説明

フロアパネル及びフロアパネルアセンブリ

【課題】振幅が大きな地震に対して、免震効果が得られるフロアパネルの提供。
【解決手段】基礎部材に接触しうる下側部と前記下側部に支持された上側部とを有するフロアユニット部材と、上部構造物に固定されうる構造物固定面と前記フロアユニット部材の前記上側部の上面と当接する当接面とを有し、前記当接面が前記上面と摺動自在に設けられたパネル部材とを有する、摺動ユニットと、壁と前記摺動ユニットの前記パネル部材の側面との間に設けられる、弾性インサート部材とを具備する、フロアパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフロアパネル及びそれを用いたフロアパネルアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免震装置において、支承する建築物や床上の物品の下側に、滑動又は転動をしうる部材を介在させることが知られている。
例えば、特許文献1には、免震面形成用上側基盤の下面中心部に、下端を露出させた状態で免震用球体を回転自在に収装した球体保持金具を固設し、当該上側基盤の下面側に対向させて設けた基礎面形成用下側基盤の中心部に、上記免震用球体の下端を転動可能に接触させるように成した免震作用を司る免震制御用基構部に対して、衝撃を吸収する無反発ゴム材で形成した復元用円筒状外装を、その上端縁を前記免震面形成用上側基盤の周縁に、また、その下端縁を上記基礎面形成用下側基盤の周縁にそれぞれ連結することによって、当該免震制御用基構部の側周面部分を覆うように構成してなる免震用盤体が記載されている。
また、特許文献2には、電子機器に突設される脚体と、前記脚体を摺動可能に支承する台座とよりなる電子機器の台足において、前記脚体の下端部が曲率半径を有する球面状の凸面に形成されるとともに、前記凸部と摺動可能な前記台座の受け面が、該曲率半径よりも大きい曲率半径を有する中央部と該中央部を中心としてすりばち状に傾斜した面とを備え、且つ前記台座の底面部が平滑面に形成されてなることを特徴とする電子機器の台足が記載されている。
【0003】
さらに、特許文献3には、上部構造物に固定され凹状の球面部分が形成された上側部材と、基礎部材に支持され凹状の球面部分が形成された下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に介在する上下が対称的な凸状の球面部分を有する剛性の転動部材と、が備えられた制震装置であって、前記転動部材は、金属球と当該金属球を回転自在に保持する保持部材で構成され、前記保持部材は硬質ゴム性の弾性部材であることを特徴とする制震装置が記載されている。
さらに、特許文献4には、上部構造物に固定され内面が凹状の曲面部分が形成された上側部材と、基礎部材に支持され内面が凹状の曲面部分が形成された下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に介在する上下が対称的な凸状の曲面部分を有する転動部材とを備えた免震装置であって、前記転動部材は、全体形状が略円盤状に形成されており、曲面に形成された中央部と、前記曲面に滑らかに接続する平板面が形成された周辺部を有することを特徴とする免震装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2007−24123号公報
【特許文献2】 特許第3058364号公報
【特許文献3】 実用新案登録第3117029号公報
【特許文献4】 特開2006−283959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の免震用盤体及び特許文献2に記載の電子機器の台足は、いずれも振幅が大きな地震に対して、効果が得られるものではなかった
具体的には、家屋等の建築物においては、地震の振幅が増幅され、建築物自体が受ける揺れの振幅が大きくなるときがあるが、特許文献1に記載の免震用盤体は、球体が転動しうる範囲が狭いため、そのような振幅が大きい揺れに対して、効果が得られない。特許文献2に記載の電子機器の台足は、構造上、脚体の電子機器との接続部に大きな応力がかかりやすいため、大きな振幅の揺れでその接続部付近が破損しやすい。よって、振幅が大きな地震に対しては、破損が生じやすいという問題があった。
また、特許文献3に記載の制震装置及び特許文献4に記載の免震装置は、ある程度大きな揺れには対応することができるものの、上側部材が下側部材に対応する位置から完全にずれてしまうことを防止することができていない。
【0006】
本発明は、振幅が大きな地震に対して、免震効果が得られるフロアパネル及びそれを用いたフロアパネルアセンブリを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の(1)〜(14)を提供する。
(1)基礎部材に接触しうる下側部と前記下側部に支持された上側部とを有するフロアユニット部材と、上部構造物に固定されうる構造物固定面と前記フロアユニット部材の前記上側部の上面と当接する当接面とを有し、前記当接面が前記上面と摺動自在に設けられたパネル部材とを有する、摺動ユニットと、
壁と前記摺動ユニットの前記パネル部材の側面との間に設けられる、弾性インサート部材と
を具備する、フロアパネル(本発明の第1の態様のフロアパネル)。
(2)前記フロアユニット部材の前記上側部の前記上面及び/又は前記パネル部材の前記当接面がエンボスを有することにより、前記当接面が前記上面と摺動自在になっている、上記(1)に記載のフロアパネル。
(3)前記フロアユニット部材の前記上側部の前記上面及び/又は前記パネル部材の前記当接面が、摺動用材料により構成されることにより、前記当接面が前記上面と摺動自在になっている、上記(1)に記載のフロアパネル。
(4)更に、前記壁と前記摺動ユニットの前記フロアユニット部材の側面との間に設けられる、第2弾性インサート部材を具備する、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のフロアパネル。
(5)前記第2弾性インサート部材の圧縮弾性率が、前記弾性インサート部材の圧縮弾性率と異なる、上記(4)に記載のフロアパネル。
【0008】
(6)基礎部材に接触しうる下側部と、前記下側部に支持され上部構造物に固定されうる構造物固定面を有する上側部とを有するフロアユニット部材と、
壁と前記フロアユニット部材の側面との間に設けられる、弾性インサート部材と
を具備し、
前記基礎部材と接触する前記下側部の下面が、前記下面と接触する前記基礎部材の上面との間で、摺動自在である、フロアパネル(本発明の第2の態様のフロアパネル)。
(7)前記フロアユニット部材の前記下側部の下面がエンボスを有することにより、前記下面が前記上面と摺動自在になっている、上記(6)に記載のフロアパネル。
(8)前記フロアユニット部材の前記下側部の前記下面が、摺動用材料により構成されることにより、前記下面が前記上面と摺動自在になっている、上記(6)に記載のフロアパネル。
【0009】
(9)上部構造物に固定されうる上側部材と、基礎部材に固定されうる下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材とを具備し、前記上側部材の前記摺動部材との当接面と前記下側部材の前記摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記下側部材と当接する凸状の下側面と、前記上側面と前記下側面との間に存在する周状の側部とにより形成される、免震ユニットと、
上記(1)〜(5)のいずれかに記載のフロアパネルと
を有し、
前記免震ユニットの前記上側部材と前記フロアパネルの前記パネル部材とが、隣接し、かつ、一体となって前記免震ユニットの前記下側部材と前記フロアパネルの前記フロアユニット部材との上を摺動しうるように組み合わされている、フロアパネルアセンブリ(本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリ)。
(10)上部構造物に固定されうる上側部材と、基礎部材に固定されうる下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材とを具備し、前記上側部材の前記摺動部材との当接面と前記下側部材の前記摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記下側部材と当接する凸状の下側面と、前記上側面と前記下側面との間に存在する周状の側部とにより形成される、免震ユニットと、
上記(6)〜(8)のいずれかに記載のフロアパネルと
を有し、
前記免震ユニットの前記上側部材と前記フロアユニット部材とが、隣接し、かつ、一体となって前記免震ユニットの前記下側部材と前記基礎部材との上を摺動しうるように組み合わされている、フロアパネルアセンブリ(本発明の第2の態様のフロアパネルアセンブリ)。
【0010】
(11)前記免震ユニットが、
前記上側部材と前記下側部材とが、いずれも周縁部において内側に突き出る突状部を有し、
