フロントモニタカメラ装置及び車両左右両側確認装置
【課題】車両の進行方向の左右両側の画像を1つの撮像素子全域を使って取得して車両の進行方向の左右両側の情報を精度良く得る。
【解決手段】フロントモニタカメラ装置1で左右両側を撮影するとき、第1のレンズ2を透過した光は反射ミラー4と偏光ビームスプリッタ5から領域分割フィルタ6の偏光子領域6aを介してS偏光成分の光だけが撮像素子7に受光される。第2のレンズ3を透過した光は偏光ビームスプリッタ5と領域分割フィルタ6の偏光子領域6bを介してP偏光成分の光だけが撮像素子7で受光される。撮像素子7でS偏光成分とP偏光成分の光を受光するとき、偏光子領域6aと偏光子領域6bを交互に複数配列して撮像範囲として撮像素子7の全体を利用することができ、広い視野を確保することができる。
【解決手段】フロントモニタカメラ装置1で左右両側を撮影するとき、第1のレンズ2を透過した光は反射ミラー4と偏光ビームスプリッタ5から領域分割フィルタ6の偏光子領域6aを介してS偏光成分の光だけが撮像素子7に受光される。第2のレンズ3を透過した光は偏光ビームスプリッタ5と領域分割フィルタ6の偏光子領域6bを介してP偏光成分の光だけが撮像素子7で受光される。撮像素子7でS偏光成分とP偏光成分の光を受光するとき、偏光子領域6aと偏光子領域6bを交互に複数配列して撮像範囲として撮像素子7の全体を利用することができ、広い視野を確保することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車等の車両の左右両側の情報を車両に搭載されたカメラ装置により撮影して車内に設置されたモニター装置に表示して車両の左右両側の確認を行なうフロントモニタカメラ装置及びそれを使用した車両左右両側確認装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両で左右両側の情報を車両に搭載されたカメラ装置により撮影して車内に設置されたモニター装置に表示して交差点で左右方向からくる他の車両や歩行者等の有無を確認するために従来からフロントモニタカメラ装置が知られている。この左右両側の情報を得るために、左右両側をそれぞれ検出するカメラを2台搭載する方法が考えられるが、2台のカメラを使用するために大型化してしまう。また、2台のカメラ毎にセンサを使用する必要があり、このセンサがコスト割合の大半を占めて高価格になってしまう。
【0003】
これに対して特許文献1〜特許文献3には、2台のカメラを使用しないで車両の左右両側の情報を得るフロントモニタカメラ装置が開示されている。特許文献1に示されたフロントモニタカメラ装置は、図9に示すように、CCDカメラ21の前方にV字形状をした反射板22を設け、車両の左右両側の情報を反射板22で反射してCCDカメラ21で撮影して左右両側の画像に変換し車内に設置されたモニター装置に表示している。
【0004】
特許文献2に示されたフロントモニタカメラ装置は、図10に示すように、三角形状の筐体23内にプリズム24とレンズ25とCCD26を収納し、筐体23の前側傾斜面には左右方向に開口する開口窓27a,27bを設け、この左右の開口窓27a,27bから入射する左右両側からの光をプリズム24により反射してレンズ25に導きCCD26に結像させて、車両の左右両側の情報を有する画像を撮影している。
【0005】
また、特許文献3に示されたフロントモニタカメラ装置は、図11に示すように、2つのプリズム28a,28bとCCDカメラ21とを有し、一方のプリズム28bの端部をCCDカメラ21のレンズ29の光軸上に位置するように配置し、車両の進行方向に対して右側からの光はレンズ29の光軸を境としてレンズ29の一部に入射し、車両の進行方向に対して左側からの光は2つのプリズム28a,28bで反射してレンズ29の光軸を境としたレンズ29の他の一部に入射して、車両の左右両側の情報を有する画像を撮影している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜特許文献3に示されたフロントモニタカメラ装置は、反射板やプリズムを使用してCCDカメラの光軸を境として左側に車両の左側からの光を入射し、CCDカメラの光軸を境として右側に車両の右側からの光を入射するようにしているため、撮像素子面を2領域に分割して車両の左右両側の情報を得るため、撮像素子の視野範囲としてはそれぞれ半分しか使えないという問題がある。
【0007】
この発明は、このような問題を解消し、車両の進行方向に対する左右両側の画像を1つの撮像素子全域を使って取得して車両の進行方向に対する左右両側の情報を精度良く得ることができるフロントモニタカメラ装置及びそれを使用した車両左右両側確認装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のフロントモニタカメラ装置は、第1のレンズと第2のレンズと導光手段と領域分割フィルタ及び撮像素子を有し、前記第1のレンズはカメラ本体の一方の側面側からの光を入射し、前記第2のレンズはカメラ本体の前記第1のレンズとは反対側の側面側からの光を入射し、前記導光手段は、前記第1のレンズからの光を前記第1のレンズの光軸に対して90度偏向させ、偏向された光を90度偏向させてS偏光成分の光を前記領域分割フィルタに導き、前記第2のレンズを通った光のうちP偏光成分の光を透過させて前記領域分割フィルタに導き、前記領域分割フィルタは、S偏光成分の光のみを透過する領域と複数のP偏光成分の光のみを透過する領域を交互に少なくとも3領域に分割して有し、前記導光手段からの光をS偏光成分とP偏光成分に分離し、前記撮像素子は、前記領域分割フィルタで分離したS偏光成分とP偏光成分の光を受光してS偏光成分とP偏光成分の画像を検知してカメラ本体の両側面側の画像を形成することを特徴とする。
【0009】
前記導光手段は、反射ミラーと偏光ビームスプリッタを有し、前記反射ミラーは前記第1のレンズからの光を光軸に対して90度偏向させ、前記偏光ビームスプリッタは、前記反射ミラーからの光を反射してS偏光成分の光を90度偏向させ、前記第2のレンズを通った光のうちP偏光成分の光を透過させることを特徴とする。
【0010】
また、前記導光手段の反射ミラーと偏光ビームスプリッタを一体化したプリズム構成としたことを特徴とする。
【0011】
