説明

プリフォーム成形機構及びプリフォーム成形方法

【課題】樹脂を打錠プレス(成形機)の所定の位置に配置するまでの間も加熱することでプリフォーム成形のための時間の短縮を可能とする。
【解決手段】樹脂102を導くシュータ114と樹脂102を所定の位置で加熱し成形する打錠プレス118(成形機)とを備えて、被成形品160を圧縮封止する圧縮成形装置150に供給するために、打錠プレス118(成形機)で樹脂102からプリフォーム樹脂104を成形するプリフォーム成形機構100において、シュータ114に導かれる樹脂102が所定の位置に配置されるまでに樹脂102を加熱する下型120(加熱機構)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体チップ等が搭載された基板(被成形品)を圧縮封止する圧縮成形装置で用いられるプリフォーム樹脂を成形するプリフォーム成形機構及びプリフォーム成形方法の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体実装分野の製造工程に、機械的ストレスや温度・湿度の影響から半導体チップを保護するために半導体チップを樹脂で固める樹脂封止工程がある。その樹脂封止工程を行う封止手法の一つとして、圧縮成形方法がある。この手法は、熱硬化性樹脂(エポキシ樹脂にガラスフィラを混入させたもの;単に樹脂と称する)を金型上に載置し、樹脂を加熱溶融した状態で半導体チップが搭載された基板(被成形品)に押し付けることにより成形品を成形するというものである。この手法を用いると、ワイヤ変形を抑えた高品質な封止を行うことができるという利点がある。
【0003】
圧縮成形に用いられる樹脂には粉末状や板状のものがある。板状の樹脂は、プリフォーム樹脂と呼ばれ、例えば粉末状の樹脂を加熱加圧して成形される。プリフォーム樹脂を使うことにより、樹脂封止工程時の樹脂の飛散を防止することができる。また、プリフォーム樹脂は、粉末状の樹脂に比べて高密度であるため、熱伝導性がよく、樹脂を早く昇温して硬化させることができる。このため、樹脂封止工程にかかる時間を短縮することができる。
【0004】
プリフォーム樹脂に関しては、例えば特許文献1が挙げられる。特許文献1では、シュータを介して粉末状の樹脂が離型フィルムに均一に搭載される。そして、搭載された樹脂が、離型フィルムでプリフォーム成形の行われる位置(打錠プレスの所定の位置)まで移動され、プリフォーム用の成形機(打錠プレス)で板状に成形される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−183753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1では、離型フィルムに搭載された樹脂に対しては、プリフォーム成形の行われる位置(打錠プレスの所定の位置)に配置されるまで加熱がなされず、プリフォーム成形に長い時間がかかるおそれがあった。即ち、樹脂封止工程を早めようとしても、プリフォーム成形が律速となる可能性があった。
【0007】
本発明は、これらの問題点を解消するべくなされたものであって、樹脂を打錠プレス(成形機)の所定の位置に配置するまでの間も加熱することでプリフォーム成形のための時間の短縮を可能とするプリフォーム成形機構及びプリフォーム成形方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、樹脂を導くシュータと該樹脂を所定の位置で加熱し成形する成形機とを備えて、被成形品を圧縮封止する圧縮成形装置に供給するために、前記成形機で前記樹脂からプリフォーム樹脂を成形するプリフォーム成形機構において、前記シュータに導かれる樹脂が前記所定の位置に配置されるまでに該樹脂を加熱する加熱機構を備えることで、上記課題を解決するものである。
【0009】
本発明では、シュータに導かれる樹脂が成形機の所定の位置に配置されるまでに該樹脂を加熱する加熱機構を備えている。即ち、成形機の所定の位置に樹脂が配置された段階で、樹脂はある程度の温度に昇温されている。このため、成形機の所定の位置に配置されてから樹脂が加熱されるよりも樹脂を早く溶融できるので、樹脂の溶融から流動完了までの時間が短くなり、プリフォーム成形にかかる時間を短縮することが可能となる。
【0010】
なお、更に、前記シュータに導かれる樹脂を搭載するとともに、該樹脂を該樹脂の搭載される位置から前記所定の位置まで移動させる離型フィルムを備える場合には、樹脂を成形機の所定の位置まで移動させることが容易となる。同時に、プリフォーム樹脂の成形機への貼り付きを防止でき、成形機の汚れや樹脂量の誤差の発生を回避することができる。
【0011】
