説明

プリフォームの成形方法、プリフォーム及び壜体

【課題】 プリフォームにおいて、着色樹脂からなる着色層の層厚を上下方向に徐々に変化させることを課題とするものであり、もって着色濃度に係るグラデーションが高度に現出され、今までにない加飾性を有する2軸延伸ブロー成形の合成樹脂製壜体を提供する。
【解決手段】 2軸延伸ブロー成形用のプリフォーム成形方法において、
底部の中央に対向位置するゲートを介して金型キャビティ内に着色樹脂をショートショット状態に1次射出し、この1次射出の終了時点から所定の待機時間後、逐次的にプリフォームを形成する主材料となる主材樹脂を2次射出し、前記待機時間の調整により、2次射出により主材樹脂を、ショートショット状態で金型キャビティ内に位置する着色樹脂の中央部を突き抜くように流動させ、プリフォームの内周面近傍と外周面近傍に2重円筒状に着色樹脂からなる着色層を形成すると共に、この着色層の層厚がプリフォーム上方向に向かって徐々に減少するグラデーション領域を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は層厚をグラデーション状に変化させた着色層を有する合成樹脂製のプリフォームの成形方法および当該成形方法によるプリフォーム、そして着色濃度をグラデーション状に変化させて加飾した合成樹脂製壜体に関する。

【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製等の壜体は、飲料用、食品用、化粧料等のさまざまな分野に使用されており、商品として差別化するため、様々な加飾方法が採用されている。印刷されたシュリンクフィルムにより壜体を加飾する場合が多いが、特許文献1には積層構造にし、中間層に着色層を間歇的に形成したプリフォームをブロー成形した壜体に関する記載がある。
【特許文献1】特開平2−98409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願発明者らは、PET樹脂製等の透明性を有する2軸延伸ブロー成形ボトルにおいて、着色の濃淡を上下方向に変化させて、着色濃度に係るグラデーションを現出させて壜体を加飾する技術の開発に取り組んだ。その中で特許文献1に記載される方法で、プリフォームにおいて単に着色樹脂で中間層を形成して2軸延伸ブロー成形してたが、若干の濃淡のグラデーションは現出できるものの、グラデーションの程度が限定的であり、加飾性の点から不満足なものであった。
【0004】
そこで本発明は、プリフォームにおいて、着色樹脂からなる着色層の層厚を上下方向に徐々に変化させることを課題とするものであり、もって着色濃度に係るグラデーションが高度に現出され、今までにない加飾性を有する2軸延伸ブロー成形の合成樹脂製壜体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決する本発明のうち、請求項1〜6はプリフォームの成形方法に係るものであり、このうち請求項1記載の発明の成形方法は、
2軸延伸ブロー成形用のプリフォームの成形方法であって、
底部の中央に対向位置するゲートを介して金型のキャビティ内に着色樹脂をショートショット状態に1次射出し、
この1次射出の終了時点から所定の待機時間の経過後に逐次的にプリフォームを形成する主材料となる主材樹脂を2次射出し、
前記待機時間の調整により、2次射出により主材樹脂を、ショートショット状態で金型キャビティ内に位置する着色樹脂の中央部を突き抜くように流動させ、
プリフォームの内周面近傍と外周面近傍に2重円筒状に着色樹脂からなる着色層を形成すると共に、この着色層の層厚がプリフォーム上方向に向かって徐々に減少するグラデーション領域を形成するようにしたこと、
にある。
【0006】
請求項1記載の成形方法によれば、1次射出により着色樹脂がショートショット状に射出するが、この1次射出終了後、所定の待機時間の経過後に逐次的に主材樹脂を2次射出する。このようにすると、待機時間の経過によってキャビティ金型面およびコア金型面に接した部分およびその近傍部分(以下総称して金型面近傍部と記す場合がある。)で、ショートショット状に射出された着色樹脂の冷却が進行して、当該部分では樹脂の冷却固化、あるいは溶融粘度の増大が進行した状態となる。
