説明

フレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物およびそれを用いて得られるフレキシブル配線回路基板

【課題】ノンハロゲン化により環境面が考慮され、優れた難燃性を備えたフレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物およびそれを用いて得られるフレキシブル配線回路基板を提供する。
【解決手段】下記の(A)〜(D)成分を含有するフレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物である。そして、導体回路パターン上に、上記感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂組成物層を形成し、これを所定のパターンに露光して現像することによりカバー絶縁層を形成することにより得られるフレキシブル配線回路基板である。
(A)エチレン性不飽和化合物を付加重合させてなるカルボキシル基含有線状重合体。
(B)エチレン性不飽和基含有重合性化合物。
(C)光重合開始剤。
(D)リン原子が分子量全体の2重量%以上含有してなるリン含有エポキシ樹脂。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物(以下「感光性樹脂組成物」と略す)およびそれを用いて得られる、ソルダーレジストを有するフレキシブル配線回路基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半田付けによって半導体素子等の電子部品を実装するフレキシブル配線回路基板には、カバーレイと称される接着剤層が形成されたポリイミドフィルムを所定の形状に打ち抜いたものを、導体パターン上に貼り付けたり、あるいはソルダーレジストと呼ばれる耐熱性材料をスクリーン印刷法や露光現像法によって必要な部分に設けるというように、導体パターン上にカバー絶縁層(ソルダーレジスト層を含む)を設けることが行われている。
【0003】
このようなフレキシブル配線回路基板には、半田による部品実装時の耐半田耐熱性,絶縁性,難燃性,さらにはフレキシブル配線回路基板の反り発生の抑制等の特性が要求される。
【0004】
そして、従来、上記カバー絶縁層形成材料としては、耐半田耐熱性等の改善のために、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂を主成分とする液状の感光性レジスト材料が提案されている(特許文献1,2,3参照)。
【0005】
一方、フレキシブル配線回路基板には、UL規格等により規定された高い難燃性も要望されている。このような要望に対して、従来、カバー絶縁層形成材料には、臭素等のハロゲン元素を含有する化合物を配合することにより難燃性を付与することが行なわれている。
【特許文献1】特開平7−207211号公報
【特許文献2】特開平8−134390号公報
【特許文献3】特開平9−5997号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記ハロゲン元素を含有する化合物を用いて難燃性を付与する態様に関しては、このような化合物を用いた配線回路基板を実際に燃焼させた場合、有毒ガスを発生することが知られており、環境面等を考慮し、ノンハロゲン化による難燃性付与が求められている。しかしながら、薄く、比表面積の大きいフレキシブル配線回路基板に対しては、ノンハロゲン化により難燃性を付与してなるカバー絶縁層形成材料となりうる感光性樹脂組成物は未だ実現されていないのが実情である。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ノンハロゲン化により環境面が考慮され、優れた難燃性を備えた感光性樹脂組成物およびそれを用いて得られるフレキシブル配線回路基板の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、下記の(A)〜(D)成分を含有する感光性樹脂組成物を第1の要旨とする。
(A)エチレン性不飽和化合物を付加重合させてなるカルボキシル基含有線状重合体。
(B)エチレン性不飽和基含有重合性化合物。
(C)光重合開始剤。
(D)リン原子が分子量全体の2重量%以上含有してなるリン含有エポキシ樹脂。
【0009】
そして、本発明は、導体回路パターン上に、上記第1の要旨である感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂組成物層を形成し、これを所定のパターンに露光して現像することによりカバー絶縁層を形成してなるフレキシブル配線回路基板を第2の要旨とする。
【0010】
すなわち、本発明者らは、ノンハロゲン化による優れた難燃性を備えた感光性樹脂組成物を得るために一連の研究を重ねた。そして、感光性レジスト材料に難燃性を付与することができ、かつ各物性(絶縁信頼性,現像性等)を損なうことのないノンハロゲンの難燃剤を突き止めるべく鋭意検討を重ねた。その結果、上記エチレン性不飽和化合物を付加重合させてなるカルボキシル基含有線状重合体〔(A)成分〕と、エチレン性不飽和基含有重合性化合物〔(B)成分〕とともに、リン原子が分子量全体の2重量%以上含有してなるリン含有エポキシ樹脂〔(D)成分〕を用いると、上記特定量のリン原子を含有するエポキシ樹脂を用いるため、感光性レジスト材料としての物性を損なうことなく難燃性が付与されることとなり、ノンハロゲン化により環境面の向上が図られることを見出し本発明に到達した。