前記摺動部材の前記側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、
前記摺動部材が前記上側部材と前記下側部材との間で摺動する場合において、前記上側部材の前記周縁部の突状部と前記下側部材の前記周縁部の前記突状部とが、前記摺動部材の前記側部の前記凹部と係合しうる、免震ユニットである、上記(9)又は(10)に記載のフロアパネルアセンブリ。
(12)前記免震ユニットが、前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が曲面により形成されている免震ユニットである、上記(9)〜(11)のいずれかに記載のフロアパネルアセンブリ。
(13)前記免震ユニットが、前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている免震ユニットである、上記(9)〜(11)のいずれかに記載のフロアパネルアセンブリ。
(14)前記免震ユニットが、前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が頂部が複数の平面により形成され、頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている免震ユニットである、上記(9)〜(11)のいずれかに記載のフロアパネルアセンブリ。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフロアパネル及びそれを用いたフロアパネルアセンブリは、振幅が大きな地震に対しても、免震効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 本発明の第1の態様のフロアパネルの一例を示す模式的な斜視図である。
【図2】 本発明の第1の態様のフロアパネルの一例を示す模式的な部分端面図である。
【図3】 本発明の第1の態様のフロアパネルの別の一例を示す模式的な部分端面図である。
【図4】 本発明の第1の態様のフロアパネルの更に別の一例を示す模式的な部分端面図である。
【図5】 本発明の第2の態様のフロアパネルの一例を示す模式的な部分端面図である。
【図6】 本発明の第2の態様のフロアパネルの別の一例を示す模式的な部分端面図である。
【図7】 本発明の第2の態様のフロアパネルの更に別の一例を示す模式的な部分端面図である。
【図8】 本発明の第2の態様のフロアパネルに用いられるフロアユニット部材の種々の例を示す模式的な端面図である。
【図9】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの一例を示す模式的な部分断面図である。
【図10】 本発明の第2の態様のフロアパネルアセンブリにおける免震ユニットと本発明の第2の態様のフロアパネルとの組合せの一例を示す模式図である。
【図11】 振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。
【0013】
【図12】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の一例の模式的な平面図である。
【図13】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の一例の模式的な側面図である。
【図14】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の一例の模式的な断面図である。
【図15】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の別の一例の模式的な平面図である。
【図16】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の別の一例の模式的な側面図である。
【図17】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の別の一例の模式的な断面図である。
【図18】 揺れが生じた場合における本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。
【図19】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
【図20】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の更に別の一例の模式的な側面図である。
【図21】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の更に別の一例の模式的な断面図である。
【図22】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図である。
【図23】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の更に別の一例の模式的な側面図である。
【図24】 本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの摺動部材の更に別の一例の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のフロアパネル及びフロアパネルアセンブリを添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
初めに、本発明の第1の態様のフロアパネルについて説明する。
図1は、本発明の第1の態様のフロアパネルの一例を示す模式的な斜視図であり、図2は、本発明の第1の態様のフロアパネルの一例を示す模式的な部分端面図である。
図1及び図2に示されるように、本発明の第1の態様のフロアパネル100は、
基礎部材1に接触しうる下側部21と下側部21に支持された上側部22とを有するフロアユニット部材2と、上部構造物(図示せず。)に固定されうる構造物固定面31とフロアユニット部材2の上側部22の上面23と当接する当接面32とを有し、当接面32が上面23と摺動自在に設けられたパネル部材3とを有する、摺動ユニット4と、
壁9と摺動ユニット4のパネル部材3の側面33との間に設けられる、弾性インサート部材5と
を具備する。
【0015】
摺動ユニット4は、フロアユニット部材2と、パネル部材3とを有する。
フロアユニット部材2は、基礎部材1に接触しうる下側部21と下側部21に支持された上側部22とを有する。
基礎部材1は、例えば、床、建築の基礎部が挙げられる。床は、特に限定されないが、例えば、コンクリート仕上げ床、木材仕上げ床、これらに除震シート、防音シート等のシートを施工した床が挙げられる。
下側部21は、図1及び図2においては、ほぼ直方体の上側部22の下面の四隅を支持する4本のほぼ四角柱状の脚の形状に構成されているが、本発明においては、下側部は基礎部材に接触しうるように構成されていれば、形状、数、上側部を支持する位置等を特に限定されない。
下側部の形状は、例えば、四角柱(直方体)、三角柱等の多角形柱;円柱;不定形の柱状体とすることができる。
下側部の数は、上側部に対して1個でもよく、2個以上でもよい。
下側部の上側部を支持する位置は、端部であってもよく、内部であってもよく、これらの組合せであってもよい。
また、例えば、下側部が、上側部と同形に構成され、下側部と上側部とが一体となって柱状(例えば、四角柱(直方体)、三角柱等の多角形柱;円柱;不定形の柱状体)を構成していてもよい。
下側部21と基礎部材1とは、固定されていてもよい。固定の方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
【0016】
上側部22は、下側部21に支持されている。上側部材22は、後述するパネル部材3の当接面32と当接する上面23を有する。
上側部の形状は、下側部21に支持され、かつ、上面23を有するものであれば特に限定されず、例えば、板状とすることができる。中でも、平面形状がほぼ正方形又は長方形である板状であるのが、複数の本発明の第1の態様のフロアパネルを基礎部材1上に隙間なく設置することが容易である点で好ましい。
【0017】
フロアユニット部材2を構成する材料は、パネル部材3との間で摺動可能なものであれば、特に限定されない。例えば、塩化ビニル樹脂(例えば、硬質塩化ビニル樹脂)、ウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂(例えば、再生ポリプロピレン樹脂)等の合成樹脂材料;コルク等の木質材料;タイル、レンガ、人工石、合成石等の無機材料;大理石、御影石等の自然石が挙げられる。
【0018】
パネル部材3は、上部構造物(図示せず。)に固定されうる構造物固定面31とフロアユニット部材2の上側部22の上面23と当接する当接面32とを有する。
上部構造物は、特に限定されないが、例えば、精密機器(例えば、コンピュータサーバ、多機能コピー機)、美術品収納ケース、陳列棚、ロッカー、自動販売機等の物品が挙げられる。
構造物固定面31は、上部構造物と固定することができる。固定の方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
