説明

ブレーキペダルの締結構造

【課題】組み付け性が良好で、インストルメントパネルのモジュール化を促進できるブレーキペダルの締結構造を提供する。
【解決手段】ブレーキペダル32を離脱ブラケット36を介してインストルメントパネル構成部材に対して離脱可能に固定するブレーキペダルの締結構造において、離脱ブラケットをインストルメントパネル構成部材に車両後方斜め下方より締結可能に構成したことを特徴とする。一実施例では、離脱ブラケット36は、インストルメントパネル構成部材に締結手段を介して締結される第1面36aと、ブレーキペダルが離脱可能に取り付けられる第2面36bとからなる、側面視でL字型の断面形状を含み、前記第1面は、側面視で車両後方斜め下方に向く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキペダルを離脱ブラケットを介してインストルメントパネル構成部材に対して離脱可能に固定するブレーキペダルの締結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ブレーキペダルを離脱ブラケットを介してインストルメントパネル構成部材に固定する技術自体は知られている(例えば、特許文献1参照)。このような離脱ブラケットを用いる構成では、車両衝突時の車両前部の変形過程でブレーキペダルがインストルメントパネル構成部材から離脱することができ、車両衝突時にブレーキペダルとの関係で乗員の足を保護することができる。
【特許文献1】特開2001−171495号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の特許文献1の開示されるようなブレーキペダルの締結構造では、インストルメントパネル構成部材の上部を介して、鉛直方向上方からボルト締結を行う必要があるので、組み付け性が悪く、インストルメントパネルのモジュール化を妨げる要因となりうる。
【0004】
そこで、本発明は、組み付け性が良好で、インストルメントパネルのモジュール化を促進できるブレーキペダルの締結構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、第1の発明は、ブレーキペダルを離脱ブラケットを介してインストルメントパネル構成部材に対して離脱可能に固定するブレーキペダルの締結構造において、
離脱ブラケットをインストルメントパネル構成部材に車両後方斜め下方より締結可能に構成したことを特徴とする。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に係るブレーキペダルの締結構造において、
離脱ブラケットは、インストルメントパネル構成部材に締結手段を介して締結される第1面と、ブレーキペダルが離脱可能に取り付けられる第2面とからなる、側面視でL字型の断面形状を含み、前記第1面は、側面視で車両後方斜め下方に向くことを特徴とする。
【0007】
第3の発明は、第2の発明に係るブレーキペダルの締結構造において、
離脱ブラケットの第1面は、インストルメントパネル・リインホースメントを構成するパイプ材から延びるブラケットに、ボルトとナットにより締結され、該ボルトの軸の延長線は、パイプ材よりも鉛直方向下側を通ることを特徴とする。
【0008】
第4の発明は、第2の発明に係るブレーキペダルの締結構造において、
離脱ブラケットの第1面は、前記第2面に対して車両後方側に位置することを特徴とする。これにより、離脱ブラケットの第1面が前記第2面に対して車両前方側に位置する構成に比べて、インストルメントパネル構成部材に対する離脱ブラケットの取付点が、車両後方側から作業する作業者に近くなり、作業性が向上する。
【0009】
第5の発明は、第2の発明に係るブレーキペダルの締結構造において、
離脱ブラケットは、インストルメントパネル・リインホースメントを構成するパイプ材から延びるブラケットに、ボルトとナットにより締結され、
