説明

フレキシブルプリント配線板

【課題】導体配線のファインピッチ化に対応できるフレキシブル配線板を提供することを目的とする。
【解決手段】フレキシブルプリント配線板1は、第1の接続配線部6を有する第1のフレキシブルプリント配線板2と、接着剤層5を介して、第1の接続配線部6に接続される第2の接続配線部14を有する第2のフレキシブルプリント配線板3を備えている。そして、接着剤層5は、導電性微粒子を含む異方導電性接着剤であり、導電性微粒子は、微細な粒子が、多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有している。また、導電性微粒子の短径は1μm以下であり、かつアスペクト比は5以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器の部品として用いられるフレキシブルプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器分野においては、電子機器の高密度化に伴い、例えば、電子機器類の可動部への配線などの用途に、フレキシブルプリント配線板が広く用いられている。また、電子機器類の小型化および高機能化に伴って、複数のフレキシブルプリント配線板を接続することにより形成された、種々の形状を有するフレキシブルプリント配線板が使用されている。
【0003】
複数のフレキシブルプリント配線板の接続構造としては、例えば、異方導電性接着剤を用いて、複数のフレキシブルプリント配線板を接続する構造が知られている。より具体的には、異方導電性接着剤を介して、第1のフレキシブルプリント配線板に設けられた金属製のバンプと、第2のフレキシブルプリント配線板に設けられた接続パッドを電気的に接続することにより、第1、第2のフレキシブルプリント配線板を接続する構造が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−58996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、近年の高密度実装化に伴って、フレキシブルプリント配線板に形成された接続配線部を構成する導体配線のピッチがますます狭くなり、ファインピッチ化が進んでいる。従って、複数のフレキシブルプリント配線板を接続する際には、各フレキシブルプリント配線板において、ファインピッチで形成された導体配線(例えば、最小ピッチが100μm以下の導体配線)間を確実に接続することが必要になる。
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のバンプによる接続においては、第1のフレキシブルプリント配線板に金属製のバンプを設けるための貫通孔を形成するとともに、当該貫通孔にバンプを形成し、第1のフレキシブルプリント配線板の表面からバンプを突出させる構成としているため、フレキシブルプリント配線板において、導体配線のピッチを狭めることができない。従って、ファインピッチで導体配線を形成して、導体配線間を接続することができず、結果として、上述の導体配線のファインピッチ化に対応できないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、導体配線のファインピッチ化に対応できるフレキシブル配線板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、第1のフレキシブルプリント配線板と、第2のフレキシブルプリント配線板と、を備えるフレキシブルプリント配線板において、第1のフレキシブルプリント配線板に設けられた第1の接続配線部と、第2のフレキシブルプリント配線板に設けられた第2の接続配線部が接着剤層を介して接続されており、接着剤層が、導電性微粒子を含む異方導電性接着剤であり、導電性微粒子が、微細な粒子が、多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有するとともに、導電性微粒子の短径が1μm以下であり、かつアスペクト比が5以上であることを特徴とする。なお、ここでいう「導電性微粒子の短径」とは、導電性微粒子の断面の長さのことをいう。
【0008】
同構成によれば、上述の従来技術におけるバンプや貫通孔が不要になるため、第1、第2の接続配線部を構成する配線のピッチを狭めることが可能になる。従って、第1、第2のフレキシブルプリント配線板の各々において、第1、第2の接続配線部を構成する配線をファインピッチ(例えば、最小のピッチが100μm以下)で形成することができるとともに、これらの第1の接続配線部を構成する配線−第2の接続配線部を構成する配線間を接続することが可能になり、配線のファインピッチ化に対応することができる。
【0009】
