説明

プロセス流から均一系触媒を富化する方法

本発明の対象は、均一系触媒を、この均一系触媒を成分として含有するプロセス流から富化する方法であって、前記プロセス流を少なくとも1つの膜に導き、かつ前記膜は完全に又は部分的に剛直なリンカーを介して互いに結合されている平面ポリマー単位を有するポリマーからなり、その際に前記リンカーはねじれているので、少なくとも1個の平面ポリマー単位が、前記リンカーを介して共面ではない配置で少なくとも1個の第二の平面ポリマー単位と結合されている。本発明のさらなる対象はトリデカナールの製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一系触媒を、この均一系触媒を成分として含有するプロセス流から、富化する方法に関する。富化(Anreicherung)のために、前記プロセス流は少なくとも1つの膜に導かれる。
【0002】
均一系触媒反応において使用される触媒系は通例それぞれの反応混合物から完全に又は部分的に除去されなければならない。この理由は、生成物純度への要求でありうるか、又は例えば前記反応へ直接又は間接的に返送されることができる有用物質としての前記触媒系の回収でありうる。
【0003】
特に触媒としての例えばロジウムのような遷移金属錯体の使用の際又は高価な配位子の使用の際に、前記触媒系の分離は、前記触媒コストに基づいて重要なプロセス工程である。均一系相中で遷移金属錯体を使用して実施される工業的方法は、例えばテロメリゼーション、メタセシス、水素化又はヒドロホルミル化である。工業的に普及しかつ相対的に高い触媒コストと結びついているのは、ロジウム錯体を用いる反応である。
【0004】
ロジウム錯体は触媒として例えば、オレフィンを、炭素原子が1個だけ増えたアルデヒド及び/又はアルコールに大工業的にヒドロホルミル化する際に使用される。その際に、特に、ホスフィン配位子、ホスフィット配位子、ホスホニット配位子又はホスフィニット配位子を有するロジウム錯体が触媒として使用される。
【0005】
前記分離の種類は、全プロセスの経済性に本質的な影響を及ぼしうる。反応混合物からの前記触媒の分離は、最も単純には専ら熱による分離法により、例えば反応生成物及び場合により出発物質が触媒含有反応混合物から蒸発により分離されることによって、行われることができる。そのような方法の場合に不利であるのは、前記触媒及び/又は前記配位子が蒸留中に分解しうることである。蒸留残留物中の触媒副次生成物はしばしばプロセス中で活性な触媒系へ変換されることができない。故にそれらは外へ移されなければならず、かつ前記プロセスへの返送前に費用をかけて後処理されなければならない。このことは特に、ロジウムをホスフィンよりも弱く錯化させる配位子を有するロジウム錯体を触媒として含有するヒドロホルミル化混合物の後処理にあてはまる。前記蒸留の際に、これらの配位子錯体は、欠如した安定化のために一酸化炭素により分解するかもしれず、このことはロジウムのクラスター化(Verclusterung)をまねきうる。前記ロジウムクラスターは、ヒドロホルミル化条件下で活性な触媒に変換されることができない。さらにまた、前記蒸留の際に前記配位子の部分的な分解を生じうる。
【0006】
均一系触媒系の潜在的におだやかな分離は、一段階又は多段階の接続(Verschaltung)における膜での均一系触媒含有プロセス流の濃縮を提供する。
【0007】
欧州特許(EP)第0 781 166号明細書には、非水性ヒドロホルミル化反応混合物から、溶解されたロジウム−オルガノホスフィット錯体触媒並びに遊離配位子を膜で前記触媒及び前記遊離配位子の少なくとも90質量%を分離することが記載されている。膜ポリマーとして、テフロン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチレン、ポリイソブタジエン、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリ塩化ビニル、セルロースジアセタート、ポリ塩化ビニリデン及びポリアクリロニトリルが挙げられている。触媒系からの高沸成分の分離は記載されていない。
【0008】
欧州特許(EP)第1 232 008号明細書には、膜(PDMS)を用いる触媒返送流からの高沸成分の分離が記載されている。前記返送流は、有機金属触媒での反応の排出物を蒸留により後処理する際に生じる。その際に、出発物質及び一次生成物は留去され、かつ缶出液として、前記触媒系が溶解されている高沸成分混合物が残留する。この触媒系は再び反応器へ返送される。プロセス中で少量の高沸成分が形成されるので、高沸成分の濃度を一定に保持するために、その一部が分離されなければならない。欧州特許(EP)第1 232 008号明細書において、缶出液からの高沸成分の分離は、希釈剤を添加して行われる。前記膜に供給される溶液中の高沸成分含分が50質量%未満であるような量で希釈剤が添加される。高沸成分の分離は10〜50℃の温度範囲内及び0.1〜10MPaの圧力範囲内で行われる。希釈剤の添加は不利である、それというのも前記膜に導かれる物質量が増大されるからである。さらに、添加された希釈剤の一部は高沸成分と共に分離され、それにより前記希釈剤又はそれからの回収のためのコストが発生する。
【0009】
独国特許(DE)第10 2005 046250号明細書には、有機金属触媒系の分離方法が記載されている。その際に、第一工程において、有機反応排出物は、前記触媒系の大部分を有する濃縮水と、出発物質、一次生成物、高沸成分及び触媒系からなる透過水とに分離される。前記濃縮水は直接、反応器へ返送される。前記透過水は蒸留により、主に出発物質及び一次反応生成物を含有する塔頂留出物と、高沸成分中に溶解された触媒系を有する缶出液とに分離される。この明細書には、任意の後処理変法として、前記缶出液から、反応器へ返送される前に、高沸成分の一部を膜を用いて分離することが示されている。原則的に使用可能な膜材料として、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、アクリロニトリル/グリシジルメタクリラート(PANGMA)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、固有微孔度(intrinsischer Mikroporositaet)を有するポリマー(PIM)並びに疎水化セラミック膜が挙げられる。膜で高沸成分を外に移すためには、しかしながら、例えば使用可能な膜タイプのような詳細は挙げられていない。
