説明

ブレーキ制御装置

【課題】 減圧時における減圧弁の作動頻度を低減できるブレーキ制御装置を提供する。
【解決手段】 ブレーキECU102は、同一配管系の2つのホイルシリンダW/Cに対する液圧指令値Pwcomにおいて、一方の液圧指令値Pwcomが他方の液圧指令値Pwcomよりも低く、低圧側のホイルシリンダW/Cの液圧指令値Pwcomが減圧指令である場合に、一方のソレノイドインバルブ4とソレノイドアウトバルブ5を共に閉じて低圧側のホイルシリンダW/Cの液圧を保持するよう液圧制御を行い、その後2つの液圧指令値Pwcomが略同一となったとき、ソレノイドインバルブ4を開弁する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つのホイルシリンダが同一配管を介してマスタシリンダと接続されたX配管または前後配管の配管構造を有するブレーキユニットでは、同一配管で接続された2つのホイルシリンダに対する液圧指令値が共に減圧指令であって、それぞれの液圧指令値に差がある場合、高圧側の液圧指令値を同一配管上に設けられた制御弁を駆動制御することで実現し、低圧側の液圧指令値を同一配管と各ホイルシリンダとをそれぞれ結ぶ分岐配管上に設けられた減圧弁を駆動制御することで実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−30745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術にあっては、減圧時における減圧弁の作動頻度が高くなるという問題があった。
本発明の目的は、減圧時における減圧弁の作動頻度を低減できるブレーキ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のブレーキ制御装置は、第2ホイルシリンダに対する第2液圧指令値が減圧指令である場合には、第2液圧指令値が第1ホイルシリンダに対する第1液圧指令値よりも低いとき、第2増圧弁および第2減圧弁を共に閉じて第2ホイルシリンダの液圧を保持するよう液圧制御を行い、その後第1および第2液圧指令値が略同一となったとき、第2増圧弁を開弁する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、減圧時における減圧弁の作動頻度を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1の車両の構成図である。
【図2】実施例1のブレーキユニット101の油圧回路図である。
【図3】ブレーキECU102で実行される液圧指令値生成処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】実施例1の電磁弁作動頻度抑制作用を示すタイムチャートである。
【図5】実施例2のブレーキECU102の制御ブロック図である。
【図6】実施例2の電磁弁作動頻度抑制作用を示すタイムチャートである。
【図7】実施例3のブレーキECU102の制御ブロック図である。
【図8】実施例3の電磁弁作動頻度抑制作用を示すタイムチャートである。
【図9】実施例4のブレーキユニット130の油圧回路図である。
【図10】実施例5のブレーキユニット140の油圧回路図である。
【図11】実施例6のブレーキユニット150の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明のブレーキ制御装置を実施するための形態を、図面に示す実施例に基づいて説明する。
【0009】
〔実施例1〕
まず、実施例1の構成を説明する。
[車両構成]
図1は、実施例1の車両の構成図である。
ブレーキユニット101は、ブレーキECU(液圧制御手段)102の指令により、各車輪FL,FR,RL,RRに設けられたホイルシリンダW/C(FL,FR,RL,RR)のブレーキ液圧をコントロールする。
エンジンCU104は、アクセル開度センサ105により検出されたドライバのアクセルペダルAPの操作量に応じたエンジントルクを発生させるように、エンジン106をコントロールする。エンジン106の出力トルクは、図外のトランスファにより主駆動輪である左右後輪RL,RRへプロペラシャフト108を介して伝達する。プロペラシャフト108と左右後輪RL,RRとの間には、差動装置109を介装する。
【0010】
電動パワーステアリングモータ115は、ハンドル112とラック&ピニオン113との間の操舵軸114に配置し、コントローラ116の指令により、操舵軸114に対しドライバの操作力を補助するアシストトルクを出力する。コントローラ116は、例えば、車体速およびハンドル112の舵角に応じてアシストトルクを制御する。
ITSCU117は、レーダ118、カメラやナビゲーションシステム等から得られる情報(例えば、先行車、障害物等の情報)を入力し、ドライバの運転支援を行うべく、車内通信線119を介してブレーキECU102、エンジンCU104等に情報や指令を出力する。
CVTCU120は、エンジンCU104やブレーキECU102からの指令に応じて図外のベルト式無段変速機を制御する。
【0011】
ブレーキECU102は、ハンドル112の舵角に応じた信号を出力する操舵角センサ121、車両のヨーレイトに応じた信号を出力するヨーレイトセンサ122、車両の横加速度に応じた信号を出力する横加速度センサ123、各車輪FL,FR,RL,RRにそれぞれ設けた車輪速センサ124FL,124FR,124RL,124RR、ブレーキペダルBPのストロークに応じた信号を出力するブレーキストロークセンサ125およびマスタシリンダ圧に応じた信号を出力するマスタシリンダ圧センサ126の各センサ信号を入力する。また、CAN等の車内通信線119を介してアクセル開度、エンジン回転数、ギア位置信号等の情報を入力する。
