説明

プラズマアークコーティング用装置および方法

移動する基材の側面をコーティングするためのシステム。このシステムは、プラズマ供給源のアレイ、このアレイの上流に位置する第1複数のオリフィスおよびこのアレイの下流に位置する第2複数のオリフィスを含む。コーティング反応物を各オリフィスからそのオリフィスに関連するプラズマ供給源から出るプラズマジェットの中へ噴射する。制御装置がこの基材の輪郭およびこのアレイに対する基材の位置に従ってこのコーティング反応物の流れおよびこれらのオリフィスへのフラッシュガスの流れを調節する。この基材の反対の側面をコーティングするために追加のプラズマアレイおよびオリフィスの組を使ってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には基材をコーティングするためのシステムおよび方法に関する。更に具体的には、本発明は、基材上に作るコーティングを向上するためおよびこのコーティングの形成に使用する反応物の量を節約するために反応物の導入を制御する、プラズマコーティングシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、本発明を適用できる、プラズマコーティングシステムは、連続して結合してあり且つその中を基材が連続して通過する、種々のステーションまたは領域を含む。これらのステーションには、負荷ロック、加熱ステーション、一つ以上のコーティングステーションおよび出口ロックがあるかも知れない。このコーティングステーションには、膨張熱プラズマ(ETP)供給源のような、一つ以上のプラズマ供給源、および反応物を噴射するための関連する反応物マニホールドがある。このコーティングプロセス中、コーティング反応物をこのプラズマ供給源から出るプラズマジェットの中に噴射するので、基材にこのプラズマ供給源を通過させる。基材ができたプラズマプリュームを通過すると、コーティングがこれらの基材の表面上に付着する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
典型的には、コーティングステーションは、コーティングプロセス中に反応物を連続的に供給する。これは、一般的に余分なスプレー、過剰コーティング付着並びに反応物の過剰使用および浪費になる。
【0004】
その上、或るシステムでは、プラズマ供給源が、基材の両側のコーティングを可能にするために、コーティングステーションの対向する側に位置する。その様なコーティングステーションでは、余分なスプレーを最少化または防ぐように、対向するプラズマプリュームのバランスを取ることは達成することが困難であり且つ一般的に生産作業中に一貫して維持することはできない。その結果、これらのプリュームを基材によって完全に遮断しないとき、対向するプラズマプリュームが混ざるかも知れない。これは更に特定の先駆物質が基材の意図しない側、例えば、その特定の先駆物質を担持するプラズマプリュームを発生したプラズマ供給源に直接対向しない基材の側に凝結する結果になるかも知れない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一般的に、本発明は、基材をコーティングするためのインライン、連続プラズマコーティングシステムに関する。そのようなシステムでは、一連の基材を逐次、言換えれば、縦一列で連続的にコーティングステーションを通過させる。このプラズマコーティングシステムは、プラズマ供給源のアレイ(プラズマアレイ)、このプラズマアレイの上流に位置する複数のマニホールド、およびこのプラズマアレイの下流に位置する複数のマニホールドを含む。一つ以上のコーティング反応物をこれらのマニホールドのオリフィスから、およびこのプラズマアレイのプラズマ供給源から出るプラズマジェットの中へ噴出する。制御装置が各マニホールドを通るコーティング反応物の流れおよびフラッシュガスの流れを基材の形状に従っておよび/またはプラズマ供給源に対する基材の位置に従って調節する。第2構成のマニホールドおよびプラズマ供給源も使い且つ制御して基材の第2側または対向する面にコーティングを付着させてもよい。
【0006】
更なる特徴および利点は、以下の詳細な説明、請求項および添付の図面から当業者には容易に明白となろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の原理に従って基材をコーティングするためのシステムの概略平面図である。
【図2A】図1のシステムのコーティングステーションを通り概略的に描かれた端面図である。
【図2B】図2Aで全体として線2B−2Bに沿って見たコーティングステーションの概略側面図である。
【図3】基材を図1のシステムを通して進めるときに任意に使ってもよい、関連するスペース充填物と共に基材を示す。
