説明

プロキシミティ露光装置、プロキシミティ露光装置の露光量調節方法、及び表示用パネル基板の製造方法

【課題】基板の露光領域を連続する複数の区画に分けて露光する際、各区画の境界でパターンの段差が発生するのを効果的に防止する。
【解決手段】マスクホルダ20に保持されたマスク2の上方に露光量調節板42a,42b,43a,43bを設け、露光量調節板42a,42b,43a,43bを基板1の露光領域の各区画A,B,C,Dの境界付近で移動させて、各区画A,B,C,Dの境界付近へ照射される露光光の光量を調節する。基板1の露光領域の各区画A,B,C,Dの露光時に、露光量調節板42a,42b,43a,43bにより光量を調節した露光光を、各区画A,B,C,Dの境界付近へ重ねて照射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ装置等の表示用パネル基板の製造において、プロキシミティ方式を用いて基板の露光を行うプロキシミティ露光装置、プロキシミティ露光装置の露光量調節方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に係り、特に、基板の露光領域を連続する複数の区画に分けて露光するプロキシミティ露光装置、プロキシミティ露光装置の露光量調節方法、及びそれらを用いた表示用パネル基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表示用パネルとして用いられる液晶ディスプレイ装置のTFT(Thin Film Transistor)基板やカラーフィルタ基板、プラズマディスプレイパネル用基板、有機EL(Electroluminescence)表示パネル用基板等の製造は、露光装置を用いて、フォトリソグラフィー技術により基板上にパターンを形成して行われる。露光装置としては、レンズ又は鏡を用いてマスクのパターンを基板上に投影するプロジェクション方式と、マスクと基板との間に微小な間隙(プロキシミティギャップ)を設けてマスクのパターンを基板へ転写するプロキシミティ方式とがある。プロキシミティ方式は、プロジェクション方式に比べてパターン解像性能は劣るが、照射光学系の構成が簡単で、かつ処理能力が高く量産用に適している。
【0003】
プロキシミティ露光装置では、マスクのパターンを基板へ1対1に転写するため、基板が大型化して露光領域が大きくなると、露光領域と同じ大きさのマスクが必要となり、マスクのコストが増加する。そこで、例えば、液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板等の露光で、同じ形状のパターンを繰り返して形成する場合には、露光領域より小さなマスクを用い、基板の露光領域を連続する複数の区画に分けて露光することが行われている。
【0004】
基板の露光領域を連続する複数の区画に分けて露光する場合、露光光の光量が区画毎にばらつくと、形成されるパターンの高さが各区画の境界で急激に変化し、パターンの段差が発生する。表示用パネル基板では、このパターンの段差が人の目で認識されて、表示品質が劣化する。特許文献1には、従来技術として、透過率の勾配がついたフィルターを用いて、マスクの端部で露光量を緩やか傾斜させ、隣り合う区画同士で端部を重複して露光して、境界部分の露光量を均一化することが記載されている。また、特許文献1には、マスクに露光領域と遮光領域を縦横に交互に配置して、境界部分の露光量の差を小さくする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−133200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マスクの全面で露光光の光量を均一にすることは難しく、特にマスクの周辺部では、露光光の回折等により、露光光の光量が場所によって異なってくる。例えば、露光される各区画の上側端部と下側端部、又は右側端部と左側端部とでは、露光光の光量が異なり、これらの露光光の光量のばらつきは、露光装置毎あるいはマスク毎に変化する。しかしながら、特許文献1に従来技術として記載されたフィルターを用いる方法では、各区画の周辺部での露光光の光量の違いに対応することができなかった。また、特許文献1に記載の技術では、マスクに特殊な加工が必要であった。
【0007】
