説明

ブレーキ力検出装置

【課題】 センサ出力のゼロ点補正が容易で検出出力の安定化を図ることが可能なブレーキ力検出装置を提供することである。
【解決手段】 キャリパブラケットの歪を検出するブレーキ力検出装置であって、キャリパブラケットは車輪支持体に固定される2箇所の固定部と固定部間を連結する連結部を有しており、キャリパブラケットの連結部には固定部を結ぶ線よりもブレーキディスクの半径方向外側に切欠部が形成されている。この切欠部中には連結部に生じる引張方向の変形を受けるように連結部と係合関係でセンサプレートが圧入されている。センサプレートには歪ゲージが貼付されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキによるブレーキ力(制動力)を検出するブレーキ力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の制動制御を行う場合には、制動力が重要な情報の一つである。例えば、ブレーキをかけている時、実際にかかっている制動力が検出できれば、容易に路面の状態を推測することができる。路面の状態が判れば、ABS制御(アンチスキッドブレーキシステム制御)をより正確に行え、安全に短い距離で停止できるようになる。
【0003】
また、車両旋回時又は低摩擦係数(μ)の路面等においてブレーキをかけた時、各車輪にかかる制動力を検出できれば、各車輪の制動力を個別に制御できるようになり、車両の走行制御をより安全に行うことができるようになる。
【0004】
従来は、ディスクブレーキの摩擦パッドの固定支持体の支持係合部にロードセルを設けたり、或いは歪ゲージを貼付したりすることにより、ブレーキ力を検出するディスクブレーキが開発されている。
【0005】
しかし、摩擦パッドの付近は、摩擦パッドとブレーキディスク間の摩擦により発生する熱により高温になり易く、耐熱性、耐環境性、寿命等を考慮すると、ロードセルや歪ゲージの現在の性能では車載部品として不適当である。
【0006】
そこで、熱的影響を受けにくい制動力測定装置が特開平6−123665号で提案されている。この公開公報に開示された制動力測定装置は、ブレーキキャリパとナックルアームの間に介装され、略垂直な一対の梁を有する支持部材と、梁の変位を検出する検出手段とを備えて構成される。
【特許文献1】特開平6−123665号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した特許文献1記載の制動力測定装置によると、熱的影響を受けにくいという利点があるが、制動力測定装置の断面がH型であるため、キャリパブラケットとナックルとの間のブレーキディスク軸方向の距離が大きくなり、測定装置が大型化してしまうという問題がある。また、二つの梁の間に変位検出装置を配置するのも難しい。
【0008】
さらに、特許文献1記載の制動力測定装置では、車両の前進時と後退時とで、ブレーキ力による変形が逆方向に作用するため、歪も引張、圧縮の両方向に生じ、センサ出力のゼロ点補正が困難であるなど検出出力の安定化の課題がある。
【0009】
よって、本発明の目的は、センサ出力のゼロ点補正が容易で検出出力の安定化が可能なブレーキ力検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1記載の発明によると、車輪を回転可能に支持するとともに、サスペンションによって車体に支持される車輪支持体と、車輪とともに回転するブレーキディスクと、該ブレーキディスクの両側に配置される一対の摩擦パッドと、前記摩擦パッドを前記ブレーキディスクに向けて押動する前記ブレーキディスクの軸線と平行な方向に進退する押動部材を内蔵するブレーキキャリパと、前記摩擦パッドの前記ブレーキディスクの回入側及び回出側の両側で前記摩擦パッドを支持するとともに、前記ブレーキキャリパを支持し、前記車輪支持体に固定されたキャリパブラケットと、を備えたブレーキ装置のブレーキ力検出装置であって、前記キャリパブラケットは、前記車輪支持体に固定される少なくとも2箇所の固定部と該固定部間を連結する連結部を有しており、前記少なくとも2箇所の固定部を結ぶ線よりも前記ブレーキディスクの半径方向外側の前記連結部に取り付けられた、該連結部に生じる引張方向の変形を受けるセンサプレートと、前記センサプレートに取り付けられた歪検出手段と、を具備したことを特徴とするブレーキ力検出装置が提供される。
【0011】
