説明

ベント管の点検補修システム及び方法

【課題】ベント管の内側の点検及び補修の作業を効率的に行うことである。
【解決手段】原子炉格納容器の上部のドライウェル15と原子炉格納容器の下部のサプレッションチェンバー16とを連通するベント管17の上部に固定されたダイヤフラムフロアに滑車部25を配置し、滑車部25にベント管17内を昇降する昇降体27を吊り下げる。サプレッションチェンバー16の底部には揚重装置28を設置し、揚重装置28により昇降体27を昇降させる。昇降体27には各種の作業を行うための作業装置24が着脱可能に装着され、この作業装置24によりベント管17内において点検補修のための各種作業を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器の上部のドライウェルと原子炉格納容器の下部のサプレッションチェンバーとを連通するベント管の内側の点検及び補修を行うベント管の点検補修システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型軽水炉における原子炉格納容器の上部のドライウェルと原子炉格納容器の下部のサプレッションチェンバーとを連通するベント管は、原子力格納容器内の上部のドライウェルの圧力が上昇した際に、その圧力を原子炉圧力抑制室であるサプレッションチェンバーに逃がすために設置されている。
【0003】
原子炉格納容器のドライウェル内で原子炉一次系配管が破断した場合には、蒸気放出によりドライウェル内の圧力が上昇するので、ドライウェル内に放出された蒸気をベント管を通してサプレッションチェンバー内の水中に導き、冷却し凝縮することによってドライウェル内圧の上昇を抑制する。
【0004】
図8は原子炉格納容器の一例を示す断面図である。格納容器本体11は中空構造に形成され、ペデスタル12で原子炉圧力容器13を支持している。格納容器本体11は、ダイヤフラムフロア14で上部のドライウェル15と下部のサプレッションチェンバー16とに区分されている。ダイヤフラムフロア14には、ドライウェル15とサプレッションチェンバー16とを連通する複数のベント管17が配置され、また、複数のコラムサポート18が格納容器本体11の周方向に略等間隔に配置されている。このコラムサポート18によってダイヤフラムフロア14の荷重を支持する。
【0005】
ドライウェル15には、原子炉圧力容器13に接続される配管19や種々の機器等が配置されている。一方、サプレッションチェンバー16には、蒸気を冷却し凝縮するための水20が貯留されており、サプレッションチェンバー16は、ペデスタル12に設けた開口21を介して連通するようになっている。
【0006】
各ベント管17は、上端部がダイヤフラムフロア14を貫通するとともにダイヤフラムフロア14に支持され、また、下端部がサプレッションチェンバー16に貯留されている水20に没しており、このベント管17によって、例えば、主蒸気管等の配管19が破断した際にドライウェル15に噴出する蒸気をサプレッションチェンバー16に導き冷却し凝縮させ、ドライウェル15の圧力上昇を抑制する。
【0007】
各ベント管17の上端には、ジェットデフレクター22が設けられ、また、所定のベント管17のサプレッションチェンバー16の内部に位置する部分の非水没箇所には、真空破壊弁23が設けられている。
【0008】
図9は、図8のX−X線での断面図である。図9に示すように、隣接するベント管17は、サプレッションチェンバー16内にできるだけ等間隔に配置され、ブレーシング32を介して相互に連結されており、ドライウェル15に噴出した蒸気がベント管17を通り抜ける際のベント管17の振動を抑制し、ベント管17とダイヤフラムフロア14との取り合い部分に過大な応力が作用しないようにしている。
【0009】
サプレッションチェンバー16の内壁等は防錆塗装が施されているが、数年毎に再塗装が必要である。そこで、サプレッションチェンバーの補修や再塗装を定期的に行っている。サプレッションチェンバー16内の水20を抜き、サプレッションチェンバー16内を機械洗浄し、塗膜及び下地層を剥がし塗装を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−23095号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、近年行われたベント管の点検において、錆の発生や塗装の剥離が確認され、ベント管17の内面についても点検し保守することが望ましいことが分かった。近年、原子力圧力抑制室であるサプレッションチェンバー内への異物混入の防止に対する取り組みが強化されており、ベント管17の塗装の剥離を防止するために、ベント管17の内面についても再塗装をする必要が生じている。