本発明の課題は、基板の露光領域を連続する複数の区画に分けて露光する際、マスクに特殊な加工を施すことなく、各区画の境界でパターンの段差が発生するのを効果的に防止することである。また、本発明の課題は、高品質な表示用パネル基板を製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプロキシミティ露光装置は、基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダとを備え、チャックに支持された基板の露光領域を、連続する複数の区画に分けて露光するプロキシミティ露光装置において、マスクホルダに保持されたマスクの上方に設けられ、基板の露光領域の各区画の境界付近で移動して、各区画の境界付近へ照射される露光光の光量を調節する露光量調節板を備え、基板の露光領域の各区画の露光時に、露光量調節板により光量を調節した露光光を、各区画の境界付近へ重ねて照射するものである。
【0009】
また、本発明のプロキシミティ露光装置の露光量調節方法は、基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダと備え、チャックに支持された基板の露光領域を、連続する複数の区画に分けて露光するプロキシミティ露光装置の露光量調節方法であって、マスクホルダに保持されたマスクの上方に露光量調節板を設け、露光量調節板を基板の露光領域の各区画の境界付近で移動させて、各区画の境界付近へ照射される露光光の光量を調節し、基板の露光領域の各区画の露光時に、露光量調節板により光量を調節した露光光を、各区画の境界付近へ重ねて照射するものである。
【0010】
さらに、本発明のプロキシミティ露光装置は、露光量調節板を移動させる駆動手段を備え、駆動手段が、露光量調節板の移動開始時刻及び移動速度を調節して、各区画の境界付近へ照射される露光光の光量を、各区画の境界毎に調節させるものである。また、本発明のプロキシミティ露光装置の露光量調節方法は、露光量調節板の移動開始時刻及び移動速度を調節して、各区画の境界付近へ照射される露光光の光量を、各区画の境界毎に調節するものである。
【0011】
マスクホルダに保持されたマスクの上方に露光量調節板を設け、露光量調節板を基板の露光領域の各区画の境界付近で移動させて、各区画の境界付近へ照射される露光光の光量を調節するので、露光量調節板の移動開始時刻及び移動速度を調節することにより、各区画の周辺部での露光光の光量の違いに応じて、各区画の境界付近へ照射される露光光の光量を、各区画の境界毎に高精度に調節することができる。そして、基板の露光領域の各区画の露光時に、露光量調節板により光量を調節した露光光を、各区画の境界付近へ重ねて照射するので、各区画の境界付近へ照射される露光光の総光量がなだらかに変化し、各区画の境界でパターンの段差が発生するのが効果的に防止される。
【0012】
さらに、本発明のプロキシミティ露光装置は、マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのY方向の幅に渡って配置され、基板の露光領域の各区画のY方向に伸びる境界付近でX方向へそれぞれ独立に移動して、各区画のY方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節する複数の第1の露光量調節板と、マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのX方向の幅に渡って配置され、基板の露光領域の各区画のX方向に伸びる境界付近でY方向へそれぞれ独立に移動して、各区画のX方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節する複数の第2の露光量調節板とを備えたものである。
【0013】
また、本発明のプロキシミティ露光装置の露光量調節方法は、マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのY方向の幅に渡って複数の第1の露光量調節板を設け、各第1の露光量調節板を、基板の露光領域の各区画のY方向に伸びる境界付近でX方向へそれぞれ独立に移動させて、各区画のY方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節し、マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのX方向の幅に渡って複数の第2の露光量調節板を設け、各第2の露光量調節板を、基板の露光領域の各区画のX方向に伸びる境界付近でY方向へそれぞれ独立に移動させて、各区画のX方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節するものである。
【0014】
マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのY方向の幅に渡って複数の第1の露光量調節板を設け、各第1の露光量調節板を、基板の露光領域の各区画のY方向に伸びる境界付近でX方向へそれぞれ独立に移動させて、各区画のY方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節するので、各区画のY方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を高精度に調節することができる。また、マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのX方向の幅に渡って複数の第2の露光量調節板を設け、各第2の露光量調節板を、基板の露光領域の各区画のX方向に伸びる境界付近でY方向へそれぞれ独立に移動させて、各区画のX方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節するので、各区画のX方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を高精度に調節することができる。従って、基板の露光領域をXY方向に連続する複数の区画に分けて露光する際、各区画のX方向に伸びる境界付近及びY方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の総光量がなだらかに変化し、各区画のX方向に伸びる境界及びY方向に伸びる境界でパターンの段差が発生するのが効果的に防止される。
【0015】
本発明の表示用パネル基板の製造方法は、上記のいずれかのプロキシミティ露光装置を用いて基板の露光を行い、あるいは、上記のいずれかのプロキシミティ露光装置の露光量調節方法を用いて露光光の光量を調節しながら、基板の露光を行うものである。上記のプロキシミティ露光装置又はプロキシミティ露光装置の露光量調節方法を用いることにより、基板の露光領域を連続する複数の区画に分けて露光する際、各区画の境界でパターンの段差が発生するのが効果的に防止されるので、高品質な表示用パネル基板が製造される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプロキシミティ露光装置及びプロキシミティ露光装置の露光量調節方法によれば、マスクホルダに保持されたマスクの上方に露光量調節板を設け、露光量調節板を基板の露光領域の各区画の境界付近で移動させて、各区画の境界付近へ照射される露光光の光量を調節し、基板の露光領域の各区画の露光時に、露光量調節板により光量を調節した露光光を、各区画の境界付近へ重ねて照射することにより、マスクに特殊な加工を施すことなく、各区画の境界でパターンの段差が発生するのを効果的に防止することができる。
【0017】
さらに、本発明のプロキシミティ露光装置及びプロキシミティ露光装置の露光量調節方法によれば、マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのY方向の幅に渡って複数の第1の露光量調節板を設け、各第1の露光量調節板を、基板の露光領域の各区画のY方向に伸びる境界付近でX方向へそれぞれ独立に移動させて、各区画のY方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節し、マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのX方向の幅に渡って複数の第2の露光量調節板を設け、各第2の露光量調節板を、基板の露光領域の各区画のX方向に伸びる境界付近でY方向へそれぞれ独立に移動させて、各区画のX方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節することにより、基板の露光領域をXY方向に連続する複数の区画に分けて露光する場合、各区画のX方向に伸びる境界及びY方向に伸びる境界でパターンの段差が発生するのを効果的に防止することができる。
【0018】
本発明の表示用パネル基板の製造方法によれば、基板の露光領域を連続する複数の区画に分けて露光する際、各区画の境界でパターンの段差が発生するのを効果的に防止することができるので、高品質な表示用パネル基板を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置の概略構成を示す図である。
【図2】チャックを露光位置へ移動した状態を示す側面図である。
【図3】図3(a)はマスクホルダ及び露光量調節装置の上面図、図3(b)は図3(a)のE−E部の断面図である。
【図4】基板の露光領域とマスクの一例を示す図である。
【図5】露光量調節板の動作を説明する図である。
