説明

フレキソ印刷版の表面粗さ制御方法

熱処理中のフレキソ印刷要素の表面粗さを制御する方法。印刷ブランクは、支持層上に少なくとも1つの光硬化性層を含み、該少なくとも1つの光硬化性層が(1)スチレン−ブタジエン−スチレンを含むバインダー、(2)少なくとも1つの速硬化モノマー、(3)少なくとも1つの遅硬化モノマー、及び(4)光重合開始剤を含む。印刷要素ブランクは、印刷要素ブランクの最上部から印刷版ブランクを化学線により選択的に像様露光することで、前記少なくとも1つの光硬化性層の一部を選択的に架橋及び硬化し、そして熱処理して前記少なくとも1つの光硬化性層の未硬化部分を取り除くことで、前記少なくとも1つの光硬化性層にレリーフ像が現れる。熱現像後の前記レリーフ像印要素の表面粗さが約1,000nm未満に制御される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理時のフレキソ印刷要素の表面粗さを制御する方法に関する。
【0002】
フレキソ印刷は、一般的に大量生産に使用される印刷方法である。フレキソ印刷は、紙、板紙素材、段ボール、フィルム、フォイル、及び合板等の多様な被印刷物に対する印刷に用いられる。新聞、及び食料雑貨入れの袋(grocery bag)が主な例である。平滑性の悪い面及び伸縮性フィルムは、フレキソ印刷を用いた場合のみ経済的に印刷可能である。フレキソ印刷版は、画像要素を開口領域の上方に隆起させた凸版である。このような版は、主にその耐性及び作製容易性により、多くの長所をプリンターに提供する。
【0003】
製造業者により供給される標準的なフレキソ印刷版は、バック層すなわち支持層、1つ以上の未露光の光硬化性層、保護層すなわちスリップフィルム、及びカバーシートの順からなる多層体である。標準的な連続円筒状(continuous−in−the−round)(CITR)感光性ポリマースリーブは、一般的に、スリーブキャリヤ(支持層)及び該支持層の上に少なくとも1つの未露光の光硬化性層を含む。
【0004】
フレキソプリプレス印刷工業では、印刷版から印刷へより迅速に進めるために、レリーフ像現像において印刷要素の化学処理の必要性を無くすことも非常に望まれている。感光性ポリマー印刷版を熱を使用して作製し、硬化した感光性ポリマーと未硬化の感光性ポリマーの溶融温度の差を利用して潜像を現像するプロセスが開発されている。このプロセスの基本パラメータは、特許文献1〜8に開示されるように公知であり、これらの各内容を、参照することにより全体を本願に援用する。これらのプロセスにより、現像溶媒を除くこと、及び該溶媒を除去するために必要な版の長い乾燥時間を除くことが可能となる。このプロセスの速度及び効率性により、迅速な納期及び高い生産性が重要である新聞及び他の出版物印刷用のフレキソ印刷版の製造への該プロセスの使用が可能となる。
【0005】
感光性ポリマー層は、所望の画像形成を可能にし、かつ印刷面を提供する。使用する感光性ポリマーは、概して、バインダー、モノマー、光重合開始剤、及びその他の性能添加剤を含む。適切な感光性ポリマー組成物の例としては、特許文献9に記載の組成物等が挙げられ、その内容を参照することにより全体を本願に援用する。バインダーとして、ポリスチレン−イソプレン−スチレン、ポリスチレン−ブタジエン−スチレン、ポリウレタン及び/又はチオール−エン(thiolenes)に基づくものなどの様々な感光性ポリマーが使用され得る。好適なバインダーは、ポリスチレン−イソプレン−スチレン(SIS)、及びポリスチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)であり、特に好ましくは、前述のブロック共重合体である。
【0006】
感光性ポリマーの組成は、硬化したポリマーと未硬化のポリマーとの溶融温度に実質的な相違がなければならない。まさにこの相違によって、加熱時に感光性ポリマーへの画像形成が可能となる。未硬化の感光性ポリマー(即ち、化学線(actinic radiation)により接触しない感光性ポリマーの部分)は、溶融又は実質的に軟化するが、硬化した感光性ポリマーは、選択された温度で固体のまま変わらない。よって、溶融温度の相違により、未硬化の感光性ポリマーの選択的除去が可能になり、結果的に画像が形成される。
【0007】
そして、印刷要素は、化学線により選択的に露光される。選択的露光は、従来3つの関連方法の1つで成し遂げられる。第1の方法は、透過領域、及びほぼ不透過な領域を有するネガを使用して、印刷版要素に対する化学線の透過を選択的に遮断する。第2の方法は、感光性ポリマー層を、自身もレーザアブレーションされやすい化学線が(ほぼ)不透過な層で被覆する。そして、レーザを使用して、該化学線不透過層の選択された領域を除去し、その場(in situ)でネガを形成する。そして、印刷要素を該その場(in situ)で作製したネガを介してフラッド露光する。第3の方法は、化学線の集束ビームを使用して感光性ポリマーを選択的に露光する。これらの他の方法はいずれも、感光性ポリマーを化学線により選択的に露光することで、感光性ポリマー部分を選択的に硬化するという能力においては、許容され得る結果をもたらす。
