プリント配線基板、電子装置、高圧電源装置、画像形成装置及び電子装置の製造方法
【課題】フロー半田付け工程において焦電効果により圧電素子から発生する放電から安価かつ簡単な方法で半導体部品を保護する。
【解決手段】電子装置は、例えば、半田噴流を用いて半田付けされるプリント配線基板と、プリント配線基板に設けられた半導体部品と、プリント配線基板に設けられた圧電素子とを備える。さらに、電子装置は基準電位パターンとランドとを備える。基準電位パターンは、半導体部品及び圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する。ランドは、半導体部品と圧電素子との間に設けられ、かつ、基準電位パターンと接続され、プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで形成される。これにより、半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって圧電素子に発生する放電電流を、圧電素子と、ランドと、基準電位パターンと、半田噴流とによって形成される放電経路に通電させる。
【解決手段】電子装置は、例えば、半田噴流を用いて半田付けされるプリント配線基板と、プリント配線基板に設けられた半導体部品と、プリント配線基板に設けられた圧電素子とを備える。さらに、電子装置は基準電位パターンとランドとを備える。基準電位パターンは、半導体部品及び圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する。ランドは、半導体部品と圧電素子との間に設けられ、かつ、基準電位パターンと接続され、プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで形成される。これにより、半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって圧電素子に発生する放電電流を、圧電素子と、ランドと、基準電位パターンと、半田噴流とによって形成される放電経路に通電させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を搭載したプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、良好な転写を行うために、通常、高圧(商用電源電圧よりも高い数百V以上の電圧)が転写ローラに印加され、かつ、10μA程度の電流が転写ローラに通電される。このような高圧を発生するために、従来、巻線式の電磁トランスが使用されてきた。しかし、高圧電源装置の小型化・軽量化を達成するために、圧電トランス(圧電セラミックトランス)を用いることが検討されている。圧電トランスは、電磁トランス以上の効率で高電圧を発生でき、しかも、一次側と二次側の電極間を絶縁するためのモールド加工も不要である。そのため、高圧電源装置を小型・軽量にできるという利点がもたらされる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−206113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子装置に電子部品を半田付けするための方法として、フロー半田付け法が知られている。フロー半田付け法は、電子部品を実装したプリント配線基板にフラックスを塗布した後、溶融半田を収容した半田フロー槽に当該基板を浸漬することで半田付けを行う方法である。より具体的には、半田フロー槽に溶融半田の噴流(半田噴流)を形成し、半田噴流の頂部と基板とを接触させることで、半田付けが行われる。このフロー半田付け工程における予備加熱過程や半田フロー槽を通過させる過程において、圧電トランスは、数百度まで熱せられるため、焦電効果によってその端子に高電圧が発生する。すなわち、圧電トランスの一次側の端子と半田付けランドとの間に生じたギャップに火花放電が発生する。このときの放電電圧は概ね数百〜数千Vに達する。また、圧電トランスの二次側の端子に蓄積された電荷量は少なく、火花にまでは成長しないまでも、数百〜数千Vの放電電圧が発生する。
【0005】
これに対して、LSIやトランジスタなど半導体部品の端子の静電耐圧は、概ね数百V程度である。このため、焦電効果による放電が発生した際に、圧電トランス端子の半田付けランドの延長上に繋がっている半導体部品が静電耐圧破壊を起こす可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような課題および他の課題のうち、少なくとも1つを解決することを目的とする。例えば、本発明は、フロー半田付け工程において焦電効果により圧電素子から発生する放電から安価かつ簡単な方法で半導体部品を保護することを目的とする。なお、他の課題については明細書の全体を通して理解できよう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプリント配線基板は、例えば、半導体部品と圧電素子が搭載され、基準電位パターンとランドとを備える。基準電位パターンは、半導体部品及び圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する。ランドは、半導体部品と圧電素子との間に設けられ、かつ、基準電位パターンと接続され、プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで形成される。これにより、半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって圧電素子に発生する放電電流を、圧電素子と、ランドと、基準電位パターンと、半田噴流とによって形成される放電経路に通電させる。
【0008】
本発明の電子装置は、例えば、半田噴流を用いて半田付けされるプリント配線基板と、プリント配線基板に設けられた半導体部品と、プリント配線基板に設けられた圧電素子とを備える。さらに、電子装置は基準電位パターンとランドとを備える。基準電位パターンは、半導体部品及び圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する。ランドは、半導体部品と圧電素子との間に設けられ、かつ、基準電位パターンと接続され、プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで形成される。これにより、半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって圧電素子に発生する放電電流を、圧電素子と、ランドと、基準電位パターンと、半田噴流とによって形成される放電経路に通電させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体部品と圧電素子との間に、基準電位パターンと接続されたランドないしは半田付可能パターンを設けることで、圧電素子と、ランドないしは半田付可能パターンと、基準電位パターンと、半田噴流とによって放電経路が形成される。よって、半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって圧電素子に発生する放電電流を放電経路へと逃がすこができる。これにより、安価かつ簡単な方法で半導体部品を放電から保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1に係る圧電トランス式高圧電源装置の基板レイアウトの一例を示す回路図である。
【図2】図2(A)は、圧電トランスの端子に関連するランドの形状を示した平面図であり、図2(B)は、圧電トランスの端子に関連するランドの形状を示した垂直方向の断面図である。
【図3】圧電トランス式高圧電源装置の基板レイアウトの一例を示す回路図である。
【図4】圧電トランス式高圧電源装置の基板レイアウトの一例を示す回路図である。
【図5】実施形態4に係る圧電トランス式高圧電源装置の基板レイアウトの一例を示す回路図である。
【図6】圧電トランス式高圧電源装置の基板レイアウトの一例を示す回路図である。
【図7】、
【図8】、
【図9】図7(A)、図8(A)、図9(A)は、圧電トランス101の端子と、紙フェノール樹脂板601上の半田付けランド604との嵌挿部付近の拡大図である。図7(B)、図8(B)、図9(B)は、圧電トランス101の端子と、紙フェノール樹脂板601上の半田付けランド604との嵌挿部付近の垂直方向における断面図である。
【図10】図10は、画像形成装置に用いられる圧電トランス式の高圧電源装置の回路図である。
【図11】プリント配線基板に嵌挿された圧電トランス101を示した図である。
【図12】図12(A)は、圧電トランス101の一次側の端子504Aと、紙フェノール基板の半田付けランド604付近の拡大図である。図12(B)は、図12(A)をプリント配線基板の半田面側から見た図である。
【図13】放電ギャップによる放電電圧の変化を測定した実測の結果の一例を示した図である。
【図14】焦電効果による放電発生に伴う実装上の弊害を説明するための図である。
【図15】焦電効果による放電発生に伴う実装上の弊害の異なる事例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の一実施形態を示す。以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を理解するために役立つであろう。また、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。なお、図面及び明細書において共通する部分には同一の参照符号を付すことで、説明を簡潔にする。
【0012】
[関連技術]
図10を用いて電子装置の一例として正電圧を出力する高圧電源装置100について説明する。高圧電源装置100は、例えば、電子写真方式の画像形成装置に使用され、転写ローラに対して高圧を印加する。圧電トランス101は、従来の巻線式の電磁トランスに代えて採用されている。圧電トランス101の出力は、整流平滑回路によって正電圧に整流平滑される。整流平滑回路は、整流用のダイオード102、103及び高圧コンデンサ104によって構成されている。圧電トランス101の出力電圧は、圧電トランス101から延伸した経路に接続された出力端子117から出力され、負荷(例えば転写ローラ(不図示)など)に供給される。なお、出力電圧は、抵抗105、106、107によって分圧され、コンデンサ115及び保護用抵抗108を介してオペアンプ109の非反転入力端子(+端子)に入力される。
【0013】
他方、オペアンプ109の反転入力端子(−端子)には、入力端子118から入力されたアナログ信号(高圧電源装置の制御信号(Vcont))が、抵抗114を介して入力される。オペアンプ109、抵抗114及びコンデンサ113は、積分回路として機能する。すなわち、抵抗114とコンデンサ113の部品定数によって決まる積分時定数に応じて平滑化された制御信号Vcontが、オペアンプ109に入力される。オペアンプ109の出力端は、電圧制御発振器(VCO)110に接続されている。電圧制御発振器110は、入力した制御信号に応じて出力信号の周波数を可変設定する発振器の一例である。
【0014】
また、電圧制御発振器110の出力端は、電界効果トランジスタ111のゲートに接続される。電界効果トランジスタ111は、発振器の出力信号により駆動されるスイッチング素子の一例である。電界効果トランジスタ111のドレインは、インダクタ112を介して電源Vcc(例えば+24Vなど)に接続されるとともに、コンデンサ116を介して接地されている。インダクタ112は、スイッチング素子と電源との間に接続された素子であって、スイッチング素子の駆動により断続的に電圧が印加されるインダクタンス成分を有する素子の一例である。さらに、ドレインは、圧電トランス101の一次側電極の一方に接続される。圧電トランス101の一次側電極の他方は接地される。また、電界効果トランジスタ111のソースも接地される。
【0015】
電圧制御発振器110は、オペアンプ109の出力電圧に応じた周波数で電界効果トランジスタ111をスイッチングする。インダクタ112及びコンデンサ116は、共振回路を形成している。この共振回路により増幅された電圧が、圧電トランス101の一次側に供給される。このように、圧電トランス101は、スイッチング素子とインダクタンス成分を有する素子との接続点に接続され、所定の共振周波数で振動する信号が加えられるとその周波数特性に応じた電圧を出力する。
