説明

プロセスカートリッジ

【課題】電子写真方式を利用し像担持体に接触帯電を行なってトナー像を形成する画像形成装置に着脱自在に装着されるプロセスカートリッジに関し、搬送中等の振動による帯電ローラの回転によって像担持体表面が摩擦帯電してしまうことを防止する。
【解決手段】帯電ローラ4を回転不能に固定する取り外し自在な固定部材45を備え、帯電ローラ4が、固定部材45が取り外されることで回転自在になるものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用し像担持体に接触帯電を行なってトナー像を形成する画像形成装置に着脱自在に装着されるプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式を利用した複写機やプリンタなどの画像形成装置では、像担持体表面にトナー像を得るため、まず、帯電バイアスを印加して帯電装置により像担持体を帯電させる。続いて、帯電された像担持体を像露光することにより、その像担持体表面に静電潜像を形成する。次に、現像装置内に収納されたトナーを像担持体に転移させることにより像担持体上の静電潜像を現像して像担持体上にトナー像を形成する。そして、こうして形成されたトナー像を、所定の記録媒体上に転写して定着することにより記録媒体上に画像を最終的に形成する。このような画像形成装置に配備される帯電装置としては、オゾンやNOX等の放電生成物の発生が少ない接触帯電方式を採用し、帯電ローラを備えたものが知られている。この帯電ローラは、像担持体表面に接触した状態で帯電バイアスの印加を受け、回転することによりその像担持体表面を帯電する。
【0003】
ところで、像担持体や帯電ローラは、一定期間使用すると新しい物に交換しなければならず、画像形成装置本体からの取り外しおよびその本体への取り付けを容易にするため、これらの部材を一つの筐体内に収納しカートリッジ化することが行われている。以下、このカートリッジ化されたものをプロセスカートリッジと称する。プロセスカートリッジでは、像担持体や帯電ローラを筐体内に組み込む際や、完成したプロセスカートリッジを搬送している最中に振動によって帯電ローラが僅かに回転し、像担持体表面が摩擦帯電されてしまうことがある。こうして摩擦帯電された像担持体には電荷がトラップされており、電荷を一旦トラップした像担持体を、帯電ローラに帯電バイアスを印加して帯電させると、このトラップされていた電荷による履歴によってスジ状の画質欠陥が数枚から数十枚に渡って生じることがある。
【0004】
そこで、像担持体の材料を変更することで帯電ローラとの摩擦抵抗を下げ、像担持体表面が摩擦帯電されにくくする提案(特許文献1参照)や、像担持体表面と帯電ローラとの間に粉体を介在させ像担持体表面が摩擦帯電されにくくする提案(特許文献2参照)がなされている。
【特許文献1】特開平6−138682号公報
【特許文献2】特開平7−84432号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、像担持体の材料は、摩擦帯電されにくいといった観点とは別の、画像形成におけるもっと根本的な観点によって決定されるべきであり、特許文献1のように摩擦帯電されにくいといった観点だけを理由に像担持体の材料変更を行うことは現実的ではない。また、特許文献2に記載の粉体を介在させることは、帯電バイアスを印加して像担持体を帯電させる本来の帯電機能までもが阻害されてしまう恐れがあり、この粉体を介在させることは実用上問題がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、搬送中等の振動による帯電ローラの回転によって像担持体表面が摩擦帯電してしまうことを防止する工夫がなされたプロセスカートリッジを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決する本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像が形成される像担持体表面に接触した状態で回転することによりその像担持体表面を帯電させる帯電ローラによってその像担持体表面を帯電させ、帯電後の像担持体表面に露光光を照射することによりその像担持体表面に静電潜像を形成し、その静電潜像をトナーで現像してその像担持体表面にトナー像を形成し、そのトナー像を、最終的に記録媒体上に転写および定着することによりその記録媒体上に画像を形成する画像形成装置に着脱自在に装着される、上記像担持体と上記帯電ローラとの双方を有するプロセスカートリッジにおいて、
上記帯電ローラを回転不能に固定する取り外し自在な固定部材を備え、
上記帯電ローラが、上記固定部材が取り外されることで回転自在になるものであることを特徴とする。