また、接着剤層として、導電性微粒子を含む異方導電性接着剤を使用する場合に、導電性微粒子間の接触確率が高くなる。従って、導電性微粒子の配合量を増やすことなく、むしろ低減しても第1の接続配線部を構成する配線−第2の接続配線部を構成する配線間を接続することが可能になり、結果として、フレキシブルプリント配線板の製造コストを安くすることが可能になる。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板であって、第1のフレキシブルプリント配線板が、片面フレキシブルプリント配線板であるとともに、第2のフレキシブルプリント配線板が、両面フレキシブルプリント配線板であることを特徴とする。同構成によれば、複雑な形状、および構造を有するフレキシブルプリント配線板を、第1、第2の接続配線部を構成する配線のファインピッチ化に対応させて、製造することが可能になる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板であって、導電性微粒子が、前記第1、第2の接続配線部の接続前の状態において、前記接着剤層の厚み方向に配向していることを特徴とする。
【0012】
同構成によれば、異方導電性接着剤の面方向における高い導電抵抗によって隣り合う配線間の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、異方導電性接着剤の厚み方向における低い導電抵抗によって、多数の第1の接続配線部を構成する配線−第2の接続配線部を構成する配線間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。なお、第1、第2の接続配線部の接続後の状態においても、導電性微粒子が、接着剤層の厚み方向に配向していることが好ましい。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板であって、第1の接続配線部を構成する複数の配線の配線間距離の最小値、又は第2の接続配線部を構成する複数の配線の配線間距離の最小値、のいずれか小さい方をGMin、導電性微粒子の長径の最大値をLMAXとした場合に、GMin>LMAXの関係を有することを特徴とする。なお、ここでいう「導電性微粒子の長径」とは、導電性微粒子の長さのことをいう。
【0014】
同構成によれば、第1の接続配線部と第2の接続配線部を接続する際の加圧により、導電性微粒子の配向に乱れが生じる場合においても、第1の接続配線部を構成する複数の配線間、および第2の接続配線部を構成する複数の配線間の絶縁を維持して、短絡を確実に防止しつつ、第1の接続配線部を構成する配線−第2の接続配線部を構成する配線間を導電接続することが可能になる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のフレキシブルプリント配線板であって、第1の接続配線部を構成する複数の配線の最大高さと最小高さの差、又は第2の接続配線部を構成する複数の配線の最大高さと最小高さの差、のいずれか大きい方をHMAXとした場合に、LMAX>HMAXの関係を有することを特徴とする。
【0016】
同構成によれば、第1、第2の接続配線部を構成する配線の高さにバラツキがあるために、第1の接続配線部を構成する配線と第2の接続配線部を構成する配線の距離にバラツキが生じている場合であっても、第1の接続配線部を構成する配線−第2の接続配線部を構成する配線間を確実に導電接続することが可能になる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板であって、第1、第2のフレキシブルプリント配線板の各々に、異方導電性接着剤との接続を補強するための補強部材が設けられていることを特徴とする。
【0018】
同構成によれば、第1、第2の接続配線部の各々と異方導電性接着剤との接続箇所が補強されるため、異方導電性接着剤が、第1、第2の接続配線部の各々から剥離する等の不都合を防止することが可能になる。従って、第1の接続配線部を構成する配線−第2の接続配線部を構成する配線間の接続信頼性を向上することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、配線のファインピッチ化に対応することができるフレキシブルプリント配線板を得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の構成を示す概略図であり、図2は、図1のA−A断面図である。また、図3は、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第1のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図であり、図4は、本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第2のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図である。また、図5は、図1のB−B断面の一部を示す部分断面図である。なお、本実施形態においては、片面フレキシブルプリント配線板と両面フレキシブルプリント配線板の接続を例に挙げて説明する。