なお、前記加熱機構が、前記成形機の一部を構成するとともに、前記樹脂の前記シュータから投下される位置から前記所定の位置まで移動可能とされている場合には、加熱機構が成形機に兼用されていることで、樹脂からプリフォーム成形してプリフォーム樹脂とするまでの加熱を一元的に制御でき、樹脂の温度制御を容易に行うことができる。同時に、加熱を行う新たな熱源を必要とせず部材の兼用により部材増加を抑えることも可能であり、プリフォーム成形機構をより低コストで実現することも可能となる。具体的に、前記成形機が下型と該下型に対向して配置され該下型に対して接近・離反可能な上型とを有し、前記下型が前記加熱機構とされている場合には、更に樹脂の温度制御を容易に行うことができる。
【0012】
或いは、前記樹脂の搭載される位置から前記所定の位置までの間の前記離型フィルムに隣接して、前記加熱機構が前記成形機とは別に設けられている場合には、従来の成形機を変更することなくそのまま流用可能となる。このため、プリフォーム成形機構の開発期間や開発費用を最小限に抑えることができる。そして、前記加熱機構が前記離型フィルムの移動する方向に移動可能とされている場合には、加熱機構を小型としながらも樹脂を長時間加熱することが可能となる。更に、前記加熱機構が前記離型フィルムの下面に接触して配置されている場合には、更に樹脂の温度制御を容易に行うことができる。
【0013】
なお、本発明は、樹脂を導くシュータと該樹脂を所定の位置で加熱し成形する成形機とを用いて、被成形品を圧縮封止する圧縮成形装置に供給するために、前記成形機で前記樹脂からプリフォーム樹脂を成形するプリフォーム成形方法において、前記樹脂を前記所定の位置に配置するまでに該樹脂を加熱する工程を含むことを特徴とするプリフォーム成形方法と捉えることもできる。
【発明の効果】
【0014】
本発明を適用することにより、樹脂を打錠プレス(成形機)の所定の位置に配置するまでの間も加熱することでプリフォーム成形のための時間の短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係るプリフォーム成形機構の一例であり、樹脂をシュータを介して離型フィルムに搭載した状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図2】同じく樹脂を打錠プレスの所定の位置に移動させた状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図3】同じく打錠プレスの所定の位置で樹脂がプリフォーム成形された状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図4】同じく冷却部にプリフォーム樹脂が配置された状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図5】同じく冷却部でプリフォーム樹脂が下型から上昇した状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図6】同じくプリフォーム樹脂を離型フィルムから取り外す位置に移動させた状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図7】本発明の第2実施形態に係るプリフォーム成形機構の一例であり、樹脂をシュータを介して離型フィルムに搭載した状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図8】同じく樹脂を打錠プレスの所定の位置に移動させた状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図9】同じく打錠プレスの所定の位置で樹脂がプリフォーム成形された状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図10】同じく冷却部にプリフォーム樹脂が配置された状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図11】同じく冷却部でプリフォーム樹脂が下型から上昇した状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図12】同じくプリフォーム樹脂を離型フィルムから取り外す位置に移動させた状態を示す側面図(A)と上面図(B)
【図13】本発明の第3実施形態に係るプリフォーム成形機構の一例を示す側面図(A)と上面図(B)
【図14】本発明の第4実施形態に係るプリフォーム成形機構の概略を示す模式図
【図15】圧縮成形装置の一例を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。
【0017】
最初に、本発明の第1実施形態に係るプリフォーム成形機構で供給されるプリフォーム樹脂が適用可能な圧縮成形装置について図15を用いて以下に説明する。
【0018】