【0016】
ここで示したように、圧電トランス101を動作させるために、電界効果トランジスタ111やオペアンプ109、電圧制御発振器(VCO)110など複数の半導体部品が使用される。また、画像形成装置などに使われる圧電トランス式の高圧電源装置100では、1枚のプリント配線基板に複数の高圧生成回路が形成される場合が多く、その配線レイアウトは非常に複雑になることが多い。
【0017】
圧電トランス101として用いる圧電素子は、高温で焼き固めた多結晶の強誘電体に数百度の温度を加えつつ直流強電界を加え、強誘電体内部の電気双極子を一定方向に揃えることにより製造される。強誘電性の性質により、電界を取り去った後も双極子モーメントが残るので、常温では大きな圧電性を持つことになる。
【0018】
図11に示した圧電トランス101の構造は一例であり、他の構造の圧電素子であってもよい。圧電セラミック素体506には、一次側電極507及び二次側電極508が銀ペーストにより蒸着されている。一次側電極507及び二次側電極508は金属製の一次側の端子504Aと二次側の端子504Bに各々金糸線を用いて接続されてており、これらの接続部は半田を介して導通している。プリント配線基板は、一般的に用いられる単層の紙フェノール基板を例にとって説明する。紙フェノール基板は、紙フェノール樹脂板601の表面に配線としての銅箔602とレジスト603とを有する。銅箔602とレジスト603により形成された層をソルダーレジスト層と呼ぶ。紙フェノール基板のうち部品端子と配線部とを接続する接続部分は、孔が開けられている。孔の周囲には、半田付けを可能とするために、半田付けランド604を形成する。半田付けランド604は、レジスト603をエッチングで剥ぎ取り、銅箔602を露出させることで形成される。
【0019】
図12(A)、図12(B)には圧電トランス101の一次側の端子504Aが示されている。先に説明したように、半田フロー槽に圧電トランス101を搭載したプリント配線基板を搬送させる際に、予備加熱工程のヒータ及び半田フロー槽の半田噴流の熱で圧電セラミック素体506が熱せられる。熱を加えられた圧電セラミック素体506の一次側電極507及び二次側電極508には、焦電効果により電荷が発生する。すなわち、一次側の端子504A及び二次側の端子504Bに電圧が発生する。焦電効果とは、結晶を加熱もしくは冷却すると電気分極する現象のことである。圧電素子などの焦電体は温度変化があると自発分極を起こすが、温度変化がないと分極は中和する。この分極を起こすと素子の両端に取り付けられた電極に内部に蓄えられた電荷が発生する。
【0020】
一次側の端子504Aと半田付けランド604と間にギャップ(以下、放電ギャップ)が存在すると、焦電効果により発生する高電圧が火花放電614となってギャップを伝達する。すなわち、半田付けランド604及び銅箔602に電荷が移動し、一次側の端子504Aと半田付けランド604との間の電位が急激に変動する。
【0021】
図13によれば、一次側の端子504Aからの放電の特性701と二次側の端子504Bからの放電の特性702は、どちらも放電ギャップが長いほど放電電圧の絶対値は高くなる傾向にある。なお、圧電セラミック素体506の分極過程における電圧印加極性に依存して放電電圧の極性は異なる。ここでは一例として、圧電トランス101には、一次側の端子504Aからの放電電圧を正極性、二次側の端子504からの放電電圧を負極性となるものを使用している。
【0022】
図14によれば、プリント配線基板210の所定位置には、圧電トランス101A、101B、半導体部品である電界効果トランジスタ111A、111B、インダクタ112A、112Bが予め自動嵌挿機もしくは手嵌挿により搭載されている。半田フロー実装工程において、プリント配線基板210は、矢印211が示す進行方向に搬送される。プリント配線基板210は、まず、ヒータ703によって予備加熱され、その後、半田フロー槽402の半田噴流401を通過する。これにより半田付けが実行される。
【0023】
圧電トランス101A、101Bに基準電位を付与するパターンと電界効果トランジスタ111A、111Bのソース端子のパターンは、プリント配線基板210上で配線202を介して接続され、共通電位となっているものとする。
【0024】
回路ブロック201Aに属する圧電トランス101A及びインダクタ112Aは、既に半田噴流401を通過し、半田付け206が完了しているものとする。また、回路ブロック201Aに属する電界効果トランジスタ111Aと、回路ブロック201Bに属するインダクタ112Bは半田噴流401を通過中であるものとする。さらに、回路ブロック201Bに属する圧電トランス101A及び電界効果トランジスタ111Bは、半田噴流前の予備加熱過程にあるものとする。
【0025】
予備加熱過程にある圧電トランス101Bがヒータ703からの熱風HAで急激に温められると、焦電効果により、まだ半田付けされていない状態の圧電トランス101Bの端子からランドに対して火花放電203が発生する。火花放電203の電荷(放電電流)は、半田噴流401を通過中のインダクタ112Bの端子及びランドに伝達する。さらに、火花放電203による電荷は、半田噴流401を通過中の電界効果トランジスタ111Aのゲート端子に半田噴流401を介して矢印Fに沿って伝達する。電界効果トランジスタ111Aを通過した電荷は、配線202を介して伝達し、火花放電205となり、圧電トランス101Bの基準端子に戻る。以上が放電により圧電トランス101Bから飛び出した電荷が移動するルート(放電経路)である。電界効果トランジスタ111Aにおいては、プリント配線基板210の基準電位に接続したソース端子に対してゲート端子の電位が急激に持ち上がる。よって、この電位がゲート端子の静電耐圧を越えると、圧電トランス101Bが静電耐圧破壊に至る。
【0026】
図15によれば、プリント配線基板210には、圧電トランス101と、半導体部品119と、圧電トランス101の二次側ランドと配線で接続された整流用のダイオード103とが予め自動嵌挿機もしくは手嵌挿により搭載されている。半導体部品119は、例えば、VCO回路やオペアンプ、またはそれを組み合わせたICなどである。半田フロー槽402では、基板進行方向(矢印211が示す方向)に搬送され、半田噴流401を通過することで半田付けされる。図15に示した状態では、圧電トランス101が予備加熱過程にあって半田噴流401に達していないものとする。圧電トランス101に基準電位を付与するパターンと半導体部品119に基準電位を付与するパターンは、プリント配線基板210上で配線202を介して接続され、共通電位となっている。
【0027】
予備加熱過程にある圧電トランス101がヒータ或いは半田噴流401の熱で急激に温められると、焦電効果により、未半田状態の圧電トランス101の二次側の端子からランドに対して火花放電203が発生する。火花放電203による電荷は半田噴流401を通過中の整流用のダイオード103の端子及びランドに伝達する。さらに、半田噴流401を通過中の半導体部品119の端子に半田噴流401を介して矢印Fのように伝達する。半導体部品119を通過した電荷は、配線202を介して、火花放電205となる。火花放電205は、圧電トランス101の一次側基準端子に戻る。
【0028】
以上のようなモデルでも、放電により圧電トランス101から飛び出した電荷が移動するルートが説明できる。このような放電過程においても、半導体部品119の端子の電位が基準電位に対して急激に持ち上がる。そして、この電位が端子の静電耐圧を越えることにより、半導体部品119は破壊に至る。
【0029】
図14及び図15で説明したように、半田フロー槽の半田噴流401は、プリント配線基板210の進行方向(矢印211が示す方向)に対して垂直に配置されている。よって、圧電トランス101の端子用の半田付けランドと半導体部品とが直接パターンで繋がっていなくても、この半田噴流401を介して接続される可能性がある。また、一般的に半田フロー槽は、アースに対して接地されており、半田噴流401も大局的に見ればアースに接地されていると考えられる。しかし、半田フロー槽402を通過中のプリント配線基板210の基準電位は、直接アースに接地するかもしくは半田フロー槽402に接触させない限り、フロート状態である。このため、焦電効果により圧電トランス101から放電は発生すると、放電先のパターンもしくは電位がアースに対してはフロート状態であるため、よりインピーダンスの低いパターンもしくは部品端子を介して放電電流が流れることになる。
【0030】
焦電効果による放電が原因となる半導体部品119の破壊を防止する方法としては、例えば、次の2つの方法が考えられる。1つ目の方法は、圧電トランス101以外の部品をまず半田付けしておいて、圧電トランス101を後付けで人手により半田付けする方法である。2つ目の方法は、半田実装時に圧電トランス101の端子間(電極間)を導電性部材によって短絡し、接触放電経路を作る方法である。
【0031】
前者は、複数個の圧電トランス101が1枚のプリント配線基板210に搭載されるような大型な高圧電源装置などに対しては、人手と時間が懸かるため実装コストが高くなるというデメリットがある。後者であれば、人手に頼らないメリットがある。後者の方法においては、圧電トランス101の端子間を高温環境下で繰返し短絡するための耐熱性及び耐久性に優れた導電性部材があれば、実現可能であろう。しかし、この導電性部材が実装中に脱落したり、接触不良を起こしたりすると、放電から半導体部品119を十分に保護できなくなるおそれがある。よって、後者の方法も十分とはいえない。そこで、以下で説明する実施形態では、安価かつ簡単な方法で半導体部品を放電から保護可能な電子装置の製造方法について提案する。
【0032】
[実施形態1]
本発明は、圧電素子と半導体部品とを搭載するプリント配線基板を備えた電子装置であれば適用できるため、高圧電源装置である必要はない。また、本発明は、正電圧又は負電圧どちらを出力する高圧電源装置に対しても有効である。ここでは一例として、正電圧を出力する高圧電源装置について説明する。
【0033】
図1に示された圧電トランス101A、101B及び101C、並びに、半導体部品119A、119B及び119Cは、それぞれ異なる回路ブロックを形成するための回路部品である。例えば、圧電トランス101Aと半導体部品119Aが必ずしも同一の回路ブロックを形成するものではない。本実施形態では、圧電トランス101A、101B、101Cと半導体部品119A、119B、119Cを、半田実装工程におけるプリント配線基板210の進行方向(矢印211が示す方向)に対して並行するように配置している。すなわち、半田付け工程におけるプリント配線基板210の進行方向に対して半導体部品119Aと圧電トランス101Aとを結ぶ直線Eが略直交するように、半導体部品119Aと圧電トランス101Aとがプリント配線基板210に配置されている。すなわち、進行方向と直線Eとがなす角度β≒90度である。半導体部品119Bと圧電トランス101Bも同様である。さらに、半導体部品119Cと圧電トランス101Cも同様である。
【0034】
さらに、圧電トランス101A、101B、101Cと半導体部品119A、119B、119Cの間に、圧電トランス101A、101B、101Cへ基準電位を付与するための基準電位パターン302が配置されている。基準電位パターン302のレジストを剥いで一部の配線部を露出させることで、露出した配線部を半田付けランド301A、301B及び301Cとしている。半田フロー槽の半田噴流401を通過する際に、圧電トランス101A、101B、101Cの各端子に対して半導体部品119A、119B、119Cへの電荷の移動を抑制するように、半田付けランド301A、301B、301Cを配置している。圧電トランスの基準電位パターン302は、接地ラインにつながるるものとする。
【0035】