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明は、前記エチレン性不飽和化合物を付加重合させてなるカルボキシル基含有線状重合体〔(A)成分〕と、エチレン性不飽和基含有重合性化合物〔(B)成分〕とともに、上記リン原子が分子量全体の2重量%以上含有してなるリン含有エポキシ樹脂〔(D)成分〕を含有する感光性樹脂組成物である。このため、ノンハロゲン化による高い難燃性が実現する。したがって、導体回路パターン上に、本発明の感光性樹脂組成物を用いてソルダーレジストを形成することにより、環境面を考慮してなる優れた難燃性の付与されたフレキシブル配線回路基板が得られる。このようなフレキシブル配線回路基板は、半田付け等によってLSI,ダイオード,トランジスタ,コンデンサ等の電子部品を実装して実装基板とし、携帯電話等の小型機器等に装着利用される。
【0012】
そして、(A)成分であるカルボキシル基含有線状重合体のガラス転移温度が、55℃以下であると、優れた反り発生の抑制効果を備えるようになる
【0013】
また、(D)成分の含有量を、感光性樹脂組成物の不揮発成分全体中の10〜20重量%の範囲に設定すると、より一層優れた難燃性が付与されるとともに、配線回路基板の反り発生の抑制効果が得られる。
【0014】
そして、上記エチレン性不飽和基含有重合性化合物〔(B)成分〕として、一般式(2)で表されるビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物を用いると、感度およびアルカリ現像性に優れたものが得られるようになる。
【0015】
さらに、環状ホスファゼン化合物〔(E)成分〕を用いると、反りの発生を生じることなく難燃性を向上させ、さらに上記(D)成分と併用することにより、難燃性と低反り性、耐半田性を並立させることができる。ただし、上記環状ホスファゼン化合物〔(E)成分〕は、感光性樹脂組成物の不揮発分全体中の20重量%以下であることが好ましい。この環状ホスファゼン化合物〔(E)成分〕の添加量が20重量%より多いと、高温高湿条件下で結晶がブルーミングして表面に析出する傾向がみられるからである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物は、エチレン性不飽和化合物を付加重合させてなるカルボキシル基含有線状重合体(A成分)と、エチレン性不飽和基含有重合性化合物(B成分)と、光重合開始剤(C成分)と、特定のエポキシ樹脂(D成分)とを用いて得られるものである。
【0017】
上記カルボキシル基含有線状重合体(A成分)としては、エチレン性不飽和化合物を付加重合させて得られるものであって、(メタ)アクリル酸やカルボキシル含有スチレン誘導体、無水マレイン酸等を共重合して得ることができる。この方法により得られる線状重合体は、酸当量を任意に制御できることや、原料モノマー種が豊富にあることに起因して、ガラス転移温度(Tg)等の物性設計が容易である。
【0018】
上記カルボキシル基含有線状重合体(A成分)の重量平均分子量は、5000〜100000の範囲であることが好ましく、より好ましくは6000〜80000、特に好ましくは7000〜60000の範囲である。すなわち、重量平均分子量が5000未満では半田耐熱性等の物性が悪くなる傾向がみられ、100000を超えるとアルカリ現像性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0019】
また、上記カルボキシル基含有線状重合体(A成分)の酸当量は、200〜900の範囲であることが好ましく、より好ましくは250〜850、さらに好ましくは300〜800の範囲である。すなわち、酸当量が200未満では高温高湿下での銅の酸化を促進するため好ましいものではなく、900を超えるとアルカリ現像性が悪くなる傾向がみられるからである。
【0020】
さらに、上記カルボキシル基含有線状重合体(A成分)として、耐熱性と反りの抑制効果を付与するために、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレートを共重合成分として含有することが好ましい。
【0021】
したがって、上記カルボキシル基含有線状重合体(A成分)としては、例えば、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸およびその他のビニルモノマーとを共重合して得られる重合体があげられる。
【0022】
上記その他のビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチルエステル、(メタ)アクリル酸エチルエステル、(メタ)アクリル酸ブチルエステル等の(メタ)アクリル酸のアルキルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、スチレン、α−スチレン、ビニルトルエン、N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、N−フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0023】
上記共重合成分であるフェノキシエチル(メタ)アクリレートの共重合量は、共重合成分の総量中、20〜92重量%に設定することが好ましく、より好ましくは30〜90重量%の範囲である。すなわち、共重合量が20重量%未満では、難燃性が低下する傾向がみられ、92重量%を超えると、難燃性は得られるが、硬化させたソルダーレジストのアルカリ現像性が低下する傾向がみられるからである。
【0024】
