説明

ベンズイミダゾール誘導体

【課題】17βHSDtype5の選択的阻害作用に基づく前立腺肥大症や前立腺癌等の新規かつ優れた治療及び/又は予防方法を提供する。
【解決手段】COOHが置換したフェニル基がインドール環又はベンズイミダゾール環の窒素原子に置換したインドール又はベンズイミダゾール誘導体が、強力な17βHSDtype5選択的阻害活性を有すること、及び、テストステロン減少による副作用を伴わない前立腺肥大症や前立腺癌等の17βHSDtype5の関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インドール化合物及び/又はベンズイミダゾール化合物及び/又はそれらの製薬学的に許容される塩を活性成分として含む医薬又は医薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
前立腺肥大症(Benign Prostatic Hyperplasia:BPH)は主に50歳以上の高齢男性に出現する排尿障害を伴う疾患であり、加齢と共に発症頻度が増加する。日本におけるBPH患者数は、人口構成の急速な高齢化に伴い、近年増加の一途をたどっている。BPHは、その排尿障害により高齢男性の生活の質を著しく低下させ、また泌尿器診療において最も多く診断・治療されることから医療経済的にも重要な疾患である。
【0003】
BPHに伴う排尿障害の原因として、前立腺の肥大による直接的な尿道圧迫(機械的閉塞)と、交感神経を介した前立腺平滑筋の過剰収縮による尿道内圧の上昇(機能的閉塞)の2つの要因が同時に関与することが明らかになっている。薬物療法はその両方の機序に対応可能であり、機械的閉塞には5α還元酵素阻害薬、機能的閉塞にはα1交感神経遮断薬(α1遮断薬)が主に用いられている。5α還元酵素阻害薬は、5α還元酵素によるテストステロンからより強力なアンドロゲンである5αデヒドロテストステロン(DHT)への変換抑制に基づく抗アンドロゲン作用により、前立腺を退縮させる。しかし退縮するのは前立腺上皮のみであり、薬効発現までに長期間(数週間から数ヶ月)を必要とする。一方α1遮断薬は投与後速やかに薬効が発揮され、安全性にも優れていることから、現在はα1遮断薬がBPH治療の第一選択薬となっている。しかし長期の臨床試験の結果、5α還元酵素阻害薬はα1遮断薬単独の場合に比べて侵襲的治療への移行を有意に遅延させたことなどから(「The New England Journal of Medicine」、2003年、第349巻、p.2387−2398)、近年5α還元酵素阻害薬の有用性が再認識されつつある。
【0004】
前立腺内のDHTは、精巣で産生されて内分泌的に前立腺へ供給されたテストステロンから5α還元酵素により生成されると考えられてきた。しかし近年、前立腺内のDHT及びその前駆体であるテストステロンの約半分は、前立腺の細胞内で副腎由来ステロイドのデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)から合成されていることが報告されている(「Frontier in Neuroendocrinology」、2001年、第22巻、p.185−212)。このような性ホルモン標的臓器の細胞内における性ホルモン産生系はintracrinologyと呼ばれている。
【0005】
5α還元酵素阻害薬では、この前立腺局所におけるテストステロン合成(intracrineなテストステロン合成)を阻害することは困難である。例えば5α還元酵素阻害薬であるフィナステリド(finasteride)投与後のBPH患者において、前立腺内DHT濃度は投与前の約20%に低下したのに対して、前駆体である前立腺内テストステロン濃度は4倍に上昇したという報告がある(「The Journal of Urology」、1999年、第161巻、p.332−337)。つまり5α還元酵素阻害薬は前立腺内DHT濃度抑制効果を有するが、前立腺内テストステロン濃度抑制効果はなく、逆に濃度を上昇させてしまう。テストステロンはDHTの半分程度のアンドロゲン受容体結合活性を有するため、この前立腺局所におけるテストステロン濃度上昇が、フィナステリドのBPHに対する不十分な薬効の一因とも考えられている。
【0006】
前立腺癌においても、外科的去勢術や性腺刺激ホルモン放出ホルモン作動薬による抗アンドロゲン療法が用いられている。これらの抗アンドロゲン療法によっても、前立腺内のテストステロン濃度抑制効果は不十分であることが報告されている。例えば上記の抗アンドロゲン療法を行った前立腺癌患者において、血中テストステロン濃度は治療前の約10%程度に低下したのに対して、前立腺内DHT濃度は半分程度残存していた(「The Journal of Clinical Endocrinology and Metabolism」、1995年、第80巻、p.1066−1071)。これはすなわち前立腺内テストステロン濃度も十分に低下していないことを示唆している。また抗アンドロゲン療法後に再燃した前立腺癌(Hormone Refractory Prostate Cancer)においても、アンドロゲン受容体は核に局在しており、再燃前立腺癌組織のテストステロン濃度と正常前立腺のテストステロン濃度の間には有意な差が見られなかった(「Clinical Cancer Research」、2004年、第10巻、p.440−448)。これらの報告は、再燃前立腺癌治療において既存の治療法では前立腺内テストステロン濃度低下作用はまったく不十分であり、前立腺内テストステロン合成機構、すなわち前立腺のintracrineなテストステロン合成の抑制が前立腺癌治療の新たな標的となりうることを強く示唆している。
【0007】
上記の公知技術より、前立腺のintracrineなテストステロン合成阻害剤は、前立腺内テストステロン濃度低下作用を有し、かつ血中テストステロン濃度低下作用がないことから、(1)前立腺内のテストステロン濃度のみならずDHT濃度も低下させ、(2)精巣由来である血中テストステロン濃度の抑制による副作用を回避出来る、非常に魅力的なBPH治療薬及び/又は前立腺癌治療薬となることが期待される。
【0008】
テストステロンの生合成において、17β−ヒドロキシステロイド脱水素酵素(17β-hydroxysteroid dehydrogenase:17βHSD)は必須である。17βHSDにはいくつかのサブタイプが存在するが、ヒト前立腺では17βHSDタイプ5(17βHSDtype5)が高発現しており、前立腺癌及び再燃前立腺癌での発現上昇も報告されている(「Steroids」、2004年、第69巻、p.795−801;「Cancer Research」、2006年、第66巻、p.2815−2825)。一方血中のテストステロンは、そのほぼ全てが精巣で17βHSDタイプ3(17βHSDtype3)により生成されており、17βHSDtype3は前立腺を含む他の組織での発現がほとんど見られない(「Nature Genetics」、1994年、第7巻、p.34−39)。したがって前立腺のintracrineなテストステロン合成は17βHSDtype5が担っていると考えられ、17βHSDtype5選択的阻害剤により前立腺のintracrineなテストステロン合成が選択的に抑制されることが期待される。また、乳腺などエストロゲン依存性組織においても17βHSDtype5の寄与は指摘されており、乳癌などエストロゲン依存性疾患においても効果が期待される(「Endocrine Reviews」、2003年、第24巻、p.152−182)。また、アルド−ケトリダクターゼ(AKR)のサブタイプであるAKR1C3(17βHSDtype5の別名)が、Polycyclic Aromatic Hydrocarbon(PAH)を代謝して活性酸素種(ROS)を産生すること(「The Journal of Biological Chemistry」、2002年、第277巻、27号、p.24799−24808)、酸化ストレスに関連するAKR1C3遺伝子の1塩基多型(SNP)が肺癌のリスクと相関すること(「Carcinogenesis」、2004年、第25巻、11号、p.2177−2181)から、肺におけるAKR1C3の活性は、PAHからのROSの生成を介して肺癌のリスクを高めることが示唆されており、17βHSDtype5の選択的阻害剤は、肺癌に対しても効果が期待される。
【0009】
17βHSDtype5阻害剤としては、ステロイド誘導体(特許文献1)やFlufenamic acid,Indomethacin等のNSAIDs(Non−steroidal Anti−Inflammatory Drugs)(非特許文献1)、桂皮酸誘導体(非特許文献2)等が報告されている。また、作用機序は異なるが、あるタイプのインダゾール誘導体がBPHに有効であることも知られている(特許文献2)。
【0010】
一方で、あるタイプの3−(インドール−1−イル)安息香酸誘導体(特許文献3)、熱ショックタンパク質(HSP90)阻害活性を有する3−(1H−ベンズイミダゾール−1−イル)安息香酸誘導体(特許文献4)、テロメラーゼ阻害活性を有する3−(1H−ベンズイミダゾール−1−イル)安息香酸誘導体(特許文献5)が前立腺癌などの前立腺疾患に有用であることが知られている。また、あるタイプの3−(インドール−1−イル)安息香酸誘導体(特許文献6)や、例えば3−[5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸のような、あるタイプの3−(1H−ベンズイミダゾール−1−イル)安息香酸誘導体(特許文献7乃至12)がアルツハイマー病や認知症等の中枢神経障害に有効であることが知られている。さらに、別の3−(1H−ベンズイミダゾール−1−イル)安息香酸誘導体が動脈硬化症に有効(特許文献13)であることも知られている。さらに、抗ウイルス活性(特許文献14)や血管内皮増殖因子(VEGF)受容体拮抗活性(特許文献15)、血小板由来成長因子(PDGF)阻害活性(非特許文献3乃至5)を有する3−(1H−ベンズイミダゾール−1−イル)安息香酸誘導体、疼痛などに有効な3−(インドール−1−イル)安息香酸誘導体(特許文献16)が知られている。しかしながら、BPHや前立腺癌等に有効な本願記載の化合物は報告がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開WO99/046279号パンフレット
【特許文献2】国際公開WO2004/064735号パンフレット
【特許文献3】国際公開WO2003/057670号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0105862号明細書
【特許文献5】国際公開WO2001/007020号パンフレット
【特許文献6】国際公開WO2006/041874号パンフレット
【特許文献7】欧州特許出願公開第563001号明細書
【特許文献8】欧州特許出願公開第616807号明細書
【特許文献9】米国特許第5554630号明細書
【特許文献10】国際公開WO96/033194号パンフレット
【特許文献11】国際公開WO98/017651号パンフレット
【特許文献12】国際公開WO98/034923号パンフレット
【特許文献13】特開平7−133224号公報
【特許文献14】国際公開WO97/033872号パンフレット
【特許文献15】特開2002−193947号公報
【特許文献16】国際公開WO2008/006790号パンフレット
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】「キャンサー・リサーチ(Cancer Research)」、2004年、第64巻、p.1802−1810
【非特許文献2】「モレキュラー・アンド・セルラー・エンドクリノロジー(Molecular and Cellular Endocrinology)」、2006年、第248巻、p.233−235
【非特許文献3】「ザ・ジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(The Journal of Medicinal Chemistry)」、1998年、第41巻、27号、p.5457−5465
【非特許文献4】「バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー(Bioorganic and Medicinal Chemistry)」、2004年、第12巻、15号、p.4009−4015
【非特許文献5】「バイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー(Bioorganic and Medicinal Chemistry)」、2005年、第13巻、24号、p.6598−6608
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、17βHSDtype5選択的阻害活性を有する医薬、特に前立腺肥大症及び/又は前立腺癌治療剤として有用な化合物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、17βHSDtype5選択的阻害活性を有する化合物について鋭意検討した結果、3位にカルボキシ基を有するフェニル基がインドール環及び/又はベンズイミダゾール環の1位に置換した化合物が、強力な17βHSDtype5選択的阻害活性を有すること、並びにテストステロン減少による副作用を伴わない前立腺肥大症及び前立腺癌等の17βHSDtype5の関与する疾患の治療剤及び/又は予防剤となりうることを知見して本発明を完成した。
【0015】
即ち本発明は、式(I)の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、17βHSDtype5に関係する疾患の予防用若しくは治療用医薬組成物に関する。
【化1】