圧縮成形装置150は、圧縮成形用金型として、上型152と下型154とを有する。下型154にはプレス機構(図示しない)が連結されており、所定のタイミングで下型154を上型152に対して接近・離反することが可能とされている。下型154は、貫通孔を備えた枠状金型158と当該貫通孔に嵌合して配置される圧縮金型156とを有した構成とされている。また、上型152に対する下型154の対向面には、離型フィルム148が供給されている。この離型フィルム148は図示せぬ供給機構によって案内され、所定のタイミングで順次送られて使用される。被成形品160(半導体チップ162を搭載した基板)は、上型152に備わる吸着機構(図示しない)によって吸着保持される。そして、被成形品160は、下型154の対向面(上型152側表面)の一部に形成されるキャビティにおいて、プリフォーム成形機構100で所定の大きさに成形されたプリフォーム樹脂104で圧縮封止される。圧縮封止が終了すると、上型152と下型154とはプレス機構によって離反(型開き)される。封止された被成形品160(成形品)は、上型152から外されて下型154に載置されるが、離型フィルム148の存在によって下型154から容易に取り外すことが可能である。成形品が図示せぬ搬送機構によって運びだされた後、次の圧縮封止が行なわれる(樹脂封止工程)。
【0019】
次に、プリフォーム成形機構100について、図1を用いて説明する。
【0020】
最初に、プリフォーム成形機構100の概略について説明する。
【0021】
プリフォーム成形機構100は、樹脂102を、圧縮成形装置150のキャビティの形状に合わせて予め所定の大きさに成形(プリフォーム成形)することを目的としている。プリフォーム成形機構100は、樹脂102及びプリフォーム樹脂104を移動させる搬送機構105と、樹脂102を導くシュータ114と、樹脂102を所定の位置で加熱し成形する打錠プレス118(成形機)と、プリフォーム樹脂104を冷却する冷却部128と、を備えている。そして、プリフォーム成形機構100は、被成形品160を圧縮封止する圧縮成形装置150に供給するために、打錠プレス118で樹脂102からプリフォーム樹脂104を成形する。そして、プリフォーム成形機構100は、シュータ114に導かれる樹脂102が打錠プレス118の所定の位置に配置されるまでに樹脂102を加熱する下型120(加熱機構)を備える。なお、下型120は、打錠プレス118の一部を構成するとともに、樹脂102のシュータ114から投下される位置から打錠プレス118の所定の位置まで移動可能とされている。
【0022】
以下に、各構成要素について詳細に説明する。
【0023】
前記搬送機構105は、図1に示す如く、離型フィルム106と第1支持ローラ108と第2支持ローラ110と可動ローラ112とを備える。第1支持ローラ108および第2支持ローラ110は水平方向(X方向)で位置が異なるように配置されている。そして、第1支持ローラ108より上側且つ第2支持ローラ110より下側の位置に可動ローラ112が設けられている。可動ローラ112は、自身が水平方向に移動することが可能とされており、開いた状態の打錠プレス118と冷却部128の間に進入することが可能とされている。第1支持ローラ108、第2支持ローラ110および可動ローラ112には(離型フィルム148とは異なる)離型フィルム106が係合している。離型フィルム106は、シュータ114に導かれる樹脂102を搭載するとともに、樹脂102を樹脂102の搭載される位置から打錠プレス118の所定の位置まで移動させることができる。離型フィルム106には、例えば、ポリプロピレンフィルムが使用される。
【0024】
前記シュータ114は、図1に示す如く、図示せぬ計量部で計量された樹脂102を離型フィルム106に導き、樹脂102を投下して離型フィルム106に搭載する筒状部材である。なお、シュータは必ずしも完全な筒状である必要はなく、例えば断面が半円となるような一部開いた状態のものであっても、樹脂を導く機能を備えていればよい。
【0025】
前記打錠プレス118は、図1に示す如く、上型122と下型120とを有する。上型122は、下型120に対向して配置され下型120に対して図示せぬプレス機構によって接近・離反可能とされ、所定のタイミングで開閉可能とされている。上型122と下型120には各々、図示せぬヒータが内設され、プリフォーム成形に適した温度(例えば100℃)に保持されている。そして、上型122は上下方向に移動可能とされ、下型120は水平方向に移動可能とされている。
【0026】
