熱性に乏しいが、該デバイスの製造工程では一般に、200℃を超える温度での処理が必要であり、したがって、品質が不安定になり易い。
[発明の概要]
【0009】
[0009]上述の問題を解決するために、本発明はフレキシブルデバイスを製造する方法を提供し、該方法は、リジッドキャリアを用意するステップと、該リジッドキャリア上に所定のパターンの接着層を形成するステップと、該リジッドキャリア上にフレキシブル基板層を形成するステップであり、フレキシブル基板層の一部が該リジッドキャリアに接触して第1の接触界面を形成し、フレキシブル基板層の残部分が接着層に接触して第2の接触界面を形成するステップと、1つ又は複数のデバイスを第1の接触界面の反対側のフレキシブル基板層の表面上に形成するステップと、該フレキシブル基板を第1の接触界面を介してリジッドキャリアから分離するステップとを含む。
【0010】
[0010]本発明はフレキシブル基板を分離する方法、特にフレキシブル基板をリジッドキャリアから分離する方法を更に提供し、該方法は、リジッドキャリアを用意するステップと、該リジッドキャリア上に所定のパターンの接着層を形成するステップと、該リジッドキャリア上にフレキシブル基板層を形成するステップであり、フレキシブル基板層の一部が該リジッドキャリアに接触して第1の接触界面を形成し、フレキシブル基板層の残部分が接着層に接触して第2の接触界面を形成するステップと、該フレキシブル基板を第1の接触界面を介してリジッドキャリアから分離するステップとを含む。
【0011】
[0011]本発明の方法は、コストを削減するために既存の製造設備を使用して実施してもよい。該デバイスの製造工程では、フレキシブル基板をリジッドキャリア上に有効に固定して、デバイスの製造工程におけるフレキシブル基板の動きから発生するアライメントのずれを低減することができる。デバイスを製造した後、該デバイスの底面に残留接着剤を残さずに該フレキシブル基板をリジッドキャリアから容易に分離することができる。一方、本発明には3つの利点、つまり耐高温性、正確なアライメント、及びフレキシブル基板の容易な分離がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】[0012] フレキシブル基板上にデバイスを製造する従来の方法の概略図である。
【図2】[0013] 本発明による所定のパターンの接着層の概略図である。
【図3】本発明による所定のパターンの接着層の概略図である。
【図4】本発明による所定のパターンの接着層の概略図である。
【図5】[0014] 本発明による所定のパターンの接着層の製造方法の実施形態の概略図である。
【図6】[0015] 本発明によるフレキシブルデバイスを製造する方法の実施形態の概略図である。
【図7】[0016] 接着促進剤とリジッドキャリアとの間の化学結合を示す概略図である。
【図8】[0017] 接着促進剤とフレキシブル基板との間の化学結合を示す概略図である。[発明の詳細な説明]
【0013】
[0018]本明細書で使用する用語「剥離領域」は、本発明の方法でフレキシブル基板がリジッドキャリアから分離される領域を指す。
【0014】
[0019]本明細書で使用する用語「接着領域」は、本発明の方法で接着促進層を介してフレキシブル基板がリジッドキャリアと接触する領域を指す。
【0015】
[0020]本明細書で使用する用語「フレキシブル基板層の一部」は、フレキシブル基板層の50%〜99.9%、好ましくは80%〜99.5%を指す。
【0016】
[0021]本発明で使用されるリジッドキャリアは、本発明の当業者に公知のいずれのものでもよく、例えば、ガラス、石英、ウエハ、セラミックス、金属、又は金属酸化物でもよいがこれらに限定するものではない。
【0017】
[0022]本発明の方法は、フレキシブル基板層の一部をリジッドキャリアに接触させて第1の接触界面を形成し、フレキシブル基板層の残部分を接着層に接触させて第2の接触界面を形成するように、フレキシブル基板層を形成する前に、リジッドキャリア上に所定のパターンの接着層を形成することを主に特徴とする。接着層はフレキシブル基板及びリジッドキャリアの両方に化学的に結合可能な接着促進剤を含有しているため、結合剤を使用しなくても、フレキシブル基板層をリジッドキャリアに有効に固定することができる。更に、接着促進剤の存在により、第2の接触界面は強力な接着性を持つ。また、フレキシブル基板とリジッドキャリアとの間には僅かな化学結合しか存在しないので、第1の接触界面の接着性は第2の接触界面の接着性よりも弱い。デバイスを製造した後、単にデバイスの縁又は周辺に沿って切断することにより第1の接触界面を介してリジッドキャリアからフレキシブル基板を容易に取り除くことが可能であるので、リジッドキャリア上で実施される加工技術を容易にフレキシブル基板に移動できる。更に、フレキシブル基板とリジッドキャリアとの間の第1の接触界面上には、耐高温性のない剥離層や結合剤は存在しないので、本発明の方法は、高温処理を必要とするデバイス製造工程にでも適用可能である。