【0011】
ベント管17の内面は、防食のためサプレッションチェンバー16の内部構造物と同仕様の塗装が施されているが、ベント管17は、通常、内径が約600mmの直管パイプであり内側が狭く、個数も約100個と多いので、人がベント管17の内部に入り作業することが困難である。そのため、これまでのサプレッションチェンバー16の塗装修理工事においてベント管17の内面は施工範囲の対象外とされてきた。
【0012】
しかしながら、前述したように、サプレッションチェンバー16内の異物問題が注目される中、サプレッションチェンバー16の内部点検時に塗膜片が多数発見されたこともあり、ベント管17の内面の塗装修理について必要性が注目されてきている。
【0013】
本発明の目的は、ベント管の内側の点検及び補修の作業を効率的に行うことができるベント管の点検補修システム及び方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1の発明に係わるベント管の点検補修システムは、原子炉格納容器の上部のドライウェルと前記原子炉格納容器の下部のサプレッションチェンバーとを連通するベント管の上部に固定されたダイヤフラムフロアに設置される滑車部と、前記滑車部に吊り下げられ前記ベント管内を昇降する昇降体と、前記サプレッションチェンバーの底部に設置され前記昇降体を昇降させる揚重装置と、前記昇降体に着脱可能に装着され前記ベント管内において点検補修のための各種作業を行うための作業装置とを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明に係わるベント管の点検補修システムは、請求項1の発明において、前記作業装置は、前記ベント管の内面の除染及び洗浄を行う除染洗浄装置、前記ベント管の内面の塗装面の下地処理及び清掃を行う研掃装置、前記ベント管の内面の塗装面の検査を行う検査装置、前記ベント管の内面の塗装を行う塗装装置、前記ベント管の内面の目視検査用の人員昇降装置、前記ベント管の内面の塗装膜厚を測定する塗膜厚検査装置であることを特徴とする。
【0016】
請求項3の発明に係わるベント管の点検補修方法は、原子炉格納容器の下部のサプレッションチェンバーの点検補修の際に、請求項1または2の点検補修システムの前記滑車部を前記ベント管の上部に固定されたダイヤフラムフロアに設置するとともに、前記揚重装置を前記サプレッションチェンバーの底部に設置し、前記滑車部に前記昇降体を吊り下げ、前記昇降体に前記作業装置を装着し、前記揚重装置により前記昇降体を昇降させ前記作業装置により前記ベント管内において点検補修のための各種作業を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項4の発明に係わるベント管の点検補修方法は、請求項3の発明において、前記作業装置として、最初に前記除染洗浄装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の除染及び洗浄を行い、次に前記研掃装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の塗装面の下地処理及び清掃を行い、次に前記検査装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の下地検査を行い、次に前記塗装装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の塗装を行い、再度前記検査装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の塗装後の塗装面の検査を行い、その後に前記塗膜厚検査装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の塗装膜厚を測定し検査することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ベント管の上部に滑車部を配置し、滑車部に昇降体を吊り下げて揚重装置により昇降体を昇降させ、昇降体に順次作業装置を装着してベント管内において点検補修のための各種作業を行うので、ベント管の内側の点検及び補修の作業を効率的に行うことができる。
【0019】