下型120は、加熱部120Aと断熱部120Bとスライダ部120Cと接続部120Dとを備える。加熱部120Aには図示せぬヒータが設けられている。加熱部120Aの下側に断熱部120Bが配置されており、加熱部120Aの熱が断熱部120Bより下側に伝導・拡散しないようにされている。断熱部120Bの下側には、スライダ部120Cが設けられている。スライダ部120Cは、レール126上で水平方向に移動可能に支持されている。スライダ部120Cの側面には接続部120Dが設けられており、そこにシリンダ124のロッド124Aの先端が接続されている。シリンダ124は、エアシリンダであり、図示せぬ圧縮空気供給源とつながっている。ロッド124Aは、レール126の伸びる方向(水平方向)に圧縮空気供給源からの圧縮空気で伸縮可能とされている。そのため、シリンダ124のロッド124Aの伸縮に伴い、下型120が水平方向に移動可能とされている。即ち、下型120は、シュータ114に導かれる樹脂102が打錠プレス118の所定の位置に配置されるまでに樹脂102を加熱する加熱機構として機能する。
【0027】
上型122は、下型120と同様に図示せぬヒータと断熱部とを有し、圧縮型122Aと枠型122Bとを備える。圧縮型122Aは枠型122Bの貫通孔に嵌合している。枠型122Bはばね122Cを介し圧縮型122Aと接続されている。このため、枠型122Bは、圧縮型122Aに対して相対的に鉛直方向(Z方向)で移動可能とされている。
【0028】
前記冷却部128は、図1に示す如く、打錠プレス118に隣接して配置されている。冷却部128も、打錠プレス118と同じく、上型132と下型130とを有し、図示せぬプレス機構によって所定のタイミングで開閉可能とされている。
【0029】
なお、打錠プレス118及び冷却部128のそれぞれ下型120、130の位置と略同じ高さの位置に、第1支持ローラ108が設けられている。また、打錠プレス118及び冷却部128のそれぞれ上型122、132の位置と異なる高さの位置(低位置)に第2支持ローラ110が設けられている(型締め時には、上型122、132と第2支持ローラ110の高さが概略同じになる)。離型フィルム106に樹脂102が搭載されることで、樹脂102を打錠プレス118の所定の位置(上型122が上下動し樹脂102を下型120と挟み込み、樹脂102をプリフォーム成形する位置)に移動させ、プリフォーム成形された樹脂(プリフォーム樹脂104)を冷却部128に移動させる。同時に、樹脂102が打錠プレス118に付着すること等を防止することができる。
【0030】
次に、プリフォーム成形機構100におけるプリフォーム成形方法について図1〜図6を用いて説明する。
【0031】
まず、可動ローラ112が第2支持ローラ110の近傍(図1で第2支持ローラ110の右側)に位置される。同時に、シリンダ124のロッド124Aが縮んだ状態とされ、シュータ114の真下に下型120が配置される。そして、シュータ114を降下させて、離型フィルム106にほとんど接触した状態にシュータ114を配置する。そして、図示せぬ計量部から投下された樹脂102を、シュータ114で導き離型フィルム106に搭載する(図1)。このとき、離型フィルム106の下面には下型120の上面が密着した状態とされている。下型120は一定の温度に加熱されているので、樹脂102が離型フィルム106に搭載された段階(シュータ114から投下された位置)から、樹脂102の加熱が始まり、温度が上昇し始める。
【0032】
次に、離型フィルム106上に搭載された樹脂102を、打錠プレス118の所定の位置に配置するように、可動ローラ112を移動させる。このとき樹脂102は、離型フィルム106によって上下が包まれた状態で移動する。この移動と同時に、シリンダ124のロッド124Aが伸びた状態とされ下型120が打錠プレス118の所定の位置(上型122に対向する位置)に移動する(図2)。この移動の際にも離型フィルム106の下面と下型120の上面とは密着した状態を保つ。
【0033】
次に、打錠プレス118の所定の位置で、図示せぬプレス機構によって上型122が降下し打錠プレス118が型閉じ及び型締め(例えば1MPaの圧力)される。そして、樹脂102は、成形時間(例えば15秒)を経て目的とする形状(例えば、圧縮成形装置150のキャビティの形状と相似する形状)へとプリフォーム成形され、上型122が上昇する(図3)。
【0034】
次に、打錠プレス118によって樹脂102から成形されたプリフォーム樹脂104を冷却部128の位置に配置するように、可動ローラ112が移動する。プリフォーム樹脂104が冷却部128の位置に配置されると、上型132が下降し冷却部128が閉じられ、プリフォーム樹脂104を上型132と下型130とで挟む。そしてプリフォーム樹脂104が必要な程度にまで冷却される。その後に、上型132が上昇する(図4)。
【0035】
次に、可動ローラ112が鉛直方向(Z方向)に僅かに移動し、離型フィルム106を下型130から離反させる(図5)。
【0036】