【0018】
[0023]所定のパターンの接着層は、パターンの形状に関して特定のパターン形式に限定されず、剥離領域周辺に分布する。例えば、接着層は枠様の形態で存在する。剥離領域の形状は特に限定されず、例えば、正方形、長方形、菱形、円形、又は楕円形状、好ましくは、切断が容易であることを考慮して正方形、又は長方形でもよい。図2、図3及び図4は、各々接着層の実施形態である。図2では、剥離領域は、長方形(201、202、203及び204)であり、接着層21が剥離領域周辺まで分布し、長方形を囲んだ枠形で存在する。図3では、剥離領域は、楕円形状(301、302、303及び304)であり、接着層31が剥離領域周辺まで分布し、楕円を囲んだ枠形で存在する。図4では、剥離領域は、長方形(401、402、403及び404)であり、接着促進層41が長方形401、長方形402、長方形403及び長方形404の対角の位置に複数のポイントとして分布している。
【0019】
[0024]接着層上の所定のパターンは、所望の剥離領域の必要に応じて設計される。例えば、最終製品が長方形を有するフレキシブルデバイスの場合、画定される剥離領域の形状もまた長方形であり、リジッドキャリア上の接着層のパターンは、1つ又は複数の長方形を囲んだ枠形でもよい。パターンの幅は、特に制限されず、操作が簡単でありフレキシブル基板層がリジッドキャリア上に有効に固定可能である限り、切断工具に基づいて作製することができる。該幅は一般的に、約5〜約1000マイクロメートル(μm)であり、本発明の実施形態に基づいて、約5、約10、約30、約50、約100、約300、約500、又は約700μmでもよい。
【0020】
[0025]本発明の接着層は、溶媒と接着促進剤とを含有する組成物から調製される。溶媒のタイプには、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)若しくはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)又はこれらの組合せ、好ましくはPGME若しくはPGMEA、又はこれらの組合せなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。接着促進剤は、本発明の当業者によく知られているいかなるものでもよく、例えば、シランカップリング剤、芳香族環式化合物又は複素環式化合物、リン酸化合物、チタン酸塩やジルコン酸塩などの多価金属塩又はエステル、エポキシ樹脂やポリエステル樹脂などの有機高分子樹脂、又は塩素化ポリオレフィンであってよいが、これらに限定するものではない。
【0021】
[0026]本発明で使用される接着促進剤は、フレキシブル基板及びリジッドキャリアの両方と化学的な結合が可能であり、リジッドキャリア及びフレキシブル基板のタイプに応じて、リジッドキャリア及びフレキシブル基板との良好な接着力を持つ接着促進剤が選択される。例えば、リジッドキャリアが金、銀、又は銅などの金属基板であり、フレキシブル基板がポリイミドである場合、アミノチオフェノール、アミノテトラゾール、又は2−(ジフェニルホスフィノ)エチルアミンなどのアミノ基を有する芳香族環式化合物又は複素環式化合物を選択することができる。フレキシブル基板がポリイミドであり、リジッドキャリアがガラスである場合、アミノ基を有するシロキサンモノマー、アミノ基を有するポリシロキサン又はこれらの組合せ、好ましくは3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APrTEOS)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APrTMOS)又はこれらの組合せなどのアミノ基を持つシロキサンモノマーなどのアミノ基及び低級アルコキシの両方を持つモノマー又はポリマーを選択することができる。