当接面32は、上述したフロアユニット部材2の上側部22の上面23と当接している。また、当接面32は、上面23がエンボスを有することにより、上面23と摺動自在に設けられている。
パネル部材3の形状は、直方体(高さが低いため、板状ともいうこともできる。)となっている。
【0019】
パネル部材3を構成する材料は、フロアユニット部材2との間で摺動可能なものであれば、特に限定されない。
【0020】
本発明の第1の態様のフロアパネルにおいて、パネル部材の当接面をフロアユニット部材の上側部の上面と摺動自在に設ける方法は、特に限定されない。例えば、上面及び/又は当接面がエンボスを有することにより、当接面が上面と摺動自在になっていてもよく、上面及び/又は当接面が摺動用材料により構成されることにより、当接面が上面と摺動自在になっていてもよく、上面及び/又は当接面が孔を有することにより、両者の接触面積が小さくなり、摩擦係数が低くなって、当接面が上面と摺動自在になっていてもよい。
【0021】
エンボスを設ける方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、パネル部材及び/又はフロアユニット部材の成形時にエンボスを有する金型を用いる方法、エンボスを有するシート(例えば、市販品を用いることができる。)をパネル部材及び/又はフロアユニット部材に貼り付ける方法が挙げられる。
【0022】
図3は、本発明の第1の態様のフロアパネルの別の一例を示す模式的な部分端面図である。図3に示されるフロアパネル200は、基本的に、フロアパネル100と同じであるが、上面23aはエンボスを有さず、当接面32aがエンボスを有することにより、上面23aと摺動自在に設けられている。
【0023】
フロアユニット部材の上側部の上面及び/又はパネル部材の当接面を摺動用材料により構成する方法は、例えば、フロアユニット部材の上側部及び/又はパネル部材の全体を摺動用材料により構成する方法、フロアユニット部材の上側部の上面を構成する部材及び/又はパネル部材の当接面を構成する部材をフロアユニット部材及び/又はパネル部材の本体を構成する部材とは別の部材として摺動用材料により構成する方法が挙げられる。
【0024】
摺動用材料としては、例えば、合成樹脂材料、木質材料、無機材料、自然石が挙げられる。
合成樹脂材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂(例えば、高密度ポリエチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂)、ポリプロピレン樹脂(例えば、再生ポリプロピレン樹脂)等のポリオレフィン樹脂及びオレフィン系共重合樹脂;ポリスチレン樹脂及びスチレン系共重合樹脂;ポリ塩化ビニル樹脂(例えば、硬質塩化ビニル樹脂)及び塩化ビニル系共重合樹脂;ポリ塩化ビニリデン樹脂;ポリウレタン樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;(メタ)アクリル樹脂;熱可塑性エラストマーが挙げられる。
木質材料としては、例えば、コルクが挙げられる。
無機材料としては、例えば、タイル、レンガ、人工石、合成石が挙げられる。
自然石としては、例えば、大理石、御影石が挙げられる。
【0025】
中でも、熱可塑性樹脂が好ましく、微粉炭燃焼ボイラーで生じる石炭灰と相溶化剤とを含有する熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリプロピレン樹脂が好適に挙げられる。
微粉炭燃焼ボイラーで生じる石炭灰は、火力発電所等で使用されている微粉炭燃焼ボイラーの燃焼ガスから、集塵器で採取された「フライアッシュ」及び/又は微粉炭燃焼ボイラーの炉底に落下採取された「クリンカ」である。いずれもSiO、Al、Fe、CaO、MaO、SO等の成分を含有する微粉末である。石炭灰は、平均粒径が10〜30μmであるのが好ましい。
相溶化剤は、上記石炭灰を熱可塑性樹脂に均一に分散させるための添加剤である。相溶化剤は、特に限定されないが、例えば、日本ポリケム社製のADTEX ER320P、ER333F−2、ER353LA及びER313E−1;旭化成社製のタフテックP2000及びH1043;三菱化学社製のモディックP533A、P502、P565、P908A及びH511L112Aが挙げられる。
これらの含有量は、熱可塑性樹脂30〜87質量%、微粉炭燃焼ボイラーで生じる石炭灰10〜80質量%、相溶化剤3〜10質量%であるのが好ましい。
【0026】
摺動用材料は、フロアユニット部材の上側部の上面とパネル部材の当接面との間での摩擦係数が、0.5以下となるものであるのが好ましく、0.4以下となるものであるのがより好ましく、0.3以下となるものであるのが更に好ましく、0.2以下となるものであるのが更に好ましく、0.1以下となるものであるのが更に好ましく、0.05以下となるものであるのが更に好ましい。
本発明においては、摺動用材料自体が上記範囲の摩擦係数であるものを用いることができるだけでなく、コーティング処理や固体潤滑剤の使用により、上記範囲の摩擦係数とすることもできる。
【0027】
図4は、本発明の第1の態様のフロアパネルの更に別の一例を示す模式的な部分端面図である。図4に示されるフロアパネル300は、基本的に、フロアパネル100と同じであるが、上面23bはエンボスを有さず、上面23b及び当接面32bが摺動用材料により構成されていることにより、当接面32bが上面23bと摺動自在に設けられている。
【0028】
図1及び図2に示されるフロアパネル100において、フロアユニット部材2は、壁9と離間して設けられているが、本発明の第1の態様のフロアパネルにおいては、フロアユニット部材と壁とが接触するように設けられてもよい。
【0029】
フロアパネル100において、弾性インサート部材5は、壁9と摺動ユニット4のパネル部材3の側面33との間に設けられる。
弾性インサート部材は、パネル部材のフロアユニット部材に対する位置が震動によりずれた場合に、元の位置に復元させる作用を奏する。弾性インサート部材は、例えば、従来公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、発砲材料、ゴム、バネ(例えば、コイルバネ、ワイヤーバネ、板バネ)、サスペンション、空気シリンダ、油圧シリンダ、エアサスペンションが挙げられる。
フロアパネル100においては、弾性インサート部材5は、壁9と摺動ユニット4のパネル部材3の側面33との間の全部に設けられているが、本発明の第1の態様のフロアパネルはこれに限定されず、一部のみに設けられていてもよい。
【0030】
フロアパネル100は、更に、壁9と摺動ユニット4のフロアユニット部材2の側面24との間に設けられる、第2弾性インサート部材6を具備する。
第2弾性インサート部材は、フロアユニット部材が基礎部材に固定されていない場合において、フロアユニット部材の基礎部材に対する位置が震動によりずれた場合に、元の位置に復元させる作用を奏する。第2弾性インサート部材は、例えば、従来公知のものを用いることができる。具体的には、例えば、発砲材料、ゴム、バネ(例えば、コイルバネ、ワイヤーバネ、板バネ)、サスペンション、空気シリンダ、油圧シリンダ、エアサスペンションが挙げられる。
中でも、第2弾性インサート部材6の圧縮弾性率が、弾性インサート部材5の圧縮弾性率と異なるのが好ましい。この場合、第2弾性インサート部材6と弾性インサート部材5との間の摩擦により、震動のエネルギーの一部を吸収することができる。
第2弾性インサート部材6の圧縮弾性率を弾性インサート部材5の圧縮弾性率と異ならせる方法は、特に限定されないが、例えば、発泡率の異なる発泡材料を用いる方法が挙げられる。
フロアパネル100においては、第2弾性インサート部材6は、壁9と摺動ユニット4のフロアユニット部材2の側面24との間の全部に設けられているが、本発明の第1の態様のフロアパネルはこれに限定されず、一部のみに設けられていてもよい。
【0031】
図1及び図2に示されるフロアパネル100は、上述した摺動ユニット4と、弾性インサート部材5とをそれぞれ1個ずつ具備するが、本発明の第1の態様のフロアパネルはこれに限定されず、1個又は2個以上の摺動ユニットと1個又は2個以上の弾性インサート部材とを組み合わせて具備することができる。
例えば、基礎部材上に複数の摺動ユニットを敷き詰め、壁と端部に存在する摺動ユニットのパネル部材の側面との間にのみ弾性インサート部材を設けたフロアパネルは、本発明の好適な態様の一つである。
【0032】
本発明の第1の態様のフロアパネル100の作用について説明する。
本発明の第1の態様のフロアパネル100が地震等の揺れを受けると、パネル部材3のフロアユニット部材2に対する位置がずれる(例えば、図2中、パネル部材3が右にずれる。)。パネル部材3がずれることにより、弾性インサート部材5が圧縮され、これにより、震動のエネルギーが吸収される。よって、上部構造物の転倒等が効果的に防止される。