【0010】
独国特許出願公開(DE-A1)第10 2005 060784号明細書には、金属錯体触媒(>200ダルトン)の富化された流れを回収する方法が記載されている。反応器排出物は蒸留により、低沸点流と、前記触媒を含有するより高沸点の塔底流とに分離される。前記塔底流は、膜で透過水流と、触媒の富化された濃縮水流とに分離され、前記濃縮水流は完全に又は部分的に反応に返送される。500ダルトンを上回る分離限界(MWCO)を有するセラミック膜並びに10000ダルトンを上回る分離限界を有するポリマー膜のみが示される。捕捉された触媒系の品質の本質的な尺度としての活性に関しては、述べられていない。
【0011】
例示的に示された触媒は、約12000ダルトンの分子量を有し、かつそのために常用の工業的に使用される触媒に関して1桁上回っている。工業的に関連する触媒系及びより小さい触媒系の分子量への転用は、独国特許出願公開(DE-A1)第10 2005 060784号明細書の説明を用いては不可能である。
【0012】
そのうえ、前記分離限界がどの捕捉性を基準とするか及びどの物質系において分離限界が算出されたかが示されていない。データは通常、製造者に応じて、90又は95%の捕捉性を基準とする。前記分離限界は、絶対的な限界としてではなく、具体的な分離問題のための膜の選択のための定性的な助けとして利用される(Melin、Rautenbach: Membranverfahren. 第2版 2004 Springer-Verlag Berlin, Heidelberg.参照)。故に、示された分離限界が前記金属錯体触媒にあてはまるかどうかは疑わしい。配位子捕捉性の必要性は述べられていない。
【0013】
列挙された膜は、専ら多孔質膜であり、それらの分離限界は、さらに以下に示すように、本発明による触媒系に適していない。列挙された膜に関して、多様なセラミック膜に加えて、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエーテルケトン、ポリアミド及びポリイミドのみが可能な膜材料として挙げられている。
【0014】
米国特許出願公開(US-A1)第2006/0246273号明細書には、固有微孔度を有する新種のポリマー(PIM)が示されている。その剛直なスピロ結合(starren Spirobindung)に基づいて、このポリマー又はそれをベースとするポリマー混合物は、そのポリマーマトリックス内部に大きな自由体積を有する。前記ポリマーは、ガス混合物、蒸気混合物又は液体混合物の分離又は富化に潜在的に使用可能である。前記ポリマーの使用は、高い自由体積に基づいて、特に前記ガス分離のために膜材料として適している。Fritsch他(J.Mem.Sci.251, 263-269 (2005))は比較的高い透過性を達成する。
【0015】
前記ガス分離に加えて、PIMをベースとする膜は潜在的に、アミノ酸のようなキラルな分子の分離に、水性系からの有機物(Organika)、例えばアルコールの分離に、異性体分離に、薬学及び生物工学においてタンパク質又は他の熱的に不安定な成分の分離に、発酵槽及びバイオリアクター中で曝気及びバイオマス分離に並びに空気及び水からの微生物の除去にも使用可能である。
【0016】
さらなる潜在的な使用可能性は、水処理、空気又は水からの痕跡成分又は金属塩の検出又は除去、浸透気化(Pervaporation)を用いる液体混合物の分離(例えばエタノール製造の際)並びにガス/蒸気分離(例えばガスからの有機蒸気の分離)及び有機成分の液−液分離又は選択的に生成物を外に出すことによる平衡反応の場合の収率改善でもある。溶解された固体、例えば均一系触媒の分離は記載されていない。また、10〜500μmの示された膜厚は、所望の分離課題には厚すぎる。
【0017】
国際公開(WO-A1)第2005/113121号には、高い固有微孔度を有する微孔性材料からなる薄い層を有する複合膜の製造が記載されている。前記膜製造に加えて、前記膜の可能な使用、例えば流体分離及び流体からの低分子固体の分離も挙げられている。水素及び炭化水素、N2又はCOの分離、天然ガスからのCO2、H2O及びH2Sの分離、窒素及び酸素の分離、空気及び他のガスからのVOCs(揮発性有機化合物)及び他の低級炭化水素の分離、水性流からの有機成分の痕跡物の分離並びに流体及び詳細には溶剤からの低分子成分及びオリゴマーの分離も述べられている。
【0018】
技術水準から知られた方法に不利であるのは、前記方法が前記触媒系を十分におだやかに、ひいては活性を維持しつつ分離することができない及び/又は前記活性な触媒系が十分に捕捉されることができないことである。特にクラスター化された触媒種よりも本質的により少ないモル質量を有する1500g/mol未満の活性な触媒系の捕捉の場合に、膜を用いて100g/mol未満のモル質量差を有する成分を互いに分離することには困難が存在する。同時に前記膜は、経済的なプロセスを可能にするために、前記有機成分にとって十分に透過性でなければならない。
【0019】
前記金属錯体触媒及びそのクラスター並びに前記遊離配位子からなる、高級オレフィン(C4及びそれ以上)のヒドロホルミル化のプロセス流からの触媒系のおだやかな富化のために、満足のいく解決手段は知られていないので、前記触媒系を含有するプロセス流(例えば反応器排出物又は缶出液)を、触媒系の富化された流れと、触媒系の減損された流れとに分離し、かつ前記触媒系、特に金属成分にとって大きな捕捉度を有する方法を開発するという課題が存在した。
【0020】
故に、本発明の技術的課題は、触媒系がその活性を維持しながら富化もしくは分離されることができる均一系触媒を富化する方法を提供することであり、その際に前記方法は前記触媒系のために大きな捕捉度を有しなければならず、回収のための希釈剤は必要なく、かつ前記触媒の金属含分のクラスター化又は前記触媒錯体の分解も観察されるべきではない。
【0021】
