説明

フレキシブルプリント回路及びそれを用いた接続構造、並びに当該接続構造を有する表示素子モジュール

【課題】
フレキシブルプリント回路の端子を半田で接続する場合でも、半田による配線間の短絡を抑制することが可能なフレキシブルプリント回路及びそれを用いた接続構造、並びに当該接続構造を有する表示素子モジュールを提供すること。
【解決手段】
フィルムRF上に形成された配線パターンWP1を有し、該配線パターンの端子部は配線を露出させた露出部EXと絶縁材料で被覆された被覆部COとを備えたフレキシブルプリント回路において、該端子部における配線同士の間には、該露出部と該被覆部に跨る貫通孔HL1が形成されていることを特徴とする。
好ましくは、該貫通孔HL1の最小幅は0.4mm以上であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブルプリント回路及びそれを用いた接続構造、並びに当該接続構造を有する表示素子モジュールに関し、特に、半田を用いてフレキシブルプリント回路の端子を接続する際に配線間の短絡を防止するための、フレキシブルプリント回路及びそれを用いた接続構造、並びに当該接続構造を有する表示素子モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス表示装置においては、表示パネルに配線ケーブルを接続する際にフレキシブルプリント回路が利用されている。図1に示すように、フレキシブルプリント回路FPCは、樹脂フィルムRFの上に配線パターンWP1が印刷され、該配線パターンは電気的に接続する端子を除いて絶縁材料(樹脂フィルムやコーティング膜)IMで被覆されている。
【0003】
フレキシブルプリント回路の端子(配線パターンWP1の一部)と他の配線WP2の端子との電気的接続には、半田BPが用いられる。符号PCBは配線パターンWP2を保持する基板やフィルムである。特に、フレキシブルプリント回路では、半田による接続部がフレキシブルプリント回路のフィルムRFで被覆されているため、余った半田が横(図1の紙面に垂直な方向)に広がり、隣の配線同士を短絡するなどの問題を生じる危険性がある。
【0004】
特許文献1では、余った半田を逃がすため、予め端子の形状にダミー端子部分を形成することが開示されている。しかしながら、表示パネルにおける配線の間隔は大変狭く、個々の配線の端子部にダミー端子を設ける十分なスペースを確保することが難しい。
【0005】
しかも、フレキシブルプリント回路においては、図1に示すように、配線パターンWP1を被覆した絶縁材料IMの境界領域には、絶縁材料IMによる段差部が形成されており、図2に示すように、該段差部に沿って余った半田BPが広がり易い。ダミー端子部分の構成では、このような段差部に沿った半田の広がりを抑制することは困難である。符号1は、半田の広がりにより短絡した部分を示している。また、符号EXは、絶縁材料が被覆されず、配線パターンが露出している部分、また、符号COは絶縁材料IMで被覆されている部分を示す。
【0006】
さらに、液晶表示装置では、液晶表示パネルに接続したフレキシブルプリント回路と、バックライトに接続したフレキシブルプリント回路とを、コネクタを介さず、フレキシブルプリント回路の端子同士と直接半田で接続することが行われている。これにより、コネクタによるスペースや厚みの増加を抑制し、液晶表示装置のコンパクト化を図ることができる。しかしながら、フレキシブルプリント回路同士を接続する場合には、より一層半田が上記段差部に沿って広がり易く、配線の短絡が発生し易くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−301725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、上述した問題を解消し、フレキシブルプリント回路の端子を半田で接続する場合でも、半田による配線間の短絡を抑制することが可能なフレキシブルプリント回路及びそれを用いた接続構造、並びに当該接続構造を有する表示素子モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の表示装置は、上述した課題を解決するため、以下のような特徴を有する。
【0010】
(1) フィルム上に形成された配線パターンを有し、該配線パターンの端子部は配線を露出させた露出部と絶縁材料で被覆された被覆部とを備えたフレキシブルプリント回路において、該端子部における配線同士の間には、該露出部と該被覆部に跨る貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0011】