請求項2記載の発明によると、車輪を回転可能に支持するとともに、サスペンションによって車体に支持される車輪支持体と、車輪とともに回転するブレーキディスクと、該ブレーキディスクの両側に配置される一対の摩擦パッドと、前記摩擦パッドを前記ブレーキディスクに向けて押動する前記ブレーキディスクの軸線と平行な方向に進退する押動部材を内蔵するブレーキキャリパと、前記摩擦パッドの前記ブレーキディスクの回入側及び回出側の両側で前記摩擦パッドを支持するとともに、前記ブレーキキャリパを支持し、前記車輪支持体に固定されたキャリパブラケットと、を備えたブレーキ装置のブレーキ力検出装置であって、前記キャリパブラケットは、前記車輪支持体に固定される少なくとも2箇所の固定部と該固定部間を連結する連結部を有しており、前記少なくとも2箇所の固定部を結ぶ線よりも前記ブレーキディスクの半径方向内側の前記連結部に取り付けられた、該連結部に生じる圧縮方向の変形を受けるセンサプレートと、前記センサプレートに取り付けられた歪検出手段と、を具備したことを特徴とするブレーキ力検出装置が提供される。
【0012】
請求項3記載の発明によると、請求項1記載の発明において、前記キャリパブラケットの前記連結部には、前記少なくとも2箇所の固定部を結ぶ線よりも前記ブレーキディスクの半径方向外側に該ブレーキディスクの軸線方向に切欠いた切欠部が形成されており、前記センサプレートは前記切欠部に挿入されていることを特徴とするブレーキ力検出装置が提供される。
【0013】
請求項4記載の発明によると、請求項1記載の発明において、前記センサプレートは、前記連結部の前記ブレーキディスクの半径方向外側側面に、該連結部の長手方向に離間した少なくとも2箇所の固定部で固定されていることを特徴とするブレーキ力検出装置が提供される。
【0014】
請求項5記載の発明によると、請求項2記載の発明において、前記キャリパブラケットの前記連結部には、前記少なくとも2箇所の固定部を結ぶ線よりも前記ブレーキディスクの半径方向内側に該ブレーキディスクの軸線方向に切欠いた切欠部が形成されており、前記センサプレートは前記切欠部に挿入されていることを特徴とするブレーキ力検出装置が提供される。
【0015】
請求項6記載の発明によると、請求項2記載の発明において、前記センサプレートは、前記連結部の前記ブレーキディスクの半径方向内側側面に、該連結部の長手方向に離間した少なくとも2箇所の固定部で固定されていることを特徴とするブレーキ力検出装置が提供される。
【0016】
請求項7記載の発明によると、請求項3又は5記載の発明において、前記センサプレートは前記ブレーキディスクの半径方向に抜け止めされるように前記切欠部に係合していることを特徴とするブレーキ力検出装置が提供される。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明によると、センサプレートが連結部に生じる引張方向の変形を受けるように連結部に取り付けられているため、車両の前進時及び後退時のいずれもブレーキ力によるセンサプレートの変形は引張の一方向であり、センサ出力のゼロ点補正が容易となり、検出出力の安定化を図ることができる。また、より大きな歪が生じる部位でブレーキ力を検出するので、検出の精度が高い。
【0018】
請求項2記載の発明によると、センサプレートが連結部に生じる圧縮方向の変形を受けるように連結部に取り付けられているので、車両の前進時及び後退時のいずれもブレーキ力によるセンサプレートの変形は圧縮の一方向であり、センサ出力のゼロ点補正が容易となり、検出出力の安定化を図ることができる。また、より大きな歪が生じる部位でブレーキ力を検出するので、検出の精度が高い。
【0019】
請求項3記載の発明によると、請求項1に記載した効果に加えて、切欠部中に予め組み立てておいたセンサユニットを圧入するだけでよく、製造性及び組立性に優れており、大量生産に適している。
【0020】
請求項4記載の発明によると、センサプレートは連結部のブレーキディスクの半径方向内側側面に、該連結部の長手方向に離間した少なくとも2箇所の固定部で固定されるため、請求項1記載の効果に加えて、センサプレートの固定が容易であるという効果を有している。
【0021】
請求項5記載の発明によると、請求項2記載の効果に加えて、切欠部中に予め組み立てておいたセンサユニットを圧入するだけでよいため、製造性及び組立性に優れており、大量生産に適している。
【0022】
