説明

プレーナ型アクチュエータ

【課題】 可動部に設けたレンズやミラーを介して照射される光ビームの焦点位置を調整できるプレーナ型アクチュエータを提供する。
【解決手段】 固定部2に一対の梁部3を介して可動可能に支持された可動部4と、可動部4に設けられて入射する光ビームを屈折する凸レンズ5と、可動部4に敷設した駆動コイル6,7及び駆動コイル6,7に静磁界を作用させる一対の永久磁石手段8A,8Bとで構成されて可動部4を固定部2に対して上下方向に駆動可能な駆動手段と、を備える構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造技術を利用して製造するプレーナ型アクチュエータに関し、特に、可動部に設けた光学手段を介して照射される光ビームの焦点位置を調整可能なプレーナ型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造技術を利用して製造するプレーナ型アクチュエータには、固定部に、梁部を介して回動可能に可動部を軸支し、可動部に設けた駆動コイルと、この駆動コイルに静磁界を作用する例えば永久磁石のような静磁界発生手段とで可動部の駆動手段を構成し、通電により駆動コイルに発生する磁界と静磁界との相互作用により発生するローレンツ力を利用して可動部を梁部を中心として回動することにより、可動部に設けたミラーを回動させ光ビームを偏向させる電磁駆動タイプのものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、可動部に第1電極を設け、第1電極と対向させて固定基板に第2電極を設け、第1電極と第2電極との間に電圧を印加することにより発生する静電引力によって可動部を回動することにより、可動部のミラーを回動させる静電駆動タイプのものがある(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特許第2722314号公報
【特許文献2】特開2001−13443号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光スキャナや光ディスク装置等の光学機器においては、光ビームの焦点位置を光軸方向に調整して所定の位置に合わせる必要がある。しかし、上述したような従来のプレーナ型アクチュエータは、ミラーから放射した光ビームの焦点位置を光軸方向に調整する機能がない。このため、従来のプレーナ型アクチュエータを光スキャナや光ディスク装置等の光学機器に適用する場合、従来では、光ビームの光路にコリメータレンズ、集光レンズ、或いは、f−θレンズ等を設けて、光ビームの焦点を所定の位置に合わせる必要があった。
【0005】
本発明は前記問題点に着目してなされたもので、光学手段を介して照射する光ビームの焦点位置を調整可能なプレーナ型アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため、請求項1の発明のプレーナ型アクチュエータは、固定部に梁部を介して可動可能に支持された可動部と、該可動部に設けられて入射する光ビームを屈折又は反射する光学手段と、前記可動部を前記固定部に対して少なくとも上下方向に駆動可能な駆動手段とを備え、前記光学手段で屈折又は反射された光ビームの焦点位置を調整可能な構成とした。
かかる構成では、駆動手段で可動部を固定部に対して上又は下方向に駆動することにより、光学手段を介して屈折又は反射された光ビームの焦点位置を調整できるようになる。
【0007】
請求項2のように、前記駆動手段は、前記梁部の軸方向と平行な可動部対辺部に対して少なくとも同一方向の電磁力を作用させることが可能な構成とするとよい。
具体的には、請求項3のように、前記駆動手段は、前記可動部に敷設されて通電により磁界を発生する駆動コイルと、前記梁部の軸方向と平行な可動部対辺部に位置する駆動コイル部分に対して静磁界を作用する静磁界発生手段とを備え、前記可動部対辺部に位置する駆動コイル部分に発生する磁界と前記静磁界との相互作用により前記可動部対辺部に電磁力を作用させる構成とするとよい。
【0008】