ブレーキECU102は、各センサ信号に基づいて、アンチスキッドブレーキ制御(ABS)、車両挙動安定制御(VDC)、車間距離制御(ACC)、車線逸脱防止制御(LDP)等の自動ブレーキ制御の制御目標値を演算し、制御目標値に基づいてブレーキユニット101を制御する。このとき、必要に応じてエンジンCU104に対し指令を出力する。
【0012】
[ブレーキユニット]
図2は、実施例1のブレーキユニット101の油圧回路図であり、実施例1の油圧回路は、P系統とS系統の2系統からなる、X配管と呼ばれる配管構造を有する。
P系統には、左前輪のホイルシリンダW/C(FL)、右後輪のホイルシリンダW/C(RR)を接続し、S系統には、右前輪のホイルシリンダW/C(FR)、左後輪のホイルシリンダW/C(RL)を接続する。また、P系統、S系統それぞれに、ポンプ(増圧手段)PPとポンプ(増圧手段)PSとを設け、これらポンプPP,PSは、1つの電動モータMにより駆動する。実施例1では、モータMとして、DCブラシモータを用いる。以下、各ホイルシリンダW/C(FL,FR,RL,RR)をまとめて各ホイルシリンダW/Cともいう。
マスタシリンダM/CとポンプPP,PS(以下、ポンプP)の吸入側とは、管路11P,11S(以下、管路11)により接続する。この各管路11上には、常閉型の電磁弁であるゲートインバルブ2P,2Sを設ける。
また、管路11上であって、ゲートインバルブ2P,2S(以下、ゲートインバルブ2)とポンプPとの間にはチェックバルブ6P,6S(以下、チェックバルブ6)を設け、この各チェックバルブ6は、ゲートインバルブ2からポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0013】
各ポンプPの吐出側と各ホイルシリンダW/Cとは、管路12P,12S(以下、管路12)により接続する。この各管路12は管路13P,13S(第1油路であって、以下、管路13)と接続する。管路13はマスタシリンダM/Cと接続する。管路12と管路13との合流点には、各ホイルシリンダW/Cと接続する分岐管路20FL,20RR,20FR,20RL(分岐油路であって、以下、分岐管路20)を接続する。各分岐管路20上には、常開型の電磁弁であるソレノイドインバルブ4FL,4RR,4FR,4RL(増圧弁であって、以下、ソレノイドインバルブ4)を設ける。
各管路13上には、常開型の電磁弁であるゲートアウトバルブ3P,3S(制御弁であって、以下、ゲートアウトバルブ3)を設ける。また各管路13には、各ゲートアウトバルブ3を迂回する管路18P,18S(以下、管路18)を設け、この管路18には、チェックバルブ9P,9S(以下、チェックバルブ9)を設ける。この各チェックバルブ9は、マスタシリンダM/C側からホイルシリンダW/Cへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
各管路12上であって、各ソレノイドインバルブ4とポンプPとの間にはチェックバルブ7P,7S(以下、チェックバルブ7)を設け、この各チェックバルブ7は、ポンプPからソレノイドインバルブ4へ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
各分岐管路20上には、各ソレノイドインバルブ4を迂回する管路17FL,17RR,17FR,17RL(以下、管路17)を設け、この管路17には、チェックバルブ10FL,10RR,10FR,10RL(以下、チェックバルブ10)を設ける。この各チェックバルブ10は、ホイルシリンダW/CからポンプPへ向かう方向へのブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
【0014】
ポンプPの吸入側にはリザーバ16P,16S(以下、リザーバ16)を設け、このリザーバ16とポンプPとは管路15P,15S(以下、管路15)により接続する。リザーバ16とポンプPとの間にはチェックバルブ8P,8S(以下、チェックバルブ8)を設け、この各チェックバルブ8は、リザーバ16からポンプPへ向かう方向のブレーキ液の流れを許容し、反対方向の流れを禁止する。
ホイルシリンダW/Cと管路15とは合流管路21FL,21RR,21FR,21RL(合流油路であって、以下合流管路21)と管路14P,14S(第2油路であって、以下、管路14)とを介して接続し、管路14と管路15とはチェックバルブ8とリザーバ16との間において合流する。各合流管路21には、それぞれ常閉型の電磁弁であるソレノイドアウトバルブ5FL,5RR,5FR,5RL(減圧弁であって、以下、ソレノイドアウトバルブ5)を設ける。
ブレーキECU102は、ゲートインバルブ2、ゲートアウトバルブ3、ソレノイドインバルブ4、ソレノイドアウトバルブ5およびモータMの作動を制御することで、各輪FL,FR,RL,RRに付与する制動力をそれぞれ独立に調整する。
実施例1のブレーキユニット101は、倍力装置を持たない構成であり、ドライバによりブレーキペダルBPが操作された場合、ブレーキECU102は、ゲートインバルブ2を開弁してモータMを駆動すると共に、ゲートアウトバルブ3を調圧制御する。これにより、ドライバの踏力に対し任意の倍力比でホイルシリンダW/Cの圧力を高めることができる。
【0015】
[液圧指令値生成処理]
実施例1では、車線逸脱防止制御時、同一配管系(P系統またはS系統)の液圧指令値に高低があり、かつ、低圧側が減圧指令であるときのソレノイドアウトバルブ5(減圧弁)の作動頻度低減を狙いとし、以下に示すような液圧指令値生成処理を実行する。