該ブラケットは、前記締結時に前記離脱ブラケットの第1面に合わせられる締結面と、該締結面の鉛直方向下側の端部から車両後方に延在し、該締結面に対して略直角の底面とを有することを特徴とする。これにより、作業者は、締結方向に略対応する底面の傾きに沿って工具を案内することで、容易に締結作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、組み付け性が良好で、インストルメントパネルのモジュール化を促進できるブレーキペダルの締結構造が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための最良の形態の説明を行う。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明によるブレーキペダルの締結構造の一実施例を車両側面視で示す断面図である。図2は、図1のX部の拡大図である。
【0013】
図1に示すように、ダッシュパネル20は、車体の前部(典型的には、エンジンコンパートメント)と車内空間と離隔する。ダッシュパネル20よりも車両後方側には、インストルメントパネル組立体70が配置される。インストルメントパネル組立体70は、図1にも示すように、樹脂等からなり意匠面(表皮層)を構成する表面パネル部材71と、車両幅方向に左右に延びる断面円形のパイプ材を備えるインストルメントパネル・リインホースメント(以下、「インパネR/F72」という)とを備える。インストルメントパネル組立体70には、各種表示を行うメーター74及びクラスタパネル75や、ステアリング機構76、空調装置等が取り付けられる。
【0014】
図3は、インパネR/F72を車両前側から見たときの斜視図である。インパネR/F72には、インパネR/F72には、ブレーキペダル組立体30を支持するための取付ブラケット78が形成される。取付ブラケット78は、車両幅方向においてブレーキペダル配置位置に対応して配設される。取付ブラケット78は、例えば板金に曲げや穴あけ等の加工を行って形成され、インパネR/F72(パイプ材)に溶接等により取付られてよい。或いは、取付ブラケット78は、インパネR/F72と一体的に形成されてもよい。尚、図3には示していないが、インパネR/F72には、取付ブラケット78の他、ステアリングコラム等の取付用の各種ブラケットが同様に形成される。
【0015】
取付ブラケット78は、図2及び図3に示すように、後述のブレーキペダル組立体30の離脱ブラケット36が締結される取付面78a(以下、「離脱ブラケット取付面78a」という)を有する。離脱ブラケット取付面78aは、後述の離脱ブラケット36の第1面36aに合わせられて締結される面であり、第1面36aと同様、側面視で、車両後方側が下方になり且つ車両前側が上方になる向きで傾斜した法線方向を有する。このような法線方向を有することの技術的な意義については、図6を参照して後述する。
【0016】
離脱ブラケット取付面78aの車両前後方向の位置は、ブレーキペダル組立体30の構成(特に離脱ブラケット36の取付点)に応じて決定されるが、通常的には、インパネR/F72よりも車両前側に離間した位置に設定される(図1等参照)。このため、取付ブラケット78の離脱ブラケット取付面78aは、図3に示すように、インパネR/F72から車両前方に延びる左右の側面78bの車両前方側端部間に架設される。この側面78bは、取付ブラケット78に必要な強度・剛性を確保できるような領域・範囲で設けられる。
【0017】
離脱ブラケット取付面78aには、図2及び図3に示すように、締結ボルト50の軸径より僅かに大きいボルト孔73が形成される。このボルト孔73には、上述の離脱ブラケット取付面78aの傾き(法線方向)に起因して、離脱ブラケット36を締結するための締結ボルト50(図2参照)が車両後方側から斜め上方向に向かって挿通される。尚、離脱ブラケット取付面78aのボルト孔73の位置は、ブレーキペダル組立体30の構成(特に離脱ブラケット36の取付点)に依存するが、一般的には、インパネR/F72よりも車両前方で且つ鉛直方向で略同等の高さになる(図1参照)。
【0018】
取付ブラケット78の底面78cは、離脱ブラケット取付面78aの下側端部から車両後方に向けて延在する。即ち、底面78cは、離脱ブラケット取付面78aと2つの側面78bで画成される空間の下側を閉塞する。尚、取付ブラケット78の底面78cは、離脱ブラケット取付面78a及び側面78bとは別体に形成され、溶接等で固定されるものであってよいし、一体で形成されてもよい。底面78cは、側面視で、図1にも示すように、車両後方側が下方になり且つ車両前側が上方になる向きで傾斜している。即ち、取付ブラケット78は、車両後方側が下方になり且つ車両前側が上方になる向きで傾斜している袋状の空間を内側に形成する。このような底面78cの傾斜の技術的な意義については、図5及び図6に関連した後の説明において記載する。