また、上記共重合成分である(メタ)アクリル酸の共重合量は、共重合成分の総量中、8〜40重量%に設定することが好ましく、より好ましくは10〜35重量%の範囲である。すなわち、共重合量が8重量%未満では、現像時間が長くなり作業性が低下する傾向がみられ、40重量%を超えると、高温高湿下での銅の酸化を促進する傾向がみられるからである。
【0025】
そして、上記共重合成分であるその他のビニルモノマーの共重合量は、共重合成分の総量中、0〜72重量%であることが好ましく、より好ましくは0〜60重量%である。すなわち、共重合量が72重量%を超えると難燃性および現像性が低下する傾向がみられるからである。
【0026】
なお、上記カルボキシル基含有線状重合体(A成分)に、重合後、高分子反応によってエチレン性不飽和基等を導入することができる。ただし、本発明において、高分子反応によってエチレン性不飽和基等を導入する場合の、後述するガラス転移温度(Tg)の値は、エチレン性不飽和基導入前の線状重合体のガラス転移温度(Tg)を測定した値のことをさす。また、上記各モノマー成分を用いて得られる共重合体のカルボキシル基に、重合後、グリシジルアクリレート等との反応によってエチレン性不飽和基を導入する場合には、導入後の反応によって消失するカルボキシル基の量を考慮して、上記(メタ)アクリル酸の共重合量を増加させることが好ましい。エチレン性不飽和化合物の線状重合物にカルボキシル基を導入することのできるエチレン性不飽和化合物としては、前述の(メタ)アクリル酸に限定されるものではなく、例えば、スチレン誘導体、無水マレイン酸誘導体等を用いることができる。
【0027】
また、上記特定のカルボキシル基含有線状重合体(A成分)としては、そのガラス転移温度が55℃以下となるものが好ましく、特に好ましくはガラス転移温度が30〜55℃である。すなわち、ガラス転移温度が55℃を超え高いと、感光性樹脂組成物の硬化収縮後の反り発生が多くなる傾向がみられ、30℃未満では、感光性樹脂組成物溶液の塗布、乾燥後の乾燥塗膜にタック性がみられ、作業性が悪化するという問題が生じる傾向がみられるからである。このように、本発明においては、A成分であるカルボキシル基含有線状重合体として、ガラス転移温度が55℃以下となる特性を備えたものを用いることを特徴とするものである。上記ガラス転移温度は、例えば、つぎのようにして測定することができる。すなわち、ティー・エイ・インスツルメント社製ARES等の粘弾性測定用レオメーターを用いて、周波数1Hz、昇温速度5℃/分、測定温度0〜150℃で測定した際の、tanδの値としてガラス転移温度(Tg)を求めることができる。
【0028】
上記A成分とともに用いられるエチレン性不飽和基含有重合性化合物(B成分)は、特に限定するものではないが、下記の一般式(2)で表されるビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物であることが、半田耐熱性、耐折性、アルカリ現像性等の特性バランスに優れる点から好ましい。
【0029】
【化1】

【0030】
上記式(2)中、炭素数2〜6のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンチレン基、ネオペンチレン基、ヘキシレン基等があげられる。特にエチレン基であることが好ましい。
【0031】
上記イソプロピレン基は、−CH(CH3 )CH2 −で表される基であり、上記一般式(2)中の−(O−Y1 )−および−(Y2 −O)−において結合方向は、メチレン基が酸素と結合している場合とメチレン基が酸素に結合していない場合の2種類があり、1種類の結合方向でもよいし、2種類の結合方向が混在していてもよい。
【0032】
上記−(O−Y1 )−および−(Y2 −O)−の繰り返し単位がそれぞれ2以上のとき、2以上のY1 および2以上のY2 は、互いに同一であってもよく異なっていてもよい。そして、Y1 およびY2 が2種以上のアルキレン基で構成される場合、2種以上の−(O−Y1 )−および−(Y2 −O)−は、ランダムに存在してもよいし、ブロック的に存在してもよい。
【0033】
また、上記一般式(2)中の、2個のベンゼン環の置換可能な位置には、1個以上の置換基を有していてもよく、2個以上の置換基を有する場合には、それら置換基は互いに同じであっても異なっていてもよい。このような置換基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜14のアリール基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、アリル基、炭素数1〜10のアルキルメルカプト基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のカルボキシアルキル基、アルキル基の炭素数が1〜10のアシル基、炭素数1〜20のアルコキシ基または複素環を含む基等があげられる。
【0034】
上記一般式(2)中の、繰り返し数p,qは、p+qが4〜40となるよう選ばれる正の整数であり、より好ましくはp+qが4〜15となるよう選ばれる正の整数であり、特に好ましくはp+qが5〜13となるよう選ばれる正の整数である。すなわち、p+qが4未満では、反りが増加するほか、耐折性が増加する傾向がみられ、p+qが40を超えると、感光性樹脂組成物全体の系が親水性を示し、高温高湿下での絶縁信頼性に劣る傾向がみられるからである。
【0035】
