説明

フレキシブルプリント基板の製造方法

【課題】液晶性ポリマー(LCP)を基材に用いた高精細且つ高周波用途に適したフレキシブルプリント基板の作製方法を提供すること。
【解決手段】液晶性ポリマー(LCP)からなる樹脂フィルムに脱脂処理をしたのち、導電体金属を蒸発源として金属薄膜の膜厚が1μm以下となるようにLCPフィルム上に蒸着させた後、電気メッキを1μm以上30μm以下形成して、ポリマーフィルムと金属膜との密着性を高めたフレキシブルプリント基板を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板の作製方法等に関し、より詳しくは、液晶性ポリマー(以下、「LCP」と記する)フィルムを基板に有する高精密且つ高周波用途に適したフレキシブルプリント基板の作成方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器の高速化、高密度化に伴い、配線基板の高機能化が要求されている。特に、携帯機器の進展に伴い、携帯電話用途、携帯音楽機器や液晶ディスプレイ用途においては配線基板のフレキシブル性が必須で、これに対応したいわゆるフレキシブルプリント基板(以下、「フレキ基板」と記する)の開発が活発に進められている。
【0003】
現在量産されているフレキ基板の配線は、ライン/スペースとして35μm〜70μm程度である。さらに、高周波対応として、パターンの微細化に対応できる素材、高周波での電気特性を劣化させない素材、平坦性が重要であり、基板との界面の凹凸ができるだけ少ないことが望まれる。また、フレキ基板の基材はポリイミドフィルムが使用されているが、最近では、低吸湿性且つ絶縁性に優れたLCPが使用されはじめた。(非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−306099号公報
【特許文献2】特開2007−247026号公報
【特許文献3】特開2007−245645号公報
【特許文献4】特開2007−245646号公報
【特許文献5】特開平9−555575号公報
【特許文献6】特開2000−16503号公報
【特許文献7】特開2000−340911号公報
【特許文献8】特開2002−176242号公報
【特許文献9】特開2005−15861号公報
【特許文献10】特開2003−64431号公報
【特許文献11】特開2003−180157号公報
【特許文献12】特開2002−09420号公報
【特許文献13】特開2006−135179号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】小野寺稔、「マイクロファブリケーションを支える新材料技術−3.回路 基板用液晶ポリマーフィルムの開発と応用」、マイクロファブリケーション研究会第14回公開研究会、社団法人エレクトロニクス実装学会、平成16年9月8日、p16−22
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ポリイミド等のフレキ基板用フィルム上に銅箔膜を形成する方法として、密着性を確保するために、通常、NiまたはCr等を含む銅の薄膜を接着層としてスパッタで形成したのち、電気めっきをする(特許文献1,2,3,4参照)。続いて配線のパターニングにおけるエッチング工程では銅をエッチングする工程だけでなく、これらのNi、Cr等もエッチングするなどの工程が追加されるという問題がある。(特許文献5,6,7,8,9,10,11参照)また、Niは磁性金属であるため、高周波用途において支障を来たすおそれがある。
【0007】
またスパッタ法だけで、ポリイミド等のフレキ基板用フィルム上に銅箔膜を形成する方法も提案されている。(特許文献12参考)。しかし、スパッタ法だけで銅箔の膜厚を12μmまで形成するには多大な時間を要して、実用的ではない。
【0008】
スパッタ法によるシード層形成でのこのような問題は、無電界メッキ法を使えばある程度解消される。(特許文献13参照)即ち、無電界メッキによれば、プロセス効率が高まるとともに、フレキ基板用フィルム上にCu膜等のシード層を直接形成することが可能である。しかし、従来行われているプラスチックフィルム上の無電界メッキは、前処理によりプラスチックフィルム表面に凹凸を形成し、いわゆるアンカー効果によってメッキ層を付着させる。例えば、ポリイミドの場合は、一般に、コンディショナーとよばれる前処理剤によってフレキ基板用フィルムの表面粗化処理が行われている。しかし、表面の凹凸は高周波用途では信号の散乱現象を引き起こし、適さない。