式(I)において、
Aは、C−R10又はN;
1は、水素、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−で置換された低級アルキル、低級アルキル−O−、ハロゲノ低級アルキル−O−、低級アルキル−O−で置換された低級アルキル−O−、置換されていてもよいシクロアルキル−L−、置換されていてもよいアリール−L−、又は置換されていてもよいヘテロ環基−L−;
Lは、結合、低級アルキレン、低級アルケニレン、O、低級アルキレン−O、又はO−低級アルキレン;
2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9は、同一又は互いに異なって、水素、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、低級アルケニル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−、シアノ低級アルキル−O−、ハロゲノ低級アルキル−O−、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−O−、ヘテロアリール−O−、アリール−低級アルキレン−、ヘテロアリール−低級アルキレン−、アシル、アシル−O−、ヘテロアリール−低級アルキレン−O−、低級アルキルスルファニル、アミノ、ヒドロキシ、スルファニル、モノ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、アシルアミノ、又はアリールアミノ;
3は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ハロゲノ低級アルキル、又は低級アルキル−O−;
10は、水素、置換されていてもよいアリール、又はヒドロキシ若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよい低級アルキルを示す。
ただし、
AがC−R10である場合は、R1は水素又は低級アルキルを示し;
AがN、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9が水素である場合は、R3はハロゲン、シアノ、ハロゲノ低級アルキル、又は低級アルキル−O−を示し;
AがN、R1がメチル、並びにR2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR9が水素である場合は、R8は[(2E)−3−(2−ナフタレニル)−1−オキソ−2−ブテン−1−イル]アミノ以外の基を示す。
記号の意味は、以下同様である。
【0016】
また、本発明は式(II)の化合物又はその製薬学的に許容される塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物に関する。
【化2】