この技術的課題は、均一系触媒を、この均一系触媒を成分として含有するプロセス流から富化する方法により解決され、その際に前記プロセス流は少なくとも1つの膜に導かれ、かつその際に前記膜は完全に又は部分的に剛直なリンカーを介して互いに結合されている平面ポリマー単位を有するポリマーからなり、その際に前記リンカーはねじれているので、少なくとも1個の平面ポリマー単位が、前記リンカーを介して共面ではない配置で少なくとも1個の第二の平面ポリマー単位と結合されている。
【0022】
これらのポリマーを、以下に固有微孔度を有するポリマー(PIM)と呼ぶ。
【0023】
意外なことに、金属触媒での反応の有機反応排出物から並びに前記反応排出物から生成され、高沸成分、金属錯体及びそのクラスター並びに遊離配位子を含有する高沸成分で富化された蒸留缶出液から、1つ又はそれ以上の膜を用いて高沸成分、生成物及び出発物質が触媒系から分離されることができることが見出され、その際に、固有微孔度を有するポリマー(PIM)を含有する膜での分離が行われる場合に、金属成分についての捕捉性は膜につき70%よりも大きく、かつ前記遊離配位子については60%よりも大きい。
好ましくは、前記方法は、400〜2000g/molの分離限界で、40〜150℃の温度範囲内及び5〜60barの膜間圧(膜越しの差圧)の範囲内で実施される。
【0024】
50質量%を上回る高沸成分の濃度の場合でも希釈剤の添加は必要ではない、それというのも高沸成分の高い濃度の場合でも透過水流束及び分離の選択性は工業的な実現のために十分に高いからである。意外であるのは、PIMをベースとする膜を用いて、モル質量が前記高沸成分と同じオーダーである触媒錯体が、前記高沸成分よりも良好に捕捉されることである。
【0025】
本発明の意味での高沸成分は、一次ヒドロホルミル化生成物(使用されるオレフィンよりも1個多い炭素原子を有するアルデヒド及び/又はアルコール)よりも高沸点であり、かつより高いモル質量を有し、かつ前記ヒドロホルミル化中に生じる物質である。それらには、アルドール化生成物及びアセタール化生成物並びにアルコールと酸との反応により生じるエステルが含まれ、その際に前記アルコール及び酸はアルデヒドの不均化により形成される。前記ヒドロホルミル化からのプロセス流中に存在している高沸成分は一般的に、0.1MPaで55℃を上回る沸点を有する。
【0026】
好ましい一実施態様において、前記ポリマーはポリマー構造内部に、リンカーとして機能するスピロビスインダン結合を有する。
【0027】
特に好ましい一実施態様において、前記ポリマーは15個のポリマー構造の内部に、リンカーとして機能する置換又は非置換のスピロビス[インダン]下位構造を有する。
【0028】
本発明の意味でのスピロビスインダン結合は、1,1´−スピロビス[インダン]、1,2´−スピロビス[インダン]及び2,2´−スピロビス[インダン]であり;それらの構造は次のように示されることができる:
【化1】

【0029】
前記スピロビスインダン結合は、狭い意味での化学結合ではなく、むしろ前記ポリマー間に配置された下位構造である。
【0030】
極めて特に好ましいスピロビスインダン結合は、3,3,3´,3´−テトラメチル−1,1´−スピロビス[インダン]からなる下位構造である:
【化2】

【0031】
分離活性な膜材料として、特に、以下の式のうち1つ又はそれ以上からなる繰返し単位を有するポリマーが好ましく、その際にnは前記単位の数を表し、かつ好ましくは10〜100000である。
【0032】
【化3】

【0033】
【化4】

【0034】
前記のポリマーを、以下にPIM(固有微孔度を有するポリマー)と呼ぶ。
【0035】
本発明の意味での富化は、前記均一系触媒の富化だけでなく、前記プロセス流からの前記均一系触媒の完全分離であるとも理解される。
【0036】
有利であるのは、PIMをベースとする膜がこれまでの膜と比較して、均一系触媒及びそれらの配位子のような有機溶剤中に溶解された固体の特に高い捕捉性を有し、かつ同時に高い透過水流束を有することである。
【0037】
補足して、前記触媒系ができるだけ一酸化炭素及び水素の存在で後処理される場合に、前記触媒系のために特におだやかな分離が達成されることができる、それというのもこれにより前記クラスター化プロセスが付加的に回避されることができるからである。一酸化炭素で並びに水素でのブランケット(Ueberlagerung)は、特に前記膜分離の際に可能である。
【0038】
前記合成ガス量は、前記分離中に少なくとも前記活性な触媒種の形成に必要とされる化学量論量で、不活性な又はそれどころか不可逆的に沈殿する触媒種の形成を防止できるように、ブランケットされているべきである。
【0039】
膜接続
本発明による方法は、1つ、2つ又はそれ以上の膜を使用して又は1つ、2つ又はそれ以上の膜分離工程を使用して実施されることができる。前記膜の分離性能及び所望の捕捉性に応じて、複数の膜分離工程の直列接続により所望の捕捉性が達成されることができる。本発明による方法において、特に2つ又はそれ以上の膜分離工程が実施されることができる。前記膜分離工程は直接続けて実施されることができる。前記直列接続は、前記濃縮水又は前記透過水のいずれかが、好ましくは第一膜分離工程の透過水が、供給流として別の膜分離工程へ導通されるようにして行われることができる。本発明による第一膜分離工程に場合により続く膜分離工程は同様に、第一と類似の条件下に実施されることができる。1つの膜分離工程において、1枚の膜又は複数の膜が使用されることができる。好ましくは、1つの膜分離工程において2枚又はそれ以上の膜が使用される。
【0040】
多段階の膜分離法の場合に、前記膜分離工程において異なる膜を使用することが有利でありうる。こうして、好ましくは、1つの膜分離工程の上流側の膜分離工程において、より良好に透過性の膜が使用される。その際に生じる分級は、下流側の膜分離工程におけるより良好な透過性をもたらす。
【0041】
