説明

ベアリング内外レースのダレの検出による欠陥品の排除方法

【課題】 鍛造や転造によるリング状素材のリング角部の不充足による欠肉であるダレやリング表面の打ち疵やアバタ疵を精度高く、効率よく自動で測定し、合否を判定する検査方法を提供する
【解決手段】 リング状素材の円周の上部にレーザー変位計6を設置し、このレーザー変位計6からレーザーの投射光7をリング中心を回転軸として回転するリング状素材2のリング端部もしくはリング周面部を測定部位とし、この測定部位に向けて投光し、リング状素材2の測定部位で反射した反射光8を受光してその受光量の変位量によりリング端部の欠肉によるダレ10もしくはリングの周面の打ち疵やアバタ疵などの疵による欠陥及び欠陥の程度を検出し不良品12のベアリング内外レースを排除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鍛造や転造などにより製造のベアリングレースなどのリング状素材のリング端部の角部、特にテーパー状のリング端部の材料の未充足による欠肉部であるダレの大きさを定量的に検出して欠陥品を排除する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鍛造や転造などにより製造のベアリングレースなどのリング状素材、特にテーパー状のリング素材を製造する場合、鍛造や転造の機械芯の不良やぶれによりリング状素材のリング端部の角部に材料の流動が偏ることとなり、その結果、未充足による欠肉部であるダレがテーパーリングの一端部に生じる場合がある。このほかにリング状素材には製造時の打ち疵すなわち打痕疵が生じたり、また鍛造スケールの剥がれによるアバタ疵が生じる問題がある。このようにリング状素材に欠肉部が生じて形状が出ずにダレてしまったり、打痕疵が生じたり、アバタ疵などの不良品が生じると、製品リングとした場合に欠肉によるダレの部分は黒皮残りの欠陥となり、あるいは製品リング表面に疵が残る問題がある。
【0003】
そこで、これらのリング状素材を製品リングとするために出荷する前に、人による目視でリングの外観検査を実施し、あるいはノギスなどの道具で測定し、上記の不良品を除外して出荷し、製品リングとしていた。しかし、このように人による目視による外観検査や、ノギスなどの道具による測定及び検査は熟練を要し、さらに検査に時間が掛かって効率が悪く、検査する人の感覚のずれのために測定誤差を生じ、定量的で正確な測定及び検査をすることはできなかった。
【0004】
従来の装置として、鍛造などで製造のベアリングレースなどのリング状素材の外形面と内径面の間の肉厚の偏りである偏肉を精度よく短時間で自動で測定する偏肉検査装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、この提案の装置による検査は、リング状素材を形成するリングの肉厚が全周で均一ではなく、リングの肉厚に差のある偏肉を対象とする検査装置であり、測定の最小値と最大値の差で判定する。したがって、この検査装置では、上記のリング状素材の未充足によるリング端部の角部の欠肉部や、打痕疵やアバタ疵の検査はできなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2006−153613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、目視や、ノギスやデプスゲージなどを使用して凡その測定を行い、合否を判定していた従来の方法に変えて、鍛造あるいは転造によるリング状素材のリング角部の不充足による欠肉であるダレやリング表面の打ち疵やアバタ疵を精度高く、効率よく自動で測定し、合否を判定する検査し、欠陥品を排除する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための本発明の第1の手段は、リング状素材の円周の上部にレーザー変位計を設置し、このレーザー変位計からレーザーの投射光をリング中心を回転軸として回転するリング状素材のリング端部もしくはリング周面部を測定部位としてこの測定部位に向けて投射し、リング状素材の測定部位で反射したレーザーの反射光を受光してその受光量の変位量によりリング端部の欠肉によるダレもしくはリングの周面の打ち疵やアバタ疵などの疵による欠陥及び欠陥の程度を検出し不良品のベアリング内外レースを排除する方法である。
【0008】
この場合、本発明の手段が対象とするリング状素材がテーパー状リング状素材であるときには、このテーパー状リング状素材は大径部と小径部を有し、かつ内輪レースあるいは外輪レースにおいて、それらの体積割合が相違するものにあっては、鍛造もしくは転造の際、体積比の大きいテーパー端部側に鋼材の流動が充分に達せず、未充足な部分が生じ欠陥となる。このようなテーパー端部側の欠陥を検出し排除する方法として、第2の手段では、上記の第1の手段においてリング状素材の円周の上部にレーザー変位計を設置する際に、リング状素材を大径部及び小径部からなるテーパー状リング状素材から形成するために、テーパー状リング状素材の体積割合の大きい側のリング端部の上部にレーザー変位計を設置して測定することを特徴とするベアリング内外レースの欠陥を定量的に検出し欠陥品を排除する方法である。
【0009】