【0008】
本発明のプロセスカートリッジによれば、上記帯電ローラが搬送中の振動等を受けても、上記固定部材を取り付けておくことでその帯電ローラの回転自体が防止され、像担持体表面が摩擦帯電してしまうことが防がれる。
【0009】
ここで、上記固定部材の態様はいかなる態様であってもよいが、例えば、上記固定部材が、上記帯電ローラの回転軸の少なくともいずれか一方の端部に配備されたものであってもよい。
【0010】
また、このプロセスカートリッジが、上記帯電ローラの回転軸の両端を回転自在に支持する支持フレームを備え、
上記固定部材が、上記支持フレームに取り付けられることで上記帯電ローラを回転不能に固定するものであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、搬送中等の振動による帯電ローラの回転によって像担持体表面が摩擦帯電してしまうことを防止する工夫がなされたプロセスカートリッジを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態であるプロセスカートリッジが取り付けられた画像形成装置としてのデジタルプリンタの内部構造を示す模式図である。
【0014】
図1に示すデジタルプリンタ1は、図示しないパーソナルコンピュータや画像読取装置等から送られてくる画像情報に基づいて、画像を形成する。このデジタルプリンタ1の本体1aの内部には、図1に示すように、感光体ドラム3、現像装置5等の画像形成部材を一体的にユニット化したプロセスカートリッジ2が配備されている。このプロセスカートリッジ2は、本体1aに対して着脱自在に配備されており、感光体ドラム3が寿命に達した場合等には、本体1aから取り外されて、新たなプロセスカートリッジ2に交換される。
【0015】
図1に示すプロセスカートリッジ2の内部には、像担持体としての感光体ドラム3と、帯電手段としての帯電ローラ4と、現像手段としての現像装置5と、ドクターブレード方式を採用したクリーニング装置6とが取り付けられている。
【0016】
帯電ローラ4は、感光体ドラム3の表面に接触した状態で回転することによりその表面を一様に帯電させるものである。この帯電ローラ4には、直流の帯電バイアスが印加されるが、直流電圧に交流電圧を重畳させた帯電バイアスが印加されてもよい。帯電ローラ4は、金属シャフト41とロール体42とからなるものである。金属シャフト41は、帯電ローラ4の回転中心軸になるものである。ロール体42は、電気抵抗が103Ω〜108Ωに調整された材料から構成されたものであり、単層又は複数の層から構成されていても構わない。材質としては、ウレタンゴム、シリコンゴム、フッソゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、EPDM、エピクロルヒドリンゴム等の合成ゴムやポリオレフィン、ポリスチレン、塩化ビニル等からなるエラストマーを主材料とし、導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の任意の導電性付与剤を適量配合して上記電気抵抗に調整したものを用いることができる。さらにナイロン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、シリコーン等の樹脂を塗料化し、そこに導電性カーボン、金属酸化物、イオン導電剤等の任意の導電性付与剤を適量配合し、得られた塗料をデイッピング、スプレー、ロールコート等の任意の手法により塗布し、積層構造のものとしてもよい。
【0017】
図1に示す感光体ドラム3は、有機光導電体(OPC)からなるものであり、この感光体ドラム3は、図示しない駆動手段により回転軸3aを中心に矢印方向に所定の速度で回転するようになっている。感光体ドラム3は、単層構成、電荷発生層と電荷輸送層とからなる積層構成などいかなる構成でもよい。感光体ドラム3の表面は、帯電ローラ4によって−300Vから−1000Vの範囲に属する所定の電位に一様に帯電された後、露光手段としてのROS(Raster Output Scanner)7によって画像露光が施され、画像情報に応じた静電潜像が感光体ドラム3の表面に形成される。ROS7は、画像処理装置8で所定の画像処理が施された画像情報に基づくレーザービームLBを、コリメータレンズ、反射ミラー、ポリゴンミラー、f−θレンズ等からなる結像光学系を介して、感光体ドラム3上に走査露光することにより、感光体ドラム3の表面に静電潜像を形成する。そして、感光体ドラム3の表面に形成された静電潜像は、一成分現像剤(トナー)を収容した現像装置5によって現像され、トナー像になる。なお、現像装置5としては、二成分現像剤を使用したものであってもよい。
【0018】