請求項6記載の発明によると、センサプレートは連結部のブレーキディスクの半径方向内側側面に、該連結部の長手方向に離間した少なくとも2箇所の固定部で固定されているため、請求項2記載の効果に加えて、センサプレートの固定が容易であるという効果を有している。
【0023】
請求項7記載の発明によると、センサプレートがブレーキディスクの半径方向に抜け止めされるように切欠部に係合されているので、連結部に大きな変形が生じてもセンサプレートが抜け出ることがなく、連結部に安定して保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。図1は本発明実施形態のブレーキ力検出装置を具備したディスクブレーキの外観斜視図である。図2は図1の左側面図である。
【0025】
図1及び図2に示すように、ブレーキディスク(ディスクロータ)2は図示しない車輪に固定されており、車輪とともに回転する。4はナックル(車輪支持体)であり、車輪を回転可能に支持するとともに、図示しないサスペンションを介して車体に連結されている。
【0026】
8はキャリパブラケットであり、ボルト10,12によりナックル4に取り付けられている。キャリパブラケット8は、ブレーキディスク2の回入側及び回出側の両側でブレーキディスク2の軸方向両側に配置される一対の摩擦パッド18,20を支持している。
【0027】
キャリパブラケット8には、2本のボルト14,16によりブレーキキャリパ6に固定された2本のスライドピン15,17が摺動可能に嵌合されており、このブレーキキャリパ6は、図3に示すように、ブレーキディスク2の軸線と平行な方向に進退して摩擦パッド18,20をブレーキディスク2に向けて押し付けるピストン(押動部材)24を内蔵している。
【0028】
ブレーキキャリパ6はホイールシリンダ22を一体的に有しており、ホイールシリンダ22内にはピストン24が嵌合されている。ピストン室26には、液圧供給口28を介してブレーキマスタシリンダからの液圧が供給される。
【0029】
ブレーキディスク2はハブ3に連結されている。液圧供給口28を介してブレーキマスタシリンダから液圧がピストン室26内に供給されると、ピストン24が図3で左方向に押し出されてパッド18がブレーキディスク2に押し付けられる。
【0030】
ピストン24がパッド18をブレーキディスク2に押し付けた反力でブレーキキャリパ6が右方向に移動し、反対側のパッド20もブレーキディスク2に押し付けられ、ブレーキディスク2の回転を制動する。
【0031】
図4を参照すると、本発明第1実施形態のブレーキ力検出装置の要部が示されている。キャリパブラケット8はボルト10,12が螺合されるネジ穴32,34とスライドピン15,17が嵌合される嵌合穴36,38を有している。
【0032】
キャリパブラケット8は概略U形状をしており、一対のブレーキ荷重受け部8a,8bと、ブレーキ荷重受け部8a,8bを連結する内側連結部(インナーブリッジ部)8cと、図示しない外側連結部(アウターブリッジ部)とから構成される。キャリパブラケット8は、ブレーキディスク2の回転中心とピストン(押動部材)24の中心を結ぶ線ついて略線対称の形状をしている。
【0033】
内側連結部(インナーブリッジ部)8cは二つのネジ穴32,34の間に伸長しており、この内側連結部8cには二つのネジ穴32,34を結ぶ線よりもブレーキディスク2の半径方向外側の箇所にブレーキディスク2の軸線方向に切欠いた切欠部40が形成されている。この切欠部40はキャリパブラケット8の内側連結部8cに一対の係合突起42a,42bを残すように形成されている。
【0034】
切欠部40にはセンサユニット43が圧入されている。センサユニット43は、キャリパブラケット8の係合突起42a,42bに密接に係合する左右一対の係合突起46a,46bを有するセンサプレート44と、センサプレート44に貼付された歪ゲージ48と、歪ゲージ48の出力を増幅するアンプ50とから構成される。
【0035】
車両前進時にブレーキがかけられた場合には、パッド18,20がブレーキディスク2を圧接しながらブレーキディスクが回転するため、パッド18,20がブレーキディスク2に引き摺られてブレーキディスクの回転方向に移動し、キャリパブラケット8のブレーキ荷重受け部8bに圧接するため、内側連結部8cのブレーキディスク2の半径方向外側部分には引張荷重が発生する。
【0036】