【0009】
特に、LCPでは、スパッタ等の乾式法及びメッキ等の湿式法のいずれの方法を採用しても、LCPに対する金属膜の付着性が低く、現状では、LCPフィルム上にシード層を形成することが困難である。これは、LCPの分子が、主としてベンゼン環を骨格とした構造を有するため、高周波基板としての高い絶縁性及び低吸湿性を示すにも拘らず、LCPの表面安定性が高く、その結果、表面付着性が低下するものと考えられる。
【0010】
このため、LCPを用いた配線基板は、銅箔貼り付けタイプに限られ、LCPは、素材自体の絶縁性質が優れているにも拘らず、高周波用途の高精細基板としての使用形態が制約されているという問題があった。
このように、LCPを基材に用いて、簡単且つ低コストの工程によりシード層を形成した配線基板用フィルム基材の作製方法及びフレキシブルプリント基板が望まれている。
【0011】
本発明は、上述した技術的課題を解決するためになされたものである。
即ち、本発明の目的は、LCPを基材に用いた高精細且つ高周波用途に適した配線基板用フィルム基材の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的のもと、本発明によれば、LCPからなる樹脂フィルムの少なくとも片面に真空蒸着により1μm以下の膜厚で導電性金属薄膜を形成するステップと、所定の金属箔膜厚までめっき処理するステップと加熱乾燥するステップとを有することを特徴とする配線基板用フィルム基材の作製方法である。
【0013】
本発明が適用される配線基板用フィルム基材の作製方法において、下地層を形成する方法として真空蒸着法が優れている。この下地層はフィルム基板と金属薄膜との密着強度を保つために、銅結晶の大きさを、0.1μm以下に制御することを特徴とする。
【0014】
本発明が適用される配線基板用フィルム基材の作製方法において、メッキ処理は電気めっき処理が好ましい。
【0015】
また、本発明が適用される配線基板用フィルム基材の作製方法における加熱処理は、LCPのガラス転移温度より高温で、且つ、LCPの分解温度より低い温度で樹脂フィルムを加熱することが好ましい。また、加熱乾燥処理は金属箔の損傷を防ぐため、窒素やアルゴンなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。このような条件で樹脂フィルムを加熱することにより、金属膜とLCPとの付着性を高めることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、LCPを基材に用いた高精細且つ高周波用途に適した配線基板用フィルム基材の作製方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施の形態が適用されるフレキ基板の作製のための蒸着装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態(実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。ポリマーフィルム11を構成するLCPとしては、サーモトロピック液晶等の従来公知の各種LCPを使用することができる。サーモトロピックLCPとしては、例えば、液晶性ポリエステル、液晶性ポリエステルイミド等、具体的には(全)芳香族ポリエステル、ポリエステルアミド、ポリエステルカーボネート等が挙げられる。これらのなかでも、液晶性ポリエステルが好ましい。
【0019】
LCPフィルムはフィルム作成時に表面付着した不純物を除去する目的で、脱脂処理を施す。通常はメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトンなどのケトン類の溶液に浸漬して処理を行う。場合によっては、これらの液体を浸み込ませた紙、布、不織布などで拭いてもよい。また、一般にプリント基板で広く使用されている希塩酸などの酸水溶液、界面活性剤を含む水溶液で洗浄してもよい。
【0020】
図1は、本実施の形態が適用される配線基板用フィルム基材を作製するための蒸着装置を説明するための図である。
LPCフィルム11は蒸着装置の固定治具14を介して、蒸着ボート12の上方に固定する。蒸着ボートの上に蒸発源となる金属13を置く。固定治具はLCPフィルムの温度を一定に保つため、ヒーターが内臓してある。また、LCPフィルムの表面温度を一定に保つため、蒸発ボートとLCPフィルムとの間に加熱ヒーター15が設置されている。
【0021】