上記一般式(2)で表されるビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物としては、具体的には、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシテトラエトキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシペンタエトキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシジエトキシオクタプロポキシフェニル〕プロパン、2,2′−ビス〔4−(メタ)アクリロキシトリエトキシオクタプロポキシフェニル〕プロパン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0036】
上記AおよびB成分とともに用いられる光重合開始剤(C成分)としては、例えば、置換または非置換の多核キノン類(2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン等)、α−ケタルドニルアルコール類(ベンゾイン、ピバロン等)、エーテル類、α−炭化水素置換芳香族アシロイン類(α−フェニル−ベンゾイン、α,α−ジエトキシアセトフェノン類等)、芳香族ケトン類(ベンゾフェノン、N,N′−テトラエチル−4,4′−ジアミノベンゾフェノン等の4,4′−ビスジアルキルアミノベンゾフェノン等)、チオキサントン類(2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−エチルチオキサントン等)、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−モルホリノプロパン−1−オン等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。
【0037】
上記A〜C成分とともに用いられる特定のエポキシ樹脂(D成分)は、リン原子を分子量全体の2重量%以上含有してなるリン含有エポキシ樹脂である。上記D成分は、難燃剤として作用するものであって、ハロゲン元素を含有しないため、ノンハロゲン化による環境面が配慮されたものが得られる効果を奏する。しかも、絶縁信頼性および現像性等の物性を損なうことなく難燃性を付与することが可能となり好ましいものである。
【0038】
上記D成分において、リン原子の含有量が分子量の2重量%未満のように少なくなると、充分な難燃性を付与することが困難となる。なお、上記リン原子の含有量に特に制限はないが、5重量%以上ではエポキシ樹脂との相溶性が悪くなる場合がある。
【0039】
そして、上記D成分としては、例えば、Journal of Applied Polymer Science73,353(1999)で紹介されている、窒素原子とリン原子を同時に含む難燃性エポキシ樹脂のほか、下記の一般式(1)で表されるビスフェニルホスフェート骨格構造を含むリン含有エポキシ樹脂があげられる。
【0040】
【化2】

【0041】
上記式(1)中、Xに関して、末端にエポキシ基を少なくとも2つ有する芳香族基としては、例えば、ノボラック樹脂の誘導体、ビスフェノール誘導体等をあげることができ、さらに1分子中に、複数のビスフェニルホスフェート骨格構造が含まれていてもよい。
【0042】
このような一般式(1)で表されるビスフェニルホスフェート骨格構造を含むリン含有エポキシ樹脂としては、具体的には、特許第3613724号公報や、特許第3533973号公報で提供されるエポキシ樹脂、Journal of Applied Polymer Science73,1231(1999) で提供されるような下記の構造式(1a)で表されるエポキシ樹脂等があげられる。
【0043】
【化3】

【0044】
そして、上記リン含有エポキシ樹脂(D成分)としては、そのエポキシ当量が300〜500の範囲であることが、硬化収縮により発生する反りと、耐半田性の点から好ましい。また、重量平均分子量1000以下のものを用いることが好ましい。
【0045】
本発明においては、上記A〜D成分に加えて、さらに難燃性と反りの抑制、耐半田性の両立を目的に、環状ホスファゼン化合物(E成分)を用いることができる。上記環状ホスファゼン化合物(E成分)としては、具体的には、下記の一般式(3)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物等があげられる。
【0046】
【化4】

【0047】
上記式(3)中、繰り返し数nは3〜10であり、より好ましくは3〜5である。
【0048】
このような一般式(3)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物は、例えば、大塚化学社製のSPE−100等として入手可能である。
【0049】
本発明の感光性樹脂組成物における、上記A〜D成分を用いる場合、加えてさらにE成分を用いる場合の各含有量は、好適にはつぎのように設定される。まず、上記A成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の30〜60重量%の範囲に設定することが好ましい。すなわち、30重量%未満では現像速度が遅くなる場合があり、60重量%を超えるとアルカリ現像時に露光部に膜残りが生じたり、難燃性が不充分となる傾向がみられるからである。
【0050】
上記B成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の10〜40重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは15〜30重量%である。すなわち、10重量%未満では感光性樹脂組成物への露光の際の感度が悪くなる傾向がみられ、40重量%を超えるとアルカリ現像性が低下する傾向がみられるからである。