感光体ドラム3の表面に形成されたトナー像は、転写手段としての転写ロール9によって、記録媒体としての記録用紙10上に転写される。この記録用紙10は、フィードロール11によって給紙カセット12から給紙され、分離ロール13とリタードロール14によって1枚ずつ分離された状態でレジストロール15まで搬送され、一旦停止される。そして、レジストロール15まで搬送された記録用紙10は、トナー像が形成された感光体ドラム3の回転に同期して、レジストロール15により感光体ドラム3の表面に搬送され、記録用紙10上には、トナー像が感光体ドラム3から転写ロール9によって転写される。
【0019】
なお、図1に示す画像形成装置1では、転写ロール9を用いた直接転写方式が採用されているが、転写ロール9に代えて転写コロトロンを用いてもよい。また、記録用紙10を静電的に吸着して搬送し感光体ドラム上のトナー像を転写する転写ベルト方式を採用してもよい。さらに、中間転写ベルトや中間転写ドラム等の中間転写体を用いた中間転写方式を採用してもよい。
【0020】
トナー像が転写された記録用紙10は、定着装置16へ搬送される。定着装置16へ搬送された記録用紙10は、定着装置16の加熱ロール17と加圧ロール18によって、熱及び圧力でトナー像が定着され、記録用紙10上に定着トナー像からなる画像が形成される。画像が形成された記録用紙10は、排出ロール19によって本体1aの上部に設けられた排紙トレイ20上に排出される。
【0021】
一方、トナー像の転写が終了した後の感光体ドラム3の表面には、記録用紙10へ移行することができなかった残留トナーや、帯電において生じた放電生成物などの残留物が存在する。図1に示すクリーニング装置6は、これらの残留物を除去するための装置であって、転写ロール9よりも感光体ドラム回転方向下流側であって帯電ローラ4よりも感光体ドラム回転方向上流側の位置に配備されたものである。このクリーニング装置6は、板状のゴム弾性体であるクリーニングブレード61を有する。図1に示すクリーニングブレード61は、感光体ドラム3の表面に先端エッジ部を圧接させた状態で、感光体ドラム3の回転軸3aの延在方向に延びるものである。このクリーニングブレード61は、感光体ドラム3の表面に残留した残留物を、感光体ドラム3が回転することで機械的に掻き取る。なお、感光体ドラム3は、クリーニングブレード61の先端エッジ部が表面に圧接していることで、プロセスカートリッジ2の組み立て時や搬送時に生じる振動によって回転することが抑えられている。
【0022】
図2は、図1に示すプロセスカートリッジの、帯電ロールと感光体ドラムが配備された部分を模式的に示す図である。
【0023】
図2には、プロセスカートリッジ2のフレーム2aが示されており、このフレーム2aに感光体ドラム3の回転軸3aが回転自在に軸支されている。図2に示す感光体ドラム3の回転軸3aの一方の端部(図2では左側の端部)には、不図示の駆動機構からの回転力を受けるギア31が示されている。感光体ドラム3は、このギア31に回転力が伝達されることで回転し、帯電ローラ4は感光体ドラム3の回転に従動して回転する。図2に示す感光体ドラム3は、図1に示すクリーニングブレード61の先端エッジ部が表面に圧接していることに加えて、ギア31が噛合していることでも、プロセスカートリッジ2の組み立て時や搬送時に生じる振動等では回転しない構造になっている。
【0024】
図2に示す帯電ローラ4の周面には、ブラシクリーナ49の毛491が接触しており、帯電ローラ4の周面はそのブラシクリーナ49によって清掃される。なお、ブラシクリーナ49に代えてロール体のクリーナを設けてもよい。
【0025】
また、図2に示すフレーム2aには、帯電ローラ4の金属シャフト41も回転自在に軸支されている。図2に示す帯電ローラ4には、ブラシクリーナ49の毛491が接触しているものの圧接しているものはなく、また噛合したギアもないため、図2に示す帯電ローラ4は回転自在なものである。この回転自在な帯電ローラ4の回転軸4aの一方の端部側(図2では右側)には、固定部材45が取り付けられる(図2中の矢印参照)。以下、図2とともに図3も用いて説明する。
【0026】
図3は、図2に示す固定部材と、帯電ローラの、その固定部材が取り付けられる側の一部を模式的に示す斜視図である。
【0027】