【図4】図2Aおよび2Bで見られるコーティングステーション用のコーティング反応物マニホールド供給組立体を示す。
【図5A】図4で見られるコーティング反応物マニホールド供給組立体の円5内の構成のための代替弁構成を示す。
【図5B】図4で見られるコーティング反応物マニホールド供給組立体の円5内の構成のための代替弁構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
さて、図面を参照すると、本発明の原理による、基材コーティングシステム10が図1に概略的に示してある。この基材コーティングシステム10は、負荷ロック12、基材加熱領域14、一つ以上の基材コーティング領域16および出口ロック18を含み、それらは全て直列且つ気密式に結合してある。それで、種々のステーションおよび領域は、このコーティングプロセスに資する適当な真空圧を維持するために複数の真空ポンプ(図示せず)によって排気してもよい。
【0009】
この基材コーティングシステム10は、基材20にこのシステム10を連続的に通過させるので、複数の基材20(二つの基材が示してある)をコーティングするために使うのが好ましい。
【0010】
当業者には明白なように、これらの基材それ自体は多種多様な材料で作ってもよい。代表的実施例では、基材20が熱可塑性プラスチック材料で作ってある。そのような材料には、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリビニルアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミドおよびポリ塩化ビニルがあるがそれらに限らない。基材20用に他の適当な材料には、ポリカーボネート樹脂、ポリエステルカーボネート、ポリエステルカーボネート、アクリルポリマ、ポリエステル、ポリウレタン等がある。この基材20を作ってもよい更なる材料の例には、セラミック、ガラス、金属または半導体がある。
【0011】
基材20は、構成材料に依って種々の手法によって作ってもよい。そのような手法には、無制限に、射出成形、冷間成形、真空成形、押出し、ブロー成形、トランスファー成形、圧縮成形、および熱成形がある。その上、基材20は、事実上、湾曲していても、平坦でも、剛性でもまたは柔軟でもよい。
【0012】
このシステム10を使用する際、基材20を基材キャリヤ24上に置き、それはラック、ハンガまたはその他の装置でもよい。そのような装置はこの業界で知られ、従って、ここに更に詳しくは説明しない。基材キャリヤ24は、負荷ロック12に入り且つこの負荷ロック12の中でまたはその前に、このキャリヤ24および基材20をこのコーティングシステム10を通して運ぶ、矢印25で示すコンベヤと係合する。明らかに、このキャリヤ24および基材20をこのコーティングシステム10を通して運ぶために適するどんな機構を使ってもよい。
【0013】
一旦基材加熱領域14に運び込むと、基材20をコーティングに適する温度に加熱する。これを達成するために、この基材加熱領域14は、加熱ユニット26を含み、その二つを示す。これらの加熱ユニット26は、基材加熱領域14内またはその外部に、その側壁にまたはそれに沿って、またはこのシステム10の全体の設計によって決る場所に位置する。種々の種類の加熱ユニット26を使ってもよく、それには赤外線ヒータ、マイクロ波ヒータ、抵抗ヒータ、非反応性プラズマプリューム等があるがそれらに限らない。
【0014】
基材加熱領域14を通過してから、基材キャリヤ24は、基材コーティング領域16に入り、そこではコーティングを基材20上に付着させる。一旦基材20をコーティングすると、次にそれらを出口ロック18へ運び、そこでそれらをこのコーティングシステム10から解放する。
【0015】
多種多様なコーティング方法論および手順を本発明と共に使ってもよいが、図示するように、この基材コーティング領域16は、一つ以上の膨張熱プラズマ(ETP)供給源アレイ28を含み、それらはこのコーティング領域16に互いに向合う対で配置してもよい。これらのETP供給源アレイ28は、それら自体のポート30上に、または基材コーティング領域16の側壁上に位置する共通マニホールドに取付けてある。
【0016】
各ETP供給源アレイ28は、不活性ガスを供給するのが好ましく、それを加熱し、部分的にイオン化し、およびそれは、アレイ28からプラズマジェットして基材コーティング領域16の中へ出て、それを図1に対向するアレイ28からの組合わせまたは共通プラズマプリューム32として示す。このコーティングシステム10に利用してもよい不活性ガスの例には、アルゴン、ヘリウム、ネオン等があるがそれらに限らない。
【0017】