【図6】液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図7】液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明の一実施の形態によるプロキシミティ露光装置の概略構成を示す図である。また、図2は、チャックを露光位置へ移動した状態を示す側面図である。プロキシミティ露光装置は、ベース3、Xガイド4、Xステージ5、Yガイド6、Yステージ7、θステージ8、チャック支持台9、チャック10、マスクホルダ20、露光量調節装置、露光量調節装置駆動回路52、ステージ駆動回路60、及び主制御装置70を含んで構成されている。なお、図1及び図2では、後述する露光量調節装置が省略されている。プロキシミティ露光装置は、これらの他に、基板1をチャック10へ搬入し、また基板1をチャック10から搬出する基板搬送ロボット、露光光を照射する照射光学系、装置内の温度管理を行う温度制御ユニット等を備えている。
【0021】
なお、以下に説明する実施の形態におけるXY方向は例示であって、X方向とY方向とを入れ替えてもよい。
【0022】
図1において、チャック10は、基板1のロード及びアンロードを行うロード/アンロード位置にある。ロード/アンロード位置において、図示しない基板搬送ロボットにより、基板1がチャック10へ搬入され、また基板1がチャック10から搬出される。チャック10への基板1のロード及びチャック10からの基板1のアンロードは、チャック10に設けた複数の突き上げピンを用いて行われる。突き上げピンは、チャック10の内部に収納されており、チャック10の内部から上昇して、基板1をチャック10にロードする際、基板搬送ロボットから基板1を受け取り、基板1をチャック10からアンロードする際、基板搬送ロボットへ基板1を受け渡す。チャック10は、基板1の裏面を真空吸着して支持する。
【0023】
基板1の露光を行う露光位置の上空には、マスク2を保持するマスクホルダ20が設置されている。マスクホルダ20には、露光光が通過する開口20aが設けられており、開口20aの下方には、マスク2が装着されている。マスクホルダ20の下面の開口20aの周囲には、吸着溝が設けられており、マスクホルダ20は、吸着溝により、マスク2の周辺部を真空吸着して保持している。マスクホルダ20に保持されたマスク2の上空には、図示しない照射光学系が配置されている。基板1の表面には、感光樹脂材料(フォトレジスト)が塗布されており、露光時、照射光学系からの露光光がマスク2を透過して基板1へ照射されることにより、マスク2のパターンが基板1の表面に転写され、基板1上にパターンが形成される。
【0024】
図2において、チャック10は、チャック支持台9を介してθステージ8に搭載されており、θステージ8の下にはYステージ7及びXステージ5が設けられている。Xステージ5は、ベース3に設けられたXガイド4に搭載され、Xガイド4に沿ってX方向(図2の図面横方向)へ移動する。Yステージ7は、Xステージ5に設けられたYガイド6に搭載され、Yガイド6に沿ってY方向(図2の図面奥行き方向)へ移動する。θステージ8は、Yステージ7に搭載され、θ方向へ回転する。チャック支持台9は、θステージ8に搭載され、チャック10を複数箇所で支持する。Xステージ5、Yステージ7、及びθステージ8には、ボールねじ及びモータや、リニアモータ等の図示しない駆動機構が設けられており、各駆動機構は、図1のステージ駆動回路60により駆動される。
【0025】
Xステージ5のX方向への移動及びYステージ7のY方向への移動により、チャック10は、ロード/アンロード位置と露光位置との間を移動される。ロード/アンロード位置において、Xステージ5のX方向への移動、Yステージ7のY方向への移動、及びθステージ8のθ方向への回転により、チャック10に搭載された基板1のプリアライメントが行われる。露光位置において、Xステージ5のX方向への移動及びYステージ7のY方向への移動により、チャック10に搭載された基板1のXY方向へのステップ移動が行われる。また、図示しないZ−チルト機構により、マスクホルダ20をZ方向(図2の図面上下方向)へ移動及びチルトすることによって、マスク2と基板1とのギャップ合わせが行われる。そして、Xステージ5のX方向への移動、Yステージ7のY方向への移動、及びθステージ8のθ方向への回転により、マスク2と基板1との位置合わせが行われる。図1において、主制御装置70は、ステージ駆動回路60を制御して、Xステージ5のX方向への移動、Yステージ7のY方向への移動、及びθステージ8のθ方向へ回転を行う。
【0026】
なお、本実施の形態では、マスクホルダ20をZ方向へ移動及びチルトすることにより、マスク2と基板1とのギャップ合わせを行っているが、チャック支持台9にZ−チルト機構を設けて、チャック10をZ方向へ移動及びチルトすることにより、マスク2と基板1とのギャップ合わせを行ってもよい。また、本実施の形態では、Xステージ5及びYステージ7によりチャック10をXY方向へ移動することにより、マスク2と基板1との位置合わせを行っているが、マスクホルダ20をXY方向へ移動するステージを設けて、マスクホルダ20をXY方向へ移動することにより、マスク2と基板1との位置合わせを行ってもよい。