【0022】
[0027]本発明で有用な市販のアミノ基を有するシロキサンモノマーの例としては、VM−651及びVM−652(Hitachi DuPont Microsystem Ltd.)、AP−3000(Dow Chemical Company)、KBM−903及びKBE−903 (Shin Etsu Co.,Ltd.)及びAP−8000(Eternal Chemical Co.,Ltd.)が挙げられる。
【0023】
[0028]溶媒及び接着促進剤を含有する組成物は、本発明の所定のパターンの接着層を作製するために、本発明の当業者によく知られているいかなる方法によってリジッドキャリアに塗布することができる。該方法は、例えば、スクリーン印刷プロセス、コーティングプロセス、ディスペンシングプロセス、フォトリソグラフィプロセス、又はこれらの組合せであるが、これらに限定されない。
【0024】
[0029]本発明の一実施形態によれば、所定のパターンの接着層は、例えば、ネガティブワーキングフォトレジストプロセス、又はポジティブワーキングフォトレジストプロセスなどのフォトリソグラフィプロセスによりリジッドキャリア上に形成される。図5は、本発明に基づくフォトリソグラフィプロセスを使用した所定のパターンの接着層の調製の一実施形態の概略図である。図5(a)に示すように、フォトレジスト組成物51の少なくとも1つの層をガラスキャリア50上にコーティングし、次いでソフトベークする。本発明で有用なフォトレジスト組成物は、特に限定されず、例えばa)少なくとも1つの光硬化性モノマー若しくは光硬化性オリゴマー、又はこれらの混合物、b)ポリマー結合剤、c)光開始剤、及びd)任意選択的熱硬化剤を含有してもよい。様々なフォトレジスト組成物及びそれらの調製方法が、米国特許出願第11/341,878号、米国特許出願第11/477,984号、米国特許出願第11/728,500号、米国特許出願第10/391,051号、米国特許出願第09/040,973号、米国特許出願第09/376,539号、米国特許出願第09/364,495号、及び米国特許出願第08/936305号など多くの参照文献で開示されている。これらの参照文献は、それらの全体が本明細書に参照として組み込まれている。次に、剥離領域の形状は、マスクで定められ、露光及び現像などのリソグラフィプロセスを実施して、リジッドキャリア上に剥離領域の形状の突出部51’(図5(b))を残す。この場合、関連するプロセスパラメータは、当業者であれば容易に分かる。次に、スピンコーティング、スロットコーティング又は蒸気下塗りで溶媒及び接着促進剤を含有する組成物をガラスキャリア50上にコーティングしてコーティング58(図5(c))を形成し、次いで、これを加熱(例えば、約100℃〜約150℃の範囲の温度で約5〜約30分の間、ソフトベークするがこれに限定するものではない)して、接着促進剤をリジッドキャリアと化学的に結合させ、溶媒を除去する。所望により、加熱ステップを更に実施して残存した溶媒を除去してもよい。次に、突出部51’及びその周辺に存在する接着促進剤を例えばN−メチル−ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、アクリロニトリル(AN)、アセトン、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)などの極性有機溶媒を使用して除去して、所定のパターンの接着層52(図5(d))を残す。
【0025】
[0030]本発明の他の実施形態によれば、所定のパターンの接着層を、例えばローラーコーティングプロセスなどのコーティングプロセスでリジッドキャリア上に形成する。本発明の特定の実施形態によれば、溶媒及び接着促進剤を含有する組成物を、ローラーコーティングプロセスでガラスキャリア上にコーティングして、所定のパターンのコーティングを形成し、次に、これを加熱(例えば、約120℃〜約150℃の範囲の温度で約5〜約30分の間、ソフトベークするがこれに限定するものではない)して、該接着促進剤をリジッドキャリアと化学的に結合させ、溶媒を除去することで所定のパターンの接着層を調製する。
【0026】