図3は、ブレーキECU102で実行される液圧指令値生成処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。この処理は、自車が走行車線から逸脱傾向にあるとき、所定の演算周期で繰り返し実行される。なお、逸脱傾向の判定は、例えば、走行車線と自車の前後方向軸とのなす角度と、車速とから所定時間後における自車の走行車線に対する横変位量を算出し、この推定横変位量と閾値との比較により行う。つまり、推定横変位量が閾値を超えた場合に逸脱傾向有りと判定する。
ステップS01では、車線逸脱が回避されるような制動力指令値Fcomとヨーモーメント指令値Mcomを生成し、制動力指令値Fcomとヨーモーメント指令値Mcomとに基づいて各ホイルシリンダW/Cに対する液圧指令値Pwcom(FL),Pwcom(FR),Pwcom(RL),Pwcom(RR)を生成する。以下、各液圧指令値Pwcom(FL,FR,RL,RR)をまとめて各液圧指令値Pwcomという。ここで、制動力指令値Fcomは、車両を減速させることで所定時間後における自車の走行車線に対する横変位量を小さくするためのもので、ヨーモーメント指令値Mcomは、車両を旋回させることで逸脱を回避するためのものである。
ステップS02では、非ABS制御時であるか否かを判定する。車両がABS制御を実行していない場合にはステップS03へ進み、ABS制御を実施している場合にはステップS05へ進む。
【0016】
ステップS03では、低圧輪減圧制御の可否を判定する。具体的には、ステップS01で生成した各液圧指令値Pwcomにおいて、P系統のホイルシリンダW/C(FL,RR)の液圧指令値Pwcom(FL,RR)、またはS系統のホイルシリンダW/C(FR,RL)の液圧指令値Pwcom(FR,RL)に高低があり、低圧側の液圧指令値Pwcomが前回の演算周期において決定された最終液圧指令値Pw(最終液圧指令値Pwの前回値)よりも小さい場合には、減圧制御を行うとしてステップS04へ進み、それ以外の場合にはステップS05へ進む。
ステップS04では、各液圧指令値Pwcomの変更を行う。高圧側はステップS01で生成した各液圧指令値Pwcomを各最終液圧指令値Pw(FL,FR,RL,RR)とする。以下、各最終液圧指令値Pw(FL,FR,RL,RR)をまとめて各最終液圧指令値Pwという。低圧側は高圧側の液圧指令値Pwcomと最終液圧指令値Pwの前回値とのセレクトローにより最終液圧指令値Pwを決定する。それ以外はステップS01で生成した液圧指令値Pwcomを最終液圧指令値Pwとする。
このとき、ブレーキECU102では、高圧側の液圧指令値Pwcomも減圧指令である場合、高圧側の液圧指令値Pwcomに基づいてゲートアウトバルブ3とソレノイドインバルブ4を制御し、分岐管路20および管路13を介してホイルシリンダW/C内のブレーキ液をマスタシリンダM/Cへ戻すと共に、ソレノイドインバルブ4を閉じて低圧側のホイルシリンダW/C内のブレーキ液を保持する(第2減圧制御手段)。
【0017】
ステップS05では、ステップS01で生成した各液圧指令値Pwcomを各最終液圧指令値Pw(FL,FR,RL,RR)とする。
このとき、ブレーキECU102では、同一配管系における2つのホイルシリンダW/Cの各液圧指令値Pwcomが共に増圧指令である場合、ゲートアウトバルブ3とソレノイドインバルブ4とを制御し、高圧側と低圧側のホイルシリンダW/Cを共に増圧する(増圧制御手段)。
また、同一配管系における2つのホイルシリンダW/Cの各液圧指令値Pwcomが共に減圧指令であって、2つの液圧指令値Pwcomが略同一である場合、当該液圧指令値Pwcomに基づいてゲートアウトバルブ3を制御し、分岐管路20、管路13を介して2つのホイルシリンダW/C内のブレーキ液をマスタシリンダM/Cへ戻す(第1減圧制御手段)。
なお、ABS制御の介入によるABS作動時には、ABS制御を優先し、ステップS01で生成した各液圧指令値Pwcomにかかわらず、ABS制御の制御目標値に応じてソレノイドアウトバルブ5を制御し、ABS制御対象輪(スリップ傾向にある車輪)に対応するホイルシリンダW/C内のブレーキ液を合流管路21および管路14を介してリザーバ16内へ貯留する(第3減圧制御手段)。
【0018】
次に、実施例1の作用を説明する。
[電磁弁作動頻度抑制作用]
車線逸脱防止制御(LDP)では、制御目標値に応じた各輪のホイルシリンダに対する液圧指令値が車輪毎に異なることがある。ここで、X配管や前後配管の配管構造を有するブレーキユニットにおいて、同一配管系の2つのホイルシリンダW/Cに対する液圧指令値が共に減圧指令であり、それぞれの液圧指令値に高低であるとき、従来のブレーキ制御装置では、高圧側の液圧指令値はゲートアウトバルブを駆動制御することで実現し、低圧側の液圧指令値はソレノイドアウトバルブを駆動制御することで実現している。
ところが、従来のブレーキ制御装置では、低圧側の液圧指令値を実現するために、ソレノイドアウトバルブを駆動する必要があるため、ソレノイドアウトバルブの作動頻度が高くなるという問題があった。ここで、ソレノイドアウトバルブをオンオフ弁とした場合、頻繁に作動音が発生するため。車線逸脱防止制御中は、ドライバがブレーキペダルを踏み込んでいないケースが多いため、作動音が大きいとドライバに違和感を与えてしまう。一方、ソレノイドアウトバルブを比例弁とした場合、作動音の発生は抑制できるものの、PWM制御を行う必要上、回路構成が複雑になる。
【0019】
これに対し、実施例1では、低圧側の液圧指令値Pwcomが減圧指令であるとき、低圧側のソレノイドインバルブ4とソレノイドアウトバルブ5を共に閉じて低圧側のホイルシリンダW/Cの液圧を保持するよう液圧制御を行い、その後2つの液圧指令値Pwcomが略同一となったとき、ソレノイドインバルブ4を開弁する。つまり、ソレノイドアウトバルブ5を全く動作させないため、ソレノイドアウトバルブ5の作動頻度を低減できる。また、高圧側と低圧側とで液圧指令値Pwcomが略一致するまでの間は、低圧側のホイルシリンダW/Cの液圧を保持するため、必要な制動力を確保できる。なお、低圧側の車輪の制動力は、液圧指令値Pwcomに応じた制動力よりも大きくなるが、車両挙動は安定方向に変化するため、車線逸脱防止制御に悪影響を及ぼすことはない。