(2) 上記(1)に記載のフレキシブルプリント回路において、該貫通孔の最小幅は0.4mm以上であることを特徴とする。
【0012】
(3) 上記(1)又は(2)に記載のフレキシブルプリント回路において、該露出部の配線には、配線の幅内に配置される複数の小孔が形成されていることを特徴とする。
【0013】
(4) 上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のフレキシブルプリント回路を用いた接続構造において、該フレキシブルプリント回路の該端子部を他の接続端子に半田を用いて接続し、該貫通孔から、余分な半田の少なくとも一部が除去されていることを特徴とする。
【0014】
(5) 上記(4)に記載のフレキシブルプリント回路を用いた接続構造において、前記他の接続端子は、他のフレキシブルプリント回路又はプリント回路基板の端子であることを特徴とする。
【0015】
(6) 上記(4)又は(5)に記載のフレキシブルプリント回路を用いた接続構造を有する表示素子モジュールにおいて、表示素子が液晶表示素子又は有機エレクトロルミネッセンス表示素子であることを特徴とする。
【0016】
(7) 上記(6)に記載のフレキシブルプリント回路を用いた接続構造を有する表示素子モジュールにおいて、該表示素子が液晶表示素子であり、液晶表示パネルに接続されたフレキシブルプリント回路とバックライトに接続された他のフレキシブルプリント回路との端子接続において該接続構造を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、フレキシブルプリント回路の端子部における配線同士の間には、絶縁材料の被覆が露出した露出部と被覆された被覆部に跨る貫通孔が形成されているため、絶縁材料による段差部に沿って半田が広がった際にも、配線同士の短絡を防止することができる。このため、半田による配線間の短絡を抑制することが可能なフレキシブルプリント回路及びそれを用いた接続構造、並びに当該接続構造を有する表示素子モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】フレキシブルプリント回路の端子部における接続状態を説明する断面図である。
【図2】従来のフレキシブルプリント回路の端子部における半田の広がりを説明する図である。
【図3】本発明のフレキシブルプリント回路における端子部の様子を説明する図である。
【図4】本発明のフレキシブルプリント回路の端子部における半田の広がりを説明する図である。
【図5】本発明のフレキシブルプリント回路における端子部の他の実施例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るフレキシブルプリント回路について、以下に詳細に説明する。図3は、本発明のフレキシブルプリント回路における端子部の様子を説明する図である。
【0020】
本発明のフレキシブルプリント回路の特徴は、フィルムRF上に形成された配線パターンWP1を有し、該配線パターンの端子部は配線を露出させた露出部EXと絶縁材料IMで被覆された被覆部COとを備えたフレキシブルプリント回路において、該端子部における配線同士の間には、該露出部と該被覆部に跨る貫通孔HL1が形成されていることである。
【0021】
貫通孔HLの幅(又は長さ)は、特に限定されないが、半田が貫通孔を通じて流出可能な程度の開口が必要であり、貫通孔の最小幅を0.4mm以上とすることが好ましい。
【0022】
図3に示すようなフレキシブルプリント回路を用いて半田接続を行うと、図4に示すように、露出部EXと被覆部COとの境界に沿って、半田BPが広がる。しかしながら、貫通孔HL1内に侵入した半田は、半田接続が完了した後、針状の先端を有する補助具で容易に除去できるため、半田による配線間の短絡を防止することが可能となる。
【0023】
また、本発明のフレキシブルプリント回路に係る他の実施例として、図5に示すように、露出部EXの配線WP1には、配線の幅内に配置される複数の小孔HL2を設けることができる。このような小孔により、余分な半田がフレキシブルプリント回路の外部に放出され、より一層半田による配線間の短絡を防止することが可能となる。また、これらの小孔から半田の存在が確認でき、半田が配線WP1のどの位置に存在しているのかも容易に判定することが可能となる。
【0024】
本発明は、上述したような構成を有するフレキシブルプリント回路を用いた接続構造を含む。本発明に係る接続構造では、図3又は図5に示すようなフレキシブルプリント回路を用いて、該フレキシブルプリント回路の該端子部(WP1)を他の接続端子(例えば、図1に示すような他の配線パターンWP2)に半田を用いて接続し、該貫通孔HL1から、余分な半田の少なくとも一部が除去し、配線間の半田による短絡が防止されている構造を有している。
