説明

プラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置及びコンピュータ記憶媒体

【課題】深さが深いホールであっても、良好な形状にエッチングすることのできるプラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置及びコンピュータ記憶媒体を提供する。
【解決手段】所定のパターンが形成されたフォトレジスト層と、フォトレジスト層の下層に位置する有機系の反射防止膜と、反射防止膜の下層に位置するSiON膜と、SiON膜の下層に位置するアモルファスカーボン層と、により多層マスクを構成し、アモルファスカーボン層の下層に位置するシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を最終的なマスクとなるアモルファスカーボン層のパターンによりプラズマエッチングするプラズマエッチング方法であって、シリコン酸化膜又はシリコン窒化膜のプラズマエッチングを開始する際の初期マスクが、アモルファスカーボン層の上にSiON膜が残った状態であり、かつ、アモルファスカーボン層の膜厚/残ったSiON膜の膜厚≦14である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置及びコンピュータ記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体装置の製造工程においては、フォトレジスト等のマスクを介してプラズマエッチング処理を行い、シリコン酸化膜等の被エッチング膜を所望のパターンに形成することが行われている。このようなプラズマエッチング装置としては、例えば、半導体ウエハ等の基板を載置する載置台を兼ねた下部電極と、この下部電極と対向するように配置された上部電極との間に高周波電力を印加してプラズマを発生させる容量結合型のプラズマエッチング装置が知られている。
【0003】
上記のプラズマエッチングにより、シリコン酸化膜やシリコン窒化膜等の絶縁膜にホールを形成する工程では、ホール深さが深くなる一方、マスクの膜厚は薄くなる傾向があり、垂直なホール形状を得ることが困難になりつつある。このため、プラズマエッチングプロセスでは、良好な開口性及び選択性を得るための各種の開発がなされている。例えば、上記した容量結合型のプラズマエッチング装置では、上部電極に直流電圧を印加して、良好な開口性及び選択性を得ることのできるようにすることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−21791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、プラズマエッチングプロセスでは、深さが深いホールであっても、良好な形状にエッチングすることのできる技術の開発が望まれている。
【0006】
本発明は、上記従来の事情に対処してなされたもので、深さが深いホールであっても、良好な形状にエッチングすることのできるプラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置及びコンピュータ記憶媒体を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラズマエッチング方法の一態様は、所定のパターンが形成されたフォトレジスト層と、前記フォトレジスト層の下層に位置する有機系の反射防止膜と、前記反射防止膜の下層に位置するSiON膜と、前記SiON膜の下層に位置するアモルファスカーボン層と、により多層マスクを構成し、前記アモルファスカーボン層の下層に位置するシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を最終的なマスクとなるアモルファスカーボン層のパターンによりプラズマエッチングするプラズマエッチング方法であって、前記シリコン酸化膜又は前記シリコン窒化膜のプラズマエッチングを開始する際の初期マスクが、前記アモルファスカーボン層の上に前記SiON膜が残った状態であり、かつ、前記アモルファスカーボン層の膜厚/残った前記SiON膜の膜厚≦14であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、深さが深いホールであっても、良好な形状にエッチングすることのできるプラズマエッチング方法、プラズマエッチング装置及びコンピュータ記憶媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明のプラズマエッチング方法の実施形態に係る半導体ウエハの断面構成を示す図。