式(II)において、
Aは、C−R10又はN;
1は、水素、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−で置換された低級アルキル、低級アルキル−O−、ハロゲノ低級アルキル−O−、低級アルキル−O−で置換された低級アルキル−O−、置換されていてもよいシクロアルキル−L−、置換されていてもよいアリール−L−、又は置換されていてもよいヘテロ環基−L−;
Lは、結合、低級アルキレン、低級アルケニレン、O、低級アルキレン−O、又はO−低級アルキレン;
2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9は、同一又は互いに異なって、水素、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、低級アルケニル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−、シアノ低級アルキル−O−、ハロゲノ低級アルキル−O−、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−O−、ヘテロアリール−O−、アリール−低級アルキレン−、ヘテロアリール−低級アルキレン−、アシル、アシル−O−、ヘテロアリール−低級アルキレン−O−、低級アルキルスルファニル、アミノ、ヒドロキシ、スルファニル、モノ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、アシルアミノ、又はアリールアミノ;
a3は、水素、ハロゲン、シアノ、ハロゲノ低級アルキル、又は低級アルキル−O−;
10は、水素、置換されていてもよいアリール、又はヒドロキシ若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよい低級アルキルを示す。
ただし、
AがC−R10である場合は、R1は水素又は低級アルキルを示すが、R1、R2、R5、R6、R7、R8、及びR9が水素、R4がクロロ、並びにR10がイソブチルである場合は、Ra3は水素以外の基であり;
AがN、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9が水素である場合は、Ra3はハロゲン、シアノ、又は低級アルキル−O−を示し;
AがN、R1がメチル、R2、R4、R5、R6、R7、及びR9が水素、並びにR8が[(2E)−3−(2−ナフタレニル)−1−オキソ−2−ブテン−1−イル]アミノである場合は、Ra3は水素以外の基であり;
AがN、R1、R2、R5、R6、R7、R8、及びR9が水素、並びにR4がtert−ブチルである場合は、Ra3は水素以外の基であり;
AがN、R1が水素若しくはメチル、R2、R6、及びR7が水素、R4及びR8がヒドロキシ、並びにR5がカルボキシである場合は、Ra3は水素以外の基を示す。
記号の意味は、以下同様である。
【0017】
また、本発明は式(I)の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、17βHSDtype5に関係する疾患の予防剤及び/又は治療剤に関する。
【0018】
また、本発明は17βHSDtype5に関係する疾患を治療及び/又は予防するための医薬を製造するための式(I)の化合物、又はその製薬学的に許容される塩の使用に関する。
【0019】
また、本発明は式(I)の化合物、又はその製薬学的に許容される塩の有効量を患者に投与することからなる、17βHSDtype5に関係する疾患の治療及び/又は予防方法に関する。
【0020】
また、本発明は式(I)の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する17βHSDtype5の阻害剤に関する。
【0021】
また、本発明は式(I)の化合物、又はその製薬学的に許容される塩を含有する医薬組成物、及び、式(I)の化合物、又はその製薬学的に許容される塩が前立腺癌、前立腺肥大、アクネ、脂漏症、多毛症、禿頭症、脱毛症、性早熟症、副腎肥大、多嚢胞性卵巣症候群、乳癌、子宮内膜症、肺癌、又は平滑筋腫を治療及び/又は予防するために使用され得る又は使用されるべき旨の記載を含むコマーシャルパッケージに関する。
【発明の効果】
【0022】
式(I)の化合物は、17βHSDtype5を選択的に阻害する。したがって式(I)の化合物は、「17βHSDtype5に関係する疾患」、例えば17βHSDtype5を阻害することによりアンドロゲン及び/又はエストロゲン合成が抑制されるので、アンドロゲン及び/又はエストロゲンに関連する疾患の予防及び/又は治療剤として使用しうる。アンドロゲン及び/又はエストロゲンに関連する疾患としては、前立腺癌、前立腺肥大、アクネ、脂漏症、多毛症、禿頭症、脱毛症、性早熟症、副腎肥大、多嚢胞性卵巣症候群、乳癌、子宮内膜症及び平滑筋腫等が挙げられる。また、アルド−ケトリダクターゼ(AKR)のサブタイプであるAKR1C3(17βHSDtype5の別名)が、Polycyclic Aromatic Hydrocarbon(PAH)を代謝して活性酸素種(ROS)を産生すること、酸化ストレスに関連するAKR1C3遺伝子の1塩基多型(SNP)が肺癌のリスクと相関することから、17βHSDtype5に関係する疾患としては、肺癌も挙げられる。したがって、式(I)の化合物はこれらの疾患の治療剤及び/又は予防剤として使用しうる。
【0023】
また、前立腺のintracrineなアンドロゲン合成は17βHSDtype5が担っていると考えられることから、17βHSDtype5選択的阻害剤により前立腺のintracrineなアンドロゲン合成が選択的に抑制されることが期待される。したがって式(I)の化合物は、特に前立腺においてアンドロゲンに関連する疾患、即ち前立腺癌、前立腺肥大症の予防及び/又は治療剤として使用しうる。
【0024】
また、式(I)の化合物は血中テストステロン濃度に対して影響を及ぼさないことから、血中テストステロン濃度の抑制による性機能障害などの副作用のない前立腺肥大症及び前立腺癌の治療及び/又は予防薬となりうる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳述する。
以下、本発明の有効成分である式(I)及び/又は式(II)の化合物について詳細に説明する。式(II)の化合物は式(I)の化合物に包含され、式(I)の化合物の好ましい一つの態様であることから、以下、主に式(I)の化合物について説明する。
【0026】
本明細書の上記又は下記記載において、本発明範囲に含まれる様々な定義の好適例を、下記で詳細に説明する。
「低級」の語は、特に断らない限り炭素原子数が1乃至10(以下、C1-10と略記することがある)の基を意味する。
【0027】
「低級アルキル」とは、炭素原子数が1乃至10の直鎖状又は分枝鎖状のアルキルであり、好ましくはC1-6のアルキル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル基等である。
「低級アルキレン」とは、「低級アルキル」から水素原子を除去して形成される二価の基を意味する。
【0028】
「低級アルケニル」とは、少なくとも1個の二重結合を含有している不飽和の、炭素原子の数が2乃至10の直鎖状又は分枝鎖状の非環式炭化水素を意味する。好ましくは炭素原子の数が2乃至6である。例えばビニル、プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等が含まれる。
「低級アルケニレン」とは、「低級アルケニル」から水素原子を除去して形成される二価の基を意味する。
【0029】
「ハロゲン」にはF、Cl、Br、及びIが含まれ、好適にはF、Cl、又はBrである。
【0030】
「ハロゲノ低級アルキル」とは、1個以上のハロゲンで置換された低級アルキルである。別の態様としては1乃至10個のハロゲンで置換された低級アルキルを意味する。例えばフルオロメチル、クロロメチル、ジフルオロメチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、フルオロエチル、クロロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル、フルオロプロピル、フルオロブチル、フルオロヘキシル等が含まれる。
【0031】
「シクロアルキル」とは、炭素原子の数が3乃至10の飽和炭化水素環基であり、架橋を有していてもよい。例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、ノルボルニル、アダマンチル基等が含まれる。
【0032】
「アリール」とは、C6-14の単環乃至三環式芳香族炭化水素環基であり、C5-8シクロアルケンとその二重結合部位で縮合した環基を包含する。例えばフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフタレニル、インデニル、フルオレニル基等である。別の態様としてはフェニル、ナフチル、アントリルであり、さらに別の態様としてはフェニルである。
【0033】
「ヘテロ環」基とは、好ましくは窒素原子1乃至4個を有する3乃至6員のヘテロ芳香族単環基、例えばピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル(例えば4H−1,2,4−トリアゾリル、1H−1,2,3−トリアゾリル、2H−1,2,3−トリアゾリルなど)、テトラゾリル(例えば1H−テトラゾリル、2H−テトラゾリルなど)など;窒素原子1乃至5個を有する縮合ヘテロ芳香族環式基、例えばインドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラゾロピリダジニル(例えばテトラゾロ[1,5−b]ピリダジニルなど)、キノキサリニル、イミダゾピリジル(例えばイミダゾ[1,2−a]ピリジルなど)など;酸素原子1個を有する3乃至6員のヘテロ芳香族単環基、例えばピラニル、フリルなど; 硫黄原子1乃至2個を有する3乃至6員のヘテロ芳香族単環基、例えばチエニルなど;酸素原子1乃至2個及び窒素原子1乃至3個を有する3乃至6員のヘテロ芳香族単環基、例えばオキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル(例えば1,2,4−オキサジアゾリル、1,3,4−オキサジアゾリル、1,2,5−オキサジアゾリルなど)など;酸素原子1乃至2個及び窒素原子1乃至3個を有する縮合ヘテロ芳香族環式基、例えばベンゾフラザニル、ベンズオキサゾリル、ベンズオキサジアゾリルなど;硫黄原子1乃至2個及び窒素原子1乃至3個を有する3乃至6員のヘテロ芳香族単環基、例えばチアゾリル、チアジアゾリル(例えば1,2,4−チアジアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、1,2,5−チアジアゾリルなど)など;硫黄原子1乃至2個及び窒素原子1乃至3個を有する縮合ヘテロ芳香族環式基、例えばベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、イミダゾチアゾリル(例えばイミダゾ[2,1−b][1,3]チアゾリルなど)など;酸素原子1乃至2個を有する縮合ヘテロ芳香族環式基、例えばベンゾフラニル、ジベンゾ[b,d]フラニルなど;硫黄原子1乃至2個を有する縮合ヘテロ芳香族環式基、例えばベンゾチエニルなど;などを挙げることができる。
【0034】
さらに「ヘテロ環」基とは、O、N、及びSから選択される1乃至4個のヘテロ原子を含有する3乃至10員の飽和又は不飽和の環式基も意味し、好ましくは、窒素原子1乃至4個を有する3乃至7員の飽和ヘテロ単環基、例えばピロリジニル、イミダゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニルなど;窒素原子1乃至4個を有する3乃至10員の飽和又は不飽和二環式ヘテロ環基、例えばキヌクリジニルなど;酸素原子1個を有する3乃至6員の飽和ヘテロ単環基、例えば1H−テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフラニルなど;酸素原子1乃至2個及び窒素原子1乃至3個を有する3乃至6員の飽和又は不飽和ヘテロ単環基、例えばモルホリニル、オキサゾリニル(例えば2−オキサゾリニルなど)など;硫黄原子1乃至2個及び窒素原子1乃至3個を有する3乃至6員の飽和又は不飽和ヘテロ単環基、例えばチアゾリジニルなど;などが含まれる。
【0035】
「ヘテロアリール」とは、「ヘテロ環」基に含まれる基の中で、芳香族性を有するものを意味する。
【0036】
「シアノ低級アルキル」とは、1個以上のシアノ基で置換された低級アルキルである。別の態様としては1乃至3個のシアノ基で置換された低級アルキルを意味する。例えばシアノメチル、シアノエチル、2,3−ジシアノプロピル等が含まれる。
【0037】
「アシル基」としては、例えばカルボキシ;エステル化されたカルボキシ;低級アルキル、アリール、アリール−低級アルキレン、アリールスルホニル、ヘテロ環基で置換されたスルホニル、低級アルキルスルホニル、又はヘテロ環基で置換されたカルバモイル;置換された又は置換されていないアリールスルホニル;ヘテロ環基で置換されたスルホニル;低級アルキルスルホニル;シクロアルキルカルボニル;低級アルキル−CO−;HCO−;置換された又は置換されていないアリール−CO−;ヘテロ環基で置換されたカルボニルなどが含まれる。
【0038】
エステル化されたカルボキシ基としては、置換された又は置換されていない低級アルキル−O−C(=O)−(例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、2−ヨードエトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニルなど)、置換された又は置換されていないアリール−O−C(=O)−(例えばフェノキシカルボニル、4−ニトロフェノキシカルボニル、2−ナフチルオキシカルボニルなど)、置換された又は置換されていないアリール−低級アルキレン−O−C(=O)−(例えばベンジルオキシカルボニル、フェネチルオキシカルボニル、ベンズヒドリルオキシカルボニル、4−ニトロベンジルオキシカルボニルなど)などが含まれる。
【0039】
低級アルキルで置換されたカルバモイル基としては、メチルカルバモイル、エチルカルバモイル、プロピルカルバモイル、ジメチルカルバモイル、ジエチルカルバモイル、メチルエチルカルバモイルなどが含まれる。
【0040】
アリールで置換されたカルバモイル基としては、フェニルカルバモイル、ナフチルカルバモイル、低級アルキル置換されたフェニルカルバモイル(例えばトリルカルバモイル、キシリルカルバモイルなど)などが含まれる。
【0041】
アリール−低級アルキレンで置換されたカルバモイル基としては、ベンジルカルバモイル、フェネチルカルバモイル、フェニルプロピルカルバモイルなどが含まれる。
【0042】
アリールスルホニルで置換されたカルバモイル基としては、フェニルスルホニルカルバモイル、トリルスルホニルカルバモイルなどが含まれる。
【0043】
(ヘテロ環基で置換されたスルホニル)で置換されたカルバモイルとしては、ピリジルスルホニルカルバモイルなどが含まれる。
【0044】
低級アルキルスルホニルで置換されたカルバモイル基としては、メチルスルホニルカルバモイル、エチルスルホニルカルバモイルなどが含まれる。
【0045】
置換された又は置換されていないアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル、トリルスルホニル、ハロフェニルスルホニル(例えばフルオロフェニルスルホニルなど)などが含まれる。
【0046】
ヘテロ環基で置換されたスルホニル基としては、例えばピロリジニルスルホニルなどが含まれる。
【0047】
低級アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル、エチルスルホニルなどが含まれる。
【0048】
シクロアルキルカルボニル基としては、例えばシクロプロピルカルボニル、シクロブチルカルボニル、シクロペンチルカルボニル、又はシクロヘキシルカルボニルなどが含まれる。
【0049】
低級アルキル−CO−基としては、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル、ヘキサノイルなどが含まれる。
【0050】
置換された又は置換されていないアリール−CO−基としては、ベンゾイル、ナフトイル、トルオイル、ジ(tert−ブチル)ベンゾイル、ハロゲノ低級アルキル−O−ベンゾイル(例えばトリフルオロメトキシベンゾイルなど)などが含まれる。
【0051】
「ヘテロ環基で置換されたカルボニル」におけるヘテロ環基部分は、上記「ヘテロ環」基を意味する。例えばピリジルカルボニル等が含まれる。
【0052】
「モノ低級アルキルアミノ」とは、1つの上記「低級アルキル」で置換されたアミノ基を意味する。例えばメチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ブチルアミノ、イソブチルアミノ、ペンチルアミノ、ヘキシルアミノなどが含まれる。
【0053】
「ジ低級アルキルアミノ」とは、同一又は異なった2つの上記「低級アルキル」で置換されたアミノ基を意味する。例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジプロピルアミノ、ジイソプロピルアミノ、ジブチルアミノ、ジイソブチルアミノ、ジペンチルアミノ、ジヘキシルアミノ、エチルメチルアミノ、メチルプロピルアミノ、ブチルメチルアミノ、エチルプロピルアミノ、ブチルエチルアミノなどが含まれる。
【0054】
「置換されていてもよい」とは、無置換、又は置換基を1乃至5個有していることを意味する。「置換された」とは、置換基を1乃至5個有していることを意味する。なお、複数個の置換基を有する場合、それらの置換基は同一であっても、互いに異なっていてもよい。
【0055】
1及びR10の「置換されていてもよいシクロアルキル」、「置換されていてもよいアリール」、又は「置換されていてもよいヘテロ環基」における置換基として、例えば低級アルキル、ハロゲン、シアノ、低級アルケニル、シクロアルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−、シアノ低級アルキル−O−、ハロゲノ低級アルキル−O−、アリール、ヘテロアリール、アリール−O−、ヘテロアリール−O−、アリール−低級アルキレン−、アシル、アシル−O−、ヘテロアリール−低級アルキレン−O−、低級アルキルスルファニル、ニトロ、アミノ、ヒドロキシ、スルファニル、モノ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、アシルアミノ、アリールアミノ基が挙げられ、別の態様として低級アルキル、ハロゲン、シアノ、低級アルケニル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−、シアノ低級アルキル−O−、ハロゲノ低級アルキル−O−、及び低級アルキル−CO−から選択される基が挙げられ、さらに別の態様として低級アルキル、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−、及び低級アルキル−CO−から選択される基が挙げられる。
【0056】
本明細書において、「シクロアルキル」、「フェニル」、「シクロヘキシル」などは、便宜上一価基として記載してあるが、構造によっては二価基以上の多価基である場合がある。本発明は、それらの構造を包含するものである。二価基の具体的な態様としては、有機化合物命名法に従って、上記環基の接尾辞をジイルに変換したものが対応する。例えば、一価基であるフェニル基に対応する二価基はフェニレンである。また、一価基であるベンゾチアゾリル基に対応する二価基はベンゾチアゾールジイルである。
【0057】
「17βHSDtype5選択的」及び「AKR1C3選択的」とは、17βHSDtype3及びAKR1C2の阻害活性が、ヒト17βHSDtype5(AKR1C3)の阻害活性に対して、IC50値において3倍以上、好ましくは10倍以上、更に好ましくは100倍以上の数値を示すことを意味する。
【0058】
本発明の有効成分である式(I)の化合物のある態様を以下に示す。
(1)式(II)の化合物。
(2)AがC−R10である化合物。
(3)AがNである化合物。
(4)R1が水素である化合物。
(5)R1が低級アルキルである化合物。
(6)R1がハロゲノ低級アルキルである化合物。
(7)R1が低級アルキル−O−で置換された低級アルキルである化合物。
(8)R1がフェニルで置換された低級アルキルであって、上記フェニルが低級アルキル、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、及び低級アルキル−O−から選択される基で置換されていてもよい化合物。
(9)R1がフェニル−O−で置換された低級アルキルであって、上記フェニルが低級アルキル、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、及び低級アルキル−O−から選択される基で置換されていてもよい化合物。
(10)R1がフェニルで置換されていてもよい低級アルキル−O−である化合物。
(11)R1がシクロアルキルである化合物。
(12)R1が低級アルキル、ハロゲン、及び低級アルキル−O−から選択される基で置換されていてもよいフェニルである化合物。
(13)R2が水素である化合物。
(14)R4が水素である化合物。
(15)R5が水素である化合物。
(16)R6が水素である化合物。
(17)R7が水素である化合物。
(18)R8が水素である化合物。
(19)R9が水素である化合物。
(20)R2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9が、同一又は異なって、水素又はハロゲンである化合物。
(21)R3又はRa3がハロゲノ低級アルキル又はシアノである化合物。
(22)R3又はRa3がハロゲノ低級アルキルである化合物。
(23)R3又はRa3がシアノである化合物。
(24)R3又はRa3がトリフルオロメチルである化合物。
(25)上記(1)乃至(24)に記載の基のうち二以上の組み合わせである化合物。
【0059】
上記(25)の化合物の具体例として、以下の化合物が挙げられる。
(26)AがC−R10である、式(II)の化合物。
(27)R1が水素、並びにR2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9が、同一又は異なって、水素又はハロゲンである、(26)記載の化合物。
(28)Ra3がハロゲノ低級アルキル、又はシアノである、(27)記載の化合物。
(29)AがNである、式(II)の化合物。
(30)R2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9が、同一又は異なって、水素又はハロゲンである、(29)記載の化合物。
(31)Ra3がハロゲノ低級アルキル、又はシアノである、(30)記載の化合物。
(32)Ra3がトリフルオロメチルである、(31)記載の化合物。
(33)R1が水素;低級アルキル;ハロゲノ低級アルキル;低級アルキル−O−、フェニル若しくはフェニル−O−で置換された低級アルキル;低級アルキル、ハロゲン、若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよいフェニル;シクロアルキルを示し;ここで、フェニル若しくはフェニル−O−で置換された低級アルキル中の上記フェニル部分は、低級アルキル、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、又は低級アルキル−O−で置換されていてもよい;である、(29)乃至(32)記載の化合物。
(34)R1が水素、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、又は低級アルキル−O−で置換された低級アルキルである、(32)記載の化合物。
(35)R1がフェニルで置換されていてもよい低級アルキル−O−である、(32)記載の化合物。
(36)R1がシクロアルキルである、(32)記載の化合物。
(37)R1が低級アルキル、ハロゲン、及び低級アルキル−O−から選択される基で置換されていてもよいフェニルである、(32)記載の化合物。
(38)R1がフェニルで置換された低級アルキル又はフェニル−O−で置換された低級アルキルであって、上記フェニルが低級アルキル、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、及び低級アルキル−O−から選択される基で置換されていてもよい、(32)記載の化合物。
【0060】
本発明に包含される具体的化合物として、以下の化合物が挙げられる。
3−(5−シアノ−1H−インドール−1−イル)安息香酸、
3−[3−フェニル−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−1−イル]安息香酸、
3−[3−(2−メトキシエチル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−インドール−1−イル]安息香酸、
3−[5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−メチル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−エチル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−プロピル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2,5−ビス(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−フェノキシメチル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−メトキシ−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−シクロプロピル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−シクロヘキシル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−フェニル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−(3−メチルフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−ベンジル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−(3−フルオロベンジル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−(4−フルオロベンジル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、
3−[2−(4−クロロベンジル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸、及び
3−[2−(ベンジルオキシ)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸。
【0061】
式(I)の化合物には、置換基の種類によって互変異性体や幾何異性体が存在しうる。本明細書中、式(I)の化合物が異性体の一形態のみで記載されることがあるが、本発明はそれ以外の異性体も包含し、異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
また、式(I)の化合物には不斉炭素原子や軸不斉を有する場合があり、これに基づく光学異性体が存在しうる。本発明は、式(I)の化合物の光学異性体の分離されたもの、あるいはそれらの混合物も包含する。
【0062】
式(I)の化合物は常法により塩にすることができる。式(I)の化合物の塩は製薬学的に許容される塩であり、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩やカリウム塩等)やアルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩やマグネシウム塩等)のような金属塩、アンモニウム塩、有機塩基塩(例えばトリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩等)、有機酸塩(例えば酢酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ギ酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等)、無機酸塩(例えば塩酸塩、臭化水素塩、硫酸塩、リン酸塩等)、アミノ酸塩(例えばアルギニン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩等)などを挙げることができる。従って、本発明は式(I)の化合物又はその製薬学的に許容される塩の全てを包含する。
【0063】
本発明は式(I)の化合物及びその製薬学的に許容される塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形の物質も包含する。また、本発明は種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含する。
【0064】
更に、本発明には式(I)の化合物の薬理学的に許容されるプロドラッグも含まれる。薬理学的に許容されるプロドラッグとは、加溶媒分解により又は生理学的条件下で、アミノ基、水酸基、カルボキシル等に変換できる基を有する化合物である。プロドラッグを形成する基としては、例えば、Prog. Med., 5, 2157-2161 (1985)や「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 分子設計163-198に記載の基が挙げられる。
【0065】
(一般的製造法)
本発明有効成分である式(I)の化合物は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基で保護、又は当該官能基に容易に転化可能な基に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシル基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(T. W. Greene)及びウッツ(P. G. M. Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版、1999年)」に記載の保護基を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去、あるいは所望の基に転化することにより、所望の化合物を得ることができる。
【0066】
(第1製法)
【0067】
【化3】