さらに、前記領域分割フィルタの各偏光子領域は、透明基板上に屈折率が異なる複数の透明材料を積層した多層構造体からなり、各層毎に一方向に繰り返される1次元周期的な凹凸形状を有することを特徴とする。
【0012】
また、前記第1のレンズと前記導光手段の間に1/2波長板を有することが望ましい。
【0013】
この発明の車両左右両側確認装置は、前記フロントモニタカメラ装置と画像処理装置及びモニター装置を有し、前記フロントモニタカメラ装置は、車両の前端部中央に、前記第1のレンズ2と前記第2のレンズが路面から同じ高さになるように装備され、車両の進行方向に対して左右の情報を示す画像を撮影し、前記画像処理装置は、前記フロントモニタカメラ装置で撮影した画像を処理し、前記モニター装置は、前記画像処理装置で処理された車両の進行方向に対して左右の情報を示す画像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明のフロントモニタカメラ装置は、1つの撮像素子でカメラ本体の両側面側の情報を表す画像を撮像することによりフロントモニタカメラ装置の構造を簡略化でき、フロントモニタカメラ装置の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、領域分割フィルタにS偏光成分を透過する偏光子領域とP偏光成分の光を透過する偏光子領域を交互に複数有することにより、撮像範囲として撮像素子全体を利用することができ、広い視野を確保することができる。
【0016】
さらに、導光手段を反射ミラーと偏光ビームスプリッタで構成し、反射ミラーと偏光ビームスプリッタを一体化したプリズム構成とすることにより、回転やシフトしても光路のズレがキャンセルされ、低バスト性の高い構成を実現することができる。
【0017】
また、第1のレンズと導光手段の間に1/2波長板を設けることにより、第1のレンズ2に入射したP偏光成分を除去して路面からのP偏光成分が幻惑となることを抑制し良質な画像を得ることができる。
【0018】
また、この発明のフロントモニタカメラ装置を車両に搭載する車両左右両側確認装置に使用することにより、車両の前端部に容易に装着して車両の進行方向に対して左右の自動車や歩行者を示す画像を得ることができ、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【図2】車両に搭載した車両左右両側確認装置の構成図である。
【図3】フロントモニタカメラ装置の撮影領域を示す模式図である。
【図4】偏向ビームスプリッタの構成を示す斜視図である。
【図5】フォトニック結晶からなる偏光子領域の構成を示す斜視図である。
【図6】車両左右両側確認装置のモニター装置の表示図である。
【図7】第2のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【図8】第3のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【図9】従来のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【図10】従来の第2のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【図11】従来の第3のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、この発明のフロントモニタカメラ装置の構成図である。図に示すように、フロントモニタカメラ装置1は、第1のレンズ群(以下、第1のレンズという)2と第2のレンズ群(以下、第2のレンズという)3と反射ミラー4と偏向ビームスプリッタ5と領域分割フィルタ6及び撮像素子7を有する。
【0021】
第1のレンズ2はカメラ本体8の一方の側面側からの光を入射する。第2のレンズ3は第1のレンズ2とは反対側のカメラ本体8の側面側からの光を入射する。反射ミラー4は第1のレンズ2の光軸に対して光路を90度偏向させる反射面4aを有するプリズムからなり、第1のレンズ2を通った光を90度偏光させる。偏光ビームスプリッタ5は反射ミラー4の反射面4aと所定距離だけ隔てて平行に配置され、S偏光成分の光を反射し、P偏光成分の光を透過する偏光ビームスプリッタ面5aを有する直角プリズムからなり、反射ミラー4で反射した第1のレンズ2からの光のS偏光成分の光のみを偏光ビームスプリッタ面5aで反射して90度偏向させる。第2のレンズ3は偏光ビームスプリッタ5の前面に設けられ、第2のレンズ3を通った光のうちP偏光成分の光のみが偏光ビームスプリッタ5の偏光ビームスプリッタ面5aを透過する。領域分割フィルタ6はS偏光成分とP偏光成分の光のみをそれぞれ透過する2つの偏光子領域を有し、偏光ビームスプリッタ5の偏光ビームスプリッタ面5aで反射したS偏光成分の光と偏光ビームスプリッタ面5aを透過したP偏光成分の光を入射してS偏光成分の光とP偏光成分の光を分離する。撮像素子7は領域分割フィルタ6で分離したS偏光成分の光とP偏光成分の光を入射して画像信号を出力する。
【0022】
フロントモニタカメラ装置1は、図2に示すように、自動車等の車両9に搭載された車両左右両側確認装置10に使用する。車両左右両側確認装置10は車両9の進行方向に対して左右の情報の画像を撮影し、撮影した画像から進行方向に対して左右両側の自動車や歩行者等を認識して確認するものであり、フロントモニタカメラ装置1と画像処理装置11及びモニター装置12を有する。フロントモニタカメラ装置1は車両9の前端中央であってバンパーの下方に装備され、図3に示すように、車両9の進行方向に対して左右の情報を示す画像を撮影する。このフロントモニタカメラ装置1を車両9に装着するとき、第1のレンズ2と第2のレンズ3は路面から同じ高さになるようにすると良い。画像処理装置11はフロントモニタカメラ装置1で撮影した画像を処理する。モニター装置12は車両の運転席に近い計器盤等に設置され、画像処理装置11で処理した画像を表示する。
【0023】
このフロントモニタカメラ装置1の各構成要素について説明する。フロントモニタカメラ装置1の反射ミラー4と偏光ビームスプリッタ5は、反射ミラー4の反射面4aと偏光ビームスプリッタ5の偏光ビームスプリッタ面5aを対向させて一体化したプリズム構成をしており、このように一体構成することによりプリズムが回転やシフトしても光路のズレがキャンセルされるロバスト性の高い構成を実現している。