【図2】本発明の実施形態に係るプラズマエッチング装置の概略構成を示す図。
【図3】実施例に係る半導体ウエハの状態を示す電子顕微鏡写真。
【図4】比較例に係る半導体ウエハの状態を示す電子顕微鏡写真。
【図5】SiON膜の残膜量とアモルファスカーボン残膜量との関係を示すグラフ。
【図6】直流電圧の印加によるフォトレジストの状態の変化を示す電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本実施形態に係るプラズマエッチング方法における被処理基板としての半導体ウエハの断面構成を拡大して示すものである。また、図2は、本実施形態に係るプラズマエッチング装置の構成を示すものである。まず、図2を参照してプラズマエッチング装置の構成について説明する。
【0011】
プラズマエッチング装置は、気密に構成され、電気的に接地電位とされた処理チャンバー1を有している。この処理チャンバー1は、円筒状とされ、例えばアルミニウム等から構成されている。処理チャンバー1内には、被処理基板である半導体ウエハWを水平に支持する載置台2が設けられている。載置台2は例えばアルミニウム等で構成されており、下部電極としての機能を有する。この載置台2は、絶縁板3を介して導体の支持台4に支持されている。また、載置台2の上方の外周には、例えば単結晶シリコンで形成されたフォーカスリング5が設けられている。さらに、載置台2及び支持台4の周囲を囲むように、例えば石英等からなる円筒状の内壁部材3aが設けられている。
【0012】
載置台2には、第1の整合器11aを介して第1のRF電源10aが接続され、また、第2の整合器11bを介して第2のRF電源10bが接続されている。第1のRF電源10aは、プラズマ発生用のものであり、この第1のRF電源10aからは所定周波数(27MHz以上例えば40MHz)の高周波電力が載置台2に供給されるようになっている。また、第2のRF電源10bは、イオン引き込み用(バイアス用)のものであり、この第2のRF電源10bからは第1のRF電源10aより低い所定周波数(13.56MHz以下、例えば2MHz)の高周波電力が載置台2に供給されるようになっている。一方、載置台2の上方には、載置台2と平行に対向するように、上部電極としての機能を有するシャワーヘッド16が設けられており、シャワーヘッド16と載置台2は、一対の電極(上部電極と下部電極)として機能するようになっている。
【0013】
載置台2の上面には、半導体ウエハWを静電吸着するための静電チャック6が設けられている。この静電チャック6は絶縁体6bの間に電極6aを介在させて構成されており、電極6aには直流電源12が接続されている。そして電極6aに直流電源12から直流電圧が印加されることにより、クーロン力によって半導体ウエハWが吸着されるよう構成されている。
【0014】
支持台4の内部には、冷媒流路4aが形成されており、冷媒流路4aには、冷媒入口配管4b、冷媒出口配管4cが接続されている。そして、冷媒流路4aの中に適宜の冷媒、例えば冷却水等を循環させることによって、支持台4及び載置台2を所定の温度に制御可能となっている。また、載置台2等を貫通するように、半導体ウエハWの裏面側にヘリウムガス等の冷熱伝達用ガス(バックサイドガス)を供給するためのバックサイドガス供給配管30が設けられており、このバックサイドガス供給配管30は、図示しないバックサイドガス供給源に接続されている。これらの構成によって、載置台2の上面に静電チャック6によって吸着保持された半導体ウエハWを、所定の温度に制御可能となっている。
【0015】
上記したシャワーヘッド16は、処理チャンバー1の天壁部分に設けられている。シャワーヘッド16は、本体部16aと電極板をなす上部天板16bとを備えており、絶縁性部材45を介して処理チャンバー1の上部に支持されている。本体部16aは、導電性材料、例えば表面が陽極酸化処理されたアルミニウムからなり、その下部に上部天板16bを着脱自在に支持できるように構成されている。
【0016】
本体部16aの内部には、ガス拡散室16cが設けられ、このガス拡散室16cの下部に位置するように、本体部16aの底部には、多数のガス通流孔16dが形成されている。また、上部天板16bには、当該上部天板16bを厚さ方向に貫通するようにガス導入孔16eが、上記したガス通流孔16dと重なるように設けられている。このような構成により、ガス拡散室16cに供給された処理ガスは、ガス通流孔16d及びガス導入孔16eを介して処理チャンバー1内にシャワー状に分散されて供給されるようになっている。なお、本体部16a等には、冷媒を循環させるための図示しない配管が設けられており、プラズマエッチング処理中にシャワーヘッド16を所望温度に冷却できるようになっている。