次に、可動ローラ112は上記の鉛直方向の位置を保持したまま、再び第2支持ローラ110の近傍に戻る。このため、プリフォーム樹脂104の上面から離型フィルム106が剥離される。同時に、シリンダ124のロッド124Aが縮んだ状態とされ、シュータ114の真下に下型120が配置される。このとき、冷却後のプリフォーム樹脂104は、第1支持ローラ108と下型120との間に移動される。即ち、プリフォーム樹脂104は下型120と鉛直方向で重ならないような位置に配置される。そして、図示せぬ搬送機構によりプリフォーム樹脂104の上面が吸着され、圧縮成形用金型にプリフォーム樹脂104が搬送されることとなる。なお、可動ローラ112は元の鉛直方向の位置に戻る(図6)。
【0037】
このように本実施形態では、シュータ114に導かれる樹脂102が打錠プレス118(成形機)の所定の位置に配置されるまでに樹脂102を加熱する下型120を備えている。即ち、打錠プレス118の所定の位置に樹脂102が配置された段階で、樹脂102はある程度の温度に昇温されている。このため、打錠プレス118の所定の位置に配置されてから樹脂102が加熱されるよりも樹脂102を早く溶融できるので、樹脂102の溶融から流動完了までの時間が短くなり、プリフォーム成形にかかる時間を短縮することが可能となる。
【0038】
また、更に、シュータ114に導かれる樹脂102を搭載するとともに、樹脂102を樹脂102の搭載される位置(シュータ114から投下される位置)から所定の位置まで移動させる離型フィルム106を備えている。このため、樹脂102を打錠プレス118の所定の位置まで移動させることが容易となる。同時に、プリフォーム樹脂104の打錠プレス118への貼り付きを防止でき、打錠プレス118の汚れや樹脂量の誤差の発生を回避することができる。
【0039】
また、下型120が、打錠プレス118の一部を構成するとともに、樹脂102のシュータ114から投下される位置から所定の位置まで移動可能とされている。即ち、下型120(加熱機構)が打錠プレス118に兼用されていることで、樹脂102からプリフォーム成形してプリフォーム樹脂104とするまでの加熱を一元的に制御でき、樹脂102の温度制御を容易に行うことができる。同時に、加熱を行う新たな熱源を必要とせず部材の兼用により部材増加を抑えることも可能であり、プリフォーム成形機構100をより低コストで実現することも可能となる。具体的に、打錠プレス118が下型120と下型120に対向して配置され下型120に対して接近・離反可能な上型122とを有し、下型120が加熱機構とされている。このため、更に樹脂102の温度制御を容易に行うことができる。
【0040】
即ち、本実施形態においては、樹脂102を打錠プレス118(成形機)の所定の位置に配置するまでの間も加熱することでプリフォーム成形のための時間の短縮が可能となる。
【0041】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでも無い。
【0042】
例えば、第1実施形態においては、打錠プレス118の下型120が加熱機構とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図7〜図12に示す第2実施形態の如く、樹脂の搭載される位置から打錠プレスの所定の位置までの間の離型フィルムに隣接して、加熱機構である予熱ブロックが打錠プレスとは別に設けられていてもよい。以下、主に予熱ブロックの構成とプリフォーム成形方法とについて説明し、それ以外は第1実施形態と同様なので、下二桁の符号を同一として説明を省略する。
【0043】
予熱ブロック216は、図7に示す如く、打錠プレス218及び冷却部228のそれぞれの下型220、230とほぼ同じ鉛直方向(Z方向)の位置に配置されている。そして、予熱ブロック216は、第1支持ローラ208と下型220との間であって、水平方向(X方向)でシュータ214の真下から下型220の近傍までの長さを備えている。予熱ブロック216は、離型フィルム206の下面に接触する部分が加熱部216Aとされ、図示せぬヒータが内設されている。加熱部216Aの下側には断熱部216Bが設けられ、断熱部216Bの更に下側にベース部216Cが設けられている。なお、下型220も予熱ブロック216と同様な構成(加熱部220A、断熱部220B、ベース部220C)とされ、上型222に対向して配置されている。
【0044】
次に、プリフォーム成形機構200におけるプリフォーム成形方法について図7〜図12を用いて説明する。
【0045】
まず、可動ローラ212が第2支持ローラ210の近傍(図7で第2支持ローラ210の右側)に位置される。そして、シュータ214を降下させて、離型フィルム206にほとんど接触した状態にシュータ214を配置する。そして、図示せぬ計量部から投下された樹脂202を、シュータ214で導き離型フィルム206に搭載する(図7)。このとき、離型フィルム206の下面には予熱ブロック216の上面が密着した状態とされている。予熱ブロック216は一定の温度(例えば100℃)に加熱されているので、樹脂202が離型フィルム206に搭載された段階(シュータ214から投下された位置)から、樹脂202の加熱が始まり、温度が上昇し始める。