この引張荷重により、センサプレート44の係合突起46a,46bが内側連結部8cに形成された係合突起42a,42bにより引張られるため、センサプレート44には引張方向の変形が生じる。
【0037】
この変形は歪ゲージ48により検出され、歪ゲージ48に接続されたアンプ50で歪ゲージ48の出力を増幅することにより、センサプレート44の歪量に基づいて制動力が検出される。
【0038】
センサプレート44の歪は、ブレーキトルクがキャリパブラケット8のブレーキ荷重受け部8b及び内側連結部8cを介して伝達されたときにのみ発生するため、上下力や横方向の力に影響され難く、精度良くブレーキ力を検出可能である。
【0039】
車両後退時にブレーキがかけられた場合には、ブレーキディスク2は前進時と反対方向に回転するため、パッド18,20はブレーキディスク2に引き摺られてブレーキ荷重受け部8aに圧接する。
【0040】
よって、後退時にもネジ穴32,34を結ぶ線よりもブレーキディスク2の半径方向外側の内側連結部8cには引張荷重が発生する。この引張荷重により、センサプレート44は引張方向の変形を受け、歪ゲージ48によりこの変形量が検出される。
【0041】
よって、本実施形態によると、車両前進時及び後退時のいずれもブレーキ力によるセンサプレート44の変形は、引張の一方向であるため、センサ出力のゼロ点補正が容易となり、検出出力の安定化を図ることができる。
【0042】
図5は本発明第2実施形態のブレーキ力検出装置の要部を示している。本実施形態では、ネジ穴32,34を結ぶ線よりもブレーキディスク2の半径方向内側の内側連結部8cに切欠部51を形成し、この切欠部51中にセンサユニット53が圧入されている。
【0043】
センサユニット53は、上述した第1実施形態と同様に、切欠部51中に圧入されたセンサプレート54と、センサプレート54に貼付された歪ゲージ48と、歪ゲージ48に接続されたアンプ50とから構成される。
【0044】
切欠部51は内側連結部8cに左右一対の係合突起52a,52bを残すように形成される。よって、センサプレート54が切欠部51中に圧入されると、センサプレート54の突起54a,54bが内側連結部8cに形成された係合突起52a,52bに係合するため、センサプレート54がブレーキディスク2の半径方向に抜け出ることが防止される。
【0045】
本実施形態では、センサユニット53がネジ穴32,34を結ぶ線よりもブレーキディスク2の半径方向内側に形成されて切欠部51中に圧入されているため、車両の前進時及び後退時ともブレーキがかけられると、センサプレート54は圧縮方向の変形を受ける。よって、上述した第1実施形態と同様にセンサ出力のゼロ点補正が容易となり、検出出力の安定化を図ることができる。
【0046】
第1及び第2実施形態のセンサプレート44,54を切欠部40,51中に圧入する代わりに、歪ゲージ48をキャリパブラケット8の内側連結部8cに貼付しても、ブレーキ時に歪ゲージ48に引張方向のみの変形或いは圧縮方向のみの変形を発生させることはできる。しかし、この場合には、複雑な形状をした部品であるキャリパブラケット8に歪ゲージ48を直接貼付しなければならず、製造性が悪いという欠点がある。
【0047】
本発明の第1及び第2実施形態は製造性及び組立性を考慮して開発されたもので、予めキャリパブラケット8に切欠部40,51を形成しておき、この切欠部40,51中に予め組立てておいたセンサユニット43,53を圧入するだけでよく、製造性及び組立性に優れており、大量生産に適している。
【0048】
尚、前述の第1、第2実施形態の歪ゲージ48に代えて、他の歪検出手段をセンサプレート44,54に取り付けるようにしてもよい。
【0049】
図6は本発明第3実施形態のブレーキ力検出装置の要部を示している。図7は図6の7−7線断面図、図8は図6の平面図である。図8を参照すると明らかなように、キャリパブラケット8は一対のブレーキ荷重受け部8a,8bと、ブレーキ荷重受け部8a,8bを連結する内側連結部(インナーブリッジ部)8cと、外側連結部(アウターブリッジ部)8dとから構成される。
【0050】
キャリパブラケット8の内側連結部8cのブレーキディスク2の半径方向外側側面には凹部55が形成されている。この凹部55に一対のボルト58,60によりセンサプレート56が固定されている。図8に示すように、センサプレート56には歪ゲージ48が貼付されており、歪ゲージ48はその出力を増幅するアンプ50に接続されている。
【0051】