【0017】
上記した本体部16aには、ガス拡散室16cへ処理ガスを導入するためのガス導入口16fが形成されている。このガス導入口16fにはガス供給配管15aが接続されており、このガス供給配管15aの他端には、エッチング用又はトリートメント用の処理ガスを供給する処理ガス供給源15が接続されている。ガス供給配管15aには、上流側から順にマスフローコントローラ(MFC)15b、及び開閉弁V1が設けられている。そして、処理ガス供給源15からプラズマエッチングのための処理ガスが、ガス供給配管15aを介してガス拡散室16cに供給され、このガス拡散室16cから、ガス通流孔16d及びガス導入孔16eを介して処理チャンバー1内にシャワー状に分散されて供給される。
【0018】
上記した上部電極としてのシャワーヘッド16には、ローパスフィルタ(LPF)51を介して可変直流電源52が電気的に接続されている。この可変直流電源52は、オン・オフスイッチ53により給電のオン・オフが可能となっている。可変直流電源52の電流・電圧ならびにオン・オフスイッチ53のオン・オフは、後述する制御部60によって制御されるようになっている。なお、後述のように、第1のRF電源10a、第2のRF電源10bから高周波が載置台2に印加されて処理空間にプラズマが発生する際には、必要に応じて制御部60によりオン・オフスイッチ53がオンとされ、上部電極としてのシャワーヘッド16に所定の直流電圧が印加される。
【0019】
処理チャンバー1の側壁からシャワーヘッド16の高さ位置よりも上方に延びるように円筒状の接地導体1aが設けられている。この円筒状の接地導体1aは、その上部に天壁を有している。
【0020】
処理チャンバー1の底部には、排気口71が形成されており、この排気口71には、排気管72を介して排気装置73が接続されている。排気装置73は、真空ポンプを有しており、この真空ポンプを作動させることにより処理チャンバー1内を所定の真空度まで減圧することができるようになっている。一方、処理チャンバー1の側壁には、ウエハWの搬入出口74が設けられており、この搬入出口74には、当該搬入出口74を開閉するゲートバルブ75が設けられている。
【0021】
図中76,77は、着脱自在とされたデポシールドである。デポシールド76は、処理チャンバー1の内壁面に沿って設けられ、処理チャンバー1にエッチング副生物(デポ)が付着することを防止する役割を有し、このデポシールド76の半導体ウエハWと略同じ高さ位置には、直流的にグランドに接続された導電性部材(GNDブロック)79が設けられており、これにより異常放電が防止される。
【0022】
上記構成のプラズマエッチング装置は、制御部60によって、その動作が統括的に制御される。この制御部60には、CPUを備えプラズマエッチング装置の各部を制御するプロセスコントローラ61と、ユーザインターフェース62と、記憶部63とが設けられている。
【0023】
ユーザインターフェース62は、工程管理者がプラズマエッチング装置を管理するためにコマンドの入力操作を行うキーボードや、プラズマエッチング装置の稼働状況を可視化して表示するディスプレイ等から構成されている。
【0024】
記憶部63には、プラズマエッチング装置で実行される各種処理をプロセスコントローラ61の制御にて実現するための制御プログラム(ソフトウエア)や処理条件データ等が記憶されたレシピが格納されている。そして、必要に応じて、ユーザインターフェース62からの指示等にて任意のレシピを記憶部63から呼び出してプロセスコントローラ61に実行させることで、プロセスコントローラ61の制御下で、プラズマエッチング装置での所望の処理が行われる。また、制御プログラムや処理条件データ等のレシピは、コンピュータで読取り可能なコンピュータ記憶媒体(例えば、ハードディスク、CD、フレキシブルディスク、半導体メモリ等)などに格納された状態のものを利用したり、或いは、他の装置から、例えば専用回線を介して随時伝送させてオンラインで利用したりすることも可能である。
【0025】
このように構成されたプラズマエッチング装置で、半導体ウエハWに形成されたシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜、アモルファスカーボン層、SiON膜、有機系の反射防止膜(BARC)等をプラズマエッチングする手順について説明する。まず、ゲートバルブ75が開かれ、半導体ウエハWが図示しない搬送ロボット等により、図示しないロードロック室を介して搬入出口74から処理チャンバー1内に搬入され、載置台2上に載置される。この後、搬送ロボットを処理チャンバー1外に退避させ、ゲートバルブ75を閉じる。そして、排気装置73の真空ポンプにより排気口71を介して処理チャンバー1内が排気される。