コーティング反応物および酸化ガスは、それぞれ、コーティング反応物およびガス噴射マニホールド34、36から噴射する。蒸気の形で制御した比率で噴射した酸化ガスおよびコーティング反応物は、プラズマジェットの中へ拡散し、それは基材コーティング領域16の中へ膨張し且つそこを通過する基材20の方へ向けられる。酸化ガスの例には、酸素および亜酸化窒素、またはその任意の組合わせがあるがそれらに限定されない。コーティング反応物の例には、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ビニルトリメチルシラン(VTMS)、ジメチルジメトキシシラン(DMDMS)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(D4)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン(V−D4)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)等のような有機シリコーンがあるがそれらに限定されない。
【0018】
次に図2Aおよび図2Bを参照して、システム10の種々の構成は、活性化した反応物、または幾つかの実施例では、活性化した複数の反応物が、基材20がこのコーティング領域16を前進するとき、その片側または両側にぶつかることを伴う。基材20は、車輌のウインドウ、ルーフパネルまたはその他の部品の形をしていてもよく、ポリカーボネートで作ってあるのが好ましく且つ加熱ユニット26は、この基材20がコーティング領域16に入る前に適切な温度であることを保証する。もし必要なら、コーティング領域16に入る前の輸送中のあらゆる熱損失を補うためにこのコーティング領域16に追加のヒータを使ってもよい。
【0019】
本発明によるシステム10は、基材の輪郭が異なるためまたは基材コンベヤシステムが複雑な形状に対応するため若しくは静的加熱工程と走査コーティング工程の組合わせに対応するために基材の独立の運動若しくは関連付けもたらすため、連続する基材20の隣接する前後縁が互いに入れ子になっていないとき起る、連続する基材間に隙間があるときのコーティング領域16の真空室壁上の余分なコーティング材料を最少化する。
【0020】
このコーティング領域16は、このコーティング領域16の各側に複数のプラズマ供給源38(非限定的例として六つを示す)を備える真空室である。これらのマニホールド部34、36は、更に上流か下流マニホールド部として描いてもよく;上流および下流という用語は、プラズマ供給源38に対するマニホールド部の位置および基材20の移動方向(図2Bに矢印40によって示す)を参照する。各マニホールド部34、36は、一つ以上のプラズマ供給源38に関連する。それで、図2Bに示すコーティング領域16の各側は、三つの上流コーティング反応物および酸化ガスマニホールド部34、36並びに三つの下流コーティング反応物および酸化ガスマニホールド部34、36を備える。コーティング領域16の種々のマニホールド部34は、互いに独立にコーティング反応物を噴射する。同様に、簡単な制御機構を使って酸化ガスマニホールド部36を個々にまたは二つ以上のマニホールド部36の種々の組合わせでオン・オフに切替えることができる。
【0021】
図2Bに示すように、前進する基材20の前縁42が最初に上流マニホールド部34、36を通過し、次にETPプラズマアレイ28およびその個々のプラズマ供給源38を、および最後に下流マニホールド部34、36を通過する。従って、後縁44が下流マニホールド部34、36を通過する基材20の最後の部分である。
【0022】
本発明のある実施例では、図3に見られるように、充填物46も1組のタブ48によってキャリヤおよび/またはコンベヤ25に取付けてある。この充填物46は、それが基材20の縁の実質的延長部であるように基材20に密接している。この充填物46は、例えば、ポリカーボネートまたはアルミニウムで作った、この基材20の周りに近接した縁を形成する、使い捨てまたは再利用可能部品である。そのような構成で、この充填物46は、外部熱およびコーティング材料の収集器の役を務める。それでこの充填物は、この基材20全体に亘る均一な温度およびコーティング厚さを助長する。特別な実施例で、この基材20全体に亘る温度は、コーティング領域16の入口で約65°C±10°Cであり、コーティング厚さは、コーティング領域16の後で約2μmと3μmの間であり、およびコンベヤ25が基材20をこのシステム10を通して約2.5cm/sの速度で動かす。先に記したように、マニホールドを通るコーティング反応物の連続流が基材間の材料の浪費を生じる。その上、その連続流がこのシステム10に関する余分なクリーニングおよび保守負担を作る。
【0023】