作業装置として、ベント管の内面の除染及び洗浄を行う除染洗浄装置、ベント管の内面の塗装面の下地処理及び清掃を行う研掃装置、ベント管の内面の塗装面の検査を行う検査装置、ベント管の内面の塗装を行う塗装装置、ベント管の内面の目視検査用の人員昇降装置、ベント管の内面の塗装膜厚を測定する塗膜厚検査装置を用意し、これらの作業装置を昇降体に順次装着してベント管内の点検補修ができるので、作業員の労力が軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は本発明の実施の形態に係わるベント管の点検補修システムの構成図であり、図1(a)は作業装置24がベント管17の下部に位置する場合、図1(b)は作業装置24がベント管17の上部に位置する場合を示している。図1ではベント管17の一部を切り欠いたものを示しており、作業装置24は、ベント管17の内面の除染及び洗浄を行う除染洗浄装置24Aである場合を示している。
【0021】
原子炉格納容器の上部のドライウェルと原子炉格納容器の下部のサプレッションチェンバーとを区分するダイヤフラムフロア14には、ベント管17の上部が固定され、ジェットデフレクター22の内部に滑車部25が配置される。滑車部25にはロープ26が掛けられ、ベント管17の内部に昇降体27が吊り下げられる。一方、ベント管17の下部には、揚重装置28がサプレッションチェンバーの底部に設置される。揚重装置28の駆動部29にロープ26が巻かれ、駆動部29により、昇降体27がベント管17の内部を矢印Y方向に昇降する。
【0022】
昇降体27には着脱可能に作業装置24が装着される。図1(a)に示すように、ベント管17の下部において作業装置24が装着され、揚重装置28の駆動部29により作業装置24はベント管17の内部を昇降する。図1では作業装置24として、除染洗浄装置24Aを装着した場合を示しており、除染洗浄装置24Aは、ベント管17の内部を昇降する過程において、ベント管17の内面の除染及び洗浄を行う。
【0023】
例えば、除染洗浄装置24Aは、紡錘形状または球形に形成された外周面にベント管17の内面に接触する洗浄スポンジを有し、また、洗浄液を噴射するノズルを有し、ベント管17の下部において除染洗浄装置24Aを昇降体27に装着する。そして、除染洗浄装置24Aは、洗浄液を噴射しながら回転しつつベント管17の内部を上昇し、図1(b)に示すようにベント管17の上部に到達する。ベント管17の上部に到達すると、除染洗浄装置24Aを下降させる。下降の場合も上昇の場合と同様に、洗浄液を噴射しながら回転しながらベント管17の内部を下降し、出発位置のベント管17の下部に到達する。この除染洗浄作業は1回の昇降ではなく、複数回の昇降を繰り返し行うことも可能である。除染洗浄装置24Aによる除染洗浄作業が終了すると、次に、除染洗浄装置24Aを昇降体27から取り外して、別の作業を行う作業装置24を装着する。
【0024】
図2は本発明の実施の形態に係わる点検補修システムの昇降体27に作業装置24として研掃装置24Bを装着した場合の構成図である。研掃装置24Bは、ベント管17の内面の塗装面の下地処理及び清掃を行うものである。図2では研掃装置24Bがベント管17の上部に位置する場合を示している。
【0025】
例えば、研掃装置24Bは、外周面にベント管17の内面に接触する研磨ペーパーを有し、また、研磨ペーパーで研磨した粉塵を回収する粉塵回収部を有し、ベント管17の下部において研掃装置24Bを昇降体27に装着する。そして、研掃装置24Bは、回転しながらベント管17の内部を上昇する過程でベント管17の内面を研磨しつつ粉塵を回収し、ベント管17の上部に到達する。ベント管17の上部に到達すると、研掃装置24Bを下降させる。下降の場合も上昇の場合と同様に、回転しながらベント管17の内部を下降する過程でベント管17の内面を研磨しつつ粉塵を回収しベント管17の内部を下降し、出発位置のベント管17の下部に到達する。この研掃作業は1回の昇降ではなく、複数回の昇降を繰り返し行うことも可能である。研掃装置24Bによる研掃作業が終了すると、次に、研掃装置24Bを昇降体27から取り外して、別の作業を行う作業装置24を装着する。
【0026】
図3は本発明の実施の形態に係わる点検補修システムの昇降体27に作業装置24として検査装置24Cを装着した場合の構成図である。検査装置24Cは、ベント管17の内面の塗装面の検査を行うものである。図3では検査装置24Cがベント管17の上部に位置する場合を示している。
【0027】