【0026】
処理チャンバー1内が所定の真空度になった後、処理チャンバー1内には処理ガス供給源15から所定の処理ガス(エッチングガス)が導入され、処理チャンバー1内が所定の圧力に保持され、この状態で第1のRF電源10aから載置台2に、周波数が例えば40MHzの高周波電力が供給される。また、第2のRF電源10bからは、イオン引き込みのため、載置台2に周波数が例えば2.0MHzの高周波電力(バイアス用)が供給される。このとき、直流電源12から静電チャック6の電極6aに所定の直流電圧が印加され、半導体ウエハWはクーロン力により静電チャック6に吸着される。
【0027】
この場合に、上述のようにして下部電極である載置台2に高周波電力が印加されることにより、上部電極であるシャワーヘッド16と下部電極である載置台2との間には電界が形成される。半導体ウエハWが存在する処理空間には放電が生じ、それによって形成された処理ガスのプラズマにより、半導体ウエハW上に形成されたシリコン酸化膜またはシリコン窒化膜、アモルファスカーボン層、SiON膜、有機系の反射防止膜(BARC)等がエッチング処理される。
【0028】
ここで、前述したとおり、プラズマ処理中にシャワーヘッド16に直流電圧を印加することができるので次のような効果がある。すなわち、プロセスによっては、高い電子密度でかつ低いイオンエネルギーであるプラズマが要求される場合がある。このような場合に直流電圧を用いれば、半導体ウエハWに打ち込まれるイオンエネルギーが抑えられつつプラズマの電子密度が増加されることにより、半導体ウエハWのエッチング対象となる膜のエッチングレートが上昇すると共にエッチング対象の上部に設けられたマスクとなる膜へのスパッタレートが低下して選択性が向上する。また、フォトレジスト層を硬化させる作用があり、フォトレジスト層の残膜量を増大させることができる。
【0029】
そして、上記したエッチング処理が終了すると、高周波電力の供給、直流電圧の供給及び処理ガスの供給が停止され、上記した手順とは逆の手順で、半導体ウエハWが処理チャンバー1内から搬出される。
【0030】
次に、図1を参照して、本実施形態に係るプラズマエッチング方法について説明する。図1は、本実施形態における被処理基板としての半導体ウエハWの要部断面構成を拡大して模式的に示すものである。図1(a)に示すように、半導体ウエハWには、その最上層に、所定の形状にパターニングされた、つまり、所定位置にホールが形成されたフォトレジスト層101が形成されている。
【0031】
フォトレジスト層101の下側には、有機系の反射防止膜(BARC)102が形成されており、有機系の反射防止膜102の下側には、SiON膜103が形成され、SiON膜103の下側には、アモルファスカーボン層104が形成されている。
【0032】
上記アモルファスカーボン層104の下側には、被エッチング層としてのシリコン酸化膜105(又はシリコン窒化膜)が形成されている。このシリコン酸化膜105の上に形成されている上記したフォトレジスト層101、反射防止膜102、SiON膜103、アモルファスカーボン層104は、多層マスクを構成するものである。
【0033】
そして、上記構造の半導体ウエハWを、図2に示したプラズマエッチング装置の処理チャンバー1内に収容し、載置台2に載置して、図1(a)に示す状態から、フォトレジスト層101を最初のマスクとして、まず、有機系の反射防止膜(BARC)102及びSiON膜103をエッチングして、図1(b)の状態とする。この時、フォトレジスト層101の残膜量が有る程度多くなることが好ましい。
【0034】
次に、残っているフォトレジスト層101及びエッチングされた有機系の反射防止膜(BARC)102及びSiON膜103をマスクとして、アモルファスカーボン層104をエッチングして図1(c)に示す状態とする。最終的には、図1(d)に示すように、アモルファスカーボン層104をマスクとしてシリコン酸化膜105をエッチングする。このシリコン酸化膜105は厚さが2500nm以上とされており、本実施形態では、厚さが2600nmとされている。
【0035】