つぎに、弾性インサート部材5は、圧縮されたことにより、復元力を発生させて、パネル部材3を押し戻す(例えば、図2中、パネル部材3を左向きに押し戻す。)。これにより、パネル部材3のフロアユニット部材2に対する位置が、好ましくは元の位置まで、戻される。
このように、本発明の第1の態様のフロアパネル100は、震動のエネルギーを吸収し、かつ、上部構造物の位置を好ましくは元の位置まで復元させることができるため、振幅が大きな地震であっても、免震効果が得られる。
【0033】
本発明の第2の態様のフロアパネルについて説明する。
図5は、本発明の第2の態様のフロアパネルの一例を示す模式的な部分端面図である。
図5に示されるフロアパネル400は、
基礎部材1に接触しうる下側部71と、下側部71に支持され上部構造物(図示せず。)に固定されうる構造物固定面75を有する上側部72とを有するフロアユニット部材7と、
壁9とフロアユニット部材7の側面73との間に設けられる、弾性インサート部材8とを具備する。
【0034】
フロアユニット部材7は、基礎部材1に接触しうる下側部71と、下側部71に支持され上部構造物に固定されうる構造物固定面75を有する上側部72とを有する。
基礎部材1は、基本的に、本発明の第1の態様のフロアパネルの場合と同様であるが、後述するように、上面11は、フロアパネル400の下面74と摺動自在になりうるものである。
上面11を構成する材料は、例えば、塩化ビニル樹脂(例えば、硬質塩化ビニル樹脂)、ウレタン樹脂、ポリプロピレン樹脂(例えば、再生ポリプロピレン樹脂)等の合成樹脂材料;コルク等の木質材料;タイル、レンガ、人工石、合成石等の無機材料;大理石、御影石等の自然石が挙げられる。
【0035】
下側部71は、図5においては、上側部72の下面を支持する脚の形状に構成されているが、本発明においては、下側部は基礎部材に接触しうるように構成されていれば、形状、数、上側部を支持する位置等を特に限定されない。
下側部の形状は、例えば、四角柱(直方体)、三角柱等の多角形柱;円柱;不定形の柱状体とすることができる。
下側部の数は、上側部に対して1個でもよく、2個以上でもよい。
下側部の上側部を支持する位置は、端部であってもよく、内部であってもよく、これらの組合せであってもよい。
また、例えば、下側部が、上側部と同形に構成され、下側部と上側部とが一体となって柱状(例えば、四角柱(直方体)、三角柱等の多角形柱;円柱;不定形の柱状体)を構成していてもよい。
下側部71の下面74は、基礎部材1の上面11と接触している。また、下面74は、エンボスを有することにより、基礎部材1の上面11と摺動自在に設けられている。
【0036】
上側部72は、下側部71に支持され上部構造物に固定されうる構造物固定面75を有する。
上部構造物は、本発明の第1の態様のフロアパネルの場合と同様である。
構造物固定面75は、上部構造物と固定することができる。固定の方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
上側部の形状は、下側部71に支持され、かつ、上部構造物に固定されうる構造物固定面75を有するものであれば特に限定されず、例えば、板状とすることができる。中でも、平面形状がほぼ正方形又は長方形である板状であるのが、複数の本発明の第2の態様のフロアパネルを基礎部材1上に隙間なく設置することが容易である点で好ましい。
【0037】
フロアユニット部材7を構成する材料は、基礎部材1と接触する下側部71の下面74が、下面74と接触する基礎部材1の上面11との間で、摺動自在となるものであれば、特に限定されない。
【0038】
フロアユニット部材7においては、基礎部材1と接触する下側部71の下面74が、下面74と接触する基礎部材1の上面11との間で、摺動自在である。
【0039】
本発明の第2の態様のフロアパネルにおいて、フロアユニット部材の下面を基礎部材の上面と摺動自在に設ける方法は、特に限定されない。例えば、フロアユニット部材の下面がエンボスを有することにより、基礎部材の上面と摺動自在になっていてもよく、下面が摺動用材料により構成されることにより、基礎部材の上面と摺動自在になっていてもよい。
【0040】
エンボスを設ける方法は、特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、上述した本発明の第1の態様のフロアパネルの場合と同様である。
フロアユニット部材の下側部の下面を摺動用材料により構成する方法は、例えば、フロアユニット部材の下側部の全体を摺動用材料により構成する方法、フロアユニット部材の下側部の下面を構成する部材をフロアユニット部材の本体を構成する部材とは別の部材として摺動用材料により構成する方法が挙げられる。
【0041】
図6は、本発明の第2の態様のフロアパネルの別の一例を示す模式的な部分端面図である。図6に示されるフロアパネル500は、基本的に、フロアパネル400と同じであるが、下面74aはエンボスを有さず、下面74aを含むフロアユニット部材7の全体が摺動用材料により構成されていることにより、下面74aが基礎部材1の上面11と摺動自在に設けられている。
【0042】
摺動用材料は、特に限定されないが、例えば、本発明の第1の態様のフロアパネルのフロアユニット部材に用いられる摺動用材料が挙げられる。
【0043】
摺動用材料は、下側部71の下面74と基礎部材1の上面11との間での摩擦係数が、0.5以下となるものであるのが好ましく、0.4以下となるものであるのがより好ましく、0.3以下となるものであるのが更に好ましく、0.2以下となるものであるのが更に好ましく、0.1以下となるものであるのが更に好ましく、0.05以下となるものであるのが更に好ましい。
本発明においては、摺動用材料自体が上記範囲の摩擦係数であるものを用いることができるだけでなく、コーティング処理や固体潤滑剤の使用により、上記範囲の摩擦係数とすることもできる。
【0044】
図7は、本発明の第2の態様のフロアパネルの更に別の一例を示す模式的な部分端面図である。図7に示されるフロアパネル600は、基本的に、フロアパネル400と同じであるが、下面74bはエンボスを有さず、下面74bを構成する部材がフロアユニット部材7の本体を構成する部材とは別の摺動用部材76、77として構成されていることにより、下面74aが基礎部材1の上面11と摺動自在に設けられている。
フロアパネル600においては、フロアユニット部材7の下側部71a(図中2箇所)の下端に摺動用部材76、77が設けられている。摺動用部材76、77の下面は、それぞれ基礎部材1の上面11と接触する下面74bを構成している。
摺動用部材76は、下側部71の下端に埋め込まれるかたちで、設けられている。この場合、摺動用部材76に用いられる摺動用材料が少なくてすみ、かつ、下側部71と摺動用部材76との密着性に優れるという利点がある。
摺動用部材77は、下側部71の下端を被覆するかたちで、設けられている。この場合、フロアユニット部材7と基礎部材1との間の摺動の安定性に優れ、かつ、下側部71と摺動用部材77との密着性に優れるという利点がある。
摺動用部材を設ける方法は、これらに限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
【0045】
図8は、本発明の第2の態様のフロアパネルに用いられるフロアユニット部材の種々の例を示す模式的な端面図である。
図8(A)に示されるフロアユニット部材7cは、下面74cを含むフロアユニット部材7cの全体が摺動用材料により構成されていることにより、下面74cが基礎部材1の上面11と摺動自在に設けられている。
図8(B)に示されるフロアユニット部材7dは、下面74dを構成する部材がフロアユニット部材7dの本体を構成する部材とは別の摺動用部材77として構成されていることにより、下面74dが基礎部材1の上面11と摺動自在に設けられている。摺動用部材77は、フロアパネル600に用いられる摺動用部材77と同様である。
【0046】
図5に示されるフロアパネル400において、弾性インサート部材8は、壁9とフロアユニット部材7の側面73との間に設けられる。
弾性インサート部材8を構成する材料は、本発明の第1のフロアパネルに用いられるのと同様である。
弾性インサート部材は、壁とフロアユニット部材の側面との間の全部に設けられていてもよく、一部のみに設けられていてもよい。
【0047】
図5に示されるフロアパネル400は、上述したフロアユニット部材7と、弾性インサート部材8とをそれぞれ1個ずつ具備するが、本発明の第2の態様のフロアパネルはこれに限定されず、1個又は2個以上のフロアユニット部材と1個又は2個以上の弾性インサート部材とを組み合わせて具備することができる。
例えば、基礎部材上に複数のフロアユニット部材を敷き詰め、壁と端部に存在するフロアユニット部材の側面との間にのみ弾性インサート部材設けたフロアパネルは、本発明の好適な態様の一つである。
【0048】
本発明の第2の態様のフロアパネル400の作用について説明する。
本発明の第2の態様のフロアパネル400が地震等の揺れを受けると、フロアユニット部材7の基礎部材1に対する位置がずれる(例えば、図5中、フロアユニット部材7が右にずれる。)。フロアユニット部材7がずれることにより、弾性インサート部材8が圧縮され、これにより、震動のエネルギーが吸収される。よって、上部構造物の転倒等が効果的に防止される。