[0031]溶媒を除去した後の本発明の接着層の厚さは、約0.5ナノメートル(nm)〜約5μmであり、好ましくは約0.7nm〜約5nmである。接着層の厚さは、接着層が機能する限り特に限定されるものではない。しかし、材料を節約するため、又は熱膨張係数などその他の事情を考慮すると、接着層は薄い方が良い。本発明の実施形態によれば、ソフトベーキングした後、厚さが1nm未満の接着層を調製することができる。
【0027】
[0032]本発明のフレキシブル基板層を、本発明の当業者に公知の任意の方法を使用して接着層を備えるリジッドキャリア上に形成してもよい。例えば、コーティングプロセス又は蒸着プロセスにより、フレキシブル基板層をリジッドキャリア上に積層又は形成する。
【0028】
[0033]本発明の実施形態によれば、コーティング方法を使用して該フレキシブル基板層を形成する。該コーティング方法は、例えば、スロットダイコーティング、マイクログラビアコーティング、ローラーコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、スピンコーティング、カーテンコーティング、又はこれらの組合せなどの本発明の当業者によく知られている方法である。薄いフレキシブル基板を得るために、スロットダイコーティング、マイクログラビアコーティング、又はローラーコーティングが好ましく使用される。
【0029】
[0034]フレキシブル基板層の厚さは特に限定されないが、一般的に約5μm〜約50μm、好ましくは約10μm〜約25μmの範囲であり、本発明の実施形態によれば、例えば約10、約15、約20、若しくは約25μmであることができる。
【0030】
[0035]本発明で有用なフレキシブル基板は特に限定されないが、例えば薄ガラス基板、薄い金属基板、又はプラスチック基板がある。例えば薄い金属基板のタイプには薄いステンレス鋼金属基板があるがこれに限定されない。本発明の実施形態によれば、選択するフレキシブル基板はプラスチック基板であり、プラスチック基板は、例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリレート(PA)、ポリシロキサン、ポリノルボルネン(PNB)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、若しくはポリイミド(PI)又はこれらの組合せなどの本発明の当業者によく知られているいかなる高分子材料で作られてもよい。本発明の好ましい実施形態によれば、ポリマー材料は350℃以上の高温の工程に適用可能なポリイミドである。
【0031】
[0036]本発明のフレキシブル基板層の調製は、下記の例でポリイミドについて説明する。ポリイミド前駆体、つまりポリ(アミド酸)を接着層を備えるリジッドキャリア上にコーティングし、重合させ、ポリイミドへ環化する。例えば、以下のスキームに従って、ポリイミドを調製できる。
【化1】


(式中、Gは4価の有機基であり、Pは2価の有機基であり、mは0〜100の整数である)。或いは、ポリイミドを他のポリイミド前駆体又は前駆体組成物、例えば、それらに限定されないが、下記の式で示されるポリイミド前駆体
【化2】


又は
【化3】


(式中、G、P、及びmは、上記に定義した通りであり、Rは各々独立にH又は感光性基であり、Rは有機基である)及びHN−P−NHを含有するポリイミド前駆体又はポリイミド組成物で調製してもよい。
【0032】
[0037]当技術分野では、種々の異なるポリイミド前駆体の重合及び環化方法、並びに該方法を使用して調製したポリイミドが開発されてきおり、例えば、米国特許出願第11/785,827号、米国特許出願第11/119,555号、米国特許出願第12/846,871号、及び米国特許出願第12/572,398号、及び中国特許出願第200610162485.X号、及び中国特許出願第200710138063.3号で開示されたものが挙げられ、これらの参照文献は、それらの全体が本明細書に参照として組み込まれている。
【0033】
[0038]本発明の方法によれば、フレキシブル基板層を形成した後、第1の接触界面の反対側のフレキシブル基板層の表面上にデバイスを形成することができる。しかし、デバイスの製造には通常、TFTを製造する場合では400℃以上の温度など、高温を必要とする。熱膨張及び熱収縮によるリジッドキャリアからのフレキシブル基板の層間剥離によって、形成したデバイスの正確な位置合わせに悪影響を与えることを回避するために、所望により、第1の接触界面で、フレキシブル基板とリジッドキャリアとの間に僅かな化学結合が存在する。例えば、フレキシブル基板がポリイミドであり、リジッドキャリアがガラスである場合、リジッドキャリアとの共有結合を形成するために、ポリイミドに選択する前駆体は微量のシロキサン基を含むことができる。
