説明

プラズマ処理装置および処理室内壁面安定化処理方法

【課題】 処理室内のデポ膜の除去と壁面材料の腐食を抑えることできる、プラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】 処理室内101に処理ガスを導入してプラズマ110を発生させ、被処理物を真空処理するプラズマ処理装置において、プラズマ発生手段106〜108と、処理室内壁102を構成する材料を含む反応物の存在を検出するモニタ手段112と、処理室内壁102を構成する材料を含む反応物の存在が所定量以上となったことを報知するアラーム手段を具備し、任意のエッチング処理毎にプラズマクリーニングを行い、その後OガスあるいはFガスを用いて壁面安定化処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマエッチング装置・プラズマCVD装置などのプラズマを利用して被処理物にエッチング等の処理を行うプラズマ処理装置およびプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、塵埃が基板に付着すると、目的のデバイスのパターン欠陥を引き起こし、製造工程における歩留まりを低下させる。これに対して、各種ガスを装置内に導入し、導入したガスのプラズマの反応を利用してエッチングを行うドライエッチングプロセスでは、エッチングにともなって発生する生成物が装置内壁に堆積膜(以下、デポ膜と記す)となって付着して発塵源となる。
【0003】
そこで、これらのデポ膜を定期的に除去する必要が生じる。このようなデポ膜の除去方法として、処理室内で塩素系ガスを用いた半導体基板上に形成されたAlを含む膜のドライエッチング処理の後、Oを含むガスとFを含むガスとClを含むガスの混合ガスを処理室内に導入し、そのプラズマを発生させて処理室内に付着している残留反応性生物であるアルミニウム炭化塩素(AlCl)を除去し、ドライエッチング装置のメンテナンス時間を削減することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
さらに、エッチング室の状態を一定に保つために、プラズマクリーニングを行なった後に、デポ膜が付着した壁面をプラズマによって浅く削る処理方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−319586号公報
【特許文献2】特開平7−335626号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、プラズマエッチングの処理には、塩素(Cl)や臭化水素(HBr)などを含む腐食性の高いガスが使用されるようになってきた。エッチング装置の処理室内の構成材料には、これらのガスに対して耐腐食性の高い材料として、アルマイトやアルミナセラミックスの溶射膜などの酸化物被膜が施された材料が使われるのが一般的である。逆に、プラズマクリーングでデポ膜を完全に除去すると、例え安定な構造の酸化物被膜とはいえ、腐食性の高いガスによって表層が腐食し異物が発生しやすい状態になる。また、前記した酸化物被膜はポーラスな構造であるために、被膜母材までガスが到達して腐食されると言う問題が発生するようになった。
【0006】
前記従来技術では、デポ膜を取り去る、もしくはデポ除去後の壁面表層も取り去ることが特徴であり、壁面材料表層、もしくは母材の腐食、と言う問題に関しては考慮されていなかった。
【0007】
本発明の目的は、これらの問題を解決することにあり、処理室内のデポ膜を除去と壁面材料の腐食を抑えることできる、処理室壁面安定化方法、安定化処理を実行することが可能な処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、エッチング装置の操作処理に、任意のタイミングで処理室壁面の安定化処理を付加可能な処理システムを備えることにより達成される。
【0009】
また、上記目的は、エッチング装置に、処理室内のモニタ手段によって壁面の腐食を検出し、腐食の発生を知らせる警報手段を設けることにより達成され、検出信号を受けて安定化処理ステップを実行可能な操作手段を有することにより達成される。
【0010】
前記装置によって処理される方法としては、プラズマクリーニング処理からエッチング処理に移行するまでの間に、好ましくはプラズマクリーニング処理の直後に、酸素、もしくはフッ素(例えば、SF、CF、C、(C))ガスのプラズマを用いて処理室内材料と結合した腐食性ガス分子を置換する、安定化処理ステップを設けることになる。
【0011】