例えば、圧電トランス101Bの端子から発生した火花放電203は、半田フロー槽の半田噴流401を介して圧電トランス101Bの基準電位パターン302に接続された半田付けランド301Bに飛び込む。その後、火花放電203に起因した電荷は、圧電トランス101Bの基準端子へ火花放電205となって帰還する。このように、放電電流の放電経路を、圧電トランス101Bと、半田噴流401と、半田付けランド301Bと、基準電位パターン302とによって形成した。とりわけ、半田付けランド301Bが半導体部品119Bと圧電トランス101Bとの間に設けられているので、放電電流が半導体部品119Bへと通電することを抑制できる。
【0036】
更に、プリント配線基盤210に部品を接続する部位のランド形状について、図2(A)及び図2(B)に示されたランド形状を採用することにより、端子504からの放電方向を規制することが可能となる。例えば、ドーナツ状のレジスト603のうち右半分を剥いで配線部の銅箔602を露出させて半田付けランド604を形成すると、端子504と半田付けランド604の最も接近する箇所において放電経路が形成される。プリント配線基板210の進行方向(矢印211が示す方向)において端子504よりも後方側にランド604を配置すると、放電タイミングよりも放電先が半田付けされるタイミングを遅らせられることができる。
【0037】
以上説明したように、半導体部品と圧電素子との間に、基準電位パターンと接続された半田付けランドを設けることで、圧電素子と、ランドと、基準電位パターンと、半田噴流とによって放電経路が形成される。よって、半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって圧電素子に発生する放電電流を放電経路へと逃がすこができる。これにより、安価かつ簡単な方法で半導体部品を放電から保護することが可能となる。半導体部品の破壊確率を減少させることができるため、高圧電源装置などの電子装置の歩留まりを改善できる。
【0038】
基準電位パターン302として、プリント配線基板210上において広範囲に配置される圧電トランスもしくは半導体部品の接地パターンまたは半導体部品の電源電圧パターンを用いてもよい。この場合、比較的に容易なパターン設計で、放電経路の一部を形成する基準電位パターン302を実現できる。
【0039】
本実施形態では圧電トランスの一次側の端子からの放電発生モデルを用いて説明したが、圧電トランスの二次側の端子からの放電に対しても本発明は有効である。このことは後述する実施形態についても同様である。本実施形態は、プリント配線基板210上に3つの圧電トランスと3つの半導体部品とが搭載されるモデルで説明した。しかし、少なくとも1つの圧電トランスと少なくとも1つの半導体部品が存在するプリント配線基板であれば、本実施形態と同様の効果が奏される。
【0040】
[実施形態2]
実施形態1では半田付けランド301A、301B及び301Cを半導体部品と圧電素子との間に設けることで、半導体部品を放電から保護するものであった。実施形態2では、半田付けランド301A、301B及び301Cに代えて、半田付け可能パターンを採用する。
【0041】
図3に示された半田付け可能パターン303は、基準電位パターン302の配線部を露出させた形成された一種のランドである。一本または複数本の半田付け可能パターン303が、半田実装時の基板進行方向(矢印211が示す方向)に対して概ね平行となるように、配置される。すなわち、放電経路の一部を形成するランドとして、基準電位パターンの一部であり、半田付け工程におけるプリント配線基板の進行方向に沿って延在した半田付け可能パターン303が採用されている。図3には、説明の簡潔化のために、一本の半田付け可能パターン303が示されている。なお、基準電位パターン302は、圧電トランス101Bに基準電位を付与するパターンであってもよいし、半導体部品119Bに基準電位を付与するパターンであってもよい。
【0042】
このように、半導体部品と圧電素子との間に、基準電位パターンと接続された半田付け可能パターン303を設けることで、圧電素子と、半田付け可能パターン303と、基準電位パターン302と、半田噴流401とによって放電経路が形成される。よって、実施形態2でも、実施形態1と同様の効果が得られる。さらに、実施形態2では、半田付け可能パターン303は所定の面積をもって延在しているため、実施形態1と比較して、半田噴流401の不連続な凹凸に対しても、安定して接触することができる。よって、実施形態2では、半導体部品の保護の信頼性が向上するといえよう。
【0043】
[実施形態3]
実施形態1及び2に対する図4に示された実施形態3の主たる相違点は、半田付け工程において半田ブリッジが発生しないように、半導体部品の端部に設ける半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cを放電経路として採用したことである。なお、半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cは、捨てランドまたは捨てパッドなどと呼ばれることがある。半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cは、半導体部品に基準電位を付与する接地ラインや電源ラインに接続されている。なお、半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cは、レジスト603を剥いで配線部の銅箔602を露出させることで形成されている。
【0044】
このように半導体部品と圧電素子との間に、基準電位パターンと接続された半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cを設ける。これにより、圧電素子と、半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cと、基準電位パターン302と、半田噴流401とによって放電経路が形成される。
【0045】
よって、実施形態3によって、実施形態1及び2と同様の効果が得られる。さらに、実施形態3によれば、半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cの形状を、保護対象の半導体部品を囲むような形状とすると、さらに高い保護効果が得られるであろう。もちろん、実施形態3の、半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cを、実施形態1や実施形態2と組み合わせてもよい。この場合、さらに高い保護効果が得られるであろう。
【0046】
さらに、小型のプリント配線基板などでは、実施形態1や2のようなランドないしはパターンを配置することが、レイアウト上、困難なケースがある。実施形態3における半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cは、小型のプリント配線基板などでも形成できるため、有利であろう。
【0047】
[実施形態4]
本発明は、正電圧又は負電圧どちら出力する高圧電源装置に対しても有効であるが、ここでは一例として、正電圧を出力する高圧電源装置について説明する。また、焦電効果による電圧の発生する端子は二次側の端子とし、発生する電圧の極性は負極性として説明する。
【0048】
図5に示された実施形態4では、半田付け工程におけるプリント配線基板210の進行方向(矢印211が示す方向)において、半導体部品119が圧電トランス101よりも前方に配置されている。さらに、圧電トランス101の端子ランドから進行方向において前方に向かって整流用のダイオード103の端子などに延伸する延伸パターン501が配線されている。なお、圧電トランス101の端子ランドから進行方向の略反対側に向かって延伸した延伸パターン502によって、圧電トランス101の端子ランドとダイオード102の一端が接続されている。ダイオード102の他端は基準電位パターン302に接続されている。また、実施形態4では、圧電トランス101と半導体部品119との間に、圧電トランス101または半導体部品119に基準電位を付与する基準電位パターン302が配置されている。さらに、基準電位パターン302の一部のレジストを剥いで配線部を露出させることで、半田付けランド301が形成されている。
【0049】
圧電トランス101の焦電効果により発生した火花放電203(ここでは負極性であるので、放電電流は圧電トランス101に向かう方向に進む)は、延伸パターン501及び半田噴流401を介して基準電位パターン302に飛び込む。火花放電203に起因した電荷は、火花放電204となって、圧電トランス101の別の端子へと帰還する。このように、圧電トランス101と、延伸パターン501と、半田付けランド301と、基準電位パターン302と、半田噴流401とによって放電経路が形成される。よって、放電電流が半導体部品119へは流れないようになる。圧電トランス101に基準電位を付与する基準電位パターン302は、接地ラインであってもよいし、電源ラインであってもよい。
【0050】
このように、圧電トランス101の端子ランドから接続部品に延伸した延伸パターン501が、プリント配線基板210の進行方向において半導体部品119と並行するように配置される。さらに、延伸パターン501と半導体部品119との間に基準電位パターン302を配置する。これにより、半導体部品119が圧電トランス101の放電から保護される。すなわち、実施形態4においても実施形態1や2と同様の効果が奏される。
【0051】
本実施形態では圧電トランス101の二次側の端子からの放電発生モデルを用いて説明したが、圧電トランス101の一次側の端子からの放電に対しても本実施形態は有効である。また、負極性の放電モデルを用いて説明したが、正極性の放電モデルにも本実施形態は適用可能である。
【0052】
[実施形態5]
図6に示された実施形態5において実施形態4と重複する内容の説明は省略する。実施形態5において特徴的な点は、圧電トランス101の端子ランドから整流用のダイオード102、103などに延伸する延伸パターン502の延伸方向と、進行方向(矢印211が示す方向)とがなす角度αが90度を超えている(α>90度)。進行方向に対して直交し、かつ、圧電トランス101の端子ランドを通る破線Gよりも後方に、延伸パターン502が配置されている。
【0053】
圧電トランス101に基準電位(ここでは接地電位)を付与する基準電位パターン302と半導体部品119の接地端子のパターンは、プリント配線基板210の配線部を介して接続され、共通電位となっている。図6において、圧電トランス101Aは、半田噴流401に到達する直前もしくは予備加熱過程にあるものとする。半導体部品119は半田噴流401を通過中であるものとする。
【0054】
半田噴流401の直前もしくは予備加熱過程にある圧電トランス101が、ヒータ(不図示)ないしは半田噴流401の熱により急激に温められると、焦電効果により、二次側の端子からランドに対して火花放電203が発生する。火花放電203の極性は負極性であるので、放電電流は圧電トランス101に向かう方向に流れる。この放電電流は、まだ半田付けされていない整流用のダイオード102を介して圧電トランス101の基準電位パターン302を経由して、圧電トランス101の一次側の端子に帰還する。その際には、圧電トランス101の一次側の端子において火花放電205が発生する。すなわち、圧電トランス101の二次側の端子、延伸パターン502、整流用のダイオード102、基準電位パターン302及び圧電トランス101の一次側の端子によって放電経路が形成される。よて、半導体部品119には放電電流が流れ込まない。
【0055】
このように、実施形態5の回路構成によっても実施形態1と同様の効果が得られる。とりわけ、圧電トランス101の端子ランドから延伸した延伸パターン502を進行方向に対して90度を超える方向となるように配線する。これにより、半田噴流401を介した半導体部品119への放電電流の飛び込みを抑制できる。複数の圧電トランスや半導体部品が複雑に配置されるプリント配線基板において、進行方向で最もプリント配線基板の先端部に近い位置に配置される圧電トランスの端子ランド及びそこから延伸する延伸パターンに関して、実施形態5は特に有効である。すなわち、放電経路の一部を形成するランドとして、圧電素子が備える複数の端子うちプリント配線基板の進行方向において最も先端に位置する端子から後方へ伸びた延伸パターン502を採用すると、保護効果が高まる。なお、延伸パターン502は、圧電素子と整流素子または駆動素子とを導通させるパターンである。整流素子または駆動素子の一端が延伸パターン502と接続されており、整流素子または駆動素子の他端が基準電位パターン302と接続されている場合、整流素子または駆動素子も放電経路の一部となる。整流素子または駆動素子は、半導体部品119と比較すれば静電耐圧が高いので、放電経路の一部になってもよい。なお、実施形態1ないし4のいずれか1つ以上と実施形態5と組み合わせることにより、さらに保護効果を向上させることも可能である。