つぎに、弾性インサート部材8は、圧縮されたことにより、復元力を発生させて、フロアユニット部材7を押し戻す(例えば、図5中、フロアユニット部材7を左向きに押し戻す。)。これにより、フロアユニット部材7の基礎部材1に対する位置が、好ましくは元の位置まで、戻される。
このように、本発明の第2の態様のフロアパネル400は、震動のエネルギーを吸収し、かつ、上部構造物の位置を好ましくは元の位置まで復元させることができるため、振幅が大きな地震であっても、免震効果が得られる。
【0049】
本発明においては、本発明の第1の態様のフロアパネルと本発明の第2の態様のフロアパネルとを組み合わせて用いることができる。
【0050】
つぎに、本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリについて説明する。
本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリは、
上部構造物に固定されうる上側部材と、基礎部材に固定されうる下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材とを具備し、前記上側部材の前記摺動部材との当接面と前記下側部材の前記摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記下側部材と当接する凸状の下側面と、前記上側面と前記下側面との間に存在する周状の側部とにより形成される、免震ユニットと、
上述した本発明の第1の態様のフロアパネルと
を有し、
前記免震ユニットの前記上側部材と前記フロアパネルの前記パネル部材とが、隣接し、かつ、一体となって前記免震ユニットの前記下側部材と前記フロアパネルの前記フロアユニットとの上を摺動しうるように組み合わされている、フロアパネルアセンブリである。
【0051】
図9は、本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの一例を示す模式的な部分断面図である。
図9に示されるように、免震ユニット700は、
上部構造物1に固定されうる上側部材82と、
基礎部材3に固定されうる下側部材84と、
上側部材82と下側部材84との間に摺動自在に挟まれた摺動部材85と
を具備する。
【0052】
上部構造物1は、本発明の第1の態様のフロアパネルの場合と同様である。
基礎部材3は、本発明の第1の態様のフロアパネルの場合と同様である。
【0053】
上側部材82の摺動部材85との当接面822と下側部材84の摺動部材85との当接面842とは、いずれも凹面である。
凹面の形状は、全体として周縁部から中央にかけて窪みが深くなっている形状であれば特に限定されず、全体が曲面により構成されていてもよく、一部又は全部が1個以上の平面により構成されていてもよい。このように、当接面822と当接面842とがいずれも凹面であることにより、揺れにより上側部材82と下側部材84との位置関係がずれた場合であっても、摺動部材85を介して、元に戻りやすい。
中でも、当接面822の凹面の形状は、摺動部材85の上側面851の形状よりも、曲率半径が大きいのが好ましい。この場合、摺動部材85の摺動がより円滑になる。また、同様に、当接面842の凹面の形状は、摺動部材85の下側面853の形状よりも、曲率半径が大きいのが好ましい。
上側部材82と下側部材84との平面形状は、特に限定されないが、円形(実質的に円形であるものを含む。)又は正多角形(好ましくは頂点が8個以上のもの)であるのが好ましい。このような平面形状であると、全方向の揺れに対して、均一に性能を発揮することが可能となる。
【0054】
免震ユニット700においては、上側部材82と下側部材84とは、それぞれ周縁部において内側に突き出る突状部821、841を有している。
図11は、振幅が極めて大きくなった場合における本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。図11に示されるように、突状部821、841は、摺動部材85の側部855に凹部852が存在する態様において、振幅が極めて大きくなった場合に、凹部852と係合した状態となり、これにより、免震ユニット700が大きな免震効果を発揮するようになる。
上側部材と下側部材とにおいては、突状部が周縁部の全部にわたって形成されていてもよく、一部のみに形成されていてもよいが、一部のみに形成する場合であっても、摺動部材の側部の凹部と係合しうるものとする。
本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットは、このような上側部材と下側部材とに突状部を有するものに限定されない。
【0055】
上側部材82及び下側部材84の材質は、特に限定されず、例えば、金属、セラミックス、プラスチックが挙げられる。耐久性に優れる点では、金属が好ましく、鉄又は鉄合金、アルミニウム合金であるのがより好ましく、鉄又は鉄合金であるのが更に好ましい。また、重さが軽い点では、プラスチックが好ましい。中でも、廃プラスチック(廃プラ)は低価格である点で好ましい。
【0056】
上側部材82の摺動部材85との当接面822と下側部材84の摺動部材85との当接面842とには、摺動部材85の摺動を円滑にするために、あらかじめコーティング処理を施しておいたり、潤滑剤を塗布しておいたりするのが好ましい態様の一つである。
【0057】
免震ユニット700においては、摺動部材85は、上側部材82と当接する凸状の上側面851と、下側部材84と当接する凸状の下側面853と、上側面851と下側面853との間に存在する周状の側部855とにより形成されている。
図12〜図14は、摺動部材85を示す模式図である。図12は、摺動部材の一例の模式的な平面図であり、図13は、摺動部材の一例の模式的な側面図であり、図14は、図12中のXIV−XIV線に沿った、摺動部材の一例の模式的な断面図である。
図12〜図14に示されるように、摺動部材85の凸状の上側面851及び下側面853は、いずれも、頂部850が曲面により形成され、頂部850の周囲が12個の平面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材85の上側面851及び下側面853においては、いずれも、頂部850がお椀状の曲面により形成され、頂部850の周縁は円を形成しており、頂部850の周囲が同一形状の12個の平面を有し、これらの平面が頂部850の周縁から上側面851及び下側面853の周縁部854まで存在している。
【0058】
図15〜図17は、摺動部材85とは別の態様の摺動部材86を示す模式図である。図15は、摺動部材の別の一例の模式的な平面図であり、図16は、摺動部材の別の一例の模式的な側面図であり、図17は、図15中のXVII−XVII線に沿った、摺動部材の別の一例の模式的な断面図である。
図15〜図17に示されるように、摺動部材86は、上側部材82と当接する凸状の上側面861と、下側部材84と当接する凸状の下側面863と、上側面861と下側面863との間に存在する周状の側部865とにより形成されている。
摺動部材86の凸状の上側面861及び下側面863は、いずれも、頂部860が12個の平面により形成され、頂部860の周囲が頂部860の平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材86の上側面861及び下側面863においては、いずれも、頂部860が同一形状の12個の平面により形成され、頂部860の周縁は正12角形を形成しており、頂部860の周囲が同一形状の12個の平面を有し、これらの平面が頂部860の周縁から上側面861及び下側面863の周縁部864まで存在している。
摺動部材86は、上述した形状の上側面861と下側面863と、それらの間に存在する周状の側部865とにより形成され、側部865の周方向の全部に凹部862が存在する。
【0059】
図19〜図21は、摺動部材85及び摺動部材86とは更に別の態様の摺動部材87を示す模式図である。図19は、摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図であり、図20は、摺動部材の更に別の一例の模式的な側面図であり、図21は、図19中のXXI−XXI線に沿った、摺動部材の更に別の一例の模式的な断面図である。
図19〜図21に示されるように、摺動部材87の凸状の上側面871及び下側面873は、いずれも、頂部870が曲面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材87の上側面871及び下側面873においては、いずれも、頂部870から上側面871及び下側面873の周縁部874に至るまでお椀状の曲面により形成され、周縁部874は円を形成している。曲面の水平方向に対する傾斜度は、頂部870から周縁部874に向かって大きくなっている。曲面の形状は、周縁方向において、同じである。
摺動部材87は、上述した形状の上側面871と下側面873と、それらの間に存在する周状の側部875とにより形成され、側部875の周方向の全部に凹部872が存在する。