システム10の種々の実施例は、連続する基材20間(または基材20と充填物46の間)に大きい隙間があるとき、基材20の中心に比べてコーティング厚さが大きくなりがちである、基材の縁での比較的厚いプラズマコーティングの傾向を減らすことができる。コーティング厚さに推奨範囲があるので、コーティングプロセスをより丈夫にするように基材全域に亘る厚さ変動性を最小にすることが望ましい。薄すぎるコーティングは、耐摩耗性を危うくするかも知れない。縁での比較的厚いコーティングは、多分基材20の縁での丈夫でない浸水性能への寄与因子である。
【0024】
図4を参照して、システム10は、更に、マニホールド部34が互いに独立に且つその前部でそれを通過する基材20の前縁および後縁42、44の輪郭に従って作動できるように、上流および下流マニホールド部34を指示する制御装置50を含む。
【0025】
この制御装置50は、個々のマニホールド部34へのコーティング反応物の流れをマニホールド部34の特定の一つに対する基材前縁および後縁42、44の位置に従って調節する。特に、制御装置50は、三方弁52を作動し、その一つは各マニホールド部34に関連する。この弁52は、コーティング反応物を計量コーティング反応物供給源54から導管56、58を介してそれぞれのコーティング反応物マニホールド部34へ導く。複数のマニホールド部34が共有する、計量コーティング反応物供給源54は、このコーティング反応物を蒸気の形で提供し、そうする際に加圧コーティング反応物供給源68および蒸気質量流量制御装置70を利用する。その代りとしては、弁52がこのコーティング反応物を関連するコーティング反応物マニホールド部34からそらせる。この弁52の制御は、マニホールド部34およびそれらの関連する噴出オリフィス60への流れの調節を、全て計量コーティング反応物供給源54からのコーティング反応物の流れを途切れなく続けながらもたらす。コーティング反応物のそらされた流れは、導管62を介して、比較的低温の凝縮容器64の中へ導いてもよく、それも複数の弁52およびコーティング反応物マニホールド部34が共有することができる。この凝縮容器64は、蒸気の形のコーティング反応物を凝縮し、この凝縮したコーティング反応物は、任意の導管66を介して計量コーティング反応物供給源54の中へ任意に再利用し戻すことができる。要するに、弁52は、計量コーティング反応物供給源54からのコーティング反応物の流れをマニホールド部34または再生用凝縮容器64へ導くことによってそれぞれ個々のコーティング反応物マニホールド部34へのコーティング反応物の流れを調節する。
【0026】
コーティング反応物の流れをマニホールド部34から離して凝縮容器64の中へそらせるように弁52を切替えた後、導管58の中の残留蒸気がマニホールド部34の中へ流れ続けられることは明白だろう。しかし、これは、コーティング反応物蒸気の残量流れがコーティング反応物の流れの調節に対するこのシステムの有効反応速度を制限するので望ましくない。言換えれば、弁52は、コーティング反応物がマニホールド部34へ入るのを瞬間的には停止しない。コーティング領域16の中へのコーティング反応物の流れの調節に関連するもう一つの問題は、コーティング領域16へ供給するコーティング反応物の突然の欠如がコーティング領域16の真空室内のガス負荷の変調を来すことがあり、それによってコーティングプロセス中にコーティング領域16内の圧力の望ましくない変調を来すことがある。
【0027】
上記の予想される問題の両方を解消するために、本発明のシステム10は、各コーティング反応物マニホールド部34に関連する第2三方弁72を含む。この弁72は、アルゴン、酸素またはその両方のような、フラッシュガスを計量フラッシュガス供給源74から先に議論した弁52の下流の導管58に結合した導管76を通して導き且つその量率を制御する。計量コーティング反応物供給源54同様、この計量供給源74は、加圧フラッシュガス供給源78およびフラッシュガス質量流量制御装置80を含む。制御装置50の指示の下で、弁72の開放を、計量フラッシュガス供給源74からのフラッシュガスの流れが計量コーティング反応物供給源54からのコーティング反応物の流れに置き換わるように弁52の動作に関連して制御する。計量フラッシュガス供給源74からのフラッシュガスの流れは、それが置き換わる計量コーティング反応物供給源54からのコーティング反応物の流れにほぼ等しいのが好ましい。制御装置50は、それが弁52にコーティング反応物を凝縮容器64へそらせるように指示するときに弁72を開くように指示するので、コーティング領域16内の圧力変動の望ましくない問題は最小限になる。その上、そのようなフラッシュガスの流れを供給することもマニホールド部34に繋がる導管58から残留コーティング反応物を一掃し、それによってこのシステムの反応時間を最小にする。このフラッシュガスは、コーティング反応物がなければコーティング領域16にコーティングを作らないので、上述の種類であるのが好ましい。