例えば、検査装置24Cは、外周面にベント管17の内面に向けて、パノラマカメラやレーザー距離計を有し、また、昇降体27の昇降位置の指示計を有し、ベント管17の下部において検査装置24Cを昇降体27に装着する。そして、検査装置24Cは、回転しながらベント管17の内部を上昇する過程でベント管17の内面の画像や内面までの距離を昇降位置とともに測定し、ベント管17の上部に到達する。ベント管17の上部に到達すると、検査装置24Cを下降させる。下降の場合も上昇の場合と同様に、回転しながらベント管17の内部を下降する過程でベント管17の内面の画像や内面までの距離を昇降位置とともに測定し、出発位置のベント管17の下部に到達する。この検査作業により測定データは表示装置30に表示出力するとともに、図示省略の記憶装置に記憶する。この検査作業は1回の昇降ではなく、複数回の昇降を繰り返し行うことも可能である。検査装置24Cによる検査作業が終了すると、次に、検査装置24Cを昇降体27から取り外して、別の作業を行う作業装置24を装着する。
【0028】
図4は本発明の実施の形態に係わる点検補修システムの昇降体27に作業装置24として塗装装置24Dを装着した場合の構成図である。塗装装置24Dは、ベント管17の内面に塗装を行うものである。図4では塗装装置24Dがベント管17の上部に位置する場合を示している。
【0029】
例えば、塗装装置24Dは、外周面にベント管17の内面に向けて塗料を噴射するノズルを有し、ベント管17の下部において塗装装置24Dを昇降体27に装着する。そして、そのままベント管17の上部に移動させ図4の状態とする。塗装装置24Dがベント管17の上部に位置する状態から、図4の矢印Y’方向にベント管17の内部を下降させる過程で、塗装装置24Dを回転させながらノズルから塗料を噴射しベント管17の内面に塗装し、出発位置のベント管17の下部に到達させる。この塗装作業は、通常、下塗り、中塗り、上塗りの作業があるので、塗装装置24Dにより作業は複数回繰り返し行うことになる。塗装装置24Dによる塗装作業が終了すると、次に、塗装装置24Dを昇降体27から取り外して、別の作業を行う作業装置24を装着する。
【0030】
図5は本発明の実施の形態に係わる点検補修システムの昇降体27に作業装置24として人員昇降装置24Eを装着した場合の構成図である。人員昇降装置24Eは、作業員31を搭乗させてベント管17の内面の状態を作業員による目視検査用の装置である。図5では人員昇降装置24Eがベント管17の上部に位置する場合を示している。
【0031】
例えば、人員昇降装置24Eは、乗りかごの周囲に手摺りを有し、また、乗りかごの底部に脱出用のハッチを有し、避難梯子(例えば縄梯子)を搭載している。この人員昇降装置24Eをベント管17の下部において昇降体27に装着し、人員昇降装置24Eに作業員31を搭乗させる。そして、人員昇降装置24Eがベント管17の内部を上昇する過程で、作業員31はベント管17の内面の塗装状態を目視確認する。ベント管17の上部に到達すると、人員昇降装置24Eを下降させる。下降の場合も上昇の場合と同様に、ベント管17の内部を下降する過程で作業員31はベント管17の内面の塗装状態を目視確認し、出発位置のベント管17の下部に到達する。この目視検査作業は1回の昇降ではなく、複数回の昇降を繰り返し行うことも可能である。人員昇降装置24Eによる検査作業が終了すると、次に、人員昇降装置24Eを昇降体27から取り外して、別の作業を行う作業装置24を装着する。
【0032】
以上の説明では、作業装置24として、ベント管17の内面の除染及び洗浄を行う除染洗浄装置24A、ベント管17の内面の塗装面の下地処理及び清掃を行う研掃装置24B、ベント管17の内面の塗装面の検査を行う検査装置24C、ベント管17の内面の塗装を行う塗装装置24D、ベント管17の内面の塗装後の目視検査用の人員昇降装置24Eの場合について説明したが、その他の作業装置24、例えば、ベント管17の内面の塗装後の塗装膜厚を測定する塗膜厚検査装置を追加するようにしてもよい。例えば、塗膜厚検査装置には、電磁式探触子の塗膜厚検出センサを搭載し、ベント管17の内面の塗装後の塗装膜厚を測定する。
【0033】
また、人員昇降装置24Eでは作業員31を搭乗させて、ベント管17の内面の塗装後の状態を目視検査させるようにしたが、各種作業前のベント管17の内面の状態あるいは各種作業後のベント管17の内面の状態を目視検査する場合に使用してもよい。
【0034】