【0008】
印刷要素の感光性ポリマー層が化学線により選択的に露光されれば、熱を使用して現像が可能となる。一般的な熱現像処理において、加熱されたローラー上を印刷要素が通過することで感光性ポリマー層が軟化され、該ローラーは一般的に少なくとも約70℃の温度に加熱される。正確な温度は、使用される特定の感光性ポリマーの特性によって決まる。しかしながら、現像温度の決定には2つの主な要因が一般的に考慮される。
1.加熱されたローラーの温度は、好ましくは未硬化の感光性ポリマーの下限溶融温度と硬化した感光性ポリマーの上限溶融温度との間で設定される。これにより、感光性ポリマーが選択的に除去されるため、結果的に画像が形成される。
2.加熱されたローラーの温度が高ければ高いほど、工程所要時間はより少なくなる。しかしながら、加熱されたローラーの温度は、硬化した感光性ポリマーの溶融温度を超える程高すぎるべきではなく、又は硬化した感光性ポリマーが劣化する程高すぎるべきではない。温度は、未硬化の感光性ポリマーを溶融、又は実質的に軟化するのに十分であるべきで、これにより未硬化の感光性ポリマーを除去することができる。
【0009】
印刷要素が加熱されると、未硬化の感光性ポリマーは、溶融、即ち除去されるため、レリーフ像が現れる。好適な実施形態において、加熱された印刷要素を、軟化又は溶融した未硬化の感光性ポリマーを吸収、或いは除去する材料と接触させる。この除去プロセスは、一般的に「拭取り(blotting)」と称され、拭取りは、通常、スクリーンメッシュ又は吸収性布を使用して達成される。織布又は不織布が使用できるが、該布は使用温度に耐えることができる限り、ポリマー製、又は紙でもよい。ほとんどの場合、拭き取りはローラーを使用して、材料と加熱された印刷版とを接触させることで行われる。
【0010】
特許文献2は、吸収性シート材料を使用することによる感光性ポリマーの未硬化部分の除去を開示し、この主題を参照することにより全体を本願に援用する。未硬化の感光性ポリマー層は、導電、対流、又は他の加熱方法により、溶融が生じるのに十分な温度に加熱される。吸収性シート材料を、光硬化性層とほぼ密接に接触維持することで、未硬化の感光性ポリマーは、感光性ポリマー層から吸収性シート材料に移動する。加熱状態の間に、吸収性シート材料は支持層と接触する硬化した感光性ポリマー層から剥離され、レリーフ構造が現れる。冷却後、得られるフレキソ印刷版は、印刷版シリンダーに取り付け可能である。
【0011】
拭取プロセスの完了後、好ましくは、同一装置内で印刷版要素を更に化学線により後露光し、次いで冷却を経て、使用可能な状態となる。
【0012】
特定の用途に応じて、印刷要素は、他の任意の成分を含んでもよい。例えば、取扱中に層を保護するために、感光性ポリマー層上の除去可能なカバーシートを使用することが好ましいことが多い。カバーシートを使用する場合は、カバーシートは選択的に化学線に露光する直前、又は直後のいずれかに除去される。特許文献10に開示されるスリップ層、又はマスク層等の他の層も使用可能であり、その内容を参照することにより全体を本願に援用する。
【0013】
現在用いられている拭取方法は、未硬化の感光性ポリマーを除去するために使用した拭取材料が原因で、熱現像印刷版の表面粗さ(SR)が高くなりやすいことが問題である。ここで使用される表面粗さは、ASTM標準ASME B46.1を使用して測定され、平均粗さRaとして報告される。更に、未硬化の感光性ポリマーの除去に加えて、これらの拭取材料は、硬化した感光性ポリマーのレリーフに拭取材料のパターンを埋め込むかもしれない。つまり、ブロッターの表面粗さが過度であると、ブロッターパターンが特にベタ領域に印刷される可能性があり、不整合なインク被覆率となり、ベタインク濃度(SID)が低くなる。もし、表面粗さが適度に粗い(即ち、約500nm〜約700nm)と、表面領域が増すため、インク転写性が向上する。しかしながら、表面が過度に粗い(例えば、1,000nm超)と、ベタ領域は、ブロッターパターンを含み、よって、印刷されたベタ領域のSIDが低くなる。従って、印刷品質を最適にするために、SRの大きさを調整する能力を有することは重要である。
【0014】