【0025】
本発明の接続構造に利用される他の接続端子としては、フレキシブルプリント回路の端子や、プリント回路基板の端子であってもよい。また、液晶表示パネルなどのパネルを構成する基板上に形成された配線の端子であっても良い。
【0026】
さらに、本発明は、フレキシブルプリント回路を用いた接続構造を有する表示素子モジュールを含む。表示素子モジュールを構成する表示素子としては、液晶表示素子又は有機エレクトロルミネッセンス表示素子が利用可能である。特に、フレキシブルプリント回路を利用することが好ましい、小型化、薄型化が必要な電子機器には、本発明を好適に利用することができる。
【0027】
そして、当該表示素子が液晶表示素子である場合には、液晶表示パネルに接続されたフレキシブルプリント回路とバックライトに接続された他のフレキシブルプリント回路との端子接続において、上述したフレキシブルプリント回路を用いた接続構造を採用することで、コンパクト化を図った液晶表示モジュールを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
以上のように、本発明によれば、フレキシブルプリント回路の端子を半田で接続する場合でも、半田による配線間の短絡を抑制することが可能なフレキシブルプリント回路及びそれを用いた接続構造、並びに当該接続構造を有する表示素子モジュールを提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0029】
BP 半田
CO 被覆部
EX 露出部
FPC フレキシブルプリント回路
HL1 貫通孔
HL2 小孔
IM 絶縁材料
RF フィルム
WP1,WP2 配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム上に形成された配線パターンを有し、該配線パターンの端子部は配線を露出させた露出部と絶縁材料で被覆された被覆部とを備えたフレキシブルプリント回路において、
該端子部における配線同士の間には、該露出部と該被覆部に跨る貫通孔が形成されていることを特徴とするフレキシブルプリント回路。
【請求項2】
請求項1に記載のフレキシブルプリント回路において、該貫通孔の最小幅は0.4mm以上であることを特徴とするフレキシブルプリント回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のフレキシブルプリント回路において、該露出部の配線には、配線の幅内に配置される複数の小孔が形成されていることを特徴とするフレキシブルプリント回路。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のフレキシブルプリント回路を用いた接続構造において、該フレキシブルプリント回路の該端子部を他の接続端子に半田を用いて接続し、該貫通孔から、余分な半田の少なくとも一部が除去されていることを特徴とするフレキシブルプリント回路を用いた接続構造。
【請求項5】
請求項4に記載のフレキシブルプリント回路を用いた接続構造において、前記他の接続端子は、他のフレキシブルプリント回路又はプリント回路基板の端子であることを特徴とするフレキシブルプリント回路を用いた接続構造。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のフレキシブルプリント回路を用いた接続構造を有する表示素子モジュールにおいて、表示素子が液晶表示素子又は有機エレクトロルミネッセンス表示素子であることを特徴とするフレキシブルプリント回路を用いた接続構造を有する表示素子モジュール。
【請求項7】
請求項6に記載のフレキシブルプリント回路を用いた接続構造を有する表示素子モジュールにおいて、該表示素子が液晶表示素子であり、液晶表示パネルに接続されたフレキシブルプリント回路とバックライトに接続された他のフレキシブルプリント回路との端子接続において該接続構造を用いることを特徴とするフレキシブルプリント回路を用いた接続構造を有する表示素子モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−49202(P2011−49202A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193943(P2009−193943)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(502356528)株式会社 日立ディスプレイズ (2,552)
【Fターム(参考)】