【0060】
図22〜図24は、摺動部材85、摺動部材86及び摺動部材87とは更に別の態様の摺動部材88を示す模式図である。図22は、摺動部材の更に別の一例の模式的な平面図であり、図23は、摺動部材の更に別の一例の模式的な側面図であり、図24は、図22中のXXIV−XXIV線に沿った、摺動部材の更に別の一例の模式的な断面図である。
図22〜図24に示されるように、摺動部材88の凸状の上側面881及び下側面883は、いずれも、頂部880から上側面881及び下側面883の周縁部884に至るまで4個の平面により形成されている。
より詳細に説明すると、摺動部材88の上側面881及び下側面883においては、いずれも、頂部880が同一形状の4個の平面により形成され、周縁部884は正方形を形成している。上記平面は、いずれも完全な平面ではなく、水平方向に対する傾斜度が、頂部880から周縁部884に向かって大きくなるように、多少の面取りが行われている。本発明においては、「平面」は、このように完全な平面のみならず、面取り等により形状が変形しているものも含まれる。
摺動部材88は、上述した形状の上側面881と下側面883と、それらの間に存在する周状の側部885とにより形成され、側部885の周方向の全部に凹部882が存在する。
【0061】
摺動部材の上側面及び下側面の形状は、これらに限定されない。以下、摺動部材の上側面及び下側面の形状について詳細に説明する。
【0062】
摺動部材の上側面及び下側面は、いずれも凸状であれば、特に限定されない。上側面及び下側面の形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。以下、上側面を例に挙げて説明するが、下側面についても同様である。
上側面は、曲面のみにより形成されている態様(以下「態様A」ともいう。)、頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている態様(以下「態様B」ともいう。)、頂部が複数の平面により形成され、頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている態様(以下「態様C」ともいう。)、頂部が複数の平面により形成され、前記平面が頂部の中心から周縁部まで存在している態様(以下「態様D」ともいう。)が好適に挙げられる。中でも、態様A、態様B、態様Cが好ましい。
態様Aは、転がり抵抗が生じる状態と摩擦抵抗が生じる状態との相互の移行が円滑に生じる点、周縁方向における抵抗の変化が円滑に生じる点に利点がある。
態様Bは、摩擦抵抗が生じる状態において、摺動部材が上側部材及び下側部材とそれぞれ4点で接触するため、高い摩擦抵抗が生じる点に利点がある。
態様Cは、摩擦抵抗が生じる状態において、揺れが小さいと、摺動部材が上側部材及び下側部材とそれぞれ3点で接触し、揺れが大きいと、摺動部材が上側部材及び下側部材とそれぞれ4点で接触するため、揺れの大きさに応じて摩擦抵抗が変化する点に利点がある。特に、橋脚、細長いビル等の細長い形状の構造物に対して、免震効果が優れる。
【0063】
態様Aにおいては、曲面の形状は特に限定されないが、曲面の水平方向に対する傾斜度が、頂部から周縁部に向かって大きくなっていくのが好ましい(例えば、図19〜図21に示される摺動部材87)。曲面の形状は、周縁方向において、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0064】
態様Bにおいては、曲面の形状は特に限定されないが、曲面の水平方向に対する傾斜度が、頂部から周縁部に向かって大きくなっていくのが好ましい。曲面の形状は、周縁方向において、同じであってもよく、異なっていてもよい。
頂部の周囲の平面の周縁方向の数は、複数(2個以上)である。中でも、4個以上であるのが好ましい。上記範囲であると、全方向の揺れに対して、均一に機能を発揮することができる。また、12個以下であるのが好ましい。上記範囲であると、製造が容易である。頂部の周囲の平面の周縁方向の数が4個である場合は、橋脚、細長いビル等の細長い形状の構造物に対して、免震効果が優れる。
複数の平面の形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。中でも、同一であるのが好ましい。
平面の存在位置は、頂部の周縁から、上側面の周縁部まで存在していてもよく、頂部の周縁と上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在していてもよい。平面が頂部の周縁から頂部の周縁と上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在している場合、その位置と周縁部との間までは、曲面により形成することができる。平面の存在位置は、周縁方向において、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
平面の放射方向の数は、頂部の周囲から上側面の周縁部まで1個であってもよく(例えば、図12〜図14に示される摺動部材85)、2個以上であってもよい。頂部の周囲から上側面の周縁部まで放射方向に2個以上の平面が配置されている場合、頂部の周囲から上側面の周縁部に向かうに従って水平方向に対する傾斜度が大きくなっているのが好ましい。
頂部の周縁付近において、平面の水平方向に対する傾斜度は、曲面の水平方向に対する傾斜度よりも大きくなっているのが好ましい。
【0065】
態様Cにおいては、頂部の平面の周縁方向の数は、複数(2個以上)である。中でも、4個以上であるのが好ましい。上記範囲であると、全方向の揺れに対して、均一に機能を発揮することができる。また、12個以下であるのが好ましい。上記範囲であると、製造が容易である。頂部の周囲の平面の周縁方向の数が4個である場合は、橋脚、細長いビル等の細長い形状の構造物に対して、免震効果が優れる。
複数の頂部の平面の形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。中でも、同一であるのが好ましい。
頂部の周囲の平面の存在位置は、頂部の周縁から、上側面の周縁部まで存在していてもよく、頂部の周縁と上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在していてもよい。平面が頂部の周縁から上側面の周縁部との間の任意の位置まで存在している場合、その位置から上側面の周縁部までは、曲面により形成することができる。平面の存在位置は、周縁方向において、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
平面の放射方向の数は、頂部の周縁から上側面の周縁部まで1個であってもよく(例えば、図15〜図17に示される摺動部材86)、2個以上であってもよい。頂部の周囲から上側面の周縁部まで放射方向に2個以上の平面が配置されている場合、頂部の周囲から上側面の周縁部に向かうに従って水平方向に対する傾斜度が大きくなっているのが好ましい。
頂部の周縁付近において、平面の水平方向に対する傾斜度は、曲面の水平方向に対する傾斜度よりも大きくなっているのが好ましい。
頂部の周縁付近において、頂部の平面の周縁方向の数と、頂部の周囲の平面の周縁方向の数とは、異なっていても、同一であってもよい。中でも、同一であるのが好ましく、さらに、頂部の平面の端部と頂部の周囲の平面の端部とが同じ位置にあるのがより好ましい。
【0066】
態様Dにおいては、頂部の平面の周縁方向の数は、複数(2個以上)である。中でも、4個以上であるのが好ましい。上記範囲であると、全方向の揺れに対して、均一に機能を発揮することができる。また、12個以下であるのが好ましい。上記範囲であると、製造が容易である。頂部の周囲の平面の周縁方向の数が4個である場合は、橋脚、細長いビル等の細長い形状の構造物に対して、免震効果が優れる。
複数の頂部の平面の形状は、同一であってもよく、異なっていてもよい。中でも、同一であるのが好ましい。
上記平面は、完全な平面ではなくてもよい。中でも、水平方向に対する傾斜度が、頂部から周縁部に向かって大きくなるように、多少の面取りが行われているのが好ましい(例えば、図22〜図24に示される摺動部材88)。
【0067】
摺動部材85は、上述した形状の上側面851と下側面853と、それらの間に存在する周状の側部855とにより形成されている。
摺動部材85においては、側部855の周方向の全部に凹部852が存在するが、本発明はこれに限定されず、側部の周方向の一部に凹部が存在するものであってもよく、凹部が存在しないものであってもよい。
摺動部材の側部の周方向の全部に凹部が存在する場合は、摺動部材の向きにかかわらず、上側部材及び下側部材の突状部と容易に係合することができる。
摺動部材の側部の周方向の一部のみに凹部が存在する場合は、凹部でない部分があるため、摺動部材の上下方向の強度がより高くなる。
【0068】
摺動部材85は、一体的に形成されていてもよく、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。