【0021】
図1、図2に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1は、接着剤層5を介して、第1のフレキシブルプリント配線板2と、第2のフレキシブルプリント配線板3が接着されたものである。
【0022】
第1のフレキシブルプリント配線板2は、柔軟な樹脂フィルムにて形成された基材4の片面に、所定のピッチPにより形成された導体配線25(後述の図5を参照)から構成される第1の接続配線部6を有する、いわゆる片面フレキシブルプリント配線板であって、当該第1の接続配線部6を覆うように、絶縁層であるカバーレイフィルム7を設けたものである。なお、ここでいう「絶縁層」とは、第1の接続配線部6を保護するためのものをいい、カバーレイフィルム7や、後述のカバーコート層等を含むものである。
【0023】
また、図3に示すように、第1のフレキシブルプリント配線板2には、第1の接続配線部6を、第2のフレキシブルプリント配線板3に設けられた第2の接続配線部14(後述の図4参照)と電気的に接続すべく、カバーレイフィルム7を形成せずに外部に露出させた第1の接続部8が設けられている。なお、図3に示すように、本実施形態においては、当該第1の接続部8は、第1の接続配線部6と略同一の高さに設けられている。
【0024】
また、図3に示すように、カバーレイフィルム7は、第1の接続配線部6を覆うべく、第1の接続配線部6上に積層された接着剤層9とその上に積層された樹脂フィルム10により構成されている。
【0025】
第2のフレキシブルプリント配線板3は、柔軟な樹脂フィルムにて形成された基材11の両面の各々に、所定のピッチPにより形成された導体配線26(後述の図5を参照)から構成される第2の接続配線部14と導体配線部15を有する、いわゆる両面フレキシブルプリント配線板であって、当該第2の接続配線部14と導体配線部15を覆うように、その両面に2層の絶縁層であるカバーレイフィルム16、17を設けたものである。
【0026】
また、図4に示すように、第2のフレキシブルプリント配線板3には、第2の接続配線部14を、第1のフレキシブルプリント配線板2に設けられた第1の接続配線部6と電気的に接続すべく、カバーレイフィルム16を形成せずに外部に露出させた第2の接続部18が設けられている。なお、図4に示すように、本実施形態においては、当該第2の接続部18は、第2の接続配線部14と略同一の高さに設けられている。
【0027】
また、図4に示すように、カバーレイフィルム16、17のうち、カバーレイフィルム16は、第2の接続配線部14を覆うべく、第2の接続配線部14上に積層された接着剤層19とその上に積層された樹脂フィルム20により構成されている。また、カバーレイフィルム17は、導体配線部15を覆うべく、導体配線部15上に積層された接着剤層21とその上に積層された樹脂フィルム22により構成されている。
【0028】
そして、図1に示すように、第1のフレキシブルプリント配線板2に設けられた第1の接続配線部6と、第2のフレキシブルプリント配線板3に設けられた第2の接続配線部14が接着剤層5を介して接続される構成となっている。
【0029】
基材4、11を構成する樹脂フィルムとしては、柔軟性に優れた樹脂材料からなるものが使用される。かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルムなどの、フレキシブルプリント配線板用として汎用性のある樹脂のフィルムがいずれも使用可能である。また、特に、柔軟性に加えて高い耐熱性をも有しているのが好ましく、かかる樹脂フィルムとしては、例えば、ポリアミド系の樹脂フィルムや、ポリイミド、ポリアミドイミドなどのポリイミド系の樹脂フィルムやポリエチレンナフタレートが好適に使用される。
【0030】
また、本実施形態においては、基材4、11の表面に、銅箔等の金属箔を積層し、当該金属箔を常法により露光、エッチングして、第1、第2の接続配線部6、14、および導体配線部15を形成しても良いが、当該第1、第2の接続配線部6、14、および導体配線部15を、導電性ペーストを印刷することにより形成することが好ましい。このような方法を使用することにより、金属箔を使用する際に必要な露光やエッチングが不要になるため、第1、第2のフレキシブルプリント配線板2、3(即ち、フレキシブルプリント配線板1)の製造コストが安価になるからである。なお、導電性ペーストを印刷する方法としては、例えば、スクリーン印刷法や凹版印刷法が挙げられる。また、第1、第2の接続配線部6、14のいずれか一方のみを、導電性ペーストにより形成する構成としても良い。
【0031】