【0024】
領域分割フィルタ6は、図4の斜視図に示すように、第1のレンズ2からのS偏光成分の光のみを透過する偏光子領域6aと第2のレンズ3からのP偏光成分の光のみを透過する偏光子領域6bを有し、平行な短冊形状をした偏光子領域6aと偏光子領域6bが交互に複数、少なくとも3列配列している。
【0025】
この領域分割フィルタ6の偏光子領域6aと偏光子領域6bは、例えばフォトニック結晶からなる偏光子からなり、領域分割フィルタ6の偏光子領域6aと偏光子領域6bは、図5(a)に示すように、周期的な溝列を形成した透明基板61上に、透明で高屈折率の媒質層62と低屈折率の媒質層63とを界面の形状を保存しながら交互に積層して形成されている。この高屈折率の媒質層62と低屈折率の媒質層63の各層は、透明基板61の溝列と直交するX方向に周期性を持つが、溝列と平行なY方向には一様であっても良いし、X方向より大きい長さの周期的または非周期的な構造を有していても良い。このような微細な周期構造(フォトニック結晶)は自己クローニング技術と呼ばれる方式を用いることにより、再現性良く且つ高い均一性で作製することができる。
【0026】
このフォトニック結晶からなる偏光子領域6aと偏光子領域6bは、図4に示すように、光軸13a,13bと平行なZ軸と、Z軸と直交するXY軸を有する直交座標系において、XY面に平行な1つの基板61の上に2種以上の透明材料をZ軸方向に交互に積層した多層構造体、例えばTa2O5とSiO2の交互多層膜からなり、偏光子領域6aと偏光子領域6bは各膜が凹凸形状を有しており、この凹凸形状はXY面内の一つの方向に周期的に繰り返されて形成されている。そして偏光子領域6aは、図5(b)に示すように、溝の方向がY軸方向に対して平行であり、偏光子領域6bは溝の方向がX軸方向に対して平行であり、偏光子領域6aと偏光子領域6bで溝の方向が90度異なって形成されている。すなわちXY面に入射される光から、偏光子領域6aと偏光子領域6bによって偏光方向が異なる偏光成分を透過させるとともに、偏光子領域6aと偏光子領域6bでそれぞれ等量の無偏光成分を透過させるようになっている。なお、領域分割フィルタ6に2種類の凹凸形状の溝を設けたが、凹凸形状の溝方向は複数種類でも良い。このように偏光子領域6a,6bをフォトニック結晶で形成することにより、紫外線劣化などに優れて長期間安定して使用することができる。
【0027】
この領域分割フィルタ6の偏光子領域6aと偏光子領域6bの開口面積や透過軸は、はじめに透明基板61に加工する溝パターンの大きさや方向で自由に設計することができる。パターン形成は、電子ビームリソグラフィ、フォトリソグラフィ、干渉露光法、ナノプリンティングなど様々な方法で行うことができる。いずれの場合でも、微小領域ごとに溝の方向を高精度に定めることができる。そのため、透過軸の異なる微小偏光子を組み合わせた偏光子領域と、更にそれを複数並べた偏光子を形成することが可能となる。また、凹凸パターンを持つ特定の領域のみが偏光子の動作をするため、その周辺の領域を平坦あるいは、面内で等方的な凹凸パターンにしておけば偏波依存性のない媒質として光は透過する。したがって、特定の領域にのみ偏光子を作りこむことができる。
【0028】
また、領域分割フィルタ6は撮像素子7と近接配置されている。より望ましくはダイ実装された撮像素子7にフィルタ構造面が撮像素子面側に向いて接着などにより取り付けられるのがよい。一般にレンズからの光は収束系の有限光で撮像素子に向かうため、領域分割フィルタ6と撮像素子7の間隔が開くと領域分割フィルタ6の境界付近の光が各々の領域に対してクロストークノイズとなってしまう。そこで前記のとおり近接配置させることにより、このようなクロストークが生じなく安定性を高めることができる。また、撮像素子7は一般に長方形の撮像領域を有する。その方向は任意であるが、望ましくは、撮像素子7はその撮像領域の長手方向が路面と平行な左右方向に配置すると視差範囲が広く確保できる。
【0029】
次に、前記のように構成したフロントモニタカメラ装置1を有する車両左右両側確認装置10で、図3に示すように、交差点で車両9の左右両側の情報の画像を撮影して自動車や歩行者等を認識して確認するときの処理を説明する。
【0030】
フロントモニタカメラ装置1で左右両側の撮影を開始すると、第1のレンズ2を透過した光は反射ミラー4の反射ミラー面4aと偏光ビームスプリッタ5の偏光ビームスプリッタ面5aから領域分割フィルタ6の偏光子領域6aを介してS偏光成分の光だけが撮像素子7に受光される。また、第2のレンズ3を透過した光は偏光ビームスプリッタ5の偏光ビームスプリッタ面5aと領域分割フィルタ6の偏光子領域6bを介してP偏光成分の光だけが撮像素子7で受光される。この撮像素子7で領域分割フィルタ6の偏光子領域6aを通ったS偏光成分の光と偏光子領域6bを通ったP偏光成分の光を受光するとき、偏光子領域6aと偏光子領域6bを平行な短冊形状にして交互に複数配列することにより、撮像範囲として撮像素子7の全体を利用することができ、広い視野を確保することができる。
【0031】
このフロントモニタカメラ装置1で撮影された車両9の進行方向に対して左右の情報の画像は画像処理装置で処理されてモニター装置12に送られ、図6の表示画面図に示すように、モニター装置12に左側の画像14aと右側の画像14bとして表示される。車両9の運転者はモニター装置12に表示された左側の画像14aと右側の画像14bを認識することにより、交差点における左右から自動車や歩行者が接近するかを確認することができ、安全性を向上することができる。
【0032】
前記説明では、領域分割フィルタ6に平行な短冊形状をした偏光子領域6aと偏光子領域6bが交互に複数列配列し場合について説明したが、偏光子領域6aと偏光子領域6bを1画素単位に交互に分割して形成しても良い。
【0033】
また、前記説明では領域分割フィルタ6に入射するS偏光成分とP偏光成分を偏光ビームスプリッタ5で分離する場合について示したが、図7に示すように、第1のレンズ2の前部または後部にS偏光用の偏光子15aを設け、第2のレンズ3の前部または後部にP偏光用の偏光子15bを設け、偏光ビームスプリッタ5の代わりにS偏光成分を反射し、P偏光成分を透過する反射面を有するプリズム16を使用しても良い。