【0056】
[実施形態6]
本実施形態では、圧電素子の端子の形状とサイズとを、プリント配線基板に設けられ、端子が嵌挿される孔に対して、端子の側面と孔の壁面とが導通ないしは密着するような形状及びサイズとしたことを特徴とする。
【0057】
図12に示したように、圧電トランス101の端子504、505と半田付けランド604との間にギャップ(空間)がある場合(すなわちこれらが密着していない場合)、焦電効果により発生する高電圧が火花放電となってギャップ間を伝達する。気中放電や火花放電を伴う放電電流は、通常の接触放電による放電電流よりも時定数が小さく、非常に短いパルスで電荷が移動する。このため、半導体部品119の端子に設けられた端子保護用のダイオードや端子容量による保護が非常に困難になる。また、気中放電の場合、ギャップの長さによっても放電電圧は変化する。ギャップを短くした方が、放電先に飛び込む電圧レベルは小さくなり、静電耐圧に対するマージンは向上することになる。気中放電の発生を防いで接触放電のみとするか、または、端子とランド間のギャップを狭くして放電電圧を低下させるかしつつ、実施形態1ないし5で説明してきた保護方法を用いれば、保護品質は格段に向上する。
【0058】
図7(A)及び図7(B)に示す端子ランド部の構造の特徴は、端子504の水平断面形状が四角形状で、かつ、端子嵌挿孔704の水平断面形状も四角形状であり、端子嵌挿孔704の外壁が端子504の側面となす角度を不平行としている。図7(A)によれば、端子嵌挿孔704の外壁と、端子504の側面となす角度は90度となっている。これは、端子504のエッジ部を端子嵌挿孔704の外壁に密着ないしは接触させるためである。
【0059】
さらに、端子嵌挿孔704と端子504の形状及びサイズを工夫することにより、密着性ないしは接触性を高めることができる。例えば、端子504の水平方向の断面において最長となる線分の長さを、端子504を端子嵌挿孔704に挿入する前における端子嵌挿孔704の水平方向の断面において最短となる線分の長さよりも長くする。このような形状及びサイズとすることで、端子504を端子嵌挿孔704に嵌挿する際に、端子504のエッジ部が端子嵌挿孔704の壁面を削りながら嵌挿されることになる。これは、端子504のエッジ部を端子嵌挿孔704の外壁に密着ないしは接触させるための一手法となる。このようにして、銅箔602の露出部(ランド604)の端部と端子504との間のギャップを無くすもしくは短縮することができる。
【0060】
図8(A)及び図8(B)が示すように、矩形の端子504に代えて水平方向の断面形状がL字形状の端子505が採用されている。水平方向は、プリント配線基板210の表面と平行な方向である。端子の断面形状をL字形状とすることで、端子505の側面方向に弾性を少なからず持たせることができる。また、端子505が端子嵌挿孔704に嵌挿された状態において、端子505は端子嵌挿孔704の壁面に弾性を持って突き当たる。よって、銅箔602の露出部の端部と端子505の側面との間におけるギャップを無くすもしくは短縮することができる。特に、端子505の素材として弾性の高いステンレス鋼(SUS)やリン青銅などの金属を用いれば、よりギャップの短縮効果は大きくなるであろう。
【0061】
図9(A)及び図9(B)が示す端子ランド部の特徴は、端子504と端子嵌挿孔704の間に、端子504と端子嵌挿孔704とを導通させるための導電性部材901を設けたことである。導電性部材901は、金属や導電性ゴム、導電性接着剤などであり、端子嵌挿孔704の壁面に設けられている。導電性部材901によって、端子504と、ランド604及び銅箔602とが導通するため、ギャップを無くすもしくは短縮することが可能となる。
【0062】
以上のように、実施形態6では、端子504、505と端子嵌挿孔704の形状やサイズなどを工夫したり、導電性部材901を追加したりすることで、端子とランド604間の放電ギャップを無くすもしくは短縮することができる。その結果、放電先への印加電圧を低下させることが可能となり、半導体部品119の保護効果高まることになる。もちろん、実施形態1ないし実施形態5の1つ以上と、実施形態6とを組み合わせれば、より高い保護効果が得られるであろう。
【0063】
[他の実施形態]
最後に、電子装置の製造方法について言及する。まず、プリント配線基板210のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで、半導体部品119と圧電トランス101との間に基準電位パターン302に接続されたランドを形成する。次に、プリント配線基板210に半導体部品119と圧電トランス101とを搭載する。さらに、半導体部品119と圧電トランス101とを搭載したプリント配線基板210を所定方向(矢印211が示す方向)に移動させながらプリント配線基板210に半田噴流401を接触させる。焦電効果によって圧電トランス101に発生する放電電流は、圧電トランス101と、ランドと、基準電位パターン302とによって形成される放電経路に流れる。よって、半導体部品119には放電電流が流れ難くなる。なお、放電経路には、半田噴流401が含まれてもよい。
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電素子を搭載したプリント配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置は、良好な転写を行うために、通常、高圧(商用電源電圧よりも高い数百V以上の電圧)が転写ローラに印加され、かつ、10μA程度の電流が転写ローラに通電される。このような高圧を発生するために、従来、巻線式の電磁トランスが使用されてきた。しかし、高圧電源装置の小型化・軽量化を達成するために、圧電トランス(圧電セラミックトランス)を用いることが検討されている。圧電トランスは、電磁トランス以上の効率で高電圧を発生でき、しかも、一次側と二次側の電極間を絶縁するためのモールド加工も不要である。そのため、高圧電源装置を小型・軽量にできるという利点がもたらされる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−206113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電子装置に電子部品を半田付けするための方法として、フロー半田付け法が知られている。フロー半田付け法は、電子部品を実装したプリント配線基板にフラックスを塗布した後、溶融半田を収容した半田フロー槽に当該基板を浸漬することで半田付けを行う方法である。より具体的には、半田フロー槽に溶融半田の噴流(半田噴流)を形成し、半田噴流の頂部と基板とを接触させることで、半田付けが行われる。このフロー半田付け工程における予備加熱過程や半田フロー槽を通過させる過程において、圧電トランスは、数百度まで熱せられるため、焦電効果によってその端子に高電圧が発生する。すなわち、圧電トランスの一次側の端子と半田付けランドとの間に生じたギャップに火花放電が発生する。このときの放電電圧は概ね数百〜数千Vに達する。また、圧電トランスの二次側の端子に蓄積された電荷量は少なく、火花にまでは成長しないまでも、数百〜数千Vの放電電圧が発生する。
【0005】
これに対して、LSIやトランジスタなど半導体部品の端子の静電耐圧は、概ね数百V程度である。このため、焦電効果による放電が発生した際に、圧電トランス端子の半田付けランドの延長上に繋がっている半導体部品が静電耐圧破壊を起こす可能性がある。
【0006】
そこで、本発明は、このような課題および他の課題のうち、少なくとも1つを解決することを目的とする。例えば、本発明は、フロー半田付け工程において焦電効果により圧電素子から発生する放電から安価かつ簡単な方法で半導体部品を保護することを目的とする。なお、他の課題については明細書の全体を通して理解できよう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプリント配線基板は、例えば、半導体部品と圧電素子が搭載され、基準電位パターンとランドとを備える。基準電位パターンは、半導体部品及び圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する。ランドは、半導体部品と圧電素子との間に設けられ、かつ、基準電位パターンと接続され、プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで形成される。これにより、半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって圧電素子に発生する放電電流を、圧電素子と、ランドと、基準電位パターンと、半田噴流とによって形成される放電経路に通電させる。
【0008】
本発明の電子装置は、例えば、半田噴流を用いて半田付けされるプリント配線基板と、プリント配線基板に設けられた半導体部品と、プリント配線基板に設けられた圧電素子とを備える。さらに、電子装置は基準電位パターンとランドとを備える。基準電位パターンは、半導体部品及び圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する。ランドは、半導体部品と圧電素子との間に設けられ、かつ、基準電位パターンと接続され、プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで形成される。これにより、半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって圧電素子に発生する放電電流を、圧電素子と、ランドと、基準電位パターンと、半田噴流とによって形成される放電経路に通電させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体部品と圧電素子との間に、基準電位パターンと接続されたランドないしは半田付可能パターンを設けることで、圧電素子と、ランドないしは半田付可能パターンと、基準電位パターンと、半田噴流とによって放電経路が形成される。よって、半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって圧電素子に発生する放電電流を放電経路へと逃がすこができる。これにより、安価かつ簡単な方法で半導体部品を放電から保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施形態1に係る圧電トランス式高圧電源装置の基板レイアウトの一例を示す回路図である。
【図2】図2(A)は、圧電トランスの端子に関連するランドの形状を示した平面図であり、図2(B)は、圧電トランスの端子に関連するランドの形状を示した垂直方向の断面図である。
【図3】圧電トランス式高圧電源装置の基板レイアウトの一例を示す回路図である。
【図4】圧電トランス式高圧電源装置の基板レイアウトの一例を示す回路図である。
【図5】実施形態4に係る圧電トランス式高圧電源装置の基板レイアウトの一例を示す回路図である。
【図6】圧電トランス式高圧電源装置の基板レイアウトの一例を示す回路図である。
【図7】、
【図8】、
【図9】図7(A)、図8(A)、図9(A)は、圧電トランス101の端子と、紙フェノール樹脂板601上の半田付けランド604との嵌挿部付近の拡大図である。図7(B)、図8(B)、図9(B)は、圧電トランス101の端子と、紙フェノール樹脂板601上の半田付けランド604との嵌挿部付近の垂直方向における断面図である。
【図10】図10は、画像形成装置に用いられる圧電トランス式の高圧電源装置の回路図である。
【図11】プリント配線基板に嵌挿された圧電トランス101を示した図である。
【図12】図12(A)は、圧電トランス101の一次側の端子504Aと、紙フェノール基板の半田付けランド604付近の拡大図である。図12(B)は、図12(A)をプリント配線基板の半田面側から見た図である。