レリーフ像印刷版を作製するために一般的に使用されるフレキソ印刷版ブランクは3種類ある:(1)アンキャップドアナログ版(即ち、ネガを使用する作製);(2)溶剤で処理されたデジタル版(即ち、コンピューター処理でその場(in situ)でネガを作製する);及び(3)熱現像により処理されるデジタル版。アンキャップドアナログ版、及び溶剤で処理されたデジタル版の表面粗さは、熱処理されたデジタル版の表面粗さ(表面粗さ:約400nm〜約800+nm)よりも一般的に低い(表面粗さ:約80nm〜約150nm)。これらの結果は、概して、用いられる所定の処理方法の結果である。本発明の発明者等は、もし印刷要素の表面粗さが約1,000nmよりも高いならば、熱処理の結果、印刷レリーフに埋め込まれたブロッターパターンが印刷され、且つ光学濃度に悪影響を与える可能性があることを見出した。従って、熱処理時に印刷要素の表面粗さを所望のレベルに調整することが望ましい。
【0015】
現在、市場で入手可能な全ての熱現像印刷版は、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ゴム系版であると考えられている。これは、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)ゴム系版は、熱現像中にブロッターパターンの形成の影響を受けにくい傾向があるからである。他方で、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)ゴム系版は、ブロッターパターンの形成の影響を受け易いが、レリーフ像印刷要素の作製に適切に用いられるようになる特有の物性を有する。従って、本発明の目的は、高い耐オゾン性及び低粘着性等のSBSゴムの特有の物性を利用するために、より低いSRを有する熱現像されたレリーフ像印刷版の作製に使用する感光性ポリマー樹脂配合を設計することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,279,697号明細書
【特許文献2】米国特許第5,175,072号明細書(Martens)
【特許文献3】米国特許第3,264,103号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0180655号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0211423号明細書
【特許文献6】国際公開第01/88615号パンフレット
【特許文献7】国際公開第01/18604号パンフレット
【特許文献8】欧州特許出願公開第1239329号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0146806号明細書(Roberts等)
【特許文献10】米国特許第5,925,500号明細書(Yang等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明の目的は、熱処理中に形成され得るブロッターパターンの影響をほとんど受けないSBSゴム系版の配合の利用に関する。
本発明の他の目的は、モノマーの特別な混合を使用することで、熱処理時にレリーフ像印刷版の表面粗さを調整することを目的とする。
本発明の更なる他の目的は、熱現像プロセスの様々なプロセスパラメータを最適化することで、熱現像時にレリーフ像印刷版の表面粗さを調整することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
よって、本発明は、概して、熱処理中のフレキソ印刷要素の表面粗さを制御する方法に関し、該方法が、以下のa)〜c)の工程を含み、
a)印刷要素ブランクを提供する工程、
前記印刷要素ブランクは、以下のi)〜iv)を含む。
i)支持層;
ii)前記支持層上の少なくとも1つの光硬化性層;
前記少なくとも1つの光硬化性層は、以下の1)〜4)を含む。
1)スチレン−ブタジエン−スチレンを含むバインダー;
2)少なくとも1つの速硬化モノマー;
3)少なくとも1つの遅硬化モノマー;及び
4)光重合開始剤
iii)任意で、前記少なくとも1つの光硬化性層の最上部上の化学線に不透過なレーザアブレーション可能な層、前記レーザアブレーション可能な層は、赤外線レーザ光により露光することで除去することができる;及び、
iv)任意で、除去可能なカバーシート
b)前記印刷版ブランクを化学線により選択的に像様露光することで、前記少なくとも1つの光硬化性層の一部を選択的に架橋及び硬化する工程;並びに
c)前記少なくとも1つの光硬化性層を熱処理して、前記少なくとも1つの光硬化性層の未硬化部分を取り除くことで、前記少なくとも1つの光硬化性層にレリーフ像が現れる工程、