【0034】
さらに、図8に示すように、第1のレンズ2と反射ミラー4の間に1/2波長板17を配置しても良い。第1のレンズ2と第2のレンズ3は同一の偏光方向の光を検出するが、第1のレンズ2の後段に1/2波長板17を設け、第1のレンズ2に入射したP偏光成分を除去することにより、路面からのP偏光成分が幻惑となることを抑制して、左側の画像14aと右側の画像14bのいずれでも幻惑を生じない画像を表示することができる。
【0035】
また、前記説明では領域分割フィルタ6はフォトニック結晶を利用して構成した場合について説明したが、ワイヤグリッド型の偏光子を利用しても良い。ワイヤグリッド型の偏光子とは、細い金属ワイヤーを周期的に配列することにより形成された偏光子であり、従来、電磁波のミリ波領域において多く用いられてきた偏光子である。ワイヤグリッド型偏光子の構造は、入力光の波長に比べて十分細い金属細線が波長に比べて十分に短い間隔で並んだ構造を有する。このような構造に光を入射した場合、金属細線に平行な偏光は反射され、それに直交する偏光は透過されることはすでに知られている。金属細線の方向については、1枚の基板内において領域ごとに独立に変化させて作製することができるため、ワイヤグリッド偏光子の特性を領域毎に変えることができる。これを利用すれば、領域毎に透過軸の方向を変化させた構造とすることができる。
【0036】
ワイヤグリッドの作製方法としては、基板上に金属膜を形成し、リソグラフィによりパターニングを行うことで、細線状の金属を残すことができる。他の作製方法としては、リソグラフィにより基板に溝を形成し、この溝の方向とは直角で基板の法線から傾いた方向(基板面に斜めの方向)から真空蒸着により金属を成膜することで作製することができる。真空蒸着では蒸着源から飛来する粒子はその途中で他の分子もしくは原子にほとんど衝突することはなく、粒子は蒸着源から基板にむかって直線的に進むため、溝を構成する凸部にのみ成膜される一方、溝の底部(凹部)では、凸部に遮蔽されほとんど成膜されない。したがって、成膜量を制御することで、基板上に形成された溝の凸部にのみ金属膜を成膜することができ、金属細線を作製することができる。なお、ワイヤグリッド型の偏光子に用いられるワイヤー金属としては、アルミニウムもしくは銀が望ましいが、例えばタングステンなど、そのほかの金属であっても同様の現象を実現できる。また、リソグラフィとしては、光リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ又はX線リソグラフィなどが挙げられるが、可視光での動作を想定すると細線の間隔が100nm程度になるため、電子ビームリソグラフィもしくはX線リソグラフィがより望ましい。また、金属の成膜では真空蒸着が望ましいが、主として基板に入射する粒子の方向性が重要であるので、高真空度の雰囲気におけるスパッタリング、もしくはコリメーターを用いたコリメーションスパッタでも可能である。このワイヤグリッド型の偏光子もフォトニック結晶による偏光子と同様に半導体プロセスであるため領域分割された2領域間の境界線などが精度よく作製することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1;フロントモニタカメラ装置、2;第1のレンズ、3;第2のレンズ、
4;反射ミラー、5;偏向ビームスプリッタ、6;領域分割フィルタ、
7;撮像素子、8;カメラ本体、9;車両、10;車両左右両側確認装置、
11;画像処理装置、12;モニター装置、14;画像、15;偏光子、
16;プリズム、17;1/2波長板。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2000−071894号公報
【特許文献2】特開2007−015662号公報
【特許文献3】特許第4238428号公報
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば自動車等の車両の左右両側の情報を車両に搭載されたカメラ装置により撮影して車内に設置されたモニター装置に表示して車両の左右両側の確認を行なうフロントモニタカメラ装置及びそれを使用した車両左右両側確認装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両で左右両側の情報を車両に搭載されたカメラ装置により撮影して車内に設置されたモニター装置に表示して交差点で左右方向からくる他の車両や歩行者等の有無を確認するために従来からフロントモニタカメラ装置が知られている。この左右両側の情報を得るために、左右両側をそれぞれ検出するカメラを2台搭載する方法が考えられるが、2台のカメラを使用するために大型化してしまう。また、2台のカメラ毎にセンサを使用する必要があり、このセンサがコスト割合の大半を占めて高価格になってしまう。
【0003】
これに対して特許文献1〜特許文献3には、2台のカメラを使用しないで車両の左右両側の情報を得るフロントモニタカメラ装置が開示されている。特許文献1に示されたフロントモニタカメラ装置は、図9に示すように、CCDカメラ21の前方にV字形状をした反射板22を設け、車両の左右両側の情報を反射板22で反射してCCDカメラ21で撮影して左右両側の画像に変換し車内に設置されたモニター装置に表示している。
【0004】
特許文献2に示されたフロントモニタカメラ装置は、図10に示すように、三角形状の筐体23内にプリズム24とレンズ25とCCD26を収納し、筐体23の前側傾斜面には左右方向に開口する開口窓27a,27bを設け、この左右の開口窓27a,27bから入射する左右両側からの光をプリズム24により反射してレンズ25に導きCCD26に結像させて、車両の左右両側の情報を有する画像を撮影している。
【0005】