図6は本発明の実施の形態に係わるベント管の点検補修方法のフローチャートである。まず、原子炉格納容器の下部のサプレッションチェンバーの点検補修の際には、サプレッションチェンバーの水を抜き、その後に、滑車部及び揚重装置を配置する(S1)。滑車部はベント管の上部に固定されたダイヤフラムフロアに設置し、揚重装置はベント管の下部のサプレッションチェンバーの底部に設置する。
【0035】
そして、滑車部にロープを掛けて昇降体をベント管の内部に吊り下げる(S2)。これにより、ベント管の内部に昇降体が吊り下げられる。その際に、ベント管の下部の揚重装置の駆動部にロープを巻き付けて駆動部により昇降体がベント管の内部を昇降できる状態とする。
【0036】
次に、昇降体に作業装置を装着する(S3)。作業装置はベント管の下部において昇降体に装着される。そして、揚重装置により昇降体をベント管の内部で昇降させ、作業装置によりベント管内において点検補修のための作業を行う(S4)。そして、昇降体に装着した作業装置が作業を終えると、昇降体から作業装置を取り外す(S5)。サプレッションチェンバーの点検補修が終了かどうかを判断し(S6)、終了でないときは、ステップS3に戻り、次の点検補修作業を行う別の作業装置を昇降体に装着し、ステップS3〜ステップS6までを繰り返し行う。そして、サプレッションチェンバーの点検補修が終了と判断したときはベント管の点検補修作業を終了する。
【0037】
図7は本発明の実施の形態に係わるベント管の点検補修方法での作業手順の一例を示す工程図である。まず、最初に除染洗浄装置を昇降体に装着してベント管の内面の除染及び洗浄を行う(S11)。これにて、ベント管の内面に固着したスラッジを除去する。
【0038】
次に、研掃装置を昇降体に装着してベント管の内面の塗装面の下地処理を行う(S12)。この下地処理(目荒らし)は、ベント管の内面の旧塗膜の劣化部分を除去することによって行う。それとともに、下地処理後のベント管の内面の清掃を行う(S13)。この清掃は、ベント管の内面に付着した塗膜粉等を除去し塗装できる状態にすることである。
【0039】
次に、検査装置を昇降体に装着してベント管の内面の下地検査を行う(S14)。この下地検査は、例えば、検査装置に搭載したカメラにより塗装前のベント管の内面の状況を確認することによって行う。そして、ベント管の内面の状況が塗装できる状態であることを確認後に、塗装装置を昇降体に装着してベント管の内面の塗装を行う(S15)。この塗装作業は、通常、下塗り、中塗り、上塗りの作業があるので、塗装装置24Dにより作業は複数回繰り返し行う。例えば、下塗りでは有機ジンクリッチ塗装を1回塗りで膜厚75μm以上、中塗り及び上塗りはエポキシ樹脂塗装で各1回塗りで膜厚が合計で200μm以上とする。
【0040】
そして、再度、検査装置を昇降体に装着してベント管の内面の塗装後の塗装面の検査を行う(S16)。この検査作業により得られた測定データは表示装置に表示出力されるので、作業員は表示装置の表示された画像により塗装状態を目視検査することになる。その後に、塗膜厚検査装置を昇降体に装着してベント管の内面の塗装膜厚を測定する(S17)。塗装の膜厚測定を行い規定膜厚が確保されていることを検査することになる。
【0041】
以上の説明では、人員昇降装置を昇降体に装着して作業員によりベント管の内面の目視検査を行う作業手順を省略しているが、各種作業前のベント管の内面の状態あるいは各種作業後のベント管の内面の状態を目視検査する場合に必要に応じて、作業員による直接的な目視検査の作業手順を入れるようにしてもよい。例えば、工程S14の後の塗装前のベント管の内面の状況を目視確認したり、工程S16の後のベント管の内面の塗装後の状態を目視検査したりする。
【0042】
本発明の実施の形態によれば、ベント管17の上部に滑車部25を配置し、滑車部25にロープ26で昇降体27を吊り下げて揚重装置28の駆動部29により昇降体27を昇降させ、昇降体27に順次作業装置24を装着してベント管17内において点検補修のための各種作業を行うので、ベント管17の内側の点検及び補修の作業を安全にしかも効率的に行うことができる。
【0043】
作業装置24として、ベント管17の内面の除染及び洗浄を行う除染洗浄装置24A、ベント管17の内面の塗装面の下地処理及び清掃を行う研掃装置24B、ベント管17の内面の塗装面の検査を行う検査装置24C、ベント管17の内面の塗装を行う塗装装置24D、ベント管17の内面の目視検査用の人員昇降装置24E、ベント管の内面の塗装膜厚を測定する塗膜厚検査装置等の各種の作業装置を用意し、作業内容に応じて、これらの作業装置24を昇降体27に順次装着できるので作業員の労力が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施の形態に係わるベント管の点検補修システムの構成図。