【0027】
図3(a)はマスクホルダ及び露光量調節装置の上面図、図3(b)は図3(a)のE−E部の断面図である。露光量調節装置は、露光量調節板42a,42b,43a,43b、ボールねじナット44a,44b,45a,45b、ボールねじ46a,46b,47a,47b、ガイド48,49、及びモータ50a,50b,51a,51bを含んで構成されている。
【0028】
図3(a),(b)において、露光量調節板42a,42bは、マスクホルダ20に保持されたマスク2の上方に、マスク2のY方向の幅に渡って配置されている。露光量調節板42aの両端は、ボールねじナット44aを介して、マスクホルダ20の内側面に取り付けたガイド48に移動可能に保持されている。各ボールねじ46aに連結された各モータ50aを同期して駆動することにより、露光量調節板42aはガイド48に沿ってX方向へ移動される。同様に、露光量調節板42bの両端は、ボールねじナット44bを介して、ガイド48に移動可能に保持されている。各ボールねじ46bに連結された各モータ50bを同期させて駆動することにより、露光量調節板42bはガイド48に沿ってX方向へ移動される。図1において、露光量調節装置駆動回路52は、主制御装置70の制御により、各モータ50a,50bを駆動する。
【0029】
図3(a),(b)において、露光量調節板43a,43bは、マスクホルダ20に保持されたマスク2の上方に、マスク2のX方向の幅に渡って配置されている。露光量調節板43aの両端は、ボールねじナット45aを介して、マスクホルダ20の内側面に取り付けたガイド49に移動可能に保持されている。各ボールねじ47aに連結された各モータ51aを同期して駆動することにより、露光量調節板43aはガイド49に沿ってY方向へ移動される。同様に、露光量調節板43bの両端は、ボールねじナット45bを介して、ガイド49に移動可能に保持されている。各ボールねじ47bに連結された各モータ51bを同期させて駆動することにより、露光量調節板43bはガイド49に沿ってY方向へ移動される。図1において、露光量調節装置駆動回路52は、主制御装置70の制御により、各モータ51a,51bを駆動する。
【0030】
図4は、基板の露光領域とマスクの一例を示す図である。図4(a)は、基板1の全面の露光領域を、破線で示したXY方向に連続する4つの区画A,B,C,Dに分けて露光する例を示している。図4(b)は、このとき使用されるマスク2を示し、マスク2上の破線で示した部分が、マスクホルダ20の露光光が通過する開口20aに相当する部分である。
【0031】
図5は、露光量調節板の動作を説明する図である。図5(a)は、基板1の露光領域の区画Aを露光するときの露光量調節板42aの動作を示し、図5(b)は、このとき基板1へ照射される露光光のX方向の光量を示している。基板1の露光領域の区画Aを露光するとき、主制御装置70は、露光量調節装置駆動回路52を制御して、各モータ50aを駆動させ、露光量調節板42aを、基板1の露光領域の区画A,BのY方向に伸びる境界付近で、図5(a)に矢印で示すX方向へ移動させる。これにより、基板1へ照射される露光光の光量は、図5(b)に示す様に、基板1の露光領域の区画A,BのY方向に伸びる境界付近で、なだらかに変化する。
【0032】
なお、図5(b)は、露光光の光量がX方向において均一でなく、区画Aの左側周辺部の露光光の光量が、区画Aの右側周辺部の露光光の光量よりも多い場合を示している。
【0033】
同様に、基板1の露光領域の区画Aを露光するとき、主制御装置70は、露光量調節装置駆動回路52を制御して、各モータ51aを駆動させ、露光量調節板43aを、基板1の露光領域の区画A,DのX方向に伸びる境界付近で、Y方向へ移動させる。これにより、基板1へ照射される露光光の光量は、基板1の露光領域の区画A,DのX方向に伸びる境界付近で、なだらかに変化する。
【0034】
図5(c)は、基板1の露光領域の区画Bを露光するときの露光量調節板42bの動作を示し、図5(d)は、このとき基板1へ照射される露光光のX方向の光量を示している。基板1の露光領域の区画Bを露光するとき、主制御装置70は、露光量調節装置駆動回路52を制御して、各モータ50bを駆動させ、露光量調節板42bを、基板1の露光領域の区画A,BのY方向に伸びる境界付近で、図5(c)に矢印で示すX方向へ移動させる。これにより、基板1へ照射される露光光の光量は、図5(d)に示す様に、基板1の露光領域の区画A,BのY方向に伸びる境界付近で、なだらかに変化する。
【0035】