請求項3の構成において、請求項4のように、前記駆動コイルが、電極端子に接続する一対の引出線路と、該一対の引出線路に互いに並列接続する複数の分岐線路とからなる第1及び第2駆動コイルを備え、該第1及び第2駆動コイルの前記各分岐線路を、前記可動部対辺部に当該対辺部と平行に敷設する一方、前記梁部の軸方向に対して直交方向に、前記可動部を挟んで前記静磁界発生手段を反対磁極を対向させて配置する構成とするとよい。
【0009】
請求項5のように、前記駆動手段は、前記可動部に設けた可動電極と、固定部位に固定した固定電極とを備え、前記両電極間に電圧を印加して前記可動部に対して少なくとも上下方向の静電引力を作用させることが可能な構成としてもよい。
【0010】
請求項5の構成において、請求項6のように、前記可動電極は、前記梁部を挟んで可動部周縁部に放射状にそれぞれ延設された第1及び第2可動櫛歯電極であり、前記固定電極は、前記第1及び第2可動櫛歯電極と上下方向に位置をずらしてそれぞれ固定配置された第1及び第2固定櫛歯電極であるようにするとよい。
【0011】
また、請求項7のように、前記可動電極は、前記梁部を挟んで可動部周縁部に放射状にそれぞれ延設された第1及び第2可動櫛歯電極であり、該第1及び第2可動櫛歯電極は、絶縁層の上下に互いに絶縁されて形成された上側電極と下側電極をそれぞれ有する構成であり、前記固定電極は、前記第1及び第2可動櫛歯電極とそれぞれ噛み合うよう固定配置された第1及び第2固定櫛歯電極であり、該第1及び第2固定櫛歯電極は、絶縁層の上下に互いに絶縁されて形成され前記第1及び第2可動櫛歯電極の上側電極と下側電極とそれぞれ噛み合う上側電極と下側電極をそれぞれ有する構成とするとよい。
【0012】
前記光学手段は、請求項8のように、光ビームを屈折するレンズでもよく、請求項9のように、光ビームを反射するミラーでもよい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明のプレーナ型アクチュエータによれば、可動部を固定部に対して上下方向に駆動して光学手段で屈折又は反射された光ビームの焦点位置を調整できる構成としたので、アクチュエータを光学機器に適用する場合に、光ビームの焦点位置を調整するためのレンズ等の光学部品を省くことができる。従って、光学機器の構成を簡素化できると共にコストを低減できる。
【0014】
請求項4、6の発明によれば、第1駆動コイルと第2駆動コイルに供給する電流値や、第1可動櫛歯電極−第1固定櫛歯電極間と第2可動櫛歯電極−第2固定櫛歯電極間にそれぞれ印加する電圧値を、それぞれ異ならせれば、可動部に対して梁部回りの回動力が発生するので、可動部に生じた傾きを是正できる利点がある。
【0015】
請求項7の発明によれば、可動側櫛歯電極と固定側櫛歯電極との間の電圧印加の組み合わせを選択することで、可動部を上下、左右、回動等の種々の形態で駆動することができるようになる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第1実施形態の平面図を示す。
図1において、本実施形態のプレーナ型アクチュエータは、光ビームの焦点位置の調整機能を備えるもので、固定基板1(図2に示す)上に載置される固定部2に一対の梁部3を介して可動可能に支持された可動部4と、該可動部4に設ける光学手段として例えば凸レンズ5と、前記可動部4を前記固定部2に対して上下方向に駆動する駆動手段を構成する第1及び第2駆動コイル6,7及び静磁界発生手段として例えば永久磁石8A,8Bとを備える。
【0017】
前記可動部4は、固定部2及び一対の梁部3と共に例えばシリコン基板をエッチングして一体的に形成される。可動部4は、略中央部に設けた貫通孔部に光ビームを屈折して放射する前記凸レンズ5を固定し、梁部3の軸方向と平行な両対辺部に一対の駆動コイル6,7を敷設している。
【0018】
前記凸レンズ5は、個別に加工したものを可動部4の貫通孔部分に固定してもよく、可動部4の一方の面に透明樹脂を滴下して表面張力により凸レンズを形成し、可動部4のもう一方の面から貫通孔を形成してもよい。尚、可動部4が光ビームの透過を妨げない材質である場合には可動部4に貫通孔を設けなくてもよい。
【0019】