【図13】放電ギャップによる放電電圧の変化を測定した実測の結果の一例を示した図である。
【図14】焦電効果による放電発生に伴う実装上の弊害を説明するための図である。
【図15】焦電効果による放電発生に伴う実装上の弊害の異なる事例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の一実施形態を示す。以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を理解するために役立つであろう。また、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。なお、図面及び明細書において共通する部分には同一の参照符号を付すことで、説明を簡潔にする。
【0012】
[関連技術]
図10を用いて電子装置の一例として正電圧を出力する高圧電源装置100について説明する。高圧電源装置100は、例えば、電子写真方式の画像形成装置に使用され、転写ローラに対して高圧を印加する。圧電トランス101は、従来の巻線式の電磁トランスに代えて採用されている。圧電トランス101の出力は、整流平滑回路によって正電圧に整流平滑される。整流平滑回路は、整流用のダイオード102、103及び高圧コンデンサ104によって構成されている。圧電トランス101の出力電圧は、圧電トランス101から延伸した経路に接続された出力端子117から出力され、負荷(例えば転写ローラ(不図示)など)に供給される。なお、出力電圧は、抵抗105、106、107によって分圧され、コンデンサ115及び保護用抵抗108を介してオペアンプ109の非反転入力端子(+端子)に入力される。
【0013】
他方、オペアンプ109の反転入力端子(−端子)には、入力端子118から入力されたアナログ信号(高圧電源装置の制御信号(Vcont))が、抵抗114を介して入力される。オペアンプ109、抵抗114及びコンデンサ113は、積分回路として機能する。すなわち、抵抗114とコンデンサ113の部品定数によって決まる積分時定数に応じて平滑化された制御信号Vcontが、オペアンプ109に入力される。オペアンプ109の出力端は、電圧制御発振器(VCO)110に接続されている。電圧制御発振器110は、入力した制御信号に応じて出力信号の周波数を可変設定する発振器の一例である。
【0014】
また、電圧制御発振器110の出力端は、電界効果トランジスタ111のゲートに接続される。電界効果トランジスタ111は、発振器の出力信号により駆動されるスイッチング素子の一例である。電界効果トランジスタ111のドレインは、インダクタ112を介して電源Vcc(例えば+24Vなど)に接続されるとともに、コンデンサ116を介して接地されている。インダクタ112は、スイッチング素子と電源との間に接続された素子であって、スイッチング素子の駆動により断続的に電圧が印加されるインダクタンス成分を有する素子の一例である。さらに、ドレインは、圧電トランス101の一次側電極の一方に接続される。圧電トランス101の一次側電極の他方は接地される。また、電界効果トランジスタ111のソースも接地される。
【0015】
電圧制御発振器110は、オペアンプ109の出力電圧に応じた周波数で電界効果トランジスタ111をスイッチングする。インダクタ112及びコンデンサ116は、共振回路を形成している。この共振回路により増幅された電圧が、圧電トランス101の一次側に供給される。このように、圧電トランス101は、スイッチング素子とインダクタンス成分を有する素子との接続点に接続され、所定の共振周波数で振動する信号が加えられるとその周波数特性に応じた電圧を出力する。
【0016】
ここで示したように、圧電トランス101を動作させるために、電界効果トランジスタ111やオペアンプ109、電圧制御発振器(VCO)110など複数の半導体部品が使用される。また、画像形成装置などに使われる圧電トランス式の高圧電源装置100では、1枚のプリント配線基板に複数の高圧生成回路が形成される場合が多く、その配線レイアウトは非常に複雑になることが多い。
【0017】
圧電トランス101として用いる圧電素子は、高温で焼き固めた多結晶の強誘電体に数百度の温度を加えつつ直流強電界を加え、強誘電体内部の電気双極子を一定方向に揃えることにより製造される。強誘電性の性質により、電界を取り去った後も双極子モーメントが残るので、常温では大きな圧電性を持つことになる。
【0018】
図11に示した圧電トランス101の構造は一例であり、他の構造の圧電素子であってもよい。圧電セラミック素体506には、一次側電極507及び二次側電極508が銀ペーストにより蒸着されている。一次側電極507及び二次側電極508は金属製の一次側の端子504Aと二次側の端子504Bに各々金糸線を用いて接続されてており、これらの接続部は半田を介して導通している。プリント配線基板は、一般的に用いられる単層の紙フェノール基板を例にとって説明する。紙フェノール基板は、紙フェノール樹脂板601の表面に配線としての銅箔602とレジスト603とを有する。銅箔602とレジスト603により形成された層をソルダーレジスト層と呼ぶ。紙フェノール基板のうち部品端子と配線部とを接続する接続部分は、孔が開けられている。孔の周囲には、半田付けを可能とするために、半田付けランド604を形成する。半田付けランド604は、レジスト603をエッチングで剥ぎ取り、銅箔602を露出させることで形成される。
【0019】
図12(A)、図12(B)には圧電トランス101の一次側の端子504Aが示されている。先に説明したように、半田フロー槽に圧電トランス101を搭載したプリント配線基板を搬送させる際に、予備加熱工程のヒータ及び半田フロー槽の半田噴流の熱で圧電セラミック素体506が熱せられる。熱を加えられた圧電セラミック素体506の一次側電極507及び二次側電極508には、焦電効果により電荷が発生する。すなわち、一次側の端子504A及び二次側の端子504Bに電圧が発生する。焦電効果とは、結晶を加熱もしくは冷却すると電気分極する現象のことである。圧電素子などの焦電体は温度変化があると自発分極を起こすが、温度変化がないと分極は中和する。この分極を起こすと素子の両端に取り付けられた電極に内部に蓄えられた電荷が発生する。
【0020】
一次側の端子504Aと半田付けランド604と間にギャップ(以下、放電ギャップ)が存在すると、焦電効果により発生する高電圧が火花放電614となってギャップを伝達する。すなわち、半田付けランド604及び銅箔602に電荷が移動し、一次側の端子504Aと半田付けランド604との間の電位が急激に変動する。
【0021】
図13によれば、一次側の端子504Aからの放電の特性701と二次側の端子504Bからの放電の特性702は、どちらも放電ギャップが長いほど放電電圧の絶対値は高くなる傾向にある。なお、圧電セラミック素体506の分極過程における電圧印加極性に依存して放電電圧の極性は異なる。ここでは一例として、圧電トランス101には、一次側の端子504Aからの放電電圧を正極性、二次側の端子504からの放電電圧を負極性となるものを使用している。
【0022】
図14によれば、プリント配線基板210の所定位置には、圧電トランス101A、101B、半導体部品である電界効果トランジスタ111A、111B、インダクタ112A、112Bが予め自動嵌挿機もしくは手嵌挿により搭載されている。半田フロー実装工程において、プリント配線基板210は、矢印211が示す進行方向に搬送される。プリント配線基板210は、まず、ヒータ703によって予備加熱され、その後、半田フロー槽402の半田噴流401を通過する。これにより半田付けが実行される。
【0023】
圧電トランス101A、101Bに基準電位を付与するパターンと電界効果トランジスタ111A、111Bのソース端子のパターンは、プリント配線基板210上で配線202を介して接続され、共通電位となっているものとする。
【0024】
回路ブロック201Aに属する圧電トランス101A及びインダクタ112Aは、既に半田噴流401を通過し、半田付け206が完了しているものとする。また、回路ブロック201Aに属する電界効果トランジスタ111Aと、回路ブロック201Bに属するインダクタ112Bは半田噴流401を通過中であるものとする。さらに、回路ブロック201Bに属する圧電トランス101A及び電界効果トランジスタ111Bは、半田噴流前の予備加熱過程にあるものとする。
【0025】
予備加熱過程にある圧電トランス101Bがヒータ703からの熱風HAで急激に温められると、焦電効果により、まだ半田付けされていない状態の圧電トランス101Bの端子からランドに対して火花放電203が発生する。火花放電203の電荷(放電電流)は、半田噴流401を通過中のインダクタ112Bの端子及びランドに伝達する。さらに、火花放電203による電荷は、半田噴流401を通過中の電界効果トランジスタ111Aのゲート端子に半田噴流401を介して矢印Fに沿って伝達する。電界効果トランジスタ111Aを通過した電荷は、配線202を介して伝達し、火花放電205となり、圧電トランス101Bの基準端子に戻る。以上が放電により圧電トランス101Bから飛び出した電荷が移動するルート(放電経路)である。電界効果トランジスタ111Aにおいては、プリント配線基板210の基準電位に接続したソース端子に対してゲート端子の電位が急激に持ち上がる。よって、この電位がゲート端子の静電耐圧を越えると、圧電トランス101Bが静電耐圧破壊に至る。
【0026】
図15によれば、プリント配線基板210には、圧電トランス101と、半導体部品119と、圧電トランス101の二次側ランドと配線で接続された整流用のダイオード103とが予め自動嵌挿機もしくは手嵌挿により搭載されている。半導体部品119は、例えば、VCO回路やオペアンプ、またはそれを組み合わせたICなどである。半田フロー槽402では、基板進行方向(矢印211が示す方向)に搬送され、半田噴流401を通過することで半田付けされる。図15に示した状態では、圧電トランス101が予備加熱過程にあって半田噴流401に達していないものとする。圧電トランス101に基準電位を付与するパターンと半導体部品119に基準電位を付与するパターンは、プリント配線基板210上で配線202を介して接続され、共通電位となっている。
【0027】
予備加熱過程にある圧電トランス101がヒータ或いは半田噴流401の熱で急激に温められると、焦電効果により、未半田状態の圧電トランス101の二次側の端子からランドに対して火花放電203が発生する。火花放電203による電荷は半田噴流401を通過中の整流用のダイオード103の端子及びランドに伝達する。さらに、半田噴流401を通過中の半導体部品119の端子に半田噴流401を介して矢印Fのように伝達する。半導体部品119を通過した電荷は、配線202を介して、火花放電205となる。火花放電205は、圧電トランス101の一次側基準端子に戻る。
【0028】
以上のようなモデルでも、放電により圧電トランス101から飛び出した電荷が移動するルートが説明できる。このような放電過程においても、半導体部品119の端子の電位が基準電位に対して急激に持ち上がる。そして、この電位が端子の静電耐圧を越えることにより、半導体部品119は破壊に至る。
【0029】
図14及び図15で説明したように、半田フロー槽の半田噴流401は、プリント配線基板210の進行方向(矢印211が示す方向)に対して垂直に配置されている。よって、圧電トランス101の端子用の半田付けランドと半導体部品とが直接パターンで繋がっていなくても、この半田噴流401を介して接続される可能性がある。また、一般的に半田フロー槽は、アースに対して接地されており、半田噴流401も大局的に見ればアースに接地されていると考えられる。しかし、半田フロー槽402を通過中のプリント配線基板210の基準電位は、直接アースに接地するかもしくは半田フロー槽402に接触させない限り、フロート状態である。このため、焦電効果により圧電トランス101から放電は発生すると、放電先のパターンもしくは電位がアースに対してはフロート状態であるため、よりインピーダンスの低いパターンもしくは部品端子を介して放電電流が流れることになる。
【0030】