また、上記目的は、エッチング装置に、連続処理工程の中において何枚処理毎にプラズマクリーニング処理を実施するか、また、どの程度時間の安定化処理を行うかを任意に選択、設定し、入力する機能を持たせることにより達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例を図により説明する。図1は、本発明の製造方法を実施するに用いるドライエッチング装置を示す図で、電子サイクロトロン共鳴(ECR)を利用した装置の例である。図1において、ドライエッチング装置は、エッチング処理室101と、エッチング処理室内に設置された直接プラズマと接する壁面102と、エッチングを施すSi基板104を載置する基板ステージ103と、処理室内を所定の圧力に真空排気するための排気口105を有して構成される。さらに、ドライエッチング装置は、UHF帯電磁波電源106と、整合器107と、アンテナ108と、ソレノイドコイル109と、高周波電源111と、発光分光器112と、プラズマの光を発光分光器に取り込む光ファイバ113と、発光分光器の操作コンピュータ114と、エッチング装置全体の制御コンピュータ115を有している。
【0013】
エッチング処理に際しては、まず真空排気によって、所定の圧力に調整する。次に、UHF帯電磁波電源106から整合器107、アンテナ108を介してUHF帯の電磁波がエッチング処理室101に導入される。導入された電磁波は、ソレノイドコイル109により形成される磁場との共鳴により、処理室のガスをプラズマ化し、このプラズマ110を利用してエッチング処理が行なわれる。基板が載置される基板ステージ103には、加工形状を制御する目的で、高周波電源111によって、RFバイアスが印加され、プラズマ中のイオンを引き込むことにより異方性エッチングが行なわれる。
【0014】
次に、この装置にてSiウェハの表面加工を行なう場合の処理の流れを、図2を用いて説明する。例えば、半導体素子のゲート電極の加工では、Cl、HBrなどの腐食性の高いガス、あるいはこれらの混合ガスのプラズマを用いて多結晶Siをエッチングを行なう。さらに、これに加えて、Siとの反応性はFが最も高くしたがってエッチング速度が大きくなるため、近年ではFを含むガス、例えばCFなどが多く使われる傾向にある。また、エッチング後にSiの反応生成物が処置室101の内壁に堆積してデポ膜となり、Siを含む異物となるのを防止する目的で、SFなどSiとの反応性が強いガスのプラズマを用いたプラズマクリーニングが行なわれる。プラズマクリーニングは、以前はロットとロットの間に行なわれるのが普通であったが、加工精度が厳しくなっていることから処理室内の雰囲気を常に一定に保つ必要が生じ、任意の枚数N枚毎、例えばN=5枚に行なわれたり、一枚ごとに実施されるようなケースが増えている。
【0015】
以上述べたように、プラズマクリーニングに加えて、エッチング処理中にもSiとの反応性が高いFを多用するようになったために、図2に示した一連の処理フローの中で処理室壁面上にデポ物が存在する場合が少なくなって行く傾向が強くなっている。
【0016】
一方、エッチング装置の処理室内の構成材料には、これらのガスに対して耐腐食性を持つ材料として、酸化物被膜が施された材料が使われるのが一般的である。FeやCrなどのいわゆる重金属は、微量Si基板上に付着するとSi半導体中に拡散して半導体の動作に支障をきたすので、アルマイトやアルミナセラミックス溶射膜など、アルミニウム系の酸化膜被膜が使用されることが特に多い。被膜母材としては、作業のしやすさの点で重量の軽いもの、比重が小さいものが望ましい。そのため、アルミニウム合金が用いられるのが一般的である。先に述べた、アルミニウム系の被膜以外であっても母材にはアルミニウム合金が多く用いられる。
【0017】
前述したように、一連の処理の中で処理室壁面上にデポ物が存在する場合が少ないと、例え安定な構造の酸化物被膜とはいえ、腐食性の高いガスによって表層が腐食し異物が発生しやすい状態になりやすい。また、酸化物被膜はポーラスな構造であり、かつプラズマからの入熱によって温度が上昇するために熱膨張によってクラックが生じやすい環境にある。すなわち、クラックや被膜中の小穴を通して被膜母材までガスが到達して腐食されると言う問題が発生するようになった。図3、図4に溶射被膜、アルマイト被膜の断面の模式図を示した。被膜母材に使われるアルミニウムは、ClやHBrによって腐食され、AlCl、AlBrとなって処理室中に放出されるために、処理室内壁の寿命と言う意味でも、エッチング処理結果への影響と言う意味でも問題は大きい。
【0018】