【0046】
次に、離型フィルム206上に搭載された樹脂202を、打錠プレス218の所定の位置(下型220の真上の位置)に配置するように、可動ローラ212を移動させる。この移動の際にも離型フィルム206の下面と予熱ブロック216の上面とは密着した状態を保つ。このとき樹脂202は、離型フィルム206によって上下が包まれた状態で移動する(図8)。
【0047】
次に、打錠プレス218の所定の位置で、図示せぬプレス機構によって上型222が降下し打錠プレス218が型閉じ及び型締め(例えば1MPaの圧力)される。そして、樹脂202は、成形時間(例えば15秒)を経て目的とする形状(例えば、圧縮成形装置のキャビティの形状と相似する形状)へとプリフォーム成形され、上型222が上昇する(図9)。
【0048】
次に、打錠プレス218によって樹脂202から成形されたプリフォーム樹脂204を冷却部228の位置に配置するように、可動ローラ212が移動する。プリフォーム樹脂204が冷却部228の位置に配置されると、上型232が下降し冷却部228が閉じられ、プリフォーム樹脂204を上型232と下型230とで挟む。そしてプリフォーム樹脂204が必要な程度にまで冷却される。その後に、上型232が上昇する(図10)。
【0049】
次に、可動ローラ212が鉛直方向に僅かに移動し、離型フィルム206を下型230から離反させる(図11)。
【0050】
次に、可動ローラ212は上記の鉛直方向の位置を保持したまま、再び第2支持ローラ210の近傍に戻る。このため、プリフォーム樹脂204の上面から離型フィルム206が剥離される。このとき、冷却後のプリフォーム樹脂204は、第1支持ローラ208と予熱ブロック216との間に移動される。即ち、プリフォーム樹脂204は予熱ブロック216と鉛直方向で重ならないような位置に配置される。そして、図示せぬ搬送機構によりプリフォーム樹脂204の上面が吸着され、圧縮成形用金型にプリフォーム樹脂204が搬送されることとなる。なお、可動ローラ212は元の鉛直方向の位置に戻る(図12)。
【0051】
このように本実施形態では、樹脂の搭載される位置から所定の位置までの間の離型フィルム206に隣接して、予熱ブロック216(加熱機構)が打錠プレス218とは別に設けられている。このため、従来の打錠プレスを変更することなくそのまま流用可能となる。このため、プリフォーム成形機構200の開発期間や開発費用を最小限に抑えることができる。そして、予熱ブロック216は、水平方向でシュータ214の真下から下型220の近傍までの長さを備えているので、可動部分を用いずとも、樹脂202を長時間加熱することが可能である。更に、予熱ブロック216は、離型フィルム206の下面に接触して配置されているので、更に樹脂202の温度制御を容易に行うことができる。
【0052】
また、上記実施形態においては、加熱機構が打錠プレスの下型と兼用の場合には水平高方向(X方向)に移動可能とされ、加熱機構が打錠プレスとは別に設けられた予熱ブロックとされた場合には水平方向で固定されていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図13に示す第3実施形態の如く、加熱機構が打錠プレス318とは別に設けられた予熱ブロック316であっても、予熱ブロック316(加熱機構)が離型フィルム306の移動する方向(X方向)に移動可能とされていてもよい。その場合には、予熱ブロック316を小型としながらも樹脂302を長時間加熱することが可能となる。なお、本実施形態の構成要素は、第1実施形態と第2実施形態と同様の機能を備えるので、下二桁の符号を同一として説明を省略する。なお、加熱機構が、打錠プレスの下型と兼用ではなく、例えば打錠プレスの上型と兼用であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、打錠プレスの上型が上下方向に移動可能とされていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、図14に示す第4実施形態の如くであってもよい。以下、第4実施形態について概略的に説明する。なお、図14(A)はシュータから樹脂が離型フィルム406に搭載された状態、図14(B)は樹脂が打錠プレスの所定の位置に配置され上型が離型フィルムを介して樹脂に当接した状態、図14(C)は打錠プレスで樹脂を挟み込んで型締めした状態、それぞれを示している。
【0054】