【0028】
図5Aおよび5Bに示す、代替実施例では、先の実施例の三方弁52および遮断弁72が単一の、四方弁82で置換えてある。この様にして、一つの弁しかどのコーティング反応物マニホールド部34にも関係しない。図5Aに示すように、制御装置50は、コーティング反応物をコーティング反応物マニホールド部34へおよびフラッシュガスを凝縮容器64へ導くように四方弁82を位置付けることができる。フラッシュガスをコーティング反応物マニホールド部34へ導くために、制御装置50は、四方弁82に、例えば、四分の一回転(図5B参照)回転するように指示する。するとフラッシュガスがコーティング反応物マニホールド部34へ導かれ、一方コーティング反応物は凝縮容器64へ導かれる。
【0029】
先に説明したように、計量フラッシュガス供給源74からのフラッシュガスの流量は、計量コーティング反応物供給源54からのコーティング反応物の流量にほぼ等しい。制御装置50の指示の下で、四方弁82は、計量フラッシュガス供給源74からのフラッシュガスの流れおよび計量コーティング反応物供給源54からのコーティング反応物の流れの両方を導く。上に説明したどちらの実施例でも、どの瞬間にも、フラッシュガスか気化反応物がほぼ同量率でコーティング反応物マニホールド部へ流れている。従って、コーティングステーション内の圧力は、コーティング反応物の流れを調節しても、実質的に一定である。更に、コーティング反応物マニホールド部で、コーティング反応物を停止するための応答時間は、コーティング反応物の流れを凝縮容器64へそらせた後にフラッシュガスが導管58の中およびコーティング反応物マニホールド部34の中の残留蒸気に迅速に置き換わるので、短縮する。もし、この反応物が常温で液体ならば、前述の導管または弁を加熱してもよいことを注記する。
【0030】
計量コーティング反応物供給源54、凝縮容器64、および計量フラッシュガス供給源74を上に複数のコーティング反応物マニホールド部34が共有するように説明したが、この計量コーティング反応物供給源54、凝縮容器64、および計量フラッシュガス供給源74は、個々に単一のマニホールド部34と関連することができる。
【0031】
この様に、このシステム10は、基材前縁または後縁がプラズマ供給源38のそれぞれのアレイの前を横切るとき、特定の手順に従って、上流および下流マニホールドへの反応物の流れを調節することによって基材の縁での過剰コーティングを減少しまたは最少化する。このコーティング反応物は、基材20が存在するときだけマニホールド34へ提供し、それによって縁コーティング中にコーティング先駆物質の流動を減らし且つコーティング領域16の片側に生じるコーティング先駆物質が基材20の反対側に付着する機会を制限する。個々のマニホールドに対する局部縁位置によって表す、個々の切替え事象の最適タイミングは、実験的に決めることができ、それでここで議論する必要がない。従ってそれは十分な精度および分解能で基材20の位置を追跡するための装置設計の問題に過ぎないので、所望のタイミングを容易に実現できる。
【0032】
従って、このシステム10は、連続する基材20間に大きな隙間があるとき、コーティング反応物を凝縮容器64へそらすので、もし任意の充填物46を採用するなら、その上は勿論、コーティング領域16の壁上への外部コーティングの形成も最少化する。これは、室壁クリーニング(およびもし採用するなら充填物46のクリーニング)の回数を最少化し且つ反応物の利用を最大化する効果を有する。先に述べたように、このシステム10は、プラズマコーティング厚さの均一性を改善し、このプラズマコーティングプロセスをコーティング厚さのための上および下仕様限界に関してよりロバストにする。
【0033】
図解した実施例に示したように、これらのマニホールドは、多種多様な輪郭の基材縁に対応するために分割してある。基材移動の方向と横向きにした供給源アレイ28で、異形基材縁の異なる部分が一般的にプラズマ供給源38を異なる時間に通過する。コーティング反応物マニホールド34を分割することが、所望の手順に従って、マニホールド34間に独立の局部流れ切替えをもたらす。他の実施例では、複数オリフィス60を備えるマニホールド部34を使うのではなく、個々のオリフィスをこの発明の原理に従って制御してもよい。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1および第2側面を有する基材をコーティングするためのシステムにして、該システムを通る経路に沿って動かされる前記基材をコーティングするシステムであって、