【0020】
図4は、実施例1の電磁弁作動頻度抑制作用を示すタイムチャートである。
時点t01では、車線逸脱防止制御におけるヨーモーメント指令値Mcomが増加することにより、図2のフローチャートでは、ステップS01→S02→S03→S05と進むことで同一配管系の1輪を増圧する高圧側の最終液圧指令値Pw(=Pwcom)を生成し、他方輪を保持する低圧側の最終液圧指令値Pw(=Pwcom)を生成する。高圧側はゲートインバルブ2を開弁、ゲートアウトバルブ3を調圧制御、モータ制御を増圧とすることで最終液圧指令値Pwを実現する。低圧側はソレノイドインバルブ4を閉弁することで最終液圧指令値Pwを実現する。ゲートアウトバルブ3の調圧制御では、ゲートアウトバルブ3を通過するブレーキ液量に応じてその開弁量を制御し、モータ制御の増圧は、増圧する高圧輪の最終液圧指令値Pwに応じたモータ回転数となるよう制御する。
時点t02でヨーモーメント指令値Mcomが一定となることにより、図2のフローチャートでは、ステップS01→S02→S03→S05と進むことで高圧側と低圧側の最終液圧指令値Pw(=Pwcom)を一定とする。高圧側はゲートインバルブ2を閉弁し、モータ制御を圧力保持とすることで最終液圧指令値Pw(=Pwcom)を実現する。低圧側はソレノイドインバルブ4を閉弁とすることで実現する。モータ制御の圧力保持は、保持する高圧側の液圧に応じたモータ回転数となるよう制御する。
【0021】
時点t03では、制動力指令値Fcomが増加することにより、図2のフローチャートでは、ステップS01→S02→S03→S05と進むことで高圧側と低圧側共に増加する最終液圧指令値Pw(=Pwcom)を生成する。高圧側はゲートインバルブ2を開弁、ゲートアウトバルブ3を調圧制御、モータ制御を増圧とすることで最終液圧指令値Pwを実現する。低圧側はソレノイドインバルブ4を調圧制御することで最終液圧指令値Pwを実現する。ソレノイドインバルブ4の調圧制御では、ソレノイドインバルブ4を通過するブレーキ液量に応じてその開弁量を制御する。
時点t04では、制動力指令値Fcomが減少することにより、図2のフローチャートでは、ステップS01→S02→S03→S04と進むことで高圧側は減少する最終液圧指令値Pw(=Pwcom)を生成し、低圧側は一定とする最終液圧指令値Pw(≧Pwcom)を生成する。高圧側はゲートアウトバルブ3を調節制御し、モータ制御をゲートアウトバルブ3による減圧とすることで最終液圧指令値Pwを実現する。低圧側はソレノイドインバルブ4を閉弁することで最終液圧指令値Pwを実現する。モータ制御のゲートアウトバルブ3による減圧では、減圧する高圧側の液圧指令値Pwに応じたモータ回転数となるよう制御する。
時点t05では、制動力指令値Fcomがゼロとなることにより、図2のフローチャートでは、ステップS01→S02→S03→S04と進むことで液圧指令値Pwは一定となる。高圧側はゲートアウトバルブ3を調圧制御し、モータ制御を保持制御とすることで最終液圧指令値Pwを実現する。低圧側はソレノイドインバルブ4を閉弁とすることで最終液圧指令値Pwを実現する。
【0022】
時点t06では、ヨーモーメント指令値Mcomが減少することにより、図2のフローチャートでは、ステップS01→S02→S03→S04と進むことで高圧側は減少する最終液圧指令値Pwを生成し、低圧側は圧力保持する最終液圧指令値Pwを生成する。高圧側は、ゲートアウトバルブ3を調圧制御し、モータ制御をゲートアウトバルブ3による減圧制御状態とすることで最終液圧指令値Pwを実現する。低圧側はソレノイドインバルブ4を閉弁することで最終液圧指令値Pwを実現する。
時点t07では、ヨーモーメント指令値Mcomが減少することにより、図2のフローチャートでは、ステップS01→S02→S03→S04と進むことで高圧側と低圧側の液圧指令値Pwcomが一致する。高圧側はゲートアウトバルブ3を調圧制御し、モータ制御をゲートアウトバルブ3による減圧制御状態とすることで最終液圧指令値Pwを実現する。低圧側はソレノイドインバルブ4を開弁することで最終液圧指令値Pwを実現する。
時点t08では、ヨーモーメント指令値Mcomがゼロとなったことにより、図2のフローチャートでは、ステップS01→S02→S03→S04と進むことで最終液圧指令値Pwをゼロとする。このため、ゲートアウトバルブ3を開弁し、モータ制御を非制御(モータ停止)とする。
【0023】
次に、実施例1の効果を説明する。
実施例1のブレーキ制御装置では、以下に列挙する効果を奏する。
(1) ブレーキECU102は、同一配管系の2つのホイルシリンダW/Cに対する液圧指令値Pwcomが共に減圧指令である場合、一方の液圧指令値Pwcomが他方の液圧指令値Pwcomよりも低いとき、一方のソレノイドインバルブ4とソレノイドアウトバルブ5を共に閉じて低圧側のホイルシリンダW/Cの液圧を保持するよう液圧制御を行い、その後2つの液圧指令値Pwcomが略同一となったとき、ソレノイドインバルブ4を開弁する。これにより、ソレノイドアウトバルブ5の作動頻度を低減でき、ソレノイドアウトバルブ5の耐久性向上を図ることができる。また、車線逸脱防止制御時におけるブレーキユニット101の作動音を低減できる。