【0019】
図1を再度参照するに、乗員の足元付近の適切なスペースには、ブレーキペダル組立体30が配置される。ブレーキペダル組立体30は、ブレーキペダル32と、ブレーキペダル32を回動可能に保持するブレーキペダルサポート(ペダルブラケット)34と、離脱ブラケット36とを備える。
【0020】
ブレーキペダルサポート34は、ダッシュパネル20に対向する取付部34bを有する。側面部34cは、取付部34bから車両後方に向けて立設され、その車両後方側にはブレーキペダル32の回動軸32aが形成される。ブレーキペダルサポート34は、また、離脱ブラケット36が締結される離脱ブラケット締結部35を一体的に有する。
【0021】
図4は、離脱ブラケット36の一例を示す斜視図である。離脱ブラケット36は、例えば板金で形成され、図1にも示すように、側面視でL字型断面を有する。即ち、離脱ブラケット36は、インパネR/F72(インパネR/F72から延びる取付ブラケット78)に締結される第1面36aと、ブレーキペダルサポート34の離脱ブラケット締結部35に離脱可能に締結される第2面36bとを有する。図4に示す例では、第1面36aと第2面36bとの間には、それら2つの面を連続させる傾斜面36cが形成される。即ち、第1面36aと第2面36bとは、傾斜面36cを介して互いに角度(本例では約90度)をなしている。
【0022】
第1面36aは、上述の取付ブラケット78の離脱ブラケット取付面78aに合わせられて締結される面である。ブレーキペダル組立体30が車両に取り付けられた通常状態(衝突等により車体が変形していないという意味で通常状態)において、離脱ブラケット取付面78aと同様、側面視で、車両後方側が下方になり且つ車両前側が上方になる向きで傾斜した法線方向を有する。このような法線方向を有することの技術的な意義については、図6を参照して後述する。
【0023】
第1面36aには、締結ボルト50の軸径より僅かに大きいボルト孔37a(図2参照)が形成される。第1面36aにおける車両組み付け状態で車両前側に向く側の面には、図4に示すように、ボルト孔37aに対応してウエルドナット52が設けられる。このボルト孔37には、上述の第1面36aの傾き(法線方向)に起因して、離脱ブラケット36とインパネR/F72とを締結するための締結ボルト50が車両後方側から斜め上方向に向かって挿通される(図1参照)。
【0024】
第2面36bには、図4に示すように、ボルト40(図2参照、以下、「離脱ボルト40」という)が離脱可能に挿通される離脱孔42が形成される。離脱孔42は、第2面36bの略中央部付近を基点として、車両前後方向に沿って溝状に延び、傾斜面36cまで延在する。尚、離脱孔42の幅(孔の車両幅方向の幅)は、離脱ボルト40の軸径に対応して決定される。離脱孔42の幅は、傾斜面36cにおいて、離脱ボルト40の頭部(ワッシャーを有する場合には当該ワッシャー及び頭部)が通過可能なように、拡大される。即ち、離脱孔42は、第2面36bにおいて、離脱ボルト40の軸径に対応した幅を有し、傾斜面36cにおいて、離脱ボルト40の頭部の径及び高さに対応した幅及び高さを有する。尚、本例とは異なり、略平らの傾斜面を介さずに第1面と第2面とを形成する構成(即ち、比較的小さい曲げRにより第1面と第2面とを形成する構成)では、第1面に、同様のボルト40の軸径に対応した溝孔を形成し、第2面に、離脱ボルト40の頭部の径及び高さに対応した幅及び高さを有し且つ第1面の溝孔に連続するボルト頭部通過孔を形成すればよい。
【0025】
図2を再度参照するに、ブレーキペダルサポート34の離脱ブラケット締結部35は、第2面36bが合わせられる上面34a(以下、「ブラケット保持面34a」という)を有し、ブラケット保持面34aには、離脱ボルト40が挿通されるボルト孔34bが形成される。
【0026】