本発明による方法において、前記膜分離工程の際の温度上限は、使用される膜の安定性及び前記触媒系の安定性により予め決定されている。温度下限は、分離すべき溶液の粘度に依存し、かつその溶液への前記触媒系に温度依存した溶解度である。好ましくは、本発明による方法において、膜分離工程、特に第一膜分離工程は、40〜150℃の温度で、特に好ましくは60〜90℃の温度で実施される。本発明による方法においてヒドロホルミル化反応混合物からの触媒の分離のためにC12−オレフィンのヒドロホルミル化の際に得られたものが使用される場合には、前記膜工程、特に第一膜工程は好ましくは60〜90℃の温度で実施される。本発明による方法においてヒドロホルミル化反応混合物からの触媒の分離のためにC8−オレフィンのヒドロホルミル化の際に得られたものが使用される場合には、前記膜工程、特に第一膜工程は好ましくは40〜80℃の温度で実施される。本発明による方法の好ましい温度での実施は、一方では前記膜のより高い流束を引き起こしうる。他方では、挙げた好ましい温度範囲の遵守により前記触媒の分解が回避され、前記分解はさもなければ活性な触媒の損失及び前記膜上への前記触媒の分解生成物の堆積をまねきうる。堆積により、前記膜の質量流量は減少されうる。極端な場合には、質量流束はブロッキングにより完全に停止しうる。
【0042】
本発明による方法が好ましくは実施される膜間圧(濃縮水側と透過水側との間の前記膜の圧力)は、好ましくは5〜60bar、特に好ましくは10〜30barである。
【0043】
本発明による方法において、それらの化学的性質又は物理的性質に基づいて適しており、かつ金属錯体触媒、特に有機リン金属錯体触媒を、少なくとも60%、特に80%を上回る程度で捕捉し、かつ400〜2000g/molの分離限界を有するPIM膜が使用されることができる。前記膜の使用可能性のさらなる必要条件は、前記膜が前記反応混合物中に存在している全ての化合物に対して、特に前記溶剤に対して安定でなければならないことにある。
【0044】
PIM
微孔性(microporoes)という呼称は、またナノ孔性(nanoporoes)と呼ぶことができた材料と理解される。これまで2種類の固有微孔性材料が存在する。ゼオライト及び無定形活性炭。有機溶剤中での欠如した溶解度に基づいて、これらの材料からはフィルム、ひいては膜も製造されることができない。異なるのはこれがポリマーの場合である。
【0045】
PIM(固有微孔度を有するポリマー)は、好ましくはそのポリマー構造の内部にねじれを引き起こす、剛直なスピロビスインダン結合により特徴付けられる、近頃新しく開発されたポリマーの種類を呼ぶ。前記スピロ結合のランダム分布は、前記ポリマーの圧縮を防止する。スピロビスインダン結合の(平面ポリマー鎖の)剛直なねじれは、自由な、互いに結合された自由体積の高い割合をもたらす。前記微孔度を固有と呼ぶ、それというのもこれは熱による前処理及びポリマー加工から独立して生じるからである。
【0046】
固有微孔度を有するポリマーの一例は、いわゆるPIM−1である。PIM−1は、このポリマーの種類中で、最初の合成されたポリマーのうちの1種であると理解される。CAインデックス名はCA番号676450-48-9を有する2,2´,3,3´−テトラヒドロ−3,3,3´,3´−テトラメチル−1,1´−スピロビ[1H−インデン]−5,5´,6,6´−テトロールとの1,4−ベンゼンジカルボニトリル,2,3,5,6−テトラフルオロポリマーである。PIM−1は、5,5´,6,6´−テトラヒドロキシ−3,3,3´,3´−テトラメチル−1,1−スピロビスインダンと2,3,5,6−テトラフルオロフタロニトリルとの反応から得られる:
【化5】

【0047】
固有微孔度を有するポリマーのより広範な例は、米国特許出願公開(US-A1)第2006/0246273号明細書に及び国際公開(WO)第2005/113121号に示されている。
【0048】
PIM−1の変性に適しているコモノマーのさらなる例は次の通りである:
【化6】

【0049】
コモノマー3はその際にスピロビスインダンの臭素化により生成される。
【0050】
出発物質のさらなる例は、2,2´−ジカルボキシ−9,9´−スピロフルオレン又は2,2´−ジアミノ−9,9´−スピロビフルオレンとして変性された、9,9´−スピロビフルオレンであり、これらは固有微孔性のポリアミド及びポリイミドの製造に適している。
【0051】
固有微孔度を有する前記のポリマーに加えて、前記膜は別の材料を含有することができる。特に、前記膜は支持材料又は担体材料を有することができ、前記材料上へPIMが薄い分離活性な層として施与されている。そのような複合膜の場合に、本来の膜に加えてさらに支持材料が存在する。支持材料の選択は、欧州特許(EP)第0 781 166号明細書に記載されており、前記明細書は明示的に参照される。さらに、本発明により使用可能な膜中に、補強材料、例えば無機酸化物の粒子又は無機繊維、例えばセラミック繊維又はガラス繊維が存在していてよく、これらは前記膜の安定性を特に圧力変動又は高い圧力差に対して高める。本発明による方法のための膜の分離層の厚さは、好ましくは10〜1000nm、特に好ましくは100〜700nmである。
【0052】
工業用モジュール
前記膜は、本発明による方法において好ましくは膜モジュールの形で使用される。これらのモジュール中で、分離された成分、ここでは触媒−配位子系の濃度分極に抵抗し、そのうえ必要な駆動力(圧力)を与えることができるように前記膜の濃縮水側が溢流されることができるように前記膜は配置される。前記透過水は、前記膜の透過水側の透過水捕集室中で一緒にされ、かつ前記モジュールから導出される。通常の膜モジュールは、前記膜を膜ディスク、膜クッション又は膜ポケットの形で有する。本発明による方法において、前記膜は好ましくは膜モジュールの形で使用され、これらは、前記膜が膜ポケット又は膜クッションに熱により溶接又は接着されているオープンチャネルのクッションモジュール系を有する膜モジュール、又は前記膜が膜ポケット又は膜クッションに接着又は溶接されており、かつフィードスペーサーと共に透過水捕集管の周囲に巻き付けられているオープンチャネルの(ワイドスペーサー)スパイラルモジュールを有する。
【0053】
溢流(Ueberstroemung)、分離工程
前記膜上での堆積を回避するために、前記膜分離工程内で特定の流れ比が遵守されるべきである。流れの堆積の危険はその乱れ、ひいてはそのレイノルズ数に依存していることが明らかになっている。そして、前記膜モジュールの構造形式から独立して、レイノルズ数が55〜13500、好ましくは100〜3500及び極めて特に好ましくは170〜900であることが顧慮されるべきである。動粘度はその際に10mPas未満、かつ好ましくは1mPasであるべきである。これらの流れ比の場合に堆積は回避される。