前記駆動コイル6,7は、通電により磁界を発生するもので、梁部3を介して固定部2側に引出されて固定部2上に設けた電極端子9A,9Bと10A,10Bにそれぞれ接続される。本実施形態の駆動コイル6,7は、固定部2に引出す各引出線路6a,7aに対して互いに並列接続した複数の各分岐線路6b,7bを、梁部3の軸方向と平行な可動部対辺部に当該対辺部と平行に敷設して形成される。
【0020】
前記永久磁石8A,8Bは、駆動コイル6,7に静磁界を作用して梁部3の軸方向と平行な可動部両対辺部に同一方向の電磁力を発生させるもので、枠状のヨーク11の内側に設けられており、可動部4を間にして互いに反対磁極を対向して例えば固定部2の外側に配置されている。これら永久磁石8A,8B及びヨーク11は、固定基板1上に載置される。尚、ヨーク11は省略してもよい。また、静磁界発生手段として永久磁石に代えて電磁石を用いてもよい。また、固定部2の内側に配置してもよい。
そして、前記固定基板1には、図2に示すように凸レンズ5の対向部位に開口部1aを形成し、光ビームを下方から凸レンズ5に入射できるようにしている。
【0021】
次に、第1実施形態のプレーナ型アクチュエータの動作を図2に基づいて説明する。尚、図2は図1のA−A矢視断面図であり、永久磁石8A,8Bは図示省略してある。
駆動コイル6,7に、例えば電極端子9A,10A側を+極、電極端子9B,10B側を−極として可動部4上を同一方向に流れるよう駆動電流を供給する。梁部3の軸方向と平行な可動部4の対辺部には、永久磁石8A,8Bによる静磁界が作用している。そのため、可動部4の面に平行な静磁界成分と駆動コイル6,7を流れる電流により発生する磁界との相互作用により、可動部4の両対辺部には同じ下向きの電磁力が作用し、可動部4が固定部2に対して図2の矢印で示すように下方向に移動する。尚、駆動コイル6,7の通電方向を共に図示と逆にすれば図2の上方向に可動部4を移動させることができる。
【0022】
図2に示すように例えば凸レンズ5の光軸中心に沿って、アクチュエータの下方から固定基板1の開口部1aを通してレーザ光のような光ビームを入射すると、光ビームは凸レンズ5を透過して焦点位置Fに集光する。そして、上述のように可動部4を図2のように下方に移動させると、焦点位置Fが移動量に対応して下方に位置F′へ移動する。
【0023】
駆動コイル6に流す電流値と駆動コイル7に流す電流値の大きさを異ならせれば、可動部4の両対辺部に作用する下向きの力に差が生じて梁部3を中心として可動部4を回動させることができるので、可動部4を固定部2に対して上下方向に移動させたときに可動部4に傾きが発生しても、これを是正することができる。
【0024】
かかる第1実施形態によれば、可動部4に設けた凸レンズ5から放射する光ビームの光軸方向に可動部4を移動させて焦点位置Fを調整できるので、従来のように焦点位置調整用の光学レンズ部品を用いなくとも、焦点位置を所定の位置に合わせることが可能になる。従って、プレーナ型アクチュエータを利用する光学機器の構成を簡素化できると共に、部品点数を削減できるので製造コストを低減できる。また、各駆動コイル6,7に流す電流値の大きさを異ならせれば、可動部4を上下方向に移動させたときに可動部4に傾きが発生しても、これを是正できる。
【0025】
図3に示す第2実施形態は、第1実施形態と駆動コイルの敷設形態が異なるだけであり、可動部4に敷設する駆動コイルを、引出線路6a′と、凸レンズ5を挟んで可動部4の両側に並列に敷設された複数の分岐線路6b′とからなる単一の駆動コイル6′とした。その他の構成は第1実施形態と同様である。
かかる第2実施形態のプレーナ型アクチュエータも、例えば電極端子9A側を+極、電極端子9B側を−極として駆動電流を供給すると、永久磁石8A,8Bによる静磁界と、駆動コイル6′を流れる電流により発生する磁界との相互作用により、第1実施形態と同様に可動部4が固定部2に対して下方向に移動する。駆動電流の通電方向を逆にすれば逆方向に可動部4が移動することは言うまでもない。ただし、第2実施形態は、可動部4の傾きを是正する機能はない。
【0026】