車両前進時にブレーキがかけられた場合には、パッド18,20がブレーキディスク2を圧接しながらブレーキディスクが回転するため、パッド18,20がブレーキディスク2に引き摺られてブレーキディスクの回転方向に移動し、キャリパブラケット8のブレーキ荷重受け部8bに圧接する。
【0052】
キャリパブラケット8はネジ穴32,34にボルト10,12を螺合することによりナックル4に固定されているため、内側連結部8cのブレーキディスク2の半径方向外側側面に固定されたセンサプレート56には引張荷重が発生し、この引張荷重によりセンサプレート56には引張方向の変形が生じる。
【0053】
この変形は歪ゲージ48により検出され、歪ゲージ48に接続されたアンプ50で歪ゲージ48の出力を増幅することにより、センサプレート56の歪量に基づいて制動力が検出される。
【0054】
センサプレート56の歪は、ブレーキトルクがキャリパブラケット8のブレーキ荷重受け部8b及び内側連結部8cを介して伝達されたときにのみ発生するため、上下力や横方向の力に影響され難く、精度よくブレーキ力を検出可能である。
【0055】
車両後退時にブレーキがかけられた場合には、ブレーキディスク2は前進時と反対方向に回転するため、パッド18,20はブレーキディスク2に引き摺られてブレーキ荷重受け部8aに圧接する。
【0056】
よって、後退時にもネジ穴32,34を結ぶ線よりもブレーキディスク2の半径方向外側の内側連結部8cには引張荷重が発生する。この引張荷重により、センサプレート56は引張方向の変形を受け、歪ゲージ48によりこの変形量が検出される。
【0057】
よって、本実施形態によると、上述した第1実施形態と同様に、車両前進時及び後退時のいずれも、ブレーキ力によるセンサプレート56の変形は引っ張りの一方向であるため、センサ出力のゼロ点補正が容易となり、検出出力の安定化を図ることができる。
【0058】
図9は本発明第4実施形態のブレーキ力検出装置の要部を示している。本実施形態では、キャリパブラケット8の内側連結部8cのブレーキディスク2の半径方向内側側面に凹部61を形成し、この凹部61に一対のボルト64,66でセンサプレート62を固定する。センサプレート62には図8に示した第3実施形態と同様に歪ゲージ48が貼付されており、歪ゲージ48はアンプ50に接続されている。
【0059】
本実施形態では、センサプレート62がネジ穴32,34を結ぶ線よりもブレーキディスク2の半径方向内側の内側連結部8cの内側側面に固定されているため、車両の前進時及び後退時ともブレーキがかけられると、センサプレート62は圧縮方向の変形を受ける。よって、上述した第1乃至第3実施形態と同様にセンサ出力のゼロ点補正が容易となり、検出出力の安定化を図ることができる。
【0060】
上述した第1及び第3実施形態では、車両の前進時及び後退時ともブレーキがかけられると歪ゲージ48には引張方向のみの歪が発生し、第2及び第4実施形態では、歪ゲージ48には圧縮方向のみの歪が発生する。
【0061】
よって、本発明のブレーキ力検出装置では、後退時にブレーキがかけられたときの歪ゲージ48の出力は、図10に示すように前進時にブレーキがかけられたときの歪ゲージ48の出力と縦軸について対称となる。
【0062】
よって、前進時には歪ゲージが引張方向の変形を受け、後退時には圧縮方向の変形を受ける場合に比較して、歪ゲージの分解能を約2倍に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明第1実施形態のブレーキ力検出装置を具備したディスクブレーキの外観斜視図である。
【図2】図1のディスクブレーキの左側面図である。
【図3】ディスクブレーキの概略断面図である。
【図4】本発明第1実施形態のブレーキ力検出装置の要部を示す図である。
【図5】本発明第2実施形態のブレーキ力検出装置の要部を示す図である。
【図6】本発明第3実施形態のブレーキ力検出装置の要部を示す図である。
【図7】図6の7−7線断面図である。
【図8】図6の平面図である。
【図9】本発明第4実施形態のブレーキ力検出装置の要部を示す図である。
【図10】本発明実施形態のブレーキトルクと歪ゲージ出力の関係を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
2 ブレーキディスク(ディスクロータ)
4 ナックル
6 ブレーキキャリパ
8 キャリパブラケット