LCPフィルム11はヒーター内臓の固定治具14に固定した後、蒸着ボート12の上方に固定する。続いて、装置全体を真空ポンプ16で排気し、真空計測器17で測定した装置内部の圧力が10−1Pa以下となるまで排気する。このとき、蒸着中のLCPフィルムの温度を一定にする目的で、固定治具14と加熱ヒーター15で加熱し、150℃以上とする。
【0022】
装置の圧力が10−1Pa以下に達したら、蒸着ボート12に電流を印加して加熱する。蒸発源である金属13は溶融し、蒸着が開始される。このときLCPに付着する金属の結晶粒界の大きさを0.5μm以下にすればよく、金属付着量は0.1〜10オングストローム毎秒であれば達成できる。
【0023】
LCPフィルムに付着する金属の膜厚は1μm以下でよく、続く工程のめっき処理で厚膜めっきができればよい。金属の厚さが0.1μm以下の過度に小さいと、めっき処理での膜化が不十分でムラが生じるとともに、通電膜等としての機能を損なう傾向がある。金属の厚さが1μm以上の過度に大きいと、膜質の劣化、歪の増大をまねく傾向がある。通常は0.1μmから0.5μmが最適である。
【0024】
また、蒸着中のLCPフィルム温度は金属の結晶の大きさとLCPと金属箔との密着強度を大きく影響させるため厳密に制御されなければならない。LCPフィルム温度は100℃以上、LCPフィルムの分解開始温度以下がよい。望ましくは180℃から250℃で、その範囲で選択される。
【0025】
続いて、蒸着金属付きLCPフィルムは、添加剤でめっき応力を調整した、電気めっきをおこない必要な膜厚にする。
【0026】
銅の電気めっきは基板用のハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、荏原ユージライト社製のCu−Brite HA−Eまたは、メルテックス社製のST−901を添加し、調整した硫酸銅めっき液で、5〜30μmの厚さになるようにめっき処理施した。
【0027】
また金のめっきは通常使われる 青化金2.3g/Lと青化カリ15g/Lおよびリン酸ソーダ4g/Lとからなるめっき浴を使用し、70℃で電流密度を0.1〜0.5A/dmに調整して電気めっきを行う。
【0028】
次に、めっき処理により形成された金属膜を有するLCPフィルムを加熱処理し、金属箔膜とLCPフィルムとの密着性が高められた配線基板用フィルム基材を作製する(加熱処理)。加熱処理の条件は、LCPフィルムの種類により適宜選択されるが、通常、めっき処理の処理温度(通常、15℃〜120℃程度)よりも高温で、且つ、LCPの耐熱温度より低温において適当な時間行われる。例えば、温度200℃で30分間程度の加熱処理が好ましい。
【0029】
このように、めっき処理により、LCPからなる樹脂フィルム表面に金属箔膜を形成した後、LCPフィルムを加熱処理することにより、LCPフィルムと金属箔膜との密着力が高められる。これは、加熱処理により、LCPを構成するポリマーの微細構造(ミクロ構造)が、温度で変化する過程で、LPCと銅箔膜との界面が活性化された状態になり、その結果、結合が強まるためと考えられる。
通常、LPCは、耐熱温度以下であれば、微細構造(ミクロ構造)は変化するが、電気的性質、吸水性、寸法安定性等のフィルムとしての実用的性質に変化が生じるほどのマクロな変化は生じない。また、めっき処理は、通常、100℃程度の温度において行われるのでLPCの微細構造(ミクロ構造)の変化は軽微であり、実質的影響は生じない。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例に基づき本実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本実施の形態は実施例に限定されるものではない。
(テープ剥離試験)
予め調製した配線基板用フィルム基材のメッキ膜面に、幅15mm、長さ40mmの粘着テープを、接着面長さ20mmになるように貼り付け、その後、粘着テープの他端を引き上げて、そのときの剥離状況を目視で観察した。
【0031】
(実施例1)