次に、図4及び図5に本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第3実施形態を示す。第1実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。尚、図5は図4のB−B矢視断面図である。
図4及び図5において、本実施形態のプレーナ型アクチュエータは、第1及び第2駆動コイル6,7を、可動部4の凸レンズ5を挟んだ両側に互いに反対方向に巻回するように敷設し、可動部4の下方の固定基板1上に静磁界発生手段として平板状の永久磁石21を、図5に示すように例えば上側がN極、下側がS極となるように配置する構成である。また、永久磁石21には、光ビームを透過させる開口部21aが形成される。尚、静磁界発生手段は、電磁石を用いてもよい。
【0027】
次に、第3実施形態のプレーナ型アクチュエータの動作を説明する。
例えば、駆動コイル6に、電極端子9A側を+極、電極端子9B側を−極として駆動電流を供給し、駆動コイル7には、逆に、電極端子10B側を+極、電極端子10A側を−極として駆動電流を供給する。このとき、永久磁石21のN極からS極に向かう静磁界における可動部4の面に水平な静磁界成分が、可動部4の凸レンズ5を挟んだ両側対辺部において互いに反対方向に作用している。このため、第1実施形態と同様に可動部4の両対辺部に同じ下向きの電磁力が作用し、可動部4が固定部2に対して図5の下方向に移動し、光ビームの焦点位置を光ビームの光軸方向に調整できる。尚、駆動コイル6,7の通電方向をそれぞれ逆にすれば図5の上方向に可動部4は移動する。
【0028】
そして、かかる第3実施形態のプレーナ型アクチュエータの場合も、駆動コイル6と駆動コイル7の電流値の大きさを異ならせれば、可動部4を固定部2に対して上下方向に移動させたときに可動部4に傾きが発生しても、これを是正することができる。
【0029】
図6に示す第4実施形態は、第3実施形態と駆動コイルの敷設形態が異なるだけであり、単一の駆動コイル6′を、凸レンズ5を囲むように可動部4の周縁に沿って敷設する構成である。その他の構成は第3実施形態と同様である。
かかる第4実施形態のプレーナ型アクチュエータも、例えば電極端子9A側を+極、電極端子9B側を−極として駆動電流を供給すると、第3実施形態と同様に可動部4が固定部2に対して下方向に移動する。駆動電流の通電方向を逆にすれば逆方向に可動部4が移動することは言うまでもない。ただし、第4実施形態は、可動部4の傾きを是正する機能はない。
【0030】
尚、第3及び第4実施形態の場合、梁部3を境に可動部4の両側にそれぞれ静磁界発生手段を配置するようにしてもよい。また、静磁界発生手段と駆動コイルの配置を逆にしてもよい。例えば、可動部4側に薄膜磁石を形成し、可動部4の下方の固定基板1側に駆動コイルを配置する構成としてもよい。
【0031】
可動部の駆動手段は、上述した電磁駆動方式に限定されず、静電引力を利用した静電駆動方式でもよく、以下に、静電駆動タイプのプレーナ型アクチュエータの実施形態を示す。
図7及び図8に、本発明の第5実施形態を示す。第1実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。尚、図8は図7のC−C矢視断面図である。
図において、本実施形態のプレーナ型アクチュエータは、梁部3を境として凸レンズ5の両側の可動部4下面にそれぞれ可動電極31A,31Bを設け、該可動電極31A,31Bと対面させて図8に示すように固定部位である固定基板1側にそれぞれ固定電極32A,32Bを設ける構成である。可動電極31A,31Bは、梁部3を介して例えば固定部2の下面等に形成した電極端子9A,9Bに接続する。また、固定電極32A,32Bと接続する電極端子は、図示しないが固定基板1等に形成すればよい。
【0032】
かかる第5実施形態のプレーナ型アクチュエータでは、図8に示すように、可動電極31Aと固定電極32Aの間、可動電極31Bと固定電極32Bの間に、例えば可動電極31A,可動電極31B側をそれぞれ+極として電圧を印加する。これにより、可動電極31Aと固定電極32Aの間、可動電極31Bと固定電極32Bの間に、それぞれ同じ方向の静電引力が発生し、可動部4を図8中下方向に移動させることができ、凸レンズ5を透過する光ビームの焦点位置を、光ビームの光軸方向に調整できる。また、凸レンズ5の左右の可動電極−固定電極間の印加電圧値を異ならせれば、可動部4を固定部2に対して移動させたときに可動部4に傾きが発生しても、これを是正することができる。