焦電効果による放電が原因となる半導体部品119の破壊を防止する方法としては、例えば、次の2つの方法が考えられる。1つ目の方法は、圧電トランス101以外の部品をまず半田付けしておいて、圧電トランス101を後付けで人手により半田付けする方法である。2つ目の方法は、半田実装時に圧電トランス101の端子間(電極間)を導電性部材によって短絡し、接触放電経路を作る方法である。
【0031】
前者は、複数個の圧電トランス101が1枚のプリント配線基板210に搭載されるような大型な高圧電源装置などに対しては、人手と時間が懸かるため実装コストが高くなるというデメリットがある。後者であれば、人手に頼らないメリットがある。後者の方法においては、圧電トランス101の端子間を高温環境下で繰返し短絡するための耐熱性及び耐久性に優れた導電性部材があれば、実現可能であろう。しかし、この導電性部材が実装中に脱落したり、接触不良を起こしたりすると、放電から半導体部品119を十分に保護できなくなるおそれがある。よって、後者の方法も十分とはいえない。そこで、以下で説明する実施形態では、安価かつ簡単な方法で半導体部品を放電から保護可能な電子装置の製造方法について提案する。
【0032】
[実施形態1]
本発明は、圧電素子と半導体部品とを搭載するプリント配線基板を備えた電子装置であれば適用できるため、高圧電源装置である必要はない。また、本発明は、正電圧又は負電圧どちらを出力する高圧電源装置に対しても有効である。ここでは一例として、正電圧を出力する高圧電源装置について説明する。
【0033】
図1に示された圧電トランス101A、101B及び101C、並びに、半導体部品119A、119B及び119Cは、それぞれ異なる回路ブロックを形成するための回路部品である。例えば、圧電トランス101Aと半導体部品119Aが必ずしも同一の回路ブロックを形成するものではない。本実施形態では、圧電トランス101A、101B、101Cと半導体部品119A、119B、119Cを、半田実装工程におけるプリント配線基板210の進行方向(矢印211が示す方向)に対して並行するように配置している。すなわち、半田付け工程におけるプリント配線基板210の進行方向に対して半導体部品119Aと圧電トランス101Aとを結ぶ直線Eが略直交するように、半導体部品119Aと圧電トランス101Aとがプリント配線基板210に配置されている。すなわち、進行方向と直線Eとがなす角度β≒90度である。半導体部品119Bと圧電トランス101Bも同様である。さらに、半導体部品119Cと圧電トランス101Cも同様である。
【0034】
さらに、圧電トランス101A、101B、101Cと半導体部品119A、119B、119Cの間に、圧電トランス101A、101B、101Cへ基準電位を付与するための基準電位パターン302が配置されている。基準電位パターン302のレジストを剥いで一部の配線部を露出させることで、露出した配線部を半田付けランド301A、301B及び301Cとしている。半田フロー槽の半田噴流401を通過する際に、圧電トランス101A、101B、101Cの各端子に対して半導体部品119A、119B、119Cへの電荷の移動を抑制するように、半田付けランド301A、301B、301Cを配置している。圧電トランスの基準電位パターン302は、接地ラインにつながるるものとする。
【0035】
例えば、圧電トランス101Bの端子から発生した火花放電203は、半田フロー槽の半田噴流401を介して圧電トランス101Bの基準電位パターン302に接続された半田付けランド301Bに飛び込む。その後、火花放電203に起因した電荷は、圧電トランス101Bの基準端子へ火花放電205となって帰還する。このように、放電電流の放電経路を、圧電トランス101Bと、半田噴流401と、半田付けランド301Bと、基準電位パターン302とによって形成した。とりわけ、半田付けランド301Bが半導体部品119Bと圧電トランス101Bとの間に設けられているので、放電電流が半導体部品119Bへと通電することを抑制できる。
【0036】
更に、プリント配線基盤210に部品を接続する部位のランド形状について、図2(A)及び図2(B)に示されたランド形状を採用することにより、端子504からの放電方向を規制することが可能となる。例えば、ドーナツ状のレジスト603のうち右半分を剥いで配線部の銅箔602を露出させて半田付けランド604を形成すると、端子504と半田付けランド604の最も接近する箇所において放電経路が形成される。プリント配線基板210の進行方向(矢印211が示す方向)において端子504よりも後方側にランド604を配置すると、放電タイミングよりも放電先が半田付けされるタイミングを遅らせられることができる。
【0037】
以上説明したように、半導体部品と圧電素子との間に、基準電位パターンと接続された半田付けランドを設けることで、圧電素子と、ランドと、基準電位パターンと、半田噴流とによって放電経路が形成される。よって、半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって圧電素子に発生する放電電流を放電経路へと逃がすこができる。これにより、安価かつ簡単な方法で半導体部品を放電から保護することが可能となる。半導体部品の破壊確率を減少させることができるため、高圧電源装置などの電子装置の歩留まりを改善できる。
【0038】
基準電位パターン302として、プリント配線基板210上において広範囲に配置される圧電トランスもしくは半導体部品の接地パターンまたは半導体部品の電源電圧パターンを用いてもよい。この場合、比較的に容易なパターン設計で、放電経路の一部を形成する基準電位パターン302を実現できる。
【0039】
本実施形態では圧電トランスの一次側の端子からの放電発生モデルを用いて説明したが、圧電トランスの二次側の端子からの放電に対しても本発明は有効である。このことは後述する実施形態についても同様である。本実施形態は、プリント配線基板210上に3つの圧電トランスと3つの半導体部品とが搭載されるモデルで説明した。しかし、少なくとも1つの圧電トランスと少なくとも1つの半導体部品が存在するプリント配線基板であれば、本実施形態と同様の効果が奏される。
【0040】
[実施形態2]
実施形態1では半田付けランド301A、301B及び301Cを半導体部品と圧電素子との間に設けることで、半導体部品を放電から保護するものであった。実施形態2では、半田付けランド301A、301B及び301Cに代えて、半田付け可能パターンを採用する。
【0041】
図3に示された半田付け可能パターン303は、基準電位パターン302の配線部を露出させた形成された一種のランドである。一本または複数本の半田付け可能パターン303が、半田実装時の基板進行方向(矢印211が示す方向)に対して概ね平行となるように、配置される。すなわち、放電経路の一部を形成するランドとして、基準電位パターンの一部であり、半田付け工程におけるプリント配線基板の進行方向に沿って延在した半田付け可能パターン303が採用されている。図3には、説明の簡潔化のために、一本の半田付け可能パターン303が示されている。なお、基準電位パターン302は、圧電トランス101Bに基準電位を付与するパターンであってもよいし、半導体部品119Bに基準電位を付与するパターンであってもよい。
【0042】
このように、半導体部品と圧電素子との間に、基準電位パターンと接続された半田付け可能パターン303を設けることで、圧電素子と、半田付け可能パターン303と、基準電位パターン302と、半田噴流401とによって放電経路が形成される。よって、実施形態2でも、実施形態1と同様の効果が得られる。さらに、実施形態2では、半田付け可能パターン303は所定の面積をもって延在しているため、実施形態1と比較して、半田噴流401の不連続な凹凸に対しても、安定して接触することができる。よって、実施形態2では、半導体部品の保護の信頼性が向上するといえよう。
【0043】
[実施形態3]
実施形態1及び2に対する図4に示された実施形態3の主たる相違点は、半田付け工程において半田ブリッジが発生しないように、半導体部品の端部に設ける半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cを放電経路として採用したことである。なお、半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cは、捨てランドまたは捨てパッドなどと呼ばれることがある。半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cは、半導体部品に基準電位を付与する接地ラインや電源ラインに接続されている。なお、半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cは、レジスト603を剥いで配線部の銅箔602を露出させることで形成されている。
【0044】
このように半導体部品と圧電素子との間に、基準電位パターンと接続された半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cを設ける。これにより、圧電素子と、半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cと、基準電位パターン302と、半田噴流401とによって放電経路が形成される。
【0045】
よって、実施形態3によって、実施形態1及び2と同様の効果が得られる。さらに、実施形態3によれば、半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cの形状を、保護対象の半導体部品を囲むような形状とすると、さらに高い保護効果が得られるであろう。もちろん、実施形態3の、半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cを、実施形態1や実施形態2と組み合わせてもよい。この場合、さらに高い保護効果が得られるであろう。
【0046】
さらに、小型のプリント配線基板などでは、実施形態1や2のようなランドないしはパターンを配置することが、レイアウト上、困難なケースがある。実施形態3における半田ブリッジ防止パターン304A、304B、304Cは、小型のプリント配線基板などでも形成できるため、有利であろう。
【0047】
[実施形態4]
本発明は、正電圧又は負電圧どちら出力する高圧電源装置に対しても有効であるが、ここでは一例として、正電圧を出力する高圧電源装置について説明する。また、焦電効果による電圧の発生する端子は二次側の端子とし、発生する電圧の極性は負極性として説明する。
【0048】
図5に示された実施形態4では、半田付け工程におけるプリント配線基板210の進行方向(矢印211が示す方向)において、半導体部品119が圧電トランス101よりも前方に配置されている。さらに、圧電トランス101の端子ランドから進行方向において前方に向かって整流用のダイオード103の端子などに延伸する延伸パターン501が配線されている。なお、圧電トランス101の端子ランドから進行方向の略反対側に向かって延伸した延伸パターン502によって、圧電トランス101の端子ランドとダイオード102の一端が接続されている。ダイオード102の他端は基準電位パターン302に接続されている。また、実施形態4では、圧電トランス101と半導体部品119との間に、圧電トランス101または半導体部品119に基準電位を付与する基準電位パターン302が配置されている。さらに、基準電位パターン302の一部のレジストを剥いで配線部を露出させることで、半田付けランド301が形成されている。
【0049】
圧電トランス101の焦電効果により発生した火花放電203(ここでは負極性であるので、放電電流は圧電トランス101に向かう方向に進む)は、延伸パターン501及び半田噴流401を介して基準電位パターン302に飛び込む。火花放電203に起因した電荷は、火花放電204となって、圧電トランス101の別の端子へと帰還する。このように、圧電トランス101と、延伸パターン501と、半田付けランド301と、基準電位パターン302と、半田噴流401とによって放電経路が形成される。よって、放電電流が半導体部品119へは流れないようになる。圧電トランス101に基準電位を付与する基準電位パターン302は、接地ラインであってもよいし、電源ラインであってもよい。
【0050】