本実施形態では、処理室壁面を構成する材料を含む反応物の存在を検出するモニタ手段をエッチング装置に備え、一連の処理フローの中で反応物の濃度が所定量以上となった場合に、アラームを発生する手段を設けた。これにより、処理室壁面を構成する材料を含む反応物、例えばAlClやAlBrによって引き起こされるエッチング処理結果の不具合を未然に防ぐことが可能になる。また、部品交換時期の目安にもなる。本実施形態では、モニタ手段としてプラズマ発光分光器を用いた例を示した。図1において、112は発光分光器、113はプラズマの光を発光分光器に取り込む光ファイバ、114は発光分光器の操作コンピュータ、115はエッチング装置全体の制御コンピュータである。エッチング装置の制御コンピュータ115には、あらかじめ処理室壁面を構成する材料を含む反応物を示す信号、信号の閾値が設定でき、発光分光器114を制御しているコンピュータ114から送られる発光データに基づいて、閾値を越えた場合に、アラームを発する。詳細に説明すると以下のようになる。
【0019】
図5に、ポリシリコンをClガスのプラズマでエッチング処理中のある時間に得られたプラズマ発光スペクトルを示した。発光スペクトルは、ある波長範囲、ここでは250nmから850nmの範囲を多数のチャンネル(ここでは2000チャンネル)に分割して各チャンネルの発光強度として得ることができる。ここで、処理室壁面を構成する材料を含む反応物を検知する場合には、処理に用いられるガスと処理室壁面材料の組み合わせにより、検出すべき信号が変わってくるので、任意に検知信号のチャンネルを選択可能とする機能を備えた。エッチング装置の制御コンピュータ115にはある特定の選択した波長の信号が、これも任意に設定できる所定の閾値を越えた場合に、その旨を知られるアラーム信号が発せられるようになっている。
【0020】
例えば、本実施形態のようにAl部品の削れを検知する場合には、Al原子の発光396nmを選択すればよい。さらに、複数個の信号を選択してそれらの加算、減算、乗算もしくは除算結果を検知信号とする演算機能を設けるとより有効性が増す。例えば、図5の例ではAlを検出する場合、396nm以外にも309nmにAl原子の発光が観測できる。したがって、309nmと396nmの信号を加算することでより高い信号を得ることができる。また、例えば図5の例では、ポリシリコンのエッチングは、Si+Cl→SiCl(281nm)という反応でエッチングが進む。しかし、壁面のAlが削れると、Al+Cl→AlCl(261nm)も同時に進行する。すなわち、シリコンのエッチングに使われるClラジカルがAlによって消費されるので、SiClの発光信号、281nmが低下することになる。ここで、Al(309nmおよび396nm)の信号強度とAlCl(261nm)の信号強度の加算結果、もしくはAlとAlClの信号強度の加算結果をSiClの信号強度で除算した結果などを検知信号とすればよりS/Nの高い信号が得ることができる。そのような組み合わせの信号を選択するかは、処理に用いられるガスと処理室壁面材料の組み合わせにより変わってくるので、任意に検知信号を選択可能とする機能を備えていることが重要である。
【0021】
なお、本実施形態以外にも、ガス質量分析器やインピーダンスモニタ、プラズマ電流の電流・電圧検出器を用いても同様の効果が得られる。
【0022】
次に、本発明の別の実施形態を説明する。本実施形態では、一連の処理フローの中で、クリーニング工程からエッチング工程に移行する間に、処理室内材料と結合した腐食性ガス分子を置換する、安定化処理ステップを設ける。本実施例での処理フローを図6に示した。安定化処理としては、Cl、HBrなどに対する腐食性耐性の持つ化合物に成りうるガスのプラズマ放電を行なう。例えば、アルミ系材料に対しては、OもしくはFがあげられる。図7に概略断面図を示したが、図に示すようにクラック底面に耐食性のある酸化層、もしくはフッ化層を形成して耐食性を保つことが可能となる。このような、ガスのプラズマによって表面に形成された酸化層、もしくはフッ化層は非常に薄い、nmオーダーと考えられるが、酸化層、もしくはフッ化層が抜ける前に、再び安定化処理を実施すれば、アルミ腐食の発生を長期間に渡って防ぐことが可能となる。
【0023】