ここで、待機時間を適宜調整して決めることにより、1次射出した着色樹脂を、金型面近傍部では上記のように冷却を進行させて、キャビティの中心部分近傍では高温のままで保持した状態とすることができる。
【0007】
そして、上記のような状態で、次に逐次的に主材樹脂を2次射出すると溶融状態の主材樹脂は、プリフォームの底部中央に対向位置するゲートを介して、着色樹脂のキャビティ中央部の高温部分を突き抜けるように、着色樹脂の一部を一緒に引きずるようにして、キャビティ内を口筒部上端部に相当する部分に向けて流動し、キャビティ内に充填される。
この際、金型面近傍部分、特に極く近傍に位置する着色樹脂はほとんど流動せず1次射出された位置に留まり、着色樹脂は流動方向に引き延ばされ、その結果として、この着色樹脂の特に流動先端部の層厚は流動方向に向かってグラデーション状に徐々に減少する。
【0008】
そして、上記のような逐次射出により成形されたプリフォームでは、着色樹脂からなる着色層が内周面と外周面近傍に2重円筒状に形成されると共に、この着色層の層厚がプリフォーム上端方向に向かって徐々に減少するグラデーション領域が形成される。
なお、成形条件によって、あるいはプリフォームの高さ位置によって、着色層のさらに内側、あるいは外側に薄層状の主材樹脂層が形成され、この主材樹脂層により内周面(最内層)あるいは外周面(最外層)を形成するので、ここでは内周面あるいは外周面も含めた部分を、内周面と外周面近傍という用語で記載している。
【0009】
以上説明したように、請求項1記載の成形方法の基本的な技術思想は、逐次射出成形において、1次射出と2射出の間に適宜の待機時間を挟むことにより、キャビティ内でショートショットした着色樹脂の金型面近傍部と中央部の冷却程度を利用して、後から射出する主材樹脂の流動により着色樹脂の一部を流動方向に引き延ばして層厚に係るグラデーション領域を形成することにある。
【0010】
そして、層厚に係るグラデーションの程度、すなわち層厚の変化の態様は、目的に応じて上記1次射出および2次射出の射出量、射出速度、射出圧力、射出温度、待機時間等の逐次射出の条件、そして使用する樹脂の溶融粘度等により制御することができる。
【0011】
請求項2記載の発明の成形方法は、請求項1記載の発明において、待機時間、2次射出の射出速度、および射出圧力の組み合わせにより、着色層の層厚に係るグラデーションの程度を制御するようにしたこと、にある。
【0012】
請求項2記載の上記方法により、逐次射出の条件のうち、待機時間、2次射出の射出速度、および射出圧力により着色層の層厚に係るグラデーションの程度を比較的容易に制御することができる。
待機時間を短くすること、2次射出の射出速度を速く、そして射出圧力を高くすることにより、より緩やかに層厚を変化させることができ、着色層の先端部に曳糸状の層を形成することもできる。
【0013】
請求項3記載の発明の成形方法は、請求項1または2記載の発明において、着色樹脂として主材樹脂を着色した合成樹脂を用いるようにしたこと、にある。
【0014】
請求項3記載の成形方法は、プリフォーム全体を同一樹脂で形成するものであり、全体を同一樹脂で成形することにより安定した成形が可能である。
【0015】
請求項4記載の発明の成形方法は、請求項1または2記載の発明において、着色樹脂の溶融粘度を主材樹脂に比較して低粘度としたこと、にある。
【0016】
請求項4記載の成形方法は、ショートショット状態の着色樹脂はその中央部を突き抜ける主材樹脂の流動の作用を受けて変形するが、着色樹脂を低粘度とすることにより、この作用がより効果的となり先端部の層厚をより曳糸状に変化させることが可能となる。
【0017】
請求項5記載の発明の成形方法は、請求項1、2、3または4記載の発明において、主材樹脂、および着色樹脂を共に透明性を有する樹脂としたこと、にある。
【0018】
請求項5載の成形方法により、最終製品である壜体で光の透過により着色濃度に係るグラデーション効果をより効果的に現出させることができ、今までにない加飾効果を有する壜体を提供することができる。
【0019】
請求項6記載の発明の成形方法は、請求項1、2、3、4または5記載の発明において、1次射出の前に所定量の主材樹脂を予備射出するようにしたこと、にある。