【0068】
第1製法は、式(III)(式中、Rfは低級アルキルを示す。)の化合物を加水分解反応に付し、式(Ia)の化合物を得る方法である。
【0069】
加水分解反応は、酸性条件下でも塩基性条件下でも行うことができるが、塩基性条件下で行うことが好ましい。使用される塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム等の無機塩基が好ましい。
【0070】
使用される溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、若しくはシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、又は水、あるいはこれらの混合溶媒であり、テトラヒドロフランと水の混合溶媒が好ましい。
【0071】
本反応の反応温度は、原料化合物、試薬等によって異なるが、通常0℃乃至100℃であり、好適には0℃乃至50℃である。
本反応の反応時間は、原料化合物、試薬、反応温度等によって異なるが、通常5分間乃至24時間であり、好適には10分間乃至12時間である。
【0072】
(第2製法)
(第2製法−1)
【0073】
【化4】

【0074】
第2製法−1は、式(IV)(式中、Rfは低級アルキルを示す。)と式(V)(式中、Rb1は低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−で置換された低級アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル−La−、置換されていてもよいアリール−La−、又は置換されていてもよいヘテロ環基−La−;Laは、結合、低級アルキレン、又は低級アルケニレン;Xは脱離基を示す。)の化合物を反応させ、式(VI)(式中、Rb1及びRfは上記定義の通りである。)の化合物を得る方法である。
【0075】
(第2製法−2)
第2製法−2は、得られた式(VI)の化合物を加水分解反応に付し、式(Ib)
【0076】
【化5】

(式中、Rb1は上記定義の通りである。)の化合物を得る方法である。
【0077】
第2製法−1で用いられる溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えばベンゼン、トルエン、又はキシレンのような芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、又はジクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル、又はシクロペンチルメチルエーテルのようなエーテル類;ニトロメタンのようなニトロ化合物類;アセトニトリル又はイソブチロニトリルのようなニトリル類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、又はN−メチル−2−ピロリジノンのようなアミド類;ジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類、スルホランのようなスルホン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;及びこれらの混合物が挙げられ、好適にはエーテル類、特にテトラヒドロフランが好適である。
【0078】
脱離基Xとしては、例えばハロゲン原子、低級アルコキシ基、フェノキシ基、イミダゾリル基等が挙げられる。
【0079】
第2製法−1の反応温度は、原料化合物、試薬等によって異なるが、通常0℃乃至100℃であり、好適には20℃乃至100℃である。
第2製法−1の反応時間は、原料化合物、試薬、反応温度等によって異なるが、通常5分間乃至24時間であり、好適には10分間乃至12時間である。
【0080】
第2製法−2は、第1製法の加水分解と同様の条件にて行うことができる。
【0081】
また、第2製法−1と第2製法−2の順序を変更して、式(IV)の化合物をまず加水分解に付し、続いて式(V)の化合物と反応させて式(Ib)の化合物を得ることもできる。この場合、それぞれの反応条件は上記記載の通りである。
【0082】
(第3製法)
(第3製法−1)
【0083】
【化6】

【0084】
第2製法−1において、式(VI)の化合物ではなく、式(VII)(式中、Rb1及びRfは上記定義の通りである。)の化合物を単離してもよい。第3製法−1は、式(VII)の化合物を加水分解反応に付し、式(VIII)(式中、Rb1は上記定義の通りである。)の化合物を得る方法である。
【0085】
(第3製法−2)
第3製法−2は、得られた式(VIII)の化合物を酸性条件下で加熱し、式(Ib)の化合物を得る方法である。
【0086】
第3製法−1は、第1製法の加水分解と同様の条件にて行うことができる。
【0087】
第3製法−2で使用される溶媒は、例えば酢酸、トリフルオロ酢酸、塩酸水等の酸性溶媒が好適である。
第3製法−2の反応温度は、原料化合物、試薬等によって異なるが、通常0℃乃至100℃であり、好適には20℃乃至100℃である。
【0088】
(第4製法)
(第4製法−1)
【0089】
【化7】

【0090】
第4製法−1は、式(IV)の化合物と式(IX)の化合物又は(IX)の酸付加塩を反応させることにより、式(X)(式中、Rfは上記定義の通りである。)の化合物を得る方法である。
【0091】
(第4製法−2)
第4製法−2は、得られた式(X)の化合物を加水分解反応に付し、式(Ic)
【0092】
【化8】

の化合物を得る方法である。
【0093】
第4製法−1で用いられる溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えばベンゼン、トルエン又はキシレンのような芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼン、又はジクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル又はシクロペンチルメチルエーテルのようなエーテル類;ニトロメタンのようなニトロ化合物類;アセトニトリル又はイソブチロニトリルのようなニトリル類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、又はN−メチル−2−ピロリジノンのようなアミド類;あるいはジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類、スルホランのようなスルホン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;及びこれらの混合物が挙げられ、好適にはアルコール類、特にエタノールが好適である。
【0094】
第4製法−1の反応温度は、原料化合物、試薬等によって異なるが、通常0℃乃至100℃であり、好適には20℃乃至100℃である。
第4製法−1の反応時間は、原料化合物、試薬、反応温度等によって異なるが、通常5分間乃至24時間であり、好適には10分間乃至12時間である。
【0095】
第4製法−2は、第1製法の加水分解と同様の条件にて行うことができる。
【0096】
(第5製法)
(第5製法−1)
【0097】
【化9】

【0098】
第5製法−1は、式(IV)(式中、Rfは低級アルキルを示す。)と式(XI)の化合物を反応させ、式(XII)(式中、Rfは上記定義の通りである。)の化合物を得る方法である。
【0099】
(第5製法−2)
【0100】
【化10】

第5製法−2は、得られた式(XII)の化合物をハロゲン化反応に付し、式(XIII)(式中、Rfは上記定義の通りである。)の化合物を得る方法である。
【0101】
(第5製法−3)
【0102】
【化11】

第5製法−3は、得られた式(XIII)の化合物と式(XIV)(式中、Rc1は低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−で置換された低級アルキル、置換されていてもよいシクロアルキル、置換されていてもよいアリール、又は置換されていてもよいヘテロ環基;Mは金属を示す。)の化合物を反応させることにより、式(XV)(式中、Rc1及びRfは上記定義の通りである。)の化合物を得る方法である。
【0103】
(第5製法−4)
第5製法−4は、得られた式(XV)の化合物を加水分解反応に付し、式(Id)
【0104】
【化12】