厚さ25μmのLCPフィルム11(株式会社クラレ製;Vecstar(登録商標) CT)を準備し、このLCPフィルム表面を、イソプロピルアルコールを含ませた不織布で表面をこすり、脱脂処理をした。続いて、LCPフィルムを固定板14に固定し、真空蒸着装置の蒸発ボート12上に固定する。蒸発ボートに蒸発源である銅金属(純度99.99%)13の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.3μmとなるようにして置く。真空装置内を真空ポンプ16で排気し、同時に固定治具のヒーター14と加熱ヒーター15とに通電して、LCPフィルム11を加熱する。LCPフィルムの温度が200℃に達したら通電を停止し、さらに真空蒸着装置内の圧力が10−2Paとなったら、蒸発ボート12を加熱して、蒸着を開始する。銅金属13の塊が消失したら通電をやめる。LCPフィルム11が50℃以下に冷却できたことを確認したら、真空ポンプ16の排気を停止し、リークバルブ18を開とし、真空装置内を常圧に戻す。このとき形成された銅箔の結晶粒界の大きさをSEMにて観察した結果、0.1μm以下であった。つづいて、LCPフィルムをハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、荏原ユージライト社製のCu−Brite HA−Eを加えた浴中に投入し、銅箔の膜厚が18μmとした。次いで、窒素雰囲気中で、温度200℃で30分間の熱処理を行い、LCP配線基板用フィルム基材を調製した。
このように調製した配線基板用フィルム基材のテープ剥離試験を行ったが、テープが剥離せず、LCPフィルムと銅箔膜との高い付着強度が確認された。
【0032】
(実施例2)
厚さ25μmのLCPフィルム11(株式会社クラレ製;Vecstar(登録商標) CT)を準備し、このLCPフィルム表面を、イソプロピルアルコールを含ませた不織布で表面をこすり、脱脂処理をした。続いて、LCPフィルムを固定板14に固定し、真空蒸着装置の蒸発ボート12上に固定する。蒸発ボートに蒸発源である銅金属(純度99.99%)13の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.1μmとなるようにして置く。真空装置内を真空ポンプ16で排気し、同時に固定治具のヒーター14と加熱ヒーター15とに通電して、LCPフィルム11を加熱する。LCPフィルムの温度が230℃に達したら通電を停止し、さらに真空蒸着装置内の圧力が10−3Paとなったら、蒸発ボート12を加熱して、蒸着を開始する。銅金属13の塊が消失したら通電をやめる。LCPフィルム11が50℃以下に冷却できたことを確認したら、真空ポンプ16の排気を停止し、リークバルブ18を開とし、真空装置内を常圧に戻す。このとき形成された銅箔の結晶粒界の大きさをSEMにて観察した結果、0.01μm以下であった。つづいて、LCPフィルムを基板用のハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、メルテックス社製のST−901を添加した浴中に入れ、銅箔の膜厚が12.5μmとした。次いで、窒素雰囲気中で、温度200℃で30分間の熱処理を行い、LCP配線基板用フィルム基材を調製した。
このように調製した配線基板用フィルム基材のテープ剥離試験を行ったが、テープが剥離せず、LCPフィルムと銅箔膜との高い付着強度が確認された。
【0033】
(実施例3)
厚さ25μmのLCPフィルム11(株式会社クラレ製;Vecstar(登録商標) CT)を準備し、このLCPフィルム表面を、イソプロピルアルコールを含ませた不織布で表面をこすり、脱脂処理をした。続いて、LCPフィルムを固定板14に固定し、真空蒸着装置の蒸発ボート12上に固定する。蒸発ボートに蒸発源である金(純度99.99%)13の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.1μmとなるようにして置く。真空装置内を真空ポンプ16で排気し、同時に固定治具のヒーター14と加熱ヒーター15とに通電して、LCPフィルム11を加熱する。LCPフィルムの温度が230℃に達したら通電を停止し、さらに真空蒸着装置内の圧力が10−3Paとなったら、蒸発ボート12を加熱して、蒸着を開始する。金13の塊が消失したら通電をやめる。LCPフィルム11が50℃以下に冷却できたことを確認したら、真空ポンプ16の排気を停止し、リークバルブ18を開とし、真空装置内を常圧に戻す。このとき形成された金の結晶粒界の大きさをSEMにて観察した結果、0.01μm以下であった。つづいて、LCPフィルムを基板用の金めっき(青化金2.3g/L 青化カリ15g/L リン酸ソーダ4g/L)からなるめっき浴に入れ 70℃ 電流密度 0.1〜0.5A/dm で電気めっきを行い、金の膜厚を1μmとした。次いで、窒素雰囲気中で、温度200℃で30分間の熱処理を行い、LCP配線基板用フィルム基材を調製した。
このように調製した配線基板用フィルム基材のテープ剥離試験を行ったが、テープが剥離せず、LCPフィルムと金箔膜との高い付着強度が確認された。
【0034】
(比較例)