【0054】
これらの流れ比の反応のために、1mの管長及び1.5barの圧力損失及び1mPasの媒体の動粘度を有するスパイラル膜の使用の際に、前記膜上での堆積の回避のために、前記方法は好ましくは、前記膜分離工程、特に第一膜分離工程が0.1〜15m/sec、好ましくは0.2〜4m/sec、より好ましくは0.3〜1m/secの前記膜の溢流速度で存在するように実施される。
【0055】
好ましくは、本発明による方法は、分離すべき溶液が流入流として前記膜上へ導かれ、かつ前記濃縮水流が部分的に前記膜上へ返送されるように操作される。その際に、前記膜上へ返送される部分流は前もって、分離すべき溶液と合一される。前記膜上へ返送されない濃縮水流の部分は、供給流として1つ又はそれ以上の後続の分離段階のために使用されるか又はしかし前記反応へ返送されるかのいずれかである。
【0056】
前記膜分離工程に、高沸成分の予めの濃縮なしの反応器排出物の場合にあてはまるように、少ない割合の高沸成分及び高い割合の一次生成物を有する流れが供給される場合には、反応器の透過水流対供給流の体積流量の比(返送される濃縮水なし)は、1対1.1〜1対5、好ましくは1対1.4〜1対3及び特に好ましくは1対1.6〜1対2である。
【0057】
逆の場合に、前記膜分離工程に、前記反応器の後で、例えば熱による分離工程により、前記反応器排出物に比べて高沸成分の明らかに富化された流れが供給される場合には、反応器の透過水流対供給流の体積流量の比(返送される濃縮水なし)は、好ましくは1対5〜1対20、より好ましくは1対7.5〜1対12.5及び特に好ましくは1対9〜1対11である。
【0058】
前記膜に導かれる体積流量が前記透過水流の体積流量よりも明らかに大きい場合に有利でありうる、それというのも、この単純な方法で前記膜上の高い溢流速度に調節されることができるからである。好ましくは、前記膜、特に第一膜分離工程の第一膜上へ導かれる流れ(返送される濃縮水を含めた反応器の流入量)対透過水流の体積流量の比は、10〜10000対1、好ましくは50〜5000対1及び特に好ましくは200〜2000対1である。すなわち好ましくは相対的に高い体積流量が前記膜に循環される。前記反応へ返送されるか又はさらなる分離に供給される濃縮水流の部分の大きさは、供給流(返送される濃縮水なし)と透過水流との差から明らかとなる。
【0059】
より高い透過性の場合に、前記膜をクリスマスツリー構造で接続することも有利でありうる。
【0060】
膜分離のための供給流として、有機金属錯体により触媒される反応の反応排出物が直接、又はこれから製造された濃縮物が、使用されることができる。前記反応排出物は、出発物質、一次生成物、副生物、例えば高沸成分、前記触媒系及び場合により溶剤を含有する。この混合物が本発明により後処理される場合には、前記触媒系、特に前記金属錯体は主に濃縮水中に残留する。別の分離段階において後処理される透過水と共に、出発物質、生成物及び高沸成分は一緒に分離される。この場合に、前記透過水流は、前記膜上へ返送されない濃縮水流よりも本質的に大きい。このことは大きな膜面積及び前記触媒系の最適でない捕捉性を制限する。
【0061】
好ましくは、故に前記出発物質及び生成物の大部分は前もって熱による分離工程により分離される。そのような熱による分離工程は、例えば1つ又はそれ以上の熱による分離装置、例えば薄膜型蒸発器、流下薄膜型蒸発器、フラッシュ蒸発器又は蒸留塔により実現されることができる。塔頂留出物として、その際に本質的に出発物質及び一次生成物が分離される。缶出液として、高沸成分及び前記触媒系を有する混合物が生じる。前記反応混合物がヒドロホルミル化混合物である場合には、前記塔頂留出物は通常、ヒドロホルミル化生成物、例えばアルデヒド及び/又はアルコール並びに場合により未反応炭化水素、例えばオレフィン又は脂肪族化合物及び場合により前記ヒドロホルミル化の際に使用される溶剤を含有し、前記溶剤はヒドロホルミル化生成物の範囲内又はそれ以下の沸騰温度を有し、かつ別の後処理に供給されることができる。熱による分離工程の缶出液として、前記錯体触媒及び/又は遊離配位子、場合によりそのヒドロホルミル化生成物よりも高沸点の溶剤並びに前記ヒドロホルミル化中に生じた高沸成分を含有する混合物が得られる。
【0062】
缶出液中の高沸成分の含分は、反応条件及び供給原料に応じて、50〜98質量%、特に60〜90質量%である。これらの溶液は、希釈剤を添加せずに、前記膜分離に供給されることができる。
【0063】
適宜、熱による分離工程の前に前記反応混合物は膜を用いて、より高い触媒濃度を有する流れと、より低い触媒濃度を有する流れとに分離されることができる。より高い触媒濃度を有する流れは前記反応器へ返送される。より低い触媒濃度を有する流れは熱による分離工程に供給される。この種類の方法は例えばDE 10 2005 046250.2に記載されている。
【0064】
本発明を用いて、均質に溶解された金属触媒を使用する反応の際に生じる混合物が分離されることができる。
【0065】
そのような反応の例として、オレフィンの水素化、ヒドロホルミル化、メタセシス、ヒドロシアン化及びヒドロカルボキシアルキル化を挙げることができる。好ましくは、ロジウム錯体触媒を含有するヒドロホルミル化混合物が後処理される。
【0066】
前記ヒドロホルミル化反応混合物は、オレフィン、好ましくは炭素原子2〜25個、特に好ましくは4〜16個、極めて特に好ましくは6〜12個及び特に8、9、10、11又は12個の炭素原子を有するオレフィンを、相応するアルデヒドにヒドロホルミル化する方法に由来していてよい。極めて特に好ましくは、前記ヒドロホルミル化反応混合物は、ヒドロホルミル化生成物として、炭化水素原子5〜17個、好ましくは炭化水素原子9又は13個を有するアルデヒド、特にイソノナナール及びイソトリデカナールから選択されているアルデヒドを有する。
【0067】