熱処理後の前記レリーフ像印刷要素の表面粗さが約1,000nm未満であることを特徴とする方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明をより理解するために、添付の図面に関連して以下の記載を参照する必要がある。また、各図面において、全ての要素に参照符号が付されているわけではないが、同じ参照符号で示される全ての要素は同様、又は同一の部分を示す。
【図1】図1は、様々な感光性ポリマー組成物中のヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)の含量を示す。
【図2】図2は、表面粗さに対するHDDAの影響の統計的分析を示し、表面粗さの値が逆平方根に変換され、実際の表面粗さ値が水平線で示される。
【図3】図3は、2種類の拭取材料のSEM写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
熱処理版の表面粗さに関して、以下の要因が一般的に重要であると考えられる:(1)圧搾の種類;(2)ホットローラー温度;(3)赤外線レーザ出力;(4)前露光時間;(5)ブロッターの種類;及び(6)感光性樹脂(photoresin)の種類。表面粗さに対してこれらの要因のどれが最も重要であるかを特定するために、スクリーニングテストが行われ、熱現像工程において表面粗さに影響する最も重要な要因は(1)ホットローラー温度;(2)前露光時間;(3)ブロッターの種類;及び(4)使用される感光性樹脂の種類であることが分かった。概して、ホットローラー温度、及び前露光時間が増加するにつれて、表面粗さが低下することが分かった。更に、レリーフに対して最も重要な要因は、(1)ホットローラー温度、及び(2)ブロッターの種類である。特に、ホットローラーの温度が上がるにつれて、レリーフが増える。
【0021】
熱処理によって生じる表面粗さは、感光性樹脂の種類によって決まる。更に、ホットローラー温度及び前露光時間を増加させると、熱処理される際に版の表面粗さを減らす作用がある。
【0022】
概して、本発明の発明者等は、熱処理時の表面粗さが低くなるような感光性樹脂の配合を見出すことが好ましいということが分かった。更に、感光性樹脂組成物を変更できないならば、表面粗さは、寸法安定性(即ち、収縮及び/又は変形)、及びドット安定性等に悪影響がない所定のレベルまでホットローラー温度を上げ、及び前露光時間を長くすることで、調整することができる。
【0023】
一実施形態において、本発明は、概して、熱処理中のフレキソ印刷要素の表面粗さを制御する方法に関し、前記方法は、以下のa)〜c)工程を含む。
a)印刷要素ブランクを提供する工程;
前記印刷要素ブランクは、以下のi)〜iv)を含む。
i)支持層;
ii)前記支持層上の少なくとも1つの光硬化性層;
前記少なくとも1つの光硬化性層は、以下の1)〜4)を含む。
1)スチレン−ブタジエン−スチレンを含むバインダー;
2)少なくとも1つの速硬化モノマー;
3)少なくとも1つの遅硬化モノマー;及び
4)光重合開始剤
iii)任意で、前記少なくとも1つの光硬化性層の最上部上の化学線に不透過なレーザアブレーション可能な層、前記レーザアブレーション可能な層は、赤外線レーザ光により露光することで除去することができる;及び
iv)任意で、除去可能なカバーシート
b)前記印刷版ブランクを化学線により選択的に像様露光することで、前記少なくとも1つの光硬化性層の一部を選択的に架橋及び硬化する工程;並びに
c)前記少なくとも1つの光硬化性層を熱処理して、前記少なくとも1つの光硬化性層の未硬化部分を取り除くことで、前記少なくとも1つの光硬化性層にレリーフ像が現れる工程。
【0024】
本発明は、フレキソ印刷要素の表面粗さの調整に関する。好適な実施形態において、表面粗さは、好ましくは熱処理後に約1,000nm未満であり、好ましくは、熱処理後のレリーフ像印刷版の表面粗さが約500nm未満に制御される。更に、印刷時に光学濃度を増加させるためインク転写性が高いこともまた好ましい。表面粗さが僅かであると光学濃度の増加をもたらすが、表面粗さが過度であると、印刷版表面と所定の基板との間を密に接触させることができないので、光学濃度が低下する。
【0025】
熱処理工程は、一般的に、少なくとも1つの光硬化性層を加熱して、前記少なくとも1つの光硬化性材料層の未硬化部分を軟化させる工程、及び前記少なくとも1つの光硬化性層と拭取材料とを接触させる工程を含み、前記拭取材料が、前記少なくとも1つの光硬化性層の軟化した前記未硬化部分を取り除く。熱処理工程は、一般的に、約140℃〜約180℃、より好ましくは、約170℃〜約180℃の温度で行われる。
【0026】
本発明の発明者等は、様々な方法で印刷版における表面粗さを調整可能であることを見出した。