さらに第3の手段では、上記の第1または第2の手段において、変位量を相対変位量および絶対変位量の二つの条件により検査を実施することにより、これまで不可能であった部位の欠陥の測定を可能とし、検査精度を著しく向上させる方法である。このうち相対変位量は、製品が一回転するうちでの最大値と最小値の差異を測定するものであり、特に型打ち鍛造に有効である。すなわち、図1に示すように、リング状素材を一回転する間に部分的な欠肉によるダレを上限と下限の差異が例えば1.0mm以下である場合に部分的なダレがないものとして合格とし、上限と下限の差異が1.0mmを超える場合にダレがあるとして不合格として排除する。これらのダレの部分は黒皮となって残っている。さらに絶対変位量は、製品モデルに対する欠陥の大きさを測定するものであり、特にローリング品に対して有効である。すなわち、図2に示すように、製品モデル(寸法規格中心付近で製造された良製品)の製品測定値をゼロにリセットする。測定したマイナス変位量の差の上限値を例えば1.5mmとし、差の測定値が1.5mm以下を合格とし、1.5mmを超えると不合格として排除するベアリング内外レースの欠陥を定量的に検出し欠陥品を排除する方法である。
【発明の効果】
【0010】
従来の人の目視の感覚に頼る外観検査方法に代え、本発明は上記の手段の自動化した検査手段とすることで、鍛造あるいは転造によりリング状素材、特にテーパー状リング状素材、を成形した際に、鍛造時あるいは転造時にリング端部、特に体積割合の大きい側のリング端部、に鋼材の流動が不充足となってその部分の表面に黒皮を残有する未成形の状態のダレを有するリング状素材やリングの周面に生じた打ち疵やアバタ疵を有するリング状素材を含む、全成形品について検査することで、これらの黒皮残りのダレやリング周面に打ち疵やアバタ疵などの疵のある不良品を的確に選別して排除することができるなど、本発明は従来にない優れた方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を実施する形態について図面を参照して説明する。鍛造あるいは転造により成形したワークであるリング状素材2を、図1の(a)や(b)に示すように、図示しない回転手段で矢印で示す回転方向9に回転しながらリング状素材2の検査する部位に、例えば(c)に示すように水平面に対して30°の角度で斜め上方の位置のレーザー変位計6の投光部6aからレーザー光の投射光7を投射し、リング状素材2の表面で反射した反射光8を受光部6bで受けて測定する。このようにレーザー変位計6を用いてリング状素材2の円周上の検査部位における反射光8の変位量を測定する。この測定した変位量の値が所定の値以上を示した場合、リング状素材2のリング端部の欠肉によるダレ10である部分的なダレ10aあるいはリング表面の打ち疵やアバタ疵などの疵がある不良品12として検査不合格とする。一方、リング状素材2の周方向の全周のリング端部で全体的なダレ10bを有する場合は、予め良品モデルのリングを測定して得たデーターと対比するために、検査するリング状素材2にレーザー光の投射光7を投射し、全周面における反射光8を測定する。このようにレーザー変位計6を用いてリング状素材2の円周上の全周における反射光8の変位量であるダレ量10cを測定する。この測定した変位量のダレ量10cの値を予め良品モデルのリングを測定して得たデーターと対比し、その差異の値が所定の値以上を示した場合、リング状素材2のリング端部の欠肉によるダレ10がある不良品12として検査不合格の不良品とする。
【0012】
上記の場合、検査工程の検査項目は表1に示す項目として、第1工程でリング状素材2の外径、内径及び全リング幅、第2工程でリング状素材2の疵及び真円度、第3工程でリング状素材2のダレ、第4工程で異材であるかどうかについて、全数のリング状素材2について検査する。なお、本発明では、リング状素材2の角部のダレ10もしくはリング周面の打ち疵やアバタ疵等の疵による欠陥および欠陥の程度の検査を、第3工程3の検査項目のダレで代表して示している。各工程で検査基準に達しないものは、それぞれのNGボックスに排除し、各工程の合格品のみを次工程の検査工程に送り、次工程の検査項目について検査する。
【0013】
【表1】

【0014】
図2に示すように、図の左側から検査するワークのリング状素材2を間歇的に送給しながら、全自動でリング状素材検査機1で検査する。後方に設置のモニター4の画面でその状況を表示している。リング状素材2が送給され、リング状素材2のダレ10を上方に設置したレーザー変位計6からレーザーを投光及び受光して検査し、不合格品は前方のNG容器13に排出し、合格した製品11を製品容器5に収容する。
【0015】
先ず、第1の検査方法は、図3の(a)に示すように、リング状素材2の周方向にダレ10を有し、それが部分的なダレ10aであるものを測定し検査する方法であり、相対的変位量Rを計測する。この場合、リング状素材2がリングの中心軸の周りに1回転する中でリング幅Lを計測する。この1回転の中で、計測位置のリング幅Lの最大値L1と最小値L2の差である相対的変位量Rの基準値を例えば1.0mmとするとき、相対的変位量Rが1.0mm以下を合格の製品11と判定し、相対的変位量Rが1.0mmを超えるものを不合格の不良品12とした。従って、L=L1であり、R=L1−L2であり、合格:R≦1.0mm、不合格:1.0mm<Rである。