〔実験1〕 本願の発明者らの実験によれば、通常の耐食アルミニウムを処理室内壁面に用いた場合でも、効果があることがわかっている。図8に実験結果を示す。実験は、処理室内壁面材料をA5051耐食アルミニウムとし、SiOウェハのエッチングを行なった。SiOウェハを使用したのは、Siの反応生成物のデポ膜の影響を無くすためである。条件1は、30秒のClガスによるエッチングを繰返し実施した。エッチングは、Clガス流量200sccm、圧力1Pa、ソースパワー400W、RFバイアス40Wで行なった。条件2は、エッチングの前にOガスプラズマ放電を20秒行ない、O放電→エッチングを繰返し実施した。Oガス放電は、Oガス流量300sccm、圧力1Pa、ソースパワー800W、RFバイアス0Wで行なった。処理室にプラズマ発光分光器を取り付けて、Alの発光波長396nmをモニタしながら、上記実験を実施したところ、O放電を行なわない条件1では、2枚目処理の途中でAlの発光が顕著に観測されたのに対して、条件2では10枚以上処理をしてもAlの発光は認められなかった。常に表面に酸化膜層を形成させることによる、明らかな壁面材料の保護が認められた。
【0024】
〔実験2〕 図9にアルマイト処理を施した壁面材料での実施例を示す。1年以上使用した壁材料であり、とことどころアルマイトが削れて母材が露出したものを実験に用いた。実験はClガスを用いて、Siのエッチングを行なった。条件1は、クリーニングの後、60秒のSiのエッチングを繰返し実施し、条件2は、エッチングの前にOガスプラズマ20秒行なった。やはり、処理室にプラズマ発光分光器を取り付けて、Alの発光波長396nmをモニタしながら、上記実験を実施したところ、条件1では、2枚目にすでにAlの発光が観測されたのに対して、条件2では25枚処理をしてもAlの発光は認められなかった。
【0025】
このように、安定化ステップをクリーニング処理とエッチング処理の間に設けて、常にガスのプラズマによって酸化層、もしくはフッ化層を表面に形成する安定化処理を実施すことにより、アルミ腐食の発生、すなわち壁面材料の削れを防止することが可能となる。つまり、安定化ステップの放電条件を設定し、それをクリーニング処理とエッチング処理の間に実行できる機能をエッチング装置に備える、たとえば装置の制御コンピュータに備えることが、装置の壁面の腐食を防ぎ装置を長期間に渡って安定に稼動させるための有効性な手段となる。
【0026】
上記の実施形態は、プラズマクリーニングステップ毎に安定化ステップを実施する事例を例に説明してきたが、必ずしもプラズマクリーニングステップ毎に安定化ステップを実施する必要は無く、安定化ステップは任意のタイミングで実施してよい。すなわち、安定化処理を実施する時期、タイミングを任意に設定できる機能をエッチング装置に持たせることで、有効性が増す。例えば、同一の処理室において、常に同じデバイス構造の製品だけが処理されるわけではなく、膜厚、膜質、マスク面積などが異なる種々の製品処理が行なわれるのが普通である。つまり製品ごとにエッチング条件、すなわちガス圧力、ガス流量、投入電力などが異なるために、その条件ごとに、装置壁面に対する影響の度合いが異なる。最も安全な装置運用は、全ての製品に対してクリーニングステップ後に安定化処理ステップを実施することである。しかし、装置壁面に対して腐食の影響が小さい条件に対しても、クリーニングステップ後に安定化処理ステップを実施しては、実際の製品処理に使用される時間、実稼働時間を圧迫することになる。そこで、製品ごとに安定化処理の間隔を決めておき、例えば製品Aは非常に腐食性の強い条件を使用するので、プラズマクリーニング毎に安定化処理ステップ実施、製品BはAよりは影響が小さいので4ロット処理に1回の間隔で、製品Cはさらに影響が小さいので8ロット処理に1回の間隔で、実施することで、装置実稼働時間の低下を最小限に抑えて、壁面の腐食を長期間に渡って防ぐことが可能となる。
【0027】
上述した事例は、安定化処理をする間隔について述べたが、製品ごとに安定化処理の時間を変えても、すなわち装置壁面に対して腐食の影響が小さいは短時間で安定化処理を行い、腐食が厳しい条件では長時間の安定化処理ステップを実施すれば、耐腐食効果とスループットを両立できるという効果が得られる。さらに、安定化処理の時間と間隔、両方を変えても良い。このように、製品の種類によって安定化処理を行なうタイミング、時間をフレキシブルに実行できるよう、処理装置の制御コンピュータに設定する機能を備えていることが重要である。
【0028】
次に、本発明の別の実施形態を、図9を用いて説明する。本実施形態では、壁材料のプラズマ中への放出を検知するモニタ手段を設け、モニタ手段で処理室内部材の削れを検知して、壁面安定化処理を実行する、という点に特徴がある。
【0029】