ブレーキペダル組立体30として構成するため、離脱ブラケット36は、離脱ボルト40及び対応するナット41によりブレーキペダルサポート34の離脱ブラケット締結部35に固定される。このとき、離脱ボルト40は、図2に示すように、離脱ブラケット36の第2面36bと離脱ブラケット締結部35のブラケット保持面34aとを合わせた状態で、それぞれの離脱孔42及びボルト孔34bに通される。そして、離脱ブラケット締結部35のブラケット保持面34aの裏側から突出する離脱ボルト40の螺子部には、ナット41が締め付けられる。尚、ナット41は、ウエルドナットであってもよい。この締結状態では、離脱ボルト40は、離脱ブラケット36の第2面36bにおける離脱孔42(細長い部分)に位置し、第2面36bにおける離脱孔42まわりの座面との接触(軸力)により拘束される。また、離脱ブラケット36は、離脱ボルト40の頭部の下面と離脱ブラケット締結部35のブラケット保持面34aとの間に挟持された状態となる。
【0027】
ここで、図5を参照して、離脱ブラケット36の離脱動作・機能について概説する。車両の前部に障害物(例えば他の車両)が衝突すると、車体の前部が潰れる。その際の車両の前部の変形に伴って、ダッシュパネル20及びそれに伴いブレーキペダルサポート34(離脱ブラケット締結部35)が車両後方側に移動する。即ち、ブレーキペダルサポート34(離脱ブラケット締結部35と一体)がインパネR/F72に対して相対的に車両後方側に移動する。このとき、両部材の相対的な変位の差は、ブレーキペダルサポート34とインパネR/F72の両部材に取り付く離脱ブラケット36の大きな変形により吸収されるのではなく、上述の離脱孔42内での離脱ボルト40の車両後方への移動により吸収される。即ち、図5に示すように、離脱孔42における離脱ボルト40の車両後方への移動により、ブレーキペダルサポート34が離脱ボルト40と共にインパネR/F72の取付ブラケット78に対して車両後方側に移動する。そして、ブレーキペダルサポート34のインパネR/F72に対する後方移動量が更に増大すると、最終的には、離脱ボルト40の頭部が離脱ブラケット36の傾斜面36cにおける拡幅された離脱孔42から抜けることで、図5に示すように、ブレーキペダルサポート34が離脱ボルト40から離脱する。このとき、離脱ブラケット締結部35のブラケット保持面34aの車両後方端部が、取付ブラケット78の傾斜した底面78cに衝突し、鉛直方向下向に落下させられる(即ち、離脱後のブレーキペダルサポート34の移動軌跡が修正される)。これにより、離脱後のブレーキペダルサポート34が乗員の足に向けて落下してくるのを適切に防止することができる。また、この結果、ブレーキペダル32自体も下方に移動し、ブレーキペダル32の乗員側への移動を防止することができる。尚、離脱ブラケット締結部35のブラケット保持面34aの車両後方端部は、図5にも示すように、取付ブラケット78の底面78cとの衝突時に、取付ブラケット78の底面78cに刺さって離脱不能とならないように、凸状の鋭利でない丸みのある形状を有する。
【0028】
尚、本発明は、離脱ブラケット36の離脱動作・機能については、特に上述に限定されること無く、例えば、離脱ブラケット36の破断や変形やボルトの破断等により離脱を実現するものであってもよい。
【0029】
次に、図6を参照して、本ラインにおけるインストルメントパネル組立体70の車体への組み付け方法及びブレーキペダル組立体30のインストルメントパネル組立体70への組み付け方法について説明する。尚、以下の各種組み付けは、車体のフロアの上に作業者が乗り込んで実行される。
【0030】
ブレーキペダル組立体30及びインストルメントパネル組立体70の組み付けは、先ず、ブレーキペダル組立体30から行われる。尚、ブレーキペダル組立体30は、サブラインないしサプライヤにて予めアセンブリされた状態となっている。
【0031】
ブレーキペダル組立体30の車体への組み付けは、ブレーキペダル組立体30のブレーキペダルサポート34の取付部34bをダッシュパネル20に対して固定することで一次的に実現される。尚、ダッシュパネル20に対する締結・固定方法は任意であってよく、例えばダッシュパネル20の裏側(ブレーキペダルサポート34の存在する側とは反対側)にブレーキブースタ(図示せず)を配設し、ブレーキブースタからダッシュパネル20の孔を通して突出するスタッドボルトに、取付部34bに設定したカラー(円筒状で内部に螺子が切られた部材)を挿通して螺着させてよい。
【0032】