(2) ブレーキECU102は、2つのホイルシリンダW/Cに対する液圧指令値Pwcomが共に増圧指令である場合、ゲートアウトバルブ3とソレノイドインバルブ4とを制御し、2つのホイルシリンダW/Cを増圧する増圧制御手段と、2つのホイルシリンダW/Cに対する液圧指令値Pwcomが共に減圧指令であって、2つの液圧指令値Pwcomが略同一である場合、液圧指令値Pwcomに基づいてゲートアウトバルブ3を制御し、分岐管路20、管路13を介して2つのホイルシリンダW/C内のブレーキ液をマスタシリンダM/Cへ戻す第1減圧制御手段と、2つのホイルシリンダW/Cに対する液圧指令値Pwcomが共に減圧指令であって、一方の液圧指令値Pwcomが他方の液圧指令値Pwcomよりも低い場合、高圧側の液圧指令値Pwcomに基づいてゲートアウトバルブ3と高圧側のソレノイドインバルブ4を制御し、分岐管路20および管路13を介して高圧側のホイルシリンダW/C内のブレーキ液をマスタシリンダM/Cへ戻すと共に、減圧側のソレノイドインバルブ4を閉じて低圧側のホイルシリンダW/C内のブレーキ液を保持する第2減圧制御手段と、ABS作動時、制御対象輪(スリップ傾向にある車輪)に対応するホイルシリンダW/C内のブレーキ液を合流管路21および管路14を介してリザーバ16内へ貯留する第3減圧制御手段と、を備える。
これにより、ソレノイドアウトバルブ5の作動頻度を低減でき、ソレノイドアウトバルブ5の耐久性向上を図ることができる。また、車線逸脱防止制御時におけるブレーキユニット101の作動音を低減できる。加えて、ABS作動時には、ABS制御対象輪に対応するホイルシリンダW/Cの液圧を減圧してスリップ傾向を低減できる。
【0024】
〔実施例2〕
まず、実施例2の構成を説明する。
図5は、実施例2のブレーキECU102の制御ブロック図であり、ブレーキECU102は、液圧指令値生成部102aと、推定制動力生成部(制動力推定部)102と、要求制動力生成部102cと、修正制動力指令値生成部(制動力指令値生成部)102dと、修正液圧指令値生成部(液圧指令制動力補正部)102eとを有する。
液圧指令値生成部102aは、制動力指令値Fcomとヨーモーメント指令値Mcomとから各液圧指令値Pwcomを生成する。各液圧指令値Pwcomの生成方法については、図3のステップS01の処理と同様である。
推定制動力生成部102bは、各最終液圧指令値Pwで実現される推定制動力Festを生成する。まず、各最終液圧指令値PwとブレーキファクターBFw(FL,FR,RL,RR)とブレーキロータ有効半径Rr(FL,FR,RL,RR)とタイヤ動半径Tr(FL,FR,RL,RR)とから、各輪の制動力Fw(FL,FR,RL,RR)を算出する。
Fw=Pw×BFw×Rr/Tr
推定制動力Festは、各輪の制動力Fw(FL,FR,RL,RR)を総和して求めることができる。
Fest=ΣFw
要求制動力生成部102cは、各液圧指令値Pwcomから推定制動力生成部102bと同様の方法を用いて要求制動力Freqを生成する。
修正制動力指令値生成部102dは、制動力指令値Fcomと推定制動力Festと要求制動力Freqとから修正制動力指令値Fadjを生成する。修正制動力指令値Fadjは、要求制動力Freqと推定制動力Festとの差分を求め、その差分を制動力指令値Fcomに加算して求める。
Fadj=Fcom+(Freq-Fest)
修正液圧指令値生成部102eは、修正制動力指令値Fadjとヨーモーメント指令値Mcomとに基づいて各修正液圧指令値Pwadj(FL,FR,RL,RR)を生成する。なお、低圧側の修正液圧指令値Pwadjは不変、つまり最終液圧指令値Pwと同じ値であるため、実際は、高圧側の修正液圧指令値Pwadjのみを変更する。以下、各修正液圧指令値Pwadj(FL,FR,RL,RR)をまとめて各修正液圧指令値Pwadjという。各修正液圧指令値Pwadjの生成方法については、図3のステップS01の処理と同様である。生成された各修正液圧指令値Pwadjは、ステップS04の各最終液圧指令値Pwに代えて用いられる。
【0025】
次に、実施例2の作用を説明する。
[電磁弁作動頻度抑制作用]
減圧時に低圧側のホイルシリンダW/Cの液圧を保持すると、対応する車輪の制動力が液圧指令値Pwcomに応じた車両の制動力よりも大きくなるため、車線逸脱防止制御が目標とする車両挙動と実際の車両挙動との間のずれが大きくなる。
そこで、実施例2では、低圧側のホイルシリンダW/Cの液圧を保持することで生じる推定制動力Festを各最終液圧指令値Pwから求めると共に、車線逸脱防止制御が目標とする要求制動力Freqを各液圧指令値Pwcomから求め、両者の差分(Freq-Fest)を制動力指令値Fcomに加算して修正制動力指令値Fadjを生成し、修正制動力指令値Fadjとヨーモーメント指令値Mcomとに基づいて各修正液圧指令値Pwadjを生成する。
これにより、減圧時には低圧側のホイルシリンダW/Cの液圧を保持してソレノイドアウトバルブ5の作動頻度を抑えつつ、車線逸脱防止制御が目標とする制動力に車両の制動力を近づけることができる。
【0026】
図6は、実施例2の電磁弁作動頻度抑制作用を示すタイムチャートである。なお、各時点における各バルブおよびモータMの作動は図4に示した実施例1と同じであるため、実施例1と異なる部分のみを説明する。
時点t04では、制動力指令値Fcomが減少することにより、高圧側は減少する最終液圧指令値Pw(=Pwcom)を生成し、低圧側は一定とする最終液圧指令値Pw(≧Pwcom)を生成する。このとき、推定制動力Festは要求制動力Freqよりも大きくなるため、修正制動力指令値Fadj(=Freq-Fest)は、制動力指令値Fcomよりも小さくなる。よって、修正制動力指令値Fadjに基づいて生成される高圧側の修正液圧指令値Pwadjは、最終液圧指令値Pwよりも小さな値となる。言い換えると、要求制動力Freqと推定制動力Festとの偏差を無くすように高圧側の最終液圧指令値Pwが減少補正されるため、要求制動力Freqに対する実際の制動力のずれを抑制できる。