モニタ手段としては、まず、第1の実施形態で記したように、プラズマからの発光を検出する分光器が挙げられる。発光分光器はモノクロメータのような単一波長の光を取り出す検出器でもよいが、波長分解された発光スペクトルを出力する分光器のように多数の信号を出力する検出器であるのが最適である。また、処理室内のガスを質量数の値ごとにモニタできる質量分析器でも良い。さらに、プラズマ生成手段に電力を加える経路に設置された電流検出器または電圧検出器、あるいはまた、電流電圧位相差検出器または電力の進行波検出器または反射波検出器またはインピーダンスモニタなどでも検出可能である。壁の状態は非常に敏感にプラズマのインピーダンスに影響を及ぼす、プラズマ生成のための電力経路に設置する、これらのモニタは非常に感度が高く、壁のわずかな削れでも検知が可能である。以上挙げたモニタ手段は、一定間隔の時間あるいは設定されたいくつかのサンプリング時間ごとに信号を出力する。ここでは第1の実施形態と同様に、プラズマ発光分光器を使用した事例を用いて説明する。
【0030】
〔実験3〕 図10に、アルマイト処理を施した壁面材料で装置に適用した結果を示す。壁面材料102を1年以上使用し交換寸前の状態にあった装置に本発明を適用した。実験はClガスを用いて、実験1と同様の条件にて、Siベアウェハのエッチングを行なった。Siのデポ膜を除去するために、一枚毎にダミーウェハ無しでSFプラズマを用いたプラズマクリーニングを10秒行なっている。処理室にプラズマ発光分光器を取り付けて、Alの発光波長396nmをモニタしながら、エッチングを行ないエッチング中の発光波長396nmの平均値を出力させた。なお、サンプリング間隔は1秒間に1回とした。
【0031】
まず、安定化ステップを用いない条件1にて連続処理を行い、あらかじめ設定した上限値を超えたところで安定化ステップを行なう条件2にて処理を実施した。連続処理開始後10枚目まで波長396nmの発光強度は、10〜20の間で安定して推移することが確認できたので、発光強度の上限を30に設定した(図中201)。45枚処理した辺りから徐々に増加し始め56枚目で上限値を超えたので(図中202)、安定化ステップをプラズマクリーニング後に実施する条件2に切り替えたところ、波長396nmの発光強度は連続処理開始時のレベルに低下することが確認できた。このように、モニタからのAl放出検知信号を用いて、安定化ステップを自動実行することにより、稼働率の低下を抑えつつ効果的な壁面腐食防止を行なうことが可能となる。また、安定化ステップを実施していても、なお長期間の生産の間にAl放出が認められる可能性が考えられる場合には、ある延長時間を設定しておきモニタからのAl放出検知信号を受けて安定化ステップの時間延長を自動的に実施すると良い。例えば図10では安定化ステップSは20秒であるが、2回目に閾値を外れた場合には、30秒に、3回目に閾値をはずれた場合には40秒に、と増加していくことで効果的に壁面安定化を達成することができる。ここでは10秒毎の時間増加としたが、壁面の腐食の度合いは、プラズマ処理におけるプラズマのパワーや処理時間によって変わってくるので、処理している条件によって増加時間を装置側で任意に設定できることが好ましい。なお、本実施形態では、発光強度の平均値をモニタデータとしたが、エッチング中に測定される最大値で判断しても良い。
【0032】
このように、エッチング装置に、処理室内のモニタ手段によって壁面の腐食を検出し、腐食の発生を知らせる警報手段を設け、検出信号を受けて安定化処理ステップを実行可能な操作手段を、例えば安定化ステップを実行するタイミング、時間、時間の延長などのパラメータを設定する手段を備えることにより、安定した生産の継続が可能となる。
【0033】
本実施形態のように、モニタ手段にてAl放出の検知は、装置管理にも有効性である。モニタ値が、あらかじめ設定した閾値を超えた場合に、直ちにその旨出力すれば、オペレータへ装置状態を知らせる手段にもなる。出力形態は、ブザーなどのアラームでも良いし、操作パネルへの表示、もしくは装置オペレータのパーソナルコンピューターへの表示などでもよい。
【0034】
如何に安定化ステップを実施していても、アルマイトや溶射膜などの表面被膜が薄くなる、もしくは一部削れてなくなると、母材は腐食を受けやすく、頻繁にアラームが発せられることになる。何回連続して閾値を超えたかで、あるいは警告の積算回数で警告のレベルわけをするのも有効である。例えば、一回閾値から外れて次には戻った場合には軽度の警告として着工は続けるが、3回連続して閾値を外れた場合には着工禁止としてメンテナンスを実施する、あるいは閾値が外れた積算回数がある設定値を超えたらメンテナンスを実施するなどの応用ができる。また、閾値を外れた際に、時間延長を行うことで壁面安定化を行う場合には、最大円著時間を決めておき、その時間を超えた場合には、既に安定化が不可能な状態であると判断して、部品の交換の警報を出し、メンテナンスを実施するなどの応用が可能である。これにより装置内の清掃などメンテナンスを行えば、加工しているウェハへの汚染や異物の付着などの不良原因を未然に防止する事が可能となる。