まず、表面粗さは、特定の不飽和アクリルモノマーの様々な濃度を用いることで調整できる。一実施形態において、不飽和アクリルモノマーはヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)である。しかしながら、任意の種類の硬化(又は画像形成)速度が速い不飽和アクリルモノマーが使用でき、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ブタンジオールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、プロパンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、プロピロキシエチル化(propyloxyethylated)トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及び他の同様のモノマー等が挙げられる。不飽和アクリルモノマーは、一般的に、組成物の全重量に対して、約1重量%〜約20重量%の濃度で組成物中に存在する。
【0027】
組成物中に含まれる他のモノマーは、また、ヘキサンジオールジメタクリレート(HDDMA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(TMPTMA)、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロパンジオールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロパンジオールジメタクリレート、ペンタンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ブタントリオールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、及びトリメチロールプロパントリメタクリレート等を含む。しかしながら、これらの不飽和メタクリルモノマーは、画像形成速度が遅くなりがちであるため、表面粗さが増加しがちである。不飽和アクリルモノマーと不飽和メタクリルモノマーとの間の画像形成速度の差は、所定のドットサイズとラインスクリーン(例えば、2%−150lpi)を保持するために必要な最小保持時間(MHT)を測定することで、容易に示すことができ、該測定値は画像形成速度の逆数値(inverse measure)となる。概して、アクリルモノマーは、メタクリルモノマーよりも速く硬化する。
【0028】
完成したレリーフ像印刷版の表面粗さを調整するために、速硬化不飽和アクリルモノマーと遅硬化不飽和メタクリルモノマーの組み合わせを使用することが望ましい。一実施形態において、本発明の印刷版の配合は、一般的に、少なくとも2つのモノマー、即ち、少なくともHDDA(又はTMPTA)、及びHDDMA及び/又はTMPTMAを含む。HDDAは、速硬化モノマーであり、HDDMA又はTMPTMAは遅硬化モノマーである。HDDAが主要なモノマー(約5重量%以上)として使用される場合、完成した版の配合の表面粗さは、概して、十分に低い(即ち、約500nm)である。
【0029】
組成物中に使用可能なバインダーは、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー、又はスチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーを含む。上記の様々な理由のため、スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーが特に好ましい。更に、組成物は、また、当該術分野で公知であるように、様々な感光性ポリマー、可塑剤、及び抗酸化剤を含んでいてもよく、例えば、米国特許第6,773,859号明細書(Fan等)、米国特許第6,558,876号明細書(Fan)、米国特許出願公開第2005/0123856号明細書、米国特許出願公開第2005/023899号明細書(どちらもRoberts)に記載されるものが挙げられ、これらの各内容を参照することにより全体を本願に援用する。組成物は、また、当業者に公知である様々な紫外線吸収剤、染料等を含む。
【実施例】
【0030】
表1は、本発明の実際に際して使用できる様々な感光性ポリマー配合のモノマーレベルを示す。
【表1】

【0031】
図1は、様々な感光性ポリマー濃度のHDDA含量を示す。図2は、表面粗さに対するHDDA含量の影響の統計的分析を示す。実際の表面粗さの値は、水平線で示される。この統計的分析から分かるように、速硬化モノマー(HDDA)の量がより多い感光性ポリマー配合が、一般的に表面粗さが最低であった。
【0032】