【0034】
[0039]デバイスのタイプは、特に限定されず、例えば半導体デバイス、電子デバイス、表示デバイス、又は太陽エネルギーデバイス、好ましくは電子デバイス又は表示デバイスでもよい。電子デバイスは、例えばOTFT、非晶質シリコンTFT、低温多結晶TFT、又は回路デバイスが挙げられるがこれらに限定されない。表示デバイスは、例えばLCD、OLED、高分子型発光ディスプレイ(PLED)、又は電気泳動ディスプレイであるが、これらに限定されない。該デバイスの製造方法は、当業者によく知られている。
【0035】
[0040]本発明の方法では、所定のパターンの接着層が、フレキシブル基板層の一部がリジッドキャリアと接触して第1の接触界面を形成し、フレキシブル基板層の残部分が接着層と接触して第2の接触界面を形成するように使用される。本発明の方法では、接着促進剤がフレキシブル基板とリジッドキャリアとの間の第1の接触界面に存在しないので、第1の接触界面の接着性は第2の接触界面の接着性よりも弱い。本発明の実施形態によれば、第1の接触界面の接着性は約0B〜約1B(接着性の剥離試験、以下同様)であり、第2の接触界面の接着性は約2B〜約5B、好ましくは約4B〜約5Bである。
【0036】
[0041]一般に、強い陰性を持つ多くの酸素原子又は窒素原子が、該フレキシブル基板の化学構造に存在しており、これらの原子はフレキシブル基板がリジッドキャリアに付着するように、リジッドキャリア(例えば、ガラス)上でヒドロキシル基により水素結合を生成できる。しかし、水素結合の接着性があまり強くないため、デバイスの製造工程でアライメントのずれが容易に生じる可能性があり、また接着性が不十分なため、フレキシブル基板が切断中に歪む傾向にあり、その結果、生産収率が低下する。本発明の方法によれば、該デバイスの製造工程で生じるアライメントのずれを低減し、また不良品率を下げるために、接着層を利用してフレキシブル基板層をリジッドキャリア上に固定し、また、デバイスは第1の接触界面の反対側のフレキシブル基板層の表面上に形成されるので、デバイスを製造した後に、残留接着剤をデバイスの底面に残すことなくリジッドキャリアから所望のデバイスを載置するフレキシブル基板を容易に分離することができる。この分離方法として、例えば単にデバイスの縁又は周辺に沿って切断し、次にリジッドキャリアから所望のデバイスを載置するフレキシブル基板を取り除くことがあるが、これに限定されない。
【0037】
[0042]本発明の、フレキシブルデバイスを製造する方法は、図6及び図7を参照して本発明の一実施形態で具体的に説明される。しかし、該実施形態は、説明の目的のみで供するものであり、本発明に対していかなる限定も意図しない。
【0038】
[0043]最初に、図6(a)に示すように、ガラスであるリジッドキャリア60が用意される。
【0039】
[0044]次に、図6(b)に示すように、例えば、スクリーン印刷又はローラーコーティングにより溶媒及び接着促進剤を含有する組成物をガラスキャリア60上にコーティングして、所定のパターンの接着層62を形成し、剥離領域R及び接着領域Aを同時に決定し、次に、ソフトベーキング(例えば、約100℃〜約150℃の範囲の温度で約5〜約30分間ソフトベーキングを行うがこれに限定されない)を行い、任意選択で加熱して接着層中の溶媒を揮発させる。図7に示すように、コーティング後、接着促進剤中のアルコキシ基が空気中で水と反応してヒドロキシル基に還元され、その結果、ガラスキャリア60上に、ヒドロキシル基(−OH)を伴う水素結合が生じ、ソフトベーキング後、ガラスキャリア60上でヒドロキシル基(−OH)との縮合反応により化学結合が更に生じる。所定のパターンは、図2、図3又は図4で示された通りであるが、他のパターンでもよく、剥離領域の周辺に分布する。該溶媒は、PGME、PGMEA又はこれらの組合せ、好ましくはPGMEでもよい。該接着促進剤は、3−APrTEOS、3−APrTMOS又はこれらの組合せでもよい。
【0040】