【0033】
図9に示す第6実施形態は、単一の可動電極31と固定電極32を、互いに対面させて可動部4下面と固定基板1上面に設ける構成である。その他の構成は第5実施形態と同様である。尚、本実施形態の場合、可動電極31及び固定電極32に、光ビーム貫通用の開口部31a,32aを形成する必要がある。9は、可動電極31に接続する電極端子を示す。
かかる第6実施形態のプレーナ型アクチュエータも、可動電極31と固定電極32間に電圧を印加することにより、可動部4が固定部2に対して下方向に移動する。ただし、第6実施形態は、可動部4の傾きを是正する機能はない。
【0034】
図10及び図11に、本発明の第7実施形態を示す。第1実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。尚、図11は図10のD−D矢視断面図である。
図において、本実施形態のプレーナ型アクチュエータは、梁部3の軸方向と平行な可動部4の両対辺部の周縁部に、第1及び第2可動櫛歯電極41,42をそれぞれ延設して形成し、固定部2上面に設けた電極端子43,44に梁部3を通して電気的に接続する。また、固定部2側には、第1及び第2可動櫛歯電極41,42と噛み合う第1及び第2固定櫛歯電極45,46を形成し、固定部2下面に設けた電極端子47,48にそれぞれ電気的に接続する。そして、可動櫛歯電極41,42と固定櫛歯電極45,46の位置関係を、図11に示すように上下にずらして配置する。尚、図11では、電極端子47,48を図示省略してある。
【0035】
かかる第7実施形態のプレーナ型アクチュエータでは、可動櫛歯電極41,42と固定櫛歯電極45,46に電圧を印加すると、両者間に発生する静電引力により可動部4が図11中下側に移動する。第1可動櫛歯電極41−第1固定櫛歯電極45間の印加電圧値と第2可動櫛歯電極42−第2固定櫛歯電極46間の印加電圧値を異ならせれば、発生する静電引力に差ができ、可動部4を固定部2に対して移動させたときに可動部4に傾きが発生しても、これを是正することができる。
【0036】
図12に、本発明の第8実施形態を示す。尚、第7実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態のプレーナ型アクチュエータは、SOI(Silicon-on-insulator)ウエハを用いて固定部2、梁部3及び可動部4を一体的に形成する。そして、可動部4側には第1及び第2可動櫛歯電極51,52が形成され、固定部2側には第1及び第2固定櫛歯電極53,54が形成される。更に、本実施形態では、前記第1及び第2可動櫛歯電極51,52が、図12に示すように、SOIウエハの絶縁層55の上下に互いに絶縁された上側電極51A,52Aと下側電極51B,52Bを有し、前記第1及び第2固定櫛歯電極53,54が、同じくSOIウエハの絶縁層55の上下に互いに絶縁され前記上側電極51A,52Aと下側電極51B,52Bにそれぞれ噛み合う上側電極53A,54Aと下側電極53B,54Bを有する構成である。
【0037】
かかる構成のプレーナ型アクチュエータの動作について説明する。
第1可動櫛歯上側電極51A−第1固定櫛歯下側電極53B間と、第2可動櫛歯上側電極52A−第2固定櫛歯下側電極54B間とにそれぞれ電圧を印加すれば、可動部4が図12中下方向に移動し、逆に、第2可動櫛歯下側電極51B−第1固定櫛歯上側電極53A間と、第2可動櫛歯下側電極52B−第2固定櫛歯上側電極54A間とにそれぞれ電圧を印加すれば、可動部4が図12中上方向に移動する。印加する電圧値を異ならせれば、可動部4を固定部2に対して下又は上へ移動させたときに可動部4に傾きが発生しても、これを是正することができる。
【0038】