の化合物を得る方法である。
【0105】
第5製法−1は、第2製法−1と同様の条件にて行うことができる。なおトリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン若しくはN-メチルモルホリン等の有機塩基、又は炭酸カリウム、炭酸ナトリウム若しくは水酸化カリウム等の無機塩基の存在下で反応を行うのが、反応を円滑に進行させる上で有利な場合がある。
【0106】
脱離基Yとしては、例えばハロゲン原子、低級アルコキシ基、フェノキシ基、イミダゾリル基等が挙げられ、好適にはイミダゾリル基である。
【0107】
第5製法−2は、得られた式(XII)の化合物をオキシ塩化リンなどに溶解し、必要に応じて五塩化リンなどを添加し加熱することによって行うことができる。
【0108】
第5製法−2の反応温度は、原料化合物、試薬等によって異なるが、通常0℃乃至120℃であり、好適には20℃乃至100℃である。
第5製法−2の反応時間は、原料化合物、試薬、反応温度等によって異なるが、通常5分間乃至24時間であり、好適には10分間乃至20時間である。
【0109】
第5製法−3で用いられる溶媒は、反応を阻害せず、出発物質をある程度溶解するものであれば特に限定はないが、例えばベンゼン、トルエン又はキシレンのような芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、tert−ブチルメチルエーテル又はシクロペンチルメチルエーテルのようなエーテル類;ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、又はN−メチル−2−ピロリジノンのようなアミド類;あるいはジメチルスルホキシドのようなスルホキシド類、スルホランのようなスルホン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類;及びこれらの混合物が挙げられ、好適にはアルコール類、N,N−ジメチルホルムアミド、又はジメチルスルホキシドである。
【0110】
金属Mとしては、例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属類、あるいはマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属類等が挙げられる。
【0111】
第5製法−3の反応温度は、原料化合物、試薬等によって異なるが、通常0℃乃至100℃であり、好適には20℃乃至100℃である。
第5製法−3の反応時間は、原料化合物、試薬、反応温度等によって異なるが、通常5分間乃至24時間であり、好適には10分間乃至20時間である。
【0112】
第5製法−4は、第1製法の加水分解と同様の条件にて行うことができる。
【0113】
また、第5製法−3と第5製法−4の順序を変更して、式(XIII)の化合物をまず加水分解に付し、続いて式(XIV)の化合物と反応させて式(Id)の化合物を得ることもできる。この場合、それぞれの反応条件は上記記載の通りである。
【0114】
また、式(I)の化合物あるいはその製薬学的に許容される塩に、通常のアルキル化、エステル化、アミド化、アシル化、還元(アリール及び/又はヘテロアリールの還元、脱ハロゲン化などを含む)等、当業者により公知の方法を適用することにより、別の式(I)の化合物を得ることができる。
【0115】
種々の官能基を有する式(I)の化合物は、当業者に自明の方法又は公知の製造法、あるいはその変法を適用することによっても製造することができる。例えば前記製法により得られた化合物をさらに置換基修飾反応に付すことにより、所望の化合物を製造することができる。代表的な反応を以下に示す。
【0116】
(1)アルキル化
式(I)の化合物中、低級アルコキシ基又は低級アルキルアミノ基を有する化合物は、水酸基若しくはアミノ基を有する化合物をアルキル化反応に付すことにより製造できる。例えば日本化学会編、「第4版 実験化学講座(第20巻)」、丸善、1992年;「第5版 実験化学講座(第14巻)」、丸善、2005年;又は「Compendium of Organic Synthetic Methods」、第1巻〜第3巻等に記載の方法で行うことができる。
【0117】
(2)還元反応
式(I)の化合物中、飽和シクロアルキル基又は飽和ヘテロ環基を有する化合物は、アリール及び/又はヘテロアリールの還元反応によっても製造できる。反応は、例えば日本化学会編、「第4版 実験化学講座(第26巻)」、丸善、1992年に記載の反応条件を適宜選択して用いればよい。また、アリール及び/又はヘテロアリール環上のハロゲンの還元は、Synthesis 1982, 10, 876-878に記載の反応条件を用いて行うことができる。
【0118】
(3)アミド化及びエステル化
式(I)の化合物中、アミド基を有する化合物又はエステル基を有する化合物は、アミノ基又は水酸基を有する化合物を原料として、カルボン酸又はそれらの反応性誘導体と反応させることにより製造できる。反応は、例えば日本化学会編、「第4版 実験化学講座(第22巻)」、丸善、1992年;「第5版 実験化学講座(第16巻)」、丸善、2005年;又は「Compendium of Organic Synthetic Methods」、第1巻〜第3巻等に記載の方法を参考に実施できる。
【0119】
(原料化合物の製法)
前記第1製法における原料化合物のうち、原料化合物(III)は、インドール環とベンゼン環をカップリングする方法、例えばJournal of the American Chemical Society 2001, 123, 7727-7729に記載の方法に従って製造することができる。
【0120】
また、前記第2製法乃至第5製法における原料化合物の製造において、原料化合物のアミノ基はニトロ基の還元反応で製造することができ、日本化学会編、「第4版 実験化学講座(第26巻)」、丸善、1992年等に記載の方法を参照して実施することができる。
【0121】
(実施例)
本発明化合物の優れたヒト17βHSDtype5の選択的阻害活性は、以下に示す試験方法により確認された。なお、試験手順の詳細については、Maniatis,T.ら、Molecular Cloning−A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory,NY(1982)等を参照することにより行うことができる。また、下記1及び2に記載のヒト17βHSDtype5及びtype3をコードする遺伝子及びヒト17βHSDtype5及びtype3は、Molecular Endocrinology 1997, 11(13), 1971-1984に記載の方法によっても得ることができる。
【0122】
実施例1.ヒト17βHSDtype5をコードする遺伝子の単離及び酵素精製
本発明の薬理試験に用いるヒト17βHSDtype5をコードする全長cDNAは、ヒト肺癌由来細胞株のA549細胞由来のcDNAをテンプレートとしてPCR法により取得した。得られたcDNAの塩基配列はジデオキシターミネーター法により解析し、公知のヒト17βHSDtype5配列(GenBank accession No.NM_003739)と合致したクローンを選択した。これらを含むプラスミドにて、大腸菌BL21を形質転換させた後に大量培養し、当該蛋白質をGSTrapFFカラム(アマシャム社製)とPreScissionProtease(アマシャム社製)を用いて精製した。精製法はGSTrapFFカラムに添付された説明書に従った。
【0123】
実施例2.ヒト17βHSDtype3をコードする遺伝子の単離及び酵素精製
本発明の薬理試験に用いるヒト17βHSDtype3をコードする全長cDNAは、ヒト精巣由来のcDNAをテンプレートとしてPCR法により取得した。得られたcDNAの塩基配列はジデオキシターミネーター法により解析し、公知のヒト17βHSDtype3配列(GenBank accession No.BC034281)と合致したクローンを選択した。その後これらを含むプラスミドにてヒト胎児腎由来細胞株の293細胞を形質転換させ、24時間後に細胞を回収した。次に回収した細胞を5%グリセロールを含むリン酸緩衝液(100mm−dish1枚当たり500μlの5%グリセロールを含むリン酸緩衝液(pH7.4,200mM))中で破砕し、遠心分離(16000rpm,5min,4℃)後その上清を酵素源とした。
【0124】
実施例3.ヒト17βHSDtype5及びtype3の酵素活性の測定
酵素活性の測定は、Trevor M.Penningら、Biochem.J.,351,67−77,(2000)を参考にして行った。具体的には、100mMリン酸カリウムバッファー(pH6.0)を用いて、(1)最終濃度が10μg/mlとなる量の上記1.で精製した酵素、(2)最終濃度が300nMとなる量のアンドロステンジオン、(3)最終濃度が200μMとなるNADPH、及び(4)試験物質とを混和して室温にて2時間反応後、産生されたテストステロン量をDELFIA(登録商標)Testosterone Reagents R050−201(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。測定法は添付の説明書に従った。酵素未添加時のテストステロン量を0%、化合物未添加時のテストステロン産生量を100%として、化合物添加時におけるテストステロン産生の減少量を相対値として求めた。次いで、IC50値をロジスティック(Logistic)回帰法により算出した。
【0125】
続いて、ヒト前立腺癌由来細胞株のLNCaP細胞からヒト17βHSDtype5発現LNCaP細胞を作製し、本発明化合物の細胞増殖阻害活性を評価した。
【0126】
実施例4.ヒト17βHSDtype5発現LNCaP細胞の作製
本発明の薬理試験に用いるヒト17βHSDtype5をコードする全長cDNAは、ヒト肺癌由来細胞株のA549細胞由来のcDNAをテンプレートとしてPCR法により取得した。得られたcDNAの塩基配列はジデオキシターミネーター法により解析し、公知のヒト17βHSDtype5配列(GenBank accession No.NM_003739)と合致したクローンを選択した。その後これらを含むプラスミドにてヒト前立腺癌由来細胞株のLNCaP細胞を形質転換させ、安定発現細胞株を得た。
【0127】
実施例5.ヒト17βHSDtype5発現LNCaP細胞を用いた細胞増殖能の測定
上記4.で得られた形質転換細胞を96穴プレートに9000細胞/穴になるように播種して一晩培養した後、試験化合物とともに最終濃度10nMとなるようにアンドロステンジオンを添加して7日間培養した。培養後に細胞数をCellTiter−Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assay(プロメガ社)を用いて測定した。CellTiter−Glo(登録商標) Luminescent Cell Viability Assayは、細胞内ATP量をルシフェラーゼによる発光強度でモニターすることにより細胞数を測定する試薬である。なお実験操作は添付の説明書に従った。アンドロステンジオン未添加時の細胞数を増殖0%、アンドロステンジオン添加、試験化合物未添加時の細胞数を増殖100%として、試験化合物添加時における細胞増殖抑制活性を相対値として求めた。次いで、IC50値をロジスティック(Logistic)回帰法により算出した。
【0128】
本発明の有効成分である参考例化合物のヒト17βHSDtype5及びtype3の阻害活性のIC50値、並びにヒト17βHSDtype5発現LNCaP細胞を用いた細胞増殖抑制活性のIC50値を表1に示す。Exは後記参考例番号を示す。
【0129】
【表1】