前記ヒドロホルミル化反応混合物中に存在している錯体触媒及び/又は遊離有機リン配位子は、技術水準から知られた化合物及び錯体であることができる。好ましくは、前記錯体触媒又は前記遊離配位子は、ホスフィン、ホスフィット、ホスフィニット、ホスホニットから選択されている配位子を有する。前記配位子はその際に1個又はそれ以上のホスフィノ基、ホスフィト基、ホスホニト基又はホスフィニト基を有することができる。同じように、前記配位子が、ホスフィノ基、ホスフィト基、ホスホニト基又はホスフィニト基から選択される2個又はそれ以上の異なる基を有することが可能である。特に、前記配位子は、ビスホスフィット、ビスホスフィン、ビスホスホニット、ビスホスフィニット、ホスフィンホスフィット、ホスフィンホスホニット、ホスフィンホスフィニット、ホスフィットホスホニット、ホスフィットホスフィニット又はホスホニットホスフィニットであってよい。前記錯体触媒の配位子及び前記遊離配位子は、同じか又は異なっていてよい。好ましくは、前記錯体触媒の有機リン配位子及び前記遊離配位子は同じである。
【0068】
使用可能な錯体触媒もしくは配位子及びそれらの製造及びヒドロホルミル化の際の使用の例は、例えば欧州特許(EP)第0 213 639号明細書、欧州特許(EP)第0 214 622号明細書、欧州特許(EP)第0 155 508号明細書、欧州特許(EP)第0 781 166号明細書、欧州特許(EP)第1209164号明細書、欧州特許(EP)第1201675号明細書、独国特許(DE)第10114868号明細書、独国特許(DE)第10140083号明細書、独国特許(DE)第10140086号明細書、独国特許(DE)第10210918号明細書又は国際公開(WO)第2003/078444号から読みとることができ、これらは参照により明らかに関連づけられている。
【0069】
好ましい配位子の例は次の通りである:
ホスフィン:トリフェニルホスフィン、トリス(p−トリル)ホスフィン、トリス(m−トリル)ホスフィン、トリス(o−トリル)ホスフィン、トリス(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(p−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリシクロペンチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリ−(1−ナフチル)ホスフィン、トリベンジルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン。
【0070】
ホスフィット:トリメチルホスフィット、トリエチルホスフィット、トリ−n−プロピルホスフィット、トリ−イソプロピルホスフィット、トリ−n−ブチルホスフィット、トリ−イソブチルホスフィット、トリ−t−ブチルホスフィット、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフィット、トリフェニルホスフィット、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィット、トリス(2−t−ブチル−4−メトキシフェニル)ホスフィット、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスフィット、トリス(p−クレジル)ホスフィット。
【0071】
ホスホニット:メチルジエトキシホスフィン、フェニルジメトキシホスフィン、フェニルジフェノキシホスフィン、2−フェノキシ−2H−ジベンゾ[c,e][1,2]オキサホスホリン及び水素原子が完全にか又は部分的にアルキル基及び/又はアリール基又はハロゲン原子により置き換えられているその誘導体。
【0072】
通常のホスフィニット配位子は、ジフェニル(フェノキシ)ホスフィン及びその誘導体、ジフェニル(メトキシ)ホスフィン及びジフェニル(エトキシ)ホスフィンである。
【0073】
さらに、前記ヒドロホルミル化混合物は、アシルホスフィット又はヘテロアシルホスフィットを、又はアシルホスフィット基又はヘテロアシルホスフィット基を有する配位子を、有機リン配位子として有することができる。アシルホスフィット又はアシルホスフィット基を有する配位子、それらの製造及びヒドロホルミル化におけるそれらの使用は、例えば独国特許(DE)第100 53 272号明細書に記載されている。ヘテロアシルホスフィット及びヘテロアシルホスフィット基を有する配位子、それらの製造及びヒドロホルミル化におけるそれらの使用は、例えば独国特許(DE)第10 2004 013 514号明細書に記載されている。
【0074】
以下に、本発明による方法は例示的に記載されるが、本発明はそれらに限定されるものでははく、本発明の保護範囲は特許請求の範囲及び明細書から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】ヒドロホルミル化反応及び膜分離工程を有する方法を示す略示図。
【図2】ヒドロホルミル化反応、膜分離工程及び熱による分離工程を有する方法を示す略示図。
【図3】ヒドロホルミル化反応、膜分離工程、熱による分離工程及び第二膜分離工程を有する方法を示す略示図。
【図4】ヒドロホルミル化反応、熱による分離工程及び第二膜分離工程を有する方法を示す略示図。
【図5】例による高沸成分流中のPIM膜でのロジウム捕捉性を示す図。
【0076】
固有微孔度を有するポリマー(PIM)をベースとする膜での分離による、均一系触媒又は均一系触媒系をより高沸点の成分の分離する本発明による方法は、以下に例示的にC4〜C16−オレフィンのロジウム錯体触媒でのヒドロホルミル化について記載される。
【0077】
図1によれば、前記ヒドロホルミル化の出発物質(1)である、オレフィン及び合成ガスは反応器(R)に供給される。反応器中に装入される触媒系の存在で、前記オレフィンのアルデヒドへのオキソ化が行われる。アルデヒドのような反応した出発物質及び副生物及び副次生成物(Neben- und Folgeprodukte)、それらの中でもアルドール縮合生成物のような高沸成分及び未反応出発物質並びに前記触媒系は、反応混合物(2)として前記反応器から導出され、かつ選択的な膜分離工程(M)に供給される。その際に、濃縮水側(3)で前記触媒又は前記触媒系の富化を、かつ透過水側(4)で減損を行う。
【0078】