【0051】
上記C成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の1〜10重量%の範囲に設定することが好ましく、より好ましくは3〜8重量%である。すなわち、1重量%未満では感度が不充分となる傾向があり、10重量%を超えるとアルカリ現像性が低下する傾向がみられるからである。
【0052】
上記D成分の含有量は、感光性樹脂組成物の不揮発成分全体中の10〜20重量%に設定することが好ましく、より好ましくは15〜20重量%の範囲である。すなわち、10重量%未満では難燃性が不充分となる傾向がみられ、20重量%を超えるとフレキシブル配線回路基板の反りが大きくなる傾向がみられるからである。
【0053】
上記E成分の含有量は、感光性樹脂組成物全体の20重量%以下に設定することが好ましく、より好ましくは5〜20重量%である。すなわち、20重量%を超えると、先に述べたように、E成分が析出する傾向がみられるからである。
【0054】
本発明の感光性樹脂組成物には、上記各成分以外に必要に応じて、他の添加剤、すなわち、フタロシアニングリーン,フタロシアニンブルー等の顔料、シリカ,硫酸バリウム,タルク等の充填剤、消泡剤、レベリング剤、難燃剤、安定剤、2−アミノ−5−メルカプト−1,3,4−チアジアゾールや5−アミノ−1−H−テトラゾール等の密着性付与剤、ベンゾトリアゾール等の防錆剤、上記DおよびE成分以外のエポキシ樹脂、ブロックイソシアネート等の熱架橋剤等を適宜配合することができる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。そして、これら他の添加剤は、感光性樹脂組成物全体の0.01〜20重量%の範囲内で用いることが好ましい。
【0055】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記各成分を所定の含有量となるように配合し混合することにより得られる。そして、必要に応じて有機溶剤と混合して用いることができる。上記有機溶剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ソルベントナフサ、N−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン、ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、トルエン、キシレン、メシチレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の溶剤またはこれらの混合溶剤を用いることができる。
【0056】
上記有機溶剤を用いる場合の使用量は、特に限定されるものではないが、感光性樹脂組成物100重量部に対して0〜200重量部程度混合して用いることができる。
【0057】
このようにして得られる感光性樹脂組成物の、硬化後〔紫外線(UV)露光後〕の50℃における貯蔵弾性率は1GPa以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜1GPaである。すなわち、1GPaを超えると、感光性樹脂組成物の硬化後の反りが大きくなる傾向がみられるからである。なお、上記硬化後(UV露光後)の50℃における貯蔵弾性率は、例えば、固体粘弾性測定装置を用いて、周波数1Hz、昇温速度5℃/分、測定温度0〜150℃、引っ張りモードで測定した際の、50℃における値を読み取ることにより得られる値である。
【0058】
このように、本発明の感光性樹脂組成物は、フレキシブル配線回路基板用のソルダーレジスト材料として有用である。
【0059】
上記フレキシブル配線回路基板用のソルダーレジスト材料として用いる際には、例えば、つぎのようにして使用される。以下、順を追って説明する。
【0060】
まず、フレキシブル配線回路基板の導体回路パターン形成面に、スクリーン印刷法、スプレー法、ロールコート法、静電塗装法により、乾燥後の厚みが5〜50μmとなるように本発明の感光性樹脂組成物を塗布し、5〜120℃で3〜60分間程度乾燥させた後、ネガまたはポジマスクパターンフィルムを塗膜に直接接触させ、あるいは接触させずに設置し、ついで活性光線を照射する。
【0061】
上記活性光線の光源としては、公知の各種光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ等の紫外線を有効に照射するものが用いられる。また、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に照射するものも用いられる。
【0062】
ついで、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、例えば、スプレー,揺動浸漬,ブラッシング,スクラッピング等の公知の方法により未露光部を除去して現像し、レジストパターンを製造する。
【0063】
上記現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1〜5重量%炭酸ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%炭酸カリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%水酸化ナトリウムの希薄溶液、0.1〜5重量%四ホウ酸ナトリウムの希薄溶液等を用いることができる。
【0064】