【0130】
続いて、ヒト前立腺癌由来細胞株であるCWR22R(「Cancer Research」、1996年、第56巻、p.3042−3046)を移植したマウスを作製し、本発明化合物の腫瘍内テストステロン産生抑制活性を評価した。
【0131】
実施例6.CWR22R担癌マウスにおける腫瘍内テストステロン産生抑制
以下に記載のマトリゲルとして、BDマトリゲル(登録商標)フェノールレッドフリー 356237(ベクトン・ディッキンソン社製)を使用した。
CWR22R皮下担癌ヌードマウスからCWR22R腫瘍を摘出した。摘出した腫瘍を細分化して一片5mm程度の腫瘍片にした。腫瘍片を20%血清含有RPMI1640培地で2回洗浄した後に、0.1%プロテアーゼ、20%血清含有RPMI1640培地中で約20分間撹拌した。上清を回収して、遠心分離により細胞を回収した。これを必要に応じて繰り返し、回収した細胞を併せて細胞液とした。細胞数を測定したのち、細胞液を2×107個/mLとなるように調整した。さらに細胞液とマトリゲルを等量混合して最終的に1×107個/mLとなるように調整した。精巣を摘出した雄性ヌードマウスの背部皮下に、上記方法で調製した細胞マトリゲル混合液0.1mLを1箇所に注射することにより移植した。移植後に腫瘍体積が100mm3以上になった時点で、腫瘍体積を元に群分けを行い以下の実験を行った。
CWR22R皮下担癌マウスに試験物質を経口投与した。1時間後、すなわち解剖の1時間前に、アンドロステンジオンを1ng/100mm3腫瘍となるように腫瘍内へ投与した。アンドロステンジオン投与液の組成は0.000075% DMF / 0.00005% ポリソルベート80 / 9.999875% saline / 90% マトリゲルで行った。解剖して腫瘍摘出を行い、腫瘍重量を測定後凍結保存した。またバックグラウンド値測定用として、試験物質投与用の溶媒のみを経口投与したマウスの腫瘍を摘出したのち、氷冷下でアンドロステンジオン投与液を添加して速やかに凍結保存した。
凍結保存された腫瘍サンプルに0.2M Na-K phosphate buffer(pH7.4)を加え、氷冷下でホモジナイザー(ポリトロン)で腫瘍破砕液(homogenate)を作製した。腫瘍破砕液に6倍容量のtert-butyl methyl etherを加えて遠心分離(3000 rpm, 5 min)したのち、上清を別の試験管へ移し、ヒートブロックで40℃に保温しながら窒素ガスにより溶媒を留去した。試験管へ2%BSA入り10mM Tris-Clバッファー(pH7.4)を添加混合して抽出物とし、DELFIA(登録商標)Testosterone Reagents R050−201(パーキンエルマー社製)を用いてテストステロン濃度を測定した。
阻害率は以下の式により算出した。
阻害率(%)=100×(試験物質投与溶媒投与群テストステロン濃度平均値−試験物質投与群テストステロン濃度平均値)/(試験物質投与溶媒投与群テストステロン濃度平均値−バックグラウンドテストステロン濃度平均値)
【0132】
本発明の有効成分である参考例化合物のCWR22R担癌マウスにおける腫瘍内テストステロン産生抑制率(%)を表2に示す。Exは後記参考例番号、Inhは後記参考例化合物10mg/kg投与時のテストステロン産生抑制率を示す。
【0133】
【表2】