【0020】
本発明のプリフォームの逐次射出成形法では、一連の着色樹脂による1次射出、待機時間、主材樹脂による2次射出が基本となるが、請求項6記載の成形方法は、1次射出の前に所定量の主材樹脂を射出するようにしたものである。
このように1次射出の前に所定量の主材樹脂を射出することにより、壜体での加飾目的に応じて、プリフォームにおける着色層の形成位置を適宜設定することができる。
【0021】
また、予備射出後の着色樹脂による1次射出の際には、ショートショット状に予備射出された主材樹脂の中心部を突き抜けるようにして、この主材樹脂を金型面に引き延ばしながら着色樹脂を流動させることができ、プリフォームの外周面(最外層)と内周面(最内層)を主材樹脂で構成することもでき、壜体製品では内容物が直接着色樹脂に接触しないので安心して使用することができる。
【0022】
次に、請求項7記載の発明はプリフォームに係るものであり、その発明の手段は、底部中央に対向位置するゲートを介して金型キャビティ内に着色樹脂をショートショット状態に1次射出し、所定の待機時間経過後に、次にプリフォームを形成する主材料となる主材樹脂を2次射出する逐次射出成形方法により成形されたプリフォームであって、
内周面と外周面の近傍に2重円筒状に着色樹脂からなる着色層を有し、この着色層の層厚がプリフォーム上端方向に向かって徐々に減少するグラデーション領域が形成されていること、
にある。
【0023】
請求項7記載の上記構成のプリフォームは前述した請求項1〜6記載の成形方法によって得ることができ、このプリフォームを2軸延伸ブロー成形して、着色樹脂からなる着色層により着色濃度に係るグラデーションが高度に現出された今までにない加飾性を有する壜体を提供することができる。
【0024】
次に、請求項8および請求項9記載の発明は壜体に係るものであり、そのうち請求項8記載の発明の手段は、2軸延伸ブロー成形した合成樹脂製壜体において、一定の高さ範囲に亘って、内周面と外周面の近傍に2重円筒状に、着色樹脂からなり、層厚が上方に向かって徐々に減少する着色層が形成されており、該着色層により着色濃度に係るグラデーションが現出して加飾されていること、にある。
【0025】
請求項8記載の上記壜体は前述した請求項1〜6記載の成形方法によって得ることができるプリフォームを2軸延伸ブロー成形することにより得ることができ、着色層により着色濃度に係るグラデーションが高度に現出された今までにない加飾性を有する壜体を提供することができる。
【0026】
請求項9記載の発明の手段は、請求項8記載の発明にあって、PET樹脂製の壜体において、底部近傍から肩部にかけての一定の高さ範囲に、上方に向けて着色透明状態から無色透明状態まで連続的に徐々に変化する着色濃度に係るグラデーションを現出させたこと、にある。
【0027】
請求項9記載の上記構成により、底部近傍から肩部にかけての一定の高さ範囲に、着色状態から無色状態まで連続的に徐々に変化するグラデーションを現出させた、今までにない装飾性を有したPET樹脂製壜体を提供することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、上記した方法、構成であり以下に示す効果を奏する。
まず、請求項1〜請求項6はプリフォームの成形方法に係るものである。
請求項1記載の発明にあっては、待機時間を間に設けた逐次射出成形により、着色樹脂からなる着色層が内周面と外周面近傍に2重円筒状に形成されると共に、着色層の層厚がプリフォーム上端方向に向かって徐々に減少するグラデーション領域が形成されたプリフォームを得ることができる。
【0029】
請求項2記載の発明にあっては、待機時間を短くすること、2次射出の射出速度を速く、射出圧力を高くすることにより、より緩やかに層厚を変化させることができ、また着色層の先端部に曳糸状の層を形成することもできる。
【0030】
請求項3記載の発明にあっては、プリフォーム全体を同一樹脂で形成するものであり、全体を同一樹脂で成形することにより安定した成形が可能である。
【0031】
請求項4記載の発明にあっては、着色樹脂を低粘度とすることにより、着色層の先端部を容易に曳糸状に変化させることができる。