時点t05では、制動力指令値Fcomがゼロとなることにより、修正制動力指令値Fadjは一定となる。
時点t06では、ヨーモーメント指令値Mcomが減少することにより、時点t04と同様、高圧側は減少する修正液圧指令値Pwadjを生成し、低圧側は一定とする修正液圧指令値Pwadjを生成する。
時点t07では、ヨーモーメント指令値Mcomが減少することにより、高圧側と低圧側の修正液圧指令値Pwadjが一致するため、ゲートアウトバルブ3を調圧制御し、モータ制御を行いつつ、低圧側のソレノイドインバルブ4を開弁する。
時点t08では、ヨーモーメント指令値Mcomがゼロとなったことにより、各修正液圧指令値Pwadjはゼロとなる。
【0027】
次に、実施例2の効果を説明する。
実施例2のブレーキ制御装置では、実施例1の効果(1),(2)に加え、以下の効果を奏する。
(3) ブレーキECU102は、要求制動力Freqを生成する要求制動力生成部102cと、推定制動力Festを生成する推定制動力生成部102bと、推定制動力Festと要求制動力Freqとの差分を減少させる修正制動力指令値Fadjを生成する修正制動力指令値生成部102dと、修正制動力指令値Fadjに基づいて高圧側の最終液圧指令値Pwを補正した修正液圧指令値Pwadjを生成する修正液圧指令値生成部102eと、を備える。これにより、車線逸脱防止制御が目標とする制動力に車両の制動力を近づけることができる。
【0028】
〔実施例3〕
まず、実施例3の構成を説明する。
図7は、実施例3のブレーキECU102の制御ブロック図であり、ECU102は、液圧指令値生成部102aと、推定ヨーモーメント生成部(ヨーモーメント推定部)102fと、要求ヨーモーメント生成部102gと、修正ヨーモーメント指令値生成部(ヨーモーメント指令値生成部)102hと、修正液圧指令値生成部(液圧指令ヨーモーメント補正部)102iとを有する。
液圧指令値生成部102aは、制動力指令値Fcomとヨーモーメント指令値Mcomとから各液圧指令値Pwcomを生成する。各液圧指令値Pwcomの生成方法については、図3のステップS01の処理と同様である。
推定ヨーモーメント生成部102fは、各最終液圧指令値Pwで実現される推定ヨーモーメントMestを生成する。まず、各最終液圧指令値PwとブレーキファクターBFw(FL,FR,RL,RR)とブレーキロータ有効半径Rr(FL,FR,RL,RR)とタイヤ動半径Tr(FL,FR,RL,RR)とから、各輪の制動力Fw(FL,FR,RL,RR)を算出する。
Fw=Pw×BFw×Rr/Tr
次に、各輪の制動力Fw(FL,FR,RL,RR)とトレッド幅Bwから各輪が与える車両中心に作用するモーメントMw(FL,FR,RL,RR)を算出する。
Mw=Fw×Bw/2
推定ヨーモーメントMestは、各モーメントMw(FL,FR,RL,RR)を車両中心に反時計回りを正として総和することで求めることができる。
Mest=ΣMw
要求ヨーモーメント生成部102gは、各液圧指令値Pwcomから推定ヨーモーメント生成部102fと同様の方法を用いて要求ヨーモーメントMreqを生成する。
修正ヨーモーメント指令値生成部102hは、ヨーモーメント指令値Mcomと推定ヨーモーメントMestと要求ヨーモーメントMreqとから修正ヨーモーメント指令値Madjを生成する。修正ヨーモーメント指令値Madjは、要求ヨーモーメントMreqと推定ヨーモーメントMestとの差分を求め、その差分をヨーモーメント指令値Mcomに加算して求める。
Madj=Mcom+(Mreq-Mest)
修正液圧指令値生成部102iは、制動力指令値Fcomと修正ヨーモーメント指令値Madjとに基づいて各修正液圧指令値Pwadjを生成する。なお、低圧側の修正液圧指令値Pwadjは不変、つまり最終液圧指令値Pwと同じ値であるため、実際は、高圧側の修正液圧指令値Pwadjのみを変更する。各修正液圧指令値Pwadjの生成方法については、図3のステップS01の処理と同様である。生成された各修正液圧指令値Pwadjは、ステップS04の各最終液圧指令値Pwに代えて用いられる。
【0029】
次に、実施例3の作用を説明する。
[電磁弁作動頻度抑制作用]
減圧時に低圧側のホイルシリンダW/Cの液圧を保持すると、対応する車輪の制動力が液圧指令値Pwcomに応じた車両の制動力よりも大きくなるため、車線逸脱防止制御が目標とする車両挙動と実際の車両挙動との間のずれが大きくなる。
そこで、実施例3では、低圧側のホイルシリンダW/Cの液圧を保持することで生じる推定ヨーモーメントMestを各最終液圧指令値Pwから求めると共に、車線逸脱防止制御が目標とする要求ヨーモーメントMreqを各液圧指令値Pwcomから求め、両者の差分(Mreq-Mest)を制動力指令値Fcomに加算して修正制動力指令値Fadjを生成し、制動力指令値Fcomと修正ヨーモーメント指令値Madjとに基づいて各修正液圧指令値Pwadjを生成する。
これにより、減圧時には低圧側のホイルシリンダW/Cの液圧を保持してソレノイドアウトバルブ5の作動頻度を抑えつつ、車線逸脱防止制御が目標とするヨーモーメントに車両のヨーモーメントを近づけることができる。
【0030】
図8は、実施例3の電磁弁作動頻度抑制作用を示すタイムチャートである。なお、各時点における各バルブおよびモータMの作動は図4に示した実施例1と同じであるため、実施例1と異なる部分のみを説明する。