また、特許文献3に示されたフロントモニタカメラ装置は、図11に示すように、2つのプリズム28a,28bとCCDカメラ21とを有し、一方のプリズム28bの端部をCCDカメラ21のレンズ29の光軸上に位置するように配置し、車両の進行方向に対して右側からの光はレンズ29の光軸を境としてレンズ29の一部に入射し、車両の進行方向に対して左側からの光は2つのプリズム28a,28bで反射してレンズ29の光軸を境としたレンズ29の他の一部に入射して、車両の左右両側の情報を有する画像を撮影している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1〜特許文献3に示されたフロントモニタカメラ装置は、反射板やプリズムを使用してCCDカメラの光軸を境として左側に車両の左側からの光を入射し、CCDカメラの光軸を境として右側に車両の右側からの光を入射するようにしているため、撮像素子面を2領域に分割して車両の左右両側の情報を得るため、撮像素子の視野範囲としてはそれぞれ半分しか使えないという問題がある。
【0007】
この発明は、このような問題を解消し、車両の進行方向に対する左右両側の画像を1つの撮像素子全域を使って取得して車両の進行方向に対する左右両側の情報を精度良く得ることができるフロントモニタカメラ装置及びそれを使用した車両左右両側確認装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明のフロントモニタカメラ装置は、第1のレンズと第2のレンズと導光手段と領域分割フィルタ及び撮像素子を有し、前記第1のレンズはカメラ本体の一方の側面側からの光を入射し、前記第2のレンズはカメラ本体の前記第1のレンズとは反対側の側面側からの光を入射し、前記導光手段は、前記第1のレンズからの光を前記第1のレンズの光軸に対して90度偏向させ、偏向された光を90度偏向させてS偏光成分の光を前記領域分割フィルタに導き、前記第2のレンズを通った光のうちP偏光成分の光を透過させて前記領域分割フィルタに導き、前記領域分割フィルタは、S偏光成分の光のみを透過する領域と複数のP偏光成分の光のみを透過する領域を交互に少なくとも3領域に分割して有し、前記導光手段からの光をS偏光成分とP偏光成分に分離し、前記撮像素子は、前記領域分割フィルタで分離したS偏光成分とP偏光成分の光を受光してS偏光成分とP偏光成分の画像を検知してカメラ本体の両側面側の画像を形成することを特徴とする。
【0009】
前記導光手段は、反射ミラーと偏光ビームスプリッタを有し、前記反射ミラーは前記第1のレンズからの光を光軸に対して90度偏向させ、前記偏光ビームスプリッタは、前記反射ミラーからの光を反射してS偏光成分の光を90度偏向させ、前記第2のレンズを通った光のうちP偏光成分の光を透過させることを特徴とする。
【0010】
また、前記導光手段の反射ミラーと偏光ビームスプリッタを一体化したプリズム構成としたことを特徴とする。
【0011】
さらに、前記領域分割フィルタの各偏光子領域は、透明基板上に屈折率が異なる複数の透明材料を積層した多層構造体からなり、各層毎に一方向に繰り返される1次元周期的な凹凸形状を有することを特徴とする。
【0012】
また、前記第1のレンズと前記導光手段の間に1/2波長板を有することが望ましい。
【0013】
この発明の車両左右両側確認装置は、前記フロントモニタカメラ装置と画像処理装置及びモニター装置を有し、前記フロントモニタカメラ装置は、車両の前端部中央に、前記第1のレンズ2と前記第2のレンズが路面から同じ高さになるように装備され、車両の進行方向に対して左右の情報を示す画像を撮影し、前記画像処理装置は、前記フロントモニタカメラ装置で撮影した画像を処理し、前記モニター装置は、前記画像処理装置で処理された車両の進行方向に対して左右の情報を示す画像を表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明のフロントモニタカメラ装置は、1つの撮像素子でカメラ本体の両側面側の情報を表す画像を撮像することによりフロントモニタカメラ装置の構造を簡略化でき、フロントモニタカメラ装置の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、領域分割フィルタにS偏光成分を透過する偏光子領域とP偏光成分の光を透過する偏光子領域を交互に複数有することにより、撮像範囲として撮像素子全体を利用することができ、広い視野を確保することができる。
【0016】
さらに、導光手段を反射ミラーと偏光ビームスプリッタで構成し、反射ミラーと偏光ビームスプリッタを一体化したプリズム構成とすることにより、回転やシフトしても光路のズレがキャンセルされ、低バスト性の高い構成を実現することができる。
【0017】
また、第1のレンズと導光手段の間に1/2波長板を設けることにより、第1のレンズ2に入射したP偏光成分を除去して路面からのP偏光成分が幻惑となることを抑制し良質な画像を得ることができる。
【0018】
また、この発明のフロントモニタカメラ装置を車両に搭載する車両左右両側確認装置に使用することにより、車両の前端部に容易に装着して車両の進行方向に対して左右の自動車や歩行者を示す画像を得ることができ、安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【図2】車両に搭載した車両左右両側確認装置の構成図である。
【図3】フロントモニタカメラ装置の撮影領域を示す模式図である。
【図4】偏向ビームスプリッタの構成を示す斜視図である。
【図5】フォトニック結晶からなる偏光子領域の構成を示す斜視図である。
【図6】車両左右両側確認装置のモニター装置の表示図である。
【図7】第2のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【図8】第3のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【図9】従来のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【図10】従来の第2のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【図11】従来の第3のフロントモニタカメラ装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、この発明のフロントモニタカメラ装置の構成図である。図に示すように、フロントモニタカメラ装置1は、第1のレンズ群(以下、第1のレンズという)2と第2のレンズ群(以下、第2のレンズという)3と反射ミラー4と偏向ビームスプリッタ5と領域分割フィルタ6及び撮像素子7を有する。
【0021】