ブレーキペダルサポート34の取付部34bの締結が終わると、次いで、インストルメントパネル組立体70が車体に組み付けられる。インストルメントパネル組立体70の組み付けは、いわゆるモジュール状態で実行される。即ち、例えばサブラインで表面パネル部材71やインパネR/F72に種々の所定の構成部品(メーター74及びクラスタパネル75、ステアリング機構76や空調装置等)を装着し、モジュール状態のインストルメントパネル組立体70が本ラインにて車体に組み付けられる。この所謂インパネモジュール搭載は、作業効率が非常に良好であり、また、各種構成部品をサブラインで予め組み付けておくことができるため、本ラインでのインストルメントパネル組立体70の組み付け性が大幅に向上する。
【0033】
インストルメントパネル組立体70が車体に組み付けられると、ブレーキペダルサポート34の離脱ブラケット36の第1面36a(その車両後方側の面)に対して、取付ブラケット78の離脱ブラケット取付面78a(その車両前方側の面)が合わせられた状態、即ち、ブレーキペダルサポート34の離脱ボルト40とインパネR/F72の取付ブラケット78との締結ボルト50による締結が可能な状態となる。
【0034】
この状態で、ブレーキペダルサポート34の離脱ボルト40とインパネR/F72の取付ブラケット78との締結ボルト50による締結は、通常的には、図6に示すように、比較的遠い位置にある締結位置でのボルト締め付けに適した工具(本例では、エクステンションバー92を装着したインパクトレンチ90)により実行される。
【0035】
この際、本実施例では、上述の如く、離脱ブラケット36の第1面36aが側面視で車両後方に向かって斜め下向きに傾斜しているので、図6に示すように、離脱ブラケット36を取付ブラケット78に対して車両後方斜め下方より締結可能である。即ち、本実施例では、例えばインパクトレンチ90のエクステンションバー92を、図6に示すように、インパネR/F72のパイプ材の鉛直方向下側を通して締結可能である。この場合、インパクトレンチ90のエクステンションバー92は、図6に示すように、インストルメントパネル組立体70の如何なる構成部品に対しても干渉することがない。したがって、本実施例によれば、インストルメントパネル組立体70を完全なモジュール状態(即ちメーター74及びクラスタパネル75等が組み付けられ、且つ、ハーネス80(図1参照)によるワイヤ結線がサブサインで完了した状態)にしてから、本ラインで組み付けを行うことができる。
【0036】
ここで、本実施例とは対照的な構成として、離脱ブラケット36の第1面36aが側面視で車両後方に向かって斜め上向きに傾斜している比較例では、図7に示すように、離脱ブラケットをインストルメントパネル組立体70に車両後方斜め上方から締結する必要がある。即ち、この比較例では、インパクトレンチ90のエクステンションバー92を、図7に示すように、インパネR/F72のパイプ材の鉛直方向上側を通して(取付ブラケット78の上側の開口を介して)締結する必要がある。この場合、インパクトレンチ90のエクステンションバー92は、図7に示すように、インストルメントパネル組立体70のメーター74やクラスタパネル75等の構成部品と干渉する。このため、この比較例では、メーター74やクラスタパネル75が組み付けられていない状態で、インストルメントパネル組立体70を車体に組み付け、その後、離脱ブラケット36と取付ブラケット78との締結ボルト50による締結後に、メーター74やクラスタパネル75を組み付けたり、それに関連するハーネスの接続を行う必要が生ずる。即ち、インストルメントパネル組立体70を完全なモジュール状態にしてから、本ラインで組み付けを行うことができず、車体のフロア上での作業工程が多くなってしまう。
【0037】
これに対して、本実施例によれば、上述の如く、離脱ブラケットをインストルメントパネル組立体70に車両後方斜め下方より締結可能に構成することで、インパネモジュール化を促進でき、車体のフロア上での作業工程を減らして作業性を高めることができる。
【0038】
また、本実施例では、図6に示すように、作業者は、インパクトレンチ90のエクステンションバー92を、図6に示すように、取付ブラケット78の内部空間に差し込む際、取付ブラケット78の底面78cに沿って差し込むことで、エクステンションバー92の先端に取り付けた締結ボルト50を、取付ブラケット78の離脱ブラケット取付面78aのボルト孔73へと容易に案内することができる。尚、取付ブラケット78に対する離脱ブラケット36の取付点は、上述の如く、インパネR/F72よりも車両前方に位置するので、インストルメントパネル組立体70の組み付け後には、作業者にとっては比較的視界の悪い状態で、離脱ブラケット36と取付ブラケット78との締結ボルト50による締結を行う必要がある。このため、作業者が、取付ブラケット78の底面78cの傾斜を頼りにしながら、インパクトレンチ90のエクステンションバー92を案内できることは、かかる視界の悪い状態での作業において非常に有効となる。