また、現像後、半田耐熱性,耐薬品性等を向上させる目的で、必要に応じて高圧水銀ランプによる紫外線照射や加熱を行うことができる。上記紫外線の照射量は、0.2〜10J/cm2 程度に設定することが好ましく、また上記加熱に関しては100〜180℃程度の範囲で15〜120分間行うことが好ましい。この紫外線照射と加熱の順序はいずれが先であってもよいし、紫外線照射および加熱のいずれか一方のみの処理であってもよい。
【0065】
このようにしてソルダーレジストが形成されたフレキシブル配線回路基板は、その後、半田付け等によって、LSI、ダイオード、トランジスタ、コンデンサ等の電子部品を実装して実装基板とし、例えば、携帯電話等の小型機器等に装着されることになる。
【0066】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0067】
[合成例1]
〔ポリマー(カルボキシル基含有線状重合体)aの合成〕
まず、エチルジグリコールアセテート291g(1回目の投入)を窒素雰囲気下で1リットルのセパラブルフラスコに入れ、攪拌しながら130℃に加温した。30分保温後、フェノキシエチルアクリレート243g、メタクリル酸100g、メタクリル酸メチル158g、エチルジグリコールアセテート158g(2回目の投入)、触媒としてのアゾビスイソブチロニトリル8.0gを混合溶解した溶液を3時間でセパラブルフラスコ内に滴下し反応させた。80℃で2時間保温した後、冷却して、ポリマー溶液a(固形分濃度53重量%)を得た。
【0068】
〔ポリマー(カルボキシル基含有線状重合体)b〜eの合成〕
エチルジグリコールアセテートの使用量(各投入量)を後記の表1に示す量に変えた。また、用いた各モノマー成分およびその使用量を後記の表2に変えた。なお、表2におけるアロニックスは、東亞合成社製のN−アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミドである。それ以外の合成条件(温度、時間等)に関しては上記合成例1と同様にしてポリマーb〜eを合成した。また、得られたポリマーa〜eのガラス転移温度および重量平均分子量を下記の方法に従って測定し、後記の表2に併せて示す。
【0069】
〔ガラス転移温度の測定〕
上記方法にて得られたポリマーの溶液をシリコーン樹脂で離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、乾燥後の厚みが約20μmになるように塗布、乾燥(120℃×30分)した。さらに、得られたポリマーフィルムをポリエチレンテレフタレートフィルム上から剥離した後、50℃のロールラミネーターを用い、重ね合わせて圧着した。得られた厚み約300μmのフィルムを、ティー・エイ・インスツルメント社製のARESを用いて、パラレルプレート直径7.9mm、荷重200g、周波数6.3rad/秒、昇温速度5℃/分の条件にて、測定温度0〜150℃で測定した。そして、得られたtanδの値としてガラス転移温度(Tg)を求めた。
【0070】
〔重量平均分子量の測定〕
上記方法にて得られたポリマーの重量平均分子量を下記の条件にて測定した。
測定装置:GPC(東ソー社製、HLC−8120GPC)
カラムサイズ:直径6.0mm×15cm×3本(合計45cm)
カラム温度:40℃
溶離液:10ml(LiBr)+10ml(リン酸/ジメチルホルムアルデヒド(DMF)〕
流速:0.4m/min
入口圧:4.7Pa
注入量:20μl
検出器:示唆屈折計(RI)
標準試料:ポリエチレンオキサイド(PEO)
データ処理装置:東ソー社製、GPC−8020
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
つぎに、下記に示す各成分を準備した。
【0074】
〔エチレン性不飽和基含有重合性化合物〕
B1:新中村化学社製のBPE500、エチレンオキサイド変性ビスフェノールA型メタクリレート〔前記式(2)中のp+q=10、R1 =H、R2 =H、Y1 =CH2 CH2 、Y2 =CH2 CH2
B2:トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)
【0075】
〔光重合開始剤〕
C1:チバガイギー社製、Irgacure907
C2:日本化薬社製、KAYACURE DETS−X
【0076】
〔リン含有エポキシ樹脂〕
D1:東都化成社製、FX−305(リン原子含有量3.0重量%、エポキシ当量485)
D2:東都化成社製、FX−305C(リン原子含有量2.6重量%、エポキシ当量382)
【0077】
〔エポキシ樹脂〕
大日本インキ社製、トリエチレングリコールジビニルエーテル変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂
【0078】
〔環状ホスファゼン化合物〕
大塚化学社製、SPE−100〔式(3)中、n=3〜4〕
【0079】
〔顔料〕
フタロシアニンブルー
【0080】
〔密着性付与剤〕
5−アミノ−1−H−テトラゾール
【0081】
〔消泡剤〕
CBCマテリアルズ社製、モダフロー(アクリル系コポリマー)
【0082】
〔実施例1〜6、比較例〕
下記の表3に示す各成分を同表に示す割合で配合することにより感光性樹脂組成物を作製した(なお、表3中の数値は不揮発分の重量である)。
【0083】
【表3】

【0084】
このようにして得られた各感光性樹脂組成物を用いて、下記に示す方法にしたがって特性評価を行った。その結果を後記の表4に併せて示す。
【0085】
〔硬化後貯蔵弾性率〕