また、第1可動櫛歯上側電極51A−第1固定櫛歯上側電極53A間又は第1可動櫛歯下側電極51B−第1固定櫛歯下側電極53B間に電圧を印加すれば、可動部4が図12中左方向に移動し、第2可動櫛歯上側電極52A−第2固定櫛歯上側電極54A間又は第2可動櫛歯下側電極52B−第2固定櫛歯下側電極54B間に電圧を印加すれば、可動部4が図12中右方向に移動する。従って、例えば、第1可動櫛歯上側電極51A−第1固定櫛歯上側電極53A間と第2可動櫛歯上側電極52A−第2固定櫛歯上側電極54A間との交互に電圧を印加すれば、可動部4を左右に移動させることができ、凸レンズ5の屈折作用を利用して凸レンズ5を透過する光ビームを走査することができる。そして、前述した電圧印加モードを組み合わせれば、可動部4を上又は下方向に移動させた状態で、可動部4を左右に移動させて光ビームを走査することが可能である。
【0039】
図13に、本発明の第9実施形態を示す。
本実施形態のプレーナ型アクチュエータは、可動部4の上下方向の移動を電磁駆動で行い、凸レンズ5による光ビームの走査は静電駆動で行うようにした、電磁駆動と静電駆動を組み合わせた構成である。図1の構成に加えて、図13に斜線で示すように、可動部4側に可動電極61A,61Bを設け、例えば永久磁石8A,8Bに固定電極62A,62Bを設ける。
【0040】
かかるプレーナ型アクチュエータでは、第1実施形態と同様の駆動コイル6,7への電流供給形態により、可動部4を上下方向に移動させたり、可動部4を固定部2に対して上下方向に移動させたときの可動部4の傾きの是正を行うことができる。更に、可動電極61A−固定電極62A間と、可動電極61B−固定電極62B間とに、交互に電圧を印加することにより、可動部4を図中の左右方向に移動させることができる。
【0041】
かかる第9実施形態によれば、永久磁石8A,8B、可動電極61A,61B及び固定電極62A,62B等の可動部駆動用部品の全てを可動部4の左右に配置できるので、凸レンズ5から放射される光ビームの光路が妨げられることがないという利点がある。
【0042】
上述の第1〜8実施形態の構成において、光学手段として凸レンズに代えて光ビームを反射するミラーを設ける構成としてもよい。
光学手段としてミラーを用いた場合の本発明の第10実施形態として、図1のプレーナ型アクチュエータに適用した場合の構成を図14に示す。尚、図1の第1実施形態と同一要素には同一符号を付してある。
図14において、本実施形態のプレーナ型アクチュエータは、可動部4に、凸レンズ5に代えてミラー70を設ける。その他は、第1実施形態と同じ構成である。
【0043】
第10実施形態のプレーナ型アクチュエータの場合、第1実施形態と同様の駆動モードに加えて、直流電流を両駆動コイル6,7に供給して可動部4を図中上或いは下方向に移動させた状態で、例えば駆動コイル6には電極端子9A側から交流電流を供給し、駆動コイル7には電極端子10Bから駆動コイル6に供給する交流電流と位相が同相の交流電流を供給する駆動モードを採用することができる。かかる駆動モードでは、可動部の駆動コイル6,7の電流方向が互いに逆となり可動部4の両対辺部には互いに反対方向のローレンツ力が作用するので、可動部4は、梁部3を中心にして揺動する。このため、ミラー70によるレーザ光等の光ビームの反射光を、可動部4の揺動動作によって走査することができるようになる。
【0044】
図4に示す第3実施形態の構成でも第10実施形態と同様に可動部4を揺動させることが可能である。また、図7、図10及び図12に示す静電駆動方式のアクチュエータも、上下方向移動のための直流電圧に、揺動動作のための直流電圧を交互に重畳印加すれば、第10実施形態と同様にミラー70の反射光の走査ができる。
【0045】
また、電磁駆動と静電駆動を組み合わせる構成にミラー70を適用する場合は、図15に示すように、ミラー70による光ビームの走査は電磁駆動で行い、可動部4の上下方向の移動は静電駆動で行う構成とするとよい。
図15に示す第11実施形態のアクチュエータは、図6の第4実施形態と図7の第5実施形態と組み合わせた構成であり、図6の電磁駆動構成に図7の可動電極31A,31Bと固定電極32A,32Bを付加して構成される。
【0046】