【0134】
上記試験結果から明らかなように、式(I)の化合物はヒト17βHSDtype3阻害活性をほとんど有さず、選択的なヒト17βHSDtype5阻害活性を有する。
【0135】
また上記試験結果から明らかなように、式(I)の化合物は、ヒト17βHSDtype3阻害活性が非常に弱いことから、精巣におけるヒト17βHSDtype3由来のテストステロン生合成への影響を与えることなく、17βHSDtype5選択的阻害作用により前立腺のintracrineなテストステロン合成を選択的に抑制することが期待できるので、副作用を伴わない前立腺肥大症や前立腺癌の治療及び/又は予防に使用しうる。
【0136】
さらに上記試験結果から明らかなように、式(I)の化合物は、ヒト17βHSDtype5発現LNCaP細胞において細胞増殖阻害活性を示し、CWR22R担癌マウスにおいて腫瘍内テストステロン産生抑制活性を示したことから、17βHSDtype5選択的阻害作用により前立腺癌のintracrineなテストステロン合成を選択的に抑制し、副作用を伴わない前立腺癌の治療及び/又は予防に使用しうる。
【0137】
さらに、上記医薬組成物と、上記効果を述べた記載を含むコマーシャルパッケージも有用である。
【0138】
式(I)の化合物又はその塩の1種又は2種以上を有効成分として含有する製剤は、当分野において通常用いられている薬剤用担体、賦形剤等を用いて通常使用されている方法によって調製することができる。
【0139】
投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
【0140】
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な賦形剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような滑沢剤やカルボキシメチルスターチナトリウム等のような崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要により糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
【0141】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
【0142】
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水性の溶剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はオリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、又はポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
【0143】
外用剤としては、軟膏剤、硬膏剤、クリーム剤、ゼリー剤、パップ剤、噴霧剤、ローション剤、点眼剤、眼軟膏等を包含する。一般に用いられる軟膏基剤、ローション基剤、水性又は非水性の液剤、懸濁剤、乳剤等を含有する。例えば、軟膏又はローション基剤としては、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、白色ワセリン、サラシミツロウ、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、ステアリルアルコール、セチルアルコール、ラウロマクロゴール、セスキオレイン酸ソルビタン等が挙げられる。
【0144】
吸入剤や経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体又は半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば公知の賦形剤や、更に、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、滑沢剤、安定剤や増粘剤等が適宜添加されていてもよい。投与は、適当な吸入又は吹送のためのデバイスを使用することができる。例えば、計量投与吸入デバイス等の公知のデバイスや噴霧器を使用して、化合物を単独で又は処方された混合物の粉末として、もしくは医薬的に許容し得る担体と組み合わせて溶液又は懸濁液として投与することができる。乾燥粉末吸入器等は、単回又は多数回の投与用のものであってもよく、乾燥粉末又は粉末含有カプセルを利用することができる。あるいは、適当な駆出剤、例えば、クロロフルオロアルカン、ヒドロフルオロアルカン又は二酸化炭素等の好適な気体を使用した加圧エアゾールスプレー等の形態であってもよい。
【0145】
通常経口投与の場合、1日の投与量は、体重当たり約0.001〜100 mg/kg、好ましくは0.1〜30 mg/kg、更に好ましくは0.1〜10 mg/kgが適当であり、これを1回であるいは2乃至4回に分けて投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、体重当たり約0.0001〜10 mg/kgが適当で、1日1回乃至複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、体重当たり約0.001〜100 mg/kgを1日1回乃至複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
【0146】
式(I)の化合物は、前述の式(I)の化合物が有効と考えられる疾患の種々の治療又は予防剤と併用することができる。当該併用は、同時投与、あるいは別個に連続して、もしくは所望の時間間隔をおいて投与してもよい。同時投与製剤は、配合剤であっても別個に製剤化されていてもよい。
(参考例)
【0147】
以下、本発明の有効成分である式(I)の化合物の製造法を参考例として記載する。また式(I)の化合物の原料として用いた化合物中、新規化合物の製法を製造例として記載する。なお、式(I)の化合物の製造法は、以下に示される具体的参考例の製法のみに限定されるものではなく、これらの製造法の組み合わせ、あるいは公知の製法によっても製造し得る。
【0148】
また、製造例、参考例、及び後記表中以下の略号を用いる。
Ex:参考例番号、REx:製造例番号、Data:物理化学的データ(FAB+:FAB-MS(M+H)+、FAB-:FAB-MS(M-H)-、ESI+:ESI-MS(M+H)+、ESI-:ESI-MS(M-H)-、API+:API-ES-MS(M+H)+、EI:EI-MS(M)+、NMR-DMSOd6:DMSO-d6中の1H NMRにおけるピークのδ(ppm))、Str:構造式、Syn(REx):同様の方法で製造した製造例番号、Syn(Ex):同様の方法で製造した参考例番号、DME:ジメトキシエタン、DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、DMSO:ジメチルスルホキシド、THF:テトラヒドロフラン、MeCN:アセトニトリル、MeOH:メタノール、tBuOH:tert-ブチルアルコール、n-BuLi:n-ブチルリチウム、RT:HPLCでの保持時間(分)。
【0149】
製造例1
2-フルオロ-4-メトキシ-1-ニトロベンゼン 5.03 g及びTHF 100 mlの混液を-50 ℃に冷却し、1Mビニルマグネシウムブロミド−THF溶液 90 mlを-30 ℃以下で加え、-50 ℃にて2時間撹拌した。反応液に飽和塩化アンモニウム水溶液100 ml及び1 M塩酸90 mlを加え室温まで昇温して15分間撹拌した。混合物を酢酸エチル100 mlで2回抽出し、抽出液を水及び飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン=1:20→1:9)で精製して、7-フルオロ-5-メトキシ-1H-インドール 470 mgを褐色油状物として得た。
【0150】
製造例2
3-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-インドール-2-カルボン酸エチル 1.35 g、メタノール 10 ml及びTHF 10 mlの混液に1 M水酸化ナトリウム水溶液6.0 mlを加え50 ℃にて3時間撹拌した。反応液に水30 ml及び1 M塩酸6 mlを加え析出した固体を濾取し、乾燥した。得られた固体をN-メチル-2-ピロリジノン 15 mlに溶解し、銅粉100 mgを加え160 ℃にて一夜撹拌した。反応液を放冷後酢酸エチル100 mlを加え不溶物を除き、水及び飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル−ヘキサン=1:4)で精製して、3-フェニル-5-(トリフルオロメチル)-1H-インドール 770 mgを褐色油状物として得た。
【0151】
製造例3
よう化第一銅 120 mg、trans-N,N'-ジメチルシクロヘキサン-1,2-ジアミン 160 mg及びジオキサン 6 mlの混液に、3-ヨード安息香酸エチル 1.2 ml、1H-インドール-5-カルボニトリル850 mg及び炭酸カリウム1.65 gを加え110 ℃にて一夜撹拌した。反応液を放冷後、酢酸エチル50 mlを加え不溶物を除き溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム)で精製後、エーテル−ヘキサン(1:5)で洗浄して、3-(5-シアノ-1H-インドール-1-イル)安息香酸エチル 1.41 gを白色固体として得た。
表3及び4に記載の製造例4乃至10の化合物を、製造例3と同様の方法で得た。
【0152】
製造例11
4-フルオロ-3-ニトロベンゾニトリル 1.0 g、3-アミノ安息香酸エチル 1.09 g、炭酸カリウム1.25 g及びDMF 10 mlの混液を100 ℃にて3時間撹拌した。反応液に水60 mlを加え酢酸エチル120 mlで抽出し、抽出液を水及び飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧留去した。残留物をエタノールで洗浄して、3-[(4-シアノ-2-ニトロフェニル)アミノ]安息香酸エチル 1.43 gを褐色固体として得た。
表4に記載の製造例12の化合物を、製造例11と同様の方法で得た。
【0153】
製造例13
酢酸パラジウム 85 mg、2,2'-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1'-ビナフチル 350 mg及びトルエン 15 mlの混液に、3-ブロモ安息香酸エチル 1.8 ml、2-ニトロアニリン 1.02 g及び炭酸セシウム 4.81 gを加え110 ℃にて5時間撹拌した。反応液を放冷後酢酸エチル50 mlを加え不溶物を除き溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル−ヘキサン=1:9)で精製して、3-[(2-ニトロフェニル)アミノ]安息香酸エチル 2.10 gを燈色油状物として得た。
表4に記載の製造例14乃至16の化合物を、製造例13と同様の方法で得た。
【0154】
製造例17
3-[(4-シアノ-2-ニトロフェニル)アミノ]安息香酸エチル 1.42 g及び酢酸 10 mlの混液に鉄粉 0.77 gを加え80 ℃にて2時間撹拌した。反応液の不溶物を除き溶媒を減圧留去し、残留物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100 mlを加えクロロホルム50 mlで2回抽出した。抽出液を無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧留去して、3-[(2-アミノ-4-シアノフェニル)アミノ]安息香酸エチル 1.35 gを淡黄色固体として得た。
表5及び14に記載の製造例18乃至20、76及び77の化合物を、製造例17と同様の方法で得た。
【0155】
製造例21
3-[(2-アミノ-4-シアノフェニル)アミノ]安息香酸エチル 400 mg及びTHF 5 mlの混液にアセチルクロリド 0.12 mlを加え室温にて2時間、70 ℃にて2時間撹拌した。反応液を放冷後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30 mlを加え、酢酸エチル60 mlで抽出した。抽出液を水及び飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル−ヘキサン=1:1)で精製して、3-(5-シアノ-2-メチル1H-ベンズイミダゾール-1-イル)安息香酸エチル 360 mgを白色固体として得た。
表5乃至9に記載の製造例22乃至48の化合物を、製造例21と同様の方法で得た。
【0156】
製造例49
3-[(2-アミノ-4-シアノフェニル)アミノ]安息香酸エチル 315 mgのTHF 6.3 mL溶液に(3-フルオロフェニル)アセチルクロリド 232 mgを加え室温にて2.5時間、80 ℃にて16時間撹拌した。反応液を放冷し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液 20 mLを加え、酢酸エチル 50 mLにて抽出を行った。抽出液を水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧下溜去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル−ヘキサン = 1 : 6)で精製して、3-[5-シアノ-2-(3-フルオロベンジル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 189mgを無色油状物として得た。
表10及び11に記載の製造例50乃至55の化合物を、製造例49と同様の方法で得た。
【0157】
製造例56
3-{[2-アミノ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}安息香酸エチル 320 mg及びエタノール 4 mlの混液に酢酸ホルムアミジン 310 mgを加え加熱還流下一夜撹拌した。反応液を放冷後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30 mlを加え、酢酸エチル60 mlで抽出した。抽出液を水及び飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム)で精製後ヘキサンで洗浄して、3-[5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 290 mgを淡黄色固体として得た。
表11に記載の製造例57の化合物を、製造例56と同様の方法で得た。
【0158】
製造例58
3-{[2-アミノ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}安息香酸エチル 545 mgのアセトニトリル 10 ml溶液に、トリエチルアミン 0.468 ml及び1,1-カルボニルビス(1H-イミダゾール) 409 mgを加え、90 ℃にて7時間攪拌した。室温まで冷却後、生じた沈殿を濾取して、3-[2-オキソ-5-(トリフルオロメチル)-2,3-ジヒドロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 499 mgを白色固体として得た。
【0159】
製造例59
3-[2-オキソ-5-(トリフルオロメチル)-2,3-ジヒドロ-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 889 mgのオキシ塩化リン 10 ml溶液に、五塩化リン 793 mgを加え、100 ℃にて15時間攪拌した。室温まで冷却後、反応液を減圧下濃縮した。得られた残渣に酢酸エチル及び飽和重曹水を加え、有機層を分離後飽和食塩水で洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後溶媒を減圧下留去して、3-[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 985 mgを淡黄色油状物として得た。
【0160】
製造例60
3-[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 588 mgのメタノール 5 ml溶液に、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液 0.920 mlを加え、室温にて16時間攪拌した。反応液中に生じた沈殿を濾取して、3-[2-メトキシ-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸メチル 384 mgを白色固体として得た。
【0161】
製造例61
3-[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 111 mgのTHF 3 ml溶液に、1 M水酸化ナトリウム水溶液 0.330 mlを加え、室温にて15時間攪拌した。氷冷下、反応液に1 M塩酸水溶液 0.330 mlを加えた後、酢酸エチルと飽和食塩水を加えて有機層を分離した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した後溶媒を減圧下留去して、3-[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸 113 mgを白色固体として得た。
【0162】
製造例62
3-[2-ピリジン-4-イル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 1.15 g、濃塩酸 0.5 ml及びエタノール 15 mlの混液に酸化白金(IV) 0.15 gを加え、水素ガス雰囲気下、室温で一夜撹拌した。反応混合物を濾過した後、濾液を減圧下濃縮した。残留物に酢酸エチル60 ml及び飽和炭酸水素ナトリウム水溶液30 mlを加えて有機層を分離した。有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム−メタノール−濃アンモニア水=20:1:0.1→10:1:0.1)で精製して、3-[2-ピペリジン-4-イル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 1.05 gを白色非晶性固体として得た。
【0163】
製造例63
3-[2-ピペリジン-4-イル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 420 mg、トリエチルアミン 0.17 ml及びTHF 4 mlの混液に無水酢酸 0.12 mlを加え室温にて5時間撹拌した。反応液に酢酸エチル60 mlを加え水及び飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム−メタノール=100:1)で精製して、3-[2-(1-アセチルピペリジン-4-イル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 430 mgを白色非晶性固体として得た。
【0164】
製造例64
3-[2-(4-ブロモベンジル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸エチル 272 mgをエタノール 2.7 mLに溶解し、パラジウム-炭素 13.6 mgを加えた後、水素雰囲気下、室温にて3時間攪拌した。反応混合物を濾過した後、濾液を減圧下濃縮した。得られた残渣を酢酸エチルに溶解し、重曹水、水及び飽和食塩水で洗浄した。これを無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:酢酸エチル−ヘキサン = 1 : 6)にて精製して、3-[2-ベンジル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル] 安息香酸エチル 229 mgを薄菫色油状物として得た。
【0165】
製造例65
3-{[2-アミノ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}安息香酸エチル 300 mg、ピリジン 0.11 ml及びTHF 3 mlの混液にシクロヘキサンカルボニルクロリド 0.16 mlを加え室温にて1時間、80 ℃にて5時間撹拌した。反応液を放冷し水30 mlを加え析出した固体を濾取した。得られた固体をヘキサンで洗浄して3-({2-[(シクロヘキシルカルボニル)アミノ]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}アミノ)安息香酸エチル360 mgを淡黄色固体として得た。
表12及び13に記載の製造例66乃至70の化合物を、製造例65と同様の方法で得た。
【0166】
製造例71
3-({2-[(シクロヘキシルカルボニル)アミノ]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}アミノ)安息香酸エチル 340 mg、メタノール 2.5 ml及びTHF 2.5 mlの混液に1 M水酸化ナトリウム水溶液 1.1 mlを加え50 ℃にて3時間撹拌した。反応液に1 M塩酸1.1 ml及び水30 mlを加え析出した固体を濾取した。得られた固体をエタノールで洗浄して、3-({2-[(シクロヘキシルカルボニル)アミノ]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}アミノ)安息香酸 210 mgを白色固体として得た。
表13及び14に記載の製造例72乃至74、78及び79の化合物を、製造例71と同様の方法で得た。
【0167】
製造例75
3-{[2-アミノ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}安息香酸エチル 324 mgのエタノール及びTHF混液 5 ml溶液に、1 M水酸化ナトリウム水溶液 1.50 mlを加え、室温にて2時間攪拌した。反応液に1 M水酸化ナトリウム水溶液 1.00 mlを加え、室温にて27時間攪拌した。反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣に氷冷下、1 M塩酸水溶液 2.50 ml及び水 10 mlを加え、生じた沈殿を濾取して、3-{[2-アミノ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}安息香酸 281 mgを褐色固体として得た。
各製造例化合物の構造式、製法及び物理化学的データを表に示す。
【0168】
【表3】

【0169】
【表4】

【0170】
【表5】

【0171】
【表6】

【0172】
【表7】

【0173】
【表8】

【0174】
【表9】

【0175】
【表10】

【0176】
【表11】

【0177】
【表12】

【0178】
【表13】

【0179】
【表14】

【0180】
以下の参考例は、本発明をより詳細に説明することを目的とし、本発明が下記参考例に限定されるものではない。本発明は参考例により十分に説明されているが、当業者にとり種々の変更や修飾が当然であろうことは理解される。したがって、その様な変更や修飾が本発明の範囲を逸脱するものでない限り、それらは本発明に含まれるものである。
【0181】
参考例1
3-(5-シアノ-1H-インドール-1-イル)安息香酸エチル 1.0 g、メタノール 10 ml及びTHF 20 mlの混液に、1 M水酸化ナトリウム水溶液 5.5 mlを加え室温にて3時間撹拌した。反応液に1 M塩酸5.5 ml及び水50 mlを加え、析出した固体を濾取した。得られた固体をエタノール−エーテル(1:2)で洗浄して、3-(5-シアノ-1H-インドール-1-イル)安息香酸 800 mgを白色固体として得た。
表15乃至18に記載の参考例2乃至46の化合物を、参考例1と同様の方法で得た。
【0182】
参考例47
3-[3-(2-ヒドロキシエチル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-インドール-1-イル]安息香酸 150 mg、よう化メチル 0.090 ml及びTHF 2 mlの混液に、氷冷下、水素化ナトリウム(55%流動パラフィン分散体) 60 mgを加え、氷冷下にて3時間、室温にて一夜撹拌した。反応液に水20 ml及び5%硫酸水素カリウム水溶液10 mlを加え析出した固体を濾取した。得られた固体をエーテル−ヘキサンで洗浄して、3-[3-(2-メトキシエチル)-5-(トリフルオロメチル)-1H-インドール-1-イル]安息香酸 110 mgを淡黄色固体として得た。
【0183】
参考例48
3-({2-[(シクロヘキシルカルボニル)アミノ]-4-(トリフルオロメチル)フェニル}アミノ)安息香酸 190 mg及び酢酸 4 mlの混液を80 ℃にて一夜撹拌した。溶媒を減圧留去し、残留物をエタノールで洗浄して、3-[2-シクロヘキシル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸 160 mgを白色固体として得た。
表18及び19に記載の参考例49乃至53の化合物を、参考例48と同様の方法で得た。
【0184】
参考例54
3-{[2-アミノ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ}安息香酸275 mgのTHF 5 ml溶液に、氷冷下、トリフルオロ酢酸無水物 0.157 mlを加え、室温にて30分間撹拌した。反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣に酢酸 5 mlを加え、90 ℃にて12時間攪拌した。室温まで冷却後、反応液を減圧下濃縮し、得られた残渣をヘキサンと酢酸エチルの混液から結晶化して、3-[2,5-ビス(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸 176 mgを淡黄色固体として得た。
【0185】
参考例55
ナトリウムエトキシド 163 mgのDMF 3 ml懸濁液に、氷冷下、3-[2-クロロ-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸 163 mgのDMF 2 ml溶液を加え、室温にて1時間攪拌した。反応液にナトリウムエトキシド 163 mgを加え、室温にて2時間攪拌した。反応液に氷冷下、1 M 塩酸 4.8 mlを加え、酢酸エチルと水を加えて有機層を分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液:クロロホルム−メタノール=24:1)で精製し、得られた固体をヘキサンと酢酸エチルの混液から再結晶して、3-[2-エトキシ-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸 202 mgを白色固体として得た。
表19に記載の参考例56の化合物を、参考例55と同様の方法で得た。
【0186】
表20乃至22に参考例1乃至56の化合物の物理化学的データを示す。
【0187】
【表15】