[0045]次に、図6(c)に示すように、リジッドキャリア60上にフレキシブル基板層63を形成する。本例では、ポリイミドがフレキシブル基板として使用され、接着層62で構成されたリジッドキャリア60上にポリイミド前駆体をスロットダイコーティング法でコーティングした後、ソフトベーキング(例えば、約80℃〜約120℃の範囲の温度で約10〜約20分間ソフトベーキングを行うがこれに限定されない)を行い、その結果、接着促進剤中のアミノ基(−NH)が(図8で示すように)ポリイミド前駆体と化学結合をして、次にフレキシブル基板層を調製するために、該ポリイミド前駆体を重合させポリイミドへ環化する。図6(c)では、フレキシブル基板層の一部がリジッドキャリア60と接触して第1の接触界面610を形成し、フレキシブル基板層の残部分は、接着層と接触して第2の接触界面620を形成する。第1の接触界面に接着促進剤は存在しないが、これに対して第2の接触界面における接着促進剤は、フレキシブル基板及びリジッドキャリアと各々化学的に結合しているので、第1の接触界面の接着性は第2の接触界面の接着性よりも弱い。
【0041】
[0046]図6(c)のようにフレキシブル基板層63をリジッドキャリア60上に形成した後、図6(d)で示すように、第1の接触界面の反対側のフレキシブル基板層63の表面上にデバイス64を形成する。デバイス64のタイプは、特に限定されず、例えば半導体デバイス、電子デバイス、表示デバイス、又は太陽エネルギーデバイスでもよいが、本例では電子デバイス又は表示デバイスである。
【0042】
[0047]次に、図6(e)で示すように、所望のデバイスを載置するフレキシブル基板層63をデバイスの縁に沿って切断する。その後、図6(f)で示すように、第1の接触界面610を介してリジッドキャリア60からフレキシブル基板63を分離して、フレキシブルデバイス65を得る。切断時の切断線は(図6(f)で示すように)接着領域Aと剥離領域Rとの接合部、又は接着領域A若しくは剥離領域Rに存在してもよく、好ましくは接着領域Aと剥離領域Rとの接合部に存在する。切断線が接着領域Aに存在する場合、リジッドキャリアからのフレキシブル基板の分離を促進するために、切断線は接着領域Aと剥離領域Rとの接合部付近に存在することが好ましい。更に、切断線が剥離領域Rに存在する場合、切断により発生するフレキシブル基板の歪みを減らすために、切断線は接着領域Aと剥離領域Rとの接合部付近に存在することが好ましい。
【0043】
[0048]本発明の方法によれば、所定のパターンの接着層を利用してフレキシブル基板がリジッドキャリア上に有効に接着され、その結果、デバイスの製造工程中に生じるアライメントのずれを低減することができ、又該デバイスが接着層を利用してリジッドキャリア上に接着されないフレキシブル基板層の一部上に製造されるため、該デバイスを製造した後、リジッドキャリアから該フレキシブル基板を容易に分離することができる。上記の技術的な特徴に基づいて、デバイスのサイズ及び形状に従って接着促進層の所定のパターンを決定することができ、したがって、本発明の方法は、種々のサイズのフレキシブルデバイスの製造に適用することができる。
【0044】
[0049]本発明の範囲を限定するよりも本発明を更に説明することを目的として、本発明は、上記で好ましい実施形態を通して開示されている。当業者が容易に実行可能ないかなる変形及び変更も、本明細書の開示の範囲内及び添付の特許請求の範囲内に収まるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキシブルデバイスを製造する方法であって、
リジッドキャリアを用意するステップと、
前記リジッドキャリア上に所定のパターンの接着層を形成するステップと、
前記リジッドキャリア上にフレキシブル基板層を形成するステップであり、前記フレキシブル基板層の一部は前記リジッドキャリアと接触して第1の接触界面を形成し、前記フレキシブル基板層の残部分は前記接着層と接触して第2の接触界面を形成する、ステップと、
前記第1の接触界面の反対側の前記フレキシブル基板層の表面上に少なくとも1つのデバイスを形成するステップと、
前記第1の接触界面を介して前記リジッドキャリアから前記フレキシブル基板を分離するステップとを含む方法。
【請求項2】