帯電ローラ4の金属シャフト41の、固定部材45が取り付けられる側の一方には切欠部411が設けられている。この切欠部411は、断面形状が円形の金属シャフト41の端部を半円になるように切り欠いたものである。固定部材45には、この切欠部411の断面形状に一致した半円の貫通孔451(図3参照)と、図2に示すフレーム2aにこの固定部材45を係止するための係止部452(図2参照)とが設けられている。帯電ローラ4の金属シャフト41の一端側に設けられた切欠部411に、固定部材45の貫通孔451を通し(図3中の矢印参照)、固定部材45の係止部452をフレーム2aに係止させることで、帯電ローラ4は回転不能に固定される。したがって、帯電ローラ4が搬送中の振動等を受けても、この固定部材45をフレーム2aに係止させておくことで、帯電ローラ4の回転自体が防止され、感光体ドラム3の表面が摩擦帯電してしまうことが防がれる。なお、回転不能に固定された帯電ローラ4は、フレーム2aに係止された固定部材45をフレーム2aから取り外すことで回転自在なものとなり、プロセスカートリッジ2を本体1aに装着する直前に固定部材45を取り外せば、帯電ローラ4が感光体ドラム3の回転に従動して回転することができるようになる。
【0028】
なお、この図3には、帯電ローラ4を図2に示す感光体ドラム3の表面に押し付け、さらに帯電バイアスの印加経路になる、図2では図示省略したバネ部材43も示されている。図3に示すバネ部材43は帯電ローラ4の両端に配備されている。
(実施例)
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0029】
この実施例では、試験器として、感光体ドラムと帯電ローラとの双方を有するプロセスカートリッジが4つ装着される、いわゆるフルカラータンデム方式を採用した富士ゼロックスDocu Print C3530を用いた。ここで装着する4つのプロセスカートリッジそれぞれは、帯電ローラを図3に示す固定部材によって回転不能に固定できるように改造したものを用いた。これら4つのプロセスカートリッジそれぞれを、帯電ロールを回転不能に固定した状態で、本体への装着前に振動試験器にセットし、垂直方向にて最大加速度5m/s2、周波数10Hz、20Hz、40Hz、80Hzの周波数に関し各30分間の計120分間振動ストレスを与えた。その後、固定部材を取り外して各プロセスカートリッジを本体に装着し、画像評価を実施した。
【0030】
一方、比較例としては、各プロセスカートリッジを、帯電ロールが回転自在な状態で、本体への装着前に振動試験器にセットし、実施例と同様にして振動ストレスを与えた後、それらのプロセスカートリッジを本体に装着し、画像評価を実施した。
【0031】
画像評価の結果、比較例では形成画像上に黒すじが発生したのに対し、実施例では黒すじの発生がなかった。比較例では、振動ストレスを受けて帯電ローラが回転し、感光体ドラム表面が正極側に摩擦帯電された結果、感光体ドラムに負の電荷による履歴が残り、黒すじが発生したと考えられるが、実施例では、振動ストレスを受けても帯電ローラが回転せず感光体ドラム表面が摩擦帯電してしまうことが防止された結果、黒すじが発生しなかったと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態であるプロセスカートリッジが取り付けられた画像形成装置としてのデジタルプリンタの内部構造を示す模式図である。
【図2】図1に示すプロセスカートリッジの、帯電ロールと感光体ドラムが配備された部分を模式的に示す図である。
【図3】図2に示す固定部材と、帯電ローラの、その固定部材が取り付けられる側の一部を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 デジタルプリンタ
1a 本体
2 プロセスカートリッジ
3 感光体ドラム
4 帯電ローラ
41 金属シャフト
45 固定部材
5 現像装置
6 クリーニング装置
7 ROS
8 画像処理装置
9 転写ロール
16 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電潜像が形成される像担持体表面に接触した状態で回転することにより該像担持体表面を帯電させる帯電ローラによって該像担持体表面を帯電させ、帯電後の像担持体表面に露光光を照射することにより該像担持体表面に静電潜像を形成し、該静電潜像をトナーで現像して該像担持体表面にトナー像を形成し、該トナー像を、最終的に記録媒体上に転写および定着することにより該記録媒体上に画像を形成する画像形成装置に着脱自在に装着される、前記像担持体と前記帯電ローラとの双方を有するプロセスカートリッジにおいて、
前記帯電ローラを回転不能に固定する取り外し自在な固定部材を備え、
前記帯電ローラが、前記固定部材が取り外されることで回転自在になるものであることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−57830(P2007−57830A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243224(P2005−243224)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】