図1(c)は、シリコン酸化膜105のエッチングを開始する際の初期マスクの状態を示している。このシリコン酸化膜105のエッチングを開始する際の初期マスクは、アモルファスカーボン層104(本実施形態では、厚さ850nm)の上にSiON膜103が残った状態となっている。本実施形態では、この時のアモルファスカーボン層104の膜厚と、残ったSiON膜103の膜厚との比が、
アモルファスカーボン層の膜厚/残ったSiON膜の膜厚≦14
さらに好ましくは、
アモルファスカーボン層の膜厚/残ったSiON膜の膜厚≦13.6
となるようにする。
【0036】
すなわち、本実施形態の場合、厚さ850nmのアモルファスカーボン層104の上に、略60.0nm以上、さらに好ましくは、62.5nm以上の厚さのSiON膜が残った状態を、シリコン酸化膜105のエッチングを開始する際の初期マスクとする。これによって、図1(d)に示すように、シリコン酸化膜105のエッチングが終了した時点での残ったアモルファスカーボン層104の膜厚(残膜量)を多くすることができる。また、これによって、形状の良いシリコン酸化膜105のエッチングを行うことが可能となる。
【0037】
図3は、実施例におけるシリコン酸化膜105のエッチングが終了した時点のウエハの状態を示す電子顕微鏡写真であり、図3(a)は、ウエハの中央部、図3(b)は、ウエハの周縁部を示しており、下部に示す電子顕微鏡写真は、上部に示す電子顕微鏡写真の開口付近を拡大して示している。
【0038】
この場合、シリコン酸化膜105のエッチングを開始する際の初期マスクは、アモルファスカーボン層104の膜厚/残ったSiON膜103の膜厚(残膜量)=約13.6であり、図3(a)におけるアモルファスカーボン層104の膜厚(残膜量)は645nm、図3(b)におけるアモルファスカーボン層104の膜厚(残膜量)は600nmである。このように、最終的にエッチング終了した時点でシリコン酸化膜105の上に残ったアモルファスカーボン層104の膜厚(残膜量)を多くすると、シリコン酸化膜105のホール形状が略垂直となり、ボーイング等の発生を抑制することができる。なお、アモルファスカーボン層104の膜厚/残ったSiON膜103の膜厚(残膜量)は、約14程度以下であればよい。
【0039】
図4に、比較例におけるシリコン酸化膜105のエッチングが終了した時点のウエハの状態を写した電子顕微鏡写真を示す。図4(a)は、ウエハの中央部、図4(b)は、ウエハの周縁部を示しており、下部に示す電子顕微鏡写真は、上部に示す電子顕微鏡写真の開口付近を拡大して示している。
【0040】
この比較例の場合、シリコン酸化膜105のエッチングを開始する際の初期マスクは、アモルファスカーボン層104の膜厚/残ったSiON膜103の膜厚=約17であり、図4(a)におけるアモルファスカーボン層104の膜厚(残膜量)は595nm、図4(b)におけるアモルファスカーボン層104の膜厚(残膜量)は545nmである。このように、比較例の場合、アモルファスカーボン層104の膜厚(残膜量)が600nm未満と実施例に比べて少なくなり、シリコン酸化膜105のホールにボーイングが発生した。
【0041】
上記の実施例と比較例における最終的なアモルファスカーボン層104の残膜量には、略50nmの相違がある。図5は、シリコン酸化膜105のエッチングを開始する際の初期マスクにおけるSiON膜103の残膜増加分と、アモルファスカーボン層104の残膜増加分との関係を調べた結果を示している。同図に示すように、アモルファスカーボン層104を略40〜60nm余計に残すためには、初期マスクにおけるSiON膜の膜厚(残膜量)を10〜15nm程度増加させる必要があることが分かる。
【0042】
上記実施例において、プラズマエッチングは、以下のレシピに従って行った。このレシピは、制御部60の記憶部63から読み出されて、プロセスコントローラ61に取り込まれ、プロセスコントローラ61がプラズマエッチング装置の各部を制御プログラムに基づいて制御することにより、読み出されたレシピ通りのプラズマエッチング処理工程が実行される。
【0043】
(有機系の反射防止膜102及びSiON膜103のエッチング)
処理ガス:CF/CHF/C/O=240/60/10/10 sccm
圧力:16.0Pa(120mTorr)
直流電圧:1100V(印加する直流電圧の値は、印加する高周波電力の条件によりおおよそ400V〜1100Vの範囲で印加される。)
高周波電力(HF/LF):300/300W
温度(上部/側壁部/下部):95/60/0℃
時間:80秒
(アモルファスカーボン104のエッチング)
処理ガス:O/COS=740/5 sccm
圧力:2.66Pa(20mTorr)
高周波電力(HF/LF):2800/3000W