なお、図5(d)は、図5(b)と同様に、露光光の光量がX方向において均一でなく、区画Bの左側周辺部の露光光の光量が、区画Bの右側周辺部の露光光の光量よりも多い場合を示している。
【0036】
同様に、基板1の露光領域の区画Bを露光するとき、主制御装置70は、露光量調節装置駆動回路52を制御して、各モータ51aを駆動させ、露光量調節板43aを、基板1の露光領域の区画B,CのX方向に伸びる境界付近で、Y方向へ移動させる。これにより、基板1へ照射される露光光の光量は、基板1の露光領域の区画B,CのX方向に伸びる境界付近で、なだらかに変化する。
【0037】
同様にして、基板1の露光領域の区画Cを露光するとき、主制御装置70は、露光量調節装置駆動回路52を制御して、各モータ50bを駆動させ、露光量調節板42bを、基板1の露光領域の区画C,DのY方向に伸びる境界付近でX方向へ移動させる。これにより、基板1へ照射される露光光の光量は、基板1の露光領域の区画C,DのY方向に伸びる境界付近で、なだらかに変化する。また、基板1の露光領域の区画Cを露光するとき、主制御装置70は、露光量調節装置駆動回路52を制御して、各モータ51bを駆動させ、露光量調節板43bを、基板1の露光領域の区画B,CのX方向に伸びる境界付近で、Y方向へ移動させる。これにより、基板1へ照射される露光光の光量は、基板1の露光領域の区画B,CのX方向に伸びる境界付近で、なだらかに変化する。
【0038】
同様にして、基板1の露光領域の区画Dを露光するとき、主制御装置70は、露光量調節装置駆動回路52を制御して、各モータ50aを駆動させ、露光量調節板42aを、基板1の露光領域の区画C,DのY方向に伸びる境界付近でX方向へ移動させる。これにより、基板1へ照射される露光光の光量は、基板1の露光領域の区画C,DのY方向に伸びる境界付近で、なだらかに変化する。また、基板1の露光領域の区画Dを露光するとき、主制御装置70は、露光量調節装置駆動回路52を制御して、各モータ51bを駆動させ、露光量調節板43bを、基板1の露光領域の区画A,DのX方向に伸びる境界付近で、Y方向へ移動させる。これにより、基板1へ照射される露光光の光量は、基板1の露光領域の区画A,DのX方向に伸びる境界付近で、なだらかに変化する。
【0039】
マスクホルダ20に保持されたマスク2の上方に露光量調節板42a,42b,43a,43bを設け、露光量調節板42a,42b,43a,43bを基板1の露光領域の各区画A,B,C,Dの境界付近で移動させて、各区画A,B,C,Dの境界付近へ照射される露光光の光量を調節するので、露光量調節板42a,42b,43a,43bの移動開始時刻及び移動速度を調節することにより、各区画A,B,C,Dの周辺部での露光光の光量の違いに応じて、各区画A,B,C,Dの境界付近へ照射される露光光の光量を、各区画A,B,C,Dの境界毎に高精度に調節することができる。
【0040】
図5(e)は、本発明を用いない場合に基板1へ照射される露光光のX方向の光量を示している。図5(b),(d)と同様に、区画A,Bの左側周辺部の露光光の光量が、区画A,Bの右側周辺部の露光光の光量よりも多い場合、区画A,Bを単にX方向に並べて露光すると、図5(e)に示す様に、露光光の光量が区画A,Bの境界で急激に変化する。そのため、形成されるパターンの高さが区画A,Bの境界で急激に変化し、パターンの段差が発生する。
【0041】
図5(f)は、本実施の形態により基板1へ照射される露光光のX方向の総光量を示している。基板1の露光領域の各区画A,B,C,Dの露光時に、露光量調節板42a,42b,43a,43bにより光量を調節した露光光を、各区画A,B,C,Dの境界付近へ重ねて照射するので、各区画A,B,C,Dの境界付近へ照射される露光光の総光量がなだらかに変化し、各区画A,B,C,Dの境界でパターンの段差が発生するのが効果的に防止される。
【0042】
以上説明した実施の形態によれば、マスクホルダ20に保持されたマスク2の上方に露光量調節板42a,42b,43a,43bを設け、露光量調節板42a,42b,43a,43bを基板1の露光領域の各区画A,B,C,Dの境界付近で移動させて、各区画A,B,C,Dの境界付近へ照射される露光光の光量を調節し、基板1の露光領域の各区画A,B,C,Dの露光時に、露光量調節板42a,42b,43a,43bにより光量を調節した露光光を、各区画A,B,C,Dの境界付近へ重ねて照射することにより、マスクに特殊な加工を施すことなく、各区画A,B,C,Dの境界でパターンの段差が発生するのを効果的に防止することができる。
【0043】