本実施形態では、打錠プレス418の下型420が上型422に対向して上下方向に移動可能とされている。そして、下型420が圧縮型420Aと枠型420Bとを備えている。圧縮型420Aが、枠型420Bの貫通孔に嵌合され、ばね420Cで枠型420Bと接続されている。それ以外の構成等は上記実施形態と同様なので、下二桁を同一とし説明を省略する。
【0055】
また、上記実施形態においては、離型フィルムの下面に加熱機構(下型、予熱ブロック)を接触させてシュータから投下された樹脂を加熱していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、加熱は赤外線等を用いて非接触で樹脂の上から、若しくは下から行ってもよい。また、樹脂が離型フィルム上に投下されてから加熱をしていたが、例えばシュータ自体(内部の雰囲気を含む)をある程度周囲温度から温度上昇させておき、離型フィルムへ樹脂を投下する前から樹脂の加熱をしてもよい。
【0056】
また、上記実施形態においては、プリフォーム成形機構に離型フィルムが用いられていたが、特に第1実施形態においては離型フィルムを用いなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、半導体チップ等の被成形品を圧縮封止するための圧縮成形装置に用いられるプリフォーム樹脂を成形するプリフォーム成形機構及びプリフォーム成形方法として好適である。
【符号の説明】
【0058】
100、200、300…プリフォーム成形機構
102、202、302、402…樹脂
104、204、304、404…プリフォーム樹脂
105…搬送機構
106、148、206、306、406…離型フィルム
108、208、308…第1支持ローラ
110、210、310…第2支持ローラ
112、212、312…可動ローラ
114、214、314、414…シュータ
118、218、318、418…打錠プレス(成形機)
120、130、154、220、230、320、330、420…下型
122、132、152、222、232、322、332、422…上型
124、324…シリンダ
126、326…レール
128、228、328…冷却部
150…圧縮成形装置
160…被成形品(基板)
216、316、416…予熱ブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を導くシュータと該樹脂を所定の位置で加熱し成形する成形機とを備えて、被成形品を圧縮封止する圧縮成形装置に供給するために、前記成形機で前記樹脂からプリフォーム樹脂を成形するプリフォーム成形機構において、
前記シュータに導かれる樹脂が前記所定の位置に配置されるまでに該樹脂を加熱する加熱機構を備える
ことを特徴とするプリフォーム成形機構。
【請求項2】
請求項1において、更に、
前記シュータに導かれる樹脂を搭載するとともに、該樹脂を該樹脂の搭載される位置から前記所定の位置まで移動させる離型フィルムを備える
ことを特徴とするプリフォーム成形機構。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記加熱機構が、前記成形機の一部を構成するとともに、前記樹脂の前記シュータから投下される位置から前記所定の位置まで移動可能とされている
ことを特徴とするプリフォーム成形機構。
【請求項4】
請求項3において、
前記成形機が下型と該下型に対向して配置され該下型に対して接近・離反可能な上型とを有し、
前記下型が前記加熱機構とされている
ことを特徴とするプリフォーム成形機構。
【請求項5】
請求項2において、
前記樹脂の搭載される位置から前記所定の位置までの間の前記離型フィルムに隣接して、前記加熱機構が前記成形機とは別に設けられている
ことを特徴とするプリフォーム成形機構。
【請求項6】
請求項5において、
前記加熱機構が前記離型フィルムの移動する方向に移動可能とされている
ことを特徴とするプリフォーム成形機構。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記加熱機構が前記離型フィルムの下面に接触して配置されている
ことを特徴とするプリフォーム成形機構。
【請求項8】
樹脂を導くシュータと該樹脂を所定の位置で加熱し成形する成形機とを用いて、被成形品を圧縮封止する圧縮成形装置に供給するために、前記成形機で前記樹脂からプリフォーム樹脂を成形するプリフォーム成形方法において、
前記樹脂を前記所定の位置に配置するまでに該樹脂を加熱する工程を含む
ことを特徴とするプリフォーム成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−161927(P2012−161927A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−21591(P2011−21591)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】