温度(上部/側壁部/下部):95/60/0℃
時間:40秒
(シリコン酸化膜105のエッチング)
処理ガス:C/Ar/O=60/450/59 sccm
圧力:2.66Pa(20mTorr)
高周波電力(HF/LF):2000/4500W
直流電圧:1100V
温度(上部/側壁部/下部):95/60/0℃
時間:2分30秒
【0044】
上記の有機系の反射防止膜102及びSiON膜103のエッチングでは、高周波電力を、300W/300Wと低くし、かつ、酸素流量を10sccmと低くしている。これによって、フォトレジスト層101に対する選択比を向上させることができ、アモルファスカーボン104のエッチングを終了した時点でのSiON膜103の残膜量を、60nm以上と多くすることができる。なお、高周波電力を、例えば1500W/1500Wとし、酸素流量を30sccmとすると、SiON膜103の残膜は、55nm前後に減少した。
【0045】
また、有機系の反射防止膜102及びSiON膜103のエッチングでは、上部電極に直流電圧を印加してエッチングを行うことが好ましい。このように、上部電極に直流電圧を印加してエッチングを行うと、フォトレジスト層101を硬化させる作用が生じ、その残膜量を多くすることができるからである。このような作用は、上部電極と下部電極(載置台)との間隔を狭くする、例えば30mm程度とすると、さらに顕著になる。このため、上部電極と下部電極(載置台)との間隔を狭くした状態で、上部電極に直流電圧を印加することが好ましい。
【0046】
図6(a)〜(c)は、シリコン酸化膜のエッチングにおける上部電極への直流電圧の印加と、マスク残膜量との関係を示す電子顕微鏡写真である。図6(c)の電子顕微鏡写真が直流電圧の印加が無い場合、図6(b)の電子顕微鏡写真が600Vの直流電圧を印加した場合、図6(a)の電子顕微鏡写真が1050Vの直流電圧を印加した場合を示している。なお、図6(a)〜(c)において、上部に示す電子顕微鏡写真は、半導体ウエハの上面の状態を示し、下部に示す電子顕微鏡写真は、半導体ウエハの縦断面構成を示している。
【0047】
図6に示すように、上部電極への直流電圧の印加によって、マスク残膜量を、直流電圧の印加が無い場合に比べて、600Vの場合略60nm、1050Vの場合略83nm増加させることができる。なお、図6に示した例は、シリコン酸化膜のエッチングを行った場合であるが、フッ化炭素系のエッチングガスを用いた有機系の反射防止膜等のエッチングにおいても同様の結果となる。図6に示す場合のエッチング条件は、以下のとおりである。
処理ガス:C/C/C/Ar/O
=37/5/28/450/59 sccm
圧力:3.99Pa(30mTorr)
高周波電力(HF/LF):1500/4500W
時間:60秒
【0048】
なお、通常、有機系の反射防止膜をエッチングする場合は、酸素を多く含むエッチングガスでエッチングを行う。このように酸素を多く含むエッチングガスの条件で上部電極に直流電圧を印加すると、エッチングガス中の酸素と上部電極のシリコンとが反応してシリコン酸化膜が形成されてしまう。結果、シリコン酸化膜は絶縁膜であるため、上部電極としての機能低下を招くことになる。しかし、エッチングガス中の酸素を少なくすることで、直流電圧を印加してもシリコン酸化膜が形成されることを抑制することができる。
【0049】
一方、アモルファスカーボン104のエッチングでは、有機膜のエッチングであるため、上部電極に直流電圧は印加しないでエッチングを行う。このアモルファスカーボン104のエッチングでは、フォトレジスト層101及び有機系の反射防止膜102もエッチングされるので、最終的には、SiON膜103をマスクとして、アモルファスカーボン104のエッチングが行われる。しかし、反射防止膜102及びSiON膜103のエッチング時に、フォトレジスト層101の残膜量を多くしておくことによって、SiON膜103の残膜量を多くすることができる。また、このアモルファスカーボン104のエッチングにおいて、圧力を上昇させ、例えば圧力を6.65Pa(50mTorr)程度とすることによっても、アモルファスカーボン104のエッチングが終了した時点でのSiON膜103の残膜量を多くすることができる。
【0050】
シリコン酸化膜105のエッチングでは、上記したとおり、上部電極に直流電圧を印加することが好ましい。また、シリコン酸化膜105のエッチングでは、通常はアモルファスカーボン104との選択比を高めるため、デポの多いガス系でエッチングを行うが、本実施形態では、アモルファスカーボン104の上にSiON膜103を厚く残した状態の初期マスクを用いるため、デポの少ない条件でエッチングを行うことができる。これによって、抜け性を高め、良好な形状のホールを形成することができる。