厚さ25μmのLCPフィルム11(株式会社クラレ製;Vecstar(登録商標) CT)を準備し、このLCPフィルム表面を、イソプロピルアルコールを含ませた不織布で表面をこすり、脱脂処理をした。続いて、LCPフィルムを固定板14に固定し、真空蒸着装置の蒸発ボート12上に固定する。蒸発ボートに蒸発源である銅金属(純度99.99%)13の塊を蒸着後にLCPフィルム上に付着する量が0.5μmとなるようにして置く。真空装置内を真空ポンプ16で排気し、同時に固定治具のヒーター14と加熱ヒーター15とに通電して、LCPフィルム11を加熱する。LCPフィルムの温度が130℃に達したら通電を停止し、さらに真空蒸着装置内の圧力が10−2Paとなったら、蒸発ボート12を加熱して、蒸着を開始する。銅金属13の塊が消失したら通電をやめる。LCPフィルム11が50℃以下に冷却できたことを確認したら、真空ポンプ16の排気を停止し、リークバルブ18を開とし、真空装置内を常圧に戻す。このとき形成された銅箔の結晶粒界の大きさをSEMにて観察した結果、1μm以下であった。つづいて、LCPフィルム基板用のハイスロータイプの硫酸銅基本浴(硫酸銅:75g/L 硫酸:180g/L 塩素:40ppm)に市販の添加剤、メルテックス社製のST−901を添加した浴中に入れ、銅箔の膜厚が12.5μmとした。次いで、窒素雰囲気中で、温度200℃で30分間の熱処理を行い、LCP配線基板用フィルム基材を調製した。このように調製した配線基板用フィルム基材のテープ剥離試験を行ったところ、テープが銅箔をLCPフィルムから剥離し、LCPと銅箔膜とは実用には十分な付着強度がなかった。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明が適用される配線基板用フィルム基材の作製方法によれば、LCPフィルムとの密着性が高い蒸着銅箔膜を設けたフレキシブルプリント基板を作製することができる。このようなフレキ基板は、配線基板以外の種々の用途に適用可能であり、例えば、電磁シールド、反射フィルム等が考えられる。
【符号の説明】
【0036】
11 配線基板用フィルム基材
12 蒸着ボート
13 蒸発源(金属)、
14 LCP固定治具、
15 加熱ヒーター、
16 真空ポンプ、
17 真空圧力計、
18 リークバルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電体金属を蒸発源としてこの金属薄膜の膜厚が1μm以下となるように液晶性ポリマーフィルム上に蒸着させた後、電気めっきで膜厚1μm以上30μm以下で金属を膜形成した後、加熱乾燥することを特徴とするフレキシブルプリント基板の作製方法。
【請求項2】
導電体金属を蒸発源として蒸着法で形成した金属薄膜の結晶の大きさが、0.1μm以下であることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板の作製方法。
【請求項3】
前記蒸発源の導電体金属として、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、クロムから選ばれる一つまたは、これらの混合物からなることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板の作製方法。
【請求項4】
前記電気めっきとして、銅、金、銀、ニッケル、クロムから選ばれる一つまたは、これらの混合物からなることを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板の作製方法。
【請求項5】
前記電気めっきによる金属箔を形成した後加熱乾燥として、液晶性ポリマーフィルムのガラス転移温度以上でかつ、分解開始温度以下で処理することを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板の作製方法。
【請求項6】
前記加熱乾燥として、窒素、アルゴンなどの不活性ガス中で処理することを特徴とする請求項1記載のフレキシブルプリント基板の作製方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−165877(P2010−165877A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7131(P2009−7131)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(500558687)株式会社ファインテック (5)
【Fターム(参考)】