【0016】
次いで、第2の検査方法は、図3の(b)に示すように、リング状素材2の周方向の全周にダレ10を有し、全体的なダレ10bであるものを測定し検査する方法であり、絶対的変位量Eを計測する。この場合、先ず、前もって良品モデルのリング状素材のリング幅Lを測定し、このリング幅Lの測定値をゼロリセットしてゼロにしておく。次いで検査品のリング状素材2の全周のリング幅LSを測定する。この場合、良品モデルのリング状素材のリング幅Lの測定値のゼロ値と、検査品のリング状素材2の全周で欠肉を生じて短かいリング幅LSとなって、良品モデルのリング幅Lの測定値のゼロ値よりマイナスとなっているダレ量10cの絶対的変位量Eの基準値を例えば1.5mmとし、絶対的変位量Eが1.5mm以下を合格の製品11と判定し、絶対的変位量Eが1.5mmを超えるものを不合格の不良品12と判定した。従って、L=0であり、E=L−LSであり、合格:E≦1.5mm、不合格:1.5mm<Eである。
【実施例1】
【0017】
図4の(a)に示す、テーパーベアリングの外輪レースについて検査した結果を以下に示した。この外輪レースの外径:Φ102.3mm、内径:Φ79.2mm、リング幅:24.5mmである。部分的ダレ10aの判定の基準値:1.5mmとする。
検査リング数:300個で、NG数:3個でNGの判定値は1.7mm、1.8mm、1.9mmの各1個ずつであった。このNG品の3個はいずれも部分的なダレ10aで形状不良が確認された。
【実施例2】
【0018】
図4の(b)に示す、ベアリングの内輪レースについて検査した結果を以下に示した。この内輪レースの外径:Φ109.9mm、内径:Φ89.2mm、リング幅:26.0mmである。全体的ダレ10bの判定の基準値:1.5mmとする。
検査リング数:400個で、NG数:11個でNGの判定値は、4個が1.6mm、3個が1.7mm、3個が1.8mm、1個が1.9mmであった。このNG品の11個はいずれも、外径部が全体的なダレ10bで形状不良が確認された。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】リング状素材のレーザー変位計による測定方法を模式的に示し、(a)は外輪レースの内径部の部分的なダレを、(b)は内輪レースの外径の部分的なダレを、(c)は外輪レースの内径の全体的ダレを模式的に示す図である。
【図2】本発明を実施するリング状素材検査機を示す模式的正面図である。
【図3】リング状素材のダレを示し、(a)は部分的なダレを、(b)は全体的なダレを示す模式図である。
【図4】リング状素材のダレを示し、(a)は外輪レースの部分的なダレを、(b)は内輪レースの全体的なダレを示す模式図である。
【符号の説明】
【0020】
1 リング状素材検査機
2 リング状素材
3 第3工程
4 モニター
5 製品容器
6 レーザー変位計
6a 投光部
6b 受光部
7 投射光
8 反射光
9 回転方向
10 ダレ
10a 部分的なダレ
10b 全体的なガレ
10c ダレ量
11 製品
12 不良品
13 NG容器
L リング幅
1 最大のリング幅
2 最小のリング幅
S 最小のリング幅
R 相対的変位量
E 絶対的変位量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状素材のリング端部の上部に設置したレーザー変位計からレーザー光をリング中心を回転軸として回転するリング状素材のリング端部もしくはリング周面部を測定部位として該測定部位に向けて投光し、リング状素材の測定部位で反射したレーザー光を受光し、その受光量の変位量によりリング状素材の欠陥及び欠陥の程度を定量的に検出し、基準範囲を超える変位量の製品を欠陥品として排除することを特徴とするベアリング内外レースの欠陥を定量的に検出し欠陥品を排除する方法。
【請求項2】
リング状素材は大径部及び小径部からなるテーパー状リング状素材からなり、該テーパー状リング状素材の体積割合の大きい側のリング端部の上部にレーザー変位計を設置して測定することを特徴とする請求項1に記載のベアリング内外レースの欠陥を定量的に検出し欠陥品を排除する方法。
【請求項3】
受光量の変位量を製品が一回転するうちでの最大値と最小値の差異を測定する相対変位量および製品モデルに対する欠陥の大きさを測定する絶対変位量の二つからなるものとし、製品の寸法によって規定だれる規格範囲内である0〜0.5mmの間で設定変更可能な閾値を設けて判定を行い、相対変位量または絶対変位量が設定した閾値超えを不合格品として欠陥品として排除することを特徴とする請求項1または2に記載のベアリング内外レースの欠陥を定量的に検出し欠陥品を排除する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−294058(P2009−294058A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−147508(P2008−147508)
【出願日】平成20年6月4日(2008.6.4)
【出願人】(000180070)山陽特殊製鋼株式会社 (601)
【Fターム(参考)】