第1のレンズ2はカメラ本体8の一方の側面側からの光を入射する。第2のレンズ3は第1のレンズ2とは反対側のカメラ本体8の側面側からの光を入射する。反射ミラー4は第1のレンズ2の光軸に対して光路を90度偏向させる反射面4aを有するプリズムからなり、第1のレンズ2を通った光を90度偏光させる。偏光ビームスプリッタ5は反射ミラー4の反射面4aと所定距離だけ隔てて平行に配置され、S偏光成分の光を反射し、P偏光成分の光を透過する偏光ビームスプリッタ面5aを有する直角プリズムからなり、反射ミラー4で反射した第1のレンズ2からの光のS偏光成分の光のみを偏光ビームスプリッタ面5aで反射して90度偏向させる。第2のレンズ3は偏光ビームスプリッタ5の前面に設けられ、第2のレンズ3を通った光のうちP偏光成分の光のみが偏光ビームスプリッタ5の偏光ビームスプリッタ面5aを透過する。領域分割フィルタ6はS偏光成分とP偏光成分の光のみをそれぞれ透過する2つの偏光子領域を有し、偏光ビームスプリッタ5の偏光ビームスプリッタ面5aで反射したS偏光成分の光と偏光ビームスプリッタ面5aを透過したP偏光成分の光を入射してS偏光成分の光とP偏光成分の光を分離する。撮像素子7は領域分割フィルタ6で分離したS偏光成分の光とP偏光成分の光を入射して画像信号を出力する。
【0022】
フロントモニタカメラ装置1は、図2に示すように、自動車等の車両9に搭載された車両左右両側確認装置10に使用する。車両左右両側確認装置10は車両9の進行方向に対して左右の情報の画像を撮影し、撮影した画像から進行方向に対して左右両側の自動車や歩行者等を認識して確認するものであり、フロントモニタカメラ装置1と画像処理装置11及びモニター装置12を有する。フロントモニタカメラ装置1は車両9の前端中央であってバンパーの下方に装備され、図3に示すように、車両9の進行方向に対して左右の情報を示す画像を撮影する。このフロントモニタカメラ装置1を車両9に装着するとき、第1のレンズ2と第2のレンズ3は路面から同じ高さになるようにすると良い。画像処理装置11はフロントモニタカメラ装置1で撮影した画像を処理する。モニター装置12は車両の運転席に近い計器盤等に設置され、画像処理装置11で処理した画像を表示する。
【0023】
このフロントモニタカメラ装置1の各構成要素について説明する。フロントモニタカメラ装置1の反射ミラー4と偏光ビームスプリッタ5は、反射ミラー4の反射面4aと偏光ビームスプリッタ5の偏光ビームスプリッタ面5aを対向させて一体化したプリズム構成をしており、このように一体構成することによりプリズムが回転やシフトしても光路のズレがキャンセルされるロバスト性の高い構成を実現している。
【0024】
領域分割フィルタ6は、図4の斜視図に示すように、第1のレンズ2からのS偏光成分の光のみを透過する偏光子領域6aと第2のレンズ3からのP偏光成分の光のみを透過する偏光子領域6bを有し、平行な短冊形状をした偏光子領域6aと偏光子領域6bが交互に複数、少なくとも3列配列している。
【0025】
この領域分割フィルタ6の偏光子領域6aと偏光子領域6bは、例えばフォトニック結晶からなる偏光子からなり、領域分割フィルタ6の偏光子領域6aと偏光子領域6bは、図5(a)に示すように、周期的な溝列を形成した透明基板61上に、透明で高屈折率の媒質層62と低屈折率の媒質層63とを界面の形状を保存しながら交互に積層して形成されている。この高屈折率の媒質層62と低屈折率の媒質層63の各層は、透明基板61の溝列と直交するX方向に周期性を持つが、溝列と平行なY方向には一様であっても良いし、X方向より大きい長さの周期的または非周期的な構造を有していても良い。このような微細な周期構造(フォトニック結晶)は自己クローニング技術と呼ばれる方式を用いることにより、再現性良く且つ高い均一性で作製することができる。
【0026】
このフォトニック結晶からなる偏光子領域6aと偏光子領域6bは、図4に示すように、光軸13a,13bと平行なZ軸と、Z軸と直交するXY軸を有する直交座標系において、XY面に平行な1つの基板61の上に2種以上の透明材料をZ軸方向に交互に積層した多層構造体、例えばTa2O5とSiO2の交互多層膜からなり、偏光子領域6aと偏光子領域6bは各膜が凹凸形状を有しており、この凹凸形状はXY面内の一つの方向に周期的に繰り返されて形成されている。そして偏光子領域6aは、図5(b)に示すように、溝の方向がY軸方向に対して平行であり、偏光子領域6bは溝の方向がX軸方向に対して平行であり、偏光子領域6aと偏光子領域6bで溝の方向が90度異なって形成されている。すなわちXY面に入射される光から、偏光子領域6aと偏光子領域6bによって偏光方向が異なる偏光成分を透過させるとともに、偏光子領域6aと偏光子領域6bでそれぞれ等量の無偏光成分を透過させるようになっている。なお、領域分割フィルタ6に2種類の凹凸形状の溝を設けたが、凹凸形状の溝方向は複数種類でも良い。このように偏光子領域6a,6bをフォトニック結晶で形成することにより、紫外線劣化などに優れて長期間安定して使用することができる。
【0027】
この領域分割フィルタ6の偏光子領域6aと偏光子領域6bの開口面積や透過軸は、はじめに透明基板61に加工する溝パターンの大きさや方向で自由に設計することができる。パターン形成は、電子ビームリソグラフィ、フォトリソグラフィ、干渉露光法、ナノプリンティングなど様々な方法で行うことができる。いずれの場合でも、微小領域ごとに溝の方向を高精度に定めることができる。そのため、透過軸の異なる微小偏光子を組み合わせた偏光子領域と、更にそれを複数並べた偏光子を形成することが可能となる。また、凹凸パターンを持つ特定の領域のみが偏光子の動作をするため、その周辺の領域を平坦あるいは、面内で等方的な凹凸パターンにしておけば偏波依存性のない媒質として光は透過する。したがって、特定の領域にのみ偏光子を作りこむことができる。
【0028】
また、領域分割フィルタ6は撮像素子7と近接配置されている。より望ましくはダイ実装された撮像素子7にフィルタ構造面が撮像素子面側に向いて接着などにより取り付けられるのがよい。一般にレンズからの光は収束系の有限光で撮像素子に向かうため、領域分割フィルタ6と撮像素子7の間隔が開くと領域分割フィルタ6の境界付近の光が各々の領域に対してクロストークノイズとなってしまう。そこで前記のとおり近接配置させることにより、このようなクロストークが生じなく安定性を高めることができる。また、撮像素子7は一般に長方形の撮像領域を有する。その方向は任意であるが、望ましくは、撮像素子7はその撮像領域の長手方向が路面と平行な左右方向に配置すると視差範囲が広く確保できる。