かかる第11実施形態では、可動電極31A,31Bと固定電極32A,32Bに上述したように電圧を印加して可動部4を上又は下方向に移動する。更に、駆動コイル6′に交流電流を供給することにより、可動部4を梁部3を中心に揺動する。
【0047】
図16に、本発明の第12実施形態を示す。
図16において、本実施形態のプレーナ型アクチュエータは、固定部2に外側梁部3Aで可動可能に支持した枠状の外側可動部4Aと、該外側可動部4Aに前記外側梁部3Aと軸方向が直交する内側梁部3Bで可動可能に支持した内側可動部4Bとを備え、内側可動部4Bに凸レンズ5を設けて構成した2次元動作型アクチュエータである。そして、外側梁部3Aの軸方向と平行な外側可動部4Aの両対辺部と内側梁部3Bの軸方向と平行な内側可動部4Bの両対辺部とに、外側第1可動櫛歯電極41A及び外側第2可動櫛歯電極41Bと内側第1可動櫛歯電極42A及び内側第2可動櫛歯電極42Bとをそれぞれ形成し、固定部2と外側可動部4Aに、外側第1固定櫛歯電極43A及び外側第2固定櫛歯電極43Bと内側第1固定櫛歯電極44A及び内側第2固定櫛歯電極44Bとをそれぞれ形成する。これら各櫛歯電極は、図示しない電極端子を介して電圧が印加可能に構成される。可動櫛歯電極41A,41B,42A,42Bと固定櫛歯電極43A,43B,44A,44Bの位置関係は、図11と同様に配置する。尚、可動櫛歯電極41A,41B,42A,42Bと固定櫛歯電極43A,43B,44A,44Bは、図12に示す第8実施形態と同様に絶縁層の上下に上側電極と下側電極を有する構成でもよい。
【0048】
かかる第12実施形態のアクチュエータでは、外側の第1及び第2可動櫛歯電極41A,41Bと第1及び第2固定櫛歯電極43A,43Bに電圧を印加することにより外側可動部4Aを上又は下に移動させることができる。更に、内側の第1及び第2可動櫛歯電極42A,42Bと第1及び第2固定櫛歯電極44A,44Bに電圧を印加することにより内側可動部4Bを上又は下に移動させることができる。従って、凸レンズ5を設けた内側可動部4Bを2段階に上方向又は下方向に移動させることができるようになり、凸レンズ5の焦点位置の調整幅を大きくできる。
尚、上述した第1〜第11実施形態について、図16のような2次元動作型アクチュエータ構造に拡張することができることは言うまでもない。
【0049】
尚、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本出願人が先に提案した特願2003−435211号の図6と同様の3本の梁部を有して櫛歯電極を放射状に配置する構造でも、本発明の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に係るプレーナ型アクチュエータの第1実施形態を示す平面図
【図2】図1のA−A矢視断面図
【図3】本発明の第2実施形態を示す要部平面図
【図4】本発明の第3実施形態を示す要部平面図
【図5】図4のB−B矢視断面図
【図6】本発明の第4実施形態を示す要部平面図
【図7】本発明の第5実施形態を示す平面図
【図8】図7のC−C矢視断面図
【図9】本発明の第6実施形態を示す平面図
【図10】本発明の第7実施形態を示す要部平面図
【図11】図10のD−D矢視断面図
【図12】本発明の第8実施形態を示す要部断面図
【図13】本発明の第9実施形態を示す要部平面図
【図14】本発明の第10実施形態を示す平面図
【図15】本発明の第11実施形態を示す要部平面図
【図16】本発明の第12実施形態を示す要部平面図
【符号の説明】
【0051】
2 固定部
3,3A,3B 梁部
4,4A,4B 可動部
5 凸レンズ
6,6′,7 駆動コイル
8A,8B,21 永久磁石
9A,9B,10A,10B 電極端子
31,31A,31B,61A,61B 可動電極
32,32A,32B,62A,62B 固定電極
41,41A,41B,42,42A,42B,51,52 可動櫛歯電極
43A,43B,44A,44B,45,46,53,54 固定櫛歯電極