【0188】
【表16】

【0189】
【表17】

【0190】
【表18】

【0191】
【表19】

【0192】
【表20】

【0193】
【表21】

【0194】
【表22】

【0195】
参考例57
塩化イソバレリル 6 mg のTHF 0.2 ml溶液に3-[2-アミノ-4-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ安息香酸エチル 13 mg、ピリジン 0.02 mlのTHF 0.3 ml溶液を加え、室温にて一晩撹拌した。水、クロロホルムを加え有機層を分離し、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣に酢酸 0.5 mlを加え、90 ℃にて一晩撹拌後、溶媒を減圧下留去した。得られた残渣をメタノール 0.2 ml、THF 0.2 ml、5 M水酸化ナトリウム水溶液 0.1 mlに溶解し、60 ℃にて一晩撹拌した。室温まで冷却後、1 M塩酸にて中和し、溶媒を減圧下留去し、残渣をHPLCにて分取精製を行い、3-[2-イソブチル-5-(トリフルオロメチル)-1H-ベンズイミダゾール-1-イル]安息香酸 4.1 mgを得た。
【0196】
精製に用いたHPLC条件
カラム:SunFire(登録商標)(粒径:5μm、内径:19mm、長さ:100mm)
移動相:A Sol メタノール、B Sol 0.1%ギ酸水溶液
【0197】
【表23】

流速:25ml/min
カラム温度:20℃
注入量:800 μl
【0198】
ここで、RTを求めるために行ったHPLCの条件を以下に示す。
カラム:Wakosil−II 5C18AR(登録商標)(粒径:5μm、内径:2.0mm、長さ:30mm)
移動相:A Sol 5mMトリフルオロ酢酸水溶液、B Sol メタノール
【0199】
【表24】

流速:1.2ml/min
検出波長:254nm
カラム温度:35.0℃
注入量:5μl
表25に記載の参考例58乃至60の化合物を、参考例57と同様の方法で得た。
【0200】
【表25】

【産業上の利用可能性】
【0201】
本発明医薬の有効成分である化合物は、17βHSDtype5の選択的阻害作用と、これに基づく良好な薬理作用を有することから、本発明の医薬組成物は、17βHSDtype5に関係する疾患、特に前立腺癌、前立腺肥大、アクネ、脂漏症、多毛症、禿頭症、脱毛症、性早熟症、副腎肥大、多嚢胞性卵巣症候群、乳癌、肺癌、子宮内膜症又は平滑筋腫等の治療及び/又は予防剤として使用しうる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化13】

[式中、
Aは、C−R10又はN;
1は、水素、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−で置換された低級アルキル、低級アルキル−O−、ハロゲノ低級アルキル−O−、低級アルキル−O−で置換された低級アルキル−O−、置換されていてもよいシクロアルキル−L−、置換されていてもよいアリール−L−、又は置換されていてもよいヘテロ環基−L−;
Lは、結合、低級アルキレン、低級アルケニレン、O、低級アルキレン−O、又はO−低級アルキレン;
2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9は、同一又は互いに異なって、水素、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、低級アルケニル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−、シアノ低級アルキル−O−、ハロゲノ低級アルキル−O−、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−O−、ヘテロアリール−O−、アリール−低級アルキレン−、ヘテロアリール−低級アルキレン−、アシル、アシル−O−、ヘテロアリール−低級アルキレン−O−、低級アルキルスルファニル、アミノ、ヒドロキシ、スルファニル、モノ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、アシルアミノ、又はアリールアミノ;
3は、水素、ハロゲン、シアノ、ニトロ、ハロゲノ低級アルキル、又は低級アルキル−O−;
10は、水素、置換されていてもよいアリール、又はヒドロキシ若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよい低級アルキルを示す。
ただし、
AがC−R10である場合は、R1は水素又は低級アルキルを示し;
AがN、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9が水素である場合は、R3はハロゲン、シアノ、ハロゲノ低級アルキル、又は低級アルキル−O−を示し;
AがN、R1がメチル、並びにR2、R3、R4、R5、R6、R7、及びR9が水素である場合は、R8は[(2E)−3−(2−ナフタレニル)−1−オキソ−2−ブテン−1−イル]アミノ以外の基である。]
の化合物又はその塩を含有する、17βHSDtype5に関係する疾患の予防用若しくは治療用医薬組成物。
【請求項2】
式(II)
【化14】

[式中、
Aは、C−R10又はN;
1は、水素、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−で置換された低級アルキル、低級アルキル−O−、ハロゲノ低級アルキル−O−、低級アルキル−O−で置換された低級アルキル−O−、置換されていてもよいシクロアルキル−L−、置換されていてもよいアリール−L−、又は置換されていてもよいヘテロ環基−L−;
Lは、結合、低級アルキレン、低級アルケニレン、O、低級アルキレン−O、又はO−低級アルキレン;
2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9は、同一又は互いに異なって、水素、低級アルキル、ハロゲン、シアノ、低級アルケニル、ハロゲノ低級アルキル、低級アルキル−O−、シアノ低級アルキル−O−、ハロゲノ低級アルキル−O−、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリール−O−、ヘテロアリール−O−、アリール−低級アルキレン−、ヘテロアリール−低級アルキレン−、アシル、アシル−O−、ヘテロアリール−低級アルキレン−O−、低級アルキルスルファニル、アミノ、ヒドロキシ、スルファニル、モノ低級アルキルアミノ、ジ低級アルキルアミノ、アシルアミノ、又はアリールアミノ;
a3は、水素、ハロゲン、シアノ、ハロゲノ低級アルキル、又は低級アルキル−O−;
10は、水素、置換されていてもよいアリール、又はヒドロキシ若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよい低級アルキルを示す。
ただし、
AがC−R10である場合は、R1は水素又は低級アルキルを示すが、R1、R2、R5、R6、R7、R8、及びR9が水素、R4がクロロ、並びにR10がイソブチルである場合は、Ra3は水素以外の基であり;
AがN、R1、R2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9が水素である場合は、Ra3はハロゲン、シアノ、又は低級アルキル−O−を示し;
AがN、R1がメチル、R2、R4、R5、R6、R7、及びR9が水素、並びにR8が[(2E)−3−(2−ナフタレニル)−1−オキソ−2−ブテン−1−イル]アミノである場合は、Ra3は水素以外の基であり;
AがN、R1、R2、R5、R6、R7、R8、及びR9が水素、並びにR4がtert−ブチルである場合は、Ra3は水素以外の基であり;
AがN、R1が水素若しくはメチル、R2、R6、及びR7が水素、R4及びR8がヒドロキシ、並びにR5がカルボキシである場合は、Ra3は水素以外の基を示す。]
の化合物又はその塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項3】
AがC−R10である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
1が水素、並びにR2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9が、同一又は異なって、水素又はハロゲンである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
a3がハロゲノ低級アルキル、又はシアノである、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
AがNである、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項7】
2、R4、R5、R6、R7、R8、及びR9が、同一又は異なって、水素又はハロゲンである、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
a3がハロゲノ低級アルキル、又はシアノである、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
a3がトリフルオロメチルである、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
1が水素;低級アルキル;ハロゲノ低級アルキル;低級アルキル−O−、フェニル若しくはフェニル−O−で置換された低級アルキル;低級アルキル、ハロゲン、若しくは低級アルキル−O−で置換されていてもよいフェニル;シクロアルキルを示し;ここで、フェニル若しくはフェニル−O−で置換された低級アルキル中の上記フェニル部分は、低級アルキル、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、又は低級アルキル−O−で置換されていてもよい;
である、請求項6乃至9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
1が水素、低級アルキル、ハロゲノ低級アルキル、又は低級アルキル−O−で置換された低級アルキルである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
1がフェニルで置換されていてもよい低級アルキル−O−である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
1がシクロアルキルである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項14】
1が低級アルキル、ハロゲン、及び低級アルキル−O−から選択される基で置換されていてもよいフェニルである、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項15】
1がフェニルで置換された低級アルキル又はフェニル−O−で置換された低級アルキルであって、上記フェニルが低級アルキル、ハロゲン、ハロゲノ低級アルキル、及び低級アルキル−O−から選択される基で置換されていてもよい、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項16】
3−[5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−メチル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−エチル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−プロピル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2,5−ビス(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−フェノキシメチル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−メトキシ−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−シクロプロピル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−シクロヘキシル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−フェニル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−(3−メチルフェニル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−ベンジル−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−(3−フルオロベンジル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−(4−フルオロベンジル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
3−[2−(4−クロロベンジル)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;及び
3−[2−(ベンジルオキシ)−5−(トリフルオロメチル)−1H−ベンズイミダゾール−1−イル]安息香酸;
から選択される化合物又はその塩、及び製薬学的に許容される賦形剤を含有する医薬組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物又はその塩を含有する、前立腺癌、前立腺肥大、アクネ、脂漏症、多毛症、禿頭症、脱毛症、性早熟症、副腎肥大、多嚢胞性卵巣症候群、乳癌、子宮内膜症、肺癌、又は平滑筋腫の予防若しくは治療剤。
【請求項18】
請求項1に記載の化合物又はその塩を含有する17βHSDtype5の阻害剤。
【請求項19】
請求項1に記載の化合物又はその塩を含有する医薬組成物、及び、請求項1に記載の化合物又はその塩が前立腺癌、前立腺肥大、アクネ、脂漏症、多毛症、禿頭症、脱毛症、性早熟症、副腎肥大、多嚢胞性卵巣症候群、乳癌、子宮内膜症、肺癌、又は平滑筋腫を治療及び/又は予防するために使用され得る又は使用されるべき旨の記載を含むコマーシャルパッケージ。

【公開番号】特開2010−195774(P2010−195774A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13743(P2010−13743)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】