前記リジッドキャリアが、ガラス、石英、ウエハ、セラミックス、金属、又は金属酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記所定のパターンの前記接着層が、溶媒及び接着促進剤を含有する組成物から調製される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接着促進剤が、シランカップリング剤、芳香族環式化合物又は複素環式化合物、リン酸化合物、多価金属塩又はエステル、有機高分子樹脂、及び塩素化ポリオレフィンからなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、ジプロピレングリコールメチルエーテル(DPM)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
スクリーン印刷プロセス、コーティングプロセス、ディスペンシングプロセス、フォトリソグラフィプロセス、又はこれらの組合せにより前記リジッドキャリア上に前記所定のパターンの前記接着層を形成する、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記フレキシブル基板が、薄ガラス基板、薄い金属基板、又はプラスチック基板である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記フレキシブル基板が、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリレート(PA)、ポリシロキサン、ポリノルボルネン(PNB)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、及びこれらの混合物からなる群より選択されるプラスチック基板である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フレキシブル基板がポリイミドであり、前記リジッドキャリアが金属基板であり、前記接着層が、接着促進剤としてアミノ基を有する芳香族環式化合物又は複素環式化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記接着促進剤が、アミノチオフェノール、アミノテトラゾール、2−(ジフェニルホスフィノ)エチルアミン及びこれらの組合せより選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記フレキシブル基板がポリイミドであり、前記リジッドキャリアがガラスであり、前記接着層が、アミノ基を有するシロキサンモノマー、アミノ基を有するポリシロキサン、及びこれらの組合せより選択される接着促進剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記接着促進剤が、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APrTEOS)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APrTMOS)及びこれらの組合せより選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記デバイスが、半導体デバイス、電子デバイス、表示デバイス、又は太陽エネルギーデバイスである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
リジッドキャリアからフレキシブル基板を分離する方法であって、
リジッドキャリアを用意するステップと、
前記リジッドキャリア上に所定のパターンの接着層を形成するステップと、
前記リジッドキャリア上にフレキシブル基板層を形成するステップであり、前記フレキシブル基板層の一部は前記リジッドキャリアと接触して第1の接触界面を形成し、前記フレキシブル基板層の残部分は前記接着層と接触して第2の接触界面を形成する、ステップと、
前記第1の接触界面を介して前記リジッドキャリアから前記フレキシブル基板を分離するステップとを含む方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−199546(P2012−199546A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−59154(P2012−59154)
【出願日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【出願人】(500202322)長興化學工業股▲ふん▼有限公司 (30)
【Fターム(参考)】