【0032】
請求項5記載の発明にあっては、光の透過によりグラデーション効果をより効果的に現出させることができ、今までにない装飾効果を有する壜体を提供することができる。
【0033】
請求項6記載の発明にあっては、1次射出の前に所定量の主材樹脂を予備射出することにより、壜体での加飾目的に応じて、プリフォームにおける着色層の形成位置を適宜設定することができ、またプリフォームの外周面と内周面を主材樹脂で構成することもでき、壜体製品では内容物が直接着色樹脂に接触しないので安心して使用することができる。
【0034】
請求項7記載の発明はプリフォームに係るものであり、このプリフォームを2軸延伸ブロー成形して、着色樹脂からなる着色層により着色濃度に係るグラデーションが高度に現出された今までにない加飾性を有する壜体を提供することができる。
【0035】
次に、請求項8および請求項9記載の発明は壜体に係るものである。
請求項8記載の発明にあっては、着色層により着色濃度に係るグラデーションが高度に現出された今までにない加飾性を有する壜体を提供することができる。
【0036】
請求項9記載の発明にあっては、底部近傍から肩部にかけての一定の高さ範囲に、着色状態から無色状態まで連続的に徐々に変化する着色濃度に係るグラデーション領域を現出させた、今までにない装飾性を有したPET樹脂製壜体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明のプリフォームの成形方法、プリフォーム、および壜体の実施形態について実施例および図面を参照しながら説明する。
図1は本発明のプリフォーム成形方法に適用する逐次射出パターンの一例を示す概略説明図であり、図2および図3は本発明のプリフォーム成形方法に使用する金型の一例を示す断面図である。
【0038】
図2および図3に示す金型1はコア金型2とキャビティ金型3から成り、試験管状のプリフォームに対応したキャビティ4が形成されている。そしてゲート5はプリフォーム101の底部107(図5も参照)の中央部に対応する位置に形成されており、図1に示される射出パターンで射出される溶融樹脂はこのゲート5から供給され、キャビティ4内を口筒部104に対応する部分に向かって流動してキャビティ4を充填する。
【0039】
図1に概略的に示す射出パターンは逐次射出パターンの一例であり、まず時間t1〜t2間で着色樹脂12による1次射出J1をして、そしてt2〜t3間の待機時間Htの経過後、次に逐次的にt3〜t5間で主材樹脂11による2次射出J2をするようにしたものである。
【0040】
図4(a)、(b)、(c)は上記射出パターンのそれぞれt2時点、t4時点およびt5時点での状態を示す概略説明図であり、t2時点ではキャビティ4がショートショット状に、着色樹脂12で底部から略1/4程度の範囲に充填された状態となっている(図2、図3および図4(a)参照)。
【0041】
次に、上記充填状態でt2時点で着色樹脂の供給が停止され、待機時間Ht(t2〜t3)の進行と共に、キャビティ金型3の金型面およびコア金型2の金が多面の金型面近傍部12a、12b(図3中の拡大図参照)で、ショートショット状に射出された着色樹脂12の冷却が進行して、当該部分では樹脂の冷却固化、あるいは溶融粘度の増大が進行する。
【0042】
そしてこのような状態で、次に逐次的に主材樹脂11による2次射出J2をすると、図4(b)に概略的に示したように、溶融状態の主材樹脂11はプリフォーム101の底部107中央に対向位置するゲート5を介して、着色樹脂12のキャビティ4中央部12c(図3中の拡大図参照)の高温部分を突き抜け、さらに先端部13を突き破って、着色樹脂12の一部を一緒に引きずるように流動変形させながら、キャビティ4内を口筒部104上端部に相当する部分に向けて流動する(図4(b)中の白抜き矢印参照)。そして、さらに主材樹脂11が流入し、t5時点で図4(c)に示される状態となる。
【0043】
この際、金型面の極く近傍に位置する着色樹脂12はほとんど流動せず1次射出J1された位置に留まるので、中央部12cに位置する着色樹脂12は流動方向に引き延ばされるように流動変形する。