前記基材が経路に沿って動くとき前記基材の第1側面の方へプラズマジェットを出すように構成した少なくとも一つのプラズマ供給源、
一般的に該プラズマ供給源に隣接して位置する関連するマニホールド部に結合した複数のオリフィス、
該オリフィスの各々に結合し且つそれにコーティング反応物を提供するように構成したコーティング反応物供給源、
前記オリフィスの各々に結合し且つそれにフラッシュガスを提供するように構成したフラッシュガス供給源、および
前記プラズマ供給源に対する基材の位置に従ってこれらのオリフィスへのコーティング反応物およびフラッシュガスの提供を独立に制御するように構成した制御装置を含むシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムに於いて、前記制御装置が前記プラズマ供給源に対する前記基材の前縁および後縁の位置に従って前記オリフィスへのコーティング反応物およびフラッシュガスの提供を独立に制御するように構成してあるシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のシステムに於いて、前記複数のオリフィスは、前記基材が動かされる経路に対してそれぞれ前記プラズマ供給源の上流および下流に位置する上流オリフィスおよび下流オリフィスを含むシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のシステムに於いて、前記複数のオリフィスが少なくとも二つのグループのオリフィスを含み、各グループのオリフィスが関連するマニホールド部に結合してあるシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のシステムであって、更に、前記コーティング反応物供給源と前記マニホールド部の間にインラインに配置したコーティング反応物弁および前記フラッシュガス供給源と前記マニホールド部の間にインラインに配置したフラッシュガス弁を含み、前記コーティング反応物弁は前記制御装置に接続してあり、前記フラッシュガス弁も前記制御装置に接続してあるシステム。
【請求項6】
請求項5に記載のシステムに於いて、前記制御装置は、前記コーティング反応物弁および前記フラッシュガス弁の動作を制御することによって前記コーティング反応物供給源からのコーティング反応物の流れおよび前記フラッシュガス供給源からのフラッシュガスの流れを調節するように構成してあるシステム。
【請求項7】
請求項5に記載のシステムに於いて、前記コーティング反応物弁が三方弁であるシステム。
【請求項8】
請求項5に記載のシステムに於いて、前記フラッシュガス弁が遮断弁であるシステム。
【請求項9】
請求項1に記載のシステムであって、更に、前記コーティング反応物供給源、前記フラッシュガス供給源および前記マニホールド部の間にインラインに位置する四方弁を含み、該四方弁は前記制御装置に接続してありおよび前記制御装置は、この四方弁の動作を独立に制御することによって上記マニホールド部へのコーティング反応物およびフラッシュガスの流れを独立に調節するように構成してあるシステム。
【請求項10】
請求項10に記載のシステムに於いて、前記四方弁が凝縮槽にも接続してあるシステム。
【請求項11】
請求項1に記載のシステムに於いて、前記コーティング反応物供給源がコーティング反応物の加圧供給源およびコーティング反応物計量装置を含み、並びに前記フラッシュガス供給源がフラッシュガスの加圧供給源およびフラッシュガス計量装置を含むシステム。
【請求項12】
請求項1に記載のシステムであって、前記基材がこのシステムを通過するとき上記基材のかなりの部分を囲むような形状の充填物をさらに含むシステム。
【請求項13】
請求項1に記載のシステムであって、
前記基材が前記経路に沿って動くとき前記基材の第2側面の方へプラズマジェットを出すように構成した少なくとも一つの第2プラズマ供給源、
一般的に第2プラズマ供給源に隣接して位置する複数の第2オリフィスをさらに含み、
前記コーティング反応物供給源は、前記第2オリフィスの各々に結合してあり且つそれにコーティング反応物を提供するように構成してあり、
前記フラッシュガス供給源は、前記第2オリフィスの各々に結合してあり且つそれにフラッシュガスを提供するように構成してあり、および