導電性ペーストとしては、例えば、導電性粉末、バインダー樹脂、硬化剤および溶剤を主成分とする熱硬化型の導電性ペーストが使用できる。ここで、導電性粉末としては、例えば、銀、ニッケル、銅を使用できる。また、バインダー樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂を使用することができる。また、硬化剤としては、例えば、バインダー樹脂として、ポリエステル樹脂を使用する場合にはイソシアネート化合物を使用することができ、エポキシ樹脂を使用する場合にはアミン化合物、イミダゾール化合物を使用することができる。さらに、溶剤としては、例えば、セロソルブ、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルカルビトールアセテートを使用することができる。そして、上述のスクリーン印刷法等により、導電性ペーストを、基材4、11の表面に塗布するとともに、加熱処理を施してバインダー樹脂を硬化させることにより、第1、第2の接続配線部6、14、および導体配線部15が形成される。
【0032】
また、樹脂フィルム10、20、22としては、上述の基材4、11を構成する樹脂フィルムと同様のものを使用することができる。また、接着剤層9、19、21を構成する接着剤としては、柔軟性や耐熱性にすぐれたものが好ましく、かかる接着剤としては、例えば、ナイロン系、エポキシ樹脂系、ブチラール樹脂系、アクリル樹脂系などの、各種の樹脂系の接着剤が挙げられる。
【0033】
また、第1、第2のフレキシブルプリント配線板2、3は、従来と同様にして製造することができる。即ち、例えば、第2のフレキシブルプリント配線板3においては、柔軟な樹脂フィルムにて形成された基材11の両面の各々に、導電性ペーストを、上述のスクリーン印刷法により印刷することにより、各面に形成された第2の接続配線部14、および導体配線部15を有する両面板を作製する。次いで、この両面板の両面の各々に、接着剤層付きの樹脂フィルムをラミネートして、2層のカバーレイフィルム16、17を貼り合わせれば良い。
【0034】
ここで、本実施形態のフレキシブルプリント配線板1においては、第1の接続配線部6と、第2の接続配線部14とを接続する接着剤層5として、図5に示すように、導電性微粒子24を含む異方導電性接着剤を使用する構成としている。この異方導電性接着剤としては、例えば、エポキシ樹脂等の絶縁性の熱硬化性樹脂23を主成分とし、当該樹脂23中に導電性微粒子24が分散された接着剤が使用できる。また、異方導電性接着剤に使用される導電性微粒子24としては、例えば、球状の金属微粒子や、金属でめっきされた球状の樹脂粒子を使用することができるが、本実施形態においては、微細な粒子が多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有する、所謂アスペクト比が大きい形状を有するものを使用する構成としている。なお、ここで言うアスペクト比とは、導電性微粒子24の短径R(導電性微粒子24の断面の長さ)と長径L(導電性微粒子24の長さ)の比のことを言う(図6参照)。
【0035】
そして、本実施形態においては、導電性微粒子24として、微細な粒子が、多数、直鎖状に繋がった形状あるいは針形状を有する導電性微粒子24を使用する場合に、当該導電性微粒子24の短径Rが1μm以下であり、かつアスペクト比が5以上である点に特徴がある。このような導電性微粒子24を使用することにより、上述の従来技術におけるバンプや貫通孔が不要になり、第1、第2の接続配線部6、14を構成する導体配線25、26のピッチP、Pを狭めることが可能になる。従って、各フレキシブルプリント配線板2、3において、第1、第2の接続配線部6、14を構成する導体配線25、26をファインピッチ(例えば、最小のピッチが100μm以下)で形成することができるとともに、これらの導体配線25−導体配線26間を接続することが可能になり、導体配線25、26のファインピッチ化に対応することができる。
【0036】
また、接着剤層5として、導電性微粒子24を含む異方導電性接着剤を使用する場合に、導電性微粒子24間の接触確率が高くなる。従って、導電性微粒子24の配合量を増やすことなく、むしろ低減しても導体配線25−導体配線26間を接続することが可能になり、結果として、フレキシブルプリント配線板1の製造コストを安くすることが可能になる。
【0037】
また、第1のフレキシブルプリント配線板2として、片面フレキシブルプリント配線板を使用するとともに、第2のフレキシブルプリント配線板3として、両面フレキシブルプリント配線板を使用することにより、複雑な形状、および構造を有するフレキシブルプリント配線板1を、導体配線25、26のファインピッチ化に対応させて、製造することが可能になる。
【0038】