図2は、前記膜分離工程の透過水(4)が熱による分離工程(D)に供給されることによる図1の方法の拡張を示す。熱による分離工程において、透過水流(4)は、より高沸点の成分、例えば反応部の副生物並びに膜分離工程において捕捉されない触媒成分の富化された流れ(6)と、より低沸点の、主にアルデヒドを含有する生成物流(5)とに分離される。プロセスにおけるより高沸点の副生物の富化を回避するために、流れ(6)又は流れ(6)の部分流(8)は前記プロセスから外へ移されることができる。全ての流れ(6)を外に移すことが必要ではない場合には、残留する流れ(7)を前記反応に返送することが、特に流れ(7)がなお前記触媒系の部分を含有する場合に、有利でありうる。
【0079】
流れ(6)の触媒成分についての価値(Werthaltigkeit)に応じて、流れ6は、第二膜分離工程により流れ(6)に対して触媒で富化された流れ(7)と、相応して触媒の減損された流れ(8)とに、高沸点成分を外に移すために分離することが有利でありうる(図3参照)。流れ(7)中で富化された触媒の活性に応じて、この流れを前記反応に直接又は間接的に供給することが有利でありうる。
【0080】
図3による接続は、反応排出物の後の膜分離工程なしでも有利でありうる。そのような接続は図4に示される。
【0081】
本発明のさらなる対象は、以下の工程を含むトリデカナールの製造方法である:
a.ロジウムと有機リン化合物とからなる均一系触媒系を使用してトリブテンをトリデカナールにヒドロホルミル化する工程、
b.反応排出物を、未反応オレフィン及びアルデヒドを含有する留出物と、高沸成分及び前記触媒系を含有する缶出液とに蒸留により分離する工程、
c.均一系触媒の富化のために本発明による方法を実施する工程、その際に前記高沸成分が透過水として及び前記触媒系が濃縮水として互いに分離され、
d.富化された触媒系を有する前記濃縮水を前記ヒドロホルミル化反応器へ返送する工程。
【0082】
好ましい一実施態様において、前記トリデカナールの製造のために、ニッケルを含有する固体触媒での線状ブテン類のオリゴマー化により製造されるトリブテンが使用される。
【0083】
特に好ましい実施態様において、前記有機リン化合物は、トリス(2,4−ジ第三級ブチルフェニル)ホスフィットである。
【0084】
さらに説明しなくても、当業者は、上記の詳細な説明を最も広い範囲で利用することができることを前提としている。好ましい実施態様及び例は、故に、記述する開示を単に何らかの手法で限定するものとして決して解釈されるべきではない。以下に、本発明は実施例に基づいてより詳細に説明される。本発明の選択的な実施態様は、同様にして得ることができる。
【実施例】
【0085】
本発明による例
例として、前記膜分離工程のための前記の接続から、高い高沸成分含分に基づいて、最も要求の厳しい図4による分離課題を選択した。前記反応は、ドデセン混合物(トリ−n−ブテン)のロジウム/ホスフィット触媒でのヒドロホルミル化である。使用されるロジウム前駆物質は、ロジウムアセチルアセトナトジカルボニルであり、かつ使用される配位子は、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−フェニル)ホスフィットである。ロジウム濃度は10mg/kgであった。ロジウムの配位子に対する比は20であった。前記アルデヒド(イソトリデカナール)のような反応した出発物質及び副生物及び副次生成物、それらの中でもアルドール縮合生成物のような高沸成分及び未反応出発物質並びに前記触媒系は熱による分離工程に供給され、高沸成分及び触媒の富化されたその缶出液は、前記膜分離工程に供給される。高沸成分含分は50%を上回る。活性な触媒種と前記高沸成分とのモル質量差は500g/mol未満である。
【0086】
例示的に、高沸成分流中のPIM膜でのロジウム捕捉性が95%を上回ることが示されることができた(図5)。膜ろ過を、その際に例示的に25barの膜間圧及び60℃の温度で実施した。フィード側の溢流は1.7m/sであり、管圧損失は1bar未満であり、レイノルズ数は約1200であった。この高い捕捉性は、20日を上回る試験期間にわたって検出されることができた。その際に達成された透過水流束は0.63〜1.41kg/(m2h)である。前記膜分離工程のフィード中のロジウム濃度は50〜133mg/kgである。
【0087】
比較例
試験は、独国特許出願公開(DE-A1)第10 2005 060784号明細書からの方法の規定が本発明による分離課題に応用されることができないことを示した。本質的な理由は、その中で挙げられた膜及び膜材料の十分でない分離精度である。
【0088】
第1表は、独国特許出願公開(DE-A1)第10 2005 060784号明細書に記載された膜タイプの選択の相応する結果を示す。前記膜分離工程のフィードは、本発明による例の場合のように、ドデセンのロジウム/ホスフィット触媒でのヒドロホルミル化の、熱による分離工程により高沸成分の富化された反応器排出物流である。相応して、この流れは、前記アルデヒド(イソトリデカナール)のような反応した出発物質及び副生物及び副次生成物、それらの中でもアルドール縮合生成物のような高沸成分及び未反応出発物質並びに前記触媒系を含む。Inopor(登録商標)及びVelterop(登録商標)のセラミック膜は良好な透過水流束を有するが、しかし前記触媒系は十分に捕捉することができるにはほど遠い。前記ポリマー膜は、前記触媒について、それらのセラミック膜に比べて高められるが、しかしながら十分ではない捕捉性を有する。ポリイミド膜Starmem 240(登録商標)は、そのうえ不適な低い透過性を示す。
【0089】
【表1】

【0090】
前記例は、本発明による方法を用いて、技術水準の方法に比べて前記触媒系のかなりより良好な富化が可能であることを示す。それゆえ、前記方法は前記触媒系についてのより高い捕捉度に基づいてかなりより経済的に実施されることができる。このことは特にロジウムのような有益な金属を含有する触媒系の場合にあてはまる。
【符号の説明】
【0091】
1 出発物質、 2 反応混合物、 3 濃縮水側、 4 透過水側、 5 生成物流、 6 流れ、 7 流れ、 8 部分流、 R 反応器、 M 膜分離工程、 D 熱による分離工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一系触媒を、この均一系触媒を成分として含有するプロセス流から富化する方法であって、