【実施例2】
【0039】
図8は、本発明によるその他の実施例(実施例2)を車両側面視で示す図である。上述の実施例1と同様の構成要素については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
【0040】
本実施例は、離脱ブラケット36の第1面36aが、取付ブラケット78に対して車両前方側にある点が、離脱ブラケット36の第1面36aが取付ブラケット78に対して車両後方側にある上述の実施例1と異なる。即ち、本実施例では、離脱ブラケット36における第1面36aと第2面36bとにより画成される側面視でL字型の断面が、上述の実施例1に対して逆向きになっている。
【0041】
図9は、本実施例2において用いられてよい離脱ブラケット36の一例を示す斜視図である。離脱ブラケット36の第1面36aは、同様に、ボルト孔37a及びそれに対応してウエルドナット52(図9では第1面36aの裏側のために見えない)を有し、第2面36bは、離脱ボルト40が離脱可能に挿通される離脱孔42が形成される。離脱孔42は、図9に示すように、第2面36bにおいて車両後方側で開口する切り欠き状に形成される。これにより、上述の実施例1と同様、車両衝突時の車両前部の変形過程において、ブレーキペダルサポート34の取付ブラケット78に対する車両後方に向かう移動に伴って、離脱ボルト40によりブレーキペダルサポート34が車両後方側から離脱することができる。
【0042】
本実施例2では、取付ブラケット78に対する離脱ブラケット36の取付点が上述の実施例1よりも車両前方側(作業者にとって遠い側)に位置するので、締結ボルト50による締結作業の作業性が上述の実施例1よりも悪くなるものの、本実施例2においても、離脱ブラケット36の第1面36a及びそれに対応する取付ブラケット78の離脱ブラケット取付面78aの傾斜を、上述の実施例1と同様に、車両後方に向けて斜め下向きになるように構成することで、離脱ブラケット36をインストルメントパネル組立体70に車両後方斜め下方より締結可能となる。即ち、本実施例では、例えばインパクトレンチ90のエクステンションバー92を、図7に示すように、インパネR/F72のパイプ材の鉛直方向下側を通して締結可能である。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施例について詳説したが、本発明は、上述した実施例に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施例に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0044】
例えば、上述の実施例では、締結ボルト50が一本である構成を示したが、2本以上の締結ボルト50により、取付ブラケット78と離脱ブラケット36とを締結することも当然に可能である。この場合も、2本以上の締結ボルト50の締結点を形成する領域(離脱ブラケット36の第1面36a及びそれに対応する取付ブラケット78の離脱ブラケット取付面78a)を、車両後方に向けて斜め下向きになるように構成すればよい。
【0045】
また、離脱ブラケット36の第1面36a及びそれに対応する取付ブラケット78の離脱ブラケット取付面78aは、必ずしもその全面に亘って上述のような傾斜を有する必要はなく、締結ボルト50の取付点(即ち、ボルト孔73及びボルト孔37aの周辺領域)において上述のような傾斜を有すればよい。
【0046】
また、上述の実施例では、離脱ブラケット36にウエルドナット52を設け、締結ボルト50により締結を実現しているが、離脱ブラケット36にウエルドボルトを設け、対応するナットにより締結を実現することも可能である。
【0047】