像様露光工程は、約5分間〜約15分間、より好ましくは、約8分間〜約10分間(電球輝度約15mW/cm)行われる。
【0033】
本発明は、また、熱処理したレリーフ像印刷要素に関し、レリーフ像印刷版は、化学線による露光時に架橋及び硬化する少なくとも1つの光硬化性材料層を含み、該少なくとも1つの光硬化性材料層は、(a)スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーを含むバインダー、(b)速硬化モノマー、及び(c)遅硬化モノマーを含み、熱処理後、レリーフ像印刷要素の表面粗さは、約1,000nm未満、より好ましくは、約500nm未満である。
【0034】
フレキソ印刷要素は、印刷要素の表面にレリーフ像を形成するために、光硬化性印刷ブランクを画像形成することで、光硬化性印刷ブランクから作製される。これは、一般的に光硬化性材料を化学線により選択的に露光することで達成され、該露光は、照射領域で光硬化性材料を硬化又は架橋するように作用する。SIS系版は、熱処理時にブロッターパターンを有しにくい傾向がある。このため、ここに記載される発明は、概して、印刷ブロッターパターンにより影響を受けやすい傾向がある熱処理されたSBS系版により適切に用いられる。
【0035】
光硬化性印刷ブランクは、適切なバック層上に1つ以上の未硬化の光硬化性材料層を含む。光硬化性印刷ブランクは、連続(シームレス)スリーブの形態であるか、又はキャリアスリーブに取り付ける平らな板であり得る。更に、版は、真空、接着剤及び/又は機械的クランプ等の適切な手段を用いてキャリアスリーブに取り付けてもよい。
【0036】
そして、3つの関連方法の1つで、印刷要素は、化学線により選択的に露光される。第1の方法は、透過領域、及びほぼ不透過な領域を有するネガを使用して、印刷版要素に対する化学線の透過を選択的に遮断する。第2の方法は、感光性ポリマー層を、レーザアブレーションされやすい化学線が(ほぼ)不透過な層で被覆する。そして、レーザを使用して、該化学線不透過層の選択された領域を除去し、その場(in situ)でネガを形成する。第3の方法は、化学線の集束ビームを使用して感光性ポリマーを選択的に露光する。これらの他の方法はいずれも、感光性ポリマーを化学線により選択的に露光することで、感光性ポリマー部分を選択的に硬化するという能力においては、許容され得る結果をもたらす。
【0037】
一実施形態において、印刷要素は、レーザアブレーションされやすい一般的にカーボンブラックを含む化学線が(ほぼ)不透過な層で被覆される感光性ポリマー層を含む。レーザは、好ましくは、赤外線レーザであり、該化学線不透過層の選択された領域を除去するために使用され、その場(in situ)でネガを形成する。この手法は当該技術分野において公知であり、米国特許第5,262,275及び6,238,837号明細書(Fan)、並びに米国特許第5,925,500号明細書(Yang他)に開示され、これらの各内容を参照することにより全体を本願に援用する。
【0038】
そして、レーザアブレーション中に露呈された感光性ポリマー層の選択領域は、化学線により露光され、その場(in situ)で作製したネガに覆われていない感光性ポリマー層部分が架橋及び硬化する。使用する照射の種類は、光重合性層中の光重合開始剤の種類によって決まる。光重合性層上に残る赤外線感応層中の放射線不透過材料は、その下にある材料に対する照射を防止するため、放射線不透過材料によって保護されるこれらの領域は重合しない。放射線不透過材料に保護されない領域は、化学線照射されて重合し、架橋及び硬化する。任意の従来の化学線源がこの露光工程に使用できる。適切な可視線、又は紫外線源としては、例えば、カーボンアーク、水銀アーク、蛍光灯、電子フラッシュ装置、電子ビーム装置、及び写真用フラッドランプ等が挙げられる。
【0039】
次に、印刷要素の感光性ポリマー層が熱処理又は熱現像されて、感光性ポリマー層の硬化した部分に支障をきたさずに感光性ポリマーの未硬化(すなわち、未架橋)部分が取り除かれ、レリーフ像が形成される。
【0040】
熱処理工程は、一般的に、少なくとも1つの光硬化性材料層を加熱して、少なくとも1つの光硬化性層の未硬化部分を軟化させる工程、及び前記少なくとも1つの光硬化性層と拭取材料とを接触させる工程を含み、前記拭取材料が、前記少なくとも1つの光硬化性層の軟化した前記未硬化部分を取り除く。拭取材料は、好ましくは、紙、織布又は不織布を含む。一般的な拭取材料は、スクリーンメッシュ、及び吸収性布を含み、該吸収性布は、ポリマー製、及び非ポリマー製の布を含む。
【0041】