なお、導電性微粒子24のアスペクト比は、CCD顕微鏡観察等の方法により直接測定するが、断面が円でない導電性微粒子24の場合は、断面の最大長さを短径Rとしてアスペクト比を求める。また、導電性微粒子24は、必ずしもまっすぐな形状を有している必要はなく、多少の曲がりや枝分かれがあっても、問題なく使用できる。この場合、導電性微粒子24の最大長さを長径Lとしてアスペクト比を求める。
【0039】
また、特に、図5に示すように、導電性微粒子24を、第1、第2の接続配線部6、14の接続前の状態において、異方導電性接着剤を形成する時点で異方導電性接着剤の厚み方向にかけた磁場の中を通過させることにより、当該厚み方向(磁場方向であって、図5の矢印Xで示す方向)に配向させて用いるのが好ましい。このような配向にすることにより、異方導電性接着剤の面方向(厚み方向に直交する方向であって、図5の矢印Yの方向)における高い導電抵抗によって隣り合う導体配線25間(または、隣り合う導体配線26間)の絶縁を維持して短絡を防止しつつ、異方導電性接着剤の厚み方向における低い導電抵抗によって、多数の導体配線25−導体配線26間を一度に、かつ各々を独立して導電接続することが可能になる。なお、第1、第2の接続配線部6、14の接続後の状態においても、導電性微粒子24が厚み方向Xに配向していることが好ましい。
【0040】
また、この場合、第1の接続配線部6を構成する複数の導体配線25の配線間距離Gの最小値、又は第2の接続配線部14を構成する複数の導体配線26の配線間距離Gの最小値、のいずれか小さい方をGMin(図5においては、G>Gであるため、GMin=G)、導電性微粒子24の長径Lの最大値(即ち、導電性微粒子24の最大長さ)をLMAXとした場合に、GMin>LMAXの関係を有していることが好ましい。このような関係を有することにより、第1の接続配線部6と第2の接続配線部14を接続する際の加圧により、導電性微粒子24の配向に乱れが生じる場合においても、複数の導体配線25間、および複数の導体配線26間の絶縁を維持して、短絡を確実に防止しつつ、導体配線25−導体配線26間を導電接続することが可能になる。
【0041】
また、第1の接続配線部6を構成する複数の導体配線25の最大高さと最小高さの差H、又は第2の接続配線部14を構成する複数の導体配線26の最大高さと最小高さの差H、のいずれか大きい方をHMAX(図5においては、H>Hであるため、HMax=H)とした場合に、LMAX>HMAXの関係を有していることが好ましい。このような関係を有することにより、第1、第2の接続配線部6、14を構成する導体配線25、26の高さにバラツキがあるために、導体配線25と導体配線26の距離Dにバラツキがある場合であっても、導体配線25−導体配線26間を確実に導電接続することが可能になる。
【0042】
使用する導電性微粒子24としては、その一部に強磁性体が含まれるものが良く、強磁性を有する金属単体、強磁性を有する2種類以上の合金、強磁性を有する金属と他の金属との合金、および強磁性を有する金属を含む複合体のいずれかであることが好ましい。これは、強磁性を有する金属を使用することにより、金属自身が有する磁性により、磁場を用いて導電性微粒子24を配向させることが可能になるからである。例えば、直鎖状に繋がった形状を有するニッケル、鉄、コバルトおよびこれらのうち2種類以上の合金等を挙げることができる。
【0043】
また、接着剤層5である異方導電性接着剤を用いて、第1のフレキシブルプリント配線板2と、第2のフレキシブルプリント配線板3とを接続する方法としては、異方導電性接着剤を介して、加熱加圧処理を行うことにより、熱硬化性樹脂23を硬化させ、接続する方法が採用される。
【0044】
より具体的には、例えば、第1のフレキシブルプリント配線板2が有する第1の接続配線部6と略同一の高さに設けられた第1の接続部8に、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂23を主成分とする異方導電性接着剤を載置し、第1のフレキシブルプリント配線板2の方向へ所定の圧力で加圧し、第1の接続部8に異方導電性接着剤を接続し、異方導電性接着剤を第1のフレキシブルプリント配線板2上に仮接着する。
【0045】
次いで、第2のフレキシブルプリント配線板3を下向き(フェースダウン)にした状態で、第1のフレキシブルプリント配線板2に形成された第1の接続配線部6と、第2のフレキシブルプリント配線板3に形成された第2の接続配線部14とが接続されるように、第1、第2のフレキシブルプリント配線板2、3の間に前記異方導電性接着剤を介在させた状態で、第1のフレキシブルプリント配線板2と第2のフレキシブルプリント配線板3の位置合わせを行う。
【0046】