【0029】
次に、前記のように構成したフロントモニタカメラ装置1を有する車両左右両側確認装置10で、図3に示すように、交差点で車両9の左右両側の情報の画像を撮影して自動車や歩行者等を認識して確認するときの処理を説明する。
【0030】
フロントモニタカメラ装置1で左右両側の撮影を開始すると、第1のレンズ2を透過した光は反射ミラー4の反射ミラー面4aと偏光ビームスプリッタ5の偏光ビームスプリッタ面5aから領域分割フィルタ6の偏光子領域6aを介してS偏光成分の光だけが撮像素子7に受光される。また、第2のレンズ3を透過した光は偏光ビームスプリッタ5の偏光ビームスプリッタ面5aと領域分割フィルタ6の偏光子領域6bを介してP偏光成分の光だけが撮像素子7で受光される。この撮像素子7で領域分割フィルタ6の偏光子領域6aを通ったS偏光成分の光と偏光子領域6bを通ったP偏光成分の光を受光するとき、偏光子領域6aと偏光子領域6bを平行な短冊形状にして交互に複数配列することにより、撮像範囲として撮像素子7の全体を利用することができ、広い視野を確保することができる。
【0031】
このフロントモニタカメラ装置1で撮影された車両9の進行方向に対して左右の情報の画像は画像処理装置で処理されてモニター装置12に送られ、図6の表示画面図に示すように、モニター装置12に左側の画像14aと右側の画像14bとして表示される。車両9の運転者はモニター装置12に表示された左側の画像14aと右側の画像14bを認識することにより、交差点における左右から自動車や歩行者が接近するかを確認することができ、安全性を向上することができる。
【0032】
前記説明では、領域分割フィルタ6に平行な短冊形状をした偏光子領域6aと偏光子領域6bが交互に複数列配列し場合について説明したが、偏光子領域6aと偏光子領域6bを1画素単位に交互に分割して形成しても良い。
【0033】
また、前記説明では領域分割フィルタ6に入射するS偏光成分とP偏光成分を偏光ビームスプリッタ5で分離する場合について示したが、図7に示すように、第1のレンズ2の前部または後部にS偏光用の偏光子15aを設け、第2のレンズ3の前部または後部にP偏光用の偏光子15bを設け、偏光ビームスプリッタ5の代わりにS偏光成分を反射し、P偏光成分を透過する反射面を有するプリズム16を使用しても良い。
【0034】
さらに、図8に示すように、第1のレンズ2と反射ミラー4の間に1/2波長板17を配置しても良い。第1のレンズ2と第2のレンズ3は同一の偏光方向の光を検出するが、第1のレンズ2の後段に1/2波長板17を設け、第1のレンズ2に入射したP偏光成分を除去することにより、路面からのP偏光成分が幻惑となることを抑制して、左側の画像14aと右側の画像14bのいずれでも幻惑を生じない画像を表示することができる。
【0035】
また、前記説明では領域分割フィルタ6はフォトニック結晶を利用して構成した場合について説明したが、ワイヤグリッド型の偏光子を利用しても良い。ワイヤグリッド型の偏光子とは、細い金属ワイヤーを周期的に配列することにより形成された偏光子であり、従来、電磁波のミリ波領域において多く用いられてきた偏光子である。ワイヤグリッド型偏光子の構造は、入力光の波長に比べて十分細い金属細線が波長に比べて十分に短い間隔で並んだ構造を有する。このような構造に光を入射した場合、金属細線に平行な偏光は反射され、それに直交する偏光は透過されることはすでに知られている。金属細線の方向については、1枚の基板内において領域ごとに独立に変化させて作製することができるため、ワイヤグリッド偏光子の特性を領域毎に変えることができる。これを利用すれば、領域毎に透過軸の方向を変化させた構造とすることができる。
【0036】
ワイヤグリッドの作製方法としては、基板上に金属膜を形成し、リソグラフィによりパターニングを行うことで、細線状の金属を残すことができる。他の作製方法としては、リソグラフィにより基板に溝を形成し、この溝の方向とは直角で基板の法線から傾いた方向(基板面に斜めの方向)から真空蒸着により金属を成膜することで作製することができる。真空蒸着では蒸着源から飛来する粒子はその途中で他の分子もしくは原子にほとんど衝突することはなく、粒子は蒸着源から基板にむかって直線的に進むため、溝を構成する凸部にのみ成膜される一方、溝の底部(凹部)では、凸部に遮蔽されほとんど成膜されない。したがって、成膜量を制御することで、基板上に形成された溝の凸部にのみ金属膜を成膜することができ、金属細線を作製することができる。なお、ワイヤグリッド型の偏光子に用いられるワイヤー金属としては、アルミニウムもしくは銀が望ましいが、例えばタングステンなど、そのほかの金属であっても同様の現象を実現できる。また、リソグラフィとしては、光リソグラフィ、電子ビームリソグラフィ又はX線リソグラフィなどが挙げられるが、可視光での動作を想定すると細線の間隔が100nm程度になるため、電子ビームリソグラフィもしくはX線リソグラフィがより望ましい。また、金属の成膜では真空蒸着が望ましいが、主として基板に入射する粒子の方向性が重要であるので、高真空度の雰囲気におけるスパッタリング、もしくはコリメーターを用いたコリメーションスパッタでも可能である。このワイヤグリッド型の偏光子もフォトニック結晶による偏光子と同様に半導体プロセスであるため領域分割された2領域間の境界線などが精度よく作製することが可能である。
【符号の説明】
【0037】
1;フロントモニタカメラ装置、2;第1のレンズ、3;第2のレンズ、
4;反射ミラー、5;偏向ビームスプリッタ、6;領域分割フィルタ、
7;撮像素子、8;カメラ本体、9;車両、10;車両左右両側確認装置、
11;画像処理装置、12;モニター装置、14;画像、15;偏光子、
16;プリズム、17;1/2波長板。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0038】
【特許文献1】特開2000−071894号公報
【特許文献2】特開2007−015662号公報