シリコーン樹脂で離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルム上に、上記感光性樹脂組成物溶液を乾燥後の厚みが約20μmになるように塗布、乾燥(80℃×30分)した。上記乾燥表面の上に厚み38μmのポリエチレンテレフタレート製カバーフィルムを密着させ、カバーフィルム面から超高圧水銀灯で300mJ/cm2 露光した。ついで、カバーフィルムを剥離した後、25℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像し、さらに水道水で30秒間洗浄した。これを、熱風循環乾燥機中で150℃×30分間の熱処理を行なった。この後、上記離型処理されたポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、幅5mm、厚み約20μm、長さ30mmの試料を作製した。この試料を用いて、固体粘弾性測定装置RSA2(レオメトリックサイエンティフィック社製)にて、0〜150℃まで、昇温速度5℃/分、周波数1Hz、チャック間22.6mmにて引張貯蔵弾性率を測定し、50℃における値を硬化後貯蔵弾性率とした。
【0086】
〔反り〕
厚み12.5μmのポリイミドフィルム上に、上記感光性樹脂組成物溶液を乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布した。それ以外は、上記硬化後貯蔵弾性率の測定方法の場合と同様に、150℃×30分間の乾燥工程までを行い、ポリイミドフィルム上に感光性樹脂組成物フィルム層を作製した。ついで、上記フィルム(ポリイミドフィルム+感光性樹脂組成物フィルムの2層構造)から、図1(a)に示すように、直径20mmの円形状の試料1を打ち抜き作製した。そして、図1(b)に示すように、作製した試料1において、試料1のエッジ間距離が最も小さい最短エッジ間距離Lを測定し、フィルムの反り量を次式:[反り量(mm)=20(mm)−最短エッジ間距離L(mm)]により算出し、下記の基準にて評価した。
○:反り量が5mm未満である。
×:反り量が5mm以上である。
【0087】
〔アルカリ現像性〕
脱脂、ソフトエッチングして表面を整面した厚み35μmの銅箔上に、上記感光性樹脂組成物溶液を、乾燥後の厚みが20μmとなるように塗布し、乾燥(80℃×30分間)して、さらにその上に厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを密着させ、250Wの超高圧水銀灯で、300mJ/cm2 の露光量で紫外線照射した。その後、上記ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、25℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像した。現像後の未露光部を目視により観察し、下記の基準により評価した。
○:感光性樹脂組成物の残渣がなかった。
×:感光性樹脂組成物の残渣があった。
【0088】
〔難燃性〕
厚み12.5μmのポリイミドフィルムの一方の面上に、上記感光性樹脂組成物溶液を乾燥後の厚みが20μmになるように、塗布して乾燥(80℃×30分)し、その上に厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを密着させ、250Wの超高圧水銀灯で、300mJ/cm2 の露光量で紫外線照射した。一方、上記ポリイミドフィルムの他面上にも、上記と同様にして感光性樹脂組成物溶液を乾燥後の厚みが20μmになるように、塗布して乾燥(80℃×30分)し、その上に厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを密着させ、250Wの超高圧水銀灯で、300mJ/cm2 の露光量で紫外線照射した。その後、両ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、25℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像し、ついで水道水にて30秒間洗浄した後、熱風循環乾燥機中で150℃×30分間熱処理を行った。これを難燃性試験規格UL94に準拠した装置(東洋精機製作所社製、No.1031、HVUL UL燃焼テストチャンバー)、方法(VTM法)にしたがって難燃性を評価した。VTM−0を合格とした。
【0089】
〔絶縁性〕
厚み10μm、L/S(パターン幅/パターン間隔)=50μm/50μmのバイアステスト用櫛型銅パターンが厚み25μmのポリイミドフィルム上に直接形成されたフレキシブルプリント配線板を準備し、これを脱脂、ソフトエッチングして銅表面を整面した。その後、上記フレキシブルプリント配線板上に、上記感光性樹脂組成物溶液を乾燥後の厚みが20μmになるように、塗布して乾燥(80℃×30分間)し、その上に厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを密着させ、250Wの超高圧水銀灯で、300mJ/cm2 の露光量で紫外線照射した。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、25℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像し、ついでイオン交換水にて30秒間洗浄した後、熱風循環乾燥機中で150℃×30分間熱処理を行い絶縁性試験用プリント配線板を作製した。この絶縁性試験用プリント配線板を85℃×85%RHの恒温恒湿槽に投入し、櫛型パターンの両電極間に50Vの電圧をかけ、絶縁抵抗を1000時間経過時まで槽内で測定して、下記の基準により評価した。