70 ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定部に梁部を介して可動可能に支持された可動部と、該可動部に設けられて入射する光ビームを屈折又は反射する光学手段と、前記可動部を前記固定部に対して少なくとも上下方向に駆動可能な駆動手段とを備え、前記光学手段で屈折又は反射された光ビームの焦点位置を調整可能な構成としたことを特徴とするプレーナ型アクチュエータ。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記梁部の軸方向と平行な可動部対辺部に対して少なくとも同一方向の電磁力を作用させることが可能な構成である請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項3】
前記駆動手段は、前記可動部に敷設されて通電により磁界を発生する駆動コイルと、前記梁部の軸方向と平行な可動部対辺部に位置する駆動コイル部分に対して静磁界を作用する静磁界発生手段とを備え、前記可動部対辺部に位置する駆動コイル部分に発生する磁界と前記静磁界との相互作用により前記可動部対辺部に電磁力を作用させる構成である請求項2に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項4】
前記駆動コイルが、電極端子に接続する一対の引出線路と、該一対の引出線路に互いに並列接続する複数の分岐線路とからなる第1及び第2駆動コイルを備え、該第1及び第2駆動コイルの前記各分岐線路を、前記可動部対辺部に当該対辺部と平行に敷設する一方、前記梁部の軸方向に対して直交方向に、前記可動部を挟んで前記静磁界発生手段を反対磁極を対向させて配置する構成とした請求項3に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項5】
前記駆動手段は、前記可動部に設けた可動電極と、固定部位に固定した固定電極とを備え、前記両電極間に電圧を印加して前記可動部に対して少なくとも上下方向の静電引力を作用させることが可能な構成である請求項1に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項6】
前記可動電極は、前記梁部を挟んで可動部周縁部に放射状にそれぞれ延設された第1及び第2可動櫛歯電極であり、前記固定電極は、前記第1及び第2可動櫛歯電極と上下方向に位置をずらしてそれぞれ固定配置された第1及び第2固定櫛歯電極である請求項5に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項7】
前記可動電極は、前記梁部を挟んで可動部周縁部に放射状にそれぞれ延設された第1及び第2可動櫛歯電極であり、該第1及び第2可動櫛歯電極は、絶縁層の上下に互いに絶縁されて形成された上側電極と下側電極をそれぞれ有する構成であり、前記固定電極は、前記第1及び第2可動櫛歯電極とそれぞれ噛み合うよう固定配置された第1及び第2固定櫛歯電極であり、該第1及び第2固定櫛歯電極は、絶縁層の上下に互いに絶縁されて形成され前記第1及び第2可動櫛歯電極の上側電極と下側電極とそれぞれ噛み合う上側電極と下側電極をそれぞれ有する構成である請求項5に記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項8】
前記光学手段は、光ビームを屈折するレンズである請求項1〜7のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。
【請求項9】
前記光学手段は、光ビームを反射するミラーである請求項1〜7のいずれか1つに記載のプレーナ型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2006−72251(P2006−72251A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−258850(P2004−258850)
【出願日】平成16年9月6日(2004.9.6)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【出願人】(000166948)シチズンミヨタ株式会社 (438)
【Fターム(参考)】