拭取材料が、レリーフに対して効果があることが示された。例えば、セレックス(Cerex)(登録商標)23、スパンボンドナイロン6,6不織拭取材料(Cerex America,Inc.から入手可能)、及びアールストローム(Ahlstrom)(登録商標)綿100%拭取紙(アールストローム社から入手可能)を調査した。これらの拭取材料のSEM写真を図3に示す。両方の拭取材料のSEM写真を示す図3から分かるように、セレックス(登録商標)は互いに非常に絡まっている多数の円形の繊維からなる。他方では、アールストローム(登録商標)拭取材料は多少平らな繊維からなる。この2つの拭取材料の形態の違いが、なぜアールストローム(登録商標)材料が、セレックス(登録商標)材料よりも、表面粗さを低くするのかを説明する―アールストローム(登録商標)材料の平らな繊維は、感光性樹脂の表面に繊維のパターンを残しにくいため、表面粗さがより低くなる。しかしながら、アールストローム(登録商標)材料の繊維が平らな性質のため、一般的に、熱処理工程中に感光性樹脂と接触する繊維の表面積は、セレックス(Cerex)(登録商標)材料との接触よりも低く、これもまたより小さなレリーフを形成することになる。よって、熱処理工程において両方の種類の拭取材料を使用することは良い点と悪い点とがあることが分かる。
【0042】
更に、一般的に、セレックス(登録商標)23、スパンボンドナイロン6,6不織材料(Cerex America,Inc.から入手可能)、及び他の同様の拭取材料が、アールストローム(登録商標)及び他の同様の拭取材料よりも未硬化の感光性樹脂の除去により効果的である一方で、アールストローム(登録商標)は、セレックス(登録商標)よりも低い表面粗さが得られる。更に、ホットローラー温度及び前露光時間の一般的な処理条件下で、赤外線出力及び圧搾の種類は表面粗さに影響しないことがわかった。
【0043】
熱処理後、印刷版は更に処理される。例えば、版は5分間の後露光、及び6分30秒間の粘着除去時間を用いて完成させてもよい。他の後露光、並びに粘着除去処理及び条件もまた本発明の実施に際して有用である。
【0044】
表2は様々な処理条件に対する版の表面粗さを示す。
【表2】

【0045】
概して、ホットローラー温度が上昇するにつれて、レリーフは大きくなり、一方で前露光時間が影響しないことが分かった。
【0046】
表面粗さ測定は、以下の方法で行われた。
処理された版をそれぞれ半分に切断し、ほぼ同じ大きさの2つの版を作製した。次に、光学式プロファイラー(ビーコ(登録商標)NT3300光学式プロファイラー)を、VSIモード、速度3Xで20μm後方測定及び20μm前方測定で設定した。この時点で、半分を事前に標識化した異なる22点で同じ設定を用いて測定し、1版につき合計で44点の測定を行った。
次に、版全体に分散された16測定点をマーキングするテンプレートとして第1テンプレートを使用してレリーフ測定が行われた。各測定は、D80Sディスプレイを備えるSivac(登録商標)プローブ用いて行われた。高測定値及び低測定値は、必要に応じて、測定が有効であることを確実にするためにダブルチェックされた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレキソ印刷要素を作製する方法であって、
前記方法は、a)〜c)の工程を含み、
a)印刷要素ブランクを提供する工程、
前記印刷要素ブランクは、i)〜iv)を含む。
i)支持層;及び
ii)前記支持層上の少なくとも1つの光硬化性層、
前記少なくとも1つの光硬化性層は、1)〜4)を含む。
1)スチレン−ブタジエン−スチレンを含むバインダー;
2)少なくとも1つの速硬化モノマー;
3)少なくとも1つの遅硬化モノマー;及び
4)光重合開始剤
iii)任意で、前記少なくとも1つの光硬化性層の最上部上の化学線に不透過なレーザアブレーション可能な層、前記レーザアブレーション可能な層は、赤外線レーザ光により露光することで除去することができる;及び
iv)任意で、除去可能なカバーシート、
b)前記印刷版ブランクを化学線により選択的に像様露光することで、前記少なくとも1つの光硬化性層の一部を選択的に架橋及び硬化する工程;並びに
c)前記少なくとも1つの光硬化性層を熱処理して、前記少なくとも1つの光硬化性層の未硬化部分を取り除くことで、前記少なくとも1つの光硬化性層にレリーフ像が現れる工程、
熱処理後の前記レリーフ像印刷要素の表面粗さが約1,000nm未満であることを特徴とする方法。
【請求項2】
熱処理後のレリーフ像印刷版の表面粗さが、約500nm未満である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
熱処理工程が、少なくとも1つの光硬化性材料層を加熱して、前記少なくとも1つの光硬化性層の未硬化部分を軟化させる工程、及び前記少なくとも1つの光硬化性層と拭取材料とを接触させる工程を含み、前記拭取材料が、前記少なくとも1つの光硬化性層の軟化した前記未硬化部分を取り除く請求項1に記載の方法。