さらに、マスクホルダ20に保持されたマスク2の上方に、マスク2のY方向の幅に渡って複数の第1の露光量調節板42a,42bを設け、各第1の露光量調節板42a,42bを、基板1の露光領域の各区画A,B,C,DのY方向に伸びる境界付近でX方向へそれぞれ独立に移動させて、各区画A,B,C,DのY方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節し、マスクホルダ20に保持されたマスク2の上方に、マスク2のX方向の幅に渡って複数の第2の露光量調節板43a,43bを設け、各第2の露光量調節板43a,43bを、基板1の露光領域の各区画A,B,C,DのX方向に伸びる境界付近でY方向へそれぞれ独立に移動させて、各区画A,B,C,DのX方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節することにより、基板1の露光領域をXY方向に連続する複数の区画A,B,C,Dに分けて露光する場合、各区画A,B,C,DのX方向に伸びる境界及びY方向に伸びる境界でパターンの段差が発生するのを効果的に防止することができる。
【0044】
本発明のプロキシミティ露光装置を用いて基板の露光を行い、あるいは、本発明のプロキシミティ露光装置の露光量調節方法を用いて露光光の光量を調節しながら、基板の露光を行うことにより、基板の露光領域を連続する複数の区画に分けて露光する際、各区画の境界でパターンの段差が発生するのを効果的に防止することができるので、高品質な表示用パネル基板を製造することができる。
【0045】
例えば、図6は、液晶ディスプレイ装置のTFT基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。薄膜形成工程(ステップ101)では、スパッタ法やプラズマ化学気相成長(CVD)法等により、基板上に液晶駆動用の透明電極となる導電体膜や絶縁体膜等の薄膜を形成する。レジスト塗布工程(ステップ102)では、ロール塗布法等により感光樹脂材料(フォトレジスト)を塗布して、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜上にフォトレジスト膜を形成する。露光工程(ステップ103)では、プロキシミティ露光装置や投影露光装置等を用いて、マスクのパターンをフォトレジスト膜に転写する。現像工程(ステップ104)では、シャワー現像法等により現像液をフォトレジスト膜上に供給して、フォトレジスト膜の不要部分を除去する。エッチング工程(ステップ105)では、ウエットエッチングにより、薄膜形成工程(ステップ101)で形成した薄膜の内、フォトレジスト膜でマスクされていない部分を除去する。剥離工程(ステップ106)では、エッチング工程(ステップ105)でのマスクの役目を終えたフォトレジスト膜を、剥離液によって剥離する。これらの各工程の前又は後には、必要に応じて、基板の洗浄/乾燥工程が実施される。これらの工程を数回繰り返して、基板上にTFTアレイが形成される。
【0046】
また、図7は、液晶ディスプレイ装置のカラーフィルタ基板の製造工程の一例を示すフローチャートである。ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)では、レジスト塗布、露光、現像、エッチング、剥離等の処理により、基板上にブラックマトリクスを形成する。着色パターン形成工程(ステップ202)では、染色法、顔料分散法、印刷法、電着法等により、基板上に着色パターンを形成する。この工程を、R、G、Bの着色パターンについて繰り返す。保護膜形成工程(ステップ203)では、着色パターンの上に保護膜を形成し、透明電極膜形成工程(ステップ204)では、保護膜の上に透明電極膜を形成する。これらの各工程の前、途中又は後には、必要に応じて、基板の洗浄/乾燥工程が実施される。
【0047】
図6に示したTFT基板の製造工程では、露光工程(ステップ103)において、図7に示したカラーフィルタ基板の製造工程では、ブラックマトリクス形成工程(ステップ201)及び着色パターン形成工程(ステップ202)の露光処理において、本発明のプロキシミティ露光装置又はプロキシミティ露光装置の露光量調節方法を適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 基板
2 マスク
3 ベース
4 Xガイド
5 Xステージ
6 Yガイド
7 Yステージ
8 θステージ
9 チャック支持台
10 チャック
20 マスクホルダ
20a 開口
42a,42b,43a,43b 露光量調節板
44a,44b,45a,45b ボールねじナット
46a,46b,47a,47b ボールねじ
48,49 ガイド
52 露光量調節装置駆動回路
50a,50b,51a,51b モータ