時点t04では、制動力指令値Fcomが減少することにより、高圧側は減少する最終液圧指令値Pw(=Pwcom)を生成し、低圧側は一定とする最終液圧指令値Pw(≧Pwcom)を生成する。このとき、推定ヨーモーメントMestは要求ヨーモーメントMreqよりも小さくなるため、修正ヨーモーメント指令値Madj(=Mreq-Mest)は、ヨーモーメント指令値Mcomよりも大きくなる。よって、修正ヨーモーメント指令値Madjに基づいて生成される高圧側の修正液圧指令値Pwadjは、最終液圧指令値Pwよりも大きな値となる。言い換えると、要求ヨーモーメントMreqと推定ヨーモーメントMestとの偏差を無くすように高圧側の最終液圧指令値Pwが増加補正されるため、要求ヨーモーメントMreqに対する実際のヨーモーメントのずれを抑制できる。
時点t05では、制動力指令値Fcomがゼロとなることにより、修正制動力指令値Fadjは一定となる。
時点t06では、ヨーモーメント指令値Mcomが減少することにより、時点t04と同様、高圧側は減少する修正液圧指令値Pwadjを生成し、低圧側は一定とする修正液圧指令値Pwadjを生成する。
時点t07では、ヨーモーメント指令値Mcomが減少することにより、高圧側と低圧側の修正液圧指令値Pwadjが一致するため、ゲートアウトバルブ3を調圧制御し、モータ制御を行いつつ、低圧側のソレノイドインバルブ4を開弁する。
時点t08では、ヨーモーメント指令値Mcomがゼロとなったことにより、各修正液圧指令値Pwadjはゼロとなる。
【0031】
次に、実施例3の効果を説明する。
実施例3のブレーキ制御装置では、実施例1の効果(1),(2)に加え、以下の効果を奏する。
(4) ブレーキECU102は、要求ヨーモーメントMreqを生成する要求ヨーモーメント生成部102gと、推定ヨーモーメントMestを生成する推定ヨーモーメント生成部102fと、推定ヨーモーメントMestと要求ヨーモーメントMreqとの差分を減少させる修正ヨーモーメント指令値Madjを生成する修正ヨーモーメント指令値生成部102hと、修正ヨーモーメント指令値Madjに基づいて高圧側の最終液圧指令値Pwを補正した修正液圧指令値Pwadjを生成する修正液圧指令値生成部102iと、を備える。これにより、車線逸脱防止制御が目標とするヨーモーメントに車両のヨーモーメントを近づけることができる。
【0032】
〔実施例4〕
図9は、実施例4のブレーキユニット130の油圧回路図である。
実施例4のブレーキユニット130は、図2に示した実施例1の構成に対し、チェックバルブ131を備えたリザーバ132P,132S(以下、リザーバ132)を採用し、ゲートインバルブ2とチェックバルブ8を廃止した点が異なる。
チェックバルブ131は、マスタシリンダM/Cの液圧が高いときに閉じ、管路14とリザーバ132、およびリザーバ132と管路15とをそれぞれ連通する。これにより、例えば、ABS作動時には、ホイルシリンダW/C内のブレーキ液をリザーバ132へ貯留できると共に、リザーバ132内に貯留されたブレーキ液をポンプPに供給できる。ここで、リザーバ132内に配置されたピストンの有効受圧面積は、チェックバルブ131の有効受圧面積より大きく設定されているため、仮に、マスタシリンダM/Cの液圧が高い場合でも、ポンプPの吸入動作が行われると、チェックバルブ131が上方に押し上げられ、釣り合いのとれた位置で保持される。よって、車線逸脱防止制御等の自動ブレーキ制御時には、マスタシリンダM/C側から適宜ブレーキ液を吸入でき、ホイルシリンダW/Cへ供給できる。
実施例4のブレーキ制御装置にあっては、実施例1の制御内容のうちゲートインバルブに対するものを省いたものと同じ制御を行うことで、実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0033】
〔実施例5〕
図10は、実施例5のブレーキユニット140の油圧回路図である。
実施例5のブレーキユニット140は、マスタシリンダM/Cの圧力を制御可能な液圧制御機構BOを備える点で実施例1と異なる。
液圧制御機構BOは、ドライバの踏力に対し任意の倍力比でホイルシリンダW/Cの圧力を高める倍力装置として機能する。また、車線逸脱防止制御等の自動ブレーキ制御時には、モータMを非制御とし、ゲートアウトバルブ3を開弁、ゲートインバルブ2を開弁した状態で液圧制御機構BOを駆動制御することで、ポンプPによらずホイルシリンダW/Cの液圧を制御できる。
よって、実施例5のブレーキ制御装置にあっては、実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0034】
〔実施例6〕
図11は、実施例6のブレーキユニット150の油圧回路図である。
実施例6のブレーキユニット150は、マスタシリンダM/Cの圧力を制御可能な液圧制御機構BOを備える点で実施例4と異なる。
液圧制御機構BOは、ドライバの踏力に対し任意の倍力比でホイルシリンダW/Cの圧力を高める倍力装置として機能する。また、車線逸脱防止制御等の自動ブレーキ制御時には、モータMを非制御とし、ゲートアウトバルブ3を開弁することで、ポンプPによらずホイルシリンダW/Cの液圧を制御できる。
よって、実施例6のブレーキ制御装置にあっては、実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0035】
〔他の実施例〕
以上、本発明を実施するための形態を実施例に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例に示した構成に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例では、X配管と呼ばれる配管構造を有する油圧回路を用いた例を示したが、前後配管と呼ばれる配管構造を有する油圧回路を用いた場合であっても、実施例と同様の作用効果を得ることができる。
図5の要求制動力Freqを制動力指令値Fcomとしてもよい。また、図7の要求ヨーモーメントMreqをモーメント指令値Mcomとしてもよい。