【請求項4】
速硬化モノマーが、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、プロパンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、プロピロキシエチル化(propyloxyethylated)トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
速硬化モノマーが、光硬化性組成物の全重量に対して、少なくとも約5重量%の濃度で前記光硬化性組成物中に存在する請求項3に記載の方法。
【請求項6】
遅硬化モノマーが、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロパンジオールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロパンジオールジメタクリレート、ペンタンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ブタントリオールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
遅硬化モノマーが、光硬化性組成物の全重量に対して、約1重量%〜約10重量%の濃度で前記光硬化性組成物中に存在する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
熱処理工程が、約140℃〜約180℃の温度で行われる請求項1に記載の方法。
【請求項9】
像様露光工程が、約5分間〜約15分間行われる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
像様露光工程が、約8分間〜約10分間行われる請求項9に記載の方法。
【請求項11】
レリーフ像印刷要素が、化学線による露光時に架橋及び硬化する少なくとも1つの光硬化性材料層を含み、前記少なくとも1つの光硬化性材料層が、(a)スチレン−ブタジエン−スチレンブロックコポリマーを含むバインダー、(b)速硬化モノマー、及び(c)遅硬化モノマーを含み、熱処理後、前記レリーフ像印刷要素の表面粗さは、約1,000nm未満であることを特徴とする熱処理されたレリーフ像印刷要素。
【請求項12】
熱処理後、レリーフ像印刷要素の表面粗さが、約500nm未満である請求項11に記載の熱処理されたレリーフ像印刷要素。
【請求項13】
遅硬化モノマーが、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロパンジオールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、プロパンジオールジメタクリレート、ペンタンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ブタントリオールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項11に記載の熱処理されたレリーフ像印刷要素。
【請求項14】
速硬化モノマーが、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタンジオールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、プロパンジオールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、プロピロキシエチル化(propyloxyethylated)トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される請求項11に記載の熱処理されたレリーフ像印刷要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−514769(P2012−514769A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545348(P2011−545348)
【出願日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/063372
【国際公開番号】WO2010/080200
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(506314391)マクダーミッド プリンティング ソリューションズ, エルエルシー (23)
【Fターム(参考)】