次いで、第2のフレキシブルプリント配線板3が有する第2の接続配線部14と略同一の高さに設けられた第2の接続部18に、異方導電性接着剤を載置する。そして、異方導電性接着剤を所定の硬化温度に加熱した状態で、第2のフレキシブルプリント配線板3を介して、当該異方導電性接着剤を第1のフレキシブルプリント配線板2の方向へ所定の圧力で加圧することにより、異方導電性接着剤を加熱溶融させる。なお、上述のごとく、異方導電性接着剤は、熱硬化性樹脂23を主成分としているため、当該接着剤は、上述の硬化温度にて加熱をすると、一旦、軟化するが、当該加熱を継続することにより、硬化することになる。そして、予め設定した異方導電性接着剤の硬化時間が経過すると、異方導電性接着剤の硬化温度の維持状態を開放し、冷却を開始することにより、異方導電性接着剤を介して、第1の接続配線部6と第2の接続配線部14を接続する。以上の接続方法により、本実施形態におけるフレキシブルプリント配線板1を製造することができる。
【0047】
また、本実施形態においては、図7、図8に示すように、第1のフレキシブルプリント配線板2の基材4の外表面、および第2のフレキシブルプリント配線板3のカバーレイフィルム17の外表面の各々に、異方導電性接着剤との接続を補強するための補強部材30を設ける構成としても良い。このような構成により、第1、第2の接続部8、18と異方導電性接着剤の接続箇所が補強されるため、異方導電性接着剤が、第1、第2の接続部8、18から剥離する等の不都合を防止することが可能になる。その結果、導体配線25−導体配線26間の接続信頼性を向上することができる。補強部材30としては、例えば、ガラスエポキシ樹脂や金属、ポリイミド樹脂等が好適に使用される。
【0048】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の設計変更をすることが可能であり、それらを本発明の範囲から除外するものではない。
【0049】
例えば、上述の実施形態において使用した片面フレキシブルプリント配線板、または両面フレキシブルプリント配線板の代わりに、多層構造を有するフレキシブルプリント配線板を使用する構成としても良い。
【0050】
即ち、例えば、第1のフレキシブルプリント配線板2として、図3に示す片面フレキシブルプリント配線板を使用する場合は、上述の異方導電性接着剤を介して、第1の接続配線部6と接続される、上述の第2の接続配線部14に相当する接続配線部(不図示)を有し、導体配線部(不図示)が複数層積層された多層フレキシブルプリント配線板(不図示)を、第2のフレキシブルプリント配線板3として使用する。そして、多層フレキシブルプリント配線板に、異方導電性接着剤が接続される、上述の第2の接続部18に相当する接続部(不図示)を設けるとともに、上述の接続方法により、異方導電性接着剤を介して、第1の接続配線部6と上述の第2の接続配線部14に相当する接続配線部を接続する構成とすることができる。また、第2のフレキシブルプリント配線板として、図4に示す両面フレキシブルプリント配線板を使用する場合は、上述の異方導電性接着剤を介して、第2の接続配線部14と接続される、上述の第1の接続配線部6に相当する接続配線部(不図示)を有し、導体配線部(不図示)が複数層積層された多層フレキシブルプリント配線板(不図示)を、第1のフレキシブルプリント配線板2として使用する。そして、多層フレキシブルプリント配線板に、異方導電性接着剤が接続される、上述の第1の接続部8に相当する接続部(不図示)を設けるとともに、上述の接続方法により、異方導電性接着剤を介して、第1の接続配線部6に相当する接続配線部と第2の接続配線部14を接続する構成とすることができる。このような構成においても、上述の実施形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0051】
なお、この場合、上述の実施形態において説明した補強部材30を、多層フレキシブルプリント配線板に設ける構成とすることができる。また、多層フレキシブルプリント配線板が有する、上述の第1の接続配線部6に相当する接続配線部(または、上述の第2の接続配線部14に相当する接続配線部)を、導電性ペーストをスクリーン印刷することにより形成する構成としても良い。この場合も、上述の実施形態において説明した効果と同様の効果を得ることができる。
【0052】
また、上述の多層フレキシブルプリント配線板としては、例えば、フレキシブルプリント配線板とリジッドプリント配線板との複合基板であるリジッドフレックスプリント配線板等を使用することができる。
【0053】
また、上述の導電性ペーストの代わりに、銅箔等の金属箔を使用して、第1の接続配線部6(または、第2の接続配線部14、導体配線部15)を形成する場合は、基材4の片面(または、基材11の両面の各々)に、接着剤層(不図示)を介して、第1の接続配線部6(または、第2の接続配線部14、導体配線部15)を設ける構成としても良い。
【0054】