なお、ここで図4(b)には主材樹脂11が着色樹脂12の先端部13を突き破って流動する例を示したが、必ずしもこのように先端部13を突き破るようにする必要は無く、加飾目的に応じて先端部13は突き破らずに主材樹脂11を流動させることもできる。
【0044】
図5は、主材樹脂11としてPET樹脂、着色樹脂12としては同じPET樹脂を顔料で着色したものを使用し、上記のような逐次射出成形方法により成形したプリフォーム101を一部縦断して示す正面図である。
このプリフォーム101では、着色層103が内周面と外周面近傍に2重円筒状に形成され、その層厚は、プリフォーム101の略下半分に相当する高さ範囲h1では略一定であり、その上の高さ範囲h2では曳糸状に変化しており、プリフォーム101の上方に向かって緩やかに減少変化する層厚に係るグラデーション領域110が現出されている。
【0045】
次に図6は、図5のプリフォーム101を2軸ブロー延伸成形して得られた、円筒状の胴部206を有する壜体201であり、底部207から略中央高さ位置までの高さ範囲h1は略同様の濃度に着色された部分である。また、その上方のネックリング205の直下までの高さ範囲h1では着色の程度が上方に向かって徐々に無色透明状態に変化する着色濃度に係るグラデーション領域210が形成されている。また口筒部204を含むその上の部分は無色透明な領域である。
【0046】
以上、実施例により本発明の実施形態を説明したが本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。使用する合成樹脂はPET樹脂に限らず、PP樹脂等の従来より2軸延伸ブロー成形壜体に使用されている樹脂を使用することがきるし、目的に応じて着色樹脂の溶融粘度を変えることもでき、また同種に限らず他の種類の樹脂を使用することもできる。なお、主材樹脂は無色透明に限定されるものではなく、目的に応じて着色透明、半透明、あるいは不透明とすることもできる。
【0047】
また、図1で説明した逐次射出成形の射出パターンの他にも、目的に応じ他の射出パターンとすることができる。図7は本発明に適用する逐次射出成形の他のパターンであるが、1次射出J1の前に所定量の主材樹脂11を予備射出JPするようにしたものである。このように1次射出J1の前に所定量の主材樹脂を射出することにより、プリフォーム101における着色層103の下端位置を図5に示した実施例のように底部107に限定することなく、上記予備射出JPの射出量により、嵩上げして所定の位置にすることができ、壜体201での加飾目的に応じて着色層103の形成位置を変えることができる。
【0048】
さらには、予備射出JP後の着色樹脂による1次射出J1の際には、ショートショット状に予備射出された主材樹脂の中央部を突き抜けるようにして、この主材樹脂を金型面に引き延ばしながら着色樹脂を流動させることができ、射出条件によってプリフォームの外周面(最外層)と内周面(最内層)を主材樹脂で構成することもでき、壜体製品では内容物が直接着色樹脂に接触しないので安心して使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のプリフォームの成形方法により、着色層により着色濃度のグラデーションが高度に現出された今までにない加飾性を有する壜体を提供することができ、これにより製品を差別化することができ、幅広い使用展開が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のプリフォーム成形方法に適用する逐次射出パターンの一例を示す概略説明図である。
【図2】プリフォーム成形用の金型の一例を示す縦断正面図である。
【図3】図2の金型のA−A線に沿った平断面図である。
【図4】図1の射出パターンによる金型キャビティへの溶融樹脂の充填過程を示す概略説明図である。
【図5】図1の射出パターンにより成形されたプリフォームを一部縦断して示す正面図である。
【図6】図5のプリフォームを2軸延伸ブロー成形して得られた壜体の正面図である。
【図7】逐次射出パターンの他の例を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0051】
1 ;金型
2 ;コア金型
3 ;キャビティ金型
4 ;キャビティ
5 ;ゲート