前記制御装置は、第2プラズマ供給源に対する基材の位置に従って第2オリフィスへのコーティング反応物およびフラッシュガスの提供を独立に制御するように構成してあるシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムに於いて、前記複数の第2オリフィスは、前記基材が動かされる経路に対してそれぞれ前記第2プラズマ供給源の上流および下流に位置する第2上流オリフィスおよび第2下流オリフィスを含むシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のシステムに於いて、前記複数の第2オリフィスが少なくとも二つの第2グループの第2オリフィスを含み、各第2グループが関連するマニホールド部に結合してあり、前記制御装置は、前記第2プラズマ供給源に対する前記基材の位置に従って前記マニホールド部へのコーティング反応物およびフラッシュガスの提供を独立に制御するように構成してあるシステム。
【請求項16】
コーティングシステムを通る経路に沿って動く基材をコーティングする方法であって、
前記基材の経路に沿って位置するプラズマ供給源から前記基材の第1側面の方へプラズマジェットを出す工程、
前記プラズマ供給源に隣接する第1位置からプラズマジェットの中へコーティング反応物を噴射する工程、
前記プラズマ供給源に隣接する第2位置からプラズマジェットの中へコーティング反応物を噴射する工程、
前記第1位置からのコーティング反応物の噴射を第1位置からのフラッシュガスの噴射で置換える工程、および
前記第2位置からのコーティング反応物の噴射を第2位置からのフラッシュガスの噴射で置換える工程を含む方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法に於いて、前記置換え工程を前記プラズマ供給源に対する前記経路に沿う前記基材の位置に応じて始める方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法に於いて、前記置換え工程が前記第1および第2位置からのコーティング反応物を凝縮槽へ向け直す方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法に於いて、前記第1および第2位置からの前記コーティング反応物の噴射を置換える工程が前記コーティング反応物が置換える前のそれぞれのコーティング反応物と実質的に同じ流量のフラッシュガスで置換える方法。
【請求項20】
請求項16に記載の方法であって、コーティング反応物を前記プラズマジェットの中へ噴射するときフラッシュガスを凝縮槽へ向ける工程をさらに含む方法。
【請求項21】
請求項16に記載の方法であって、前記基材をコーティングするとき前記基材の側縁の周りに実質的に密接するスペース充填部品を備える工程をさらに含む方法。
【請求項22】
請求項16に記載の方法であって、前記第1位置からのフラッシュガスの噴射をコーティング反応物の噴射で置換え、および前記第2位置からのフラッシュガスの噴射をコーティング反応物の噴射で置換える工程をさらに含む方法。
【請求項23】
請求項16に記載の方法であって、
前記基材の上記経路に沿って位置する第2プラズマ供給源から上記基材の第2側面の方へ第2プラズマジェットを出す工程、
第2プラズマ供給源に隣接する第3位置から前記第2プラズマジェットの中へコーティング反応物を噴射する工程、
前記第2プラズマ供給源に隣接する第4位置から第2プラズマジェットの中へコーティング反応物を噴射する工程、
前記第3位置からのコーティング反応物の噴射をこの第1位置からのフラッシュガスで置換える工程、および
前記第4位置からのコーティング反応物の噴射をフラッシュガスで置換える工程をさらに含む方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、前記第3位置からのフラッシュガスの噴射をコーティング反応物の噴射で置換え、および前記第4位置からのフラッシュガスの噴射をコーティング反応物の噴射で置換える工程をさらに含む方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法に於いて、前記第1および第3位置が前記基材の前記経路に対する前記第1および第2プラズマ供給源の上流にあり並びに前記第2および第4位置が前記基材の前記経路に対する前記第1および第2プラズマ供給源の下流にある方法。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2010−514938(P2010−514938A)
【公表日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−544297(P2009−544297)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2007/089084
【国際公開番号】WO2008/083301
【国際公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(505365404)エクスアテック、エル.エル.シー. (51)
【Fターム(参考)】