【0035】
以上の実施形態では、処理室内壁面に材料として表面にアルマイト層もしくはセラミック膜を形成したアルミニウム母材を用い、壁面保護ガスとしてOガスを用いた例を説明したが、これに限定されるものではなく、処理内壁面材料としては酸化物のセラミックス被膜であれば本発明の目的を達成することができる。また、フッ化物のセラミックス被膜の場合には、壁面保護ガスとしてF系のガスを用いることで本発明の目的を達成することができる。
【0036】
以上の説明から明らかなとおり、本発明は、処理室内に処理ガスを導入してプラズマを発生させ、被処理物を真空処理するプラズマ処理装置において、プラズマ発生手段と、処理室内壁を構成する材料を含む反応物の存在を検出するモニタ手段と、前記処理室内壁を構成する材料を含む反応物の存在が所定量以上となったことを報知するアラーム手段を具備した。また、前記モニタ手段が、プラズマ処理室に配置したプラズマ発光分光器、質量分析器、インピーダンスモニタ検出手段、プラズマ生成手段に電力を加える経路に設置された電流検出器または電圧検出器もしくは電流電圧位相検出器、または電力の進行波検出器または反射波検出器のいずれかまたはその組み合わせとした。
【0037】
本発明は、モニタ手段から得られる複数の信号から前記処理室内壁を構成する材料を含む反応物の存在を示す検知信号として、モニタが検出可能な信号のうち任意の信号を選択する機能を有するとともに、アラームを発する信号値の閾値を任意に設定する手段を備え、さらに、モニタ手段から得られる複数の信号から少なくとも2個以上の信号を選択し、これらの信号を加算、減算、乗算、除算のいずれかもしくはその組み合わせを検知信号とする演算機能を設けた。
【0038】
本発明は、被処理物が設置された処理室内に処理ガスを導入してプラズマを発生させ、被処理物を真空処理するプラズマ処理装置であって、エッチングの処理ステップと、プラズマクリーニングのステップと、処理室内壁を保護するための壁面安定化ステップの処理を設定し、各ステップの順序、頻度を任意に設定する機能を具備した。
【0039】
また、本発明は、被処理物が設置された処理室内に処理ガスを導入してプラズマを発生させ、被処理物を真空処理するプラズマ処理装置の処理室内壁面で安定化処理方法あって、エッチング処理に続くプラズマクリーニング処理の後に、処理室内壁表面を保護する内壁保護ガスを導入してプラズマ処理する処理室壁面安定化処理を施すことを特徴とする。さらに、本発明は、上記プラズマ処理装置の処理室内壁面安定化処理方法において、内壁保護ガスは酸素(O)ガス、もしくはフッ素系(F)ガスを含み、総ガス流量に対して酸素(O)ガス、もしくはフッ素系(F)ガスの流量比が少なくとも50%以上であることを特徴とする。
【0040】
本発明は、上記プラズマ処理送致において、処理室内モニタ手段が発する処理室内壁を構成する材料を含む反応物の増加を示す信号を受けて、あらかじめ設定された壁面安定化処理ステップを実行する機能を具備した。さらに、処理室内モニタ手段が発する処理室内壁を構成する材料を含む反応物の増加を示す信号の積算回数に応じて、あらかじめ設定された壁面安定化処理ステップの時間を所定の時間延長して実行する機能を具備した。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】発明の実施形態を説明するためのプラズマ処理装置を示す全体構成図。
【図2】従来実施されていたウェハ処理フロー。
【図3】本発明の実施形態を説明するための装置壁面材料の概略断面図。
【図4】本発明の実施形態を説明するための装置壁面材料の概略断面図。
【図5】本実施形態を説明するためのモニタ信号の一例。
【図6】本発明の実施形態を説明するためのウェハ処理フロー。
【図7】本発明の実施形態を説明するための装置壁面材料の概略断面図。
【図8】本発明の効果を説明するための処理結果例。
【図9】本発明の効果を説明するための処理結果例。
【図10】本発明の効果を説明するための処理結果例。
【符号の説明】
【0042】
101:エッチング処理室、102:プラズマ接する壁面材料、103:基板ステージ、104:基板、105:真空排気口、106:電源、107:整合器、108:アンテナ、109:コイル、110:プラズマ、111:
高周波電源、112:発光分光器、113:光ファイバ、114:発光分光器の制御PC、115:エッチング処置の制御PC、201:信号閾値、202:安定化ステップ開始点。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に処理ガスを導入してプラズマを発生させ、被処理物を真空処理するプラズマ処理装置において、
プラズマ発生手段と、
処理室内壁を構成する材料を含む反応物の存在を検出するモニタ手段と、
前記処理室内壁を構成する材料を含む反応物の存在が所定量以上となったことを報知するアラーム手段を具備したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】
請求項1記載のプラズマ処理装置において、
前記モニタ手段が、プラズマ処理室に配置したプラズマ発光分光器、質量分析器、インピーダンスモニタ検出手段、プラズマ生成手段に電力を加える経路に設置された電流検出器または電圧検出器もしくは電流電圧位相検出器、または電力の進行波検出器または反射波検出器のいずれかまたはその組み合わせであることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】
請求項2記載のプラズマ処理装置において、
モニタ手段から得られる複数の信号から前記処理室内壁を構成する材料を含む反応物の存在を示す検知信号として、モニタが検出可能な信号のうち任意の信号を選択する機能を有するとともに、アラームを発する信号値の閾値を任意に設定する手段を備えることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項4】
請求項3記載のプラズマ処理装置において、モニタ手段から得られる複数の信号から少なくとも2個以上の信号を選択し、これらの信号を加算、減算、乗算、除算のいずれかもしくはその組み合わせを検知信号とする演算機能を設けたことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項5】
被処理物が設置された処理室内に処理ガスを導入してプラズマを発生させ、被処理物を真空処理するプラズマ処理装置であって、
エッチングの処理ステップと、プラズマクリーニングのステップと、処理室内壁を保護するための壁面安定化ステップの処理を設定し、各ステップの順序、頻度を任意に設定する機能を具備したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項6】
被処理物が設置された処理室内に処理ガスを導入してプラズマを発生させ、被処理物を真空処理するプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化処理方法であって、
エッチング処理に続くプラズマクリーニング処理の後に、処理室内壁表面を保護する内壁保護ガスを導入してプラズマ処理する処理室壁面安定化処理を施すことを特徴とするプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化処理方法。
【請求項7】
請求項6記載のプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化処理方法において、
内壁保護ガスは酸素(O)ガス、もしくはフッ素系(F)ガスを含み、総ガス流量に対して酸素(O)ガス、もしくはフッ素系(F)ガスの流量比が少なくとも50%以上であることを特徴とするプラズマ処理装置の処理室内壁面安定化処理方法。
【請求項8】
請求項5記載のプラズマ処理装置において、
請求項1乃至請求項4記載の処理室内モニタ手段が発する処理室内壁を構成する材料を含む反応物の増加を示す信号を受けて、あらかじめ設定された壁面安定化処理ステップを実行する機能を具備したことを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項9】
請求項8記載のプラズマ処理装置において、
請求項1乃至請求項4記載の処理室内モニタ手段が発する処理室内壁を構成する材料を含む反応物の増加を示す信号の積算回数に応じて、あらかじめ設定された壁面安定化処理ステップの時間を所定の時間延長して実行する機能を具備したことを特徴とするプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−32790(P2006−32790A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212048(P2004−212048)
【出願日】平成16年7月20日(2004.7.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】