11;主材樹脂
12;着色樹脂
12a、12b;(金型面)近傍部
12c;(キャビティ)中央部
13;先端部
101;プリフォーム
102;主材樹脂層
103;着色層
104;口部
105;ネックリング
106;胴部
107;底部
110;グラデーション領域
201;壜体
204;口筒部
205;ネックリング
205a;肩部
206;胴部
207;底部
210;グラデーション領域
h1;高さ範囲
h2;高さ範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部(107)中央に対向位置するゲート(5)を介して金型(1)のキャビティ(4)内に着色樹脂(12)をショートショット状態に1次射出(J1)し、該1次射出(J1)の終了時点から待機時間(Ht)の経過後、逐次的にプリフォーム(101)を形成する主材料となる主材樹脂(11)を2次射出(J2)し、前記待機時間(Ht)の調整により、前記2次射出(J2)により主材樹脂(11)を、ショートショット状態で金型(1)キャビティ(4)内に位置する着色樹脂(12)の中央部(12c)を突き抜くように流動させ、プリフォーム(101)の内周面近傍と外周面近傍に2重円筒状に着色樹脂(12)からなる着色層(103)を形成すると共に、該着色層(103)の層厚がプリフォーム(101)上方向に向かって徐々に減少するグラデーション領域(101)を形成するようにした2軸延伸ブロー成形用のプリフォーム成形方法。
【請求項2】
待機時間(Ht)、2次射出(J2)の射出速度、および射出圧力の組み合わせにより、着色層(103)の層厚に係るグラデーションの程度を制御するようにした請求項1記載のプリフォーム成形方法。
【請求項3】
着色樹脂(12)として主材樹脂(11)を着色した合成樹脂を用いるようにした請求項1または2記載のプリフォーム成形方法。
【請求項4】
着色樹脂(12)の溶融粘度を主材樹脂(11)に比較して低粘度とした請求項1または2記載のプリフォーム成形方法。
【請求項5】
主材樹脂(11)、および着色樹脂(12)を共に透明性を有する樹脂とした請求項1、2、3または4記載のプリフォーム成形方法。
【請求項6】
1次射出(J1)の前に所定量の主材樹脂(11)を予備射出(JP)するようにした請求項1、2、3、4または5記載のプリフォーム成形方法。
【請求項7】
底部(107)中央に対向位置するゲート(5)を介して金型(1)のキャビティ(4)内に着色樹脂(12)をショートショット状態に1次射出(J1)し、所定の待機時間(Ht)の経過後に、次にプリフォーム(101)を形成する主材料となる主材樹脂(11)を2次射出(J2)する逐次射出成形方法により成形されたプリフォーム(101)であって、内周面と外周面の近傍に2重円筒状に着色樹脂(12)からなる着色層(103)を有し、前記着色層(103)の層厚がプリフォーム(101)上端方向に向かって徐々に減少するグラデーション領域(101)が形成されていることを特徴とする2軸延伸ブロー成形用のプリフォーム。
【請求項8】
一定の高さ範囲に亘って、内周面と外周面の近傍に2重円筒状に、着色樹脂(12)からなり、層厚が上方に向かって徐々に減少する着色層(103)が形成されており、該着色層(103)により着色濃度に係るグラデーションが現出して加飾された2軸延伸ブロー成形した合成樹脂製壜体。
【請求項9】
ポリエチレンテレフタレート樹脂製であり、底部(207)近傍から肩部(205a)にかけての一定の高さ範囲に、上方に向けて着色透明状態から無色透明状態まで連続的に徐々に変化する着色濃度に係るグラデーションを現出させた請求項8記載の合成樹脂製壜体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図7】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−334854(P2006−334854A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160477(P2005−160477)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】