【0069】
摺動部材85の材質は、特に限定されず、例えば、金属、セラミックスが挙げられる。中でも、耐久性の点で、金属であるのが好ましく、鉄又は鉄合金、アルミニウム合金であるのがより好ましく、鉄又は鉄合金であるのが更に好ましい。
【0070】
摺動部材85の上側面851と下側面853とには、摺動部材85の摺動を円滑にするために、あらかじめコーティング処理を施しておいたり、潤滑剤を塗布しておいたりするのが好ましい態様の一つである。
【0071】
摺動部材85は、上側部材82と下側部材84との間で摺動することができるように挟まれている。この場合において、上側部材82の周縁部の突状部821と下側部材84の周縁部の突状部841とが、摺動部材85の側部855の凹部852と係合しうるようになっている。
【0072】
図9に示されるように、免震ユニット700は、通常、摺動部材85が、上部構造物1に固定された上側部材82及び基礎部材3に固定された下側部材84と、これらの当接面822、842の各中央部において当接するように設置される(この位置を「当初位置」という。)。
【0073】
図18は、揺れが生じた場合における本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットの一例の模式的な部分断面図である。
地震等により揺れが生じ、図18に示されるように、下側部材84が図中右にずれた場合は、下側部材84と当接している摺動部材85に力が伝達され、摺動部材85は図中反時計廻りに傾く。このように、摺動部材85が傾くことにより、揺れのエネルギーを吸収することができる。
また、摺動部材85は、傾いた状態、傾いた状態から自重で戻ろうとしている状態又は戻った状態において、上側部材82と下側部材84との間に挟まれながら摺動する。この摺動は、摺動部材85と上側部材82及び下側部材84との間に摩擦力を生じさせる。このように、摺動部材85が摺動することによっても、揺れのエネルギーを吸収することができる。
この摺動部材85の摺動は、揺れが生じて当初位置からずれた場合、上側部材82の摺動部材85との当接面822と下側部材84の摺動部材85との当接面842とがいずれも凹面であり、かつ、上側部材82と当接する上側面851と下側部材84と当接する下側面853とがいずれも凸状であるために生じる、当初位置に戻ろうとする復元力によっても引き起こされる。そのため、免震ユニット700においては、揺れのエネルギーを吸収する効率が極めて高くなる。
このような動作は、水平方向の全方向に対して可能である。
【0074】
地震の振幅が極めて大きくなると、例えば、図11に示されるように、基礎部材83に固定された下側部材84が、上部構造物1に固定された上側部材82に対して、相対的に図中右側に大きくずれた状態となり、摺動部材85の側部855の凹部852の図中の左の部分が下側部材84の周縁部(図中、その左の部分)の突状部841と係合し、かつ、摺動部材85の側部855の凹部852の図中の右の部分が上側部材82の周縁部(図中、その右の部分)の突状部841と係合する。
このように、下側部材84が摺動部材85を介して上側部材82に対して引っ掛かり、この状態から更に(図中右側に)ずれることができないようになっている。よって、上側部材82が下側部材84に対応する位置から完全に外れてしまうことがない。
しかも、図11に示されるように、下側部材84が上側部材82に対して相対的に図中右側にずれるような力を受けている場合に、摺動部材85は、左側から下側部材84により右向きに力を受け、かつ、右側から上側部材82により左向きに力を受けているため、全体として左下から右上の方向にやや傾いた状態となっている。よって、摺動部材85の自重によって、上側部材82を右側に、下側部材84を左側に動かす力が生じ、この力は、振幅によってずれた向きと反対の向きに、すなわち、上側部材82及び下側部材84の相対位置を復元させるように働く。
【0075】
本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットは、これに限定されず、例えば、従来公知の免震ユニットを用いることができる。具体的には、例えば、特開2006−84014号公報に記載の免震装置、特開2006−242371号公報に記載の免震装置、特開2006−283959号公報に記載の免震装置、特開2007−71380号公報に記載の制震装置、特開2007−225101号公報に記載の制震装置、特開2009−24473号公報に記載の制震装置、特開2009−41351号公報に記載の制震装置、実用新案登録第3117029号公報に記載の制震装置、実用新案登録第3118144号公報に記載の制震装置が挙げられる。
【0076】
本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリは、上述した免震ユニットと、上述した本発明の第1の態様のフロアパネルとを有し、前記免震ユニットの前記上側部材と前記フロアパネルの前記パネル部材とが、隣接し、かつ、一体となって前記免震ユニットの前記下側部材と前記フロアパネルの前記フロアユニットとの上を摺動しうるように組み合わされている。
このように組み合わせる方法は、特に限定されず、例えば、免震ユニット700の上側部材82が、フロアパネル100のパネル部材3と接触し、かつ、フロアパネル100のフロアユニット部材2と接触しないように、免震ユニット700とフロアパネル100とを隣接させる方法が挙げられる。
【0077】
本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリの作用について説明する。
地震等により揺れが生じると、免震ユニットの上側部材とフロアパネルのパネル部材とが、一体となって免震ユニットの下側部材とフロアパネルのフロアユニットとの上を摺動する。この際、免震ユニットの摺動部材の傾きや摺動と、フロアパネルの弾性インサート部材の圧縮とによって、震動のエネルギーが吸収される。
その後、免震ユニットの摺動部材の当初位置に戻ろうとする復元力と、フロアパネルの弾性インサート部材によるずれたパネル部材を押し戻そうとする復元力とにより、免震ユニットの上側部材とフロアパネルのパネル部材とが、一体となって免震ユニットの下側部材とフロアパネルのフロアユニットの上を摺動して、元の位置に戻る。
このように、本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリは、震動のエネルギーを吸収し、かつ、上部構造物の位置を元の位置まで復元させることができるため、振幅が大きな地震であっても、免震効果が得られる。
【0078】
本発明の第2の態様のフロアパネルアセンブリについて説明する。
本発明の第2の態様のフロアパネルアセンブリは、
上部構造物に固定されうる上側部材と、基礎部材に固定されうる下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材とを具備し、前記上側部材の前記摺動部材との当接面と前記下側部材の前記摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記下側部材と当接する凸状の下側面と、前記上側面と前記下側面との間に存在する周状の側部とにより形成される、免震ユニットと、
上述した本発明の第2の態様のフロアパネルと
を有し、
前記免震ユニットの前記上側部材と前記フロアユニット部材とが、隣接し、かつ、一体となって前記免震ユニットの前記下側部材と前記基礎部材との上を摺動しうるように組み合わされている、フロアパネルアセンブリである。
【0079】
本発明の第2の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットは、本発明の第1の態様のフロアパネルアセンブリに用いられる免震ユニットと同じである。
【0080】
上述した免震ユニットと上述した本発明の第2の態様のフロアパネルとを上記のように組み合わせる方法は、特に限定されず、例えば、免震ユニット700の上側部材82が、フロアパネル400のフロアユニット部材7と接触し、かつ、免震ユニット700の下側部材84が、フロアパネル400のフロアユニット部材7と接触しないように(例えば、上側部材82より下側部材82の方が小さい免震ユニット700を用いる。)、免震ユニット700とフロアパネル400とを隣接させる方法が挙げられる。
【0081】
図10は、本発明の第2の態様のフロアパネルアセンブリにおける免震ユニットと本発明の第2の態様のフロアパネルとの組合せの一例を示す模式図である。図10(A)は、平面図であり、図10(B)は、図10(A)中のXB−XB線に沿った横端面図である。
図10に示される本発明の第2の態様のフロアパネルアセンブリ1000は、長方形状の基礎部材1の上に、平面形状が正方形状で同じ大きさである、4個の免震ユニット800と56個の本発明の第2の態様のフロアパネル650のフロアユニット部材7eとが、正方形の各辺が一致するように隣接して、かつ、壁9から離間して敷き詰められており、壁9とフロアユニット部材7eの側面との間に、弾性インサート部材として、ゴム8aとコイルバネ8bと板バネ8cとが設けられている。