さらに、上述のカバーレイフィルム7、16、17の代わりに、第1の接続配線部6、第2の接続配線部14、導体配線部15の表面に、ポリイミド系のカバーコートインクをスクリーン印刷等により塗工しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の活用例としては、電子機器の部品として用いられるフレキシブルプリント配線板およびその製造方法が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の構成を示す概略図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第1のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板を構成する第2のフレキシブルプリント配線板の概略構成を示す断面図である。
【図5】図1のB−B断面の一部を示す部分断面図である。
【図6】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板において使用される導電性微粒子を説明するための図である。
【図7】本発明の実施形態に係るフレキシブルプリント配線板おける補強部材を説明するための概略図である。
【図8】図7のC−C断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1…フレキシブルプリント配線板、2…第1のフレキシブルプリント配線板、3…第2のフレキシブルプリント配線板、4…基材、5…接着剤層、6…第1の接続配線部、11…基材、14…第2の接続配線部、24…導電性微粒子、25…第1の接続配線部を構成する導体配線、26…第2の接続配線部を構成する導体配線、30…補強部材、D…第1の接続配線部を構成する導体配線と、第2の接続配線部を構成する導体配線の距離、G…第1の接続配線部を構成する複数の導体配線の配線間距離、G…第2の接続配線部を構成する複数の導体配線の配線間距離、H…第1の接続配線部を構成する複数の導体配線の最大高さと最小高さの差、H…第2の接続配線部を構成する複数の導体配線の最大高さと最小高さの差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフレキシブルプリント配線板と、第2のフレキシブルプリント配線板と、を備えるフレキシブルプリント配線板において、
前記第1のフレキシブルプリント配線板に設けられた第1の接続配線部と、前記第2のフレキシブルプリント配線板に設けられた第2の接続配線部が接着剤層を介して接続されており、前記接着剤層が、導電性微粒子を含む異方導電性接着剤であり、前記導電性微粒子が、微細な粒子が、多数、直鎖状に繋がった形状、あるいは針形状を有するとともに、前記導電性微粒子の短径が1μm以下であり、かつアスペクト比が5以上であることを特徴とするフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
前記第1のフレキシブルプリント配線板が、片面フレキシブルプリント配線板であるとともに、前記第2のフレキシブルプリント配線板が、両面フレキシブルプリント配線板であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
前記導電性微粒子が、前記第1、第2の接続配線部の接続前の状態において、前記接着剤層の厚み方向に配向していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
前記第1の接続配線部を構成する複数の配線の配線間距離の最小値、又は前記第2の接続配線部を構成する複数の配線の配線間距離の最小値、のいずれか小さい方をGMin、前記導電性微粒子の長径の最大値をLMAXとした場合に、GMin>LMAXの関係を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
前記第1の接続配線部を構成する複数の配線の最大高さと最小高さの差、又は前記第2の接続配線部を構成する複数の配線の最大高さと最小高さの差、のいずれか大きい方をHMAXとした場合に、LMAX>HMAXの関係を有することを特徴とする請求項4に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
前記第1、第2のフレキシブルプリント配線板の各々に、前記異方導電性接着剤との接続を補強するための補強部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のフレキシブルプリント配線板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−173477(P2007−173477A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−368493(P2005−368493)
【出願日】平成17年12月21日(2005.12.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(500400216)住友電工プリントサーキット株式会社 (197)
【Fターム(参考)】