実施例では、自動ブレーキ制御として車線逸脱防止制御を例に示したが、他の自動ブレーキ制御、例えば、車両挙動安定制御においても同一配管系の2つのホイルシリンダに対する液圧指令値に高低が生じることがあるため、本発明を適用することで、減圧時における減圧弁の作動頻度を低減できる。
実施例2または実施例3に対して実施例4〜6に示したブレーキユニットを適用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
M/C マスタシリンダ
P ポンプ(増圧手段)
W/C ホイルシリンダ
3 ゲートアウトバルブ(制御弁)
4 ソレノイドインバルブ(増圧弁)
5 ソレノイドアウトバルブ(減圧弁)
13 管路(第1油路)
14 管路(第2油路)
16 リザーバ
20 分岐管路(分岐油路)
21 合流管路(合流油路)
102 ブレーキECU(液圧制御手段)
102b 推定制動力生成部(制動力推定部)
102c 要求制動力生成部
102d 修正制動力指令値生成部(制動力指令値生成部)
102e 修正液圧指令値生成部(液圧指令制動力補正部)
102f 推定ヨーモーメント生成部(ヨーモーメント推定部)
102g 要求ヨーモーメント生成部
102h 修正ヨーモーメント指令値生成部(ヨーモーメント指令値生成部)
102i 修正液圧指令値生成部(液圧指令ヨーモーメント補正部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がマスタシリンダに接続する第1油路と、
前記第1油路の他端から分岐し第1ホイルシリンダに接続する第1分岐油路と、
前記第1油路の他端から分岐し第2ホイルシリンダに接続する第2分岐油路と、
前記第1油路中に設けられた制御弁と、
前記第1油路を加圧する増圧手段と、
前記第1分岐油路に設けられた第1増圧弁と、
前記第2分岐油路に設けられた第2増圧弁と、
一端がリザーバに接続する第2油路と、
前記第2油路の他端に合流し前記第1ホイルシリンダに接続する第1合流油路と、
前記第2油路の他端に合流し前記第2ホイルシリンダに接続する第2合流油路と、
前記第1合流油路に設けられた第1減圧弁と、
前記第2合流油路に設けられた第2減圧弁と、
車両状態に応じた第1および第2液圧指令値に基づいて前記第1および第2ホイルシリンダを液圧制御する液圧制御手段と、
を備え、
前記液圧制御手段は、前記第2液圧指令値が減圧指令である場合には、前記第2液圧指令値が前記第1液圧指令値よりも低いとき、前記第2増圧弁および前記第2減圧弁を共に閉じて前記第2ホイルシリンダの液圧を保持するよう液圧制御を行い、その後前記第1および第2液圧指令値が略同一となったとき、前記第2増圧弁を開弁することを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のブレーキ制御装置において、
前記液圧制御手段は、
要求制動力を生成する要求制動力生成部と、
車両の制動力を推定する制動力推定部と、
前記推定制動力と前記要求制動力との差分を減少させる制動力指令値を生成する制動力指令値生成部と、
前記制動力指令値に基づいて前記第1液圧指令値を補正する液圧指令制動力補正部と、
および/または、
要求ヨーモーメントを生成する要求ヨーモーメント生成部と、
車両に作用するヨーモーメントを推定するヨーモーメント推定部と、
前記推定ヨーモーメントと前記要求ヨーモーメントとの差分を減少させるヨーモーメント指令値を生成するヨーモーメント指令値生成部と、
前記ヨーモーメント指令値に基づいて前記第1液圧指令値を補正する液圧指令ヨーモーメント補正部と、
を備えることを特徴とするブレーキ制御装置。
【請求項3】
一端がマスタシリンダに接続する第1油路と、
前記第1油路中に設けられた制御弁と、
前記第1油路の他端から分岐し第1ホイルシリンダに接続する第1分岐油路と、
前記第1油路の他端から分岐し第2ホイルシリンダに接続する第2分岐油路と、
前記第1油路を増圧する増圧手段と、
前記第1分岐油路に設けられた第1増圧弁と、
前記第2分岐油路に設けられた第2増圧弁と、
一端がリザーバに接続する第2油路と、
前記第2油路の他端に合流し前記第1ホイルシリンダに接続する第1合流油路と、
前記第2油路の他端に合流し前記第2ホイルシリンダに接続する第2合流油路と、
前記第1合流油路に設けられた第1減圧弁と、
前記第2合流油路に設けられた第2減圧弁と、
車両状態に応じた前記第1および第2ホイルシリンダの第1および第2液圧指令値が増圧指令である場合、前記制御弁と前記第1および第2増圧弁とを制御し、前記第1および第2ホイルシリンダを増圧する増圧制御手段と、
前記第1および第2液圧指令値が減圧指令であって、前記第1および第2液圧指令値が略同一である場合、前記第1および第2液圧指令値に基づいて前記制御弁を制御し、前記第1および第2分岐油路、前記第1油路を介して前記第1および第2ホイルシリンダ内のブレーキ液を前記マスタシリンダへ戻す第1減圧制御手段と、
前記第2液圧指令値が減圧指令であって、前記第2液圧指令値が前記第1液圧指令値よりも低い場合、前記第2増圧弁を閉じて前記第2ホイルシリンダ内のブレーキ液を保持する第2減圧制御手段と、
前記第1ホイルシリンダに対応する車輪がロック傾向となったとき、前記第1減圧弁を制御し、前記第1ホイルシリンダ内のブレーキ液を前記第1合流油路および前記第2油路を介して前記リザーバ内へ貯留する第3減圧制御手段と、
を備えたことを特徴とするブレーキ制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−168154(P2011−168154A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33271(P2010−33271)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】