免震ユニット800の上側部材82aは、フロアパネル650のフロアユニット部材7eと接触し、かつ、免震ユニット800の下側部材84aが、上側部材82aより小さく構成されて、フロアパネル650のフロアユニット部材7eと接触しないようになっている。
このような配置により、免震ユニット800の上側部材82aとフロアパネル650のフロアユニット部材7eとが、一体となって免震ユニット800の下側部材84aと基礎部材1との上を摺動しうるように組み合わされている。
【0082】
本発明の第2の態様のフロアパネルアセンブリの作用について説明する。
地震等により揺れが生じると、免震ユニットの上側部材とフロアパネルのフロアユニット部材とが、一体となって免震ユニットの上側部材は免震ユニットの下側部材の上を、フロアユニット部材は基礎部材の上を摺動する。この際、免震ユニットの摺動部材の傾きや摺動と、フロアパネルの弾性インサート部材の圧縮とによって、震動のエネルギーが吸収される。
その後、免震ユニットの摺動部材の当初位置に戻ろうとする復元力と、フロアパネルの弾性インサート部材によるずれたパネル部材を押し戻そうとする復元力とにより、免震ユニットの上側部材とフロアパネルのフロアユニット部材とが、一体となって免震ユニットの下側部材とフロアパネルのフロアユニットの上を摺動して、元の位置に戻る。
このように、本発明の第2の態様のフロアパネルアセンブリは、震動のエネルギーを吸収し、かつ、上部構造物の位置を元の位置まで復元させることができるため、振幅が大きな地震であっても、免震効果が得られる。
【0083】
以上、本発明の第1の態様及び第2の態様のフロアパネル並びに本発明の第1の態様及び第2の態様のフロアパネルアセンブリを好適な実施形態を例に挙げて説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、各種の変更や改良を行ってもよい。
例えば、各部材は、一体的に形成されていてもよく、複数の部材を組み合わせて形成されていてもよい。各部材は、面取りを行ったものであってもよい。また、各部の構成は、同様の機能を発揮しうる任意の構成と置換することができる。
【符号の説明】
【0084】
1 基礎部材
2、7、7a、7b、7c、7d、7e フロアユニット部材
3 パネル部材
4 摺動ユニット
5、8 弾性インサート部材
6 第2弾性インサート部材
8a ゴム
8b コイルバネ
8c 板バネ
9 壁
21、21a、71、71a 下側部
22、22a、72 上側部
11、23、23a、23b 上面
24、73 側面
31、31a、75 構造物固定面
32、32a、32b 当接面
33、33a 側面
74、74a、74b、74c、74d 下面
76、77 摺動用部材
82、82a 上側部材
84、84a 下側部材
85、86、87、88 摺動部材
100、200、300、400、500、600、650 フロアパネル
700、800 免震ユニット
821、841 突状部
822、842 当接面
850、860、870、880 頂部
851、861、871、881 上側面
852、862、872、882 凹部
853、863、873、883 下側面
854、864、874、884 周縁部
855、865、875、885 側部
1000 フロアパネルアセンブリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎部材に接触しうる下側部と前記下側部に支持された上側部とを有するフロアユニット部材と、上部構造物に固定されうる構造物固定面と前記フロアユニット部材の前記上側部の上面と当接する当接面とを有し、前記当接面が前記上面と摺動自在に設けられたパネル部材とを有する、摺動ユニットと、
壁と前記摺動ユニットの前記パネル部材の側面との間に設けられる、弾性インサート部材と
を具備する、フロアパネル。
【請求項2】
前記フロアユニット部材の前記上側部の前記上面及び/又は前記パネル部材の前記当接面がエンボスを有することにより、前記当接面が前記上面と摺動自在になっている、請求項1に記載のフロアパネル。
【請求項3】
前記フロアユニット部材の前記上側部の前記上面及び/又は前記パネル部材の前記当接面が、摺動用材料により構成されることにより、前記当接面が前記上面と摺動自在になっている、請求項1に記載のフロアパネル。
【請求項4】
更に、前記壁と前記摺動ユニットの前記フロアユニット部材の側面との間に設けられる、第2弾性インサート部材を具備する、請求項1〜3のいずれかに記載のフロアパネル。
【請求項5】
前記第2弾性インサート部材の圧縮弾性率が、前記弾性インサート部材の圧縮弾性率と異なる、請求項4に記載のフロアパネル。
【請求項6】
基礎部材に接触しうる下側部と、前記下側部に支持され上部構造物に固定されうる構造物固定面を有する上側部とを有するフロアユニット部材と、
壁と前記フロアユニット部材の側面との間に設けられる、弾性インサート部材と
を具備し、
前記基礎部材と接触する前記下側部の下面が、前記下面と接触する前記基礎部材の上面との間で、摺動自在である、フロアパネル。
【請求項7】
前記フロアユニット部材の前記下側部の下面がエンボスを有することにより、前記下面が前記上面と摺動自在になっている、請求項6に記載のフロアパネル。
【請求項8】
前記フロアユニット部材の前記下側部の前記下面が、摺動用材料により構成されることにより、前記下面が前記上面と摺動自在になっている、請求項6に記載のフロアパネル。
【請求項9】
上部構造物に固定されうる上側部材と、基礎部材に固定されうる下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材とを具備し、前記上側部材の前記摺動部材との当接面と前記下側部材の前記摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記下側部材と当接する凸状の下側面と、前記上側面と前記下側面との間に存在する周状の側部とにより形成される、免震ユニットと、
請求項1〜5のいずれかに記載のフロアパネルと
を有し、
前記免震ユニットの前記上側部材と前記フロアパネルの前記パネル部材とが、隣接し、かつ、一体となって前記免震ユニットの前記下側部材と前記フロアパネルの前記フロアユニット部材との上を摺動しうるように組み合わされている、フロアパネルアセンブリ。
【請求項10】
上部構造物に固定されうる上側部材と、基礎部材に固定されうる下側部材と、前記上側部材と前記下側部材との間に摺動自在に挟まれた摺動部材とを具備し、前記上側部材の前記摺動部材との当接面と前記下側部材の前記摺動部材との当接面とが、いずれも凹面であり、前記摺動部材が、前記上側部材と当接する凸状の上側面と、前記下側部材と当接する凸状の下側面と、前記上側面と前記下側面との間に存在する周状の側部とにより形成される、免震ユニットと、
請求項6〜8のいずれかに記載のフロアパネルと
を有し、
前記免震ユニットの前記上側部材と前記フロアユニット部材とが、隣接し、かつ、一体となって前記免震ユニットの前記下側部材と前記基礎部材との上を摺動しうるように組み合わされている、フロアパネルアセンブリ。
【請求項11】
前記免震ユニットが、
前記上側部材と前記下側部材とが、いずれも周縁部において内側に突き出る突状部を有し、
前記摺動部材の前記側部の周方向の全部又は一部に凹部が存在し、
前記摺動部材が前記上側部材と前記下側部材との間で摺動する場合において、前記上側部材の前記周縁部の突状部と前記下側部材の前記周縁部の前記突状部とが、前記摺動部材の前記側部の前記凹部と係合しうる、免震ユニットである、請求項9又は10に記載のフロアパネルアセンブリ。
【請求項12】
前記免震ユニットが、前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が曲面により形成されている免震ユニットである、請求項9〜11のいずれかに記載のフロアパネルアセンブリ。
【請求項13】
前記免震ユニットが、前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が頂部が曲面により形成され、前記頂部の周囲が複数の平面により形成されている免震ユニットである、請求項9〜11のいずれかに記載のフロアパネルアセンブリ。
【請求項14】
前記免震ユニットが、前記摺動部材の前記上側面と前記下側面との両方又は一方が頂部が複数の平面により形成され、頂部の周囲が前記頂部の前記平面より水平方向に対する傾斜度の大きい複数の平面により形成されている免震ユニットである、請求項9〜11のいずれかに記載のフロアパネルアセンブリ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate


【公開番号】特開2011−21451(P2011−21451A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182839(P2009−182839)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(390027661)株式会社金澤製作所 (29)
【Fターム(参考)】