【図2】本発明の実施の形態に係わる点検補修システムの昇降体に作業装置として研掃装置を装着した場合の構成図。
【図3】本発明の実施の形態に係わる点検補修システムの昇降体に作業装置として検査装置を装着した場合の構成図。
【図4】本発明の実施の形態に係わる点検補修システムの昇降体に作業装置として塗装装置を装着した場合の構成図。
【図5】本発明の実施の形態に係わる点検補修システムの昇降体に作業装置として人員昇降装置を装着した場合の構成図。
【図6】本発明の実施の形態に係わるベント管の点検補修方法のフローチャート。
【図7】本発明の実施の形態に係わるベント管の点検補修方法での作業手順の一例を示す工程図。
【図8】原子炉格納容器の一例を示す断面図。
【図9】図8のX−X線での断面図。
【符号の説明】
【0045】
11…格納容器本体、12…ペデスタル、13…原子炉圧力容器、14…ダイヤフラムフロア、15…ドライウェル、16…サプレッションチェンバー、17…ベント管、18…コラムサポート、19…配管、20…水、21…開口、22…ジェットデフレクター、23…真空破壊弁、24…作業装置、25…滑車部、26…ロープ、27…昇降体、28…揚重装置、29…駆動部、30…表示装置、31…作業員、32…ブレーシング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉格納容器の上部のドライウェルと前記原子炉格納容器の下部のサプレッションチェンバーとを連通するベント管の上部に固定されたダイヤフラムフロアに設置される滑車部と、前記滑車部に吊り下げられ前記ベント管内を昇降する昇降体と、前記サプレッションチェンバーの底部に設置され前記昇降体を昇降させる揚重装置と、前記昇降体に着脱可能に装着され前記ベント管内において点検補修のための各種作業を行うための複数の作業装置とを備えたことを特徴とするベント管の点検補修システム。
【請求項2】
前記作業装置は、前記ベント管の内面の除染及び洗浄を行う除染洗浄装置、前記ベント管の内面の塗装面の下地処理及び清掃を行う研掃装置、前記ベント管の内面の塗装面の検査を行う検査装置、前記ベント管の内面の塗装を行う塗装装置、前記ベント管の内面の目視検査用の人員昇降装置、前記ベント管の内面の塗装後の塗装膜厚を測定する塗膜厚検査装置であることを特徴とする請求項1記載のベント管の点検補修システム。
【請求項3】
原子炉格納容器の下部のサプレッションチェンバーの点検補修の際に、請求項1または2の点検補修システムの前記滑車部を前記ベント管の上部に固定されたダイヤフラムフロアに設置するとともに、前記揚重装置を前記サプレッションチェンバーの底部に設置し、前記滑車部に前記昇降体を吊り下げ、前記昇降体に前記作業装置を装着し、前記揚重装置により前記昇降体を昇降させ前記作業装置により前記ベント管内において点検補修のための各種作業を行うことを特徴とするベント管の点検補修方法。
【請求項4】
前記作業装置として、最初に前記除染洗浄装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の除染及び洗浄を行い、次に前記研掃装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の塗装面の下地処理及び清掃を行い、次に前記検査装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の下地検査を行い、次に前記塗装装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の塗装を行い、再度前記検査装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の塗装後の塗装面の検査を行い、その後に前記塗膜厚検査装置を前記昇降体に装着して前記ベント管の内面の塗装膜厚を測定し検査することを特徴とする請求項3記載のベント管の点検補修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−107274(P2010−107274A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−277741(P2008−277741)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】