前記プロセス流を少なくとも1つの膜に導き、かつ前記膜は完全に又は部分的に剛直なリンカーを介して互いに結合されている平面ポリマー単位を有するポリマーからなり、その際に前記リンカーはねじれているので、少なくとも1個の平面ポリマー単位が、前記リンカーを介して共面ではない配置で少なくとも1個の第二の平面ポリマー単位と結合されている
ことを特徴とする、均一系触媒をプロセス流から富化する方法。
【請求項2】
ポリマーが、ポリマー構造内部に、リンカーとして機能するスピロビスインダン結合を有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリマーが、次の式
【化1】

【化2】

で示される1種又はそれ以上からなる繰返し単位を有し、ここでnは前記単位の数であり、かつ好ましくは10〜100000の範囲内である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
均一系触媒が1種又はそれ以上の金属錯体を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
プロセス流が、有機金属錯体で触媒された反応の均一系触媒での有機反応排出物に由来する高沸成分及び均一系触媒を含有し、かつ高沸成分が透過水と共に分離され、かつ前記触媒系が濃縮水中に残留する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
方法を200〜2000g/molの分離限界を有する膜で実施する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
方法を40〜150℃の温度で実施する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
方法を0.5〜6MPaの膜間圧で実施する、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
方法を一酸化炭素及び/又は水素の存在で実施する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
方法を1〜3枚の膜を使用して実施する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
方法を1〜3の膜分離工程を使用して実施する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
プロセス流中の高沸成分の含分が50〜98質量%である、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
方法を希釈剤を添加せずに実施する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
元素の周期表の第4族、第5族、第6族、第7族、第8族、第9族又は第10族の少なくとも1種の金属と少なくとも1種の有機配位子とを有する金属錯体からなる均一系触媒を、高沸成分から分離する、請求項1から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
有機リン化合物を含有する金属錯体触媒を、高沸成分から分離する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
ロジウムと有機リン化合物とを含有する金属錯体触媒を、高沸成分から分離する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
高沸成分をヒドロホルミル化混合物のプロセス流から分離し、その際に前記ヒドロホルミル化混合物が、高沸成分、ロジウムと有機リン化合物とを含有する少なくとも1種の錯体触媒及び有機リン化合物を含有する、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記膜の分離層厚が10〜1000nmである、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
トリデカノールを製造する方法であって、次の工程:
a.ロジウムと有機リン化合物とからなる均一系触媒系を使用して、トリブテンをトリデカノールにヒドロホルミル化する工程、
b.反応排出物を、未反応オレフィン及びアルデヒドを含有する留出物と、高沸成分及び前記触媒系を含有する缶出液とに蒸留により分離する工程、
c.請求項1から18までに記載の方法を実施する工程、その際に高沸成分は透過水として及び前記触媒系は濃縮水として互いに分離され、
d.富化された触媒系を有する濃縮水をヒドロホルミル化反応器へ返送する工程
を含むことを特徴とする、トリデカノールを製造する方法。
【請求項20】
有機リン化合物としてトリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスフィットを使用する、請求項19記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−519061(P2012−519061A)
【公表日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−551482(P2011−551482)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052242
【国際公開番号】WO2010/097376
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(398054432)エボニック オクセノ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (63)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Oxeno GmbH
【住所又は居所原語表記】Paul−Baumann−Strasse 1, D−45764 Marl, Germany
【Fターム(参考)】