8a,8b ブレーキ荷重受け部
8c 内側連結部(インナーブリッジ)
8d 外側連結部(アウターブリッジ)
10,12,14,16 ボルト
18,20 パッド
40,51 切欠部
43,53 センサユニット
44,54,56,62 センサプレート
48 歪ゲージ
50 アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪を回転可能に支持するとともに、サスペンションによって車体に支持される車輪支持体と、
車輪とともに回転するブレーキディスクと、
該ブレーキディスクの両側に配置される一対の摩擦パッドと、
前記摩擦パッドを前記ブレーキディスクに向けて押動する前記ブレーキディスクの軸線と平行な方向に進退する押動部材を内蔵するブレーキキャリパと、
前記摩擦パッドの前記ブレーキディスクの回入側及び回出側の両側で前記摩擦パッドを支持するとともに、前記ブレーキキャリパを支持し、前記車輪支持体に固定されたキャリパブラケットと、
を備えたブレーキ装置のブレーキ力検出装置であって、
前記キャリパブラケットは、前記車輪支持体に固定される少なくとも2箇所の固定部と該固定部間を連結する連結部を有しており、
前記少なくとも2箇所の固定部を結ぶ線よりも前記ブレーキディスクの半径方向外側の前記連結部に取り付けられた、該連結部に生じる引張方向の変形を受けるセンサプレートと、
前記センサプレートに取り付けられた歪検出手段と、
を具備したことを特徴とするブレーキ力検出装置。
【請求項2】
車輪を回転可能に支持するとともに、サスペンションによって車体に支持される車輪支持体と、
車輪とともに回転するブレーキディスクと、
該ブレーキディスクの両側に配置される一対の摩擦パッドと、
前記摩擦パッドを前記ブレーキディスクに向けて押動する前記ブレーキディスクの軸線と平行な方向に進退する押動部材を内蔵するブレーキキャリパと、
前記摩擦パッドの前記ブレーキディスクの回入側及び回出側の両側で前記摩擦パッドを支持するとともに、前記ブレーキキャリパを支持し、前記車輪支持体に固定されたキャリパブラケットと、
を備えたブレーキ装置のブレーキ力検出装置であって、
前記キャリパブラケットは、前記車輪支持体に固定される少なくとも2箇所の固定部と該固定部間を連結する連結部を有しており、
前記少なくとも2箇所の固定部を結ぶ線よりも前記ブレーキディスクの半径方向内側の前記連結部に取り付けられた、該連結部に生じる圧縮方向の変形を受けるセンサプレートと、
前記センサプレートに取り付けられた歪検出手段と、
を具備したことを特徴とするブレーキ力検出装置。
【請求項3】
前記キャリパブラケットの前記連結部には、前記少なくとも2箇所の固定部を結ぶ線よりも前記ブレーキディスクの半径方向外側に該ブレーキディスクの軸線方向に切欠いた切欠部が形成されており、
前記センサプレートは前記切欠部に挿入されていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ力検出装置。
【請求項4】
前記センサプレートは、前記連結部の前記ブレーキディスクの半径方向外側側面に、該連結部の長手方向に離間した少なくとも2箇所の固定部で固定されていることを特徴とする請求項1記載のブレーキ力検出装置。
【請求項5】
前記キャリパブラケットの前記連結部には、前記少なくとも2箇所の固定部を結ぶ線よりも前記ブレーキディスクの半径方向内側に該ブレーキディスクの軸線方向に切欠いた切欠部が形成されており、
前記センサプレートは前記切欠部に挿入されていることを特徴とする請求項2記載のブレーキ力検出装置。
【請求項6】
前記センサプレートは、前記連結部の前記ブレーキディスクの半径方向内側側面に、該連結部の長手方向に離間した少なくとも2箇所の固定部で固定されていることを特徴とする請求項2記載のブレーキ力検出装置。
【請求項7】
前記センサプレートは、前記ブレーキディスクの半径方向に抜け止めされるように前記切欠部に係合していることを特徴とする請求項3又は5記載のブレーキ力検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−290680(P2007−290680A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252973(P2006−252973)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】