【0051】
ところで、上記のような深さの深いホールを形成する場合、ホールの底部の形状が歪むボトムディストーション(bottom distortion)が発生する場合がある。この場合、半導体ウエハWが載置される載置台(下部電極)の温度を例えば40℃程度にすることで、ボトムディストーションの発生を抑制することができる。
【0052】
以上説明したとおり、本実施形態及び実施例によれば、深さが深いホールであっても、ボーイング等の発生を抑制して良好な形状にエッチングすることができる。なお、本発明は上記の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、各種の変形が可能である。
【符号の説明】
【0053】
W……半導体ウエハ、101……フォトレジスト層、102……有機系の反射防止膜(BARC)、103……SiON膜、104……アモルファスカーボン層、105……シリコン酸化膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のパターンが形成されたフォトレジスト層と、
前記フォトレジスト層の下層に位置する有機系の反射防止膜と、
前記反射防止膜の下層に位置するSiON膜と、
前記SiON膜の下層に位置するアモルファスカーボン層と、
により多層マスクを構成し、前記アモルファスカーボン層の下層に位置するシリコン酸化膜又はシリコン窒化膜を最終的なマスクとなるアモルファスカーボン層のパターンによりプラズマエッチングするプラズマエッチング方法であって、
前記シリコン酸化膜又は前記シリコン窒化膜のプラズマエッチングを開始する際の初期マスクが、前記アモルファスカーボン層の上に前記SiON膜が残った状態であり、かつ、
前記アモルファスカーボン層の膜厚/残った前記SiON膜の膜厚≦14
であることを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマエッチング方法であって、
処理チャンバー内に配置され基板が載置される下部電極と、前記処理チャンバー内に前記下部電極と対向するように配置された上部電極と、前記下部電極と前記上部電極との間に高周波電力を印加する高周波電源とを具備するプラズマエッチング装置を用い、
前記有機系の反射防止膜と、前記SiON膜のエッチングは、前記上部電極に直流電圧を印加した状態で行う
ことを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項3】
請求項2記載のプラズマエッチング方法であって、
前記アモルファスカーボン層のプラズマエッチングは、前記上部電極に直流電圧を印加しない状態で行う
ことを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載のプラズマエッチング方法であって、
前記シリコン酸化膜又は前記シリコン窒化膜の膜厚が2500nm以上であり、前記シリコン酸化膜又は前記シリコン窒化膜に深さが2500nm以上のホールを形成する
ことを特徴とするプラズマエッチング方法。
【請求項5】
処理チャンバー内に配置され基板が載置される下部電極と、前記処理チャンバー内に前記下部電極と対向するように配置された上部電極と、前記処理チャンバー内に処理ガスを供給する処理ガス供給機構と、前記下部電極と前記上部電極との間に高周波電力を印加する高周波電源と、前記上部電極に直流電圧を印加する直流電源とを具備したプラズマエッチング装置であって、
前記処理チャンバー内で、請求項1から請求項4いずれか1項記載のプラズマエッチング方法が行われるように制御する制御部を具備したことを特徴とするプラズマエッチング装置。
【請求項6】
コンピュータ上で動作する制御プログラムが記憶されたコンピュータ記憶媒体であって、
前記制御プログラムは、実行時に請求項1から請求項4いずれか1項記載のプラズマエッチング方法が行われるようにプラズマエッチング装置を制御することを特徴とするコンピュータ記憶媒体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−192718(P2011−192718A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−55896(P2010−55896)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】