60 ステージ駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダとを備え、前記チャックに支持された基板の露光領域を、連続する複数の区画に分けて露光するプロキシミティ露光装置において、
前記マスクホルダに保持されたマスクの上方に設けられ、基板の露光領域の各区画の境界付近で移動して、各区画の境界付近へ照射される露光光の光量を調節する露光量調節板を備え、
基板の露光領域の各区画の露光時に、前記露光量調節板により光量を調節した露光光を、各区画の境界付近へ重ねて照射することを特徴とするプロキシミティ露光装置。
【請求項2】
前記露光量調節板を移動させる駆動手段を備え、該駆動手段は、前記露光量調節板の移動開始時刻及び移動速度を調節して、各区画の境界付近へ照射される露光光の光量を、各区画の境界毎に調節させることを特徴とする請求項1に記載のプロキシミティ露光装置。
【請求項3】
前記マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのY方向の幅に渡って配置され、基板の露光領域の各区画のY方向に伸びる境界付近でX方向へそれぞれ独立に移動して、各区画のY方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節する複数の第1の露光量調節板と、
前記マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのX方向の幅に渡って配置され、基板の露光領域の各区画のX方向に伸びる境界付近でY方向へそれぞれ独立に移動して、各区画のX方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節する複数の第2の露光量調節板とを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプロキシミティ露光装置。
【請求項4】
基板を支持するチャックと、マスクを保持するマスクホルダと備え、チャックに支持された基板の露光領域を、連続する複数の区画に分けて露光するプロキシミティ露光装置の露光量調節方法であって、
マスクホルダに保持されたマスクの上方に露光量調節板を設け、露光量調節板を基板の露光領域の各区画の境界付近で移動させて、各区画の境界付近へ照射される露光光の光量を調節し、
基板の露光領域の各区画の露光時に、露光量調節板により光量を調節した露光光を、各区画の境界付近へ重ねて照射することを特徴とするプロキシミティ露光装置の露光量調節方法。
【請求項5】
露光量調節板の移動開始時刻及び移動速度を調節して、各区画の境界付近へ照射される露光光の光量を、各区画の境界毎に調節することを特徴とする請求項4に記載のプロキシミティ露光装置の露光量調節方法。
【請求項6】
マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのY方向の幅に渡って複数の第1の露光量調節板を設け、各第1の露光量調節板を、基板の露光領域の各区画のY方向に伸びる境界付近でX方向へそれぞれ独立に移動させて、各区画のY方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節し、
マスクホルダに保持されたマスクの上方に、マスクのX方向の幅に渡って複数の第2の露光量調節板を設け、各第2の露光量調節板を、基板の露光領域の各区画のX方向に伸びる境界付近でY方向へそれぞれ独立に移動させて、各区画のX方向に伸びる境界付近へ照射される露光光の光量を調節することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のプロキシミティ露光装置の露光量調節方法。
【請求項7】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のプロキシミティ露光装置を用いて基板の露光を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。
【請求項8】
請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載のプロキシミティ露光装置の露光量調節方法を用いて露光光の光量を調節しながら、基板の露光を行うことを特徴とする表示用パネル基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−64897(P2013−64897A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203913(P2011−203913)
【出願日】平成23年9月19日(2011.9.19)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】