このように、圧電トランス101の端子ランドから接続部品に延伸した延伸パターン501が、プリント配線基板210の進行方向において半導体部品119と並行するように配置される。さらに、延伸パターン501と半導体部品119との間に基準電位パターン302を配置する。これにより、半導体部品119が圧電トランス101の放電から保護される。すなわち、実施形態4においても実施形態1や2と同様の効果が奏される。
【0051】
本実施形態では圧電トランス101の二次側の端子からの放電発生モデルを用いて説明したが、圧電トランス101の一次側の端子からの放電に対しても本実施形態は有効である。また、負極性の放電モデルを用いて説明したが、正極性の放電モデルにも本実施形態は適用可能である。
【0052】
[実施形態5]
図6に示された実施形態5において実施形態4と重複する内容の説明は省略する。実施形態5において特徴的な点は、圧電トランス101の端子ランドから整流用のダイオード102、103などに延伸する延伸パターン502の延伸方向と、進行方向(矢印211が示す方向)とがなす角度αが90度を超えている(α>90度)。進行方向に対して直交し、かつ、圧電トランス101の端子ランドを通る破線Gよりも後方に、延伸パターン502が配置されている。
【0053】
圧電トランス101に基準電位(ここでは接地電位)を付与する基準電位パターン302と半導体部品119の接地端子のパターンは、プリント配線基板210の配線部を介して接続され、共通電位となっている。図6において、圧電トランス101Aは、半田噴流401に到達する直前もしくは予備加熱過程にあるものとする。半導体部品119は半田噴流401を通過中であるものとする。
【0054】
半田噴流401の直前もしくは予備加熱過程にある圧電トランス101が、ヒータ(不図示)ないしは半田噴流401の熱により急激に温められると、焦電効果により、二次側の端子からランドに対して火花放電203が発生する。火花放電203の極性は負極性であるので、放電電流は圧電トランス101に向かう方向に流れる。この放電電流は、まだ半田付けされていない整流用のダイオード102を介して圧電トランス101の基準電位パターン302を経由して、圧電トランス101の一次側の端子に帰還する。その際には、圧電トランス101の一次側の端子において火花放電205が発生する。すなわち、圧電トランス101の二次側の端子、延伸パターン502、整流用のダイオード102、基準電位パターン302及び圧電トランス101の一次側の端子によって放電経路が形成される。よて、半導体部品119には放電電流が流れ込まない。
【0055】
このように、実施形態5の回路構成によっても実施形態1と同様の効果が得られる。とりわけ、圧電トランス101の端子ランドから延伸した延伸パターン502を進行方向に対して90度を超える方向となるように配線する。これにより、半田噴流401を介した半導体部品119への放電電流の飛び込みを抑制できる。複数の圧電トランスや半導体部品が複雑に配置されるプリント配線基板において、進行方向で最もプリント配線基板の先端部に近い位置に配置される圧電トランスの端子ランド及びそこから延伸する延伸パターンに関して、実施形態5は特に有効である。すなわち、放電経路の一部を形成するランドとして、圧電素子が備える複数の端子うちプリント配線基板の進行方向において最も先端に位置する端子から後方へ伸びた延伸パターン502を採用すると、保護効果が高まる。なお、延伸パターン502は、圧電素子と整流素子または駆動素子とを導通させるパターンである。整流素子または駆動素子の一端が延伸パターン502と接続されており、整流素子または駆動素子の他端が基準電位パターン302と接続されている場合、整流素子または駆動素子も放電経路の一部となる。整流素子または駆動素子は、半導体部品119と比較すれば静電耐圧が高いので、放電経路の一部になってもよい。なお、実施形態1ないし4のいずれか1つ以上と実施形態5と組み合わせることにより、さらに保護効果を向上させることも可能である。
【0056】
[実施形態6]
本実施形態では、圧電素子の端子の形状とサイズとを、プリント配線基板に設けられ、端子が嵌挿される孔に対して、端子の側面と孔の壁面とが導通ないしは密着するような形状及びサイズとしたことを特徴とする。
【0057】
図12に示したように、圧電トランス101の端子504、505と半田付けランド604との間にギャップ(空間)がある場合(すなわちこれらが密着していない場合)、焦電効果により発生する高電圧が火花放電となってギャップ間を伝達する。気中放電や火花放電を伴う放電電流は、通常の接触放電による放電電流よりも時定数が小さく、非常に短いパルスで電荷が移動する。このため、半導体部品119の端子に設けられた端子保護用のダイオードや端子容量による保護が非常に困難になる。また、気中放電の場合、ギャップの長さによっても放電電圧は変化する。ギャップを短くした方が、放電先に飛び込む電圧レベルは小さくなり、静電耐圧に対するマージンは向上することになる。気中放電の発生を防いで接触放電のみとするか、または、端子とランド間のギャップを狭くして放電電圧を低下させるかしつつ、実施形態1ないし5で説明してきた保護方法を用いれば、保護品質は格段に向上する。
【0058】
図7(A)及び図7(B)に示す端子ランド部の構造の特徴は、端子504の水平断面形状が四角形状で、かつ、端子嵌挿孔704の水平断面形状も四角形状であり、端子嵌挿孔704の外壁が端子504の側面となす角度を不平行としている。図7(A)によれば、端子嵌挿孔704の外壁と、端子504の側面となす角度は90度となっている。これは、端子504のエッジ部を端子嵌挿孔704の外壁に密着ないしは接触させるためである。
【0059】
さらに、端子嵌挿孔704と端子504の形状及びサイズを工夫することにより、密着性ないしは接触性を高めることができる。例えば、端子504の水平方向の断面において最長となる線分の長さを、端子504を端子嵌挿孔704に挿入する前における端子嵌挿孔704の水平方向の断面において最短となる線分の長さよりも長くする。このような形状及びサイズとすることで、端子504を端子嵌挿孔704に嵌挿する際に、端子504のエッジ部が端子嵌挿孔704の壁面を削りながら嵌挿されることになる。これは、端子504のエッジ部を端子嵌挿孔704の外壁に密着ないしは接触させるための一手法となる。このようにして、銅箔602の露出部(ランド604)の端部と端子504との間のギャップを無くすもしくは短縮することができる。
【0060】
図8(A)及び図8(B)が示すように、矩形の端子504に代えて水平方向の断面形状がL字形状の端子505が採用されている。水平方向は、プリント配線基板210の表面と平行な方向である。端子の断面形状をL字形状とすることで、端子505の側面方向に弾性を少なからず持たせることができる。また、端子505が端子嵌挿孔704に嵌挿された状態において、端子505は端子嵌挿孔704の壁面に弾性を持って突き当たる。よって、銅箔602の露出部の端部と端子505の側面との間におけるギャップを無くすもしくは短縮することができる。特に、端子505の素材として弾性の高いステンレス鋼(SUS)やリン青銅などの金属を用いれば、よりギャップの短縮効果は大きくなるであろう。
【0061】
図9(A)及び図9(B)が示す端子ランド部の特徴は、端子504と端子嵌挿孔704の間に、端子504と端子嵌挿孔704とを導通させるための導電性部材901を設けたことである。導電性部材901は、金属や導電性ゴム、導電性接着剤などであり、端子嵌挿孔704の壁面に設けられている。導電性部材901によって、端子504と、ランド604及び銅箔602とが導通するため、ギャップを無くすもしくは短縮することが可能となる。
【0062】
以上のように、実施形態6では、端子504、505と端子嵌挿孔704の形状やサイズなどを工夫したり、導電性部材901を追加したりすることで、端子とランド604間の放電ギャップを無くすもしくは短縮することができる。その結果、放電先への印加電圧を低下させることが可能となり、半導体部品119の保護効果高まることになる。もちろん、実施形態1ないし実施形態5の1つ以上と、実施形態6とを組み合わせれば、より高い保護効果が得られるであろう。
【0063】
[他の実施形態]
最後に、電子装置の製造方法について言及する。まず、プリント配線基板210のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで、半導体部品119と圧電トランス101との間に基準電位パターン302に接続されたランドを形成する。次に、プリント配線基板210に半導体部品119と圧電トランス101とを搭載する。さらに、半導体部品119と圧電トランス101とを搭載したプリント配線基板210を所定方向(矢印211が示す方向)に移動させながらプリント配線基板210に半田噴流401を接触させる。焦電効果によって圧電トランス101に発生する放電電流は、圧電トランス101と、ランドと、基準電位パターン302とによって形成される放電経路に流れる。よって、半導体部品119には放電電流が流れ難くなる。なお、放電経路には、半田噴流401が含まれてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子装置であって、
半田噴流を用いて半田付けされるプリント配線基板と、
前記プリント配線基板に設けられた半導体部品と、
前記プリント配線基板に設けられた圧電素子と、
前記半導体部品及び前記圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する基準電位パターンと、
前記半導体部品と前記圧電素子との間に設けられ、かつ、前記基準電位パターンと接続され、前記プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで形成されたランドと
を備え、
前記半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって前記圧電素子に発生する放電電流を、該圧電素子と、前記ランドと、前記基準電位パターンと、前記半田噴流とによって形成される放電経路に通電させることを特徴する電子装置。
【請求項2】
前記半田付け工程における前記プリント配線基板の進行方向に対して該半導体部品と該圧電素子とを結ぶ直線が略直交するように、前記半導体部品と前記圧電素子とが前記プリント配線基板に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記ランドは、前記基準電位パターンの一部であり、前記半田付け工程における前記プリント配線基板の進行方向に沿って延在した半田付け可能パターンを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記ランドは、前記半導体部品の周囲に設けられた、半田のブリッジを防止するためのランドの1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項5】
前記圧電素子が備える端子から、前記プリント配線基板の進行方向において前方に延伸し、前記放電経路の一部を形成する延伸パターンをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項6】
前記ランドは、前記圧電素子が備える複数の端子うち前記プリント配線基板の進行方向において最も先端に位置する端子から後方へ伸びた延伸パターンであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項7】
前記延伸パターンは、前記圧電素子と整流素子または駆動素子とを導通させるパターンであることを特徴とする請求項5または6に記載の電子装置。
【請求項8】
前記圧電素子の端子の形状とサイズとを、前記プリント配線基板に設けられ、該端子が嵌挿される孔に対して、該端子の側面と該孔の壁面とが導通ないしは密着するような形状及びサイズとしたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項9】
前記端子の水平方向の断面において最長となる線分の長さは、該端子を前記孔に嵌挿する前における該孔の水平方向の断面において最短となる線分の長さよりも長いことを特徴とする請求項8に記載の電子装置。
【請求項10】
前記端子の水平方向の断面形状をL字形状としたことを特徴とする請求項8に記載の電子装置。
【請求項11】