○:1000時間を経過しても絶縁抵抗値が106 Ω以上を示したもの。
×:1000時間以内に絶縁抵抗値が106 Ω未満を示したもの。
【0090】
〔半田耐熱性〕
脱脂、ソフトエッチングして表面を整面した厚み10μmの銅箔と厚み25μmのポリイミドフィルムを用い、厚み35μmの2層基材(厚み10μmの銅箔+厚み25μmのポリイミドフィルム)を作製し、この2層基材の銅箔上に、上記感光性樹脂組成物溶液を乾燥後の厚みが20μmになるように、塗布して乾燥(80℃×30分間)し、その上に厚み38μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを密着させ、一辺が5mmの正方形ネガパターンが形成されたガラスマスクを通して250Wの超高圧水銀灯で、300mJ/cm2 の露光量で紫外線照射した。その後、ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離し、25℃の1重量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて圧力0.2MPaで90秒間現像し、ついでイオン交換水にて30秒間洗浄した後、熱風循環乾燥機中で150℃×30分間熱処理を行い半田耐熱性試験用基板を作製した。
【0091】
ついで、ロジン系フラックスMH−820V(タムラ化研社製)を塗布した後、260℃の半田浴中に10秒間浸漬して半田付け処理を行った。その後、目視により下記の基準に従い評価した。
○:半田潜り、ソルダーレジストの浮き、剥がれが発生しなかった。
×:半田潜り、またはソルダーレジストの浮きおよび剥がれが発生した。
【0092】
【表4】

【0093】
上記結果から、実施例品は、アルカリ現像性,絶縁性,半田耐熱性の全てにおいて良好なフレキシブル配線回路基板が得られることが明らかである。しかも、難燃性においていずれも優れた結果が得られた。さらに、ガラス転移温度が55℃以下のポリマーを用いた実施例品は、反り量が効果的に抑制されている。
【0094】
これに対して、比較例品は、当然ながら難燃性評価において劣る結果が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】(a)および(b)は反り量の測定方法を示す説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)〜(D)成分を含有することを特徴とするフレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物。
(A)エチレン性不飽和化合物を付加重合させてなるカルボキシル基含有線状重合体。
(B)エチレン性不飽和基含有重合性化合物。
(C)光重合開始剤。
(D)リン原子が分子量全体の2重量%以上含有してなるリン含有エポキシ樹脂。
【請求項2】
上記(A)成分であるカルボキシル基含有線状重合体のガラス転移温度が、55℃以下である請求項1記載のフレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
上記(D)成分が、下記の一般式(1)で表されるビスフェニルホスフェート骨格構造を含むリン含有エポキシ樹脂である請求項1または2記載のフレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物。
【化1】

【請求項4】
上記(D)成分の含有量が、フレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物の不揮発成分全体中の10〜20重量%の範囲に設定されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のフレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物。
【請求項5】
上記(B)成分であるエチレン性不飽和基含有重合性化合物が、下記の一般式(2)で表されるビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物である請求項1〜4のいずれか一項に記載のフレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物。
【化2】

【請求項6】
上記(A)〜(D)成分に加えて、下記の(E)成分を含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載のフレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物。
(E)環状ホスファゼン化合物。
【請求項7】
導体回路パターン上に、請求項1〜6のいずれか一項に記載のフレキシブル配線回路基板用感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂組成物層を形成し、これを所定のパターンに露光して現像することによりカバー絶縁層を形成してなるフレキシブル配線回路基板。

【図1】
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【公開番号】特開2008−83683(P2008−83683A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−180838(P2007−180838)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】