【特許文献3】特許第4238428号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のレンズと第2のレンズと導光手段と領域分割フィルタ及び撮像素子を有するフロントモニタカメラ装置であって、
前記第1のレンズはカメラ本体の一方の側面側からの光を入射し、
前記第2のレンズはカメラ本体の前記第1のレンズとは反対側の側面側からの光を入射し、
前記導光手段は、前記第1のレンズからの光を前記第1のレンズの光軸に対して90度偏向させ、偏向された光を90度偏向させてS偏光成分の光を前記領域分割フィルタに導き、前記第2のレンズを通った光のうちP偏光成分の光を透過させて前記領域分割フィルタに導き、
前記領域分割フィルタは、S偏光成分の光のみを透過する領域とP偏光成分の光のみを透過する領域を交互に少なくとも3領域に分割して有し、前記導光手段からの光をS偏光成分とP偏光成分に分離し、
前記撮像素子は、前記領域分割フィルタで分離したS偏光成分とP偏光成分の光を受光してS偏光成分とP偏光成分の画像を検知してカメラ本体の両側面側の画像を形成することを特徴とするフロントモニタカメラ装置。
【請求項2】
前記導光手段は、反射ミラーと偏光ビームスプリッタを有し、前記反射ミラーは前記第1のレンズからの光を光軸に対して90度偏向させ、前記偏光ビームスプリッタは、前記反射ミラーからの光を反射してS偏光成分の光を90度偏向させ、前記第2のレンズを通った光のうちP偏光成分の光を透過させることを特徴とする請求項1記載のフロントモニタカメラ装置。
【請求項3】
前記導光手段の反射ミラーと偏光ビームスプリッタを一体化したプリズム構成としたことを特徴とする請求項2記載のフロントモニタカメラ装置。
【請求項4】
前記領域分割フィルタの各偏光子領域は、透明基板上に屈折率が異なる複数の透明材料を積層した多層構造体からなり、各層毎に一方向に繰り返される1次元周期的な凹凸形状を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフロントモニタカメラ装置。
【請求項5】
前記第1のレンズと前記導光手段の間に1/2波長板を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフロントモニタカメラ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のフロントモニタカメラ装置と画像処理装置及びモニター装置を有し、車両に搭載される車両左右両側確認装置であって、
前記フロントモニタカメラ装置は、車両の前端中央に、前記第1のレンズ2と前記第2のレンズが路面から同じ高さになるように装備され、車両の進行方向に対して左右の情報を示す画像を撮影し、
前記画像処理装置は、前記フロントモニタカメラ装置で撮影した画像を処理し、
前記モニター装置は、前記画像処理装置で処理された車両の進行方向に対して左右の情報を示す画像を表示することを特徴とする車両左右両側確認装置。
【請求項1】
第1のレンズと第2のレンズと導光手段と領域分割フィルタ及び撮像素子を有するフロントモニタカメラ装置であって、
前記第1のレンズはカメラ本体の一方の側面側からの光を入射し、
前記第2のレンズはカメラ本体の前記第1のレンズとは反対側の側面側からの光を入射し、
前記導光手段は、前記第1のレンズからの光を前記第1のレンズの光軸に対して90度偏向させ、偏向された光を90度偏向させてS偏光成分の光を前記領域分割フィルタに導き、前記第2のレンズを通った光のうちP偏光成分の光を透過させて前記領域分割フィルタに導き、
前記領域分割フィルタは、S偏光成分の光のみを透過する領域とP偏光成分の光のみを透過する領域を交互に少なくとも3領域に分割して有し、前記導光手段からの光をS偏光成分とP偏光成分に分離し、
前記撮像素子は、前記領域分割フィルタで分離したS偏光成分とP偏光成分の光を受光してS偏光成分とP偏光成分の画像を検知してカメラ本体の両側面側の画像を形成することを特徴とするフロントモニタカメラ装置。
【請求項2】
前記導光手段は、反射ミラーと偏光ビームスプリッタを有し、前記反射ミラーは前記第1のレンズからの光を光軸に対して90度偏向させ、前記偏光ビームスプリッタは、前記反射ミラーからの光を反射してS偏光成分の光を90度偏向させ、前記第2のレンズを通った光のうちP偏光成分の光を透過させることを特徴とする請求項1記載のフロントモニタカメラ装置。
【請求項3】
前記導光手段の反射ミラーと偏光ビームスプリッタを一体化したプリズム構成としたことを特徴とする請求項2記載のフロントモニタカメラ装置。
【請求項4】
前記領域分割フィルタの各偏光子領域は、透明基板上に屈折率が異なる複数の透明材料を積層した多層構造体からなり、各層毎に一方向に繰り返される1次元周期的な凹凸形状を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のフロントモニタカメラ装置。
【請求項5】
前記第1のレンズと前記導光手段の間に1/2波長板を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のフロントモニタカメラ装置。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のフロントモニタカメラ装置と画像処理装置及びモニター装置を有し、車両に搭載される車両左右両側確認装置であって、
前記フロントモニタカメラ装置は、車両の前端中央に、前記第1のレンズ2と前記第2のレンズが路面から同じ高さになるように装備され、車両の進行方向に対して左右の情報を示す画像を撮影し、
前記画像処理装置は、前記フロントモニタカメラ装置で撮影した画像を処理し、
前記モニター装置は、前記画像処理装置で処理された車両の進行方向に対して左右の情報を示す画像を表示することを特徴とする車両左右両側確認装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−254085(P2010−254085A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105190(P2009−105190)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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