前記端子の素材は、ステンレス鋼又はリン青銅であることを特徴とする請求項10に記載の電子装置。
【請求項12】
前記端子と前記孔との間に、前記端子と前記孔とを導通させるための導電性部材を設けたことを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項13】
電子装置であって、
半田噴流を用いて半田付けされるプリント配線基板と、
前記プリント配線基板に設けられた半導体部品と、
前記プリント配線基板に設けられた圧電素子と、
前記半導体部品及び前記圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する基準電位パターンと、
前記圧電素子が備える複数の端子うち前記プリント配線基板の進行方向において最も先端に位置する端子から後方へ伸びた延伸パターンと
を備え、
前記半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって前記圧電素子に発生する放電電流を、該圧電素子と、前記延伸パターンと、前記基準電位パターンとによって形成される放電経路に通電させることを特徴する電子装置。
【請求項14】
高圧電源装置であって、
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の電子装置を備え、
前記電子装置に搭載される圧電素子は圧電トランスであることを特徴とする高圧電源装置。
【請求項15】
電子写真方式の画像形成装置であって、
転写ローラと、
前記転写ローラに高圧を印加する、請求項14に記載の高圧電源装置と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
プリント配線基板に半田噴流によって半田付けされる半導体部品及び圧電素子と、該半導体部品及び該圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する基準電位パターンとを備えた電子装置の製造方法であって、
前記プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで、前記半導体部品と前記圧電素子との間に前記基準電位パターンに接続されたランドを形成するステップと、
前記プリント配線基板に前記半導体部品と前記圧電素子とを搭載するステップと、
前記半導体部品と前記圧電素子とを搭載した前記プリント配線基板を所定方向に移動させながら該プリント配線基板に前記半田噴流を接触させるステップと、
焦電効果によって前記圧電素子に発生する放電電流を、該圧電素子と、前記ランドと、前記基準電位パターンと、前記半田噴流とによって形成される放電経路に通電させるステップと
を備えることを特徴する電子装置の製造方法。
【請求項17】
半導体部品と圧電素子が搭載されるプリント配線基板であって、
前記半導体部品及び前記圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する基準電位パターンと、
前記半導体部品と前記圧電素子との間に設けられ、かつ、前記基準電位パターンと接続され、前記プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで形成されたランドと
を備え、
半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって前記圧電素子に発生する放電電流を、該圧電素子と、前記ランドと、前記基準電位パターンと、前記半田噴流とによって形成される放電経路に通電させることを特徴するプリント配線基板。
【請求項18】
半導体部品と圧電素子が搭載されるプリント配線基板であって、
前記半導体部品及び前記圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する基準電位パターンと、
前記圧電素子が備える複数の端子うち前記プリント配線基板の進行方向において最も先端に位置する端子から後方へ伸びた延伸パターンと
を備え、
前記半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって前記圧電素子に発生する放電電流を、該圧電素子と、前記延伸パターンと、前記基準電位パターンとによって形成される放電経路に通電させることを特徴するプリント配線基板。
【請求項1】
電子装置であって、
半田噴流を用いて半田付けされるプリント配線基板と、
前記プリント配線基板に設けられた半導体部品と、
前記プリント配線基板に設けられた圧電素子と、
前記半導体部品及び前記圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する基準電位パターンと、
前記半導体部品と前記圧電素子との間に設けられ、かつ、前記基準電位パターンと接続され、前記プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで形成されたランドと
を備え、
前記半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって前記圧電素子に発生する放電電流を、該圧電素子と、前記ランドと、前記基準電位パターンと、前記半田噴流とによって形成される放電経路に通電させることを特徴する電子装置。
【請求項2】
前記半田付け工程における前記プリント配線基板の進行方向に対して該半導体部品と該圧電素子とを結ぶ直線が略直交するように、前記半導体部品と前記圧電素子とが前記プリント配線基板に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項3】
前記ランドは、前記基準電位パターンの一部であり、前記半田付け工程における前記プリント配線基板の進行方向に沿って延在した半田付け可能パターンを備えることを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項4】
前記ランドは、前記半導体部品の周囲に設けられた、半田のブリッジを防止するためのランドの1つであることを特徴とする請求項1または2に記載の電子装置。
【請求項5】
前記圧電素子が備える端子から、前記プリント配線基板の進行方向において前方に延伸し、前記放電経路の一部を形成する延伸パターンをさらに備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項6】
前記ランドは、前記圧電素子が備える複数の端子うち前記プリント配線基板の進行方向において最も先端に位置する端子から後方へ伸びた延伸パターンであることを特徴とする請求項1に記載の電子装置。
【請求項7】
前記延伸パターンは、前記圧電素子と整流素子または駆動素子とを導通させるパターンであることを特徴とする請求項5または6に記載の電子装置。
【請求項8】
前記圧電素子の端子の形状とサイズとを、前記プリント配線基板に設けられ、該端子が嵌挿される孔に対して、該端子の側面と該孔の壁面とが導通ないしは密着するような形状及びサイズとしたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項9】
前記端子の水平方向の断面において最長となる線分の長さは、該端子を前記孔に嵌挿する前における該孔の水平方向の断面において最短となる線分の長さよりも長いことを特徴とする請求項8に記載の電子装置。
【請求項10】
前記端子の水平方向の断面形状をL字形状としたことを特徴とする請求項8に記載の電子装置。
【請求項11】
前記端子の素材は、ステンレス鋼又はリン青銅であることを特徴とする請求項10に記載の電子装置。
【請求項12】
前記端子と前記孔との間に、前記端子と前記孔とを導通させるための導電性部材を設けたことを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項に記載の電子装置。
【請求項13】
電子装置であって、
半田噴流を用いて半田付けされるプリント配線基板と、
前記プリント配線基板に設けられた半導体部品と、
前記プリント配線基板に設けられた圧電素子と、
前記半導体部品及び前記圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する基準電位パターンと、
前記圧電素子が備える複数の端子うち前記プリント配線基板の進行方向において最も先端に位置する端子から後方へ伸びた延伸パターンと
を備え、
前記半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって前記圧電素子に発生する放電電流を、該圧電素子と、前記延伸パターンと、前記基準電位パターンとによって形成される放電経路に通電させることを特徴する電子装置。
【請求項14】
高圧電源装置であって、
請求項1ないし13のいずれか1項に記載の電子装置を備え、
前記電子装置に搭載される圧電素子は圧電トランスであることを特徴とする高圧電源装置。
【請求項15】
電子写真方式の画像形成装置であって、
転写ローラと、
前記転写ローラに高圧を印加する、請求項14に記載の高圧電源装置と
を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
プリント配線基板に半田噴流によって半田付けされる半導体部品及び圧電素子と、該半導体部品及び該圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する基準電位パターンとを備えた電子装置の製造方法であって、
前記プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで、前記半導体部品と前記圧電素子との間に前記基準電位パターンに接続されたランドを形成するステップと、
前記プリント配線基板に前記半導体部品と前記圧電素子とを搭載するステップと、
前記半導体部品と前記圧電素子とを搭載した前記プリント配線基板を所定方向に移動させながら該プリント配線基板に前記半田噴流を接触させるステップと、
焦電効果によって前記圧電素子に発生する放電電流を、該圧電素子と、前記ランドと、前記基準電位パターンと、前記半田噴流とによって形成される放電経路に通電させるステップと
を備えることを特徴する電子装置の製造方法。
【請求項17】
半導体部品と圧電素子が搭載されるプリント配線基板であって、
前記半導体部品及び前記圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する基準電位パターンと、
前記半導体部品と前記圧電素子との間に設けられ、かつ、前記基準電位パターンと接続され、前記プリント配線基板のソルダーレジスト層から配線部を露出させることで形成されたランドと
を備え、
半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって前記圧電素子に発生する放電電流を、該圧電素子と、前記ランドと、前記基準電位パターンと、前記半田噴流とによって形成される放電経路に通電させることを特徴するプリント配線基板。
【請求項18】
半導体部品と圧電素子が搭載されるプリント配線基板であって、
前記半導体部品及び前記圧電素子の少なくとも一方に基準電位を付与する基準電位パターンと、
前記圧電素子が備える複数の端子うち前記プリント配線基板の進行方向において最も先端に位置する端子から後方へ伸びた延伸パターンと
を備え、
前記半田噴流を用いる半田付け工程において焦電効果によって前記圧電素子に発生する放電電流を、該圧電素子と、前記延伸パターンと、前記基準電位パターンとによって形成される放電経路に通電させることを特徴するプリント配線基板。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2010−267876(P2010−267876A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119073(P2009−119073)
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年5月15日(2009.5.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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