また、上述の実施例では、組み付けの効率化を高めるため、インストルメントパネル組立体70として車両に組み付けられたインストルメントパネル構成部材に対して、離脱ブラケット36を車両後方斜め下方より締結可能となるように構成している。しかしながら、本発明は、これに限られず、車両に組み付けられたインストルメントパネル組立体70に対して取り付けられうる他のインストルメントパネル構成部材(インストルメントパネル組立体70を構成しないインストルメントパネル構成部材)に対して、離脱ブラケット36を車両後方斜め下方より締結可能となるように構成してもよい。例えば、取付ブラケット78がインストルメントパネル組立体70に含まれない構成の場合、インストルメントパネル組立体70を車両に組み付けた後、取付ブラケット78をインストルメントパネル組立体70に取り付け、次いで、取付ブラケット78に離脱ブラケット36を車両後方斜め下方より取り付けることとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明によるブレーキペダルの締結構造の一実施例を車両側面視(運転席側)で示す断面図である。
【図2】図1のX部の拡大図である。
【図3】取付ブラケット78を備えるインパネR/F72を車両前方側から見た斜視図である。
【図4】実施例1による離脱ブラケット36の一例を示す斜視図である。
【図5】離脱ブラケット36の離脱動作・機能を車両側面視で示す説明図である。
【図6】本実施例の場合における、締結ボルト50の締め付け時の作業性を車両側面視で示す説明図である。
【図7】本実施例とは対照的な比較例の場合における、締結ボルト50の締め付け時の作業性を車両側面視で示す説明図である。
【図8】実施例2によるブレーキペダルの締結構造の要部を車両側面視で示す図である。
【図9】実施例2による離脱ブラケット36の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0049】
20 ダッシュパネル
30 ブレーキペダル組立体
32 ブレーキペダル
34 ブレーキペダルサポート
36 離脱ブラケット
36a 第1面
36b 第2面
37a ボルト孔
40 離脱ボルト
42 離脱孔
50 締結ボルト
53 ウエルドナット
70 インストルメントパネル組立体
72 インパネR/F
73 ボルト孔
74 メーター
75 クラスタパネル
76 ステアリング機構
78 取付ブラケット
78a 離脱ブラケット取付面
78b 側面
78c 底面
80 ハーネス
90 インパクトレンチ
92 エクステンションバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルを離脱ブラケットを介してインストルメントパネル構成部材に対して離脱可能に固定するブレーキペダルの締結構造において、
離脱ブラケットをインストルメントパネル構成部材に車両後方斜め下方より締結可能に構成したことを特徴とする、締結構造。
【請求項2】
離脱ブラケットは、インストルメントパネル構成部材に締結手段を介して締結される第1面と、ブレーキペダルが離脱可能に取り付けられる第2面とからなる、側面視でL字型の断面形状を含み、前記第1面は、側面視で車両後方斜め下方に向く、請求項1に記載の締結構造。
【請求項3】
離脱ブラケットの第1面は、インストルメントパネル・リインホースメントを構成するパイプ材から延びるブラケットに、ボルトとナットにより締結され、該ボルトの軸の延長線は、パイプ材よりも鉛直方向下側を通る、請求項2に記載の締結構造。
【請求項4】
離脱ブラケットの第1面は、前記第2面に対して車両後方側に位置する、請求項2に記載の締結構造。
【請求項5】
離脱ブラケットは、インストルメントパネル・リインホースメントを構成するパイプ材から延びるブラケットに、ボルトとナットにより締結され、
該ブラケットは、前記締結時に前記離脱ブラケットの第1面に合わせられる締結面と、該締結面の鉛直方向下側の端部から車両後方に延在し、該締結面に対して略直角の底面とを有する、請求項2に記載の締結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−191014(P2007−191014A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10393(P2006−10393)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】